以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示すハイブリッド車両Vは、左右の前輪WFL、WFR及び左右の後輪WRL、WRRを有する四輪車両であり、ハイブリッド車両Vには、前輪WFL、WFRを駆動するための前輪駆動装置DFSと、後輪WRL、WRRを駆動するための後輪駆動装置DRSが搭載されている。以下、左右の前輪WFL、WFR及び左右の後輪WRL、WRRをそれぞれ総称して、適宜「前輪WFL、WFR」及び「後輪WRL、WRR」という。
前輪駆動装置DFSは、本出願人による特許第5362792号に開示されたものと同じものであるので、以下、その構成及び動作について簡単に説明する。前輪駆動装置DFSは、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3と、発電可能な電動機で構成されたフロントモータ4と、エンジン3及びフロントモータ4の動力を変速し、前輪WFL、WFRに伝達する変速装置5を有している。
エンジン3は、複数の気筒を有するガソリンエンジンであり、その吸入空気量、燃料噴射量、燃料噴射時期及び点火時期などは、図3に示す制御装置1の後述するECU2によって制御される。周知のように、吸入空気量はスロットル弁(図示せず)を介して、燃料噴射量及び燃料噴射時期は燃料噴射弁(図示せず)を介して、点火時期は点火プラグ(図示せず)を介して、それぞれ制御される。
フロントモータ4は、ブラシレスDCモータであり、三相コイルなどで構成されたステータと、磁石などで構成されたロータ(いずれも図示せず)を有している。ステータは、パワードライブユニット(以下「PDU」という)6を介して、充放電可能なバッテリ7に電気的に接続されている。このPDU6は、インバータなどの電気回路で構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図3参照)。
フロントモータ4では、ECU2によるPDU6の制御によって、バッテリ7からPDU6を介してステータに電力が供給されると、それに伴い、この電力が動力に変換され、ロータが回転する(力行)。この場合、ステータに供給される電力が制御されることによって、ロータの動力が制御される。また、ステータへの電力供給を停止した状態で、動力の入力によりロータが回転しているときに、ECU2によるPDU6の制御によって、ロータに入力された動力が電力に変換され、発電が行われるとともに、発電した電力が、バッテリ7に充電されたり、後輪駆動装置DRSの後述する第1及び第2リヤモータ41、61に供給されたりする。
また、ハイブリッド車両Vには、エアコンのコンプレッサなどから成る補機8と、12Vバッテリ(図示せず)が搭載されており、補機8はPDU6を介して、12VバッテリはDC/DCコンバータ(図示せず)を介して、フロントモータ4のステータ及びバッテリ7に電気的に接続されている。補機8には、フロントモータ4で発電した電力や、バッテリ7の電力が供給され、補機8に供給される電力は、ECU2により、PDU6を介して制御される。
前記変速装置5は、いわゆるデュアルクラッチトランスミッションで構成されている。図示しないが、変速装置5は、第1クラッチを介してエンジン3に接続された第1入力軸と、フロントモータ4と第1入力軸の間に配置された遊星歯車装置と、第2クラッチを介してエンジン3に接続された第2入力軸と、第1及び第2入力軸と平行な出力軸と、第1及び第2入力軸に回転自在に設けられた複数の入力ギヤと、出力軸に一体に設けられ、複数の入力ギヤに噛み合う複数の出力ギヤと、複数の入力ギヤの1つを第1又は第2入力軸に選択的に連結し、その入力ギヤとそれに噛み合う出力ギヤによるギヤ段を設定するシンクロ装置などを有している。
以上の構成により、第1及び第2クラッチならびにシンクロ装置などをECU2で制御することにより、第1及び第2クラッチの接続/遮断状態に応じて、エンジン3の動力(以下「エンジン動力」という)及び/又はフロントモータ4の動力が第1入力軸に、又はエンジン動力が第2入力軸に、選択的に入力される。入力された動力は、シンクロ装置によって設定されたギヤ段による所定の変速比で変速された状態で、出力軸に出力され、さらに、ファイナルギヤ9及び左右の前駆動軸SFL、SFRを介して、左右の前輪WFL、WFRに伝達される。
図2に示すように、前記後輪駆動装置DRSは、第1リヤモータ41、第1遊星歯車装置51、第2リヤモータ61及び第2遊星歯車装置71を有している。これらの第1リヤモータ41、第1遊星歯車装置51、第2遊星歯車装置71、及び第2リヤモータ61は、左右の後輪WRL、WRRの間に、左側からこの順で並んでおり、左右の後駆動軸SRL、SRRと同軸状に設けられている。左右の後駆動軸SRL、SRRは、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されるとともに、それらの一端部がそれぞれ、左右の後輪WRL、WRRに連結されている。
上記の第1リヤモータ41は、フロントモータ4と同様、いわゆるモータジェネレータとして構成されたブラシレスDCモータであり、ステータ42と、回転自在のロータ43を有している。ステータ42は、ハイブリッド車両Vに固定されたケーシングCAに取り付けられるとともに、前述したPDU6を介して、フロントモータ4のステータ及びバッテリ7に電気的に接続されている。ロータ43は、中空の回転軸44に一体に取り付けられている。回転軸44は、左後駆動軸SRLの外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。
第1リヤモータ41では、ECU2によるPDU6の制御によって、バッテリ7からの電力や、フロントモータ4で発電した電力が、PDU6を介してステータ42に供給されると、それに伴い、この電力が動力に変換され、ロータ43が回転する(力行)。この場合、ステータ42に供給される電力が制御されることによって、ロータ43の動力が制御される。また、ステータ42への電力供給を停止した状態で、動力の入力によりロータ43が回転しているときに、ECU2によるPDU6の制御によって、ロータ43に入力された動力が電力に変換され、発電が行われるとともに、発電した電力がバッテリ7に充電される。
第1遊星歯車装置51は、第1リヤモータ41の動力を減速して左後輪WRLに伝達するためのものであり、第1サンギヤ52、第1リングギヤ53、2連ピニオンギヤ54及び第1キャリヤ55を有している。第1サンギヤ52は、前述した回転軸44に一体に取り付けられており、第1リヤモータ41のロータ43と一体に回転自在である。第1リングギヤ53は、第1サンギヤ52よりも大きな歯数を有しており、中空の回転軸81に一体に取り付けられている。回転軸81は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。2連ピニオンギヤ54は、第1ピニオンギヤ54a及び第2ピニオンギヤ54bを一体に有しており、その数が3つ(2つのみ図示)である。また、2連ピニオンギヤ54は、第1キャリヤ55に回転自在に支持されており、その第1ピニオンギヤ54aが第1サンギヤ52に、第2ピニオンギヤ54bが第1リングギヤ53に、それぞれ噛み合っている。第1キャリヤ55は、左後駆動軸SRLの他端部に一体に取り付けられており、左後駆動軸SRLと一体に回転自在である。
前記第2リヤモータ61及び第2遊星歯車装置71は、第1リヤモータ41及び第1遊星歯車装置51とそれぞれ同様に構成されているため、以下、その構成について簡単に説明する。第2リヤモータ61及び第2遊星歯車装置71は、後述するワンウェイクラッチ83を中心として、第1リヤモータ41及び第1遊星歯車装置51と対称に設けられている。第2リヤモータ61のステータ62は、前記ケーシングCAに取り付けられるとともに、PDU6を介して、フロントモータ4のステータ、バッテリ7及び第1リヤモータ41のステータ42に電気的に接続されている。また、第2リヤモータ61のロータ63は、中空の回転軸64に一体に取り付けられている。回転軸64は、右後駆動軸SRRの外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。
