以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の概略平面説明図、図2は同じく概略正面説明図、図3は同じく概略側面説明図である。
このインクジェット記録装置は、本体フレーム30に立設された左右の側板123L、123Rに架け渡されたガイド部材であるガイドロッド122と、本体フレーム30に配置された後フレーム128に取付けられたガイドレール124とで、キャリッジ120を主走査方向(ガイドロッド長手方向)に移動可能に保持している。そして、キャリッジ120を図示しない主走査モータとタイミングベルトによってガイドロッド122の長手方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ120には、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインク滴を吐出する1又は複数の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド1が搭載されている。記録ヘッド1は、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
ここで、記録ヘッド1は、図4に示すように、発熱体基板2と液室形成部材3から構成され、発熱体基板2に形成されたインク供給路を介して共通流路7及び液室(個別流路)6に順次供給されるインクを液滴として吐出する。この記録ヘッド1は、発熱体4の駆動によるインクの膜沸騰により吐出圧を得るサーマル方式のものであり、液室6内の吐出エネルギー作用部(発熱体部)へのインクの流れ方向とノズル5の開口中心軸とを直角となしたサイドシュータ方式の構成のものである。
なお、記録ヘッドとしては、圧電素子を用いて振動板を変形させ、また、静電力で振動板を変形させて吐出圧を得るものなど様々な方式があり、いずれの方式のものも本発明に係る画像形成装置に適用することができる。
一方、キャリッジ120の下方には、記録ヘッド1によって画像が形成される用紙8が主走査方向と垂直方向(副走査方向)に搬送される。図3に示すように、用紙8は、搬送ローラ125と押えコロ126で挟持されて、記録ヘッド1による画像形成領域(印字部)に搬送され、印写ガイド部材129上に送られ、排紙ローラ対127で排紙方向に送られる。
このとき、主走査方向へのキャリッジ120の走査と記録ヘッド1からのインク吐出を画像データに基づいて適切なタイミングで同調させ、用紙8に1バンド分の画像を形成する。1バンド分の画像形成が完了した後、副走査方向に用紙8を所定量送り、前述と同様の記録動作を行う。これらの動作を繰り返し行い、1ページ分の画像形成を行なう。
一方、記録ヘッド1の上部には吐出するインクを一時的に貯留するための液体室であるインク室が形成されたヘッドタンク(バッファタンク、サブタンク、流路形成部材)101が一体的に接続される。ここでいう「一体的」とは、記録ヘッド1とヘッドタンク101がチューブ、管等で接続されることも含んでおり、どちらも一緒にキャリッジ120に搭載されているという意味である。
このヘッドタンク101には、装置本体側の主走査方向の一端部側に設けられるカートリッジホルダなどに着脱自在に装着される各色のインクを収容した液体貯留容器としての液体タンクであるインクカートリッジ(メインタンク)76から液体供給チューブであるインク供給チューブ16を介して所要の色のインクが供給される。
また、装置本体の主走査方向の他端部側には記録ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構31が配置されている。この維持回復機構31は、記録ヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ32と、キャップ32内を吸引する吸引手段としての吸引ポンプ34と、吸引ポンプ34で吸引されたインクの廃液を排出する排出経路(チューブ)33などを含み、排出経路33から排出される廃液は本体フレーム30側に配置された廃液タンクに排出される。
この維持回復機構31にはキャップ32を記録ヘッド1のノズル面に対して進退移動(この例では昇降)させる移動機構を備えている。また、維持回復機構31には、図示しないが、記録ヘッド1のノズル面をワイピングするワイパ部材をワイピングユニットにて保持してノズル面に対して進退可能に配設している。
次に、この画像形成装置におけるインク供給システムについて図5を参照して説明する。図5は同インク供給システムの説明に供する模式的説明図である。
インクカートリッジ76は、液体であるインクが収容されたインク袋76aとインク袋76aを密閉状態で収容するケース部材76bからなり、インク袋76aとケース部材76bの間には密閉空間の空気層76cが形成されている。
インクカートリッジ76は、カートリッジホルダ77に着脱可能に装着される。
インクカートリッジ76が装着された状態では、図5に示すように、インクカートリッジ76のインク袋76aと液体供給チューブ(インク供給チューブ)16が通じ、空気層76cがエアー供給チューブ70に通じている。
エアー供給チューブ70には、加圧ポンプ78が接続されており、インクカートリッジ76の空気層76cに空気を出し入れすることで、インク袋76aを加圧自在としている。
インク袋76aは、インク供給チューブ16を介してヘッドタンク101に通じているので、加圧ポンプ78を駆動することで、インク供給チューブ16(供給経路)内のインクの圧力を制御することができる。また、インク供給チューブ16には開閉弁60が備えられ、インクカートリッジ76とヘッドタンク101との間の供給路を開閉制御可能である。
次に、本発明の第1実施形態におけるヘッドタンクについて図6ないし図9を参照して説明する。図6は同ヘッドタンクの正面説明図、図7は同ヘッドタンクの背面説明図、図8は図6のA−A線に沿う断面説明図、図9は図6のB−B線に沿う異なる状態の断面説明図である。なお、いずれの図も理解を助けるために適宜部品の記載を省略したり、部分断面としたりしている(以下、同様である)。
ヘッドタンク101は、液体室である負圧室としてのインク室106と、メインフィルタ109が設置されたフィルタ室98と、サブフィルタ110が設置された加圧室99とを有している。メインフィルタ109はその主要面の法線方向が重力方向と直交する方向に配置されている。
フィルタ室98は、通路95を介して記録ヘッド1に通じる。加圧室99には、通路96を介してインク供給チューブ16が接続される。
ヘッドタンク101の一壁面には変形可能な壁面を形成するフィルム部材107が設けられ、フィルム部材107はばね108によってインク室106の内部容積を拡大する(膨張する)方向に押されている。
インク室106と加圧室99との間には弁穴112が設けられ、弁穴112を開閉する供給弁としての負圧連動弁111が配置されている。
負圧連動弁111は、通常時は、図9(a)に示すように、弁ばね111dの作用によってシール部材111aが弁穴112を塞いだ状態を保っており、インク室106と加圧室99との間は遮断されている。
そして、インク室106内部のインクが消費され、インク室106内の負圧が増大してフィルム部材107がインク室106の内側に向かって変位(変形)すると、図9(b)に示すように、軸111cを中心に弁レバー111bが回転して、シール部材111aが弁穴112から離間し、インク室106と加圧室99とが通じる。
