本発明は、半導体ウエハ、ガラス基板、または樹脂基板等に膜を形成するための技術に関する。
周知のように、半導体ウエハ等の円板状の基板に膜を形成するための代表的な手法として、図17に示すように、基板(ウエハ)Wの中央に膜液Lを滴下すると共に、そのウエハWを矢印A0方向に回転させ、遠心力により膜液Lを展伸させるスピンコーティング法が用いられる。
このスピンコーティング法では、図17に矢印A1で示す方向に多量の膜液Lが飛散するため、ウエハWの外周側に70%〜90%の膜液Lを捨てることになる。したがって、ウエハWの表面に所定の膜厚を得るための作業では、膜液Lについての大きな食み出し領域B1が形成されて、使用効率(残留膜液)が10%〜30%となり、大きな無駄が生じる。
さらに、このスピンコーティング法では、図18(a)、(b)に示すように、ウエハWの矢印A0方向への回転に伴って、矢印A2で示すような気流が発生するため、膜厚が不均一となり、膜の塗布ムラの原因にもなる。また、図19(a)に示すように、ウエハWの表面に電極や部品等の凸部Mが存在する場合には、凸部Mを起点とする膜の塗布ムラN1が生じるだけでなく、図19(b)に示すように、凸部Mの外周側に気泡N2が発生するという問題も生じ得る。
しかも、このスピンコーティング法では、図20に示すように、遠心力によってウエハWの外周側に向かって展伸された膜液Lが、ウエハWの外周端Wbから裏面Wc側に達してしまうという事態を招く。そのため、図21に示すように、洗浄液を用いて、バックリンスBLおよびエッジリンスELという手法で、ウエハWの外周端部Wbおよび裏面Wcに付着した膜液Lを洗い流す必要性が生じ、洗浄のための作業が煩雑且つ面倒になるばかりでなく、費用面でも不利となる。
このような問題に対処するために、特許文献1の段落[0007]には、スピンコーティング法によらない手法として、ウエハの上方に設けたノズルの吐出孔からレジスト液を供給しながら該ノズルをX方向に往復させ、且つウエハをY方向に間欠送りすることが記載されている。さらに、ウエハの外周端部(周縁)や裏面にレジスト液が付着することを防止するために、ウエハの回路形成領域以外の部分をマスクで覆うことも記載されている。
さらに、特許文献2の段落[0027]には、ノズルから落下してくる塗布液を受け止めてウエハの外縁領域への塗布液の供給を防ぐ一対の液受け部材が設けられており、この一対の液受け部材はX方向間隔が可変であり、且つ、この一対の液受け部材の先端部は、ウエハのY方向位置に関わらず、ウエハの外縁より僅かに内側に位置するように調整することが記載されている。
また、特許文献2の段落[0050]および図12には、塗布液ノズルには多数の吐出口がウエハの直径に相当する長さに亘って一列に並んでおり、塗布液を吐出口から吐出させながらウエハの一端側から他端側に並進運動して、塗布液のスキャン塗布を行うことが記載されている。この場合も、上記と同様に、多数の吐出口から落下してくる塗布液を受け止めてウエハの外縁領域への塗布液の供給を防ぐ一対の液受け部材が設けられている筈である。
特開2001−237179号公報
国際公開WO2005/034228A1
ところで、上述の特許文献1、2に開示された構成は何れも、ノズル(吐出口)から落下した膜液がウエハの外周端部から裏面に達することを防止するために、マスクや液受け部材が必要になり、ウエハ周辺の装置構造が複雑になるという問題を有する。しかも、マスクや液受け部材を設けていても、これらの部材は長期使用に耐え得ないため、耐久性の問題も生じる。
さらに、マスクや液受け部材の先端面(内周端面)から、膜液が垂れ落ちるなどして、ノズル(吐出口)から落ちる膜液以外にも、ウエハの要求位置周辺に落ちる膜液が存在することになる。このような事態が生じると、膜液を正確な要求位置に落とすことが困難になり、ウエハ上に膜が実際に形成される領域に狂いが生じ得るだけでなく、ウエハ上で得られる膜厚の均一性が阻害される。
なお、矩形や多角形などの角板状をなす基板についても、上記と同様の膜を形成する要請が起こり得るが、そのような場合に、既述の問題に対処するには、どのようにすればよいかという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑み、基板に吐出される膜液が該基板の外周端から裏面に達することを容易に防止できると共に、膜液を基板上の要求位置に正確に吐出することができ、且つ基板上で得られる膜厚を正確化することができる膜形成装置および膜形成方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために創案された第1の本発明は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成装置において、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記膜液が前記基板の外周端部から裏面側に向かって付着することを抑制するために前記吐出された膜液の付着を前記基板の膜形成面と外周端部との境界で止めるべく、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数を可変制御するように構成したことに特徴づけられる。
このような構成によれば、基板の形状や姿勢がどのような態様であっても、インクジェットヘッドと基板とが相対移動している間に、膜液を吐出するノズルの個数が可変制御されることによって、基板の先頭部分から後端部分まで、該基板の膜形成面と外周端部との境界で膜液の付着が止められ、膜液が外周端部および裏面に達するという不具合が回避される。したがって、従来のように、マスクや液受け部材が不要になり、基板周辺の装置構造が簡素化されると共に、マスクや液受け部材からの膜液の垂れ落ちがなくなるため、膜液を要求位置に正確に吐出できると共に、基板上での膜厚の正確性を確保できる。この場合、膜液を吐出するノズルの個数を可変制御するためには、インクジェットヘッドと基板との相対移動位置と、基板上の膜形成面の位置とから決まるBMPデータを作成し、そのBMPデータに基づいてインクジェットヘッドの複数のノズルを制御すればよい。
上記の構成において、前記基板が前記インクジェットヘッドに対して相対的に移動する際の態様が、その相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形の基板となる態様ではないことが有利である。
