JP2015087001A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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金子  豊
良平 豊田
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Abstract

【課題】係合クラッチを噛み合い係合する際、締結ショックの発生を抑制しつつ、締結完了までの時間が長くなることを防止できる自動変速機の制御装置を提供すること。
【解決手段】締結要素として締結時に噛み合い係合する回転同期機構を持つ係合クラッチ8cと、締結時に摩擦係合する摩擦クラッチ9cとを有する自動変速機3と、自動変速機3の変速制御を行う変速制御手段(図4)と、を備えた自動変速機の制御装置において、変速制御手段(図4)は、係合クラッチ8cを締結させ、摩擦クラッチ9cを開放する変速時、摩擦クラッチ9cをスリップ締結し、係合クラッチ8cの入力回転数を所定の同期回転数に合わせてから係合クラッチ8cを締結するまでの間であって、少なくとも回転同期機構が作動しているとき、係合クラッチ8cに入力するクラッチ入力トルクの変動を抑制するトルク変動抑制制御を行う構成とした。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両の駆動系に設けられ、締結要素として回転同期機構を持ち、噛み合い係合する係合クラッチを備えた自動変速機の制御装置に関するものである。
従来、回転同期機構を持ち、噛み合い係合する係合クラッチを備えた自動変速機において、係合クラッチを締結する変速時、係合クラッチの入力側の回転数を制御する回転数制御を行って、係合クラッチの入力側回転数と出力側回転数の差を同期判定回転数範囲内に設定する。そして、この回転数制御を継続したまま、回転同期機構による回転同期を行い、係合クラッチを締結する自動変速機の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005-90604号公報
しかしながら、従来の自動変速機の制御装置では、係合クラッチの入力側回転数を制御する回転数制御を継続したまま、回転同期機構による回転同期を行う。このため、回転同期機構が生じたときに生じる回転同期させるためのトルクと、回転数制御による回転数を目標値に合わせようとするトルクとが干渉することがあり、係合クラッチの噛み合い係合の完了までに時間がかかることがある、という問題が生じていた。
また、回転同期機構により生じるトルクと回転数制御を補償するトルクが干渉することで、係合クラッチの締結時にショックが発生するおそれもあった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、係合クラッチを噛み合い係合する際、締結ショックの発生を抑制しつつ、締結完了までの時間が長くなることを防止できる自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の自動変速機の制御装置は、車両の駆動系に設けられ、締結要素として締結時に噛み合い係合する回転同期機構を持つ係合クラッチと、締結時に摩擦係合する摩擦クラッチとを有する自動変速機と、前記自動変速機の変速制御を行う変速制御手段と、を備えている。
そして、前記変速制御手段は、前記係合クラッチを締結させ、前記摩擦クラッチを開放する変速時、前記摩擦クラッチをスリップ締結し、前記係合クラッチの入力回転数を所定の同期回転数に合わせてから前記係合クラッチを締結するまでの間であって、少なくとも前記回転同期機構が作動しているとき、前記係合クラッチに入力するクラッチ入力トルクの変動を抑制するトルク変動抑制制御を行う。
よって、本発明の自動変速機の制御装置では、変速制御手段により、摩擦クラッチをスリップ締結してから係合クラッチを締結するまでの間であって、少なくとも前記回転同期機構が作動しているとき、この係合クラッチに入力するクラッチ入力トルクの変動を抑制するトルク変動抑制制御が行われる。
ここで、回転同期機構が作動すると、係合クラッチの入出力回転数を同期させようとする回転同期トルクが生じるが、このときトルク変動抑制制御により係合クラッチに入力するクラッチ入力トルクの変動が抑制される。このため、クラッチ入力トルクが回転同期トルクと干渉することを防止できる。
すなわち、回転同期トルクによって係合クラッチが回転同期することで、係合クラッチの入力回転数と所定の同期回転数との間に差異が生じても、クラッチ入力トルクが変動(増大)しないため、回転同期トルクと干渉しない。これにより、回転同期機構による係合クラッチの回転同期をスムーズに行うことができ、係合クラッチを速やかに締結することができる。
また、回転同期トルクとクラッチ入力トルクの干渉を防止することができるので、回転同期機構の作動時のショックの発生を防止することができる。
この結果、締結ショックの発生を抑制しつつ、締結完了までの時間が長くなることを防止できる。
実施例1の自動変速機の制御装置が適用された電気自動車(車両の一例)の駆動系構成と制御系構成を示す全体システム構成図である。 実施例1の変速制御系の詳細構成を示す制御ブロック図である。 実施例1の係合クラッチの説明図であり、(a)は要部断面図を示し、(b)〜(e)はその動作を示す(a)において上方から下方を見下ろした図であり、(b)は噛み合い直前状態を示し、(c)は回転同期途中でチャンファ部接触状態を示し、(d)は回転同期途中でチャンファ部非接触状態を示し、(e)は回転同期終了時を示す。 実施例1の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。 比較例の制御装置を搭載した電気自動車において、ダウンシフト変速時の変速機出力トルク・ダウンシフト要求・モータ回転数・摩擦クラッチ伝達トルク・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・カップリングスリーブ位置・カップリングスリーブ押付力の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の制御装置を搭載した電気自動車において、ダウンシフト変速時の変速機出力トルク・ダウンシフト要求・モータ回転数・摩擦クラッチ伝達トルク・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・カップリングスリーブ位置・カップリングスリーブ押付力の各特性を示すタイムチャートである。 実施例2の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3にて設定する回転数制御時のフィードバックゲイン設定マップ例であり、(a)は差回転数が小さいほど常にフィードバックゲインを小さくする場合を示し、(b)は差回転数が所定値以下のときフィードバックゲインを一定値にする場合を示す。
以下、本発明の自動変速機の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
(実施例1)
まず、構成を説明する。
実施例1における電気自動車(車両の一例)に搭載された自動変速機の制御装置の構成を、「全体システム構成」、「変速制御系の詳細構成」、「変速制御処理構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1の自動変速機の制御装置が適用された電気自動車の駆動系構成と制御系構成を示す。以下、図1に基づき、実施例1の全体システム構成を説明する。
前記電気自動車(車両)の駆動系構成としては、図1に示すように、駆動用モータジェネレータ2と、自動変速機3と、駆動輪14と、を備えている。
前記駆動用モータジェネレータ2は、三相交流の永久磁石型同期モータであり、電気自動車の走行駆動源となる。この駆動用モータジェネレータ2は、モータコントローラ28から図示しないインバータに対し正のトルク(駆動トルク)指令が出力されている時には、強電バッテリ(不図示)からの放電電力を使って駆動トルクを発生する駆動動作をし、駆動輪14を駆動する(力行)。一方、モータコントローラ28からインバータに対し負のトルク(発電トルク)指令が出力されている時には、駆動輪14からの回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電動作をし、発電した電力を強電バッテリの充電電力とする(回生)。
そして、この駆動用モータジェネレータ2のモータ軸は、自動変速機3の変速機入力軸6に接続される。