第2リヤモータ61では、ECU2によるPDU6の制御によって、バッテリ7の電力や、フロントモータ4で発電した電力が、PDU6を介してステータ62に供給されると、それに伴い、この電力が動力に変換され、ロータ63が回転する(力行)。この場合、ステータ62に供給される電力が制御されることによって、ロータ63の動力が制御される。また、ステータ62への電力供給を停止した状態で、動力の入力によりロータ63が回転しているときに、ECU2によるPDU6の制御によって、ロータ63に入力された動力が電力に変換され、発電が行われるとともに、発電した電力がバッテリ7に充電される。
第2遊星歯車装置71は、第2リヤモータ61の動力を減速して右後輪WRRに伝達するためのものであり、第2サンギヤ72、第2リングギヤ73、2連ピニオンギヤ74及び第2キャリヤ75を有している。第2サンギヤ72、第2リングギヤ73及び2連ピニオンギヤ74の歯数は、第1サンギヤ52、第1リングギヤ53及び2連ピニオンギヤ54の歯数とそれぞれ同じに設定されている。
第2サンギヤ72は、前述した回転軸64に一体に取り付けられており、第2リヤモータ61のロータ63と一体に回転自在である。第2リングギヤ73は、第2サンギヤ72よりも大きな歯数を有しており、中空の回転軸82に一体に取り付けられている。回転軸82は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、前述した回転軸81と若干の隙間を存した状態で軸線方向に対抗している。2連ピニオンギヤ74は、第2キャリヤ75に回転自在に支持されており、その第1ピニオンギヤ74aが第2サンギヤ72に、第2ピニオンギヤ74bが第2リングギヤ73に、それぞれ噛み合っている。第2キャリヤ75は、右後駆動軸SRRの他端部に一体に取り付けられており、右後駆動軸SRRと一体に回転自在である。
後輪駆動装置DRSはさらに、ワンウェイクラッチ83及び油圧ブレーキ84を有している。ワンウェイクラッチ83は、インナーレース83a及びアウターレース83bを有しており、第1及び第2遊星歯車装置51、71の間に配置されている。なお、図2では、図示の便宜上、インナーレース83aが外側に、アウターレース83bが内側に、それぞれ描かれている。インナーレース83aは、前述した回転軸81、82に係合していて、それにより、インナーレース83a、回転軸81、82、第1及び第2リングギヤ53、73は、一体に回転自在である。また、アウターレース83bは、ケーシングCAに取り付けられている。ワンウェイクラッチ83は、回転軸81、82に逆転させる動力が伝達されたときには、回転軸81、82をケーシングCAに接続することによって、回転軸81、82、第1及び第2リングギヤ53、73の逆転を阻止する一方、回転軸81、82に正転させる動力が伝達されたときには、回転軸81、82とケーシングCAの間を遮断することによって、回転軸81、82、第1及び第2リングギヤ53、73の正転を許容する。
油圧ブレーキ84は、多板式のクラッチで構成されており、ケーシングCA及び回転軸81、82に取り付けられるとともに、第1及び第2遊星歯車装置51、71の外周に配置されている。油圧ブレーキ84は、ECU2で制御されることにより、第1及び第2リングギヤ53、73を制動する制動動作と、第1及び第2リングギヤ53、73の回転を許容する回転許容動作とを、選択的に実行する。油圧ブレーキ84の制動力は、ECU2によって制御される。
さらに、図3に示すように、ECU2には、クランク角センサ21から、CRK信号が入力される。このCRK信号は、エンジン3のクランク軸(図示せず)の回転に伴い、所定のクランク角ごとに出力されるパルス信号である。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、ECU2には、モータ回転数センサ22から、フロントモータ4の回転数(以下「フロントモータ回転数」という)NFMを表す検出信号が、電流電圧センサ23から、バッテリ7に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が、入力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ7の充電状態SOCを算出する。
さらに、ECU2には、アクセル開度センサ24からハイブリッド車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度APを表す検出信号が、車輪速センサ25から、前輪WFL、WFRの回転数(以下「前輪回転数」という)NWF及び後輪WRL、WRRの回転数(以下「後輪回転数」という)NWRを表す検出信号が、入力される。ECU2は、検出された前輪回転数NWF及び後輪回転数NWRに基づいて、ハイブリッド車両Vの車速VPを算出する。また、ECU2には、勾配センサ26から、ハイブリッド車両Vが走行している路面の傾斜角を表す検出信号が入力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAM及びROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、上述した各種のセンサ21〜26からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、前輪駆動装置DFS及び後輪駆動装置DRSの動作を含むハイブリッド車両Vの動作を制御する。
前輪駆動装置DFSの動作モードには、エンジン3のみをハイブリッド車両Vの動力源として用いるENG走行モードと、フロントモータ4のみを動力源として用いるEV走行モードと、エンジン3をフロントモータ4でアシストするアシスト走行モードと、エンジン動力の一部を用いてフロントモータ4でバッテリ7を充電する充電走行モードと、ハイブリッド車両Vの減速走行中の走行エネルギを用いてフロントモータ4でバッテリ7を充電する減速回生モードなどが含まれる。各動作モードにおける前輪駆動装置DFSの動作は、ECU2によって制御される。
また、後輪駆動装置DRSの動作モードには、駆動モード、回生モード及び左右輪トルク差モードなどが含まれる。各動作モードにおける後輪駆動装置DRSの動作は、ECU2によって制御される。以下、これらの動作モードについて順に説明する。
[駆動モード]
この駆動モードは、左右の後輪WRL、WRRを第1及び第2リヤモータ41、61の動力で駆動する動作モードである。駆動モードでは、第1及び第2リヤモータ41、61で力行を行うとともに、両者41、61に供給される電力を制御する。また、左右の後輪WRL、WRRを正転させる場合には、第1及び第2リヤモータ41、61のロータ43、63を正転させるとともに、油圧ブレーキ84で第1及び第2リングギヤ53、73を制動する。図4は、駆動モード中、左右の後輪WRL、WRRを正転させた場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係の一例を示している。
前述した各種の回転要素の間の連結関係から明らかなように、第1サンギヤ52の回転数は、第1リヤモータ41(ロータ43)の回転数と等しく、第1キャリヤ55の回転数は、左後輪WRLの回転数と、第1リングギヤ53の回転数は、第2リングギヤ73の回転数と、それぞれ等しい。また、第2サンギヤ72の回転数は、第2リヤモータ61(ロータ63)の回転数と等しく、第2キャリヤ75の回転数は、右後輪WRRの回転数と等しい。また、周知のように、第1サンギヤ52の回転数、第1キャリヤ55の回転数及び第1リングギヤ53の回転数は、共線図において、互いに同じ一つの直線上に位置する共線関係にあり、第1サンギヤ52及び第1リングギヤ53は、第1キャリヤ55の両外側に位置する。このことは、第2サンギヤ72、第2キャリヤ75及び第2リングギヤ73についても同様に当てはまる。
以上から、各種の回転要素の間の回転数の関係は、図4に示す共線図のように表される。なお、同図及び後述する他の共線図では、値0を示す横線から縦線上の白丸までの距離が、各回転要素の回転数に相当する。また、図4において、TM1は、力行に伴って発生する第1リヤモータ41の出力トルク(以下「第1リヤモータ力行トルク」という)であり、TM2は、力行に伴って発生する第2リヤモータ61の出力トルク(以下「第2リヤモータ力行トルク」という)である。また、RRLは、左後輪の反力トルクであり、RRRは、右後輪WRRの反力トルク、ROWは、ワンウェイクラッチ83の反力トルクである。
