JP2016071230A - 光学素子および光学素子の製造方法 - Google Patents

光学素子および光学素子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016071230A
JP2016071230A JP2014202010A JP2014202010A JP2016071230A JP 2016071230 A JP2016071230 A JP 2016071230A JP 2014202010 A JP2014202010 A JP 2014202010A JP 2014202010 A JP2014202010 A JP 2014202010A JP 2016071230 A JP2016071230 A JP 2016071230A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
refractive index
optical element
layer
transparent substrate
index layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014202010A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6338503B2 (ja
Inventor
達矢 吉弘
Tatsuya Yoshihiro
達矢 吉弘
慎一郎 園田
Shinichiro Sonoda
慎一郎 園田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2014202010A priority Critical patent/JP6338503B2/ja
Publication of JP2016071230A publication Critical patent/JP2016071230A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6338503B2 publication Critical patent/JP6338503B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】良好な反射防止性能を維持し、散乱光の発生を抑制した光学素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材2と、反射防止膜3とを有する光学素子1であって、反射防止膜3が、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層を有し、凹凸層の空間周波数のピーク値が、9μm-1よりも大きい、光学素子。透明基材2と凹凸層4との間に、さらに中間層5を備え、中間層5が、透明基材2の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層と、透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層とを、透明基材側からこの順に有する光学素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学素子および光学素子の製造方法に関する。
従来、ガラス、プラスチックなどの透光性部材を用いたレンズ(透明基材)においては、表面反射による透過光の損失を低減するために光入射面に反射防止構造体(反射防止膜)が設けられている。
例えば、特許文献1には、「透明基材の表面に、透明薄膜層、アルミナの水和物を主成分とする透明な微細凹凸層をこの順に備えてなる反射防止膜を備えた光学部材であって、前記透明薄膜層が、前記透明基材の屈折率と、前記微細凹凸層の屈折率との間の屈折率を有するものであり、前記透明薄膜層が、少なくとも窒化物層または酸窒化物層を含むことを特徴とする光学部材。」が記載されている([請求項1])。
また、特許文献2には、「透明基材の表面に、透明薄膜層、アルミナの水和物を主成分とする透明な微細凹凸層をこの順に備えてなる反射防止膜を備えた光学部材であって、前記透明薄膜層が、前記基材側からアルミナ層と、該アルミナ層よりも低い屈折率を有し、かつ該アルミナ層に対する水をバリアする水バリア層と、該水バリア層よりも低い屈折率を有し、アルミナの水和物を主成分とする平坦層とを順に備えてなり、前記水バリア層の厚みが70nm以下であることを特徴とする光学部材。」が記載されている([請求項1])。
更に、特許文献3には、「透明な基体と、アルミニウムを含有するターゲットを使用し窒素を含有するガス中でスパッタリングを行うことにより前記基体上に成膜されアルミニウムの一部が窒化された窒素含有アルミニウム膜を水中で加熱することにより前記基体上に形成された透明膜と、を備えたことを特徴とする光学部材。」が記載されており([請求項5])、窒素含有アルミニウム膜の厚みとして0.1〜1.0μmが記載されており、窒素含有アルミニウム膜が不透明な黒色の膜となっていることが記載されている([0020])。
特開2014−081522号公報 特開2014−098885号公報 特開2007−156017号公報
本発明者らは、特許文献1および2に記載された光学部材について検討したところ、反射防止性能は良好であったが、微細凹凸層を構成するアルミナ水和物の種類によっては、わずかに散乱光が発生し、光学部材の品位に影響を与える可能性があることを明らかとした。
また、本発明者らは、特許文献3に記載された光学部材について検討したところ、加熱処理前の窒素含有アルミニウム膜の厚みによっては、反射防止性能が劣るだけでなく、散乱光が発生し、光学部材の品位が劣る場合があることを明らかとした。
