[複合偏光板の製造方法]
本発明の複合偏光板の製造方法は、第1の透明樹脂フィルムと第2の透明樹脂フィルムとを、第2の接着剤層又は粘着剤層を介して積層し、第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体を作製する積層工程(1)、積層工程(1)で得られる積層体の第1の透明樹脂フィルム側の面に、第1の接着剤組成物を介して偏光フィルムを貼り合わせ、偏光フィルム/第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体を作製する第1の貼合工程(2)、及び第1の接着剤組成物を硬化させて第1の接着剤層を形成する第1の硬化工程(3)を備え、かつ、この順に行うものである。このようにして製造される複合偏光板は、偏光フィルム、第1の接着剤層、第1の透明樹脂フィルム、第2の接着剤層又は粘着剤層及び第2の透明樹脂フィルムが、この順に積層されたものとなる。
また、上記の複合偏光板は、必要に応じ、偏光フィルムの他方の面(第1の透明樹脂フィルム及び第2の透明樹脂フィルムが積層されている面とは反対側の面)に、第3の接着剤組成物から形成される第3の接着剤層を介して第3の透明樹脂フィルムが積層されていてもよい。この場合の複合偏光板を製造する方法は、さらに偏光フィルムに第3の接着剤組成物を介して第3の透明樹脂フィルムを貼り合わせ、第3の透明樹脂フィルム/偏光フィルム/第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体を作製する第2の貼合工程(4)、及び第3の接着剤組成物を硬化させて第3の接着剤層を形成する第2の硬化工程(5)を備えることが好ましい。このとき、第1の貼合工程(2)及び第2の貼合工程(4)を同時に行い、かつ、第1の硬化工程(3)及び第2の硬化工程(5)を同時に行うこともできる。
なお、上記の第1の透明樹脂フィルムと第2透明樹脂フィルムとの貼合、偏光フィルムと積層体との貼合、及び偏光フィルムと第3の透明樹脂フィルムとの貼合を行うに際し、接着性を向上させるため、それぞれの貼合面に対し、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、溶剤処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。以下、適宜図を参照しながら本発明の複合偏光板の製造方法について説明する。
図1は、積層工程(1)を行うのに好適な装置の配置例を示す断面模式図である。図1には、第1の透明樹脂フィルム10の片面に接着剤(接着剤組成物)を塗布する塗工装置12、第1の透明樹脂フィルム10と第2の透明樹脂フィルム14とを貼り合わせるニップロール13、及び活性エネルギー線照射装置18を搬送方向に沿って順に設けた装置の例を示した。
図1を参照し、まず第1の透明樹脂フィルム10は、繰り出しロールから連続的に繰り出され、塗工装置12によってその貼合面に接着剤組成物が塗布される。次いで、第1の透明樹脂フィルム10は、この接着剤組成物を介し、第1の透明樹脂フィルム10と同様に繰り出しロールから連続的に繰り出される第2の透明樹脂フィルム14と、ニップロール13で貼り合わされ、その後、活性エネルギー線照射装置18によって活性エネルギー線を照射して接着剤組成物を硬化させ、第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体20とされる。この積層体20は、巻き取られてもよいし、巻き取らずに次の工程に供給されてもよい。図1では、第1の透明樹脂フィルム10に接着剤組成物が塗布されているが、これに限られるものではなく、第2の透明樹脂フィルム14の貼合面に接着剤組成物を塗布してもよい。この場合は、第1の透明樹脂フィルムと第2の透明樹脂フィルムを入れ替えるか、塗工装置12を第2の透明樹脂フィルムの搬送される側に設置すればよい。
接着剤組成物の塗工方法は、特に限定されないが、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。このうち、薄膜塗工、パスラインの自由度、幅広への対応などを考慮すると、塗工装置12としてグラビアロールを採用するのが好ましい。
塗工装置12としてグラビアロールを採用する場合、接着剤層の厚さは、ライン速度に対するグラビアロールの速度比であるドロー比によって調整することができる。具体的には、第1の透明樹脂フィルム10のライン速度を15〜50m/分とし、グラビアロールを第1の透明樹脂フィルム10の搬送方向と逆方向に回転させ、回転速度を5〜500m/分(ドロー比は1〜10となる)とすることで、硬化後の接着剤層の厚さが約 0.5〜5μm となるように調整することができる。
第1の透明樹脂フィルム10及び第2の透明樹脂フィルム14は、このようにして塗布された接着剤組成物を介してニップロール13によって貼り合わされる。その後、活性エネルギー線照射装置18によって活性エネルギー線が照射され、接着剤組成物を硬化させて積層体とされる。活性エネルギー線の照射に用いる光源は、特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。活性エネルギー線の光照射強度は、目的とする接着剤組成物毎に決定されるものであって、やはり特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜200mW/cm2であることが好ましい。接着剤組成物への光照射強度が0.1mW/cm2未満であると、反応時間が長くなりすぎる傾向にあり、 200mW/cm2を超えると、ランプから輻射される熱及び組成物の重合時の発熱により、接着剤組成物の黄変や透明樹脂フィルムの劣化を生じる可能性がある。
接着剤組成物への活性エネルギー線の照射時間は、硬化する接着剤組成物毎に制御されるものであって、特に限定されないが、照射強度と照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。接着剤組成物への積算光量が10mJ/cm2 未満であると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、接着剤組成物の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
紫外線を活性エネルギー線とするときは、各透明樹脂フィルムのライン速度は特に限定されず、長手方向(搬送方向)に4〜30N/50mm巾の張力下で、積層体に活性エネルギー線を照射することが好ましい。また、活性エネルギー線装置14による活性エネルギー線の照射で積算光量が不十分な場合は、活性エネルギー線装置を複数台設置し、活性エネルギー線を追加照射させ、積層体の接着剤組成物の重合を完了させてもよい。
接着剤組成物としては、無溶剤のものであると乾燥が不要になり好ましい。接着剤組成物に溶媒が含まれる場合は、第1の透明樹脂フィルム及び第2の透明樹脂フィルムを貼り合わせる前に乾燥炉を設置し、溶媒を乾燥させてもよい。
また、接着剤組成物として接着剤成分を水に溶解したもの又は接着剤成分を水に分散させた水系の接着剤を用いる場合は、塗工装置12に代えて、ニップロール16の手前に接着剤供給装置を設置し、貼り合わせるフィルムの間に接着剤組成物を流し込む方法を採用するのが好ましい。この場合は、ニップロール16の後に接着剤に含まれる水分を除くための乾燥炉を設置し、フィルムを貼り合わせた後に乾燥させることが好ましい。このような塗工方法では、硬化後の接着剤層の厚さを0.5μm 未満とすることが可能となる。
第1の透明樹脂フィルム10及び第2の透明樹脂フィルム14の貼合に粘着剤組成物を用いる場合は、塗工装置12の後に乾燥炉を設けるのが好ましい。また、これらフィルムは、粘着剤組成物を介して貼り合わされた後、必要に応じて活性エネルギー線装置14によるUV照射及び/又は乾燥炉による加熱を行い、積層体20とされる。
第1の透明樹脂フィルム10及び第2の透明樹脂フィルム14が粘着剤層により貼合される場合、別の実施形態により積層体20を製造することも可能である。具体的には、例えば離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層を形成し、これを第1の透明樹脂フィルムに積層してポリエチレンテレフタレートフィルム/粘着剤層/第1の透明樹脂フィルムとした後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がして露出した粘着剤層を介して意第2の透明樹脂フィルムを貼り合わせることにより、積層体20を製造することも可能である。粘着剤層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層する透明樹脂フィルムは、第1の透明樹脂フィルムであっても第2の透明樹脂フィルムであってもよい。
次に、第1の貼合工程(2)、第1の硬化工程(3)、第2の貼合工程(4)及び第2の硬化工程(5)について説明する。これらの工程は、上記の積層工程(1)に記載した手法と同様の手法により行うことができる。