前記自動変速機3は、変速比の異なる2つのギア対のいずれかで動力を伝達する常時噛み合い式有段変速機であり、減速比の小さなハイギア段(高速段)と減速比の大きなローギア段(低速段)を有する2段変速としている。この自動変速機3は、駆動用モータジェネレータ2から変速機入力軸6及び変速機出力軸7を順次経てモータ動力を出力する際の変速に用いられ、低速段を実現するロー側変速機構8及び高速段を実現するハイ側変速機構9により構成される。ここで、変速機入力軸6及び変速機出力軸7は、それぞれ平行に配置される。
前記ロー側変速機構8は、上記モータ動力の出力に際し、ロー側伝動経路を選択するためのもので、変速機出力軸7上に配置している。このロー側変速機構8は、低速段ギア対(ギア8a,ギア8b)が、変速機入出力軸6,7間を駆動結合するように、変速機出力軸7に対するギア8aの噛み合い係合/開放を行う係合クラッチ8c(締結要素)により構成する。ここで、低速段ギア対は、変速機出力軸7上に回転自在に支持したギア8aと、該ギア8aと噛み合い、変速機入力軸6と共に回転するギア8bと、から構成される。
前記ハイ側変速機構9は、上記モータ動力の出力に際し、ハイ側伝動経路を選択するためのもので、変速機入力軸6上に配置している。このハイ側変速機構9は、高速段ギア対(ギア9a,ギア9b)が、変速機入出力軸6,7間を駆動結合するように、変速機入力軸6に対するギア9aの摩擦締結/開放を行う摩擦クラッチ9c(締結要素)により構成する。ここで、高速段ギア対は、変速機入力軸6上に回転自在に支持したギア9aと、ギア9aに噛み合い、変速機出力軸7と共に回転するギア9bと、から構成される。
前記変速機出力軸7は、ギア11を固定し、このギア11と、これに噛合するギア12とからなるファイナルドライブギア組を介して、ディファレンシャルギア装置13を変速機出力軸7に駆動結合する。さらに、このディファレンシャルギア装置13には、駆動輪14が結合されるドライブシャフト16が連結されている。これにより、変速機出力軸7に達した駆動用モータジェネレータ2のモータ動力がファイナルドライブギア組11,12及びディファレンシャルギア装置13を経て、左右のドライブシャフト16から駆動輪14(なお、図1では一方の駆動輪のみを示した)に伝達されるようにする。
さらに、変速機出力軸7には、ギア11の反対側に、パーキングギア17が固定され、このパーキングギア17と噛み合い可能に図外の変速機ケースに設けられたパーキングポール18が配置される。つまり、Pレンジ位置の選択時、パーキングポール18を、係合クラッチ8cと兼用の第1電動アクチュエータ41によりパーキングギア17に噛み合わせることで、変速機出力軸7が回転しないようにケース固定する。
前記電気自動車の制御系構成としては、図1に示すように、変速コントローラ(自動変速機の制御装置)21、車速センサ22、アクセル開度センサ23、ブレーキストロークセンサ24、前後加速度センサ25、スライダ位置センサ26、スリーブ位置センサ27、モータ回転数センサ33、変速機出力回転数センサ34等を備えている。これに加え、モータコントローラ28と、ブレーキコントローラ29と、統合コントローラ30と、CAN通信線31と、レンジ位置スイッチ32と、を備えている。
前記変速コントローラ21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バックアップメモリ、入出力インターフェース回路を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。この変速コントローラ21では、不図示の変速マップに基づいて変速要求を出力すると共に、係合クラッチ8cが噛み合い係合で摩擦クラッチ9cが開放のローギア段が選択されている状態でハイギア段へアップシフトする際、係合クラッチ8cの開放と摩擦クラッチ9cの摩擦締結による架け替え制御を遂行する。また、係合クラッチ8cが開放で摩擦クラッチ9cが摩擦締結のハイギア段が選択されている状態でローギア段へダウンシフトする際、係合クラッチ8cの噛み合い係合と摩擦クラッチ9cの開放による架け替え制御を遂行する。
さらに、ダウンシフト時には、後述する変速制御処理を実行し、係合クラッチ8cの噛み合い係合を制御する。
前記レンジ位置スイッチ32は、図外のセレクトレバーに対する運転者のセレクト操作により選択された自動変速機3のレンジ位置を検出するスイッチである。検出されるレンジ位置としては、Pレンジ(=パーキングレンジ、非走行レンジ、駐車レンジ)、Nレンジ(=ニュートラルレンジ)、Dレンジ(=ドライブレンジ、前進走行レンジ)、Rレンジ(=リバースレンジ、後退走行レンジ)等を有している。
前記モータ回転数センサ33は、駆動用モータジェネレータ2の出力回転数を検出するセンサであり、ここでは変速機入力軸6の回転数を検出する。すなわち、駆動用モータジェネレータ2の回転数(モータ回転数)は、自動変速機3が有する締結要素(係合クラッチ8c,摩擦クラッチ9c)への入力回転数(以下、「クラッチ入力回転数」という)であり、モータ回転数センサ33によってこのクラッチ入力回転数が検出される。
前記変速機出力回転数センサ34は、自動変速機3の出力回転数を検出するセンサであり、ここでは変速機出力軸7の回転数を検出する。すなわち、変速機出力軸7の回転数は、自動変速機3が有する締結要素(係合クラッチ8c,摩擦クラッチ9c)の出力回転数(以下、「クラッチ出力回転数」という)であり、変速機出力回転数センサ34によって、このクラッチ出力回転数が検出される。
[変速制御系の詳細構成]
図2は、実施例1の変速制御系の詳細構成を示す。図3は、実施例1の係合クラッチの説明図である。以下、図2及び図3に基づき、実施例1の変速制御系の詳細構成を説明する。
前記電気自動車の制御系のうち変速制御系の構成としては、図2に示すように、係合クラッチ8cと、摩擦クラッチ9cと、パーキングギア17と、駆動用モータジェネレータ2と、液圧ブレーキ15と、変速コントローラ21と、を備えている。つまり、係合クラッチ8cと摩擦クラッチ9cと駆動用モータジェネレータ2と液圧ブレーキ15を制御対象とし、条件に応じて変速コントローラ21からの指令により制御する構成としている。
前記係合クラッチ8cは、回転同期機構を持つ噛み合い係合によるクラッチであり、ギア8aに設けたクラッチギア(第1係合部材)8dと、変速機出力軸7に結合したクラッチハブ(第2係合部材)8eと、カップリングスリーブ8fと、を有する(図1を参照)。そして、第1電動アクチュエータ41によりカップリングスリーブ8fをストローク駆動させることで、このカップリングスリーブ8fを介して、クラッチギア8dとクラッチハブ8eは、噛み合い係合/開放する。
なお、変速機入力軸6と共に回転するギア8bにギア8aが噛み合うため、ギア8aに設けたクラッチギア8dは、変速機入力軸6に連結している。すなわち、クラッチギア8dとクラッチハブ8eが噛み合い係合すると、変速機入力軸6と変速機出力軸7が連結される。
この係合クラッチ8cの噛み合い係合と開放は、カップリングスリーブ8fの位置によって決まり、変速コントローラ21は、スリーブ位置センサ27の値を読み込み、カップリングスリーブ8fの位置が噛み合い係合位置又は開放位置になるように第1電動アクチュエータ41に電流を与える第1位置サーボコントローラ51(例えば、PID制御による位置サーボ系)を備えている。そして、カップリングスリーブ8fがクラッチギア8d及びクラッチハブ8eの外周クラッチ歯の双方に噛合した図1に示す噛み合い位置にあるとき、ギア8aを変速機出力軸7に駆動連結する。一方、カップリングスリーブ8fが、図1に示す位置から軸線方向へ変位することでクラッチギア8d及びクラッチハブ8eの外周クラッチ歯の一方と非噛み合い位置にあるとき、ギア8aを変速機出力軸7から切り離す。
さらに、図3に基づいて、係合クラッチ8cの回転同期機構について説明を加える。
前記カップリングスリーブ8fは、両端が開放した円筒形状を呈しており、内周にクラッチギア8d(図1参照)の図示しないクラッチ歯が常時嵌め合わされる複数のスプライン部8faを有している。そして、このカップリングスリーブ8fは、クラッチギア8dのクラッチ歯とスプライン部8faが嵌め合わされた状態を維持しながら、図3(a)において左右方向である軸方向に移動可能に支持されている。ここで、カップリングスリーブ8fの軸方向の移動は、第1電動アクチュエータ41(図2参照)によって押付け力が付与されることにより成される。
前記クラッチハブ8eは、外周に、カップリングスリーブ8fの内周に形成されたスプライン部8faに嵌りこむことが可能な複数のクラッチ歯8eaが形成されている。すなわち、このクラッチハブ8eのクラッチ歯8eaは、カップリングスリーブ8fを介してクラッチギア8dのクラッチ歯(不図示)と噛み合い可能となっている。
さらに、このクラッチハブ8eには、テーパ状のコーン部8ebの外周に、軸方向に移動可能にシンクロナイザリング8gが装着されている。