そこで、本発明は、良好な反射防止性能を維持し、散乱光の発生を抑制した光学素子およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、空間周波数のピーク値(以下、「空間周波数ピーク」ともいう。)が特定の値を示す凹凸層を、反射防止膜として用いることにより、良好な反射防止性能を維持し、散乱光の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 透明基材と、反射防止膜とを有する光学素子であって、
反射防止膜が、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層を有し、
凹凸層の空間周波数のピーク値が、9μm-1よりも大きい、光学素子。
[2] 凹凸層が、アルミニウムの窒化物に温水処理を施して得られるアルミナの水和物を主成分とする、[1]に記載の光学素子。
[3] アルミニウムの窒化物が、透明である、[2]に記載の光学素子。
[4] 反射防止膜が、透明基材と凹凸層との間に、さらに中間層を備え、
中間層が、透明基材の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層と、透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層とを、透明基材側からこの順に有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学素子。
[5] 反射防止膜が、透明基材と凹凸層との間に、さらに中間層を備え、
中間層が、透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層と、透明基材の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを、透明基材側からこの順に有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学素子。
[6] 低屈折率層がシリコン酸窒化物を含有し、高屈折率層がニオブ酸化物を含有する、[4]または[5]に記載の光学素子。
[7] 低屈折率層がシリコン酸化物を含有し、高屈折率層がシリコンニオブ酸化物を含有する、[4]または[5]に記載の光学素子。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の光学素子を作製する光学素子の製造方法であって、
透明基材上に、厚みが100nm未満の窒素を含有するアルミニウム膜を形成する膜形成工程と、
アルミニウム膜に温水処理を施し、アルミナの水和物を主成分とする凹凸層を形成する温水処理工程と有する、光学素子の製造方法。
[9] 温水処理工程が、アルミニウム膜に、電気抵抗率が10MΩ・cm以上の純水を原料に含む処理液中で温水処理を施す工程である、[8]に記載の光学素子の製造方法。
本発明によれば、良好な反射防止性能を維持し、散乱光の発生を抑制した光学素子およびその製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の光学素子の実施態様の一例を示す模式的な断面図である。 図2は、散乱光測定方法を説明するための模式図である。 図3は、実施例および比較例で作製した光学素子における凹凸層表面を走査型電子顕微鏡で撮影した画像と空間周波数スペクトルとを示す図である。 図4は、空間周波数ピークと散乱光量との関係を示す図である。 図5は、実施例1で作製した光学素子の反射率の波長依存性を示す図である。 図6は、実施例2で作製した光学素子の反射率の波長依存性を示す図である。 図7は、実施例3で作製した光学素子の反射率の波長依存性を示す図である。 図8は、実施例4で作製した光学素子の反射率の波長依存性を示す図である。 図9は、実施例1および2で作製した、温水処理前のアルミニウムの窒化物の透過率を示す図である。 図10は、実施例1および実施例2で作製した光学素子ならびにガラス基板の拡散反射率の波長依存性を示す図である。 図11は、拡散反射率の測定方法を説明するための模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[光学素子]
本発明の光学素子は、透明基材と、反射防止膜とを有する光学素子であって、反射防止膜が、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層を有し、凹凸層の空間周波数のピーク値が、9μm-1よりも大きい、光学素子である。
本発明の光学素子は、上述した通り、空間周波数のピーク値が特定の値を示す凹凸層を反射防止膜として用いることにより、良好な反射防止性能が維持され、散乱光の発生を抑制することができる。
このような効果(特に、散乱光の発生を抑制する効果)が得られる理由は、詳細には明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
まず、本発明者らは、従来公知の光学部材において散乱光が発生する原因に関して、凹凸層に入射光の波長程度のサイズの長周期の揺らぎが存在すると、光の散乱に影響を与えることになるとの推察に基づき鋭意検討した結果、散乱光強度と凹凸層の空間周波数のピーク値との間に相関があることを新たに知見している。
そして、本発明者らは、空間周波数のピーク値が高周波数側にあるほど散乱光強度が小さくなることを見出している。
そのため、空間周波数のピーク値が9μm-1よりも大きいことにより、可視光の回折および散乱に寄与する空間周波数成分が相対的に減少したことにより、散乱光の発生が抑制されたと考えられる。
