JP2015218388A - 成膜用マスクホルダユニット - Google Patents
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マスク成膜法は簡便でありプロセスコストが安いという利点があるが、マスクが基板から離間して密着性が低下し易い。このようにマスクが基板から浮いた状態でスパッタリング等による成膜を行うと、形成されたパターンに欠陥が発生し易くなり、このマスクの浮きという問題が解決されない限り微細なパターン形成には適さない。このため、微細なパターンを形成するため、マスクが基板から浮かないよう、マスクを成膜処理用マスクホルダに強力な磁力で吸着する必要がある。
このマスクホルダユニット100は、一面101aに半導体ウェハ等の成膜対象物110を配置するホルダ本体101と、ホルダ本体内に収納される複数の磁石115と、成膜対象物110を間に挟んでホルダ本体101上に配置される磁性体から成るマスク105と、を備えている。
ホルダ本体101は、磁石115を収容する複数の凹所102aを上面に有した下層プレート102と、凹所102a内から突出した磁石115の上部を収容する凹所104aを下面に有した上層プレート104と、を有する金属製である。
ホルダ本体101側に固定配置された磁石115の磁力によってマスク105を吸引することにより、マスク105を下層プレート102の上面に位置決め保持することができる。
成膜工程では、ホルダ本体101を水冷式の冷却装置上に搭載することにより、マスク105→成膜対象物110→ホルダ本体101→冷却装置といった伝熱ルートで放熱を行うことになる。
しかし、このように従来のマスクホルダユニット100を用いた成膜工程では、マスクの昇温に起因して成膜対象物の成膜面の温度が過大に上昇したとしても、放熱のための伝熱経路が成膜対象物の面積の範囲内に極限されていたため、成膜温度を充分に低下させることが難しかった。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、成膜時にマスクに発生した熱をホルダ本体側へ放熱させる伝熱経路を成膜対象物の面積を超えた範囲に拡大することにより、成膜対象物の膜が過熱状態となって膜の内部応力が過大となることを効果的に防止することができる成膜用マスクホルダユニットを提供することを目的とする。
以下、本発明の第1の実施形態に係る成膜用マスクホルダユニットについて説明する。
まず成膜用マスクホルダユニットの全体の構造について説明する。
図1(a)(b)(c)及び(d)は本発明の第1の実施形態に係る成膜用マスクホルダユニットの構成を示す平面図、正面図、分解斜視図、及びB−B断面図である。
成膜用マスクホルダユニット100は、円盤状の基板10に磁力で吸着されるマスク20を配置して成膜処理を行うものである。
即ち、ホルダ本体110は、一面に磁力により吸引されるマスク20を配置した基板10の他面を一面(上面)で支持する上層プレート(第1プレート)115と、上層プレートの他面側に配置され、筒状の磁石130を収容する複数の穴部125を備えた下層プレート(第2プレート)120と、を備える。
上層プレート115及び下層プレート120は、基板10より大きな円盤状をなしており、ネジその他の固定手段により着脱自在に組み付けられる。
下層プレート120の穴部125内に磁石130を取り付けて上層プレート115を被せた状態で、上層プレート115上に基板10とマスク20を配置して、磁石130の磁力で基板10上にマスク20を密着させる。磁石130は、例えば、ネオジウムやサマリウムコバルト等の焼結マグネットであり、柱体状である円柱として構成されている。
マスク20には、基板10の成膜パターンに対応する開口21が形成されている。マスクとしては、磁石に吸着される材料、例えば、鉄、鉄−ニッケル合金を用いる。
なお、基板の形状は、円盤状に限らないが、本例では円盤状の基板を一例として説明する。
