本発明の圧電アクチュエータの実施の形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は本発明の圧電アクチュエータの実施の形態の一例を示す概略斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示すA−A線で切断した概略断面図、図1(c)は図1(a
)に示すB−B線で切断した概略断面図である。
図1に示す本実施形態の圧電アクチュエータ1は、内部電極および圧電体層が積層された積層体11と、積層体11の少なくとも一方の主面に設けられ、内部電極と電気的に接続された複数の表面電極12と、導電性接合材を介して一方の主面に一部が接合され、複数の表面電極12と電気的に接続された配線導体131を備えたフレキシブル基板13とを含み、積層体11の一方の主面における複数の表面電極12が設けられた領域にはそれぞれ他の部位よりも***した***部15がある。
本例の圧電アクチュエータ1を構成する積層体11は、内部電極および圧電体層が積層されて板状に形成されてなるものである。複数の内部電極が積層方向に重なっている活性部とそれ以外の複数の内部電極が積層方向に重なっていない不活性部とを有している。携帯端末のディスプレイまたは筐体に取り付ける圧電アクチュエータの場合には、積層体11は例えば長尺状に形成され、この積層体11の長さとしては、例えば18mm〜28mmが好ましく、22mm〜25mmが更に好ましい。積層体11の幅は、例えば1mm〜6mmが好ましく、3mm〜4mmが更に好ましい。積層体11の厚みは、例えば0.2mm〜1.0mmが好ましく、0.4mm〜0.8mmが更に好ましい。なお、図に示す例では、積層体11は平面視が長方形の板状に形成されたものとなっているが、この形状に限定されず、例えば平面視で正方形、長方形、円形などの形状の板状体とされたものでもよい。
積層体11を構成する内部電極は、圧電体層を形成するセラミックスと同時焼成により形成されたもので、第1の電極および第2の電極からなる。例えば、第1の電極がグランド極となり、第2の電極が正極または負極となる。圧電体層と交互に積層されて圧電体層を上下から挟んでおり、積層順に第1の電極および第2の電極が配置されることにより、それらの間に挟まれた圧電体層に駆動電圧を印加するものである。なお、積層体11が例えば平面視の形状が長方形の板状体の場合、第1の電極となる内部電極171は例えば図2(a)に示すように平面視で長方形状に形成される。また、この場合において、一方主面側に配置された第2の電極となる内部電極172は、例えば図2(b)に示すように平面視で長方形状の対向部と対向部よりも幅の狭い引出部とからなる形状に形成され、他方主面側に配置された第2の電極となる内部電極173は、例えば図2(c)に示すように平面視で長方形状の対向部と対向部よりも幅の狭い引出部とからなる形状に形成され、ちょうど一方主面側に配置された第2の電極となる内部電極172を左右反転させた形状とされる。この形成材料として、例えば圧電セラミックスとの反応性が低い銀や銀−パラジウム合金を主成分とする導体、あるいは銅、白金などを含む導体を用いることができるが、これらにセラミック成分やガラス成分を含有させてもよい。
図示しないが、第1の電極および第2の電極の端部がそれぞれ積層体11の対向する一対の側面に互い違いに導出されている。携帯端末のディスプレイまたは筐体に取り付ける圧電アクチュエータの場合には、内部電極の長さは、例えば17mm〜25mmが好ましく、21mm〜24mmが更に好ましい。内部電極の幅は、例えば1mm〜5mmが好ましく、2mm〜4mmが更に好ましい。内部電極の厚みは、例えば0.1〜5μmが好ましい。
積層体11を構成する圧電体層は、圧電特性を有するセラミックスで形成されたもので、このようなセラミックスとして、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)からなるペロブスカイト型酸化物、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などを用いることができる。圧電体層の1層の厚みは、低電圧で駆動させるために、例えば0.01〜0.1mmに設定することが好ましい。また、大きな屈曲振動を得るために、200pm/V以上の圧電定数d31を有することが好
ましい。
