<硬化性エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、溶解度パラメータ(Fedors法)が19.5〜21.5[MPa1/2]であるコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)(単に「コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)」と称する場合がある)と、硬化剤(C)と、硬化促進剤(D)とを必須成分として含み、硬化剤(C)として後述の式(X−1)で表される化合物及び式(X−2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を必須成分として含む組成物(硬化性組成物)である。
[脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(一分子中)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基(オキシラニル基)とを少なくとも有する化合物である。脂環式エポキシ化合物(A)としては、具体的には、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(ii)脂環に直接単結合で結合しているエポキシ基を有する化合物等が挙げられる。
上述の(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が好ましい。
上述の(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する化合物としては、硬化物の透明性、耐熱性の観点で、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましく、特に、下記式(I)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が好ましい。
上記式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。
上記式(I)中のXが単結合である化合物としては、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキサン等が挙げられる。
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
上記炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2〜4のアルケニレン基である。
上記連結基Xとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、−CO−、−O−CO−O−、−COO−、−O−、−CONH−、エポキシ化アルケニレン基;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と二価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基等が挙げられる。二価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
上記式(I)で表される化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−10)で表される化合物、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、1,2−エポキシ−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン等が挙げられる。なお、下記式(I−5)、(I−7)中のl、mは、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(I−5)中のRは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(I−9)、(I−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。
上述の(ii)脂環に直接単結合で結合しているエポキシ基を有する化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物等が挙げられる。
式(II)中、R’は、構造式上、p価のアルコールからp個の水酸基(−OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R’(OH)p]としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコール(炭素数1〜15のアルコール等)等が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよいし、異なっていてもよい。上記式(II)で表される化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において脂環式エポキシ化合物(A)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、脂環式エポキシ化合物(A)としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(以上、(株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。
脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(I−1)で表される化合物[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート;例えば、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)等]が特に好ましい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、10〜60重量%が好ましく、より好ましくは20〜55重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化性がより向上したり、硬化物の耐熱性や機械強度がより向上する傾向がある。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(全エポキシ化合物;100重量%)に対する脂環式エポキシ化合物(A)の割合は、特に限定されないが、60重量%以上(例えば、60〜100重量%)が好ましく、より好ましくは80重量%以上(例えば、80〜98重量%)、さらに好ましくは85重量%以上(例えば、85〜95重量%)である。脂環式エポキシ化合物(A)の割合を60重量%以上とすることにより、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化性がより向上したり、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、例えば、脂環式エポキシ化合物(A)の割合を98重量%以下とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性や耐湿性がより向上する傾向がある。
[コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、コアと、該コアを被覆する単層又は多層のシェル層(シェル)とからなるコアシェル構造を有し、上記コア及びシェル層がともにアクリルポリマー(アクリル系単量体を必須の単量体成分とする重合体)により構成されたポリマー粒子である。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、後述のように、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)を含有することにより、特に、室温で優れた取り扱い性を有し、耐湿性に優れた硬化物を形成できる。さらに、高温高湿下での通電特性に優れ、耐吸湿リフロー性に優れた光半導体装置を得ることができる。
なお、本明細書においては、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)のコアを構成するアクリルポリマーを「アクリルポリマー[C]」、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)のシェルを構成するアクリルポリマーを「アクリルポリマー[S]」と称する場合がある。コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)においては、特に限定されないが、アクリルポリマー[C]とアクリルポリマー[S]とが異なる組成を有することが好ましい。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)のFedors法により算出される25℃における溶解度パラメータ(δ)(「溶解度パラメータ(Fedors法)」と称する)は19.5〜21.5[MPa1/2]であり、好ましくは19.7〜21.3[MPa1/2]、さらに好ましくは20.0〜21.0[MPa1/2]である。コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の溶解度パラメータ(Fedors法)を19.5[MPa1/2]以上とすることにより、脂環式エポキシ化合物(A)との相溶性が向上し、硬化物や光半導体装置の耐熱性、耐吸湿リフロー性、耐熱衝撃性が向上する。一般に、低い溶解度パラメータに起因する単量体(例えば、長鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)はガラス転移温度を低下させる傾向があることから、このような単量体単位を多量に含む場合には特に硬化物の耐熱性、耐吸湿リフロー性、耐熱衝撃性が低下する傾向がある。一方、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の溶解度パラメータ(Fedors法)を21.5[MPa1/2]以下とすることにより、脂環式エポキシ化合物(A)との相溶性が向上し、硬化物や光半導体装置の耐吸湿リフロー性が向上する。一般に、高い溶解度パラメータに起因する単量体は親水性の官能基(例えば、カルボキシル基、ニトリル基)を有し、このような単量体単位を多量に含む場合には特に硬化物の耐吸湿リフロー性が低下する傾向がある。コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の溶解度パラメータ(Fedors法)は、アクリルポリマー[C]、アクリルポリマー[S]の溶解度パラメータ(Fedors法)をそれぞれ算出し、これらを加重平均することにより算出することができる。なお、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の溶解度パラメータ(Fedors法)は、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)を構成する単量体の組成によって制御される。
上記アクリルポリマー[C]のガラス転移温度は60〜120℃であり、好ましくは70〜110℃、より好ましくは80〜100℃である。アクリルポリマー[C]のガラス転移温度を60℃以上とすることにより、硬化物の耐熱性が向上する。一方、アクリルポリマー[C]のガラス転移温度を120℃以下とすることにより、例えば、高いガラス転移温度に寄与するモノマー成分(例えば、(メタ)アクリル酸等)の存在量が多くなり過ぎないために、光半導体装置の耐吸湿リフロー性が向上する。なお、アクリルポリマー[C]のガラス転移温度は、下記Foxの式により算出される計算値を意味する(Bull.Am.Phys.Soc.,1(3)123(1956)参照)。下記Foxの式中、Tgはアクリルポリマーのガラス転移温度(単位:K)を示し、Wiはアクリルポリマーを構成する単量体全量に対する単量体iの重量分率を示す。また、Tgiは単量体iの単独重合体のガラス転移温度(単位:K)を示す。下記Foxの式は、アクリルポリマーが単量体1、単量体2、・・・・、及び単量体nの共重合体である場合の式を示す。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wn/Tgn
上記単独重合体のガラス転移温度は、各種文献に記載の値を採用することができ、例えば、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons,Inc.発行)に記載の値を採用できる。なお、文献に記載のないものについては、単量体を常法により重合して得られる単独重合体のDSCにより測定されるガラス転移温度の値を採用することができる。
なお、アクリルポリマー[C]のガラス転移温度は、アクリルポリマー[C]を構成する単量体の組成によって制御される。
上記アクリルポリマー[S]のガラス転移温度は60〜120℃であり、好ましくは70〜115℃である。アクリルポリマー[S]のガラス転移温度を60℃以上とすることにより、硬化物の耐熱性が向上する。一方、アクリルポリマー[S]のガラス転移温度を120℃以下とすることにより、例えば、高いガラス転移温度に寄与するモノマー成分(例えば、(メタ)アクリル酸等)の存在量が多くなり過ぎないために光半導体装置の耐吸湿リフロー性が向上したり、硬化性エポキシ樹脂組成物の増粘等が生じにくく長期保存安定性が向上する。なお、アクリルポリマー[S]のガラス転移温度は、上記Foxの式により算出される値を意味し、アクリルポリマー[C]のガラス転移温度と同様に算出することができる。なお、アクリルポリマー[S]のガラス転移温度は、アクリルポリマー[S]を構成する単量体の組成によって制御される。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)における、アクリルポリマー[C]のガラス転移温度とアクリルポリマー[S]のガラス転移温度の差[アクリルポリマー[S]のガラス転移温度−アクリルポリマー[C]のガラス転移温度]は、特に限定されないが、−5〜60℃が好ましく、より好ましくは0〜55℃である。上記ガラス転移温度の差が上記範囲に制御されることにより、硬化時の硬化性エポキシ樹脂組成物の接着性が向上して硬化物の耐吸湿リフロー性が向上し、さらに、硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