以下に、本発明の光学素子の全体の構成(概要)について図1を用いて説明した後に、各構成の材料等について詳述する。
図1は、本発明の光学素子の実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
図1に示す通り、本発明の光学素子1は、透明基材2と、反射防止膜3とを有する。
また、反射防止膜3は、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層4を有しており、図1に示す通り、透明基材2と凹凸層4との間に、さらに中間層5を有しているのが好ましい。
〔透明基材〕
本発明の光学素子が有する透明基材は特に限定されず、例えば、平板レンズ、凹レンズ、凸レンズなど主として光学装置において用いられる透明の光学部材が挙げられる。
また、透明基材の形状は特に限定されず、例えば、正または負の曲率を有する曲面と平面の組合せで構成された形状であってもよい。
また、透明基材の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
ここで、「透明」とは、350〜850nmの波長領域の光に対して透過率が10%以上であることをいい、後述する凹凸層やアルミニウムの窒化物についても同様である。
上記透明基材の屈折率は、1.65超1.74未満であるのが好ましい。
この屈折率を満たす材料としては、具体的には、例えば、S−NBH5(オハラ社製)、S−LAL18(オハラ社製)、MR−7(三井化学社製)、MR−174(三井化学社製)などの市販品のほか、一般的なランタンガラス、フリントガラス、チオウレタン系樹脂、エピスルフィト系樹脂等が挙げられる。
〔反射防止膜〕
本発明の光学素子が有する反射防止膜は、上述した通り、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層を有し、また、反射防止性能がより良好となる理由から、透明基材と凹凸層との間に中間層を有しているのが好ましい。
<凹凸層>
上記凹凸層は、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層であり、反射防止すべき光の波長よりも小さい平均凸部間距離(平均ピッチ)を有する凹凸構造を有する層をいう。なお、反射防止すべき光の波長が数百nm以下であるような場合、凹凸構造の平均凸部間距離もサブミクロンの大きさとなるため、凹凸構造は微細凹凸構造とも言うことができ、凹凸層は微細凹凸層とも言うことができる。
ここで、「主成分」とは、アルミナの水和物(ベーマイトとも呼ばれる酸化アルミニウム水和物)が凹凸層を構成する成分の80質量%以上であることをいう。
また、「凸部間距離」(ピッチ)とは、凹部を隔てた最隣接凸部の頂点同士の距離をいい、「平均凸部間距離」(平均ピッチ)とは、凹凸層の表面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で撮影した画像(以下、「SEM画像」と略す。)に画像処理を施して2値化し、統計的処理によって求めた値をいう。
なお、平均凸部間距離(平均ピッチ)は、数10nm〜数100nmオーダーであり、150nm以下であることが好ましく、100nm以下がより好ましい。
上記凹凸層の厚みは、50〜400nmであるのが好ましく、100〜300nmであるのがより好ましい。
ここで、「凹凸層の厚み」とは、凸部頂点から、凹凸層と中間層(中間層がない場合は透明基材)との界面までの垂線線の長さをいう。
なお、後述する本発明の光学素子の製造方法においては、温水処理を施す前のアルミニウム膜の厚みを100nm未満と規定しているが、後述する実施例にも示す通り、温水処理後に形成される凹凸層の厚みは、温水処理を施す前のアルミニウム膜の厚みよりも厚くなるものである。
上記凹凸層の空間周波数のピーク値は、9μm-1よりも大きければ特に限定されないが、10μm-1以上30μm-1以下であるのが好ましい。
ここで、「凹凸層の空間周波数のピーク値」とは、凹凸層表面のSEM画像を二次元フーリエ変換し、得られる二次元の空間周波数強度スペクトルを方位角方向に積算して算出される、空間周波数の大きさに対応する強度スペクトルのピーク値をいう。
本発明においては、上記凹凸層は、散乱光の発生をより抑制できる理由から、アルミニウムの窒化物(以下、「アルミ窒化物」とも略す。)に温水処理を施して得られるアルミナの水和物を主成分とするのが好ましく、反射防止性能がより良好となる理由から、透明なアルミ窒化物に温水処理を施して得られるアルミナの水和物を主成分とするのがより好ましい。
<中間層>
上記中間層は、上記透明基材と上記凹凸層との屈折率段差に由来する反射光を干渉により抑制することを目的とする層であり、本発明においては、透明基材の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層および透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層の少なくとも2層からなる中間層が好ましい。
中間層の具体的な態様としては、例えば、透明基材側から、低屈折率層および高屈折率層をこの順に有する態様;高屈折率層および低屈折率層をこの順に有する態様;低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層および高屈折率層をこの順に有する態様;高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層および低屈折率層をこの順に有する態様;低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層および高屈折率層をこの順に有する態様;高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層および低屈折率層をこの順に有する態様;等が挙げられる。
