JP2015183010A - 樹脂組成物および多層構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化物(A)、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)、及び塩基性物質(C)を含有する樹脂組成物であって、高化式フローテスターで測定したフローレイト値が下記の関係式(1)(2)を満足する樹脂組成物を用いる。
0.001<FR(5)<0.1 ・・・(1)
0.3<FR(45)/FR(5)<3 ・・・(2)
但し、
FR(5):230℃,滞留5分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)
FR(45):230℃,滞留45分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)
【選択図】 なし
Description
かかる水和物形成性の塩とは、水分子を結晶水として取り込む性質を有して、結晶水を飽和量未満に含有する金属塩水和物の脱水物を意味する。
0.001<FR(5)<0.1 ・・・(1)
0.3<FR(45)/FR(5)<3 ・・・(2)
但し
FR(5):230℃,滞留5分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)
FR(45):230℃,滞留45分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)
本発明のEVOH樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)と23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)、塩基性物質(C)を含有する樹脂組成物である。
本発明で用いるEVOH樹脂(A)は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いることができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
すなわち、EVOH樹脂は、ビニルアルコール構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
前記コモノマーは、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−1,2−ジオール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類、アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のコモノマー挙げられる。
かかる1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂は、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含むものである。かかる1,2−ジオール構造単位とは、具体的には下記構造単位(1)で示される構造単位である。
R1〜R3は通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4〜R6は通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素であるものが最も好ましい。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2)m−、−(CH2O)mCH2−等のエーテル結合部位を含む構造、−CO−、−COCO−、−CO(CH2)mCO−、−CO(C6H4)CO−等のカルボニル基を含む構造、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−等の硫黄原子を含む構造、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造、−HPO4−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−等の珪素原子を含む構造、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−等のチタン原子を含む構造、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる。なお、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で−CH2OCH2−、および炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
本発明で用いられる水和物形成性の塩(B)とは、水分子を結晶水として取り込む性質を有して、かつ23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である金属塩を意味し、結晶水を飽和量未満に含有する金属塩水和物の脱水物である。
なお、[ ]間の数値(水和量)は、水和時の飽和量である。
・ アルミニウム塩(硫酸アルミニウム[16水和物]、塩化アルミニウム[6水和物]、硝酸アルミニウム[9水和物]、硫酸カリウム・アルミニウム[12水和物]、硫酸ナトリウム・アルミニウム[12水和物]、硫酸アンモニウム・アルミニウム[12水和物]など)
・ ガリウム塩(硝酸ガリウム[8水和物]など)
・ インジウム塩(塩化インジウム[4水和物]、硝酸インジウム[3水和物]など)
・ タリウム塩(硝酸タリウム[3水和物]など)
・ 鉄塩(硫酸鉄(II)[7水和物]、硫酸鉄(III)[9水和物]、塩化鉄(II)[4水和物]、塩化鉄(III)[6水和物]、硝酸鉄(II)[6水和物]、硝酸鉄(III)[9水和物]、硫酸アンモニウム・鉄(II)[6水和物]、硫酸アンモニウム・鉄(III)[12水和物]など)
・ コバルト塩(硫酸コバルト(II)[6水和物]、硝酸コバルト(II)[6水和物]など)
・ 銅塩(硫酸銅(II)[5水和物]、塩化銅(II)[2水和物]など)
・ クロム塩(硝酸クロム(III)[9水和物]、硫酸カリウム・クロム(III)[12水和物]など)