上記アクリルポリマー[C]、アクリルポリマー[S]は、それぞれ、アクリル系単量体(アクリルモノマー)を必須の単量体成分として構成されたアクリルポリマーである。
上記アクリルポリマー[C]、アクリルポリマー[S]を構成するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸i−ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル等の脂肪族環(脂環)を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリル(アクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方)を意味する。
上記アクリルポリマー[C]、アクリルポリマー[S]を構成する単量体としては、アクリル系単量体以外の単量体を併用することもできる。上記アクリル系単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基を有する単量体;ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール等のビニル単量体;モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、モノプロピルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジプロピルイタコネート、ジブチルイタコネート等のイタコン酸エステル;モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノプロピルフマレート、モノブチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジプロピルフマレート、ジブチルフマレート等のフマル酸エステル;モノメチルマレエート、モノエチルマレエート、モノプロピルマレエート、モノブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジプロピルマレエート、ジブチルマレエート等のマレイン酸エステル等が挙げられる。
また、上記アクリルポリマー[C]、アクリルポリマー[S]を構成する単量体としては、2以上の重合性官能基(例えば、脂肪族炭素−炭素二重結合等)を有する多官能性単量体を使用することもできる。上記多官能性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
上記アクリルポリマー[C]を構成する単量体の全量(100重量%)に対するアクリル系単量体の割合は、特に限定されないが、70〜100重量%が好ましい。特に、上記アクリルポリマー[C]は、実質的にアクリル系単量体のみで構成された重合体(例えば、単量体の全量に対するアクリル系単量体の割合が98〜100重量%である重合体)であることが好ましい。上記アクリルポリマー[C]を構成する単量体としては、中でも、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくはメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルである。
上記アクリルポリマー[S]を構成する単量体の全量(100重量%)に対するアクリル系単量体の割合は、特に限定されないが、70〜100重量%が好ましい。特に、上記アクリルポリマー[S]は、実質的にアクリル系単量体のみで構成された重合体(例えば、単量体の全量に対するアクリル系単量体の割合が98〜100重量%である重合体)であることが好ましい。上記アクリルポリマー[S]を構成する単量体としては、中でも、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸である。
即ち、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、実質的にアクリル系単量体のみで構成された重合体(例えば、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)を構成する単量体の全量に対する、アクリル系単量体の割合が98〜100重量%である重合体)により形成されたコアシェル型アクリルポリマー粒子であることが好ましい。
上記アクリルポリマー[C]、アクリルポリマー[S]を構成する単量体として、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体を多量に使用すると、該単量体が高い極性を有するため、硬化物の耐吸湿リフロー性が低下する傾向があるため好ましくない。また、上記アクリルポリマー[C]、アクリルポリマー[S]を構成する単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体を多量に使用すると、硬化物が着色しやすくなるため好ましくない。従って、上記アクリルポリマー[C](又はアクリルポリマー[S])を構成する単量体の全量(100重量%)に対するシアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体の割合は、5重量%以下が好ましく、より好ましくは2重量%以下であり、実質的に含有しないこと(単量体成分として能動的には配合しないこと)が特に好ましい。
また、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、硬化物の着色や劣化を抑制する観点で、ブタジエンゴムを含有しないことが好ましい。また、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、相溶性やコストの観点で、シリコーンゴムを含有しないことが好ましい。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)におけるアクリルポリマー[C]とアクリルポリマー[S]の割合(重量比)[アクリルポリマー[C]/アクリルポリマー[S]]は、特に限定されないが、1/0.1〜1/200が好ましく、より好ましくは1/0.3〜1/120、さらに好ましくは1/0.4〜1/10である。アクリルポリマー[C]とアクリルポリマー[S]の割合を上記範囲内とすることにより、硬化物の被着体に対する接着力向上、硬化性エポキシ樹脂組成物の加熱による速やかな増粘の効果が得られやすく、その結果、硬化性エポキシ樹脂組成物の取り扱い性の向上、硬化物の耐吸湿リフロー性向上の効果をより効果的に享受できる傾向がある。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の特に好ましい具体的態様としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル)を必須の単量体成分とするガラス転移温度が60〜120℃のアクリルポリマー[C]をコアとし、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル(特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル)を必須の単量体成分とし、ガラス転移温度が60〜120℃であり、アクリルポリマー[C]とは異なる単量体組成のアクリルポリマー[S]をシェルとするコアシェル型アクリルポリマー粒子が挙げられる。上記アクリルポリマー[S]は、さらに、ヒドロキシ基を有する単量体(例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル)及び/又はカルボキシ基を有する単量体(例えば、(メタ)アクリル酸)を単量体成分として含むことが好ましい。なお、上記シェルは単層であってもよいし、多層であってもよい。上記アクリルポリマー[C]を構成する単量体成分の全量(100重量%)に対する炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの割合は、60重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。また、上記アクリルポリマー[S]を構成する単量体成分の全量(100重量%)に対する炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの割合は、60重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)におけるアルカリ金属イオン(例えば、Naイオン、Kイオン等)の含有量は、特に限定されないが、10ppm以下が好ましく、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。アルカリ金属イオンの含有量を10ppm以下とすることにより、硬化物の絶縁特性がより向上する傾向がある。上記アルカリ金属イオンの含有量は、例えば、ICP発光分析装置やイオンクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。なお、上記アルカリ金属イオンの含有量は、例えば、重合に用いる重合開始剤や乳化剤の選択により制御することができる。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の平均二次粒子径は、特に限定されないが、5〜50μmが好ましい。平均二次粒子径を5μm以上とすることにより、舞いにくくなって静電気を生じにくくなるため、取り扱いやすくなる傾向がある。一方、平均二次粒子径を50μm以下とすることにより、一次粒子に分散させるときの時間的負荷が軽減される傾向がある。上記平均二次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡を用いて測定することができる。なお、上記平均二次粒子径は、例えば、造粒の条件、乾燥条件(温度、風量)等により制御することができる。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の体積平均一次粒子径(Dv)は、特に限定されないが、200nm以上が好ましく、より好ましくは500nm以上である。また、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の体積平均一次粒子径は、8μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。体積平均一次粒子径を200nm以上とすることにより、分散性がより向上する傾向がある。一方、体積平均一次粒子径を8μm以下とすることにより、硬化物の透明性がより向上する傾向がある。上記体積平均一次粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、商品名「LA−910W」、(株)堀場製作所製等)を用いて測定することができる。なお、上記体積平均一次粒径は、例えば、単量体の乳化の際の条件等により制御することができる。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の単分散性(体積平均一次粒子径Dvと個数平均一次粒子径Dnの比[Dv/Dn])は、特に限定されないが、3.0以下が好ましく、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。Dv/Dnを3.0以下とすることにより、硬化物や光半導体装置の耐吸湿リフロー性や耐熱衝撃性がいっそう向上する傾向がある。上記Dv/Dnは、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、商品名「LA−910W」、(株)堀場製作所製等)を用いて測定することができる。なお、上記Dv/Dnは、例えば、単量体の乳化の際の条件等により制御することができる。
コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、公知乃至慣用のコアシェル型ポリマー粒子の製造方法を利用して製造することができる。コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、コアをシェルによって被覆することにより得ることができ、例えば、コアの表面にシェルを構成するアクリルポリマー[S]を塗布する方法や、上記コアを構成するアクリルポリマー[C]を幹成分としてシェルを構成するアクリルポリマー[S](枝成分)をグラフト重合する方法等が挙げられる。より具体的には、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、例えば、国際公開2010/090246に開示された方法に準じて製造することができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においてコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)としては、商品名「メタブレン KP−0917」、「メタブレン KP−0930」、「メタブレン KP−0950」(以上、三菱レイヨン(株)製)等の市販品を使用することもできる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の含有量(配合量)は、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して1〜30重量部であり、好ましくは3〜20重量部である。コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の含有量を1重量部以上とすることにより、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の添加効果を効果的に得られやすく、硬化物や光半導体装置の耐吸湿リフロー性及び耐熱衝撃性が向上する。一方、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の含有量を30重量部以下とすることにより、硬化性エポキシ樹脂組成物が適切な粘度を有し、また、増粘しにいため、取り扱いやすくなる。