第1の貼合工程(2)及び第1の硬化工程(3)は、上で説明した積層工程(1)において、第1の透明樹脂フィルムに代えて第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体を、第2の透明樹脂フィルムに代えて偏光フィルムを、第2の接着剤層又は粘着剤層を形成する接着剤組成物又は粘着剤組成物に代えて第1の接着剤組成物をそれぞれ用い、積層工程(1)と同様にして行えばよい。第1の接着剤組成物には、第1の接着剤組成物による第1の透明樹脂フィルムの密着力を向上させるために、第1の透明樹脂フィルムの溶解性が高い接着剤組成物を用いることが好ましい。ここで、第1の透明樹脂フィルムを単独で搬送し、これに溶解性の高い第1の接着剤組成物を塗工すると、第1の透明樹脂フィルムと偏光フィルムとを貼合する前に第1の透明樹脂フィルムが破断する懸念があるが、本発明では、予め第1の透明樹脂フィルムと第2の透明樹脂フィルムとを積層体としているため、第1の透明樹脂フィルムに切断が発生しない。
第2の貼合工程(4)及び第2の硬化工程(5)も、上で説明した積層工程(1)と同様の手法で作製することができる。すなわち、積層工程(1)において、第1の透明樹脂フィルムに代えて第3の透明樹脂フィルムを、第2の透明樹脂フィルムに代えて偏光フィルム/第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体を、第2の接着剤層又は粘着剤層を形成する接着剤組成物又は粘着剤組成物に代えて第3の接着剤組成物をそれぞれ用い、積層工程(1)と同様にして行えばよい。
偏光フィルムに、第3の透明樹脂フィルムを積層する場合は、上記した第1の貼合工程(2)及び第2の貼合工程(4)、また第1の硬化工程(3)及び第2の硬化工程(5)を、それぞれ同時に行うことができる。同時に行う場合は、偏光フィルムの両面に透明樹脂フィルムを同時に貼合することになるが、予め第1の透明樹脂フィルム及び第2の透明樹脂フィルムを積層体とすることで、第1の透明樹脂フィルムを単独で使用する場合に比べて、搬送時のハンドリング性が向上し、また貼合時にフィルムのシワが発生しにくくなる。
図2は、第1の貼合工程(2)〜第2の硬化工程(5)を行うのに好適な装置の配置例を示した断面模式図である。なお、図2には、説明の便宜上、偏光フィルム24の一方の面に積層工程(1)で得られた積層体20が貼合され、他方の面には第3の透明樹脂フィルム26が積層されてなる複合偏光板30を製造する実施形態を示したが、前記したとおり、第3の透明樹脂フィルム26は必要に応じて設けられるものである。
図2には、第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体20の片面に接着剤を塗布する塗工装置22、第3の透明樹脂フィルム28の片面に接着剤を塗布する塗工装置28、積層体20と偏光フィルム24と第3の透明樹脂フィルム26とを貼り合わせるニップロール30、及び活性エネルギー線照射装置32を搬送方向に沿って順に設けた装置の例を示した。図2を参照して、まず積層体20は、繰り出しロールから連続的に繰り出され、その第1の透明樹脂フィルム側の面に第1の接着剤組成物が塗工装置22によって塗布される。これと同様にして、第3の透明樹脂フィルム26は、繰り出しロールから連続的に繰り出され、偏光フィルムとの貼合面に第3の接着剤組成物が塗工装置28によって塗布される。その後、積層体20及び第3の透明樹脂フィルム26は、繰り出しロールから連続的に繰り出される偏光フィルム24と、それぞれの接着剤組成物を介してニップロール30によって貼り合わされる。次いで、活性エネルギー線照射装置32によって活性エネルギー線を照射し、それぞれの接着剤組成物を硬化させて積層体20/偏光フィルム24/第3の透明樹脂フィルム26からなる複合偏光板34が製造される。複合偏光板34は、巻き取られてもよいし、引き続きその表面に粘着剤層を設けるような次の工程に供給されてもよい。
接着剤組成物の塗工方法、フィルムの貼合方法、及び接着剤の硬化方法としては、例えば、上記した第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体の製造方法と同じ方法を挙げることができる。すなわち、必要に応じてニップロールでフィルムを貼りあわせる前後に乾燥炉を設置してもよいし、採用する接着剤の種類によって、塗工装置に代えて接着剤供給装置を採用してもよい。
[偏光フィルム]
次に、本発明によって製造される複合偏光板の構成部材について説明する。偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向しているものである。二色性色素の吸着前、吸着中、又は吸着後に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸することにより、その二色性色素を延伸方向に配向させることができる。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000の範囲内、好ましくは1,500〜5,000の範囲内である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、従来公知の適宜の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は、特に限定されないが、例えば10〜150μm 程度である。
偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程(染色処理工程)、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程(ホウ酸処理工程)、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程(水洗処理工程)を経て製造される。
また、偏光フィルムの製造に際し、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは一軸延伸されるが、この一軸延伸は、染色処理工程の前に行ってもよいし、染色処理工程中に行ってもよいし、染色処理工程の後で行ってもよい。一軸延伸を染色処理工程の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理工程の前に行ってもよいし、ホウ酸処理工程中に行ってもよい。もちろん、これら複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸は、周速の異なる離間したロール間を通すことにより行ってもよいし、熱ロールで挟む方式で行ってもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬することによって行われる。二色性色素としては、例えば、ヨウ素や二色性有機染料などが用いられる。二色性有機染料には、例えば、 C.I. DIRECT RED 39 などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料が包含される。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色に供される水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常 20〜1,800秒間である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部、好ましくは1×10-3〜1重量部であり、さらに好ましくは1×10-3〜1×10-2重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。二色性色素として二色性有機染料を用いる場合、染色に供される染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常 10〜1,800秒間である。
ホウ酸処理工程は、二色性色素により染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。上記した染色処理工程における二色性色素としてヨウ素を用いた場合、このホウ酸処理工程で用いる水溶液は、ホウ酸に加えてヨウ化カリウムを含有することが好ましい。この場合、ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。またホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60〜1,200 秒間、好ましくは150〜600秒間、さらに好ましくは200〜400秒間である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
続く水洗処理工程では、上記したホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、例えば水に浸漬することによって水洗する。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃であり、浸漬時間は、通常1〜120秒間である。水洗処理後は通常、乾燥処理が施され、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒータなどを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒間、好ましくは120〜600秒間である。
