JP2015148442A - 物質特定方法および物質特定システム - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の物質特定システムを用いることなく、飛散物質を効率よくかつ適切に特定する。
【解決手段】物質特定方法は、飛散物質をイオン化エネルギー以上のエネルギー準位に励起して第1発光スペクトルを導出し、飛散物質をイオン化エネルギー未満のエネルギー準位に励起して第2発光スペクトルを導出し、第1発光スペクトルにおける輝線の波長、第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比、第2発光スペクトルの波形の3つの基準に基づき、その順に物質を特定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、任意の物質を特定する物質特定方法および物質特定システムに関する。
エアロゾル状の放射性物質が空間に漏洩したり、拡散した場合に、広範囲に亘り甚大な影響を及ぼすおそれがある。また、放射性物質に限らず、災害時においてエアロゾル状もしくはガス状の有害物質が大気中に拡散する場合がある。したがって、このような、エアロゾル状もしくはガス状の飛散物質(放射性物質や有害物質等)が任意の空間や大気中に存在するか否かの監視が重要な技術的課題となっている。特に、飛散物質の迅速な発見、拡散予測、飛散物質への対応、および、人の避難等の観点から、遠隔から飛散物質の存在を把握する技術が希求されている。
そこで、遠隔から飛散物質を特定する技術が検討されている。例えば、窒素ガスと対象ガスのラマン散乱光強度の強度比に基づいて遠隔の対象ガスの濃度を計測したり(例えば、特許文献1)、物体に一定波長のレーザ光を照射し、その散乱光からラマンスペクトル等を得て分析し、その物体が爆発物等の危険物質を含有するか否か判断したり(例えば、特許文献2)、微量の標的物質をレーザ光で照射し、反射されたレーザ光とラマンリターン信号とに基づいて飛散物質を識別したりしている(例えば、特許文献3)。
特許第5159799号公報 特表2012−513027号公報 特開2012−42471号公報
上述した技術では、飛散物質を特定するために、飛散物質の種類、例えば、CBRNe(化学物質、生物由来物質、放射性物質、核物質、爆発物)に応じて、それぞれ独自の物質特定システムが必要だった。したがって、飛散物質の種類を特定できない状況下では、CBRNeそれぞれを特定できる全種類の物質特定システムを準備するか、経験に基づいて予め飛散物質の種類を仮定し、仮定した飛散物質を特定できる物質特定システムを準備しなくてはならなかった。この場合、前者は、測定自体が大がかりになり、後者は、予測が間違っていたときに物質を何ら特定できないといった問題があった。
そこで本発明は、このような課題に鑑み、複数の物質特定システムを用いることなく、飛散物質を効率よくかつ適切に特定可能な物質特定方法および物質特定システムを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の物質特定方法は、飛散物質をイオン化エネルギー以上のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第1発光スペクトルを導出する第1発光スペクトル導出ステップと、飛散物質をイオン化エネルギー未満のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第2発光スペクトルを導出する第2発光スペクトル導出ステップと、第1発光スペクトルにおける輝線の波長に基づいて物質を特定する波長特定ステップと、波長特定ステップによって物質が特定されなかった場合、第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比に基づいて物質を特定する強度比特定ステップと、強度比特定ステップによって物質が特定されなかった場合、第2発光スペクトルの波形に基づいて物質を特定する蛍光特定ステップと、を含むことを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の物質特定システムは、飛散物質をイオン化エネルギー以上のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第1発光スペクトルを導出する第1発光スペクトル導出部と、飛散物質をイオン化エネルギー未満のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第2発光スペクトルを導出する第2発光スペクトル導出部と、第1発光スペクトルにおける輝線の波長に基づいて物質を特定する波長特定部と、波長特定部によって物質が特定されなかった場合、第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比に基づいて物質を特定する強度比特定部と、強度比特定部によって物質が特定されなかった場合、第2発光スペクトルの波形に基づいて物質を特定する蛍光特定部と、を含むことを特徴とする。
レーザ光を照射する第1レーザ部と、第1レーザ部が照射したレーザ光に応じて生じる散乱光を受ける第1受光部と、を含む第1計測ユニットと、第1計測ユニットを通じて、計測範囲である第1計測範囲から、物質が存在する、第1計測範囲より狭い第2計測範囲を抽出する範囲抽出部と、第1レーザ部と異なるレーザ光を第2計測範囲に照射する第2レーザ部と、第2レーザ部が照射したレーザ光に応じて励起された物質の発光を受ける第2受光部と、を含む第2計測ユニットと、をさらに備え、第1発光スペクトル導出部および第2発光スペクトル導出部は、第2計測ユニットを通じて第1発光スペクトルおよび第2発光スペクトルを導出するとしてもよい。
