発明の詳細な説明
I.定義
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、冠詞の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)の文法上の目的語を指すために本明細書において用いられる。一例として、「1つの(an)抗体」は1つの抗体または複数の抗体を意味する。
「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下で定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークもしくは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは同じアミノ酸配列を含んでもよく、アミノ酸配列変化を含んでもよい。一部の態様において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。一部の態様において、VLアクセプターヒトフレームワークはVLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「親和性」という用語は、分子(例えば、ポリペプチドまたは抗体)の1つの結合部位と、その結合パートナー(例えば、標的または抗原)との非共有結合相互作用の合計の強さを意味する。特に定めのない限り、本明細書で使用する「結合親和性」とは、結合ペアのメンバーとの間で(例えば、ポリペプチド-ポリヌクレオチド-複合体の中の結合ペアのメンバーとの間で、またはポリペプチドとその標的との間で、または抗体とその抗原との間で)1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は一般的に解離定数(kD)で表すことができる。親和性は当技術分野において公知であり、本明細書において報告された方法も含む一般的な方法、例えば、表面プラズモン共鳴によって測定することができる。
「親和性成熟」抗体とは、変化を有さない親抗体と比較して1つまたは複数の超可変領域(HVR)に1つまたは複数の変化があり、このような変化の結果として抗原に対する抗体の親和性が改善している抗体を指す。
「ケージド(caged)」という用語は、血清中および体液中で制御された半減期を有する保護基によってエフェクターが保護されていることを意味する。保護基は内因性酵素によって酵素的に切断されてもよい。保護基は、注射によって外部から投与された、または経口により与えられた第2のエフェクター、例えば、アスコルビン酸によって除去、切断、分解、酵素的に消化、または代謝されてもよい。ケージドエフェクター分子は、体液中に天然にある酵素によって活性化されてもよい。ケージドエフェクター部分は、体液中にも発生する還元剤、例えば、アスコルビン酸によって活性化されてもよい。
「エフェクター部分」という用語は、細胞の中に送達されることが望ましい、および/または細胞に局在することが望ましい活性を有する任意の分子または分子の組み合わせを意味する。エフェクター部分には、標識、細胞毒(例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)エキソトキシン、リシン、アブリン、ジフテリア毒素など)、酵素、増殖因子、転写因子、薬物、放射性核種、リガンド、抗体、抗体Fc領域、リポソーム、ナノ粒子、ウイルス粒子、サイトカインなどが含まれるが、これに限定されない。
本明細書において「抗体」という用語は最も広い意味で用いられ、望ましい抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体および抗体断片を含むが、これに限定されない様々な抗体構造を含む。
「抗体断片」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する完全な抗体または完全長抗体の断片を意味する。抗体断片の例には、Fv、FAB、FAB'、FAB'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv)が含まれるが、これに限定されない。ある特定の抗体断片の総説については、Hudson, P.J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照されたい。さらに詳細には、「抗体断片」という用語の中には、(i)FAB断片、すなわち、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価抗体断片(サルベージ(salvage)受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期の長いFABおよびF(ab')2断片の議論については、US5,869,046を参照されたい)、(ii)F(ab')2断片、すなわち、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFAB断片を含む二価断片、(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)1本のアームの抗体のVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片(例えば、Plueckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.), (Springer-Verlag, New York), (1994) pp. 269-315、WO93/16185、US5,571,894、US5,587,458を参照されたい)、(v)VHドメインからなるdAb断片(例えば、Ward, E.S., et al., Nature 341 (1989) 544-546を参照されたい)、ならびに(v(i)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いて、VL領域およびVH領域が対になって一価分子を形成した1本のタンパク質鎖として作製ことを可能にする合成リンカーによってつなぐことができる(単鎖Fv(scFv)と知られる。例えば、Bird, R.E., et al., Science 242 (1988) 423-426; Huston, J.S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988) 5879-5883を参照されたい)。これらの抗体断片は当業者に公知の従来の技法を用いて入手することができ、インタクトな抗体と同じやり方で結合特性についてスクリーニングすることができる。
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて参照抗体とその抗原との結合を50%以上ブロックする抗体を指す。逆に、参照抗体は競合アッセイにおいて抗体とその抗原との結合を50%以上ブロックする。
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部がある特定の供給源または種に由来するが、重鎖および/または軽鎖の残りが異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
抗体の「クラス」とは、抗体重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体には5種類の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
「化学療法剤」は癌の治療において有用な化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロスフォスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(商標));アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアミルアミン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロロフォスファミド(chlorophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アウトラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ユベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬(anti-adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤(replenisher)、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリニック酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポプロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標), Rh6ne-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-II;35トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ならびに前記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節する、または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)を含む;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、およびゴセレリン;ならびに前記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も含まれる。
「抗血管新生剤」とは、血管の発達をブロックする、またはある程度まで妨害する化合物を指す。抗血管新生剤は、例えば、血管形成の促進に関与する増殖因子または増殖因子受容体に結合する低分子または抗体でもよい。抗血管新生因子は、1つの態様では、血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体である。
「サイトカイン」という用語は、ある細胞集団によって放出され、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質の一般的な用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中には、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;リラキシン;プロレラキシン(prorelaxin);糖タンパク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体ホルモン(LH);肝臓増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-aおよび-P;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えば、NGF-p;血小板増殖因子;トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF- aおよびTGF-p;インシュリン様増殖因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えば、インターフェロン-a、-P、および-y;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、マクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);および顆粒球-CSF(GCSF);インターロイキン(IL)、例えば、IL-I、IL-la、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-IO、IL-II、IL-12;腫瘍壊死因子、例えば、TNF-αまたはTNF-P;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で使用するサイトカインという用語は、天然供給源または組換え細胞培養に由来するタンパク質および天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
「fMLP」という用語は、N-ホルミルメチオニン、ロイシン、およびフェニルアラニンからなるトリペプチドを意味する。1つの態様において、エフェクター部分はfMLPまたはその誘導体である。
「患者の表現型」という用語は、患者に由来する、ある種の細胞にある細胞表面受容体の組成を意味する。組成は定性的組成ならびに定量的組成でもよい。遺伝子型が決定される/与えられる細胞はシングル細胞または細胞を含む試料でもよい。
「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞傷害性が低く、かつ酵素的に活性化することができるか、またはさらに活性の高い親型に変換することができる、薬学的に活性のある物質の前駆体型または誘導体型を指す。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」 Biochemical Society Transactions, Vol. 14, 615th Meeting Belfast (1986) pp. 375-382 およびStella, et al., 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」, Directed Drug Delivery, Borchardt, et al., (eds.), pp. 247-267, Humana Press (1985)を参照されたい。エフェクター部分として使用することができるプロドラッグには、さらに活性が高く、細胞傷害性の無い薬物に変換することができる、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、サルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸改変プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、b-ラクタム含有プロドラッグ、置換されてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは置換されてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシンおよび他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれるが、これに限定されない。本発明において使用するためのプロドラッグ型に誘導体化することができる細胞傷害性薬物の例には本明細書に記載の化学療法剤が含まれるが、これに限定されない。
「細胞傷害性部分」という用語は、細胞機能を阻害もしくは阻止する、および/または細胞死もしくは細胞破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン(adriamicin)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素およびその断片、例えば、核酸分解酵素;抗生物質;毒素、例えば、細菌、真菌、植物、または動物由来の低分子毒素または酵素活性のある毒素。その断片および/または変種を含む;ならびに本明細書において開示された様々な抗腫瘍剤または抗癌剤が含まれるが、これに限定されない。
薬剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」とは、望ましい治療結果または予防結果を達成するために必要な投与量および期間で有効な量を指す。
「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために本明細書において用いられる。この用語は天然配列Fc領域および変種Fc領域を含む。1つの態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端まで及んでいる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)が存在してもよく、存在しなくてもよい。本明細書において他で特定しない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載のようにEUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムに従う。
「フレームワーク」または「FR」という用語は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。従って、HVR配列およびFR配列は、一般的に、VH(またはVL)において以下の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4に現れる。
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、天然抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書において定義されたFc領域を含む重鎖を有する抗体を指すために本明細書において交換可能に用いられる。一般的に、このような抗体は2本の重鎖および2本の軽鎖を含む。
「ヒト抗体」とは、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体をはっきりと除外する。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRに由来するアミノ酸残基およびヒトFRに由来するアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのうち実質的に全てを含み、ここで、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のHVR(例えば、CDR)に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。「ヒト化型」の抗体、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化されている抗体を指す。
本明細書で使用する「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が高頻度で変化する、および/または構造が規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメイン領域の1つ1つを指す。一般的に、天然4鎖抗体は6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVL(L1、L2、L3)にある。HVRは、一般的に、超可変ループおよび/または「相補性決定領域」(CDR)に由来するアミノ酸残基を含む。後者は配列変化が最も大きい、および/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)(Chothia, C, and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917を参照されたい)にある。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、アミノ酸残基L1の24〜34、L2の50〜56、L3の89〜97、H1の31〜35B、H2の50〜65、およびH3の95〜102にある(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)を参照されたい)。VHにあるCDR1を除いて、一般的に、CDRは超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」すなわち「SDR」も含む。SDRは、短縮型CDR(abbreviated-CDR)、すなわちa-CDRと呼ばれるCDR領域の中に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、およびa-CDR-H3)は、アミノ酸残基L1の31-34、L2の50-55、L3の89-96、H1の31-35B、H2の50-58、およびH3の95-102にある(Almagro, J.C., and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633を参照されたい)。特に定めのない限り、HVR残基および可変ドメインにある他の残基(例えば、FR残基)の番号は本明細書においてKabat et al., 前記に従って付けられる。
「免疫結合体」は、結合ペアのメンバー、核酸、またはエフェクター部分を含むが、これに限定されない1つまたは複数の非抗体由来分子と結合体化された抗体または抗体断片である。
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ、ならびにげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これに限定されない。ある特定の態様において、個体または対象はヒトである。
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は同一である、および/または可能のある変種抗体、例えば、天然変異を含有する変種抗体またはモノクローナル抗体調製物の作製中に生じる変種抗体を除いて同じエピトープに結合する。このような変種は一般的に微量に存在する。典型的に、異なる決定基(エピトープ)に対して作られた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は抗原上にある1つの決定基に対して作られている。従って、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈すべきでない。例えば、本明細書において報告される複合体において用いられるモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用した方法を含むが、これに限定されない様々な技法によって作ることができる。このような方法およびモノクローナル抗体を作るための他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
「一価結合ポリペプチド」または「一価結合抗体断片」という用語は、その標的または抗原と結合するために1つの部位または領域しかない分子を意味する。一価結合ポリペプチドの例は、ペプチド、ペプチドミメティック、アプタマー、有機低分子(標的ポリペプチドに特異的に結合することができる阻害剤)、ダルピン、アンキリン反復タンパク質、クニッツ(Kunitz)型ドメイン、シングルドメイン抗体(Hey, T., et al., Trends Biotechnol. 23 (2005) 514-522を参照されたい)、細胞表面受容体の(天然)リガンド、完全長抗体の一価断片などである。例えば、完全長抗体は、その標的に対して2つの結合部位を有し、従って、二価である。scFvまたはFAB'抗体断片にはその標的に対して1つの結合部位しかなく、従って、一価である。一価の抗体または抗体断片がポリペプチドとして用いられたら、この部位はパラトープと呼ばれる。
「裸の抗体」または「裸の抗体断片」という用語は、非抗体部分(例えば、核酸、または細胞傷害性部分、または放射標識)と結合体化されていない抗体または抗体断片を意味する。
「天然抗体」とは様々な構造を有する天然免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合した2本の同一軽鎖および2本の同一重鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端にかけて、それぞれの重鎖には、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)に続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)がある。同様に、N末端からC末端にかけて、それぞれの軽鎖には、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)に続いて定常軽鎖(CL)ドメインがある。抗体軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
「薬学的製剤」という用語は、調製物であって、調製物の中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効になるような形をとり、製剤が投与される対象に対して容認できないほど毒性のある追加成分を含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」とは、薬学的製剤中にある、活性成分以外の対象に無毒な成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これに限定されない。
「ポリヌクレオチド」または「核酸配列」という用語は、少なくとも8個のヌクレオチドおよび最大で約1000個のヌクレオチドを含む短い、一般的に一本鎖のポリヌクレオチドを意味する。1つの態様において、ポリヌクレオチドの長さは、少なくとも9、または10、または11、または12、または15、または18、または21、または24、または27、または30ヌクレオチドである。1つの態様において、ポリヌクレオチドの長さは、200ヌクレオチド以下、または150ヌクレオチド以下、または100ヌクレオチド以下、または90ヌクレオチド以下、または80ヌクレオチド以下、または70ヌクレオチド以下、または60ヌクレオチド以下、または50ヌクレオチド以下、または45ヌクレオチド以下、または40ヌクレオチド以下、または35ヌクレオチド以下、または30ヌクレオチド以下である。さらなる態様において、ポリヌクレオチドの長さは、少なくとも9、または10、または11、または12、または15、または18、または21、または24、または27、または30ヌクレオチドであり、かつ200ヌクレオチド以下、または150ヌクレオチド以下、または100ヌクレオチド以下、または90ヌクレオチド以下、または80ヌクレオチド以下、または70ヌクレオチド以下、または60ヌクレオチド以下、または50ヌクレオチド以下、または45ヌクレオチド以下、または40ヌクレオチド以下、または35ヌクレオチド以下、または30ヌクレオチド以下である。
「L-ポリヌクレオチド」という用語は、単量体基本要素として50%超のL-ヌクレオチドを含む核酸、例えば、L-DNAを意味する。1つの態様において、L-ポリヌクレオチドはL-ヌクレオチドだけしか含まない。このようなL-ポリヌクレオチドのヌクレオチドの数は1個のL-ヌクレオチドから任意の数に及ぶことを理解しなければならない。しかしながら、1つの態様において、L-ヌクレオチドの数は、少なくとも10、または15、または20、または25、または30、または35、または40、または45、または50、または55、または60、または70、または80、または90、または100個のヌクレオチドである。L-ポリヌクレオチドは、L-A、L-G、L-C、L-U、L-T、およびその組み合わせからなり、L-AはL-リボース-アデニンなどを意味する。L-ポリデオキシヌクレオチドはL-dA、L-dG、L-dC、L-dU、L-dT、およびその組み合わせからなり、L-dAはL-デオキシリボース-アデニンなどを意味する。
「ポリヌクレオチドリンカー」という用語は、2つのヌクレオチド配列を一緒に連結する部分を意味する。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーはポリヌクレオチドである。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは、少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび少なくとも1つの非ポリヌクレオチドを含む。非ポリヌクレオチドは、ポリペプチド、ポリマー、または多糖でもよい。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは、長さが10〜30個のヌクレオチドのポリヌクレオチドおよび直鎖ポリ(エチレングリコール)を含む。
「ポリペプチド」は、天然または合成にかかわらずペプチド結合でつながっているアミノ酸からなるポリマーである。約20アミノ酸残基未満のポリペプチドが「ペプチド」と呼ばれることがあるのに対して、2以上のポリペプチドからなる分子、または100を超えるアミノ酸残基からなる1つのポリペプチドを含む分子が「タンパク質」と呼ばれることがある。ポリペプチドはまた、炭水化物基、金属イオン、またはカルボン酸エステルなどの非アミノ酸成分を含んでもよい。非アミノ酸成分は、ポリペプチドが発現される細胞によって付加されてもよく、細胞タイプによって異なってもよい。ポリペプチドは、これらのアミノ酸バックボーン構造、またはそれをコードする核酸によって本明細書において明確にされる。炭水化物基などの付加物は一般的に明記されないが、それにもかかわらず存在してもよい。
「ポリペプチドエピトープ」とは、対応する一価の結合ポリペプチドが結合するポリペプチド標的上の結合部位を意味する。これは通常アミノ酸からなる。結合ポリペプチドは、直鎖エピトープ、すなわち、5〜12個の連続したアミノ酸の領域からなるエピトープに結合するか、またはポリペプチド標的のいくつかの短い領域からなる空間配置によって形成された三次元構造に結合する。結合ポリペプチド、例えば、抗体または抗体断片の抗原認識部位またはパラトープによって認識される三次元エピトープは抗原分子の三次元表面特徴だと考えることができる。これらの特徴は、結合ポリペプチドの対応する結合部位に(の中に)正確に収まり、それによって、結合ポリペプチドとその標的との結合は容易になる。
「特異的に結合する」という用語は、10-8M以下、1つの態様では10-5M〜10-13M、1つの態様では10-5M〜10-10M、1つの態様では10-5M〜10-7M、1つの態様では10-8M〜10-13M、または1つの態様では10-9M〜10-13Mの解離定数(KD)でポリペプチドまたは抗体または抗体断片がその標的に結合することを意味する。さらに、この用語は、ポリペプチドが、存在する他の生体分子に特異的に結合しないこと、すなわち、10-4M以上、1つの態様では10-4M〜1Mの解離定数(KD)で他の生体分子に結合することを示すために用いられる。
本明細書で使用する「治療」(およびその文法上の語尾変化、例えば、「治療する(treat)」または「治療する(treating)」)とは、治療されている個体の自然過程を変えることを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理の間に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的な病理学的結果または間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾患進行速度の低減、疾患状態の寛解または軽減、および軽快または予後の改善が含まれるが、これに限定されない。一部の態様において、本明細書において報告される複合体は疾患の発症を遅延するために、または疾患の進行を遅らせるために用いられる。
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体とその抗原との結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。一般的に、天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は類似した構造を有し、それぞれのドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindt, et al., Kuby Immunology, 6thed., W.H. Freeman and Co., 91頁(2007)を参照されたい)。抗原結合特異性を付与するために1つのVHドメインまたはVLドメインで十分な場合がある。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体を、その抗原に結合する抗体に由来するVHドメインまたはVLドメインを用いて単離して、それぞれ、相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることができる(例えば、Portolano, S., et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887, Clarckson, T., et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照されたい)。
本明細書で使用する「ベクター」という用語は、連結された別の核酸を増殖することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターならびにベクターが導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、機能的に連結された核酸を発現させることができる。このようなベクターは本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
II.テーラーメイド多重特異性結合分子
ほとんどの細胞に基づく疾患では、抗体に基づく受容体分子の結合を介した疾患関連細胞の標的化は有望なアプローチの1つである。しかしながら、臨床的に関連する表面受容体(=標的)の発現レベルは患者ごとに異なり、従って、標準化された抗体に基づく薬物の効力はかなり異なる。このことは、2つの異なるエピトープ/受容体を同時に標的化するという作用様式をもつ二重特異性抗体および多重特異性結合分子に特に当てはまる。
有望なアプローチの1つは、特に、それぞれの患者の特定の/個々の状況に向けた薬物(ここでは二重特異性抗体または多重特異性結合分子)を設計することである。
患者の疾患関連細胞上にある臨床的に関連する表面受容体の発現プロファイルデータに基づいて、一連の結合実体(例えば、Fab断片)がライブラリーから特異的に選択され、患者特異的薬物として多重特異性結合分子と組み合わされる。これらの選択された結合分子は、例えば、表面受容体の発現レベル、従って、患者一人一人の必要性および表現型に基づいて、それぞれの疾患関連細胞、例えば、腫瘍細胞に関して特異的に選択される。
結合実体を組み合わせる/つなぐリンカーの長さの違いは、両方の結合実体の同時結合、従って、選択性および/または特異性および/または効力に必要な場合がある正しい屈曲性および距離の選択を可能にする。
さらに、ペイロード、例えば、エフェクター機能または毒素とリンカーとの特異的ハイブリダイゼーションによって、ペイロードを加えることができる。この可能性によって治療用途の幅がさらに広がる。
選択された患者特異的多重特異性結合分子は、関連する基準(例えば、最適な結合/結合パートナー、最適なリンカーの長さなど):
- ホスホチロシンキナーゼのリン酸化状況の確認
- JNK阻害の確認
- 分子によって誘導されたアポトーシスの確認
- 単一特異性結合分子対多重特異性結合分子を用いた結合アッセイの実施
- 増殖阻害の確認
について様々な細胞インビトロアッセイ/細胞試料において試験することができる。
このようなアプローチを用いると、テーラーメイドの、従って、高効率の治療用分子を作製することができる。これらの分子は、標的化/送達の改善(例えば、腫瘍細胞に対するペイロード)によって弱い副作用を有するだろう。標的細胞への標的化の改善は標的化成分(少なくとも2つの結合分子を含む)の高い選択性および特異性に基づいている。
多重特異性結合分子の高い選択性および特異性は、2つの「低親和性」結合剤の組み合わせが同時結合し(アビディティ)、これにより、可能性のある「オフターゲット」結合が低下することによるものである。
個体に由来するそれぞれの細胞は、発現された細胞表面分子、例えば、受容体を考慮すると数および種類の点で異なる。このことは癌細胞および非癌細胞に特に当てはまる。従って、細胞は、提示された細胞表面分子によって特徴付けることができる。
このような特徴付けは、インビトロおよびインビボに基づく細胞イメージング技法によって行うことができる。インビボイメージング技法には、例えば、光学イメージング、分子イメージング、蛍光イメージング、バイオルミネセンスイメージング、MRI、PET、SPECT、CT、および生体内顕微鏡が含まれる。インビトロイメージング技法には、例えば、患者細胞の免疫組織化学染色、例えば、特定の細胞表面マーカーを認識する蛍光標識抗体を用いた患者細胞の免疫組織化学染色および顕微鏡による蛍光シグナルの分析が含まれる。代替として、細胞の遺伝子型/表現型は、FACSに基づく方法を用いた、標識された治療用抗体または診断用抗体による染色後に分析することができる。
1つの態様において、患者由来細胞の遺伝子型/表現型はFACSに基づく方法によって決定される。1つの態様において、細胞表面マーカーは、蛍光標識された診断用抗体または治療用抗体を用いて決定される。1つの態様において、蛍光標識された治療用抗体が用いられる。
ある特定の疾患は、特定の細胞表面分子の数の変化または新たな細胞表面分子の出現と相関付けることができる。
このような疾患に罹患した個体は、ある特定の範囲内で、疾患および/または個体特異的な細胞表面マーカーパターンを示す。
このような個体にテーラーメイド標的治療剤を提供するために、このことを考慮に入れなければならない。