加圧室99とインク室106が通じることにより、加圧室99からインク室106にインクが流入すると、インク室106内の負圧が減少して、フィルム部材107が外側に変位(変形)する。これにより、再び、図9(a)に示すように、負圧連動弁111が閉じて、インク室106は加圧室99から遮断される。
画像形成時は、インクの消費量に応じて図9(a)の状態と図9(b)の状態とが交互に自動的に繰り返されることにより、安定した圧力を保ちながら記録ヘッド1にヘッドタンク101からインクを供給し続ける。
また、このヘッドタンク101においては、インク室106から記録ヘッド1へのインク供給は、フィルタ室98を介して行われるが、インク室106とフィルタ室98は、第1の流路81と第2の流路83の2つの流路で通じている。
ここで、第1の流路81の一方は、重量方向でインク室106の底部付近に設けられた穴80(開口)を介してインク室106に通じ、他方はフィルタ室98の側方に通じている。第2の流路83の一方は、鉛直方向でインク室106の最上部付近に設けられた穴82(開口)を通じてインク室106に通じ、他方はフィルタ室98の上部に通じている。
このヘッドタンク101において、インク室106内がインクで完全に満たされている状態では、第1の流路81及び第2の流路83の2つの流路を通じてインクが供給される。
なお、後述する図10に示すように、インク室106内に空気が溜まった状態においては、穴82と第2の流路83からの供給経路は空気によって遮断されるため、インク室106からフィルタ室98へのインク供給は穴80と第1の流路81を介してのみ行われる。
したがって、穴80と第1の流路81は記録ヘッド1が最大吐出状態となったときにインク供給不足とならないように流体抵抗が設定されている。
本実施形態のインク供給システムでは、まず、インク供給チューブ16内のインクが加圧されているので、高粘度インクを高速に消費するシステムにおいてもチューブの圧力損失に起因するリフィル不足が生じることがない。
高粘度インクを高速で吐出するためには、メインフィルタ109における圧力損失が問題となるが、同システムでは、メインフィルタ109を大きくすることによって流体抵抗を減らすことができ、フィルタ部分での圧力損失に起因するリフィル不足も回避することができる。
しかしながら、メインフィルタ109を大型化すると、経時的にヘッドタンク101内に蓄積した空気を記録ヘッド1のノズルから吸引排気しにくくなる。
そこで、本実施形態におけるヘッドタンク101からの気泡排出について図10ないし図13も参照して説明する。図10ないし図13の各(a)は図6と同様な正面説明図、(b)は図8と同様な断面説明図である。
前述したように、ヘッドタンク101のインク室106に空気が蓄積した状態では、第2の流路83が空気で遮断された状態となるが、記録ヘッド1に対するインク供給は第1の流路81から行われるので、リフィル不足は生じない。
しかしながら、インク室106に空気が溜まり過ぎると、温度上昇によって空気が膨張し、インク室106の圧力が上昇して、正常なインク吐出ができなくなったり、記録ヘッド1からインクが漏れ出すなどの不具合が生じる。
したがって、インク室106に溜まった空気を排出する必要が生じる。
ここで、通常は、記録ヘッド1内の流路に混入した空気の排出は維持回復機構31によって行う。維持回復機構31によって記録ヘッド1が吐出不良となった状態から正常状態に回復させる維持回復動作を行う場合には、まず、加圧ポンプ78を駆動して供給路内のインクを加圧した状態でノズル面をキャップ32でキャッピングする。その後、吸引ポンプ34を駆動してノズルからインクをキャップ32内に吸引する。そして、吸引を停止した後に、キャップ32をノズル面から離間させ、その後、ワイパ部材でノズル面をワイピングし、最後に記録ヘッド1を駆動してキャップ32内や空吐出受け(図示せず)にインクを吐出(空吐出)する一連の動作を行う。
しかしながら、この通常の維持回復動作では、図10に示すように、ヘッドタンク101のインク室106に溜まった大量の空気をメインフィルタ109を通して記録ヘッド1のノズルから排出することは困難である。
そこで、本実施形態ではチョーククリーニング動作を行うようにしている。このチョーククリーニング動作について説明する。
まず、図5に示す開閉弁60を閉じてインクカートリッジ76からヘッドタンク101への供給路を閉じた状態にする。
次いで、ノズル面をキャップ32でキャッピングした後、吸引ポンプ34を駆動してノズル吸引する。このとき、開閉弁60が閉じてインクカートリッジ76からインクが供給されないため、開閉弁60と記録ヘッド1の間の流路の負圧が急増してチョーク状態になる。
このとき、ヘッドタンク101は、図11に示すように、フィルム部材107が負圧によって変形し、第1の流路81に通じる下部の穴80を塞いだ状態となる。一方、上部の穴82は、インク室106と通じた状態を保っており、インク室106内の空気は負圧によって膨張しながら第2の流路83、フィルタ室98、通路95を経由して、記録ヘッド1のノズルから吸引キャップ32に排出されていく。
その後、所定時間経過後に開閉弁60を開くと、加圧されたインクがヘッドタンク101に流入し、図12に示すように、空気を矢印F1方向に押し流して、フィルタ室98から排出していく。メインフィルタ109が大面積の場合、フィルタ室98の容積が大きく、全ての空気を排出しきれないが、第2の流路83がフィルタ室98の天面に通じているので、残留空気は浮力によって図13の矢印F2で示すように、インク室106の上部(天面部)に移動する。
したがって、メインフィルタ109が大面積でチョーク吸引によっても排出しきれない場合でも、残留空気がフィルタ室98に残留して、メインフィルタ109の有効面積を減少させる不具合を生じることがない。
次に、本発明の第2実施形態におけるヘッドタンクについて図14及び図15を参照して説明する。図14及び図15は同ヘッドタンクの異なる姿勢の正面説明図である。
このヘッドタンク101は、メインフィルタ109を台形形状として、メインフィルタ109の上部におけるフィルタ室98の天面98aを傾斜面とし、天面98aの最上部で第2の流路83と通じている。
また、フィルタ室98において第2の流路83の開口部と対角をなす位置においてインク室106に通じる第1の流路81が接続されている。
これにより、ヘッドタンク101を、図14に示す長手方向を水平方向にした状態から90度回転させて、図15に示すように立てた状態(姿勢)にしたときも、第1の流路81が第2の流路83よりも重力方向下方でフィルタ室98及びインク室106に開口する。
これにより、チョーク吸引を行うときに穴80が塞がれて第2の流路83から空気を効率よく排出し、残留した少量の空気をインク室106に戻して、フィルタ室98内に空気が残ってメインフィルタ109の有効面積が減るのを防止することができる。
次に、本発明の第3実施形態におけるヘッドタンクについて図16ないし図18を参照して説明する。図16は同ヘッドタンクの正面説明図、図17は図16のC−C線に沿う断面説明図、図18は図16のD−D線に沿う断面説図である。なお、図16のA−A線に沿う断面図は前記図8と同じであり、図16のB−B線に沿う断面図は前記図9と同じであるので、図示を省略する。
