A.第1実施形態:
A−1.プラズマジェットプラグの全体構成:
図1は実施形態のプラズマジェットプラグ100の全体を示す図である。図1の軸線COより右側には、プラズマジェットプラグ100の外観が図示され、軸線COの左側には、軸線COを含む面で切断した断面図が示されている。図2は、プラズマジェットプラグ100の中心電極20近傍の断面図である。図1、図2の一点破線COは、プラズマジェットプラグ100の軸線を示している。軸線COと平行な方向(図1、図2の上下方向)を、「軸線COの方向」、あるいは、単に「軸線方向」とも呼ぶ。軸線COを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、軸線COを中心とする円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。図1、図2における下方向を先端方向D1と呼び、上方向を後端方向D2とも呼ぶ。図1、図2における下側をプラズマジェットプラグ100の先端側と呼び、図1、図2における上側をプラズマジェットプラグ100の後端側と呼ぶ。
プラズマジェットプラグ100は、絶縁体10(絶縁碍子とも呼ばれる)と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、を有している(図1)。
絶縁体10はアルミナ等を焼成して形成されている。絶縁体10は、軸線方向に沿って延び、絶縁体10を貫通する軸孔12を有する略円筒形状の部材(筒状体)である。絶縁体10は、鍔部19と、後端側胴部18と、先端側胴部17と、段部14と、脚長部13と、を有している。後端側胴部18は、鍔部19より後端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。先端側胴部17は、鍔部19より先端側に位置し、後端側胴部18の外径より小さな外径を有している。脚長部13は、先端側胴部17より先端側に位置し、先端側胴部17の外径より小さな外径を有している。段部14は、先端方向D1に向かって外径が小さくなる部分であり、絶縁体10の脚長部13と先端側胴部17との間に形成されている。
軸孔12のうち脚長部13の内面によって形成される部分は、電極収容孔15として形成されている(図2)。電極収容孔15の後端方向D2側には、先端方向D1側に向かって内径が小さくなる縮内径部10zが、形成されている。縮内径部10zよりも後端方向D2では、内径は、おおよそ一定である。
主体金具50(図1)は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼材)で形成され、内燃機関のエンジンヘッド(図示省略)にプラズマジェットプラグ100を固定するための略円筒形状の部材(筒状体)である。主体金具50は、軸線COに沿って貫通する貫通孔59が形成されている。主体金具50は、絶縁体10の後端側胴部18の先端側の一部と、鍔部19と、先端側胴部17と、脚長部13との外周に配置される。すなわち、主体金具50の貫通孔59内に、絶縁体10が挿入、そして、保持されている。
主体金具50は、スパークプラグレンチが係合する六角柱形状の工具係合部51と、内燃機関に取り付けるための取付ネジ部52と、工具係合部51と取付ネジ部52との間に形成された鍔状の座部54と、を有している。
主体金具50の取付ネジ部52と座部54との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、プラズマジェットプラグ100が内燃機関に取り付けられた際に、プラズマジェットプラグ100と内燃機関(エンジンヘッド)との隙間を封止する。
主体金具50は、さらに、工具係合部51の後端側に設けられた薄肉の加締部53と、座部54と工具係合部51との間に設けられた薄肉の圧縮変形部58と、を有している。主体金具50における工具係合部51から加締部53に至る部位の内面と、絶縁体10の後端側胴部18の外周面との間に形成される環状の領域には、環状のリング部材6、7が配置されている。当該領域における2つのリング部材6、7の間には、タルク(滑石)9の粉末が充填されている。また、主体金具50の貫通孔59を形成する内面は、取付ネジ部52の軸方向の中央部で後端側から先端側に向かって縮径しており、これによって内面に段状の係止部56が形成されている(図2)。
加締部53(図1)の後端は、径方向内側に折り曲げられている。主体金具50の圧縮変形部58は、製造時において、絶縁体10の外周面に固定された加締部53が先端側に押圧されることにより、圧縮変形する。圧縮変形部58の圧縮変形によって、リング部材6、7およびタルク9を介し、絶縁体10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。この結果、金属製の環状の板パッキン80(図2)を介して、主体金具50の内面の係止部56に、絶縁体10の段部14が押圧される。この結果、絶縁体10の段部14と、主体金具50の係止部56との間は、板パッキン80を挟んで封止される。この結果、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁体10との隙間から外部に漏れることが、防止される。
中心電極20(図2)は、軸線COに沿って延びる棒状の部材であり、絶縁体10の軸孔12の内部に配置されている。本実施形態では、中心電極20は、タングステン等の高融点材料で形成された一体成形品である。ただし、中心電極20の構成としては、他の種々の構成を採用可能である。例えば、母材と、母材内に埋設された芯材と、の2重構造を有する構成を採用してもよい。母材は、例えば、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金(インコネル600等(アルファベットのINCONELは登録商標))で形成される。主成分は、含有率(重量%)が最も高い成分を意味している。芯材は、例えば、母材を形成する材料よりも熱伝導性に優れる材料(例えば、銅または銅を主成分とする合金)で形成される。