前記シンクロナイザリング8gは、外周に、カップリングスリーブ8fの複数のスプライン部8faと噛み合い可能な複数のシンクロ歯8gaと、カップリングスリーブ8fに設けられたキー8hが常時噛み合うキー溝8gcと、が形成されている。キー8hとキー溝8gcの間には隙間が設けられ、このシンクロナイザリング8gは、キー8hとキー溝8gcとの間の隙間分だけ、カップリングスリーブ8fに対して回転方向に相対移動可能に構成されている。
次に、係合クラッチ8cにおいて、開放状態から係合締結するときの回転同期機構による同期動作を説明する。
前記係合クラッチ8cでは、開放状態から噛み合い係合する場合、カップリングスリーブ8fによって、シンクロナイザリング8gをクラッチハブ8eに近接するように軸方向に押圧する。これにより、シンクロナイザリング8gとコーン部8ebとの間に摩擦力(以下、「コーントルク」という)が生じ、このコーントルクによりカップリングスリーブ8fとクラッチハブ8eとが同期回転して締結される。
すなわち、第1電動アクチュエータ41(図2参照)によりカップリングスリーブ8fに付与された押付力で、このカップリングスリーブ8fは、図3(a)に示すように、キー8hと共にクラッチハブ8eに近接する方向へ軸方向に移動し、シンクロナイザリング8gをコーン部8ebに押し付ける。
シンクロナイザリング8gがコーン部8ebに押し付けられたとき、両者の間には相対回転が生じているため、シンクロナイザリング8gは、図3(b)に示すキー溝8gcの隙間分だけ回動する。これにより、シンクロナイザリング8gのシンクロ歯8gaのチャンファ部8gbと、カップリングスリーブ8fのスプライン部8faのチャンファ部8fbとが、図3(b)に示すように、軸方向で向き合ったインデックス状態となる。
このインデックス状態からさらにカップリングスリーブ8fをクラッチハブ8e側に変位させると、図3(c)に示すように、両チャンファ部8fb,8gbが接触する。これにより、シンクロナイザリング8gがコーン部8ebをさらに押してコーントルクが増大し、シンクロナイザリング8g及びカップリングスリーブ8fと、クラッチハブ8eと、の同期が行われる。このとき、シンクロナイザリング8gは、スプライン部8faがシンクロ歯8gaと噛み合うように、周方向に回転する。
そして、図3(d)に示すように、カップリングスリーブ8fが、シンクロナイザリング8gの逆テーパ角8gdを越えたら、カップリングスリーブ8fとシンクロナイザリング8gとの回転同期が成立する。
この回転同期が成立すると、シンクロナイザリング8gとコーン部8ebとの間のコーントルクが消滅する一方、カップリングスリーブ8fはキー8hを待機させたままさらに軸方向に移動する。これにより、カップリングスリーブ8fのスプライン部8faが、クラッチハブ8eのクラッチ歯8eaを押し分け、図3(e)に示すように、クラッチハブ8eのクラッチ歯8eaと噛み合い、係合クラッチ8cは係合締結状態となる。
前記摩擦クラッチ9cは、ギア9aと共に回転するドリブンプレート9dと、変速機入力軸6と共に回転するドライブプレート9eと、を有する(図1を参照)。そして、第2電動アクチュエータ42により両プレート9d,9eに押付け力を与えるスライダ9fを駆動することで摩擦締結/開放する。
この摩擦クラッチ9cの伝達トルク容量は、スライダ9fの位置によって決まり、また、スライダ9fはネジ機構となっており、第2電動アクチュエータ42の入力が0(ゼロ)のとき、位置を保持する機構となっている。
変速コントローラ21は、スライダ位置センサ26の値を読み込み、所望の伝達トルク容量が得られるスライダ位置になるように第2電動アクチュエータ42に電流を与える第2位置サーボコントローラ52(例えば、PID制御による位置サーボ系)を備えている。
そして、摩擦クラッチ9cは、変速機入力軸6と一体に回転し、クラッチ摩擦締結のときギア9aを変速機入力軸6に駆動連結し、クラッチ開放のとき、ギア9aと変速機入力軸6の駆動連結を切り離す。
前記パーキングギア17は、Pレンジ位置(非走行レンジ位置)の選択時、係合クラッチ8cと兼用の第1電動アクチュエータ41によりパーキングポール18を噛み合わせることで、変速機出力軸7が回転しないようにケース固定する。すなわち、第1電動アクチュエータ41は、係合クラッチ8cの噛み合い位置と、係合クラッチ8cの非噛み合い位置と、パーキングギア17の噛み合い位置と、の3つの位置の動作を管理する。
前記駆動用モータジェネレータ2は、変速コントローラ21から出力される指令を入力するモータコントローラ28によってトルク制御又は回転数制御される。つまり、モータコントローラ28が、変速コントローラ21からのモータトルク容量指令やトルク上限値指令や入出力回転同期指令を入力すると、これらの指令に基づき、駆動用モータジェネレータ2がトルク制御又は回転数制御される。
前記液圧ブレーキ15は、変速コントローラ21から出力される指令を入力するブレーキコントローラ29からの駆動指令を受ける図外のブレーキ液圧アクチュエータにてブレーキ締結力を増加させるポンプアップ作動が制御される。
[変速制御処理構成]
図4は、実施例1の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示す。以下、図4に基づき、実施例1の変速制御処理構成をあらわす各ステップについて説明する。なお、この処理は、自動変速機3において、摩擦クラッチ9cが締結し、係合クラッチ8cが開放したハイギア段時に、摩擦クラッチを開放し、係合クラッチを締結するローギア段への変速要求であるダウンシフト要求が発生したら行われる。また、この図4に示す変速制御処理は、自動変速機3の変速制御を行う変速制御手段に相当する。
ステップS1では、駆動用モータジェネレータ2の出力トルク(以下、「モータトルク」という)と、係合クラッチ8cのカップリングスリーブ位置(以下、「スリーブ位置」という)と、摩擦クラッチ9cにおける伝達トルク(以下、「摩擦クラッチ伝達トルク」という)を検出し、ステップS2へ進む。
ここで、モータトルクは、駆動用モータジェネレータ2へ出力されるモータトルク指令値から算出する。また、スリーブ位置は、スリーブ位置センサ27により検出する。また、摩擦クラッチ伝達トルクは、スライダ位置センサ26によって検出したスライダ9fの位置と、予め実験により設定したスライダ位置により決まる摩擦クラッチ伝達トルクマップ(図示せず)に基づいて推定する。
ステップS2では、ステップS1でのモータトルク等の検出に続き、摩擦クラッチ伝達トルクを予め設定した所定値低減し、ステップS3へ進む。
ここで、「所定値」とは、摩擦クラッチ伝達トルクがドライバの要求駆動トルクを満足しながらも、摩擦クラッチ9cがスリップ締結する程度とし、任意の値に設定される。なお、ドライバの要求駆動トルクは、アクセル開度から求められる。
ステップS3では、ステップS2での摩擦クラッチ伝達トルクの低減に続き、締結していた摩擦クラッチ9cがスリップ締結になったか否かを判断する。YES(スリップ締結)の場合には、そのときの摩擦クラッチ伝達トルクを維持しつつステップS4へ進む。NO(締結)の場合にはステップS2へ戻る。
ここで、スリップ締結の判断は、摩擦クラッチ9cの入力側の回転数(クラッチギア8dの回転数)と出力側の回転数(クラッチハブ8eの回転数)との差が所定の差回転数になったことで判断する。
また、「摩擦クラッチ伝達トルクを維持する」とはスライダ9fの位置を保持することである。
ステップS4では、ステップS3での摩擦クラッチ9cのスリップ締結との判断に続き、駆動用モータジェネレータ2の目標回転数(以下、「目標モータ回転数」という)を設定し、ステップS5へ進む。
ここで、目標モータ回転数(ω)は、自動変速機3の出力回転数(ω)と、ローギア段の変速比(G)を用いて、下記式(1)に基づいて設定する。また、この目標モータ回転数(ω)は、「所定の同期回転数」に相当する。
ω=G・ω ・・・(1)
なお、自動変速機3の出力回転数(ω)は、変速機出力回転数センサ34により検出する。
また、前回のダウンシフト時において、係合クラッチ8cを締結する際、カップリングスリーブ8fのストロークに伴って実モータ回転数(ω)が変化した場合では、このときの回転数変化分(ωdiv)を上記(1)式に加算し、目標モータ回転数を下記(1)´に基づいて設定する。
ω=G・ω+ωdiv ・・・(1)´
ステップS5では、ステップS4での目標モータ回転数の設定に続き、変速機入力回転数を制御する回転数制御を行い、ステップS6へ進む。
ここで、「変速機入力回転数を制御する回転数制御」とは、自動変速機3の入力回転数である実際のモータ回転数(以下、「実モータ回転数(ω)」という)を、ステップS4にて設定した目標モータ回転数(ω)に一致させることであり、「第1回転数フィードバック制御」に相当する。
