以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、位置センサ4と、トランスミッター5と、装置本体10とを有する。また、装置本体10は、ネットワーク100を介して外部装置6と接続される。
超音波プローブ1は、複数の振動子を有し、これら複数の振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。超音波プローブ1が有する振動子は、例えば、圧電振動子である。超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
例えば、本実施形態では、被検体Pの2次元走査用に、複数の圧電振動子が一列で配置された1Dアレイプローブが超音波プローブ1として装置本体10と接続される。例えば、超音波プローブ1としての1Dアレイプローブは、セクタ走査を行なうセクタプローブや、オフセットセクタ走査を行なうコンベックスプローブ、リニア走査を行なうリニアプローブ等である。
或いは、例えば、本実施形態では、被検体Pの3次元走査用に、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブが超音波プローブ1として装置本体10と接続されても良い。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
位置センサ4及びトランスミッター5は、超音波プローブ1の位置情報を取得するための装置である。例えば、位置センサ4は、超音波プローブ1に取り付けられる磁気センサである。また、例えば、トランスミッター5は、任意の位置に配置され、自装置を中心として外側に向かって磁場を形成する装置である。
位置センサ4は、トランスミッター5によって形成された3次元の磁場を検出する。そして、位置センサ4は、検出した磁場の情報に基づいて、トランスミッター5を原点とする空間における自装置の位置(座標及び角度)を算出し、算出した位置を装置本体10に送信する。ここで、位置センサ4は、自装置が位置する3次元の座標及び角度を、超音波プローブ1の3次元位置情報として、装置本体10に送信する。
なお、本実施形態は、位置センサ4及びトランスミッター5を用いた位置検出システム以外のシステムにより、超音波プローブ1の位置情報を取得する場合であっても適用可能である。例えば、本実施形態は、ジャイロセンサや加速度センサ等を用いて、超音波プローブ1の位置情報を取得する場合であっても良い。
入力装置3は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される。入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール等を有する。かかる入力装置3は、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体10に転送する。
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
外部装置6は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される装置である。例えば、外部装置6は、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベースや、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベース等である。或いは、外部装置6は、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等、図1に示す超音波診断装置以外の各種医用画像診断装置である。
例えば、図1に示す装置本体10は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に則った画像フォーマットに統一された各種医用画像のデータを、インターフェース部19を介して外部装置6から取得することができる。例えば、装置本体10は、後述するインターフェース部19を介して、自装置で生成した超音波画像データとの合成対象となる各種医用画像データ(例えば、2次元や3次元のX線CT画像データ、2次元や3次元のMRI画像データ等)を、外部装置6から取得する。
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。図1に示す装置本体10は、2次元の反射波信号に基づいて2次元の超音波画像データを生成可能であり、3次元の反射波信号に基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。ただし、本実施形態は、装置本体10が、2次元データ専用の装置である場合であっても適用可能である。
装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、画像処理部17と、制御部18と、インターフェース部19とを有する。
送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、超音波プローブ1が行なう超音波送受信を制御する。送受信部11は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信部11は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
送受信部11は、被検体Pを2次元走査する場合、超音波プローブ1から2次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信部11は、被検体Pを3次元走査する場合、超音波プローブ1から3次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
なお、送受信部11からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
Bモード処理部12及びドプラ処理部13は、送受信部11が反射波信号から生成した反射波データに対して、各種の信号処理を行なう信号処理部である。Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。また、ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。移動体として血流を対象とする場合、移動体情報は、血流が存在する領域の各サンプル点における速度、分散、パワー等の情報を示す血流情報となる。
