JP2016056684A - エンジン制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コストアップを抑えつつ、異常燃焼を精度良く検出することができるようにする。【解決手段】本発明に係るエンジン制御装置(20)は、燃焼時に発生するイオンを検出するイオン検出装置(4)と、複数の燃焼サイクル間におけるエンジンの点火制御信号(4h)の立ち下がり時点から前記イオン検出装置によって出力されるイオン信号(4g)の立ち上がり時点までの時間(Δt)の変化に基づいて、エンジン内の燃焼状態が正常燃焼と異常燃焼との何れの状態であるかを判定する燃焼状態判定部を有する。【選択図】図7
Description
本発明は、エンジン制御装置に関する。
近年、自動車の燃費向上のためエンジンの熱効率を改善する試みがされている。その改善技術の1つが高圧縮比化である。圧縮比を高くすることで内燃機関の理論熱効率が向上する。一方で、エンジンのダウンサイジングも燃費向上策として開発が進んでいる。ダウンサイジングによりポンピングロスの低減、機械損失の低減が可能である。ただし、ダウンサイジングしたエンジンにおいて、トルク(出力)を維持するためには過給圧力を増大させる必要がある。
こうした高圧縮比、高過給のエンジンシステムでは、エンジン燃焼室の温度が上昇するため、プレイグニッションと呼ばれる異常燃焼が問題となる。プレイグニッションとは、点火プラグによる火花放電よりも前に混合気の着火が生じてしまう現象である。プレイグニッションが発生すると点火による燃焼制御が行えない状態となるため、筒内圧が急激に上昇してしまう恐れもあり、好ましくない。
また、プレイグニッションが発生する前には、その前兆となる現象が起こる場合がある。具体的には、点火プラグによる火花放電後であって正常燃焼よりも早く混合気の着火が生じるという現象(以下、この現象のことを本明細書において「プレイグニッション前兆燃焼」と言う)が起こる場合がある。したがって、本格的なプレイグニッションが発生する以前にプレイグニッションの前兆現象、即ちプレイグニッション前兆燃焼の発生を検知して、プレイグニッションを未然に回避することが重要である。
プレイグニッションやプレイグニッション前兆燃焼(何れも異常燃焼)を検知する方策として、イオン電流検出装置(イオン検出装置)センサを用いた手法が提案されている。イオン電流センサにより、燃焼時に発生するイオンを検出することで、各サイクルにおける燃焼時期を検知することが可能である。
実用的なイオン電流検出装置として、点火プラグをプローブとして利用するシステムが提案されている。このシステムにおいては、原理上、点火プラグの火花放電期間中にイオン電流を検出することができない。そのため、火花放電期間付近での燃焼を捉えることが出来ず、プレイグニッションもしくはプレイグニッション前兆燃焼の検知精度が低いという課題がある。
エンジンの燃焼状態を精度良く把握できるようにした技術として、例えば特許文献1が公知である。この特許文献1は、燃焼室内にイオン電流検出機能を備えた点火プラグを2つ設置し、その2つの点火プラグの火花放電時期をずらすことにより、一方のプラグだけでは検出不可能なイオン電流を、他方のプラグにより検出するという技術である。
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、イオン電流検出機能を備えた点火プラグを燃焼室に2つ備えることが必須であるため、エンジン燃焼室レイアウトの大規模な変更やコストアップが課題となる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コストアップを抑えつつ、異常燃焼を精度良く検出することができるエンジン制御装置を提供することにある。
本発明に係るエンジン制御装置は、点火プラグにより火花放電を行って混合気を着火させる火花点火式内燃機関の制御装置において、前記火花点火式内燃機関の複数の燃焼サイクル間における火花放電開始時点から火花放電終了時点までの時間の変化に基づいて、前記火花点火式内燃機関内の燃焼状態が正常燃焼とプレイグニッションの前兆現象であるプレイグニッション前兆燃焼との何れの状態であるかを判定する燃焼状態判定部を有する。
或いは、本発明に係るエンジン制御装置は、点火プラグにより火花放電を行って混合気を着火させる火花点火式内燃機関のエンジン制御装置において、前記火花点火式内燃機関の火花放電開始時点から火花放電終了時点までの時間と複数の燃焼サイクル間における前記時間の変化に基づいて、前記火花点火式内燃機関内の燃焼状態が正常燃焼と異常燃焼との何れの状態であるかを判定する燃焼状態判定部と、前記異常燃焼を回避するよう火花点火式内燃機関を制御する異常燃焼回避制御部と、前記異常燃焼の非発生運転条件にあることを判定する運転条件判定部を有し、前記運転条件判定部が前記非発生運転条件に該当すると判定した場合、前記回避制御を停止することを特徴とする。
或いは、本発明に係るエンジン制御装置は、複数の燃焼サイクル間における燃焼時に発生するイオンを検出するイオン検出装置(4)と、エンジンの点火制御信号の立ち下がり時点から前記イオン検出装置によって出力されるイオン信号の立ち上がり時点までの時間(Δt)の変化に基づいて、エンジン内の燃焼状態が正常燃焼と異常燃焼との何れの状態であるかを判定する燃焼状態判定部を有する。
本発明によれば、エンジンレイアウトの多規模な変更やコストアップなしで、異常燃焼の発生を未然に防止することが可能となる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態および実施例の説明により明らかにされる。