さらに、ここでは、モータトルク指令値を下記式(2)により求められるモータトルク(T)とすることで、実モータ回転数(ω)が目標モータ回転数(ω)に一致するように制御する。
なお、上記式(2)における「K」は比例要素のフィードバックゲインであり、「K」は積分要素のフィードバックゲインであり、「s」は微分演算子である。また、実モータ回転数(ω)は、モータ回転数センサ33により検出する。
ステップS6では、ステップS5でのモータトルクによるモータ回転数制御に続き、係合クラッチ8cの回転同期判定がなされたか否かを判断する。YES(回転同期)の場合にはステップS7へ進む。NO(回転非同期)の場合にはステップS5へ戻る。
ここで、回転同期判定は、モータ回転数センサ33により検出した実モータ回転数と、ステップS4にて設定した目標モータ回転数が一致したことで行う。
ステップS7では、ステップS6での回転同期との判断に続き、変速機入力回転数を制御する回転数制御から、モータトルクを制御するトルク制御に切り替え、ステップS8へ進む。
ここで、「モータトルクを制御するトルク制御」とは、係合クラッチ8cに入力するトルク(以下、「クラッチ入力トルク」という)であるモータトルクを、任意に設定する目標値に合わせることであり、クラッチ入力トルクを制御する「トルク制御」に相当する。すなわち、この実施例1では、「モータトルクを制御するトルク制御」により、クラッチ入力トルクの変動を抑制するトルク変動抑制制御を行う。
またここでは、回転数制御からトルク制御へと切り替えた際のモータトルク初期値を、回転同期判定時の摩擦クラッチ伝達トルクに設定する。すなわち、モータトルク(T)を、摩擦クラッチ9cがスリップ締結したと判断したときの摩擦クラッチ伝達トルクと同値とするモータトルク指令値を出力する。
さらにここでは、係合クラッチ8cが締結するまでの間、モータトルク(T)は初期値を維持する。
また、ダウンシフト中に車両が加速又は減速している場合には、目標モータ回転数が車速に応じて変化する。そのため、回転数制御からトルク制御へと切り替えた際のモータトルクを、回転同期判定時の摩擦クラッチ伝達トルクに対し、目標モータ回転数の変化量を実現するためのトルクを加算した値に設定する。
すなわち、下記式(3)に基づいて算出されるモータトルク(T)を実現するモータトルク指令値を出力する。
ステップS8では、ステップS7でのモータトルク制御への切り替えに続き、係合クラッチ8cのカップリングスリーブ8fを第1電動アクチュエータ41によりストローク駆動し、カップリングスリーブ8fを開放位置から噛み合い係合位置へと変位させて係合クラッチ8cを締結し、ステップS9へ進む。
このとき、モータ回転数が実際の係合クラッチ出力側回転数に対してずれていれば、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動し、回転同期トルクであるコーントルクが発生して回転同期する。
なお、このときの第1電動アクチュエータ41のカップリングスリーブ8fをストローク駆動させる押付力(以下、「カップリングスリーブ押付力」という)は、予め設定した所定値とする。
また、カップリングスリーブ8fのストロークに伴って、実モータ回転数(ω)が変化した場合には、この回転数の変化分(ωdiv)を記憶し、次回ダウンシフト時において目標モータ回転数を設定する際に使用する。
ステップS9では、ステップS8での係合クラッチ8cの締結に続き、一般的な変速のトルクフェーズ動作により、摩擦クラッチ9cを開放し、変速を終了してエンドへ進む。
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の自動変速機の制御装置の構成と課題」を説明し、続いて、実施例1の制御装置における「係合クラッチ締結制御作用」を説明する。
[比較例の自動変速機の制御装置の構成と課題]
図5は、比較例の制御装置を搭載した電気自動車において、ダウンシフト変速時の変速機出力トルク・ダウンシフト要求・モータ回転数・摩擦クラッチ伝達トルク・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・カップリングスリーブ位置・カップリングスリーブ押付力の各特性を示すタイムチャートである。以下、図5に基づき、比較例の自動変速機の制御装置の構成と課題を説明する。
比較例の自動変速機の制御装置では、開放状態の係合クラッチ8cを噛み合い係合させ、締結状態の摩擦クラッチ9cを開放させるローギア段への変速時、摩擦クラッチ9cがスリップ締結したら、自動変速機3への入力回転数である駆動用モータジェネレータ2の回転数を制御する。そして、係合クラッチ8cの入力側回転数を回転同期回転数(=係合クラッチ8cの出力側回転数)に一致させ、この回転数制御を維持した状態で係合クラッチ8cを締結する。
すなわち、図5に示す時刻tにおいて、例えばアクセル踏込が生じてダウンシフト要求がONになったら、摩擦クラッチ9cの入出力回転数に差回転が生じ、いわゆるスリップ締結状態になるまで摩擦クラッチ伝達トルクを徐々に低減する。そして、時刻t時点で、摩擦クラッチ9cのスリップ締結を確認したら、駆動用モータジェネレータ2を回転数制御に切り替え、変速機入力回転数(=クラッチ入力側回転数)であるモータ回転数が、目標モータ回転数(=クラッチ出力側回転数)に一致するようにモータトルクを上昇させる。
時刻t時点で、モータ回転数が目標モータ回転数に一致すると、第1電動アクチュエータ41によりカップリングスリーブ8fに噛み合い係合に必要な押付力を付与し、このカップリングスリーブ8fをストローク駆動する。ここで、この比較例の制御装置において、図5に示すように、センサの検出誤差や演算誤差等の影響により、目標モータ回転数が実際の係合クラッチ8cの出力側回転数よりも高い値であるとする。この場合では、カップリングスリーブ8fに押付力が付与された際、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動してコーントルク(回転同期トルク)が発生する。そして、このコーントルクによって、モータ回転数は実際の係合クラッチ出力側回転数に同期するために低減する。
なお、回転同期機構が作動中では、モータ回転数と実際の係合クラッチ出力側回転数との間に差異が生じているため、コーントルクが変速機出力トルクに現れる。
一方、このとき駆動用モータジェネレータ2の回転数制御は継続されている。このため、コーントルクを打ち消して、モータ回転数を目標モータ回転数に一致させようとモータトルクが上昇する。これにより、コーントルクとモータトルクが干渉し、カップリングスリーブ8fが同期完了ポイントに達するまでの時間がかかってしまう。
時刻t時点で、カップリングスリーブ8fが同期完了ポイントに達し、モータ回転数が実際の係合クラッチ出力側回転数に一致してクラッチ差回転がゼロとなる。しかしながら、モータ回転数制御を継続していることによるモータトルクの変動が生じているので、クラッチ差回転がゼロであっても、コーントルクとモータトルクの干渉が生じる。そのため、カップリングスリーブ8fの変位抵抗が大きくなり、カップリングスリーブ8fのストロークが停滞してしまう。また、図5において破線で囲むように、モータトルク変動が変速機出力トルクに現れて変速ショックとなってしまい、ドライバに違和感を与えることとなる。
時刻t時点で、カップリングスリーブ8fがクラッチハブ8eと噛み合ったら、カップリングスリーブ8fは噛み合い係合位置まで次第に変位を開始する。これにより、コーントルクは消滅するものの、このときにもモータ回転数制御は継続しているので、モータトルクは変動し、変速機出力トルクに現れる。また、モータトルクが変動することで、カップリングスリーブ8fの変位抵抗になってしまい、係合クラッチ8cの締結にさらに時間がかかってしまう。
時刻t時点で、カップリングスリーブ8fが噛み合い係合位置に達すると、駆動用モータジェネレータ2はトルク制御に切り替わり、モータトルクはアクセル開度に現れるドライバの要求駆動トルクとなるように制御されて低減を開始する。また、摩擦クラッチ9cは摩擦クラッチ伝達トルクを徐々に低減し、開放する。
さらに、カップリングスリーブ8fが噛み合い係合位置に達したことで、第1電動アクチュエータ41によるカップリングスリーブ押付力はゼロとなる。
時刻t時点で、摩擦クラッチ9cが完全に開放し、変速機入力トルクであるモータトルクが、係合クラッチ8cの伝達トルクと一致すれば、ロー変速段への変速が完了する。
