JP2015203473A - ブレーキピストン、ディスクブレーキ、ブレーキピストンの製造方法および熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

ブレーキピストン、ディスクブレーキ、ブレーキピストンの製造方法および熱硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量性と信頼性との性能バランスに優れるブレーキピストンを提供すること。【解決手段】本発明のブレーキピストン100はディスクブレーキに用いられるものであり、樹脂部材101からなるピストン本体部110と、金属部材102と、を備える。ピストン本体部110は開口部120を有している。金属部材102は、ピストン本体部110の開口部120の側端面125を覆うように設けられている。また、ピストン本体部110における開口部120の側端面125と金属部材102とが接合されており、金属部材102は少なくともピストン本体部110と接合する接合面103に微細な凹凸からなる粗化層104を有している。そして、粗化層104の上記凹凸を構成する凹部の内部に樹脂部材101の一部が存在することにより、ピストン本体部110における開口部120の側端面125と金属部材102とが接合されている。【選択図】図1

Description

本発明は、ブレーキピストン、ディスクブレーキ、ブレーキピストンの製造方法および熱硬化性樹脂組成物に関する。
ディスクブレーキ用のブレーキピストンにおいては、軽量化を目的として、樹脂製ブレーキピストンが検討されている。
樹脂製ブレーキピストンに関する従来技術として、例えば、以下のものがある。
特許文献1(特開平8−93916号公報)には、ディスクブレーキに用いられる樹脂製ピストンであって、少なくとも上記樹脂製ピストンのブレーキ液圧の受圧面側の角部に金属補強部材を形成することを特徴とする樹脂製ピストンが記載されている。
特許文献2(特開2011−148158号公報)には、カップ状の合成樹脂製ピストン本体の開口端部に、該開口端部の外周面、内周面及び開口端面を覆う金属キャップが一体に結合されるピストンが記載されている。
特開平8−93916号公報 特開2011−148158号公報
しかし、本発明者の検討によれば、従来の樹脂製ブレーキピストンは、熱害によりピストン表面が酸化劣化し、機械的強度が徐々に低下してしまうことが明らかになった。従来の樹脂製ブレーキピストンは軽量である点で優れていたが、信頼性の点でまだまだ改善の余地があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量性と信頼性との性能バランスに優れるブレーキピストンを提供するものである。
本発明によれば、
ディスクブレーキに用いられるブレーキピストンであって、
開口部を有し、かつ、樹脂部材からなるピストン本体部と、
上記ピストン本体部の上記開口部の側端面を覆うように設けられた金属部材と、を備え、
上記ピストン本体部における上記開口部の側端面と上記金属部材とが接合されており、
上記金属部材は少なくとも上記ピストン本体部と接合する接合面に微細な凹凸からなる粗化層を有しており、
上記粗化層の上記凹凸を構成する凹部の内部に上記樹脂部材の一部が存在することにより、上記ピストン本体部における上記開口部の側端面と上記金属部材とが接合されているブレーキピストンが提供される。
さらに、本発明によれば、
上記ブレーキピストンを備えるディスクブレーキが提供される。
さらに、本発明によれば、
上記ブレーキピストンを製造するための製造方法であって、
金属部材および金型を準備する工程と、
上記金型の成形空間内に上記金属部材を配置する工程と、
熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物で上記成形空間内を充填する工程と、
上記熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一部が上記金属部材に接触した状態で上記熱硬化性樹脂組成物を硬化することにより、上記熱硬化性樹脂組成物からなる上記樹脂部材と上記金属部材とを接合させてブレーキピストンを得る工程と、
を含む、ブレーキピストンの製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、
上記ブレーキピストンを構成する上記樹脂部材を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、
熱硬化性樹脂と、充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、軽量性と信頼性との性能バランスに優れるブレーキピストンを提供できる。
本発明に係る実施形態のブレーキピストンの構造の一例を示す断面図である。 本発明に係る実施形態の金属部材表面の粗化層を構成する凹部の断面形状の例を説明するための模式図である。 本発明に係る実施形態のディスクブレーキの構造の一例を示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、数値範囲の「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
[ブレーキピストン]
はじめに、本実施形態に係るブレーキピストンについて説明する。
図1は、本発明に係る実施形態のブレーキピストン100の構造の一例を示す断面図である。図2は、本発明に係る実施形態の金属部材102表面の粗化層104を構成する凹部の断面形状の例を説明するための模式図である。
本実施形態に係るブレーキピストン100はディスクブレーキに用いられるものであり、樹脂部材101からなるピストン本体部110と、金属部材102と、を備える。ピストン本体部110は開口部120を有している。金属部材102は、ピストン本体部110の開口部120の側端面125を覆うように設けられている。また、ピストン本体部110における開口部120の側端面125と金属部材102とが接合されており、金属部材102は少なくともピストン本体部110と接合する接合面103に微細な凹凸からなる粗化層104を有している。そして、粗化層104の上記凹凸を構成する凹部201の内部に樹脂部材101の一部が存在することにより、ピストン本体部110における開口部120の側端面125と金属部材102とが接合されている。
本実施形態に係るブレーキピストン100は、例えば、図3に示すディスクブレーキ300に用いられるものである。図3は、本発明に係る実施形態のディスクブレーキ300の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係るディスクブレーキ300は、ディスクロータ301と、ブレーキパッド302と、油圧シリンダ装置303と、キャリパー304と、ブレーキピストン100と、シール305とを備える。ディスクブレーキ300は、例えば、車両に搭載されるものである。
ディスクロータ301は回転軸(図示しない)に連結している。ディスクロータ301の両側には、ディスクロータ301の両側から挟んで作用反作用の働きをさせて、ディスクロータ301に摩擦力を及ぼすためのブレーキパッド302が設けられている。
また、キャリパー304はブレーキパッド302を押圧駆動するための油圧シリンダ装置303を組み込んだ構造を有している。油圧シリンダ装置303には、本実施形態に係るブレーキピストン100が組み込まれている。
なお、ブレーキピストン100と油圧シリンダ装置303との間にはシール305が設けられている。
次に、ディスクブレーキ300の作動について説明する。油圧シリンダ装置303にブレーキ液が導入されると、油圧シリンダ装置303内のブレーキ液圧が高くなり、これによってブレーキピストン100はブレーキパッド302を押圧する。これにより、ブレーキパッド302がディスクロータ301を押圧して回転軸を制動するようになっている。
本実施形態に係るブレーキピストン100の形状は、通常、円筒状又は円柱状である。
また、本実施形態に係るブレーキピストン100において、金属部材102がブレーキパッド302に対向する位置に設けられている。すなわち、本実施形態に係るブレーキピストン100において、金属部材102はブレーキパッド302を押圧する面に設けられている。これにより、ブレーキパッド302側からの熱害により、樹脂部材101からなるピストン本体部110の表面が酸化劣化し、機械的強度が徐々に低下してしまうことを抑制することができる。
