以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
この実施形態の椅子は、図1に示すように、脚体1の上方に座2を、座2の後方に背3を起立して配し、これらの座2及び背3を脚体1によって回転自在に支持させた回転椅子として構成したものである。
ここで、本願実施形態では方向を示す場合に、上下方向、前後方向、左右方向との語を用い、それぞれ図1のように起立した椅子を基準とした場合の一般の方向の呼びかたと同様、それぞれ鉛直方向(図中のZ方向)、背3に略垂直となる方向(図中のX方向)、上下方向及び前後方向に垂直となる方向(図中のY方向)を指す。
椅子の構成について具体的に説明すると、脚体1は、放射状に延び先端にキャスター11aを備えた5本の脚羽根11〜11の中心部に脚支柱12を回転可能に支持させてなるものであり、図2に示すように脚支柱12の上端12aには、背3や座2を支持するための基礎となる支持基部13が設けられている。脚支柱12は、内部にガススプリング(図示せず)が組み込まれており、これを操作することで脚支柱12の上端12aは支持基部13とともに昇降可能となっている。
支持基部13は、アルミダイキャスト等の剛体によって構成され、脚支柱12より前方のやや上方に向かって延在し、その先端13aが座受21の前部21aを支持している。座受21の上部には、内部にクッションを備える座面22が設けられており、これらによって座2が構成されている。
また、支持基部13は脚支柱12の左右の位置において、金属フレームによって構成された背支杆14を回転自在に支持しており、この背支杆14は後上方に向かって延在され、その先端14aには枠体としての背枠31が設けられている。さらには、背支杆14が支持基部13により支持される位置より先端14aに向かう中途の位置において、前述の座受21の後部21bが回転自在に支持されている。そのため、背枠31と座受21とは、一部の回転支点がスライドしながら支持基部13に対して連動して動作し、所謂シンクロロッキング動作が可能となっている。
背支杆14の内部には、ガススプリング式の反力機構14s(図7参照)が設けられており、背枠31の後傾に対して反力を生じるようになっている。同様に、支持基部13の内部にも反力機構(図示せず)が設けられており、座受21の移動に対して反力を生じるようになっている。また、背支杆14の周囲には、樹脂製のカバー15が複数に分割されて設けられており、上述した反力機構14sとともに背支杆14を覆うように構成している。
背枠31には、後述するように、張材であるメッシュ地38を取り付けるため、外周側を開放された取付溝Gが略全周に亘って形成されており、この取付溝Gにメッシュ地38の縁部38a(図10参照)を挿入することで取り付けることができ、メッシュ地38とともに背3を構成するようになっている。
背枠31は、図2に示すように、全体的にやや後傾して設けられるとともに、下方から上方に向かって湾曲されながら前後方向の寸法が小さくなるようにしている。また、この背枠31には、図1に示すように、オプション部材としてのランバーサポート6が設けられている。ランバーサポート6はメッシュ地38の背面に配されており、着座者が背3にもたれかかった場合に、メッシュ地38を介して腰部を支持することが可能となっている。
この椅子よりメッシュ地38及びランバーサポート6を取外して正面から見た状態を図3に示す。背枠31は、枠本体32と、これに取り付けることで枠本体32と協働して前述の取付溝G(図2参照)を形成する溝形成部材36とによって構成されている。
枠本体32は、上下方向に延在して形成された一対の縦杆33,33と、その上部同士と下部同士をそれぞれ連結する一対の横杆34,35によって構成されており、これらによって中央に略四角形状の開口OPが形成されている。枠本体32は、金型を用いた樹脂一体成形によって成形しているが、アルミ等の金属材料を用いて成形することも可能である。
左右に配置された縦杆33,33は左右対称の形状としているが、上下に配置された横杆34,35は互いに機能が異なることから形状は全く異なるものとなっている。そのため、以下において、上側の横杆は上枠部34、下側の横杆は下枠部35と区別して称する。
正面から見た場合、縦杆33,33同士は上方に向けてやや間隔を狭めながら配置されている。そのため、背3は上方に向かってやや小さくなるように構成される。これらと連結される上枠部34は、中心が上方に向かって凸となるようにやや湾曲して形成されており、縦杆33,33との連結部は滑らかな円弧によって構成されている。下枠部35も縦杆33,33との間で滑らかな曲線により連結されるように形成されており、左右方向両端よりも中央が前後方向の寸法が2倍程度に大きくなるように構成されており(図7参照)、この中央部に前述した背支杆14が接続されている。