飛散物質は、化学物質、生物由来物質、放射性物質、核物質、および、爆発物のいずれか1または複数であってもよい。
本発明によれば、複数の物質特定システムを用いることなく、飛散物質を効率よくかつ適切に特定することが可能となる。
物質特定システムの概略的な構成を示した構成図である。 物質特定装置の概略的な構成を述べた機能ブロック図である。 物質特定方法の処理の流れを示したフローチャートである。 物質判定処理の流れを示したフローチャートである。 第1発光スペクトルを説明するための説明図である。 第1発光スペクトルを説明するための説明図である。 CBRNeに含まれる元素の波長例を示した説明図である。 第1発光スペクトルを説明するための説明図である。 温度および混合比を考慮した強度比を説明するための説明図である。 2種類の強度比を用いた物質の特定処理を説明するための説明図である。 第2発光スペクトルを示した説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
空中に存在するエアロゾル状もしくはガス状の飛散物質としては、例えば、CBRNe(Chemical:化学物質、Biological:生物由来物質、Radiological:放射性物質、Nuclear:核物質、explosive:爆発物)が挙げられる。このような飛散物質は、その種類によっては人的被害を与えるため、その飛散物質を迅速に特定する必要がある。しかし、上記CBRNeはそれぞれ性質が異なるので、その物質を特定するため、それぞれ独自の物質特定システムを準備する必要があった。本実施形態では、飛散物質の特定手順を工夫することで、複数の物質特定システムを用いることなく、飛散物質を効率よくかつ適切に特定することを目的としている。
(物質特定システム100)
図1は、物質特定システム100の概略的な構成を示した構成図である。物質特定システム100は、第1計測ユニット110と、第2計測ユニット120と、物質特定装置130と、空調装置140と、移動ユニット150とを含んで構成され、レーザ光を通じて、例えば、数100m〜数km遠方に位置する気体中の物質(飛散物質)を特定する。ここで、特定対象となる物質は、CBRNeを対象としており、固体、液体、気体のいずれであってもよく、エアロゾル状やガス状等形状や状態は特に問わない。
物質特定システム100では、災害現場等、飛散物質の種類や状態が予測不能な状況下においても、飛散物質の種類を問わず、その特定精度を向上するため、所謂、レーザ誘起ブレークダウン分光(LIBS:Laser Induced Breakdown Spectroscopy)や多光子励起蛍光(nPEF:n-Photon Excited Fluorescence)を用いた物質特定処理を行う。しかし、物質特定システム100から飛散物質までの距離や、その特定精度の維持を考慮すると、高出力のレーザ光が必要となり、初期費用やその運用に多大なコストを要する。ここで、相対的に低出力のレーザ光を用い、同一の範囲に対し繰り返し計測し、計測結果を積算し必要なS/N比を確保することが考えられるが、全ての計測範囲を当該低出力のレーザ光で実行すると、計測時間が長時間(例えば、数分×1000点)に亘ってしまい、例えば、S/N比を2倍増加させるために積算回数を4倍にする必要があり、これに伴って計測時間も4倍になるので実用的ではない。
そこで、本実施形態では、レーザ光を用いた計測ユニットを第1計測ユニット110と第2計測ユニット120との2段階に分け、第1計測ユニット110において、短時間に物質の有無を検出できる低出力のレーザ光を用い広範囲(以下、第1計測範囲という)から物質が存在する狭い範囲(以下、第2計測範囲という)を抽出し、その後、第2計測ユニット120において、高出力のレーザ光を用い、第2計測範囲のみをピンポイントに計測する。こうして計測時間の長時間化を回避する。かかる第1計測ユニット110と第2計測ユニット120に関しては、後程詳述する。
物質特定装置130は、第1計測ユニット110および第2計測ユニット120からそれぞれ計測結果を受信し、第1計測範囲における、物質が存在する第2計測範囲を抽出したり、第2計測範囲に存在する物質を特定したりする。かかる物質特定装置130に関しては、後程詳述する。
空調装置140は、物質特定システム100においてレーザ部(後述する第1レーザ部160と第2レーザ部170)を収容するほぼ密閉された空間の温度および圧力を調整する。移動ユニット150は、一体的に構成された物質特定システム100自体を移動可能に構成する。したがって、本実施形態の物質特定システム100は、様々な場所でリアルタイムに飛散物質の特定処理を実現できる。
以下、第1計測ユニット110、第2計測ユニット120、物質特定装置130の順にその動作を説明する。
(第1計測ユニット110と第2計測ユニット120)
第1計測ユニット110は、図1中一点鎖線で示すように、第1レーザ部160と、導光部162と、走査部164と、集光部166と、光検知器(第1受光部)168とを含んで構成される。
第1レーザ部160は、例えばIRレーザ装置(例えば波長1400nm〜2600nm)で構成され、ナノ秒オーダーの出力パルス幅のレーザ光を照射する。導光部162は、第1レーザ部160が照射したレーザ光を、第1ミラー162aを透過させ、導光路に対して45度傾けられた共通ミラー162bで反射して走査部164に導光する。走査部164は、導光部162から受光したレーザ光を外部に出力するとともに、外部から受光した散乱光を集光部166に導光する反射鏡164aと、反射鏡164aの反射角を調整する駆動部164bとを含んで構成され、第1計測範囲内を走査することができる。集光部166は、レーザ光の照射により外部から走査部164に入射した光を、集光機構(望遠鏡)166a内で凹ミラーと凸ミラーを通じて集光し、ダイクロイックミラー166bにより、特定の波長の光、ここでは第1レーザ部160が照射したレーザ光に応じて生じる赤外線を反射して、光検知器168に導光する。光検知器168は、集光部166で集光された散乱光を検知する。