・ マンガン塩(硝酸マンガン(II)[6水和物]など)
・ ジルコニウム塩(オキシ塩化ジルコニウム(IV)[8水和物]、オキシ硝酸ジルコニウム(IV)[2水和物]など)
・ 亜鉛塩(塩化亜鉛(II)[1.5水和物]、硝酸亜鉛(II)[6水和物]など)
・ カドミウム塩(硫酸カドミウム(II)[8水和物]、硝酸カドミウム(II)[4水和物]など)
・ セリウム塩(硫酸セリウム(IV)[4水和物]など)
かかる水和数が多すぎる場合には、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)が過剰な水分を取り込んで水泡発生する傾向があり、かかる水和数が少なすぎる場合には、熱水処理(レトルト処理)後のガスバリア性が十分とならない傾向がある。
ここで、測定値としての含水率は、化合物全体に対する水分量の割合であり、250℃で1時間保持後の重量変化量を含水量として測定し、測定開始時の化合物重量に対する含水率として算出した値である。
この23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)をEVOH樹脂(A)に配合した樹脂組成物を中間層に用いて、接着樹脂層を介してポリオレフィン系樹脂層で挟持した多層構造体を高温高湿度下で放置した場合には、樹脂組成物層と接着樹脂層の層間での過剰な吸湿に伴う水溶化や水分移動が抑制される結果、水泡状の欠点が発生しない外観良好な多層構造体を得ることが可能となる。
かかる比率が大きすぎる場合にはEVOH樹脂(A)に入り込んだ水分を除去する効果が不足し、熱水処理(レトルト処理)後のガスバリア性が十分とならない傾向があり、また、小さすぎる場合にはEVOH樹脂(A)の層が形成されず、ガスバリア性が十分とならない傾向がある。
本発明における塩基性物質(C)とは、EVOH樹脂の溶融混錬を行う温度条件(通常300℃以下の温度)において溶融する性質を有し、かつ塩基性を示す化合物を意味し、塩基性物質(C)を配合することによって、溶融成形の際に塩基性物質(C)が融解して23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)を中和する作用が働き、溶融成形安定性を向上させる効果が得られる。
・ ナトリウム塩(酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)
・ カリウム塩(酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、乳酸カリウム、炭酸カリウムなど)
・ マグネシウム塩(酢酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムなど)
・ カルシウム塩(酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウムなど)
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなど
・ 脂肪族アルキルアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)
・ グアニジン系化合物(炭酸グアニジン、スルファミン酸グアニジンなど)
・ 塩基性アミノ酸(アルギニンなど)
・ アミン系高分子(ポリエチレンイミンなど)
かかる比率が小さすぎる場合には長時間加工した際に溶融粘度の増加、フィルムのフィッシュアイ増加が発生する傾向があり、また、大きすぎる場合には着色や熱分解が発生し易くなり樹脂組成物の品質や溶融成形性に悪影響を及ぼす傾向がある。
かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると着色や熱分解が発生し易くなり樹脂組成物の品質に悪影響を及ぼす傾向がある。
なお、EVOH樹脂(A)に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
かかる比率が大きすぎる場合にはEVOH樹脂(A)に入り込んだ水分を除去する効果が不足し、熱水処理(レトルト処理)後のガスバリア性が十分とならない傾向があり、また、小さすぎる場合にはEVOH樹脂(A)の層が形成されず、ガスバリア性が十分とならない傾向がある。
本発明のEVOH樹脂組成物には、EVOH樹脂(A)以外に、他の熱可塑性樹脂(D)を、EVOH樹脂(A)に対して、通常30重量%以下にて含有してもよい。
例えば具体的には、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーが挙げられる。また共重合ポリアミド系樹脂としては、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ−P−フェニレンテレフタルアミドや、ポリ−P−フェニレン・3−4’ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等が挙げられる。あるいはこれらの末端変性ポリアミド系樹脂であってもよく、好ましくは末端変性ポリアミド系樹脂である。
100×Y/(X+Y)≧5
を満足する末端変性ポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。
本発明のEVOH樹脂組成物には、ガスバリア性を向上させる目的で、EVOH樹脂(A)(所望により、さらに他の熱可塑性樹脂(D))、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)、及び塩基性物質(C)の他、さらに板状無機フィラー(E)を含有してもよい。
本発明のEVOH樹脂組成物には、熱水処理(レトルト処理)後のガスバリア性を改善する目的で、EVOH樹脂(A)(所望により、さらに他の熱可塑性樹脂(D))、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)、及び塩基性物質(C)の他、さらに酸素吸収剤(F)を含有してもよい。
酸素吸収剤とは、包装される内容物よりも素早く酸素を捕捉する化合物または化合物系である。具体的には、無機系の酸素吸収剤、有機系の酸素吸収剤、無機触媒と有機化合物を組み合わせて用いる複合型酸素吸収剤等が挙げられる。
