JP2015183343A - 海島型多成分複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 超極細繊維でありながら優れた繊維物性を有し、製糸性が良好で、布帛にした際に膨らみ感と柔軟性、ソフトな風合いを有し、防水性能と透湿性能を兼ね備えたナノファイバー製品を提供しうる海島型多成分複合繊維を提供する。【解決手段】 3成分以上のポリマーから構成される海島型複合繊維であり、島成分は2種類以上のポリマーからなり、下記の要件を満足することを特徴とする海島型多成分複合繊維。(1)島成分の繊維径が50〜1000nm(2)島成分から得られる繊維に沸水収縮率差があること(3)海島型多成分複合繊維の単糸繊度が0.2〜1.5dtexにより達成できる。【選択図】なし

Description

本発明は、3成分以上のポリマーからなる海島型複合繊維であり、島成分は少なくとも収縮差を有する2種類以上のポリマーから構成された海島型複合繊維に関する。さらに詳しくは海成分ポリマーの溶解除去処理によって良好な繊維物性、膨らみ感と柔軟性、ソフトな風合い、防水透湿性能を備えたナノファイバー製品を安定的に製造できる海島型多成分複合繊維に関するものである。
単糸直径が数マイクロメートルの極細繊維(マイクロファイバー)は、布帛とした際に繊細かつソフト感のある風合いを呈するため、スエード調布帛やワイピングクロスとして広く用いられている。特に、マイクロファイバーを容易に製造する手法としては、易溶解性ポリマーからなる海成分中に難溶解性の島成分を含有する海島型複合繊維や、難溶解性のマイクロファイバーが易溶解性ポリマーで仕切られた割繊型複合繊維の利用が広く知られている(特許文献1、2)。これらは一度、複合繊維として巻き取った後、溶解剤に複合繊維もしくは布帛製品を浸漬させることで易溶解性ポリマーを除去し、難溶解性のマイクロファイバーを得ることが可能となる技術である。
近年では、さらに繊細な肌触りやソフト感を追求して単糸直径1マイクロメートル以下となる超極細繊維(ナノファイバー)が提案されている。ナノファイバーは繊維径のスケールダウンによる極限のソフト化のほか、単糸群の比表面積や空隙率が飛躍的に増加することによるナノサイズ特有の効果も示唆されていることから、マイクロファイバー以上の展開可能性を秘めており、早期の研究・開発・安定的製造が求められている。
ナノファイバーを製造する方法の一つとしては、エレクトロスピニング(ESP)法が提案されている。ESP法とは、樹脂を溶質として含有する溶液に電圧を印加しながら電界中に放出することでナノファイバーを取り出す製法(特許文献3)であるが、放出されたナノファイバーは長繊維として採取することが難しいため、用途はフィルター等の不織布に限定されてしまうほか、繊維径や配置の制御も困難であることから、衣料用途には適さないという欠点があった。また、高電圧が必要であることや、溶媒が常に揮散した状態になることから、感電、中毒、引火といった危険が伴う問題もあった。
その他の方法としては、ポリマーブレンド技術とポリマー溶解除去技術の組み合わせによる、バンドル状ナノファイバーの製造方法が提案されている(特許文献4)。該技術により製造されるナノファイバー自体は短繊維ではあるが、集合体を成しているため長繊維として織物、編物のような布帛製品とすることも可能である。しかし、ナノファイバーおよび集合体の単糸径制御が困難であることや、短繊維の集合体であるゆえに強度が低く、フィブリル化や脱落により耐摩耗性が低く、布帛製品として実用的でないという問題があった。
上記の技術で問題となっている耐久性、品質の劣位を克服し、織物、編物にまで適用しうる長繊維ナノファイバー開発の手段として、近年では海島型複合紡糸技術の深化が盛んに行われている。
一例として、赤外線照射による高倍率延伸による長繊維ナノファイバー製造方法が提案されている(特許文献5)。この方法を実施するには、特殊な溶融紡糸装置に赤外線レーザー照射装置を備え付ける必要があるため、安全面、操業・工程面、メンテナンス面で製品生産には不向きである。
また、易溶解ポリマーとして5−ナトリウムスルホイソフタル酸+ポリエチレングリコール共重合ポリエステルを用い、さらに海島単糸中での島成分配置を規定することで生産性の高いナノファイバーの製造方法が開示されている(特許文献6、7)。
また、3成分系の海島複合繊維で島成分が収縮率の異なる海島型複合繊維を用いた高密度嵩高布帛の製造方法が提案されている(特許文献8)。撥水性、ソフトな風合い、独特の触感に関してはそれなりの効果が得られているが、脱海前の海島型複合繊維での単糸繊度が太いことによる性能不足、および、脱海後の島成分の単糸レベルがナノファイバーに達していないことなどからナノファイバー特有の性能を発揮できていない。
また、3成分系の海島複合繊維で島成分の片方にポリエステル、もう一方にポリアミドを配したポリエステル極細繊維とポリアミド極細繊維を用いてなる染色物およびその製造方法が提案されている(特許文献9)。柔軟で膨らみのある風合い、透湿、防水性等の機能、良好な洗濯堅牢度に関してはそれなりの効果が得られているが、脱海前の海島型複合繊維での単糸繊度が太いことによる性能不足、および、脱海後の島成分の単糸レベルがナノファイバーに達していないことなどからナノファイバー特有の性能を発揮できていない。