本実施形態のヘッドタンク101は、前述した第1実施形態に係るヘッドタンク101に、空気室85と通路84を備えた構成としている。
通路84は、空気室85の底部とインク室106を通じている。ここでは、通路84はインク室106の高さ方向において略中央部付近でインク室106に開口しているが、これに限るものではなく、中央部付近よりも下方側で開口していても良い。なお、空気室85内には予め空気89bが混入した状態とされている。
次に、本実施形態におけるチョーク吸引による気泡排出動作について図19ないし図22も参照して説明する。図19ないし図22の各(a)は図16と同様な正面説明図、(b)は図17と同様な断面説明図である。
まず、図19に示すように、ヘッドタンク101のインク室106内に空気89aが蓄積した状態にある。この状態から空気を排出するために、前述した同様に、図5を示す開閉弁60で供給路を閉じた状態にする。
次に、ノズル面をキャップ32でキャッピングした後、吸引ポンプ34を駆動してノズル吸引する。開閉弁60が閉じてインクカートリッジ76からインクが供給されないため、開閉弁60と記録ヘッド1の間の流路の負圧は急増し、チョーク状態になる。
このとき、ヘッドタンク101は、前述したように(図11(b)参照)、フィルム部材107が負圧によって変形し、下部の穴80を塞いだ状態となる。一方、上部の穴82はインク室106と通じる状態を保っており、図20に示すように、インク室106内の空気は、負圧によって膨張しながら、第2の流路83、フィルタ室98、通路95を経由して記録ヘッド1のノズルから吸引キャップ32に排出される。
また、図20に示すように、空気室85内の空気89bは負圧に膨張する。
その後、開閉弁60を開くと、加圧されたインクがヘッドタンク101に流入し、図21に示すように、空気89aを矢印F1方向に押し流して、フィルタ室98から排出していく。
ここで、メインフィルタ109が大面積の場合、フィルタ室98の容積が大きく、全ての空気を排出しきれないが、第2の流路83がフィルタ室98の天面に通じているので、残留空気は、浮力で、図22に矢印F2で示すように、インク室106の上部に移動する。
さらに、本実施形態では、空気室85内の空気89bが収縮することによって、図22(a)の矢印F3で示す流れが発生するので、フィルタ室98からインク室106への空気89aの移動をより確実に行うことができる。
特に、フィルタ室98を容積可能な形態とすると共に、通路84の流体抵抗を大きくすることによって、空気室85内の空気89bの収縮が遅延するので、空気89aの収縮が完了してフィルタ室98内に残留した場合でも、空気89aを第2の流路83に引き戻す流れを形成することができる。
したがって、メインフィルタ109が大面積でチョーク吸引によっても排出しきれない場合でも、残留空気がフィルタ室98に残留して、メインフィルタ109の有効面積を減少させる不具合を生じることがない。
次に、本発明の第4実施形態におけるヘッドタンクについて図23及び図24を参照して説明する。図23は同実施形態の説明に供する正面説明図、図24は図23のC−C線に沿う断面説明図である。
本実施形態のヘッドタンク101においては、空気室85の開口部を円形状とし、更にフィルム部材97を撓ませた状態で開口部を封止する形態としている。
本実施形態における空気排出時の動作、作用については、上記第3実施形態と同様であるので、説明は省略するが、本実施形態のように空気室85を変形可能な形態とすることによって、温度変化に対するヘッドタンク101内の圧力変化を緩和することができる。
本実施形態のヘッドタンク101においては、定常的に、空気室85に空気89bを保持しているが、温度が上昇すると、空気が膨張することによってヘッドタンク101内部の圧力が上昇する。圧力上昇が多くなると、前述したように、吐出不良やインク垂れの不具合が生じるため、一定の圧力変化内に収める必要がある。
そこで、このヘッドタンク101においては、空気室85が変形可能(容積変化が可能な)な形態となっていることから、通常時は、インク室106内部の負圧によって内側にへこんだ状態となっている。したがって、温度上昇によって空気が膨張しても、空気室85を形成するフィルム部材97が変形して空気室85が膨張して圧力上昇を抑えることができる。
次に、本発明の第5実施形態におけるヘッドタンクについて図25ないし図27を参照して説明する。図25は同ヘッドタンクの正面説明図、図26は図25のE−E線に沿う異なる状態を示す断面説明図、図27は同ヘッドタンクの流路形成部材の説明図である。
ヘッドタンク101は、前記各実施形態で説明したと同様に、負圧連動弁111を備え、インク室106内の圧力に応じて負圧連動弁111が適宜開閉し、加圧されたインクをインク室106内に取り入れるものである。
この負圧連動弁111の動作やヘッドタンク101以外の構成については前述したので省略する。
本実施形態では、ヘッドタンク101は、ケース部材101aの表面側(図25で紙面側とする)にフィルタ室98が形成され、裏面側に流路形成部材113がはめ込まれて構成されている。
流路形成部材113は、図27に示すように、傾斜面116を有したすり鉢状に形成されており、中央部には負圧連動弁111の弁レバー111bをガイドする角穴114が設けられている。
この流路形成部材113は、図26に示すように、ケース部材101aにはめ込まれることで、負圧連動弁111を保持すると共に、排気流路83a、83bを形成する。
ここで、排気流路83a、83bは、図25に示すように、ヘッドタンク101内部に蓄積した空気が滞留する位置にある穴82を挟んで配置されている。排気流路83bの下端にはインク室106と第1の流路81を通じる穴80が設けられている。第1の流路81は、フィルタ室98の側面下部に接続されている。
次に、本実施形態のフィルタ室98について図28も参照して説明する。図28は図25のG−G線に沿う断面説明図である。
フィルタ室98のフィルタ109の重力方向上側(鉛直方向上方)には空気を蓄える空気貯留部86を形成する溝が設けられ、空気貯留部86には有底の穴(凹部)87が形成されている。
この空気貯留部86の容積Vbは、フィルタ室98の容積Vaに対して、(1)式を満たすように設定されている。
Vb/Va>Pc ・・・(1)
この(1)式中の「Pc」は、チョーククリーニング時のフィルタ室98内の絶対圧力である。
次に、本実施形態での動作について図25及び図26に基づいて説明する。
通常のインク吐出時は、図26(a)に示すように、フィルタ室98とインク室106を通じる穴80が開口しているので、インクはインク室106から第1の流路81、フィルタ室98、通路95を流れて、記録ヘッド1に供給される。
インク室106に溜まった空気を記録ヘッド1のノズルから排出するときには、前述の実施形態と同様に、チョーククリーニング動作を行う。
チョーククリーニング動作では、まず、前述した図5に示す開閉弁60で流路を閉じた状態にする。次に、ノズル面をキャップ32でキャッピングした後、吸引ポンプ34を駆動してノズル吸引する(図3参照)。開閉弁60が閉じてインクカートリッジ76からインクが供給されないため、開閉弁60と記録ヘッド1の間の流路の負圧は急増しチョーク状態になる。