以下、本発明に係るエンジン制御装置の実施形態について、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン制御装置を適用した自動車用筒内噴射式ガソリンエンジンのシステム構成図である。本発明の実施形態に係るエンジン制御装置を含むエンジン制御システムは、少なくとも点火システム4とエンジンコントロールユニット(ECU)20とを備えて構成される。図1に示すように、エンジン100は、火花点火式燃焼を実施する自動車用の4気筒ガソリンエンジンである。吸入空気量を計測するエアフローセンサ1と、吸気管6内の圧力を調整する電子制御スロットル2と、吸入空気温度検出器の一態様であって吸入空気の温度を計測する吸気温度センサ15と、吸気管6内の圧力を計測する吸気圧センサ21と、が吸気側の適宜位置に備えられている。
また、エンジン100には、燃焼室12の中に燃料を噴射する燃料噴射装置(以下、インジェクタ)3と、点火エネルギを供給する点火システム4が気筒ごとに備えられている。ここで、点火システム4は燃焼時のイオン電流を検出するイオン電流検出回路(イオン検出装置)4−2を備えている(図2参照)。また、エンジンの冷却水の温度を計測する冷却水温度センサ14がシリンダヘッド7の適宜位置に備えられている。
また、筒内に流入する吸入ガスを調整する吸気バルブ可変装置5aと筒内から排出される排気ガスを調整する排気バルブ可変装置5bとから構成される可変バルブ5がシリンダヘッド7の適宜位置に備えられている。可変バルブ5を調整することにより、1番(#1)から4番(#4)まで全気筒の吸気量およびEGR(Exhaust Gas Recirculation)量の調整が可能である。また、燃料噴射装置3に高圧燃料を供給するための高圧燃料ポンプ17が燃料配管によって燃料噴射装置3と接続されている。燃料配管中には、燃料噴射圧力を計測するための燃料圧力センサ18が備えられている。
さらに、排気を浄化する三元触媒10と、空燃比検出器の一態様であって、三元触媒10の上流側にて排気の空燃比を検出する空燃比センサ9と、排気温度検出器の一態様であって、三元触媒10の上流側にて排気の温度を計測する排気温度センサ11とが排気管8の適宜位置に備えられる。また、図示しないクランク軸には、回転角度を算出するためのクランク角度センサ13が備えられている。
エアフローセンサ1、空燃比センサ9、冷却水温度センサ14、吸気温度センサ15、排気温度センサ11、クランク角センサ13、燃料圧力センサ18、吸気圧センサ21、点火システム(イオン信号検出回路)4、および可変動弁(位相角センサ)5のそれぞれから得られる信号は、制御装置としてのエンジンコントロールユニット(ECU)20に送られる。また、アクセル開度センサ16から得られる信号がECU20に送られる。
アクセル開度センサ16は、アクセルペダルの踏み込み量、すなわち、アクセル開度を検出する。ECU20は、アクセル開度センサ16の出力信号に基づいて、要求トルクを演算する。すなわち、アクセル開度センサ16は、エンジンへの要求トルクを検出する要求トルク検出センサとして用いられる。また、ECU20は、クランク角度センサ13の出力信号に基づいて、エンジンの回転速度を演算する。ECU20は、上記各種センサの出力から得られるエンジンの運転状態に基づき、空気流量、燃料噴射量、点火時期、燃料圧力等のエンジンの主要な作動量を最適に演算する。
ECU20で演算された燃料噴射量は開弁パルス信号に変換され、インジェクタ3に送られる。また、ECU20で演算された点火時期で点火されるように、点火信号4hが点火システム4に送られる。また、ECU20で演算されたスロットル開度は、スロットル駆動信号として電子制御スロットル2に送られる。また、ECU20で演算された可変バルブの作動量は、可変バルブ駆動信号として、可変バルブ5へ送られる。また、ECU20で演算された燃料圧力は、高圧燃料ポンプ駆動信号として、高圧燃料ポンプ17へ送られる。
吸気管6から吸気バルブ30を経て燃焼室12内に流入した空気に対し、燃料が噴射され、混合気が形成される。混合気は所定の点火時期で点火プラグ4から発生される火花により爆発し、その燃焼圧によりピストンを押し下げてエンジンの駆動力となる。更に、爆発後の排気ガスは排気バルブ31を経て排気管8を流れた後、三元触媒10に送りこまれ、排気成分は三元触媒10内で浄化され、外部へと排出される。
図2は、本発明の実施形態に係るエンジン制御システムを構成する点火システム4の詳細を示した図である。点火システム4は、火花点火部4−1とイオン電流検出回路(イオン検出装置)4−2とで構成される。ECU20からの点火制御信号4hが入力されるとイグナイタ4iを介して、一次点火コイル4cに電流が流れる。点火信号がOFFになり一次側の電流が止まると二次点火コイル4bに起電力が発生し、点火プラグ4aの先端に高電圧がかかることで火花放電が生じる。火花放電時は図2の矢印Iの方向に電流が流れる。二次点火コイル4bの電圧が減少し、ツェナーダイオード4eの降伏電圧(例えば100V)よりも低くなると、電流はキャパシタ4dに流れ込み、キャパシタ4dに電荷がチャージされる。
火花放電により点火プラグ間ギャップ(中心電極と接地電極との間のギャップ)に火炎核が生まれ、その後燃焼室12内に火炎が伝播していく。火炎帯には燃焼過程の中間生成物として、ケミカルイオンやサーマルイオンといったイオンが存在している。この時、点火プラグ4aには、火花放電時にチャージしたキャパシタ4dによって電圧(この場合は100V)がかかっており、その電圧により燃焼室内の陽イオン(および電子)を捕捉することによって回路内にイオン電流が流れる(図中のIIの方向)。このイオン電流は電圧変換用抵抗4fによって電圧変換された後、イオン信号4gとしてECU20に送られる。