前述したように、ワンウェイクラッチ83は、第1及び第2リングギヤ53、73の逆転を阻止するように構成されている。また、図4から明らかなように、第1リヤモータ力行トルクTM1は、第1サンギヤ52を正転させるように作用するとともに、第1リングギヤ53を逆転させるように作用する。以上により、第1リヤモータ力行トルクTM1は、第1リングギヤ53に作用するワンウェイクラッチ83の反力トルクROWを反力とし、第1キャリヤ55及び左後駆動軸SRLを介して、左後輪WRLに伝達され、その結果、左後輪WRLが駆動される。同様に、第2リヤモータ力行トルクTM2は、第2リングギヤ73に作用するワンウェイクラッチ83の反力トルクROWを反力とし、第2キャリヤ75及び右後駆動軸SRRを介して、右後輪WRRに伝達される。その結果、右後輪WRRが駆動される。
[回生モード]
この回生モードは、ハイブリッド車両Vの減速走行中などに、ハイブリッド車両Vの走行エネルギを用いて第1及び第2リヤモータ41、61で発電(回生)を行うとともに、回生した電力をバッテリ7に充電する動作モードである。回生モードでは、第1及び第2リヤモータ41、61で回生する電力を制御するとともに、油圧ブレーキ84で第1及び第2リングギヤ53、73を制動する。図5は、回生モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。同図において、BM1は、回生に伴って発生する第1リヤモータ41の出力(制動)トルク(以下「第1リヤモータ回生トルク」という)であり、BM2は、回生に伴って発生する第2リヤモータ61の出力(制動)トルク(以下「第2リヤモータ回生トルク」という)である。また、TRLは、左駆動輪WRLの慣性トルクであり、TRRは、右駆動輪WRRの慣性トルク、RBRは、油圧ブレーキ84の反力トルクである。
図5から明らかなように、第1及び第2サンギヤ52、72にそれぞれ伝達された第1及び第2リヤモータ回生トルクBM1、BM2は、油圧ブレーキ84の反力トルクRBRを反力として、第1及び第2キャリヤ55、75にそれぞれ伝達され、さらに、左右の後駆動軸SRL、SRRを介して、左右の後輪WRL、WRRに伝達される。その結果、左右の後輪WRL、WRRが制動される。
[左右輪トルク差モード]
この左右輪トルク差モードは、ハイブリッド車両Vの旋回時に、左右の後輪WRL、WRRにトルク差を生じさせる動作モードである。左右輪トルク差モードでは、第1及び第2リヤモータ41、61の一方で力行を、他方で回生を行い、一方に供給される電力及び他方で回生する電力を制御するとともに、油圧ブレーキ84で第1及び第2リングギヤ53、73を制動する。図6は、第1リヤモータ41で力行を行うとともに、第2リヤモータ61で回生を行った場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係を示している。同図における各種のパラメータは、図4及び図5を参照して説明したとおりである。
図6と、これまでの説明から明らかなように、第1リヤモータ力行トルクTM1が、第1遊星歯車装置51を介して左後輪WRLに伝達されることにより、左後輪WRLが駆動されるとともに、第2リヤモータ回生トルクBM2が、第2遊星歯車装置71を介して右後輪WRRに伝達されることにより、右後輪WRRが制動される。その結果、左右の後輪WRL、WRRの間で逆方向のトルクが発生し、ハイブリッド車両Vに反時計回りのヨーモーメントが発生する。
上記とは逆に、第1リヤモータ41で回生を、第2リヤモータ61で力行を、それぞれ行った場合には、ハイブリッド車両Vに時計回りのヨーモーメントが発生する。
また、前輪駆動装置DFS及び後輪駆動装置DRS全体の動作モードとして、全輪駆動モードが設定されている。この全輪駆動モードは、ハイブリッド車両Vのすべての車輪WFL、WFR、WRL、WRRを駆動する動作モードである。全輪駆動モードにおける前輪駆動装置DFS及び後輪駆動装置DRSの動作は、ECU2によって制御される。
全輪駆動モードによる動作は、ハイブリッド車両Vのスリップ時や、加速時、登坂走行中に実行される。スリップ時か否かの判定は、検出された前輪回転数NWFと後輪回転数NWRとの差異などに基づいて行われる。また、加速時か否かの判定は、検出されたアクセル開度APに基づいて行われる。さらに、登坂走行中か否かの判定は、検出された路面の傾斜角に基づいて行われる。
また、全輪駆動モード中、基本的には、エンジン動力の一部を用いてフロントモータ4で発電を行うとともに、フロントモータ4で発電した電力を第1及び第2リヤモータ41、61に供給することによって、エンジン動力の一部が、フロントモータ4、PDU6、第1及び第2リヤモータ41、61を介して、後輪WRL、WRRに伝達されるとともに、エンジン動力の残りが、前輪WFL、WFRに伝達される。また、全輪駆動モード中、フロントモータ4で発電した電力は、第1及び第2リヤモータ41、61に加え、補機8にも供給され、バッテリ7は、フロントモータ4と補機8、第1及び第2リヤモータ41、61との間の電力の授受を調整するためのバッファとして機能する。例えば、フロントモータ4で発電した電力が、補機8、第1及び第2リヤモータ41、61に供給すべき電力に対して不足するときには、その不足分が、バッテリ7の電力によって補われる。
以下、図7〜図10を参照しながら、ECU2によって実行される、全輪駆動モード中に前輪駆動装置DFS及び後輪駆動装置DRSを制御するための処理について説明する。これらの処理では、前輪WFL、WFR及び後輪WRL、WRRの全体に伝達される駆動力が後述する全輪要求駆動力PAWREQになるように、エンジン3、フロントモータ4、第1及び第2リヤモータ41、61が協調制御される。以下の説明では、第1及び第2リヤモータ41、61を総称して、適宜「リヤモータ41、61」という。
図7及び図8は、全輪駆動モード中に、エンジン3を制御するための処理を示している。本処理は、所定の制御周期(例えば10msec)で繰り返し実行される。まず、図7のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、第1完了フラグF_DONE1が「1」であるか否かを判別する。この第1完了フラグF_DONE1の詳細については後述する。このステップ1の答えがNO(F_DONE1=0)のときには、全輪要求駆動力PAWREQを算出する(ステップ2)。この全輪要求駆動力PAWREQは、エンジン3及びリヤモータ41、61に、前輪WFL、WFR及び後輪WRL、WRRの全体を駆動するために要求される駆動力であり、算出された車速VPとアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。
次に、補機必要駆動力PACを算出する(ステップ3)。この補機必要駆動力PACは、フロントモータ4から補機8への電力供給のために必要とされる駆動力であり、センサ(図示せず)で検出された補機8のON/OFF状態に基づいて、算出される。次いで、電気パス損失動力PEPを算出する(ステップ4)。前述したように、全輪駆動モード中には、エンジン動力の一部が後輪WRL、WRRに伝達され、当該動力の伝達は、一旦、電力に変換してから、動力に戻して伝達する、いわゆる電気パスによって行われる。この電気パスでは、フロントモータ4で動力が電力に変換される際の損失(発電効率)と、変換した電力がPDU6を介してリヤモータ41、61に供給される際の損失(電力伝達効率)と、リヤモータ41、61に供給された電力が動力に変換される際の損失(力行効率)とが、発生する。上記の電気パス損失動力PEPは、これらの損失を動力に換算した値であり、後述するリヤモータ目標電力ERMOBJに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。
上記ステップ4に続くステップ5では、アシスト制御フラグF_ASSIが「1」であるか否かを判別する。このアシスト制御フラグF_ASSIは、リヤモータアシスト制御の実行中に「1」に設定されるものである。このリヤモータアシスト制御は、エンジン3をリヤモータ41、61でアシストするための制御であり、ハイブリッド車両Vの加速時や、登坂走行時などで、それにより全輪要求駆動力PAWREQが比較的大きいときに、実行される。リヤモータアシスト制御では、フロントモータ4で発電した電力に加え、バッテリ7の電力がリヤモータ41、61に供給される。
上記ステップ5の答えがYES(F_ASSI=1)で、リヤモータアシスト制御の実行中であるときには、リヤモータアシスト駆動力PASを算出する(ステップ6)。このリヤモータアシスト駆動力PASは、リヤモータアシスト制御の実行中にバッテリ7からリヤモータ41、61に供給される電力を動力に換算したものであり、前記ステップ2で算出された全輪要求駆動力PAWREQに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。このマップでは、リヤモータアシスト駆動力PASは、全輪要求駆動力PAWREQが大きいほど、より大きな値に設定されている。