脂環式エポキシ化合物(A)とコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)とを必須成分として含む本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、高い耐熱性、耐光性、及び耐熱衝撃性を有する硬化物を与え、特に、光半導体装置の耐吸湿リフロー性を向上させる効果を奏する。これらの効果(特に、耐吸湿リフロー性向上の効果)は、硬化性エポキシ樹脂組成物におけるコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)がコアシェル構造を有し、なおかつコアとシェルのガラス転移温度、溶解度パラメータが特定範囲に制御されていることにより、主に、硬化物の被着体(特に、光半導体装置における銀製電極等)に対する接着性が向上し、さらに、加熱により速やかに増粘(ゲル化)して完全に硬化する前に形状が保持(固定)されることによる効果であると推測される。コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)の代わりに、一般のアクリルポリマー(線状ポリマー等)を用いた場合には、上述の接着性向上や加熱による増粘の効果は得られない。例えば、加熱により著しく低粘度化する樹脂組成物は硬化の際に形状が変形しやすいため、このような変形に起因する不具合(例えば、耐吸湿リフロー性低下等)を生じやすい。また、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)を含む本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、後述のように室温では比較的低い粘度を有するため、取り扱い性にも優れる。
なお、上述の硬化性エポキシ樹脂組成物の加熱による増粘効果は、特に、コアシェル型アクリルポリマー(B)が加熱された際(特に、コアやシェルのTg付近、具体的には80〜90℃に加熱された際)に膨潤し、なおかつ該コアシェル型アクリルポリマー(B)の溶解度パラメータ(Fedors法)が特定範囲に制御されていることによって、脂環式エポキシ化合物(A)が膨潤したコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)のシェル層(表面層)に容易に浸透できることによって得られる効果であると推測される。
[硬化剤(C)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(C)は、脂環式エポキシ化合物(A)や後述のイソシアヌル酸誘導体(F)等のエポキシ基(オキシラン環)を有する化合物と反応することにより、硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させる働きを有する化合物である。硬化剤(C)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)、アミン類(アミン系硬化剤)、ポリアミド樹脂、イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)、ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)、フェノール類(フェノール系硬化剤)、ポリカルボン酸類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
硬化剤(C)としての酸無水物類(酸無水物系硬化剤)としては、公知乃至慣用の酸無水物系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、取り扱い性の観点で、25℃で液状の酸無水物[例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等]が好ましい。一方、25℃で固体状の酸無水物については、例えば、25℃で液状の酸無水物に溶解させて液状の混合物とすることで、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(C)としての取り扱い性が向上する傾向がある。酸無水物系硬化剤としては、硬化物の耐熱性、透明性の観点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(C)として、下記式(X−1)で表される化合物及び下記式(X−2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物を必須成分として含む。これにより、特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐湿性が向上し、光半導体装置の耐吸湿リフロー性が向上する。
式(X−1)中、R1〜R8(R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8)は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示す。中でも、式(X−1)で表される化合物は、硬化物の耐湿性、光半導体装置の耐吸湿リフロー性の観点で、R1〜R8のうち0〜4個(特に0〜2個)がメチル基である化合物が好ましく、より好ましくはメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物である。特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物及びノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の両方を含むことが好ましい。
式(X−1)で表される化合物には、エキソ体とエンド体の立体異性体が存在する。式(X−1)で表される化合物のエキソ体の存在比率が増加すると、室温で液状となりやすいため、硬化剤(C)としての取り扱いが容易となる傾向がある。従って、式(X−1)で表される化合物としては、そのエキソ体を必須成分として含むことが好ましい。より詳しくは、式(X−1)で表される化合物中のエキソ体の存在比率[エキソ体/(エキソ体+エンド体)]は、40重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上である。エキソ体の存在比率が40重量%未満であると、式(X−1)で表される化合物が室温で固体となりやすく、取り扱いが困難となる場合がある。エキソ体の存在比率を40重量%以上とする方法は、特に限定されないが、下記の具体例で述べるように、式(X−1)で表される化合物の前駆体においてエキソ体への異性化を進行させる方法等が挙げられる。
なお、本明細書における上記「メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物」は、ノルボルナン環上のメチル基の結合位置が異なる各異性体の総称である。メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の代表的な例としては、5−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
式(X−1)で表される化合物について述べたことと同様に、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物には、エキソ体とエンド体の立体異性体が存在する。メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物のエキソ体の存在比率が増加すると室温で液状となりやすいため、硬化剤(C)としての取り扱いが容易となる。従って、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、エキソ体を必須成分とすることが好ましい。より詳しくは、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物中のエキソ体の存在比率[エキソ体/(エキソ体+エンド体)]は、40重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上である。エキソ体の存在比率が40重量%未満であると、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物が室温で固体となりやすく、取り扱いが困難となる場合がある。
メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を水素化することにより得られる。特に、エキソ体の存在比率を増加させて室温で液状とする観点からは、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の製造過程においてエンド体の少なくとも一部をエキソ体に異性化することが好ましい。より詳しくは、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の一部又は全部を酸触媒の存在下でメチレンノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物へと異性化し、次いで水素化することによって製造することが好ましい(例えば、特開平6−25207号公報参照)。
式(X−1)で表される化合物について述べたことと同様に、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物には、エキソ体とエンド体の立体異性体が存在する。ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物のエキソ体の存在比率が増加すると室温で液状となりやすいため、硬化剤(C)としての取り扱いが容易となる。従って、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、エキソ体を必須成分とすることが好ましい。より詳しくは、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物中のエキソ体の存在比率[エキソ体/(エキソ体+エンド体)]は、30重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上である。エキソ体の存在比率が30重量%未満であると、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物が室温で固体となりやすく、取り扱いが困難となる場合がある。
ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、シクロペンタジエンと無水マレイン酸のディールスアルダー反応により得られるノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を水素化することによって得られる。但し、通常、シクロペンタジエンと無水マレイン酸のディールスアルダー反応により得られるノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物は、エンド体の存在比率が95重量%以上であるため、150℃以上に加熱してエキソ体に異性化(熱異性化)させた後に水素化反応を行うことで、エキソ体の存在比率が多いノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物(例えば、エキソ体の存在比率が30重量%以上のノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物)を生成させることができる。
なお、硬化剤(C)として、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物及びノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物を用いる場合、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物を用いることができる。上記混合物は、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とを混合することによって調製することもできるし、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を混合して得られた混合物を、異性化及び水素化することによって製造することもできる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化剤(C)として、式(X−1)で表される化合物を含む場合、硬化剤(C)の全量(100重量%)中のコハク酸無水物の含有量(割合)は0.4重量%以下(好ましくは0.2重量%以下)である。コハク酸無水物の含有量が0.4重量%を超えると、硬化剤(C)や硬化性エポキシ樹脂組成物においてコハク酸無水物が析出して作業性が低下したり、硬化促進剤の種類によっては硬化物が着色する等の問題が生じる場合がある。
なお、硬化剤(C)中のコハク酸無水物は、例えば、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、又はこれらの混合物を異性化及び水素化してメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、又はこれらの混合物を生成させる際に副生成物として生じる。より詳しくは、上記異性化を酸触媒の存在下、180℃前後の高温で実施するため、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のマレイン酸無水物とメチルシクロペンタジエンへの解離、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のマレイン酸無水物とシクロペンタジエンへの解離が進行し、さらに、このようにして生成したマレイン酸無水物が水素化されてコハク酸無水物が生じる。硬化剤(C)全量中のコハク酸無水物の含有量を0.4重量%以下に制御する方法としては、例えば、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、又はこれらの混合物を減圧蒸留する方法が挙げられる。より詳しくは、例えば、138℃、0.27kPaの条件で初留を5〜10%カットし、さらに173℃、0.27kPaの条件で残りを蒸留する方法等が挙げられる。