縦杆33は、図2に示すように、側面視において、下方から上方に向けて湾曲した部分と傾斜した部分が設けられている。具体的には、下枠部15との連結部の直ぐ上には、支持面である前面33aを前方に向かって凸となるように湾曲させた湾曲部である第1領域R1と、その上方に設定され前面33aを前方に向かって凹となるよう第1領域R1とは逆向きに湾曲させた第2領域R2と、その上方に設定され前面33aを後方に向かって傾斜させた第3領域R3とを備える人間工学的見地に基づく形状とされている。図中で示すように、人間の背骨のラインLBは緩やかなS字カーブを描くものであることから、この縦杆33も側面視においてほぼ同様のカーブを描くようにしている。すなわち、第1領域R1は標準的な体型の人が着座した際の腰部の高さ位置に設定された腰部領域とされるとともに、第2領域R2は上記標準的な体型の人が着座した際の背の高さ位置に設定された背領域とされており、これら腰部領域と背領域が側面視において着座者の背骨の湾曲とほぼ一致する形状となっている。さらに、第3領域R3は、標準的な体型の人の肩の高さ位置に設けられ、着座者の肩より背枠31を離間させる形状にした肩領域となっている。前述したランバーサポート6(図1参照)は第1領域R1に設けられている。
このような縦杆33に対してメッシュ地38を取り付けることで、メッシュ地38を縦杆33の前面33aに沿った形状とすることができる。すなわち、背3における着座者の支持面全体に腰部領域(第1領域R1)、背領域(第2領域R2)、肩領域(第3領域)を形成することができる。そのため、人間工学的見地に基づき、人間の背骨の湾曲に沿って腰部と背を支持し、長時間着座しても疲労が少ない適切な姿勢で身体を保持することができる。また、肩領域においても、人間工学的見地に基づき、肩周りの空間を確保して腕を動かし易くして作業効率を高めることができるとともに、上体を反らしたリラックス時に対応するサポート領域としても利用することが可能となっている。なお、肩領域は肩よりも離間して形成するものであることから、背領域の上方である限り必ずしも肩と同一の高さ位置に設けることまでは要せず、肩よりもやや低い位置に形成した場合でも上述した効果を得ることができる。
ここで、図3のA−A位置、すなわち第2領域R2において縦杆33を切断した際の端面形状を図4に示す。この図に示すように、縦杆33は、メッシュ地38の支持面となる前面33aが前後方向に略直交する平面部として形成されており、全体的に前面33aに対して直交する方向、すなわち後方に向かって延在する形状となっている。さらに、前面33aの外側に連続する外側面33bは後方にいくほど内側に傾斜するように形成されている。前面33aの内側には、後方にいくほど内側に傾斜する逃げ面33cが形成され、この逃げ面33cと連続して、後方にいくほど外側に向かって傾斜する内側面33dが形成されている。そして、内側面33dと外側面33bとの間には後面33eが形成されている。また、これら前面33a、外側面33b、逃げ面33c、内側面33d及び後面33eの大半は隣接するもの同士が滑らかな曲面によってそれぞれ接続されている。前面33aと逃げ面33cとを接続する曲面に逃げ面33cを加えてなる領域は、前面33aより内側に設定され、内側に向かうに従って漸次メッシュ地38より離間する逃げ領域Rcとなっている。
外側面33bのうち前面33aの近傍の位置には前面33aとほぼ平行に、すなわち外周側を開放方向として取付溝33gが形成されており、この取付溝33gに縁部38a(図10参照)を挿入してメッシュ地38を取り付けた場合には、このメッシュ地38は外側面33bより前面33aを経由して内側に向かって張設される。従って、前面33aはメッシュ地38の位置を規制して全体形状の形成に寄与する支持面として機能している。また、支持面である前面33aの内側に逃げ領域Rcが形成されていることから、縦杆33全体の断面積にほとんど影響を与えることなく、すなわち、強度の低下を招くことなく、メッシュ地38の支持領域を減らして、撓みを生じ易くしている。さらには、逃げ面33cは、通常状態ではメッシュ地38と離間しているものの、人がもたれかかることでメッシュ地38が変形した場合に、メッシュ地38と接触して安定性を増すことが可能となっている。