また、中心電極20は、頭部21と、頭部21よりも先端側に位置し、頭部21より外径が小さい脚部22と、を有している。中心電極20の脚部22は、絶縁体10の軸孔12のうちの電極収容孔15に収容され、中心電極20の頭部21は、軸孔12のうちの縮内径部10zから後端方向D2側の部分に収容されている。後述するように、端子金具40(図1)が軸孔12の後端側に挿入されることによって、頭部21は、縮内径部10zに向かって押圧される。この結果、頭部21の先端方向D1側の面と縮内径部10zの後端方向D2側の面とが密着する。そして、頭部21と縮内径部10zとの間は、周方向の全周に亘って、封止される。図中の位置Pzは、この封止された領域の先端方向D1側の端の位置である(以下、シール位置Pzとも呼ぶ)。
中心電極20の脚部22は、先端を含む第1部分27と、第1部分27と頭部21とを接続する第2部分29と、を有している。第1部分27の外径は、第2部分29の外径よりも小さい。
接地電極30(図2)は、主体金具50の先端面57の内周側の部分に形成され後端方向D2に向かって凹んだ凹部57Aに嵌め込まれている。図2に示すように、接地電極30は中央に貫通孔31を有するO字形状の板状部材(すなわち、円板部材)である。接地電極30は、厚み方向を軸線CO方向とし、絶縁体10の先端面16に当接した状態、あるいは、先端面16と微小な隙間(例えば、0.05mm以下の隙間)を有する状態で、凹部57Aに嵌め込まれ、そして、接地電極30の縁は、全周に亘って、レーザー溶接などによって主体金具50に接合されている。これにより、主体金具50と接地電極30は電気的に導通している。また、接地電極30は、主体金具50の先端方向D1側の開口を覆っている。なお、接地電極30は、主成分としてイリジウムを含む合金で形成されている(他の材料も採用可能である)。
なお、詳細は後述するが、絶縁体10の電極収容孔15内であって、中心電極20の先端方向D1側の面と、接地電極30の後端方向D2側の面との間には、プラズマを生成するためのキャビティCVが形成されている。中心電極20と接地電極30との間に電圧が印加されることによって、キャビティCV内の中心電極20と、中心電極20よりも先端方向D1側に配置された接地電極30との間(すなわち、ギャップ)で放電が生じる。
端子金具40(図1)は、軸線COに沿って延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼)で形成され、その表面は、防食のための金属層(例えば、Ni層)がめっきなどによって形成されている。端子金具40は、軸線方向の所定位置に形成された鍔部42と、鍔部42より後端側に位置するキャップ装着部41と、鍔部42より先端側の脚部43と、を有している。端子金具40の後端を含むキャップ装着部41は、絶縁体10の後端側に露出している。端子金具40の先端を含む脚部43は、絶縁体10の軸孔12に挿入されている。キャップ装着部41には、高圧ケーブル(図示省略)が接続されたプラグキャップが装着され、火花を発生するための高電圧が印加される。
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40の脚部43と中心電極20との間の領域には、導電性シール4が配置されている。この導電性シール4を通じて、端子金具40と中心電極20とは、電気的に導通している。導電性シール4は、例えば、金属粒子とガラスなどのセラミックス粒子を含む組成物で形成されている。
A−2.プラズマジェットプラグの動作:
図3は、点火装置120の例の概略構成を示すブロック図である。プラズマジェットプラグ100は、図3に一例を示す点火装置120に接続され、点火装置120から電力の供給を受けることにより、内燃機関の燃焼室内の混合気への点火を行う。
点火装置120は、例えば、自動車のECU(電子制御回路)からの指示に従ってプラズマジェットプラグ100に電力を供給する。点火装置120は、火花放電回路部140と、プラズマ放電回路部160と、制御回路部130、150と、逆流防止用の2つのダイオード145、165と、を有している。
火花放電回路部140は、プラズマジェットプラグ100の中心電極20と接地電極30の間のギャップに、高電圧を印加することで絶縁破壊させて火花放電を生じさせる、いわゆるトリガー放電を行うための電源回路である。火花放電回路部140は、ECUに接続された制御回路部130によって制御される。火花放電回路部140は、ダイオード145を介し、電力供給先となるプラズマジェットプラグ100の中心電極20に電気的に接続されている。
また、プラズマ放電回路部160は、火花放電回路部140によって行われるトリガー放電により絶縁破壊が生じたギャップに高エネルギーを供給するための電源回路である。プラズマ放電回路部160は、ECUに接続された制御回路部150によって制御される。プラズマ放電回路部160も同様に、逆流防止用のダイオード165を介し、プラズマジェットプラグ100の中心電極20に接続されている。なお、プラズマジェットプラグ100の接地電極30は、主体金具50を介し、接地されている。
プラズマ放電回路部160は、電気エネルギーを蓄えておくコンデンサ162と、コンデンサ162を充電するための高電圧発生回路161と、を有している。コンデンサ162は、一端が接地され、他端が、高電圧発生回路161と、上記ダイオード165を介して中心電極20に接続されている。ここで、1回のプラズマ噴出を行うため、火花ギャップに供給されるエネルギー量EG(単位は、mJ)は、トリガー放電によるエネルギーの供給量と、コンデンサ162からのエネルギーの供給量との和である。コンデンサ162の静電容量は、エネルギー量EGが、所定量となるように調整されている。なお、プラズマジェットプラグ100は、例えば、プラズマ放電回路部160を有していないタイプの点火装置、すなわち、トリガー放電によるエネルギーのみを供給するタイプの点火装置でも駆動することができるが、図3に示すような点火装置120を用いることによって、より高エネルギーのプラズマを生成することができる。
点火装置120によって高電圧が供給されることによって、プラズマジェットプラグ100のギャップで放電が生じると、点火装置120から供給されるエネルギーによって、図2に示すキャビティCV内の気体が励起されて、キャビティCV内にプラズマが形成される。キャビティCV内に形成されたプラズマが膨張し、キャビティCV内の圧力が高まると、キャビティCV内のプラズマは、火柱状に、接地電極30の貫通孔31から噴出される。噴出されたプラズマによって、内燃機関の燃焼室内の混合気が着火される。