次に、本発明の実施形態に係るエンジン制御システムにおけるプレイグニッションおよびプレイグニッション前兆燃焼の検出手法原理について、図3から図6を用いて説明する。図3は、図1に示すエンジンにおいて、時間の経過に伴う点火制御信号と熱発生率との関係についての代表例を示した図である。熱発生率に関しては、正常燃焼時、プレイグニッション前兆燃焼時、プレイグニッション時の各例を示している。なお、熱発生率の単位は、「ジュール/秒」である。
図3に示すように、時刻t1において、点火制御信号4hが立ち上がり、点火コイルにエネルギがチャージされる。時刻t2において点火制御信号4hが立ち下がり、二次点火コイルに高電圧が発生して火花放電が開始する。その後時刻t3まで火花放電が継続する。
(a)正常燃焼時においては、火花放電をトリガとして燃焼が発生するため、火花放電が終了した時刻t3以降、時刻tcombに燃焼が開始する。一方で、(c)プレイグニッション時においては、燃焼室内の高温化に起因する混合気の自己着火により燃焼が発生するため、火花放電が開始する時刻t2以前に燃焼が開始する。ここで(a)正常燃焼から(c)プレイグニッションへ移行する際に、その間に存在する(b)プレイグニッション前兆燃焼に着目する。このプレイグニッション前兆燃焼時においては、火花放電が開始する時刻t2以降に燃焼が開始する(つまり、火花放電をトリガとして燃焼が発生する)が、(a)正常燃焼と比較して燃焼開始時期が早く、火花放電終了時刻t3よりも前に燃焼が開始する場合がある。
図4は、図1に示すエンジンの試験を行い、その試験データに基づいて、時間の経過に伴う点火制御信号とイオン信号との関係を示した図である。イオン信号4gに関しては、図3の熱発生率と同様に、正常燃焼時、プレイグニッション前兆燃焼時、プレイグニッション時の各例を示している。なお、図4は、エンジン回転数が1000rpm、スロットル開度が全開、有効圧縮比が10.3の試験条件でエンジンの試験を行った結果を示している。
まず、(a)正常燃焼時の燃焼に伴い発生するイオン信号4gの特徴を説明する。イオン信号4gには3つの山が出る特徴がある。イオン信号4gの1つ目の山4g−1はイオン電流検出回路4−2(図2参照)が点火システム4に内蔵されている場合に見られる波形である。この1つ目の山4g−1は、時刻t1で点火制御信号4hが入力された際にイオン電流検出回路4−2に電流が流れ、イオン信号4gとして出力されたことにより形成されたものである。実際には燃焼室12内には燃焼火炎は存在しないタイミングなので、ECU20は、イオン信号の1つ目の山4g−1をノイズとして処理する。
イオン信号4gの2つ目の山4g−2は、時刻t2で点火制御信号4hが遮断され点火プラグ4aのギャップ間に火花が飛び、火花放電時間Δtを経過した後に見られる信号である。この2つ目の山4g−2は、燃焼初期火炎中のイオン成分と放電に伴うノイズ成分とが同時に検出されたことにより形成されたものである。ここで、ギャップ間に火花放電している間(火花放電期間:t2〜t2+Δt)は、イオン電流検出回路4−2によってイオン信号を検出できない。
イオン信号4gの3つ目の山4g−3は、燃焼火炎が燃焼室12全体に燃え広がる過程で検出される波形であり、燃焼室12内の圧力波形や熱発生波形ともよく一致するものである。この3つ目の山4g−3は、主燃焼部分の火炎中のイオン成分が検出されたことにより形成されたものである。
プレイグニッション発生時は、まず3つ目の山4g−3に変化が現れる。(a)正常燃焼から(b)プレイグニッション前兆燃焼、(c)プレイグニッションと移行する際の熱発生時期の早期化(図3参照)に伴って、3つ目の山4g−3の発生時期が早期化し、そのピーク値が大きくなっていく傾向が見られる。したがって、圧縮行程の所定の時刻t1(例えば90[deg.BTDC])から膨張行程の所定の時刻t4(例えば90[deg.ATDC])までイオン信号を積分(積算)した値S(図中の黒塗り部分の面積に相当)は、正常燃焼、プレイグニッション前兆燃焼、プレイグニッションの順に大きくなる傾向にある(Sa<Sb<Sc)。
これは、燃焼時期の早期化に伴いイオン信号の発生も早期化したことと、燃焼時期の早期化により燃焼室12内の温度が上昇したことでイオン(主にサーマルイオン)の発生が促進されイオン信号エネルギが増大したことに起因する。
また、もう一つの変化として、点火制御信号の立ち下がり時刻t2からイオン信号の立ち上り時刻t3(t3a,t3b,t3c)までの時間Δtが、正常燃焼、プレイグニッション前兆燃焼、プレイグニッションの順に短くなる傾向が見られる(Δta>Δtb>Δtc)。ここで、Δtは火花放電時間そのものを意味していることに着目する。プレイグニッション前兆燃焼時には、正常燃焼と比較して燃焼時期が早期化し、火花放電中に燃焼が開始するようになる。
火花放電中に燃焼が開始すると、点火プラグギャップ間の圧力および温度が急激に上昇するため、高い放電電圧が要求され、放電電圧が高くなる。したがって、火花点火時間が短縮される。同様にプレイグニッション時には、火花放電時には既に大半の混合気が燃焼しているため点火プラグギャップ間の圧力および温度が高く、結果として火花点火時間が短縮される。以上が、正常燃焼、プレイグニッション前兆燃焼、プレイグニッションの順にΔtが短くなるメカニズムである。
図5は、図1に示すエンジンの試験を上記した試験条件下(即ち、エンジン回転数が1000rpm、スロットル開度が全開、有効圧縮比が10.3)で行い、その試験データに基づいて、点火制御信号の立ち下がり時点からイオン信号立ち上がり時点までの時間Δtと燃焼開始時期との関係をプロットした図である。グラフの横軸は燃焼開始時期、つまりプレイグニッションの指標値であり、縦軸はΔtである。
Δtを見ると、正常燃焼からプレイグニッション前兆燃焼とプレイグニッション前兆燃焼からプレイグニッションへと移行するにつれて、短くなる傾向が有る。この傾向から、Δtに基づいて正常燃焼とプレイグニッション前兆燃焼とを区別することは容易(高感度)である。例えば、判定しきい値をΔtkに設定することで、プレイグニッション前兆燃焼と正常燃焼とを識別することが可能である。