以上のようにして、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを作製することができる。この偏光フィルムの厚さは、5〜40μm 程度とすることができる。
[透明樹脂フィルム]
本発明における透明樹脂フィルムには、前記したように、偏光フィルム上に積層される第1の透明樹脂フィルム、第1の透明樹脂フィルム上に積層される第2の透明樹脂フィルム、及び偏光フィルムの第1の透明樹脂フィルムに貼合される面とは反対側の面に積層される第3の透明樹脂フィルムがある。ここで、第1の透明樹脂フィルム、第2の透明樹脂フィルム及び第3の透明樹脂フィルムは、すべて同じであっても、1種のみ異なっていても、すべて異なっていてもよい。透明樹脂フィルムの例としては、いずれの透明樹脂フィルムにも同じものを挙げることができるため、ここではまとめて説明する。以降の記載において、単に「透明樹脂フィルム」と記載する場合は、特に記載のない限り、第1〜第3の透明樹脂フィルムすべてに共通する内容とする。
本発明における透明樹脂フィルムとしては、当分野において保護フィルムの形成材料として広く用いられている適宜の材料で構成された樹脂フィルムを、特に制限なく用いることができる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、酢酸セルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、酢酸セルロース系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
上記の酢酸セルロース系樹脂フィルムは、セルロースの部分又は完全酢酸エステル化物からなるフィルムであって、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルムなどが挙げられる。
このような酢酸セルロース系樹脂フィルムを構成する酢酸セルロース系樹脂としては、適宜の市販品、例えば、富士フィルム(株)から販売されている“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”及び“フジタックTD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“KC2UA”、“KC8UX2M”及び“KC8UY”(以上、いずれも商品名)などの酢酸セルロース系樹脂製のフィルムを好適に用いることができる。
また、上記のシクロオレフィン系樹脂とは、例えばノルボルネン、多環ノルボルネン系モノマーのような、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂である(熱可塑性シクロオレフィン系樹脂とも呼ばれる)。このシクロオレフィン系樹脂は、上記のシクロオレフィンの開環重合体、又は2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であってもよく、シクロオレフィンと鎖状オレフィン、ビニル基などを有する芳香族化合物などとの付加重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも有効である。
シクロオレフィンと鎖状オレフィン、ビニル基を有する芳香族化合物との共重合体を用いて透明樹脂フィルムを構成する場合、鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなどが挙げられ、またビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレンなどが挙げられる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、50モル%以下(好ましくは15〜50モル%)であってもよい。特に、シクロオレフィンと鎖状オレフィンと、ビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体を用いて透明樹脂フィルムを構成する場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、上記のように比較的少ない量とすることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜 80モル%である。
シクロオレフィン系樹脂は、適宜の市販品、例えば、Ticona社から販売されている“Topas”、JSR(株)から販売されている“アートン”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア(ZEONOR)”及び“ゼオネックス(ZEONEX)”、三井化学(株)から販売されている“アペル”(以上、いずれも商品名)などを好適に用いることができる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、例えば、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”及び“SCA40”、(株)オプテスから販売されている“ゼオノアフィルム”(以上、いずれも商品名)などの予め製膜されたシクロオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を透明樹脂フィルムとして用いてもよい。
透明樹脂フィルムとして用いるシクロオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。この場合の延伸倍率は、通常、 1.1〜5倍、好ましくは 1.1〜3倍である。
本発明に用いられる透明樹脂フィルムは、単層で構成されていてもよいし、多層で構成されていてもよい。多層から構成されているフィルムは、例えば、射出成形の際に同時に樹脂を押し出すことにより生成するものであり、層と層の間には接着剤や粘着剤は存在しない。層を形成する樹脂は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1の透明樹脂フィルムは、その偏光フィルムに貼合される面と反対側の面に、液晶性化合物、その高分子量化合物などからなるコート層が形成されていてもよい。また、第2の透明樹脂フィルムは、第1の透明樹脂フィルムに貼合される面と反対側の面に、第3の透明樹脂フィルムは、偏光フィルムに貼合される面と反対側の面に、それぞれ防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理などの表面処理が施されたものであってもよい。
また、透明樹脂フィルムそのものが機能性を有してもよい。機能性を有する透明樹脂フィルムとしては、1方向以上に延伸され、位相差が発現した位相差フィルムや、光源からの出射光を透過偏光と反射偏光又は散乱偏光に分離し、反射偏光又は散乱偏光のバックライトからの再帰光を利用して出射効率を向上できる輝度向上フィルムが挙げられる。
本発明の偏光板に用いられる透明樹脂フィルムは、その厚さが薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向にある。また、厚すぎると、透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなる傾向にある。このような観点から、本発明の偏光板における第1の透明樹脂フィルムの厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは10〜50μmである。
本発明における複合偏光板の好ましい構成の例として、第1の透明樹脂フィルムがオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムであり、第2の透明樹脂フィルムが第1の透明樹脂フィルムに積層される側の面がメタクリル系樹脂層となっている位相差フィルムであり、第3の透明樹脂フィルムが酢酸セルロースからなる透明樹脂フィルムである構成を挙げることができる。本発明における複合偏光板は、第1の透明樹脂フィルム及び第2の透明樹脂フィルムが、前記した特許文献2に記載の構成であることもできる。このような偏光板は、同文献に記載のあるとおり、2枚の位相差フィルムが積層されていながら、局所的な色ムラが生じにくく、またIPSモード液晶セルに適用した場合、視野角特性に優れている。
[接着剤層及び粘着剤層]
本発明における接着剤層、すなわち第1の透明樹脂フィルム及び偏光フィルム間に存在する第1の接着剤層、第1の透明樹脂フィルム及び第2の透明樹脂フィルム間に存在する第2の接着剤層、並びに第3の透明樹脂フィルム及び偏光フィルム間に存在する第3の接着剤層は、それぞれ用いられる接着剤(接着剤組成物)の硬化物からなるものである。なお、本発明では、第1の透明樹脂フィルム及び第2の透明樹脂フィルムは、第2の接着剤層又は粘着剤層を介して積層されるが、この粘着剤層については接着剤層の説明の後に説明する。
(接着剤層)
まず、本発明において樹脂フィルムの積層に用いられる接着剤層について説明する。本発明において、第1の接着剤層、第2の接着剤層及び第3の接着剤層は、それぞれ第1の接着剤組成物、第2の接着剤組成物及び第3の接着剤組成物から形成される。これら接着剤組成物は、それぞれ独立して同じものでもよいし異なるものでもよいが、第1の接着剤層及び第3の接着剤層を形成する接着剤組成物は、同じものであることが好ましい。以降の記載において、単に「接着剤組成物」と記載する場合は、特に記載のない限り、第1〜第3の接着剤組成物すべてに共通する内容とする。