このようにすれば、基板が上記の矩形となる態様の場合には、膜液を吐出するノズルの個数を予め決めておけば、それらのノズルの全てから膜液を吐出するか否か、つまり膜液を吐出するノズルの個数を零にするか一定数にするかの可変制御をするだけで済む。これに対して、基板が上記のように矩形となる態様でない場合には、その矩形の領域から食み出した非矩形領域について、膜液を吐出するノズルの個数を緻密に変更していく必要があるが、上記の構成によれば、このような要請に対して、的確に応じることができる。
このような基板としては、円板状をなす基板と、矩形や三角形その他の多角形などの角板状をなす基板とを挙げることができる。なお、矩形からなる角板状をなす基板の場合には、前記相対的な移動方向に対して当該基板が傾斜している場合に有利となる。
以上の構成において、前記基板の膜形成面に向かって吐出された膜液の乾燥後における膜厚は、下限値が300nmに且つ上限値が30μm以上に制御可能であることが好ましい。
このようにすれば、基板上に、厚みが300nm程度の極めて薄い膜と、厚みが30μm以上の極めて厚い膜とを、正確に形成することができる。なお、20μm以上または30μm以上の極めて厚い膜を形成する場合には、回数に制限なく重ね塗りによって行われる。この場合の上限値は、例えば100μmとされる。
以上の構成において、前記基板の膜形成面に向かって吐出されて乾燥後に使用可能な膜になった膜液の吐出量は、全吐出量の95%〜100%(好ましくは100%)とすることができる。
このようにすれば、インクジェットプリンタ等のインクジェット方式の装置つまりインクジェットヘッドが有効利用されて、膜液の無駄を可及的に少なくすることができる。
以上の構成において、前記基板の外周端にコーナー部が接し、且つ前記相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形領域に対しては、前記相対的な移動位置の別異に関わらず一定数のノズルから膜液を吐出し、前記基板の膜形成面のうち前記矩形領域から食み出した非矩形領域に対しては、前記相対的な移動位置の別異に応じて異なる個数のノズルから膜液を吐出するように制御することが好ましい。
このようにすれば、基板の矩形領域に対するノズルの制御が簡素化されるため、基板全体に対するノズルの制御も効率良く簡素化される。
この場合、前記非矩形領域を、前記相対的な移動方向に複数の部分領域に区分し、それら複数の部分領域に応じて、個々のノズルからの膜液の吐出量を可変制御することが好ましい。
このようにすれば、部分領域を一単位として制御を行えばよいため、制御の煩雑さを回避しつつ制御の正確性を確保することができる。
以上の構成において、前記インクジェットヘッドは、複数個の個別インクジェットヘッドが幅方向に対して千鳥状に配列された並設インクジェットヘッドであることが好ましい。
このようにすれば、基板の大型化にも対処可能となるため、サイズの小さな基板からサイズの大きな基板に亘って広く使用することが可能となる。
以上の構成において、前記基板の膜形成面と外周端部との境界の内周側に連なる筋状の領域では、内周側に向かって漸次膜液の吐出量が増加し、該筋状の領域から内周側に連なる領域では、その増加した膜液の最大吐出量と同一の吐出量となるように制御することが好ましい。
このようにすれば、基板の膜形成面に、均一な吐出量で膜液を形成した場合、つまり基板の膜形成面の全域に亘って膜液の液面高さを均一とした場合には、膜液の乾燥後に、前記境界の内周側に連なる筋状の領域が外周側に移行するに連れて漸次膜厚が大きくなる。そこで、膜液を吐出する時点で、その筋状の領域につき、内周側に移行するに連れて漸次膜液の吐出量が増加するように制御しておけば、乾燥後に基板上で均一な膜厚を得ることができる。
この場合、前記筋状の領域を、内周側から外周側にかけて複数の部分筋状領域に区分し、それら複数の部分筋状領域に応じて、個々のノズルからの膜液の吐出量を可変制御することが好ましい。
このようにすれば、部分筋状領域を一単位として制御を行えばよいため、制御の煩雑さを回避しつつ制御の正確性を確保することができる。
以上の構成において、前記相対的な移動時に、前記複数のノズルに対して膜液の吐出と非吐出とを制御することにより、前記膜形成面に膜が形成される複数の閉鎖領域と、膜が形成されない領域とを作り出すことができ、また、前記相対的な移動時に、前記複数のノズルに対して膜液の吐出と非吐出とを制御することにより、前記膜形成面に膜が形成されない複数の閉鎖領域と、膜が形成される領域とを作り出すこともできる。
このような構成によれば、従来のスピンコーティング法やノズルを使用した方法では不可能であった膜の形成状態を作り出すことができ、特に、基板が円板状をなす場合に有効である。
上記課題を解決するために創案された第2の本発明は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成装置において、前記基板が前記インクジェットヘッドに対して相対的に移動する際の態様が、その相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形の基板となる態様ではなく、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数を可変制御することに特徴づけられる。
このような構成によれば、上述の第1の発明と略同様の作用効果を得ることができる。但し、この場合には、基板上における膜形成面と基板の外周端部との関係については、上述の第1の発明のような厳格な制約を受けない。
上記課題を解決するために創案された第3の本発明は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成装置において、前記基板の膜形成面の外周端から内周側に連なる筋状の領域では、内周側に向かって漸次膜液の吐出量が増加し、該筋状の領域から内周側に連なる領域では、その増加した膜液の最大吐出量と同一の吐出量となるように制御することに特徴づけられる。
このような構成によれば、下記に示すような作用効果が得られる。すなわち、基板の膜形成面に、均一な吐出量で膜液を形成した場合、つまり基板の膜形成面の全域に亘って膜液の液面高さを均一とした場合には、膜液の乾燥後に、前記膜形成面の外周端から内周側に連なる筋状の領域が外周側に移行するに連れて漸次膜厚が大きくなる。そこで、膜液を吐出する時点で、その筋状の領域につき、内周側に移行するに連れて漸次膜液の吐出量が増加するように制御しておけば、乾燥後に基板上で均一な膜厚を得ることができる。
以上の構成において、前記基板は、半導体ウエハであってもよく、または、ガラス基板であってもよく、もしくは、樹脂基板であってもよい。