このように、比較例の自動変速機の制御装置では、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動している間もモータ回転制御を継続している。これにより、回転同期機構が作動したことで生じる回転同期するためのコーントルクと、モータ回転数を目標モータ回転数に合わせようとするモータトルクとが干渉する。この結果、係合クラッチ8cを締結する際に時間がかかる上、変速ショックが発生してしまっていた。
[係合クラッチ締結制御作用]
図6は、実施例1の制御装置を搭載した電気自動車において、ダウンシフト変速時の変速機出力トルク・ダウン変速要求・モータ回転数・摩擦クラッチ伝達トルク・モータトルク・係合クラッチ伝達トルク・カップリングスリーブ位置・カップリングスリーブ押付力の各特性を示すタイムチャートである。以下、図6に基づき、実施例1の係合クラッチ締結制御作用を説明する。
実施例1の制御装置が適用された車両において、摩擦クラッチ9cが締結し係合クラッチ8cが開放しているハイ変速段での走行時、図6に示す時刻t11において例えばアクセル踏込が生じると、ダウンシフト要求がONになる。これにより、図4に示すフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進み、摩擦クラッチ伝達トルクを徐々に低減し、摩擦クラッチ9cを入出力回転数に差回転が生じたいわゆるスリップ締結状態とする。
時刻t12時点で、摩擦クラッチ9cがスリップ締結状態となったことを判定したら、ステップS3→ステップS4へと進み、目標モータ回転数を設定する。ここでは、上記式(1)に基づいて設定され、自動変速機3の出力回転数(ω)と、ローギア段の変速比(G)を積算した値を目標モータ回転数とする。
そして、ステップS5へと進み、モータトルクを制御して実際のモータ回転数が目標モータ回転数に一致するようにモータ回転数制御を実行する。すなわち、モータトルクを引き上げることで、モータ回転数を上昇させる。
時刻t13時点で、モータ回転数が目標モータ回転数に一致すると、ステップS6→ステップS7→ステップS8へと進み、駆動用モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御へと切り替えて、係合クラッチ8cを締結する。
すなわち、第1電動アクチュエータ41によりカップリングスリーブ8fに噛み合い係合に必要な押付力を付与し、このカップリングスリーブ8fをストローク駆動する。ここで、この実施例1の制御装置において、図6に示すように、センサの検出誤差や演算誤差等の影響により、目標モータ回転数が実際の係合クラッチ8cの出力側回転数よりも高い値であるとする。この場合では、カップリングスリーブ8fに押付力が付与された際、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動してコーントルクが発生する。そして、このコーントルクによって、モータ回転数は実際の係合クラッチ出力側回転数に同期するために低減する。
なお、回転同期機構が作動中では、モータ回転数と実際の係合クラッチ出力側回転数との間に差異が生じているため、コーントルクが変速機出力トルクに現れる。
一方、このとき駆動用モータジェネレータ2はトルク制御に切り替えられており、モータトルクが回転同期判定時の摩擦クラッチ伝達トルクに設定される。つまり、モータトルクは、モータ回転数が目標モータ回転数に一致したと判断された時点(時刻t13時点)での摩擦クラッチ伝達トルクとなるように制御される。
これにより、モータトルクがコーントルクを打ち消すように上昇することがなくなり、モータトルクとコーントルクの干渉が発生せず、カップリングスリーブ8fは速やかに同期完了ポイントまで変位することができる。
時刻t14時点で、カップリングスリーブ8fが同期完了ポイントに達すると、モータ回転数が実際の係合クラッチ出力側回転数に一致してクラッチ差回転がゼロとなる。このときにも、モータトルクは摩擦クラッチ伝達トルクに一致しており、コーントルクと干渉することはない。そのため、カップリングスリーブ8fの変位抵抗が大きくならず、カップリングスリーブ8fはクラッチハブ8eと円滑に噛み合うことができる。そして、カップリングスリーブ8fは噛み合い係合位置まで次第に変位していく。
また、カップリングスリーブ8fがクラッチハブ8eと噛み合うとコーントルクは消滅し、変速機出力トルクは元に戻る。
時刻t15時点で、カップリングスリーブ8fが噛み合い係合位置に達すると、モータトルクは、アクセル開度に現れるドライバの要求駆動トルクとなるように制御されて低減を開始する。また、摩擦クラッチ9cは摩擦クラッチ伝達トルクを徐々に低減し、開放する。
さらに、カップリングスリーブ8fが噛み合い係合位置に達したことで、第1電動アクチュエータ41によるカップリングスリーブ押付力はゼロとなる。
時刻t16時点で、摩擦クラッチ9cが完全に開放し、変速機入力トルクであるモータトルクが、係合クラッチ8cの伝達トルクと一致すれば、ロー変速段への変速が完了する。
このように、実施例1では、駆動用モータジェネレータ2を回転数制御し、変速機入力回転数(=クラッチ入力回転数)であるモータ回転数を目標モータ回転数に一致させる。その後、回転数制御からモータトルク制御に切り替え、係合クラッチ8cの回転同期機構が動作するときのモータトルクの変動を抑制する。
これにより、回転同期機構が作動したことにより生じる回転同期するためのコーントルクがモータトルクと干渉することがなくなり、速やかに回転同期し、係合クラッチ8cは円滑に噛み合い係合することができる。そのため、締結完了までの時間が長くなってしまうことを防止できる。
また、回転同期機構が作動している間、モータトルクの変動が抑制されるため、比較例の制御装置のようにトルク干渉に伴うモータトルクの上昇が発生しない。これにより、係合クラッチ8cの締結時にショックが発生することもない。
しかも、実施例1では、モータ回転数が目標モータ回転数に一致したタイミングで、駆動用モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御へと切り替えている。そのため、カップリングスリーブ8fを変位させ、回転同期機構が作動している間のモータトルク変動を確実に抑制することができ、コーントルクとモータトルクの干渉を精度よく防止することができる。
また、実施例1では、モータ回転数を目標モータ回転数に一致させる変速機入力回転数を制御する回転数制御を、自動変速機3に入力するトルクであるモータトルクを制御することで行っている。そして、モータ回転数が目標モータ回転数に一致した後には、この駆動用モータジェネレータ2のトルクを制御するトルク制御に切り替える。そして、このモータトルクによるトルク制御に切り替えた際、このモータトルクを、回転同期判定時の摩擦クラッチ伝達トルクに設定している。
これにより、係合クラッチ8cをコーントルクによって回転同期する際の同期に必要な時間の短縮化を図ることができ、係合クラッチ締結時間を短くすることができる。
つまり、自動変速機3に入力されるトルクであるモータトルクを、摩擦クラッチ9cによって伝達可能なトルクと同値にすることで、自動変速機3に入力されたトルクは、すべて摩擦クラッチ9cを介して駆動輪14へと伝達されることになる。そのため、係合クラッチ8cによってトルク伝達を負担することがなくなり、さらにコーントルクとモータトルクの干渉がなくなり、コーントルクによる回転同期を速やかに完了することができる。
なお、ダウンシフト中に車両が加速又は減速している場合には、同期回転数である目標モータ回転数が車速に応じて変化する。この場合には、上記式(3)に基づいて、モータトルクによるトルク制御に切り替えた際のモータトルクを、回転同期判定時の摩擦クラッチ伝達トルクに対し、目標モータ回転数の変化量を実現するためのトルクを加算した値に設定する。
これにより、目標モータ回転数を車速の変化に応じて変動させながら、回転同期機構を作動させることができる。なお、回転同期機構によって回転同期するまでの時間はごく僅かであることから、目標モータ回転数の変化量は一定とみなすことができ、クラッチ入力側のイナーシャを考慮した一定トルクを加算することで、目標モータ回転数を車速に変化に対応させることができる。
また、前回のダウンシフト時において、目標モータ回転数が実際の係合クラッチ8cの出力側回転数に対してずれていると、係合クラッチ8cを締結する際、カップリングスリーブ8fのストロークに伴って実モータ回転数が変化する。この場合には、上記式(1)´に基づいて、目標モータ回転数を設定する。
すなわち、センサの検出誤差や演算誤差等を、係合クラッチ締結時の実モータ回転数の変動から推定し、この誤差分を次回のダウンシフト時に目標モータ回転数に上乗せする。これにより、センサの検出誤差等の影響を低減することができ、回転同期機構が作動する際の差回転を小さくして、変速ショックの少ないスムーズな係合クラッチ8cの締結を行うことができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の自動変速機の制御装置にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
