以下、本発明に係る電流センサ、および電流センサの製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1,3,4に示す電流センサ1は、「電流センサの製造方法」に従って製造した「電流センサ」の一例であって、4本(「N=4」の例)のセンサ部2、および図示しない測定装置に接続するためのケーブル3を備え、図2(a)に示すように、その一端部P1および他端部P2を当接させるように環状にした状態で測定対象Xの周囲に配設することで、測定対象Xを流れる電流を検出することができるように構成されている。
この場合、各センサ部2は、「第1のセンサ部」の一例であって、図3に示すように、芯線11が絶縁被覆12によって覆われた可撓性を有するケーブル4を「巻芯」として用いて、このケーブル4の長手方向における一端部P1から他端部P2(図4参照)に向かってケーブル4の周囲に導線21が右巻きされて空芯コイル5が構成されると共に、空芯コイル5を覆うようにして絶縁被覆22が設けられている。なお、同図では、センサ部2の断面構造についての理解を容易とするために、導線21を右下がりの斜め線で塗り潰して図示している。また、本例の電流センサ1では、上記の導線21として、導体の表面が絶縁コーティングされた線材(絶縁被覆線)が使用されているが、この絶縁コーティングの図示を省略する。
この場合、本例の電流センサ1では、各センサ部2において、ケーブル4に対する導線21の巻回方向(本例では、右巻き)が同じだけでなく、各センサ部2において同じ太さで同じ材質の導線21が使用されると共に、各センサ部2における導線21の巻回ピッチや巻径についても同じピッチで同じ巻径となるように空芯コイル5が構成されている。したがって、本例の電流センサ1では、各センサ部2における各空芯コイル5の電気的特性が互いに等しくなっている。また、本例の電流センサ1では、各センサ部2(ケーブル4)の芯線11についても、同じ太さで同じ材質の導線で構成されている。さらに、絶縁被覆12についても、同じ材質で、同じ直径となるように構成されている。
また、各センサ部2は、図4に示すように、ケーブル4の他端部P2において芯線11が「戻し線」として導線21に接続されている。なお、同図では、電流センサ1の構成に関する理解を容易とするために、ケーブル4に対する導線21の巻きピッチを実際のピッチよりも大きく図示すると共に、センサ部2の長さを実際の長さよりも短く図示している。また、「導線の巻回ピッチが同じ」との状態は、導線の巻回ピッチを意図的に変化させたような「大きなピッチ変化がない状態」を意図している。したがって、巻芯の長手方向の各部において巻回ピッチが同じくなるように導線を巻き回した結果、極く小さな「巻きむら(製造誤差)」が生じて、導線の巻回ピッチがやや大きくなった部位(以下、「粗部」ともいう)や、導線の巻回ピッチがやや小さくなった部位(以下、「密部」ともいう)が存在した状態は「導線の巻回ピッチが同じ」との状態に含まれる。
さらに、この電流センサ1では、N=4本のセンサ部2における各一端部P1および各他端部P2をそれぞれ揃えて並設した状態において各センサ部2が縒り合わされて各一端部P1から各他端部P2までの全体に亘って一体化されている。また、この電流センサ1では、各センサ部2の各導線21が芯線11を介して直列接続されている。なお、N=4本のセンサ部2の導線21をそれぞれ右巻きした構成(「巻芯に対する巻回方向が同じ」との構成の一例)を例に挙げて説明するが、ケーブル4の周囲に導線21を左巻きした「センサ部(「第2のセンサ部」の一例:図示せず)をN本並設して「電流センサ」を構成することもできる。また、「電流センサ」を構成する「センサ部」の数についてもN=4本に限定されず、2本、3本、または5本以上の任意のN本を並設して「電流センサ」を構成することもできる(図示せず)。
この電流センサ1の製造に際しては、まず、芯線11が絶縁被覆12によって覆われたケーブル(図示せず)を同じ長さに切り揃えてケーブル4(巻芯)を製作する。次いで、図4に示すように、ケーブル4の一端部P1から他端部P2に向かってケーブル4の周囲に導線21を右巻きで巻回して空芯コイル5を形成する。この際には、一例として、後述するように、完成した電流センサ1を環状に変形させたときに、その内周側の部位において、隣り合う導線21同士が接することのない程度の小さな隙間が生じるような巻回ピッチでケーブル4の周囲に導線21を巻回する。続いて、ケーブル4の周囲に巻回した導線21(空芯コイル5)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングすることで絶縁被覆22を形成する。これにより、センサ部2が完成する。