別の技術として、1000nm以下のナノファイバーを用いた透湿防水性ポリエステル織物の製造方法が開示されている(特許文献10)。透湿防水性やソフトな風合いに関してはそれなりの効果を得られているが、単一成分からなる織物であることから布帛表面に微細なループ構造を形成できず、防水を超える撥水性を持たせるには至っていない。
以上の特許文献に代表される従来技術に例示されている海島型複合繊維はいずれも海島単糸繊度が太く、海島型複合繊維自体を安定的に製造することを重視しているが、海島単糸繊度が太い海島型複合繊維においては、海島単糸の表面と芯部で冷却差が生じ、溶解処理後のナノファイバー糸条群の品質バラツキが大きくなることや、海成分の溶解除去における表面と芯部での島成分の溶解剤接触時間差が顕著になってしまうため、得られる単糸群および布帛製品の強度低下や、溶解除去不十分による染色斑増加の問題がある。
加えて、太繊度化に伴う複合繊維の曲げ剛性増加により布帛組織の緻密さは失われ、布帛の撥水性、透湿防水性が不足する問題がある。
以上の通り、ナノファイバーに関する研究は、上記の特許文献で示した如く検討が進められており、技術的進歩もなされてきている。しかしながら、超極細繊維でありながら優れた繊維物性を有し、製糸性が良好で、布帛にした際に膨らみ感と柔軟性、ソフトな風合いを有し、撥水性能と透湿性能を兼ね備えた超極細繊維が待ち望まれていた。
特開2005−163234号公報(特許請求の範囲) 特公昭48−28005号公報(特許請求の範囲) 特開2007−303015号公報(特許請求の範囲) 特開2004−162244号公報(特許請求の範囲) 特開2005−325494号公報(特許請求の範囲) 特開2007−100243号公報(特許請求の範囲) 特開2007−100253号公報(特許請求の範囲) 特開平10−88473号公報(特許請求の範囲) 特開2001−262479号公報(特許請求の範囲) 特開2007−2364号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は、上記従来技術の課題であった、超極細繊維でありながら優れた繊維物性を有し、製糸性が良好で、布帛にした際に膨らみ感と柔軟性、ソフトな風合いを有し、撥水性能と透湿性能を兼ね備えた海島型多成分複合繊維を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明は下記の構成からなる。すなわち、
「1.3成分以上のポリマーから構成される海島型複合繊維であり、島成分は2種類以上のポリマーからなり、下記の要件を満足することを特徴とする海島型多成分複合繊維。
(1)島成分から得られる繊維の平均径が50〜1000nm
(2)島成分の2種類以上ポリマーは、島成分から得られる繊維の沸水収縮率が異なること
(3)海島型多成分複合繊維の単糸繊度が0.2〜1.5dtex
2.島成分から得られる沸水収縮率が異なる2種類以上の繊維において、沸水収縮率が最大の島成分Aの重量比(全島成分に対する)が20〜80%であることを特徴とする、請求項1記載の海島型多成分複合繊維。
3.島成分から得られる沸水収縮率が異なる2種類以上の繊維において、沸水収縮率が最大となる島成分A繊維群と最小となる島成分B繊維群の沸水収縮率の差が3〜10%であることを特徴とする、請求項1または2記載の海島型多成分複合繊維。
4.島成分から得られる繊維群の収縮応力ピーク値が0.10〜0.40cN/dtexであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の海島型多成分複合繊維。
5.長手方向の糸斑(ウースター斑)が1.2%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の海島型多成分複合繊維。
6.海島型多成分複合繊維の製造において、島成分導入パイプが海・島成分ポリマーが複合した海島合流孔に挿入されていない口金を用いて、海成分ポリマーと島成分ポリマーの重量複合比が10/90〜50/50、島数が100〜200島である海島型他成分複合繊維を、紡糸ドラフトが50〜300、紡糸応力が0.02〜0.15cN/dtex、口金吐出面から20〜120mmの範囲で冷却を開始し、口金吐出面から1300mm以内の範囲で給油して製糸する請求項1記載の海島型多成分複合繊維の製造方法。」により達成できる。
本発明によれば、超極細繊維でありながら優れた繊維物性を有し、製糸性が良好で、布帛にした際に膨らみ感と柔軟性、ソフトな風合いを有し、撥水性能と透湿性能を兼ね備えた海島型多成分複合繊維を得ることができる。
本発明に用いられる海島型多成分複合繊維紡糸用口金の構造であるシングルパイプ構造の一例を示す。
本発明の海島型多成分複合繊維において、島成分から得られる繊維の平均径は50〜1000nmとする。繊維の平均径が50nm以上あると、ナノファイバーのフィブリル化を抑制することができて好ましい。一方、平均径を1000nm以下とすることで、布帛製品には既存の合成繊維では成し得なかった繊細な肌触りやソフト感が得られるほか、布帛表面に生じる微細かつ緻密な凹凸により、高い透湿性を維持した上で、強力な撥水性の発現など、ナノファイバー特有の効果を得ることが可能となり好ましい。より好ましくは80〜800nm,さらに好ましくは100〜600nmである。なお、海成分の溶解条件は後述する実施例の(6)に記載する。