以上のことから、本発明の実施形態に係るエンジン制御システムによれば、Δtが判定しきい値Δtkより長い場合には正常燃焼を識別でき、Δtが判定しきい値Δtkより短い場合には異常燃焼を識別できる。また、プレイグニッションが発生する前にその前兆現象としてプレイグニッション前兆燃焼が発生することが通常の異常燃焼のメカニズムであることから考えると、Δtが判定しきい値Δtkより短い場合には、異常燃焼がプレイグニッション前兆燃焼であることを推定することも可能である。
図6は、図5における、点火制御信号の立ち下がり時点からイオン信号立ち上がり時点までの時間Δtと燃焼開始時期の関係と予想される変動の傾向を表したものである。
Δtは主に筒内ガス温度に伴って変化するため、同じ燃焼開始時期であっても、筒内残留ガスや燃料混合などのサイクルばらつきの影響を受ける。これにより、高感度な傾向を示す領域においては、ばらつきが生じ、正常燃焼とプレイグニッション予兆燃焼の閾値を一意に決めることが困難である。
図7は、図1に示すエンジンの試験を上記した試験条件下(即ち、エンジン回転数が1000rpm、スロットル開度が全開、有効圧縮比が10.3)で行い、その試験データに基づいて、点火制御信号の立ち下がり時点からイオン信号立ち上がり時点までの時間Δtと燃焼サイクルとの関係をプロットした図である。グラフの横軸は燃焼サイクルで、正常燃焼からプレイグニッションへ遷移する過程を示しており、縦軸はΔtである。
図7によると、プレイグニッション前兆燃焼からプレイグニッションへ至る過程については、Δtの感度が大きいため、プレイグニッションの識別は可能である。しかし、実用上、必要とされる検知対象は、プレイグニッション前兆燃焼の開始時期である。
しかし、正常燃焼からプレイグニッション前兆燃焼へ至る過程においては、図6で述べたばらつき要因により、Δtの感度が小さくなっており、正常燃焼とプレイグニッション前兆燃焼を区別することができず、要検知燃焼サイクルを検出するための閾値ΔtKを定めることもできない。
一方、図5と図6によると、プレイグニッションの燃焼サイクルと比べて、正常燃焼とプレイグニッション前兆燃焼におけるΔtは燃焼開始時期に対してより高い感度がある。このため、燃焼ばらつきよるΔtの変動も大きくなる。さらにこの感度は正常燃焼よりもプレイグニッション前兆燃焼の方が高い傾向にある。このため、正常燃焼からプレイグニッション前兆燃焼へ至るまでの遷移においては、Δtとその前サイクルのΔtとの変化ΔΔtより感度が得られることとなる。
図8は、図7におけるΔtを、Δtとその前サイクルのΔtとの変化ΔΔtへ置き換えたもので、グラフの縦軸はΔΔtで、横軸は燃焼サイクルである。図8によれば、正常燃焼におけるΔΔtと、プレイグニッション前兆燃焼におけるΔΔtとでは明確な変化が生じており、感度が向上していることが分かる。これに伴い、ΔΔtの閾値ΔΔtKを定めることで要検出燃焼サイクルの検出精度を向上できる。
図9は、本発明の実施形態に係るエンジン制御システムの電気的構成を示すブロック図である。エアフローセンサ1、イオン信号4g、空燃比センサ9、排気温度センサ11、クランク角センサ13、冷却水温度センサ14、吸気温度センサ15、アクセル開度センサ16、燃料圧力センサ18、吸気圧センサ21の出力信号は、ECU20の入力回路20aに入力する。但し、入力信号はこれらだけに限られない。入力された各センサの入力信号は入出力ポート20b内の入力ポートに送られる。入力ポート20bに送られた値は、RAM20cに保管され、CPU20eで演算処理される。演算処理内容を記述した制御プログラムは、ROM20dに予め書き込まれている。
制御プログラムに従って演算された各アクチュエータの作動量を示す値は、RAM20cに保管された後、入出力ポート20b内の出力ポートに送られ、各駆動回路を経て各アクチュエータに送られる。本実施形態の場合は、駆動回路として、電子スロットル駆動回路20f、インジェクタ駆動回路20g、点火出力回路20h、可変バルブ駆動回路20j、高圧燃料ポンプ駆動回路20kがある。各回路は、それぞれ、電子制御スロットル2、インジェクタ3、点火システム4、可変バルブ5、高圧燃料ポンプ17を制御する。本実施形態においては、ECU20内に上記駆動回路を備えた装置であるが、これに限るものではなく、上記駆動回路のいずれかをECU20内に備えるものであってもよい。
ECU20は、入力信号に基づいて異常燃焼(プレイグニッションまたはプレイグニッション前兆燃焼)を判定し,異常燃焼であると判定された場合に、点火時期、インジェクタ(燃料噴射量)、可変バルブ、スロットル開度を制御する。
続いて、上記の実施形態に係るエンジン制御システムを用いて行うエンジン制御の代表的な実施例について説明する。
実施例1は、点火制御信号の立ち下がり時点からイオン信号立ち上がり時点までの時間Δtに基づいてプレイグニッション前兆燃焼を判定し、その判定に基づいてプレイグニッション前兆燃焼を回避するようエンジンを制御する構成を例示している。以下、実施例1について、図10〜図13を用いて詳しく説明する。
図10は、実施例1におけるプレイグニッション前兆燃焼判定および回避制御ロジックの概要を示す図である。ECU20は、プレイグニッション前兆燃焼が生じない運転条件であるか否かを判定する、運転状態判定部101と、プレイグニッション前兆燃焼判定およびプレイグニッション前兆燃焼の回避制御を行うために、プレイグニッション前兆燃焼判定部(燃焼状態判定部)102、プレイグニッション前兆燃焼回避制御部(異常燃焼回避制御部)103を備えている。クランク角センサ13とアクセル開度センサ16と水温センサと吸気温センサは運転状態判定部101へ入力され、運転状態によりプレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態か否かを判定し、その結果をプレイグニッション前兆燃焼判定部102へ出力する。