ブレーキピストン100は、樹脂部材101の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αと、金属部材102の25℃から樹脂部材101の上記ガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αとの差(α−α)の絶対値が、好ましくは10ppm/℃以下であり、より好ましくは5ppm/℃以下である。上記線膨張係数の差が上記上限値以下であれば、ブレーキピストン100が高温下に晒された際に発生する、線膨張の差による熱応力をより一層抑制することができる。すなわち、上記線膨張係数の差が上記上限値以下であれば、ブレーキピストン100の高温での寸法安定性をより一層向上させることができる。
なお、本実施形態において、線膨張係数に異方性がある場合は、それらの平均値を表す。例えば、樹脂部材101がシート状の場合、流動方向(MD)の線膨張係数と、それと垂直方向(TD)の線膨張係数とが異なる場合、それらの平均値が樹脂部材101の線膨張係数αとなる。
ブレーキピストン100は、特に限定されないが、ピストン本体部110における開口部120の側端面125と金属部材102とが接着剤を介在することなく接合されていることが好ましい。樹脂部材101と金属部材102とは、接着剤を介在しなくても優れた接合強度を有する。そのため、ブレーキピストン100の製造工程を簡略化することができる。
ブレーキピストン100は、粗化層104の上記凹凸を構成する凹部201の内部に、後述する充填材(B)の一部が存在していることが好ましい。これにより、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の機械的強度をより一層向上させることができる。
凹部201の内部に存在する充填材(B)の電子顕微鏡写真の画像解析による平均長径が、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上4.0μm以下である。これにより、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の機械的強度をより一層向上させることができる。
また、凹部201の内部に存在する充填材(B)の平均アスペクト比が、好ましくは1以上50以下であり、より好ましくは1以上40以下である。
凹部201の内部に存在する充填材(B)の平均長径および平均アスペクト比は、以下のようにSEM写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、粗化層104の断面を撮影する。その観察像から、凹部201の内部に存在する充填材(B)を任意に50個選択し、それらの長径(繊維状充填材の場合は繊維長、板状充填材の場合は平面方向の長径寸法)および短径(繊維状充填材の場合は繊維径、板状充填材の場合は厚み方向の寸法)をそれぞれ測定する。長径の全てを積算して個数で除したものを平均長径とする。同様に、短径の全てを積算して個数で除したものを平均短径とする。そして、平均短径に対する平均長径を平均アスペクト比とする。
また、凹部201の内部に存在する充填材(B)はワラストナイト、カオリンクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、ホウ酸アルミニウムウイスカー、およびチタン酸カリウム繊維からなる群から選ばれる一種または二種以上であることが好ましい。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態に係るブレーキピストン100は、ブレーキパッド302と対向する位置に金属部材102が設けられている。これにより、ブレーキパッド302側からの熱害により、樹脂部材101からなるピストン本体部110の表面が酸化劣化し、機械的強度が徐々に低下してしまうことを抑制することができる。
さらに、本実施形態に係るブレーキピストン100は、粗化層104の上記凹凸を構成する凹部201の内部に樹脂部材101の一部が存在することにより、ピストン本体部110における開口部120の側端面125と金属部材102とが接合されている。これにより、高温下に長時間曝されても、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度を維持することができる。その結果、ブレーキパッド302側からの熱害により、樹脂部材101からなるピストン本体部110の表面が酸化劣化し、機械的強度が徐々に低下してしまうことをより一層抑制することができる。
また、本実施形態に係るブレーキピストン100は、ピストン本体部110が樹脂部材101からなるため、必要な強度を保ちつつも、同種の金属のみからなるブレーキピストンに比べて軽量にできる。よって、例えば、車両に搭載したとき省エネルギーの車両を実現できる。
以上から、本実施形態によれば、軽量性と信頼性との性能バランスに優れるブレーキピストン100を提供することができる。
<樹脂部材>
以下、本実施形態に係る樹脂部材101について説明する。
樹脂部材101は、例えば、熱硬化性樹脂(A)と充填材(B)とを含む熱硬化性樹脂組成物(P)を硬化してなる。
熱硬化性樹脂(A)としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂などが用いられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、耐熱性、加工性、機械的特性、電気特性、接着性および耐摩耗性に優れるフェノール樹脂が好適に用いられる。
熱硬化性樹脂(A)の含有量は、樹脂部材101の全体を100質量%としたとき、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで溶融した油溶融レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂;アリールアルキレン型フェノール樹脂などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも入手容易性、安価およびロール混練による作業性が良好などの理由からノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
上記フェノール樹脂において、ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合は、通常、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンは、特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、10〜25質量部使用することが好ましく、13〜20重量部使用することがより好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの使用量が上記下限値以上であると、成形時の硬化時間を短縮することができる。また、ヘキサメチレンテトラミンの使用量が上記上限値以下であると、得られるブレーキピストン100の外観を向上させることができる。
熱硬化性樹脂組成物(P)は、樹脂部材101の機械的強度を向上させる観点から、充填材(B)を含むことが好ましい。ただし、本実施形態では、充填材(B)から後述するエラストマー(D)は除かれる。
充填材(B)の含有量は、樹脂部材101の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上80質量%以下である。充填材(B)の含有量を上記範囲内とすることにより、熱硬化性樹脂組成物(P)の作業性を向上させつつ、得られる樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。これにより、樹脂部材101と金属部材102との接合強度により一層優れたブレーキピストン100を得ることができる。また、充填材(B)の種類や含有量を調整することにより、得られる樹脂部材101の線膨張係数αの値等を調整することができる。
充填材(B)としては、例えば、繊維状充填材、粒状充填材、板状充填材などが挙げられる。ここで、繊維状充填材はその形状が繊維状である充填材である。板状充填材はその形状が板状である充填材である。粒状充填材は、不定形状を含む繊維状・板状以外の形状の充填材である。