式(X−2)中、R9〜R16(R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16)は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示す。中でも、式(X−2)で表される化合物は、硬化物の耐湿性、光半導体装置の耐吸湿リフロー性の観点で、R9〜R16のうち0〜4個(特に0〜2個)がメチル基である化合物が好ましく、より好ましくはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ヘキサヒドロ無水フタル酸である。
特に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(C)として、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物及びノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物のいずれか一方又は両方(特に両方)を含むことがより好ましい。
硬化剤(C)としてのアミン類(アミン系硬化剤)としては、公知乃至慣用のアミン系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−3,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレン−2,4−ジアミン、トリレン−2,6−ジアミン、メシチレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトリレン−2,6−ジアミン等の単核ポリアミン、ビフェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ナフチレンジアミン、2,6−ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
硬化剤(C)としてのフェノール類(フェノール系硬化剤)としては、公知乃至慣用のフェノール系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、パラキシリレン・メタキシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
硬化剤(C)としてのポリアミド樹脂としては、例えば、分子内に第1級アミノ基及び第2級アミノ基のいずれか一方又は両方を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。
硬化剤(C)としてのイミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)としては、公知乃至慣用のイミダゾール系硬化剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン等が挙げられる。
硬化剤(C)としてのポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)としては、例えば、液状のポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂等が挙げられる。
硬化剤(C)としてのポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシ基含有ポリエステル等が挙げられる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において硬化剤(C)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、硬化剤(C)は、例えば、商品名「リカシッド MH−700」、「リカシッド MH−700F」、「リカシッド HNA−100」(以上、新日本理化(株)製);商品名「HN−5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を入手可能である。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量100重量部に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは80〜150重量部である。より具体的には、硬化剤(C)として酸無水物類(式(X−1)で表される化合物及び式(X−2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種、さらに必要に応じてその他の酸無水物類)を使用する場合、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5〜1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(C)の含有量を50重量部以上とすることにより、硬化を十分に進行させることができ、硬化物の強靭性がより向上する傾向がある。一方、硬化剤(C)の含有量を200重量部以下とすることにより、着色が抑制され、色相に優れた硬化物が得られる傾向がある。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化剤(C)として式(X−1)で表される化合物を含む場合、硬化剤(C)の全量(100重量%)に対する式(X−1)で表される化合物の含有量(割合)は、特に限定されないが、60重量%以上(例えば、60〜100重量%)が好ましく、より好ましくは70重量%以上(例えば、70〜98重量%)、さらに好ましくは80重量%以上(例えば、80〜95重量%)である。式(X−1)で表される化合物の含有量を60重量%以上とすることにより、硬化物の耐湿性、光半導体装置の耐熱耐湿試験における耐性及び耐吸湿リフロー性がいっそう向上する傾向がある。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化剤(C)として式(X−2)で表される化合物を含む場合、硬化剤(C)の全量(100重量%)に対する式(X−2)で表される化合物の含有量(割合)は、特に限定されないが、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜15重量%である。式(X−2)で表される化合物の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性がいっそう向上する傾向がある。
硬化剤(C)の全量(100重量%)中のメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量(割合)は、特に限定されないが、70〜100重量%が好ましく、より好ましくは75〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量を70重量%以上とすることにより、光半導体装置の耐吸湿リフロー性がより向上する傾向がある。
硬化剤(C)の全量(100重量%)中のノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量(割合)は、特に限定されないが、0〜30重量%が好ましく、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは0〜20重量%である。ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量を30重量%以下とすることにより、光半導体装置の耐吸湿リフロー性がより向上する傾向がある。特に、硬化剤(C)としてメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物を含む場合、これらの含有量の合計(合計含有量)は、特に限定されないが、硬化剤(C)の全量(100重量%)に対して、80〜100重量%が好ましく、より好ましくは90〜100重量%である。合計含有量を80重量%以上とすることにより、硬化物の耐吸湿リフロー性が著しく向上する場合がある。
[硬化促進剤(D)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化促進剤(D)は、エポキシ基を有する化合物が硬化剤(C)と反応する際に、その反応速度を促進する機能を有する化合物である。硬化促進剤(D)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール;リン酸エステル;トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシ)ホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛等の有機金属塩;アルミニウムアセチルアセトン錯体等の金属キレート等が挙げられる。
なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において硬化促進剤(D)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、硬化促進剤(D)としては、商品名「U−CAT SA 506」、「U−CAT SA 102」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 18X」、「U−CAT 12XD」(開発品)(以上、サンアプロ(株)製);商品名「TPP−K」、「TPP−MK」(以上、北興化学工業(株)製);商品名「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化促進剤(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部、さらに好ましくは0.03〜2重量部である。硬化促進剤(D)の含有量を0.01重量部以上とすることにより、いっそう効率的な硬化促進効果が得られる傾向がある。一方、硬化促進剤(D)の含有量を5重量部以下とすることにより、着色が抑制され、色相に優れた硬化物が得られる傾向がある。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の必須成分以外の他の成分(任意の成分)を含んでいてもよい。
[脂環式ポリエステル樹脂(E)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに脂環式ポリエステル樹脂(E)を含んでいてもよい。脂環式ポリエステル樹脂(E)は、脂環構造(脂肪族環構造)を少なくとも有するポリエステル樹脂である。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が脂環式ポリエステル樹脂(E)を含む場合には、特に、硬化物の耐熱性、耐光性が向上し、光半導体装置の光度低下がいっそう抑制される傾向がある。中でも、硬化物の耐熱性、耐光性向上の観点で、脂環式ポリエステル樹脂(E)は、主鎖に脂環(脂環構造)を有する脂環式ポリエステル樹脂であることが好ましい。
脂環式ポリエステル樹脂(E)が有する脂環構造としては、特に限定されないが、例えば、単環炭化水素構造や橋かけ環炭化水素構造(例えば、二環系炭化水素等)等が挙げられる。中でも、特に、脂環骨格(炭素−炭素結合)が全て炭素−炭素単結合により構成された、飽和単環炭化水素構造や飽和橋かけ環炭化水素構造が好ましい。また、脂環式ポリエステル樹脂(E)が有する脂環構造は、脂環式ポリエステル樹脂(E)を構成するジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位のいずれか一方のみに導入されていてもよいし、両方共に導入されていてもよく、特に限定されない。
脂環式ポリエステル樹脂(E)は、脂環構造を有するモノマー成分由来の構成単位を有している。上記脂環構造を有するモノマーとしては、公知乃至慣用の脂環構造を有するジオールやジカルボン酸等が挙げられ、特に限定されないが、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ハイミック酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸等の脂環構造を有するジカルボン酸(酸無水物等の誘導体も含む)等;1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の6員環ジオール、水素添加ビスフェノールA等の脂環構造を有するジオール(これらの誘導体も含む)等が挙げられる。
脂環式ポリエステル樹脂(E)は、脂環構造を有しないモノマー成分に由来する構成単位を有していてもよい。上記脂環構造を有しないモノマーとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸(酸無水物等の誘導体も含む);アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸(酸無水物等の誘導体も含む);エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、キシリレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のジオール(これらの誘導体も含む)等が挙げられる。なお、上記の脂環構造を有しないジカルボン酸やジオールに適宜な置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等)が結合したものも、脂環構造を有しないモノマーに含まれる。