なお、図1に例示するBモード処理部12及びドプラ処理部13は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部12は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部13は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成部14は、超音波画像データに、付帯情報(種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等)を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像生成部14は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データである「2次元Bモードデータや2次元ドプラデータ」から、表示用の2次元超音波画像データである「2次元のBモード画像データや2次元ドプラ画像データ」を生成する。
更に、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。画像生成部14は、「3次元のBモード画像データや3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(超音波ボリュームデータ)」として生成する。
更に、画像生成部14は、ボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なう。画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
更に、画像生成部14は、他の医用画像診断装置が撮像したボリュームデータに対して、上記のレンダリング処理を行なうことができる。かかるボリュームデータは、X線CT装置により撮像された3次元のX線CT画像データ(以下、X線CTボリュームデータ)や、MRI装置により撮像された3次元のMRI画像データ(以下、MRIボリュームデータ)である。
なお、本実施形態に係る超音波診断装置は、上述したBモード及びドプラモード以外にも、様々なモードで、様々な情報を提供可能な超音波画像データを生成表示することができる。例えば、本実施形態に係る超音波診断装置は、エラストグラフィーイメージングを行なう。エラストモードでは、画像生成部14は、ドプラ処理部13が信号処理を行なった反射波データ(反射波信号)から、組織の硬さを示す指標(弾性率)を画像化した画像データ(弾性画像データ)を生成する。例えば、エラストモードでは、操作者は、超音波送受信を行なっている超音波プローブ1の振動子面で生体組織を圧迫して開放する。これにより、組織が変形し、組織に動きが発生する。組織の動きに関する情報は、反射波信号(反射波データ)の位相のずれとして現われる。
エラストモードでは、例えば、ドプラ処理部13は、反射波データの位相のずれから、速度情報を算出し、速度情報の時間積分である変位を計測する。そして、ドプラ処理部13は、変位を空間的に微分することで、歪み(ストレイン)を算出する。なお、変位を計測する方法としては、「自己相関法」や、「相互相関法」、「複合自己相関法」、「ゼロ位相法」等がある。硬い生体組織ほど変形しにくいので、硬い生体組織のストレイン値は小さくなり、軟らかい生体組織のストレイン値は大きくなる。すなわち、ストレインの値は、組織の硬さ(弾性率)を示す指標値となる。画像生成部14は、ドプラ処理部13が算出した多点のストレインの値の大きさに応じて、色調を変化させた弾性画像データを生成する。なお、画像生成部14は、ストレインの値の大きさに応じて、色調を変化させた画素を、Bモード画像データに重畳した画像データを、弾性画像データとして生成しても良い。
なお、エラストモードでは、超音波プローブ1による圧迫及び開放で組織を変形させる方法の他に、超音波プローブ1から送信した高音圧の「Push Pulse」により組織を変形させ、組織を伝搬する横波であるせん断波(Shear Wave)を形成し、更に、せん断波の伝搬速度等に基づいて、組織弾性を評価する方法もある。また、エラストモードでは、せん断波を形成する方法や、用手的に組織を圧迫解放する方法の他に、例えば、拍動や横隔膜の移動によって引き起こされる組織変形を検出して弾性率を算出する方法もある。また、弾性画像データは、Bモード処理部12が信号処理を行なった反射波データ(反射波信号)から生成される場合もある。例えば、弾性画像データは、時系列に沿って生成された複数のBモード画像データ(又は、Bモードデータ)を用いたスペックルトラッキング処理により、複数の追跡点を追跡した結果から多点の変位及び歪みを算出することで、生成することもできる。
また、例えば、本実施形態に係る超音波診断装置は、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)や、ティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)等のハーモニックイメージングを行なう。例えば、図1に示すBモード処理部12は、フィルタ処理により、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。Bモード処理部12は、造影剤が注入された被検体Pの反射波データから、造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とするハーモニック成分の反射波データ(高調波データ)と、被検体P内の組織を反射源とする基本波成分の反射波データ(基本波データ)とを分離することができる。CHIモードでは、Bモード処理部12は、ハーモニック成分の反射波データから、造影超音波画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。また、このBモード処理部12のフィルタ処理機能を用いることにより、THIモードにおいて、被検体Pの反射波データから、ハーモニック成分の反射波データである高調波データを分離することができる。そして、Bモード処理部12は、ハーモニック成分の反射波データから、サイドローブ成分等のノイズ成分を除去した超音波画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