なお、上記の製作方法に代えて、芯線11が絶縁被覆12によって覆われたケーブル(図示せず)の周囲に導線21を右巻きで巻回して空芯コイル5を形成した後に、導線21(空芯コイル5)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングして絶縁被覆22を形成したケーブル(図示せず)を任意の同じ長さに切り揃えることによってセンサ部2を製作することもできる。
続いて、4本のセンサ部2を用意し、それぞれの一端部P1および他端部P2を揃えるようにして並設した状態で各センサ部2を縒り合わせて一体化する。次いで、各センサ部2の他端部P2側において芯線11と導線21とを相互に接続する。続いて、各センサ部2の一端部P1側において導線21を他のセンサ部2の芯線11にそれぞれ接続する。具体的には、図4に示すように、各センサ部2のうちの1本の導線21を他の1本のセンサ部2における芯線11に接続し、かつそのセンサ部2の導線21をさらに他の1本のセンサ部2における芯線11に接続すると共に、そのセンサ部2の導線21をさらに他の1本のセンサ部2における芯線11に接続する。
これにより、同図に示すように、1本目のセンサ部2における導線21の端部P21−2と1本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−2とが他端部P2において相互に接続され、1本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−1と2本目のセンサ部2における導線21の端部P21−1とが一端部P1において相互に接続され、2本目のセンサ部2における導線21の端部P21−2と2本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−2とが他端部P2において相互に接続され、2本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−1と3本目のセンサ部2における導線21の端部P21−1とが一端部P1において相互に接続され、3本目のセンサ部2における導線21の端部P21−2と3本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−2とが他端部P2において相互に接続され、3本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−1と4本目のセンサ部2における導線21の端部P21−1とが一端部P1において相互に接続され、かつ4本目のセンサ部2における導線21の端部P21−2と4本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−2とが他端部P2において相互に接続され、各センサ部2の導線21(空芯コイル5)が芯線11を介して直列接続された状態となる。
次いで、各センサ部2の一端部P1側において、1本目のセンサ部2における導線21の端部P21−1、および4本目のセンサ部2における芯線11の端部P11−1にケーブル3を接続する。この後、縒り合わされた状態の各センサ部2における一端部P1(ケーブル3を接続した部位)および他端部P2に樹脂製のキャップを装着することにより、図1に示すように、電流センサ1が完成する。
この電流センサ1を用いて測定対象Xを流れる電流を検出する際には、測定対象Xの周囲に電流センサ1をセットすると共に、ケーブル3を図示しない測定装置(電流検出装置)に接続する。この際に、この電流センサ1では、前述したように、各センサ部2の他端部P2側において導線21の端部P21−2が芯線11の端部P11−2に接続されると共に、各センサ部2の一端部P1側において芯線11の端部P11−1と他のセンサ部2における導線21の端部P21−1とが相互に接続されている。したがって、この電流センサ1では、各導線21および各芯線11を除き、各センサ部2の一端部P1から他端部P2に跨がる(他端部P2から一端部P1に跨がる)ように配設された配線が存在しないため、電流センサ1(各センサ部2)の一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることができる。