上記繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、金属繊維、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、ロックウール、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウム繊維、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、セラミック繊維などの繊維状無機充填材;アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの繊維状有機充填材;が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
また、上記板状充填材、粒状充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、上記繊維状充填材の粉砕物などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
充填材(B)は、充填材(B)の全体を100質量%としたとき、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径が5μmを超える充填材(B1)を1質量%以上100質量%以下含むことが好ましく、2質量%以上98質量%以下含むことがより好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物(P)の作業性を向上させつつ、得られる樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。充填材(B1)の平均粒子径の上限は特に限定されないが、例えば、100μm以下である。
充填材(B1)としては、平均長径が5μm以上50mm以下で、平均アスペクト比が1以上1000以下である繊維状充填材または板状充填材を含むことがより好ましい。
充填材(B1)の平均長径および平均アスペクト比は、例えば、以下のようにSEM写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、複数の繊維状充填材または板状充填材を撮影する。その観察像から、繊維状充填材または板状充填材を任意に50個選択し、それらの長径(繊維状充填材の場合は繊維長、板状充填材の場合は平面方向の長径寸法)および短径(繊維状充填材の場合は繊維径、板状充填材の場合は厚み方向の寸法)をそれぞれ測定する。長径の全てを積算して個数で除したものを平均長径とする。同様に、短径の全てを積算して個数で除したものを平均短径とする。そして、平均短径に対する平均長径を平均アスペクト比とする。
充填材(B1)としてはワラストナイト、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、炭酸カルシウムなどから選択される1種または2種以上が好ましい。このような充填材(B1)を用いると、樹脂部材101の機械的強度を特に向上させることができる。
また、充填材(B)は、充填材(B)の全体を100質量%としたとき、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径が0.1μm以上5μm以下である充填材(B2)を0質量%以上99質量%以下含むことが好ましく、2質量%以上98質量%以下含むことがより好ましい。これにより、凹部201の内部に充填材(B)を十分に存在させることができる。その結果、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の機械的強度をより一層向上させることができる。
充填材(B2)としては、平均長径が好ましくは0.1μm以上100μm以下、より好ましくは0.2μm以上50μm以下であり、平均アスペクト比が好ましくは1以上50以下、より好ましくは1以上40以下である繊維状充填材または板状充填材を含むことがより好ましい。
充填材(B2)の平均長径および平均アスペクト比は、例えば、以下のようにSEM写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、複数の繊維状充填材または板状充填材を撮影する。その観察像から、繊維状充填材または板状充填材を任意に50個選択し、それらの長径(繊維状充填材の場合は繊維長、板状充填材の場合は平面方向の長径寸法)および短径(繊維状充填材の場合は繊維径、板状充填材の場合は厚み方向の寸法)をそれぞれ測定する。長径の全てを積算して個数で除したものを平均長径とする。同様に、短径の全てを積算して個数で除したものを平均短径とする。そして、平均短径に対する平均長径を平均アスペクト比とする。
このような充填材(B2)としては、ワラストナイト、カオリンクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、ホウ酸アルミニウムウイスカー、およびチタン酸カリウム繊維から選択される1種または2種以上が好ましい。
また、充填材(B)は、後述するシランカップリング剤(C)などのカップリング剤による表面処理が行われていてもよい。
熱硬化性樹脂組成物(P)は、シランカップリング剤(C)をさらに含んでもよい。シランカップリング剤(C)を含むことにより、樹脂部材101と金属部材102との密着性を向上させることができる。また、シランカップリング剤(C)を含むことにより、熱硬化性樹脂(A)と充填材(B)との親和性が向上し、その結果、樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。
シランカップリング剤(C)の含有量は、充填材(B)の比表面積に依存するので特に限定されないが、充填材(B)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上4.0質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.0質量部以下である。シランカップリング剤(C)の含有量が上記範囲内であると、充填材(B)を十分に被覆しつつ、樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。
シランカップリング剤(C)としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物;γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物;γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物(P)の製造方法は特に限定されず、一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。まず、熱硬化性樹脂(A)、必要に応じて充填材(B)、シランカップリング剤(C)、エラストマー(D)、硬化剤、硬化助剤、離型剤、顔料、難燃剤、耐候剤、酸化防止剤、可塑剤、潤滑剤、摺動剤、発泡剤などを配合して均一に混合する。次いで、得られた混合物をロール、コニーダ、二軸押出し機などの混練装置単独で、またはロールと他の混練装置との組合せで加熱溶融混練する。最後に、得られた混合物を造粒または粉砕することにより、熱硬化性樹脂組成物(P)が得られる。
樹脂部材101の25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αは、好ましくは10ppm/℃以上35ppm/℃以下であり、より好ましくは10ppm/℃以上25ppm/℃以下である。線膨張係数αが上記範囲内であると、ブレーキピストン100の信頼性をより一層向上させることができる。
<金属部材>
以下、金属部材102について説明する。
金属部材102は、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度を向上させる観点から、金属部材102のピストン本体部110との接合面103に微細な凹凸からなる粗化層104を有している。ここで、粗化層104とは、金属部材102の表面に設けられた複数の凹部201を有する領域をいう。
粗化層104の厚みは、好ましくは3μm以上40μm以下であり、より好ましくは4μm以上32μm以下であり、特に好ましくは4μm以上30μm以下である。粗化層104の厚みが上記範囲内であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。ここで、本実施形態において、粗化層104の厚みは、複数の凹部201の中で、最も深さが大きいものの深さD3を表し、電子顕微鏡(SEM)写真から算出することができる。
凹部201の断面は、凹部201の開口部203から底部205までの間の少なくとも一部に開口部203の断面幅D1よりも大きい断面幅D2を有する形状となっていることが好ましい。