このとき、ヘッドタンク101は、図26(b)に示すように、フィルム部材107が負圧によって変形し、穴80を塞いだ状態となる。上部の穴82はインク室106とわずかに通じた状態を保っており、インク室106内の空気は、負圧によって膨張しながら排気流路83b、フィルタ室98、通路95を経由して、記録ヘッド1のノズルから吸引キャップ32に排出されていく。
その後、開閉弁60を開くと、加圧されたインクがヘッドタンク101に流入し、図25に示すように、空気を矢印F4方向に押し流して、「弁穴112→排気流路83a→穴82→排気流路83b→穴80→第1の流路81→フィルタ室98→連通穴95」の順番にインクが流れて、空気を記録ヘッド1から押し出す。
メインフィルタ109が大面積の場合、フィルタ室98の容積が大きく全ての空気を排出しきれない。
このとき、本実施形態では、フィルタ室98の上部に空気貯留部86を備えているので、残留空気は浮力で空気貯留部86に浮上するため、残留空気がフィルタ室98に残留して、メインフィルタ109の有効面積を減少させる不具合を生じることがない。
ここで、前述したように、空気貯留部86の容積を(1)式を満たすように設定している。これにより、ボイルの法則から、チョーククリーニング後にフィルタ室98が大気圧近くの圧力(通常は−0.1kPa程度)に戻ったときには、フィルタ室98内の残留空気を確実に空気貯留部86に収容することができる。
また、本実施形態では空気貯留部86に有底の穴(凹部)87が形成されている。この穴87の効果について図29及び図30も参照して説明する。図29及び図30は図28と同様な断面説明図である。
フィルタ室98において、メインフィルタ109と対向して壁面をなすフィルム部材97とのギャップが狭い場合は特に、気泡排出動作時に先に空気貯留部86にインクが流れ込んだ場合には、図29に示すように、チョーククリーニングによって排出しきれなかった残留空気89がギャップ内でメニスカスを形成して空気貯留部86に移動せず、メインフィルタ109に付着した状態となることが生じる。
これに対し、本実施形態では空気貯留部86に有底の穴87が形成され、その穴87は有底である故にインクが充填されにくいため、図30(b)に示すような形態で確実に常時空気(符号89cで示す)を保持することができる。
したがって、チョーククリーニングの最終段階(開閉弁60を開いてチョーク状態を解除する段階)において、有底の穴87の空気89cの収縮(図30(a)の状態から、図30(b)の状態に収縮する)によって、矢印F5の流れが発生するため、フィルタ室98のギャップが狭い場合においても、残留空気を確実に空気貯留部86に誘導することができる。
なお、有底の穴(凹部)87の形態としては、図25及び図28に示すようなものに限られるものではない。この「有底の穴」とは、インクが充填されにくい空間を形成する形態であれば何でもよく、例えば、図31に示すように、空気貯留部86の一部にリブ88を形成すれば、インクによって充填されにくい空間90を形成することができ、上記実施形態で説明した有底の穴87と同様の作用効果を得ることができる。
次に、本発明の第6実施形態におけるヘッドタンクについて図32及び図33を参照して説明する。図32及び図33は同ヘッドタンクの異なる姿勢の正面説明図である。
本実施形態のヘッドタンク101は、メインフィルタ109の上方と側方の両方に空気貯留部86を形成し、その空気貯留部86に有底の穴87を設けている。
これにより、ヘッドタンク101を、図32に示す姿勢から90度回転させて図33に示す姿勢にした場合においても、メインフィルタ109の上方に空気貯留部86が配置される。これにより、残留した空気を空気貯留部86に誘導して、フィルタ室98内に空気が残ってメインフィルタ109の有効面積が減るのを防止することができる。
なお、上述した各実施形態においては、負圧連動弁を備えたヘッドタンクに加圧されたインクを供給するインク供給システムに本発明を適用した例で説明してきたが、これに限るものではない。
そこで、本発明の第7実施形態におけるインク供給システムについて図34及び図35を参照して説明する。図34は同システムの説明に供する模式的説明図、図35は図34のH−H線に沿う断面説明図である。
ここでは、インクカートリッジ76を記録ヘッド(液体吐出ヘッド)1よりも下方に配置して水頭差によって負圧を得る方式を採用している。
ヘッドタンク101には、前述した負圧連動弁はなく、ばね108によってフィルム部材107を外側に勢いを付けている。
これによって、通常時、インク室106は第1の流路81を介してフィルタ室98に通じた状態となっている。これに対して、チョーク吸引時には、フィルム部材107がばね108に抗して大きく変形して穴80を塞ぎ、インク室106とフィルタ室98とは第2の流路83でのみ通じることになる。
したがって、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、チョーク解除時にインクの加圧力を利用することはできないため、若干排気性能は劣化するが、ヘッドタンク101に負圧連動弁が不要となり、インク加圧機構も不要なので、簡易なものとなり、低コストのシステムとすることができる。
次に、本発明の第8実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置について図36ないし図38を参照して説明する。図36は同記録装置の概略平面説明図、図37は同じく概略正面説明図、図38は同じく概略側面説明図である。
このインクジェット記録装置は、本体フレーム30に立設された左右の側板123L、123Rに架け渡されたガイド部材であるガイドロッド122と、本体フレーム30に配置された後フレーム128に取付けられたガイドレール124とで、キャリッジ120を主走査方向(ガイドロッド長手方向)に移動可能に保持している。そして、キャリッジ120を図示しない主走査モータとタイミングベルトによってガイドロッド122の長手方向(主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ120には記録ヘッド1が搭載されている。本実施形態の記録ヘッド1は、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインク滴、つまり、異なる種類の液滴を吐出する4列のノズル列が形成されている。
ここで、記録ヘッド1は、前述した図5に示す構成と同様であるが、上述したように、1つのヘッドに異なる種類の液滴を吐出する複数列(ここでは4列)のノズル列を有している。記録ヘッドとしては、圧電素子を用いて振動板を変形させ、また、静電力で振動板を変形させて吐出圧を得るものなど様々な方式があり、いずれの方式のものも本発明に係る画像形成装置に適用することができる。
一方、キャリッジ120の下方には、記録ヘッド1によって画像が形成される用紙8が主走査方向と垂直方向(副走査方向)に搬送される。図38に示すように、用紙8は、搬送ローラ125と押えコロ126で挟持されて、記録ヘッド1による画像形成領域(印字部)に搬送され、印写ガイド部材129上に送られ、排紙ローラ対127で排紙方向に送られる。