テーラーメイドの多重特異性標的化実体の選択および構築に使用することができる、細胞表面分子およびそのリガンドに対して作られた多くの治療用抗体、例えば、リツキサン/MabThera/リツキシマブ、2H7/オクレリズマブ、ゼバリン/イブリツモマブ、Arzerra/オファツムマブ(CD20)、HLL2/エプラツズマブ、イノツズマブ(CD22)、ゼナパックス/ダクリズマブ、シムレクト/バシリキシマブ(CD25)、ハーセプチン/トラスツズマブ、ペルツズマブ(Her2/ERBB2)、マイロターグ/ゲムツズマブ(CD33)、ラプティバ/エファリズマブ(Cd11a)、アービタックス/セツキシマブ(EGFR、上皮細胞増殖因子受容体)、IMC-1121B(VEGF受容体2)、タイサブリ/ナタリズマブ(α4β1およびα4β7インテグリンのα4サブユニット)、レオプロ/アブシキシマブ(gpIIb-gpIIaおよびαvβ3インテグリン)、OrthocloneOKT3/ムロモナブ-CD3(CD3)、ベンリスタ/ベリムマブ(BAFF)、Tolerx/オテリキシズマブ(CD3)、Soliris/エクリズマブ(C5補体タンパク質)、アクテムラ/トシリズマブ(IL-6R)、Panorex/エドレコロマブ(EpCAM、上皮細胞接着分子)、CEA-CAM5/ラベツズマブ(CD66/CEA、癌胎児抗原)、CT-11(PD-1、programmed death-1 T細胞抑制性受容体、CD-d279)、H224G11(c-Met受容体)、SAR3419(CD19)、IMC-A12/Cixutumumab(IGF-1R、インシュリン様増殖因子1受容体)、MEDI-575(PDGF-R、血小板由来増殖因子受容体)、CP-675、206/トレメリムマブ(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)、R05323441(胎盤増殖因子またはPGF)、HGS1012/マパツムマブ(TRAIL-R1)、SGN-70(CD70)、ベドチン(SGN-35)/ブレンツキシマブ(CD30)、ならびにARH460-16-2(CD44)が公知である。
試料に存在する、例えば、患者の試料に存在する細胞表面マーカーを確かめるために様々な方法が公知である。例示的な方法の1つは、蛍光標識細胞分取(FACS)、特に、特異的に染色および選別された細胞集団の分析に基づく。この方法では、試料(細胞集団)のフェノタイピングは、提示された細胞表面マーカーに関して、これらのマーカーに対して作られた蛍光標識抗体を用いて、任意で、細胞集団中の表面マーカーの統計学的分布を含めて個々の細胞を分析することによって達成される。後で特別に作られた多重特異性結合分子が診断用抗体と同じエピトープに結合することが確実になるので、この目的のために蛍光標識で標識された治療用抗体を使用することが特に適している。本明細書において報告される多重特異性結合分子/二重特異性抗体は、例えば、腫瘍疾患、心血管疾患、感染症、炎症性疾患、自己免疫疾患、代謝(例えば、内分泌)疾患、または神経学的(例えば、神経変性)疾患の治療のための医薬の調製において使用することができる。これらの疾患の例示的な非限定的な例は、アルツハイマー病、非ホジキンリンパ腫、B細胞急性リンパ性白血病および慢性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、毛様細胞性白血病、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病、T細胞リンパ腫および白血病、多発性骨髄腫、神経膠腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、癌腫(例えば、口腔、胃腸管、結腸、胃、肺気道(pulmonary tract)、肺、***、卵巣、前立腺、子宮、子宮内膜、子宮頸部、膀胱、膵臓、骨、肝臓、胆嚢、腎臓、皮膚、および精巣の癌腫)、メラノーマ、肉腫、神経膠腫、および皮膚癌、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、類肉腫症、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓脈管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性腎炎、乾癬、または線維性肺胞炎である。
多くの細胞表面マーカーおよびそのリガンドが公知である。例えば、癌細胞は、炭酸脱水酵素IX、α-フェトプロテイン、α-シチニン(ctinin)-4、A3(A33抗体に特異的な抗原)、ART-4、B7、Ba-733、BAGE、BrE3-抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CDS、CD8、CD1-1A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK-4/m、CDKN2A、CXCR4、CXCR7、CXCL12、HIF-1-α、結腸特異的抗原-p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、c-met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、Flt-1、Flt-3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、GROB、HLA-DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB-1、低酸素誘導性因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2or 1a、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-2、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-25、インシュリン様増殖因子(IGF-1)、KC4-抗原、KS-1-抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、膵臓癌ムチン、胎盤増殖因子、p53、PLAGL2、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、P1GF、ILGF、ILGF-1R、IL-6、IL-25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn-抗原、トムソン・フリーデンライヒ(Thomson-Friedenreich)抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-lA-抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管形成マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、cMET、癌遺伝子マーカー、ならびに癌遺伝子産物を含むが、これに限定されない、以下の細胞表面マーカーおよびまたはリガンドの少なくとも1つを発現することが報告されている(例えば、Sensi et al., Clin. Cancer Res. 12 (2006) 5023-5032; Parmiani et al., J. Immunol. 178 (2007) 1975-1979; Novellino et al., Cancer Immunol. Immunother. 54 (2005) 187-207を参照されたい)。
従って、疾患に関連する多くの/多数の細胞表面マーカーを特異的かつ選択的に標的化および結合するために、特定の細胞表面受容体のリガンドを含む特定の細胞表面受容体を認識する抗体を使用することができる。細胞表面マーカーは、例えば、シグナル伝達事象またはリガンド結合に関連する細胞(例えば、疾患関連細胞)の表面に位置するポリペプチドである。
1つの態様において、癌/腫瘍を治療するために、腫瘍関連抗原、例えば、Herberman,「Immunodiagnosis of Cancer」, Fleisher ed.,「The Clinical Biochemistry of Cancer」, 347頁(American Association of Clinical Chemists, 1979)ならびにUS4,150,149;US4,361,544;およびUS4,444,744において報告された腫瘍関連抗原を標的とする多重特異性結合分子/二重特異性抗体が用いられる。
腫瘍関連抗原(TAA)に関する報告には、Mizukami et al., Nature Med. 11 (2005) 992-997; Hatfield et al., Curr. Cancer Drug Targets 5 (2005) 229- 248; Vallbohmer et al., J. Clin. Oncol. 23 (2005) 3536-3544;およびRen et al., Ann. Surg. 242 (2005) 55-63)が含まれ、それぞれが、特定されたTAAに関して参照により本明細書に組み入れられる。
疾患がリンパ腫、白血病、または自己免疫性障害を伴う場合、標的化される抗原は、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD54、CD67、CD74、CD79a、CD80、CD126、CD138、CD154、CXCR4、B7、MUC1またはla、HM1.24、HLA-DR、テネイシン、VEGF、P1GF、ED-Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物(例えば、c-metまたはPLAGL2)、CD66a-d、壊死抗原、IL-2、T101、TAG、IL-6、MIF、TRAIL-R1(DR4)、およびTRAIL-R2(DR5)からなる群より選択されてもよい。
2つの異なる標的、例えば、BCMA/CD3、HERファミリーの異なる抗原の組み合わせ(EGFR、HER2、HER3)、CD19/CD3、IL17RA/IL7R、IL-6/IL-23、IL-1-β/IL-8、IL-6またはIL-6R/IL-21またはIL-21Rに対して作られた多くの二重特異性抗体が公知である。第1の特異性は、ルイスx構造、ルイスb構造、およびルイスy構造、GloboH-構造、KH1、Tn抗原、TF抗原およびムチンの炭水化物構造、CD44、糖脂質およびスフィンゴ糖脂質、例えば、Gg3、Gb3、GD3、GD2、Gb5、Gm1、Gm2、シアリルテトラオシルセラミド(sialyltetraosylceramide)からなる群より選択される抗原のグリコエピトープ(glycoepitope)に対して作られ、第2の特異性は、EGFR、HER2、HER3、およびHER4、GD2の組み合わせからなる群より選択されるErbB受容体型チロシンキナーゼに対して作られ、第2の抗原結合部位は、Tリンパ球NK細胞、Bリンパ球、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、間葉系幹細胞、神経幹細胞からなる群より選択される免疫学的細胞、ANG2/VEGF、VEGF/PDGFR-β、血管内皮増殖因子(VEGF)アクセプター2/CD3、PSMA/CD3、EPCAM/CD3、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、FLT3、c-FMS/CSFIR、RET、c-Met、EGFR、Her2/neu、HER3、HER4、IGFR、PDGFR、c-KIT、BCR、インテグリンおよびMMPからなる群より選択される抗原の組み合わせに関連し、水溶性リガンドは、VEGF、EGF、PIGF、PDGF、HGF、およびアンジオポエチン、ERBB-3/C-MET、ERBB-2/C-MET、EGF受容体1/CD3、EGFR/HER3、PSCA/CD3、C-MET/CD3、ENDOSIALIN/CD3、EPCAM/CD3、IGF-1R/CD3、FAPALPHA/CD3、EGFR/IGF-1R、IL17A/F、EGF受容体1/CD3、ならびにCD19/CD16からなる群より選択される。
従って、本明細書において報告されるモジュールアプローチを使用することによってテーラーメイド二重特異性治療用抗体を提供できることが見出されている。これらの抗体は、治療を必要とする個体の細胞表面に実際に存在する細胞表面分子に関して、またはこのような細胞表面分子と相互作用するリガンドに関して特別に作られている。個体の細胞表面分子の状態を確かめることによって、治療標的のテーラーメイド組み合わせを選択することができる。
同時標的化および2つの異なるエピトープへの結合を目的として2種類の単一の治療用分子の組み合わせによる、この二重特異性治療剤テーラーメイド作製を用いると、単一の治療用分子と比較して相加効果/相乗効果を期待することができる。
既に利用可能な単一特異性治療用結合実体、例えば、治療用抗体に由来する単一特異性治療用結合実体を使用することによって、必要とされる多重特異性結合分子の迅速かつ容易な作製を実現することができる。
これらのアビディティが操作された結合分子/抗体は、シングル細胞表面に存在する2種類以上の細胞表面マーカーに結合することができる。この結合は、全ての/両方の結合実体が細胞に同時に結合した場合にのみ貪欲(avid)である。この目的のために、中〜高親和性の抗体が特に適している。他方で、これにより、スクリーニングプロセス中に結合特異性の特異的でない組み合わせを排除することも可能になる。
「コンビマトリックス(Combimatrix)」アプローチ
第1の結合実体、例えば、抗体Fab断片を別の特異的結合実体、例えば、第2の抗体Fab断片と組み合わせることが望ましい。さらに、第1の結合実体を多くの異なる他の結合実体に連結した時に第1の結合実体がさらに優れた特性を示すかどうかスクリーニングすることが可能である。いわゆるコンビマトリックスアプローチを用いると、簡単な手法で結合実体の多数の組み合わせを扱うことができる。第2の結合実体は異なる標的/エピトープ/抗原に結合してもよく、同じ抗原であるが異なるエピトープに結合してもよく、同じエピトープに結合するが単一の結合実体の異なる変種(例えば、ヒト化候補)でもよいことを指摘しなければならない。
このシナリオでは、自動プラットフォームが、結合実体およびその反応物または誘導体をピペットで取る、精製する、および組み合わせる作業を行うことができる。例えば、96ウェルプレートまたは他のハイスループットフォーマット、例えば、Eppendorf epMotion 5075vacピペッティングロボットを使用する任意のプラットフォームが適している。
最初に、結合実体(例えば、抗体Fab断片)をコードする構築物のクローニングが行われる。結合実体をコードする核酸を有するプラスミドは、通常、遺伝子合成によって得られ、それによって、コードされている結合実体のC末端領域はソルターゼ(sortase)モチーフおよびHis-タグを含有する。プラスミドを個々にマルチウェルプレートの別々のウェルに移す(プレート全体に加えることができる)。その後に、プラスミドを、結合実体コード領域を切断する制限酵素ミックスで消化する。全てのプラスミドに対して1種類の制限酵素ミックスだけが必要とされるやり方で全ての遺伝子合成を設計することが望ましい。その後、最適な洗浄工程によって精製DNA断片が得られる。これらの断片を、前述と同じ制限ミックスを用いてアクセプターベクターから切断されたプラスミドバックボーンと連結する。代替として、このクローニング手順はSLICを介したクローニング工程によって行うことができる。連結後、自動プラットフォームは、全ての連結ミックスを、コンピテント大腸菌細胞(例えば、Top 10 Multi Shot, Invitrogen)を含むもう1つのマルチウェルプレートに移し、形質転換反応が行われる。細胞を望ましい密度まで培養する。培養混合物のアリコートからグリセロールストックを入手することができる。(例えば、プラスミド単離ミニキット(例えば、NucleoSpin 96 Plasmid, Macherey& Nagel)を用いて)培養物からプラスミドを単離する。適切な制限ミックスを用いたアリコートの消化およびSDS-ゲル電気泳動(例えば、E-Gel 48, Invitrogen)によってプラスミド同一性をチェックする。その後、対照配列決定反応を行うために新たなプレートにプラスミドアリコートを加えることができる。
次の工程では、結合実体を発現させる。従って、HEK細胞をマルチウェルプレート(例えば、48ウェルプレート)に播種し、単離されたプラスミド(適切なバックボーンベクターの中に結合実体コード領域を含有する)でトランスフェクトする。トランスフェクトされたHEK細胞を数日間培養し、(例えば、真空ステーションを用いて1.2μmおよび0.22μmフィルタープレートで濾過することによって)収集する。力価は、例えば、ELISAを行うことによってモニタリングすることができる。
ソルターゼを介したペプチド転移反応を用いて、結合実体をオリゴヌクレオチド結合ペアのそれぞれのメンバーに共有結合的に連結することができる。結合実体およびソルターゼ反応ミックスをマルチウェル形式で組み合わせる。37℃で4〜16時間インキュベートした後に、負のHis-タグ選択手順を使用することによって結合実体-オリゴヌクレオチド結合体を収集する(混合物を、例えば、His MultiTrap HPプレート(GE Healthcare)に適用し、濾過する。それによって、His-タグがまだある全ての分子がクロマトグラフィーカラムに結合するのに対して、オリゴヌクレオチド結合体のような他の全ての分子は濾液中に見出される)。濾液を用いて、例えば、結合実体-オリゴヌクレオチド結合体を限外濾過膜に適用することによって、または結合実体に特異的な親和性媒体を含有するプレートを使用することによって緩衝液交換を行わなければならない。過剰な遊離オリゴヌクレオチドも除去する緩衝液交換の後に、多重特異性結合分子になるように結合実体-オリゴヌクレオチド結合体を連結することができる。
多重特異性結合分子はコンビマトリックスアプローチ(以下の表を参照されたい)を用いて作られる。
マルチウェルプレートの第1の横列に、等モル濃度の異なる結合実体-オリゴヌクレオチド結合体をピペットで取って、アラビア数字(例えば、1〜11)で指定した、それぞれのウェル(第1の横列の第1のウェルを除く)に入れる。同じプレートの第1の縦列には、等モル濃度の異なる結合実体-オリゴヌクレオチド結合体をピペットで取って、文字(例えば、A〜G)で指定した、それぞれのウェル(第1の縦列の第1のウェルを除く)に入れる。その後に、第1の横列の全ての結合実体-オリゴヌクレオチド結合体を第1の縦列の全ての結合実体-オリゴヌクレオチド結合体と組み合わせる(例えば、96ウェルプレートでは77通りの組み合わせが得られる)。これらを数字および文字の組み合わせ(例えば、1A〜11G)で指定した。全ての組み合わせに、結合実体-オリゴヌクレオチド結合体と等しいモル比のリンカー分子および適切な緩衝液(例えば、150mM NaCl、1.5mM MgCl2を含むPBS)を添加する。連結反応は、室温で、または混合物を60℃で変性し、次いで、ゆっくりと冷却することによって行うことができる。その後、最適な精製工程を、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって行うことができる。次いで、多重特異性結合分子は細胞ベースのアッセイにおける評価に使用することができる。
本明細書において報告される方法
本明細書において報告される一局面は、二重特異性抗体を生成するための方法であって、以下の工程を含む方法である:
(i)試料中の細胞の表面に存在する表面マーカーを決定し、第1の表面マーカーおよび第2の表面マーカーを選択する工程、
(ii)(a)第1の結合ペアの第1のパートナーまたはメンバーと結合体化された抗体Fab断片またはscFv抗体断片であって、それによって第1の表面マーカーに特異的に結合する、抗体Fab断片またはscFv抗体断片、(b)第2の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された抗体Fab断片またはscFv抗体断片であって、それによって第2の表面マーカーに特異的に結合する、抗体Fab断片またはscFv抗体断片、および(c)末端の一方において第1の結合ペアの第2のメンバーを含み、それぞれの他方の末端において第2の結合ペアの第2のメンバーを含むリンカー
をインキュベートし、かつそれによって二重特異性抗体を生成する工程。
本明細書において報告される一局面は、抗原結合部位の組み合わせを決定するための方法であって、以下の工程を含む方法である:
(i)第1の多数群の抗体Fab断片またはscFv抗体断片の各メンバーを、第2の多数群の抗体Fab断片またはscFv抗体断片の各メンバーと、および末端の一方において第1の結合ペアの第2のメンバーを含み、かつそれぞれの他方の末端において第2の結合ペアの第2のメンバーを含むリンカーと組み合わせることによって調製された多数の二重特異性抗体の結合特異性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を決定する工程であって、第1の多数群が第1の細胞表面分子に特異的に結合し、第2の多数群が第2の細胞表面分子に特異的に結合する工程、ならびに
(ii)適切な結合特異性および/または親和性および/またはエフェクター機能および/またはインビボ半減期を有する二重特異性抗体を選択し、それによって、抗原結合部位の組み合わせを決定する工程。
1つの態様において、二重特異性抗体は、
(a)(i)第1の表面マーカーに特異的に結合し、かつ
(ii)第1の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された
第1のFab断片またはscFv抗体断片、
(b)(i)第2の表面マーカーに特異的に結合し、かつ
(ii)第2の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された、
第2のFab断片またはscFv抗体断片、および
(c)(i)第1の結合ペアの第2のメンバーと結合体化され、かつ
(ii)第2の結合ペアの第2のメンバーと結合体化された
ポリヌクレオチドリンカー
を含む複合体である。
以下は、本明細書において報告される全ての局面の態様である。
1つの態様において、複合体は非共有結合複合体である。
1つの態様において、複合体は、ポリヌクレオチドリンカーの少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドと結合体化されたエフェクター部分をさらに含む。
1つの態様において、複合体は、(i)第2の標的に特異的に結合し、かつ(ii)第2の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された、さらなるポリペプチドをさらに含み、ポリヌクレオチドリンカーは第2の結合ペアの第2のメンバーと結合体化される。
1つの態様において、複合体は、(i)第1のエフェクター部分と結合体化されたポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的であり、かつ(ii)ポリヌクレオチドリンカーに相補的でないポリヌクレオチドと結合体化されたエフェクター部分をさらに含む。
1つの態様において、第1および第2のFab断片またはscFv抗体断片は同じ標的および標的上にある非重複エピトープに結合する。
1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは8〜1000個のヌクレオチドを含む。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは10〜500個のヌクレオチドを含む。
1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーはエナンチオマーDNAである。1つの態様において、エナンチオマーDNAはL-DNAである。1つの態様において、L-DNAは一本鎖L-DNA(ss-L-DNA)である。
1つの態様において、エフェクター部分は、結合部分、標識部分、および生物学的に活性な部分からなる群より選択される。
1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは、その第1の末端または第2の末端においてFab断片またはscFv抗体断片と結合体化される。
1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは2つの結合ペアの2つの第2のメンバーと結合体化され、それによって、第1の結合ペアの第2のメンバーはポリヌクレオチドリンカーの第1の末端と結合体化され、第2の結合ペアの第2のメンバーはポリヌクレオチドリンカーの第2の末端と結合体化される。
1つの態様において、第1の結合ペアの第1のメンバーおよび第2のメンバーは、それぞれ、SEQ ID NO:05 および SEQ ID NO:08の核酸配列を含む。
1つの態様において、第2の結合ペアの第1のメンバーおよび第2のメンバーは、それぞれ、SEQ ID NO:06 および SEQ ID NO:07の核酸配列を含む。
1つの態様において、前記方法は、
(a)第1の細胞表面マーカーに特異的に結合し、かつ第1の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された第1のFab断片またはscFv抗体断片を合成する工程、
(b)第2の細胞表面マーカーに特異的に結合し、かつ第2の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された第2のFab断片またはscFv抗体断片を合成する工程、
(c)第1の結合ペアの第2のメンバーと結合体化され、かつ第2の結合ペアの第2のメンバーと結合体化されたポリヌクレオチドリンカーを合成する工程、および
(d)合成された成分を組み合わせることによって複合体を形成する工程
を含む。
ポリペプチド-ポリヌクレオチド-複合体
多重特異性結合分子、例えば、二重特異性抗体、すなわち、非共有結合相互作用によってつながれ、それによって、単離されたRNAまたはDNA、特に、D-DNAよりインビボでのタンパク質分解および酵素分解に対する耐性が高くなった少なくとも2つの成分を含む複合体が本明細書において報告される。この複合体は、結合アビディティを利用して、その標的に対して高親和性を有し、優れた溶解度を有する。この複合体は、1つまたは複数のエフェクター部分を標的に送達するのに使用することができる。
ポリペプチド部分およびポリヌクレオチド部分、特に、L-ポリヌクレオチド部分の混合物を含む複合体がこれらの要件を満たし、インビボでのエフェクター部分の送達に特に適していることが見出されている。
標的化される細胞が少なくとも2種類の細胞表面分子を有するのであれば、本明細書において報告される多重特異性結合分子(例えば、二重特異性抗体)はリンカーポリヌクレオチドおよび非重複エピトープに特異的に結合する2種類以上のポリペプチド(結合実体)を含み、これらの細胞表面分子に特異的に結合するポリペプチドの相乗的結合に最適な長さをリンカーポリヌクレオチドが有するように構築される。
本明細書において報告される一局面は、式:
(A-a':a-S-b:b'-B)-X(n)または(A-a':a-S-b:b'-B):X(n)
のポリペプチド-ポリヌクレオチド-複合体であり、
式中、
AならびにBは、標的に特異的に結合する結合実体であり、
a':aならびにb:b'は結合ペアであり、a'およびaはbとb'の結合を妨げず、逆もまた同じであり、
Sはリンカーポリヌクレオチドであり、
(:X)は、共有結合的に、または結合ペアを介して、a'、a、b、b'、またはSの少なくとも1つに結合されたエフェクター部分を意味し、
(n)は整数であり、
-は共有結合を表し、
:は非共有結合を表す。
一局面として、前記で概説されたように、式:
(A-a':a-S-b:b'-B)-X(n)または(A-a':a-S-b:b'-B):X(n)
のポリペプチド-ポリヌクレオチド-複合体を生成するための方法も本明細書において報告され、本方法は、
(a)A-a'およびb'-Bをそれぞれ合成する工程、
(b)リンカーa-S-bを合成する工程、および
(c)前記式の複合体を形成する工程
を含み、エフェクター部分Xは工程(a)、(b)、または(c)においてa'、a、b、b'またはSの少なくとも1つに結合される。
その個々の成分に基づいて、本明細書において報告される複合体は、複合体の個々の成分と結合体化された結合ペアのメンバー間のハイブリダイゼーションにより標準的な手順に従って入手することができる。
複合体を、例えば、1:1:1化学量論で得るために、クロマトグラフィーによって他の結合体化副産物から複合体を分離することができる。この手順は、色素標識結合ペアメンバーおよび/または荷電リンカーを用いることによって容易にすることができる。分離のために電荷および分子量の違いを使用することができるので、こういう種類の標識された結合ペアメンバーおよび高度に負に荷電した結合ペアメンバーを使用することによって、単一結合体化(mono conjugated)結合実体/ポリペプチドは、標識されていない結合実体/ポリペプチドおよび複数のリンカーを有する結合実体/ポリペプチドから容易に分離される。標識一価結合剤のような非結合成分から複合体を精製するために蛍光色素が有用な場合がある。
本明細書において報告される一局面は、以下の成分:
(a)標的に特異的に結合し、かつ結合ペアの第1のメンバーと結合体化された結合実体、例えば、ポリペプチド、
(b)その第1の末端において結合ペアの第2のメンバーと結合体化されたポリヌクレオチドリンカー、および
(c)ポリヌクレオチドリンカーの少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドと結合体化されたエフェクター部分
を含む結合実体-ポリヌクレオチド-複合体を生成する方法であって、
(a)(i)標的に特異的に結合し、かつ結合ペアの第1のメンバーと結合体化された結合実体、および(ii)ポリヌクレオチドリンカーの少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドと結合体化されたエフェクター部分をそれぞれ合成する工程、
(b)その第1の末端において結合ペアの第2のメンバーと結合体化されたポリヌクレオチドリンカーを合成する工程、ならびに
(c)合成された成分をハイブリダイズすることによって結合実体-ポリヌクレオチド-複合体を形成する工程
を含む方法である。
本明細書において報告される別の局面は、以下の成分:
(a)第1の標的に特異的に結合し、第1の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された第1の結合実体、例えば、ポリペプチド、
(b)第2の標的に特異的に結合し、第2の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された第2の結合実体、例えば、ポリペプチド、および
(c)その第1の末端において第1の結合ペアの第2のメンバーと結合体化され、かつその第2の末端において第2の結合ペアの第2のメンバーと結合体化されたポリヌクレオチドリンカー
を含む結合実体-ポリヌクレオチド-複合体を生成する方法であって、
(a)第1の標的に特異的に結合し、第1の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された第1の結合実体、第2の標的に特異的に結合し、第2の結合ペアの第1のメンバーと結合体化された第2の結合実体をそれぞれ合成する工程、および
(b)その第1の末端において第1の結合ペアの第2のメンバーと結合体化され、かつその第2の末端において第2の結合ペアの第2のメンバーに結合体化されたポリヌクレオチドリンカーを合成する工程、ならびに
(c)合成された成分をハイブリダイズすることによって結合実体-ポリヌクレオチド-複合体を形成する工程
を含む方法である。
複合体は、電荷を等しくするために1つまたはいくつかの対イオンYをさらに含有してもよい。適切な負に荷電した対イオンの例は、ハロゲン化物、OH-、炭酸基、アルキルカルボン酸基、例えば、トリフルオロ酢酸基、硫酸基、ヘキサフルオロリン酸基、およびテトラフルオロホウ酸基である。ヘキサフルオロリン酸基、トリフルオロ酢酸基、およびテトラフルオロホウ酸基が特に適している。他の適切な正に荷電した対イオンは、一価カチオン、例えば、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンである。
本明細書において報告される複合体の完全ライブラリーを容易に提供、分析することができ、必要に応じて、このようなライブラリーから適切な結合剤を大規模に生成することができる。
ライブラリーとは、結合剤について示された要件を最もよく満たすように結合実体、ポリヌクレオチドリンカーの長さが調節された本明細書において報告される一組の複合体を指す。
例えば、最初に、1nm〜100nmの範囲全体に及び、約10nmあけて段(step)を有するポリヌクレオチドリンカーラダーを使用することが容易にできる。次いで、リンカー長は、1回目に特定された最も適切な長さのあたりで容易に再びさらに精緻にされる。
ポリヌクレオチドリンカーの長さが異なる多数の複合体を含むライブラリーから結合実体-ポリヌクレオチド-複合体を選択するための方法も本明細書において報告される。この方法の1つの態様において、様々な長さのポリヌクレオチドリンカーを有する、いくつかのリンカー分子が合成され、長さが異なるポリヌクレオチドリンカーを含む本明細書において報告される複合体の形成において用いられる。2つの一価ポリペプチド結合剤のうち良いものと比べて少なくとも5倍のKdissの改善を有する複合体が選択される。1つの態様において、望ましいKdissを有する二価結合剤の選択は実施例に開示されるようにBIAcore分析によって行われる。
本明細書において報告される一局面は、
(a)第1の標的に特異的に結合し、かつ第1の一本鎖L-DNA部分と結合体化された結合実体(例えば、ポリペプチド)、
(b)第2の標的に特異的に結合し、かつ第2の一本鎖L-DNA部分と結合体化された第2の結合実体(例えば、ポリペプチド)、および
(c)その第1の(または3')末端において、第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分を含み、その第2の(または5')末端において、第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分を含むリンカー
を含む複合体である。
本明細書において報告される一局面は、
(a)第1の標的に特異的に結合し、第1の一本鎖L-DNA部分と結合体化された抗体FAB断片またはscFv、
(b)第2の標的に特異的に結合し、第2の一本鎖L-DNA部分と結合体化された抗体FAB断片またはscFv、および
(c)その第1の(または3')末端に、第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分を含み、その第2の(または5')末端に、第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分を含むリンカー
を含む複合体である。
第1の一本鎖L-DNA部分は第2の一本鎖L-DNA部分とハイブリダイズせず、第2の一本鎖L-DNAリンカー部分とハイブリダイズしない。次に、第2の一本鎖L-DNA部分は第1の一本鎖L-DNA部分とハイブリダイズせず、第1の一本鎖L-DNAリンカー部分とハイブリダイズしない。
本明細書において示された全ての局面の以下の態様において以下が示される。
1つの態様において、標的に特異的に結合する結合実体は抗体または抗体断片である。1つの態様において、抗体断片はFabである。
1つの態様において、第1および/または第2の一本鎖L-DNA部分の長さは10〜50ヌクレオチドである。1つの態様において、長さは15〜35ヌクレオチドある。1つの態様において、長さは20〜30ヌクレオチドである。
1つの態様において、リンカーは、第1の一本鎖L-DNAリンカー部分、第2の一本鎖L-DNAリンカー部分、および一本鎖ドッキング部分を含む。1つの態様において、リンカーは直鎖非ヌクレオチド部分をさらに含む。1つの態様において、直鎖非ヌクレオチド部分はポリペプチドまたは非イオン性ポリマーである。1つの態様において、非イオン性ポリマーは直鎖ポリ(エチレングリコール)である。1つの態様において、直鎖ポリ(エチレングリコール)は1〜100個のエチレングリコール単位を含む。1つの態様において、直鎖ポリ(エチレングリコール)は1〜50個のエチレングリコール単位を含む。1つの態様において、直鎖ポリ(エチレングリコール)は1〜25個のエチレングリコール単位を含む。
1つの態様において、複合体は、
(a)第1の標的に特異的に結合し、かつ第1の一本鎖L-DNA部分と結合体化されたポリペプチド、
(b)第2の標的に特異的に結合し、かつ第2の一本鎖L-DNA部分と結合体化されたポリペプチド、および
(c)その第1の(または3')末端に、第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分を含み、その第2の(または5')末端に、第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分を含み、第1の一本鎖L-DNA部分と第2の一本鎖L-DNA部分との間に第3の一本鎖L-DNAリンカー部分を含むリンカー
を含む。
1つの態様において、リンカーは、3'→5'方向に、
- 第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分、
- ドッキング一本鎖L-DNA部分、および
- 第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分
を含む。
ドッキング一本鎖L-DNA部分は第1の一本鎖L-DNA部分またはその相補的な第1の一本鎖リンカー部分とハイブリダイズせず、第2の一本鎖L-DNA部分またはその相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分とハイブリダイズしない。
1つの態様において、リンカーは、3'→5'方向に、
- 第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分、
- 直鎖非ヌクレオチド部分、
- ドッキング一本鎖L-DNA部分、および
- 第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分
を含む。
1つの態様において、リンカーは、3'→5'方向に、