積層体11の少なくとも一方の主面には、内部電極と電気的に接続された複数の表面電極12が設けられている。図に示す表面電極12は、例えば大きな面積の第1の表面電極121、小さな面積の第2の表面電極122および第3の表面電極123で構成されている。そして、例えば、第1の表面電極121は第1の電極となる内部電極171と電気的に接続され、第2の表面電極122は一方主面側に配置された第2の電極となる内部電極172と電気的に接続され、第3の表面電極123は他方主面側に配置された第2の電極となる内部電極173と電気的に接続されている。
携帯端末のディスプレイまたは筐体に取り付ける圧電アクチュエータの場合には、第1の表面電極121の長さは、例えば17mm〜23mmが好ましく、19mm〜21mmが更に好ましい。第1の表面電極121の幅は、例えば1mm〜5mmが好ましく、2mm〜4mmが更に好ましい。第2の表面電極122および第3の表面電極123の長さは、例えば1mm〜3mmとするのが好ましい。第2の表面電極122および第3の表面電極123の幅は、例えば0.5mm〜1.5mmとするのが好ましい。また、内部電極171の長さは、例えば17mm〜23mmが好ましく、19mm〜21mmが更に好ましい。内部電極171の幅は、例えば1mm〜5mmが好ましく、2mm〜4mmが更に好ましい。内部電極172および内部電極173における引出部の長さは、例えば1mm〜3mmとするのが好ましい。内部電極172および内部電極173における引出部の幅は、例えば0.5mm〜1.5mmとするのが好ましい。
また、本例の圧電アクチュエータ1は、導電性接合材を介して一方の主面に一部が接合され、複数の表面電極12と電気的に接続された配線導体131を備えたフレキシブル基板13を含んでいる。
具体的には、フレキシブル基板13は、例えば樹脂製のベースフィルム132における積層体11に面する側の主面に複数本(例えば2本)の配線導体131が設けられたフレキシブルなプリント配線基板であり、この配線導体131が導電性接合材を介して表面電極12と電気的に接続されている。なお、配線導体131の一部を覆うようにカバーフィルム133が設けられてもよい。ここで、カバーフィルム133は配線導体131の表面電極12との接続部を除く領域に設けられていればよいが、積層体11と重なる領域およびその近傍領域はカバーフィルム133が設けられていないことで、カバーフィルム133の厚みによる影響を受けることなく、確実な電気的接続が得られる。このフレキシブル基板13は、例えば一方の端部で積層体11と接合され、他方の端部で外部回路(コネクタ)と接合されている。
導電性接合材としては、導電性接着剤やはんだ等が用いられるが、好ましくは導電性接着剤であるのがよい。例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、あるいは合成ゴムなどの樹脂中に金、銅、ニッケル、または金メッキした樹脂ボールなどからなる導体粒子を分散させてなる導電性接着剤を用いることで、はんだに比べて振動によって生じる応力を低減することができるためである。
より好ましくは、導電性接着剤の中でも図に示すような異方性導電接着剤14であるのがよい。異方性導電接着剤14は、電気的接合を担う導電粒子141と接着を担う樹脂接着剤142とからなる。具体的には、一つの導電粒子141が表面電極12と配線導体131とに接している。この異方性導電接着剤14は、厚み方向には導通が取れ、面内方向には絶縁が取れるため、狭ピッチの配線においても異極の表面電極間で電気的にショートすることがなく、フレキシブル基板13との接続部をコンパクトにすることができる。
ここで、積層体11の一方の主面における複数の表面電極12が設けられた領域にはそれぞれ他の部位よりも***した***部15がある。ここで、***部15は、他の部位(***していない周囲の領域)より例えば0.1〜100μm高くなっている領域である。***部15は複数の表面電極12(第1の表面電極121、第2の表面電極122および第3の表面電極123)のそれぞれの面積に対して例えば2%以上の面積の領域に設けられる。また、***部15は、他の部位(***していない周囲の領域)から遠ざかるにつれて徐々に***していくような形状(頂点を有するような凸状)であってもよく、最も高くなっている部位(頂点)が一つまたは複数あってもよい。
この構成により、振動によりフレキシブル基板13をはがすような応力が加わっても、***部が変形することによって、その応力を緩和することができる。また、振動の伝達を抑制する効果も得られる。その結果、長期間にわたってスパークを生じさせず、積層体の変位量を安定させることができる。