したがって、測定対象Xの周囲に電流センサ1をセットする際には、一例として、一端部P1および他端部P2を離間させて測定対象Xの周囲に巻き回すようにして電流センサ1を配設し、図2(a)に示すように、一端部P1および他端部P2を近接させる。これにより、測定対象Xの周囲に環状の各空芯コイル5が配置された状態となる。なお、同図(a)および後に参照する同図(b)では、電流センサ1の状態に関する理解を容易とするために、一端部P1および他端部P2を僅かに離間させて図示している。
この場合、一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることができない「電流センサ」(一端部P1および他端部P2に跨がって配線が存在する「電流センサ」:図示せず)では、測定対象Xの周囲に「電流センサ」を配置するとき(環状の「空芯コイル」内に測定対象を挿通させるとき)に、測定対象Xを切断する必要が生じる。これに対して、一端部P1および他端部P2に跨がる配線が存在せず、一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることができる本例の電流センサ1では、測定対象Xを切断することなく、その周囲に電流センサ1を配置することが可能となっている。
なお、上記の作業とは相違するが、本例の電流センサ1を測定対象Xの周囲にセットする際には、一端部P1および他端部P2を当接させるように環状に変形させた状態で測定対象Xを環状部位に挿通させることもできる。この場合、N=4本のセンサ部2が縒り合わされて一端部P1から他端部P2までの全体が一体化されている本例の電流センサ1では、測定対象Xを環状部位に挿通させる際に、N=4本のセンサ部2(空芯コイル5)のいずれかに測定対象Xが挿通させられていない状態となるのが回避される。この後、測定対象Xを流れる電流の大きさに応じて生じる電圧の値を測定装置によって測定することで、測定対象Xを流れる電流値が測定される。
この場合、この電流センサ1では、N=4本のセンサ部2が並設された状態で縒り合わされて、4本の空芯コイル5が一体化された状態となっている。このため、この電流センサ1では、図2(a)に示すように、一端部P1および他端部P2を当接させて電流センサ1を環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に4周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することができる。また、必要に応じて、図2(b)に示すように、電流センサ1を2重環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に8周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することもできる。
一方、この種の電流センサの製造時には、巻芯の周囲に導線を巻き回して空芯コイルを形成する際に、巻きむらが生じ、巻芯の長手方向の各部に粗部や密部が存在した状態となることがある。このため、測定対象Xの周囲に1本の空芯コイルを1周させた状態において測定対象Xが環状の空芯コイルの中心から位置ずれした際に、粗部の近傍に測定対象Xが位置しているときには検出電圧が小さくなり、密部の近傍に測定対象Xが位置しているときには検出電圧が大きくなる。したがって、測定対象Xの周囲に1本の空芯コイルを1周させただけでは、大きな検出電圧を得られないだけでなく、環状の空芯コイルに対する測定対象Xの位置によって検出電圧が変化することがあり、測定対象Xを流れる電流の電流値を正確に測定するのが困難となるおそれがある。
これに対して、N=4本のセンサ部2が並設されて一体化されている本例の電流センサ1では、各センサ部2の空芯コイル5に導線21の巻きむらが生じて各センサ部2の長手方向の各部に粗部および密部がそれぞれ生じたとしても、いずれかのセンサ部2における粗部と、そのセンサ部2に並設されている他の3本のセンサ部2における粗部とが電流センサ1の長手方向における極く近傍に位置する状態となったり、いずれかのセンサ部2における密部と、そのセンサ部2に並設されている他の3本のセンサ部2における密部とが電流センサ1の長手方向における極く近傍に位置する状態となったりする可能性が極めて低くなっている。