- 第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分、
- ドッキング一本鎖L-DNA部分、
- 非ヌクレオチド部分、および
- 第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分
を含む。
1つの態様において、リンカーは、3'→5'方向に、
- 第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分、
- 非ヌクレオチド部分、
- ドッキング一本鎖L-DNA部分、および
- 第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分
を含む。
1つの態様において、リンカーは、3'→5'方向に、
- 第1の一本鎖L-DNA部分に相補的な第1の一本鎖L-DNAリンカー部分、
- 第1の非ヌクレオチド部分、
- ドッキング一本鎖L-DNA部分、
- 第2の非ヌクレオチド部分、
- 第2の一本鎖L-DNA部分に相補的な第2の一本鎖L-DNAリンカー部分
を含む。
1つの態様において、第1の非ヌクレオチド部分および第2の非ヌクレオチド部分は同じであるか、または異なる。1つの態様において、直鎖非ヌクレオチド部分はポリペプチドまたは非イオン性ポリマーである。1つの態様において、非イオン性ポリマーは直鎖ポリ(エチレングリコール)である。1つの態様において、直鎖ポリ(エチレングリコール)は1〜100個のエチレングリコール単位を含む。1つの態様において、直鎖ポリ(エチレングリコール)は1〜50個のエチレングリコール単位を含む。1つの態様において、直鎖ポリ(エチレングリコール)は1〜25個のエチレングリコール単位を含む。
結合実体成分
モノクローナル抗体法は、特異的に結合するモノクローナル抗体またはその断片の形で特異的に結合する薬剤の生成を可能にする。モノクローナル抗体またはその断片を作り出すために、マウス、ウサギ、ハムスター、または他の任意の哺乳動物をポリペプチドすなわち抗体の標的または/およびポリペプチドをコードする核酸で免疫するなどの技法を使用することができる。代替として、モノクローナル抗体またはその断片は、scFv(単鎖可変領域)、具体的にはヒトscFvのファージライブラリーを使用することによって得ることができる(例えば、US5,885,793、WO92/01047、WO99/06587を参照されたい)。
1つの態様において、標的に特異的に結合する結合実体は一価抗体断片である。1つの態様において、一価抗体断片はモノクローナル抗体に由来する。
一価抗体断片は、Fab、Fab'-SH、シングルドメイン抗体、F(ab')2、Fv、およびscFv断片を含むが、これに限定されない。従って、1つの態様において、一価抗体断片は、Fab、Fab'-SH、シングルドメイン抗体、F(ab')2、Fv、およびscFv断片を含む基より選択される。
1つの態様において、本明細書において報告される複合体の結合実体の少なくとも1つはモノクローナル抗体のシングルドメイン抗体またはFab断片またはFab'断片である。
1つの態様において、本明細書において報告される複合体の結合実体はどちらも互いに独立してモノクローナル抗体のシングルドメイン抗体またはFab断片またはFab'断片である。
1つの態様において、本明細書において報告される複合体の結合実体はどちらもシングルドメイン抗体またはFab断片またはFab'断片である。
1つの態様において、結合実体に特異的に結合する標的またはエピトープは重複しない。
ダイアボディは、二価または二重特異性でもよい2つの抗原結合部位を有する抗体断片である(例えば、EP0404097、WO93/01161、Hudson, P.J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134、およびHolliger, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448を参照されたい)。Hudson, P. J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134にはトリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)も記載されている。
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の態様において、シングルドメイン抗体はヒトシングルドメイン抗体(Domantis, Inc., Waltham, MA; US6,248,516)である。
Fvは、完全な抗原結合部位を含有し、定常領域がない最小の抗体断片である。scFvの総説については、例えば、Plueckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.),(Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315、WO93/16185、US5,571,894、US5,587,458を参照されたい。一般的に、6つの超可変領域(HVR)が抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、1つの可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でも、その抗原を認識および結合する能力がある。
1つの態様において、一価抗体断片は、緊密に非共有結合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる2鎖Fv種である。
1つの態様において、一価抗体断片は、屈曲性ペプチドリンカーによって共有結合的に連結された1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインからなる単鎖Fv(scFv)種である。
抗体のFab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインならびに軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。
Fab'断片は、抗体ヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片と異なる。
Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab'を意味する。
抗体断片を生成するために様々な技法が開発されている。従来より、抗体断片は完全長抗体のタンパク質分解消化を介して入手することができる(例えば、Morimoto, K., et al., J. Biochem. Biophys. Meth. 24 (1992) 107-117, Brennan, M., et al., Science 229 (1985) 81-83を参照されたい)。例えば、完全長抗体をパパイン消化することによって、「Fab」断片と呼ばれ、それぞれが1つの抗原結合部位を有する2つ同一の抗原結合断片および残りの「Fc」断片が得られる。その名称は容易に結晶化する能力を表している。ある特定の抗体断片の総説については、Hudson, P.J., et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照されたい。
抗体断片は組換え手段によって直接生成することもできる。Fab、FvおよびscFv抗体断片は全て、例えば、大腸菌の中で発現させ、大腸菌から分泌することができ、従って、大量のこれらの断片を容易に生成することができる。標準的な手順に従って抗体ファージライブラリーから抗体断片を単離することができる。代替として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができる(Carter, P., et al., Bio/Technology 10 (1992) 163-167)。抗体断片を発現させ、必要に応じて分泌するために哺乳動物細胞系も使用することができる。
1つの態様において、抗原に特異的に結合する結合実体はシングルドメイン抗体である。ある特定の態様において、シングルドメイン抗体はヒトシングルドメイン抗体である(例えば、US6,248,516を参照されたい)。1つの態様において、シングルドメイン抗体は抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部からなる。
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む1本のポリペプチド鎖である。
ある特定の態様において、結合実体は、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M〜10-13M、例えば、10-9M〜10-13M)の解離定数(KD)で、その標的に結合する。
ある特定の態様において、結合実体は、10-5M〜10-13Mまたは10-5M〜10-10Mまたは10-5M〜10-8Mの解離定数(KD)で、その標的に結合する。
結合実体が抗体または抗体断片である1つの態様では、解離定数は、以下のアッセイに記載のように抗体のFab断片およびその抗原を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって求められる。
抗原に対するFabの溶液結合親和性は非標識抗原の滴定シリーズの存在下でFabを最小濃度の(125I)標識抗原と平衡状態に置き、次いで、抗Fab抗体によってコーティングされたプレートを用いて、結合した抗原を捕獲することによって測定される(例えば、Chen, Y., et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)に溶解した5μg/mlの捕獲用抗FAB抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後に、PBSに溶解した2%(w/v)ウシ血清アルブミンで室温(約23℃)で2〜5時間ブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)中で100pMまたは26pMの[125I]抗原を関心対象のFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta, L.G., et al., Cancer Res. 57 (1997) 4593-4599における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致する)。次いで、関心対象のFABを一晩インキュベートする。しかしながら、平衡状態に到達することを確実にするために、インキュベーションはさらに長期間(例えば、約65時間)続いてもよい。その後、室温で(例えば、1時間)インキュベートするために混合物を捕獲用プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、PBSに溶解した0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥した時に、150μM/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標); Packard)を添加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分間カウントする。競合的結合アッセイにおいて使用するために最大結合の20%未満または20%に等しい結合を示す各FABの濃度を選択する。
別の態様によれば、解離定数は、25℃で約10応答単位(response unit)(RU)の固定化抗原CM5チップによるBIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000またはBIACORE(登録商標)A-100(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを用いて求められる。
簡単に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIACORE, Inc.)を供給業者の説明書に従って塩酸N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によって活性化する。約10応答単位(RU)のカップリングされたタンパク質を実現するために、抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(約0.2μM)まで希釈した後に5μl/minの流速で注入する。抗原を注入した後に、非反応基をブロックするために1Mエタノールアミンを注入する。反応速度測定のために、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBSに溶解したFABの2倍段階希釈液(0.78nM〜500nM)を25℃、約25μl/minの流速で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、簡単な1:1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を用いて会合センサーグラムおよび解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算する。平衡解離定数(KD)は比koff/konとして計算する(例えば、Chen, Y., et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881を参照されたい)。オン速度(on rate)が前記の表面プラズモン共鳴アッセイによって106M-1s-1を超えたら、分光計、例えば、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)と攪拌キュベットにおいて測定された時に漸増濃度の抗原の存在下でPBS、pH7.2に溶解した20nM抗抗原抗体(FAB型)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス(band-pass))の増加または減少を測定する蛍光クエンチング法を用いて求めることができる。
2つの結合分子が2つの独立した結合部位を認識すれば、協同的結合事象が発生する可能性があり、これはポリヌクレオチドリンカーの長さに依存する可能性がある。
協同的結合作用は、自由ギブス結合エネルギーΔG°1およびΔG°2がΔG°coopに集約される点で物理的に特徴付けられる:ΔG°1+ΔG°2=ΔG°coop。
ギブスの式、ΔG°coop=-RTlnKDcoopによれば、ΔG°coopは親和性KD1およびKD2から積(product)を形成する。
協同作用によって自由ギブス結合エネルギーが増大することによって、結合親和性(KDcoop)および結合特異性は劇的に高まる。
取り扱われた結合部位が、独立して、例えば、腫瘍細胞表面に共存し得る2つの異なる標的分子上にある時に、結合特異性はさらに高まる。
標的に特異的に結合する結合実体は、ある特定のカップリング試薬と潜在的に反応し得る1つまたは複数の遊離OH、COOH、NH2、および/またはSH基を有する可能性が高い。結合体化反応中の(副)反応を回避するために、以下の表1に示したカップリング化学のうちの1つを選択することができる。
表1は、ポリペプチドを結合ペアのそれぞれのメンバーに共有結合させるための反応基ならびにリンカーを結合ペアのそれぞれのメンバーに共有結合させるための反応基に関する概要を示す。
前記のバイオルトゴナル(bi-orthogonal)カップリング化学は一価結合ポリペプチドの結合体化に特に適している。2つの結合パートナーがある特定の反応性官能基を有さない場合、例えば、2つのアプタマーの組み合わせの場合、反応部位の選択に大きな自由がある。従って、さらに、または前記の表に示された対応する反応部位のペアと組み合わせて、アミノ/活性エステル(例えば、NHSエステル)、およびSH/SHまたはSH/マレイニミド(maleinimido)をオルトゴナルカップリングに使用することができる。
一価結合ポリペプチドはまた合成ペプチドまたはペプチド模倣物でもよい。ポリペプチドが化学合成されるのであれば、このような合成の間に、オルトゴナル化学反応性を有するアミノ酸を取り入れることができる(例えば、de Graaf, A.J., et al., Bioconjug. Chem. 20 (2009) 1281-1295を参照されたい)。多種多様なオルトゴナル官能基が問題であり、合成ペプチドに導入することができるので、このようなペプチドとリンカーとの結合体化は標準的な化学である。
ポリヌクレオチド成分
本明細書において報告される複合体は(ポリヌクレオチド)リンカーを含む。リンカーはポリペプチドに共有結合されてもよく、(ポリヌクレオチド)リンカーおよびポリペプチドは特異的結合ペアによって互いに結合されてもよい。
異なる長さの(ポリヌクレオチド)リンカーが用いられた時に、標的に特異的に結合する第1のポリペプチドと標的に特異的に結合する第2のポリペプチドとの間の距離が異なる、結果として生じた複合体構築物を得ることができる。これにより最適な距離および/または屈曲性が可能になる。
ポリヌクレオチドという用語は広範囲に理解されなければならず、DNAおよびRNAならびにその類似体および改変を含む。
1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは単量体の20%超がヌクレオシドである限り、異なるタイプの単量体の混合物からなる。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは単量体の30%超がヌクレオシドである限り、異なるタイプの単量体の混合物からなる。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは単量体の40%超がヌクレオシドである限り、異なるタイプの単量体の混合物からなる。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは単量体の50%超がヌクレオシドである限り、異なるタイプの単量体の混合物からなる。
例えば、リンカーはヌクレオシドだけからなってもよく、ヌクレオシドおよびアミノ酸ならびに/または糖残基ならびに/またはジオールならびに/またはホスホ-糖単位ならびに/または非イオン性ポリマー基本要素の混合物でもよい。
オリゴヌクレオチドは、例えば、標準的な塩基であるデオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシシトシン(dC)、デオキシチミジン(dT)、デオキシウラシル(dU)に置換基を有する置換ヌクレオチドを含有してもよい。このような置換核酸塩基の例は、5-置換ピリミジン(例えば、5-メチル-dC、アミノアリル-dUまたは-dC、5-(アミノエチル-3-アシルイミド)-dU、5-プロピニル-dUまたは-dC)、5-ハロゲン化-dUまたは-dC、N-置換ピリミジン(例えば、N4-エチル-dC)、N-置換プリン(例えば、N6-エチル-dA、N2-エチル-dG)、8-置換プリン(例えば、8-[6-アミノ)-ヘキシ-1-イル]-8-アミノ-dGまたは-dA)、8-ハロゲン化-dAまたは-dG、8-アルキル-dGまたは-dA、および2-置換-dA(例えば、2-アミノ-dA)である。
オリゴヌクレオチドはヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体を含有してもよい。すなわち、天然核酸塩基は、5-ニトロインドール-D-リボシド、3-ニトロ-ピロール-D-リボシド、デオキシイノシン(dI)、デオキシキサントシン (dX)、7-デアザ-dG、-dA、-dI、もしくは-dX、7-デアザ-8-アザ-dG、-dA、-dI、もしくは-dX、8-アザ-dA、-dG、-dI、もしくは-dX、D-ホルマイシン、プソイド-dU、プソイド-イソ-dC、4-チオ-dT、6-チオ-dG、2-チオ-dT、イソ-dG、5-メチル-イソ-dC、N8-連結-8-アザ-7-デアザ-dA、5,6-ジヒドロ-5-アザ-dC、エテノ-dA、またはピロロ-dCのような核酸塩基類似体を使用することによって交換されてもよい。当業者に明らかなように、二重鎖形成が特異的になるように相補鎖の中にある核酸塩基を選択しなければならない。例えば、5-メチル-イソ-dCが一方の鎖(例えば、(a))に用いられていれば、イソ-dGが相補鎖(例えば、(a'))になければならない。
1つの態様において、リンカーのオリゴヌクレオチドバックボーンは、置換糖残基、糖類似体、ヌクレオシド間リン酸部分の中にある改変を含有するように改変されるか、ならびに/またはPNA(リン酸およびd-リボースの無いバックボーンを有する)である。
オリゴヌクレオチドは、例えば、置換デオキシリボース、例えば、2'-メトキシ-、2'-フルオロ-、2'-メチルセレノ-、2'-アリルオキシ-、4'-メチル-dN(式中、Nは核酸塩基、例えば、A、G、C、T、またはUである)を有するヌクレオチドを含有してもよい。
糖類似体は、例えば、キシロース、2',4'-架橋リボース、例えば、(2'-O,4'-Cメチレン)(LNAと知られるオリゴマー)、または(2'-O、4'-Cエチレン)(ENAと知られるオリゴマー)、L-リボース、L-D-リボース、ヘキシトール(HNAと知られるオリゴマー)、シクロヘキセニル(CeNAと知られるオリゴマー)、アルトリトール(ANAと知られるオリゴマー)、シクロプロパン環と融合したエチレン架橋によってC3'原子およびC5'原子が接続される三環系リボース類似体(トリシクロDNAと知られるオリゴマー)、グリセリン(GNAと知られるオリゴマー)、グルコピラノース(ホモDNAと知られるオリゴマー)、カルバリボース(carbaribose)(テトラヒドロフランサブユニットの代わりにシクロペンタンを有する)、ヒドロキシメチル-モルホリン(モルホリノDNAと知られるオリゴマー)である。
ヌクレオシド間リン酸部分の多数の改変もハイブリダイゼーション特性を妨げないことが知られており、このようなバックボーン改変も置換ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体と組み合わせることができる。例は、ホスホルチオエート、ホスホルジチオエート、ホスホルアミデート、およびメチルホスホネートオリゴヌクレオチドである。
前述の修飾ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、ならびにポリヌクレオチドバックボーン改変は、本明細書において報告される複合体に含まれるポリヌクレオチドにおいて所望のように組み合わせることができる。
(ポリヌクレオチド)リンカーの長さは1nm〜100nmである。1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーの長さは4nm〜80nmである。1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーの長さは5nm〜50nmまたは6nm〜40nmである。1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーの長さは10nm以上または15nm以上である。1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーの長さは10nm〜50nmである。
1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーと結合体化された結合ペアのメンバーの長さはそれぞれ少なくとも2.5nmである。
(ポリヌクレオチド)リンカーの長さは、実体に化学的に類似する成分の既知の結合距離および結合角を用いることによって計算することができる。このような結合距離は一部の分子については標準的な教科書にまとめられている(例えば、CRC Handbook of Chemistry and Physics, 91st edition (2010-2011), Section 9を参照されたい)。
スペーサーまたはリンカーの長さの計算では以下の近似値が適用される。a)非ヌクレオシド実体の長さを計算する場合、連結される原子がどういったものかに関係なく130pmの平均結合距離と180°の結合角が用いられる、b)一本鎖の中の1個のヌクレオチドは500pmで計算される、およびc)二本鎖の中の1個のヌクレオチドは330pmで計算される。
130pmの値は、2個のC(sp3)の間の結合角109°28'および距離153pmであるC(sp3)-C(sp3)-C(sp3)鎖の2個の末端炭素原子の距離が約250pmであり、これが2個のC(Sp3)間の推定結合角180°および結合距離125pmに換算されるという計算に基づいている。PおよびSのようなヘテロ原子ならびにsp2およびsp1 C原子もリンカーの一部になり得ることを考慮に入れて、値130pmを選ぶ。リンカーがシクロアルキルまたはアリールのような環式構造を含む場合、距離を規定している原子からなる鎖全体の一部である環式構造の結合の数を数えることによって同様に距離を計算する。
必要に応じて、本明細書において報告される複合体の中の(ポリヌクレオチド)リンカーの長さを変えることができる。長さの異なる利用可能なリンカー、すなわち、ライブラリーを容易に作るために、このようなライブラリーの異なるリンカーを入手する簡単な合成機会を有することが適している。リンカーのコンビナトリアル固相合成が適している。リンカーを約100nmの長さまで合成しなければならないので、固相合成中に単量体合成基本要素が高効率で組み立てられるような方法で合成戦略は選択される。単量体基本要素としてホスホルアミダイトの組み立てに基づくデオキシオリゴヌクレオチドの合成はこの要件を満たしている。このようなリンカーにおいて、リンカー内の単量体単位は、どの場合でもホスフェートまたはホスフェート類似体部分を介して連結される。
(ポリヌクレオチド)リンカーは1つの態様では多官能性アミノ-カルボン酸、例えば、アミノ、カルボキシレート、またはホスフェートの遊離の正に荷電した基または/および負に荷電した基を含有してもよい。例えば、電荷担体は、(a)1個のアミノ基および2個のカルボキシル基、または(b)2個のアミノ基および1個のカルボキシル基を含有する三官能性アミノカルボン酸に由来してもよい。このような三官能性アミノカルボン酸の例は、リジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、α,β-ジアミノプロピオン酸、アルギニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸、カルボキシグルタミン酸、ならびに対称性三官能性カルボン酸、例えば、EP0618192またはUS5,519,142に記載の対称性三官能性カルボン酸である。代替として、(a)の三官能性アミノカルボン酸中のカルボキシル基の1つはホスフェート基、スルホネート基、またはサルフェート基によって交換されてもよい。このような三官能性アミノ酸の一例はホスホセリンである。
(ポリヌクレオチド)リンカーはまた1つの態様では無電荷親水基を含有してもよい。無電荷親水基の適切な例は、特に、少なくとも3つの基本要素を含む、エチレンオキシドまたはポリ(エチレンオキシド)基、例えば、エチレンオキシド、スルホキシド、スルホン、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル、ホスホン酸アミド、ホスホン酸エステル、リン酸アミド、リン酸エステル、スルホン酸アミド、スルホン酸エステル、硫酸アミド、および硫酸エステル基である。アミド基は、1つの態様において、第一級アミド基、特に、アミノ酸側鎖にあるカルボン酸アミド残基、例えば、アミノ酸アスパラギンおよびグルタミンの第一級アミド基である。エステルは、特に、親水性アルコール、特に、C1-C3アルコール、またはジオール、またはトリオールに由来する。
エナンチオマーL-DNAは、そのオルトゴナルハイブリダイゼーション挙動、そのヌクレアーゼ耐性、および長さの異なるポリヌクレオチドの合成のしやすさで知られている。
1つの態様において、複合体中の全てのポリヌクレオチドはエナンチオマーL-DNAまたはエナンチオマーL-RNAである。1つの態様において、複合体中の全てのポリヌクレオチドはエナンチオマーL-DNAである。
エナンチオマー一本鎖L-DNA(ss-L-DNA)は体液中での高い分子屈曲性および安定性を併せ持つ。一本鎖L-DNAが2つ以上の独立した結合分子間のリンカーとして用いられる場合、これらの結合分子は実質的に任意の結合角および結合距離まで調節することができ、結合角および結合距離はss-L-DNAリンカー長にだけ依存する。
1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーは、互いにハイブリダイズすることができるセグメントで合成される。
この場合、リンカーは、セグメントを互いにハイブリダイズすることによって形成することができる。結果として生じたリンカー構築物はオリゴヌクレオチド二重鎖部分を含む。リンカーがそのように構築される場合には、二重鎖を形成するハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド実体の配列は、結合ペア核酸とのハイブリダイゼーションも干渉も起こらないように選択される。
1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーは、互いにハイブリダイズすることができるss-L-DNAセグメント、例えば、AおよびBで合成される。
この場合、ポリヌクレオチドリンカーはセグメントを互いにハイブリダイズすることによって延ばすことができる。従って、例示されるように、単に、コンカテマーを形成する基本要素、すなわち、AおよびBを連続して適用することによって、リンカー長を2つの結合部位間の距離まで自己調節することができる。リンカーは、確立されたリンカーの核酸末端がコンカテマー間融点温度(すなわち、TM2、従って、TM2>TM1)より低い融点温度(すなわち、TM1)でss-L-DNA標識結合分子とハイブリダイズすることを特徴とする。完全長リンカーの最終的な長さを分析するためには、得られた複合体を第1の融点温度より高いが第2の融点温度より低い第3の温度(すなわち、TM3)(すなわち、TM3>TM1およびTM3<TM2)でインキュベートする。温度によって溶出されたリンカーを、標準的な方法によって、例えば、臭化エチジウム染色アガロースゲルを用いて分析することができる。それぞれのコンカテマーの長さが公知であるので、リンカー長も計算することができる。1つの態様では個々のコンカテマーを標識することができる。
二重鎖部分はオリゴヌクレオチドリンカーを堅くすることができる。これは、リンカーの可動性および屈曲性を小さくするために使用することができる。
1つの態様において、1つまたは複数のL-DNAオリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドL-DNAリンカーにハイブリダイズされる。
この態様において、オリゴヌクレオチドリンカーはL-DNA二重鎖形成を介して堅くなる。
1つの態様において、L-DNA/ポリ(エチレングリコール)ハイブリッドが(オリゴヌクレオチド)リンカーとして用いられる。
1つの態様において、L-DNA/D-DNA/ポリ(エチレングリコール)ハイブリッドが(オリゴヌクレオチド)リンカーとして用いられる。
1つの態様において、L-DNA/D-DNA/ポリ(エチレングリコール)/ポリペプチドハイブリッドが(オリゴヌクレオチド)リンカーとして用いられる。
1つの態様において、1つまたは複数のL-DNAオリゴヌクレオチドがL-DNA/ポリ(エチレングリコール)ハイブリッド(オリゴヌクレオチド)リンカーにハイブリダイズされる。
1つの態様において、1つまたは複数のL-DNAオリゴヌクレオチドは長さの異なるポリ(エチレングリコール)分子と共有結合され、オリゴヌクレオチドL-DNAポリ(エチレングリコール)ハイブリッド(オリゴヌクレオチド)リンカーにハイブリダイズされる。
1つの態様において、L-DNA/D-DNAハイブリッドが(オリゴヌクレオチド)リンカーとして用いられる。
1つの態様において、1つまたは複数のD-DNAオリゴヌクレオチドが(オリゴヌクレオチド)リンカーのオリゴヌクレオチドD-DNA部分にハイブリダイズされて二本鎖D-DNAを形成する、L-DNA/D-DNAハイブリッドが(オリゴヌクレオチド)リンカーとして用いられる。
1つの態様において、1つまたは複数のL-DNAオリゴヌクレオチドが(オリゴヌクレオチド)リンカーのオリゴヌクレオチドL-DNA部分にハイブリダイズされて二本鎖L-DNAを形成する、L-DNA/D-DNAハイブリッドがリンカーとして用いられる。
二本鎖、すなわち、らせん状のDNA二重鎖の形成は複合体のインビボ半減期を改変または調節するのに使用することができ、これによってヌクレアーゼの酵素作用に利用できるようになる。
(ポリヌクレオチド)リンカーを組み立てる簡単な方法は、標準的なDまたはLヌクレオシドホスホルアミダイト基本要素を使用する方法である。
1つの態様において、dTの一本鎖領域が用いられる。
dTは塩基保護基を有する必要がないので、これは有利である。
二本鎖の長さは一本鎖と比較して短く、二本鎖は一本鎖より強固であるので、(ポリヌクレオチド)リンカー長(ポリヌクレオチドリンカーの末端にある結合ペアメンバー間の距離)およびスペーサーの屈曲性を変えるためにハイブリダイゼーションを使用することができる。
ハイブリダイゼーションのために、1つの態様では、機能的部分によって改変されたオリゴヌクレオチドが用いられる。
ハイブリダイゼーションに用いられるオリゴヌクレオチドは、リンカーとハイブリダイズしない1つもしくは2つの末端延長部分を有してもよく、および/または内部で分岐している。さらなるハイブリダイゼーション事象のために、リンカーとハイブリダイズしない(かつ結合ペアのメンバーを妨げない)このような末端延長部分を使用することができる。
1つの態様において、末端延長部分とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、エフェクター部分を含むオリゴヌクレオチドである。
さらなるハイブリダイゼーションを可能にするために、この標識オリゴヌクレオチドも末端延長部分を含んでもよく、分岐してもよく、それによって、ポリヌクレオチド凝集物またはデンドリマーを得ることができる。多標識(polylabel)を生成するために、または高い局所濃度のエフェクター部分を得るために、特に、ポリオリゴ核酸デンドリマーが用いられる。
ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを妨げない修飾ヌクレオチドがポリヌクレオチドに組み込まれてもよい。適切な修飾ヌクレオチドはC5-置換ピリミジンまたはC7-置換7-デアザプリンである。ポリヌクレオチドは、エフェクター部分の導入に用いられる非ヌクレオチド実体によって内部が改変されてもよく、または5'末端もしくは3'末端が改変されてもよい。
1つの態様において、このような非ヌクレオチド実体は、リンカーの末端と結合体化された2つの結合ペアメンバー間の(ポリヌクレオチド)リンカー内部に配置される。
ポリヌクレオチドを構築するために多くの異なる非ヌクレオチド基本要素が文献において知られており、多種多様な非ヌクレオチド基本要素が市販されている。エフェクター部分を導入するために、非ヌクレオシド二官能性基本要素または非ヌクレオシド三官能性基本要素が末端標識用のCPGとして用いられてもよく、内部標識用のホスホルアミダイトとして用いられてもよい(例えば、Wojczewski, C, et al., Synlett 10 (1999) 1667-1678を参照されたい)。
二官能性スペーサー基本要素は1つの態様では非ヌクレオシド成分である。例えば、このようなリンカーはC2-C18アルキル、アルケニル、アルキニル(alkinyl)炭素鎖であるが、リンカーの親水性を高めるために、アルキル、アルケニル、アルキニル鎖はさらなるエチレンオキシおよび/もしくはアミド部分または四級化(quarternized)カチオン性アミン部分によって中断されてもよい。1個または2個のC1-C6アルキル基によって置換されてもよい、環式部分、例えば、C5-C6-シクロアルキル、C4N-、C5N-、C4O-、C5O-ヘテロシクロアルキル、フェニルも非ヌクレオシド二官能性リンカーとして使用することができる。適切な二官能性基本要素はC3-C6アルキル部分およびトリ〜ヘキサエチレングリコール鎖を含む。表2aおよび2bは、異なる親水性、異なる硬さ、および異なる電荷を有するヌクレオチド二官能性スペーサー基本要素のいくつかの例を示す。1個の酸素原子は酸不安定保護基、好ましくは、ジメトキシトリチルに接続され、その他はホスホルアミダイトの一部である。
従って、三官能性基本要素は機能的部分をポリヌクレオチド内の任意の位置に配置するのを可能にする。三官能性基本要素はまた、固体支持体、例えば、ポリヌクレオチドの3'末端標識に用いられる多孔性ガラス(controlled pore glass)(CPG)を用いた合成のための必要条件である。この場合、三官能性リンカーは、C2-C18アルキル、アルケニル、アルキニル炭素鎖を介して機能的部分または-必要に応じて-保護された機能的部分に接続されるが、リンカーの親水性を高めるために、アルキル、アルケニル、アルキニル鎖はさらなるエチレンオキシ部分および/またはアミド部分によって中断されてもよく、切断可能なスペーサーを介して固相に取り付けられるヒドロキシル基および酸不安定保護基によって保護されているヒドロキシル基を含む。この保護基を除去するために、後でホスホルアミダイトと反応することができるヒドロキシル基が遊離される。
三官能性基本要素は非ヌクレオシドでもよくヌクレオシドでもよい。