ここで、導電性接合材が異方性導電接着剤14であることで、それぞれの表面電極12が設けられた領域にある***部15の頂点付近に導電粒子141が挟まれ、表面電極12および配線導体131のそれぞれに導電粒子141が食い込み易くなり、確実な接続が得られる。また、導電粒子141がつぶれて断面積が増えるため、接触抵抗を低下させることができる。その結果、よりスパークを生じさせず、積層体11の変位量を安定させることができる。
また、図3に示すように、近接する表面電極12と表面電極12との間に凹部16があるのが好ましい。ここで、凹部16は、他の部位(凹んでいない周囲の領域)より例えば0.1〜100μm凹んでいる領域である。凹部111を設けることで、導電性接合材として導電性接着剤を用いた場合に、当該導電性接着剤の厚みが増えるので、より応力を緩和することができ、より長期間にわたってスパークを生じさせず、積層体の変位量を安定させることができる。特に、異方性導電接着剤14を用いた場合に、凹部16の上方における導電性接着剤の樹脂の比率を多くすることができ、さらに効果的である。
また、図4に示すように、導電性接合材(導電性接着剤、特に異方性導電接着剤14)が積層体11とフレキシブル基板13との重なる領域からはみ出しているのが好ましく、はみ出した部分がフレキシブル基板13と接合したり積層体11の側面と接合したりすることで、接合力を増すことができるとともに更に応力を緩和することができる。なお、0.02〜2mmはみ出ているのが効果的であり、特にカバーフィルム133まで達しているのが、配線導体131を保護する効果も加わる点で、好ましい。
また、図5に示すように、フレキシブル基板13が***部15に沿って変形しているのが好ましい。フレキシブル基板13が***部15に沿って変形していることで、応力を異なる方向に分散させることができる。また、***部15を更に変形し易くすることができる。したがって、応力を更に緩和するとともに、フレキシブル基板13の剥がれを進展し難くすることができる。
なお、積層体11の他方の主面を平坦にしておくことにより、例えば振動を加える対象物(例えば後述する振動板など)に他方の主面を貼り合わせたときに、振動を加える対象物と一体となって屈曲振動を起こしやすくなり、全体として屈曲振動の効率を上げることができる。
また、本例の圧電アクチュエータ1は、いわゆるバイモルフ型の圧電アクチュエータであって、表面電極12から電気信号が入力されて一方の主面および他方の主面が屈曲面となるように屈曲振動するものであるが、本発明の圧電アクチュエータとしては、バイモル
フ型に限られず、ユニモルフ型であってもよく、例えば後述する振動板に積層体11の他方の主面を接合する(貼り合わせる)ことで、ユニモルフ型でも屈曲振動させることができる。
次に、本実施の形態の圧電アクチュエータ1の製造方法について説明する。
まず、圧電体層となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系,ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合してセラミックスラリーを作製する。そして、ドクターブレード法、カレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、このセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製する。圧電セラミックスとしては圧電特性を有するものであればよく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)からなるペロブスカイト型酸化物等を用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。
次に、内部電極となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀−パラジウム合金の金属粉末にバインダーおよび可塑剤を添加混合することによって導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを上記のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法を用いて内部電極のパターンで塗布する。さらに、この導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層する。