このため、測定対象Xの周囲に電流センサ1を1周させた状態において測定対象Xが環状の空芯コイル5の中心から位置ずれした際に、4本のセンサ部2のうちのいずれかにおける粗部の近傍に測定対象Xが位置したとしても、そのセンサ部2の粗部の近傍に他の3本のセンサ部2における粗部が位置することがなく、また、4本のセンサ部2のうちのいずれかにおける密部の近傍に測定対象Xが位置したとしても、そのセンサ部2の密部の近傍に他の3本のセンサ部2における密部が位置することがないため、環状の電流センサ1に対する測定対象Xの位置による検出電圧の変化量が十分に小さくなる。これにより、本例の電流センサ1では、測定対象Xを流れる電流の電流値を正確に測定することが可能となっている。
この場合、従来のロゴスキーコイルの構成において、その空芯コイルを構成する巻線の巻き密度を高くしたり(巻回ピッチを小さくしたり)、巻線の巻径を大きくしたり(大径の巻芯に巻線を巻き回したり)することにより、測定対象Xの周囲に1本の空芯コイルを1周させるだけで十分なレベルの検出電圧を得ることが可能となり、空芯コイルを複数回に亘って巻き回す(多重環状にする)煩雑な作業を不要とすることができる可能性がある。しかしながら、巻線の巻き密度を高くした場合には、ロゴスキーコイル(空芯コイル)を環状に変形させようとしたときに、その内周側において、隣接する巻線同士が巻芯の長手方向で互いに押し付けられた状態となり、ロゴスキーコイルの変形が阻害される(可撓性が低下する)ことがある。また、巻線の巻径を大きくした場合にも、大径の巻芯を採用している分だけ、巻芯の応力が大きくなり、ロゴスキーコイルを環状に変形させるのが困難になる(可撓性が低下する)。
さらに、大径の巻芯を採用した場合には、ロゴスキーコイルを環状に変形させたときに、内周部が縮長方向で大きく変形させられ、かつ外周部が伸長方向で大きく変形させられるため(巻芯の内周部および外周部の変形量が小径の巻芯を環状に変形させたときよりも大きくなるため)、巻線において巻芯の内周部に接している部位や外周部に接している部位が巻芯の長手方向に沿って大きく移動させられることとなる。このため、環状に変形させたロゴスキーコイルを直線状に戻したときに、巻芯の長手方向に沿って大きく移動させられた巻線が、環状に変形させる以前の位置に復帰せず、巻線の巻回ピッチが不均一な状態となる(疎部および密部が生じた状態となる)ことがある。かかる状態では、ロゴスキーコイルの電気的特性が、環状に変形させる前の状態から変化する結果、測定対象Xを流れる電流を正確に検出するのが困難となるおそれがある。
これに対して、本例の電流センサ1では、N=4本のセンサ部2を並設して直列接続したことにより、「空芯コイル」を構成する「巻線(導線21)」の巻き密度を高くしたり、「巻線(導線21)」の巻径を大きくしたりすることなく、測定対象Xの周囲に電流センサ1を1周させるだけで十分なレベルの検出電圧を得ることができる。このため、本例の電流センサ1では、その可撓性を十分に高めて容易に環状に変形させることができるだけでなく、各センサ部2を十分に小径にすることができるため、環状に変形させた際の内周部や外周部におけるケーブル4の変形量を十分に小さくすることができる結果、導線21の移動量を十分に小さくすることができ、これにより、環状に変形させる以前の状態から電気的特性が大きく変化するのを回避することができる。したがって、測定対象Xを流れる電流を正確に検出し得る状態を長期間に亘って好適に維持することができる。
一方、電流センサ1を使用した測定を完了したときには、一端部P1および他端部P2を離間させて測定対象Xから取り外す。これにより、測定対象Xからの電流センサ1の取り外しが完了する。
このように、この電流センサ1では、空芯コイル5を構成する導線21のケーブル4に対する巻回方向(この例では、右巻き)が同じN=4本のセンサ部2が並設されると共に、少なくとも各ケーブル4の一端部P1側の部位および各ケーブル4の他端部P2側の部位において各センサ部2がそれぞれ一体化され、かつ、各センサ部2における各空芯コイル5の各導線21が「戻し線」としての芯線11を介して直列接続されている。また、この電流センサ1の製造方法では、空芯コイル5を構成する導線21のケーブル4に対する巻回方向が同じN=4本のセンサ部2を並設すると共に、少なくとも各ケーブル4の一端部P1側の部位および各ケーブル4の他端部P2側の部位において各センサ部2をそれぞれ一体化し、かつ各センサ部2における各空芯コイル5の各導線21を「戻し線」としての芯線11を介して直列接続して電流センサ1を製造する。