本発明の海島型多成分複合繊維の単糸繊度は0.2〜1.5dtexとする。単糸繊度が0.2dtex以上であると製糸性が安定し好ましい。一方、単糸繊度を1.5dtex以下とすることで海成分の溶解時間の短縮化が図れるとともに、複合繊維の表層/内層での島成分の溶解剤との接触時間差が小さくなるため、溶解除去完了後の島成分の繊維径バラツキを小さくでき、高強度の布帛が得られる。そして、総繊度が過剰に減量するのを抑制できるので、布帛の高密度を維持できることになる。
単糸繊度の好ましい範囲は0.3〜1.0dtex、より好ましくは0.4〜0.8dtexである。また、製編織前の単糸繊度が細いことで、糸条に柔軟性が生まれ、織編物の密度を高くすることができ、特に織物おいては高密度で製織することが可能となり、高い透湿性を維持した上で、強力な撥水性を有する布帛にすることが可能となるのである。
本発明の海島型多成分複合繊維を構成するポリマーは少なくとも3成分からなり、そのうちの1成分は海成分で易溶出性ポリマーである。島成分は沸水収縮率の異なる少なくとも2種類の難溶解性ポリマーからなり、脱海後、糸長差を有するナノファイバーとなる。
本発明のポリマーとは、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系等のポリマーが挙げられる。例えば、ポリエステル系ポリマーとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、更にはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの、アルキレングリコール成分から選ばれた少なくとも一種のグリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルのほか、ポリ乳酸も対象とする。
そして、上記以外の第3成分が共重合された共重合ポリエステルを使用することもできる。特に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分としたポリエステルはアルカリ水溶液に対する溶解性や分解性が高いため、海成分ポリマーとして用いるのに好適である。
また、ポリアミド系ポリマーとしては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸やε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムを主たる原料とするポリアミドのほか、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、更にはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等をジアミン成分とする共重合ポリアミドを対象とする。
ポリオレフィン系ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等を対象とする。
上記のポリマーには、艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、着色顔料等として、無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて添加することができる。
本発明の海島型多成分複合繊維は、溶解剤に対し易溶出性ポリマーの海成分と難溶解性ポリマーの島成分からなる。両ポリマーは互いに非相溶であり、脱海処理時の溶解速度差が大きな組み合わせで製糸することが重要である。この溶解速度差の範囲としては、海成分ポリマーと用いる島成分ポリマーの内、最も海成分と溶解度の近いポリマーの溶解速度を5倍以上もしくは溶解剤に対して全く溶解しない島成分ポリマーを選択する。溶解速度差を5倍以上とすることで、海成分ポリマーの溶解除去がスムーズに実行され、複合繊維の表層/内層での島成分の溶解剤との接触時間差が少なくなるため、島成分から得られる繊維径バラツキが小さなナノファイバーを得ることができる。溶解速度差のより好ましい範囲は20倍以上である。
上記ポリマーの組み合わせの一例を以下に列挙する。海成分ポリマーの溶解剤がアルカリ水溶液の場合は、海成分に共重合ポリエステル樹脂または脂肪族ポリエステル樹脂を、島成分にはホモポリエステル樹脂またはポリアミド系樹脂、芳香族ジカルボン酸からなるポリエステル樹脂などを組み合わせる。溶解剤が酸水溶液の場合は、海成分にポリアミド系樹脂かつ島成分にポリエステル系樹脂などを組み合わせる。溶解剤がトルエンやトリクロロエチレンのような有機溶媒の場合は、海成分にポリオレフィン系樹脂、島成分にはポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などを組み合わせる。溶解剤が熱水である場合は、海成分にポリビニルアルコール系樹脂、島成分にポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂などを組み合わせる。
本発明の海島型多成分複合繊維の島成分に用いるポリマーは高収縮性成分と低収縮成分の少なくとも2種類である。複合繊維中に高収縮成分と低収縮成分の島成分が混在することで、脱海により島成分が開繊され、ナノファイバー同士の異収縮混繊糸が得られ、沸水収縮率の差に起因した糸長差が発現し、この糸長差が微細なループを形成し、布帛にした際に緻密性を高めマイクロファイバーレベルの従来糸では到底到達することができなかった強力な撥水性を得ることを可能としたのである。