ここで、積層体11の一方の主面における複数の表面電極12が設けられた領域にそれぞれ他の部位よりも***した***部15があるようにするには、例えば、表面電極12と重なる領域に部分的にセラミックグリーンシートを積層したり、部分的にセラミックペーストを塗布したり、部分的に内部電極の引出部が多く重なるようなパターンに形成したりすることにより、この部位のセラミックグリーンシート積層体の厚みを厚くするように積層したうえで、一方主面側に弾性に富むシート状体を配置するとともに反対の他方主面側に板状体を配置してこれらでセラミックグリーンシート積層体を挟み、加圧密着させる方法が挙げられる。また、積層体11に他の部位より凹んだ凹部16があるようにするには、例えばこの部分だけ凹部16の形状にくり抜いたグリーンシートを積層したり、部分的に内部電極が少なく重なるようなパターンに形成したりしたうえで、一方主面側に弾性に富むシート状体を配置するとともに反対の他方主面側に板状体を配置してこれらでセラミックグリーンシート積層体を挟み、加圧密着させる方法が挙げられる。この方法により、一方主面側に***部15や凹部16を形成することができる。
その後、所定の温度で脱バインダー処理を行なった後、900〜1200℃の温度で焼成し、平面研削盤等を用いて所定の形状になるよう研削処理を施すことによって、交互に積層された内部電極および圧電体層を備えた積層体を作製する。
積層体は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されるものではなく、内部電極と圧電体層とを複数積層してなる積層体を作製できれば、どのような製造方法によって作製されてもよい。
その後、銀を主成分とする導電粒子とガラスとを混合したものに、バインダー,可塑剤および溶剤を加えて作製した銀ガラス含有導電性ペーストを、表面電極のパターンで積層体の主面および側面にスクリーン印刷法等によって印刷して乾燥させた後、650〜750℃の温度で焼き付け処理を行ない、表面電極を形成する。
なお、表面電極と内部電極とを電気的に接続する場合、圧電体層を貫通するビアを形成して接続しても、積層体の側面に側面電極を形成しても良く、どのような製造方法によっ
て作製されてもよい。
次に、導電性接合材として例えば導電性接着剤を用いて、フレキシブル基板を積層体に接続固定(接合)する。
まず、積層体の所定の位置に導電性接着剤用ペーストをスクリーン印刷等の手法を用いて塗布形成する。その後、フレキシブル基板を当接させた状態で導電性接着剤用ペーストを硬化させることにより、フレキシブル基板を圧電素子に接続固定する。なお、導電性接着剤用ペーストは、フレキシブル基板6側に塗布形成しておいてもよい。
導電性接着剤を構成する樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合は、導電性接着剤を積層体またはフレキシブル基板の所定の位置に塗布形成した後、積層体とフレキシブル基板とを導電性接着剤を介して当接させた状態で加熱加圧することで、熱可塑性樹脂が軟化流動し、その後常温に戻すことで、再び熱可塑性樹脂が硬化し、フレキシブル基板が積層体に接続固定される。
特に、導電性接合材として異方性導電接着剤を用いる場合は、近接する導電粒子が接触しないように加圧量を制御する必要がある。
また、上述では、導電性接着剤を積層体またはフレキシブル基板に塗布形成する手法を示したが、予めシート状に形成された積層体のシートを積層体とフレキシブル基板との間に挟んだ状態で加熱加圧して接合してもよい。
本実施形態の圧電振動装置は、図6に示すように、圧電アクチュエータ1と、圧電アクチュエータ1を構成する積層体11の他方の主面に接合された振動板81とを有するものである。なお、積層体11の一方の主面に接合されたフレキシブル基板は図6では省略している。
振動板81は、例えば矩形状の薄板である。振動板81は、アクリル樹脂やガラス等の剛性および弾性が大きい材料を好適に用いて形成することができる。また、振動板81の厚みは、例えば0.4mm〜1.5mmに設定される。
振動板81は、積層体11の他方主面に、接合部材82を介して接合されている。接合部材82を介して、振動板81に他方主面の全面が接合されていてもよく、略全面が接合されていてもよい。