非ヌクレオシド三官能性基本要素はC2-C18アルキル、アルケニル、アルキニル炭素鎖であるが、リンカーの親水性を高めるために、アルキル、アルケニル、アルキニルは、任意で、さらなるエチレンオキシ部分および/またはアミド部分によって中断される。他の三官能性基本要素は、1つまたは2つのC1-C6アルキル基によって置換されてもよい環式基、例えば、C5-C6-シクロアルキル、C4N-、C5N-、C4O-、C5O-ヘテロシクロアルキル、フェニルである。環式基および非環式基は1つの(C1-C18)アルキル-O-PG基によって置換されてもよいが、C1-C18アルキルは、(エチレンオキシ)n、(アミド)m部分を含み、nおよびmは互いに独立して0〜6であり、PGは酸不安定保護基である。好ましい三官能性基本要素は、任意で、1つのアミド結合を含み、C1-C6アルキルO-PG基で置換される、C3-C6アルキル、シクロアルキル、C5O-ヘテロシクロアルキル部分である。式中、PGは酸不安定保護基であり、好ましくは、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、ピキシル(pixyl)、キサンチルであり、最も好ましくはジメトキシトリチルである。
非ヌクレオシド三官能性基本要素の非限定的であるが適切な例を、例えば、表3にまとめた。
ヌクレオシド三官能性基本要素は、非改変ポリヌクレオチドと比較してポリヌクレオチドハイブリダイゼーション特性に影響を及ぼさないように、必要な時にいつでも内部標識に用いられる。従って、ヌクレオシド基本要素は、相補塩基と依然としてハイブリダイズすることができる塩基または塩基類似体を含む。本明細書において報告される複合体に含まれるa、a'、b、b'、またはSの1つまたは複数の核酸配列を標識するための標識化合物の一般式を式IIに示した。
式II:
式中、PGは、酸不安定保護基、特に、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、ピキシル、キサンチル、特に、ジメトキシトリチルであり、Yは、C2-C18アルキル、アルケニルアルキニルであり、アルキル、アルケニル、アルキニルはエチレンオキシ部分および/またはアミド部分を含んでもよく、Yは、好ましくは、C4-C18アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、1つのアミド部分を含有し、Xは機能的部分である。
ハイブリダイゼーション特性への影響を最小限にするように、このような置換のために塩基の特定の位置を選択することができる。従って、以下の位置は、a)天然塩基:C5において置換されたウラシル、C5またはN4において置換されたシトシン、C8またはN6において置換されたアデニン、およびC8またはN2において置換されたグアニン、ならびにb)塩基類似体:C7において置換された7-デアザ-Aおよび7-デアザ-G、C7において置換された7-デアザ-8-アザ-Aおよび7-デアザ-8-アザ-G、C7において置換された7-デアザ-アザ-2-アミノ-A、N1において置換されたプソイドウリジン、およびN2において置換されたホルマイシンを用いた置換に特に適している。
表4において、二官能性部分の末端酸素原子または三官能性部分の末端酸素原子の1つは、完全に詳しく示されていないが当業者に明らかなホスホルアミダイトの一部である。三官能性基本要素の第2の末端酸素原子は、前記の式IIについて規定されたように酸不安定保護基PGによって保護されている。
合成後改変は、共有結合した機能的部分をリンカーに導入するための別の戦略である。このアプローチでは、固相合成の間に二官能性基本要素または三官能性基本要素を使用することによってアミノ基を導入する。支持体から切断し、アミノ改変リンカーを精製した後に、リンカーを機能的部分の活性化エステルまたは1つの官能基が活性エステルである二官能性試薬と反応させる。特に適している活性エステルはNHSエステルまたはペンタフルオロフェニルエステルである。
合成後改変は、固相合成および脱保護の間に、安定性のない機能的部分を導入するのに特に有用である。例は、シュタウディンガー(Staudinger)連結用のトリフェニルホスフィンカルボキシメチルエステルを用いた改変(Wang, Charles C.-Y., et al., Bioconjugate Chemistry 14 (2003) 697-701)、ジゴキシゲニンを用いた改変、または市販のスルホSMCCを用いたマレイニミド基の導入である。
結合ペア成分
1つの態様において、結合ペアの各メンバーは10kDa以下の分子量のものである/10kDa以下の分子量を有する。1つの態様において、結合ペアの各メンバーの分子量は、8kDa、または7kDa、または6kDa、または5kDa、または4kDa、またはそれより小さい。
結合ペアの(結合ペア内での)解離定数、すなわち、結合親和性は少なくとも10-8M(=10-8mol/1=108l/mol)である。本明細書において報告される複合体中の両結合ペアのメンバーは異なる。結合ペアa:a'とb:b'との差違は、例えば、逆の結合、例えば、aならびにa'とbまたはb'との結合の解離定数がペアa:a'の解離定数の10倍以上になれば認められる。
1つの態様において、逆の結合、すなわち、aならびにa'とbまたはb'との結合の解離定数はそれぞれペアa:a'の解離定数の20倍以上である。1つの態様において、解離定数はペアa:a'の解離定数の50倍以上である。1つの態様において、逆の(交差反応性の)結合解離定数は結合ペア内での解離定数の100倍以上である。
1つの態様において、結合ペアのメンバーはロイシンジッパードメイン二量体およびハイブリダイジング核酸配列からなる群より選択される。1つの態様において、両結合ペアはロイシンジッパードメイン二量体である。
1つの態様において、両結合ペアはハイブリダイジング核酸配列である。1つの態様において、全ての結合ペアメンバーはL-DNA配列である。1つの態様において、両結合ペアはハイブリダイジングL-DNAである。
1つの態様において、結合ペアの両メンバーはロイシンジッパードメインである。
「ロイシンジッパードメイン」という用語は、約35残基の領域に7残基ごとにロイシン残基が存在することを特徴とする二量体化ドメインを意味する。ロイシンジッパードメインは、ロイシンジッパードメインが見出されるタンパク質のオリゴマー化を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、いくつかのDNA結合タンパク質において最初に特定された(Landschulz, W.H., et al., Science 240 (1988) 1759-1764)。公知のロイシンジッパーの中には、二量体化または三量体化する天然ペプチドおよびその誘導体がある。可溶性多量体タンパク質を生成するのに適したロイシンジッパードメインの例は、WO94/10308において報告されたロイシンジッパードメインおよびHoppe, H.J., et al., FEBS Lett. 344 (1994) 191-195において報告された肺界面活性剤タンパク質D(SPD)に由来するロイシンジッパーである。
ロイシンジッパードメインは、α-ヘリックスのコイルドコイルによって一緒になった二量体(結合ペア)を形成する。コイルドコイルは一巻きあたり3.5個の残基を有する。これは、らせん軸に対して7残基おきに対応する位置が現れることを意味する。コイルドコイル内にある通常の一続きのロイシンは疎水性かつファン・デル・ワールス相互作用によって構造を安定化する。
ロイシンジッパードメインが第1の結合ペアおよび第2の結合ペアを形成する場合、両ロイシンジッパー配列は異なる、すなわち、第1の結合ペアのメンバーは第2の結合ペアのメンバーに結合しない。ロイシンジッパードメインは、このようなドメインを含有することが分かっている天然タンパク質、例えば、転写因子から単離されてもよい。一つのロイシンジッパードメインは、例えば、転写因子fosに由来してもよく、もう一つのロイシンジッパードメインは転写因子junに由来してもよい。ロイシンジッパードメインはまた当技術分野において公知の合成および設計のための標準的な技法を用いて人工的に設計および合成されてもよい。
1つの態様において、両結合ペアはハイブリダイジング核酸配列である。
従って、それぞれの結合ペアのメンバー、すなわち、aおよびa'ならびにbおよびb'はそれぞれ互いにハイブリダイズする。一方で第1の結合ペアに含まれ、他方で第2の結合ペアに含まれる核酸配列は異なる、すなわち、互いにハイブリダイズしない。
1つの態様において、結合ペアは両方とも、異なる結合ペアのハイブリダイジング核酸配列が互いにハイブリダイズしないハイブリダイジング核酸ペアである。
言い換えると、第1の結合ペアの核酸は互いにハイブリダイズするが、第2の結合ペアの核酸のいずれにも結合せず、これらのハイブリダイゼーションを妨げず、逆もまた同じである。ハイブリダイゼーション反応速度およびハイブリダイゼーション特異性は融点分析によって容易にモニタリングすることができる。他の結合ペアとの任意の可能性のある組み合わせ、または結合ペアメンバーの組み合わせと比較して結合ペアの融解温度が少なくとも20℃高ければ、結合ペアの特異的ハイブリダイゼーションおよび非干渉が認められる。
結合ペアを形成する核酸配列は原則として任意の天然核酸塩基またはその類似体を含んでもよく、複数の塩基対合を介して安定した二重鎖を形成することができれば、原則として、前記の改変バックボーンまたは非改変バックボーンを有してもよい。安定したとは、二重鎖の融解温度が30℃、特に、37℃超であることを意味する。
二本鎖は、1つの態様では、2本の完全に相補的な一本鎖ポリヌクレオチドからなる。
しかしながら、37℃での安定性が示される限り、ミスマッチまたは挿入が可能である。
鎖内架橋によって核酸二重鎖をさらに安定化することができる。いくつかの適切な架橋結合法、例えば、ソラレンを使用する方法またはチオヌクレオシドに基づく方法が公知である。
結合ペアのメンバーである核酸配列は1つの態様では12〜50個のヌクレオチドからなる。1つの態様において、このような核酸配列は15〜35個のヌクレオチドからなる。
RNAseは偏在しており、RNAベースの結合ペアおよび/またはリンカー配列の望ましくない消化を回避するために特に注意しなければならない。RNAベースの結合ペアおよび/またはリンカーを使用することができるが、DNAベースの結合ペアおよび/またはリンカーが特に適している。
2つより多いオルトゴナル相補的ポリヌクレオチドペアを提供するように適切なハイブリダイジング核酸配列を容易に設計することができ、それによって、2つより多い結合ペアを容易に作製および使用することが可能になる。本明細書において報告される複合体においてハイブリダイジング核酸配列を使用する別の利点は改変を容易に導入できることである。改変された基本要素は市販されており、例えば、これを用いると、機能的部分を含むポリヌクレオチドを容易に合成することが可能になる。このような機能的部分は、任意の望ましい位置に、ならびに第1のおよび/もしくは第2の結合ペアのメンバーならびに/またはポリヌクレオチドリンカーのいずれにも、これらが全てポリヌクレオチドであれば容易に導入することができる。
その末端に結合ペアのメンバーを含む(ポリヌクレオチド)リンカーを1本のポリヌクレオチドとして提供およひ合成することができる。標的に特異的に結合するポリペプチドはそれぞれハイブリダイジング核酸配列、すなわち、結合ペアのメンバーにカップリングすることができる。(ポリヌクレオチド)リンカーの長さは任意の望ましいやり方で容易に変えることができる。
標的に特異的に結合するポリペプチドの生化学的性質に応じて、結合ペアのメンバーに結合体化するための様々な戦略がいつでも使えるようになっている。ポリペプチドが天然であるか、または組換えにより産生され、長さが50〜500アミノ酸残基であれば、教科書において報告された標準的な手順を当業者は容易に取ることができる(例えば、Hackenberger, C.P.R., and Schwarzer, D., Angew. Chem. Int. Ed. 47 (2008) 10030-10074を参照されたい)。
1つの態様において、結合体化のために、マレイニミド部分とポリペプチド内のシステイン残基との反応が用いられる。
これは、例えば、抗体のFABまたはFAB'断片が一価結合ポリペプチドとして用いられれば特に適したカップリング化学である。
1つの態様において、結合ペアのメンバーとポリペプチドのC末端とのカップリングが行われる。
タンパク質、例えば、FAB断片のC末端改変は、例えば、記載(Sunbul, M. and Yin, J., Org. Biomol. Chem. 7 (2009) 3361-3371)のように行うことができる。
一般的に、結合ペアメンバーと一価結合ポリペプチドとの部位特異的反応および共有結合カップリングは、天然アミノ酸を、ポリペプチドに存在する他の官能基の反応性に対してオルトゴナルな反応性を有するアミノ酸に変換することに基づいている。
例えば、まれな配列文脈の中にある、ある特定のシステインを酵素によりアルデヒドに変換することができる(例えば、Frese, M-A. and Dierks, T., ChemBioChem 10 (2009) 425-427を参照されたい)。ある特定の酵素の特異的酵素反応性と所定の配列文脈の中の天然アミノ酸を利用することによって望ましいアミノ酸改変を得ることも可能である(例えば、Taki, M., et al., Prot. Eng. Des. Sel. 17 (2004) 119-126, Gautier, A., et al., Chem. Biol. 15 (2008) 128-136; Bordusa, F., Highlights in Bioorganic Chemistry (2004), Schmuck, C. and Wennemers, H., (eds.), Wiley VCH, Weinheim, pp. 389-403を参照されたい)。
結合ペアメンバーと一価結合ポリペプチドとの部位特異的反応および共有結合カップリングはまた適切な改変試薬を用いた末端アミノ酸の選択的反応によって達成することもできる。
N末端システインとベンゾニトリルとの反応性(Ren, H., et al., Angew. Chem. Int. Ed. 48 (2009) 9658-9662を参照されたい)を用いて部位特異的な共有結合カップリングを実現することができる。
天然の化学連結もC末端システイン残基に頼ることがある(Taylor, E., et al., Nucl. Acids Mol. Biol. 22 (2009) 65-96)。
EP1074563は、負に荷電したアミノ酸の領域中のシステインと正に荷電したアミノ酸の領域に位置するシステインとの迅速な反応に基づく結合体化方法を報告する。
エフェクター成分
エフェクター部分は、結合部分、標識部分、生物学的に活性な部分、および反応性部分からなる群より選択することができる。複数のエフェクター部分が複合体に存在するのであれば、それぞれのこのようなエフェクター部分は、それぞれの場合において、独立して、結合部分、標識部分、生物学的に活性な部分、および反応性部分でもよい。結合部分は、結合ペアのそれぞれと干渉しないように選択される。
1つの態様において、エフェクター部分は、結合部分、標識部分、および生物学的に活性な部分からなる群より選択される。
1つの態様において、エフェクター部分は結合部分である。
結合部分の例は、互いに特異的に相互作用することができるバイオアフィン(bioaffine)結合ペアのメンバーである。適切なバイオアフィン結合ペアは、ハプテンまたは抗原および抗体;ビオチンまたはビオチン類似体、例えば、アミノビオチン、イミノビオチン、またはデスチオビオチン、およびアビジンまたはストレプトアビジン;糖およびレクチン、ポリヌクレオチドおよび相補的ポリヌクレオチド、受容体およびリガンド、例えば、ステロイドホルモン受容体およびステロイドホルモン;ならびにウシリボヌクレアーゼAの104aa断片(S-タンパク質と知られる)およびウシリボヌクレアーゼAの15aa断片(S-ペプチドと知られる)のペアである。
1つの態様において、エフェクター部分は結合部分であり、複合体の成分の少なくとも1つと共有結合される。
1つの態様において、バイオアフィン結合ペアの小さな方のパートナー、例えば、ビオチンまたはその類似体、受容体リガンド、ハプテンまたはポリヌクレオチドは、本明細書において報告される複合体に含まれるポリヌクレオチドの少なくとも1つに共有結合される。
1つの態様において、エフェクター部分は、ハプテン、ビオチンまたはビオチン類似体、例えば、アミノビオチン、イミノビオチン、またはデスチオビオチン;ポリヌクレオチドおよびステロイドホルモンより選択される結合部分である。
1つの態様において、エフェクター部分は標識基である。
標識基は任意の公知の検出可能な基より選択することができる。
1つの態様において、標識基は、ルミネセンス標識基、例えば、化学発光基、例えば、アクリジニウムエステルもしくはジオキセタン、または蛍光色素、例えば、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニンおよびその誘導体のような色素、ルミネセンス金属錯体、例えば、ルテニウム錯体またはユーロピウム錯体、CEDIA(Cloned Enzyme Donor Immunoassay、例えば、EP0061888)に用いられる酵素、微粒子またはナノ粒子、例えば、ラテックス粒子または金属ゾル、ならびに放射性同位体より選択される。
1つの態様において、標識基はルミネセンス金属錯体である。この化合物は、一般式(i):
[M(L1L2L3)]n-Y-XmA (i)
の構造を有する。式中、Mは希土類イオンまたは遷移金属イオンより選択される二価または三価の金属カチオンであり、L1、L2、およびL3は同じあるか、または異なり、少なくとも2つの窒素含有複素環を有する配位子を示し、L1、L2、およびL3は窒素原子を介して金属カチオンに結合し、Xは、リンカーYを介して配位子L1、L2、およびL3の少なくとも1つに共有結合された反応性官能基であり、nは、1〜10、特に、1〜4の整数であり、mは1または2であるか、または特に1であり、Aは電荷を等しくするために必要とされ得る対イオンを示す。
金属錯体は、1つの態様では、ルミネセンス金属錯体、すなわち、適切な励起後に検出可能なルミネセンス反応を経る金属錯体である。
ルミネセンス反応は、例えば、蛍光または電気化学発光(electrochemiluminescense)測定によって検出することができる。この錯体中の金属カチオンは、例えば、遷移金属または希土類金属である。
金属は、1つの態様では、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、白金、インジウム、パラジウム、モリブデン、テクネチウム、銅、クロム、またはタングステンである。ルテニウム、イリジウム、レニウム、クロム、およびオスミウムが特に適している。ルテニウムが最も適している。
本明細書において報告される複合体中の標識部分として金ナノロッド(GNR)も使用することもできる。ナノロッドの長さは、間の全ての整数を算入して、および含めて10〜100nmでもよい。
1つの態様において、GNRの長さの平均は70〜75nmである。
GNRの直径は、間の全ての整数を算入して、および含めて5〜45nmでもよい。
1つの態様において、GNRの直径の平均は25〜30nmである。GNRは純金でもよく、間の全ての整数を算入して、および含めて90%〜99%、純金でもよい。
様々な態様において、GNRは、その表面に1%までの銀を含有してもよく、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含有してもよい。
この点に関して、GNRは任意の適切な方法によって作ることができる。例えば、溶液中での電気化学的合成、膜テンプレーティング(membrane templating)、光化学合成、マイクロ波合成、およびシード媒介成長(seed mediated growth)は全て適しており、GNRを作る方法の非限定的な例である。
1つの態様において、金ナノロッドは、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)においてシード媒介成長法を用いて作られる。
金ナノロッドおよびRNAポリヌクレオチドの複合体を形成するために、GNRをDNAポリヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドと静電気的に複合体形成するのに適した正のゼータ電位を付与するように金ナノロッドの表面を官能化することができる。金ナノロッド上に正のゼータ電位を作り出す任意の適切な方法を使用することができる。例えば、金ナノロッドの表面を二官能性分子、例えば、チオール化-PEG-NH2またはチオール化-PEG-COOHで官能化することができる。
1つの態様において、表面官能基化は、CTABでコーティングされた金ナノロッドを最初にアニオン性高分子電解質ポリ(3,4-エチレンジオキシチ-6-フェン(ethylenedioxythi-6-phene))/ポリ(スチレンサルフェート)(PEDT/PSS)、次いで、カチオン性高分子電解質ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDAC)でコーティングすることによって達成される。
これはカチオン性表面電荷(正のゼータ電位)を有する金ナノロッドをもたらし、またCTAB層をマスクする(例えば、Ding, H., et al., J. Phys. Chem. C111 (2007) 12552-12557を参照されたい)。
正に荷電している金ナノロッドは、静電相互作用を用いてDNAポリヌクレオチドと静電気的に複合体形成される。
ナノプレックス(nanoplex)の形成は、金ナノロッドの局所的な縦方向のプラズモン共鳴ピークのレッドシフトの観察ならびにゲル電気泳動を用いたナノプレックスの電気泳動移動度の制限から確認することができる。
1つの態様において、エフェクター部分Xは治療活性のある物質である。
治療活性のある物質には、効果を示すやり方がいろいろあり、例えば、アルキル化、架橋結合、またはDNA二本鎖切断による癌の阻害、DNAテンプレートの損傷において効果を示す。他の治療活性のある物質はインターカレーションによってRNA合成をブロックすることができる。薬剤の中には、紡錘体毒、例えば、ビンカアルカロイド、または酵素活性を阻害する代謝拮抗物質、またはホルモン剤および抗ホルモン剤もある。エフェクター部分は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍性抗生物質、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、ニトロソ尿素、ホルモン剤および抗ホルモン剤、ならびに毒素より選択されてもよい。
適切なアルキル化剤は、シクロホスファミド、クロランブシル、ブスルファン、メルファラン、チオテパ、イホスファミド、またはナイトロジェンマスタードである。
適切な代謝拮抗物質は、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド、6-チオグアニン、6-メルカプトプリンである。
適切な抗腫瘍性抗生物質は、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イドルビシン(idorubicin)、ニミトキサントロン(nimitoxantron)、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、およびプリカマイシンである。
適切な紡錘体毒は、マイタンシンおよびマイタンシノイド、ビンカアルカロイドであり、エピポドフィロトキシンは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデスチン(vindestin)、エトポシド、テニポシドによって例証され得る。
さらに、適切なタキサン剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、SB-T-1214によって例証され得る。
適切なニトロソ尿素はカルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンである。
適切なホルモン剤および抗ホルモン剤は、アドレノコルチコイド、エストロゲン、抗エストロゲン、プロゲスチン、アロマターゼ阻害剤、アンドロゲン、抗アンドロゲンである。
適切なランダム合成薬剤は、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、ミトタン、プロカルバジド(procarbazide)、シスプラチン、カルボプラチンである。
適切な単球走化性因子は、f-Met-Leu-Phe(fMLP)、f-Met-Leu-Phe-o-メチルエステル、ホルミル-ノルロイシル-フェニルアラニン、ホルミル-メチオニル-フェニルアラニンである。
適切なNK細胞誘引因子は、IL-12、IL-15、IL-18、IL-2、およびCCL5、抗体のFC部分である。
1つの態様において、エフェクター部分Xは抗体Fc領域またはその断片である。
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、ヒトIgG1サブクラス、またはヒトIgG2サブクラス、またはヒトIgG3サブクラス、またはヒトIgG4サブクラスのFc領域である。
1つの態様において、抗体Fc領域はヒトIgG1サブクラスまたはヒトIgG4サブクラスのヒト抗体Fc領域である。
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、少なくとも、以下のアミノ酸位置228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、329、および/または331の1つにある天然アミノ酸残基から異なる残基への変異を含む。ここで、抗体Fc領域中の残基はKabatのEUインデックスに従ってナンバリングされる。
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、位置329にある天然アミノ酸残基の変異、ならびに位置228、233、234、235、236、237、297、318、320、322、および331にあるアミノ酸残基を含む群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基から異なる残基への少なくとも1つのさらなる変異を含む。ここで、Fc領域中の残基はKabatのEUインデックスに従ってナンバリングされる。これらの特定のアミノ酸残基を変えると、非改変(野生型)Fc領域と比較してFc領域のエフェクター機能が変化する。
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域は、対応する野生型IgG Fc領域を含む結合体と比較してヒトFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAおよび/またはFcγRIに対する親和性が低い。
1つの態様において、ヒト抗体Fc領域の位置329にあるアミノ酸残基が、グリシン、またはアルギニン、またはFc領域内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基によって置換される。
1つの態様において、天然アミノ酸残基のヒト抗体Fc領域中の変異は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、P329G、および/またはP331Sの少なくとも1つである。
1つの態様において、変異は、抗体Fc領域がヒトIgG1サブクラスの抗体Fc領域である場合、L234AおよびL235Aであるか、または抗体Fc領域がヒトIgG4サブクラスの抗体Fc領域である場合、S228PおよびL235Eである。
1つの態様において、抗体Fc領域は変異P329Gを含む。
エフェクター部分は、共有結合的に、またはさらなる結合ペアを介して複合体中の成分の少なくとも1つに結合することができる。エフェクター部分は、1回〜数(n)回、本明細書において報告される複合体に含まれてもよく、(n)は整数および0または1または複数である。1つの態様において、(n)は1〜1,000,000である。1つの態様において、(n)は1,000および300,000である。1つの態様において、(n)は1〜50である。1つの態様において、(n)は1〜10または1〜5である。1つの態様において、(n)は1または2である。
エフェクター部分を複合体中の成分の少なくとも1つに共有結合するために、任意の適切なカップリング化学を使用することができる。第1および/もしくは第2の結合ペアのメンバーならびに/または(ポリヌクレオチド)リンカーを合成する時に、特に、ポリペプチドまたは(ポリヌクレオチド)リンカーと結合体化される結合ペアのメンバーの中に適切な基本要素を使用することによって機能的部分を組み込むことも可能である。
実質的に非免疫原性の(またはほとんど免疫原性のない)連結をもたらす結合体化方法が特に適している。従って、ペプチド-(すなわち、アミド-)、スルフィド-、(立体障害のある)、ジスルフィド-、ヒドラゾン-、またはエーテル連結が特に適している。これらの連結はほとんど免疫原性がなく、血清中で妥当な安定性を示す(例えば、Senter, P.D., Curr. Opin. Chem. Biol. 13 (2009) 235-244;WO2009/059278;WO95/17886を参照されたい)。
1つの態様において、エフェクター部分は、本明細書において報告される複合体の(ポリヌクレオチド)リンカーに結合される。
1つの態様において、エフェクター部分は、本明細書において報告される複合体のポリペプチドまたは(ポリヌクレオチド)リンカーと結合体化された結合ペアのメンバーに共有結合される。
エフェクター部分がハイブリダイジングポリヌクレオチドの中に配置される場合、エフェクター部分を修飾ヌクレオチドに結合させることが特に適している、またはエフェクター部分はヌクレオシド間P原子に取り付けられる(例えば、WO2007/059816を参照されたい)。
二官能性基本要素(前記)を用いて、エフェクター部分または-必要に応じて-保護されたエフェクター部分を、5'末端(通常の合成)または3'末端(逆の合成)にある基本要素を成長中のポリヌクレオチド鎖の末端ヒドロキシル基に取り付けるためのホスホルアミダイト基に接続することができる。
三官能性基本要素(前記)を用いて、(i)エフェクター部分または-必要に応じて-保護されたエフェクター部分、(ii)ポリヌクレオチド合成中に、レポーターまたはエフェクター部分もしくは-必要に応じて-保護されたエフェクター部分を成長中のポリヌクレオチド鎖のヒドロキシル基にカップリングするためのホスホルアミダイト基、および(iii)酸不安定保護基、特に、ジメトキシトリチル保護基によって保護されたヒドロキシル基を接続することができる。この酸不安定保護基が取り除かれた後に、ヒドロキシル基は遊離され、さらなるホスホルアミダイトを反応することができる。
エフェクター部分は、1つの態様では、第1および/もしくは第2の結合ペアのメンバーの少なくとも1つに結合されるか、またはさらなる第3の結合ペアを介してポリヌクレオチドリンカーに結合される。1つの態様において、第3の結合ペアはハイブリダイジング核酸配列のペアである。第3の結合ペアのメンバーは他の結合ペアのメンバーが互いに結合するのを妨げない。
エフェクター部分を結合することができる、さらなる結合ペアは、特に、ロイシンジッパードメインまたはハイブリダイジング核酸である。エフェクター部分が、さらなる結合ペアメンバーを介して第1および/もしくは第2の結合ペアのメンバーまたは(ポリヌクレオチド)リンカーの少なくとも1つに結合されるのであれば、エフェクター部分が結合される結合ペアメンバーならびに第1および第2の結合ペアメンバーは全てそれぞれ異なる特異性を有するように選択される。第1および第2の結合ペアのメンバーおよびエフェクター部分が結合される結合ペアはそれぞれ、他の結合ペアのいずれの結合も妨げることなく、それぞれのパートナーに結合する(例えば、それぞれのパートナーとハイブリダイズする)。
1つの態様において、結合ペアの相補的核酸および/または(ポリヌクレオチド)リンカーは少なくとも部分的にL-DNAまたはL-RNAまたはLNAまたはイソ-C核酸またはイソ-G核酸またはその任意の組み合わせから作られる。1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーは少なくとも50%のL-DNAまたはL-RNAまたはLNAまたはイソ-C核酸またはイソ-G核酸またはその任意の組み合わせから作られる。1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーはL-ポリヌクレオチド(スピゲルマー(spiegelmer))である。1つの態様において、L-ポリヌクレオチドはL-DNAである。
1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーはDNAである。1つの態様において、(ポリヌクレオチド)リンカーは、β-L-DNAまたはL-DNAまたは鏡像DNAとも知られるDNAのL-立体異性体である。
この立体異性DNAは、2本の相補的なL-DNA一本鎖間でのみ二重鎖が形成されるが、L-DNA一本鎖と相補的D-DNA鎖との間では二重鎖が形成されないことを意味するオルトゴナルハイブリダイゼーション挙動、ヌクレアーゼ耐性、および長いリンカーからでも合成がしやすいというような利点を特徴とする。合成のしやすさ、およびスペーサー長さの可変性はリンカーライブラリーを提供するのに重要である。最適な長さのポリヌクレオチドリンカーを有する本明細書において報告される複合体の特定、従って、標的に特異的に結合する2つのポリペプチド間の最適な距離の提供において長さの異なる(ポリヌクレオチド)リンカーが有用である。
1つの態様において、複合体は非共有結合複合体である。1つの態様において、非共有結合複合体は結合ペアを介して形成される。
一部の態様において、エフェクター部分は治療薬である。
例えば、エフェクター部分は、治療用放射性核種、ホルモン、サイトカイン、インターフェロン、抗体もしくは抗体断片、核酸アプタマー、酵素、ポリペプチド、毒素、細胞毒、化学療法剤、または放射線増感剤でもよい。
本明細書において報告される一局面は、本明細書において報告される複合体を使用する方法である。
例えば、細胞を死滅させる方法であって、本明細書において報告される複合体が細胞を死滅させるのに十分な量で細胞に投与される方法が本明細書において報告される。
1つの態様において、細胞は癌細胞である。
哺乳動物において癌細胞の成長を遅らせる、または止める方法であって、本明細書において報告される複合体が、癌細胞の成長を遅らせる、または止めるのに十分な量で哺乳動物に投与される方法も本明細書において報告される。
1つの態様において、前記方法は、癌細胞の成長または増殖を阻害する方法である。
1つの態様において、標的に特異的に結合するポリペプチドは、細胞の細胞表面分子に特異的に結合する。1つの態様において、細胞表面分子は癌細胞表面に特異的に存在する。
1つの態様において、標的に特異的に結合する第1および第2のポリペプチドは互いに独立して抗体、抗体断片、単鎖可変領域抗体、ペプチド低分子、環式ポリペプチド、ペプチドミメティック、およびアプタマーからなる群より選択される。
1つの態様において、標的に特異的に結合する第1および第2のポリペプチドは一価結合ポリペプチドである。
1つの態様において、ポリペプチドは抗体断片である。1つの態様において、抗体断片は、細胞表面分子に特異的に結合する内部移行抗体に由来する。
エフェクター部分を本明細書において報告される複合体に結合体化すると、エフェクター部分を細胞表面の望ましい部位に特異的に局在化させることが可能になる。局在化によって標的細胞表面におけるエフェクター部分の有効濃度が高まり、それによってエフェクター部分の効果が最適化される。さらに、複合体を、非標的化エフェクター部分に匹敵する低い用量で投与することができる。これは、エフェクター部分が関連毒性を有する場合に、または慢性疾患の治療において用いられる場合に特に関係がある場合がある。
L-DNAは、本明細書において報告される複合体の形成における有用なヌクレオチドである。L-DNAは単独では天然型のDNA(D-DNA)またはRNAにハイブリダイズしない。L-DNAは多くの酵素の天然基質ではないので、インビボでのL-DNAの安定性はD-DNAの安定性より高くなる可能性がある。L-DNA二重鎖は、溶解度、二重鎖安定性、および選択性の点でD-DNAと同じ物理的特徴を有するが、左らせんの二重らせんを形成する。本明細書で使用するL-ポリヌクレオチドはいくつかのD-ポリヌクレオチドも含んでもよいことを理解しなければならない。
L-ポリヌクレオチドの化学的特性により、これらは、L-ヌクレオチドの使用の根底をなす薬物動態がDNA特異的分解プロセスの影響を受けない、または少なくともある程度までDNA特異的分解プロセスの影響を受けないように代謝されない。従って、L-ポリヌクレオチドの高安定性を考慮すると、哺乳動物における本明細書において報告される複合体のインビボ半減期は事実上、無限である。L-ポリヌクレオチドは腎毒性でないということが特に重要である。
1つの態様において、哺乳動物は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、またはマウスより選択される。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーはD-DNAおよびL-DNAヌクレオチドを含む、すなわち、ポリヌクレオチドリンカーはD-DNAおよびL-DNAの混合物である。
このリンカーを用いると、ポリヌクレオチドリンカーの半減期を操作することが可能になある。すなわち、オリゴヌクレオチドリンカーのインビボ半減期を特別に作り、複合体の所期の用途に合わせることができる。
本明細書において報告される複合体に存在するポリヌクレオチドはそれぞれ1つまたは複数のエフェクター部分を含んでもよい。エフェクター部分は、疾患の治療における本明細書において報告される複合体の使用を可能にする。エフェクター部分は、例えば、担体目的に、すなわち、エフェクター機能の送達、および/または薬物動態学的挙動の調節、および/または物理化学的特性の調節に使用することができる。
1つの態様において、エフェクター部分は、親油性部分、ペプチド、タンパク質、炭水化物、およびリポソームより選択される。
1つの態様において、ポリヌクレオチドはL-ポリヌクレオチドである。