上記ステップ6に続くステップ7では、前記ステップ2〜4でそれぞれ算出された全輪要求駆動力PAWREQ、補機必要駆動力PAC及び電気パス損失動力PEPと、ステップ6で算出されたリヤモータアシスト駆動力PASを用い、次式(1)によって、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTを算出し、後述するステップ12に進む。このエンジン要求駆動力の暫定値PENREQTは、エンジン3に要求される駆動力の暫定値である。
PENREQT←PAWREQ+PAC+PEP−PAS ……(1)
一方、前記ステップ5の答えがNO(F_ASSI=0)で、リヤモータアシスト制御の実行中でないときには、バッテリ充電制御フラグF_CHARが「1」であるか否かを判別する(ステップ8)。このバッテリ充電制御フラグF_CHARは、バッテリ充電制御の実行中に「1」に設定されるものである。このバッテリ充電制御は、エンジン動力の一部を用いてフロントモータ4で発電した電力の一部をバッテリ7に充電するための制御であり、算出されたバッテリ7の充電状態SOCが比較的小さく、かつ、全輪要求駆動力PAWREQが比較的小さいときに、実行される。
上記ステップ8の答えがYES(F_CHAR=1)で、バッテリ充電制御の実行中であるときには、充電必要駆動力PCHを算出する(ステップ9)。この充電必要駆動力PCHは、バッテリ充電制御の実行中にバッテリ7に充電される電力を動力に換算した値であり、前記ステップ2で算出された全輪要求駆動力PAWREQに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。このマップでは、充電必要駆動力PCHは、全輪要求駆動力PAWREQが小さいほど、より大きな値に設定されている。
上記ステップ9に続くステップ10では、前記ステップ2〜4でそれぞれ算出された全輪要求駆動力PAWREQ、補機必要駆動力PAC及び電気パス損失動力PEPと、ステップ9で算出された充電必要駆動力PCHを用い、次式(2)によって、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTを算出し、ステップ12に進む。
PENREQT←PAWREQ+PAC+PEP+PCH ……(2)
一方、ステップ8の答えがNO(F_CHAR=0)のとき、すなわち、リヤモータアシスト制御の実行中でもなく、また、バッテリ充電制御の実行中でもないときには、前記ステップ2〜4でそれぞれ算出された全輪要求駆動力PAWREQ、補機必要駆動力PAC及び電気パス損失動力PEPを用い、次式(3)によって、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTを算出し(ステップ11)、ステップ12に進む。
PENREQT←PAWREQ+PAC+PEP ……(3)
このステップ12では、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTの算出が完了したとして、そのことを表すために、第1完了フラグF_DONE1を「1」に設定し、図8のステップ13に進む。このステップ12の実行により前記ステップ1の答えがYES(F_DONE1=1)になり、その場合には、前記ステップ2〜12をスキップし、ステップ13に進む。このステップ13では、第2完了フラグF_DONE2が「1」であるか否かを判別する。この第2完了フラグF_DONE2は、後述する図9に示す処理によるフロントモータ目標発電電力EFMOBJの算出が完了していることを「1」で表すものである。その詳細については後述する。このステップ13の答えがNO(F_DONE2=0)のとき、すなわち、フロントモータ目標発電電力EFMOBJの算出が完了していないときには、そのまま本処理を終了する。
一方、ステップ13の答えがYES(F_DONE2=1)で、フロントモータ目標発電電力EFMOBJの算出が完了しているときには、フロントモータ発電制限中フラグF_FMLMTが「1」であるか否かを判別する(ステップ14)。このフロントモータ発電制限中フラグF_FMLMTは、図9に示す処理において、フロントモータ4の発電電力(以下「フロントモータ発電電力」という)がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されているときに「1」に設定されるものである。その詳細については後述する。
上記ステップ14の答えがNO(F_FMLMT=0)のとき、すなわち、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されていないときには、ステップ7、10又は11で算出されたエンジン要求駆動力の暫定値PENREQTをそのまま、エンジン要求駆動力PENREQとして設定する(ステップ15)。次いで、第1及び第2完了フラグF_DONE1、F_DONE2を「0」にリセットし(ステップ16)、本処理を終了する。
一方、ステップ14の答えがYES(F_FMLMT=1)で、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されているときには、後述するフロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTからフロントモータ発電上限電力FGLMTを減算することによって、上限電力偏差ΔEFMを算出する(ステップ17)。次いで、算出された上限電力偏差ΔEFMに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、電力偏差分補正項COΔEFMを算出する(ステップ18)。この電力偏差分補正項COΔEFMは、上限電力偏差ΔEFMを動力に換算した値である。
次に、前記ステップ7、10又は11で算出されたエンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから、ステップ18で算出された電力偏差分補正項COΔEFMを減算することによって、エンジン要求駆動力PENREQを算出する(ステップ19)とともに、前記ステップ16を実行し、本処理を終了する。
以上のように、本処理によれば、前輪WFL、WFR及び後輪WRL、WRRの全体を駆動するために要求される駆動力である全輪要求駆動力PAWREQに応じて、エンジン3に要求されるエンジン要求駆動力の暫定値PENREQTが算出される(ステップ7、10、11)。また、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されていないとき(ステップ14:NO)には、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTがそのまま、エンジン要求駆動力PENREQとして設定される(ステップ15)。
一方、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されているとき(ステップ14:YES)には、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから電力偏差分補正項COΔEFMを減算することによって、エンジン要求駆動力PENREQが算出される(ステップ19)。これにより、エンジン要求駆動力PENREQは、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから、フロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTとフロントモータ発電上限電力FGLMTとの偏差(上限電力偏差ΔEFM)に相当する分の動力を減算した値に、算出される。
また、ステップ15又は19の実行によりエンジン要求駆動力PENREQの算出が完了すると、算出されたエンジン要求駆動力PENREQに基づいてエンジン3の吸入空気量などが制御されることにより、エンジン動力が、エンジン要求駆動力PENREQになるように制御される。以上のように、エンジン動力は、全輪要求駆動力PAWREQに応じて制御され、フロントモータ発電電力の制限中には、制限されたフロントモータ発電電力にさらに応じて、制御される。