また、CHIモードやTHIモードを行なう際、Bモード処理部12は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行なわれる。AM法、PM法及びAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回行なう。これにより、送受信部11は、各走査線で複数の反射波データを生成し出力する。そして、Bモード処理部12は、各走査線の複数の反射波データを、変調法に応じた加減算処理することで、ハーモニック成分を抽出する。そして、Bモード処理部12は、ハーモニック成分の反射波データに対して包絡線検波処理等を行なって、Bモードデータを生成する。
例えば、PM法が行なわれる場合、送受信部11は、制御部18が設定したスキャンシーケンスにより、例えば(−1,1)のように、位相極性を反転させた同一振幅の超音波を、各走査線で2回送信させる。そして、送受信部11は、「−1」の送信による受信信号と、「1」の送信による受信信号とを生成し、Bモード処理部12は、これら2つの受信信号を加算する。これにより、基本波成分が除去され、2次高調波成分が主に残存した信号が生成される。そして、Bモード処理部12は、この信号に対して包絡線検波処理等を行なって、THIのBモードデータやCHIのBモードデータを生成する。上述した様々なCHIモードで生成されたBモードデータは、画像生成部14の処理により、被検体Pの撮影部位で流動する造影剤(すなわち、血流)が存在する領域を映像化した超音波造影画像データとなる。
なお、上述した各種モードはあくまでも一例であり、本実施形態に係る超音波診断装置は、その他、公知の様々なモードでの2次元イメージング、又は、3次元イメージング処を、実行可能である。
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ15が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部14を経由して表示用の超音波画像データとなる。なお、画像メモリ15は、後述する画像処理部17が生成した画像データも記憶する。
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部16が記憶するデータは、後述するインターフェース部19を経由して、外部装置6へ転送することができる。
画像処理部17は、画像診断支援のために設置される。本実施形態に係る画像処理部17は、図1に示すように、抽出部171、同定部172及び合成部173を有し、画像生成部14が生成した超音波画像データと、外部装置6から取得した他種医用画像データとを用いた画像処理を行なう。具体的には、本実施形態に係る画像処理部17は、画像データ間の空間的な位置を対応付ける位置合わせ情報に基づいて位置合わせされた超音波画像データ及び他種医用画像データを用いた画像合成処理を行なう。なお、画像処理部17が実行する処理については、後に詳述する。
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定情報や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14及び画像処理部17の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ15や内部記憶部16が記憶する表示用の画像データをモニタ2にて表示するように制御する。また、制御部18は、操作者から入力装置3を介して受け付けた医用画像データが外部装置6からネットワーク100及びインターフェース部19を介して内部記憶部16や画像メモリ15、或いは、画像処理部17に転送されるように制御する。
インターフェース部19は、入力装置3、ネットワーク100及び外部装置6に対するインターフェースである。入力装置3が受け付けた操作者からの各種設定情報及び各種指示は、インターフェース部19により、制御部18に転送される。例えば、入力装置3が操作者から受け付けた画像データの転送要求は、インターフェース部19により、ネットワーク100を介して外部装置6に通知される。また、外部装置6が転送した画像データは、インターフェース部19により、内部記憶部16や画像メモリ15、或いは、画像処理部17に格納される。
以上、本実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成において、本実施形態に係る超音波診断装置は、以下に説明する画像処理部17により、撮影部位の様々な情報が得られる画像を簡易に得るための処理を行なう。
ここで、上述したように、本実施形態に係る画像処理部17は、画像データ間の空間的な位置を対応付ける位置合わせ情報に基づいて位置合わせされた超音波画像データ及び他種医用画像データを用いた画像合成処理を行なう。以下、画像データ間の空間的な位置を対応付ける位置合わせ処理の一例を、図2を用いて説明した後に、画像処理部17が行なう処理について説明する。図2は、本実施形態に係る位置合わせ処理の一例を示す図である。本実施形態では、一例として、図1及び図2に示す位置センサ4及びトランスミッター5で構成される位置検出システムを用いた制御部18の処理により、画像データ間の空間的な位置を対応付ける位置合わせが行われる。
例えば、操作者は、超音波プローブ1を用いて被検体Pの超音波検査を行なう前に、被検体Pの撮影部位(検査部位)を撮影したX線CTボリュームデータ101(図2を参照)の転送要求を行なう。図2に示すX線CTボリュームデータ101は、例えば、被検体Pの撮像部位を含む3次元領域を撮影したデータであり、例えば、500枚のアキシャル面のX線CT画像データで構成される。制御部18の制御により、モニタ2は、これら複数のアキシャル面のX線CT画像データの1つを表示する。そして、操作者は、被検体Pの撮影部位におけるアキシャル面を走査するように、超音波プローブ1を被検体Pの体表に垂直方向に当接し、入力装置3が有するセットボタンを押下する。制御部18は、ボタンが押下された時点で位置センサ4から取得した超音波プローブ1の3次元位置情報を初期位置情報として、取得する。また、モニタ2は、図2に示すように、セットボタンが押下された時点で、画像生成部14が生成した超音波画像データ200を表示する。
そして、操作者は、超音波画像データ200と略同一断面のX線CT画像データがモニタ2に表示されるように、例えば、入力装置3のマウス等を操作する。そして、操作者は、超音波画像データ200と、略同一断面(同一アキシャル面)のX線CT画像データ102が表示された時点で、再度、セットボタンを押下する。これにより、制御部18は、X線CTボリュームデータ101において、初期位置情報で示される超音波プローブ1の走査断面と略同一断面の位置を取得する。この段階で、超音波プローブ1の位置が操作者により移動された場合でも、位置センサ4から取得した超音波プローブ1の3次元位置情報から、制御部18は、超音波プローブ1の走査断面と同一断面をX線CTボリュームデータ101において特定することが可能になる。