ここで、低屈折率層および高屈折率層の屈折率は、隣接する層と相対的に決まるため特に限定されないが、低屈折率層の屈折率は1.45〜1.8程度であるのが好ましく、高屈折率層の屈折率は1.6〜2.4程度であるのが好ましい。
また、低屈折率層および高屈折率層の厚みは、それぞれ、屈折率と反射光波長等との関係から適宜設定すればよいが、低屈折率層の厚みは8〜160nm程度であるのが好ましく、高屈折率層の厚みは4〜16nm程度であるのが好ましい。
低屈折率層の材料としては、具体的には、例えば、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、ガリウム酸化物、アルミ酸化物、ランタン酸化物、ランタンフッ化物、マグネシウムフッ化物などが挙げられる。
高屈折率層の材料としては、具体的には、例えば、ニオブ酸化物、シリコンニオブ酸化物、ジルコニウム酸化物、タンタル酸化物、シリコン窒化物、チタン酸化物などが挙げられる。
これらのうち、低屈折率層がシリコン酸窒化物を含有し、かつ、高屈折率層がニオブ酸化物を含有するのが好ましく、同様に、低屈折率層がシリコン酸化物を含有し、高屈折率層がシリコンニオブ酸化物を含有するのが好ましい。
このような低屈折率層および高屈折率層からなる中間層は、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタ、イオンプレーティングなどの気相成膜法により、各層を形成し、作製することができる。
[光学素子の製造方法]
本発明の光学素子の製造方法(以下、「本発明の製造法」とも略す。)は、上述した本発明の光学素子を作製する光学素子の製造方法であって、透明基材上に、厚みが100nm未満の窒素を含有するアルミニウム膜を形成する膜形成工程と、アルミニウム膜に温水処理を施し、アルミナの水和物を主成分とする凹凸層を形成する温水処理工程と有する、光学素子の製造方法である。
以下に、各処理工程における材料や条件について詳述する。なお、透明基材は、上述した本発明の光学素子における透明基材と同様である。
〔膜形成工程〕
上記膜形成工程は、透明基材上に、厚みが100nm未満の窒素を含有するアルミニウム膜を形成する膜形成工程である。
ここで、アルミニウム膜は、アルミニウムまたはアルミニウムの合金もしくは化合物を主成分とする窒素を含有する金属膜であれば特に限定されないが、後述する温水処理により形成される凹凸層の空間周波数のピーク値がより高い値となり、その結果、得られる光学素子における散乱光の発生をより抑制できる理由から、アルミ窒化物を含有する膜であるのが好ましく、反射防止性能がより良好となる理由から、透明なアルミ窒化物を含有する膜であるのがより好ましい。
また、「主成分」とは、アルミニウムまたはアルミニウムの合金もしくは化合物がアルミニウム膜を構成する成分の80質量%以上であることをいう。
上記アルミニウム膜の厚みは、100nm未満であれば特に限定されないが、40〜80nmであるのが好ましい。
このようなアルミニウム膜の形成方法は特に限定されず、例えば、反応性スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどの気相成膜により形成することができる。
〔温水処理工程〕
温水処理工程は、アルミニウム膜に温水処理を施し、アルミナの水和物を主成分とする凹凸層を形成する工程である。
ここで、温水処理は特に限定されず、例えば、(1)60℃以上沸騰温度以下の温水(沸騰水も含む)に1分以上浸漬する方法(以下、「A方法」という。)、(2)60℃以上沸騰温度以下のアルカリ水溶液に1分以上浸漬する方法(以下、「B方法」という。)、(3)水蒸気にさらす方法、などが挙げられる。
このような温水処理を施すことにより、透明基材上に形成したアルミニウム膜が解膠作用等を受け、アルミナの水和物に転化され、凹凸層が形成される。
本発明においては、上記温水処理が、上述したA方法またはB方法であるのが好ましく、温水ないしアルカリ水溶液の原料に用いる水として、電気抵抗率が10MΩ・cm以上の純水を用いるのがより好ましい。
なお、電気抵抗率は、水温25℃における電気抵抗率とする。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔実施例1〕
ガラス(硝材)からなる透明基材(S−NBH5、屈折率:1.659、オハラ社製)上に、低屈折率層としてシリコン酸窒化物(屈折率1.515)を用い、かつ、高屈折率層としてニオブ酸化物(屈折率2.330)を用いた下記表1に示す中間層を積層した。なお、各実施例における屈折率の値は、いずれも、波長540nmの光に対する屈折率を表す。
次いで、中間層上に、アルミニウム膜としてアルミ窒化物(AlN)を厚み40nmとなるように形成した。
その後、温水に浸漬させることにより、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層を形成された光学素子が得られた。なお、温水に浸漬させる前、すなわち、温水処理を施す前のアルミニウム膜(AlN)について、分光光度計U−4000(日立)を用いて12°入射時の透過率を測定したところ、図9に示す通り、350〜850nmにわたって70%以上の透過率を示した。
ここで、シリコン酸窒化物、ニオブ酸化物およびアルミ窒化物は、いずれも反応性スパッタリングにより成膜した。また、温水処理としては、100℃に加熱した温水に3分浸漬させて行い、温水処理液としては、電気抵抗率12MΩ・cmの超純水を用いた。