本発明における接着剤組成物は、特に限定はされないが、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物や、接着剤成分を水に溶解させたもの又は接着剤成分を水に分散させた水系の接着剤が挙げられる。ここで、「活性エネルギー線硬化性化合物」とは、活性エネルギー線の照射により硬化し得る化合物を意味する。本発明では、貼合後の乾燥工程が不要であることから、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。
活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性のものであってもよいし、ラジカル重合性のものであってもよい。カチオン重合性化合物の例としては、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に少なくとも1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物などを挙げることができる。また、ラジカル重合性化合物の例としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系化合物などを挙げることができる。なお、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基のいずれでもよいことを意味し、その他、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
この貼合に用いる活性エネルギー線硬化性化合物のうち、偏光フィルムとの貼合に用いる第1の接着剤層及び第3の接着剤層は、少なくともエポキシ化合物を含むことが好ましく、これにより偏光フィルムと第1の透明樹脂フィルム又は第3の透明樹脂フィルムとの間で良好な密着性を示すようになる。
エポキシ化合物は、耐候性や屈折率、カチオン重合性などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とすることが好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物としては、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などが例示できる。
脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルは、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF及びビスフェノールSのようなビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン及びポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。これら芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。このような脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルのなかでも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることができる。より具体的には、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはグリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
また、下式(I)で表される単官能エポキシ化合物も脂肪族エポキシ化合物として挙げられる。下式(I)において、R1 は、炭素数1〜15のアルキル基を表し、このアルキル基は直鎖状であってもよいし、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。このアルキル基は、比較的長鎖であるもの、例えば炭素数6以上であるのが好ましく、さらには炭素数6〜10の範囲にあることが好ましい。なかでも分岐したアルキル基であるのが好ましい。式(I)で表される単官能エポキシ化合物の典型的な例としては、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを挙げることができる。
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。ここで、「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下式(II)で示される構造における橋かけの酸素原子−O−を意味し、式中のnは2〜5の整数である。
この式(II)における (CH2)n 中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。また、脂環式環を形成する (CH2)n 中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
以上のようなエポキシ化合物のなかでも脂環式エポキシ化合物、すなわちエポキシ基の少なくとも1個が脂環式環に結合している化合物が好ましく、とりわけ、エポキシシクロヘキサン〔上記式(II)においてn=3のもの〕やエポキシシクロヘプタン〔上記式(II)においてn=4のもの〕を有するエポキシ化合物は、硬化物の弾性率が高く、偏光フィルムと透明樹脂フィルムとの間で良好な接着性を与えることから、より好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
硬化性樹脂組成物において、エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、硬化性樹脂組成物は、上記のエポキシ化合物に加え、オキセタン化合物を含有してもよい。オキセタン化合物を添加することにより、硬化性樹脂組成物の粘度を低くし、硬化速度を速めることができる。
オキセタン化合物は、分子内に少なくとも1個のオキセタン環(4員環エーテル)を有する化合物であって、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも東亞合成(株)から販売されている商品名で、“アロンオキセタン OXT-101”、“アロンオキセタン OXT-121”、“アロンオキセタン
OXT-211”、“アロンオキセタン OXT-221”、“アロンオキセタン OXT-212” などを挙げることができる。オキセタン化合物の配合量は特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性化合物全体を基準に、通常50重量%以下、好ましくは10〜40重量%である。
硬化性樹脂組成物が、エポキシ化合物やオキセタン化合物等のカチオン重合性化合物を含む場合、その硬化性樹脂組成物には通常、光カチオン重合開始剤が配合される。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での接着剤層の形成が可能となるため、透明樹脂フィルム又は偏光フィルムの耐熱性や膨張による歪を考慮する必要が減少し、密着性良く透明樹脂フィルム同士、又は偏光フィルムと透明樹脂フィルムを貼合できる。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、これを硬化性樹脂組成物に混合しても硬化性樹脂組成物は保存安定性や作業性に優れる。
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、いずれのタイプのものであってもよいが、具体例を挙げれば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体などがある。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
また、鉄−アレーン錯体としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらの光カチオン重合開始剤は市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、日本化薬(株)から販売されている“カヤラッド PCI-220”及び“カヤラッド PCI-620”、ダウ・ケミカル社から販売されている“UVI-6990”、ダイセル・サイテック(株)から販売されている“UVACURE 1590”、(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトマー SP-150”及び“アデカオプトマー SP-170”、日本曹達(株)から販売されている“CI-5102”、“CIT-1370”、“CIT-1682”、“CIP-1866S”、
“CIP-2048S”及び“CIP-2064S”、 みどり化学(株)から販売されている“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、“MPI-103”、“MPI-105”、“BBI-101”、