更に、操作者は、X線CT画像データ102及び超音波画像データ200それぞれで対応する特徴点を、少なくとも1組指定する。制御部18は、X線CT画像データ102で指定された特徴点の位置と、超音波画像データ200で指定された特徴点の位置とを用いて、超音波画像データ200の各点の座標を、X線CT画像データ102(X線CTボリュームデータ101)で対応する各点の座標に変換するための変換行列を算出する。これにより、制御部18は、超音波プローブ1の位置が操作者により移動された場合でも、位置センサ4から取得した超音波プローブ1の3次元位置情報から、超音波プローブ1の走査断面と同一断面をX線CTボリュームデータ101で特定し、更に、特定した断面内で、超音波プローブ1の走査により生成された超音波画像データの各座標に対応する座標を、変換行列を用いて算出することができる。
制御部18は、変換行列を用いて取得した位置合わせ情報を画像生成部14に通知する。画像生成部14は、かかる位置合わせ情報を用いて、現時点で走査され生成された超音波画像データと位置合わせされたX線CT画像データ(MPR画像データ)を、X線CTボリュームデータ101から生成する。なお、上記の位置合わせ処理は、超音波プローブ1により3次元走査が行われる場合でも適用可能である、かかる場合、制御部18は、現時点で走査され生成された超音波ボリュームデータとほぼ一致する3次元領域をX線CTボリュームデータ101から特定し、特定した3次元領域内の各位置が、超音波ボリュームデータでどの位置に対応するかを示す位置合わせ情報を取得する。また、上記の位置合わせ処理は、他種医用画像データが、MRI画像データ(MRIボリュームデータ)であっても適用可能である。
ただし、本実施形態は、異なるモダリティにより生成された医用画像データ間の空間的な位置を対応付ける位置合わせ情報に基づく位置合わせ処理が、相互相関や自己相関、相互情報量、標準化相互情報量、相関比等を用いた公知の技術により行われる場合であっても良い。
上記の処理により空間的な位置を対応付ける位置合わせ情報に基づいて位置合わせされた超音波画像データ及び他種医用画像データは、画像処理部17に転送され、画像処理部17が有する各部は、以下の処理を行なう。以下、図3を用いて、本実施形態に係る画像処理部17が行なう画像処理の概要について説明する。図3は、本実施形態に係る画像処理部が行なう画像処理の概要を示す図である。
抽出部171は、図3の左上図に示すように、画像データ間の空間的な位置を対応付ける位置合わせ情報に基づいて位置合わせされた超音波画像データ及び他種医用画像データの一方の画像データである第1画像データの特定領域を、画像処理により抽出する。具体的には、抽出部171は、他方の画像データである第2画像データから得られない情報が得られる領域を特定領域として、第1画像データから抽出する。より具体的には、抽出部171は、操作者が設定した情報に基づく画像処理により、第1画像データから特定領域を抽出する。例えば、抽出部171は、操作者が設定した被検体部位の情報に基づくセグメンテーション処理により、第1画像データから特定領域を抽出する。
そして、同定部172は、図3の左下図に示すように、第2画像データにて特定領域に対応する対応領域を、位置合わせ情報(変換行列)を用いて同定する。すなわち、同定部172は、第2画像データにおける特定領域に対応する対応領域の位置を、位置合わせ情報(変換行列)を用いて求める。第1画像データの特定領域は、第2画像データの対応領域からは得られない情報が得られる領域、又は、第2画像データの対応領域から得られる情報を補う情報が得られる領域である。
そして、合成部173は、第2画像データの対応領域を、特定領域における第1画像データに基づいて変更した合成画像データを生成する。例えば、合成部173は、図3の右図に示すように、第2画像データの対応領域を、特定領域に入れ替えた合成画像データを生成する。合成画像データは、図3の右図に示すように、第2画像データをベースとし、対応領域が特定領域に入れ替わった画像データとなる。なお、合成部173は、位置合わせ情報(変換行列)に基づいて、特定領域を全体的に拡大、或いは、縮小して、対応領域のサイズにして、合成処理を行なう。或いは、合成部173は、位置合わせ情報(変換行列)に基づいて、特定領域を部分的に拡大、或いは、縮小して、対応領域のサイズにして、合成処理を行なう。
そして、制御部18は、合成画像データをモニタ2に表示させる。医師等の操作者は、1枚の合成画像データを参照することで、第2画像データの対応領域以外の領域の情報とともに、対応領域では得られない情報を、位置合わせされた特定領域から得ることができる。
上記の概要で示した画像処理の様々な具体例について、図4〜図7等を用いて説明する。図4〜図7は、本実施形態に係る画像処理の具体例を示す図である。なお、以下では、超音波画像データとの空間的な位置を対応付けて位置合わせされた他種医用画像データが、X線CT画像データである場合について説明する。ただし、以下で説明する具体例は、他種医用画像データが、例えば、超音波画像データと位置合わせされたMRI画像データである場合であっても適用可能である。以下で説明する具体例は、抽出部171が特定領域を抽出する画像処理として、操作者が設定した被検体部位の情報に基づくセグメンテーション処理を行なうものである。
図4に示す一例(以下、第1パターン)では、抽出部171は、超音波を伝搬しない物質により超音波画像データで映像化されていない領域に該当する領域を特定領域として、他種医用画像データから抽出する。ここで、超音波を伝搬しない物質とは、生体内の骨や、腸内ガス等の空気である。通常の撮影条件で送信される超音波は、骨や空気により略全反射されるため、骨や空気より深い位置には伝搬しない。その結果、超音波画像データ(Bモード画像データ)では、図4の右上図に示すように、例えば、骨より深い位置の領域は、超音波ビームの送信方向に応じた形状で暗くなる。一方、例えば、被検体Pの全周囲でX線を照射することで、複数ビューの投影データを収集して再構成されたX線CT画像データには、骨及び骨の周囲の組織が明瞭に描出されている(図4の左上図を参照)。