〔実施例2〕
ガラス(硝材)からなる透明基材(S−LAH55V、屈折率:1.840、オハラ社製)上に、低屈折率層としてシリコン酸化物(屈折率1.460)を用い、かつ、高屈折率層としてシリコンニオブ酸化物(屈折率2.197)を用いた下記表2に示す中間層を積層し、アルミ窒化物(AlN)の厚みを80nmとした以外は、実施例1と同様の方法により、光学素子を作製した。
なお、実施例1と同様、温水処理を施す前のアルミニウム膜(AlN)について、分光光度計U−4000(日立)を用いて12°入射時の透過率を測定したところ、図9に示す通り、350〜850nmにわたって70%以上の透過率を示した。
〔実施例3〕
ガラス(硝材)からなる透明基材(S−FPM2、屈折率:1.598、オハラ社製)を用い、アルミ窒化物(AlN)の厚みを80nmとし、中間層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、光学素子を作製した。
〔実施例4〕
ガラス(硝材)からなる透明基材(S−NBH5、屈折率:1.659、オハラ社製)上に、低屈折率層としてシリコン酸窒化物(屈折率1.515)を用い、かつ、高屈折率層としてニオブ酸化物(屈折率2.330)を用いた下記表3に示す中間層を積層し、実施例1と同様の方法により、光学素子を作製した。
なお、実施例1と同様、温水処理を施す前のアルミニウム膜(AlN)について、分光光度計U−4000(日立)を用いて12°入射時の透過率を測定したところ、図9に示す実施例1と同様の透過率が得られた。
〔比較例1〕
アルミ窒化物(厚み:40nm)に代えて、Al23膜(厚み:65nm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、光学素子を作製した。
〔比較例2〕
アルミ窒化物(厚み:40nm)に代えて、Al膜(厚み:40nm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、光学素子を作製した。
作製した各光学素子について、以下に示す方法で、空間周波数ピーク、散乱光量、反射率および拡散反射率を測定した。
<空間周波数ピーク>
各光学素子の凹凸層側の表面を走査型電子顕微鏡S−4100(日立社製)で撮像した電子顕微鏡画像(倍率3万倍、加速電圧7.0kV)に、画像処理ソフトIgorを用いて二次元Fourier変換を施した。
次いで、得られた二次元の空間周波数強度スペクトルを方位角方向に積算し、空間周波数の大きさに対応するスペクトルの強度を算出した。
結果を下記表4に示す。また、実施例1(ピーク:14μm-1)、実施例2(ピーク:10μm-1)、比較例1(ピーク:5μm-1)および比較例2(ピーク:7μm-1)で作製し光学素子における凹凸層表面を走査型電子顕微鏡で撮影した画像と空間周波数スペクトルとを図3に示す。
<散乱光量>
各光学素子の凹凸層側の表面に対して、図2に示すように、Xeランプ光源11から射出された光を開口径3mmのアイリス12で絞り、f=100mmの集光レンズ13で試料Sに入射角45°で集光する。焦点距離f=85mm、F値4.0のレンズ(富士フイルム社製)を装着したデジタルスチルカメラFinepixS3 pro(富士フイルム社製)にてISO感度200、シャッタースピード1/2secで試料表面を撮影した。128×128ピクセルの集光領域のピクセル値の平均値を散乱光量とした。
結果を下記表4に示す。また、実施例1(ピーク:14μm-1)、実施例2(ピーク:10μm-1)、比較例1(ピーク:5μm-1)および比較例2(ピーク:7μm-1)で作製し光学素子の空間周波数ピークと散乱光量との関係を図4に示す。
<反射率>
各光学素子の凹凸層側の表面の反射率を、反射分光膜厚計FE−3000(大塚電子社製、対物レンズ倍率20倍)を用いて測定した。なお、対物レンズの倍率20倍、測定波長は230〜800nmとした。
測定波長230〜800nmのうち、430〜660nmにおける反射率の平均値(平均反射率)を下記表4に示す。また、実施例1〜4で作製した光学素子の反射率の波長依存性を示すグラフをそれぞれ図5〜図8に示す。
<拡散反射率>
図11に示すように、各光学素子の凹凸層側の表面(試料)に対して、8°方向からコリメートした白色光を入射し、積分球の出力ポートからバンドルファイバによりマルチチャンネルアナライザC7473(浜松ホトニクス)により分光測定した。
ここで、正反射光を積分球の内壁でブロックしたときの値を拡散反射率および鏡面反射率の和とし、正反射光を積分球の外部に逃がしたときの値を拡散反射率として測定した。
本測定方法で得られた拡散反射率および鏡面反射率の和の測定値を、分光光度計U−4000を用いて測定したS−LAH55Vガラス基板(オハラ社)の反射率で校正することで試料の拡散反射率を測定した。
結果を下記表4に示す。また、実施例1および実施例2で作製した光学素子ならびにガラス基板の拡散反射率の波長依存性を示すグラフを図10に示す。
上述した結果、特に、表4および図3および図4に示す結果から、比較例1および2で作製した光学素子は、いずれも凹凸層の空間周波数のピーク値が9μm-1以下となり、散乱光の発生が十分に抑制できていないことが分かった。
これに対し、アルミナの水和物(ベーマイト)を主成分とする凹凸層の空間周波数のピーク値が9μm-1よりも大きい光学素子は、いずれも散乱光量が少なく、反射率および拡散反射率が低いため、良好な反射防止性能を維持し、散乱光の発生を抑制できることが分かった(実施例1〜4)。
1 光学素子
2 透明基材
3 反射防止膜
4 凹凸層
5 中間層
11 Xeランプ光源
12 アイリス
13 集光レンズ
15 デジタルスチルカメラ
S 試料