上記課題を解決するために創案された第4の本発明は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出する膜形成方法において、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記膜液が前記基板の外周端部から裏面側に向かって付着することを抑制するために前記吐出された膜液の付着を前記基板の膜形成面と外周端部との境界で止めるべく、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数を可変制御することに特徴づけられる。
このような方法によれば、上述の第1の本発明と実質的に同一の作用効果を得ることができる。
上記課題を解決するために創案された第5の発明は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成方法において、前記基板が前記インクジェットヘッドに対して相対的に移動する際の態様が、その相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形の基板となる態様ではなく、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数を可変制御することに特徴づけられる。
このような方法によれば、上述の第2の本発明と実質的に同一の作用効果を得ることができる。
上記課題を解決するために創案された第6の本発明は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成方法において、前記基板の膜形成面の外周端部から内周側に連なる筋状の領域では、内周側に向かって漸次膜液の吐出量が増加し、該筋状の領域から内周側に連なる領域では、その増加した膜液の最大吐出量と同一の吐出量となるように制御することに特徴づけられる。
このような方法によれば、上述の第3の本発明と実質的に同一の作用効果を得ることができる。
以上のように本発明によれば、基板に吐出される膜液が該基板の外周端から裏面に達することを容易に防止できると共に、膜液を基板上の要求位置に正確に吐出することができ、且つ基板上で得られる膜厚を正確化することができる。
本発明の第1実施形態に係る膜形成装置の概略構成を示す斜視図である。
本発明の第1実施形態に係る膜形成装置の構成要素であるインクジェットヘッドの下面におけるノズルの配列状態の一例を示す概略図である。
図3(a)は、本発明の第1実施形態に係る膜形成装置の構成要素であるノズルの膜液吐出方式の第1例を示す概略正面図であり、図3(b)は、本発明の第1実施形態に係る膜形成装置の構成要素であるノズルの膜液吐出方式の第2例を示す概略正面図であり、図3(c)は、本発明の第1実施形態に係る膜形成装置の構成要素であるノズルの膜液吐出方式の第3例を示す概略正面図である。
本発明の第1実施形態に係る基板上の膜形成面に対する膜液の吐出状態の第1例を説明するための概略平面図である。
図5(a)は、本発明の第1実施形態に係る基板上の膜形成面の一部に対する膜液の吐出状態の問題点を説明するための概略平面図であり、図5(b)は、図5(a)のF−F断面図である。
図6(a)は、本発明の第1実施形態に係る基板上の膜形成面の一部に対する膜液の吐出状態を説明するための概略平面図であり、図6(b)は、図6(a)のG−G断面図である。
図7(a)は、本発明の第1実施形態に係る基板上に膜が形成された直後の外周側部分の問題点を示す拡大縦断面図であり、図7(b)は、本発明の第1実施形態に係る基板上に膜が形成された後の乾燥後における外周側部分の問題点を示す拡大縦断面図である。
図8(a)は、本発明の第1実施形態に係る基板上に膜が形成された直後の外周側部分を示す拡大縦断面図であり、図8(b)は、本発明の第1実施形態に係る基板上に膜が形成された後の乾燥後における外周側部分を示す拡大縦断面図である。
本発明の第1実施形態に係る基板上の膜形成面に対する膜液の吐出状態の第2例を説明するための概略平面図である。
本発明の第1実施形態に係る基板上の膜形成面に対する膜液の吐出状態の第2例を説明するための部分拡大概略平面図である。
本発明の第2実施形態に係る基板上の膜形成面に対する膜液の吐出状態を説明するための部分拡大概略平面図である。
本発明の第3実施形態に係る基板上の膜形成面に対する膜液の吐出状態を説明するための部分拡大概略平面図である。
本発明の第4実施形態に係る基板上の膜の形成状態を示す概略縦断側面図である。
本発明の第5実施形態に係る基板上の膜の形成状態を示す概略縦断側面図である。
図15(a)は、本発明の第6実施形態に係る基板上の膜形成状態の第1例を示す概略平面図であり、図15(b)は、本発明の第6実施形態に係る基板上の膜形成状態の第2例を示す概略平面図である。
図16(a)は、本発明の第7実施形態に係る基板上の膜形成状態の第1例を示す概略平面図であり、図16(b)は、本発明の第7実施形態に係る基板上の膜形成状態の第2例を示す概略平面図である。
従来の問題点を説明するための概略斜視図である。
図18(a)は、従来の問題点を説明するための概略平面図であり、図18(b)は、従来の問題点を説明するための概略正面図である。
図19(a)は、従来の問題点を説明するための概略平面図であり、図19(b)は、従来の問題点を説明するための概略正面図である。
従来の問題点を説明するための概略縦断正面図である。
従来の問題点を説明するための概略縦断正面図である。
以下、本発明の実施形態に係る膜形成装置および膜形成方法について図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明の第1実施形態に係る膜形成装置および膜形成方法について説明する。図1に示すように、膜形成装置1は、半導体ウエハからなる円板状の基板2が、矢印A方向に搬送される共に、その搬送経路の上方には、ピエド方式のインクジェットヘッド3が固定設置されている。このインクジェットヘッド3は、複数(図例では5個)の個別インクジェットヘッド3aが搬送方向Aと直交する幅方向Bに対して千鳥状に配列された併設インクジェットヘッドである。このインクジェットヘッド3における各個別インクジェットヘッド3aの下面(吐出面)には、幅方向Bに複数のノズル4が、同一のノズルピッチ4Pで配列されている。したがって、インクジェットヘッド3には、全体的に視れば、幅方向Bに一定のノズルピッチ4Pで多数のノズル4が配列されていることになる。そして、全てのノズル4の位置を示すデータは、インクジェットヘッド3の記憶手段5に記憶されている。