操作者は、位置合わせされた超音波画像データ(Bモード画像データ)及びX線CT画像データを参照して、「超音波画像データ:骨」といった設定情報を入力する。そして、操作者が、合成処理開始を指示すると、制御部18は、図4に示すように、第1画像データがX線CT画像データであると決定し、合成のベースとなる第2画像データが超音波画像データであると決定する。そして、抽出部171は、制御部18の指示により、骨のCT値に相当する骨領域の抽出を、例えば、領域拡張法によるセグメンテーション処理により行なう。そして、抽出部171は、骨領域で、画像の最上部に位置する線(曲線)を特定する。そして、抽出部171特定した曲線と、超音波の送信方向から、図4の左上図に示すように、白い線で囲まれた特定領域を、第1画像データであるX線CT画像データから抽出する。すなわち、抽出部171は、骨領域から深い位置にある領域を特定領域として、他種医用画像データとしてのX線CT画像データから抽出する。
そして、同定部172は、抽出部171が抽出した特定領域の位置から位置合わせ情報(変換行列)を用いて、第2画像データである超音波画像データにおける対応領域の位置を求めることで、図4の右上図に示すように、対応領域を同定する。そして、合成部173は、図4の下図に示すように、超音波画像データをベースとし、対応領域をX線CT画像データの特定領域に入れ替えた合成画像データを生成する。かかる合成画像データを参照することで、医師は、超音波画像データで描出されていない領域を、特定領域により視認することができる。なお、「超音波画像データ:空気」が設定された場合、抽出部171は、空気領域から深い位置にある領域を特定領域として、他種医用画像データとしてのX線CT画像データから抽出する。
次に、図5に示す一例(以下、第2パターン)では、超音波画像データは、ドプラ画像データ、すなわち、ドプラ効果に基づく血流情報が描出された超音波画像データである。また、図5に示すように、第2パターンでは、他種医用画像データとしてのX線CT画像データは、非造影撮影で得られた非造影X線CT画像データである。第2パターンでは、抽出部171は、血流情報が存在する領域の中で他種医用画像データの管腔領域に該当する領域を特定領域として、超音波画像データ(ドプラ画像データ)から抽出する。すなわち、非造影X線CT画像データでは、組織構造が明瞭に描出されているが、血流が存在する血管内(管腔領域)は、図5の右図に示すように、暗く描出されている。操作者は、かかる暗い領域が、血流が存在する領域であるのか否かを、簡単に判断することが困難である。一方、ドプラ画像データには、図5の左図に示すように、ドプラ周波数偏移が生じる血流が存在する範囲に、上述した血流情報が付与されている。かかる血流情報は、血流が存在していることを示すだけでなく、血流の速度、分散、パワー等の情報を含んでいる。
操作者は、位置合わせされた超音波画像データ(ドプラ画像データ)及び非造影X線CT画像データを参照して、「非造影X線CT画像データ:管腔」といった設定情報を入力する。そして、操作者が、合成処理開始を指示すると、制御部18は、図5に示すように、第1画像データがドプラ画像データであると決定し、合成のベースとなる第2画像データが非造影X線CT画像データであると決定する。そして、抽出部171は、制御部18の指示により、ドプラ画像データで血流情報が得られている全画素を特定する。そして、抽出部171は、例えば、特定した全画素が占める領域の中で、管状の領域となる領域を2値化処理により求め、求めた領域を特定領域として抽出する(図5の左図を参照)。
そして、同定部172は、抽出部171が抽出した特定領域の位置から位置合わせ情報(変換行列)を用いて、第2画像データである非造影X線CT画像データから、図5の右図に示すように、対応領域を同定する。これにより、合成部173は、非造影X線CT画像データをベースとし、対応領域をドプラ画像データの特定領域に入れ替えた合成画像データを生成する。
なお、第2パターンでは、抽出部171が、血流情報が存在する領域(例えば、血流情報が得られている全画素が占める領域を、孤立点除去等で平滑化処理した領域)を特定領域とする場合であっても良い。かかる合成画像データを参照することで、医師は、非造影X線CT画像データで描出されていない血流情報を、特定領域により視認することができる。また、上記の一例では、医師は、ドプラモードの超音波検査を行なうだけで、X線CT検査において造影検査を行なうことなく、血流情報を得ることができる。なお、上記の一例では、抽出部171が非造影X線CT画像データの管腔領域(対応領域)を抽出し、同定部172が位置合わせ情報を用いてドプラ画像データの特定領域を同定しても良い。
次に、図6に示す一例では、3種類のパターンを示している。すなわち、図6に示す一例では、「第1画像データ:超音波画像データ(造影)、第2画像データ:X線CT画像データ(非造影)」である第3パターンと、「第1画像データ:X線CT画像データ(造影)、第2画像データ:超音波画像データ(非造影)」である第4パターンと、「第1画像データ:超音波画像データ(エラストグラフィ)、第2画像データ:X線CT画像データ」である第5パターンを示している。
図6に示す第3パターンは、造影検査回数を減らすことが可能となるパターンである。すなわち、第3パターンでは、超音波画像データが造影撮影で得られた造影超音波画像データであり、他種医用画像データ(X線CT画像データ)が非造影撮影で得られた医用画像データ(非造影X線CT画像データ)である。かかる場合、例えば、操作者は、「非造影X線CT画像データ:管腔」、又は、「非造影X線CT画像データ:血流」といった設定情報を入力する。そして、操作者が、合成処理開始を指示すると、制御部18は、第1画像データが造影超音波画像データであると決定し、合成のベースとなる第2画像データが非造影X線CT画像データであると決定する。そして、抽出部171は、造影剤が存在する領域、又は、造影剤が存在する領域の中で他種医用画像データ(非造影X線CT画像データ)の管腔領域に該当する領域を特定領域として、造影超音波画像データから抽出する。
「非造影X線CT画像データ:管腔」が設定情報の場合、例えば、抽出部171は、造影超音波画像データで、所定の閾値以上の輝度の全画素を特定する。そして、抽出部171は、例えば、特定した全画素が占める領域の中で、管状の領域となる領域を2値化処理により求め、求めた領域を特定領域として抽出する。或いは、「非造影X線CT画像データ:血流」が設定情報の場合、例えば、抽出部171は、造影超音波画像データで、所定の閾値以上の輝度の全画素が占める領域を平滑化処理した領域を、特定領域として抽出する。