さらに、エンジン要求駆動力PENREQの算出の完了に伴い、第1及び第2完了フラグF_DONE1、F_DONE2がいずれも「0」にリセットされ(ステップ16)、それにより、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTなどの各種のパラメータの算出が再度、行われる。第1及び第2完了フラグF_DONE1、F_DONE2は、エンジン3の始動時に「0」にリセットされる。
次に、図9を参照しながら、全輪駆動モード中にフロントモータ4を制御するための処理について説明する。本処理は、図7及び図8に示す処理と同様、前記制御周期で繰り返し実行される。まず、図9のステップ21では、前述した第2完了フラグF_DONE2が「1」であるか否かを判別する。このステップ21の答えがNOのときには、図7のステップ12又は16で設定された第1完了フラグF_DONE1が「1」であるか否かを判別する(ステップ22)。この答えがNO(F_DONE1=0)のときには、そのまま本処理を終了する。
一方、上記ステップ22の答えがYES(F_DONE1=1)のとき、すなわち、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTの算出が完了しているときには、図7のステップ2で算出された全輪要求駆動力PAWREQに基づいて、前輪要求駆動力PFWREQを算出する(ステップ23)。この前輪要求駆動力PFWREQは、前輪WFL、WFRを駆動するためにエンジン3に要求される駆動力であり、全輪要求駆動力PAWREQに、値1.0よりも小さい所定の前輪配分比率を乗算することによって、算出される。
次いで、ステップ23で算出された前輪要求駆動力PFWREQを、図7のステップ7、10又は11で算出されたエンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから減算することによって、フロントモータ要求駆動力PFMREQを算出する(ステップ24)。このフロントモータ要求駆動力PFMREQは、エンジン動力の一部を用いてフロントモータ4で発電するために、エンジン3からフロントモータ4に伝達することが必要な駆動力である。前述したように、全輪駆動モード中には、エンジン動力の一部を用いて、フロントモータ4で発電が行われ、発電した電力が、補機8やリヤモータ41、61に供給されるとともに、エンジン動力の残りが前輪WFL、WFRに伝達される。このため、フロントモータ要求駆動力PFMREQは、上述したようにエンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから前輪要求駆動力PFWREQを減算することによって、算出される。
上記ステップ24に続くステップ25では、算出されたフロントモータ要求駆動力PFMREQに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、フロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTを算出する。このフロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTは、フロントモータ発電電力の目標値の暫定値であり、ステップ25の実行により、エンジン3からフロントモータ4に伝達される駆動力がフロントモータ要求駆動力PFMREQになるように、算出される。
次いで、検出されたフロントモータ回転数NFMに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、フロントモータ発電上限電力FGLMTを算出する(ステップ26)。このフロントモータ発電上限電力FGLMTは、フロントモータ4で発電することが可能な電力の上限値であり、上記のマップでは、フロントモータ回転数NMFが高いほど、より大きな値に設定されている。次に、上記ステップ25で算出されたフロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTが、ステップ26で算出されたフロントモータ発電上限電力FGLMTよりも大きいか否かを判別する(ステップ27)。
このステップ27の答えがNOで、EFMOBJT≦FGLMTのときには、ステップ25で算出されたフロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTをそのまま、フロントモータ目標発電電力EFMOBJとして設定する(ステップ28)。次いで、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されていないことを表すために、フロントモータ発電制限中フラグF_FMLMTを「0」に設定する(ステップ29)。次に、フロントモータ目標発電電力EFMOBJの算出(設定)が完了したとして、そのことを表すために、第2完了フラグF_DONE2を「1」に設定し(ステップ30)、本処理を終了する。
一方、ステップ27の答えがYESで、EFMOBJT>FGLMTのときには、フロントモータ目標発電電力EFMOBJをフロントモータ発電上限電力FGLMTに設定する(ステップ31)。次いで、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されていることを表すために、フロントモータ発電制限中フラグF_FMLMTを「1」に設定する(ステップ32)とともに、上記ステップ30を実行し、本処理を終了する。
また、ステップ30の実行により、前記ステップ21の答えがYES(F_DONE2=1)になり、その場合には、前記ステップ22〜32をスキップし、そのまま本処理を終了する。
以上のように、本処理によれば、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから前輪要求駆動力PFWREQを減算することによって、フロントモータ要求駆動力PFMREQが算出される(ステップ24)とともに、算出されたフロントモータ要求駆動力PFMREQに基づいて、フロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTが算出される(ステップ25)。
また、フロントモータ目標発電電力EFMOBJが、フロントモータ4で発電することが可能な電力の上限値であるフロントモータ発電上限電力FGLMT以下に制限される(ステップ27、31)。さらに、フロントモータ目標発電電力EFMOBJが算出されると、それに伴って、フロントモータ発電電力がフロントモータ目標発電電力EFMOBJになるように、PDU6が制御される。以上により、全輪駆動モード中、フロントモータ発電電力は、フロントモータ発電上限電力FGLMT以下に制限される。
次に、図10を参照しながら、全輪駆動モード中にリヤモータ41、61を制御するための処理について説明する。本処理は、図7及び図8に示す処理と同様、前記制御周期で繰り返し実行される。まず、図10のステップ41では、第1完了フラグF_DONE1が「1」であるか否かを判別する。この答えがNO(F_DONE1=0)のときには、そのまま本処理を終了する。
一方、上記ステップ41の答えがYES(F_DONE1=1)のとき、すなわち、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTの算出が完了しているときには、図7のステップ2で算出された全輪要求駆動力PAWREQに基づいて、後輪要求駆動力PRWREQを算出する(ステップ42)。この後輪要求駆動力PRWREQは、後輪WRL、WRRを駆動するためにリヤモータ41、61に要求される駆動力であり、全輪要求駆動力PAWREQに所定の後輪配分比率を乗算することによって、算出される。この後輪配分比率は、値1.0から前記前輪配分比率を減算した値に設定されている。以上により、後輪要求駆動力PRWREQと、図9のステップ23で算出される前輪要求駆動力PFWREQとの和は、全輪要求駆動力PAWREQと等しくなる。
上記ステップ42に続くステップ43では、算出された後輪要求駆動力PRWREQに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、リヤモータ目標電力ERMOBJを算出する。リヤモータ目標電力ERMOBJは、リヤモータ41、61に供給される電力(以下「リヤモータ供給電力」という)の目標値であり、ステップ43の実行により、リヤモータ41、61から後輪WRL、WRRに伝達される駆動力が後輪要求駆動力PRWREQになるように、算出される。