(1) 車両の駆動系に設けられ、締結要素として締結時に噛み合い係合する回転同期機構を持つ係合クラッチ8cと、締結時に摩擦係合する摩擦クラッチ9cとを有する自動変速機3と、前記自動変速機3の変速制御を行う変速制御手段(図4)と、を備えた自動変速機の制御装置において、
前記変速制御手段(図4)は、前記係合クラッチ8cを締結させ、前記摩擦クラッチ9cを開放する変速時、前記摩擦クラッチ9cをスリップ締結し、前記係合クラッチ8cの入力回転数(モータ回転数)を所定の同期回転数(目標モータ回転数)に合わせてから前記係合クラッチ8cを締結するまでの間であって、少なくとも前記回転同期機構が作動しているとき、前記係合クラッチ8cに入力するクラッチ入力トルクの変動を抑制するトルク変動抑制制御を行う構成とした。
これにより、係合クラッチ8cを噛み合い係合する際、締結ショックの発生を抑制しつつ、締結完了までの時間が長くなることを防止できる。
(2) 前記変速制御手段(図4)は、前記摩擦クラッチ9cをスリップ締結したら、前記係合クラッチ8cの入力回転数(モータ回転数)を所定の同期回転数(目標モータ回転数)に合わせる第1回転数フィードバック制御(回転数制御)を行い、
前記入力回転数(モータ回転数)が前記同期回転数(目標モータ回転数)に一致した後、前記第1回転数フィードバック制御(回転数制御)から、前記係合クラッチ8cに入力するトルク(モータトルク)を制御するトルク制御による前記トルク変動抑制制御に切り替え、前記係合クラッチ8cを締結する構成とした。
これにより、上記(1)の効果に加え、回転同期機構が作動している間のモータトルク変動を確実に抑制することができ、コーントルクとモータトルクの干渉を精度よく防止することができる。
(3) 前記変速制御手段(図4)は、前記第1回転数フィードバック制御(回転数制御)を前記自動変速機3に入力する変速機入力トルク(モータトルク)の制御により行う場合、前記トルク変動抑制制御を前記変速機入力トルク(モータトルク)の制御でのトルク制御により行い、且つ、前記トルク制御に切り替えた際の前記変速機入力トルク(モータトルク)の初期値を、前記回転同期機構の作動開始時の前記摩擦クラッチ9cの伝達トルクとする構成とした。
これにより、上記(2)の効果に加え、係合クラッチ8cをコーントルクによって回転同期する際の同期に必要な時間の短縮化を図ることができ、係合クラッチ締結時間を短くすることができる。
(4) 前記変速制御手段(図4)は、前記トルク制御に切り替えた際の前記変速機入力トルク(モータトルク)の初期値を、前記回転同期機構の作動開始時の前記摩擦クラッチ9cの伝達トルクに、所定の同期回転数の変化量を実現するためのトルクを加算した値とする構成とした。
これにより、上記(3)の効果に加え、ダウンシフト中に車両が加速又は減速している場合であっても、目標モータ回転数を車速の変化に応じて変動させながら、回転同期機構を作動させることができる。
(5) 前記変速制御手段(図4)は、前記係合クラッチ8cの入力回転数(モータ回転数)が前記同期回転数(目標モータ回転数)に一致した後、前記係合クラッチ8cが締結するまでの前記係合クラッチ8cの入力回転数(モータ回転数)の変化分を、次回変速時に設定する同期回転数(目標モータ回転数)に加算する構成とした。
これにより、上記(1)から(4)のいずれかの効果に加え、センサの検出誤差等の影響を低減することができ、変速ショックの少ないスムーズな係合クラッチ8cの締結を行うことができる。
(実施例2)
実施例2は、摩擦クラッチ9cの伝達トルクを制御することで、係合クラッチ8cに入力する回転数やトルクを制御する例である。
図7は、実施例2の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図7に基づき、実施例2の自動変速機の制御装置における変速制御処理を説明する。なお、図4に示す実施例1の変速制御処理と同等の処理については、詳細な説明を省略する。
ステップS21では、駆動用モータジェネレータ2の出力トルク(モータトルク)と、係合クラッチ8cのカップリングスリーブ位置(スリーブ位置)と、摩擦クラッチ9cにおける伝達トルク(摩擦クラッチ伝達トルク)を検出し、ステップS22へ進む。
ステップS22では、ステップS21でのモータトルク等の検出に続き、摩擦クラッチ伝達トルクを予め設定した所定値低減し、ステップS23へ進む。
ステップS23では、ステップS22での摩擦クラッチ伝達トルクの低減に続き、締結していた摩擦クラッチ9cがスリップ締結になったか否かを判断する。YES(スリップ締結)の場合には、そのときの摩擦クラッチ伝達トルクを維持しつつステップS24へ進む。NO(締結)の場合にはステップS22へ戻る。
ステップS24では、ステップS23での摩擦クラッチ9cのスリップ締結との判断に続き、駆動用モータジェネレータ2の目標回転数(目標モータ回転数)を設定し、ステップS25へ進む。
ステップS25では、ステップS24での目標モータ回転数の設定に続き、変速機入力回転数を制御する回転数制御を行い、ステップS26へ進む。
ここでは、摩擦クラッチ9cの伝達トルク(T)を下記式(4)により求められた値にすることで、実モータ回転数(ω)が目標モータ回転数(ω)に一致するように制御する。
なお、上記式(4)における「K」は比例要素のフィードバックゲインであり、「K」は積分要素のフィードバックゲインであり、「s」は微分演算子である。また、実モータ回転数(ω)は、モータ回転数センサ33により検出する。
ステップS26では、ステップS25での摩擦クラッチ伝達トルクによるモータ回転数制御に続き、係合クラッチ8cの回転同期判定がなされたか否かを判断する。YES(回転同期)の場合にはステップS27へ進む。NO(回転非同期)の場合にはステップS25へ戻る。
ステップS27では、ステップS26での回転同期との判断に続き、変速機入力回転数を制御する回転数制御から、摩擦クラッチ伝達トルクを制御するトルク制御に切り替え、ステップS28へ進む。
ここで、「摩擦クラッチ伝達トルクを制御するトルク制御」とは、摩擦クラッチ9cにより伝達するトルク(摩擦クラッチ伝達トルク)を、任意に設定する目標値に合わせることであり、クラッチ入力トルクを制御する「トルク制御」に相当する。すなわち、この実施例2では、「摩擦クラッチ伝達トルクを制御するトルク制御」により、クラッチ入力トルクの変動を抑制するトルク変動抑制制御を行う。
またここでは、回転数制御からトルク制御へと切り替えた際の摩擦クラッチ伝達トルク初期値を、回転同期判定時のモータトルクに設定する。すなわち、摩擦クラッチ伝達トルク(T)を、摩擦クラッチ9cがスリップ締結したと判断したときのモータトルク(T)と同値とする指令値を出力する。
さらにここでは、係合クラッチ8cが締結するまでの間、摩擦クラッチ伝達トルク(T)は初期値を維持する。
ステップS28では、ステップS27での摩擦クラッチ伝達トルク制御への切り替えに続き、係合クラッチ8cのカップリングスリーブ8fを第1電動アクチュエータ41によりストローク駆動し、カップリングスリーブ8fを開放位置から噛み合い係合位置へと変位させて係合クラッチ8cを締結し、ステップS29へ進む。
このとき、モータ回転数が実際の係合クラッチ出力側回転数に対してずれていれば、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動し、回転同期トルクであるコーントルクが発生して回転同期する。
ステップS29では、ステップS28での係合クラッチ8cの締結に続き、一般的な変速のトルクフェーズ動作により、摩擦クラッチ9cを開放し、変速を終了してエンドへ進む。
このように、実施例2の制御装置では、摩擦クラッチ9cの伝達トルクを制御することによって、係合クラッチ8cの入力回転数であるモータ回転数を、目標モータ回転数に一致するように制御することや、係合クラッチ8cに入力するトルクを制御することができる。
そして、モータ回転数が目標モータ回転数に一致したタイミングで、摩擦クラッチ伝達トルクを制御するトルク制御に切り替えることで、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動したことで生じるコーントルクと、この摩擦クラッチ伝達トルクによってモータ回転数を目標モータ回転数に一致させようとするトルクが干渉することを防止することができる。この結果、係合クラッチ8cの締結時間が長くなることを防止しつつ、変速ショックの発生を抑制することができる。