脂環式ポリエステル樹脂(E)を構成する全モノマー単位(全モノマー成分)(100モル%)に対する脂環を有するモノマー単位の割合は、特に限定されないが、10モル%以上(例えば、10〜80モル%)が好ましく、より好ましくは25〜70モル%、さらに好ましくは30〜60モル%である。脂環を有するモノマー単位の割合を10モル%以上とすることにより、硬化物や光半導体装置の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性がより向上する場合がある。
脂環式ポリエステル樹脂(E)としては、特に、下記式(1)〜(3)で表される構成単位を少なくとも一種以上含む脂環式ポリエステル樹脂が好ましい。
[式中、R
17は直鎖、分岐鎖、又は環状の炭素数2〜15のアルキレン基を表す。また、R
18〜R
21は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
18〜R
21から選ばれる二つが結合して環を形成していてもよい。]
[式中、R
17は直鎖、分岐鎖、又は環状の炭素数2〜15のアルキレン基を表す。また、R
18〜R
21は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
18〜R
21から選ばれる二つが結合して環を形成していてもよい。]
[式中、R
17は直鎖、分岐鎖、又は環状の炭素数2〜15のアルキレン基を表す。また、R
18〜R
21は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
18〜R
21から選ばれる二つが結合して環を形成していてもよい。]
上記式(1)〜(3)で表される構成単位の好ましい具体例としては、例えば、下記式(4)で表される4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及びエチレングリコール由来の構成単位が挙げられる。当該構成単位を有する脂環式ポリエステル樹脂は、例えば、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とエチレングリコールとを重縮合することにより得られる。
また、上記式(1)〜(3)で表される構成単位の他の好ましい具体例としては、例えば、下記式(5)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びネオペンチルグリコール由来の構成単位が挙げられる。当該構成単位を有する脂環式ポリエステル樹脂は、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とネオペンチルグリコールとを重縮合することにより得られる。
脂環式ポリエステル樹脂(E)が上記式(1)〜(3)で表される構成単位を有する場合、該構成単位の含有量の合計量(合計含有量;該構成単位を構成する全モノマー単位)は、特に限定されないが、脂環式ポリエステル樹脂の全構成単位(100モル%;脂環式ポリエステル樹脂を構成する全モノマー単位)に対し、20モル%以上(例えば、20〜100モル%)が好ましく、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%である。上記式(1)〜(3)で表される構成単位の含有量を20モル%以上とすることにより、硬化物や光半導体装置の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性がより向上する傾向がある。
脂環式ポリエステル樹脂(E)の数平均分子量は、特に限定されないが、300〜100000が好ましく、より好ましくは300〜30000である。脂環式ポリエステル樹脂(E)の数平均分子量を300以上とすることにより、硬化物の強靭性が高くなり、硬化物や光半導体装置の耐熱衝撃性や耐吸湿リフロー性がより向上する傾向がある。一方、脂環式ポリエステル樹脂(E)の数平均分子量を100000以下とすることにより、硬化剤(C)との相溶性が高くなり、硬化物の透明性がより向上する傾向がある。なお、脂環式ポリエステル樹脂(E)の上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定される。
なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において脂環式ポリエステル樹脂(E)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
脂環式ポリエステル樹脂(E)は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。より詳しくは、例えば、脂環式ポリエステル樹脂(E)を、上述のジカルボン酸とジオールとを常法により重縮合させることにより得てもよいし、上述のジカルボン酸の誘導体(酸無水物、エステル、酸ハロゲン化物等)とジオールとを常法により重縮合させることにより得てもよい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式ポリエステル樹脂(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜45重量部、さらに好ましくは1〜40重量部である。脂環式ポリエステル樹脂(E)の含有量を1重量部以上とすることにより、硬化物や光半導体装置の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性がより向上する傾向がある。一方、脂環式ポリエステル樹脂(E)の含有量を50重量部以下とすることにより、硬化物や光半導体装置の耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性がより向上する傾向がある。
[分子内に1個以上のオキシラン環を有するイソシアヌル酸誘導体(F)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、分子内に1個以上のオキシラン環を有するイソシアヌル酸誘導体(F)(単に「イソシアヌル酸誘導体(F)」と称する場合がある)を含んでいてもよい。イソシアヌル酸誘導体(F)は、イソシアヌル酸の誘導体であって、分子内に1個以上のオキシラン環を少なくとも有する化合物である。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物がイソシアヌル酸誘導体(F)を含むことにより、硬化物の靭性及び耐熱衝撃性がより向上し、光半導体装置の耐吸湿リフロー性がいっそう向上する傾向がある。
イソシアヌル酸誘導体(F)が分子内に有するオキシラン環の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、1〜6個が好ましく、より好ましくは1〜3個である。
イソシアヌル酸誘導体(F)としては、例えば、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
式(6)中、RX、RY、及びRZ(RX〜RZ)は、同一又は異なって、水素原子又は一価の有機基を示す。但し、RX〜RZの少なくとも1個は、オキシラン環を含む一価の有機基である。上記一価の有機基としては、例えば、一価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基等);一価の芳香族炭化水素基(例えば、アリール基等);一価の複素環式基;脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の2以上が結合して形成された一価の基等が挙げられる。なお、一価の有機基は置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子等の置換基)を有するものであってもよい。オキシラン環を含む一価の有機基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、2−メチルエポキシプロピル基、シクロヘキセンオキシド基等のオキシラン環を有する基が挙げられる。
より具体的には、イソシアヌル酸誘導体(F)としては、下記式(6−1)で表される化合物、下記式(6−2)で表される化合物、下記式(6−3)で表される化合物等が挙げられる。
上記式(6−1)、式(6−2)、及び式(6−3)(式(6−1)〜(6−3))中、R22、R23は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。上記式(6−1)〜(6−3)中のR22及びR23は、水素原子であることが特に好ましい。
上記式(6−1)で表される化合物の代表的な例としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
上記式(6−2)で表される化合物の代表的な例としては、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
上記式(6−3)で表される化合物の代表的な例としては、トリグリシジルイソシアヌレート、トリス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
なお、イソシアヌル酸誘導体(F)は、アルコールや酸無水物等のオキシラン環と反応する化合物を加えてあらかじめ変性して用いてもよい。
中でも、イソシアヌル酸誘導体(F)としては、硬化物の耐熱性及び耐熱衝撃性の観点で、上記式(6−1)〜(6−3)で表される化合物が好ましく、より好ましくは上記式(6−1)で表される化合物である。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においてイソシアヌル酸誘導体(F)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、イソシアヌル酸誘導体(F)としては、例えば、商品名「TEPIC」(日産化学工業(株)製);商品名「MA−DGIC」、「DA−MGIC」(以上、四国化成工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるイソシアヌル酸誘導体(F)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(全エポキシ化合物;100重量%)に対して、0〜30重量%(例えば、3〜50重量%)が好ましく、より好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。イソシアヌル酸誘導体(F)の含有量を3重量%以上とすることにより、硬化物の電極に対する密着性、耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。一方、イソシアヌル酸誘導体(F)の含有量が50重量%を超えると、硬化性エポキシ樹脂組成物における溶解性が低下し、硬化物の物性に悪影響が及ぶ場合がある。
[ゴム粒子]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、ゴム粒子を含んでいてもよい。上記ゴム粒子としては、例えば、粒子状NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、反応性末端カルボキシ基NBR(CTBN)、メタルフリーNBR、粒子状SBR(スチレン−ブタジエンゴム)等のゴム粒子が挙げられる。上記ゴム粒子としては、ゴム弾性を有するコア部分と、該コア部分を被覆する少なくとも1層のシェル層とからなる多層構造(コアシェル構造)を有するゴム粒子が好ましい。上記ゴム粒子は、特に、(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマー成分とするポリマー(重合体)で構成され、表面に脂環式エポキシ化合物(A)等のエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基(ヒドロキシ基及びカルボキシ基のいずれか一方又は両方)を有するゴム粒子が好ましい。上記ゴム粒子の表面にヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基が存在しない場合、冷熱サイクル等の熱衝撃により硬化物が白濁して透明性が低下しやすくなるため好ましくない。
上記ゴム粒子におけるゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分として含むポリマーであることが好ましい。上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、その他、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;エチレン、プロピレン、イソブテン等のα−オレフィン等をモノマー成分として含んでいてもよい。
中でも、上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、芳香族ビニル、ニトリル、及び共役ジエンからなる群より選択された一種又は二種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記コア部分を構成するポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル/共役ジエン等の二元共重合体;(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/共役ジエン等の三元共重合体等が挙げられる。なお、上記コア部分を構成するポリマーには、ポリジメチルシロキサンやポリフェニルメチルシロキサン等のシリコーンやポリウレタン等が含まれていてもよい。
上記コア部分を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレート等の分子内に2個以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
上記ゴム粒子のコア部分は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニルの二元共重合体(特に、アクリル酸ブチル/スチレン)より構成されたコア部分であることが、ゴム粒子の屈折率を容易に調整できる点で好ましい。