磁石130は、円柱中実形状で直径4mm、高さ6mmの希土類マグネットを使用する。
尚、本実施形態において上層プレート、下層プレートの材料は純銅に限定されるものではなく、アルミ等、他の金属素材で製作することができる。
なお、本実施形態では、ホルダ本体の少なくとも一部に別体構造の磁石を配置した構成(複数個の磁石を上下プレート間に配置した構成)としたがこれは一例に過ぎず、ホルダ全体、又はその一部が磁石から構成されていてもよい。
なお、環状熱伝導部材の外周縁が庇部23よりも外径方向へ(空所の外周縁を越えて)突出するように環状熱伝導部材を大径に構成することにより、環状熱伝導部材の熱容量を増大させてホルダ本体側への熱伝導量を増大させるようにしてもよい。
また、マスクの外周縁を基板の外周縁よりも外径方向に突出させた上で、ホルダ本体側の磁石により吸着するようにしたので、マスクの吸着力(接触圧)を増大させることにより基板からの浮きを更に確実に防止することが可能となり、マスクの浮きによる成膜パターンの欠陥を解消することができた。
次に、図2(a)(b)及び(c)は本発明の第2の実施形態に係る成膜用マスクホルダユニット100の平面図、C−C断面図、及びD部拡大図である。また、図2(d)は比較例に係る成膜用マスクホルダユニットの平面図である。
ホルダ本体側に配置する磁石130の位置は、図2(d)の比較例に示したように基板10の外周縁の内側に配置された磁石からの磁力により庇部23を張出し部111側に吸引することができる場合には、ホルダ本体の張出し部111に相当する位置に磁石を設けなくても良い。
基板10の外周縁を外径方向へ越えた空所Sの直下位置に磁石130を配置することにより、マスクの庇部23、及び環状熱伝導部材142をホルダ本体側に吸引し、各部材相互の密着力を高めることができる。これにより、マスクからの熱をより効果的にホルダ本体へ入熱させて放熱効果(伝熱効率)を高めることができる。
次に、図3(a)及び(b)は本発明の第3の実施形態に係る成膜用マスクホルダユニット100の斜視断面図、及びその要部拡大図であり、図4(a)及び(b)は比較例に係る成膜用マスクホルダユニット100の斜視断面図、及びその要部拡大図である。
なお、上記実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
本実施形態に係る成膜用マスクホルダユニット100は、ホルダ本体110の上面であって、基板10の外周縁と環状熱伝導部材142の内周縁との境界部BLに沿った部位に、環状の凹所(保護フィルム退避部)126を形成したことを特徴とする。
図3(a)(b)に示した例では、環状の凹所126は、基板10の外周縁と環状熱伝導部材142の内周縁にまたがる幅寸法Wと、境界部BLの全長に亘る周方向長を有する。
なお、境界部BLでは、基板の外周縁と環状熱伝導部材の内周縁とが図示のように離間していてもよいし、密着していてもよい。
このため、保護フィルム150の外形状(外周輪郭)を基板10の外形状と同じにすると、保護フィルムの外周縁から粘着剤の一部が基板側に付着し易くなる。基板側に付着した粘着剤はその後の基板の加工工程や、最終的に得られるデバイスの性能に悪影響を与える原因となる。
このような不具合を回避するために、図4(b)の拡大図に示すように保護フィルムの外周縁を、境界部BLを越えて充分に外径方向へ延長し、環状熱伝導部材142(熱伝導部材140)の内周縁を越えた位置まで延在させている。保護フィルム150の外周縁が基板10の外周縁を越えた位置にあることにより、保護フィルムの外周縁から粘着剤が漏れ出したとしても基板に付着する虞を皆無にすることができるからである。
本実施形態ではこのような不具合を解決するために、図3に示したように、ホルダ本体110の上面であって、基板10の外周縁と環状熱伝導部材142の内周縁との境界部BLに沿った部位に環状の凹所(保護フィルム退避部)126を形成した。