プレイグニッション前兆燃焼判定部102には、運転状態判定部101により演算された判定結果の他、クランク角センサ13、アクセル開度センサ16の出力信号が入力される。運転状態判定部101により演算された判定結果が、プレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態である場合、プレイグニッション前兆燃焼が発生していないと判定し、その結果をプレイグニッション前兆燃焼回避制御部103へ出力する。
運転状態判定部101により演算された判定結果が、プレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態でない場合、クランク角センサ13の出力信号から演算したエンジン回転数Neと、アクセル開度センサ16の出力信号から推定したエンジントルクT(負荷)に基づいて、プレイグニッション前兆燃焼の判定しきい値ΔΔtkが演算される。さらに、イオン信号4gと点火制御信号20hはプレイグニッション前兆燃焼判定部102に入力され、図4で示したように、点火制御信号立ち下がり時点からイオン信号立ち上がり時点までの時間Δtの演算が実行される。更に前サイクルとの差分からΔΔtの演算が実行される。
そして、現在のΔΔtと判定しきい値ΔΔtkを比較することでプレイグニッション前兆燃焼が発生しているか否かを判定し、その結果をプレイグニッション前兆燃焼回避制御部103へ出力する。ここではアクセル開度センサ13の出力からエンジントルクを推定したが、それに限らず、スロットル開度2や吸気圧力センサ21の出力等に基づいてエンジントルクを推定してもよい。また、ここでは演算されたエンジン回転数とエンジントルク双方を用いて判定しきい値Δtkを演算したが、エンジン回転数とエンジントルクのうちどちらか一方を用いて判定しきい値を演算してもよい。
プレイグニッション前兆燃焼回避制御部103には、プレイグニッション前兆燃焼の判定結果が入力され、プレイグニッション前兆燃焼が発生していれば,プレイグニッション前兆燃焼回避のために、作動対象毎の補正係数を修正する。また、プレイグニッション前兆燃焼が発生していなければ、現在の設定を継続する。
図11は、実施例1におけるプレイグニッション前兆燃焼判定および回避制御の手順を示すフローチャートである。図11に示す制御手順は、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS911において、ECU20は、運転状態信号を読み込む。ここで、運転状態信号は、プレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態であるか否かを判定するためのものであり、例えば、クランク角度信号やアクセル開度、水温、吸気温などがある。次にステップ912にて、予め用意した、判定マップと運転状態を照合し、プレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態であるか否かを判定する。判定マップの例を図13へ示す。この判定マップは、横軸をクランク角度センサから演算したエンジン回転数、縦軸をアクセル開度から演算したエンジントルクとし、冷却水温度または吸気温度毎の判定閾値を示している。この判定マップより得られた判定結果が、プレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態である場合、プレイグニッション前兆燃焼回避制御対象の補正係数を全て初期化した上で、プレイグニッション前兆燃焼判定部とプレイグニッション前兆燃焼回避制御部の処理を終了する。
プレイグニッション前兆燃焼判定前に運転状態判定を行うことで、演算処理を低減できる。さらに、プレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転条件においてのみ、プレイグニッション前兆燃焼回避制御対象の補正係数を全て初期化することで、プレイグニッション前兆燃焼ではないと判定した場合でも、プレイグニッション前兆燃焼回避制御は停止されないため、再びプレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転条件ではない状態へ移るまではプレイグニッション前兆燃焼を生じることを防げる。結果として、ハンチング動作の防止となる。一方、判定結果が、プレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態ではない場合、ステップ901へ進む。ここまでの処理は運転状態判定部101により実行される。
ステップS901において、ECU20は、イオン信号4gを読み込む。次に、ステップS902において、イオン信号の立ち上がり時点(図4におけるt3)を検出する。具体的には、点火時期後に初めてイオン信号が所定値を超える時刻を検出する。所定値は予めROM20dに記憶されている。次に、ステップS903に進み、点火制御信号立ち下がり時点t2からイオン信号の立ち上がり時点t3までの時間Δtを演算する。さらに、前回の演算結果Δtとの差分からΔΔtを演算する。
次に、ステップS904に進み、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTを演算する。エンジン回転数Neはクランク角センサ13の出力から演算される。エンジントルクTはアクセル開度センサ16の出力から推定される。次に、ステップS905にて、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTから、判定しきい値ΔΔtkを演算する。判定しきい値ΔΔtkはエンジン回転数NeとエンジントルクTを軸としたマップとして予めROM20dに記憶しておいてもよい。