A−3.プラズマジェットプラグ100の先端近傍の構成:
上記で説明したプラズマジェットプラグ100の先端近傍の構成について、さらに、詳細に説明する。図4は、プラズマジェットプラグ100の先端近傍を、軸線COが含まれる面で切断した断面図である。なお、図4では、先端方向D1は上向きであり、後端方向D2は下向きである。
電極収容孔15の内径は、中心電極20の脚部22を収容している部分から先端面16まで、一定である。中心電極20の脚部22は、中心電極20の先端面271を有する第1部分27と、第1部分27よりも大きな外径を有し第1部分27の後端側に接続された第2部分29と、を有している。第1部分27の形状は、外径Dを有し軸線COを中心とする円柱形状である。外径Dは、中心電極20の先端面271の外径、すなわち、径方向の幅Dということもできる。第2部分29は、軸線COを中心とする円柱形状を有し、頭部21(図2)と第1部分27とを接続している。第2部分29の外径は、電極収容孔15の内径よりも若干小さい。第2部分29の外周面292と脚長部13の内周面132との間の隙間STの幅(ここでは、径方向の幅)は、脚部22の熱膨張に起因して脚長部13が破損しない程度の小さい幅に、設定されている(おおよそ0.05mm程度)。この隙間STは、図2のシール位置Pzまで延びている。
キャビティCVは、中心電極20の表面と、絶縁体10の内面と、接地電極30の後端方向D2側の表面と、によって形成されている。具体的には、キャビティCVの主な部分は、接地電極30の後端方向D2側の表面309と、絶縁体10の電極収容孔15を形成する内周面132と、中心電極20の第2部分29の先端方向D1側の表面291と、中心電極20の第1部分27の外周面272と先端面271と、に囲まれる空間である。本実施形態では、キャビティCVは、さらに、上記の隙間STも含んでいる。接地電極30の貫通孔31は、キャビティCVから除外される。このように、キャビティCVは、貫通孔31から噴出する前のプラズマが到達し得る空間である。換言すれば、キャビティCVは、接地電極30の貫通孔31に連通する空間である。なお、図中の内径Eは、貫通孔31の内径である。本実施形態では、内径Eは、中心電極20の先端面271の外径Dよりも、小さい。
図2、図4には、キャビティCVの先部分CV1と後部分CV2とが示されている。先部分CV1は、キャビティCVのうちの、中心電極20の先端(ここでは、先端面271)よりも先端方向D1側の部分である。先部分CV1は、キャビティCVのうち火花が通ることが意図されている部分である。図中の第1容積V1は、先部分CV1の容積である。また、内径Rは、先部分CV1の内径である(キャビティ径Rとも呼ぶ)。本実施形態では、キャビティ径Rは、外径Dよりも、大きい。後部分CV2は、キャビティCVのうちの、中心電極20の先端(ここでは、先端面271)よりも後端方向D2側の部分である。後部分CV2は、キャビティCVのうち火花が通ることが意図されていない部分である。図2に示すように、後部分CV2は、シール位置Pzと中心電極20の先端(先端面271)との間の部分である。図中の第2容積V2は、後部分CV2の容積である。軸長Lは、キャビティCVの主な部分における中心電極20の軸線COの方向の長さである。すなわち、軸長Lは、中心電極20のうちキャビティCV内で突出する部分の長さである。本実施形態では、軸長Lは、中心電極20の先端面271と第2部分29の表面291との間の軸線COに平行な距離である。ギャップ長Gは、中心電極20と接地電極30との間の最短距離である。本実施形態では、ギャップ長Gは、中心電極20の先端面271と接地電極30の表面309との間の軸線COに平行な距離である。ギャップ長Gは、先部分CV1の軸線COに平行な長さと同じである。
図4中には、中心電極20から接地電極30へ至る放電経路の例として、3つの経路Q1、Q2、Q3が示されている。放電経路には、気中経路と、沿面経路と、の2種類の経路が考えられる。気中経路は、キャビティCV内の空間を通る経路である。沿面経路は、プラズマジェットプラグ100の部材の表面上(例えば、絶縁体10の内周面132上)を通る経路である。
第1経路Q1は、中心電極20の先端面271から、軸線COに平行に先端方向D1に延びて、キャビティCV内の空間を通って、接地電極30に至る気中経路である(気中経路Q1とも呼ぶ)。気中経路Q1は、中心電極20と接地電極30とを結ぶ最短の放電経路である。本実施形態では、このような気中経路Q1に沿って放電が生じることが、想定されている。
第2経路Q2は、第1部分Q21と第2部分Q22とで構成されている。第1部分Q21は、中心電極20の先端(先端面271の縁)から絶縁体10の内周面132に至る径方向の気中経路である。第2部分Q22は、絶縁体10の内周面132上における第1部分Q21の端の位置から、絶縁体10の内周面132に沿って、軸線COに平行に先端方向D1に延びて、接地電極30に至る沿面経路である。
第3経路Q3は、絶縁体10の内周面132上における、中心電極20の第2部分29の先端方向D1側の端と径方向に対向する位置から、絶縁体10の内周面132に沿って、軸線COに平行に先端方向D1に延びて、接地電極30に至る沿面経路である(沿面経路Q3とも呼ぶ)。
沿面経路を含む経路に沿って放電が生じる場合には、沿面経路の長さが短いことが好ましい。この理由は、以下の通りである。すなわち、沿面経路を通る放電が生じる場合、火花のエネルギーによって絶縁体10が損傷を受け得る。例えば、絶縁体10に傷や、チャンネリングと呼ばれる溝状の削れなどが発生し得る。この結果、プラズマジェットプラグ100の耐久性能が低下し得る。
また、沿面経路を通る放電が生じる場合には、放電経路が接地電極30の貫通孔31から遠い位置を通る。プラズマは、放電経路に沿って生じる。従って、沿面経路を通る放電が生じる場合には、貫通孔31から遠い位置でプラズマが生成されるので、プラズマの噴出力が低下し易い。プラズマの噴出力が低下すると、燃焼室内の混合気に着火するためのエネルギーが低下するので、プラズマジェットプラグ100の着火性能が低下する。