このとき、主走査方向へのキャリッジ120の走査と記録ヘッド1からのインク吐出を画像データに基づいて適切なタイミングで同調させ、用紙8に1バンド分の画像を形成する。1バンド分の画像形成が完了した後、副走査方向に用紙8を所定量送り、前述と同様の記録動作を行う。これらの動作を繰り返し行い、1ページ分の画像形成を行なう。
一方、記録ヘッド1の上部には吐出するインクを一時的に貯留するための液体室であるインク室が形成されたヘッドタンク(バッファタンク、サブタンク、流路形成部材)101が一体的に接続される。ここでいう「一体的」とは、記録ヘッド1とヘッドタンク101がチューブ、管等で接続されることも含んでおり、どちらも一緒にキャリッジ120に搭載されているという意味である。
このヘッドタンク101には、装置本体側の主走査方向の一端部側に設けられるカートリッジホルダなどに着脱自在に装着される各色のインクを収容した液体貯留容器としての液体タンクであるインクカートリッジ(メインタンク)76から液体供給チューブであるインク供給チューブ16を介して所要の色のインクが供給される。
また、装置本体の主走査方向の他端部側には記録ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構31が配置されている。この維持回復機構31は、記録ヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ32と、キャップ32内を吸引する吸引ポンプ34と、吸引ポンプ34で吸引されたインクの廃液を排出する排出経路33などを含み、排出経路33から排出される廃液は本体フレーム30側に配置された廃液タンクに排出される。
なお、本実施形態では、1つのキャップ32によって記録ヘッド1の複数のノズル列を同時にキャッピングする構成としている。
この維持回復機構31にはキャップ32を記録ヘッド1のノズル面に対して進退移動(この例では昇降)させる移動機構を備えている。また、維持回復機構31には、図示しないが、記録ヘッド1のノズル面をワイピングするワイパ部材をワイピングユニットにて保持してノズル面に対して進退可能に配設している。
次に、この画像形成装置におけるインク供給システムについて図39を参照して説明する。図39は同インク供給システムの説明に供する模式的説明図である。なお、本実施形態のインク供給路はYMCKの4色あるが、説明を簡易にするため、図39においては1色のみの構成図を示している。
本実施形態において、インクが貯留されているインクカートリッジ76は、大気開放口79が上部に設けられたタンク75で構成され、インク面が記録ヘッド1のノズル面よりも下方になる位置に配置されている。つまり、前述したと同様に、インクカートリッジ76を記録ヘッド(液体吐出ヘッド)1よりも下方に配置して水頭差によって負圧を得る方式を採用している。
インクカートリッジ76には、インク供給チューブ16が接続されており、インク供給チューブ16にはインクカートリッジ76とヘッドタンク101との間を開閉制御可能な第1の開閉弁としての開閉弁60が備えられる。
ヘッドタンク101は、記録ヘッド1に送られるインクを一定量保持する容積を有するインク室106を備え、その上部の空気貯留部386を有し、この空気貯留部386を通ってインク室106に臨む空気検知手段としての電極対298が配置されている。
ヘッドタンク101と記録ヘッド1の間には、ヘッドタンク101と記録ヘッド1の間の流路を形成する部材である接続部材10が備えられている。接続部材10には、記録ヘッド1内に高集積に備えられた4色の流路と各色ごとに個々に設けられた4つのヘッドタンク101の通路295とを接続する接続流路11が設けられている。
そして、この接続流路11には、空気検知手段である電極対298による検知結果に連動して、液体供給流路を構成する接続流路11を開閉する第2の開閉弁としての空気連動弁280を設けている。
つまり、本実施形態では、ヘッドタンク101のインク供給チューブ106が接続される通路96を液体流入部とし、接続流路11の記録ヘッド1の流路とつながる部分を液体流出部とするとき、液体流入部から液体流出部までの流路を液体供給流路とする。そして、この液体供給流路を構成している接続流路11に空気連動弁280を配置している。
一方、記録ヘッド1の下方には、上述したように記録ヘッド1のメンテナンス時や印字待機時などに動作する維持回復機構31が備えられる。そして、維持回復機構31には、空気連動弁280と対向した位置に、空気連動弁280を駆動する弁駆動手段40が配置されている。
次に、空気連動弁及び弁駆動手段の一例について図40を参照して説明する。図40は同説明に供する模式的説明図である。
空気連動弁280は、接続流路11に設けられ、磁石又は磁性体からなる弁体281と圧縮ばね282からなる。一方、弁駆動手段40は、電磁コイル41から構成される。つまり、これらの空気連動弁280と弁駆動手段40によって電磁弁が構成されている。
したがって、コイル41に電流が流れていないとき、又は電流が少ないときには、図40(a)に示すように、圧縮ばね282の作用により弁体281が支持されて、空気連動弁280は開いた状態となる。一方、コイル41に十分な電流が流れると、図40(b)に示すように、弁体281が圧縮ばね282の反発力に抗して変位し、コイル41に引き付けられて流路を塞ぎ、空気連動弁280は閉じた状態になる。
次に、電極対298の検出結果(抵抗値変化)によって弁駆動手段40を作動させる電気回路構成について図41を参照して説明する。
ここで、電極対298は、空気の有無によって電気抵抗が変化するので可変抵抗として表している。コイル41と電極対298は直列接続されて、駆動電源Vccから給電される構成としている。
次に、本実施形態における空気排出動作について図42も参照して説明する。図42は同説明に供する模式的説明図である。
前述したように、ヘッドタンク101のインク室106と記録ヘッド1との間には、ノズルに異物が流れて吐出異常になることを防止する目的でフィルタが備えられる。この場合、通常の記録ヘッド1のメンテナンス動作における吸引では、フィルタを介して空気を排出しきれないため、大量の空気を効率よく排出するために、チョーククリーニング動作を行う。
本実施形態におけるチョーククリーニング動作では、図42(a)に示すように、空気89が大量に蓄積した状態になった場合、まず、図39に示す開閉弁60と閉じて、インクカートリッジ76とヘッドタンク101との間の流路を閉じる。
そして、ノズル面をキャップ32でキャッピングした後、吸引ポンプ34を駆動してノズル吸引する。開閉弁60が閉じてインクカートリッジ76からインクが供給されないため、開閉弁60と記録ヘッド1の間の流路の負圧は急増し、チョーク状態になる。
このとき、ヘッドタンク101の空気は、図42(b)に示すように、負圧によって膨張しながら矢印Bで示すように排出経路(チューブ)33から排出されていく。
その後、開閉弁60を開くと、図42(c)の矢印Cで示すようにインクがヘッドタンク101に流入し、再度ヘッドタンク101内の空気をキャップ32に排出する。この状態で、ヘッドタンク101内の負圧が弱まるので、残留した空気89は収縮してインク室106の上部に浮上して、空気貯留部386に溜まった状態となる。