島成分がポリエステル系の混繊糸であれば、低収縮成分に用いるポリマーとしては、一般的なホモポリエステルポリマーを好適に用いることができる。一方、高収縮成分に用いるポリマーとしては、イソフタル酸等の共重合ポリエステルが好適に用いることが可能である。別の一例として、ポリエステル系ポリマーとポリアミド系ポリマーといった異なる種類の樹脂を使用しても、ポリマー特性差(分子配向差)に起因した沸水収縮差を発生させることができる。
本発明の海島型多成分複合繊維は、島成分から得られる繊維の沸水収縮率が異なる2種類以上のポリマーからなり、沸水収縮率が最大となる島成分の重量割合が全島成分に対して20〜80%であることが好ましい。重量割合が20〜80%であることで、脱海後の布帛には糸長差による微細な凹凸構造が形成され、撥水性、透湿性が発現され好ましい。より好ましい範囲は30〜70%、さらに好ましくは40〜60%である。
そして、本発明の海島型多成分複合繊維の、島成分から得られる沸水収縮率が異なる2種類以上の繊維において、沸水収縮率が最大となる島成分A繊維群と最小となる島成分B繊維群の沸水収縮率の差は3〜10%であることが好ましい。沸水収縮率差が3%以上あると、布帛にした際に好ましい嵩高が発現する。また、収縮率が10%以下であれば布帛にした際の皺、シボ立ちを抑制することができる。より好ましくは4〜9%、さらに好ましくは6〜8%である。
本発明の海島型多成分複合繊維の、島成分から得られる繊維群の収縮応力ピーク値が0.10〜0.40cN/dtexであることが好ましい。この収縮応力とは繊維が収縮する時の応力で、この収縮応力が大きいと、布帛にした時の拘束下でも収縮することが可能となり、高密度の布帛を得ることができる。
島成分繊維群の収縮応力ピーク値が0.10cN/dtex以上あると高密度の布帛にした際にも嵩高性が発現し好ましい。収縮応力のピーク値が0.40cN/dtex以下であると布帛が縮み過ぎることもなく、高密度、嵩高でありながら寸法安定性に優れた布帛を得ることができるので好ましい。そして、布帛を薄地化、軽量化しても高密度で高撥水に優れたナノファイバーの布帛が得られるのである。収縮応力ピーク値のより好ましい範囲は0.20〜0.35cN/dtexである。
本発明の海島型多成分複合繊維の長手方向の糸斑(ウースター斑)は1.2%以下であることが好ましい。ウースター斑が1.2%以下とすることにより布帛評価において染色の均一性が良好となるほか、嵩高性の斑も防止でき、撥水性能の低下も抑制できる。なお、ウースター斑の下限値は0%に近ければ近いほど均一性が高くなり好ましい。
本発明の海島型多成分複合繊維における島数は、100〜200島の範囲であることが好ましい。島数を100島以上にすると、島成分を隙間なく海成分中に配置させることが可能となるため、複合繊維の形態安定性およびナノファイバーの生産性が高くなるので好ましい。また、島数を200島以下とすることで、島成分の融着欠点を回避させることが可能であり、さらに海成分を溶解除去時に複合繊維の表層/内層での島成分の溶解剤への接触時間差が少なくなることで、島成分から得られる繊維の繊維径バラツキが小さく、高強度なナノファイバーを得ることが可能となるので好ましい。そして、複合繊維中の島数のより好ましい範囲は110〜180島であり、さらに好ましくは120〜150島である。
また、本発明の海島型多成分複合繊維において、海成分が占める重量割合は10〜50%が好ましい。海成分を10%以上とすることで、島成分同士の融着を防ぐことができ、脱海の効率性に優れ、高強度かつ高品質な布帛を得ることができる。また、海成分が50%以下であれば、海成分の溶解除去時間を短縮することが可能であり、かつ溶出させるポリマー量も少なくなるため、ナノファイバーの生産性を高くすることもできるので好ましい。より好ましい範囲は15〜40%である。
次に、本発明の海島型多成分複合繊維の好ましい製造方法について述べる。
本発明の複合繊維は、吐出されたポリマーを未延伸糸として一旦巻き取った後に延伸する二工程法のほか、紡糸および延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法や高速製糸法など、いずれのプロセスにおいても製造できる。また、高速製糸法における紡糸速度の範囲は特に規定しないため、半延伸糸として巻き取った後に延伸する工程でもよい。さらに、必要に応じて仮撚りなどの糸加工を行うこともできる。
本発明で用いる口金の構造は、海島合流孔に島成分導入パイプが挿入されていないことが好ましい。すなわち、図1に記載のように、島成分導入パイプ2の下面と海島合流孔4の上面の距離が0〜0.5mmであることが好ましい。島成分導入パイプ2の下面と海島合流孔4の上面の距離は0.5mm以下とすることで海島複合流の形成が安定となり、製糸性が良好となる。
海島複合流を形成する方法は各種あるが、海島合流孔に島成分導入パイプが挿入された二重パイプ構造では、1島に必要な孔スペースを大きく取ることから、十分な島数を得ることができず、そのために、繊維径50〜1000nmのナノファイバーを得るには、口金自体を大径化する必要性が生じる。そのため、本発明は、海島合流孔に島成分導入パイプを挿入せずに海島複合流を形成させるシングルパイプ構造(図1)が好適である。このようにシングルパイプ構造にすることで島成分導入パイプ間の距離を短縮することができ、大幅な多島化さらにはナノ繊維化が可能となるほか、微細孔への極細パイプ挿入といった繊細な作業も必要なくなるため、取り扱いも容易で、製造コストも低く抑えることができるので好ましい。