次に、算出されたリヤモータ目標電力ERMOBJがリヤモータ供給上限電力RELMTよりも大きいか否かを判別する(ステップ44)。このリヤモータ供給上限電力RELMTは、フロントモータ4やバッテリ7からリヤモータ41、61に供給することが可能な電力の上限値であり、後述するRELMT算出処理(図12)によって算出される。
上記ステップ44の答えがYESで、ERMOBJ>RELMTのときには、リヤモータ目標電力ERMOBJをリヤモータ供給上限電力RELMTに設定し(ステップ45)、本処理を終了する。一方、ステップ44の答えがNOのときには、ステップ45をスキップし、そのまま本処理を終了する。
以上のように、本処理によれば、リヤモータ目標電力ERMOBJが、後輪要求駆動力PRWREQに基づいて算出される(ステップ43)とともに、リヤモータ供給上限電力RELMT以下に制限される(ステップ44、45)。また、リヤモータ目標電力ERMOBJが算出されると、それに伴って、リヤモータ供給電力(リヤモータ41、61に供給される電力)がリヤモータ目標電力ERMOBJになるように、PDU6が制御される。以上により、全輪駆動モード中、リヤモータ供給電力は、リヤモータ供給上限電力RELMT以下に制限される。
また、これまでに述べた全輪要求駆動力PAWREQなどの各種のパラメータの大きさの関係は、例えば、図11のように表される。同図は、全輪駆動モード中、前述したリヤモータアシスト制御の実行中でもなく、また、バッテリ充電制御の実行中でもなく、フロントモータ発電電力の制限中で、かつリヤモータ供給電力の制限中でない場合における各種のパラメータの大小関係を、概略的に示している。
図11に示すように、全輪要求駆動力PAWREQは、前輪要求駆動力PFWREQと後輪要求駆動力PRWREQとの和と等しく、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTは、全輪要求駆動力PAWREQ、補機必要駆動力PAC及び電気パス損失動力PEPの総和と等しい(ステップ11)。また、フロントモータ要求駆動力PFMREQは、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから前輪要求駆動力PFWREQを減算した値と等しい(ステップ24)。さらに、上限電力偏差ΔEFMは、フロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTからフロントモータ発電上限電力FGLMTを減算した値と等しく(ステップ17)、フロントモータ目標発電電力EFMOBJは、フロントモータ発電上限電力FGLMTと等しい(ステップ31)。また、エンジン要求駆動力PENREQは、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから電力偏差分補正項COΔEFMを減算した値と等しい(ステップ19)。
なお、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQT及びフロントモータ要求駆動力PFMREQを、前述した順序で算出せずに、例えば、次の順序で算出してもよい。すなわち、まず、全輪要求駆動力PAWREQに後輪配分比率を乗算することによって、後輪要求駆動力PRWREQを算出する。次いで、補機必要駆動力PAC及び電気パス損失動力PEPを算出するとともに、リヤモータアシスト制御の実行中にはリヤモータアシスト駆動力PASを、バッテリ充電制御の実行中には充電必要駆動力PCHを、それぞれ算出する。次に、リヤモータアシスト制御の実行中には、算出された後輪要求駆動力PRWREQ、補機必要駆動力PAC及び電気パス損失動力PEPの和から、リヤモータアシスト駆動力PASを減算することによって、フロントモータ要求駆動力PFMREQを算出する(PFMREQ=PRWREQ+PAC+PEP−PAS)。
また、バッテリ充電制御の実行中には、算出された後輪要求駆動力PRWREQ、補機必要駆動力PAC、電気パス損失動力PEP、及び充電必要駆動力PCHの和を、フロントモータ要求駆動力PFMREQとして算出する(PFMREQ=PRWREQ+PAC+PEP+PCH)。さらに、リヤモータアシスト制御の実行中及びバッテリ充電制御の実行中のいずれでもないときには、算出された後輪要求駆動力PRWREQ、補機必要駆動力PAC及び電気パス損失動力PEPの和を、フロントモータ要求駆動力PFMREQとして算出する(PFMREQ=PRWREQ+PAC+PEP)。
次いで、全輪要求駆動力PAWREQに前輪配分比率を乗算することによって、前輪要求駆動力PFWREQを算出する。次に、算出されたフロントモータ要求駆動力PFMREQと前輪要求駆動力PFWREQの和を、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTとして算出する(PENREQT=PFMREQ+PFWREQ)。エンジン要求駆動力の暫定値PENREQT及びフロントモータ要求駆動力PFMREQを以上の順序で算出しても、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQT、フロントモータ要求駆動力PFMREQ、全輪要求駆動力PAWREQ、前輪要求駆動力PFWREQ、後輪要求駆動力PRWREQ、補機必要駆動力PAC、及び電気パス損失動力PEPの大きさの関係は、図11に示す関係とまったく同じである。
次に、図12を参照しながら、前記リヤモータ供給上限電力RELMTを算出するためのRELMT算出処理について説明する。本処理は、図7及び図8に示す処理と同様、前記制御周期で繰り返し実行される。まず、図12のステップ51では、バッテリ放電上限電力EBOLMTを算出する。このバッテリ放電上限電力EBOLMTは、バッテリ7から放電することが可能な電力の上限値であり、算出されたバッテリ7の充電状態SOCに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。このマップでは、バッテリ放電上限電力EBOLMTは、充電状態SOCが大きいほど、より大きな値に設定されている。
上記ステップ51に続くステップ52〜63では、充電状態SOCに応じて、リヤモータ供給上限電力RELMTを算出する。まず、ステップ52では、充電状態SOCが第1所定値SOC1以上であるか否かを判別する。この答えがYES(SOC≧SOC1)で、充電状態SOCが比較的大きいときには、放電制限係数KDLを値1.0に設定する(ステップ53)とともに、充電用余裕負荷係数KCHを値0に設定する(ステップ54)。この放電制限係数KDLは、充電状態SOCに応じてバッテリ7の放電を制限すべく、バッテリ7からリヤモータ41、61への電力供給を制限するために、リヤモータ供給上限電力RELMTの算出に用いられるものである。また、充電用余裕負荷係数KCHは、フロントモータ4で発電した電力をバッテリ7に積極的に充電すべく、フロントモータ4からリヤモータ41、61への電力供給を制限するために、リヤモータ供給上限電力RELMTの算出に用いられるものである。
上記ステップ54に続くステップ55では、図9で算出されたフロントモータ目標発電電力EFMOBJと、前記ステップ51で算出されたバッテリ放電上限電力EBOLMTと、放電制限係数KDLと、充電用余裕負荷係数KCHを用い、次式(4)によって、リヤモータ供給上限電力RELMTを算出する。
RELMT←EFMOBJ(1−KCH)−EAC+EBOLMT×KDL
……(4)
ここで、EACは、補機8に供給される電力(以下「補機供給電力」という)であり、前述した補機必要駆動力PACに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。
次に、算出されたリヤモータ供給上限電力RELMTが値0よりも小さいか否かを判別する(ステップ56)。この答えがYESのときには、リヤモータ供給上限電力RELMTを値0に設定し(ステップ57)、本処理を終了する。一方、ステップ56の答えがNO(RELMT≧0)のときには、ステップ57をスキップし、そのまま本処理を終了する。
一方、前記ステップ52の答えがNO(SOC<SOC1)のときには、充電状態SOCが、第1所定値SOC1よりも小さい第2所定値SOC2以上であるか否かを判別する(ステップ58)。この答えがYES(SOC1>SOC≧SOC2)で、充電状態SOCがやや小さいときには、充電状態SOCに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、放電制限係数KDLを算出する(ステップ59)とともに、前記ステップ54以降を実行し、本処理を終了する。