Claims (9)

  1. 透明基材と、反射防止膜とを有する光学素子であって、
    前記反射防止膜が、アルミナの水和物を主成分とする透明な凹凸層を有し、
    前記凹凸層の空間周波数のピーク値が、9μm-1よりも大きい、光学素子。
  2. 前記凹凸層が、アルミニウムの窒化物に温水処理を施して得られるアルミナの水和物を主成分とする、請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記アルミニウムの窒化物が、透明である、請求項2に記載の光学素子。
  4. 前記反射防止膜が、前記透明基材と前記凹凸層との間に、さらに中間層を備え、
    前記中間層が、前記透明基材の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層と、前記透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層とを、前記透明基材側からこの順に有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
  5. 前記反射防止膜が、前記透明基材と前記凹凸層との間に、さらに中間層を備え、
    前記中間層が、前記透明基材の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層と、前記透明基材の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層とを、前記透明基材側からこの順に有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子。
  6. 前記低屈折率層がシリコン酸窒化物を含有し、前記高屈折率層がニオブ酸化物を含有する、請求項4または5に記載の光学素子。
  7. 前記低屈折率層がシリコン酸化物を含有し、前記高屈折率層がシリコンニオブ酸化物を含有する、請求項4または5に記載の光学素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学素子を作製する光学素子の製造方法であって、
    透明基材上に、厚みが100nm未満の窒素を含有するアルミニウム膜を形成する膜形成工程と、
    前記アルミニウム膜に温水処理を施し、アルミナの水和物を主成分とする凹凸層を形成する温水処理工程と有する、光学素子の製造方法。
  9. 前記温水処理工程が、前記アルミニウム膜に、電気抵抗率が10MΩ・cm以上の純水を原料に含む処理液中で温水処理を施す工程である、請求項8に記載の光学素子の製造方法。
JP2014202010A 2014-09-30 2014-09-30 光学素子および光学素子の製造方法 Active JP6338503B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014202010A JP6338503B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 光学素子および光学素子の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014202010A JP6338503B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 光学素子および光学素子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016071230A true JP2016071230A (ja) 2016-05-09
JP6338503B2 JP6338503B2 (ja) 2018-06-06