また、ΔΔtは点火プラグや点火コイルの劣化状態などの経年変化に影響されるため、正常燃焼時のΔΔtを用いて判定しきい値ΔΔtkを補正する学習制御を実施するとさらによい。ここで、正常燃焼時であるか否かの判断は、例えば、エンジンの吸気温度またはエンジンの冷却水温度に基づいて行うことができる。具体的には、エンジンの吸気温度が所定温度以下である場合、あるいはエンジンの冷却水温度が所定温度以下の場合には、正常燃焼であると判断する。また、エンジンの吸気湿度が所定の湿度以下である場合に、正常燃焼であると判断しても良い。
次に、ステップS906にて、イオン信号処理部101により演算されたΔΔtと判定しきい値ΔΔtkの値を比較する。ΔΔt>ΔΔtkである場合には、プレイグニッション前兆燃焼が生じていない(つまり正常燃焼である)と判定して、一連の制御を終了する。ΔΔt<ΔΔtkである場合には、プレイグニッション前兆燃焼が生じていると判定してステップS907に進む。ここまでの処理はプレイグニッション前兆燃焼判定部102により実行される。
次に、ステップS907において、プレイグニッション前兆燃焼を回避するべく、ΔΔt判定閾値との乖離(ΔΔtk−ΔΔt)を基に作動対象毎の補正係数を演算し、補正値に従って作動対象を動作させて、一連の制御を終了する。この処理はプレイグニッション前兆燃焼回避制御部103により実行される。ここでの補正係数は判定閾値の乖離値に伴って増減し、演算結果が補正係数の設定範囲を超える場合は、作動対象を追加する。ここで作動対象は点火時期のほか、燃料噴射量や、スロットル弁開度、吸気弁の開閉タイミング、目標のエンジン冷却水温度、などがある。例えば、プレイグニッション前兆燃焼回避制御として、点火時期を遅角することにより燃焼室内温度を低下させているが、あるいは、燃料噴射量を増量することにより混合気温度を下げてもよい。その他、エンジン冷却水温度の設定目標値を下げることにより、エジエターファンの稼動を増加させたり、電子制御式サーモスタットの弁開度を増加させてもよい。
点火時期を遅角すると、トルクは下がる(パワーが下がる)ものの、排気に影響を及ぼすことはないという利点がある。一方、燃焼噴射量を増加すると排気への影響は懸念されるものの、トルクは下がらない(パワーは下がらない)という利点がある。また、それぞれを併用してもよい。
図12は、実施例1におけるプレイグニッション前兆燃焼判定および回避制御のタイムチャートを示している。図中上から、エンジン回転数、アクセル開度、水温または吸気温、運転状態判定フラグ、点火制御信号立ち下がり時点〜イオン信号立ち上がり時点までの時間の変化 ΔΔt、プレイグニッション、前兆燃焼判定フラグ、燃料噴射量補正量、点火時期補正量、吸気弁開度補正量、スロットル開度補正量、について、それぞれ時刻(サイクル)の経過に伴う変化を示している。エンジン回転数、アクセル開度、水温または吸気温、のチャートには、運転状態判定しきい値を記載している。ΔΔtのチャートには、プレイグニッション前兆燃焼の判定しきい値ΔΔtkを併記している。ここではアクセル開度α一定の高トルク条件下の定常運転を想定している。
時刻(サイクル)A以前は、エンジン回転数、アクセル開度、水温または吸気温、が閾値の範囲外にあり、運転状態フラグが0であるが、その後の変化に伴い、閾値範囲内になると運転状態フラグが立ち上がって1になる。
尚、運転状態判定部にて、プレイグニッション前兆燃焼が生じない運転条件であるか否かを判定する際、本実施例では、エンジン回転数、アクセル開度、水温または吸気温より判定しているが、この他、吸気湿度、点火時期、VTC、スロットル開度、吸入空気量に対する燃料噴射量の混合比、大気圧などを用いても良い。
運転状態フラグが1になると、プレイグニッション前兆燃焼判定部の処理が開始される。時刻(サイクル)B以前は、正常に燃焼しており、点火時期t2から一定の期間をおいて燃焼が開始している。その場合、ΔΔtは一定値を示している。時刻(サイクル)Bの時点で、エンジン壁温の上昇や吸気温の上昇等何らかの原因により燃焼室が高温化すると、時刻(サイクル)A以降にΔΔtが徐々に大きくなる。時刻(サイクル)Bの時点でΔΔtが判定しきい値ΔΔtkよりも大きくなると、プレイグニッション前兆燃焼であると判定され、プレイグニッション前兆燃焼の判定フラグF1が立ち上がる。プレイグニッション前兆燃焼の判定フラグF1が立ち上がると、共にΔΔtとΔΔtkの差に基いて、燃料噴射量の補正量が演算され、増量制御が実施される。それでもプレイグニッション前兆燃焼判定フラグが下がらない場合は、再びΔΔtΔΔtkの差に基づいて、燃料噴射量の補正量が演算され、追加の増量制御が実施される。この繰り返しの後、補正量が上限に達した場合、点火時期、吸気弁開度、スロットル開度、と作動数を増やしていく。仮に補正量と作動数が上限に達した場合、エンジン停止などの対処により、エンジンを保全することが望ましい。図12においては、時刻(サイクル)Cにおいて、ΔΔtが判定しきい値ΔΔtkよりも小さくなり、正常燃焼へ復帰した結果、プレイグニッション前兆燃焼判定フラグは0となる。しかし、この時点では運転状態判定フラグは1の状態であり、補正量は維持される。その後、エンジン回転数、アクセル開度、水温または吸気温、が変化して、時刻(サイクル)Dにおいて、閾値の範囲外になると、運転状態判定フラグが0となり、全ての補正量が初期化される。補正量の初期化については、フラグ変更と同時に行われる方法のほか、急激な変化を和らげるため、ΔΔtとΔΔtkの差に基づいて、徐々に補正量を減らす方法もある。また、補正量が初期化されると、プレイグニッション前兆燃焼となる懸念があるが、この時点ではプレイグニッション前兆燃焼が発生しない運転状態になるため、直ぐにプレイグニッション前兆燃焼を再発することがなく、ハンチング現象を防止できる。