L-ポリ(デオキシ)ヌクレオチドは一本鎖ポリヌクレオチドまたは二本鎖ポリヌクレオチドとして存在してもよい。典型的に、L-ポリ(デオキシ)ヌクレオチドは一本鎖核酸として存在し、この一本鎖核酸は(規定された)二次構造を形成してもよく、三次構造も形成してもよい。このような二次構造の中にも二本鎖領域が存在してよい。しかしながら、L-ポリ(デオキシ)ヌクレオチドはまた、互いに相補的な2本の鎖がハイブリダイズされるという意味で少なくとも部分的に二本鎖分子として存在してもよい。L-ポリヌクレオチドは改変されてもよい。改変は、ポリヌクレオチドの一つ一つのヌクレオチドと関連してもよい。
二次構造形成を回避するために、1つの態様では、2,4-ジヒドロキシ-5-メチルピリジン(T)を核酸塩基として使用することができる。
本明細書において報告される複合体中のL-ポリヌクレオチドは1つの態様では「自己ハイブリダイゼーション」を受けやすい。
従って、L-ポリヌクレオチドは相補的L-ポリヌクレオチド配列と容易にハイブリダイズすることができるが、天然のDNAまたはRNAと安定した二重鎖を形成しない。
1つの態様において、L-DNAセグメント中のヌクレオチドのコンホメーションは1'S、3'R、および4'Sである。
1つの態様において、L-DNAポリヌクレオチドリンカーは、その末端にある結合ペアのメンバーと複合体のポリペプチドとのハイブリダイゼーションによって結合体化される。
1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーの長さは少なくとも1nmである。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーの長さは6nm〜100nmである。1つの態様において、ポリヌクレオチドリンカーの長さは少なくとも70ヌクレオチドである。
ポリヌクレオチドリンカーはまたタグ配列も含んでよい。タグ配列は、一般的に用いられるタンパク質認識タグ、例えば、
より選択されてもよい。
従って、本明細書において報告される方法の1つの態様において、最初に、エフェクター部分を含まない本明細書において報告される複合体を投与し、その標的に結合させ、その後に、(ポリヌクレオチド)リンカーの少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドと結合体化されたエフェクター部分を投与する。それによって、エフェクター部分は、インサイチューで本明細書において報告される複合体にハイブリダイズすることによって、その標的と結合した複合体と同じ場所に配置される。
本明細書において報告される複合体は、任意の特定の核酸配列、または標的に特異的に結合する任意の結合実体(ポリペプチド)、または特定の細胞タイプ、または特定の条件、または特定の方法などに限定されず、従って、変更してもよく、これらの非常に多くの変更および変化が当業者に明らかであることを理解しなければならない。
本明細書において報告される方法の1つの態様において、複合体は腫瘍細胞の細胞表面に結合し、高密度または高局所濃度のエフェクター部分になるよう局所的に濃縮する。
1つの態様において、エフェクター部分は、標識されたss-L-DNAであり、これは複合体の初回標的会合と同時に、または複合体の初回標的会合の後に投与される。
標識されたss-L-DNAエフェクター部分は複合体のss-L-DNA(オリゴヌクレオチド)リンカーにハイブリダイズする。
標的に結合した複合体は、自然免疫反応を活性化する、すなわち、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)とも呼ばれる細胞傷害性リンパ球を誘引するのに用いられる。NK細胞は、腫瘍およびウイルスに感染した細胞の拒絶反応において大きな役割を果たす。NK細胞は、アポトーシスによって標的細胞の死を引き起こす、パーフォリンおよびグランザイムと呼ばれるタンパク質の小さな細胞質顆粒を放出することによって細胞を死滅させる。
1つの態様において、本明細書において報告される複合体は、NK細胞を、結合した複合体の近くに誘引するのに用いられる。1つの態様において、サイトカインと結合体化されたss-L-DNAがエフェクター部分として用いられる。
NK細胞を誘引するために、このサイトカイン標識エフェクター部分を使用することができる。NK活性化に関与するサイトカインには、IL-12、IL-15、IL-18、IL-2、およびCCL5が含まれる。
1つの態様において、抗体のFc部分と結合体化されたss-L-DNAはエフェクター部分として用いられる。
NK細胞はマクロファージおよび他のいくつかの細胞タイプと一緒に、抗体のFc部分に結合する活性化生化学的受容体であるFc受容体(FcR)分子(FC-γ-RIII=CD16)を発現する。これにより、NK細胞は、体液性反応が動員されている細胞を標的化することができ、抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって細胞を溶解することができる。
1つの態様において、1つまたは複数のFc部分と結合体化されたss-L-DNAの1つもしくは複数または組み合わせがエフェクター部分として用いられる。
この態様において、複合体はADCCおよび/または補体活性化(CDC)を調整するのに使用することができる。
1つの態様において、この複合体は、操作されたFc区画を、ADCCおよびCDCの関与における効力についてスクリーニングする方法において用いられる。
1つの態様において、複合体は***ホスファターゼを阻害するのに用いられる。
この態様において、複合体はNK細胞不活性化を回避するのに使用することができる。
1つの態様において、標的に特異的に結合するポリペプチド、例えば、細胞表面分子に特異的に結合する抗体または抗体断片は、標的を提示している細胞への複合体の取り込みを増やすために、標的受容体に対するリガンドまたは細胞のエンドサイトーシス機構によって容易に飲み込まれる大きな分子と結合体化される。
次いで、標的に結合した複合体をエンドサイトーシスによって内部移行させ、エフェクター部分を細胞内に放出することができる。
標的に特異的に結合する結合実体(ポリペプチド)は1つの態様では抗体断片である。
「単鎖可変領域断片」または「scFv」という用語は、軽鎖部分および重鎖部分が抗原結合部位を形成するのに十分な長さを有する、共有結合によって連結された1本の抗体軽鎖および1本の抗体重鎖の可変抗原結合領域を意味する。このようなリンカーは共有結合と同じくらい短くてもよい。特に適しているリンカーは2〜50個のアミノ酸残基、および特に5〜25個のアミノ酸残基を含む。
他の抗体断片は、Holliger, P., et al. (PNAS (USA) 90 (1993) 6444-6448)によって最初に述べられたダイアボディである。これらは、抗体の重鎖および軽鎖を用いて、ならびに抗体の個々のCDR領域を使用することによって構築されてもよい。典型的に、ダイアボディは、短すぎて同じ鎖にある2つのドメイン間で対形成することができないリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、ある断片のVHドメインおよびVLドメインは、別の断片の相補的なVHドメインおよびVLドメインと強制的に対形成し、それによって2つの抗原結合部位を形成する。3つの抗原結合部位を有するトリアボディも同様に構築することができる。
Fv抗体断片は、非共有結合相互作用によって一緒になったVLドメインおよびVHドメインを含む完全な抗原結合部位を含有する。Fv断片はまた、グルタルアルデヒド、分子間ジスルフィド結合、または他のリンカーによってVHドメインおよびVLドメインが架橋された構築物も含む。重鎖および軽鎖の可変ドメインを一緒に融合して、親抗体の元々の特異性を保持する単鎖可変断片(scFv)を形成することができる。Gruber, M., et al., J. Immunol. 152 (1994) 5368-5374によって初めて述べられた単鎖Fv(scFv)二量体は、抗体の重鎖および軽鎖を用いて、ならびに抗体の個々のCDR領域を使用することによって構築され得る。本明細書において報告される複合体において適切な特異的結合構築物を調製するために、当技術分野において公知の多くの技法を使用することができる(例えば、US2007/0196274、US2005/0163782を参照されたい)。
二重特異性抗体は化学的架橋結合またはハイブリッドハイブリドーマ技術によって作製することができる。代替として、二重特異性抗体分子は組換え法によって生成することができる。二量体化は、scFv断片を生成するために日常的に用いられるVHドメインおよびVLドメインをつなぐリンカーの長さを約15アミノ酸から約5アミノ酸に減らすことによって促進することができる。これらのリンカーはVHドメインおよびVLドメインの鎖内組み立てに有利である。適切な短いリンカーはSGGGS(SEQ ID NO:66)であるが、他のリンカーを使用することができる。従って、2つの断片は集合して二量体分子になる。リンカー長を0〜2個のアミノ酸残基にさらに短くすると、三量体(トリアボディ)または四量体(テトラボディ)分子を作製することができる。
1つの態様において、標的に特異的に結合する結合実体(ポリペプチド)、例えば、細胞表面受容体に特異的に結合する抗体は、標的受容体に対するリガンド、または細胞のエンドサイトーシス機構によって容易に飲み込まれる大きな分子に連結されてもよい。
この態様において、複合体は、標的を提示している細胞への複合体の取り込みを増やすのに使用することができる。次いで、標的に結合した複合体をエンドサイトーシスによって内部移行させ、エンドサイトーシス小胞がリソソームと融合した時に、エフェクター部分を酸加水分解または酵素活性によって放出することができる。
本明細書において報告される複合体は、エフェクター部分を細胞内および細胞外に送達するのに使用することができる。複合体はインサイチューで癌細胞を認識するのに使用することができ、このために標的治療剤を開発するための魅力的な候補である。
ある成分と別の成分(または粒子もしくはカプセル)との非共有結合的会合が望ましい時、使用され得る適切な会合相互作用には、抗体-抗原、受容体-ホルモン、アビジン-ビオチンペア、ストレプトアビジン-ビオチン、金属-キレート、低分子/ポリヌクレオチド(例えば、Dervan, P.B., Bioorg. Med. Chem. 9 (2001) 2215-2235; Zahn, Z.Y. and Dervan, P.B., Bioorg. Med. Chem. 8 (2000) 2467-2474を参照されたい);ポリヌクレオチド/相補的ポリヌクレオチド(例えば、二量体へリックスおよび三量体へリックス)、アプタマー/低分子、アプタマー/ポリペプチド、コイルドコイル、およびポリヌクレオチド/ポリペプチド(例えば、DNA配列に結合する、ジンクフィンガー、ヘリックス-ターン-ヘリックス、ロイシンジッパー、およびヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフ)が含まれるが、これに限定されない。
本明細書において報告される複合体は、様々なエフェクター部分、例えば、治療薬を含む細胞傷害性薬物、放射線を放出する成分、植物、真菌、または細菌由来の分子、生物学的タンパク質、およびその混合物を細胞に送達するのに使用することができる。細胞傷害性薬物は、例えば、短距離高エネルギーα放射体を含む短距離放射線放射体などの細胞内に作用する細胞傷害性薬物でもよい。
1つの態様において、エフェクター部分は、薬物(例えば、抗癌薬、例えば、アブラキサン、ドキソルビシン、パミドロン酸二ナトリウム、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、トレミフェン、レトロゾール、トラスツズマブ、メゲストロールタモキシフェン(megestroltamoxifen)、パクリタキセル、ドセタキセル、カペシタビン、酢酸ゴセレリン、ゾレドロン酸、ビンブラスチンなど)、結合した細胞の認識を免疫系成分によって刺激する抗原、免疫系成分に特異的に結合し、細胞に誘導する抗体などをカプセル化するリポソームである。
1つの態様において、エフェクター部分は、細胞に対する電離放射線(例えば、60CoまたはX線源によって発生してもよい)の細胞傷害作用を増強する放射線増感剤を含んでもよい。
1つの態様において、エフェクター部分は、単球走化性因子、またはf-Met-Leu-Phe(fMLP)、またはf-Met-Leu-Phe-o-メチルエステル、またはホルミル-ノルロイシル-フェニルアラニン、またはホルミル-メチオニル-フェニルアラニン、またはその誘導体より選択される。
1つの態様において、エフェクター部分は反応基である。
反応基は、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシレート、ヒドロキシル、アジド、アルキニル、またはアルケニルのような任意の公知の反応基より選択することができる。
1つの態様において、反応基は、マレイニミド(Maleinimido)、スクシンイミジル、ジチオピリジル、ニトロフェニルエステル、ヘキサフルオロフェニルエステルより選択される。
作用様式が、例えば、エフェクター部分としてfMLPの場合のように高局所濃度のエフェクターを標的上に作り出すことに依存するのであれば、リンカー実体のL-DNA性質は、同じエフェクター部分または異なるエフェクター部分によって改変された第2のL-DNAオリゴヌクレオチドとの特異的ハイブリダイゼーションを可能にする。
第2のL-DNAに結合されたエフェクター部分の数は、単一のエフェクターによって改変されたL-DNAによって誘導される応答が無いように限定されなければならない。必要に応じて、第2のL-DNAは、同じエフェクター部分または異なるエフェクター部分によって改変された第3のL-DNAオリゴヌクレオチドと特異的にハイブリダイズすることができる、さらなる部位を含む。他の二重鎖の存在下で二重鎖を特異的に形成する多くの異なる配列を選択することは容易であるので、多量体複合体を容易に増やすことができる。
直鎖多量体複合体を形成するように重複配列を有するオリゴヌクレオチドを使用することによって、または分枝が第3のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズして樹枝状多量体複合体を形成することができる分枝オリゴヌクレオチドを使用することによって多量体複合体を増やすことができる。
1つの態様において、エフェクター部分は、α放射体、すなわち、α粒子を放射する放射性同位体である。適切なα放射体には、Bi、213Bi、211Atなどが含まれるが、これに限定されない。
エフェクター部分はまたリガンド、エピトープタグ、抗体Fc-領域、または抗体を含んでよい。
酵素活性のある毒素およびその断片は、ジフテリア毒素A断片、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に由来する)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、α-サルシン(sarcin)、ある特定のシナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ある特定のジアンチン(Dianthin)タンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAP、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(Morodica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトジリン(mitogillin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、およびエノマイシン(enomycin)より選択されてもよい。
1つの態様において、高密度のケージドエフェクター部分によって改変された1つまたは複数のL-DNAオリゴヌクレオチドがL-DNAリンカーにハイブリダイズされる。
癌細胞は様々な点で正常細胞と異なる。このうちの1つは細胞表面の分子組成である。表面化学特性が変化すると、癌細胞は増殖および生存のために外部シグナルに効率的に反応し、様々な宿主組織要素と直接相互作用して移動し、循環に進入し、血管外遊出し、離れた部位でコロニー形成できるようになる。腫瘍細胞表面分子は悪性細胞マーカーとして役立つことに加えて、血流または細胞外空間に投与された標的化分子に比較的容易に到達するために療法の有益な標的である(Feng, A., et al., Mol. Cencer Ther. 7 (2008) 569-578)。
意図される腫瘍特異的抗原には、CEA、CD20、HER1、HER2/neu、HER4、PSCA、PSMA、CA-125、CA-19-9、c-Met、MUC1、RCAS1、Ep-CAM、Melan-A/MART1、RHA-MM、VEGF、EGFR、インテグリン、フィブロネクチンのED-B、ChL6、Lym-1、CD1b、CD3、CD5、CD14、CD20、CD22、CD33、CD56、TAO-72、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、フェリチン、神経細胞接着分子(NCAM)、メラノーマ関連抗原、ガングリオシドGm、EOF受容体、テネイシン、c-Met(HGFR)が含まれるが、これに限定されない。
1つの態様において、抗体は、細胞表面受容体上の翻訳後修飾された標的に特異的に結合する。1つの態様において、翻訳後に標的はリン酸化またはグリコシル化によって修飾される。
1つの態様において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは同じエピトープまたは重複エピトープに結合する。
ポリヌクレオチドリンカーを介して互いに連結された、標的に特異的に結合する2つの一価ポリペプチドからなる複合体によって、翻訳後修飾された標的ポリペプチドを検出できることが見出されている。ここで、第1のポリペプチドは標的のポリペプチドエピトープに結合し、第2のポリペプチドは翻訳後ポリペプチド修飾に結合し、それぞれの一価結合剤のKdissは10-2/sec〜10-3/secの範囲であり、複合体のKdissは10-4/sec以下である。
異なるタイプの共有結合アミノ酸修飾が公知である。例えば、Mann and Jensen (2003)およびSeo and Lee (2004)によって報告される翻訳後修飾が参照により本明細書に組み入れられる(Mann, M. and Jensen, O.N., Biochemistry 21 (2003) 255-261; Seo, J. and Lee, K.-J., Biochemistry and Molecular Biology 37/1 (2004) 35-44)。
1つの態様において、翻訳後修飾は、アセチル化、リン酸化、アシル化、メチル化、グリコシル化、ユビキチン化、SUMO化、硫酸化、およびニトロ化からなる群より選択される。
アセチル化(+42Daの分子量変化)はかなり安定な二次修飾である。例は、多くのタンパク質のN末端に見られるアセチル化またはリジン残基もしくはセリン残基におけるアセチル化である。通常、リジン残基のアセチル化はポリペプチド鎖内の1つまたは複数の詳細に明らかにされた位置に見られるのに対して、他のリジン残基は頻繁にアセチル化されないか、または全くアセチル化されない。
タンパク質のリン酸化および脱リン酸(この正味の平衡(net balance)はリン酸化状態と呼ばれることがある)はタンパク質生物学的活性の調節における重要な要素の1つであることが知られている。ある特定の生物学的活性を誘発するには、低パーセントのリン酸化アミノ酸残基で既に十分な場合がある。リン酸化は80Daの質量増加(分子量増加)をもたらす。アミノ酸チロシン(Y)、セリン(S)、スレオニン(T)、ヒスチジン(H)、およびアスパラギン酸(D)をリン酸化することができる。ポリペプチドの生物学的機能が複雑になればなるほど、可能性のあるリン酸化部位の対応するパターンは複雑になる。このことは特に知られており、膜結合型受容体、特に、いわゆる受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に当てはまる。名称が既に示唆するように、RTKの細胞内シグナル伝達の少なくとも一部は、このようなRTKの細胞内ドメインのある特定のチロシンのリン酸化状態によって媒介される。
ポリペプチドは、ファルネシル基、ミリストイル基、またはパルミトイル基によってアシル化されてもよい。通常、アシル化はシステイン残基の側鎖において発生する。
二次修飾としてのメチル化はリジン残基の側鎖を介して発生する。核酸に結合することができる調節タンパク質の結合特性を、例えば、メチル化を介して調整できることが示されている。
グリコシル化は一般的な二次修飾である。グリコシル化はタンパク質間相互作用、タンパク質の可溶化、タンパク質の安定性にも大きな影響を及ぼす。2つの異なるタイプのグリコシル化:N結合型(アミノ酸N(アスパラギン)を介する)側鎖およびO結合型側鎖(セリン(S)またはスレオニン(T)を介する)が公知である。多くの異なる多糖(直鎖または分枝側鎖を有する)が特定されており、一部は、O-Glc-NAcのような糖誘導体を含有する。
ユビキチン化およびSUMO化はそれぞれ循環中でのタンパク質の半減期に影響を及ぼすことが知られている。ユビキチン化は破壊シグナルとして役立つ場合があり、その結果としてユビキチン化ポリペプチドが切断および/または除去される。
チロシン残基(Y)を介した硫酸化はタンパク質間(細胞間)相互作用の調整において、ならびにタンパク質リガンド相互作用において重要なようにみえる。
チロシン残基(Y)のニトロ化は、酸化的損傷、例えば、炎症プロセスにおける酸化的損傷の顕著な特徴であるようにみえる。
L-デオキシヌクレオシドホスホルアミダイト単位L-dT、L-dC、L-dA、およびL-dGは文献に従って調製することができる(例えば、Urata, H., et al., Nucl. Acids Res. 20 (1992) 3325-3332; Shi, Z.D., et al., Tetrahed. 58 (2002) 3287-3296を参照されたい)。L-デオキシリボース誘導体は8段階でL-アラビノースから合成することができる。L-デオキシヌクレオシドは適切な核酸塩基誘導体をL-デオキシリボース誘導体でグリコシル化することによって入手することができる。ヌクレオシドホスホルアミダイトに誘導体化した後、固相DNA合成法によってヌクレオシドホスホルアミダイトをオリゴデオキシヌクレオシドに組み込むことができる。オリゴマーは逆相HPLCおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって精製することができる。
L-DNAは、標準的な合成プロトコールを使用することによってDNAと同じように大規模合成することができる。
scFv抗体断片を発現および精製するために、scFvをコードする核酸を、発現用および/または分泌用のベクター、例えば、pUC119mycHisにクローニングすることができる。これによってscFvのC末端にc-mycエピトープタグおよびヘキサヒスチジンタグが付加される。免疫組織化学用に(scFv') 2二量体を作り出すために(Adams, G.P., et al., Cancer Res. 53 (1993) 4026-4034)、c-mycエピトープタグをpUC119mycHisから遺伝的に除去することができ、ヘキサヒスチジンタグの前にあるscFvのC末端に遊離システインを導入することができる。scFvまたは(scFv') 2二量体タンパク質を細菌ペリプラズムから収集し、固定化金属アフィニティクロマトグラフィーおよびゲル濾過によって精製することができる(Nielsen, U.B., et al., Biochim. Biophys. Acta 1591 (2002) 109-118)。
代替として、scFvをコードする構造遺伝子を、C末端にc-mycおよびヘキサヒスチジンタグを付与する発現ベクターに導入することによってscFvを生成することができる(Liu, B., et al., Cancer Res. 64 (2004) 704-710)。可溶性(scFv)2を生成するために、第2のベクターを使用して、C末端にシステインおよびヘキサヒスチジンタグを付与することができる。IPTG誘導後、ニトリロ三酢酸-ニッケルビーズによって細菌細胞周辺腔から抗体断片を精製することができる。FACSおよび免疫組織化学研究のために、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-ビオチン(Pierce)を用いて製造業者の説明書に従ってscFvをビオチン化することができる。
解離定数(KD)を求めるために、それぞれの標的表面分子を発現する細胞株を適切な培地、例えば、10%FCSが補充されたRPMI1640の中で90%コンフルエンシーまで増殖することができる。2mmol/l EDTA/PBSに溶解したトリプシン(0.2%)を用いて短時間消化することによって細胞を収集することができる。ビオチン化scFvを、PBS/0.25%ウシ血清アルブミン中で105個の細胞と4℃で4時間インキュベートすることができる。結合されたscFvをストレプトアビジン-フィコエリトリンによって検出し、FACSによって分析することができる。データをカーブフィッティングすることができる。KD値をGraphPad Prism (Graph-Pad Software)を用いて計算することができる。
免疫組織化学の場合、凍結ブロックおよび/またはパラフィン包埋ブロックからの組織切片を使用することができる。免疫組織化学的分析の場合、組織切片を精製二量体scFv(例えば、2%乳/PBS中で50μg/ml)と4℃で4時間インキュベートし、PBSで洗浄し、1:400に希釈した抗(His)6抗体(Santa Cruz Biotechnology)とインキュベートした後に、1:400に希釈したビオチン化抗抗(His)6抗体抗体(Vector Lab)および1:400に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジン(Sigma)とインキュベートすることができる。基質としてジアミノベンジジン(Sigma)を用いて結合を検出することができる。
代替として、試験組織および対照組織の凍結切片をビオチン化scFv(250nmol/l)を用いて室温で1時間、染色することができる。FACSによって試験細胞株に結合しないscFvを全ての実験の対照として使用することができる。結合したscFvを、3,3'-ジアミノベンジジン基質を用いてストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼによって検出することができる。染色組織をヘマトキシリンで対比染色し、70%、95%、および100%エタノール中で乾燥させ、マウントし、分析することができる。
特に、HER2過剰発現および増幅を検出するための免疫組織化学(IHC)および蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)についてはUS2003/0152987(参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
内部移行を確かめるためには、以下の手順を使用することができる。蛍光顕微鏡実験の場合、細胞を24ウェルプレート中で約80%コンフルエンシーまで増殖させ、1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドカルボシアニン-5,5'-二スルホン酸で標識した非標的化複合体または標的化複合体と37℃で4時間コインキュベートすることができる。細胞をPBSで洗浄し、Nikon Eclipse TE300蛍光顕微鏡を用いて調べることができる。FACS分析の場合、細胞を1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドカルボシアニン-5,5'-二スルホン酸標識複合体と37℃で2時間インキュベートし、トリプシン消化によってディッシュから取り出し、表面に結合したリポソームを除去するためにグリシン緩衝液(pH2.8;150mmol/l NaCl)に室温で5分間、曝露し、FACS(LSPII; BD Biosciences)によって分析することができる。平均蛍光強度値を用いて、(グリシン処理前の)全ての細胞関連リポソームに対する(グリシン処理耐性の)内部移行リポソームのパーセントを計算することができる。
増殖阻害および内部移行アッセイの場合、約30%〜80%コンフルエンスの癌細胞を、1%FCSを含有する培地中で、様々な濃度のアフィニティ精製された複合体と37℃で72時間インキュベートすることができる。増殖状態は、テトラゾリウム塩3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドアッセイ(Promega)を用いて評価することができる。IC50はKaleidaGraph 3.5(Synergy Software)を用いて計算することができる。内部移行アッセイの場合、複合体をスルホ-NHS-LC-ビオチン(Pierce)によってビオチン化し、標的細胞と様々な時間で37℃でインキュベートすることができる。細胞を100mMグリシン緩衝液(pH2.8)で洗浄し、2%ホルムアルデヒドで固定し、氷冷100%メタノールによって透過処理し、ストレプトアビジン-FITCとインキュベートすることができる。最初に、染色細胞をAxiophot蛍光顕微鏡(Zeiss)を用いて調べ、Leica TCS NT共焦点レーザー蛍光顕微鏡(Leica)を用いてさらに研究することができる。
毒性を確かめるために、細胞を96ウェルプレート中に6,000/ウェルでプレートし、様々な濃度(0〜10μg/ml)の本明細書において報告される複合体と37℃で2時間インキュベートすることができる。複合体を除去した後に、細胞を、10%FCSが補充されたRPMI1640で1回洗浄し、37℃でもう70時間インキュベートすることができる。細胞生存率を、Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて製造業者の説明書に従ってアッセイすることができる。データを未処理対照細胞と比較した生細胞のパーセントで表すことができる。
インビトロ細胞傷害性を確かめるために、癌細胞を96ウェルプレートに播種し(例えば、PC3細胞およびDu-145細胞の場合、6,000細胞/ウェル、または例えば、LNCaP細胞の場合、10,000細胞/ウェル)、本明細書において報告される複合体(0〜10μg/ml)と37℃で4時間インキュベートすることができる。薬物を除去するために、補充されたRPMI1640で細胞を2回洗浄し、新鮮な培地と37℃でもう72時間インキュベートすることができる。細胞生存率を、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド染色(Carmichael, J., et al., Cancer Res. 47 (1987) 936-942)を用いてアッセイすることができ、結果をマイクロタイタープレートリーダー(SpectraMax 190, Molecular Devices)を用いて570nmで読み取ることができる。細胞生存率を、Cell counting kit-8 (Dojindo)を用いて製造業者の説明書に従って求めることができる。
細胞内送達アッセイの場合、以下の方法を使用することができる。細胞内複合体送達を評価するために、複合体を1μg/mlの精製(His)6-タグ化scFvと一緒に細胞に添加し、37℃で30分間インキュベートし、内部移行しなかった細胞表面に結合した複合体を除去するために1mM EDTAを含有する食塩水で3回、洗浄することができる。複合体の取り込みは、Geminiマイクロフルオロメーター(microfluorometer)(Molecular Devices)を用いたマイクロフルオリメトリー(microfluorimetry)によって、および倒立蛍光顕微鏡(Nikon)によって確かめることができる。
組換え方法および組成物
一般的に、抗体断片または結合ペアのメンバーなどの結合実体は、例えば、US4,816,567に記載のように組換え方法および組成物を用いて産生され得る。
1つの態様において、本明細書において報告される複合体のそれぞれの結合実体をコードする単離された核酸が提供される。
このような核酸は、抗体(例えば、抗体の軽鎖および/もしくは重鎖)のVLを含むアミノ酸配列および/もしくはVHを含むアミノ酸配列ならびに/または結合ペアのメンバーのアミノ酸配列をコードしてもよい。
1つの態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。1つの態様において、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターおよび抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、これらによって形質転換されている)宿主細胞が提供される。1つの態様において、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NSO、Sp20細胞)である。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、US5,648,237、US5,789,199、およびUS5,840,523; Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248, B.K.C. Lo, (ed.), Humana Press, Totowa, NJ, (2004) pp. 245-254を参照されたい。発現後、抗体は可溶性画分中にある細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製することができる。
原核生物に加えて、真核生物微生物、例えば、糸状菌または酵母が抗体コードベクターに適したクローニング宿主または発現宿主である(Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22 (2003) 1409-1414)および Li, H., et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照されたい)。
植物細胞培養物も宿主として使用することができる(例えば、US5,959,177、US6,040,498、US6,420,548、US7,125,978、およびUS6,417,429を参照されたい)。
脊椎動物細胞も宿主として使用されてもよい。例えば、懸濁液中で増殖するのに合わせられた哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚腎臓株(HEK293)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(HepG2)、マウス乳癌細胞(MMT060562)、例えば、Mather, J.P., et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68記載のTRI細胞、MRC5細胞、およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub, G., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにミエローマ細胞株、例えば、Y0、NS0、およびSp2/0が含まれる。抗体産生に適した、ある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003)を参照されたい。
本明細書において報告される複合体のポリペプチドを産生するために用いられる宿主細胞は様々な培地の中で培養することができる。宿主細胞を培養するにはハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM),(Sigma)、RPMI-I640(Sigma)、およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM), Sigma)などの市販の培地が適している。さらに、Ham, R.G., et al., Meth. Enzymol. 58 (1979) 44-93, Barnes, D., et al., Anal. Biochem. 102 (1980) 255-270、US4,767,704、US4,657,866、US4,927,762、US4,560,655、US5,122,469、WO90/03430、WO87/00195、およびUSRe30,985に記載の任意の培地を宿主細胞用の培養培地として使用することができる。必要に応じて、これらの任意の培地に、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、インシュリン、トランスフェリン、または上皮細胞増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬物)、微量元素(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機成分として規定される)、ならびにグルコースまたは等価なエネルギー源が補われてもよい。他の任意の必要なサプリメントも当業者に公知の適切な濃度で含めることができる。培養条件、例えば、温度、pHなどは発現のために選択された宿主細胞と以前に用いられたものであり、当業者に明らかであろう。