前面33aは一定以上の面積となるようにしており、着座者が左右に体勢をずらした場合に背中に食い込んで不快感や違和感を生じさせることがないようにしている。また、前面33aの内側には、鋭角な角部が生じないように逃げ面33cが形成されることで、身体との接触を和らげるようになっている。そして、上枠部34は、着座者の身体に接触し得る前面と逃げ面33cより後方に向かって、翼断面のようにすぼめられた形状となっている。さらに、後面33eは、前面33aよりも十分に小さく形成されており、より形状の特徴が顕著に表れるようにしている。また、逃げ面33cを形成することなく、内側面33cと前面33aとを延長させたより単純な形状を想定した場合、断面視略三角形状になっているということもできる。縦杆33は、このような断面形状とすることで左右寸法L1よりも前後寸法L2を大きく(本実施形態ではほぼ2倍程度に)するようにしている。材料の使用量、強度及びデザインの観点からすると、前後寸法L2は左右寸法L1の1.5倍以上3倍以下とすることが好ましい。上記のような寸法の関係にしていることから、正面視においてメッシュ地38を介して縦杆33の見える部分が少なく、より洗練した印象を与えることが可能となっている。また、縦杆33には、主として、着座者が後方にもたれかかることによる後方への荷重が作用することから、前後寸法L2を大きくすることによって後方への荷重に対する強度を確保することが可能となっている。
換言すれば、縦杆33については、受圧面として機能する前面33a及び逃げ面33cや、張材取付箇所として機能する溝33gが形成された前半部の前後寸法に対して、逆三角形にすぼませた形状をなす後半部についてもほぼ同じかそれ以上の肉厚寸法を確保している。
縦杆33は、第2領域R2のみならず、第1領域R1を含め、上下方向に沿ってほぼ同一の形状をしている。すなわち、左右方向の寸法(左右寸法L1)よりも前後方向の寸法(前後寸法L2)が小さく形成されていることから、材料を削減しながら、上述した第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3を適切に形成することが可能となっている。
そして、上述したように、上部に行くに従って前後寸法L2が小さく(本実施形態では約1/2程度に)なるように構成されているが、左右寸法L1はほとんど変化しないようにしている(図3参照)。下部の前後寸法L2に対する上部の前後寸法の割合は、30〜60%程度にすることが好ましい。上記のような寸法関係にしていることから、正面視において上部と下部で縦杆33の寸法はほとんど変化していないように見え、安定した印象を与えることができる(図2参照)。また、着座者がもたれかかることによって生じる後方への荷重による曲げモーメントは、縦杆33の下側ほど大きく上側ほど小さくなるため、上述したように上部に向かって前後寸法L2を小さくするようにしても強度が不足することはなく、側面視において上部が細くなった洗練された印象を生じさせるとともに、材料を少なくして製造コストの低減を図ることも可能となっている。
次に、上枠部34の形状について説明を行う。図3のB−B位置において上枠部34を切断した際の断面形状を図5に示す。
この図に示すように、上枠部34は、前面34aが斜め上方に向かう平面部として形成されており、前面34aの上方に連続して後方にいくほど下方に向かって傾斜する上面34bが形成されている。また、前面の下方に連続して後方にいくほど下方に向かって傾斜する逃げ面34cが形成され、この逃げ面34cと連続して、後方にいくほど上方に向かって傾斜する下面34dが形成されている。これら前面34a、上面34b、逃げ面34c及び下面34dは隣接するもの同士が滑らかな曲面によってそれぞれ接続されている。上述した縦杆33(図4参照)と同様、前面34aと逃げ面34cとを接続する曲面に逃げ面34cを加えてなる領域は、前面34aより内側に設定され、内側に向かうに従って漸次メッシュ地38より離間する逃げ領域Rcとなっている。
前面34aと逃げ面34cとを接続する曲面のうち最も前方に突出する部分が、上枠部34の延在方向に沿って前縁Efを構成し、上面34bと下面34dとを接続する曲面のうち最も後方に突出する部分が、上枠部34の延在方向に沿って後縁Erを構成することになる。
上面34bのうち、前後方向の中心位置よりも前方よりの位置、具体的には前面34aの近傍の位置には前面34aとほぼ平行に、すなわち外周側を開放方向として取付溝34gが形成されており、この取付溝34gに縁部38a(図10参照)を挿入してメッシュ地38を取り付けた場合には、メッシュ地38は上面34bより前面34aに沿って延び、縦杆33の上部の形状に沿って斜め下方に向かって配されることになる。