基板2の表面への膜液の吐出に関しては、基板2の搬送方向Aの位置と、基板2の表面における膜形成面2Aの位置とに応じて決まるBMPデータ(ビットマップデータ)が、記憶手段5に記憶されている。このBMPデータは、インクジェットヘッド3の各ノズル4に対して、膜液を吐出させるノズル4の個数、各ノズル4からの膜液の吐出量、および各ノズル4からの膜液の吐出の有無を、指定することができる。したがって、各ノズル4の膜液の吐出ピッチは任意に指定することができる。また、基板2の搬送速度は、2mm/sec〜100mm/sec、好ましくは10mm/sec〜50mm/secとされるが、この基板2の搬送速度は、ノズル4からの膜液の吐出量や吐出周波数、さらにはノズル4の配列状態などを考慮して適宜設定される。
図1に符合Cで拡大して示すように、単位面積当たりにおける基板2の膜形成面2Aにおける膜液の塗布状態は、インクジェットヘッド3の全てのノズル4から膜液6を吐出した場合(100%の吐出状態の場合)に、ノズルピッチ4Pと、搬送方向の吐出ピッチApとの関係において、全ての膜液6(同図に示す円の形状をなす線)が隙間なく重なることになる。
図2は、インクジェットヘッド3の下面におけるノズル4の配列状態の一例を示している。インクジェットヘッド3における各個別インクジェットヘッド3aの下面には、2つのライン型インクジェットノズル3bが並列に取り付けられている。そして、一方のライン型インクジェットノズル3bの各ノズル4の位置と、他方のライン型インクジェットノズル3bの各ノズル4の位置とは、幅方向Bにノズルピッチ4Pの半ピッチ分だけずれている。したがって、このインクジェットヘッド3の全体としての実質的なノズルの配列ピッチは、個々のライン型インクジェットノズル3bのノズルピッチ4Pの1/2とされている。なお、ライン型インクジェットノズル3bの配列個数やノズル4の配列状態などは、これに限定されるわけではない。
ここで、インクジェットヘッド3から吐出される膜液の吐出方式を説明する。図3(a)は、バイナリーモードと称される方式で、画像データのBMPデータ上で、一つのノズル4に相当する吐出データを1回ONさせた場合に、予め決められた吐出量の膜液6が1滴のみ吐出するモードである。図3(b)は、マルチドロップモードと称される方式で、画像データのBMPデータ上で、一つのノズル4に相当する吐出データに、1〜7までの数字(この例では3)を付加させた場合に、1回ONさせるだけで、予め決められた吐出量の膜液6が3滴連続して吐出するモードである。図3(c)は、DPNモードと称される方式で、画像データのBMPデータ上で、一つのノズル4に相当する吐出データに、吐出量のデータを入力することで、1回ONさせるだけで、入力された吐出量の膜液6を吐出するモードである。本発明は、この何れの方式も採用することができるが、この実施形態では、図3(a)のバイナリーモード方式が採用される。その理由は、バイナリーモード方式は、他の二つの方式に比べて、複雑な電気制御が不要だからである。
図4は、基板2の表面における膜形成面2Aに対して、インクジェットヘッド3から膜液6を吐出する態様を例示している。基板2の膜形成面2Aは円形であるために、その輪郭は搬送方向Aと一致せず且つ幅方向Bとも一致せず、インクジェットヘッド3のノズルの幅方向配列長さは、基板2の膜形成面2Aの幅方向最大長さ(膜形成面2Aの直径D1)よりも長い。そして、膜形成面2Aである円形の全領域は、幅方向Bの中央に存在してコーナー部が円形輪郭と接する三つの矩形領域20と、左右二つの部分円形領域21と、上下六つの部分円形領域22とに区分される。この場合、三つの矩形領域20では、搬送方向Aの移動位置の別異に関係なくインクジェットヘッド3における膜液を吐出するノズル4の個数が一定数であって、具体的には、三つの個別インクジェットヘッド3aによって、それらの一定数のノズル4(この実施形態では全てのノズル4)から膜液が吐出される。これに対して、八つの部分円形領域21,22では、搬送方向Aの移動位置の別異に応じてインクジェットヘッド3における膜液を吐出するノズル4の個数が変化する。これによって、膜液の吐出状態は、円形輪郭に沿うことになり、結果的には、円形の膜形成面2Aの全領域に正確な円形となるように膜液が吐出される。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7(図1参照)が行う。
この場合、八つの部分円形領域21、22のうち、左右二つの部分円形領域21についてはそれぞれ、搬送方向Aに対して複数(図例では12)の領域a〜lに区分され、それらの領域の別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量が変化する。また、幅方向Bの中央上下の領域を除く上下四つの部分領域22についてはそれぞれ、搬送方向Aに対して複数(図例では6)の領域a〜fに区分され、それらの領域の別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量が変化する。なお、幅方向Bの中央の上下二つの部分円形領域22についてもそれぞれ、搬送方向Aに対して複数の領域に分割して、それらの別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量を変化させてもよいが、そのような事を行わないようにしてもよい。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7が行う。
ここで、インクジェットヘッド3の特性として、膜液を吐出させるノズル4の個数が変化した場合には、吐出直後の膜厚が不均一になることが周知となっている。このような現象は、クロストーク現象と呼称されている。具体的には、膜液を吐出させるノズル4の個数が少ない場合には、個々のノズル4からの膜液の吐出量が多くなり、膜液を吐出させるノズル4の個数が多い場合には、個々のノズル4からの膜液の吐出量が少なくなる。そのため、仮に、上述の八つ(または六つ)の部分円形領域21、22について、膜液を吐出させるノズル4の個数を変化させるだけであれば、吐出直後の膜厚が不均一となる。具体的には、図5(a)に示す部分円形領域21については、上下方向中央部から両端部に移行するに連れて、漸次、膜液を吐出させるノズル4の個数が少なくなる。そのため、基板2の表面の膜形成面2Aに吐出された直後の膜8は、図5(b)に示すように、上下方向中央部の膜厚が薄く、両端部に移行するに連れて、漸次、膜厚が厚くなる。そこで、この実施形態では、図6(a)に示すように(すなわち図4に示すように)、部分円形領域21を搬送方向Aに対して複数(例えば12)の領域a〜lに分割して、個々のノズル4からの膜液の吐出量を、上下方向中央部の領域f、gで多くし、両端側の領域に移行するに連れて、その吐出量を少なくする。その結果、図6(b)に示すように、基板2の表面の膜形成面2Aに吐出された直後の膜8は、上下方向の全領域a〜lに亘って膜厚が均一になる。このように膜厚を均一にするためには、予め上記の12の領域についての個別のノズル4からの膜液の吐出量を重量計で測定して記憶手段5に記憶しておき、この記憶したデータを基に部分円形領域21の膜液の吐出量が均一になるように制御手段7で自動補正すればよい。そして、他の部分円形領域21、22についても同様のことを行うことにより、円形の膜形成面2Aの全領域に亘って、吐出直後の膜厚が均一になる。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7が行う。