組換え法を使用した場合、結合実体/ポリペプチドを細胞内で産生することができるか、細胞周辺腔に産生することができるか、または直接、培地に分泌することができる。ポリペプチドを細胞内で産生する場合、第1の工程として、宿主細胞または溶解断片いずれかの粒状破片を、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去する。例えば、Carter, P., et al., Bio/Technology 10 (1992) 163-167は、大腸菌の細胞周辺腔に分泌された抗体を単離するための手順について述べている。簡単に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分間にわたって解凍する。細胞破片を遠心分離によって除去することができる。ポリペプチドを培地中に分泌させた場合、一般的に、最初に、このような発現系からの上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて濃縮する。前述のどの工程でも、タンパク質分解を阻害するためにPMSFなどのプロテアーゼインヒビターが含まれてもよい。外来性汚染物質の増殖を阻止するために抗生物質が含まれてもよい。細胞から調製されたポリペプチド組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製することができる。アフィニティクロマトグラフィーは抗体に好ましい精製法である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびサブクラスに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するのに使用することができる(Lindmark, R., et al., J. Immunol. Meth. 62 (1983) 1-13)。全てのマウスサブクラスおよびヒトγ3についてプロテインGが推奨される(Guss, B., et al., EMBO J. 5 (1986) 1567-1575)。アフィニティリガンドが取り付けられるマトリックスはほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスが利用可能である。機械的に安定したマトリックス、例えば、多孔性ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンを用いるとアガロースを用いて達成できるものより流速が速くなり、処理時間が短くなる。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ, USA)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技法、例えば、イオン交換によるカラム分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)によるクロマトグラフィー、陰イオン交換樹脂または陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)によるクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS-PAGE、および硫安沈殿もまた、取り出される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備精製工程後に、関心対象のポリペプチドおよび汚染物質を含む混合物は、約2.5〜4.5のpHの溶出緩衝液を用いた、特に、低塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)で行われる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供されてもよい。
必要に応じて、本明細書において報告される複合体およびその個々の成分を単離および精製することができる。複合体が形成された反応混合物の望ましくない成分は、例えば、望ましい複合体にならなかったが、その基本要素を構成するポリペプチドおよびポリヌクレオチドである。1つの態様において、複合体は、分析用サイズ排除クロマトグラフィーによって確かめられた時に80%を超える純度まで精製される。一部の態様において、複合体は、分析用サイズ排除クロマトグラフィーによって確かめられた時に90重量%、95重量%、98重量%、または99重量%を超える純度までそれぞれ精製される。代替として、例えば純度は、例えばタンパク質検出ではクマシーブルー染色または銀染色を用いて、還元条件下または非還元条件下でSDS-PAGEによって容易に確かめることができる。純度が複合体レベルで評価されたら、副産物から複合体を分離するためにサイズ排除クロマトグラフィーを適用することができ、その純度を評価するために260nmでのODが評価される。
イムノコンジュゲート
標的またはリンカーに特異的に結合する結合実体の少なくとも1つが、1つまたは複数のエフェクター部分、例えば、細胞傷害剤、例えば、化学療法剤または化学療法薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物に由来する酵素活性のある毒素、またはその断片)、あるいは放射性同位体とさらに結合体化された複合体も本明細書において提供される。
1つの態様において、エフェクター部分は、マイタンシノイド(US5,208,020、US5,416,064、EP0425235を参照されたい)、アウリスタチン、例えば、モノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF。US5,635,483、US5,780,588、US7,498,298を参照されたい)、ドラスタチン、カリチアマイシン、またはその誘導体(US5,712,374、US5,714,586、US5,739,116、US5,767,285、US5,770,701、US5,770,710、US5,773,001、US5,877,296, Hinman, L.M., et al., Cancer Res. 53 (1993) 3336-3342, Lode, H.N., et al., Cancer Res. 58 (1998) 2925-2928を参照されたい)、アントラサイクリン、例えば、ダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz, F., et al., Current Med. Chem. 13 (2006) 477-523, Jeffrey, S.C., et al., Bioorg. Med. Chem. Letters 16 (2006) 358-362, Torgov, M.Y., et al., Bioconjug. Chem. 16 (2005) 717-721, Nagy, A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000) 829-834, Dubowchik, G.M., et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 12 (2002) 1529-1532, King, H.D., et al., J. Med. Chem. 45 (2002) 4336-4343、およびUS6,630,579を参照されたい)、メトトレキセート、ビンデシン、タキサン、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)、およびオルタタキセル(ortataxel)、トリコテセン、およびCC1065を含むが、これに限定されない薬物である。
1つの態様において、エフェクター部分は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌に由来する)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、α-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン(tricothecene)を含むが、これに限定されない、酵素活性のある毒素またはその断片である。
1つの態様において、エフェクター部分は放射性原子である。ラジオコンジュゲート(radioconjugate)を生成するために様々な放射性同位体が利用可能である。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体が含まれる。ラジオコンジュゲートが検出に用いられる場合、シンチグラフィー研究用の放射性原子、例えば、Tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとも知られる)用のスピン標識、例えば、再度、I123、I131、In111、F19、C13、N15、O17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含んでもよい。
エフェクター部分は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイイミドメチル(maleiimidomethyl))シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、bis-アジド成分(例えば、bis(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、bis-ジアゾニウム誘導体(例えば、bis-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびbis-活性フッ素成分(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて本明細書において報告される複合体の任意の成分と結合体化することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta, E.S., et al., Science 238 (1987) 1098-1104に記載のように調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は放射性ヌクレオチドを複合体と結合体化するための例示的なキレート剤である(WO94/11026を参照されたい)。毒性部分を、本明細書において報告される複合体と結合体化するためのリンカーは、細胞内で細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari, R.V., et al., Cancer Res. 52 (1992) 127-131、US5,208,020)を使用することができる。
エフェクター部分は、本明細書において報告される複合体の化合物と結合体化されてもよいが、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されている、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むが、これに限定されない架橋試薬を用いて調製された、このような結合体に限定されない。
薬学的製剤
本明細書において報告される多重特異性結合分子(例えば、二重特異性抗体)の薬学的製剤は、望ましい程度の純度を有する、このような多重特異性結合分子を凍結乾燥製剤または水溶液の形で1種類または複数種の最適な薬学的に許容される担体(Osol, A. (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Mack Publishing Company (1980))と混合することによって調製される。薬学的に許容される担体は、一般的に、使用される投与量および濃度でレシピエントに無毒であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン、グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物、キレート剤、例えば、EDTA、糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール、塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ならびに/または非イオン界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これに限定されない。本明細書において例示的な薬学的に許容される担体は、間質性薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標), Baxter International, Inc.)をさらに含む。rHuPH20を含む、ある特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法はUS2005/0260186およびUS2006/0104968に記載されている。一局面において、sHASEGPは1つまたは複数のさらなるグリコサミノグリカナーゼ(glycosaminoglycanase)、例えば、コンドロイチナーゼと組み合わされる。
例示的な凍結乾燥抗体製剤はUS6,267,958に記載されている。水性抗体製剤には、US6,171,586およびWO2006/044908に記載の水性抗体製剤が含まれる。後者の製剤はヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
本明細書中の製剤はまた、治療されている特定の適応症に必要なように複数の活性成分、特に、互いに悪影響を及ぼさない補い合う活性を有する活性成分を含有してもよい。このような活性成分は、適宜、所期の目的に有効な量で組み合わされて存在する。
活性成分は、マイクロカプセル、例えば、コアセルベーション法もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)に、またはマクロエマルジョンに封入されてもよい。このような技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. (ed.), (1980)において開示される。
持効性調製物が調製されてもよい。持効性調製物の適切な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。このマトリックスは成型物品、例えば、フィルムもしくはマイクロカプセルの形をしている。
インビボ投与に用いられる製剤は一般的に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜に通す濾過によって容易に達成され得る。
治療方法および組成物
本明細書において報告される任意の多重特異性結合分子(例えば、二重特異性抗体)を治療方法において使用することができる。
一局面において、医薬として使用するための本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体が提供される。さらなる局面において、癌の治療において使用するための多重特異性結合分子または二重特異性抗体が提供される。ある特定の態様において、治療方法において使用するための多重特異性結合分子または二重特異性抗体が提供される。ある特定の態様において、本発明は、有効量の多重特異性結合分子または二重特異性抗体を個体に投与する工程を含む、癌を有する個体を治療する方法において使用するための多重特異性結合分子または二重特異性抗体を提供する。このような1つの態様において、前記方法は、有効量の少なくとも1種類のさらなる治療剤を個体に投与する工程をさらに含む。前記態様のいずれかに記載の「個体」は特にヒトである。
本明細書におけるさらなる局面において、医薬の製造または調製における本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体の使用が提供される。1つの態様において、医薬は癌を治療するためのものである。さらなる態様において、医薬は、癌を有する個体に有効量の医薬を投与する工程を含む癌を治療する方法において使用するためのものである。前記態様のいずれかに記載の「個体」はヒトでもよい。
本明細書において報告されるさらなる局面において、癌を治療するための方法が提供される。1つの態様において、前記方法は、このような癌を有する個体に有効量の本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体を投与する工程を含む。前記態様のいずれかに記載の「個体」はヒトでもよい。
本明細書において報告されるさらなる局面において、例えば、前記の任意の治療方法において使用するための本明細書において提供される任意の多重特異性結合分子または二重特異性抗体を含む薬学的製剤が提供される。1つの態様において、薬学的製剤は、本明細書において提供される任意の多重特異性結合分子または二重特異性抗体および薬学的に許容される担体を含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書において報告される任意の多重特異性結合分子または二重特異性抗体および少なくとも1種類のさらなる治療剤を含む。
本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体は、療法において単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体は少なくとも1種類のさらなる治療剤と同時投与されてもよい。
前述のこのような併用療法は、併用投与(2種類以上の治療剤が同じ製剤または別々の製剤に含まれる)および別々の投与を含む。この場合、本発明の多重特異性結合分子または二重特異性抗体の投与は、さらなる治療剤および/もしくはアジュバントの投与の前に、さらなる治療剤および/もしくはアジュバントの投与と同時に、ならびに/またはさらなる治療剤および/もしくはアジュバントの投与の後に行うことができる。本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体はまた放射線療法と併用することができる。
本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体は、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与、必要に応じて、局所治療の場合、病巣内投与を含む任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。投薬は任意の適切な経路によるものでもよく、例えば、注射による、例えば、投与が短期間または長期間であるかに一部応じて静脈内注射または皮下注射によるものでもよい。1回の投与または様々な時点にわたる複数回の投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むが、これに限定されない様々な投与計画が本明細書において意図される。
本明細書において報告される多重特異性結合分子および二重特異性抗体は優れた医療行為と一致するやり方で処方、投薬、および投与される。この文脈で考慮すべき要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、患者1人1人の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に公知の他の要因が含まれる。多重特異性結合分子または二重特異性抗体は、問題となっている障害を予防または治療するために現在用いられている1種類または複数種の薬剤である必要はないが、任意で、問題となっている障害を予防または治療するために現在用いられている1種類または複数種の薬剤と共に処方される。このような他の薬剤の有効量は、製剤に存在する多重特異性結合分子または二重特異性抗体の量、障害または治療のタイプ、ならびに前記の他の要因に左右される。これらは、一般的に、本明細書に記載のものと同じ投与量で、および投与経路を用いて、または本明細書に記載の投与量の約1%〜99%で、または適切であると経験的/臨床的に確かめられた任意の投与量で、および経路によって用いられる。
疾患を予防または治療する場合、(単独でまたは1種類もしくは複数種の他のさらなる治療剤と組み合わせて用いられる場合)本明細書において報告される多重特異性結合分子または二重特異性抗体の適切な投与量は、治療しようとする疾患のタイプ、多重特異性結合分子または二重特異性抗体のタイプ、疾患の重篤度および経過、多重特異性結合分子または二重特異性抗体が予防目的または治療目的に投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴、ならびに多重特異性結合分子または二重特異性抗体に対する応答、ならびに主治医の裁量に左右される。多重特異性結合分子または二重特異性抗体は、一度に、または一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患のタイプおよび重篤度に応じて、例えば、1回もしくは複数回の別々の投与でも、または連続注入でも、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)の多重特異性結合分子または二重特異性抗体が患者に投与するための初回候補投与量になり得る。前述の要因に応じて、代表的な一日量は約1μg/kg〜100mg/kg以上になるかもしれない。数日間またはそれより長い反復投与のために、状態に応じて、一般的に、疾患の症状の望ましい抑制が生じるまで治療は維持される。多重特異性結合分子または二重特異性抗体の例示的な投与量の1つは約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲になるだろう。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(またはその任意の組み合わせ)の1つまたは複数の用量が患者に投与されてもよい。このような用量は、(例えば、約2〜約20用量、または、例えば、約6用量の多重特異性結合分子または二重特異性抗体が患者に与えられるように)断続的に、例えば、毎週または3週間ごとに投与されてもよい。高い初回負荷量の後に1つまたは複数の低用量が投与されてもよい。この療法の進行は従来の技法およびアッセイによって容易にモニタリングすることができる。
製造物品
本明細書において報告される一局面において、前記の障害の治療、予防、および/または診断に有用な材料を含有する製造物品が提供される。製造物品は、容器および容器に貼られている、または容器に関連するラベルまたは添付文書を備える。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、注射器、IV溶液バック(IV solution bag)などが含まれる。容器はガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、単独の組成物、または状態の治療、予防、および/もしくは診断に有効な別の組成物と組み合わされる組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バックまたは皮下注射針で穴を開けることができるストッパーを有するバイアルでもよい)。組成物中の少なくとも1種類の活性薬剤は、本明細書において報告される複合体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、えり抜きの状態を治療するのに用いられることを示す。さらに、製造物品は、(a)本明細書において報告される複合体を含む組成物が中に入れられている第1の容器;および(b)さらなる細胞傷害剤または他の治療剤を含む組成物が中に入れられている第2の容器を備えてもよい。本発明のこの態様における製造物品は、ある特定の状態を治療するために組成物を使用できることを示す添付文書をさらに備えてもよい。代替としてまたはさらに、製造物品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、無菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液、およびデキストロース液を含む第2の(または第3の)容器をさらに備えてもよい。これは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、および注射器を含む商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに備えてもよい。
以下の実施例、図、および配列は本発明の理解を助けるために提供される。本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。本発明の精神から逸脱することなく、示された手順に変更を加えることができると理解される。
配列
SEQ ID NO:01 VH(mAb 1.4.168)
SEQ ID NO:02 VL(mAb 1.4.168)
SEQ ID NO:03 VH(mAb 8.1.2)
SEQ ID NO:04 VL(mAb 8.1.2)
SEQ ID NO:05 17merのss-DNA(5'末端が抗トロポニンT MAB aのFAB'およびIGF-1Rに対するFAB'1.4.168にそれぞれ共有結合している)
SEQ ID NO:06 19merのss-DNA(3'末端が抗トロポニンT MAB bのFAB'およびリン酸化IGF-1Rに対すFAB'8.1.2にそれぞれ共有結合している)
SEQ ID NO:07 相補的19merのss-DNA(リンカーの一部として使用した)
SEQ ID NO:08 相補的17merのss-DNA(リンカーの一部として使用した)
SEQ ID NO:09 抗トロポニン抗体aに対するエピトープ「A」
SEQ ID NO:10 抗トロポニン抗体bに対するエピトープ「B」
SEQ ID NO:11 IGF-1R(1340-1366)
SEQ ID NO:12 hInsR(1355-1382)
SEQ ID NO:13 35merのL-DNAポリヌクレオチドリンカー
SEQ ID NO:14 75merのL-DNAポリヌクレオチドリンカー
SEQ ID NO:15 95merのL-DNAポリヌクレオチドリンカー
SEQ ID NO:16 4D5 FAB'重鎖アミノ酸配列
SEQ ID NO:17 4D5 FAB'軽鎖アミノ酸配列
SEQ ID NO:18 2C4 FAB'重鎖アミノ酸配列
SEQ ID NO:19 2C4 FAB'軽鎖アミノ酸配列
SEQ ID NO:20 ErbB2の細胞外ドメイン(ECD)内の残基22-645
SEQ ID NO:21
式中、X=ホスホルアミダイトC3(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入されたプロピレン-ホスフェート、Y=(6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入された5'-アミノ-修飾因子C6、およびZ=スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(Thermo Fischer)を介して導入された4[N-マレイニミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ
SEQ ID NO:22
式中、X=ホスホルアミダイトC3(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入されたプロピレン-ホスフェート、Y=(6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入された5'-アミノ-修飾因子C6、およびZ=スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(Thermo Fischer)を介して導入された4[N-マレイニミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ
SEQ ID NO:23
SEQ ID NO:24
SEQ ID NO:25
SEQ ID NO:26 抗HER2抗体4D5重鎖可変ドメイン
SEQ ID NO:27 VH CDR1
SEQ ID NO:28 VH CDR2
SEQ ID NO:29 VH CDR3
SEQ ID NO:30 抗HER2抗体4D5重鎖軽鎖可変ドメイン
SEQ ID NO:31 VL CDR1
SEQ ID NO:32 VL CDR2
SEQ ID NO:33 VL CDR3
SEQ ID NO:34 抗HER2抗体2C4重鎖可変ドメイン
SEQ ID NO:35 VH CDR1
SEQ ID NO:36 VH CDR2
SEQ ID NO:37 VH CDR3
SEQ ID NO:38 抗HER2抗体2C4軽鎖可変ドメイン
SEQ ID NO:39 VL CDR1
SEQ ID NO:40 VL CDR2
SEQ ID NO:41 VL CDR3
SEQ ID NO:42
; X=フルオレセイン Y=C7アミノリンカー Z=C3スペーサー
SEQ ID NO:43
;X=Cy5 Y=C7アミノリンカー Z=C3スペーサー
SEQ ID NO:44
;X=アミノリンカー Y=フルオレセイン Z=C3スペーサー
SEQ ID NO:45
;X=フルオレセイン Y=C7アミノリンカー Z=C3スペーサー
SEQ ID NO:46
;X=アミノリンカー Y=フルオレセイン Z=C3スペーサー
SEQ ID NO:47
SEQ ID NO:48
SEQ ID NO:49
SEQ ID NO:69 IgG1定常ドメイン
SEQ ID NO:70 IgG2定常ドメイン
SEQ ID NO:71 IgG4定常ドメイン
SEQ ID NO:72
SEQ ID NO:73
SEQ ID NO:74 ソルターゼタグ
SEQ ID NO:75 結合ペアメンバーオリゴヌクレオチド
SEQ ID NO:76 L-DNAリンカー
実施例1
FAB-ss-DNA-結合体の形成
ヒト心臓トロポニンTの異なる非重複エピトープであるエピトープaおよびエピトープbにそれぞれ結合する2種類のモノクローナル抗体を使用した。これらの抗体は両方とも、トロポニンTがサンドイッチイムノアッセイ形式で検出される最新のRoche Elecsys(商標)Troponin Tアッセイにおいて用いられる。
培養上清からのモノクローナル抗体精製を最新式のタンパク質化学法を用いて行った。
精製モノクローナル抗体を、予め活性化したパパイン(抗エピトープa MAb)またはペプシン(抗エピトープb MAb)によってプロテアーゼ消化してF(ab') 2断片を得る。その後、F(ab') 2断片を低濃度のシステアミンを用いて37℃で還元してFAB'断片にする。Sephadex G-25カラム(GE Healthcare)によってシステアミンを試料のポリペプチド含有部分から分離することによって反応を止める。
FAB'断片を下記の活性化ss-DNAaおよびss-DNAbオリゴヌクレオチドと結合体化する。
a)抗トロポニンT(エピトープA)抗体FAB-ss-DNA-結合体
抗トロポニンT<エピトープa>抗体FAB-ss-DNAa-結合体Aを調製するために、SEQ ID NO:05の誘導体、すなわち、
を使用する。式中、X=ホスホルアミダイトC3(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入されたプロピレン-ホスフェート、Y=3'-アミノ修飾因子TFAアミノC-6 lcaa CPG(ChemGenes)を介して導入された3''-アミノ-修飾因子C6、Z=スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(ThermoFischer)を介して導入された4[N-マレイニミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ。
b)抗トロポニンT(エピトープB)抗体FAB-ss-DNA-結合体B
抗トロポニンT<エピトープb>抗体FAB-ss-DNAb-結合体Bを調製するために、SEQ ID NO:06の誘導体、すなわち、
を使用する。式中、X=ホスホルアミダイトC3(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入されたプロピレン-ホスフェート、Y=(6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入された5'-アミノ-修飾因子C6、Z=スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(ThermoFischer)を介して導入された4[N-マレイニミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ。
SEQ ID NO:05またはSEQ ID NO:06のオリゴヌクレオチドはそれぞれ最新式のオリゴヌクレオチド合成法によって合成された。マレイニミド基の導入は、Yのアミノ基と、固相オリゴヌクレオチド合成プロセス中に組み込まれたZのスクシンイミジル基との反応を介して行われた。
前記に示した一本鎖DNA構築物は、システアミン処理によって生じたFAB'ヒンジ領域システインと反応するチオール反応性マレイミド基を有する。高いパーセントの単一標識FAB'断片を得るために、ss-DNAとFAB'断片との相対モル比を低く保つ。単一標識FAB'断片(ss-DNA:FAB'=1:1)の精製は陰イオン交換クロマトグラフィー(カラム: MonoQ, GE Healthcare)を介して行われる。効率的な標識および精製の検証は分析用ゲル濾過クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEによって達成される。
実施例2
ビオチン化リンカー分子の形成
ss-DNAリンカーL1、L2、およびL3において用いられるオリゴヌクレオチドはそれぞれ、最新式のオリゴヌクレオチド合成法によって、およびビオチン化のためにビオチン化ホスホルアミダイト試薬を用いて合成された。
スペーサーのないビオチン化ss-DNAリンカー1であるリンカー1(=L1)は以下の組成:
を有する。これは、それぞれ、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8のss-DNAオリゴヌクレオチドを含み、ビオチン-dT(5'-ジメトキシトリチルオキシ-5-[N-((4-t-ブチルベンゾイル)-ビオチニル)-アミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン-3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を使用することによってビオチン化された。
10merスペーサーを有するビオチン化ss-DNAリンカー2であるリンカー2(=L2)は以下の組成:
を有する。これは、それぞれ、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8のss-DNAオリゴヌクレオチドを含み、それぞれ5個のチミジンからなるオリゴヌクレオチド領域が2回現れ、ビオチン-dT(5'-ジメトキシトリチルオキシ-5-[N-((4-t-ブチルベンゾイル)-ビオチニル)-アミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン-3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を使用することによってビオチン化された。
30merスペーサーを有するビオチン化ss-DNAリンカー3であるリンカー3(=L3)は以下の組成:
を有する。これは、それぞれ、SEQ ID NO:7 および SEQ ID NO:8のss-DNAオリゴヌクレオチドを含み、それぞれ15個のチミジンからなるオリゴヌクレオチド領域が2回現れ、ビオチン-dT(5'-ジメトキシトリチルオキシ-5-[N-((4-t-ブチルベンゾイル)-ビオチニル)-アミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン-3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を使用することによってビオチン化された。
実施例3
一価トロポニンT結合剤aおよびbそれぞれに対するエピトープ
それぞれ、抗トロポニンT抗体aおよびbに由来する対応するFAB'断片に対して個々に中等度の親和性しか有さない合成ペプチドが構築されてきた。
a)抗体aに対するエピトープ「A」は、
に含まれる。式中、Uはβ-アラニンを表す。
b)抗体bに対するエピトープ「B」は、
に含まれる。式中、Oはアミノ-トリオキサ-オクタン酸を表す。
当業者であれば、これらの2つのエピトープ含有ペプチドを2つのやり方で組み合わせることが可能なことを認めるだろう。両変種ともエピトープ「A」および「B」を直線的に組み合わせることによって設計および調製された。両変種の配列、エピトープ「A」-「B」(=TnT1)および「B」-「A」(=TnT2)の直鎖配列はそれぞれ最新式のペプチド合成方法によって調製された。
エピトープ「A」および「B」に対する配列はそれぞれ、それぞれのFABに対する結合親和性を低減するためにヒト心臓トロポニンT配列(P45379/UniProtKB)上にある元のエピトープと比較して改変された。これらの状況で、例えば、BIAcore技術によって結合親和性を分析することによって、ヘテロ二価結合効果のダイナミクスがさらによく分かる。
実施例4
生体分子相互作用分析
この実験のために、BIAcore 3000機器(GE Healthcare)を、このシステムに取り付けたBIAcore SAセンサーと一緒にT=25℃で使用した。プレコンディショニング(preconditioning)は、100μl/minで、50mM NaOHに溶解した1M NaClの3x1分間の注入および1分間の10mM HClを用いて行った。
HBS-ET(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%Tween(登録商標)20をシステムバッファーとして使用した。サンプルバッファーはシステムバッファーと同一であった。
BIAcore 3000 Systemを制御ソフトウェアV1.1.1の下で動かした。フローセル1を7RU D-ビオチンで飽和させた。フローセル2上には1063RUビオチン化ss-DNAリンカーL1を固定化した。フローセル3上には879RUビオチン化ss-DNAリンカーL2を固定化した。フローセル4上には674RUビオチン化ss-DNAリンカーL3を捕獲した。
その後に、600nMのFAB断片DNA結合体Aを注入した。900nMのFAB断片DNA結合体Bをシステムに注入した。結合体を2μl/minの流速で3分間、注入した。それぞれのリンカー上にあるそれぞれのFAB断片DNA結合体のそれぞれの飽和シグナルをモニタリングするために、結合体を継続的に注入した。FABの組み合わせを、1個のFAB断片DNA結合体A、1個のFAB断片DNA結合体B、ならびにそれぞれのリンカー上に存在する両方のFAB断片DNA結合体AおよびBを用いて動かした。FAB断片DNA結合体によってリンカーが飽和した後に安定したベースラインが生じた。これは、さらなる反応速度測定のための必要条件であった。