接合部材82は、フィルム状の形状を有している。また、接合部材82は、振動板81よりも柔らかく変形しやすいもので形成されており、振動板81よりもヤング率,剛性率,体積弾性率等の弾性率や剛性が小さい。すなわち、接合部材82は、圧電アクチュエータ1(積層体11)の駆動によって振動板81を振動させたときに変形可能であり、同じ力が加わったときに、振動板81よりも大きく変形するものである。そして、接合部材82の一方主面(図の+z方向側の主面)には積層体11の他方主面(図の−z方向側の主面)が全体的に固着され、接合部材82の他方主面(図の−z方向側の主面)には振動板81の一方主面(図の+z方向側の主面)の一部が固着されている。
変形可能な接合部材82で積層体11と振動板81とを接合することで、圧電アクチュエータ1(積層体11)から振動が伝達されたとき、変形可能な接合部材82が振動板81よりも大きく変形する。
このとき、振動板81から反射される逆位相の振動を変形可能な接合部材82で緩和す
ることができるので、圧電アクチュエータ1(積層体11)が周囲の振動の影響を受けずに振動板81へ強い振動を伝達させることができる。
中でも、接合部材82の少なくとも一部が粘弾性体で構成されていることで、圧電アクチュエータ1(積層体11)からの強い振動を振動板81へ伝える一方、振動板81から反射される弱い振動を接合部材82が吸収することができる点で好ましい。例えば、不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープや、弾性を有する接着剤を含む構成の接合部材を用いることができ、これらの厚みとしては例えば10μm〜2000μmのものを用いることができる。
接合部材82は、単一のものであっても、いくつかの部材からなる複合体であっても構わない。このような接合部材82としては、例えば、不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープや、弾性を有する接着剤である各種弾性接着剤等を好適に用いることができる。また、接合部材82の厚みは、圧電アクチュエータ1(積層体11)の屈曲振動の振幅よりも大きいことが望ましいが、厚すぎると振動が減衰されるので、例えば、0.1mm〜0.6mmに設定される。ただし、本発明の圧電振動装置においては、接合部材82の材質に限定はなく、接合部材82が振動板81よりも固く変形し難いもので形成されていても構わない。また、場合によっては、接合部材82を有さない構成であっても構わない。
このような構成を備える本例の圧電振動装置は、電気信号を加えることによって圧電アクチュエータ1(積層体11)を屈曲振動させ、それによって、振動板81を振動させる圧電振動装置として機能する。なお、振動板81の長さ方向における他方端部(図の−y方向端部や振動板81の周縁部等を、図示せぬ支持部材によって支持しても構わない。
また、本例の圧電振動装置は、積層体11の平坦な他方主面に振動板81が接合されている。これにより、積層体11と振動板81とが強固に接合された圧電振動装置とすることができる。
本例の圧電振動装置は、長期間にわたってスパークが生じず、積層体の変位量が安定する圧電アクチュエータ1を用いて構成されていることから、耐久性に優れ、長期間安定して駆動する圧電振動装置とすることができる。
本実施形態の携帯端末は、図7〜図9に示すように、圧電アクチュエータ1と、電子回路(図示せず)と、ディスプレイ91と、筐体92とを有しており、積層体11の他方主面が筐体92に接合されたものである。なお、図7は本発明の携帯端末を模式的に示す概略斜視図であり、図8は図7に示すA−A線で切断した概略断面図、図9は図7に示すB−B線で切断した概略断面図である。積層体11の一方の主面に接合されたフレキシブル基板は図8および図9では省略している。
ここで、積層体11と筐体92とが変形可能な接合部材を用いて接合されているのが好ましい。すなわち、図8および図9においては接合部材82が変形可能な接合部材である。
変形可能な接合部材82で積層体11と筐体92とを接合することで、圧電アクチュエータ1(積層体11)から振動が伝達されたとき、変形可能な接合部材82が筐体92よりも大きく変形する。
このとき、筐体92から反射される逆位相の振動を変形可能な接合部材82で緩和することができるので、圧電アクチュエータ1(積層体11)が周囲の振動の影響を受けずに
筐体92へ強い振動を伝達させることができる。