図2に示すように、凹部201の断面形状は、D2がD1よりも大きければ特に限定されず、様々な形状を取り得る。凹部201の断面形状は、例えば、電子顕微鏡(SEM)により観察することができる。
凹部201の断面形状が上記形状であると、接合強度により一層優れたブレーキピストン100が得られる理由は必ずしも明らかではないが、接合面103の表面が、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果がより一層強く発現できる構造となっているからだと考えられる。
凹部201の断面形状が上記形状であると、樹脂部材101が凹部201の開口部203から底部205までの間で引っかかるため、アンカー効果が効果的に働く。そのため、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度が向上すると考えられる。
凹部201の平均深さは、好ましくは0.5μm以上40μm以下であり、より好ましくは1μm以上30μm以下である。凹部201の平均深さが上記上限値以下であると、熱硬化性樹脂組成物(P)が凹部201の奥まで十分に入り込むことができるため、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の機械的強度をより一層向上させることができる。凹部201の平均深さが上記下限値以上であると、凹部201の内部に存在する充填材(B)の割合を増やすことができるため、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の機械的強度を向上させることができる。したがって、凹部201の平均深さが上記範囲内であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。
凹部201の平均深さは、例えば、以下のように走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、粗化層104の断面を撮影する。その観察像から、凹部201を任意に50個選択し、それらの深さをそれぞれ測定する。凹部201の深さの全てを積算して個数で除したものを平均深さとする。
凹部201の開口部203の平均断面幅は、好ましくは2μm以上60μm以下であり、より好ましくは3μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは3μm以上30μm以下である。開口部203の平均断面幅が上記上限値以下であると、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果をより一層強く発現できる。開口部203の平均断面幅が上記下限値以上であると、凹部201の内部に存在する充填材(B)の割合を増やすことができるため、ピストン本体部110と金属部材102との接合面における樹脂部材101の強度を向上させることができる。したがって、開口部203の平均断面幅が上記範囲内であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。
開口部203の平均断面幅は、例えば、以下のようにSEM写真から測定することができる。まず、走査型電子顕微鏡により、粗化層104の断面を撮影する。その観察像から、凹部201を任意に50個選択し、それらの断面幅D1をそれぞれ測定する。開口部203の断面幅D1の全てを積算して個数で除したものを平均断面幅とする。
金属部材102の接合面103の表面粗さRaは、好ましくは0.5μm以上40.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以上20.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以上10.0μm以下である。上記表面粗さRaが上記範囲内であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。
また、金属部材102の接合面103の最大高さRzは、好ましくは1.0μm以上40.0μm以下であり、より好ましくは3.0μm以上30.0μm以下である。上記最大高さRzが上記範囲内であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。なお、RaおよびRzは、JIS−B0601に準拠して測定することができる。
金属部材102は、少なくともピストン本体部110と接合する接合面103の見掛け表面積に対する窒素吸着BET法による実表面積の比(以下、単に比表面積とも呼ぶ。)が、好ましくは100以上であり、より好ましくは150以上である。上記比表面積が上記下限値以上であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。また、上記比表面積が、好ましくは400以下であり、より好ましくは380以下であり、特に好ましくは300以下である。上記比表面積が上記上限値以下であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。
ここで、本実施形態における見掛け表面積は、金属部材102の表面が凹凸のない平滑状であると仮定した場合の表面積を意味する。例えば、その表面形状が長方形の場合には、縦の長さ×横の長さで表される。一方、本実施形態における窒素吸着BET法による実表面積は、窒素ガスの吸着量により求めたBET表面積を意味する。例えば、真空乾燥した測定対象試料について、自動比表面積/細孔分布測定装置(BELSORPminiII、日本ベル社製)を用いて、液体窒素温度における窒素吸脱着量を測定し、その窒素吸脱着量に基づいて算出することができる。
上記比表面積が上記範囲内であると、より一層接合強度に優れたブレーキピストン100が得られる理由は必ずしも明らかではないが、ピストン本体部110との接合面103の表面が、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果がより一層強く発現できる構造となっているからだと考えられる。
上記比表面積が上記下限値以上であると、樹脂部材101と金属部材102の接触面積が大きくなり、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入する領域が増える。その結果、アンカー効果が働く領域が増え、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度がより一層向上すると考えられる。
一方、上記比表面積が大きすぎると、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の金属部材102の割合が減るため、この領域の機械的強度が低下してしまう。そのため、上記比表面積が上記上限値以下であると、樹脂部材101と金属部材102とが相互に侵入した領域の機械的強度がより一層向上し、その結果、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができると考えられる。
以上から、上記比表面積が上記範囲内であると、樹脂部材101との接合面103の表面が、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果がより一層強く発現できる、バランスの良い構造になっていると推察される。
金属部材102は、特に限定されないが、少なくともピストン本体部110と接合する接合面103の光沢度が、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは1以上である。上記光沢度が上記下限値以上であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。また、上記光沢度が、好ましくは30以下であり、より好ましくは20以下である。上記光沢度が上記上限値以下であると、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上させることができる。ここで、本実施形態における光沢度は、ASTM−D523に準拠して測定した測定角度60°の値を示す。光沢度は、例えば、ディジタル光沢度計(20°、60°)(GM−26型、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定することができる。
上記光沢度が上記範囲内であると、接合強度により一層優れたブレーキピストン100が得られる理由は必ずしも明らかではないが、ピストン本体部110との接合面103の表面がより一層乱雑な構造となり、樹脂部材101と金属部材102との間のアンカー効果がより一層強く発現できる構造となっているからだと考えられる。