前面34aは、縦杆33の前面33aと同様、メッシュ地38を支持する支持面として機能するものであり、支持面である前面34aの内側に逃げ領域Rcが形成されていることから、上枠部34全体の断面積にほとんど影響を与えることなく、すなわち、強度の低下を招くことなく、メッシュ地38の支持領域を減らして、撓みを生じ易くしている。さらには、前面34aは、一定以上の面積となるようにしており、着座者が身体を反らすようにして背中を上枠部34に当接させた際に、上枠部34が背中に食い込んで不快感や違和感を生じさせることがないようにしている。また、前面34aの下方には、鋭角な角部が生じないように逃げ面34cが形成されることで、身体との接触を和らげるようになっている。そして、上枠部34は、着座者の身体に接触し得る前面34a及び逃げ面34cより後方に向けて翼断面のようにすぼめられた形状となるようにしている。なお、逃げ面34cを設けない単純な形状を想定した場合には、前面34aより後縁Erに向かう断面視略三角形状に形成されているということができる。こうすることで、上下寸法L3よりも前後寸法L4が大きく(本実施形態ではほぼ1.7倍程度に)なるようにしている。材料の使用量、強度及びデザインの観点からすると、前後寸法L4は左右寸法L3の1.4倍以上2.5倍以下とすることが好ましい。上記のような寸法の関係にしていることから、縦杆33と同様、正面視においてメッシュ地38を介して上枠部34の見える部分が少なくより洗練した印象を与えることが可能である上に、主として作用する後方への荷重に対する強度を確保することが可能となっている。
換言すれば、縦杆33と同様、上枠部34も、受圧面として機能する前面34a及び逃げ面34cや、張材取付箇所として機能する溝34gが形成された前半部の前後寸法に対して、逆三角形にすぼませた形状をなす後半部についてもほぼ同じかそれ以上の肉厚寸法を確保している。
上枠部34と縦杆33とは図6に示すように滑らかに連続しており、それぞれに設けられた取付溝34g,33gも連続するように形成されている。そのため、メッシュ地38は、上枠部34と縦杆33にかけて滑らかな面を形成しながら張設される。
次に、下枠部35の形状について説明を行う。下枠部35は、上述した通り背支杆14に接続されることから、図7に示すように、他の縦杆33等に比べて大型に構成されている。下枠部35の下面には、背支杆14がねじ止めされ、その内部には上述した反力機構14sが設けられている。
下枠部35は、上述の開口の周縁の一部を構成する左右方向に延在する上板部35aと、この上板部35aの後部中央に接続され背支杆14を下面に取り付けられる下板部35bと、左右の縦杆33,33より下板部35b及び上板部35aに接続される側板部35c,35cとによって構成されており、互いに滑らかな曲面によって接続されている。これらによって下枠部35は、前方に向かって開放されて開口が略逆台形をなす凹状の内部空間Sを形成している。内部空間Sは、成形上の肉盗みとしても機能しており、材料の削減及び軽量化に寄与している。また、下板部35bは背3全体を支える背支杆14の取付しろを広く確保するために、上板部35aに比べて前後方向の寸法を大きく設定されている。下板部35bは、背支杆14に連続する支持杆としても機能しており、枠本体32と一体に形成されることで、部品点数を削減するとともに、全体の一体感が得られる良好な外観を得ることが可能となっている。こうした点を問題にしなければ、下板部35bや側板部35c,35cを枠本体32とは別に構成することもできる。下枠部35全体としては、縦杆33や上枠部34と同様、上下寸法に比べて前後方向に長い形状とされ、より統一感のある洗練性された優れた意匠性を与えるものとなっている。
ただし、縦杆33や上枠部34とは異なり、下板部35bや側板部35cに外周側を開放方向とする取付溝Gを形成したとしても、メッシュ地38は背支杆14と干渉するために取付けを行うことができなくなる。そのため、下枠部35のうち上板部35aの下方に外周側を開放方向とする取付溝35gを形成し、縦杆33や上枠部34の取付溝33g,34gと連続させる構成とすることが考えられる。しかしながら、下枠部35は上述したように前方に向かって開放された内部空間Sが形成されるものとしていることから、この下枠部35を金型を用いて成形した場合、その金型の抜き方向は前後方向に設定することになる。そのため、下方を下板部35bによって覆われた、すなわち外周側より見て下板部35bによってオーバーラップされた位置にある上板部35aには、スライド型を用いたとしても取付溝Gを形成することは困難である。上記の点について、取付溝Gを中心とする位置関係に着目した場合、メッシュ地38を取り付けるために下枠部35に形成する取付溝35gをその開口方向(外周方向)に延長した面と交差する位置に別の構造である下板部35bが一体に設けられているものとみることができる。