図7(a)は、基板2上における吐出直後の膜厚が均一とされた膜8の塗布状態を示している。この塗布状態は、膜液が基板2の湾曲した外周端部2bから裏面2cに向かって付着することが防止されて、湾曲した外周端部2bと平面状の膜形成面2Aとの境界2dで、膜8(膜液)の付着が止められている。したがって、膜8の外周端部8bは、基板2の湾曲した外周端部2bと平面状の膜形成面2Aとの境界2dまたはその近傍に位置している。なお、基板2の外周端部が図示のように湾曲して大きく外周側に突出していない場合には、基板2の外周端部と見なすことができる部位と、平面状の膜形成面2Aとの境界が、膜8の外周端部8bの位置となる。見方を変えれば、膜8の外周端部8bは、基板2の外周端部2bにおける裏面側部分2eに至っていなければよい。
このような状態の下で、膜8が乾燥した場合には、図7(b)に示すように、乾燥した膜8Aの外周端部8bから内周側に存在する細幅の筋状領域23のみが***して、その中央側の領域は、相対的に膜厚が薄く均一な状態となる。このような現象は、コーヒーリング現象と一般に呼称されている。そこで、この実施形態では、図8(a)に示すように、吐出直後の膜8の外周端部8bの内周側における筋状領域23については、内周側から外周側に移行するに連れて漸次膜厚が薄くなるように、所定のノズル4から膜液が吐出されるようになっている。この場合、膜液の吐出直後における上記の筋状領域23の膜8の表面(上面)8cは、内周側から外周側に向かって下降傾斜すると共に、僅かに凹状に湾曲している。そして、このような状態から、膜8が乾燥した場合には、図8(b)に示すように、膜8Aの外周端部8Abから中央までの全領域に亘って膜厚が均一になる。このようにするための具体的な制御は、以下のようにして行われる。
すなわち、図9に示すように、基板2上の円形の膜形成面2Aについて、等角度で周方向に複数(図例では12個)の扇形領域24に区分すると共に、さらに最外周の筋状領域23を径方向に複数(図例では6個)の部分円弧状領域a〜fに区分する。そして、12個の扇形領域24のそれぞれについて、6個の部分円弧状領域a〜fごとに、ノズル4からの膜液の吐出量を補正し、結果的に、図8(b)に示すように、乾燥後の膜8Aの膜厚が均一になるようにする。なお、筋状領域23の全周に亘って一挙にノズル4からの膜液の吐出量を補正せずに、周方向に12分割したのは、制御の容易化と正確化とを確保するためであり、12分割した扇形領域24に対して個別に補正されたその補正データは、記憶手段5に記憶される。なお、同図の上端には、ノッチ部2Bが形成されているが、このノッチ部2Bは、図10に示すように、一つの区画部として、径方向に複数(図例では6個)のV型領域a〜fに区分し、これらのV型領域a〜fについても、上記と同様にして吐出量を補正すれば、結果的に、ノッチ部2Bについても、乾燥後に均一な膜厚が得られる。また、ノッチ部2B以外の形状をなすオリフラが設けられる場合であっても、このオリフラに対して同様の事が行われる。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7が行う。
図11は、本発明の第2実施形態に係る膜形成装置1の概略平面図であって、基板2の表面における膜形成面2Aに対して、インクジェットヘッド3から膜液6を吐出する態様を例示している。この第2実施形態に係る膜形成装置1が上述の第1実施形態に係るそれと大きく相違している点は、基板2が、矩形のガラス基板または樹脂基板であって、搬送方向Aに対して傾斜した姿勢とされている点である。したがって、図11に示すように、基板2の輪郭は、搬送方向Aと一致せず且つ幅方向Bとも一致せず、インクジェットヘッド3のノズルの幅方向配列長さは、基板2の膜形成面2Aの幅方向最大長さL1よりも長い。この場合、膜形成面2Aである矩形の全領域は、幅方向Bの中央に存在してコーナー部が矩形輪郭と接する三つの矩形領域25と、左右二つの非矩形領域26と、上下八つの非矩形領域27とに区分される。そして、三つの矩形領域25では、搬送方向Aの移動位置の別異に関係なくインクジェットヘッド3における膜液を吐出するノズル4の個数が一定数であって、具体的には、三つの個別インクジェットヘッド3aによって、それらの一定数のノズル4(この実施形態では全てのノズル4)から膜液が吐出される。これに対して、八つの非矩形領域26、27では、搬送方向Aの移動位置の別異に応じてインクジェットヘッド3における膜液を吐出するノズル4の個数が変化する。これによって、膜液の吐出状態は、傾斜姿勢の矩形輪郭に沿うことになり、結果的には、傾斜姿勢の矩形の膜形成面2Aの全領域に膜液が吐出される。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7が行う。この場合、左右二つの非矩形領域26についてはそれぞれ、搬送方向Aに対して複数(図例では4つ)の領域a〜dに区分され、それらの領域の別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量が変化する。また、上下八つの非矩形領域27についてはそれぞれ、搬送方向Aに対して複数(図例では6つ(一部は5つ)の領域a〜f(一部はa〜e)に区分され、それらの領域の別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量が変化する。なお、基板2上への吐出直後における膜8の膜厚の不均一を均一にするための制御については、既述の図6(a)、(b)に基づいて説明した事項と実質的に同一の制御が行われ、且つ、乾燥後における膜8Aの膜厚の不均一を均一にするための制御については、既述の図8(a)、(b)に基づいて説明した事項と実質的に同一の制御が行われる。また、基板2の外周端部2bと膜8、8Aの形成位置との関係は、既述の図7、8に基づいて説明した事項と実質的に同一である。