第2計測ユニット120は、図1中二点鎖線で示すように、第2レーザ部170と、導光部162と、走査部164と、集光部166と、光ファイバ172と、分光器174と、ICCD(Intensified Charge Coupled Device)176とを含んで構成される。
第2レーザ部170は、IRレーザ装置(例えば波長670nm〜1100nm、ここでは780nm〜800nm)で構成され、フェムト秒オーダー〜ピコ秒オーダーの出力パルス幅のレーザ光を発する。導光部162は、第2レーザ部170が照射したレーザ光を、拡大光学系162cを経由させ、導光路に対して45度傾けられた第2ミラー162dで反射し、導光路に対して45度傾けられた第1ミラー162aで反射し、さらに、第1レーザ部160のレーザ光同様、導光路に対して45度傾けられた共通ミラー162bで反射して走査部164に導光する。走査部164は、第1計測ユニット110同様、導光部162から受光したレーザ光を外部に出力するとともに、外部から受光した光を集光部166に導光する。集光部166は、レーザ光の照射により外部から走査部164に入射した光を、集光機構166a内で凹ミラーと凸ミラーを通じて集光し、ダイクロイックミラー166bを通じて特定の波長(赤外線)以外の波長の光(紫外線〜可視光線)を透過させ、透過した光を導光部位166cに導光する。光ファイバ172は、集光部166が集光した光を分光器174に導光する。分光器174は、光ファイバ172から受光した光を波長毎に分散させる。ICCD176は、分光器174が分散した光に基づいて各波長に対する光の強度(スペクトル)を導出する。また、分光器174とICCD176とは第2受光部として機能する。
このように、本実施形態では、第1計測ユニット110におけるレーザ光の発光源として第1レーザ部160を用い、第2計測ユニット120におけるレーザ光の発光源として第2レーザ部170を用いている。
具体的に、第1計測ユニット110では、5nsec〜150nsecの相対的に長い出力パルス幅のレーザ光を照射し、ミー散乱による単純な散乱光を計測する。また、第1計測ユニット110では、5mJ〜100mJといったように相対的に低い出力エネルギーのレーザ光が利用されているが、散乱光の受信だけであれば、このような長パルス幅、低出力のレーザ光で十分足りる。また、散乱光の計測では、レーザ光の照射から散乱光の受信まで時間を要さないので、対象とする範囲の計測時間を短縮可能であり、第1計測範囲における位置や物質特定システム100からの距離を容易に測定できる。こうして、第1計測ユニット110において、相対的に広い第1計測範囲から、物質が存在する相対的に狭い第2計測範囲のみを容易に抽出することが可能となる。ただし、第1計測ユニット110におけるレーザ光の発光源は、遠方まで測定可能なレーザ装置であれば足り、例えば、可視光のレーザ装置でも代用できる。
一方、第2計測ユニット120では、第2レーザ部170が、30fsec〜100psecの相対的に短い出力パルス幅のレーザ光を照射し、レーザ誘起ブレークダウン分光を用いて第1発光スペクトルを導出する。そのため、第2計測ユニット120では、100mJ〜2Jといった飛散物質をプラズマ化(イオン化)するため相対的に高い出力エネルギーで運用される。また、レーザ誘起ブレークダウン分光を用いた物質特定処理では、飛散粒子にレーザ光を当て、プラズマが安定的な熱平衡に達した状態でスペクトルを取得するため、レーザ光の照射からプラズマ光の受信まで時間を要す。しかし、第2計測ユニット120では、第1計測ユニット110で物質が存在すると判定された第2計測範囲のみを計測するため、すなわち、計測対象となる範囲自体が狭いため、総合的な計測時間を短縮することができる。また、第2計測範囲といった狭い範囲を計測すれば足りるので、出力エネルギーが相対的に低いレーザ部によって同一の範囲に対し繰り返し計測し、それを重畳することで、出力エネルギーが高いレーザ部と同等のS/N比を維持することもできる。また、第2計測ユニット120では、同第2レーザ部170により、多光子励起蛍光を用いて第2発光スペクトルを導出する。ここでは、5mJ〜100mJといった飛散物質を多光子励起するため相対的に低い出力エネルギーで運用される。ただし、第2計測ユニット120におけるレーザ光の発光源は、フェムト秒レーザ装置、ピコ秒レーザ装置やナノ秒レーザ装置のいずれを用いることもでき、レーザ光の波長も任意に選択できる。
また、第2計測ユニット120において、レーザ誘起ブレークダウン分光を用いた物質特定処理と多光子励起蛍光を用いた物質特定処理との切り替えは、拡大光学系162cのビーム径を変化させることで実行される。例えば、レーザ誘起ブレークダウン分光を用いた物質特定処理では、拡大光学系162cのビーム径を小さくし、飛散物質に対して光を絞るように照射する。こうして、光が集光し、また、フィラメントと呼ばれる非線形現象が生じて発光する。また、多光子励起蛍光を用いた物質特定処理では、拡大光学系162cのビーム径を大きくして集光しない。具体的に、第2計測ユニット120から発せられる単位面積当たりの光の強さをレーザ誘起ブレークダウン分光より小さくして、レーザ誘起ブレークダウン分光が生じないように調整する。このとき、レーザ光は、飛散物質の広い範囲に対して照射されることとなるので、多くの光量を受光することができる。また、多光子励起蛍光を用いた物質特定処理では、通常、紫外線レーザ装置を用いることが多いが、紫外線レーザは、距離に対する減衰が大きく、遠距離の測定に不向きであるため、本実施形態では、IRレーザ装置を用いている。かかるIRレーザ装置は、赤外線を利用するので、距離を長くしても減衰が小さく、遠距離の測定が可能となる。