図6に示す第4パターンも、造影検査回数を減らすことが可能となるパターンである。ただし、第4パターンでは、超音波画像データが非造影撮影で得られた超音波画像データ(通常のBモード画像データ)であり、他種医用画像データ(X線CT画像データ)が造影撮影で得られた医用画像データ(造影X線CT画像データ)である。かかる場合、例えば、操作者は、「非造影Bモード画像データ:管腔」、又は、「非造影Bモード画像データ:血流」といった設定情報を入力する。そして、操作者が、合成処理開始を指示すると、制御部18は、第1画像データが造影X線CT画像データであると決定し、合成のベースとなる第2画像データが非造影Bモード画像データであると決定する。そして、抽出部171は、造影剤が存在する領域、又は、造影剤が存在する領域の中で超音波画像データ(非造影Bモード画像データ)の管腔領域に該当する領域を特定領域として、他種医用画像データ(造影X線CT画像データ)から抽出する。
「非造影Bモード画像データ:管腔」が設定情報の場合、例えば、抽出部171は、造影X線CT画像データで、所定の閾値以上の輝度の全画素を特定する。そして、抽出部171は、例えば、特定した全画素が占める領域の中で、管状の領域となる領域を2値化処理により求め、求めた領域を特定領域として抽出する。或いは、「非造影Bモード画像データ:血流」が設定情報の場合、例えば、抽出部171は、造影X線CT画像データで、所定の閾値以上の輝度の全画素が占める領域を平滑化処理した領域を特定領域として抽出する。なお、上記の第2パターン〜第4パターンにおいて、血管内を流動する血液だけでなく、組織内を灌流する血液の情報を得たい場合、操作者は、孤立点除去等の平滑化処理を実行しないように、指定することができる。
図6に示す第5パターンでは、超音波画像データは、撮影部位の硬さを示す指標(弾性率)を、エラストグラフィによりマッピングした超音波画像データ、すなわち、弾性画像データである。なお、第5パターンでは、他種医用画像データとしてのX線CT画像データは、造影撮影で得られた画像データであっても、非造影撮影で得られた画像データであっても良い。エラストグラフィで得られる客観的な指標に基づく硬さ情報は、X線CT画像データから得ることができない。第5パターンは、組織の空間分解能が高いX線CT画像データで、医師が着目する領域をエラストグラフィで得られる情報に入れ替えた合成画像データを目的とする場合に、選択される。
第5パターンの一例では、抽出部171は、指標(弾性率)が所定の範囲にある領域を特定領域として、超音波画像データ(弾性画像データ)から抽出する。例えば、エラストモードの撮影後や、エラストモードの超音波画像データを指定した後、操作者は、「X線CT画像データ:弾性率:腫瘍相当」を設定情報として入力する。かかる場合、例えば、抽出部171は、弾性画像データで、一般的な腫瘍組織で認められている硬さ以上の弾性率を有する画素が占める全領域を平滑化処理した領域を、特定領域として抽出する。或いは、「X線CT画像データ:弾性率:正常相当」と設定情報が入力された場合、抽出部171は、弾性画像データで、一般的な正常組織で認められている柔らかさを示す弾性率を有する画素が占める全領域を平滑化処理した領域を、特定領域として抽出する。或いは、「X線CT画像データ:弾性率:腫瘍相当及び正常相当」と設定情報が入力された場合、抽出部171は、上述した双方の弾性率を有する画素が占める全領域を平滑化処理した領域を、特定領域として抽出する。
第5パターンの別の一例では、抽出部171は、他種医用画像データ(X線CT画像データ)で撮影部位内の所定部位を含む領域を特定領域として、超音波画像データ(弾性画像データ)から抽出する。ここで、上記の所定部位とは、例えば、X線CT画像データで認められた腫瘍部位であり、上記の所定部位を含む領域とは、例えば、腫瘍部位及び腫瘍組織の周辺部位を合わせた領域である。例えば、X線CT画像データを参照した操作者が、入力装置3を用いて腫瘍部位にROI(Region-Of-Interest)を指定すると、抽出部171は、ROIに対応する弾性画像データの領域を、変換行列を用いて特定し、特定した領域を、予め設定されたマージン情報(例えば、「全方位:30mm」)を用いて拡げ、この拡げた領域を、特定領域として抽出する。この一例では、操作者は、ROI指定を行なった後、例えば、「X線CT画像データ:腫瘍+マージン」といった設定情報を入力する。
第5パターンでは、操作者が、上記の設定情報が入力した後に、合成処理開始を指示すると、制御部18は、第1画像データが弾性画像データであると決定し、合成のベースとなる第2画像データがX線CT画像データであると決定する。そして、抽出部171は、上述した方法で、弾性画像データから特定領域を抽出し、同定部172は、X線CT画像データの対応部位を同定する。そして、合成部173は、X線CT画像データベースとし、X線CT画像データベースの対応部位が、医師が着目する部位に弾性率の情報が描出された特定領域に置き換わった合成画像データを生成する。
次に、第6パターンについて、図7を用いて説明する。第6パターンは、本実施形態に係る画像処理を、ラジオ波焼灼術(RFA:Radio Frequency Ablation)に適用する場合の一例を示している。RFA治療は、体表からRFA針(電極針)を病変部(腫瘍部)に向かって挿入し、ラジオ波により発生する高温により病変部を凝固死させる治療法である。RFAは、通常、超音波ガイド下で行なわれる。そして、RFA治療を行なう領域(治療計画領域、焼灼領域)は、再発防止のために、腫瘍境界に対して全方位的に、例えば、5mm程度のマージンをとって設定される。
図7の(A)の左図は、穿刺針による焼灼治療前のBモード画像データ(又は、超音波造影画像データ)を示している。また、図7の(A)の左図では、Bモード画像データ(又は、超音波造影画像データ)に描出された腫瘍領域を「T」で示し、腫瘍領域Tの境界に対して全方位的に設定された5mm程度のマージンにより定まる焼灼領域を「M」で示している。また、図7の(A)の左図では、例えば、超音波プローブ1に装着された穿刺ガイドから挿入されたRFA治療用の穿刺針を、線分で示している。
ここで、焼灼治療中では、腫瘍領域Tの中心まで先端が挿入された穿刺針から発生したラジオ波により、ガスが発生する。かかる場合、図7の(A)の右図に示すように、焼灼中の超音波画像データを参照しても、ガスにより、焼灼領域Mの視認性が低下する。そこで、第6パターンでは、超音波画像データがラジオ波による焼灼中の被検体Pの超音波画像データとされ、他種医用画像データが焼灼前の被検体Pの医用画像データとされる。例えば、第6パターンでは、図7の(B)に示すように、他種医用画像データが焼灼前の被検体PのX線CT画像データとなる。