上記のマップでは、放電制限係数KDLは、値1.0よりも小さな値に設定されるとともに、充電状態SOCが小さいほど、より小さな値に設定されている。前記式(4)に示すように、放電制限係数KDLは、リヤモータ供給上限電力RELMTの算出に、バッテリ放電上限電力EBOLMTに乗算される係数として用いられる。上述したように放電制限係数KDLが設定されているのは、充電状態SOCが小さいほど、リヤモータ供給上限電力RELMTをより小さな値に算出することによって、バッテリ7の放電の制限度合いをより大きくするためである。
一方、上記ステップ58の答えがNO(SOC<SOC2)のときには、放電制限係数KDLを値0に設定する(ステップ60)。次いで、充電状態SOCが、第2所定値SOC2よりも小さい第3所定値SOC3以上であるか否かを判別する(ステップ61)。この答えがYES(SOC2>SOC≧SOC3)で、充電状態SOCが比較的小さいときには、充電状態SOCに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、充電用余裕負荷係数KCHを算出する(ステップ62)とともに、前記ステップ55以降を実行し、本処理を終了する。
上記のマップでは、充電用余裕負荷係数KCHは、値1.0よりも小さな値に設定されるとともに、充電状態SOCが小さいほど、より大きな値に設定されている。前記式(4)に示すように、リヤモータ供給上限電力RELMTの算出の際、値1から充電用余裕負荷係数KCHを減算した値(1−KCH)が、フロントモータ目標発電電力EFMOBJに乗算される。上述したように充電用余裕負荷係数KCHが設定されているのは、充電状態SOCが小さいほど、リヤモータ供給上限電力RELMTをより小さな値に算出することによって、フロントモータ4で発電した電力のうちのバッテリ7に充電される分の電力をより大きくするためである。
一方、前記ステップ61の答えがNO(SOC<SOC3)で、充電状態SOCが非常に小さいときには、充電用余裕負荷係数KCHを値1.0に設定する(ステップ63)とともに、前記ステップ55以降を実行し、本処理を終了する。
また、図13は、図9、図10及び図12に示す処理の動作例を示している。同図において、ERMSA(実線)はリヤモータ供給電力を、PRMA(実線)は、リヤモータ41、61の動力(以下「リヤモータ動力」という)を、それぞれ示している。また、この動作例は、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されている(図9のステップ27、31)ことにより、バッテリ7からリヤモータ41、61に電力が供給されている場合において、充電状態SOCが低下したときの動作を示している。
充電状態SOCが第1所定値SOC1以上であるとき(t0〜t1、図12のステップ52:YES)には、前述したように、放電制限係数KDLが値1.0に設定される(ステップ53)とともに、充電用余裕負荷係数KCHが値0に設定される(ステップ54)。それに応じて、リヤモータ供給上限電力RELMTは、フロントモータ目標発電電力EFMOBJ(=FGLMT)から前述した補機供給電力EACを減算した値に、バッテリ放電上限電力EBOLMTを加算した値[EFMOBJ(1−0)−EAC+EBOLMT×1.0]に算出される(ステップ55、式(4)参照)。この場合、フロントモータ目標発電電力EFMOBJは、フロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されており、最も大きくなっているため、リヤモータ供給上限電力RELMT(破線)は最大になる。
また、この動作例では、リヤモータ目標電力ERMOBJになるように制御されるリヤモータ供給電力ERMSA(実線)は、リヤモータ供給上限電力RELMTに制限されておらず、リヤモータ供給上限電力RELMTよりも小さくなっている。さらに、リヤモータ動力PRMA(実線)は、後輪要求駆動力PRWREQ(破線)と等しくなっている。なお、図13では、理解の容易化のために、後輪要求駆動力PRWREQ(破線)が、リヤモータ動力PRMA(実線)よりも若干、上側に描かれている。
そして、充電状態SOCが第1所定値SOC1を下回り、SOC1>SOC≧SOC2の範囲に低下すると(時点t1直後〜時点t2、図12のステップ58:YES)、放電制限係数KDLが、値1.0よりも小さな値に、また、充電状態SOCが小さくなるほど、より小さな値に算出される(ステップ59)とともに、充電用余裕負荷係数KCHが値0に設定される(ステップ54)。それに応じて、リヤモータ供給上限電力RELMTは、フロントモータ目標発電電力EFMOBJ(=FGLMT)から前述した補機供給電力EACを減算した値に、バッテリ放電上限電力EBOLMTに放電制限係数KDLを乗算した値を加算した値[EFMOBJ(1−0)−EAC+EBOLMT×KDL]に算出される。その結果、リヤモータ供給上限電力RELMTは、充電状態SOCが低下するのに応じて、減少する。
このリヤモータ供給上限電力RELMTの減少により、リヤモータ目標電力ERMOBJがリヤモータ供給上限電力RELMTに達することによって、リヤモータ目標電力ERMOBJがリヤモータ供給上限電力RELMTに設定される(図10のステップ45)ことで、リヤモータ供給電力ERMSAが、リヤモータ供給上限電力RELMTに制限される。その結果、リヤモータ動力PRMAが、リヤモータ供給上限電力RELMTに応じて減少し、後輪要求駆動力PRWREQよりも小さくなる。なお、図13では、理解の容易化のために、リヤモータ供給上限電力RELMT(破線)が、リヤモータ供給電力ERMSA(実線)よりも若干、上側に描かれている。
そして、充電状態SOCが第2所定値SOC2を下回り、SOC2>SOC≧SOC3の範囲に低下すると(時点t2直後〜時点t3、図12のステップ61:YES)、放電制限係数KDLが、値0に設定される(ステップ60)とともに、充電用余裕負荷係数KCHが、値1.0よりも小さく、また、充電状態SOCが小さくなるほど、より大きな値に算出される(ステップ62)。それに応じて、リヤモータ供給上限電力RELMTは、フロントモータ目標発電電力EFMOBJ(=FGLMT)に(1−KCH)を乗算した値から、補機供給電力EACを減算した値[EFMOBJ(1−KCH)−EAC+EBOLMT×0]に算出される。その結果、リヤモータ供給上限電力RELMTは、充電状態SOCが低下するのに応じて、減少する。また、リヤモータ供給上限電力RELMTの減少に応じて、リヤモータ供給電力ERMSA及びリヤモータ動力PRMAが減少する。
この場合、上記のリヤモータ供給上限電力RELMTの算出手法から明らかなように、リヤモータ供給上限電力RELMTに制限されるリヤモータ供給電力ERMSAは、フロントモータ4で発電した電力(=EFMOBJ)から補機供給電力EACを減算した値よりも、EFMOBJ×KCHの分、小さくなる。これにより、フロントモータ4で発電した電力のうち、このEFMOBJ×KCH分の電力がバッテリ7に充電される。
そして、充電状態SOCが第3所定値SOC3を下回ると(時点t3直後〜時点t4直前、図12のステップ61:NO)、放電制限係数KDLが値0に設定される(ステップ60)とともに、充電用余裕負荷係数KCHが値1.0に設定される(ステップ63)。それに応じて、前記式(4)により算出されるリヤモータ供給上限電力RELMTは、負値になる結果、前記ステップ56及び57の実行により、値0に設定される。これにより、フロントモータ4からリヤモータ41、61への電力供給が停止(禁止)されることによって、リヤモータ供給電力ERMSA及びリヤモータ動力PRMAが値0になる。その結果、EFMOBJ−EAC分の電力がバッテリ7に充電されることによって、その後、充電状態SOCが増大する。
そして、フロントモータ4で発電した電力を用いたバッテリ7の充電により、充電状態SOCが第3所定値SOC3以上になると(時点t4以降)、それに応じて、前述した動作が繰り返される。なお、前記式(4)において、補機供給電力EACを減算項として用いているのは、フロントモータ4で発電した電力の一部を補機8に確実に供給するためである。