また、導光部162については、上記のように、第1ミラー162aにおいて、第1レーザ部160のレーザ光を透過させるとともに、第2レーザ部170のレーザ光を反射させることで、両レーザ部160、170のレーザ光の導光路を共通化できる。こうして、走査部164における第1レーザ部160のレーザ光が照射する方向と、第2レーザ部170のレーザ光が照射する方向(座標)が一致し、第2測定範囲を抽出した後、そこに存在する物質を特定するためレーザ光の発光源を第1レーザ部160から第2レーザ部170に切り替えたとしても、その光軸がずれることがない。また、レーザ部の切替に応じて機械的な光軸の変更や補正を伴わないので、切替時間を短縮することができる。
また、集光部166については、上記のように、走査部164に入射した光を同一の集光機構166aを通じて集光することで、第1計測ユニット110と第2計測ユニット120とで受光系の共通化を図ることができ、コストおよび占有体積を削減することが可能となる。ただし、第1計測ユニット110と第2計測ユニット120とがそれぞれ別体に集光機構166aを備えるとしてもよい。
(物質特定装置130)
図2は、物質特定装置130の概略的な構成を述べた機能ブロック図である。物質特定装置130は、保持部180と、操作部182と、表示部184と、中央制御部186とを含んで構成される。保持部180は、ROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、スペクトルから物質を特定する際に必要な情報を保持する。操作部182は、操作キー、十字キー、ジョイスティック、表示部184の表示面に重畳されたタッチパネル、リモートコントローラ等で構成され、ユーザによる当該物質特定装置130への操作入力を受け付ける。表示部184は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、操作部182を通じて入力された操作結果、特定処理の途中結果(例えば導出されたスペクトル)、特定された物質等を表示する。
中央制御部186は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、物質特定装置130全体を管理および制御する。また、中央制御部186は、範囲抽出部190、第1発光スペクトル導出部192、第2発光スペクトル導出部194、波長特定部196、強度比特定部198、蛍光特定部200として機能する。
範囲抽出部190は、第1計測ユニット110を通じて、計測範囲である第1計測範囲から、物質が存在する、第1計測範囲より狭い第2計測範囲を抽出する。第1発光スペクトル導出部192は、第2計測ユニット120を通じ、第2計測範囲に存在する飛散物質をイオン化エネルギー以上のエネルギー準位に励起して第1発光スペクトルを導出する。ここで、レーザ光の強度は、飛散物質として想定される物質それぞれのイオン化エネルギーに基づいて決定される。第2発光スペクトル導出部194は、同第2計測ユニット120を通じ、第2計測範囲に存在する飛散物質をイオン化エネルギー未満のエネルギー準位に励起して第2発光スペクトルを導出する。波長特定部196は、第1発光スペクトルにおける輝線の波長に基づいて物質を特定する。強度比特定部198は、波長特定部196によって物質が特定されなかった場合、第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比(または組成比)に基づいて物質を特定する。蛍光特定部200は、強度比特定部198によって物質が特定されなかった場合、第2発光スペクトルの波形に基づいて物質を特定する。以下、中央制御部186の各機能部の動作をフローチャートに従って説明する。
図3は、物質特定方法の処理の流れを示したフローチャートである。範囲抽出部190は、抽出処理において、走査部164の駆動部164bを駆動し、レーザ光の照射位置を第1計測範囲内の任意の位置に移動する(S200)。また、範囲抽出部190は、照射位置の移動(走査)と並行して、第1計測ユニット110を用い、すなわち、第1レーザ部160にレーザ光を照射させ、光検知器168の検知結果に基づいて光強度を計測する(S202)。
そして、光検知器168が検知した光強度が所定の閾値以上であるか否か判定され(S204)、光強度が所定の閾値以上であれば(S204におけるYES)、範囲抽出部190は、その範囲(駆動部164bの角度)を第2計測範囲とし、光強度と対応付けて保持する(S206)。また、光強度が所定の閾値未満であれば(S204におけるNO)、ステップS208に処理を移行する。
続いて、範囲抽出部190は、第1計測範囲を全て走査したか否か判定し(S208)、全て走査していなければ(S208におけるNO)、レーザ光の照射位置を第1計測範囲の予め定められた走査方向に移動し(S210)、ステップS202からの処理を繰り返す。こうして、第1計測範囲内で走査が行われる。また、第1計測範囲を全て走査したと判定されれば(S208におけるYES)、物質特定処理に移行する。
かかる物質特定処理には、2つの発光スペクトル(第1発光スペクトルおよび第2発光スペクトル)が用いられる。第1発光スペクトルは、レーザ誘起ブレークダウン分光を用い、第2レーザ部170によって飛散物質をイオン化エネルギー以上のエネルギー準位に励起した後(プラズマ化した後)、再結合した飛散物質から放出される光のスペクトルである。また、第2発光スペクトルは、多光子(例えば2光子)励起蛍光を用い、第2レーザ部170によって飛散物質をイオン化エネルギー未満のエネルギー準位に励起した後、電子励起状態に遷移した飛散物質から放出される光のスペクトルである。以下、2つの発光スペクトルを用いた飛散物質の特定処理について説明する。