また、紡糸ドラフトは、下記式で算出され、50〜300にすることが好ましい。
紡糸ドラフト=Vs/V0
Vs:紡糸速度(m/分)
V0:吐出線速度(m/分)
紡糸ドラフトを50以上とすることで、口金から吐出されたポリマー流が長時間口金直下に留まることを防止し、口金面汚れを抑制することができることから、製糸性が安定する。また、紡糸ドラフトを300以下とすることで過度な紡糸応力による糸切れを抑制することが可能となり、製糸が安定して海島型多成分複合繊維を得ることができるので好ましい。より好ましくは80〜250である。
紡糸応力は0.02〜0.15cN/dtexにすることが好ましい。紡糸応力を0.02cN/dtex以上にすることで紡糸時の糸揺れによる単糸間での糸条干渉がなく、第1ローラーである引取りローラーに逆巻きすることもないため安定走行が可能となる。また、紡糸応力を0.15cN/dtex以下とすることで、製糸が安定して海島型多成分複合繊維を得られるので好ましい。紡糸応力のより好ましい範囲は0.07〜0.1cN/dtexである。
操業・品質安定的に製糸するにあたり、吐出されたポリマーの冷却固化を厳密に制御する。細繊度化に伴い吐出ポリマー量を抑制すると、ポリマーの細化および冷却固化が吐出後すぐに開始されることとなるため、従来技術で想定される冷却方法では長手方向の糸斑の多い複合繊維しか得られない。また、固化した繊維による随伴気流が増大し、紡糸応力が大きくなるため、製糸性を改善する方法が必要となる。
これらを解決する方法として、冷却開始点を口金吐出面から20〜120mmの範囲とする。冷却開始点が20mm以上であれば冷却風による口金の面温度低下を抑制でき、製糸性不良や孔詰まり、複合異常、吐出斑といった諸問題を回避できるので好ましい。また、冷却開始点は120mm以内とすることで、長手方向での糸斑の少ない高品質な海島型多成分複合繊維を得ることができるので好ましい。より好ましい範囲は25〜100mmである。
また、冷却風による口金面温度の低下を抑制するため、冷却風の温度を管理したり、口金周辺部に加熱器を設置してもよい。
口金吐出面から給油位置までの距離は1300mm以下にすることが好ましい。このようにすることで冷却風による糸条揺れ幅を抑え、繊維長手方向での糸斑を改善できるほか、糸条の収束に至るまでの随伴気流を抑制できるため紡糸応力を低減でき、毛羽や糸切れの少ない安定した製糸性が得やすいので好ましい。より好ましい範囲は1200mm以下である。
紡糸温度は用いるポリマーで最も融点の高いポリマーよりも+20〜+50℃高い温度で設定することが好ましい。ポリマー融点よりも+20℃以上高く設定することで、ポリマーが紡糸機配管内で固化して閉塞することを防ぐことができ、かつ上限温度を+50℃以下とすることでポリマーの過度な劣化を抑制することができるため好ましい。
二工程法で製糸する場合、ホットロール−ホットロール延伸や熱ピンを用いた延伸のほか、公知の延伸方法を用いることができる。また、用途に応じて交絡や仮撚りを加えながら延伸してもよい。毛羽発生や両成分の剥離などの複合異常を抑制するために、延伸糸の残留伸度は20〜40%となるように延伸するのが好ましい。
紡糸形態の具体例を以下に記載する。海成分ポリマーと用いる島成分ポリマーの内、最も海成分と溶解度の近いポリマーの溶解速度差が5倍以上となるポリマーを海成分に選択し、海島型多成分複合繊維における海成分重量割合が10〜50%となるように計量する。島成分は沸水収縮率の異なる2種類以上のポリマーからなり、沸水収縮率が最大となる島成分の重量割合が20〜80%となるように計量し溶融吐出する。島数は、100〜200島、紡糸ドラフト50〜300、紡糸応力0.02〜0.15cN/dtexとする。この時の紡糸温度は用いるポリマーで最も融点の高いポリマーよりも20〜50℃高めに設定する。
二工程法の場合、吐出されたポリマー流の冷却開始点を口金吐出面から20〜120mm、給油位置を口金吐出面から1300mm以下に設定して海島型多成分複合繊維を一旦未延伸糸として巻き取り、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール延伸にて残留伸度20〜40%となるように延伸する。
直接紡糸延伸法の場合は冷却開始点を口金吐出面から20〜120mm、給油位置を口金吐出面から1300mm以下に設定して、海島型多成分複合繊維を一旦巻き取ることなく、ホットローラー−ホットローラー間を介して延伸を行う。このときも海島型多成分複合繊維の残留伸度が20〜40%となるように設定するのが好ましい。高速製糸法の場合も、冷却開始点を口金吐出面から20〜120mm、給油位置を口金吐出面から1300mm以下に設定し、残留伸度20〜40%となるように巻取速度を設定して海島型多成分複合繊維を巻き取る。
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法を用いた。
(1)固有粘度(IV)
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノール(OCP)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下記の式により求め、固有粘度(IV)を算出した。
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634