したがって、この電流センサ1、および電流センサ1の製造方法によれば、各空芯コイル5を、芯線11を介して直列接続したことで電流センサ1の一端部P1と他端部P2とを物理的に離間し得る構造を採用することができるため、測定対象Xを流れる電流の検出に際して測定対象Xの周囲に電流センサ1を配設するときに、測定対象Xを切断することなく、電流センサ1の一端部P1および他端部P2を離間させ、測定対象Xの周囲に必要回数巻き回した後に、一端部P1および他端部P2を近接させる作業を実施するだけで測定対象Xの周囲に電流センサ1を配置することができる。また、測定対象Xの周囲に電流センサ1を1回巻き回すことで1本の空芯コイル5をN=4重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができ、測定対象Xの周囲に電流センサ1を2回巻き回すことで1本の空芯コイル5を2N=8重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができるため、測定対象Xの周囲に電流センサ1を幾重にも巻き回す作業や、測定対象Xの周囲に幾重にも巻き回された電流センサ1を取り外す作業の必要性を十分に低減することができる。これにより、迅速かつ容易に着脱可能な電流センサ1を提供することができる。
また、この電流センサ1では、各ケーブル4の一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2が一体化され、この電流センサ1の製造方法では、各ケーブル4の端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2を一体化して電流センサ1を製造する。したがって、この電流センサ1、および電流センサ1の製造方法によれば、例えば、電流センサ1を環状にした状態で環状の各空芯コイル5内に測定対象Xを挿通させるようにして測定対象Xの周囲に電流センサ1を配置するときに、環状の各空芯コイル5のうちのいずれかに測定対象Xが挿通していない状態が生じるのを好適に回避することができるため、測定対象Xを流れる電流を正確に検出することができる。
さらに、この電流センサ1では、各ケーブル4の一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2が縒り合わされて一体化され、この電流センサ1の製造方法では、各ケーブル4の端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2を縒り合わせて一体化して電流センサ1を製造する。したがって、この電流センサ1、および電流センサ1の製造方法によれば、並設された各センサ部2を比較的容易に一体化することができるため、電流センサ1の製造コストを十分に低減することができ、また、一体化した状態の各センサ部2が分離する事態を好適に回避することができる。
この場合、この電流センサ1では、芯線11が絶縁被覆12によって覆われたケーブル4で構成された「巻芯」の周囲に導線21が右巻きされて空芯コイル5が構成されると共にケーブル4の他端部P2において芯線11が「戻し線」として空芯コイル5の導線21に接続された「第1の電流センサ」としてのセンサ部2と、上記のケーブル4と同様のケーブルで構成された「巻芯」の周囲に「導線」が左巻きされて「空芯コイル」が構成されると共に「巻芯」の他端部において「ケーブルの芯線」が「戻し線」として「空芯コイル」の「導線」に接続された「第2のセンサ部」とのいずれかを「センサ部」としてN本(本例では、「第1のセンサ部」としてのセンサ部2をN=4本)備えている。
また、この電流センサ1の製造方法では、芯線11が絶縁被覆12によって覆われたケーブル4で構成された「巻芯」の周囲に導線21を右巻きして空芯コイル5を構成すると共にケーブル4の他端部P2において芯線11を「戻し線」として空芯コイル5の導線21に接続した「第1のセンサ部」としてのセンサ部2と、上記のケーブル4と同様のケーブルで構成された「巻芯」の周囲に「導線」を左巻きして「空芯コイル」を構成すると共に「巻芯」の他端部において「芯線」を「戻し線」として「空芯コイル」の「導線」に接続した「第2のセンサ部」2とのいずれかを「センサ部」としてN本(本例では、「第1のセンサ部」としてのセンサ部2をN=4本)縒り合わせて電流センサ1を製造する。