このチョーククリーニング動作では、空気を排出するためにインクも大量に排出することになる。そのため、複数のインク供給路がある場合(本実施形態ではYMCKの4つのインク供給路)、空気がないヘッドタンク101と空気が大量に蓄積した状態のヘッドタンクとが混在するとき、空気のないヘッドタンク101については無駄にインク消費することになる。
そこで、本実施形態では、複数のインク供給路が接続されたヘッドを1つのキャップで吸引して空気排出を行う場合に、自動的に、空気がないインク供給路についてはチョーククリーニングがされないようにするものである。
つまり、チョーククリーニング動作を実施するコマンド(指令)を受けたとき、まず、図41において駆動電圧Vccを回路に与える。この状態で、前述したような一連のチョーククリーニング動作を行う。
ここで、ヘッドタンク101に空気がない場合(図39の状態)は、電極対298の間に液体(インク)が介在しているので、電極間の抵抗が低い状態となっている。したがって、図41の回路において、電極対298の抵抗が小さいことから、コイル41に大きな電流が流れる。
これにより、図40(b)に示すようにコイル41に大電流が流れることによって磁界が発生し、永久磁石又は磁性体である弁体281が引き付けられて、空気連動弁280は閉じた状態となる。したがって、キャップ32を介して吸引されても、ヘッドタンク101内のインクは吸引されず、インクが無駄に捨てられない。
一方、図42(a)に示すように、ヘッドタンク101に空気が蓄積した場合は、電極対298の電極間が空気絶縁されるので、電極間の抵抗が高い状態となっている。したがって、図41の回路において、電極対298の抵抗が大きいためコイル41にほとんど電流が流れない。
これにより、図40(a)に示すように、コイル41が磁界を発生しないので、弁体281が流路を開いた位置のままで空気連動弁280は開いた状態となる。したがって、キャップ32を介してインク室106内が吸引されて、チョーククリーニングが行われる。
このように、本実施形態によれば、ヘッドタンク101内の空気を検知する空気検知手段とヘッドタンク101と記録ヘッド1との間の流路を開閉する空気連動弁280とが電気的に連動している。
これによって、複数のインク供給路に接続された記録ヘッド1を1つのキャップでチョーククリーニングする場合に、空気排出が必要なインク供給路が自動的に選択されて、チョーククリーニングされるので、チョーククリーニングにおいて無駄にインクが排出されることを防止することができる。
次に、本発明の第9実施形態について図43の回路図を参照して説明する。
本実施形態では、電極対298をチョーククリーニングのトリガとして利用している。つまり、図43に示すように、電極対298に抵抗RLを直列接続し、電極対298と抵抗RLとの接続点の電位Vaを検出電圧として取り出している。
この回路では、駆動電圧Vccを与えたとき電極対298の電気抵抗によって流れる電流の大小によって電位Vaが変化するので、電位Vaの大きさによってチョーククリーニング動作を行うかどうか判断することができる。
具体的には、空気なしの場合は電位Vaが高くなる(Vccと近い電圧となる)ので全てのインク供給路の電位Vaが高い場合にはチョーククリーニングを実施する必要がない。したがって、チョーククリーニングの要求があってもチョーククリーニングを実行しないようにして、無駄なインク消費を回避すると共に、メンテナンス動作による装置の停止時間(画像形成ができない時間)の発生を防止することができる。
また、適宜なタイミングで電圧Vccを与えて電位Vaを測定し、いずれかのインク供給路で空気が検知されたときに、チョーククリーニング動作を実施するようにすることもできる。
この場合、空気が検知されたインク供給路の数に応じてチョーククリーニングの動作を変えることができる。
例えば、空気検知されたインク供給路の数が多いほど、チョーククリーニングにおける吸引ポンプ34による吸引量を増やすことができる。チョーククリーニングにおいては開閉弁60を閉じて吸引ポンプ34を駆動して供給経路内に大きな負圧を形成することが重要であるが、インク供給路内の空気量が多い場合、吸引ポンプ34での吸引に対してインク供給路内の負圧上昇が緩慢になる。したがって、1つのインク供給路に空気がある場合に対して複数のインク供給路に空気がある場合の方が同じ吸引量に対してインク供給路内の到達負圧が小さくなり、空気排出性が低下する。そこで、複数のインク供給路に対して1つのキャップで吸引してチョーク吸引する本発明の構成の場合、空気検知されたインク供給路の数に応じて吸引時間を長くしたり、吸引速度を大きくする制御を行うことで、適切なチョーククリーニングを行うことができる。
次に、本発明の第10実施形態について図44及び図45を参照して説明する。図44は同実施形態の説明に供する模式的説明図、図45は同じく図44の側面説明図である。
本実施形態では、ヘッドタンク101の上部に備えられた光学センサであるフォトセンサ297によって空気検知手段を構成している。
ヘッドタンク101は、図45に示すように、両側に透明なフィルム部材107が貼られてインク室106が形成されている。フォトセンサ297は透過型のフォトセンサであり、インク室106の上部でインク室106を挟んで配置されている。
ここで、図44(a)に示すように、インク室106内に空気がない状態、あるいは、空気が少ない状態であるときには、インク室106内のインクにより光が遮断されるので空気ないしと判断できる。一方、図44(b)に示すように、インク室106内の空気が多い場合は、光が透過するので、空気ありと判断できる。
ここでも、ヘッドタンク101と記録ヘッド1の間の接続部材10に空気連動弁280が備えられる。またこの空気連動弁280と対向した位置には、空気連動弁280を駆動する弁駆動手段40が配置されている。空気連動弁280と弁駆動手段40は、前述した図40と同様な構成で、コイル41に流れる電流によって、弁体281が移動して接続流路11を閉塞可能に構成とされている。なお、動作については前述した同様であるので、説明を省略する。
次に、フォトセンサ297の検出結果によって弁駆動手段40を作動させる電気回路構成について図46を参照して説明する。
フォトセンサ297を含む図示しないセンサ回路は、受光部に光が到達したときに「H」レベル、光が受光部に到達しないときに「L」レベルの電圧(センサ出力)Vpを出力する回路構成としている。
一方、駆動電圧Vccをスイッチング手段であるトランジスタTRを介してコイル41に与えている。具体的には、トランジスタTRのコレクタにコイル41が接続され、エミッタに駆動電圧Vccが与えられる。なお、コイル41の両端にはコイル41の逆起電力によるトランジスタTRの破損を防止するダイオードD1が接続されている。
そして、センサ出力Vpを抵抗R1を介してトランジスタTRに入力している。具体的には、センサ出力Vpの入力端をトランジスタTRのベースに接続している。
次に、本実施形態におけるチョーククリーニング動作について説明する。
チョーククリーニングを実施する指令が与えられると、駆動電圧Vccを与える。この状態で、前述したと同様にして一連のチョーククリーニング動作を行う。