“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、“TPS-101”、“TPS-102”、“TPS-103”、
“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、“DTS-102”及び“DTS-103”、 ローディア社から販売されている“PI-2074”などを挙げることができる。
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度を与えるため、また透明樹脂フィルム同士、又は偏光フィルムと透明樹脂フィルムの間の良好な密着性を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物やオキセタン化合物を包含するカチオン重合性化合物の合計100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光カチオン重合開始剤の配合量が少ないと、硬化が不十分になり、機械的強度や透明樹脂フィルム同士、又は偏光フィルムと透明樹脂フィルムの間の接着性を低下させる傾向にある。一方、光カチオン重合開始剤の配合量が多すぎると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、得られる接着剤層の耐久性能が低下する可能性がある。
ラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーや、官能基を有する化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、(メタ)アクリレートモノマーが2種以上であってもよいし、(メタ)アクリレートオリゴマーが2種以上であってもよいし、もちろん(メタ)アクリレートモノマーの1種以上と(メタ)アクリレートオリゴマーの1種以上とを併用してもよい。
上記の(メタ)アクリレートモノマーには、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、及び分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーがある。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、カルボキシル基含有の(メタ)アクリレートモノマーを用いてもよい。カルボキシル基含有の単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、N−(メタ)アクリロイルオキシ−N′,N′−ジカルボキシメチル−p−フェニレンジアミン、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸などが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、N−置換(メタ)アクリルアミドを用いてもよい。N−置換(メタ)アクリルアミドは、N−位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドである。その置換基の典型的な例は、さらに置換されていてもよいアルキル基であるが、(メタ)アクリルアミドの窒素原子とともに環を形成していてもよく、この環は、炭素原子及び(メタ)アクリルアミドの窒素原子に加え、酸素原子を環構成員として有してもよい。さらに、その環を構成する炭素原子には、アルキルやオキソ(=O)のような置換基が結合していてもよい。N−置換(メタ)アクリルアミドは一般に、(メタ)アクリル酸又はその塩化物と1級又は2級アミンとの反応によって製造できる。
N−置換(メタ)アクリルアミドはとりわけ、下式(III )で示されるものであることが好ましい。下式(III )において、Q1は水素原子又はメチル基を表し、Q2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、 Q3は水酸基又はアミノ基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表すか、Q2とQ3が一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに酸素原子を環構成員として有してもよい5員環若しくは6員環を形成する。Q2 がアルキル基であるとき、及びQ3 が水酸基又はアミノ基を有してもよいアルキル基であるとき、それぞれのアルキル基は、炭素数3以上であれば直鎖でも分岐していてもよい。 Q3が水酸基を有するアルキル基である例として、ヒドロキシアルキル基がこれに該当する。Q3 がアミノ基を有するアルキル基である例として、アミノアルキル基、N−アルキルアミノアルキル基、及びN,N−ジアルキルアミノアルキル基がこれに該当する。Q2とQ3が一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに、酸素原子を環構成員として有してもよい5員環又は6員環を形成するとき、その5員環又は6員環の例を、N−位でカルボニル(C=O)につながる基の形で掲げると、1−ピロリジニル(C4H8N−)、2−オキサゾリジノン−3−イル(C2H4OC(=O)N−)、ピペリジノ(C5H10N−)、 モルホリノ(C2H4OC2H4N−)などがある。
式(III )に相当し、Q2が水素原子であり、Q3がアルキル基であるN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミドなどがある。同じくQ2及びQ3がともにアルキル基であるN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどがある。
同じくQ2が水素原子であり、Q3が水酸基を有するアルキル基であるN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミドなどがある。同じく、Q2 が水素原子であり、Q3 がアミノ基を有するアルキル基であるN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミド、N−[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N−[1−メチル−1−(N,N−ジメチルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミドなどがある。
また、式(III )におけるQ2とQ3が一緒になって、それらが結合する窒素原子とともに、5員環又は6員環を形成するN−置換(メタ)アクリルアミドの具体的な例として、N−アクリロイルピロリジン、3−アクリロイル−2−オキサゾリジノン、4−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジンなどがある。
上記したN−置換(メタ)アクリルアミドのなかでも、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド及びN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドのようなN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、並びにN,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミドのようなN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド又はN,N−ジメチルアクリルアミドが特に好ましい。
その他、N−ドデシル(メタ)アクリルアミドのような長鎖アルキルを有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドや、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(プロポキシメチル)アクリルアミド及びN−(ブトキシメチル)アクリルアミドのようなN−(アルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミドも、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化性成分を構成するN−置換(メタ)アクリルアミドとして用いることができる。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート類、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート類などが代表的である。
2官能(メタ)アクリレートモノマーのより具体的な例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどがある。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのような3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものであり、その他、3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
