JP2015213446A - 改質された表面を具えた細胞培養用デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】動物細胞の形態変化を伴う事なく効果的に培養できる細胞培養デバイスの提供。
【解決手段】アミノ基(又はイミノ基)含有高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物。
[式中Aは非置換又は置換C1−C12アルコキシ,L1はm個とn個の反復単位のセグメントを連結するリンカー(m=2〜1,000の整数,n=独立して1〜1,000の整数),L2は−C1〜6アルキレン−NH−(C1〜6アルキレン)q−(q=0又は1),Rは独立して環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表す。]表面にカルボキシル基を有する培養機材の表面へ共有結合を介して固定された、培養中の動物細胞の形態の変化を抑制するための細胞培養デバイス。
【選択図】なし
【解決手段】アミノ基(又はイミノ基)含有高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物。
[式中Aは非置換又は置換C1−C12アルコキシ,L1はm個とn個の反復単位のセグメントを連結するリンカー(m=2〜1,000の整数,n=独立して1〜1,000の整数),L2は−C1〜6アルキレン−NH−(C1〜6アルキレン)q−(q=0又は1),Rは独立して環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表す。]表面にカルボキシル基を有する培養機材の表面へ共有結合を介して固定された、培養中の動物細胞の形態の変化を抑制するための細胞培養デバイス。
【選択図】なし
Description
本発明は、表面に高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が共有結合を介して固定された細胞培養用デバイスを関する。特に、培養中の動物細胞の形態変化を抑制するための細胞培養デバイスに関する。
本発明者らは、生体または生体に由来する物質、特に血液と接触する表面の生体適合性を、高分子化環状ニトロキシドラジカルを使用して高めることにより、材料に血液が接触することで生じる、例えば血小板や白血球の減少を抑制することができることも見出し、当該使用について提案した(特許文献1参照)。
ところで、近年、iPS細胞やES細胞等の再生医療が注目されているが、これらの細胞を未分化の状態を維持したまま培養することは品質管理の観点から非常に重要である。また、薬剤スクリーニング等において用いられる培養細胞は一般的に細胞の継代数を重ねるごとに細胞の形態が変化することが知られている。これらの例に見られるように、培養細胞は通常の培養環境においてはその形態が変化する傾向にある。細胞の形態を変化させる原因としては様々なものが知れているが、培養液中に発生する活性酸素種(ROS)もその一つである。このROSが細胞を刺激し、細胞の形態を変化させる。特に、ミトコンドリアの還元電位を乱すことで、細胞の形態維持に深く関与しているミトコンドリア内のROSレベルを変化させているのであろうと報告されている(非特許文献1)。これまで、一般的に、ROSを消去する物質としてビタミン等種々の抗酸化剤が用いられてきた。しかしながらこれらの小分子の抗酸化剤はROSを消去する一方で、それ自体が細胞の形態変化を誘発するという側面を持ち合わせる。したがって、これら小分子の抗酸化剤(ROS消去剤)に代わる材料設計が将来的には非常に重要となってくるであろう。
本発明者らは、このような観点から、特許文献1で表面処理に使用されている2−メトキシメチルアクリレート/クロロメチルスチレンのランダムコポリマーのスチレン反復単位部分に環状ニトロキドラジカル部分(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO))を担持させたポリマーに代え、PEG−b−PMNT〔ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(p−4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−1−オキシル)アミノメチルスチレン:当該ポリマーの製造等については、必要があれば特許文献2参照〕で培養機材表面をコートすることにより高等動物細胞を未分化の状態を維持したまま培養できることを報告した(非特許文献2)。
Mol.Cell 2012,48,158−176
第62回 高分子討論会、予稿原稿 2013年8月28日発行
上記の非特許文献1に記載の培養機材によれば、活性酸素種において分化することが報告されている未分化の白血病細胞株HL60を、分化誘導を抑制した状態で効果的に培養
することができる。しかしながら、報告されている培養機材表面(カルボキシル基坦持)へのPEG−b−PMNTのコーティング法では、必ずしも、当該ポリマーを均一かつ、安定に前記表面へ固定できないことが見出された。したがって、本発明はかような短所を克服ないしは解消し、しかも培養細胞の形態変化を誘導しない細胞培養用デバイスを提供することを目的とする。