そして、第6パターンでは、抽出部171は、治療対象部位(腫瘍部位)を含む焼灼領域を特定領域として、他種医用画像データ(焼灼前のX線CT画像データ)から抽出する。例えば、焼灼治療前の超音波画像データを参照して腫瘍領域TをROI指定した後、操作者は、「超音波画像データ(焼灼開始後):腫瘍+マージン」を設定情報として入力する。かかる場合、抽出部171は、焼灼前のX線CT画像データにおいて、ROIとして指定された腫瘍領域Tに該当する領域を、変換行列を用いて特定する(図7の(B)に示す領域T’を参照)する。そして、抽出部171は、領域T’を予め設定されたマージン情報(例えば、「全方位:5mm」)を用いて拡げ、この拡げた領域M’を、特定領域として抽出する。
そして、同定部172は、焼灼中に、時系列に沿って生成されるBモード画像データそれぞれで、領域M’に対応する対応領域(すなわち、領域M)を同定する。これにより、合成部173は、合成画像データを時系列に沿って生成する。その結果、モニタ2は、焼灼治療中でも、ガスで視認性が低下する領域Mが、ガスがない領域M’に置き換わった合成画像データの動画表示を行なう。医師は、かかる動画を参照して、例えば、腫瘍部位を視認しつつ、ガスが領域M’の外部に均等に発生していることを確認して、RFA治療を容易に行なうことができる。
なお、第6パターンは、変形例として、第1画像データが、例えば、図7の(A)の左図に示す焼灼前の超音波画像データであっても良い。かかる場合の位置合わせ処理は、位置センサ4及びトランスミッター5で構成される位置検出システム、超音波送受信条件及び画像生成条件を用いて実行可能である。この第6パターンの変形例では、画像処理部17が行なう処理は、以下となる。
すなわち、抽出部171は、ラジオ波による焼灼中の被検体Pの超音波画像データと空間的な位置を対応付ける位置合わせ情報に基づいて位置合わせされた被検体Pの焼灼前の超音波画像データにおいて、治療対象部位を含む焼灼領域を特定領域として、画像処理により抽出する。そして、同定部172は、焼灼中の超音波画像データにおける特定領域に対応する対応領域の位置を、位置合わせ情報を用いて求める。そして、合成部173は、焼灼中の超音波画像データの対応領域を、特定領域における焼灼前の超音波画像データに基づいて変更した合成画像データを生成する。具体的には、合成部173は、焼灼中の超音波画像データの対応領域を、特定領域に入れ替えた合成画像データを生成する。かかる合成画像データの動画表示をすることでも、RFA治療の支援を行なうことができる。
なお、上述した第1パターン〜第6パターンの画像処理は、超音波画像データ及び他種医用画像データがボリュームデータである場合でも、適用可能である。
次に、制御部18が実行させる合成画像データの表示形態について、図8及び図9等を用いて説明する。図8及び図9は、本実施形態に係る制御部による表示形態の一例を説明するための図である。
制御部18は、合成画像データとともに第1画像データ及び第2画像データの少なくとも一方を表示させる第1表示形態を、モニタ2に行わせる。例えば、制御部18は、合成画像データと、ベースとした第2画像データとを並列表示させる。或いは、制御部18は、合成画像データと、第1画像データと、第2画像データとを並列表示させる。
或いは、制御部18は、図8に示すように、合成画像データ及び第2画像データを切り替え表示させる第2表示形態を、モニタ2に行わせる。例えば、図8に示す第2表示形態は、操作者が、入力装置3が有する切り替えボタンを押下することで、実行される。
或いは、制御部18は、合成画像データで変更された領域を明示させる第3表示形態を、モニタ2に行わせる。上記の合成画像データを表示用画像データとする場合、制御部18は、合成画像データで入れ替えられた領域を明示させる第3表示形態を、モニタ2に行わせる。例えば、合成部173は、制御部18の指示により、特定領域に着色したり、特定領域の境界に点線を描画したりした合成画像データを生成し、モニタ2に出力する。或いは、制御部18は、合成画像データ及び第2画像データの間の差分値を合成画像データに表示させる第4表示形態を、モニタ2に行わせる。例えば、合成部173は、合成画像データ及び第2画像データの間の差分値を全画素で算出し、算出した値に応じた色調を合成画像データに重畳し、モニタ2は、合成部173が出力した画像データを表示する。また、制御部18は、操作者の指定により、上記の第1表示形態、第2表示形態、第3表示形態及び第4表示形態の1つ、2つ、又は、全ての表示形態を行なうことが可能である。
更に、制御部18は、以下に説明する第5表示形態で、上述した「対応領域を特定領域に入れ替えた合成画像データ」とは異なる合成画像データの生成表示を行なわせることも可能である。例えば、第5表示形態では、合成部173は、対応領域を特定領域に入れ替えた上記の合成画像データとともに、混合率を変更して特定領域及び対応領域を重畳合成した合成画像データを表示用画像データとして生成する。すなわち、合成部173は、第2画像データの対応領域を、特定領域における第1画像データに基づいて変更した合成画像データとして、対応領域を特定領域に入れ替えた合成画像データ、及び、混合率を変更して特定領域及び対応領域を重畳合成した合成画像データの少なくとも一方を、表示用画像データとして生成することが可能である。
例えば、操作者は、図9に示すスライドバーを操作して、混合率を調整する。ベースである第2画像データそのものを、合成画像データとともに参照したい場合、操作者は、「特定領域:0%」の位置まで、スライドバーを移動する。或いは、「特定領域:80%、対応領域:20%」の混合率で第2画像データを参照したい場合、操作者は、「特定領域:80%」の位置まで、スライドバーを移動する。これにより、合成部173は、「特定領域:80%、対応領域:20%」の混合率で重畳合成した画像データを生成し、モニタ2は、かかる画像データを表示する。なお、第5表示形態は、入れ替え型の合成画像データと混合型の合成画像データとは、一方のみ生成表示される場合でも、双方生成表示される場合であっても良い。また、混合型の合成画像データの第5表示形態を行なう場合でも、上記の第1表示形態〜第4表示形態の少なくとも1つを併用することができる。
上記の第1表示形態〜第5表示形態を行なうことで、医師等の操作者は、合成画像データの合成元の画像データを参照したり、特定領域及び対応領域が様々な混合率で重畳合成された画像データを合成画像データとともに参照したりすることができる。これにより、例えば、医師は、合成画像データで行った診断結果が、原画像データからも同様に得られるかを判断することができ、画像診断の精度を保証することができる。