また、プラズマの噴出力は、キャビティCVの容積が過度に大きい場合に、低下し易い。この理由は、キャビティCVの容積に対して放電によって生成されたプラズマによるエネルギーが小さいので、キャビティCV内の圧力上昇が小さくなり、噴出力が低下するからである。上記のチャンネリングが発生すると、キャビティCVの容積が大きくなるので、プラズマの噴出力が低下し得る。
プラズマジェットプラグ100の構成と性能との関係を評価するために、プラズマジェットプラグのサンプルを用いた評価試験を行った。評価試験では、図4の第1実施形態のサンプルに加えて、以下に説明する第2実施形態のサンプルと、第3実施形態のサンプルも、評価された。まず、これらの実施形態について説明し、次に、評価試験について説明する。
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態のプラズマジェットプラグ100aの説明図である。図中には、プラズマジェットプラグ100aの先端近傍を、軸線COが含まれる面で切断した断面図が示されている。図4のプラズマジェットプラグ100との差異は、中心電極20aの脚部22aの第1部分27aと第2部分29aとの接続位置が後端方向D2側に移動している点と、絶縁体10aに小径部13kが追加されている点と、だけである。プラズマジェットプラグ100aの他の構成は、図1、図2、図4のプラズマジェットプラグ100の構成と同じである。以下、プラズマジェットプラグ100aの要素のうちプラズマジェットプラグ100の要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
中心電極20aの脚部22aの第1部分27aの構成は、図4の第1部分27を後端方向D2に延長して得られる構成と同じである。図中の外径Dは、中心電極20aの先端面27a1の外径である。本実施形態では、外径Dは、第1部分27aの外径である。脚部22aの第2部分29aの構成は、図4の第2部分29を後端方向D2に短縮して得られる構成と同じである。第2部分29aの先端方向D1側に、第1部分27aが接続されている。
絶縁体10aの脚長部13aの構成は、図4の脚長部13に、小径部13kを追加して得られる構成と同じである。小径部13kの形状は、軸線COを中心とする円筒状である。脚長部13aのうち小径部13k以外の部分の内周面13a2の構成は、図4の内周面132の構成と、同じである。小径部13kの内径は、脚長部13aの内周面13a2の内径よりも、小さい。小径部13kは、中心電極20aの第2部分29aの先端方向D1側に配置されている。中心電極20の第1部分27aは、小径部13kの内周側に配置されている。第1部分27aの先端部は、小径部13kよりも先端方向D1側に突出している。小径部13kの内径は、第1部分27aの外径よりも若干大きい。小径部13kの先端方向D1側の表面13k1から後端方向D2側では、絶縁体10aと中心電極20aとの間の隙間STaは、図4の隙間STと同程度の幅を有し、そして、図2のシール位置Pzまで延びている。以下、小径部13kの先端方向D1側の表面13k1を、「先端側表面13k1」とも呼ぶ。
図中のキャビティCVaは、中心電極20aの表面と、絶縁体10aの軸孔12aを形成する内面と、接地電極30の後端方向D2側の表面309と、によって形成されている。具体的には、キャビティCVaの主な部分は、接地電極30の後端方向D2側の表面309と、絶縁体10aの電極収容孔15aを形成する内周面13a2のうち小径部13kよりも先端方向D1側の部分と、小径部13kの先端側表面13k1と、中心電極20aの第1部分27aの外周面27a2と先端面27a1と、に囲まれる空間である。本実施形態では、キャビティCVaは、さらに、上記の隙間STaを含んでいる。
図中には、キャビティCVaの先部分CV1aと後部分CV2aとが示されている。先部分CV1aは、キャビティCVaのうちの、中心電極20aの先端(ここでは、先端面27a1)よりも先端方向D1側の部分である。第1容積V1は、先部分CV1aの容積である。キャビティ径Rは、先部分CV1aの内径である。後部分CV2aは、キャビティCVaのうちの、中心電極20aの先端(ここでは、先端面27a1)よりも後端方向D2側の部分である。後部分CV2aは、シール位置Pz(図2)と中心電極20aの先端(先端面27a1)との間の部分である。第2容積V2は、後部分CV2aの容積である。軸長Lは、キャビティCVaの主な部分における中心電極20aの軸線COの方向の長さである。すなわち、軸長Lは、中心電極20aのうちキャビティCVa内で突出する部分の長さである。本実施形態では、軸長Lは、中心電極20aの先端面27a1と絶縁体10aの小径部13kの先端側表面13k1との間の軸線COに平行な距離である。ギャップ長Gは、中心電極20aと接地電極30との間の最短距離である。本実施形態では、ギャップ長Gは、中心電極20aの先端面27a1と接地電極30の表面309との間の軸線COに平行な距離である。
図中には、中心電極20aから接地電極30へ至る放電経路の例として、3つの経路Q1、Q2、Q3aが示されている。第1経路Q1と第2経路Q2とは、図4の第1経路Q1と第2経路Q2と、同じである。第3経路Q3aは、中心電極20aの第1部分27aの外周面27a2から、小径部13kの先端側表面13k1上を径方向に延びて内周面13a2に至り、そして、内周面13a2上を軸線COに平行に先端方向D1に延びて、接地電極30に至る沿面経路である(沿面経路Q3aとも呼ぶ)。
C.第3実施形態:
図6は、第3実施形態のプラズマジェットプラグ100bの説明図である。図中には、プラズマジェットプラグ100bの先端近傍を、軸線COが含まれる面で切断した断面図が示されている。図5のプラズマジェットプラグ100との差異は、中心電極20bの脚部22bのうち、小径部13kの先端側表面13k1よりも先端方向D1側の部分27bの外径が、絶縁体10aの小径部13kの内周側に配置された部分28bの外径よりも、小さい点だけである。プラズマジェットプラグ100bの他の構成は、図5のプラズマジェットプラグ100aの構成と同じである。以下、プラズマジェットプラグ100bの要素のうちプラズマジェットプラグ100aの要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