なお、この場合には、環状熱伝導部材142の厚さT1を、保護フィルムの厚さ分だけ基板10の厚さT2より厚く構成することにより、基板上面と環状熱伝導部材の上面との間に段差(高さ位置のずれ)が形成されて、マスク下面との密着性が低下することを防止できる。
なお、保護フィルムを使用する必要がない場合には、凹所126を形成する必要がないことは言うまでも無い。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様にマスクの発熱を効果的にホルダ本体側に伝導することが可能となる。また、マスクを吸着する面積(接触圧)を増大させることにより、基板からの浮きを更に確実に防止することが可能となり、マスクの浮きによる成膜パターンの欠陥を解消することができた。
次に、図5は本発明の第4の実施形態に係る成膜用マスクホルダユニット100の要部断面図である。なお、図1を併せて参照し、同一部分には同一符号を付して説明する。
本実施形態に係る成膜用マスクホルダユニット100は、熱伝導部材140を、ホルダ本体110と一体化した構成が特徴的である。言い換えれば、ホルダ本体110の張出し部111に相当する外周縁部の厚みW1を、基板を載置する内側部分の厚みW2よりも大きくして、基板上面と熱伝導部材140との段差を解消してマスク20との密着性を高めつつ、熱伝導部材140による高い熱伝導性を確保している。
つまり、熱伝導部材140をホルダ本体110と別部材とせずに、ホルダ本体の一部(張出し部111に相当する部位)を厚肉にしてマスク20と直接接触させたものである。
これを言い換えれば、ホルダ本体の張出し部111に相当する上面に環状の凸部を設け、この凸部により空所Sを満たすように構成する。この凸部を熱伝導部材140として利用することにより、マスク、及び成膜対象物の冷却効率を高めることが可能となる。
保護フィルム150を基板下面に配置する場合には、基板外周縁と熱伝導部材140の内周縁との間に空間Gを設け、保護フィルムの外周縁を基板外周縁よりも外径方向へ突出させればよい。
また、マスクの外周縁を基板の外周縁よりも外径方向に突出させた上で、ホルダ本体側の磁石により吸着するようにしたので、マスクの吸着面積(接触圧)を増大させることにより基板からの浮きを更に確実に防止することが可能となり、マスクの浮きによる成膜パターンの欠陥を解消することができた。
第1の本発明に係る成膜用マスクホルダユニットは、全部、又は一部に永久磁石を備え、且つ一面に成膜対象物20を配置するホルダ本体100と、ホルダ本体の一面上に配置した成膜対象物を間に挟んでホルダ本体の一面上に配置されることにより永久磁石により吸引保持される磁性体から成るマスク20と、を備え、マスクの外周縁部の少なくとも一部は成膜対象物の対応する外周縁部から庇状に突出した庇部23となっており、ホルダ本体には、庇部との間に空所Sを形成する張出し部111が形成されており、空所内に、庇部からの熱をホルダ本体に伝導する熱伝導部材140の少なくとも一部を配置したことを特徴とする。
ホルダ本体110の一面に基板10を位置決め固定するために、基板上に配置したマスク20をホルダ本体側に設けた磁石により吸引する場合に、マスク20の外周縁とホルダ本体110の外周縁を基板10の外周縁よりも外径方向へ突出させて空所Sを形成し、この空所S内に熱伝導部材140(環状熱伝導部材142)を配置した。この結果、熱伝導部材を介して庇部23、及び張出し部111とが密着状態となる。このため、従来のように基板の面積の範囲内でのみマスク及びホルダ本体と接触させていた従来例とは異なって、基板の外径方向に熱伝導経路を増大させることができ、ホルダ本体に放熱される熱量を増大させることが可能となる。つまり、スパッタリング等による成膜工程で発生する基板への自由電子の流入による発熱を効率的にホルダ本体側に伝導し、成膜時の温度上昇を防ぐことが可能となり、成膜材料の内部応力を緩和することができた。ホルダ本体の他面側に冷却装置を配置することにより、冷却効果を高めることができる。