中でも、接合部材82の少なくとも一部が粘弾性体で構成されていることで、圧電アクチュエータ1(積層体11)からの強い振動を筐体92へ伝える一方、筐体92から反射される弱い振動を接合部材82が吸収することができる点で好ましい。例えば、不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープや、弾性を有する接着剤を含む構成の接合部材を用いることができ、これらの厚みとしては例えば10μm〜2000μmのものを用いることができる。
そして、本例では、積層体11はディスプレイ91のカバーとなる筐体92の一部に取り付けられ、この筐体92の一部が振動板922として機能するようになっている。
なお、本例では積層体11が筐体92に接合されたものを示したが、積層体11がディスプレイ91に接合されていてもよい。
筐体92は、1つの面が開口した箱状の筐体本体921と、筐体本体921の開口を塞ぐ振動板922とを有している。この筐体92(筐体本体921および振動板922)は、剛性および弾性率が大きい合成樹脂等の材料を好適に用いて形成することができる。
振動板922の周縁部は、筐体本体921に接合材93を介して振動可能に取り付けられている。接合材93は、振動板922よりも柔らかく変形しやすいもので形成されており、振動板922よりもヤング率,剛性率,体積弾性率等の弾性率や剛性が小さい。すなわち、接合材93は変形可能であり、同じ力が加わったときに振動板922よりも大きく変形する。
接合材93は、単一のものであっても、いくつかの部材からなる複合体であっても構わない。このような接合材93としては、例えば不織布等からなる基材の両面に粘着剤が付着された両面テープ等を好適に用いることができる。接合材93の厚みは、厚くなりすぎて振動が減衰されないように設定されており、例えば0.1mm〜0.6mmに設定される。ただし、本発明の携帯端末においては、接合材93の材質に限定はなく、接合材93が振動板922よりも固く変形し難いもので形成されていても構わない。また、場合によっては、接合材93を有さない構成であっても構わない。
電子回路(図示せず)としては、例えば、ディスプレイ91に表示させる画像情報や携帯端末によって伝達する音声情報を処理する回路や、通信回路等が例示できる。これらの回路の少なくとも1つであってもよいし、全ての回路が含まれていても構わない。また、他の機能を有する回路であってもよい。さらに、複数の電子回路を有していても構わない。なお、電子回路と圧電アクチュエータ1とは図示しない接続用配線で接続されている。
ディスプレイ91は、画像情報を表示する機能を有する表示装置であり、例えば、液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ,および有機ELディスプレイ等の既知のディスプレイを好適に用いることができる。なお、ディスプレイ91は、タッチパネルのような入力装置を有するものであっても良い。また、ディスプレイ91のカバー(振動板922)が、タッチパネルのような入力装置を有するものであっても構わない。さらに、ディスプレイ91全体や、ディスプレイ91の一部が振動板として機能するようにしても構わない。
また、本実施形態の携帯端末は、ディスプレイ91または筐体92が、耳の軟骨または気導を通して音情報を伝える振動を生じさせることを特徴とする。本例の携帯端末は、振動板(ディスプレイ91または筐体92)を直接または他の物を介して耳に接触させて、
耳の軟骨に振動を伝えることによって音情報を伝達することができる。すなわち、振動板(ディスプレイ91または筐体92)を直接または間接的に耳に接触させて、耳の軟骨に振動を伝えることによって音情報を伝達することができる。これにより、例えば、周囲が騒がしいときにおいても音情報をクリアに伝達することができ、難聴者でも音声を認識することが可能な携帯端末を得ることができる。なお、振動板(ディスプレイ91または筐体92)と耳との間に介在する物は、例えば、携帯端末のカバーであっても良いし、ヘッドホンやイヤホンでも良く、振動を伝達可能な物であればどんなものでも構わない。また、振動板(ディスプレイ91または筐体92)から発生する音を空気中に伝播させることにより、音情報を伝達するような携帯端末であっても構わない。さらに、複数のルートを介して音情報を伝達するような携帯端末であっても構わない。