本発明のEVOH樹脂組成物には、上記成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り(例えば、樹脂組成物全体の5重量%未満にて)、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン)等の滑剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等);充填材(例えば無機フィラー等);結晶核剤(例えばタルク、カオリン等);界面活性剤、ワックス;分散剤(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸モノグリセリド等);共役ポリエン化合物、アルデヒド化合物(例えばクロトンアルデヒドなどの不飽和アルデヒド類等)などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
なお、かかる共役ポリエン化合物は、EVOH樹脂(A)に、あらかじめ含有されていることが好ましい。
本発明におけるEVOH樹脂(A)、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)、及び塩基性物質(C)を含有する樹脂組成物は、高化式フローテスターで測定したフローレイト値が下記の関係式(1)(2)を満足することを特徴とする。
0.001<FR(5)<0.1 ・・・(1)
0.3<FR(45)/FR(5)<3 ・・・(2)
但し、
FR(5):230℃,滞留5分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)
FR(45):230℃,滞留45分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)
高化式フローテスターで測定したフローレイト値(cm3/s)は、特定の温度及び荷重条件における溶融粘度状態を表す指標であり、数値が小さいほど溶融樹脂の流動性が小さくなり、即ち樹脂組成物の溶融粘度が大きいことを意味する。反対に、数値が大きいほど溶融樹脂の流動性が大きくなり、即ち樹脂組成物の溶融粘度が小さいことを意味する。
本発明の樹脂組成物において、FR(5)は、0.001〜0.1、好ましくは0.001〜0.05、特に好ましくは0.002〜0.01である。かかるフローレイト値が小さすぎると押出機の負荷が高くなり押出成形が困難になり、逆に大きすぎると成形物の寸法安定性が低下して良質な押出成形物が得られない傾向がある。
本発明の樹脂組成物において、FR(45)は、0.001〜0.1、好ましくは0.001〜0.05、特に好ましくは0.002〜0.01である。かかるフローレイト値が小さすぎると押出機を再運転する場合において押出機の負荷が高くなり押出成形が困難になり、逆に大きすぎると押出機を再運転する場合において成形物の寸法安定性が低下して良質な押出成形物が得られない傾向がある。
本発明の樹脂組成物において、FR(45)/FR(5)の比率は、0.3〜3、好ましくは0.4〜2.5、特に好ましくは0.5〜2である。かかる比率が小さすぎると長時間加工した際に溶融粘度の増加、フィルムのフィッシュアイ増加が発生する傾向があり、逆に大きすぎると着色や熱分解が発生し易くなり樹脂組成物の品質や溶融成形性に悪影響を及ぼす傾向がある。
上記のEVOH樹脂(A)と、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)と、塩基性物質(C)を混合するにあたっては、通常溶融混錬または機械的混合法(ペレットドライブレンド)を行ない、好ましくは溶融混錬法である。具体的には、各成分をドライブレンド後に溶融混合する方法や、溶融状態のEVOH樹脂(A)に23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)と塩基性物質(C)を混合する方法が挙げられる。
また、流通時のコストの点から、(5)の方法のように、一旦(B)と(C)の高濃度組成物を製造し、成形時に希釈して用いることも好ましい。このとき、(B)と(C)の高濃度組成物とEVOH樹脂(A)との含有比は、(B)と(C)の高濃度組成物の組成にもよるが、EVOH樹脂(A)/(B)の高濃度組成物の重量比にて通常10/90〜99/1であり、好ましくは20/80〜95/5であり、特に好ましくは30/70〜90/10である。
特に、EVOH樹脂(A)として、例えば(A1)と(A2)の2種類のEVOHを用いる場合には、(6)(A1)と(A2)と(B)と(C)を同時に機械的混合する方法、(7)(A1)と(A2)と(B)と(C)を同時に溶融ブレンドする方法、(8)(A1)と(A2)と(B)を予め溶融ブレンドした後に、(C)を機械的混合または溶融ブレンドする方法、(9)(A1)と(A2)と(C)を予め溶融ブレンドした後に、(B)を機械的混合または溶融ブレンドする方法、(10)予め(A1)または(A2)のどちらか一方に、(B)と(C)を溶融ブレンドし、次いで、他方の樹脂を機械的混合または溶融ブレンドする方法、(11)予め(A1)および/または(A2)に(B)と(C)を過剰量配合して溶融ブレンドした(B)と(C)の高濃度組成物を製造し、かかる(B)と(C)の高濃度組成物に(A1)および/または(A2)を加えてブレンドし、(B)と(C)成分を希釈する方法がある。
場合によっては(B)の水溶液に(A)および/または他の熱可塑性樹脂を浸漬するこ
とにより(B)を含有させ、乾燥することによって製造する方法も採用可能である。
本発明における(B)は、樹脂組成物を成形した成形物中において、水和物形成能を有
することが必要であるため、(B)の水溶液に(A)および/または他の熱可塑性樹脂を
浸漬することにより(B)を含有させてから乾燥する方法は、(B)の水和物形成能を低
下させる傾向があるため採用し難い。
また、場合によっては、EVOH樹脂(A)と水和物形成性の塩(B)の飽和水和物を混合し、溶融混練することで、水和物形成性の塩(B)の飽和水和物が有する水和水を蒸発させて本発明の樹脂組成物を得る方法も採用可能であるが、かかる方法では樹脂組成物中に発泡が起こる傾向があるため採用し難い。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形法により例えばフィルム、シート、カップやボトルなどに成形することができる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等が挙げられる。溶融成形温度は、通常150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