このとき、図44(a)に示すように、ヘッドタンク101に空気がない場合は、インクによって遮光されフォトセンサ297の受光部に光が到達しないため、フォトセンサ297によるセンサ出力Vpは「L」になってトランジスタTRがオン状態となる。これにより、コイル41に電流が流れ、空気連動弁280が閉じた状態となる。したがって、キャップ32を介して吸引されても、ヘッドタンク101内のインクは吸引されず、インクが無駄に捨てられない。
一方、図44(b)に示すように、ヘッドタンク101に空気89が蓄積した場合は、フォトセンサ297の受光部に光が到達するため、フォトセンサ297によるセンサ出力Vp「H」になってトランジスタTRがオフ状態となる。これにより、駆動電圧Vccからコイル41に電流が流れない。そのため、空気連動弁280が開いた状態となる。したがって、キャップ32を介してインク室106内が吸引されて、チョーククリーニングが行われる。
このように、本実施形態でも、ヘッドタンク101内の空気を検知する空気検知手段とヘッドタンク101と記録ヘッド1との間の流路を開閉する空気連動弁280とが電気的に連動している。
これによって、複数のインク供給路に接続された記録ヘッド1を1つのキャップでチョーククリーニングする場合に、空気排出が必要なインク供給路が自動的に選択されて、チョーククリーニングされるので、チョーククリーニングにおいて無駄にインクが排出されることを防止することができる。
なお、本実施形態では、フォトセンサを用いて空気検知し、フォトセンサの光路をインクによって遮断する構成としたが、これに限るものではない。例えば、ヘッドタンク101内にフロート部材を備えて、そのフロート部材によって光路が遮断される構成や、フロート部材に連動したレバーによって光路が遮断される構成などとすることもできる。
次に、本発明の第11実施形態について図47及び図48を参照して説明する。図47は同実施形態の説明に供する模式的説明図、図48は同じく異なる状態の模式的説明図である。
本実施形態のインクカートリッジ76は、前記第1実施形態でも説明したが、液体であるインクが収容されたインク袋76aとインク袋76aを密閉状態で収容するケース部材76bからなり、インク袋76aとケース部材76bの間には密閉空間の空気層76cが形成されている。
インクカートリッジ76は、カートリッジホルダ77に着脱可能に装着される。
インクカートリッジ76が装着された状態では、図47に示すように、インクカートリッジ76のインク袋76aと液体供給チューブ(インク供給チューブ)16が通じ、空気層76cがエアー供給チューブ70に通じている。
エアー供給チューブ70には、加圧ポンプ78が接続されており、インクカートリッジ76の空気層76cに空気を出し入れすることで、インク袋76aを加圧自在としている。
インク袋76aは、インク供給チューブ16を介してヘッドタンク101に通じているので、加圧ポンプ78を駆動することで、インク供給チューブ16(供給経路)内のインクの圧力を制御することができる。また、インク供給チューブ16には開閉弁60が備えられ、インクカートリッジ76とヘッドタンク101との間の供給路を開閉制御可能である。
ヘッドタンク101は、メインフィルタ109が備えられ、記録ヘッド1に連通したインク室106と、インク供給チューブ16が接続された加圧室299から構成される。
インク室106と記録ヘッド1とを通じる流路301には、空気検知手段としての電極対298が備えられている。
ヘッドタンク101の一壁面には、フィルム部材107が設けられ片持ち梁状のばね108によってヘッドタンク101の容積を拡大する方向に勢いを付けられている。
インク室106と加圧室299の間には弁穴212が設けられ、弁穴212は供給弁としての負圧連動弁211によって開閉可能とされている。
この負圧連動弁211は、通常時は、図48に示すように、弁ばね211bの作用によってシール部材211aが弁穴212を塞いだ状態に保っている。これにより、インク室106と加圧室299との間は遮断されている。
これに対し、インク室106内部のインクが消費され、インク室106内の負圧が増大してフィルム部材107がインク室106の内側に変位すると、図47に示すように、ばね208が変形して、シール部材211aを押し上げる。これにより、シール部材211aが弁穴212から離間することで、インク室106と加圧室299が通じる。
したがって、加圧室99からインク室106にインクが流入する。インク室106にインクが流入すると、インク室106内の負圧が減少して、フィルム部材107が外側に変位する。これにより、再び、負圧連動弁211が閉じて、インク室106は加圧室299から遮断される。
つまり、負圧連動弁211は、ヘッドタンク101の内部の負圧が所定値よりも大きくなったときに開いて、供給路(インク供給チューブ16)からのインクの供給を受容可能とする弁である。
このようにして、画像形成時は、インクの消費量に応じて図47と図48の状態が交互に自動的に繰り返されることにより、安定した圧力を保ちながら記録ヘッド1にインクを供給し続ける。
本実施形態のインク供給システムでは、まず、インク供給チューブ16内のインクが加圧されているので、高粘度インクを高速に消費するシステムにおいてもチューブの圧力損失に起因するリフィル不足が生じることがない。
高粘度インクを高速で吐出するためには、メインフィルタ109における圧力損失が問題となるが、同システムでは、メインフィルタ109を大きくすることによって流体抵抗を減らすことができ、フィルタ部分での圧力損失に起因するリフィル不足も回避することができる。
しかしながら、メインフィルタ109を大型化すると、経時的にヘッドタンク101内に蓄積した空気を記録ヘッド1のノズルから吸引排気しにくくなる。
そこで、空気を排出する場合には、前述の実施形態と同様に開閉弁60を利用したチョーククリーニングを用いる。
次に、本実施形態における負圧連動弁と空気検知とを連動させる構成について図49を参照して説明する。図49は同構成の説明に供する要部模式的説明図である。
負圧連動弁211のシール部材211aは、上述したように、インク室106の圧力によって開閉する構造となっている。加えて、シール部材211aを永久磁石又は磁性体で形成し、外部から磁界を作用させることによって、インク室106の負圧が大きい状態でも閉めることができるように構成している。
そして、負圧連動弁211のシール部材211aと対向した位置にシール部材211aを駆動する弁駆動手段40が配置されている。弁駆動手段40は、コイル41から構成される。
この弁駆動手段40のコイル41に電流が流れていないとき又は電流が少ないときは、シール部材211aに磁界が作用しないので負圧連動弁211はインク室106の圧力のみによって開閉する。したがって、負圧が大きい場合には、図49(a)に示すようにばね108の作用により負圧連動弁211は開いた状態となる。
一方、コイル41に十分な電流が流れると、図49(b)に示すように、シール部材211aがばね308の力に抗して変位し、コイル41に引き付けられて弁穴212を塞ぎ、負圧連動弁211は閉じた状態になる。
次に、電極対298の検出結果によって弁駆動手段40を作動させる電気回路構成について図50を参照して説明する。
この回路では、電極対298は抵抗R2と直列に接続されて電源電圧Vsが与えられる。そして、電極対298と抵抗R2との接続点との電圧Vaを、前述した図46と同様に、抵抗R1を介してスイッチング用のトランジスタTRに入力し、コイル41に対する給電をON/OFFする。