表面に提示されたFAB断片と反応させるために、ペプチド分析物TnT1およびTnT2を分析物として溶解状態でシステムに注入した。
TnT1を500nMで注入し、TnT2を900nM分析物濃度で注入した。両ペプチドとも50μl/minで4分間の会合時間にわたって注入した。解離を5分間モニタリングした。全てのフローセル上に50mM NaOHを50μl/minで1分間注入することによって再生を行った。
反応速度データをBIAevaluationソフトウェア(V.4.1)を用いて求めた。それぞれの表面に提示されたFAB断片組み合わせからのTnT1ペプチドおよびTnT2ペプチドの解離速度KD(1/s)を直線ラングミュア1:1フィッティングモデルに従って求めた。分単位での複合体半減時間を一次動態方程式:ln(2)/(60*kD)の解に従って計算した。
結果:
表5および表6に示した実験データはそれぞれ、一価dsDNA FAB AまたはB結合体それぞれと比較した時の分析物(TnT1またはTnT2)それぞれと様々なヘテロ二価FAB-FAB結合体A-Bとの間の複合体安定性の増加を示す。この効果を、それぞれの表において列2および3と比較して列1に示した。
(表5)TnT1と様々な長さのリンカーを用いた分析データ
(表6)TnT2と様々な長さのリンカーを用いた分析データ
さらに、アビディティ効果はリンカーの長さに依存する。表1の下に示したサブテーブル(subtable)において、30merのリンカーL3は最も遅い解離速度すなわち最も高い複合体安定性を示す。表2の下に示したサブテーブルにおいて、10merのL2リンカーは最も遅い解離速度すなわち最も高い複合体安定性を示す。まとめると、これらのデータは、本発明において示されるアプローチに固有なようにリンカー長の融通性が大いに役立ち、かつ有利なことを証明している。
実施例5
FAB'-ss-DNA-結合体の形成
ヒトHER2(ErbB2またはp185neu)の異なる非重複エピトープAおよびBに結合する2種類のモノクローナル抗体を使用した。第1の抗体は、抗HER2抗体4D5(huMAb4D5-8、rhuMab HER2、トラスツズマブ、またはハーセプチン(登録商標);その全体が参照により本明細書に組み入れられるUS5,821,337を参照されたい)である。第2の抗体は抗HER2抗体2C4(ペルツズマブ)である。
培養上清からのモノクローナル抗体精製は最新式のタンパク質化学法を用いて行うことができる。
精製モノクローナル抗体を、予め活性化したパパインまたはペプシンによってプロテアーゼ消化してF(ab') 2断片を得る。その後、これらを低濃度のシステアミンを用いて37℃で還元してFAB'断片にする。Sephadex G-25カラム(GE Healthcare)によって試料のポリペプチド含有部分からシステアミンを分離することによって反応を止める。
得られたFAB'断片を活性化ss-DNAポリヌクレオチドと結合体化する。
a)抗HER2抗体4D5 FAB'-ss-DNA-結合体
抗HER2抗体4D5 FAB'-ss-DNA-結合体を調製するために、
SED ID NO:05の誘導体、すなわち、
を使用する。式中、X=ホスホルアミダイトC3(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入されたプロピレン-ホスフェート、Y=(6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入された5'-アミノ-修飾因子C6、Z=スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(ThermoFischer)を介して導入された4[N-マレイニミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ。
b)抗HER2抗体2C4 FAB'-ss-DNA-結合体
抗HER2抗体2C4 FAB'-ss-DNA-結合体Bを調製するために、SEQ ID NO:06の誘導体、すなわち、
を使用する。式中、X=ホスホルアミダイトC3(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(GlenResearch)を介して導入されたプロピレン-ホスフェート、Y=(6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入された5'-アミノ-修飾因子C6、Z=スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(ThermoFischer)を介して導入された4[N-マレイニミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ。
SEQ ID NO:05またはSEQ ID NO:06のポリヌクレオチドはそれぞれ最新式のポリヌクレオチド合成法によって合成された。マレイニミド基の導入は、固相ポリヌクレオチド合成プロセス中に組み込まれたYのアミノ基とスルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(ThermoFischer)との反応を介して行われた。
一本鎖DNA構築物は、システアミン処理によって生じたFAB'ヒンジ領域システインと反応するチオール反応性マレイミド基を有する。高いパーセントの単一標識FAB'断片を得るために、ss-DNAとFAB'断片との相対モル比を低く保つ。単一標識FAB'断片(ss-DNA:FAB'=1:1)の精製は陰イオン交換クロマトグラフィー(カラム: MonoQ, GEHealthcare)を介して行われる。効率的な標識および精製の検証は分析用ゲル濾過クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEによって達成される。
実施例6
生体分子相互作用分析
この実験のために、BIAcore T100機器(GE Healthcare)を、このシステムに取り付けたBIAcore SAセンサーと一緒にT=25℃で使用した。プレコンディショニングは、100μl/minで、50mM NaOH、pH8.0に溶解した1M NaClの3x1分間の注入、その後に10mM HClの1分間の注入を用いて行われた。システムバッファーはHBS-EP(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%P20)であった。サンプルバッファーは、1mg/ml CMD(カルボキシメチルデキストラン)を補充したシステムバッファーであった。
それぞれのフローセルにおいてビオチン化ss-L-DNAリンカーをSA表面上に捕獲した。フローセル1をアミノ-PEO-ビオチン(PIERCE)で飽和させた。
フローセル2上には40RUのビオチン化35merオリゴヌクレオチドリンカーを捕獲した。フローセル3上には55RUのビオチン化75merオリゴヌクレオチドリンカーを捕獲した。フローセル4上には60RUのビオチン化95merオリゴヌクレオチドリンカーを捕獲した。
250nM抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-L-DNAをシステムに3分間、注入した。300nM抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNAをシステムに2μl/minで5分間、注入した。DNA標識FAB断片を単独で、または組み合わせて注入した。
対照として、250nM抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-D-DNAおよび300nM抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-D-DNAのみをシステムに注入した。さらなる対照として、DNA標識FAB断片の代わりに緩衝液を注入した。それぞれのss-L-DNAバイリンカー上にss-L-DNA標識FAB断片をハイブリダイズさせた後に、溶解状態の分析物hHER2-ECDを、24nM、8nM、3nM、1nM、0.3nM、0nMの異なる濃度シリーズでシステムに100μl/minで3.5分間の会合期にわたって注入した。解離期を100μl/minで15分間モニタリングした。システムを、100mMグリシン緩衝液(グリシンpH11、150mM NaCl)を20μl/minで30秒間注入した後に、水を30μl/minでもう1分間注入することによって再生した。
シグナルを分析物濃度依存的時間分解型センサーグラムとして測定した。BIAcore BIAevaluationソフトウェア4.1を用いてデータを評価した。フィッティングモデルとして標準的なラングミュアバイナリ結合モデルを使用した。
結果:
ss-D-DNA標識FAB断片をシステムに注入した時に、HER2-ECD相互作用を観察することができなかった。なぜなら、ss-D-DNA標識FAB断片は、センサー表面に提示されたスピゲルマーss-L-DNAリンカーとハイブリダイズしなかったからである(図2)。
表7:複合体化実験の反応速度結果
リンカー:表面に提示されたビオチン化ss-L-DNAポリヌクレオチドリンカー、リンカー長が異なるオリゴ_35mer-Bi、オリゴ_75mer-Bi、およびオリゴ_95mer-Bi。ss-L-DNA-FAB:2C4-ss-L-DNA:19mer-フルオレセインで標識された抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNA。4D5-ss-L-DNA:17mer-フルオレセインで標識された抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-L-DNA。4D5-+2C4-ss-L-DNA:表面に提示された両断片の組み合わせ。LRU:センサー表面にハイブリダイズされた応答単位での質量(mass)。抗原:87kDa HER2-ECDを分析物として溶解状態で使用した。ka:(1/Ms)での会合速度。kd:(1/s)での解離速度。t1/2 diss:一次反応速度式の解ln(2)/kD*3600に従って時間単位で計算された抗原複合体半減時間。kD:モル濃度での親和性。kD:ピコモル濃度で計算された親和性。Rmax:応答単位(RU)での飽和状態での最大分析物反応シグナル。MR:モル比。相互作用の化学量論を示す。Chi2、U値:測定の質の指標。
BIAcoreセンサーグラムは35mer複合体HER2-ECD相互作用の濃度依存的測定を示す(図3)。このリンカーはDNA標識のハイブリダイゼーションモチーフ配列のみからなっている。反応速度データから、完全に確立した複合体は反応速度性能の改善を示さないことが分かる。これは不十分なリンカー長および35merの屈曲性の欠如によるものである。
75mer複合体HER2-ECD相互作用の濃度依存的測定を示したBIAcoreセンサーグラム(図4)。75merリンカーは、35merリンカーと比較してリンカー長を延ばすためにポリ-Tを有する。反応速度データから、完全に確立した複合体は、その反応速度性能の劇的な改善を示すことが分かる。これは75merの最適なリンカー長および屈曲性によるものである。
95mer複合体HER2-ECD相互作用の濃度依存的測定を示したBIAcoreセンサーグラム(図5)。95merリンカーは、35merリンカーと比較してリンカー長を延ばすためにポリ-Tを有する。反応速度データから、完全に確立した複合体は、その反応速度性能の劇的な改善を示すことが分かる。これは95merの最適なリンカー長および屈曲性によるものである。
BIAcoreアッセイ構成は以下からなった(図1も参照されたい):ss-L-DNA-バイリンカーをBIAcore SAセンサー上に提示した。フローセル1は対照として役立った。溶解状態での分析物としてHer2-ECDを使用した。抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNAおよび抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNAを、表面に提示したリンカーにハイブリダイズさせた。
高屈曲性のss-L-DNAリンカーを介して一緒に連結されたハーセプチン-FABとペルツズマブ-FABとの間で完全に機能する協同的結合事象が初めてここで示された。表3のデータは協同的結合事象が存在する証拠を示す。完全に確立した複合体のRmax値が単一FABアーム(FAB-armed)構築物のシグナル高さのほぼ2倍であるのにもかかわらず、モル比の値はちょうど1(MR=1)である。これは、同時に起こる両FAB断片の協同的結合事象が存在する明らかな証拠である。複合体は1:1ラングミュア結合化学量論を用いて1つの分子として数える。2つの独立して結合するHER2境界面があるのにもかかわらず、1つの複合体と2つのHER2ドメインとの間で分子間結合は検出することができない。
モノクローナル抗体の相乗作用ペアまたは化学的に架橋した二重特異性F(ab')2のアビディティ定数は一般的に個々のモノクローナル抗体の親和定数の15倍超までしかなく、反応物間の理想的な組み合わせについて予想される理論アビディティよりかなり少ない(Cheong, H.S., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 173 (1990) 795-800)。この理論に拘束されるものではないが、この理由の1つは、最適な相乗作用のために、(高アビディティをもたらす)相乗的結合に関与する個々のエピトープ/パラトープ相互作用を互いに対して特定のやり方で調整しなければならないことであるかもしれない。
さらに、表7に示したデータから、ss-L-DNAハイブリダイゼーションモチーフだけからなる短い35merリンカーは協同的結合効果を生じるのに十分な屈曲性または/およびリンカー長を示さないという証拠が得られる。35merリンカーは強固な二重らせんL-DNA構築物である。ハイブリダイゼーションによって、ss-L-DNA配列より短く、かつ屈曲性の小さいL-DNA二重らせんが生じる。このらせんは低い自由度を示し、強固なリンカー構築物とみなすことができる。表7は、35merリンカーが協同的結合事象を生じることができないことを示す。
高屈曲性のポリ-Tss-L-DNAによってリンカー長を延ばして、それぞれ、75merおよび95merを形成すると、親和性、特に、抗原複合体安定性kD(1/s)が増加する。
chi2値は測定値の高い品質を示す。全ての測定値は極めて小さな誤差を示す。データをラングミュア1:1フィッティングモデルにフィットすることができる。残差は+/-1RUしか外れず、データを得るために小さなchi2値および10回の反復計算のみが必要であった。
協同的結合効果は、自由結合エネルギーΔG1およびΔG2が集約するので物理法則に従って作用する。親和性は倍増する:KDcoop=KD1xKD2。さらに、解離速度も倍増する:KDcoop=kd1xKD2。これは75merリンカー実験および95merリンカー実験において正確に観察することができる。これは、それぞれ、4146時間(173日)および3942時間(164日)の非常に長い複合体半減期をもたらす。親和性は100fmol/lの範囲である。協同的結合事象が発生することは明らかである。
単独でハイブリダイズした構築物と比較した時に、全ての完全に確立した複合体の会合速度は速い。高分子量を示したのにもかかわらず会合速度は増加する。
ここで、本発明者らは、本明細書において報告される複合体において一緒に連結されたトラスツズマブおよびペルツズマブはHER-2細胞外ドメイン(ECD)に同時に結合することを示すことができた。両FAB断片ともHER2-ECD上にある本当のエピトープ(PDB 1S78およびPDB 1N82)に結合する。さらに、両FAB断片は結合角の点でかなり異なる。最適な75mer(30nm)、ss-L-DNAリンカー長、ならびにその有益な屈曲性および長さ特性を使用することによって協同的結合事象を示すことができた。
シグナルを分析物濃度依存的時間分解型センサーグラムとして測定した。データを、BIAcore BIAevaluationソフトウェア4.1を用いて評価した。フィッティングモデルとして標準的なラングミュアバイナリ結合モデルを使用した。
実施例7
さらなる生体分子相互作用分析
BIAcore 3000機器をCM-5センサーチップと一緒に取り付けた。製造業者(GE healthcare, Uppsala, Sweden)により推奨されるようにセンサーをプレコンディショニングした。システムバッファーは、(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%Tween(登録商標)20)であった。システムバッファーをサンプルバッファーとしても使用した。システムを制御ソフトウェア4.1の下で25℃で操作した。
10mM酢酸緩衝液pH4.5に溶解した30μg/mlポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-Fcγ抗体(Jackson Laboratories, USA)を標準的なNHS/EDC化学によってフローセル1上では13,952RUおよびフローセル2上では15,047RUで固定化した。システムを20秒パルスの10mMグリシンpH1.5緩衝液、1分間パルスの10mMグリシンpH1.7緩衝液、および30秒パルスの10mMグリシンpH1.5緩衝液を用いて20μl/minで再生した。フローセル1上には5nM huIgG(Bayer Healthcare)を参照として10μl/minで1分間、注入した。
フローセル2上には10nMヒトHER2細胞外受容体FCキメラ(hHER2-ECDpresSFc)を10μl/minで1分間、注入した。典型的には、100応答単位の予め組み立てたホモ二量体hHER2-ECDpresSFcをヤギ抗ヒトIgG-Fcγ抗体によってフローセル2上にあるヒトFC部分を介して捕獲した。典型的には、130応答単位のhuIgGをフローセル1にあるヒトFC部分を介して捕獲した。
フローセル2上のシグナルをフローセル1と関係づけた。
ss-L-DNAによって標識されたFAB断片である抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-L-DNAおよび抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNAを1:1:1モル化学量論で75merのss-L-DNAリンカーによってハイブリダイズした。完全に確立した複合体2C4-75mer-4D5を50nMで3分間、システムに注入した。対照として単一FAB断片を50nMでシステムに注入した。
注入を終了した直後に、250nMストレプトアビジンまたはシステムバッファーをシステムに10μl/minで3分間、注入した。75merリンカーはその配列の中央に単一ビオチン部分を含有するので、SAは、リンカー内のビオチンを認識するか、FAB断片の存在を認識しないプローブとして働くはずである。
別の実験では、完全に確立した4D5-75mer-2C4複合体を異なる濃度段階0nM、0.6nM、1.9nM、2x5.6nM、16.7nM、50nMで10μl/minで3分間システムに注入した。hHER2-ECDpresSFc分析物の濃度依存的反応レベルをモニタリングした。hHER2-ECDpresSFcの濃度段階にわたって反応レベルをプロットした。ソフトウェアOrigin7を用いてデータを視覚化した。Origin7ソフトウェアにより提供されるようにヒルの式y=Vmax *xn/(kn+xn)を用いてデータをフィットさせた。
BIAcoreアッセイ構成は以下からなった(図6も参照されたい)。ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG-Fcγ抗体をBIAcore CM5センサー上に固定化した。これはhuFcキメラHER2 ECDの捕獲システムとして役立つ。抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNA(2C4 FAB)、抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-L-DNA(4D5FAB)、および完全に確立した複合体を注入し、その後にストレプトアビジン(SA)を注入した。この実験の目的は、75merのss-L-DNAリンカー内部のビオチン部分の存在および到達性を証明することである。
実験の結果を図7に図示した。BIAcoreセンサーグラムは、抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNA(2C4)、抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-L-DNA(4D5)、および75merのss-L-DNAリンカーによって接続された完全に確立した複合体(2C4-75mer-4D5)を50nM注入した際の相互作用シグナルのオーバーレイプロットを示す。オーバーレイプロットから、完全に確立した複合体結合剤(2C4-75mer-4D5+緩衝液)は137kDaという高質量のためにFAB断片注入(2C4+緩衝液、4D5+緩衝液)と比較して高いシグナル反応レベルを生じることが分かる。FAB断片の計算分子量はそれぞれ57kDaである。420秒の注入終了直後に、250nMストレプトアビジンまたはシステムバッファーを注入した。矢先が2つある矢印は、緩衝液の注入(2C4-75mer-4D5+緩衝液)と比較した250nMストレプトアビジン注入(2C4-75mer-4D5+SA)によって誘導された14RUシグナルシフト(ΔRU)を示す。FAB断片はSA注入の際にシグナルシフトを示さず、緩衝液シグナルレベルのままである((2C4+SA)、(2C4+緩衝液)、(4D5+SA)、(4D5+緩衝液))。ストレプトアビジンはエフェクター部分である。これはss-L-DNAリンカーの到達性を示す。
表面に提示されたhuFcキメラHER2 ECDと相互作用する溶解状態での分析物として、完全に確立した75mer複合体の濃度依存的測定のオーバーレイプロットを示したBIAcoreセンサーグラムを図8に示した。黒色の線はデータへの1:1ラングミュアフィットを示す。反応速度データ、会合速度ka=1.25*1051/Ms、解離速度KD=3.39*10-51/s、親和定数0.3nM。
図8の反応レベルを、完全に確立した複合体の分析物濃度に対してプロットした(図9)。データをヒルの式に従ってフィットさせ、ヒル係数を求めた(Origin7)。式:y=Vmax *xn/ (kn+xn)、Chi2/DoF=0.6653、R2=0.99973;n=1.00201+/-0.06143。
表8には、図6に図示したようなBIAcoreアッセイ形式からの反応速度データを示した。複合体を溶解状態で用いて協同的結合効果を生じることができる。モル比から、ちょうど1つの複合体が1つのHER2-ECDキメラを認識することが分かる。反応速度データ、会合速度ka 1/Ms、解離速度kd 1/s、親和定数KD(M)、およびin(nM)、最大結合反応シグナル(Rmax)、捕獲されたhuFc Chim Her2ECDリガンドの量(RU)、ラングミュアに従った複合体半減時間t1/2 diss.、結合事象の化学量論を示すモル比MR、誤差(Error)chi2。4D5-2C4-75merは完全に確立した複合体である。4D5-75merおよび2C4-75merはFAB断片であるが、ss-L-DNA 75merリンカーにハイブリダイズされる。
表8に示したデータから、75merのss-L-DNAリンカーを介して接続された完全に確立した複合体は協同的結合を示すことが証明される。単一FAB断片は完全に確立した複合体と比較した時に低親和性を示す。Rmaxでのシグナルレベルは単一FAB断片に対して複合体の分子量の増加を示す。高シグナルレベルにもかかわらず、モル比はちょうど1.1である。このことから、統計学的に、それぞれの複合体は1つのhuFcキメラHER2 ECD分子に結合することが分かる。
協同作用による増幅率は、複合体がセンサー表面に組み立てられた以前のアッセイ形式と比較した時にそれほど高くはない。KDcoopは6倍まで引き起こされる。理論に拘束されるものではないが、これはホモ二量体huFcキメラHER2 ECDの性質によるものかもしれない。潜在的に、二重結合剤はhuFc HER2キメラの中にある2つの隔てられたHER2 ECDを認識し、協同作用を完全に確立することができない。
色素の形をとるエフェクター部分の効率的な送達は、生細胞上にあるフィコエリトリン標識ストレプトアビジンプローブを用いたFACS分析によって示すことができる(次の実施例を参照されたい)。ストレプトアビジン標識プローブは、75merのss-L-DNAリンカー構築物の中のビオチン部分に容易に到達することができた。
前記で概説された測定からのデータをヒルプロットの作成に使用した(図9)。複合体のヒル分析から、FAB断片の結合事象は互いに独立しており、互いを妨げないことが分かる。HER2分子の構造妨害の点で協同的結合を検出することができなかった。ヒル係数(n=1.00201+/-0.06143)は正確に1である。従って、リンカー化学、ss-L-DNAリンカーの性質、およびオリゴ標識FAB断片は標的分子認識を負に妨げない。
実施例8
さらなる複合体-合成および特徴付け
ハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドの合成
SEQ ID NO:05およびSEQ ID NO:06それぞれに示した配列を含む以下のアミノ改変前駆体を標準的な方法に従って合成した。以下に示したオリゴヌクレオチドはいわゆるアミノリンカーだけでなく蛍光色素も含む。当業者が容易に認めるように、オリゴヌクレオチドそのもの、ならびにオリゴヌクレオチドを含む成分の精製を容易にするために、この蛍光色素は非常に便利である。
合成は、ABI394合成機において固体支持体として市販のCPGならびに標準的なdA(bz)、dT、dG(iBu)、およびdC(Bz)ホスホルアミダイト(Sigma Aldrich)を用いて10μmolスケールでトリチルオン形式(5'アミノ改変の場合)またはトリチルオフ形式(3'アミノ改変の場合)で行った。
オリゴヌクレオチド合成の間に、以下のアミダイト、アミノ修飾因子、およびCPG支持体を用いてそれぞれC3-スペーサー、色素、およびアミノ部分を導入した。
- スペーサーホスホルアミダイトC3(3-(4,4'-ジメトキシトリチルオキシ)プロピル-1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research);
- 5'-アミノ-修飾因子C6(6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(Glen Research)を使用することによって5'アミノ修飾因子を導入する;
- 5'-フルオレセインホスホルアミダイト6-(3',6'-ジピバロイルフルオレセイニル-6-カルボキサミド)-ヘキシル-1-O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(GlenResearch);
- Cy5(商標)ホスホルアミダイト1-[3-(4-モノメトキシトリチルオキシ)プロピル]-1'-[3-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピルホスホルアミジチル]プロピル]-3,3,3',3'-テトラメチルインドジカルボシアニンクロリド(Glen Research);
- LightCyclerフルオレセインCPG 500A(Roche Applied Science);および
- 3'-アミノ修飾因子TFAアミノC-6 lcaa CPG 500A(ChemGenes)
Cy5標識オリゴヌクレオチドの場合、dA(tac)、dT、dG(tac)、dC(tac)ホスホルアミダイト(SigmaAldrich)を使用し、33%アンモニアによる脱保護を室温で2時間、行った。
β-L-dA(bz)、dT、dG(iBu)、およびdC(Bz)ホスホルアミダイト(ChemGenes)を使用することによってL-DNAオリゴヌクレオチドを合成した。
フルオレセインによって改変されたハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドの精製を2段階手順によって行った。最初に、オリゴヌクレオチドを逆相HPLC(Merck-Hitachi-HPLC;RP-18カラム;勾配系[A:0.1M(Et3NH)OAc(pH7.0)/MeCN95:5;B:MeCN]:3分間、Aに溶解した20%B、12分間、Aに溶解した20〜50%B、および25分間、Aに溶解した20%B、流速1.0ml/min、260nmで検出)で精製した。望ましい産物を含有する画分(分析用RP HPLCによってモニタリングした)を組み合わせ、乾燥するまで蒸発させた。(5'末端においてモノメトキシトリチル保護アルキルアミノ基によって改変されたオリゴヌクレオチドを20%酢酸と20分間インキュベートすることによって脱トリチル(detriylate)する)。標識としてフルオレセインを含有するオリゴマーをHPLC[Mono Qカラム:緩衝液A:水酸化ナトリウム(10mmol/l; pH約12)緩衝液B、水酸化ナトリウム(10mmol/l;pH約12)に溶解した1M塩化ナトリウムの勾配:100%緩衝液A〜100%緩衝液Bに30分間、流速1ml/min、260nmで検出]によるIEXクロマトグラフィーによって再精製した。産物を透析を介して脱塩した。
逆相HPLC(Merck-Hitachi-HPLC;RP-18カラム;勾配系[A:0.1M(Et3NH)OAc(pH7.0)/MeCN 95:5; B: MeCN]:3分間、Aに溶解した20%B、12分間、Aに溶解した20〜50%B、および25分間、Aに溶解した20%B、流速1.0ml/min、260nmで検出による初回精製後にCy5標識オリゴマーを使用した。オリゴマーを透析によって脱塩し、Speed-Vacエバポレーターによって凍結乾燥して、-24℃で凍結した固体を得た。
ハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドの活性化
実施例2からのアミノ改変オリゴヌクレオチドを0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液pH8.5緩衝液(c=600μmol)に溶解し、Thermo ScientificからのDMF(c=3mg/100μl)に溶解した18倍モル過剰のSulfo SMCC(スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレートと反応させた。スルホ-SMCC 4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレートの加水分解産物を除去するために反応産物を水に対して徹底的に透析した。
透析液を蒸発によって濃縮し、チオール基を含む一価結合剤との結合体化のために直接使用した。
両端にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含むリンカーオリゴヌクレオチドの合成
オリゴヌクレオチドを、標準的な方法によってABI394合成機において固体支持体として市販のdT-CPGならびに標準的なdA(bz)、dT、dG(iBu)、およびdC(Bz)ホスホルアミダイト(Sigma Aldrich)を用いて10μmolスケールでトリチルオン形式で合成した。
L-DNAオリゴヌクレオチドを、固体支持体として市販のβL-dT-CPGならびにβ-L-dA(Bz)、dT、dG(iBu)、およびdC(Bz)ホスホルアミダイト(ChemGenes)を使用することによって合成した。
実施例3に記載のように、オリゴヌクレオチドの精製を逆相HPLCによって行った。望ましい産物を含有する画分(分析用RP HPLCによってモニタリングした)を組み合わせ、乾燥するまで蒸発させた。80%酢酸と15分間インキュベートすることによって脱トリチルを行った。酢酸を蒸発によって除去した。残留物(reminder)を水に溶解し、凍結乾燥した。
以下のアミダイトおよびCPG支持体を用いて、オリゴヌクレオチド合成の間にC18スペーサー、ジゴキシゲニン、およびビオチン基を導入した。
- スペーサーホスホルアミダイト18(18-O-ジメトキシトリチルヘキサエチレングリコール,1-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research);
- ビオチン-dT(5'-ジメトキシトリチルオキシ-5-[N-((4-t-ブチルベンゾイル)-ビオチニル)-アミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン-3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(Glen Research);
- ビオチンホスホルアミダイト1-ジメトキシトリチルオキシ-2-(N-ビオチニル-4-アミノブチル)-プロピル-3-O-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト、ならびに
- アミノ改変の場合は、5'-ジメトキシトリチル-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン、3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト、およびジゴキシゲニン-N-ヒドロキシル-スクシンイミジルエステルによる後標識。
前記の架橋構築物の例は、少なくとも、第1のハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドおよび第2のハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを含む。リンカー3〜18はハイブリダイズ可能な核酸領域に加えて、それぞれ、中央のビオチン化チミジンもしくはジゴキシゲニン化チミジンまたは前記で示した長さのチミジン単位からなるスペーサーを含む。
それぞれ、5'-ハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドはSEQ ID NO:07に対応し、3'-ハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドはSEQ ID NO:08に対応する。SEQ ID NO:07のオリゴヌクレオチドはSED ID NO:06のオリゴヌクレオチドと容易にハイブリダイズする。SEQ ID NO:08のオリゴヌクレオチドはSED ID NO:05のオリゴヌクレオチドと容易にハイブリダイズする。
前記の架橋構築物の例において、[B-L]はL-DNAオリゴヌクレオチド配列が付与されたことを示す。スペーサーC18、ビオチン、およびビオチンdTはそれぞれ、前記で示した基本要素から得られたC18スペーサー、ビオチン、およびビオチン-dTを指す。数字の付いたTは、リンカーの示された位置に組み込まれたチミジン残基の数を示す。
複合体の組み立て
A)IgGの切断およびss-DNAによるFAB'断片の標識
精製モノクローナル抗体をペプシンプロテアーゼの助けを借りて切断して、F(ab')2断片を得る。その後、低濃度のシステアミンを用いて37℃で処理することによってF(ab')2断片をFAB'断片に還元する。PD10カラムによってシステアミンを分離することによって反応を止める。実施例3に従って生成されたように、FAB'断片を活性化オリゴヌクレオチドで標識する。この一本鎖DNA(=ss-DNA)は、FAB'ヒンジ領域のシステインと反応するチオール反応性マレイミド基を有する。高いパーセントの単一標識FAB'断片を得るために、ss-DNAとFAB'断片との相対モル比を低く保つ。単一標識FAB'断片(ss-DNA:FAB'=1:1)の精製はイオン交換クロマトグラフィー(カラム: Source 15 Q PE 4.6/100, Pharmacia/GE)を介して行われる。効率的な精製の検証は分析用ゲル濾過およびSDS-PAGEによって達成される。
B)標的に特異的に結合する2つのポリペプチドを含む複合体の組み立て
抗pIGF-1R複合体は、IGF-1Rの細胞内ドメインの異なるエピトープを標的とする2つのFAB'断片に基づいている。すなわち、FAB'8.1.2は標的タンパク質のリン酸化部位(pTyr1346)を検出し、FAB'1.4.168は標的タンパク質の非リン酸化部位を検出する。FAB'断片は一本鎖DNA(ss-DNA)と共有結合的に連結されている。すなわち、FAB'1.4.168は、SEQ ID NO:05を含み、蛍光マーカーとしてフルオレセインを含有する17merのss-DNAに共有結合的に連結され、FAB'8.1.2は、SEQ ID NO:06を含み、蛍光マーカーとしてCy5を含有する19merのss-DNAに共有結合的に連結されている。以下では、共有結合的に結合された17merまたは19merのss-DNAを有する、これらのFABをそれぞれss-FAB'1.4.168およびss-FAB'8.1.2と名付けた。複合体の組み立ては、ss-FAB'断片の対応するss-DNAにハイブリダイズするリンカー(すなわち、2つの相補的ss-DNAオリゴヌクレオチド(それぞれ、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8)を含む架橋構築物によって媒介される。複合体の2つのss-FAB'断片間の距離は、それぞれ、スペーサー、例えば、C18スペーサー、または長さの異なるDNAを使用することによって改変することができる。
組み立ての評価のために、複合体成分ss-FAB'8.1.2、ss-FAB'1.4.168、およびリンカー構築物(1)(=実施例2.4のリンカー17)
および(2)(=実施例2.4のリンカー10)
を等モル量で室温で混合した。1分間のインキュベーション工程後、反応ミックスを分析用ゲル濾過カラム(Superdex(商標)200, 10/300 GL, GE Healthcare)によって分析した。単一複合体成分の溶出量(V
E)を反応ミックスのV