本発明の多層構造体は、上記本発明の樹脂組成物を含む層を少なくとも1層有するものである。本発明の樹脂組成物を含む層(以下、単に「樹脂組成物層」というと、本発明の樹脂組成物を含む層をいう)は、他の基材と積層することで、さらに強度を上げたり他の機能を付与することができる。
上記基材としては、EVOH樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下「他の熱可塑性樹脂」という)が好ましく用いられる。
上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を介層してもよい。
また、本発明の樹脂組成物から得られた多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定するなどの処理を行えばよい。
特に、本発明の樹脂組成物からなる層は、熱水処理後のガスバリア性が優れるため、熱水処理を行なう食品の包装材料として特に有用である。
尚、例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
〔水和物形成性の塩(B)〕
硫酸カリウム・アルミニウム無水物(和光純薬工業製)をそのまま用いた。水分量を熱重量測定装置にて測定した結果、0.5%であった。
硫酸カリウム・アルミニウム無水物0.5gを49.5gの蒸留水に入れて80℃、1時間の溶解処理で濃度1重量%水溶液を作製し、pH分析装置「MP230(メトラートレド製)」にて23℃条件におけるpHを測定した。
これらの評価結果を表1に示す。
EVOH(A)として、EVOH(エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物:エチレン
構造単位の含有量29モル%、ケン化度99.6%、MFR4g/10分(210℃、荷
重2160g)、揮発分0.2%)90部、塩基性物質(C)として酢酸ナトリウム(和光純薬工業製 特級試薬)2.5部(Na量換算:0.70部)を230℃で2分間溶融混練させた後に、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)として硫酸カリウム・アルミニウム無水物(和光純薬工業製)10部を追加して230℃で3分間溶融混練させた後にニーダーから混合樹脂を取り出して、水和物形成性の塩(B)、塩基性物質(C)を含有するEVOH樹脂組成物を調整した。
(溶融混練条件)
・溶融混練装置(ニーダー):プラストグラフ(ブラベンダー製)
・装置設定温度 :230℃
・ニーダー回転数 :50ppm
得られたEVOH樹脂組成物を粉砕処理したのち、高化式フローテスター装置「フローテスターCFT−500D(島津製作所製)」にて、下記に示した条件で、230℃,滞留5分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)、及び230℃,滞留45分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)を測定した。
(溶融粘度評価条件)
温度 230℃
荷重 9.807×105Pa
ダイ L=10mm、D=1mm
予熱時間 30秒
測定位置 3.0mm〜7.0mm位置で計測
これらの評価結果を表2に示す。
得られたEVOH樹脂組成物55gを、温度230℃に設定されたトルク検出型レオメータ(ブラベンダー社製「プラストグラフ」)に投入し、5分間予熱した後、回転数50rpmで溶融混練した時のトルク値(Nm)を経時的(溶融混練開始の1分後、50分後、75分後、100分後)に測定した。
さらに、粘度変動度として、溶融混練開始1分後に対する50分後のトルク比(50min/1min)を算出溶融混練開始1分後に対する100分後のトルク比(100min/1min)を算出した。上式で算出される粘度変動度が1以下の場合には溶融粘度減少を意味し、1以上の場合には溶融粘度増大を意味する。
これらの評価結果を表3に示す。
実施例1において、塩基性物質(C)の酢酸ナトリウム量を1.0部(Na量換算:0.28部)に変更した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を作製し、同様に評価した。
実施例1において、塩基性物質(C)の酢酸ナトリウム量を0.3部(Na量換算:0.084部)に変更した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を作製し、同様に評価した。
実施例1において、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)として、硫酸カリウム・アルミニウム無水物の代わりに、硫酸マグネシウム無水物(和光純薬工業製)を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を作製し、同様に評価した。
Claims (2)
- エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化物(A)、23℃、濃度1重量%の水溶液状態におけるpHが1〜5である水和物形成性の塩(B)、及び塩基性物質(C)を含有する樹脂組成物であって、高化式フローテスターで測定したフローレイト値が下記の関係式(1)(2)を満足する樹脂組成物。
0.001<FR(5)<0.1 ・・・(1)
0.3<FR(45)/FR(5)<3 ・・・(2)
但し、
FR(5):230℃,滞留5分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s)
FR(45):230℃,滞留45分後における9.807×105Pa下でのフローレイト(cm3/s) - 請求項1に記載のエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化物組成物を含有する層を少なくとも1層有する多層構造体。
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