図12は、本発明の第3実施形態に係る膜形成装置1の概略平面図であって、基板2の表面における膜形成面2Aに対して、インクジェットヘッド3から膜液6を吐出する態様を例示している。この第3実施形態に係る膜形成装置1が上述の第2実施形態に係るそれと大きく相違している点は、矩形のガラス基板または樹脂基板からなる基板2が、搬送方向Aに対して非傾斜姿勢とされている点である。そして、インクジェットヘッド3のノズルの幅方向配列長さは、基板2の膜形成面2Aの幅方向最大長さL2(膜形成面2Aの一辺の長さ)よりも長い。したがって、基板2上の膜形成面2Aに対して、インクジェットヘッド3における膜液を吐出させるノズル4の個数が変化するのは、矩形の膜形成面2Aの下辺を通過する際に、零から一定数に変化する場合と、膜形成面2Aの上辺を通過する際に、一定数から零に変化する場合とである。但し、このような変化をする場合には、基板2の外周端部2bと膜形成面2Aとの位置関係について、厳格な制御が必要である。また、この実施形態では、幅方向Bの中央部における三つの矩形領域28については、三つの個別インクジェットヘッド3によって、それらの一定数のノズル4(この実施形態では全てのノズル4)から膜液が吐出される。これに対して、左右両端二つ部分矩形領域29では、上記の一定数よりも少ない個数のノズル4から膜液が吐出される。したがって、この二つの部分矩形領域29では、中央部の三つの矩形領域28よりも個々のノズル4からの膜液の吐出量が少なくされる。なお、乾燥後における膜8Aの膜厚の不均一を均一にするための制御については、既述の図8(a)、(b)に基づいて説明した事項と実質的に同一の制御が行われる。また、基板2の外周端部2bと膜8、8Aの形成位置との関係は、既述の図7、8に基づいて説明した事項と実質的に同一である。
図13は、本発明の第4実施形態に係る膜形成装置1を例示している。この第4実施形態に係る膜形成装置1が、上述の第1、第2、第3実施形態に係るそれと相違しているところは、基板2上における円形または傾斜姿勢の矩形もしくは非傾斜姿勢の膜形成面2Aに電極膜や部品などの凸部9が複数存在する場合に、インクジェットヘッド3の所要のノズル4からの膜液の吐出量を電気的に可変制御して、乾燥後における膜8Aの膜厚を均一にした点である。さらに、この場合には、気泡などは発生しない。その他の制御は、上述の第1、第2、第3実施形態のそれぞれの場合と実質的に同一である。
図14は、本発明の第5実施形態に係る膜形成装置1を例示している。この第5実施形態に係る膜形成装置1が、上述の第1、第2、第3実施形態に係るそれと相違しているところは、基板2上における円形または傾斜姿勢の矩形もしくは非傾斜姿勢の矩形の膜形成面2Aに、電極膜や部品などの凸部9が複数存在する場合に、インクジェットヘッド3の所要のノズル4からの膜液の吐出量を電気的に可変制御して、乾燥後における膜8Aの表面(上面)を平坦にした点である。さらに、この場合にも、気泡などは発生しない。その他の制御は、上述の第1、第2、第3実施形態のそれぞれの場合と実質的に同一である。
図15(a)、(b)は、本発明の第6実施形態に係る膜形成装置1を例示している。この第6実施形態に係る膜形成装置1が、上述の第1、第2、第3実施形態に係るそれと相違しているところは、平面視円形の基板2上における円形の膜形成面2A、および平面視矩形の傾斜姿勢の矩形もしくは非傾斜姿勢の矩形の膜形成面2Aに、膜が形成されない複数の閉鎖領域10と、膜が形成される領域11とを作り出した点である。その他の制御は、上述の第1、第2、第3実施形態のそれぞれの場合と実質的に同一である。なお、上述の図7、8、9に示した構成を、膜形成面2Aの外周端部のみならず、各閉鎖領域10の周縁部に適用してもよい。
図16(a)、(b)は、本発明の第7実施形態に係る膜形成装置1を例示している。この第7実施形態に係る膜形成装置1が、上述の第1、第2、第3実施形態に係るそれと相違しているところは、平面視円形の基板2上における円形の膜形成面2A、および平面視矩形の基板2上における傾斜姿勢の矩形もしくは非傾斜姿勢の矩形の膜形成面2Aに、膜が形成される複数の閉鎖領域11と、膜が形成されない領域10とを作り出した点である。その他の制御は、上述の第1、第2、第3実施形態のそれぞれの場合と実質的に同一である。なお、上述の図7、8、9に示した構成を、各閉鎖領域11の周縁部に適用してもよい。
そして、以上の実施形態で、基板2上に形成される乾燥後の膜8Aの膜厚は、下限値を300nmとすることができ、上限値を30μm以上、例えば50μmとすることができる。
また、以上の実施形態に係る膜形成装置1を使用して膜8Aを形成した場合、実際にインクジェットヘッド3から吐出した膜液の全吐出量の95%以上が膜8Aの形成に使用された。したがって、無駄になった膜液は、全吐出量の5%未満であった。この場合、無駄になった膜液とは、膜8Aを形成する前にノズル4の表面をクリーニングする時にノズル4の内部から出た少量の膜液と、ノズル4の表面をクリーニングした後にノズル面を整えるために少量だけスタンバイショット(捨て打ち)した膜液との総和である。したがって、基板2の膜形成面2Aに実際に膜8Aを形成している際には、インクジェットヘッド3から吐出した膜液の全吐出量の100%もしくは略100%が膜8Aの形成に使用されることになる。
以上の実施形態では、膜8、8Aの外周端部8b、8Abを、図8に示すように、基板2の外周端部2bと平面状をなす膜形成面2Aとの境界2dに位置させたが、この膜8、8Aの外周端部8b、8Abは、上記の境界2dよりも内周側にあってもよく或いは外周側にあってもよい。したがって、図9に示す構成も図示の状態よりも内周側にあっても外周側にあってもよい。
また、以上の実施形態では、5個の個別インクジェットヘッド3を使用したが、その個数は限定されるものではなく、例えば、1個の個別インクジェットヘッド3のみを使用してもよい。
さらに、以上の実施形態では、インクジェットヘッド3の全てのノズル4から膜液6を吐出する場合(100%の吐出状態の場合)に、本発明を適用したが、70%〜95%または85%〜95%の吐出状態であってもよい。
また、以上の実施形態で使用した膜液6は、感光性絶縁膜、非感光性絶縁膜、レジスト膜、UV膜などの機能性膜あるいはその他の膜を形成するものであれば、特に限定されるものではない。
さらに、以上の実施形態では、基板2が搬送方向Aに一回移動する間に、膜8Aの形成が完了するようにしたが、基板2が二回以上(往復動を含む)移動する間に膜8Aの形成が完了するようにしてもよく、その場合には、基板2の膜形成面2Aを必要に応じて複数領域に分割して、基板2の一回の移動で分割した領域毎に膜8Aを形成するようにしてもよい。
加えて、以上の実施形態では、基板2が移動してインクジェットヘッド3が固定設置されていたが、これとは逆に、インクジェットヘッド3が移動して基板2が固定設置されていてもよく、あるいは、両者2、3が移動してもよい。
1 膜形成装置
2 基板
2A 基板の膜形成面
2b 基板の外周端部