本例の携帯端末は、長期間にわたってスパークが生じず、積層体の変位量が安定する圧電アクチュエータ1を用いて構成されていることから、耐久性に優れ、長期間にわたって安定して高品質な音情報を伝達することができる。
また、本実施形態の音響発生器10は、図10に示すように、上述の圧電アクチュエータ1と、圧電アクチュエータ1が取り付けられており、圧電アクチュエータ1の振動によって圧電アクチュエータ1とともに振動する振動板2と、振動板2の外周部に設けられた枠体3とを有するものである。
圧電アクチュエータ1は、電圧の印加を受けて振動することによって振動板2を励振する励振器である。圧電アクチュエータ1の主面と振動板2の主面とがエポキシ系樹脂等の接着剤により接合され、圧電アクチュエータ1が屈曲振動することにより、圧電アクチュエータ1が振動板2に一定の振動を与えて音を発生させることができる。
振動板2は、張力がかかっている状態でその周縁部が枠体3に固定されていて、圧電素子アクチュエータ1の振動によって圧電アクチュエータ1とともに振動するようになっている。この振動板2は樹脂や金属等の種々の材料を用いて形成することができ、例えば厚さ10〜200μmのポリエチレン、ポリイミド、ポリプロピレン等の樹脂フィルムで振動板2を構成することができる。樹脂フィルムは金属板などに比べて弾性率および機械的なQ値の低い材料であるため、振動板2を樹脂フィルムにより構成することで、振動板2を大きな振幅で屈曲振動させ、音圧の周波数特性における共振ピークの幅を広く、高さを低くして共振ピークとディップとの差を低減することができる。
枠体3は、振動板2の周縁部で振動板2を支持する支持体として機能し、例えばステンレスなどの金属、樹脂など種々の材料を用いて形成することができる。この枠体3は、図10(b)に示すように一つの枠部材(上枠部材31)からなるものでもよく、図10(c)に示すように二つの枠部材(上枠部材31および下枠部材32)からなるものでもよい。この場合、二つの枠部材で振動板2を挟むことで、振動板2の張りを安定させることができる。なお、上枠部材31および下枠部材32は、それぞれの厚みが例えば100〜5000μmとされる。
本例の音響発生器10においては、図10(b)および図10(c)に示すように、圧電アクチュエータ1から振動板2の表面の少なくとも圧電アクチュエータ1の周辺部までを覆うように設けられた樹脂層4をさらに有するのが好ましい。樹脂層4としては、例えばアクリル系樹脂を用いることができる。かかる樹脂層4に圧電アクチュエータ1(積層体11)を埋設することで適度なダンパー効果を誘発させることができるので、共振現象を抑制して、音圧の周波数特性におけるピークやディップを小さく抑えることができる。なお、図10(b)および図10(c)に示すように、樹脂層4は上枠部材31と同じ高さとなるように形成されていてもよい。
このような音響発生器10は、上述したように長期間にわたってスパークが生じず、積層体の変位量が安定する圧電アクチュエータ1を用いて構成されていることから、耐久性に優れ、長期間安定して駆動することができる。
次に、音響発生器を搭載した電子機器について、図11を用いて説明する。図11は、実施形態に係る電子機器50の構成を示す図である。なお、両図には、説明に必要となる構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
図11に示すように、本例の電子機器50は、音響発生器10と、音響発生器10に接続された電子回路60と、電子回路60および音響発生器10を収容する筐体40とを備え、音響発生器10から音響を発生させる機能を有する。
電子機器50は、電子回路60を備える。電子回路60は、たとえば、コントローラ50aと、送受信部50bと、キー入力部50cと、マイク入力部50dとから構成される。電子回路60は、音響発生器10に接続されており、音響発生器10へ音声信号を出力する機能を有している。音響発生器10は電子回路60から入力された音声信号に基づいて音響を発生させる。
また、電子機器50は、表示部50eと、アンテナ50fと、音響発生器10とを備える。また、電子機器50は、これら各デバイスを収容する筐体40を備える。なお、図11では、1つの筐体40にコントローラ50aをはじめとする各デバイスがすべて収容されている状態をあらわしているが、各デバイスの収容形態を限定するものではない。本実施形態では、少なくとも電子回路60と音響発生器10とが、1つの筐体40に収容されていればよい。