そこで、本実施形態においては、図8に示すように、下枠部35の内部空間Sにおいて上板部35aに沿って溝形成部材36を取り付けることで、取付溝35g(図9参照)を形成することが可能となっている。内部空間Sは、溝形成部材36に対して大きく開放されていることから、取付作業も容易に行うことが可能である。溝形成部材36は、上板部35aに沿った平板状の部材であり、貫通孔36aが左右方向に離間した5箇所の位置に形成されている。そして、この貫通孔36aと下枠部35に形成されたねじ孔35d1とを利用してねじ止めすることで枠本体32とともに枠体である背枠31を構成する。
具体的には、図9に示すように、上板部35aには後方向に凹ませて形成した段差部35dを設け、この段差部35dに上述したねじ孔35d1を形成している。そして、段差部35dの下側には、さらに凹ませて形成した凹部35eを設けている。そして、上記段差部35dに溝形成部材36を取り付けることによって、凹部35eと溝形成部材36との間で、取付溝35gを形成することが可能になっている。
この取付溝35gは、縦杆33や上枠部34に形成された取付溝33g,34gとともに、開口OPを設けられた背枠31の略全周に亘って形成され、メッシュ地38を取り付けるためのほぼ連続した一個の取付溝Gを構成する。図7に示すように、縦杆33に形成される取付溝33gは下枠部35に近接する位置で途切れており、下枠部35と溝形成部材36とによって形成される取付溝35gとは連続していない。しかしながら、双方の取付溝33g,35gの端部は、互いに延長した場合に連続する位置関係に形成されていることから、ほぼ連続しているものとして考えることができる。もちろん、各部材の形状を変更することにより、完全に取付溝Gが連続するように構成することもできる。
メッシュ地38を取り付けた際には、溝形成部材36は下枠部35とメッシュ地38とによって覆われることになるため、溝形成部材36はほとんど目立つことなく、背枠31を枠本体32と溝形成部材36とに分割して構成してもデザイン性が損なわれることはない。また、背枠31を構成する下枠部35にメッシュ地38が取り付けられることで、背枠31に形成される開口OP全体を覆い、背3全体の統一感を生じさせるとともに、この背3が正面視において座2よりも下側にまで配されるようにしていることから(図3参照)、より高級感のある意匠性を持たせることが可能となっている。
ここで、メッシュ地38は、図10に示すように、背の形状にカットされ取付溝G(図2参照)に挿入する縁部38aには帯状の補強帯39が縫製によって取り付けられている。そのため、メッシュ地38は補強帯39とともに縁部38aを取付溝Gに挿入されることで、しっかりと挿入された位置を保持して、形態を安定させることができるようになっている。縦杆33,33及び上枠部34に対応する部分は、一本の補強帯39を屈曲させながら立体的に縫製して取り付けており、下枠部35に対応する部分にのみ別の補強帯39を取り付けている。双方の補強帯39,39の間は、縦杆33に形成される取付溝33gと下枠部35に設けられた溝35gとの間に位置する部分となり、補強帯39を取り付けない単なる凹部38bとされており、メッシュ地38のほつれ処理のみを行っている。
このようにメッシュ地38を、背枠31のほぼ全周に亘って形成された取付溝Gに挿入することで背枠31の形状に沿って張設して、背3を構成するようにしている。取付溝Gは、各位置において外周側を開放方向として形成されていることから、メッシュ地38の縁部38aを容易に挿入することができ、簡単に取付作業を行うことが可能である。また、メッシュ地38は取付溝Gよりほぼ180°反対の方向に延在することになるため、張力が作用する方向と取付溝Gの開放方向がほぼ反対向きになり、簡単に外れることはない。
また、メッシュ地38を背枠31の取付溝Gに取り付けることで、背3の前面を適切な形状にすることができる。具体的には、図2を用いて上述したように縦杆33は側面視において、下方より、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3が形成されていることから、これに沿った形状にメッシュ地38は起伏や平面を生じながら張設され、簡単に背3全体をこの形状に維持することが可能となっている。そのため、メッシュ地38を背枠31に取り付けた比較的簡単な構造であるにも関わらず、背3の形状を、着座者の体に適した快適なものにすることが可能となっている。
以上のように、本実施形態に係る椅子は、枠体である背枠31とこれに設ける張材としてのメッシュ地38とから構成される構成要素としての背3を備える椅子であって、背枠31は、枠本体32とこの枠本体32とは別体となる溝形成部材36を具備し、背枠31は取付溝Gを略全周に亘って形成され、取付溝Gの一部は枠本体32と溝形成部材36との間で構成されており、取付溝Gに縁部38aを挿入されることでメッシュ地38は背枠31に取り付けられるように構成したものである。