Family

ID=55866893

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014202010A Active JP6338503B2 (ja) 2014-09-30 2014-09-30 光学素子および光学素子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6338503B2 (ja)

Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4190321A (en) * 1977-02-18 1980-02-26 Minnesota Mining And Manufacturing Company Microstructured transmission and reflectance modifying coating
JPH06272800A (ja) * 1993-03-17 1994-09-27 Mitsubishi Corp 超純水用装置
JPH08337441A (ja) * 1995-02-23 1996-12-24 Saint Gobain Vitrage 反射防止コーティングを有する透明基材
WO2006001138A1 (ja) * 2004-06-29 2006-01-05 Pioneer Corporation 薄膜形成用スパッタリングターゲット、誘電体薄膜、光ディスク及びその製造方法
JP2007156017A (ja) * 2005-12-02 2007-06-21 Nagaoka Univ Of Technology 透明膜、光学部材及び透明膜の製造方法
JP2010072046A (ja) * 2008-09-16 2010-04-02 Canon Inc 光学素子及びそれを有する光学装置
US20100259823A1 (en) * 2009-04-09 2010-10-14 General Electric Company Nanostructured anti-reflection coatings and associated methods and devices
JP2012132044A (ja) * 2010-12-20 2012-07-12 Central Glass Co Ltd 酸窒化ケイ素膜の形成方法
JP2012198330A (ja) * 2011-03-18 2012-10-18 Fujifilm Corp 光学部材及びその製造方法
JP2013185188A (ja) * 2012-03-07 2013-09-19 Fujifilm Corp マスターモールドの製造方法およびモールドの製造方法並びにそれらに使用される表面加工方法
JP2014122961A (ja) * 2012-12-20 2014-07-03 Canon Inc 反射防止膜を有する光学素子、光学系および光学機器