さらに、この実施例2では、モータ回転数を目標モータ回転数に一致させる変速機入力回転数を制御する回転数制御を、摩擦クラッチ9cの伝達トルクを制御することで行っている。そして、モータ回転数が目標モータ回転数に一致した後には、この摩擦クラッチ伝達トルクを制御するトルク制御に切り替える。そして、この摩擦クラッチ伝達トルク制御に切り替えた際、この摩擦クラッチ伝達トルクを、回転同期判定時の駆動用モータジェネレータ2のトルク(モータトルク)に設定している。
これにより、係合クラッチ8cをコーントルクによって回転同期する際の同期に必要な時間の短縮化を図ることができ、係合クラッチ締結時間を短くすることができる。
つまり、摩擦クラッチ9cによって伝達可能なトルクを、自動変速機3に入力するモータトルクと同値にすることで、自動変速機3に入力されたトルクは、すべて摩擦クラッチ9cを介して駆動輪14へと伝達されることになる。そのため、係合クラッチ8cによってトルク伝達を負担することがなくなり、さらにコーントルクと摩擦クラッチ伝達トルクの干渉がなくなり、コーントルクによる回転同期を速やかに完了することができる。
次に、効果を説明する。
実施例2の自動変速機の制御装置にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
(6) 前記変速制御手段(図7)は、前記第1回転数フィードバック制御(回転数制御)を前記摩擦クラッチ9cの伝達トルクの制御により行う場合、前記トルク変動抑制制御を前記摩擦クラッチ9cの伝達トルクの制御でのトルク制御により行い、且つ、前記トルク制御に切り替えた際の前記摩擦クラッチ9cの伝達トルクの初期値を、前記回転同期機構の作動開始時の前記自動変速機3に入力する変速機入力トルク(モータトルク)とする構成とした。
これにより、上記(2)の効果に加え、係合クラッチ8cをコーントルクによって回転同期する際の同期に必要な時間の短縮化を図ることができ、係合クラッチ締結時間を短くすることができる。
(実施例3)
実施例3は、トルク変動抑制制御を、モータ回転数制御時のフィードバックゲインを変動することで行う例である。
図8は、実施例3の変速コントローラにて実行される変速制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図8に基づき、実施例3の自動変速機の制御装置における変速制御処理を説明する。なお、図4に示す実施例1の変速制御処理と同等の処理については、詳細な説明を省略する。
ステップS31では、駆動用モータジェネレータ2の出力トルク(モータトルク)と、係合クラッチ8cのカップリングスリーブ位置(スリーブ位置)と、摩擦クラッチ9cにおける伝達トルク(摩擦クラッチ伝達トルク)を検出し、ステップS32へ進む。
ステップS32では、ステップS31でのモータトルク等の検出に続き、摩擦クラッチ伝達トルクを予め設定した所定値低減し、ステップS33へ進む。
ステップS33では、ステップS32での摩擦クラッチ伝達トルクの低減に続き、締結していた摩擦クラッチ9cがスリップ締結になったか否かを判断する。YES(スリップ締結)の場合には、そのときの摩擦クラッチ伝達トルクを維持しつつステップS34へ進む。NO(締結)の場合にはステップS32へ戻る。
ステップS34では、ステップS33での摩擦クラッチ9cのスリップ締結との判断に続き、駆動用モータジェネレータ2の目標回転数(目標モータ回転数)を設定し、ステップS35へ進む。
ステップS35では、ステップS34での目標モータ回転数の設定に続き、変速機入力回転数を制御する回転数制御を行い、ステップS36へ進む。
ここで、「変速機入力回転数を制御する回転数制御」とは、自動変速機3の入力回転数である実際のモータ回転数(以下、「実モータ回転数(ω)」という)を、ステップS34にて設定した目標モータ回転数(ω)に一致させることである。
さらに、ここでは、モータトルク指令値を下記式(5)により求められるモータトルク(T)とすることで、実モータ回転数(ω)が目標モータ回転数(ω)に一致するように制御する。
なお、上記式(5)における「K」は比例要素のフィードバックゲインであり、「K」は積分要素のフィードバックゲインであり、「s」は微分演算子である。また、実モータ回転数(ω)は、モータ回転数センサ33により検出する。
さらに、比例要素のフィードバックゲイン(K)及び積分要素のフィードバックゲイン(K)は、係合クラッチ8cの差回転数である実モータ回転数(ω)と目標モータ回転数(ω)との差回転数の絶対値と、図9(a)又は図9(b)に示すマップと、に基づき、安全性を確保しつつ、イナーシャフェーズでのモータ回転数変化が設計者の希望する応答になるように設定される。
すなわち、この図8におけるステップS35は、変速機入力回転数を制御する回転数制御を、係合クラッチ8cの差回転数が小さいほどフィードバックゲインを小さくする「第2回転数フィードバック制御」に相当する。
ステップS36では、ステップS35での差回転数に応じたフィードバックゲインでのモータ回転数制御に続き、係合クラッチ8cの回転同期判定がなされたか否かを判断する。YES(回転同期)の場合にはステップS37へ進む。NO(回転非同期)の場合にはステップS35へ戻る。
ここで、回転同期判定は、モータ回転数センサ33により検出した実モータ回転数と、ステップS34にて設定した目標モータ回転数が一致したことで行う。
ステップS37では、ステップS36での回転同期との判断に続き、係合クラッチ8cの差回転数に応じて設定されるフィードバックゲインを用いたモータ回転数制御(第2回転数フィードバック制御)を継続しつつ、駆動用モータジェネレータ2の出力トルク(モータトルク)が、回転同期機構が作動した際に生じるコーントルクよりも小さくなるようにフィードバックゲインを設定し、ステップS38へ進む。
すなわち、このステップS37では、回転数制御を補償するためのモータトルク(モータ回転数を目標モータ回転数に一致させようとするモータトルク)が、コーントルクよりも小さくなるようにフィードバックゲインを設定する。
なお、コーントルクは、カップリングスリーブ8fの位置と、予め実験により設定したスリーブ位置により決まるコーントルクマップ(図示せず)に基づいて推定する。
ステップS38では、ステップS37でのモータトルクの制限設定に続き、係合クラッチ8cのカップリングスリーブ8fを第1電動アクチュエータ41によりストローク駆動し、カップリングスリーブ8fを開放位置から噛み合い係合位置へと変位させて係合クラッチ8cを締結し、ステップS39へ進む。
このとき、モータ回転数が実際の係合クラッチ出力側回転数に対してずれていれば、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動し、回転同期トルクであるコーントルクが発生して回転同期する。
ステップS39では、ステップS38での係合クラッチ8cの締結に続き、一般的な変速のトルクフェーズ動作により、摩擦クラッチ9cを開放し、変速を終了してエンドへ進む。
このように、実施例3の制御装置では、実際のモータ回転数を目標モータ回転数に一致させる回転数制御を行う際、係合クラッチ8cにおける差回転数が小さくなるほどフィードバックゲインを小さい値に設定する。
そのため、モータ回転数が目標モータ回転数に近くなるにつれて、モータ回転数を目標モータ回転数に一致させようとするモータトルクを抑制することができる。これにより、例えば、目標モータ回転数が実際の係合クラッチ8cの出力側回転数に対してずれて、回転同期機構が作動したことで生じるコーントルクにより回転同期する場合であっても、モータトルクとコーントルクの干渉を抑制することができる。
この結果、係合クラッチ8cの締結時間が長くなることを防止しつつ、変速ショックの発生を抑制することができる。
さらに、実施例1及び実施例2では、モータ回転数が目標モータ回転数に一致したタイミングで、回転数制御からトルク制御へと切り替えているが、この場合では、トルク制御移行時のトルク初期値の設定が必要である。つまり、摩擦クラッチ伝達トルクやモータトルクの推定演算や検出等が必要となる。
これに対し、実施例3では、モータ回転数が目標モータ回転数に一致しても、モータトルクによる回転数制御を継続するため、上記演算等を不要とすることができる。
また、係合クラッチ8cの入力回転数であるモータ回転数が、目標モータ回転数に一致した後には、回転数制御を補償するためのモータトルクがコーントルクよりも小さくなるように、回転数制御におけるフィードバックゲインを設定している。
そのため、係合クラッチ8cの回転同期機構が作動したことで生じるコーントルクと、モータトルクによってモータ回転数を目標モータ回転数に一致させようとするトルクが干渉することを確実に防止できる。