することができる。しかしながら、報告されている培養機材表面(カルボキシル基坦持)へのPEG−b−PMNTのコーティング法では、必ずしも、当該ポリマーを均一かつ、安定に前記表面へ固定できないことが見出された。したがって、本発明はかような短所を克服ないしは解消し、しかも培養細胞の形態変化を誘導しない細胞培養用デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、このような短所を解消すべく研究したところ、驚くべきことに、当該ポリマーを包含する特定の高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物を培養機材表面(カルボキシル基担持)に一定条件下で共有結合せしめると、かような短所が解消できることが確認できた。
したがって、本発明は、前記課題を解決するための手段として、下記式(I)で表されるアミノ基(またはイミノ基)含有高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、表面にカルボキシル基を有する培養機材の表面へ共有結合を介して固定された、培養中の動物細胞の形態の変化を抑制するための細胞培養デバイスを提供する。
上式中、
Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R1R2CH−(ここで、R1及びR2は独立して、C1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH2)3O−もしくは−O(CH2)4O−を表す。)の基を表し、
L1は、m個の反復単位のセグメントとn個の反復単位のセグメントを連結するリンカーを表し、
L2は、−C1-6アルキレン−NH−(C1-6アルキレン)q−であり、ここでqは整数0または1であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、2〜1,000の整数であり、そして
nは、独立して、1〜1,000の整数である。
Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R1R2CH−(ここで、R1及びR2は独立して、C1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH2)3O−もしくは−O(CH2)4O−を表す。)の基を表し、
L1は、m個の反復単位のセグメントとn個の反復単位のセグメントを連結するリンカーを表し、
L2は、−C1-6アルキレン−NH−(C1-6アルキレン)q−であり、ここでqは整数0または1であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、2〜1,000の整数であり、そして
nは、独立して、1〜1,000の整数である。
<発明の詳細な記述>
以下、本発明をより具体的に説明する。
以下、本発明をより具体的に説明する。
式(I)で表される高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物において、各基、部分、または数値について、具体的なまたは好適な態様は、次のとおりである。
リンカーL1は、例えば、単結合、−(CH2)cS−、−CO(CH2)cS−、からなる群より選ばれ、ここでcは1〜12の整数である、ことができる。
Rは、独立して、Rの総数nの、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、かような残基の中、好ましいのは、Rが、次式
式中、R’はメチル基である、
で表される基から選ばれものである。
で表される基から選ばれものである。
mは、好ましくは2〜500の整数、より好ましくは10〜300の整数であり、nは、好ましくは1〜200の整数、より好ましくは3〜100の整数、最も好ましくは8〜30の整数である。
これらの化合物は、前記特許文献2に記載の方法及びそれに準ずる方法により製造できる。
表面にカルボキシル基を有する培養機材は、その表面に水性媒体(水、水混和性有機溶媒、例えば、C1-3アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、等を含有する水溶液)中で、式(I)で表される高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物のL2中の−NH−基と反応して共有結合を形成し得る状態のカルボキシル基を有するものであれば、記如何なる形状及び構造を有する如何なる材料製であってもよい。当該カルボキシル基は、前記表面の特定領域または全体に均一に分布しているものであることが、本発明の目的上好ましい。このような表面を有する培養機材として使用できるものは、市販されているものをそのまま、または改良して使用してもよい。本発明にいう、培養機材はそれ自体が培養に役立つ培養デバイスであってもよく、また、かような培養デバイスの部材であってもよい。
市販されている培養機材としては、Corning PureCoat Cabboxyl Surface Dishes等を挙げることができる。
共有結合は、前記L2中の−NH−基と表面のカルボキシル基の脱水縮合反応によって