[η:ポリマー溶液の粘度、η0:OCPの粘度、t:溶液の落下時間(秒)、d:溶液の密度(g/cm)、t0:OCPの落下時間(秒)、d0:OCPの密度(g/cm)] 。
(2)ポリアミドの相対粘度(ηr)
ポリアミド系樹脂については、96%濃硫酸100mL中に試料ポリマーを1g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下記の式により求めた。
(ηr)=T1/T2
ここで、T1:溶液の落下時間(秒)、T2:濃硫酸の落下時間(秒) 。
(3)製糸安定性
各実施例についての製糸を行い、1千万m当たりの糸切れ回数から海島型多成分複合繊維の製糸安定性を3段階評価した。
極めて良好 ◎ :0.8回/千万m未満
良好 ○ :0.8回/千万m以上、2.0回/千万m未満
不良 × :2.0回/千万m以上 。
(4)複合繊維の単糸繊度
枠周1.0mの検尺機を用いて100回分のカセを作製し、下記式に従って繊度を測定した。
繊度(dtex)=100回分のカセ重量(g)×100 。
(5)複合繊維の長手方向の糸斑(ウースター斑)
ツェルベガーウースター社製 ウースターテスターUT−4CXを用い、下記の条件で繊度変動チャート(Diagram Mass)を得ると同時に、ハーフInertモードで平均偏差率(U%)を測定した。
給糸速度:200m/分
測定糸長:200m
ツイスター:S撚 12000rpm
ディスクテンション強さ:10%
U%の値が1.2以下であれば、糸斑の少ない製品であると判断した。
(6)海成分溶解条件
海成分の複合比をパーセンテージ変換し、下記の式により算出された減量率の分だけ溶解除去処理を施す。溶解液は98℃の水酸化ナトリウム1%水溶液とした。
減量率(%)=海成分複合比(%)×1.1
(7)島成分から得られる繊維の平均径(以下、島成分の繊維径と記す。)
前記(6)の方法にて海成分を溶解除去し、得られた島成分からなるナノファイバーを走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。ナノファイバーから50本をランダムに選出し、それら測定値から平均径(R)を算出した。
(8)島成分から得られる繊維の沸水収縮率
試長100mm(ループ状)にカセ取りした海島型多成分複合繊維にて、前記(6)の方法にて海成分を溶解除去して得たナノファイバーから糸長の長い繊維30本、短い繊維30本をランダムに抜き取り、各々測定値の平均値から沸騰水収縮率を測定した。なお、単糸が30本に満たない場合は、全単糸を測定の対象とし、長さの長短が不明確の場合は除外する。
(9)島成分から得られる繊維の収縮応力ピーク値
海島型多成分複合繊維を22ゲージの筒編み機にて筒編地について、前記(6)の方法にて海成分を除去して、ナノファイバーからなる筒編地を得た。この筒編地を解舒し、試長100mm(ループ状)の試料を作成し、カネボウ・エンジニアリング製THERMAL STRESS TYPE KE−2Sを用いて下記式に基づく初荷重下、加熱速度300℃/120秒の条件で収縮応力曲線を求め、応力値が最大となる点から収縮応力ピーク値を求めた。なお、初荷重は下記式に従って算出した。
初荷重(g)=海島型複合繊維の繊度(dtex)×(1−減量率(%)/100)/33.3 。
(10)撥水度
海島型多成分複合繊維を用いて経密度140本/2.54cm、緯密度100本/2.54cmのゾッキ織物を作製し、精練した。引き続き、前記(6)の方法にて海成分を溶解除去したのち、150℃で熱セットしたものを試験布に用いた。
JIS L 1092(2009)に記載のスプレー法を準用し、上記試験布の撥水度を測定した。
(11)透湿度
JIS L 1099(2012)に記載のA−1法(塩化カルシウム法)を準用し、前記(10)で製作した試験布の透湿度を測定した。下記に従って布帛の透湿度を3段階評価した。
◎ :450g/cm・hr以上
○ :450g/cm・hr未満300g/cm・hr以上
× :300g/cm・hr未満 。
(12)布帛評価
前記(10)で製作した布地を98℃のテラシールネイビーブルーSGL(0.4%owf)で染色したものを試験布として、熟練した検査者(5人)によって布帛の表面均一性、染色均一性を相対評価した。各項目について、均一性が非常に良い(4点)、均一性が良い(3点)、均一性があまり良くない(2点)、均一性がない(1点)の4段階で官能評価してその合計値(最高点は8点)を算出し、各検査者の合計値の平均値にて下記の通り評価をした。
極めて良好 ◎ :7点以上
良好 ○ :7点未満5点以上
不良 × :5点未満 。
実施例1
島成分Aの最大収縮成分用としてイソフタル酸およびビスフェノールAエチレンオキサイド付加物を全酸成分に対してそれぞれ7.1モル%、4.4モル%共重合したIV=0.67の共重合ポリエチレンテレフタレートを、島成分Bの低収縮成分用としてIV=0.71のポリエチレンテレフタレートを準備した。易溶解性の海成分ポリマーとして5−ナトリウムスルホイソフタル酸7.3wt%を共重合成分として含むIV=0.55のアルカリ易溶解性ポリエチレンテレフタレートをそれぞれ準備した。アルカリ水溶液に対する海成分と島成分Aの溶解速度の差は40倍であった。