上記ゴム粒子のコア部分を構成するポリマーのガラス転移温度は、特に限定されないが、60℃未満(例えば、−150℃以上、60℃未満)が好ましく、より好ましくは−150〜15℃、さらに好ましくは−100〜0℃である。上記ポリマーのガラス転移温度を60℃未満とすることにより、硬化物の耐クラック性(各種応力に対してクラックを生じにくい特性)がより向上する傾向がある。なお、上記コア部分を構成するポリマーのガラス転移温度は、上記Foxの式により算出される計算値を意味し、上述のコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)を構成するアクリルポリマーのガラス転移温度と同様にして測定される。
上記ゴム粒子のコア部分は、通常用いられる方法で製造することができ、例えば、上記モノマーを乳化重合法により重合する方法等により製造することができる。乳化重合法においては、上記モノマーの全量を一括して仕込んで重合してもよいし、上記モノマーの一部を重合した後、残りを連続的に又は断続的に添加して重合してもよいし、さらに、シード粒子を使用する重合方法を使用してもよい。
上記ゴム粒子のシェル層を構成するポリマーは、上記コア部分を構成するポリマーとは異種のポリマー(異なるモノマー組成を有するポリマー)であることが好ましい。また、上述のように、上記シェル層は、脂環式エポキシ化合物(A)等のエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基を有することが好ましい。これにより、特に、脂環式エポキシ化合物(A)との界面で接着性を向上させることができ、該シェル層を有するゴム粒子を含む硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物に対して、優れた耐クラック性を発揮させることができる。また、硬化物のガラス転移温度の低下を防止することもできる。
上記シェル層を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分として含むポリマーであることが好ましい。例えば、上記コア部分における(メタ)アクリル酸エステルとしてアクリル酸ブチルを用いた場合、シェル層を構成するポリマーのモノマー成分としては、例えば、アクリル酸ブチル以外の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等)を使用することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル以外に含んでいてもよいモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル等が挙げられる。上記ゴム粒子においては、シェル層を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーを単独で又は二種以上を組み合わせて含むことが好ましく、特に、少なくとも芳香族ビニルを含むことが、上記ゴム粒子の屈折率を容易に調整できる点で好ましい。
さらに、上記シェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、脂環式エポキシ化合物(A)等のエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてのヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基を形成するために、ヒドロキシ基含有モノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等)や、カルボキシ基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和酸;マレイン酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物等)を含有することが好ましい。
上記ゴム粒子におけるシェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーから選択された一種又は二種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記シェル層は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/α,β−不飽和酸等の三元共重合体等から構成されたシェル層であることが好ましい。
また、上記シェル層を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、コア部分と同様に、上記モノマーの他にジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレート等の分子内に2個以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
上記ゴム粒子のシェル層を構成するポリマーのガラス転移温度は、特に限定されないが、60〜120℃が好ましく、より好ましくは70〜115℃である。上記ポリマーのガラス転移温度を60℃以上とすることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、上記ポリマーのガラス転移温度を120℃以下とすることにより、硬化物の耐クラック性がより向上する傾向がある。なお、上記シェル層を構成するポリマーのガラス転移温度は、上記Foxの式により算出される計算値を意味し、上述のコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)を構成するアクリルポリマーのガラス転移温度と同様にして測定される。
上記ゴム粒子(コアシェル構造を有するゴム粒子)は、上記コア部分をシェル層により被覆することで得られる。上記コア部分をシェル層で被覆する方法としては、例えば、上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分の表面に、シェル層を構成するポリマーを塗布することにより被覆する方法;上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分を幹成分とし、シェル層を構成する各成分を枝成分としてグラフト重合する方法等が挙げられる。
上記ゴム粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10〜500nmが好ましく、より好ましくは20〜400nmである。また、上記ゴム粒子の最大粒子径は、特に限定されないが、50〜1000nmが好ましく、より好ましくは100〜800nmである。平均粒子径を500nm以下(又は、最大粒子径を1000nm以下)とすることにより、硬化物におけるゴム粒子の分散性が向上し、耐クラック性がより向上する傾向がある。一方、平均粒子径を10nm以上(又は、最大粒子径を50nm以上)とすることにより、硬化物の耐クラック性がより向上する傾向がある。
上記ゴム粒子の屈折率は、特に限定されないが、1.40〜1.60が好ましく、より好ましくは1.42〜1.58である。また、ゴム粒子の屈折率と、該ゴム粒子を含む硬化性エポキシ樹脂組成物(本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物)を硬化させて得られる硬化物の屈折率との差は±0.03以内であることが好ましい。屈折率の差を±0.03以内とすることにより、硬化物の優れた透明性が確保され、光半導体装置の光度が高く保持される傾向がある。
ゴム粒子の屈折率は、例えば、ゴム粒子1gを型に注型して210℃、4MPaで圧縮成形し、厚さ1mmの平板を得、得られた平板から、縦20mm×横6mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、20℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めることができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物の屈折率は、例えば、下記硬化物の項に記載の加熱硬化方法により得られた硬化物から、縦20mm×横6mm×厚さ1mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、20℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めることができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における上記ゴム粒子の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量100重量部に対して、0.5〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。ゴム粒子の含有量を0.5重量部以上とすることにより、硬化物の耐クラック性がより向上する傾向がある。一方、ゴム粒子の含有量を30重量部以下とすることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。
[添加剤]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のヒドロキシ基を有する化合物を含有させると、反応を緩やかに進行させることができる。その他にも、粘度や透明性を損なわない範囲内で、シリコーン系やフッ素系消泡剤、レベリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、界面活性剤、シリカ、アルミナ等の無機充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体(例えば、YAG系の蛍光体微粒子、シリケート系蛍光体微粒子等の無機蛍光体微粒子等)、離型剤等の慣用の添加剤を使用することができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を、必要に応じて加熱した状態で撹拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。上記撹拌・混合の方法は、特に限定されず、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式撹拌装置等の公知乃至慣用の撹拌・混合手段を使用できる。また、撹拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。
特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物にゴム粒子を配合する場合、当該ゴム粒子は、あらかじめ脂環式エポキシ化合物(A)中に分散させた組成物(当該組成物を「ゴム粒子分散エポキシ化合物」と称する場合がある)の状態で配合することが好ましい。即ち、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物にゴム粒子を配合する場合、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物と、コアシェル型アクリルポリマー粒子(B)と、硬化剤(C)と、硬化促進剤(D)と、必要に応じてその他の成分とを混合することにより調製することが好ましい。このような調製方法により、特に、硬化性エポキシ樹脂組成物におけるゴム粒子の分散性を向上させることができる。但し、ゴム粒子の配合方法は、上記方法に限定されず、それ単独で配合する方法であってもよい。
(ゴム粒子分散エポキシ化合物)
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物は、上記ゴム粒子を脂環式エポキシ化合物(A)に分散させることによって得られる。なお、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物における脂環式エポキシ化合物(A)は、硬化性エポキシ樹脂組成物を構成する脂環式エポキシ化合物(A)の全量であってもよいし、一部の量であってもよい。同様に、上記ゴム粒子分散エポキシ化合物におけるゴム粒子は、硬化性エポキシ樹脂組成物を構成するゴム粒子の全量であってもよいし、一部の量であってもよい。
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の粘度は、例えば、反応性希釈剤を併用することにより調整することができる(即ち、ゴム粒子分散エポキシ化合物は、さらに反応性希釈剤を含んでいてもよい)。上記反応性希釈剤としては、例えば、常温(25℃)における粘度が200mPa・s以下の脂肪族ポリグリシジルエーテルを好ましく使用できる。粘度(25℃)が200mPa・s以下の脂肪族ポリグリシジルエーテルとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。上記反応性希釈剤の使用量は、適宜調整することができ、特に限定されない。
上記ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造方法は、特に限定されず、周知慣用の方法を使用することができる。例えば、ゴム粒子を脱水乾燥して粉体とした後に、脂環式エポキシ化合物(A)に混合し、分散させる方法や、ゴム粒子のエマルジョンと脂環式エポキシ化合物(A)とを直接混合し、続いて脱水する方法等が挙げられる。
また、脂環式ポリエステル樹脂(E)を含む場合は、より均一な本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を得る観点で、脂環式ポリエステル樹脂(E)と硬化剤(C)とをあらかじめ混合してこれらの混合物(脂環式ポリエステル樹脂(E)と硬化剤(C)の混合物)を得た後、該混合物に硬化促進剤(D)、その他の添加剤を配合してエポキシ硬化剤を調製し、引き続き、該エポキシ硬化剤と別途調製したエポキシ樹脂とを混合することにより調製することが好ましい。脂環式ポリエステル樹脂(E)と硬化剤(C)を混合する際の温度は、特に限定されないが、60〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。混合時間は、特に限定されないが、30〜100分間が好ましく、より好ましくは45〜80分間である。混合は、特に限定されないが、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、混合には、上述の公知の装置を使用できる。