形成される結合である。こうして、式(I)の化合物は、前記両基が静電的に結合することによって、表面に固定されたものより化学的に安定化するものと推測される。上記脱水反応を行うとき、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)(EDC)等の縮合剤を80mg/mlの濃度でカルボキシル表面を活性化させ、その後高分子化合物(60mg/ml)を加え25度において12時間反応させる。このような反応条件下に処理すると、式(I)の化合物を表面のカルボキシル基に対応するように均一に結合または固定することができる。理論により、拘束されるものでないが、静電相互作用により式(I)の化合物を表面にコートすると、高分子ポリマー同士の会合により不均一なコーティングや高塩濃度環境下におけるポリマーの剥離が推測されるが、上記のように共有結合形成反応を行うと、機材表面のカルボキシル基とポリマー中のアミノ基により当該結合が形成され、より均一に当該化合物を表面に固定できるものと推測できる。
形成される結合である。こうして、式(I)の化合物は、前記両基が静電的に結合することによって、表面に固定されたものより化学的に安定化するものと推測される。上記脱水反応を行うとき、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)(EDC)等の縮合剤を80mg/mlの濃度でカルボキシル表面を活性化させ、その後高分子化合物(60mg/ml)を加え25度において12時間反応させる。このような反応条件下に処理すると、式(I)の化合物を表面のカルボキシル基に対応するように均一に結合または固定することができる。理論により、拘束されるものでないが、静電相互作用により式(I)の化合物を表面にコートすると、高分子ポリマー同士の会合により不均一なコーティングや高塩濃度環境下におけるポリマーの剥離が推測されるが、上記のように共有結合形成反応を行うと、機材表面のカルボキシル基とポリマー中のアミノ基により当該結合が形成され、より均一に当該化合物を表面に固定できるものと推測できる。
動物細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞であることができる。また、かような細胞は、天然由来または人工的に操作されたものであることができ、iPS細胞、ES細胞、造血幹細胞、未分化がん細胞であることができる。
本発明にいう、動物細胞の形態の変化には、分化の誘導、アポトーシスの発生、オートファジーの発生等が包含される。
本発明は、動物細胞を形態の変化を実質的に伴うことなく、長期にわたって培養することができるので、再生医療用の細胞培養系、細胞の機能を評価する系、薬剤のスクリーニング系を提供するのに役立ち得る。
以下、本発明の具体的な態様を挙げながら本発明をより具体的に説明するが、本発明をこれらに限定することを意味するものではない。
以下の具体例では、特許文献1に記載されているような、本発明者らが開発して下記式で表される高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物(以下、PEG−b−PMNTと略記することもある。なお、式中、m=110、n=18(それぞれ、平均値))
例1:PEG−b−PMNTの培養機材へのコーティング
表面にカルボキシル基を有する24ウェルプレート(PureCoat carboxyl dish,Corning,USA)に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)(EDC)を40mgメタノール中で反応させた後、PEG−b−PMNT(30mg)を加え一晩振動させて撹拌した。反応終了後プレートを1M塩化ナトリウム水溶液及びリン酸緩衝液により洗浄した。ポリマーコートの確認はプレートをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ電子スピン共鳴により行った。結果を図1に示す。
表面にカルボキシル基を有する24ウェルプレート(PureCoat carboxyl dish,Corning,USA)に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)(EDC)を40mgメタノール中で反応させた後、PEG−b−PMNT(30mg)を加え一晩振動させて撹拌した。反応終了後プレートを1M塩化ナトリウム水溶液及びリン酸緩衝液により洗浄した。ポリマーコートの確認はプレートをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ電子スピン共鳴により行った。結果を図1に示す。
図中、(a)縮合剤であるEDC存在下でポリマーを反応させたプレート。(b)EDC非存在下でポリマーをコートしたプレート。縮合剤が存在していないとシグナルが検出されなかったことからポリマーが共有結合で結合していることがわかる。
例2:活性酸素種を消去することによる細胞分化抑制例
PEG−b−PMNTを固定した24ウエル(well)プレートに活性酸素種により分化が誘導されることが報告されているヒト前骨髄球白血病細胞(HL60)を播種し(5×104cells/well)、さらに活性酸素種を発生させることが知られているブチル酸を0.4mMの濃度で加えて37℃で48時間培養した。48時間後、細胞をPBSで洗浄した後、新しい24wellプレートに播種し、ニトロブルーテトラゾリウム溶液(200μl、4mg/ml)と12−O−テトラデカノイルホルボール 13−アセタート溶液(200μl、5μg/ml)を加えて37℃で1時間培養した。1時間後、共焦点レーザー顕微鏡(LSM700、カールツァイス株式会社)を用いて細胞を撮像し、ホルマザンを形成している細胞を計数した。その結果ポリマーコートすることで細胞の分化を抑制している事が確認できた。結果を図2(+:ポリマーをコートした例、−未ポリマーコート)に示す。