中心電極20bの脚部22bの第2部分29aの構成は、図5の第2部分29aの構成と同じである。
中心電極20bの脚部22bのうち、絶縁体10aの小径部13kの内周側に収容された部分28b(「中部分28b」と呼ぶ)の構成は、図5の第1部分27aのうち小径部13kの内周側に収容された部分の構成と同じである。中部分28bの形状は、軸線COを中心とする円柱形状である。絶縁体10aと中心電極20bとの間の隙間STaは、図5の隙間STaと同じである。
中心電極20bの脚部22bのうち、絶縁体10aの小径部13kの先端側表面13k1から先端方向D1に突出した部分27b(「突出部27b」と呼ぶ)の形状は、軸線COを中心とする円柱形状である。突出部27bの外径は、中部分28bの外径よりも小さい。図中の外径Dは、中心電極20aの先端面27b1の外径である。本実施形態では、外径Dは、突出部27bの外径である。
図中のキャビティCVbは、中心電極20bの表面と、絶縁体10aの軸孔12aを形成する内面と、接地電極30の後端方向D2側の表面309と、によって形成されている。具体的には、キャビティCVbの主な部分は、接地電極30の後端方向D2側の表面309と、絶縁体10aの電極収容孔15aを形成する内周面13a2のうち小径部13kよりも先端方向D1側の部分と、小径部13kの先端側表面13k1と、中心電極20bの中部分28bの先端方向D1側の表面28b1と、突出部27bの外周面27b2と先端面27b1と、に囲まれる空間である。本実施形態では、キャビティCVbは、さらに、上記の隙間STaを含んでいる。
図中には、キャビティCVbの先部分CV1bと後部分CV2bとが示されている。先部分CV1bは、キャビティCVbのうちの、中心電極20bの先端(ここでは、先端面27b1)よりも先端方向D1側の部分である。第1容積V1は、先部分CV1bの容積である。キャビティ径Rは、先部分CV1bの内径である。後部分CV2bは、キャビティCVbのうちの、中心電極20bの先端(ここでは、先端面27b1)よりも後端方向D2側の部分である。後部分CV2bは、シール位置Pz(図2)と中心電極20bの先端(先端面27b1)との間の部分である。第2容積V2は、後部分CV2bの容積である。軸長Lは、キャビティCVbの主な部分における中心電極20bの軸線COの方向の長さである。すなわち、軸長Lは、中心電極20bのうちキャビティCVb内で突出する部分の長さである。本実施形態では、軸長Lは、中心電極20bの先端面27b1と絶縁体10aの小径部13kの先端側表面13k1との間の軸線COに平行な距離である。ギャップ長Gは、中心電極20bと接地電極30との間の最短距離である。本実施形態では、ギャップ長Gは、中心電極20bの先端面27b1と接地電極30の表面309との間の軸線COに平行な距離である。
図中には、中心電極20bから接地電極30へ至る放電経路の例として、3つの経路Q1、Q2b、Q3aが示されている。第1経路Q1と第3経路Q3aとは、図5の第1経路Q1と第3経路Q3aと、同じである。第2経路Q2bは、第1部分Q21bと第2部分Q22とで構成されている。第1部分Q21bは、中心電極20bの先端(先端面27b1の縁)から絶縁体10aの内周面13a2に至る径方向の気中経路である。第2部分Q22は、図5の第2部分Q22と同じである。具体的には、第2部分Q22は、絶縁体10の内周面13a2上における第1部分Q21bの端の位置から、絶縁体10aの内周面13a2に沿って、軸線COに平行に先端方向D1に延びて、接地電極30に至る沿面経路である。
D.評価試験:
プラズマジェットプラグのサンプルを用いた評価試験について説明する。この評価試験では、プラズマの噴出性能と、チャンネリングの生じ易さと、耐久性と、が評価された。以下の表1は、第1評価試験の結果を示している。
表1は、サンプルの番号と、第1容積V1と、第2容積V2と、第2容積V2に対する第1容積V1の割合VRと、サンプルの形状と、接地電極30の貫通孔31の内径Eと、中心電極の先端面の外径Dと、噴出性能の評価結果と、チャンネリングの評価結果と、耐久性の評価結果と、の対応関係を示している。容積V1、V2と割合VRとは、中心電極の各部分の寸法と絶縁体の各部分の寸法とからの計算値である。第1容積V1は、小数第2位で四捨五入され、第2容積V2は、小数第2位で四捨五入され、割合VRは、小数第4位で四捨五入されている。容積V1、V2の単位は、「mm3」である。形状は、プラズマジェットプラグの符号(具体的には、100(図4)、100a(図5)、100b(図6)のいずれか)によって、表されている。表に示すように、15番の形状は、図5のプラズマジェットプラグ100aの形状と同じであり、16番の形状は、図6のプラズマジェットプラグ100bの形状と同じであり、他のサンプルの形状は、図4のプラズマジェットプラグ100の形状と同じである。内径Eと外径Dとの単位は、「mm」である。
ここで、各サンプルの構成について、補足する。全てのサンプルのキャビティ径Rは、3.5mmであった。8番から14番の4個のサンプルのギャップ長Gは、0.5mmであり、他のサンプルのギャップ長Gは、0.8mmであった。表1に示すように、1番から7番の7個のサンプルの間では、第1容積V1(7.7mm3)が共通で、第2容積V2が互いに異なっている。8番から14番の7個のサンプルの間では、第1容積V1(4.8mm3)が共通で、第2容積V2が互いに異なっている。15番から18番の4個のサンプルの間では、第1容積V1(7.7mm3)と第2容積V2(38.0mm3)とが共通で、形状と内径Eとのいずれかが互いに異なっている。19番から21番の3個のサンプルの間では、第1容積V1(7.7mm3)が共通で、第2容積V2と外径Dとが互いに異なっている。第2容積V2の調整は、軸長L(すなわち、中心電極の先端部の長さと絶縁体の脚長部の長さ)を調整することによって、実現された。