金属部材102を構成する金属材料は特に限定されないが、入手の容易さや価格の観点から、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、耐食性かつ高強度の点から、ステンレスが好ましい。
次に、金属部材102の表面に粗化層104を形成する方法について説明する。
粗化層104は、例えば、表面処理剤を用いて、金属部材102の表面を化学的処理することにより形成することができる。
ここで、表面処理剤を用いて金属部材102の表面を化学的処理すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本発明者らは、(1)金属部材と表面処理剤の組み合わせ、(2)化学的処理の温度および時間、(3)化学的処理後の金属部材表面の後処理、などの因子を高度に制御することにより、ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上できる粗化層104が得られることを見出した。ピストン本体部110と金属部材102との接合強度をより一層向上できる粗化層104を得るためには、これらの因子を高度に制御することが特に重要となる。
以下、金属部材102の表面上に粗化層104を形成する方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る粗化層104の形成方法は、以下の例に限定されない。
はじめに、(1)金属部材と表面処理剤の組み合わせを選択する。
鉄やステンレスから構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、無機酸、塩素イオン源、第二銅イオン源、チオール系化合物を必要に応じて組合せた水溶液を選択するのが好ましい。
アルミニウムやアルミニウム合金から構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、アルカリ源、両性金属イオン源、硝酸イオン源、チオ化合物を必要に応じて組合せた水溶液を選択するのが好ましい。
マグネシウムやマグネシウム合金から構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、アルカリ源が用いられ、特に水酸化ナトリウムの水溶液を選択するのが好ましい。
銅や銅合金から構成される金属部材を用いる場合は、表面処理剤として、硝酸、硫酸などの無機酸、不飽和カルボン酸などの有機酸、過硫酸塩、過酸化水素、イミダゾールおよびその誘導体、テトラゾールおよびその誘導体、アミノテトラゾールおよびその誘導体、アミノトリアゾールおよびその誘導体などのアゾール類、ピリジン誘導体、トリアジン、トリアジン誘導体、アルカノールアミン、アルキルアミン誘導体、ポリアルキレングリコール、糖アルコール、第二銅イオン源、塩素イオン源、ホスホン酸系キレート剤酸化剤、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンから選ばれる少なくとも1種を用いた水溶液を選択するのが好ましい。
つぎに、(2)金属部材を表面処理剤に浸漬させ、金属部材表面に化学的処理をおこなう。このとき、処理温度は、例えば、30℃である。また、処理時間は選定する金属部材の材質や表面状態、表面処理剤の種類や濃度、処理温度などにより適宜決定されるが、例えば、30〜300秒である。このとき、金属部材の深さ方向のエッチング量を、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上にすることが重要である。金属部材の深さ方向のエッチング量は、溶解した金属部材の重量、比重および表面積から算出して、評価することができる。この深さ方向のエッチング量は、表面処理剤の種類や濃度、処理温度、処理時間などにより調整することができる。
本実施形態では、深さ方向のエッチング量を調整することにより、前述した粗化層104の厚み、凹部201の平均深さ、比表面積、光沢度、Ra、Rz等を調整することができる。
最後に、(3)化学的処理後の金属部材表面に後処理をおこなう。まず、金属部材表面を水洗、乾燥する。次いで、化学的処理をおこなった金属部材表面を硝酸水溶液などで処理する。
以上の手順により、本実施形態に係る粗化層104を有する金属部材102を得ることができる。
[ブレーキピストンの製造方法]
つづいて、ブレーキピストン100の製造方法について説明する。ブレーキピストン100の製造方法としては特に限定されないが、例えば、射出成形法、移送成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法などが挙げられる。これらの中でも、射出成形法、圧縮成形法が特に適している。
本実施形態に係るブレーキピストン100の製造方法は、例えば、以下の工程を含んでいる。
はじめに、金属部材102および金型を準備する。金属部材102は、密着性、耐久性向上等の観点から、少なくともピストン本体部110と接合させる部分が粗化処理された金属部材102を準備することが好ましい。
次いで、金型の成形空間内に金属部材102を配置する。
次いで、例えば、射出成形機を用いて、流動化した熱硬化性樹脂組成物(P)で成形空間内を充填する。つづいて、熱硬化性樹脂組成物(P)の少なくとも一部が金属部材102に接触した状態で熱硬化性樹脂組成物(P)を硬化することにより、熱硬化性樹脂組成物(P)からなる樹脂部材101と金属部材102とを接合させる。以上より、ブレーキピストン100が得られる。
熱硬化性樹脂組成物(P)は、成形を良好におこなうために流動性が高いことが好ましい。そのため、熱硬化性樹脂組成物(P)は、175℃での溶融粘度が、好ましくは10Pa・s以上3000Pa・s以下であり、より好ましくは30Pa・s以上2000Pa・s以下である。175℃での溶融粘度は、例えば、島津製作所社製の熱流動評価装置(フローテスタ)により測定することができる。
このような粘度挙動を有する熱硬化性樹脂組成物(P)を実現するためには、例えば、前述した熱硬化性樹脂(A)の種類や量、充填材(B)の種類や量、エラストマー(D)の種類や量を適宜調整すればよい。
本実施形態に係るブレーキピストン100の製造方法では、流動化した熱硬化性樹脂組成物(P)で成形空間内を充填する工程において、熱硬化性樹脂組成物(P)の流動圧力により金属部材102を金型の成形面に押しつけながら成形空間を熱硬化性樹脂組成物(P)で充填することが好ましい。このようにすることで、バリの発生を抑制し、かつ金属部材102とピストン本体部110との密着性に優れる良好な品質のブレーキピストン100を得ることができる。
本実施形態において、ブレーキピストン100の成形条件は、採用する成形方法により異なるため特に限定されないが、採用する成形方法における一般的に公知の成形条件を採用することができる。成形方法として圧縮成形法を用いる場合、例えば、温度が150〜180℃、圧力5〜30MPa、硬化時間30秒間から5分間の成形条件を挙げることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<熱硬化性樹脂組成物(P1)の調製>
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を20.0質量%、ヘキサメチレンテトラミンを3.0質量%、ガラス繊維A(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を3.0質量%、ワラストナイトA(NYCO Minerals社製、NYAD325、平均粒子径:10μm、平均長径:50μm)を55.0質量%、焼成クレー(イメリス社製、ポールスター501、平均粒子径:0.6μm)を16.0質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を1.0質量%、潤滑剤等のその他の成分を2.0質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P1)を得た。
<金属部材の表面処理>
まず、表面処理がされていないステンレスシートA(80mm×10mm、厚さ1.0mm、密度7.93g/cm、熱伝導率16.7W/(m・K)、SUS304)を準備した。また、硫酸(50質量%)、硫酸第二銅5水和物(3質量%)、塩化カリウム(3質量%)、チオサリチル酸(0.0001質量%)の水溶液を調製した。そして、得られた水溶液(30℃)中に、ステンレスシートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に15μm(ステンレスの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗、乾燥し、ステンレスシート1を得た。