したがって、電極対298間にインクが存在しているときには電圧Vaは接地電位に近く(「L」レベルとする。)、トランジスタTRがON状態になってコイル41に給電され、図49(b)に示すように、負圧連動弁211の弁穴212を閉じた状態になる。
また、電極対298間に空気が存在しているときには電圧Vaは上昇し(「H」レベルとする。)、トランジスタTRがOFF状態になってコイル41への給電が遮断され、図49(a)に示すように、負圧連動弁211はばね208の変位によって開閉する。
次に、本実施形態における開閉弁60について図51を参照して説明する。図51は同開閉弁の断面説明図である。
開閉弁60は、ケーシング285の大きな開口部がフィルム部材287によってシールされ、略円筒状に構成されたもので、中央部にはフィルム部材287に近接して流出口289を形成する管状部286が形成されている。また、ケーシング285の一部には流入口288が設けられている。
この開閉弁60は、流出口289がヘッドタンク101側に、流入口288がインクカートリッジ76側にそれぞれ接続される。
次に、チョーク弁となる開閉弁60チョーク弁の開閉動作について説明する。
まず、加圧ポンプ78を停止した状態で、キャップ32を記録ヘッド1に密着させ、吸引ポンプ34で吸引すると、記録ヘッド1に通じた開閉弁60のインクが吸引排出される。
このとき、加圧ポンプ78が停止しているので、インクカートリッジ76から開閉弁60へのインク供給速度が吸引によるインク排出速度よりも遅いため、開閉弁60内部のインクが減少する。開閉弁60内のインクの減少によって、図51(b)に示すように、フィルム部材287が撓んで、管状部286の端部に密着し、シール状態となる。
これにより、開閉弁60は閉じた状態になるので、吸引を継続することで流出口289より下流側の流路内に大きな負圧を効率よく作ることができる。
この状態で、加圧ポンプ78を駆動すると、フィルム部材287で仕切られた上流側の流路のインクが加圧される。
このとき、図51に示すように、流出口289の断面積に対して管状部286の周囲でフィルム部材287がインクに接触している面積の方が大きいので、比較的弱い圧力でも図51(a)に示すように、インクがフィルム部材87を押し上げる。
これによって、開閉弁60が開いた状態となる。
このように、この例の開閉弁60は、簡易な構成でありながら、インクの圧力のみで流路の開閉ができるので、電磁弁のような駆動源が不要であり、低コストな画像形成装置を実現するに適した開閉弁である。
次に、本実施形態におけるチョーククリーニング動作について図52も参照して説明する。
チョーククリーニングを実施する指令(コマンド)を受けると、図50の回路に電源電圧Vs,駆動電圧Vccを与える。
この状態で、前述と同様に一連のチョーククリーニング動作を行う。
ここで、図52(a)に示すように、ヘッドタンク101に空気がない、あるいは少なく、電極対298の電極間にインクがあるときには、電極対298の電極間抵抗が小さく、トランジスタTRがオン状態になって駆動電圧Vccからコイル41に電流が流れ、負圧連動弁211が閉じた状態となる。
したがって、キャップ32を介して吸引を行っても、ヘッドタンク101の加圧室299より上流側のインクは吸引されず、インクが無駄に捨てられない。
これに対し、図52(b)に示すようにヘッドタンク101に空気89が蓄積していると、電極対298の電極間抵抗が大きくなり、トランジスタTRがオフ状態になってコイル41に電流が流れない。
そのため、負圧連動弁211に磁界が作用しないので、キャップ吸引圧によって開いた状態となる。したがって、キャップ32を介してインク室106内が吸引されて、チョーククリーニングが行われる。
このように、本実施形態によれば、ヘッドタンク101内の空気を検知する空気検知手段と負圧連動弁とを電気的に連動させている。これにより、複数のインク供給路に接続された記録ヘッド1を1つのキャップでチョーククリーニングする場合に、空気排出が必要なインク供給路が自動的に選択されて、チョーククリーニングされ、チョーククリーニング動作において無駄にインクが排出されることを防止することができる。
特に、本実施形態では、開閉弁60を上述したような低コスト化に適した簡易な構成としているため、チョーククリーニング動作で開閉弁60が閉まるときに排出されるインク量が多くなる。このとき、空気排出の必要がない流路に関しては、開閉弁60よりも下流側(負圧連動弁211の位置)で流路が閉塞してチョーク弁(開閉弁60)に吸引圧が及ばないので、無駄なインク排出を防止することができる。
次に、本発明の第12実施形態について図53及び図54を参照して説明する。図53は同実施形態の説明に供するも模式的説明図、図54は図53の側面説明図である。
本実施形態のインクカートリッジ76からヘッドタンク101までの構成は前記第8実施形態と同様であるので、説明は省略する。
前記第8実施形態では接続部材10に空気連動弁280を備えているが、本実施形態では、接続部材10には接続流路11のみを設けて空気連動弁280は備えていない。
一方、維持回復機構31側では、図54に示すように、キャップ32には各ノズル列に分ける隔壁35が設けられ、記録ヘッド1の4色のインク供給路の先端につながったそれぞれのノズル5を各々独立に密閉できる構成としている。
そして、隔壁35によって分割された各々のキャッピング空間を、それぞれ空気連動弁280を介して、1つの吸引ポンプ34に接続している。
空気連動弁280の近傍には弁駆動手段40が配置されている。この空気連動弁280と弁駆動手段40の構成は、前述した同様のものである。つまり、永久磁石又は磁性体からなる弁体281が、コイル41に給電されることで形成される磁界によって駆動され、閉弁する構成のものである。
ヘッドタンク101に備えられた電極対298と維持回復機構31側のコイル41は、前記各実施形態で説明したような電気回路を構成し、電極対298が空気絶縁され高抵抗な場合とインクでブリッジしていて低抵抗な場合によって、空気連動弁280が開閉する。
つまり、チョーククリーニング動作を実施するとき、ヘッドタンク101に空気がない場合には、電極対298の電極間が低抵抗であるので、コイル41に電流が流れて空気連動弁280が閉じる。したがって、吸引ポンプ34を駆動しても対応するキャップ内空間は吸引されないので、インクが排出されない。
一方で、ヘッドタンク101に空気がある場合には、電極対298の電極間が高抵抗であるので、コイル41に電流が流れないため空気連動弁280は開いた状態となる。したがって、吸引ポンプ34を駆動した場合には、対応するキャップ内空間は吸引されてチョーククリーニングが行われる。
本実施形態のように、空気連動弁280を吸引経路側に配置する構成によっても、チョーククリーニングを必要としないインク流路を吸引して無駄にインク消費することを防止することができる。
本実施形態における空気検知手段は、電極対に限るものではなく、例えば前述したフォトセンサを用いる構成とすることもできる。
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味である。被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。