次に、図10を用いて、本実施形態に係る超音波診断装置が処理の一例について説明する。図10は、本実施形態に係る超音波診断装置が行なう画像処理を説明するためのフローチャートである。なお、図10に示す一例では、制御部18が位置合わせ情報を取得した後の処理について説明する。また、図10に示す一例では、合成画像データとして、入れ替え型の合成画像データが設定された場合の処理について説明する。
図10に例示するように、本実施形態に係る超音波診断装置の制御部18は、操作者から、合成処理の関する設定情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、設定情報を受け付けない場合(ステップS101否定)、制御部18は、設定情報を受け付けるまで待機する。
一方、設定情報を受け付けた場合(ステップS101肯定)、制御部18は、設定情報を抽出部171に通知し、更に、操作者から、合成処理開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS102)。ここで、合成処理開始要求を受け付けない場合(ステップS102否定)、制御部18は、合成処理開始要求を受け付けるまで待機する。
一方、合成処理開始要求を受け付けた場合(ステップS102肯定)、制御部18の指示により、画像処理部17の処理が開始する。まず、抽出部171は、設定情報に基づいて、第1画像データ及び第2画像データを決定する(ステップS103)。すなわち、抽出部171は、設定情報に基づいて、情報が不足している領域(対応領域)がある第1画像データが、超音波画像データ及び他種医用画像データのどちらであるかを判定する。
そして、抽出部171は、第1画像データから特定領域を抽出し(ステップS104)、同定部172は、第2画像データから対応領域を同定する(ステップS105)。すなわち、同定部172は、第2画像データにおいて、位置合わせ情報を用いて、対応領域の位置を求める。そして、合成部173は、第2画像データの対応領域を特定領域に入れ替えて、合成画像データを生成する(ステップS106)。
そして、モニタ2は、制御部18の制御により、合成画像データを表示し(ステップS107)、処理を終了する。なお、ステップS107において、又は、ステップS107の後、操作者の指示により、上述した第1表示形態〜第5表示形態の少なくとも1つが行われても良い。
上述したように、本実施形態では、第2画像データで情報が不足している領域では得られない情報を特定領域から得ることができる1枚の合成画像データを生成表示する。本実施形態では、操作者は、第1パターン〜第6パターンで説明したように、簡単な情報を設定するたけで、上記の合成画像データを生成表示させることができる。従って、本実施形態では、撮影部位の様々な情報が得られる画像を簡易に得ることができる。また、本実施形態では、上記の合成画像データを画像診断用の画像として提供することで、画像診断の効率(検査効率)を向上させることができる。また、本実施形態では、上述した第1表示形態〜第5表示形態を行なうことで、画像診断の精度を向上させることができる。
なお、本実施形態では、以下に説明する変形例が行われても良い。位置合わせ情報で同定される対応領域は、例えば、位置センサ4の検出精度や、画像中のノイズ等によっては、特定領域に対応する領域と一致しない場合がある。そこで、本変形例に係る画像処理部17は、図11に例示する調整処理を行なう。図11は、本実施形態に係る変形例を説明するための図である。
本変形例では、同定部172による対応領域の同定処理とともに、抽出部171は、画像処理により、第2画像データから特定領域に対応する第2対応領域を抽出する。図11では、上述した第1パターンで本変形例が行われる場合を例示している。同定部172は、図11の左上図に示すように、位置合わせ情報から、第2画像データである超音波画像データの対応領域を同定する。更に、抽出部171は、例えば、エッジ検出処理等の画像処理により、超音波画像データに描出された骨の境界を抽出し、抽出した骨の境界と超音波の送信方向とを用いて、図11の左下図に示すように、第2対応領域を抽出する。
そして、同定部172は、対応領域の位置を、第2対応領域により調整する。図11の左図に示す一例では、対応領域と第2対応領域との位置は一致していないことから、同定部172は、図11の右図に示すように、第2対応領域により対応領域の位置を調整した「調整済み対応領域」を同定する。そして、本変形例では、合成部173は、第2画像データの調整済み対応領域を、特定領域に入れ替えたり、特定領域と調整済み対応領域とを任意の混合率で混合したりすることで、合成画像データを生成する。本変形例では、位置合わせ精度が低い場合でも、調整済み対応領域を用いることで、画像診断を確実に支援することができる合成画像データを生成表示することができる。
なお、上述した実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、超音波診断装置以外の医用画像診断装置で行われても良い。また、上述した実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、医用画像診断装置とは独立に設置され、上述した画像処理部17の機能が搭載された画像処理装置で行われても良い。
また、かかる画像処理装置が上述した画像処理を行なう第1画像データ及び第2画像データには、超音波画像データが含まれる場合であっても、超音波画像データが含まれない場合であっても良い。すなわち、画像処理装置は、画像データ間の空間的な位置を対応付けて位置合わせされた種類の異なる2つの医用画像データを、各種医用画像診断装置、又は、医用画像のデータベースから取得する。そして、画像処理装置は、これら2つの医用画像データの一方の画像データである第1画像データの特定領域を、画像処理により抽出し、他方の画像データである第2画像データにおける特定領域に対応する対応領域域の位置を、位置合わせ情報を用いて求める。そして、画像処理装置は、第2画像データの前記対応領域を、前記特定領域における第1画像データに基づいて変更した合成画像データを生成する。これにより、画像処理装置は、合成画像データの表示を行なうことができる。
また、本実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、予め用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、本実施形態及び変形例によれば、撮影部位の様々な情報が得られる画像を簡易に得ることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。