第1発光スペクトル導出部192は、走査部164の駆動部164bを駆動して、レーザ光の照射位置を第2計測範囲に合わせる(S212)。そして、第1発光スペクトル導出部192は、第2計測ユニット120に設定変更し、第2レーザ部170にレーザ光を照射させる(S214)。
そして、第1発光スペクトル導出部192は、レーザ誘起ブレークダウン分光により飛散物質のプラズマが安定的に熱平衡に達している状態となる所定時間が経過したか否か判定し(S216)、所定時間が経過していなければ(S216におけるNO)、ステップS214からの処理を繰り返し、所定時間が経過していれば(S216におけるYES)、第1発光スペクトル導出ステップとして、ICCD176を通じ、約200nm〜900nmの範囲で第1発光スペクトルを取得する(S218)。
次に、第2発光スペクトル導出部194は、拡大光学系162cのビーム径を大きくし、第2レーザ部170にレーザ光を照射させる(S220)。そして、第2発光スペクトル導出部194は、第2発光スペクトル導出ステップとして、ICCD176を通じ、約200nm〜900nmの範囲で第2発光スペクトルを取得する(S222)。
続いて、第1発光スペクトル導出部192は、範囲抽出部190により抽出された第2計測範囲全てについて第1発光スペクトルおよび第2発光スペクトルを取得したか否か判定し(S224)、第2計測範囲全てのスペクトルを取得していなければ(S224におけるNO)、レーザ光の照射位置を次の第2計測範囲に移動し(S226)、ステップS214からの処理を繰り返す。こうして、第1計測範囲内で物質が存在すると判定された全ての第2計測範囲が計測される。
また、第2計測範囲全てについてスペクトルを取得していれば(S224におけるYES)、波長特定部196、強度比特定部198、および、蛍光特定部200によって、第2計測範囲に存在する物質が何であるか判定され(S228)、当該物質特定方法を終了する。以下に物質判定処理S228を詳述する。
(物質判定処理S228)
図4は、物質判定処理S228の流れを示したフローチャートである。ここでは、(1)第1発光スペクトルにおける輝線(スペクトルに分解後の有意な成分)の波長、(2)第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比、(3)第2発光スペクトルの波形の3つの基準に基づき、その順に物質を特定する。
(第1発光スペクトルにおける輝線の波長)
まず、波長特定部196は、第1発光スペクトルを取得し(S250)、波長特定ステップとして、第1発光スペクトルの輝線の波長に放射性物質または核物質に対応する波長、例えば、Cs、Sr、I、U、Puに対応する波長が含まれるか否かによって、対応する放射性物質または核物質か否かを判定する(S252)。また、対応する輝線の大きさから、飛散物質に含まれる放射性物質または核物質の量も計算することができる。
図5は、第1発光スペクトルを説明するための説明図である。図5に示す第1発光スペクトルの輝線の波長には、Csに対応する波長(852.1nm)が含まれる。波長特定部196は、第1発光スペクトルの輝線の波長に、Csの波長(852.1nm)が含まれるので(S252におけるYES)、飛散物質が放射性物質または核物質であると判定する(S254)。このとき、同時に取得したHα線(656.3nm)の強度を基準としてCsの強度補正を行うことで、Csの濃度を求めることも可能である。
また、第1発光スペクトルの輝線の波長に、放射性物質または核物質に対応する波長が含まれないと(S252におけるNO)、波長特定部196は、第1発光スペクトルの輝線の波長に爆発物に対応する波長、例えば、C、C、H、CN、CH、N、OH、NHに対応する波長が、爆発物に対応する比率で含まれるか否か判定する(S256)。
図6は、第1発光スペクトルを説明するための説明図である。図6に示す第1発光スペクトルの輝線の波長には、C、CN、CH、Cに対応する波長が含まれる。波長特定部196は、第1発光スペクトルの輝線の波長に、C、CN、CH、Cの波長が含まれるので(S256におけるYES)、飛散物質が爆発物の可能性があると判定し、S264に処理を移す。
また、第1発光スペクトルの輝線の波長に、爆発物に対応する波長が含まれないと(S256におけるNO)、波長特定部196は、第1発光スペクトルの輝線の波長に生物由来物質に対応する波長、例えば、Si、Mg、Ca、C、Na、K、Al、CN、C、Mnに対応する波長が、生物由来物質に対応する比率で含まれるか否か判定する(S258)。そして、第1発光スペクトルの輝線の波長に、そのような波長が含まれていれば(S258におけるYES)、飛散物質が生物由来物質の可能性があると判定し、S270に処理を移す。
また、第1発光スペクトルの輝線の波長に、生物由来物質に対応する波長が含まれないと(S258におけるNO)、波長特定部196は、第1発光スペクトルの輝線の波長に化学物質に対応する波長、例えば、P、F、POに対応する波長が、化学物質に対応する比率で含まれるか否か判定する(S260)。そして、第1発光スペクトルの輝線の波長に、そのような波長が含まれていれば(S260におけるYES)、飛散物質が化学物質の可能性があると判定し、S272に処理を移し、いずれの輝線の波長も含まれていなければ(S260におけるNO)、飛散物質はいずれの物質にも該当しないとして、その他の物質に分類する(S262)。