島成分A、Bポリマーと海成分ポリマーをいずれもエクストルーダーを用いてそれぞれ270℃、290℃、280℃で溶融後、ポンプによる計量を行い、それぞれのポリマーで最も融点の高い、島成分Bの融点よりも30℃高い290℃を紡糸温度として、温度を保持したまま口金に流入させた。海成分と全島成分の重量複合比は20/80とし、島成分Aの重量割合は50%とした。島数127島(島成分A=63島、島成分B=64島)、吐出孔数112の海島型多成分複合用紡糸口金に流入させた。各ポリマーは、口金内部で合流し、海成分ポリマー中に島成分ポリマーが包含された複合形態を形成し、口金から吐出された。なお、図1に示すように、島成分導入パイプ2は海島合流孔4に挿入されておらず、合流孔上面の直上、すなわち距離0mmに位置している構造の口金を使用した。口金から吐出された糸条は、空冷装置により冷却、油剤付与後、ワインダーにより紡糸ドラフトが220となるように1500m/分の速度で巻き取り、182dtex−112フィラメントの未延伸糸として安定的に巻き取った。このとき、冷却開始点は口金吐出面から97mmに設定し、さらに給油位置を口金吐出面から1130mmとすることで、紡糸応力は0.10cN/dtexとなり、長手糸斑の抑制と製糸性の安定を図った。このプロセスで得られた未延伸糸について、観察倍率500倍での顕微鏡観察では、島成分の融着は見られなかった。
続いて、得られた未延伸糸を300m/分の速度で延伸装置に送糸し、延伸温度90℃、残留伸度20〜40%程度となるような倍率で延伸した後、130℃で熱セットし、紡糸、延伸工程を通じて安定的に66dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。得られた海島型多成分複合繊維を98℃の1%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することで海成分を溶解除去した。得られたナノファイバーの平均径(島成分の繊維径)は580nmであった。
得られた海島型多成分複合繊維を用いて行った評価結果を表1に示す。該海島型多成分複合繊維は長手方向のウースター斑が0.8%と小さい上、島成分同士の融着も見られなかった。さらに、単糸繊度も小さいことから、曲げ剛性も小さく、高密度織物に用いる原糸として有用な原糸であった。
また、島成分A,Bの収縮率はそれぞれ17%、9%で、A,B成分の収縮率差は8%であった。また、この時の島成分の収縮応力ピーク値は0.30cN/dtexであった。
次に、得られた海島型多成分複合繊維から作製した布帛の撥水度および透湿度はいずれも良好で、高密度でありながらソフトで嵩高性のある、良好な風合いの布帛で、アウトドア、水着のスポーツ衣料は勿論のこと、一般衣料用にも好適な素材であった。
実施例2
島成分Aの最大収縮成分にηr=2.6のナイロン6を用いた以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。得られた複合繊維を用いて行った評価結果を表1に示すとおりであり、実施例1と同様に優れた撥水性、透湿性、布帛品位を得た。
実施例3、4
島成分の繊維径を実施例3は210nm、実施例4は980nmとなるようにそれぞれ島数、ポリマー吐出量を変更した以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。実施例3ではフィブリル化もなく、実施例1と同様に優れた撥水性、透湿性、布帛品位を得た。一方、実施例4で得られた複合繊維も実施例1と同様に優れた布帛品位が得られた。結果を表1に示した。
実施例5
複合繊維の単糸繊度を0.3dtexとなるように口金の吐出孔数、ポリマー吐出量を変更した以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。複合繊維の単糸繊度が小さくなった分、製糸性の面では実施例1に一歩譲るものの、海成分の完全溶出に要する時間は短時間で済み、布帛の撥水性、透湿性、布帛品位は実施例1と同等であった。結果を表1に示した。
実施例6、7
全島成分の重量のうち、最大収縮成分である島成分Aの占める重量割合が実施例6は15%(島成分A=19島、島成分B=108島)、実施例7は85%(島成分A=108島、島成分B=19島)となるように島構成を変更した以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。実施例6は島成分Aの割合が少ないために、布帛表面の凹凸構造形成の面で多少荒くなる部分があり、布帛品位の点において実施例1に一歩譲るものであったが、撥水性布帛として十分な性能を有していた。一方、実施例7は島成分Aの割合が多く、布帛表面に多少皺が生じており、撥水性、布帛品位の点において実施例1に一歩譲るものであったが、実施例と同じく、撥水性布帛としては十分な性能を有していた。結果を表2に示した。
実施例8
島成分Bの最小収縮成分用としてηr=2.8のナイロン66を用いた以外は実施例2と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。実施例8では、2種類の島成分の沸水収縮率差が2%と小さいために、糸長差の発現が小さく、撥水性、布帛品位の点において実施例2に一歩譲るものであったが、撥水性布帛として十分な性能を有していた。結果を表2に示した。
実施例9
島成分Bの最小収縮成分用としてIV=0.78のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。実施例9では、2種類の島成分の沸水収縮率差が11%と大きいために、布帛に皺、シボ立ちが見られ、布帛品位の点において実施例1に一歩譲るものであったが、撥水性は実施例1と同様に優れた性能を有していた。結果を表2に示した。