脂環式ポリエステル樹脂(E)と硬化剤(C)を混合した後には、特に限定されないが、さらに適宜な化学処理(例えば、水素添加や脂環式ポリエステル樹脂(E)の末端変性等)等を施してもよい。なお、脂環式ポリエステル樹脂(E)と硬化剤(C)の混合物においては、硬化剤(C)の一部が脂環式ポリエステル樹脂(E)(例えば、脂環式ポリエステル樹脂(E)の水酸基等)と反応していてもよい。
脂環式ポリエステル樹脂(E)と硬化剤(C)の混合物としては、例えば、商品名「HN−7200」(日立化成工業(株)製)、商品名「HN−5700」(日立化成工業(株)製)等の市販品を用いることもできる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は、特に限定されないが、60〜6000mPa・sが好ましく、より好ましくは100〜5500mPa・s、さらに好ましくは150〜5000mPa・sである。25℃における粘度を60mPa・s以上とすることにより、注型時の作業性が向上したり、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、25℃における粘度を6000mPa・s以下とすることにより、注型時の作業性が向上したり、硬化物に注型不良に由来する不具合が生じにくくなる傾向がある。なお、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は、デジタル粘度計(型番「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を用いて、ローター:標準1°34′×R24、温度:25℃、回転数:0.5〜10rpmの条件で測定される。
<硬化物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、高い耐熱性、耐湿性、及び耐熱衝撃性を有し、特に光半導体装置の高温下及び高温高湿下における通電特性、耐熱衝撃性、並びに耐吸湿リフロー性を向上させる硬化物(本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を「本発明の硬化物」と称する場合がある)を得ることができる。硬化の手段としては、加熱処理や光照射処理等の公知乃至慣用の手段を利用できる。加熱により硬化させる際の温度(硬化温度)は、特に限定されないが、45〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜190℃、さらに好ましくは55〜180℃である。また、硬化の際に加熱する時間(硬化時間)は、特に限定されないが、30〜600分が好ましく、より好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分である。硬化温度と硬化時間が上記範囲の下限値より低い場合は硬化が不十分となり、逆に上記範囲の上限値より高い場合は樹脂成分の分解が起きる場合があるので、いずれも好ましくない。硬化条件は種々の条件に依存するが、例えば、硬化温度を高くした場合は硬化時間を短く、硬化温度を低くした場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。また、硬化は、一段階で行うこともできるし、二段階以上の多段階で行うこともできる。
<光半導体封止用樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、光半導体装置における光半導体素子を封止するための樹脂組成物、即ち、光半導体封止用樹脂組成物(光半導体装置における光半導体素子の封止剤)として好ましく使用できる。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を光半導体封止用樹脂組成物として用いることにより、高い耐熱性、耐湿性、及び耐熱衝撃性に優れた硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が得られる。上記光半導体装置は、熱衝撃や高温の熱が加えられた場合でも光度低下が生じにくい等、高温における通電特性及び耐吸湿リフロー性に優れ、特に高温高湿下における通電特性に優れる等、耐久性が高い。
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置である。光半導体素子の封止は、例えば、上述の方法で調製した硬化性エポキシ樹脂組成物を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して行うことができる。これにより、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が得られる。硬化温度と硬化時間は、硬化物の調製時と同様の範囲で適宜設定することができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の光半導体素子の封止用途に限定されず、例えば、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ、光ピックアップセンサー等の各種用途に使用することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、表1〜3における「−」は、当該成分の配合を行わなかったことを意味する。また、表1に示す成分の量(割合)の単位はgであり、表2及び3に示す成分の量(割合)の単位は重量部である。
製造例1
(アクリル重合体エマルション(E1)、アクリル重合体粉体(P1)の製造)
撹拌機、還流冷却管、滴下ポンプ、温度制御装置、及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水585.0gを仕込み、撹拌を行った。
別途、メタクリル酸メチル453.5g、メタクリル酸n−ブチル71.5g、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム(乳化剤)5.25g、及びイオン交換水262.5gをホモジナイザー(25000rpm)で乳化処理して単量体混合物(M1)を調製し、該単量体混合物(M1)のうちの10%を上記フラスコ内に投入し、その後、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。次いで、予め調製した過硫酸アンモニウム0.30gの水溶液(イオン交換水15.0gに溶解させた)を、上記フラスコ内に一括仕込みし、60分間保持して、シード粒子を形成させた。さらに、シード粒子が形成された上記フラスコ内に残りの単量体混合物(M1)を180分かけて滴下し、滴下後1時間保持し、第1段目の重合を終了した。
次いで、メタクリル酸メチル219.3g、メタクリル酸5.7g、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム(乳化剤)2.25g、及びイオン交換水112.5gをホモジナイザー(25000rpm)で乳化処理して得られた単量体混合物を、上記フラスコ内に90分かけて滴下し、滴下後1時間保持して、第2段目の重合を終了し、平均粒子径0.84μmのアクリル重合体エマルション(E1)を得た。上記アクリル重合体エマルション(E1)におけるアクリルモノマーの組成から、第1段目の重合により形成したコア成分のガラス転移温度は90.6℃、溶解度パラメータ(Fedors法)は20.45であり、第2段目の重合により形成したシェル成分のガラス転移温度は106.9℃、溶解度パラメータ(Fedors法)は20.66である。
得られたアクリル重合体エマルション(E1)を噴霧乾燥処理し、アクリル重合体粉体(P1)を得た。
製造例2〜6
表1に記載の原料組成及び重合条件に変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル重合体エマルション(E2)〜(E6)、及びアクリル重合体粉体(P2)〜(P6)を得た。
製造例7
(アクリル重合体エマルション(E7)、アクリル重合体粉体(P7)の製造)
撹拌機、還流冷却管、滴下ポンプ、温度制御装置、及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水624gを仕込み、撹拌を行った。
別途、メタクリル酸メチル483.7g、及びメタクリル酸n−ブチル76.3gを混合し、第1段目の重合に用いる単量体混合物(M7)を調製した。上記単量体混合物(M7)のうちの40.0gを上記フラスコ内に投入し、その後、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。次いで、予め調製した過硫酸アンモニウム0.32gの水溶液(イオン交換水16.0gに溶解させた)を、上記フラスコ内に一括仕込みし、60分間保持して、シード粒子を形成させた。さらに、シード粒子が形成された上記フラスコ内に、残りの単量体混合物(M7)520.0g、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム5.6g、及びイオン交換水280.0gをホモジナイザー(25000rpm)で乳化処理して得られた混合物を210分かけて滴下し、1時間保持して、第1段目の重合を終了した。
次いで、上記フラスコ内に、メタクリル酸メチル233.9g、メタクリル酸6.1g、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム2.4g、及びイオン交換水120.0gをホモジナイザー(25000rpm)で乳化処理して得られた単量体混合物を90分かけて滴下し、滴下後1時間保持して、第2段目の重合を終了し、平均粒子径0.81μmのアクリル重合体エマルション(E7)を得た。上記アクリル重合体エマルション(E7)におけるアクリルモノマーの組成から、第1段目の重合により形成したコア成分のガラス転移温度は90.6℃、溶解度パラメータ(Fedors法)は20.45であり、第2段目の重合により形成したシェル成分のガラス転移温度は106.9℃、溶解度パラメータ(Fedors法)は20.66である。
得られたアクリル重合体エマルション(E7)を噴霧乾燥処理し、アクリル重合体粉体(P7)を得た。
製造例8
(アクリル重合体エマルション(E8)、アクリル重合体粉体(P8)の製造)
撹拌機、還流冷却管、滴下ポンプ、温度制御装置、及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコにイオン交換水585.0gを仕込み、撹拌を行った。
別途、メタクリル酸メチル672.75g、メタクリル酸n−ブチル71.5g、メタクリル酸5.72g、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム7.5g、及びイオン交換水375.0gをホモジナイザー(25000rpm)で乳化処理して単量体混合物(M8)を調製し、該単量体混合物(M8)のうちの10%を上記フラスコに投入した後、窒素雰囲気下で80℃に昇温した。次いで、予め調製した過硫酸アンモニウム0.30gの水溶液(イオン交換水15.0gに溶解させた)を、上記フラスコ内に一括仕込みして、60分間保持して、シード粒子を形成させた。さらに、シード粒子が形成された上記フラスコ内に、残りの単量体混合物(M8)を270分かけて滴下し、滴下後1時間保持し、重合を終了して、平均粒子径0.62μmのアクリル重合体エマルション(E8)を得た。上記アクリル重合体エマルション(E8)におけるアクリルモノマーの組成から、ガラス転移温度は95.3℃、溶解度パラメータ(Fedors法)は20.52である。
得られたアクリル重合体エマルション(E8)を噴霧乾燥処理し、アクリル重合体粉体(P8)を得た。
なお、製造例1〜5、並びに7で得られたアクリル重合体エマルション及びアクリル重合体粉体を構成するアクリルポリマー粒子が、上述のコアシェル型アクリルポリマー粒子(B)に当たる。
表1に示す成分は、以下の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル
n−BMA:メタクリル酸n−ブチル
BA:アクリル酸n−ブチル
i−BMA:メタクリル酸i−ブチル
MAA:メタクリル酸
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
V−65:商品名「V−65」[2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)]、和光純薬工業(株)製
製造例9
(ゴム粒子の製造)
還流冷却器付きの1L重合容器に、イオン交換水500g、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.68gを仕込み、窒素気流下に撹拌しながら、80℃に昇温した。ここに、ゴム粒子のコア部分を形成するために必要とする量の約5重量%分に該当するアクリル酸ブチル9.5g、スチレン2.57g、及びジビニルベンゼン0.39gからなる単量体混合物を一括添加し、20分間撹拌して乳化させた後、ペルオキソ二硫酸カリウム9.5mgを添加し、1時間撹拌して最初のシード重合を行った。続いて、ペルオキソ二硫酸カリウム180.5mgを添加し、5分間撹拌した。ここに、コア部分を形成するために必要とする量の残り(約95重量%分)のアクリル酸ブチル180.5g、スチレン48.89g、及びジビニルベンゼン7.33gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.95gを溶解させてなる単量体混合物を2時間かけて連続的に添加し、2度目のシード重合を行い、その後、1時間熟成してコア部分を得た。