また、本実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、本実施形態におけるフロントモータ4、リヤモータ41、61及びバッテリ7が、本発明における第1電動機、第2電動機及び蓄電器にそれぞれ相当するとともに、本実施形態における後輪WRL、WRRが、本発明における車輪に相当する。また、本実施形態におけるECU2が、本発明における車輪要求駆動力算出手段、内燃機関制御手段、第1電動機制御手段、第2電動機制御手段、及び制限手段に相当するとともに、本実施形態におけるPDU6が、本発明における第1電動機制御手段、第2電動機制御手段、及び制限手段に相当する。
以上のように、本実施形態によれば、全輪駆動モード中、基本的には、エンジン動力の一部が、フロントモータ4及びリヤモータ41、61を介して、後輪WRL、WRRに伝達されるとともに、エンジン動力の残りが、前輪WFL、WFRに伝達される。この場合、前輪WFL、WFR及び後輪WRL、WRRの全体を駆動するために要求される駆動力である全輪要求駆動力PAWREQが算出される(図7のステップ2)とともに、エンジン動力が、全輪要求駆動力PAWREQに応じて制御される(ステップ7、10、11、図8のステップ15)。前述したように、この全輪要求駆動力PAWREQには、後輪WRL、WRRを駆動するために要求される駆動力である後輪要求駆動力PRWREQが含まれる。
また、フロントモータ4で発電した電力をリヤモータ41、61に供給するために、エンジン動力の一部を用いたフロントモータ4による発電が、基本的には、フロントモータ要求駆動力PFMREQに基づいて制御される(図9のステップ25、28)。このフロントモータ要求駆動力PFMREQは、エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTから、前輪WFL、WFRを駆動するために要求される駆動力である前輪要求駆動力PFWREQを減算することによって算出される(ステップ24)。エンジン要求駆動力の暫定値PENREQTは、全輪要求駆動力PAWREQに、補機必要駆動力PACなどのパラメータを加減算することによって算出される(ステップ7、10、11)。また、全輪要求駆動力PAWREQから前輪要求駆動力PFWREQを減算した値は、後輪要求駆動力PRWREQと等しい。以上から明らかなように、フロントモータ4による発電は、基本的には、後輪要求駆動力PRWREQに応じて制御される。
全輪駆動モード中、上述したエンジン動力の制御及びフロントモータ4の発電の制御により、エンジン3から前輪WFL、WFRに伝達される駆動力を、前輪要求駆動力PFWREQに応じて適切に制御することができる。
また、全輪駆動モード中、リヤモータ供給電力が、基本的には、後輪要求駆動力PRWREQに基づいて制御される(図10のステップ43)。このリヤモータ供給電力の制御と、上述したエンジン動力の制御及びフロントモータ4の発電の制御とによって、エンジン3からフロントモータ4及びリヤモータ41、61を介して後輪WRL、WRRに伝達される駆動力を、後輪要求駆動力PRWREQに基づいて適切に制御することができる。以上により、前輪WFL、WFR及び後輪WRL、WRRの全体に伝達される駆動力を、全輪要求駆動力PAWREQに応じて適切に制御することができる。
さらに、全輪駆動モード中、フロントモータ発電電力をフロントモータ発電上限電力FGLMT以下に制限する(図9のステップ27、31)ので、フロントモータ発電電力の過大化を防止でき、それにより、フロントモータ4の寿命を延ばすことができる。また、全輪駆動モード中、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されているときに(図8のステップ14:YES)、制限されたフロントモータ発電電力にさらに応じて、エンジン動力が制御される(ステップ17〜19)。
具体的には、フロントモータ目標発電電力の暫定値EFMOBJTからフロントモータ発電上限電力FGLMTを減算することにより上限電力偏差ΔEFMを算出するとともに、算出された上限電力偏差ΔEFMを動力に換算した電力偏差分補正項COΔEFMの分、エンジン要求駆動力PENREQが減算される。これにより、エンジン動力が、全輪要求駆動力PAWREQと、補機必要駆動力PACなどのパラメータとの和から、上記の電力偏差分補正項COΔEFMを減算した値に制御される。このように、エンジン動力を、制限されたフロントモータ発電電力に応じて減少させるので、無駄に発生させずに済む。同じ理由により、エンジン3から前輪WFL、WFRに伝達される駆動力を、フロントモータ発電電力の制限に伴って増大させることなく、前輪要求駆動力PFWREQに応じて適切に制御することができる。
さらに、全輪駆動モード中、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されているときには、フロントモータ4からリヤモータ41、61や補機8に供給される電力が、上限電力偏差ΔEFMの分、減少する。本実施形態によれば、フロントモータ発電電力がフロントモータ発電上限電力FGLMTに制限されているときに、リヤモータ供給電力の制御に、後輪要求駆動力PRWREQに基づくリヤモータ目標電力ERMOBJが用いられることにより、上限電力偏差ΔEFMの分の電力がバッテリ7の電力によって補われるように、リヤモータ供給電力が制御される(図10のステップ43)。
したがって、フロントモータ発電電力の制限中、後輪要求駆動力PRWREQに基づいて、リヤモータ供給電力を不足させずに適切に制御できるので、リヤモータ41、61から後輪WRL、WRRに伝達される駆動力を適切に制御することができる。以上のように、フロントモータ発電電力の制限中、エンジン3から前輪WFL、WFRに伝達される駆動力を前輪要求駆動力PFWREQに応じて適切に制御することができるとともに、リヤモータ41、61から後輪WRL、WRRに伝達される駆動力を後輪要求駆動力PRWREQに基づいて適切に制御することができるので、ドライバビリティを向上させることができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明における蓄電器は、バッテリ7であるが、キャパシタでもよい。また、実施形態では、第1及び第2リヤモータ41、61をそれぞれ、第1及び第2遊星歯車装置51、71を介して、左右の後輪WRL、WRRに連結しているが、両者51、71を介さずに、左右の後輪WRL、WRRに直結してもよい。さらに、実施形態では、エンジン3及びフロントモータ4を前輪WFL、WFRに、デュアルクラッチトランスミッションで構成された変速装置5を介して連結しているが、他の適当な変速装置を介して連結してもよい。
また、実施形態では、本発明における内燃機関及び第1電動機に相当するエンジン3及びフロントモータ4を前輪WFL、WFRに連結するとともに、本発明における第2電動機に相当するリヤモータ41、61を後輪WRL、WRRに連結しているが、これとは逆に、内燃機関及び第1電動機を後輪に連結するとともに、第2電動機を前輪に連結してもよい。さらに、実施形態では、本発明における第2電動機として、第1及び第2リヤモータ41、61から成る2つのモータを用いているが、単一のモータを用いてもよい。
また、実施形態は、フロントモータ4、リヤモータ41、61及びバッテリ7に、補機8が接続されたハイブリッド車両Vに、本発明を適用した例であるが、本発明は、補機が接続されていないタイプのハイブリッド車両にも、適用可能である。この場合、前述した処理(図7〜図10及び図12)において、補機に関連するパラメータ(PAC、EAC)は削除される。さらに、実施形態では、本発明における内燃機関は、ガソリンエンジンであるエンジン3であるが、ディーゼルエンジンや、LPGエンジンなどでもよい。また、実施形態では、ハイブリッド車両Vの前輪WFL、WFRの数及び後輪WRL、WRRの数は、それぞれ2つであるが、これに限らず、それぞれ1つでもよく、あるいは、前輪及び後輪の一方の数が1つで、他方の数が2つでもよく、あるいは、それぞれ3つ以上でもよい。
さらに、実施形態は、エンジン3及びフロントモータ4が前輪WFL、WFRに連結されたハイブリッド車両Vに、本発明を適用した例であるが、本発明は、これに限らず、内燃機関及び第1電動機が車輪に連結されていない、いわゆるシリーズ方式のハイブリッド車両にも適用可能である。また、実施形態では、全輪要求駆動力PAWREQや後輪要求駆動力PRWREQなどの各種のパラメータを、動力として算出しているが、駆動力と相関のあるトルクや出力として算出してもよい。さらに、以上の実施形態のバリエーションを適宜、組み合わせてもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。