2c 基板の裏面
3 インクジェットヘッド
3a 個別インクジェットヘッド
4 ノズル
5 記憶手段
6 膜液
7 制御手段
8 膜(吐出直後の膜)
8A 膜(乾燥後の膜)
9 凸部
先ず、本発明の説明に先立って、本発明の基本となる構成を備えた技術的手段について以下に説明をしておく。すなわち、この技術的手段は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成装置において、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記膜液が前記基板の外周端部から裏面側に向かって付着することを抑制するために前記吐出された膜液の付着を前記基板の膜形成面と外周端部との境界で止めるべく、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数を可変制御するように構成したものである。
以上のような技術的手段を踏まえて、上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成装置において、前記基板が前記インクジェットヘッドに対して相対的に移動する際の態様が、その相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形の基板となる態様ではなく、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数と、ノズルからの膜液の吐出量とを可変制御するに際して、前記基板の膜形成面の一部に、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量を変化させる可変領域が設けられると共に、前記可変領域が複数の分割領域に区分され、それらの分割領域の別異に応じて、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量についての異なる制御が行われるように構成したことに特徴づけられる。
このような構成によれば、既述の種々の効果を得るための助けとなるが、特に、既述のように部分領域を一単位として制御を行えば済むために制御の煩雑さを回避しつつ制御の正確性を確保することができるという効果を奏する。
この場合において、前記ノズルから膜液を吐出するモードとして、バイナリーモード方式を採用することが好ましい。
このようにすれば、他の方式を採用した場合と比較して、複雑な電気制御が不要となる。
上記の本発明に係る装置の構成において、前記基板は、半導体ウエハであることが好ましいが、ガラス基板であってもよく、もしくは、樹脂基板であってもよい。
上記の本発明に係る装置の構成において、前記基板は、前記相対的な移動方向に対して傾斜した矩形の基板であってもよい。
上記の本発明に係る装置の構成において、前記基板の膜形成面に複数の凸部が形成されると共に、該膜形成面および複数の凸部に吐出された膜液の乾燥後における膜の表面が平坦となるように、前記ノズルから膜液を吐出するように構成することができる。
また、上記課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出する膜形成方法において、前記基板が前記インクジェットヘッドに対して相対的に移動する際の態様が、その相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形の基板となる態様ではなく、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数と、ノズルからの膜液の吐出量とを可変制御するに際して、前記基板の膜形成面の一部に、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量を変化させる可変領域が設けられると共に、前記可変領域が複数の分割領域に区分され、それらの分割領域の別異に応じて、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量についての異なる制御が行われることに特徴づけられる。
このような方法によれば、上述の本発明に係る装置と実質的に同一の作用効果を得ることができる。
まず、本発明の第1実施形態に係る膜形成装置および膜形成方法について説明する。図1に示すように、膜形成装置1は、半導体ウエハからなる円板状の基板2が、矢印A方向に搬送される共に、その搬送経路の上方には、ピエゾ方式のインクジェットヘッド3が固定設置されている。このインクジェットヘッド3は、複数(図例では5個)の個別インクジェットヘッド3aが搬送方向Aと直交する幅方向Bに対して千鳥状に配列された併設インクジェットヘッドである。このインクジェットヘッド3における各個別インクジェットヘッド3aの下面(吐出面)には、幅方向Bに複数のノズル4が、同一のノズルピッチ4Pで配列されている。したがって、インクジェットヘッド3には、全体的に視れば、幅方向Bに一定のノズルピッチ4Pで多数のノズル4が配列されていることになる。そして、全てのノズル4の位置を示すデータは、インクジェットヘッド3の記憶手段5に記憶されている。
この場合、八つの部分円形領域21、22のうち、左右二つの部分円形領域21についてはそれぞれ、搬送方向Aに対して複数(図例では12)の領域a〜lに区分され、それらの領域の別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量が変化する。また、幅方向Bの中央上下の領域を除く上下四つの部分円形領域22についてはそれぞれ、搬送方向Aに対して複数(図例では6)の領域a〜fに区分され、それらの領域の別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量が変化する。なお、幅方向Bの中央の上下二つの部分円形領域22についてもそれぞれ、搬送方向Aに対して複数の領域に分割して、それらの別異に応じて、個々のノズル4からの膜液の吐出量を変化させてもよいが、そのような事を行わないようにしてもよい。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7が行う。