次いで、ペルオキソ二硫酸カリウム60mgを添加して5分間撹拌し、ここに、メタクリル酸メチル60g、アクリル酸1.5g、及びアリルメタクリレート0.3gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3gを溶解させてなる単量体混合物を30分かけて連続的に添加し、シード重合を行った。その後、1時間熟成し、コア部分を被覆するシェル層を形成した。
次いで、室温(25℃)まで冷却し、目開き120μmのプラスチック製網で濾過することにより、コアシェル構造を有するゴム粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスをマイナス30℃で凍結し、吸引濾過器で脱水洗浄した後、60℃で一昼夜送風乾燥してゴム粒子を得た。得られたゴム粒子の平均粒子径は254nm、最大粒子径は486nmであった。
なお、ゴム粒子の平均粒子径、最大粒子径は、動的光散乱法を測定原理とした「NanotracTM」形式のナノトラック粒度分布測定装置(商品名「UPA−EX150」、日機装(株)製)を使用して試料を測定し、得られた粒度分布曲線において、累積カーブが50%となる時点の粒子径である累積平均径を平均粒子径、粒度分布測定結果の頻度(%)が0.00%を超えた時点の最大の粒子径を最大粒子径とした。なお、上記試料としては、下記製造例10で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物1重量部をテトラヒドロフラン20重量部に分散させたものを用いた。
製造例10
(ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造)
製造例9で得られたゴム粒子10重量部を、窒素気流下、60℃に加温した状態でディゾルバーを使用して、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)100重量部に分散させ(1000rpm、60分間)、真空脱泡して、ゴム粒子分散エポキシ化合物(25℃での粘度:980mPa・s)を得た。
なお、この製造例10で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物(10重量部のゴム粒子を100重量部のセロキサイド2021Pに分散させたもの)の25℃での粘度は、デジタル粘度計(商品名「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を使用して測定した。
製造例11
(硬化剤組成物の製造)
表2、3に示す各配合割合で、商品名「リカシッド MH−700」(新日本理化(株)製)、商品名「リカシッド HNA−100」(日立化成工業(株)製)、商品名「HN−5700」(日立化成工業(株)製)、商品名「HN−7200」(日立化成工業(株)製)、商品名「U−CAT 18X」(サンアプロ(株)製)、エチレングリコール(和光純薬工業(株)製)を、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製、以下同じ)を使用して均一に混合し、脱泡して、各硬化剤組成物(「K剤」と称する場合がある)を得た。
実施例1
まず、表2に示す配合割合で、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)、及び製造例1で得られたアクリル重合体粉体(P1)を、自公転式撹拌装置を使用して均一に混合し、脱泡して、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)とアクリル重合体粉体の混合物を作製した。
次に、表2に示す配合割合となるように、上記で得た混合物と、製造例11で得た硬化剤組成物とを自公転式撹拌装置を使用して均一に混合し、脱泡して、硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
さらに、上記で得た硬化性エポキシ樹脂組成物を図1に示す光半導体のリードフレーム(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、120℃のオーブン(樹脂硬化オーブン)で5時間加熱することで、上記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を得た。なお、図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は硬化物(封止材)を示す。
実施例2〜14、比較例1〜7
硬化性エポキシ樹脂組成物の組成を表2又は表3に示す組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、各硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、実施例12〜14においては、上記混合物の構成成分として、製造例10で得たゴム粒子分散エポキシ化合物を使用した。また、MA−DGIC、DA−MGIC、又はTEPICを使用した場合(実施例8〜11、14、比較例3)、これらは上記混合物の構成成分として配合し、これらを溶解させるために80℃で1時間混合して上記混合物を調製した。
さらに、実施例1と同様にして光半導体装置を作製した。
<評価>
実施例並びに比較例で得られた光半導体装置及び硬化性エポキシ樹脂組成物について、下記の評価試験を実施した。
[硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度]
実施例及び比較例で得られた硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度を、デジタル粘度計(型番「DVU−EII型」、(株)トキメック製)を用いて、ローター:標準1°34′×R24、温度:25℃、回転数:0.5〜10rpmの条件で測定した。結果を表2、3の「硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度(25℃)[mPa・s]」の欄に示す。
[通電試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置の全光束を全光束測定機で測定し、これを「0時間の全光束」とした。その後、この光半導体装置を以下の耐熱試験又は耐熱耐湿試験の二種の試験に付した。
・耐熱試験
0時間の全光束を測定した後の光半導体装置について、85℃の恒温槽内で100時間、40mAの電流を流し、その後、再び全光束を測定し、これを「耐熱試験後の全光束」とした。そして、次式から耐熱試験後の光度保持率を算出した。各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個の光半導体装置の光度保持率を測定して、これらの平均値を算出した(即ち、N=2)。結果を表2、3の「耐熱試験後の光度保持率[%]」の欄に示す。
{耐熱試験後の光度保持率(%)}
={耐熱試験後の全光束(lm)}/{0時間の全光束(lm)}×100
・耐熱耐湿試験
0時間の全光束を測定した後の光半導体装置について、60℃、90%RHの恒温恒湿槽内で100時間、20mAの電流を流し、その後、再び全光束を測定し、これを「耐熱耐湿試験後の全光束」とした。そして、次式から耐熱耐湿試験後の光度保持率を算出した。各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個の光半導体装置の光度保持率を測定して、これらの平均値を算出した(即ち、N=2)。結果を表2、3の「耐熱耐湿試験後の光度保持率[%]」の欄に示す。
{耐熱耐湿試験後の光度保持率(%)}
={耐熱耐湿試験後の全光束(lm)}/{0時間の全光束(lm)}×100
[はんだ耐熱性試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個ずつ用いた)を、30℃、60%RHの条件下で192時間静置して吸湿処理した。次いで、上記光半導体装置をリフロー炉に入れ、下記加熱条件にて加熱処理した。その後、上記光半導体装置を室温環境下に取り出して放冷した後、再度リフロー炉に入れて同条件で加熱処理した。即ち、当該はんだ耐熱性試験においては、光半導体装置に対して下記加熱条件による熱履歴を二度与えた。
〔加熱条件(光半導体装置の表面温度基準)〕
(1)予備加熱:150〜190℃で60〜120秒
(2)予備加熱後の本加熱:217℃以上で60〜150秒、最高温度260℃
但し、予備加熱から本加熱に移行する際の昇温速度は最大で3℃/秒に制御した。
図2には、リフロー炉による加熱の際の光半導体装置の表面温度プロファイル(二度の加熱処理のうち一方の加熱処理における温度プロファイル)の一例を示す。
その後、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−900」、(株)キーエンス製)を使用して光半導体装置を観察し、硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生したか否か、及び、電極剥離(電極表面からの硬化物の剥離)が発生したか否かを評価した。光半導体装置2個のうち、硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数を表2、3の「はんだ耐熱性試験[クラック数]」の欄に示し、電極剥離が発生した光半導体装置の個数を表2、3の「はんだ耐熱性試験[電極剥離数]」の欄に示した。
[熱衝撃試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個ずつ用いた)に対し、−40℃の雰囲気下に30分曝露し、続いて、120℃の雰囲気下に30分曝露することを1サイクルとした熱衝撃を、熱衝撃試験機を用いて200サイクル分与えた。その後、光半導体装置における硬化物に生じたクラックの長さを、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−900」、(株)キーエンス製)を使用して観察し、光半導体装置2個のうち硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数を計測した。結果を表2、3の「熱衝撃試験[個数]」の欄に示す。
[PCT試験(プレッシャークッカー試験)]
まず、実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき5個ずつ用いた)の全光束を全光束測定機で測定し、これを「0時間の全光束」とした。その後、0時間の全光束を測定した後の光半導体装置を、120℃、100%RHの恒温恒湿槽(高度加速寿命試験装置)内で24時間保管した。次いで、光半導体装置を恒温恒湿槽から取り出した後、再び全光束を測定し、これを「PCT試験後の全光束」とした。そして、次式からPCT試験後の光度保持率を算出した。その結果、5個の光半導体装置のうち光度保持率が90%以下となったものの個数を計測し、その数を表2、3の「耐高温高湿性(PCT試験)[個数]」の欄に示す。
{PCT試験後の光度保持率(%)}
={PCT試験後の全光束(lm)}/{0時間の全光束(lm)}×100
[総合判定]
各試験の結果、下記(1)〜(6)をいずれも満たす場合を○(良好)と判定した。一方、下記(1)〜(6)のいずれかを満たさない場合には×(不良)と判定した。
(1)通電試験:耐熱試験後の光度保持率が80%以上
(2)通電試験:耐熱耐湿試験後の光度保持率が80%以上
(3)はんだ耐熱性試験:硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数が0個
(4)はんだ耐熱性試験:電極剥離が発生した光半導体装置の個数が0個
(5)熱衝撃試験:硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数が0個
(6)PCT試験:光度保持率が90%以下となった光半導体装置の個数が0個
結果を表2、3の「総合判定」の欄に示す。
なお、実施例、比較例で使用した成分は、以下の通りである。
(エポキシ樹脂)
セロキサイド2021P:商品名「セロキサイド2021P」[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート]、(株)ダイセル製
TEPIC:商品名「TEPIC」[トリグリシジルイソシアヌレート]、日産化学工業(株)製
MA−DGIC:商品名「MA−DGIC」[モノアリルジグリシジルイソシアヌレート]、四国化成工業(株)製
DA−MGIC:商品名「DA−MGIC」[ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート]、四国化成工業(株)製
YD−128:商品名「YD−128」[ビスフェノールA型エポキシ樹脂]、新日鐵化学(株)製
(エポキシ硬化剤)
MH−700:商品名「リカシッド MH−700」[4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30]、新日本理化(株)製
HNA−100:商品名「リカシッド HNA−100」[メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物(無水コハク酸の含有量:0.4重量%以下)]、新日本理化(株)製
HN−5700:商品名「HN−5700」[硬化剤と脂環式ポリエステル樹脂の混合物]、日立化成工業(株)製
HN−7200:商品名「HN−7200」[硬化剤と脂環式ポリエステル樹脂の混合物]、日立化成工業(株)製
18X:商品名「U−CAT 18X」[硬化促進剤]、サンアプロ(株)製
エチレングリコール:和光純薬工業(株)製
試験機器
・樹脂硬化オーブン
エスペック(株)製 GPHH−201
・恒温槽
エスペック(株)製 小型高温チャンバー ST−120B1
・全光束測定機
オプトロニックラボラトリーズ社製 マルチ分光放射測定システム OL771
・熱衝撃試験機
エスペック(株)製 小型冷熱衝撃装置 TSE−11−A
・リフロー炉
日本アントム(株)製、UNI−5016F
・恒温恒湿槽
エスペック(株)製 小型環境試験器 SH−641
・高度加速寿命試験装置(PCT試験用)
エスペック(株)製 高度加速寿命試験装置 EHS−411M