噴出性能の評価試験では、いわゆるシュリーレン撮影により、接地電極30の貫通孔31から噴出されたプラズマ(フレーム)のサイズを測定した。具体的には、0.6MPaに加圧したチャンバー内で、所定の電源装置(ここでは、フルトランジスタ点火装置)を用いて、100mJの放電エネルギーを供給して、1回の火花放電を行った。そして、火花放電から100μs後に、接地電極30の貫通孔31から噴出されたプラズマのシュリーレン画像を撮影した。そして、撮影されたシュリーレン画像を所定の閾値で二値化して、シュリーレン画像を構成する複数個の画素を、高密度部分を表す画素と、低密度部分を表す画素と、に分類した。そして、高密度部分を表す画素の個数を、噴出されたプラズマのサイズとして算出した。噴出されたプラズマのサイズは、プラズマの噴出力が大きいほど大きくなる。なお、サンプルごとに10回のシュリーレン撮影を実行し、10回の撮影により算出されたプラズマのサイズの平均値を、そのサンプルのプラズマのサイズとした。
表1中の噴出性能のA、B、Cの評価は、以下の結果を示している。
A評価: 1500画素≦プラズマサイズ
B評価: 800画素≦プラズマサイズ<1500画素
C評価: プラズマサイズ< 800画素
チャンネリングの評価試験では、所定回数(ここでは、50回)の放電を行い、沿面経路を含む経路を通る放電の回数に対する沿面経路を通らずに気中経路のみを通る放電の回数の割合が評価された(「気中割合」と呼ぶ)。具体的には、放電可能な高電圧をサンプルに印加して、1回の火花放電を行った。高速度カメラを用いて、接地電極30の貫通孔31を通じて、キャビティ内の放電経路を撮影した。そして、撮影された画像を用いて、放電が沿面経路を通ったか否かを確認した。このような処理を50回行って、気中割合を算出した。表1中のチャンネリングのA、B、Cの評価は、以下の結果を示している。
A評価: 0.7≦気中割合
B評価: 0.5≦気中割合<0.7
C評価: 気中割合<0.5
耐久性の評価試験では、まず、各サンプルに対して所定の耐久試験を行った。耐久試験では、各サンプルに対し、1秒間に20回の火花放電を発生させる放電試験を30時間行った。この耐久試験済のサンプルに対して、上記のチャンネリングの評価試験を行った。表1中の耐久性のA、B、Cの評価の基準は、上記のチャネリングのA、B、Cの評価の基準と同じである。
1番から7番、そして、8番から14番が示すように、割合VRが小さい場合の噴出性能(C評価:VR=0.194)よりも、割合VRが大きい場合の噴出性能(B評価:VR=0.203、0.212、0.223、0.581、0.622、0.670、0.209、0.227、0.247、0.544、0.605、0.681)の方が、良好であった。この理由は、割合VRが大きい場合には、キャビティの容積が過度に大きくなることを抑制しつつ、キャビティの先部分で適切にプラズマを生成できるからだと推定される。
また、1番から7番の第1容積V1は、7.7mm3であり、8番から14番の第1容積V1は、4.8mm3であった。このように大きく異なる2つの第1容積V1に対して、割合VRが0.20未満である場合(1番と8番)、噴出性能がC評価であり、割合VRが0.20以上である場合(2番から7番、9番から14番)、噴出性能がB評価であった。以上により、種々の第1容積V1に対して、0.20以上の割合VRを適用することによって、噴出性能を向上できると推定される。
また、1番から7番、そして、8番から14番が示すように、割合VRが大きい場合のチャンネリングの評価結果(C評価:VR=0.670、0.681)よりも、割合VRが小さい場合のチャンネリングの評価結果(B評価:VR=0.194、0.203、0.212、0.223、0.581、0.622、0.209、0.227、0.247、0.544、0.605)の方が、良好であった。この理由は、以下のように推定される。すなわち、割合VRが小さい場合には、先部分CV1(図4)の容積V1に対する後部分CV2の第2容積V2の割合が大きい。従って、中心電極20の先端(ここでは、先端面271)よりも後端方向D2側で絶縁体10の内周面132を通る放電経路(例えば、第3経路Q3)の長さが長くなる傾向にある。この結果、沿面経路を含む放電経路(例えば、第3経路Q3)を通る放電の可能性を低減でき、チャンネリングの評価結果が向上する。
また、1番から7番の第1容積V1は、7.7mm3であり、8番から14番の第1容積V1は、4.8mm3であった。このように大きく異なる2つの第1容積V1に対して、割合VRが0.622を超える場合(7番と14番)、チャンネリングの評価結果がC評価であり、割合VRが0.622以下である場合(1番から6番、8番から13番)、チャンネリングの評価結果がB評価であった。以上により、種々の第1容積V1に対して、0.622以下、ひいては、0.62以下の割合VRを適用することによって、チャンネリングの評価結果を向上できると推定される。
また、1番から14番のいずれのサンプルも、B評価の耐久性を実現できた。従って、0.20以上の割合VRを採用することによって、絶縁体の損傷を抑制しつつ、噴出性能を向上できると推定される。また、0.62以下の割合VRを採用することによって、絶縁体の損傷を抑制しつつ、チャンネリングの評価結果を向上できると推定される。
さらに、第2実施形態のサンプルである15番と、第3実施形態のサンプルである16番と、貫通孔31の内径Eが変更された17番、18番と、中心電極の外径Dが変更された19番、20番、21番に関しても、割合VRが0.20以上であり、そして、噴出性能がB評価以上であった。以上により、プラズマジェットプラグの種々の構成(例えば、パラメータD、E、G、Lの種々の値や、図4、図5、図6に示す種々の構成)に対して、0.20以上の割合VRを適用することによって、噴出性能を向上できると推定される。
また、これら15番から21番に関して、割合VRは0.62以下であり、そして、チャンネリングの評価結果はB評価以上であった。以上により、プラズマジェットプラグの種々の構成(例えば、パラメータD、E、G、Lの種々の値や、図4、図5、図6に示す種々の構成)に対して、0.62以下の割合VRを適用することによって、チャンネリングの評価結果を向上できると推定される。