以上説明したように、実施例1に記載した検知および制御方法によって、プレイグニッションの前兆現象であるプレイグニッション前兆燃焼を確実に検出し、その段階で回避制御を実施することで、運転性の悪化やエンジンへのダメージを発生させることなく、プレイグニッションを回避することが可能となる。この際、イオン電流検出回路4−2を備えた点火システム4を1つの燃焼室12に2つ以上設ける必要がないため、コストを抑えられるうえ、エンジン燃焼室のレイアウトを変更する必要もない。
実施例2は、実施例1のようにイオン電流検出回路を用いずに、点火コイルに流れる二次電流信号から火花放電時間Δtを検出してプレイグニッション前兆燃焼を判定し、その判定に基づいてプレイグニッション前兆燃焼を回避するようエンジンを制御する構成を例示している。以下、実施例2について、図14〜図19を用いて詳しく説明する。
図14は、本発明の実施形態に係るエンジン制御システムを構成する点火システム4の詳細を示した図である。点火システム4は、火花点火部4−1と二次電流検出回路4−3とで構成される。ECU20からの点火制御信号4hが入力されるとイグナイタ4iを介して、一次点火コイル4cに電流が流れる。点火信号がOFFになり一次側の電流が止まると二次点火コイル4bに起電力が発生し、点火プラグ4aの先端に高電圧がかかることで火花放電が生じる。火花放電時は図14の矢印Iの方向に電流(二次電流)が流れる。この二次電流は二次電流検出用抵抗4jによって電圧変換された後,二次電流信号4mとしてECU20に送られる。
図15は、図1に示すエンジンの試験を行い、その試験データに基づいて、時間の経過に伴う点火制御信号と二次電流信号との関係を示した図である。二次電流信号4mに関しては、図3の熱発生率と同様に、正常燃焼時、プレイグニッション前兆燃焼時、プレイグニッション時の各例を示している。なお、図15は、エンジン回転数が1000rpm、スロットル開度が全開、有効圧縮比が10.3の試験条件でエンジンの試験を行った結果を示している。
まず、(a)正常燃焼時の燃焼に伴い発生する二次電流信号4mの特徴を説明する。点火制御信号が立ち下がる時刻t2(火花放電開始時刻)に二次電流信号4mは急峻に立ち上がって最大値をとり,その後火花放電が発生する中で減少していく。時刻t3aになると二次電流信号は0となり,火花放電が終了したことを意味する。つまり,点火信号が立ち下がる時刻t2から二次電流信号が立ち下がる時刻t3aまでの時間(Δta)が火花放電時間である。
点火制御信号の立ち下がり時刻t2から二次電流信号の立ち下がり時刻t3(t3a,t3b,t3c)までの時間Δtは、正常燃焼、プレイグニッション前兆燃焼、プレイグニッションの順に短くなる傾向が見られる(Δta>Δtb>Δtc)。これは、前述の通り、プレイグニッション前兆燃焼やプレイグニッションでは、火花放電中の点火プラグギャップ間の圧力および温度が上昇し、火花点火時間が短縮したことに起因する。
図16は、本発明の実施形態に係るエンジン制御システムの電気的構成を示すブロック図である。エアフローセンサ1、二次電流信号4m、空燃比センサ9、排気温度センサ11、クランク角センサ13、冷却水温度センサ14、吸気温度センサ15、アクセル開度センサ16、燃料圧力センサ18、吸気圧センサ21の出力信号は、ECU20の入力回路20aに入力する。但し、入力信号はこれらだけに限られない。入力された各センサの入力信号は入出力ポート20b内の入力ポートに送られる。入力ポート20bに送られた値は、RAM20cに保管され、CPU20eで演算処理される。演算処理内容を記述した制御プログラムは、ROM20dに予め書き込まれている。
制御プログラムに従って演算された各アクチュエータの作動量を示す値は、RAM20cに保管された後、入出力ポート20b内の出力ポートに送られ、各駆動回路を経て各アクチュエータに送られる。本実施形態の場合は、駆動回路として、電子スロットル駆動回路20f、インジェクタ駆動回路20g、点火出力回路20h、可変バルブ駆動回路20j、高圧燃料ポンプ駆動回路20kがある。各回路は、それぞれ、電子制御スロットル2、インジェクタ3、点火システム4、可変バルブ5、高圧燃料ポンプ17を制御する。本実施形態においては、ECU20内に上記駆動回路を備えた装置であるが、これに限るものではなく、上記駆動回路のいずれかをECU20内に備えるものであってもよい。
ECU20は、入力信号に基づいて異常燃焼(プレイグニッションまたはプレイグニッション前兆燃焼)を判定し,異常燃焼であると判定された場合に、点火時期、インジェクタ(燃料噴射量)、可変バルブ、スロットル開度を制御する。
以下、図17から図19までについては、実施例1に対して、イオン信号が2次電流に置き換わった内容となる。
以上説明したように、実施例2に記載した検知および制御方法によって、プレイグニッションの前兆現象であるプレイグニッション前兆燃焼を確実に検出し、その段階で回避制御を実施することで、運転性の悪化やエンジンへのダメージを発生させることなく、プレイグニッションを回避することが可能となる。この際、従来の点火システムに二次電流検出回路(二次電流検出用抵抗)を追加するのみでプレイグニッション前兆燃焼の判定が可能であるため、大幅にコストを抑えられるうえ、エンジン燃焼室のレイアウトを変更する必要もない。
本実施例2では、点火制御信号立ち下がり時点から二次電流信号立ち下がり時点までの時間によって火花放電時間Δtを演算したが、或いは、二次電流信号立ち上がり時点から二次電流信号立ち下がり時点までの時間を火花放電時間Δtとしても,同様な結果が得られる。
また、本実施例3では、二次電流信号から火花放電時間Δtを演算したが、二次電圧など点火システムに関わる他のパラメータから火花放電時間Δtを演算しても、同様な結果が得られる。