Patent Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4190321A (en) * 1977-02-18 1980-02-26 Minnesota Mining And Manufacturing Company Microstructured transmission and reflectance modifying coating
JPH06272800A (ja) * 1993-03-17 1994-09-27 Mitsubishi Corp 超純水用装置
JPH08337441A (ja) * 1995-02-23 1996-12-24 Saint Gobain Vitrage 反射防止コーティングを有する透明基材
WO2006001138A1 (ja) * 2004-06-29 2006-01-05 Pioneer Corporation 薄膜形成用スパッタリングターゲット、誘電体薄膜、光ディスク及びその製造方法
JP2007156017A (ja) * 2005-12-02 2007-06-21 Nagaoka Univ Of Technology 透明膜、光学部材及び透明膜の製造方法
JP2010072046A (ja) * 2008-09-16 2010-04-02 Canon Inc 光学素子及びそれを有する光学装置
US20100259823A1 (en) * 2009-04-09 2010-10-14 General Electric Company Nanostructured anti-reflection coatings and associated methods and devices
JP2012132044A (ja) * 2010-12-20 2012-07-12 Central Glass Co Ltd 酸窒化ケイ素膜の形成方法
JP2012198330A (ja) * 2011-03-18 2012-10-18 Fujifilm Corp 光学部材及びその製造方法
JP2013185188A (ja) * 2012-03-07 2013-09-19 Fujifilm Corp マスターモールドの製造方法およびモールドの製造方法並びにそれらに使用される表面加工方法
JP2014122961A (ja) * 2012-12-20 2014-07-03 Canon Inc 反射防止膜を有する光学素子、光学系および光学機器

Also Published As

Publication number Publication date
JP6338503B2 (ja) 2018-06-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2016031133A1 (ja) 反射防止膜を備えた光学部材およびその製造方法
JP6255531B2 (ja) 反射防止膜及びその製造方法
JP6445129B2 (ja) 反射防止膜および光学部材
TWI509292B (zh) 鏡片及具有該鏡片的鏡頭模組
JP6786248B2 (ja) 光学素子およびその製造方法
US10025006B2 (en) Method of manufacturing structure
JP6918208B2 (ja) 反射防止膜および光学部材
US20150103396A1 (en) Antireflective Structures for Optics
TWI557439B (zh) 紅外截止濾光片及鏡頭模組
US20170219819A1 (en) Optical element and method of manufacturing optical element
JP6923998B2 (ja) 光学部材およびその製造方法
JP6692342B2 (ja) 反射防止膜およびその製造方法、並びに光学部材
US20170001905A1 (en) Method for manufacturing antireflection function-equipped lens
JP6338503B2 (ja) 光学素子および光学素子の製造方法
CN112740081B (zh) 防反射膜、光学元件、防反射膜的制造方法及微细凹凸结构的形成方法
JP2005173029A (ja) 反射防止膜を有する光学素子及び反射防止膜の設計方法
JP6664299B2 (ja) 反射防止膜およびその製造方法、並びに光学部材
TWI407137B (zh) 具有抗反射單元的光學元件

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160804

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170426

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170509

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170620

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171003

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171129

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180417

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180508

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6338503

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250