なお、B評価以上の噴出性能とB評価以上のチャンネリングの評価結果とを実現した割合VRは、0.203(2番、15番、16番、17番、18番)、0.209(9番)、0.212(3番)、0.216(19番)、0.223(4番)、0.227(10番)、0.228(20番)、0.247(11番)、0.268(21番)、0.544(12番)、0.581(5番)、0.605(13番)、0.622(6番)の17個のサンプルを用いて評価された13個の値であった。これらの13個の値から任意に選択された値を、割合VRの好ましい範囲(下限以上、上限以下)の下限として採用可能である。例えば、割合VRとして、0.203以上の値を採用してもよい。また、評価された割合VRのうち、上記の13個の値の最小値である0.203よりも小さい割合VRのうちの最大の割合VRは、0.194である。そこで、これらの値(0.194と0.203)の間の値、例えば、0.20を、割合VRの好ましい範囲の下限として採用してもよい。また、これら13個の値のうち、下限以上の任意の値を上限として採用してもよい。例えば、割合VRとして、0.622以下の値、ひいては、0.62以下の値を採用してもよい。なお、割合VRの下限と上限は、プラズマジェットプラグの種々の構成(例えば、パラメータD、E、G、Lの種々の値や、図4、図5、図6に示す種々の構成)に対して、適用可能と推定される。
また、同程度の割合VRと共通の第1容積V1とを有する1番から4番、17番、18番が示すように、接地電極30の内径Eが大きい場合の噴出性能(B評価以下:E=1.0(mm))よりも、内径Eが小さい場合の噴出性能(A評価:E=0.7、0.5(mm))の方が、良好であった。この理由は、放電によるキャビティ内の圧力上昇が同じ場合に、内径Eが大きい場合よりも小さい場合の方が、貫通孔31から噴出するプラズマの勢いを増すことができるからだと推定される。
なお、A評価の噴出性能を実現した内径Eは、0.7mm(17番)と、0.5mm(18番)との2個の値であった。これら2個の値から任意に選択された値を、内径Eの好ましい範囲(下限以上、上限以下)の上限として採用可能である。例えば、内径Eとして、0.7mm以下の値を採用してもよい。また、これら2個の値のうち、上限以下の任意の値(例えば、0.5mm)を下限として採用してもよい。なお、内径Eの下限としては、さらに小さい値(例えば、0.2mm)を採用可能である。0.2mm以上の内径Eを採用すれば、プラズマが貫通孔31から噴出できなくなることを抑制できる。
内径Eと噴出性能との関係は、主に、放電によるキャビティ内の圧力上昇から大きな影響を受けると推定される。キャビティと中心電極と接地電極との具体的な構成(例えば、パラメータD、G、Lの値や、図4、図5、図6等の構成)からの影響は、小さいと推定される。従って、B評価以上の噴出性能を実現可能な種々のプラズマジェットプラグ、例えば、0.20以上の割合VRを有する種々のプラズマジェットプラグに、内径Eの上記の好ましい範囲を適用可能と推定される。ただし、内径Eが、上記の好ましい範囲外であってもよい。
また、共通の第1容積V1と同程度の割合VRとを有する1番から4番、19番、20番、21番が示すように、中心電極の先端面の外径Dが小さい場合の耐久性(B評価:D=1.0(mm))よりも、外径Dが大きい場合の耐久性(A評価:D=1.3、1.5、1.7(mm))の方が、良好であった。この理由は、外径Dが小さい場合よりも大きい場合の方が、中心電極の消耗に起因するギャップ長G(中心電極と接地電極との最短距離)の増大を抑制できるからである。
なお、A評価の耐久性を実現した外径Dは、1.3mm(19番)、1.5mm(20番)と、1.7mm(21番)との3個の値であった。これら3個の値から任意に選択された値を、外径Dの好ましい範囲(下限以上、上限以下)の下限として採用可能である。例えば、外径Dとして、1.3mm以上の値を採用してもよい。また、これら3個の値のうち、下限以上の任意の値(例えば、1.7mm)を上限として採用してもよい。
また、外径Dの上限としては、さらに大きい値(例えば、2.0mm)を採用してもよい。ただし、外径Dが過剰に大きい場合には、中心電極の先端面と絶縁体の内面との間の径方向の最短距離(例えば、図4の(R−D)/2)が短くなるので、沿面経路を含む放電経路(例えば、図4の第2経路Q2)を通る放電が生じ易い。従って、外径Dの上限は、沿面経路を含む放電経路よりも、気中経路のみを含む放電経路(例えば、図4の気中経路Q1)で放電が生じ易いように、決定されることが好ましい。
ここで、同じ経路長であっても、気中経路の抵抗は、沿面経路の抵抗より大きいことが知られている。そして、沿面経路の経路長を、気中経路の経路長の2倍以上確保すれば、同じ電圧が印加された場合に、気中経路で火花放電を発生させることができると考えられる。したがって、沿面経路の経路長に係数として(1/2)を乗じて得られる値を用いて算出される補正付き経路長を用いることによって、2つの経路の間で、放電の生じ易さを比較可能と考えられる。例えば、図4の実施形態では、沿面経路を含む第2経路Q2の補正付き経路長が、気中経路Q1の経路長以上になるように、外径Dの上限を決定すれば、気中経路Q1で火花放電を発生させることができると考えられる。ここで、第2経路Q2は、第1部分Q21(距離=(R−D)/2)+第2部分Q22(距離=G)であるので、第2経路Q2の補正付き経路長は、「(R−D)/2+G/2=(R−D+G)/2」である。気中経路Q1の経路長は、距離Gとほぼ等しい。したがって、(R−D+G)/2≧G、すなわち、(R−G)≧Dを満たすように、外径Dを決定することが好ましい。このように、外径Dとしては、「キャビティ径R−ギャップ長G」以下の値を採用することが、好ましい。図5、図6の実施形態を採用する場合も、同様に、外径Dの上限を決定可能である。いずれの場合も、中心電極の先端面の外径Dは、接地電極30の貫通孔31の内径Eよりも、大きいことが好ましい。
また、外径Dと耐久性との関係は、主に、中心電極が消耗した場合の中心電極と接地電極との間の最短距離の変化(増大)から大きな影響を受けると推定される。キャビティと中心電極と接地電極との具体的な構成(例えば、パラメータE、G、Lの値や、図4、図5、図6等の構成)からの影響は、小さいと推定される。従って、B評価以上の噴出性能を実現可能な種々のプラズマジェットプラグ、例えば、0.20以上の割合VRを有する種々のプラズマジェットプラグに、外径Dの上記の好ましい範囲を適用可能と推定される。ただし、外径Dが、上記の好ましい範囲外であってもよい。