ここで、インクジェットヘッド3の特性として、膜液を吐出させるノズル4の個数が変化した場合には、吐出直後の膜厚が不均一になることが周知となっている。このような現象は、クロストーク現象と呼称されている。具体的には、膜液を吐出させるノズル4の個数が少ない場合には、個々のノズル4からの膜液の吐出量が多くなり、膜液を吐出させるノズル4の個数が多い場合には、個々のノズル4からの膜液の吐出量が少なくなる。そのため、仮に、上述の八つ(または六つ)の部分円形領域21、22について、膜液を吐出させるノズル4の個数を変化させるだけであれば、吐出直後の膜厚が不均一となる。具体的には、図5(a)に示す部分円形領域21については、上下方向中央部から両端部に移行するに連れて、漸次、膜液を吐出させるノズル4の個数が少なくなる。そのため、基板2の表面の膜形成面2Aに吐出された直後の膜8は、図5(b)に示すように、上下方向中央部の膜厚が薄く、両端部に移行するに連れて、漸次、膜厚が厚くなる。そこで、この実施形態では、図6(a)に示すように(すなわち図4に示すように)、部分円形領域21を搬送方向Aに対して複数(例えば12)の領域a〜lに分割して、個々のノズル4からの膜液の吐出量を、上下方向中央部の領域f、gで多くし、両端側の領域に移行するに連れて、その吐出量を少なくする。その結果、図6(b)に示すように、基板2の表面の膜形成面2Aに吐出された直後の膜8は、上下方向の全領域a〜lに亘って膜厚が均一になる。このように膜厚を均一にするためには、予め上記の12の領域についての個別のノズル4からの膜液の吐出量を重量計で測定して記憶手段5に記憶しておき、この記憶したデータを基に部分円形領域21の膜液の吐出量が均一になるように制御手段7で自動補正すればよい。そして、他の部分円形領域21、22についても同様のことを行うことにより、円形の膜形成面2Aの全領域に亘って、吐出直後の膜厚が均一になる。以上のように、膜液を吐出させるノズル4の個数を変化させる必要がある部分円形領域(可変領域)21、22では、クロストーク現象が生じるため、搬送方向Aに対して複数の領域(分割領域)a〜lに区分すると共に、分割領域a〜lの別異に応じて、膜液を吐出するノズル4の個数およびノズル4からの膜液の吐出量についての異なる制御が行われる。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7が行う。
すなわち、図9に示すように、基板2上の円形の膜形成面2Aについて、等角度で周方向に複数(図例では12個)の扇形領域24に区分すると共に、さらに最外周の筋状領域23を径方向に複数(図例では6個)の部分円弧状領域a〜fに区分する。そして、12個の扇形領域24のそれぞれについて、6個の部分円弧状領域a〜fごとに、ノズル4からの膜液の吐出量を補正し、結果的に、図8(b)に示すように、乾燥後の膜8Aの膜厚が均一になるようにする。なお、筋状領域23の全周に亘って一挙にノズル4からの膜液の吐出量を補正せずに、周方向に12分割したのは、制御の容易化と正確化とを確保するためであり、12分割した扇形領域24に対して個別に補正されたその補正データは、記憶手段5に記憶される。なお、同図の上端には、ノッチ部2Bが形成されているが、このノッチ部2Bは、図10に示すように、一つの区画部として、径方向に複数(図例では6個)のV型領域a〜fに区分し、これらのV型領域a〜fについても、上記と同様にして吐出量を補正すれば、結果的に、ノッチ部2Bについても、乾燥後に均一な膜厚が得られる。以上のように、ノズル4からの膜液の吐出量を変化させる必要がある筋状領域(可変領域)23では、コーヒーリング現象が生じるため、径方向に複数の部分円弧状領域(分割領域)a〜fに区分すると共に、これら分割領域a〜fの形状に由来して必然的に搬送方向の移動位置の別異に応じて膜液を吐出するノズル4の個数を変化させねばならないことから、分割領域a〜fの別異に応じて、ノズル4からの膜液の吐出量および膜液を吐出するノズル4の個数についての異なる制御が行われる(ノッチ部2Bについても同様)。また、ノッチ部2B以外の形状をなすオリフラが設けられる場合であっても、このオリフラに対して同様の事が行われる。以上のような制御は、記憶手段5に記憶されているBMPデータなどに基づいて制御手段7が行う。
以上のような技術的手段を踏まえて、上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出するように構成した膜形成装置において、前記基板が前記インクジェットヘッドに対して相対的に移動する際の態様が、その相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形の基板となる態様ではなく、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記膜液が前記基板の外周端部から裏面側に向かって付着することを抑制するために前記吐出された膜液の付着を前記基板の膜形成面と外周端部との境界で止めるべく、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数を可変制御するように構成し、前記基板の膜形成面の一部に、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量を変化させる可変領域が設けられると共に、前記可変領域が複数の分割領域に区分され、それらの分割領域の別異に応じて、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量についての異なる制御が行われるように構成したことに特徴づけられる。
また、上記課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、膜液を吐出する複数のノズルが幅方向に配列されたインクジェットヘッドの吐出面と、前記ノズルから膜液が吐出される基板の膜形成面とを対向させて、前記インクジェットヘッド及び前記基板を非回転状態で、この両者を前記幅方向と直交する方向に相対的に移動させながら、前記ノズルから前記基板の膜形成面に前記膜液を吐出する膜形成方法において、前記基板が前記インクジェットヘッドに対して相対的に移動する際の態様が、その相対的な移動方向に平行な二辺と、この方向に直交する二辺とからなる矩形の基板となる態様ではなく、前記インクジェットヘッドのノズルの配列幅長さを、前記基板が相対的に移動する際における該基板の膜形成面の幅方向最大長さ以上にして、前記両者の相対的な移動を完了させるまでの間に、前記膜液が前記基板の外周端部から裏面側に向かって付着することを抑制するために前記吐出された膜液の付着を前記基板の膜形成面と外周端部との境界で止めるべく、前記複数のノズルにおける膜液を吐出するノズルの個数を可変制御し、前記基板の膜形成面の一部に、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量を変化させる可変領域が設けられると共に、前記可変領域が複数の分割領域に区分され、それらの分割領域の別異に応じて、前記膜液を吐出するノズルの個数および前記ノズルからの膜液の吐出量についての異なる制御が行われることに特徴づけられる。