図7は、上記CBRNeに含まれる元素の波長例を示した説明図である。ここでは、放射性物質・核物質を構成する元素Cs、Sr、I、U、Pu爆発物を構成する元素C、C、H、CN、CH、N、OH、NH、生物由来物質を構成する元素Si、Mg、Ca、C、Na、K、Al、Mnおよび、化学物質を構成する元素P、F、POそれぞれで出現可能性のある全ての輝線の波長(nm)を示している。波長特定部196は、このような輝線の波長に基づいて飛散物質を特定する。
(第1発光スペクトルにおける輝線の強度比)
図4に戻り、波長特定部196によって物質が特定されなかった場合、すなわち、飛散物質が爆発物の可能性がある(S256におけるYES)、飛散物質が生物由来物質の可能性がある(S258におけるYES)、または、飛散物質が化学物質の可能性がある(S260におけるYES)と判定された場合、強度比特定部198は、強度比特定ステップとして、第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比(または組成比)に基づいて物質を特定する。本来、化学平衡計算において、物質を特定する場合、輝線同士の組成比を用いるのが望ましいが、組成比と強度比とは相関があるので、本実施形態では、レーザ誘起ブレークダウン分光によって容易に導出可能な輝線同士の強度比を用いている。
例えば、波長特定部196に飛散物質が爆発物の可能性があると判定された場合(S256におけるYES)、強度比特定部198は、第1発光スペクトルにおけるCの輝線とHの輝線との強度比(C/H)が、各物質に対応する強度比のいずれと等しいか判定する(S264)。ただし、Cの輝線やHの輝線がそれぞれ複数存在する場合、その最大値に相当する値を用いて強度比を導出する。そして、強度比特定部198は、第1発光スペクトルの輝線同士の強度比が、例えば、任意の爆発物の強度比と等しければ(S264におけるYES)、飛散物質が爆発物であると判定し(S266)、いずれの物質の強度とも等しくなければ(S264におけるNO)、飛散物質は爆発物ではないとして、その他の物質に分類する(S268)。かかる爆発物の特定は、構成する物質C、C、H、CN、Nについての様々な組合せを採用することができ、例えば、C/H、C/C、N/C等の強度比に基づいて判定することができる。
ただし、各物質において、輝線の強度比のみでは、物質の特定精度が高まらない場合がある。ここでは、強度比の説明のため、実験結果を有する有機物質の例を挙げている。例えば、図8(a)〜(d)における有機物質(ナイロン(登録商標)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン)の第1発光スペクトルに示すように、それぞれを構成する元素が似ていると各物質の強度比も近接した値になり、また、同一の物質であっても、レーザ誘起ブレークダウン分光におけるプラズマの温度や、プラズマ化される際(プラズマが膨張する際)に巻き込まれた周辺の空気(大気中のN)の混合比が異なると、それに応じて第1発光スペクトルの推移、すなわち強度比が変化するからである。
このように、同一の物質であっても第1発光スペクトルがプラズマの温度によって異なるのは、以下の理由による。プラズマ化されていない状態(エネルギーが低い状態)にあるとき分解物は生じていない。これらの物質はレーザ光を受けてプラズマ化し、エネルギーが高い状態に励起・分解するが、物質が全て分解物となる訳ではない。そのときのレーザ光の強度、照射後の時間に応じてプラズマの温度が変わると、物質が励起・分解・結合する比率が変わり、存在するプラズマ成分(分解物)の比(組成比)が異なることとなる。このように分解物の組成比が異なると、所定の波長の発光強度も単純に分解物数に応じて異なることとなり、上記したように第1発光スペクトルも異なることとなる。
また、同一の物質であっても第1発光スペクトルが空気の混合比によって異なるのは、以下の理由による。飛散物質がプラズマ化される際には、周辺の空気を巻き込んで、プラズマに空気が混入する。したがって、空気の混合比(大気中のNの混合比)が大きいほど、Nを元素とする例えばCNのピークが相対的に高くなる。
そこで、強度比特定部198は、レーザ誘起ブレークダウン分光におけるプラズマの温度や空気の混合比を考慮し、第1発光スペクトルの輝線の混合比に基づいて物質を特定する。
図9は、温度および混合比を考慮した強度比を説明するための説明図である。ここでは、想定されるプラズマの温度範囲から選択された複数の温度、例えば、3000K、4000K、5000K、6000Kと、想定される混合比範囲から選択された複数の混合比、例えば、0%、10%、20%、30%、40%、50%との組み合わせについて、特定対象となり得る複数の有機物質、例えば、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレンの発光強度のCの強度とCNの強度の比であるC/CNの強度比がテーブル化されて保持部180に保持されている。
図9を参照すると、同一の物質であっても、プラズマの温度や空気の混合比に応じて発光強度のC/CNの強度比が異なっている。したがって、温度と混合比と強度比とが特定されれば、例えば、温度が4000K、混合比が30%、強度比が0.0913と特定されれば、特定された温度と混合比に属するC/CNの強度比から物質を有機物質「ポリエチレン」と特定することができる。
図4に戻り、例えば、波長特定部196に飛散物質が生物由来物質の可能性があると判定された場合(S258におけるYES)、強度比特定部198は、第1発光スペクトルにおけるMgの輝線とSiの輝線との強度比(Mg/Si)が、各物質に対応する強度比のいずれと等しいか判定する(S270)。そして、第1発光スペクトルの輝線同士の強度比が、生物由来物質の任意の物質の強度比と等しければ(S270におけるYES)、飛散物質が生物由来物質の可能性があると判定し、S278に処理を移し、いずれの強度比とも等しくなければ(S270におけるNO)、飛散物質はいずれの物質にも該当しないとして、その他の物質に分類する(S274)。また、生物由来物質の特定は、構成する物質Si、Mg、Ca、C、Na、K、Al、CN、C、Mnについての様々な組合せを採用することができ、例えば、Mg/Si、Al/Si、Mg/Mn等(各ミネラルの比は生物固有)の強度比に基づいて判定することができる。