コントローラ50aは、電子機器50の制御部である。送受信部50bは、コントローラ50aの制御に基づき、アンテナ50fを介してデータの送受信などを行う。キー入力部50cは、電子機器50の入力デバイスであり、操作者によるキー入力操作を受け付ける。マイク入力部50dは、同じく電子機器50の入力デバイスであり、操作者による音声入力操作などを受け付ける。表示部50eは、電子機器50の表示出力デバイスであり、コントローラ50aの制御に基づき、表示情報の出力を行う。
そして、音響発生器10は、電子機器50における音響出力デバイスとして動作する。なお、音響発生器10は、電子回路60のコントローラ50aに接続されており、コントローラ50aによって制御された電圧の印加を受けて音響を発することとなる。
なお、図11では、電子機器50が携帯用端末装置であるものとして説明を行ったが、電子機器50の種別を問うものではなく、音響を発する機能を有する様々な民生機器に適用されてよい。たとえば、薄型テレビやカーオーディオ機器は無論のこと、「話す」といった音響を発する機能を有する製品、例を挙げれば、掃除機や洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなどといった種々の製品に用いられてよい。
このような電子機器50は、上述したように長期間にわたってスパークが生じず、積層体の変位量が安定する圧電アクチュエータ1を用いた音響発生器10を含む構成とされていることから、耐久性に優れ、長期間安定して駆動することができる。
本発明の圧電アクチュエータの具体例について説明する。具体的には、図1に示す圧電アクチュエータを以下に示すように作製した。
圧電素子は、長さが23.5mmで、幅が3.3mmで、厚みが0.5mmの直方体状とした。また、圧電素子は、厚みが30μmの圧電体層と内部電極とが交互に積層された構造とし、圧電体層の総数は16層とした。圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛で形成した。内部電極は、銀パラジウムの合金を用いた。
銀パラジウムからなる導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを積層した。ここで、表面電極の***部を設けようとする部位のセラミックグリーンシート積層体厚みを厚くしたうえで、一方主面側を弾性に富むシート状体で、反対の他方主面側を板状体で挟み、加圧密着させることで***部を設けた。その後、所定の温度で脱脂を行った後、1000℃で焼成を行い、積層焼結体を得た。
表面電極を介して、内部電極間(第1の電極と第2の電極との間)に、2kV/mmの電界強度の電圧を印加し、圧電体層に分極を施した。
その後、フレキシブル基板と接合する積層体の表面に、導電粒子として金メッキした樹脂ボールを10vol%含んだ導電性接着剤を塗布形成した。
その後、フレキシブル基板を当接させた状態で加熱加圧することで、フレキシブル基板を固定し、本発明実施例の圧電アクチュエータ(試料No.1)を作製した。なお、上述の導電性接着剤としては、厚み方向には導通し、面内方向には導通しない異方性導電接着剤を用いた。
また、比較例として、セラミックグリーンシート積層体を平坦な板で挟み込んで加熱圧着し、表面が平坦な表面電極を得たこと以外は、上述の試料No.1と同じ構成である本発明の範囲外の圧電アクチュエータ(試料No.2)を作製した。
そして、それぞれの圧電アクチュエータについて、フレキシブル基板を介して、圧電素子に1kHzの周波数で、実効値±10Vrmsの正弦波信号を印加し、駆動試験を行ったところ、試料No.1、2とも、100μmの変位量を有する屈曲振動が得られた。
その後、実効値±10Vrmsの正弦波信号を10万サイクル連続で加えて駆動試験を行った。本発明の範囲外である試料No.2は変位量低下が発生し、9万サイクルでフレキシブル基板が積層体から剥がれてしまっていた。
一方、本発明実施例の試料No.1の圧電アクチュエータは、10万サイクルを経た後でも、変位量低下が発生することなく駆動を続けていた。また、フレキシブル基板を接続固定している導電性接着剤にクラックや割れ等は見られず、フレキシブル基板の剥がれは見られなかった。
本発明の圧電アクチュエータを用いることで、スパークも生じず、変位量が安定し、また、長期連続駆動した場合でも、フレキシブル基板が積層体から剥離するといった問題が生じることもなく、優れた耐久性が確認できた。