<金属部材の評価方法>
(金属部材の表面粗さの測定)
超深度形状測定顕微鏡(キーエンス社製VK9700)を用いて、倍率20倍における金属部材の樹脂部材との接合面の表面形状を測定した。表面粗さはRaおよびRzを測定した。RaおよびRzは、JIS−B0601に準拠して測定した。
ステンレスシート1のRaは2.5μm、Rzは15.3μmであった。
(比表面積の測定)
測定対象試料を120℃で、6時間真空乾燥した後、自動比表面積/細孔分布測定装置(BELSORPminiII、日本ベル社製)を用いて、液体窒素温度における窒素吸脱着量を測定した。窒素吸着BET法による実表面積はBETプロットから算出した。測定した窒素吸着BET法による実表面積を、見掛け表面積で割ることにより比表面積を算出した。
ステンレスシート1の比表面積は250であった。
(金属部材の表面の光沢度の測定)
金属部材の表面の光沢度は、ディジタル光沢度計(20°、60°)(GM−26型、村上色彩技術研究所社製)を用いて、ASTM−D523に準拠して測定角度60°で測定した。
ステンレスシート1の光沢度は10であった。
(金属部材の表面の観察)
金属部材の表面を電子顕微鏡(SEM)で撮影し、金属部材の表面に存在する粗化層の構造を観察した。この観察像から、粗化層の厚み、凹部の断面形状、凹部の平均深さ、開口部の平均断面幅をそれぞれ求めた。
ステンレスシート1の粗化層の厚みは15μm、凹部の平均深さは13μm、開口部の平均断面幅は14μmであった。また、図2に示すように、凹部の断面は、凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状になっていた。
(線膨張係数αの測定)
熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、EXSTAR6000)を用いて5℃/分の圧縮条件で、25 ℃から樹脂部材のガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αを測定した。ステンレスシート1の線膨張係数αは17ppm/℃であった。
<金属樹脂複合体の作製>
得られた熱硬化性樹脂組成物(P1)およびステンレスシート1を用いて、金属樹脂複合体1を作製した。具体的には、以下の手順により作製した。
はじめに、金型内に厚み1mmのステンレスシート1を固定せずに配置した。次いで、硬化後の厚みが3mmとなるように、熱硬化性樹脂組成物(P1)を加熱し、上記金型内に所定量注入した。このとき、熱硬化性樹脂組成物(P1)の流体圧力により、ステンレスシート1を金型の内壁に押しつけるようにした。最後に、圧縮成形により熱硬化性樹脂組成物(P1)を硬化することにより、厚み3mmの樹脂部材シートと厚み1mmのステンレスシート1の2層シートである金属樹脂複合体1を得た。この金属樹脂複合体1を試験片1とした。なお、圧縮成形条件は、実効圧力20MPa、金型温度175℃、硬化時間3分間とした。
(金属樹脂複合体の接合面の観察)
金属樹脂複合体1の接合面の断面を電子顕微鏡(SEM)で撮影し、接合面の断面の構造を観察した。この観察像から、凹部の内部の充填材の有無を求めた。なお、凹部の内部の充填材の有無はエネルギー分散型蛍光X線分析からも確認した。
(線膨張係数αの測定)
熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、EXSTAR6000)を用いて5℃/分の圧縮条件で、樹脂部材シートの25℃からガラス転移温度までの範囲における線膨張係数αを測定した。熱硬化性樹脂組成物(P1)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数αの平均値は15ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α−α)の絶対値は2ppm/℃であった。
(曲げ強度保持率)
得られた試験片1を350℃雰囲気中に100時間保管した。このとき、ステンレスシート1を上側に配置して保管した。
保管前後の試験片の曲げ強度をJIS K 6911に準じて、25℃雰囲気下でそれぞれ測定し、曲げ強度保持率を算出した。このとき、ステンレスシート1を下側に配置して試験を行った。
(ブレーキピストンの信頼性評価)
まず、試験片1を作製するのと同様の条件で、図1に示すブレーキピストンを作製した。次いで、得られたブレーキピストンをキャリパーに収容し、350℃の熱板に金属部材を接触させたまま100時間保管した。その後、金属部材の剥離の有無を調べた。
評価基準は以下の通りである。
〇:ピストン本体部と金属部材との間に剥離が見られなかった
×:ピストン本体部と金属部材との間に一部剥離が見られた、またはピストン本体部表面にフクレが見られた
(実施例2)
熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P2)を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体2を作製した。この金属樹脂複合体2を試験片2とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を20.0質量%、ヘキサメチレンテトラミンを3.0質量%、ガラス繊維A(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を1.5質量%、ワラストナイトA(NYCO Minerals社製、NYAD325、平均粒子径:10μm、平均長径:50μm)を55.0質量%、焼成クレー(イメリス社製、ポールスター501、平均粒子径:0.6μm)を17.5質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を1.0質量%、潤滑剤等のその他の成分を2.0質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P2)を得た。
熱硬化性樹脂組成物(P2)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数αの平均値は15ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α−α)の絶対値は2ppm/℃であった。
(実施例3)
熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P3)を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体3を作製した。この金属樹脂複合体3を試験片3とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を20.0質量%、ヘキサメチレンテトラミンを3.0質量%、ガラス繊維A(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を4.5質量%、ワラストナイトA(NYCO Minerals社製、NYAD325、平均粒子径:10μm、平均長径:50μm)を55.0質量%、焼成クレー(イメリス社製、ポールスター501、平均粒子径:0.6μm)を14.5質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を1.0質量%、潤滑剤等のその他の成分を2.0質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P3)を得た。
熱硬化性樹脂組成物(P3)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数αの平均値は16ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α−α)の絶対値は1ppm/℃であった。
(実施例4)
熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P4)を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体4を作製した。この金属樹脂複合体4を試験片4とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
レゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、PR−513723)を20.0質量%、ガラス繊維A(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を20.0質量%、ワラストナイトA(NYCO Minerals社製、NYAD325、平均粒子径:10μm、平均長径:50μm)を40.0質量%、焼成クレー(イメリス社製、ポールスター501、平均粒子径:0.6μm)を15.0質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を2.0質量%、潤滑剤等のその他の成分を3.0質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P4)を得た。
熱硬化性樹脂組成物(P4)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数αの平均値は13ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α−α)の絶対値は4ppm/℃であった。
(実施例5)
熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P5)を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体5を作製した。この金属樹脂複合体5を試験片5とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
レゾール型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、PR−513723)を20.0質量%、ガラス繊維A(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を10.0質量%、ワラストナイトA(NYCO Minerals社製、NYAD325、平均粒子径:10μm、平均長径:50μm)を40.0質量%、焼成クレー(イメリス社製、ポールスター501、平均粒子径:0.6μm)を25.0質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を2.0質量%、潤滑剤等のその他の成分を3.0質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P5)を得た。
熱硬化性樹脂組成物(P5)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数αの平均値は12ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α−α)の絶対値は5ppm/℃であった。
(実施例6)
ステンレスシート1の代わりに、以下のステンレスシート2を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体6を作製した。この金属樹脂複合体6を試験片6とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
硫酸(50質量%)、硫酸第二銅5水和物(3質量%)、塩化カリウム(3質量%)、チオサリチル酸(0.0001質量%)の水溶液を調製した。そして、得られた水溶液(30℃)中に、ステンレスシートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に30μm(ステンレスの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗、乾燥し、ステンレスシート2を得た。
ステンレスシート2の特性は以下のとおりであった。
Ra:2.8μm
Rz:28.0μm
比表面積:280
光沢度:8
粗化層の厚み:30μm
凹部の平均深さ:28μm
開口部の平均断面幅:5μm
線膨張係数α:17ppm/℃
また、凹部の断面は、凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状になっていた。
(実施例7)
ステンレスシート1の代わりに、以下のステンレスシート3を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体7を作製した。この金属樹脂複合体7を試験片7とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
硫酸(50質量%)、硫酸第二銅5水和物(3質量%)、塩化カリウム(3質量%)、チオサリチル酸(0.0001質量%)の水溶液を調製した。そして、得られた水溶液(30℃)中に、ステンレスシートAを浸漬して揺動させ、深さ方向に4μm(ステンレスの減少した重量から算出)溶解させた。次いで、水洗、乾燥し、ステンレスシート3を得た。
ステンレスシート3の特性は以下のとおりであった。
Ra:1.1μm
Rz:4.0μm
比表面積:165
光沢度:13
粗化層の厚み:4μm
凹部の平均深さ:4μm
開口部の平均断面幅:3μm
線膨張係数α:17ppm/℃
また、凹部の断面は、凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状になっていた。
(実施例8)
熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P6)を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体8を作製した。この金属樹脂複合体8を試験片8とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を20.0質量%、ヘキサメチレンテトラミンを3.0質量%、ガラス繊維A(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を3.0質量%、ワラストナイトB(NYCO Minerals社製、NYAD5000、平均粒子径:3μm、平均長径:9μm、平均アスペクト比:3)を55.0質量%、焼成クレー(イメリス社製、ポールスター501、平均粒子径:0.6μm)を16.0質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を1.0質量%、潤滑剤等のその他の成分を2.0質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P6)を得た。
熱硬化性樹脂組成物(P6)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数αの平均値は14ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α−α)の絶対値は3ppm/℃であった。
(実施例9)
熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P7)を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体9を作製した。この金属樹脂複合体9を試験片9とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
ノボラック型フェノール樹脂(PR−51305、住友ベークライト社製)を20.0質量%、ヘキサメチレンテトラミンを3.0質量%、ガラス繊維A(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を3.0質量%、ワラストナイトA(NYCO Minerals社製、NYAD325、平均粒子径:10μm、平均長径:50μm)を71.0質量%、酸化マグネシウム(神島化学工業社製)を1.0質量%、潤滑剤等のその他の成分を2.0質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P7)を得た。
熱硬化性樹脂組成物(P7)からなる厚み3mmの樹脂部材シートの線膨張係数αの平均値は15ppm/℃であった。よって、線膨張係数の差(α−α)の絶対値は2ppm/℃であった。
(比較例1)
ステンレスシート1の代わりに、実施例1で使用した表面処理がされていないステンレスシートAを使用した以外は実施例8と同様の方法により金属樹脂複合体10を作製した。この金属樹脂複合体10を試験片10とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
ステンレスシートAの特性は以下のとおりであった。
Ra:0.5μm
Rz:0.7μm
比表面積:50
光沢度:260
線膨張係数α:17ppm/℃