PEG−b−PMNTを固定した24ウエル(well)プレートに活性酸素種により分化が誘導されることが報告されているヒト前骨髄球白血病細胞(HL60)を播種し(5×104cells/well)、さらに活性酸素種を発生させることが知られているブチル酸を0.4mMの濃度で加えて37℃で48時間培養した。48時間後、細胞をPBSで洗浄した後、新しい24wellプレートに播種し、ニトロブルーテトラゾリウム溶液(200μl、4mg/ml)と12−O−テトラデカノイルホルボール 13−アセタート溶液(200μl、5μg/ml)を加えて37℃で1時間培養した。1時間後、共焦点レーザー顕微鏡(LSM700、カールツァイス株式会社)を用いて細胞を撮像し、ホルマザンを形成している細胞を計数した。その結果ポリマーコートすることで細胞の分化を抑制している事が確認できた。結果を図2(+:ポリマーをコートした例、−未ポリマーコート)に示す。
例3:細胞の分化制御(小分子抗酸化剤との比較)
これまで、活性酸素を消去する物質としてビタミン等の様々な抗酸化物質が使用されてきた。これら小分子の抗酸化剤との比較を行った。24ウェルカルボキシルプレートにHL60を播種し(5×104cells/well)、アスコルビン酸(最終濃度25μM),トコフェロール(最終濃度25μM)、N−アセチルシステイン((最終濃度5mM)のいずれかを加え48時間培養した後に、ニトロブルーテトラゾリウム溶液(200μl、4mg/ml)と12−O−テトラデカノイルホルボール 13−アセタート溶液
(200μl、5μg/ml)を加えて37℃で1時間培養した。1時間後、共焦点レーザー顕微鏡(LSM700、カールツァイス株式会社)を用いて細胞を撮像し、ホルマザンを形成している細胞を計数した。また比較実験としてPEG−b−PMNTを固定した24wellプレートを用いて同様の実験を行った(図4)。
これまで、活性酸素を消去する物質としてビタミン等の様々な抗酸化物質が使用されてきた。これら小分子の抗酸化剤との比較を行った。24ウェルカルボキシルプレートにHL60を播種し(5×104cells/well)、アスコルビン酸(最終濃度25μM),トコフェロール(最終濃度25μM)、N−アセチルシステイン((最終濃度5mM)のいずれかを加え48時間培養した後に、ニトロブルーテトラゾリウム溶液(200μl、4mg/ml)と12−O−テトラデカノイルホルボール 13−アセタート溶液
(200μl、5μg/ml)を加えて37℃で1時間培養した。1時間後、共焦点レーザー顕微鏡(LSM700、カールツァイス株式会社)を用いて細胞を撮像し、ホルマザンを形成している細胞を計数した。また比較実験としてPEG−b−PMNTを固定した24wellプレートを用いて同様の実験を行った(図4)。
結果を図3に示す。
図3より、ビタミン等の抗酸化剤はHL60の分化を誘発(分化率7〜8%)しているのに対し、ポリマーコートしたプレートは細胞の分化を誘発していなかった(分化率1%以下)。図3において、(a)アスコルビン酸、(b)トコフェロール、(c)Nアセチルシステイン、(d)ポリマーコートをした倍にHL60分化誘発の結果を示す。
例4:細胞の形態維持(ミトコンドリアの膜電位による評価)
ミトコンドリアの膜電位は細胞の状態を表す事が知られている。例えば細胞にアポトーシスが生じるとミトコンドリアの膜電位が低下する事が知られている。そこでポリマーコートした培養機材のミトコンドリア膜電位に与える効果を解析した。ポリマーコートした24ウェルプレートに5×105cells/mLの高濃度でHL60を播種し、48時間培養した後にJC−1(5,5’,6,6’−tetrachloro−1,1’,3,3’−tetraethylbenzimidazolylcarbocyanine
iodide)(フナコシ)によりミトコンドリアの膜電位を解析した。比較実験としてポリマーコートしていないプレート及びアスコルビン酸(最終濃度25μM),トコフェロール(最終濃度25μM)、N−アセチルシステイン((最終濃度5mM)のいずれかを加え48時間培養した後にもJC−1により膜電位を測定した。結果を図4に示す。図4より、Red(赤)/Green(緑)の蛍光比が高いほどミトコンドリアの膜電位が良好な状態にあるが、ポリマーコートしたプレート(図中(b))はポリマーコートしていないプレート(図中(a))及びアスコルビン酸(図中(c)),トコフェロール(図中(d)),Nアセチルシステイン(図中(e))と比較して良好な状態を保持していた。
ミトコンドリアの膜電位は細胞の状態を表す事が知られている。例えば細胞にアポトーシスが生じるとミトコンドリアの膜電位が低下する事が知られている。そこでポリマーコートした培養機材のミトコンドリア膜電位に与える効果を解析した。ポリマーコートした24ウェルプレートに5×105cells/mLの高濃度でHL60を播種し、48時間培養した後にJC−1(5,5’,6,6’−tetrachloro−1,1’,3,3’−tetraethylbenzimidazolylcarbocyanine