つまり、回転数制御を補償するためのモータトルクがコーントルクを上回っている場合、回転同期機構による回転同期を行うことができない。そのため、センサ検出誤差等により、実モータ回転数と検出したモータ回転数との間にずれが生じてしまうと、回転同期することができず、最悪の場合では係合クラッチ8cの締結を行うことができなくなってしまう。これに対し、回転数制御を補償するためのモータトルクをコーントルクよりも小さくすれば、実モータ回転数と検出したモータ回転数の間にずれが生じていても、回転同期機構により回転同期することができ、係合クラッチ8cを締結することができる。
次に、効果を説明する。
実施例3の自動変速機の制御装置にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
(7) 前記変速制御手段(図8)は、前記摩擦クラッチ9cをスリップ締結したら、前記係合クラッチの入力回転数を所定の同期回転数に合わせると共に、前記係合クラッチの差回転数が小さいほどフィードバックゲインを小さく設定する第2回転数フィードバック制御による前記トルク変動抑制制御を行い、
前記入力回転数が前記同期回転数に一致した後、前記第2回転数フィードバック制御を継続したまま前記係合クラッチを締結する構成とした。
これにより、上記(1)の効果に加え、係合クラッチ8cを噛み合い係合する際、締結ショックの発生を抑制しつつ、締結完了までの時間が長くなることを防止できる。
(8) 前記変速制御手段は、前記係合クラッチの入力回転数が前記同期回転数に一致する前の所定期間又は前記係合クラッチの入力回転数が前記同期回転数に一致した後、前記第2回転数フィードバック制御におけるフィードバックゲインを、前記第2回転数フィードバック制御を補償するトルクが、前記回転同期機構による同期トルクよりも小さくなる値に設定する構成とした。
これにより、上記(7)の効果に加え、実モータ回転数と検出したモータ回転数の間にずれが生じていても、回転同期機構により確実に回転同期することができ、係合クラッチ8cを速やかに締結することができる。
以上、本発明の自動変速機の制御装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例3では、モータ回転数が目標モータ回転数に一致してから、回転数制御を補償するモータトルクがコーントルクよりも小さくなるようにフィードバックゲインを設定する例を示したが、これに限らない。
モータ回転数が目標モータ回転数に一致する前の所定期間の間も、フィードバックゲインを、回転数制御を補償するモータトルクがコーントルクよりも小さくなるように設定してもよい。なお、この「所定期間」とは、時間であってもよいし、差回転数であってもよい。つまり、モータ回転数が目標モータ回転数に一致する時間を予測し、その予測時間よりも所定時間前からモータトルクを制限するフィードバックゲインにしてもよいし、モータ回転数と目標モータ回転数との差回転数が所定値以下になったら、モータトルクを制限するフィードバックゲインにしてもよい。
また、実施例1〜実施例3では、駆動源を駆動用モータジェネレータ2のみで構成する例を示したが、これに限らない。駆動源は、モータとエンジンを併用してもよいし、エンジンのみであってもよい。
2 駆動用モータジェネレータ(モータ)
3 自動変速機
6 変速機入力軸
7 変速機出力軸
8 ロー側変速機構
8c 係合クラッチ(締結要素)
8d クラッチギア
8e クラッチハブ
8f カップリングスリーブ
9 ハイ側変速機構
9c 摩擦クラッチ(締結要素)
14 駆動輪
21 変速コントローラ
22 車速センサ
25 前後加速度センサ
33 モータ回転数センサ
34 変速機出力回転数センサ

Claims (8)

  1. 車両の駆動系に設けられ、締結要素として締結時に噛み合い係合する回転同期機構を持つ係合クラッチと、締結時に摩擦係合する摩擦クラッチとを有する自動変速機と、前記自動変速機の変速制御を行う変速制御手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記係合クラッチを締結させ、前記摩擦クラッチを開放する変速時、前記摩擦クラッチをスリップ締結し、前記係合クラッチの入力回転数を所定の同期回転数に合わせてから前記係合クラッチを締結するまでの間であって、少なくとも前記回転同期機構が作動しているとき、前記係合クラッチに入力するクラッチ入力トルクの変動を抑制するトルク変動抑制制御を行う
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記摩擦クラッチをスリップ締結したら、前記係合クラッチの入力回転数を所定の同期回転数に合わせる第1回転数フィードバック制御を行い、
    前記入力回転数が前記同期回転数に一致した後、前記第1回転数フィードバック制御から、前記係合クラッチに入力するトルクを制御するトルク制御による前記トルク変動抑制制御に切り替え、前記係合クラッチを締結する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  3. 請求項2に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記第1回転数フィードバック制御を前記自動変速機に入力する変速機入力トルクの制御により行う場合、前記トルク変動抑制制御を前記変速機入力トルクの制御でのトルク制御により行い、且つ、前記トルク制御に切り替えた際の前記変速機入力トルクの初期値を、前記回転同期機構の作動開始時の前記摩擦クラッチの伝達トルクとする
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  4. 請求項3に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記トルク制御に切り替えた際の前記変速機入力トルクの初期値を、前記回転同期機構の作動開始時の前記摩擦クラッチの伝達トルクに、所定の同期回転数の変化量を実現するためのトルクを加算した値とする
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  5. 請求項2に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記第1回転数フィードバック制御を前記摩擦クラッチの伝達トルクの制御により行う場合、前記トルク変動抑制制御を前記摩擦クラッチの伝達トルクの制御でのトルク制御により行い、且つ、前記トルク制御に切り替えた際の前記摩擦クラッチの伝達トルクの初期値を、前記回転同期機構の作動開始時の前記自動変速機に入力する変速機入力トルクとする
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  6. 請求項1に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記摩擦クラッチをスリップ締結したら、前記係合クラッチの入力回転数を所定の同期回転数に合わせると共に、前記係合クラッチの差回転数が小さいほどフィードバックゲインを小さく設定する第2回転数フィードバック制御による前記トルク変動抑制制御を行い、
    前記入力回転数が前記同期回転数に一致した後、前記第2回転数フィードバック制御を継続したまま前記係合クラッチを締結する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  7. 請求項6に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記係合クラッチの入力回転数が前記同期回転数に一致する前の所定期間又は前記係合クラッチの入力回転数が前記同期回転数に一致した後、前記第2回転数フィードバック制御におけるフィードバックゲインを、前記第2回転数フィードバック制御を補償するトルクが、前記回転同期機構による同期トルクよりも小さくなる値に設定する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載された自動変速機の制御装置において、
    前記変速制御手段は、前記係合クラッチの入力回転数が前記同期回転数に一致した後、前記係合クラッチが締結するまでの前記係合クラッチの入力回転数の変化分を、次回変速時に設定する同期回転数に加算する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2020059598A1 (ja) * 2018-09-21 2020-03-26 株式会社ユニバンス 駆動装置

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