このように構成しているため、背枠31に略全周に亘って形成された取付溝Gに縁部38aを挿入するのみで、メッシュ地38を簡単に取り付けることができる。また、この取付溝Gを、枠本体32のみならず溝形成部材36によっても形成するため、枠本体32の一部である下枠部35の下板部35bを取付溝Gにオーバーラップさせる位置に形成するなど特異な形状にした場合であっても、適切に取付溝Gを形成し、メッシュ地38を取り付けることが可能となっている。さらには、取付溝Gの形成が容易になることから、枠本体32を成形により容易に製作することができるため、製造コストを削減することもできる。
そして、メッシュ地38を背枠31に取り付けることにより、溝形成部材36は背枠31とメッシュ地38とによって覆われるように構成しているため、メッシュ地38を取り付けることで溝形成部材36が露出しないようにできるため、より優れた外観を得ることができる。
また、背3を取付けて支持するための支持杆として機能する下枠部35の下板部35bが、取付溝Gの一部を開口方向に延長した面と交差する位置に配されるとともに、枠本体32の一部として一体的に形成されているため、部品点数を削減してコスト低減を図るとともに、全体の一体感が得られる良好な外観を得ることのできる椅子を提供することが可能となっている。
さらに、枠本体32における下板部35bの内周側に、溝形成部材36を収容可能な内部空間Sが形成されるように構成しているため、溝形成部材36の取付けを容易に行うとともに、内部空間Sを肉盗みとして軽量化を行い、効率よく枠本体32と支持杆とを一体的に形成することが可能となっている。
加えて、メッシュ地38の縁部38aに帯状に形成された補強帯39が設けられており、この補強39帯とともにメッシュ地38の縁部38aが取付溝Gに挿入されるように構成されていることから、メッシュ地38を背枠31に容易且つ適切に取り付けることが可能となっている。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態では、張材としてメッシュ地38を使用していたが、枠体に張設することのできる弾性を有するものであれば、これに限らず織布や、不織布、フィルム等のシート状物等も有効に利用することができる。
また、上述の実施形態では、メッシュ地38を取り付ける取付溝Gの一部の取付溝35gのみを、枠本体32と溝形成部材36の間で形成するようにしていたが、溝形成部材を大きなものとして、枠本体32との間で全ての取付溝Gが形成されるように構成することも可能である。取付溝Gは、外周側以外の方向を開放方向とするようにしてもよい。
さらに、上述の実施形態では、枠本体32に溝形成部材36を取り付けることで取付溝35gを形成した後に、メッシュ地38の縁部38aを挿入することで張設するようにしていたが、溝形成部材36が、メッシュ地38の一部の縁部38aにあらかじめ取り付けられた状態で、メッシュ地38とともに背枠31に取り付けられるように構成することもでき、こうすることで背枠31が複雑な形状をなす場合でも、メッシュ地38の取付を容易に行うことが可能となっている。
加えて、枠本体32と溝形成部材36との間で取付溝35gを形成する構成に代えて、溝形成部材36に直接取付溝Gの一部を形成しておき、枠本体32に取り付ける構成にすることも可能である。
また、上述の実施形態では、椅子の構成要素の一つである背3を枠体である背枠31とメッシュ地38とによって構成していたが、他の構成要素を同様に構成して同一の効果を得ることも可能である。図11(a)は、椅子を構成する構成要素として、座110を座枠111とメッシュ地38とによって構成したものであるが、これ自身を支持する、あるいは、背3などの他の構成要素を支持するための支持杆111aを張り出させ、外周側より見て取付溝Gにオーバーラップする位置、すなわち取付溝Gを開口方向に延長した面と交差する位置に支持杆111aを設けた特異な形状とした場合、支持杆111aの内側に溝形成部材112を設けることで外周側に開口する取付溝Gを略全周に亘って形成し、メッシュ地38を取り付けることで、成形による製造と簡単な取付構造とを両立させることができる。
同様に図11(b)に示すヘッドレスト120の場合でも、枠体121を、支持杆121a〜121c等を部分的に張り出させ、外周側より見て取付溝Gにオーバーラップする位置に設けた特異な形状とした場合でも、この位置に溝形成部材122〜124を設けることで外周側に開口する取付溝Gを略全周に亘って形成することができ、メッシュ地38を取り付けることで同様に構成することができる。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。