iodide)(フナコシ)によりミトコンドリアの膜電位を解析した。比較実験としてポリマーコートしていないプレート及びアスコルビン酸(最終濃度25μM),トコフェロール(最終濃度25μM)、N−アセチルシステイン((最終濃度5mM)のいずれかを加え48時間培養した後にもJC−1により膜電位を測定した。結果を図4に示す。図4より、Red(赤)/Green(緑)の蛍光比が高いほどミトコンドリアの膜電位が良好な状態にあるが、ポリマーコートしたプレート(図中(b))はポリマーコートしていないプレート(図中(a))及びアスコルビン酸(図中(c)),トコフェロール(図中(d)),Nアセチルシステイン(図中(e))と比較して良好な状態を保持していた。
例5:非特許文献2の静電相互作用によるポリマーコートとの比較
非特許文献では、同じポリマー(PEG−b−PMNT)を同じく同様のカルボキシプレートに静電相互作用によりコーティングを行い評価した。今回構築した共有結合を介したコーティング方法とコーティングの均一性及び安定性を比較する為にマウス胎児繊維芽細胞(2X105cells/well)を播種し、24時間後プレートへの接着性を評価した。用いているポリマーはポリエチレングリコール(PEG)セグメントが存在し、均一にコーティングされていると、接着細胞のプレート表面への接着を阻害する。今回作成した共有結合によるポリマーコーティングでは細胞の接着が全く見られなかった(図5の(a))のに対し、静電相互作用によるコーティングでは細胞の接着が確認された(図5(b))。このことは共有結合によるコーティング方法の方が安定性及び均一性の観点から優れていることを示唆している。
非特許文献では、同じポリマー(PEG−b−PMNT)を同じく同様のカルボキシプレートに静電相互作用によりコーティングを行い評価した。今回構築した共有結合を介したコーティング方法とコーティングの均一性及び安定性を比較する為にマウス胎児繊維芽細胞(2X105cells/well)を播種し、24時間後プレートへの接着性を評価した。用いているポリマーはポリエチレングリコール(PEG)セグメントが存在し、均一にコーティングされていると、接着細胞のプレート表面への接着を阻害する。今回作成した共有結合によるポリマーコーティングでは細胞の接着が全く見られなかった(図5の(a))のに対し、静電相互作用によるコーティングでは細胞の接着が確認された(図5(b))。このことは共有結合によるコーティング方法の方が安定性及び均一性の観点から優れていることを示唆している。
Claims (4)
- 下記式(I)で表されるアミノ基(またはイミノ基)含有高分子化環状ニトロキシドラジカル化合物が、表面にカルボキシル基を有する培養機材の表面へ共有結合を介して固定された、培養中の動物細胞の形態の変化を抑制するための細胞培養デバイス。
Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R1R2CH−(ここで、R1及びR2は独立して、C1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH2)3O−もしくは−O(CH2)4O−を表す。)の基を表し、
L1は、m個の反復単位のセグメントとn個の反復単位のセグメントを連結するリンカーを表し、
L2は、−C1-6アルキレン−NH−(C1-6アルキレン)q−であり、ここでqは整数0または1であり、そして
Rは、独立して、Rの総数nの少なくとも50%が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル−3−イル、2,2,5,5−テトラメチルピロリン−1−オキシル−3−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−オキサゾリジン−3−オキシル−2−イル、2,4,4−トリメチル−1,3−チアゾリジン−3−オキシル−2−イル及び2,4,4−トリメチル−イミダゾリンジン−3−オキシル−2−イルからなる群より選ばれる環状ニトロキシドラジカル化合物の残基を表し、存在する場合には、残りのRが水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、
mは、2〜1,000の整数であり、そして
nは、独立して、1〜1,000の整数である。 - L1が、単結合、−(CH2)cS−、−CO(CH2)cS−、からなる群より選ばれ、ここでcは1〜12の整数である、請求項1に記載の細胞培養デバイス。
- Rが、独立して、Rの総数nの、少なくとも70%である、請求項1に記載の細胞培養デバイス。
- Rが、次式
で表される基から選ばれる、請求項1に記載の細胞培養デバイス。
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JP2018113928A (ja) * | 2017-01-19 | 2018-07-26 | 国立大学法人 筑波大学 | 表面が生体適合性ポリマーで改質された生体物質との接触型機材 |
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2014
- 2014-05-08 JP JP2014096825A patent/JP2015213446A/ja active Pending
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