一方、(メタ)アクリレートオリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーなどがある。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内にウレタン結合(−NHCOO−)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物などであり得る。
ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなど)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート等のジ−又はトリ−イソシアネート、及び上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするために用いられるポリオール類としては、芳香族、脂肪族及び脂環式のポリオールのほか、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどを使用することができる。脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、上記したポリオール類と多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物でありうるものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸などがある。
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールのほか、上記したポリオール類又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールなどであり得る。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物でありうるものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などがある。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
硬化性樹脂組成物が上記の如き(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤が配合されることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射により、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物の重合を開始できるものであればよく、従来公知のものを用いることができる。光ラジカル重合開始剤の具体例を挙げれば、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのようなアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、及び4,4′−ジアミノベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、及びベンゾインエチルエーテルのようなベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
光ラジカル重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光ラジカル重合開始剤の配合量が少ないと、硬化が不十分になり、機械的強度や透明樹脂フィルム同士、又は偏光フィルムと透明樹脂フィルムとの接着性が低下する傾向にある。また、光ラジカル重合開始剤の配合量が多すぎると、硬化性樹脂組成物中の活性エネルギー線硬化性化合物(エポキシ化合物を含むカチオン重合性の硬化性化合物及び(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物)が相対的に少なくなり、得られる接着剤層の耐久性能が低下する可能性がある。
また、硬化性樹脂組成物は、上記のエポキシ化合物、あるいはエポキシ化合物及びオキセタン化合物と、上記ラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を併用してもよい。これらを併用することにより、接着剤層の硬度や機械的強度を高める効果が期待でき、さらには硬化性樹脂組成物の粘度や硬化速度などの調整がより一層容易に行えるようになる。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じてさらに光増感剤を含有することができる。光増感剤を配合することにより、カチオン重合及び/又はラジカル重合の反応性が高まり、接着剤層の機械的強度や透明樹脂フィルム同士、又は偏光フィルムと透明樹脂フィルムとの間の接着性を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。光増感剤のより具体的な例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン及び2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン及び2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン及びN−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物などがある。これらの光増感剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。光増感剤は、活性エネルギー線硬化性化合物全体を100重量部として、 0.1〜20重量部の割合で配合するのが好ましい。
硬化性樹脂組成物には、高分子に通常使用されている公知の高分子添加剤を添加することもできる。例えば、フェノール系やアミン系のような一次酸化防止剤、イオウ系の二次酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾエート系のような紫外線吸収剤などが挙げられる。
さらに硬化性樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含んでもよい。溶剤は、硬化性樹脂組成物を構成する成分の溶解性を考慮して適宜選択される。一般的な溶剤の例を挙げると、n−ヘキサンやシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びn−ブタノールのようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ及びブチルセロソルブのようなセロソルブ類;塩化メチレンやクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類などがある。溶剤の配合割合は、成膜性などの加工上の目的による粘度調整などの観点から適宜決定される。
また、接着剤成分を水に溶解したもの又は接着剤成分を水に分散させた水系の接着剤としては、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を用いた接着剤組成物が挙げられる。
水系の接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、そのポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールなどの、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。接着剤成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合、接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液として調製されることが多い。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部である。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、架橋剤を含有させることができる。架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して反応性を有する官能基を有する化合物であればよく、従来からポリビニルアルコール系接着剤において用いられているものを特に制限なく使用できる。架橋剤となりうる化合物を官能基別に掲げると、イソシアナト基(−NCO)を分子内に少なくとも2個有するイソシアネート化合物;エポキシ基(橋かけの−O−)を分子内に少なくとも2個有するエポキシ化合物;モノ−又はジ−アルデヒド類;有機チタン化合物;マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、及びアルミニウムの如き二価又は三価金属の無機塩;グリオキシル酸の金属塩;メチロールメラミンなどがある。