なお、上述した実施形態および実施例1,2は、本発明の実施形態を説明するための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
4…点火システム
4−1…火花点火部
4−2…イオン電流検出回路(イオン検出装置)
4−3…二次電流検出回路(二次電流検出装置)
4g…イオン信号
4h…点火制御信号
4m…二次電流信号
20…ECU(制御装置)
100…エンジン
101…イオン信号処理部
102…プレイグニッション前兆燃焼判定部(燃焼状態判定部)
103…プレイグニッション前兆燃焼回避制御部(異常燃焼回避制御部)
202…プレイグニッション判定部(燃焼状態判定部)
203…プレイグニッション回避制御部(異常燃焼回避制御部)
301…二次電流信号処理部
Δtk…プレイグニッション前兆燃焼の判定しきい値(点火制御信号立ち下がり〜イオン信号立ち上がりまでの時間)
ΔΔtk…プレイグニッション前兆燃焼の判定しきい値(点火制御信号立ち下がり〜イオン信号立ち上がりまでの時間の前サイクルとの差分)
4−1…火花点火部
4−2…イオン電流検出回路(イオン検出装置)
4−3…二次電流検出回路(二次電流検出装置)
4g…イオン信号
4h…点火制御信号
4m…二次電流信号
20…ECU(制御装置)
100…エンジン
101…イオン信号処理部
102…プレイグニッション前兆燃焼判定部(燃焼状態判定部)
103…プレイグニッション前兆燃焼回避制御部(異常燃焼回避制御部)
202…プレイグニッション判定部(燃焼状態判定部)
203…プレイグニッション回避制御部(異常燃焼回避制御部)
301…二次電流信号処理部
Δtk…プレイグニッション前兆燃焼の判定しきい値(点火制御信号立ち下がり〜イオン信号立ち上がりまでの時間)
ΔΔtk…プレイグニッション前兆燃焼の判定しきい値(点火制御信号立ち下がり〜イオン信号立ち上がりまでの時間の前サイクルとの差分)
Claims (9)
- 点火プラグにより火花放電を行って混合気を着火させる火花点火式内燃機関のエンジン制御装置において、
前記火花点火式内燃機関の複数の燃焼サイクル間における火花放電開始時点から火花放電終了時点までの時間の変化に基づいて、前記火花点火式内燃機関内の燃焼状態が正常燃焼とプレイグニッションの前兆現象であるプレイグニッション前兆燃焼との何れの状態であるかを判定する燃焼状態判定部を有するエンジン制御装置。 - 請求項1記載のエンジン制御装置において、
前記燃焼状態判定部は、前記時間の変化量が閾値よりも大きい場合に、前記プレイグニッション前兆燃焼であると判定することを特徴とするエンジン制御装置。 - 請求項2記載のエンジン制御装置において、
前記閾値は、火花点火式内燃機関トルクおよび火花点火式内燃機関回転数のうち少なくとも一方に基づいて算出されることを特徴とするエンジン制御装置。 - 請求項1記載のエンジン制御装置において、
前記プレイグニッション前兆燃焼を回避するよう火花点火式内燃機関を制御するプレイグニッション回避制御部を有し、前記燃焼状態判定部によって前記プレイグニッション前兆燃焼であると判定された場合に、前記プレイグニッション回避制御部は、前記プレイグニッション前兆燃焼を回避するよう火花点火式内燃機関を制御することを特徴とするエンジン制御装置。 - 請求項4記載のエンジン制御装置において、
前記燃焼状態判定部によって前記異常燃焼が前記プレイグニッションであると判定された場合に、前記異常燃焼回避制御部は、火花点火式内燃機関のスロットル開度を減少させる、もしくは、火花点火式内燃機関の吸気弁の閉じる時期を遅角する、もしくは、エンジンの点火時期を遅角する、もしくは、エンジンに供給する燃料噴射量を増加する、もしくは、目標の冷却水温度を下げる、ことのうち少なくとも一方に基づいて前記プレイグニッションを回避する回避制御を行うことを特徴とするエンジン制御装置。 - 請求項1記載のエンジン制御装置において、
前記異常燃焼回避制御部が異常燃焼を回避するようエンジンを制御しても前記燃焼状態判定部が異常燃焼と判定する場合、請求項5記載の回避制御量を増やすことと、前記回避制御の作動回数を増やすことのうち少なくとも一方を行うことを特徴とするエンジン制御装置。 - 点火プラグにより火花放電を行って混合気を着火させる火花点火式内燃機関のエンジン制御装置において、
前記火花点火式内燃機関の火花放電開始時点から火花放電終了時点までの時間と複数の燃焼サイクル間における前記時間の変化に基づいて、前記火花点火式内燃機関内の燃焼状態が正常燃焼と異常燃焼との何れの状態であるかを判定する燃焼状態判定部と、前記異常燃焼を回避するよう火花点火式内燃機関を制御する異常燃焼回避制御部と、前記異常燃焼の非発生運転条件にあることを判定する運転条件判定部を有し、前記運転条件判定部が前記非発生運転条件に該当すると判定した場合、前記回避制御を停止することを特徴とするエンジン制御装置。 - 請求項7記載のエンジン制御装置において、
異常燃焼の非発生運転条件として、エンジン負荷とエンジン回転数とエンジン冷却水温とエンジン吸気温度とエンジン筒内圧と吸気湿度と点火時期とVTCとスロットル開度と吸入空気量に対する燃料噴射量の混合比と大気圧のうち少なくとも一方を有することを特徴とするエンジン制御装置。 - 燃焼時に発生するイオンを検出するイオン検出装置と、複数の燃焼サイクル間におけるエンジンの点火制御信号の立ち下がり時点から前記イオン検出装置によって出力されるイオン信号の立ち上がり時点までの時間の変化に基づいて、エンジン内の燃焼状態が正常燃焼と異常燃焼との何れの状態であるかを判定する燃焼状態判定部を有することを特徴とするエンジン制御装置。
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