また、凹部の断面は、凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状になっていなかった。
(比較例2)
ステンレスシート1を使用しない以外は実施例8と同様の方法により樹脂部材11を作製した。この樹脂部材11を試験片11とし、実施例1と同様の評価をおこなった。
以上の配合比率および評価結果を表1および表2に示す。なお、実施例1で作製したブレーキピストンから切り出した試験片を用いて、樹脂部材、金属部材および金属樹脂複合体に関する上述の各評価を行っても、試験片1と同様の評価結果が得られることは理解される。また、ブレーキピストンから切り出した試験片の形状が、試験片1とは異なる形状であっても、必要に応じ換算して、同様の評価結果が得られることは理解される。実施例2〜9および比較例1〜2においても同様である。
Figure 2015203473
Figure 2015203473
実施例1〜9で得られた金属樹脂複合体1〜9は、曲げ強度保持率に優れていた。このような金属樹脂複合体1〜9と同条件で作製したブレーキピストンは、その金属部材を350℃の熱板に接触させたまま100時間保管しても、いずれもピストン本体部と金属部材との間に剥離が見られなかった。
また、実施例1〜9のブレーキピストンは、金属樹脂複合体からなるため、同種の金属のみからなるブレーキピストンに比べて軽量であった。
以上から、実施例1〜9のブレーキピストンは、軽量性と信頼性との性能バランスに優れていた。
これに対し、比較例1で得られた金属樹脂複合体10、比較例2で得られた樹脂部材11は、いずれも曲げ強度保持率に劣っていた。金属樹脂複合体10と同条件で作製したブレーキピストンは、その金属部材を350℃の熱板に接触させたまま100時間保管すると、ピストン本体部と金属部材との間に剥離が見られた。また、樹脂部材11と同条件で作製したブレーキピストンは350℃の熱板に接触させたまま100時間保管すると、表面にフクレが発生した。すなわち、比較例1〜2のブレーキピストンは、軽量性と信頼性との性能バランスに劣っていた。
100 ブレーキピストン
101 樹脂部材
102 金属部材
103 接合面
104 粗化層
110 ピストン本体部
120 開口部
125 側端面
201 凹部
203 開口部
205 底部
300 ディスクブレーキ
301 ディスクロータ
302 ブレーキパッド
303 油圧シリンダ装置
304 キャリパー
305 シール

Claims (17)

  1. ディスクブレーキに用いられるブレーキピストンであって、
    開口部を有し、かつ、樹脂部材からなるピストン本体部と、
    前記ピストン本体部の前記開口部の側端面を覆うように設けられた金属部材と、を備え、
    前記ピストン本体部における前記開口部の側端面と前記金属部材とが接合されており、
    前記金属部材は少なくとも前記ピストン本体部と接合する接合面に微細な凹凸からなる粗化層を有しており、
    前記粗化層の前記凹凸を構成する凹部の内部に前記樹脂部材の一部が存在することにより、前記ピストン本体部における前記開口部の側端面と前記金属部材とが接合されているブレーキピストン。
  2. 請求項1に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記凹部の断面形状は、前記凹部の開口部から底部までの間の少なくとも一部に前記開口部の断面幅よりも大きい断面幅を有する形状となっているブレーキピストン。
  3. 請求項1または2に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記粗化層の厚みが3μm以上40μm以下の範囲内であるブレーキピストン。
  4. 請求項1乃至3いずれか一項に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記金属部材の前記ピストン本体部と接合する前記接合面のASTM−D523に準拠して測定した測定角度60°の光沢度が0.1以上30以下であるブレーキピストン。
  5. 請求項1乃至4いずれか一項に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記金属部材の前記ピストン本体部と接合する前記接合面の見掛け表面積に対する窒素吸着BET法による実表面積の比が100以上400以下であるブレーキピストン。
  6. 請求項1乃至5いずれか一項に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記樹脂部材は熱硬化性樹脂と充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物からなるブレーキピストン。
  7. 請求項6に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記粗化層の前記凹凸を構成する凹部の内部に前記充填材の一部が存在しているブレーキピストン。
  8. 請求項7に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記凹部の内部に存在する前記充填材がワラストナイト、カオリンクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、ホウ酸アルミニウムウイスカー、およびチタン酸カリウム繊維からなる群から選ばれる一種または二種以上であるブレーキピストン。
  9. 請求項6乃至8いずれか一項に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記熱硬化性樹脂はフェノール樹脂であるブレーキピストン。
  10. 請求項1乃至9いずれか一項に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記ピストン本体部における前記開口部の前記側端面と前記金属部材とが、接着剤を介在することなく接合されているブレーキピストン。
  11. 請求項1乃至10いずれか一項に記載のブレーキピストンにおいて、
    前記金属部材は、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅および銅合金からなる群から選ばれる一種または二種以上の金属材料により形成されたものであるブレーキピストン。
  12. 請求項1乃至11いずれか一項に記載のブレーキピストンを備えるディスクブレーキ。
  13. 請求項1乃至11いずれか一項に記載のブレーキピストンを製造するための製造方法であって、
    金属部材および金型を準備する工程と、
    前記金型の成形空間内に前記金属部材を配置する工程と、
    熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物で前記成形空間内を充填する工程と、
    前記熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一部が前記金属部材に接触した状態で前記熱硬化性樹脂組成物を硬化することにより、前記熱硬化性樹脂組成物からなる前記樹脂部材と前記金属部材とを接合させてブレーキピストンを得る工程と、
    を含む、ブレーキピストンの製造方法。
  14. 請求項13に記載のブレーキピストンの製造方法において、
    前記金属部材および金型を準備する工程では、
    前記金属部材の表面のうち、少なくとも前記樹脂部材と接合させる部分が粗化処理された前記金属部材を準備する、ブレーキピストンの製造方法。
  15. 請求項13または14に記載のブレーキピストンの製造方法において、
    前記充填する工程において、前記熱硬化性樹脂組成物の流動圧力により、前記金属部材を前記金型の成形面に押しつけながら前記成形空間を前記熱硬化性樹脂組成物で充填する、ブレーキピストンの製造方法。
  16. 請求項1乃至11いずれか一項に記載のブレーキピストンを構成する前記樹脂部材を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、
    熱硬化性樹脂と、充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物。
  17. 請求項16に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
    前記熱硬化性樹脂はフェノール樹脂である、熱硬化性樹脂組成物。
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