水系の接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤組成物の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。このようなアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂それ自体は公知である。例えば特開平7-97504 号公報には、フェノール系樹脂を水性媒体中に分散させるための高分子分散剤の例としてポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が記載されている。また、特開2005-070140号公報及び特開2005-181817号公報には、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにシクロオレフィン系樹脂フィルムを接合する形態が示されている。
本発明において、各接着剤組成物による各透明樹脂フィルムの溶解性は、フィルム間の密着力の観点から高い方が好ましいが、第1の透明樹脂フィルム及び偏光フィルムの接着は、複数枚積層されたフィルムと偏光フィルムを十分に密着させる必要があるため、特に第1の接着剤層に用いられる第1の接着剤組成物による第1の透明樹脂フィルムの溶解性が高いことが好ましい。
上記の第1の接着剤組成物による透明樹脂フィルムの溶解性は、第1の透明樹脂フィルムに張力をかけた状態で第1の接着剤組成物を塗工してから、第1の透明樹脂フィルムが切断されるまでの時間で評価する。具体的には、第1の透明樹脂フィルムを、製造時における第1の透明樹脂フィルムの搬送方向と垂直な方向(TD)に50mm幅でカットし、冶具で搬送方向(MD)の端部を挟み、18Nの張力をかける。なお、このときのMD方向の長さは任意とする。その後、接着剤塗工面に第1の接着剤組成物を塗工し、第1の透明樹脂フィルムが切断されるまでの時間を計測する。この時間が短いほど、第1の接着剤組成物による第1の透明樹脂フィルムの溶解性が高く、密着力も高くなる。本発明では、第1の接着剤組成物として、第1の透明樹脂フィルムと第1の接着剤組成物とが接触してから第1の透明樹脂フィルムが切断されるまでの時間が、120秒以下であるものを使用するが、この時間は、60秒以下であることがより好ましく、30秒以下であることがさらに好ましい。
本発明において、乾燥後又は硬化後の接着剤層の厚さは、通常0.01〜5μm程度であるが、水系接着剤を用いた場合は1μm 以下とすることができる。一方、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性樹脂組成物からなる接着剤を用いた場合でも、3μm 以下とするのが好ましい。接着剤層が薄すぎると、接着が不十分になるおそれがあり、一方で接着剤層が厚すぎると、偏光板の外観不良を生じる可能性がある。
(粘着剤層)
次に、第1の透明樹脂フィルム及び第2の透明樹脂フィルムの積層に使用する粘着剤層について説明する。第1の透明樹脂フィルムと第2の透明樹脂フィルムとの貼合に粘着剤を用いる場合、この粘着剤には、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとしたものを用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、光学的な透明性や接着性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、さらに耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれなどの剥離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基やブチル基などの炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が 100,000以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチルのような有機溶剤に上記したベースポリマーをはじめとする粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、プロテクトフィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを透明樹脂フィルム上に移着することで粘着剤層を形成する方式などにより、行うことができる。粘着剤には上記したベースポリマーのほか、架橋剤を配合するのが一般的である。さらに、液晶セルへの貼合を意図する場合は、シランカップリング剤を配合することも好ましい。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1〜50μm の範囲である。
粘着剤には必要に応じて、ガラス繊維、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉等の無機粉末などからなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〈活性エネルギー線硬化性化合物〉
“セロキサイド 2021P”:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学(株)から入手。
“EX-214L” :1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)から入手。
“EX-121”:2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)から入手。
“EX-211”:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)から入手。
“HEAA”:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、(株)興人から入手。
〈光カチオン重合開始剤〉
“アデカオプトマー SP-150”:4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤、プロピレンカーボネート溶液の形で(株)ADEKAから入手。
“イルガキュア 907”:2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、BASFジャパン(株)から入手。
〈その他の成分〉
“SH710”:シリコーン系レベリング剤、東レ・ダウコーニング(株)から入手。
[製造例1]接着剤組成物A〜Cの調製
以下の各成分を混合して、第1及び第3の接着剤組成物に該当する接着剤組成物A、比較用の接着剤組成物B、及び第2の接着剤組成物に該当する接着剤組成物Cをそれぞれ調製した。なお、光カチオン重合開始剤“アデカオプトマー SP-150”は、プロピレンカーボネート溶液のものを使用しているが、以下ではその有効成分量で表示している。
〈接着剤組成物A〉
“セロキサイド 2021P” 60部
“EX-214L” 30部
“EX-121” 10部
“アデカオプトマー SP-150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈接着剤組成物B〉
“セロキサイド 2021P” 85部
“EX-211” 15部
“アデカオプトマー SP-150” 2.25部
“SH710” 0.2部
〈接着剤組成物C〉
“HEAA” 80部
メチルアクリレート 20部
“イルガキュア 907” 3部
“SH710” 0.2部
上記の接着剤組成物A及びBについて、透明樹脂フィルムの溶解性を確認した。透明樹脂フィルムとしては、厚さ15μm の非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム〔JSR(株)の商品名“アートン”〕を用い、これをフィルムの搬送方向が長辺となるように200mm×50mmの断片に裁断し、搬送方向の端部を冶具で固定して18Nの張力をかけた。その表面に製造例1で作製した接着剤組成物Aを、硬化後の厚さが2μm になるように塗工したところ、4秒でフィルムが切断した。一方、接着剤組成物Bを同様に塗工したところ、180秒以上経過してもフィルムは切断しなかった。
[製造例2]メタクリル系樹脂層を有する位相差フィルムの作製
ノヴァケミカルジャパン(株)から“ダイラーク D332 ”という商品名で販売されており、ガラス転移温度が131℃のスチレン−無水マレイン酸系共重合樹脂を用いた。また住友化学(株)から販売されている“テクノロイ S001 ”に使用され、平均粒径が200μm のアクリル系ゴム粒子を約20%含むガラス転移温度が105℃のメタクリル系樹脂を用いた。そして、スチレン−無水マレイン酸系共重合樹脂からなる層の両面に、メタクリル系樹脂からなる層が形成されるように3層共押出を行って、スチレン−無水マレイン酸系共重合樹脂からなる層の厚さが22μm 、その両面に形成されるメタクリル系樹脂層の厚さがそれぞれ14μm となる3層構造の透明樹脂フィルムを作製した。この3層構造の透明樹脂フィルムを延伸して、スチレン−無水マレイン酸系共重合樹脂からなる層の厚さが11μm 、メタクリル系樹脂層の厚さがそれぞれ7μm、合計の厚さが25μmであるメタクリル系樹脂層を有する位相差フィルムを作製し、これを第2の透明樹脂フィルムとして用いた。