Eと比較することによって、複合体は首尾よく形成されたことが証明される(図10)。
抗pIGF-1R複合体と固定化IGF-1RおよびIRペプチドとの結合を評価するBIAcore実験
この実験のために、BIAcore 2000機器(GE Healthcare)を、このシステムに組み込んだBIAcore SAセンサーと一緒にT=25℃で使用した。プレコンディショニングは、100μl/minで、50mM NaOHに溶解した1M NaClの3x1分間の注入および10mM HClの1分間の注入を用いて行われた。
HBS-ET(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%Tween(登録商標)20をシステムバッファーとして使用した。サンプルバッファーはシステムバッファーと同一であった。BIAcore 2000 Systemを制御ソフトウェアV1.1.1の下で動かした。
その後、ビオチン化ペプチドを、それぞれのフローセル中のSA表面に捕獲した。フローセル2上には16RUのIGF-1R(1340-1366)[1346-pTyr; Glu(Bi-PEG-1340]amid(すなわち、位置1340に対応するグルタミン酸を介して結合されたPEGリンカーを含み、リンカーの他方の末端でビオチン化されているSEQ ID NO:11の1346チロシンリン酸化ペプチド)を捕獲した。フローセル3上には18RUのIGF-1R(1340-1366); Glu(Bi-PEG-1340]amid(すなわち、位置1340に対応するグルタミン酸を介して結合されたPEGリンカーを含み、リンカーの他方の末端でビオチン化されているSEQ ID NO:11の1346チロシン非リン酸化ペプチド)を捕獲した。フローセル4上には20RUのhInsR(1355-1382)[1361-pTyr; Glu(Bi-PEG-1355]amid(すなわち、ヒトインシュリン受容体の位置1355に対応するグルタミン酸を介して結合されたPEGリンカーを含み、リンカーの他方の末端でビオチン化されているSEQ ID NO:12の1361チロシンリン酸化ペプチド)を捕獲した。最後に、全てのフローセルをd-ビオチンで飽和させた。
複合体形成のために、前記の組み立てプロトコールを使用した。2つのss-FABのうちの一方しか使用せずに個々の測定を行った時に、リンカーDNAの有無は会合曲線または解離曲線に影響を及ぼさなかった。
溶解状態の100nM分析物(すなわち、これらの実験では二価二重結合剤)を240秒の会合時間にわたって50μl/minで注入し、解離を500秒間モニタリングした。80mM NaOHを用いた50μl/minで1分間の注入工程を使用することによって効率的な再生を実現した。フローセル1は参照として役立った。緩衝液シグナルを差し引くことによってデータを二重に参照するために、抗原注入の代わりにブランク緩衝液注入を使用した。
それぞれの測定サイクルにおいて、溶解状態の以下の分析物:100nM ss-FAB'8.1.2、100nM ss-FAB'1.4.168、100nM ss-FAB'8.1.2および100nM ss-FAB'の混合物、リンカー(3)
上にハイブリダイズしたss-FAB'8.1.2およびss-FAB'1.4.168からなる100nM二価結合剤、ならびにリンカー(1)
上にハイブリダイズしたss-FAB'8.1.2およびss-FAB'1.4.168からなる100nM二価結合剤の1つをそれぞれ4つ全てのフローセルに注入した。
シグナルを時間依存的なBIAcoreセンサーグラムとしてモニタリングした。
それぞれの相互作用の応答単位シグナルの高さをモニタリングするために分析物会合期の終わり(結合後期(Binding Late)、BL)および分析物解離期の終わり(安定性後期(Stability Late)、SL)にリポートポイント(report point)を設けた。解離速度kd(1/s)をBIAcore評価ソフトウェア4.1を用いて直線1:1ラングミュアフィットに従って計算した。分単位での複合体半減時間を式ln(2)/(60*kD)に基づいて計算した。
センサーグラム(図11〜図14)は、ss-FAB'1.4.168およびss-FAB'1.4.168が複合体(=二価結合剤)の形で用いられた時に、おそらく、基礎をなす協同的結合効果によりpIGF-1R結合における特異性および複合体安定性の向上を示す。FAB'1.4.168のみではpIRペプチドに対して交差反応性を示さず、リン酸化型IGF-1Rと非リン酸化型IGF-1Rを区別しない(両方の場合でT1/2dis=3分間)。しかしながら、FAB'8.1.2はリン酸化バージョンのIGF1-Rペプチドにしか結合せず、リン酸化インシュリン受容体といくらかの望ましくない交差反応性を示す。複合体はpIGF-1Rペプチドと他の両方のペプチドとを良好に区別し(図13を参照されたい)、従って、非特異的結合の問題を克服するのに役立つ。リンカーDNAなしで両FABが適用された場合には特異性の向上は失われることに留意のこと(図14)。pIGF-1Rペプチドに対する複合体の親和性の向上は、個々のFABおよびリンカーDNAを省いたFAB'ミックスと比較して解離半減時間の増加として現れる(図12および図14)。2つの異なるDNAリンカーを有する試験複合体は標的結合特異性および親和性に対して全体のプラス効果を共有するが、長い方のリンカー(スペーサーとしてT40-Digを有する)(すなわち、リンカー15)が両基準について有利なように見える。
M-1.4.168-IgGおよびM-8.1.2のBIAcoreアッセイサンドイッチ
BIAcore T100機器(GE Healthcare)を、このシステムに取り付けたBIAcore CM5センサーと一緒に使用した。0.1%SDS、50mM NaOH、10mM HCl、および100mM H3PO4を100μl/minで1分間注入することによってセンサーをプレコンディショニングした。
システムバッファーは、HBS-ET(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%Tween(登録商標)20)であった。サンプルバッファーはシステムバッファーであった。
BIAcore T100 Systemを制御ソフトウェアV1.1.1の下で動かした。フローセル1、2、3、および4上にそれぞれ、10mM 酢酸Na pH4.5に溶解した30μg/mlのポリクローナルウサギIgG抗体<IgGFCγM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)を製造業者の説明書に従ってEDC/NHS化学を介して10000RUで固定化した。最後に、センサー表面を1Mエタノールアミンでブロックした。完全な実験を13℃で動かした。
<IgGFCγM>R表面に500nMの一次mAb M-1.004.168-IgGを10μl/minで1分間、捕獲した。ブロッキング溶液を含有する(IgGクラスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3の)3μMのIgG断片混合物を30μl/minで5分間、注入した。300nMのペプチドIGF-1R(1340-1366)[1346-pTyr;Glu(Bi-PEG-1340]amidを30μl/minで3分間、注入した。300nM二次抗体M-8.1.2-IgGを30μl分で注入した。10mMグリシン-HCl pH1.7を50μl/minで3分間、使用してセンサーを再生した。
図15にはアッセイ構成を示した。図18には測定結果を示した。測定値から、両モノクローナル抗体とも、それぞれの標的ペプチド上にある2つの別個の無関係のエピトープに同時に結合できることがはっきりと分かる。これは、協同的結合事象を生じさせることを目的とした後者の全ての実験の必要条件である。
センサー表面上のBIAcoreアッセイ複合体
BIAcore 3000機器(GE Healthcare)を、このシステムに組み込んだBIAcore SAセンサーと一緒にT=25℃で使用した。50mM NaOHに溶解した1M NaClを3x1分間および10mM HClを1分間、注入することによって100μl/minでセンサーをプレコンディショニングした。
システムバッファーはHBS-ET(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05%Tween(登録商標)20)であった。サンプルバッファーはシステムバッファーであった。
BIAcore 3000 Systemを制御ソフトウェアV4.1の下で動かした。
参照フローセル1上には124RUアミノ-PEO-ビオチンを捕獲した。異なるフローセル上には、1595RUビオチン化14.6kDa T0-Bi 37 merのss-DNA-リンカー(1)
および1042RUビオチン化23.7kDa T40-Bi 77 merのss-DNA-リンカー(2)
を捕獲した。
300nM ss-FAB 8.1.2および300nM ss-FAB 1.004.168を50μl/minで3分間システムに注入した。対照として、それぞれのss-FABの反応速度寄与を試験するために、300nM ss-FAB8.1.2または300nM ss-FAB 1.004.168のみを注入した。対照としてss-Fabの代わりに緩衝液を注入した。ペプチドIGF-1R(1340-1366)[1346-pTyr]amid、INR(1355-1382)[1361-pTyr]amid IGF-1R(1340-1366)amidを50μl/minで4分間、溶液中、遊離状態で0nM、4nM、11nM、33nM(2回)、100nM、および300nMの濃度段階で、別の態様ではペプチドIGF-1R(1340-1366)[1346-pTyr]amidに対する親和性を測定するために0nM、0.4nM、1.1nM、3.3nM(2回)、10nM、および30nMの濃度段階でシステムに注入した。
解離を50μl/minで5.3分間モニタリングした。それぞれの濃度段階の後に12秒パルスの250mM NaOHを用いてシステムを再生し、ss-FABリガンドを再添加した。
図17はBIAcore機器におけるアッセイ構成を模式的に示す。図18に示した表は、このアプローチからの定量結果を示す。図19、図20、および図21は、このアッセイ構成からの例示的なBIAcore結果を図示する。
図18の中の表は、この複合体概念の利益を証明する。T40二重結合剤(実施例2.4のリンカー10、すなわち、T20-ビオチン-dT-T20のスペーサーを有するリンカーを有する二重結合剤)は、抗原複合体半減時間が192分および親和性が30pMのT0二重結合剤(すなわち、リンカー16を有する二重結合剤)と比較して、2倍改善された抗原複合体半減時間(414分)および3倍改善された親和性(10pM)をもたらす。これは、最適な協同的結合効果を生じるためにリンカー長を最適化する必要性を強調する。
T40二重結合剤(すなわち、T40-Biリンカー(リンカー10)を含む二重結合剤)はリン酸化IGF-1Rペプチドに対して10pMの親和性を示す(図18の表、図19)。これは、リン酸化インシュリン受容体ペプチド(24nM)に対して2400倍の親和性改善および非リン酸化IGF-1Rペプチドに対して100倍の改善である。
従って、2つの特異な、かつ切り離された結合事象の組み合わせによって特異性および親和性を高める目的が達成された。
協同的結合効果はリン酸化IGF-1Rペプチドに対する解離速度から特に明らかになる。この場合、複合体は414分の抗原複合体半減時間を示し、これに対して、一価結合剤8.1.2単独では0.5分および一価結合剤1.4.168単独では3分である。
さらに、完全に組み立てられた構築物は、おおむね、単独でFABハイブリダイズした構築物と比較した時に解離速度kd(1/s)を倍増させる(図21、図20、図21および図18の中の表)。興味深いことに、会合速度ka(1/Ms)も単一FAB相互作用事象と比較した時にわずかに増加する。これは構築物の分子屈曲性の増大によるものかもしれない。
実施例9
結合アッセイ-インビトロおよびエクスビボ
検出オリゴヌクレオチドプローブ-Cy5
ss-L-DNA検出オリゴヌクレオチドプローブ-Cy5
は最新式のオリゴヌクレオチド合成法によって合成された。Cy5色素の導入はアミノ基とCy5単一反応性(monoreactive)NHSエステル(GE Healthcare Lifescience, STADT, LAND)との反応を介して行われた。ヌクレオチドの場合、L-DNAアミダイト(ChemGenes, STADT, LAND)を使用した。固相オリゴヌクレオチド合成プロセスの間に5'アミノ基および3'アミノ基を導入した。式中、Y=(6-(4-モノメトキシトリチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホルアミダイト(Glen Research)を介して導入された5'-アミノ-修飾因子C6、およびZ=3'アミノ修飾因子(Aminomodifier)TFAアミノC6長鎖アミノアルキル多孔性ガラス1000A(ChemGenes)を介して導入された3'-アミノ修飾因子C6。
二重結合剤リンカーオリゴヌクレオチド
ss-L-DNAオリゴヌクレオチドリンカーSEQ ID NO:73
は最新式のオリゴヌクレオチド合成法によって合成された。
複合体の組み立て
等モル化学量論のFITC標識抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNAおよびFITC標識抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-L-DNAをSEQ ID NO:73のss-L-DNAリンカーとハイブリダイズすることによって複合体を組み立てた。複合体の正しい組み立てを検証するために、複合体をSECクロマトグラフィー工程に供し、滅菌フィルターで濾過した。
インビトロ結合アッセイ
2x106細胞/mlの濃度のヒト乳癌KPL-4細胞を30μlの体積でμ-slides VI(ibidi, Germany)に播種した。3時間後、細胞が付着するように70μlの培地(RPMI1640、2mM L-グルタミン、10%FCS)を添加した。
37℃および5%CO2、水飽和雰囲気中(インキュベーション後の全てに有効)で24時間インキュベートした後に上清を除去し、残留培地を除去するために細胞を100μl PBSで1回洗浄した。
連続適用のために、FITC溶液で標識された前記で調製された複合体4D5-2C4 50μl(c=2.5μg/ml)を添加し、45分間インキュベートした後に、PBS 100μlで1回の洗浄工程および等モル量(0.13μg/ml)のDNA-プローブ(SEQ ID NO:72)50μlとのさらなるインキュベーションを行った。
最初に複合体および検出プローブを混合することによって予め混合する手順を行った。その後、これを細胞に添加し(濃度については前記を参照されたい)、その後に45分間インキュベートした。
ヒトIgE免疫グロブリンを標的化するヒト化IgG1モノクローナル抗体であるゾレア(登録商標)を負の対照として使用し、ヒトHER-2受容体を標的化する、Cy5標識ハーセプチン(登録商標)を正の対照として使用した。両抗体とも同じ濃度(2.5μg/ml)で適用した。
その後、上清を除去し、細胞をPBS 100μlで1回洗浄した。その後、HOECHST33342溶液(c=10μg/ml)50μlを添加することによって細胞核をDAPI染色し、15分間インキュベートした。細胞染色色素を除去するために、上清を除去した後に細胞をPBS 100μlで2回洗浄した。生存を確かなものとするために細胞を湿った状態に保つために、もう120μlのPBSを添加した。細胞の生存を確かなものとし、細胞の剥離を回避するために全ての希釈液を培地(L-グルタミンおよびFCSを含まない)で作製した。この手順の後、スライドを、NUANCE System(CRi, Cambridge, USA)を用いてマルチスペクトル蛍光分析によって画像化した。蛍光強度の比較のために画像を基準化した。
エクスビボ分析
(同所に移植した)確立したKPL-4腫瘍を有する免疫不全SCIDベージュマウスに、100μlのPBSに溶解した50μgの複合体をi.v.注射し、18時間後に等モル濃度(2.63μg/マウス)のCy5標識DNAプローブを注射した。48時間後に腫瘍を外植し、MAESTROシステム(CRi, Cambridge, USA)を用いてマルチスペクトル蛍光分析によって調べた。
結果
インビトロ結合アッセイ
複合体を、そのFAB'-ss-L-DNA成分のそれぞれを介してFITCで二重標識する。検出プローブは二重Cy5標識ss-L-DNA 20merオリゴヌクレオチドプローブであり、複合体の95 merのss-L-DNAリンカーにハイブリダイズすることができる。
ゾレア-Cy5(蛍光シグナルなし、負の対照)とは対照的に、ハーセプチン-Cy5は腫瘍細胞を特異的に染色した(図22)。FITC標識4D5-2C4-95mer複合体は、腫瘍細胞に向かった複合体と共存する(Cy5蛍光チャンネルで測定した)検出プローブとの連続インキュベーションによって分かるようにKPL-4腫瘍細胞に特異的に結合する。このことは、検出オリゴヌクレオチドプローブ-Cy5と複合体がハイブリダイズしたことを示している。連続インキュベーション形式および予め混合する設定において、Her-2抗原に対する腫瘍細胞の特異的染色を証明することができた(図2)。
図22には、複合体および検出プローブとインキュベートした癌細胞の近赤外線画像を示した(NIRFイメージング)。図の右上には、Cy5標識検出オリゴヌクレオチドとハイブリダイズした完全に組み立てられた4D5-2C4-95mer複合体のスケッチを示した。図の右中央には、Cy5標識ハーセプチンの漫画(cartoon)を示した。図の右下にはシグナル強度バーを示した。
図22の左上には、Cy5標識ハーセプチン(登録商標)と癌細胞との結合を示した(正の対照)。KPL-4細胞膜はDAPI染色細胞核を取り囲む明るく輝く環として出現する。左下には、Cy5標識ゾレア(登録商標)のインキュベーションを示した(負の対照)。膜染色は検出できなないが、細胞核のDAPI染色は検出することができる。図の下中央には、4D5-2C4-FITC複合体の結合を示した。膜結合複合体のフルオレセインシグナルはDAPI染色細胞核を取り囲む輝く環として出現する。図の***には、4D5-2C4-FITC複合体およびCy5標識検出プローブの結合を示した。連続してハイブリダイズされたCy5標識ss-L-DNA検出プローブを介した複合体の検出を見ることができる。検出オリゴヌクレオチドのCy5シグナルは膜染色として出現し、DAPI染色細胞核を取り囲む明るく輝く環を示す。
図23には、KPL-4細胞の近赤外線(NIRF)イメージングを示した。図23Aには、FITC標識4D5-2C4複合体およびCy5標識検出プローブの連続適用の結果を示した。図23Bには、KPL-4細胞と予め混合したFITC標識4D5-2C4複合体およびCy5標識検出プローブとのインキュベーションの結果を示した。両画像とも膜に位置するシグナルを示す。対照として細胞をDAPIで染色した。
実験から、HER-2陽性細胞を特異的に標的化するために、最初に、本明細書において報告される複合体を適用できることが証明された。第2の工程では、標的に結合した複合体にハイブリダイズさせるために、標識された検出プローブを適用することができる。それにより、蛍光で標識された検出プローブは、オリゴヌクレオチドに基づくエフェクター部分の時間遅延、連続適用、および特異的標的化の概念実証である。この場合、ペイロードはインビトロ細胞イメージング用の蛍光色素である。
エクスビボ結合アッセイ
図24(左画像)に図示したように、試料を最初に複合体とインキュベートし、その後にCy5標識検出プローブとインキュベートした実験の場では強い蛍光シグナルを検出することができる。対照的に(右画像)、KPL-4異種移植片にCy5標識検出プローブのみを予め注射した腫瘍では蛍光シグナルを検出することはできなかった。
図24は、NIRFイメージングに供された外植KPL-4腫瘍を示す。最初の画像では、マウスから外植し、連続して最初に4D5-2C4複合体で処置し、その後に検出プローブで処理した3つのKPL-4腫瘍から得られたCy5蛍光シグナルを示した。右画像には、4D5-2C4複合体を省いて検出プローブのみで3匹のマウスを処置した時に、3つのKPL-4腫瘍から蛍光シグナルは得られなかったことを示す。
実施例10
MDA-MB-175乳癌細胞株における細胞増殖の阻害
10%胎仔ウシ血清、2mMグルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地中で培養した2x104個のMDA-MB-175乳癌細胞を96ウェルプレートに播種した。翌日、示された濃度(40〜0.0063μg/ml)の抗体および複合体をそれぞれ添加した。6日間のインキュベーション後に、Alamar Blueを添加し、プレートを組織培養インキュベーターに入れて3〜4時間インキュベートした。蛍光を測定した(励起530nm/発光590)。パーセント阻害を参照として未処理細胞を用いて計算した。
結果
抗HER2抗体2C4(ペルツズマブ)は44%の最大阻害を示した。抗HER2抗体ハーセプチンは9%の最大阻害を示した。ペルツズマブおよびハーセプチン(登録商標)のFAB断片を含む、本明細書において報告される複合体は46%の最大阻害を示す。
ペルツズマブは2つのHER2結合部位を有する完全長IgG抗体として試験されたのに対して、複合体は1つのペルツズマブFab断片と1つのHER2結合部位を含むことを指摘しなければならない。
実施例11
複合体の凍結融解-安定性
等モル化学量論のFITC標識抗HER2抗体2C4-FAB'-ss-L-DNAおよびFITC標識抗HER2抗体4D5-FAB'-ss-L-DNAをSEQ ID NO:73のss-L-DNAリンカーとハイブリダイズすることによって複合体を組み立てた。複合体の正しい組み立てを検証するために、複合体をSECクロマトグラフィー工程に供し、滅菌フィルターで濾過した。
複合体(1.5mg/ml)50μlを分析用SECによってTSK3000カラム(GE)を用いて分析した。ランニングバッファーは0.1M KH2PO4 pH6.8であった。流速は1ml/minであった。クロマトグラムを図25に示した。
凍結融解後、複合体を再度クロマトグラフィーにかけた。複合体(1.5mg/ml) 50μlを分析用SECによってTSK3000カラム(GE)を用いて分析した。ランニングバッファーは0.1M KH2PO4 pH6.8であった。流速は1ml/minであった。クロマトグラムを図26に示した。
実施例12
結合実体のクローニングおよび発現
基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドの説明
望ましいタンパク質をヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293)の一過的トランスフェクションによって発現させた。望ましい遺伝子/タンパク質を発現させるために、以下の機能エレメント:
- イントロンAを含むヒトサイトメガロウイルス(P-CMV)に由来する最初期エンハンサーおよびプロモーター、
- ヒト重鎖免疫グロブリン5'-非翻訳領域(5'UTR)、
- マウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列(SS)、
- 発現させようとする遺伝子/タンパク質(例えば、完全長抗体重鎖)、および
- ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGHpA)
を含む転写単位を使用した。
発現させようとする遺伝子/タンパク質を含む発現ユニット/カセットの他に、基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドは、
- 大腸菌において、このプラスミドの複製を可能にする、ベクターpUC18に由来する複製起点、および
- 大腸菌においてアンピシリン耐性を付与するβラクタマーゼ遺伝子
を含有する。
クローニング
最初に、結合実体(例えば、抗体Fab断片)をコードする構築物のクローニングを行った。結合実体をコードする核酸を有するプラスミドは、通常、遺伝子合成によって得られ、それによって、コードされる結合実体のC末端領域はソルターゼ-モチーフおよびHis-タグを含有する。プラスミドを個々にマルチウェルプレートの別々のウェルに移す(プレート全体に添加することができる)。その後、プラスミドを、結合実体コード領域を切断する制限酵素ミックスで消化する。全てのプラスミドに1つだけの制限酵素ミックスが必要とされるやり方で全ての遺伝子合成を設計することが望ましい。その後、最適な洗浄工程によって、精製されたDNA断片が得られる。これらの断片を、前述されたものと同じ制限ミックスを用いてアクセプターベクターから切断されたプラスミドバックボーンに連結する。代替として、SLICを介したクローニング工程によってクローニング手順を実施することができる。連結後、自動プラットフォームによって、全ての連結ミックスが、コンピテントな大腸菌細胞(例えば、Top 10 Multi Shot, Invitrogen)が入っているさらなるマルチウェルプレートに移され、形質転換反応が行われる。細胞を望ましい密度まで培養する。培養混合物のアリコートからグリセロールストックを入手することができる。(例えば、プラスミド単離ミニキット(例えば、NucleoSpin 96 Plasmid, Macherey& Nagel)を用いて)培養物からプラスミドを単離する。アリコートを適切な制限ミックスによる消化およびSDS-ゲル電気泳動(例えば、E-Gel 48, Invitrogen)によってプラスミド同一性をチェックする。その後、対照配列決定反応を行うために新たなプレートにプラスミドアリコートを添加することができる。
発現
F17 Medium(Invitrogen Corp.)中で培養したHEK293細胞(ヒト胎児由来腎臓細胞株293由来)の一過的トランスフェクションによって抗体Fab断片を作製した。トランスフェクションのために、「293-Fectin」Transfection Reagent (Invitrogen)を使用した。抗体Fab断片を、完全長軽鎖およびC末端LPXTG配列(SEQ ID NO:74)を含有する対応する切断型重鎖をコードする2つの異なるプラスミドから発現させた。トランスフェクションの際に2つのプラスミドを等モルプラスミド比で使用した。製造業者の説明書に明記されたようにトランスフェクションを行った。トランスフェクションの7日後に、抗体Fab断片を含有する細胞培養上清を収集した。精製するまで上清を凍結温度で保管した。
抗体Fab断片含有培養上清を2つのクロマトグラフィー工程によって濾過および精製した。抗体Fab断片をアフィニティクロマトグラフィーによって、20mMイミダゾールを含むPBS(1mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、137mM NaCl、2.7mM KCl、20mMイミダゾール)、pH7.4で平衡化したHisTrap HP Ni-NTAカラム(GE Healthcare)を用いて捕獲した。結合しなかったタンパク質を平衡化緩衝液を用いた洗浄によって除去した。10カラム体積のPBSに溶解した20mM〜400mM直線イミダゾール勾配(1mM KH2PO4、10mM Na2HP04、137mM NaCl、2.7mM KCl、400mMイミダゾール)を用いてヒスチジン-タグ化タンパク質を溶出した。第2の精製工程としてSuperdex 200(商標)(GE Healthcare)によるサイズ排除クロマトグラフィーを使用した。サイズ排除クロマトグラフィーを40mM Tris-HCl緩衝液、0.15M NaCl、pH7.5中で行った。Biomax-SK膜(Millipore, Billerica, MA)を備えたUltrafree-CL遠心フィルターユニットを用いて抗体Fab断片を濃縮し、-80℃で保管した。
抗体Fab断片のタンパク質濃度は、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を用いて280nmでの光学密度(OD)を測定することによって求めた。純度および適切な抗体Fab形成は、還元剤(5mM 1.4-ジチオトレイトール(dithiotreitol))の存在下および非存在下でのSDS-PAGEならびにクーマシーブリリアントブルーによる染色によって分析した。
実施例13
抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体の連結を解した二重特異性結合分子の作製
抗体Fab断片とオリゴヌクレオチドとのカップリングを酵素ソルターゼAを用いて行った。これによって、LPXTGペプチド(SEQ ID NO:74)を含有する部分を有する分子を、GG部分を有する別の分子に共有結合的に取り付けた。従って、オリゴヌクレオチドには部分の一方があったが、抗体Fab断片にはそれぞれの他方の部分があった。酵素反応はターンオーバーが多く、特異性が高く、副産物が少なく、有害な廃棄物が少ないので化学反応より有利な場合がある。
抗体Fab断片とオリゴヌクレオチドとの反応は、抗体Fab断片の発現後に濾過済みHEK培地中で10xソルターゼ緩衝液(1x:50mM Tris-HCl、150mM NaCl、5mM CaCl
2、pH7.5)、ソルターゼ酵素(0.15μg酵素/μg Fab)、および抗体Fab断片に対して4倍モル過剰のオリゴヌクレオチドを添加することによって行った。オリゴヌクレオチドは、アミノリンカーおよびスペーサーによって2個のグリシン残基が付加された18 merのL-DNAからなった。
インキュベーションは37℃で4〜16時間であった。
精製のために、(半)自動アプローチを適用した。全ての抗体Fab断片が結合体に変換されるとは限らないので、これらの2つの集団を分けなければならなかった。これは、Nickel Sepharoseを添加したHis MultiTrap HP 96ウェル濾過プレート(GE Healthcare)を用いて負のHis-タグ選択によって達成された。プレートを1ウェルあたり400μlの水を用いて2回、洗浄し、減圧によって濾過し、その後に、1ウェルあたり400μlの結合緩衝液(25mM Tris-HCl、200mM NaCl、10mMイミダゾール、pH8.0)を用いて2回、平衡化し、減圧によって濾過した。ソルターゼ反応混合物に等量の結合緩衝液を添加した。混合物をカラムに添加し、5分間インキュベートした。カラム濾液に減圧を加えると結合体はカラムを通って濾過されるのに対して、結合体化されなかった抗体Fab断片はそのHis-タグ部分を介してカラムに結合したままであった。使用したソルターゼはHis-タグ部分を含有するように遺伝子操作されたので、これもカラムに結合し、そのため、結果として生じた濾液には酵素が無い。
次の工程では、遊離オリゴヌクレオチドが後の連結反応を妨げるので、遊離オリゴヌクレオチドを試料から除去した。この作業を成し遂げるためには2つの可能性、すなわち、限外濾過または親和性に基づくアプローチのいずれかがある。限外濾過の場合、遊離オリゴヌクレオチドは膜、例えば、Zeba 96-well Spin Desalting Plates, 40K MWCO(Thermo Scientificカタログ番号89807)もしくはAcroPrep 96, 30K(Pall, カタログ番号5035)または他の任意の同等の限外濾過装置を通過するが、結合体を保持する装置が適している。試料適用および濾過工程の後に、試料を連結緩衝液(PBS)で3回洗浄する。溶液を新しいプレートに移し、体積を200μlに調節する。定量のためにアリコートを取り出す。限外濾過の代案として、親和性に基づくアプローチを適用することができる。これには、遊離オリゴヌクレオチドが結合しないままで結合体の結合を可能にするマトリックスが必要とされる。このようなマトリックスの例はKappaSelect(GE Healthcare, カタログ番号17-5458-01)、CaptoL(GE Healthcare, カタログ番号17-5478-99)、またはCaptureSelect IgG-CH1 Affinity Matrix(BAC, カタログ番号191.3120.05)である。マトリックスはカラムとして96ウェルフィルタープレート内部で利用可能することができるか、または懸濁液として購入することができる。後者の場合、マトリックスは、マウンティングプレート/キャリアプレートとして役立つ、MSGVN2250(MultiScreen HTS Milliporeカタログ番号MSGVN2250)のような96ウェルフィルタープレートの中に分注されてもよい。アフィニティマトリックスは(KappaSelectおよびCaptoLの場合と同様に)軽鎖に特異的でもよく、(Capture Select IgG-CH1の場合と同様に)重鎖に特異的でもよい。それぞれのマトリックスについて、異なるプロトコールを適用することができる。以下の概略は一例としてKappaSelectのプロトコールに基づく。KappaSelectを含有するプレートを水で洗浄し、その後に、PBS pH4.0 400μlで3回洗浄する。その後、試料を適用し(PBS pH4.0で希釈した)、撹拌しながらマトリックスに90分間、結合させる。PBS pH 4.0 400μlを用いて3回の洗浄工程を行い、その後に、溶出緩衝液(0.1Mグリシン、250mM NaCl、5%PEG、pH2.5) 200μlを用いた2回の溶出工程を行う。溶出後、中和緩衝液(1M Tris-HCl pH8.0)30μlを緩衝液200μlそれぞれに添加する。必要に応じて、試料をPBSのような別の緩衝液に入れるために限外濾過工程を行うことができる。
二重特異性結合分子を作製するために、2つの抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体を、等モル比でリンカーL-DNA
を含めて一緒にピペットで取る。リンカーDNAはその5'末端が第1の抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体とハイブリダイズするのに対して、その3'末端は第2の抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体に相補的であり、それによって、2つの異なる抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体の間に物理的な接続が確立される。適切なハイブリダイゼーションのために、溶液を60℃に加熱し、次いで、ゆっくりと室温まで冷却し、その後に保管のために4℃まで冷却する。短期間のプロトコールの場合、室温で数分間でも十分である。
二重特異性結合分子を調製用サイズ排除クロマトグラフィーによって精製する。ランニングバッファーとして2xPBSを用いてSuperdex200カラム上で、タンパク質画分をサイズ別に分離する。代表的なクロマトグラム(分析用SEC)を図27に示した。連結反応では、純粋なFab、結合体、および1つの抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体がリンカーと会合した中間産物とはっきりと区別することができる高分子種が形成される。二重特異性結合分子を含有する画分を細胞アッセイにおいてさらに分析することができる。
調製アプローチ
多量の二重特異性結合分子が必要とされる場合、または他の制約がある場合、いわゆる調製アプローチを適用することができる。これによって、ソルターゼ反応混合物をランニングバッファーとして1xPBSを用いてSuperdex200カラムにアプライする。画分を0.4ml体積で収集する。その後、抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体を含有する画分を確かめるために全ての関連画分のアリコートをLabChipシステム(Perkin Elmer)を介して分析する。さらに、全ての関連画分のアリコートをアガロース-ゲルに添加し、それによって、いわゆるキャッチャー(catcher)オリゴヌクレオチドを試料に添加した後に、ゲルにアプライする。このキャッチャーオリゴヌクレオチドは抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体のオリゴヌクレオチドに相補的であり、その結果としてdsDNA部分となり、抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体のssDNA単独より容易にアガロースゲル上で容易に視覚化することができる。(LabChipシステム上で分かるように)抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体を含有し、かつ(アガロースゲル上で分かるように)遊離オリゴヌクレオチドを含有しない画分をプールし、必要に応じて、限外濾過、例えば、Amicon Ultra 0.5ML,10K(Millipore)を用いた限外濾過によって濃縮する。連結反応のために、2つの抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体分子を等モル比でリンカーL-DNAを含めて一緒にピペットで取り、前のセクションにおいて概説したように処理する。
ソルターゼ反応および洗浄プロセスの効率は、タンパク質ゲルまたはLabChipシステム(Perkin Elmer)を用いてモニタリングすることができる。後者は、サイズおよび濃度が決定された電気泳動図を送付する。ワークフローの異なる段階の試料が分析した、このような操作の一例を図28に示した。10kDa未満のピークは、LabChip装置に内在する、試料に属さない、いわゆるシステムピークであることに留意のこと。抗体Fab断片のサイズは緩衝液に応じて55〜56kDaである。図28-1は出発物質(純粋な抗体Fab断片)を示し、図28-2はソルターゼ反応の開始を示す(質量27kDaのソルターゼの出現に留意のこと)。ソルターゼ反応の終わりに(図28-3)、抗体Fab断片ピーク後のよく目につくピークが64kDaで出現し、これは抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体を示す(カップリング率/効力は約60%)。負のHis-タグ選択および限外濾過による精製の後、ほぼ純粋な抗体Fab断片-オリゴヌクレオチド結合体ピークが見られる(図28-4)。