また、例えば、波長特定部196に飛散物質が化学物質の可能性があると判定された場合(S260におけるYES)、強度比特定部198は、第1発光スペクトルにおけるPの輝線とFの輝線との強度比(P/F)が、各物質に対応する強度比のいずれと等しいか判定する(S272)。そして、第1発光スペクトルの輝線同士の強度比が、化学物質の任意の物質の強度比と等しければ(S272におけるYES)、飛散物質が化学物質の可能性があると判定し、S284に処理を移し、いずれの強度比とも等しくなければ(S272におけるNO)、飛散物質はいずれの物質にも該当しないとして、その他の物質に分類する(S276)。また、化学物質の特定は、構成する物質P、F、POについての様々な組合せを採用することができ、例えば、P/PO、F/PO等の強度比に基づいて判定することができる。
ところで、上記の実施形態では、ステップS264において、C/Hの強度比を用いて物質を特定した。しかし、温度や混合比によっては物質同士のC/Hの強度比が近似しており区別するのが困難であったり、スペクトルの測定のばらつきによって実測したC/Hの強度比が本来のC/Hの強度比とずれる場合もある。そこで、強度比特定部198は、第1発光スペクトルにおける特定の複数の輝線に対する発光強度の強度比を、1のみならず複数導出し、発光強度の強度比を2次元(複数次元)に展開して物質を特定してもよい。
図10は、2種類の強度比を用いた物質の特定処理を説明するための説明図である。ここでも、強度比の説明のため、実験結果を有する有機物質の例を挙げている。図10では、図9を用いて説明したC/CNの強度比に加え、CHの輝線とCNの輝線との比であるCH/CNの強度比を用いている。図10では、横軸にC/CNの強度比、縦軸にCH/CNの強度比といったように強度比が2次元で表されている。また、図10では、物質それぞれに対して領域(ナイロンの領域310、ポリウレタンの領域312、ポリエチレンの領域314、ポリスチレンの領域316)が設けられ、第1発光スペクトルにおける特定の複数の輝線に対する発光強度の複数の強度比(ここでは、C/CNの強度比とCH/CNの強度比)の組み合わせがいずれの領域に含まれるかによって、その領域に対応する物質を特定する。
ここで、シミュレーションで計算した各物質のC/CNの強度比およびCH/CNの強度比を図10にプロットしてみると、それぞれシミュレーションされた物質(◆…ナイロン、■…ポリウレタン、▲…ポリエチレン、●…ポリスチレン)がそれに対応する領域に含まれるのが理解できる。また、上述した領域の代わりに、各物質において1の点を設け、その点からのマハラノビス距離に応じていずれの物質であるか特定するとしてもよい。このように複数の強度比を用いて複数次元に展開することで、物質の特定精度を向上することができる。
また、さらに多次元の強度比を参照し、ケモメトリックスの一手法であるPCA(Principal Component Analysis)やPLS−DA(Partial Least Squares-Discriminant Analysis)を用いて、物質の特定精度を向上させてもよい。かかるPCAやPLS−DAの具体的な処理は、既存の技術なので、ここではその詳細な説明を省略する。
(第2発光スペクトルの波形)
図4に戻り、強度比特定部198によって物質が特定されなかった場合、すなわち、飛散物質が生物由来物質の可能性がある(S270におけるYES)、または、飛散物質が化学物質の可能性がある(S272におけるYES)と判定された場合、蛍光特定部200は、蛍光特定ステップとして、第2発光スペクトルを取得し、第2発光スペクトルの波形(スペクトルの推移の変化態様)に基づいて物質を特定する。
物質の光吸収に起因する第2発光スペクトル(蛍光スペクトル)は、飛散物質の分子構造を反映するため、生物由来物質のような構成元素が類似する有機物の識別に有効である。さらに、レーザ照射時に見られる多光子吸収過程を用いることにより、蛍光特性に有効な波長を選定することができる。
例えば、強度比特定部198に飛散物質が生物由来物質の可能性があると判定された場合(S270におけるYES)、蛍光特定部200は、第2発光スペクトルを取得し(S278)、第2発光スペクトルの波形が、生物由来物質の任意の物質について予め導出されている多光子励起蛍光の発光スペクトルの波形と相関があるか否か判定する(S280)。ここでは、発光スペクトル同士の強度方向の比を調整し、波形の高さを合わせた後に相関を判定してもよい。また、相関は、主成分分析法、最小二乗法等、既存の様々な技術を用いて実現することができる。そして、蛍光特定部200は、第2発光スペクトルの波形が、例えば、リボフラビン固有の発光スペクトルと相関があれば(S280におけるYES)、飛散物質が生物由来物質「リボフラビン」であると判定し(S282)、いずれの物質固有の発光スペクトルとも相関がなければ(S280におけるNO)、飛散物質は生物由来物質ではないとして、その他の物質に分類する(S274)。
図11は、第2発光スペクトルを示した説明図である。かかる第2発光スペクトルを参照すると、400nm付近と550nm付近にピークがあり、各ピークはエアロゾル噴霧のジェット数(エアロゾル濃度に比例)に対して依存性を持っているので、この第2発光スペクトルの波形がリボフラビン由来であることが理解できる。