上記の接着剤組成物及び位相差フィルムを用い、複合偏光板を製造した実施例及び比較例を示す。なお、第1の透明樹脂フィルムとして厚さ15μm の非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム〔JSR(株)の商品名“アートン”〕を、第3の透明樹脂フィルムとして、厚さ 25μmのトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)の商品名“KC2UA”〕をそれぞれ用いた。
[実施例1]
(第一の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体の製造)
製造例2で作製したメタクリル系樹脂層を有する位相差フィルムの片面に、製造例1で作製した接着剤組成物Cを塗工装置〔富士機械工業(株)の製品名“マイクロチャンバードクター”〕を用いて塗工した。ライン速度を20m/分とし、グラビアロールをフィルムの搬送方向と逆方向に回転させ、グラビアロールの速度20m/分とすることで、硬化後の接着剤層の厚さを約1μm となるように塗工した。次に、上記の非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムに、接着剤組成物Cを介して上記のメタクリル系樹脂層を有する位相差フィルムをニップロールによって重ね合わせた。
次に、(株)ジーエス・ユアサコーポレーション製の紫外線照射装置に備えられた紫外線ランプであるEHAN1700NAL高圧水銀ランプ2灯から照射される紫外線中を、フィルムの長手方向に400Nの張力をかけて搬送し、接着剤組成物Cを硬化させ、積層体を得た。紫外線照射は、積層体の非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム側から、紫外線の積算光量が200mJ/cm2 となるようにした。紫外線の積算光量は波長域280〜320nmのUVB領域での照射を基に計測した。
(複合偏光板の製造)
次に、偏光フィルムの片面に上記の積層体を、他方の面に上記した厚さ25μm のトリアセチルセルロースフィルムを、それぞれ接着剤組成物Aを介して積層して複合偏光板を製造した。まず、上記のトリアセチルセルロースフィルムの片面と、積層体の非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムの面とに、製造例1で作製した接着剤組成物Aを塗工装置〔富士機械工業(株)の製品名“マイクロチャンバードクター”〕を用いて塗工した。このとき、積層体のライン速度を15m/分とし、グラビアロールを積層材の搬送方向と逆方向に回転させ、グラビアロールの速度30m/分とすることで、硬化後の接着剤層の厚さが約2μm となるように塗工した。次いで、これらフィルムをその接着剤組成物Aを介し、厚さ12μm のヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール系フィルムに、ニップロールを用いて貼り合わせた。このとき、積層体に破断は見られなかった。
この積層体に対し、(株)ジーエス・ユアサコーポレーション製の紫外線照射装置に備えられた紫外線ランプであるEHAN1700NAL高圧水銀ランプ2灯から照射される紫外線中を、フィルムの長手方向に400Nの張力をかけて搬送し、接着剤組成物Aを硬化させた。紫外線照射は、透明樹脂フィルムの積層体側から、紫外線の積算光量が250mJ/cm2 となるようにした。紫外線の積算光量は、波長域280〜320nmのUVB領域での照射を基に計測した。このようにして、トリアセチルセルロースフィルム/偏光フィルム/非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム/メタクリル系樹脂層を有する位相差フィルムからなる複合偏光板を製造した。
〈接着力の評価〉
上で作製した複合偏光板のメタクリル系樹脂層を有する位相差フィルム表面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面にアクリル系粘着剤シートを貼合した。得られた粘着剤付き複合偏光板を幅25mm、長さ約200mmの試験片に裁断し、その粘着剤面をソーダガラスに貼合した後、オートクレーブを用いて圧力5kgf/cm2、温度50℃で20分間の加圧処理を行い、さらに温度23℃、相対湿度60%の雰囲気下で1日静置した。この状態で、万能引張り試験機〔(株)島津製作所製の“AG-1”〕を用い、試験片の長さ方向の一端(幅25mmの一辺)のトリアセチルセルロースフィルム及び偏光フィルムをつかみ、温度23℃、相対湿度60%の雰囲気下、クロスヘッドスピード(つかみ移動速度)200mm/分で、90°剥離試験(JIS K 6854-1:1999 「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第1部:90度はく離」に準拠する)を行い、非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムと偏光フィルムとの間の接着力を評価したところ、 1.2N/25mmであった。
[実施例2]
非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム及びメタクリル系樹脂層を有する位相差フィルムの貼合に、厚さ15μm のアクリル系粘着剤を使用した以外は、実施例1と同様に行った。この工程において、フィルムの切断はなかった。また、非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムと偏光フィルムとの間の接着力を評価したところ、1.1N/25mmであった。
[比較例1]
偏光板の製造を、第一の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体を製造せず、偏光フィルムの片面にトリアセチルセルロースフィルムを、他方の面に非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムを、それぞれ接着剤組成物Aを介して貼合する方法で行った。トリアセチルセルロースフィルム及び非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムのそれぞれの貼合面に、製造例1で作製した接着剤組成物Aを、塗工装置〔富士機械工業(株)の製品名“マイクロチャンバードクター”〕を用いて塗工した。このとき、積層体のライン速度を15m/分とし、グラビアロールを積層材の搬送方向と逆方向に回転させ、グラビアロールの速度30m/分とすることで、硬化後の接着剤層の厚さが約2μm となるように塗工した。次いで、これらフィルムをその接着剤組成物Aを介し、厚さ12μm のヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール系フィルムに、ニップロールを用いて貼り合わせようとしたが、貼り合わせる前に非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムに切断が生じ、偏光板を製造することができなかった。このため、非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムと偏光フィルムとの間の接着力の測定は実施しなかった。
[比較例2]
上記のトリアセチルセルロースフィルム及び非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムのそれぞれ片面に、製造例1で作製した接着剤組成物Bを、塗工装置〔富士機械工業(株)の製品名“マイクロチャンバードクター”〕を用いて塗工した。積層体のライン速度を15m/分とし、グラビアロールを積層材の搬送方向と逆方向に回転させ、グラビアロールの速度30m/分とすることで、硬化後の接着剤層の厚さが約2μm となるように塗工した。次いで、これらフィルムをその接着剤組成物Bを介し、厚さ12μm のヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール系フィルムに、ニップロールを用いて貼り合わせた。ここで非晶性ポリオレフィンの切断は見られなかったが、貼合時に非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムの一部にシワが発生した。
その後、非晶質ポリオレフィン樹脂フィルムの表面にアクリル系粘着剤層、製造例2で作製したメタクリル系樹脂層を有する位相差フィルムを順に貼合し、複合偏光板を得た。得られた偏光板の非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムと偏光フィルムとの間の接着力を評価したところ、 0.2N/25mmであった。
実施例と比較例1より、あらかじめ第1の透明樹脂フィルムと第2の透明樹脂フィルムを積層した積層体を用いることで、フィルムの溶解性が高い接着剤組成物を用いても、搬送中にフィルムに切断が生じなかった。一方、比較例2より、フィルムに対する溶解性の低い接着剤組成物を用いると、搬送中にフィルムの切断はないものの、接着力が低下することがわかる。また、比較例2では、貼合時にシワが発生しているのに対し、実施例1及び2ではシワが発生していないことから、第1の透明樹脂フィルム/第2の透明樹脂フィルムの積層体を用いることで、単層のフィルムを使用する場合に比べてハンドリング性が向上し、シワの発生が抑えられたと考えられる。