実施例10、11
実施例10では、島成分収縮応力ピーク値が0.45cN/dtex、同様に実施例11では収縮応力ピーク値が0.15cN/dtexとなるように、延伸倍率、延伸熱セット温度を調整し、それ以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。実施例10の複合繊維からなる布帛には表面に皺、シボ立ちが発生しており、布帛品位の点において実施例1に一歩譲るものであったが、撥水性は実施例1と同様に優れた性能を有していた。また、実施例11の複合繊維からなる布帛には表面の凹凸構造がやや粗くなっており、撥水性、布帛品位の点において実施例1に一歩譲るものであったが、撥水性布帛として十分な性能を有していた。結果を表2に示した。
実施例12
口金吐出面から冷却開始点までの距離を160mmに変更した以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。得られた複合繊維はウースター斑が1.4%とやや斑が多く、布帛品位の点で実施例1に一歩譲るものであったが、撥水性は実施例1と同様に優れた性能を有していた。結果を表2に示した。
比較例1
島成分Aを島成分Bと同一のポリマーに置き替え、2成分のポリマーのみからなる海島型複合繊維とした以外は、実施例1と同様の方法により海島型複合繊維の延伸糸を得た。比較例1の複合繊維からなる布帛には島成分間の収縮差に起因する糸長差が発現しないので、実施例1と比較して撥水性、布帛品位の点で劣る結果であった。結果は表3に示した。
比較例2
脱海後の島成分の繊維径が1070nmとなるように島数と各ポリマーの吐出量を変更した以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。比較例2の複合繊維からなる布帛は、得られる島成分の繊維径が実施例1よりも太いことから、撥水性や布帛品位の点で劣る結果となった。結果は表3に示した。
比較例3、4
複合繊維の単糸繊度を比較例3は7.8dtex、比較例4は2.1dtexとなるよう口金構造を変更した以外は実施例3と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。比較例3、4ともに複合繊維の単糸繊度が太く、海成分の溶解除去に時間が掛かる上、製織時の高密度化が不足したため、撥水性、布帛品位の点で劣る結果となった。結果は表3に示した。
比較例5
複合繊維の単糸繊度が0.1dtexとなるよう口金構造およびポリマー吐出量を変更した以外は実施例1と同様の方法により海島型多成分複合繊維の延伸糸を得た。比較例5は複合繊維の単糸繊度が実施例1よりもかなり細くしたために、糸切れが多発し、製糸安定性に欠けるものであった。結果は表3に示した。
1 島成分ポリマー流路
2 島成分導入パイプ
3 海成分ポリマー流路
4 海島合流孔

Claims (6)

  1. 3成分以上のポリマーから構成される海島型複合繊維であり、島成分は2種類以上のポリマーからなり、下記の要件を満足することを特徴とする海島型多成分複合繊維。
    (1)島成分から得られる繊維の平均径が50〜1000nm
    (2)島成分の2種類以上ポリマーは、島成分から得られる繊維の沸水収縮率が異なること
    (3)海島型多成分複合繊維の単糸繊度が0.2〜1.5dtex
  2. 島成分から得られる沸水収縮率が異なる2種類以上の繊維において、沸水収縮率が最大の島成分Aの重量比(全島成分に対する)が20〜80%であることを特徴とする、請求項1記載の海島型多成分複合繊維。
  3. 島成分から得られる沸水収縮率が異なる2種類以上の繊維において、沸水収縮率が最大となる島成分A繊維群と最小となる島成分B繊維群の沸水収縮率の差が3〜10%であることを特徴とする、請求項1または2記載の海島型多成分複合繊維。
  4. 島成分から得られる繊維群の収縮応力ピーク値が0.10〜0.40cN/dtexであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の海島型多成分複合繊維。
  5. 長手方向の糸斑(ウースター斑)が1.2%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の海島型多成分複合繊維。
  6. 海島型多成分複合繊維の製造において、島成分導入パイプが海・島成分ポリマーが複合した海島合流孔に挿入されていない口金を用いて、海成分ポリマーと島成分ポリマーの重量複合比が10/90〜50/50、島数が100〜200島である海島型多成分複合繊維を、紡糸ドラフトが50〜300、紡糸応力が0.02〜0.15cN/dtex、口金吐出面から20〜120mmの範囲で冷却を開始し、口金吐出面から1300mm以内の範囲で給油して製糸する請求項1記載の海島型多成分複合繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018162528A (ja) * 2017-03-24 2018-10-18 帝人フロンティア株式会社 海島型複合繊維束
WO2022107671A1 (ja) * 2020-11-20 2022-05-27 東レ株式会社 海島複合ポリエステル繊維

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