また、強度比特定部198に飛散物質が化学物質の可能性があると判定された場合(S272におけるYES)、蛍光特定部200は、第2発光スペクトルを取得し(S284)、第2発光スペクトルの波形が、化学物質の任意の物質について予め導出されている多光子励起蛍光の発光スペクトルの波形と相関があるか否か判定する(S286)。そして、蛍光特定部200は、第2発光スペクトルの波形が、例えば、有機リン系神経毒固有の発光スペクトルと相関があれば(S286におけるYES)、飛散物質が化学物質「有機リン系神経毒」であると判定し(S288)、いずれの物質固有の発光スペクトルとも相関がなければ(S286におけるNO)、飛散物質は化学物質ではないとして、その他の物質に分類する(S276)。
以上、説明したように、本実施形態の物質特定方法および物質特定システムによれば、複数の物質特定システムを用いることなく、複数種類の飛散物質から特定の飛散物質を効率よくかつ適切に特定することが可能となる。したがって、様々な場所でリアルタイムに飛散物質の特定処理を実現できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態においては、レーザ誘起ブレークダウン分光を用いて第1発光スペクトルを導出しているが、かかる場合に限らず、例えば、DIAL(DIfferential Absorption Lidar)等といった他の物質特定を用いることもできる。また、上述した実施形態においては、多光子励起蛍光を用いて第2発光スペクトルを導出しているが、かかる場合に限らず、飛散物質を励起できれば、様々なレーザ光を用いることができる。
なお、本明細書の物質特定方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
例えば、上述した実施形態においては、第1発光スペクトルと第2発光スペクトルとを導出した後、波長特定部196、強度比特定部198、および、蛍光特定部200によって物質を特定する順で説明したが、かかる場合に限らず、最初に第1発光スペクトルを導出し、波長特定部196、強度比特定部198が物質を特定できなかった場合にのみ、第2発光スペクトルを導出し、蛍光特定部200によって物質を特定するとしてもよい。
本発明は、任意の物質を特定する物質特定方法および物質特定システムに利用することができる。
100 物質特定システム
110 第1計測ユニット
120 第2計測ユニット
160 第1レーザ部
162 導光部
168 光検知器(第1受光部)
170 第2レーザ部
174 分光器(第2受光部)
176 ICCD(第2受光部)
190 範囲抽出部
192 第1発光スペクトル導出部
194 第2発光スペクトル導出部
196 波長特定部
198 強度比特定部
200 蛍光特定部

Claims (4)

  1. 飛散物質をイオン化エネルギー以上のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第1発光スペクトルを導出する第1発光スペクトル導出ステップと、
    前記飛散物質をイオン化エネルギー未満のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第2発光スペクトルを導出する第2発光スペクトル導出ステップと、
    前記第1発光スペクトルにおける輝線の波長に基づいて物質を特定する波長特定ステップと、
    前記波長特定ステップによって物質が特定されなかった場合、前記第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比に基づいて物質を特定する強度比特定ステップと、
    前記強度比特定ステップによって物質が特定されなかった場合、前記第2発光スペクトルの波形に基づいて物質を特定する蛍光特定ステップと、
    を含むことを特徴とする物質特定方法。
  2. 飛散物質をイオン化エネルギー以上のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第1発光スペクトルを導出する第1発光スペクトル導出部と、
    前記飛散物質をイオン化エネルギー未満のエネルギー準位に励起し、その発光を受光して受光した光のスペクトルである第2発光スペクトルを導出する第2発光スペクトル導出部と、
    前記第1発光スペクトルにおける輝線の波長に基づいて物質を特定する波長特定部と、
    前記波長特定部によって物質が特定されなかった場合、前記第1発光スペクトルにおける複数の輝線の強度比に基づいて物質を特定する強度比特定部と、
    前記強度比特定部によって物質が特定されなかった場合、前記第2発光スペクトルの波形に基づいて物質を特定する蛍光特定部と、
    を含むことを特徴とする物質特定システム。
  3. レーザ光を照射する第1レーザ部と、該第1レーザ部が照射したレーザ光に応じて生じる散乱光を受ける第1受光部と、を含む第1計測ユニットと、
    前記第1計測ユニットを通じて、計測範囲である第1計測範囲から、物質が存在する、該第1計測範囲より狭い第2計測範囲を抽出する範囲抽出部と、
    前記第1レーザ部と異なるレーザ光を前記第2計測範囲に照射する第2レーザ部と、該第2レーザ部が照射したレーザ光に応じて励起された物質の発光を受ける第2受光部と、を含む第2計測ユニットと、
    をさらに備え、
    前記第1発光スペクトル導出部および前記第2発光スペクトル導出部は、前記第2計測ユニットを通じて前記第1発光スペクトルおよび前記第2発光スペクトルを導出することを特徴とする請求項2に記載の物質特定システム。
  4. 前記飛散物質は、化学物質、生物由来物質、放射性物質、核物質、および、爆発物のいずれか1または複数であることを特徴とする請求項2または3に記載の物質特定システム。
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