熱伝導部材の外周縁が空所を越えて外径方向へ突出するようにしてもよい。この場合にはマスクからホルダ本体側への放熱量を増大させることが可能となる。
なお、磁石はホルダ本体の全体、或いは一部に設けられていれば足り、実施形態のように複数個の磁石を規則的に分散配置する場合に限らない。
空所Sは、必ずしもマスク10、及びホルダ本体110の外周縁部の全周に亘って延在している環状の空所である必要はなく、部分的に配置された空所であってもよい。成膜対象物である基板の形状等々の条件に応じて、基板の任意の外径方向に空所を設け、当該空所内に熱伝導部材を配置するようにすればよい。
熱伝導部材140は、ホルダ本体と別体構造の別部品であってもよいし、ホルダ本体の一部を熱伝導部材としてもよい。
実施形態では、成膜対象物の外周縁の外径方向全周に亘って空所Sを設け、この空所内を満たすように熱伝導部材140を配置したので、熱伝導部材の面積を大きくすることができ、放熱効率を大幅に高めることが可能となる。
ホルダ本体の張出し部111に相当する上面に環状の凸部を設け、この凸部により空所Sを満たすように構成する。この凸部を熱伝導部材140として利用することにより、マスク、及び成膜対象物の冷却効率を高めることが可能となる。
マスク20の外周縁に庇部23を設け、庇部23とホルダ本体の張出し部111との間に熱伝導部材140を配置した場合に、張出し部111に相当するホルダ本体部分に磁石を配置することにより、成膜対象物20に対する庇部23と張出し部との密着性を高めることが可能となる。その結果、熱伝導効率を高めるばかりで無く、マスクの浮きを防止して精度の高い成膜が可能となる。
ホルダ本体の一面と成膜対象部との間に保護フィルムを介在させる場合には、保護フィルムをホルダ本体と接着するための粘着剤が保護フィルムの外周縁から基板側に漏出することを防止する必要がある。一方、保護フィルムが熱伝導部材とホルダ本体との間に介在すると熱伝導性からするとマイナス要因になる。
本発明では、ホルダ本体上に保護フィルムの外周縁を収容する凹所126を設けることにより保護フィルム外周縁を基板から充分に離間させるようにした。一方、保護フィルムは熱伝導部材とホルダ本体との間に介在させないことが熱伝導効率からいえば重要であるため、凹所を成膜対象物と熱伝導部材との境界に配置し、且つ保護フィルムの外周縁を凹所内(熱伝導部材の内周縁の手前)にて終端させた。
Claims (5)
- 全部、又は一部に永久磁石を備え、且つ一面に成膜対象物を配置するホルダ本体と、該ホルダ本体の一面上に配置した前記成膜対象物を間に挟んで前記ホルダ本体の一面上に配置されることにより前記永久磁石により吸引保持されるマスクと、を備え、
前記マスクの外周縁部の少なくとも一部は、前記成膜対象物の対応する外周縁部から庇状に突出した庇部となっており、
前記ホルダ本体には、前記庇部との間に空所を形成する張出し部が形成されており、
前記空所内に、前記庇部からの熱を前記ホルダ本体に伝導する熱伝導部材の少なくとも一部を配置したことを特徴とする成膜用マスクホルダユニット。 - 前記空所は、前記マスク、及び前記ホルダ本体の外周縁部の全周に亘って延在しており、
前記熱伝導部材は、前記空所の全周に亘って延在するように配置された環状体であることを特徴とする請求項1に記載の成膜用マスクホルダユニット。 - 前記熱伝導部材は、前記ホルダ本体と一体化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜用マスクホルダユニット。
- 前記永久磁石を前記空所の直下に配置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の成膜用マスクホルダユニット。
- 前記ホルダ本体上面であって、前記成膜対象物と前記熱伝導部材との境界に沿った部位に、凹所を形成したことを特徴とする請求項1に記載の成膜用マスクホルダユニット。
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