また、同程度の割合VRと共通の第1容積V1とを有する1番から4番、15番、16番が示すように、第1実施形態のサンプル(1番から4番)のチャンネリングの評価結果(B評価)よりも、第2実施形態のサンプル(15番)と第3実施形態のサンプル(16番)のチャンネリングの評価結果(A評価)の方が、良好であった。
この理由は、以下のように推定される。すなわち、図5、図6の実施形態では、キャビティCVa、CVbは、先端側に形成される先部分CV1a、CV1b(第1部分CV1a、CV1bとも呼ぶ)の内径Rよりも小さい内径を有する部分CVsa、CVsbを含んでいる(以下、「第2部分CVsa、CVsb」と呼ぶ)。第2部分CVsa、CVsbは、絶縁体10aの小径部13kの内周面13k2によって形成される部分である。そして、第2部分CVsa、CVsbは、第1部分CV1a、CV1bよりも後端方向D2側に位置している。このような構成は、絶縁体10aが、内径Rよりも小さい内径を有する部分(ここでは、小径部13k)を含むことによって、実現される。このような構成においては、中心電極20a、20bから絶縁体10aの内面上のみを通って接地電極30に至る放電経路Q3aは、小径部13kの先端側表面13k1を通るので、図4の沿面経路Q3と比べて長くなりやすい。この結果、図4の実施形態と比べて、図5、図6の実施形態では、沿面経路Q3aを通る放電が生じる可能性を低減できる。以上により、第1実施形態のサンプル(1番から4番)よりも、第2実施形態のサンプル(15番)と第3実施形態のサンプル(16番)の方が、チャンネリングの評価結果が良いと推定される。
なお、キャビティのうち先端側に形成される第1部分(例えば、図5、図6の第1部分CV1a、CV1b)の内径Rよりも小さい内径を有する第2部分は、中心電極の先端よりも先端方向D1側に配置される部分を含んでも良い。ただし、沿面経路のみを通る放電を抑制するためには、図5、図6の実施形態のように、第2部分CVsa、CVsbが、中心電極の先端(ここでは、先端面27a1、27b1)よりも後端方向D2側に位置していることが好ましい。このように、絶縁体が、中心電極の先端よりも後端方向D2側においてキャビティの内径が先端方向D1に向かって大きくなる拡径部(例えば、図5の小径部13kの先端側表面13k1を形成する部分)を有する場合には、中心電極の先端と絶縁体の内面との間の径方向の最短距離を大きくできる。従って、沿面経路を通る放電が生じる可能性を低減できる。
E.変形例:
(1)接地電極30の貫通孔31の断面形状(具体的には、軸線COに垂直な断面形状)が、非円形状であってもよい。いずれの場合も、貫通孔31の最大幅(具体的には、軸線COに垂直な断面における最大幅)が、上記の内径Eの好ましい範囲内であることが好ましい。
(2)中心電極の先端面の形状が、非円形状であってもよい。いずれの場合も、中心電極の先端の最大幅(具体的には、中心電極の先端面の軸線COに垂直な方向の最大幅)が、上記の外径Dの好ましい範囲内であることが好ましい。
(3)接地電極の貫通孔の最大幅は、中心電極の先端面の最大幅よりも大きくてもよく、中心電極の先端面の最大幅と同じであってもよく、中心電極の先端面の最大幅よりも小さくてもよい。また、接地電極の貫通孔の中心軸がプラズマジェットプラグの軸線COから離れた位置に配置されるように、接地電極の貫通孔が形成されていてもよい。同様に、中心電極の先端面の中心軸がプラズマジェットプラグの軸線COから離れた位置に配置されるように、中心電極が構成されていてもよい。いずれの場合も、軸線COに垂直な投影面に接地電極と中心電極とを軸線COに平行に投影する場合に、その投影面上において、接地電極の貫通孔の少なくとも一部が、中心電極の先端面に重なっていることが好ましい。こうすれば、放電は、接地電極の貫通孔の近傍を通る経路で生じ易いので、着火性能を向上できる。なお、上記の投影面上において、接地電極の貫通孔と、中心電極の先端面と、のうちの一方の全体が他方の内に包含されてもよい。また、貫通孔の一部が先端面の外に配置されてもよい。また、先端面の一部が貫通孔の外に配置されてもよい。
(4)中心電極の構成としては、上記の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、図4の第1部分27と第2部分29との間に、後端側から先端側に向かって外径が小さくなる円錐台の形状の部分が設けられても良い。また、中心電極の先端に、放電に対する耐久性の良好なチップが接続(例えば、溶接)されていてもよい。チップの材料としては、高融点金属を採用可能である。高融点金属としては、例えば、貴金属(例えば、イリジウム、白金等)、タングステン、貴金属とタングステンとから選択された金属を主成分として含む合金、などを採用可能である。
(5)接地電極30の構成としては、上記の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、接地電極30のうちの放電が生じる部分(例えば、図4の貫通孔31を形成する部分、すなわち、内周面を含む部分)は、中心電極の材料として説明した上記の高融点の金属材料によって形成されていることが好ましい。高融点の金属材料を用いることによって、火花放電による接地電極30の消耗を抑制することができる。
なお、接地電極30のうちの、高融点の金属材料(例えば、主成分として貴金属またはタングステンを含む材料)で形成される部分は、接地電極30のうちの放電が生じる部分を含むことが好ましく、また、接地電極30の一部分であってもよい。ここで、中心電極の放電が生じる部分と接地電極の放電が生じる部分との間で、材料が異なっていても良い。また、接地電極30から、高融点の材料で形成される部分が省略されてもよい。この場合、接地電極30の材料としては、例えば、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金を採用可能である。
(6)プラズマジェットプラグの構成としては、上記の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、キャビティの先部分(例えば、図4の先部分CV1)の内径が、軸線COの方向の位置に応じて変化してもよい。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。