したがって、この電流センサ1、および電流センサ1の製造方法によれば、構成や製造方法が同じN本(本例では、4本)のセンサ部2を製作することで電流センサ1を製造することができるため、電流センサ1の製造コストを十分に低減することができる。
次に、「電流センサ」の他の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、上記の電流センサ1と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1,5,6に示す電流センサ1Aは、「電流センサの製造方法」に従って製造した「電流センサ」の他の一例であって、4本(「N=4」の例)のセンサ部2a、およびケーブル3を備えて測定対象Xを流れる電流を検出することができるように構成されている。
この場合、各センサ部2aは、「第3のセンサ部」の一例であって、図5に示すように、可撓性を有する巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2(図6参照)に向かって巻芯4aの周囲に「第1の導線」の一例である導線21が右巻きされて「第1の空芯コイル」の一例である空芯コイル5が構成されると共に、巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aおよび空芯コイル5の周囲に「戻し線」としての「第2の導線」の一例である導線31が左巻きされて「第2の空芯コイル」の一例である空芯コイル5aが構成され、かつ空芯コイル5aを覆うようにして絶縁被覆32が設けられている。なお、同図では、センサ部2aの断面構造についての理解を容易とするために、導線21を右下がりの斜め線で塗り潰して図示すると共に、導線31を左下がりの斜め線で塗り潰して図示している。また、本例の電流センサ1Aでは、上記の導線31として、導体の表面が絶縁コーティングされた線材(絶縁被覆線)が使用されているが、この絶縁コーティングの図示を省略する。
この場合、本例の電流センサ1Aでは、前述した電流センサ1と同様にして、各センサ部2aにおける空芯コイル5の電気的特性が互いに等しくなっている。また、本例の電流センサ1Aでは、各センサ部2aにおいて、巻芯4a(巻芯4aの周囲に形成された空芯コイル5)に対する導線31の巻回方向(本例では、左巻き)が同じだけでなく、各センサ部2aにおいて同じ太さで同じ材質の導線31が使用されると共に、各センサ部2aにおける導線31の巻回ピッチや巻径についても同じピッチで同じ巻径となるように空芯コイル5aが構成されている。したがって、本例の電流センサ1Aでは、各センサ部2aにおける空芯コイル5aの電気的特性も互いに等しくなっている。
また、各センサ部2aは、図6に示すように、巻芯4aの他端部P2において導線31が「戻し線」として導線21に接続されている。なお、同図では、電流センサ1Aの構成に関する理解を容易とするために、巻芯4aに対する導線21,31の巻きピッチを実際のピッチよりも大きく図示すると共に、センサ部2aの長さを実際の長さよりも短く図示している。さらに、この電流センサ1Aでは、N=4本のセンサ部2aにおける各一端部P1および各他端部P2をそれぞれ揃えて並設した状態において各センサ部2aが縒り合わされて各一端部P1から各他端部P2までの全体に亘って一体化されている。
また、この電流センサ1Aでは、各センサ部2aの各導線21が「戻し線」としての導線31を介して直列接続されている。なお、各導線21をそれぞれ右巻きして「第1の空芯コイル」としての空芯コイル5を構成すると共に、各導線31をそれぞれ左巻きして「第2の空芯コイル」としての空芯コイル5aを構成したセンサ部2b(「巻芯に対する巻回方向が同じ」との構成の一例)を備えた構成した電流センサ1Aを例に挙げて説明するが、このような構成に代えて、巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第3の導線」を左巻きして「第3の空芯コイル」を構成すると共に、巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aおよび「第3の空芯コイル」の周囲に「戻し線」としての「第4の導線」を右巻きして「第4の空芯コイル」を構成した「第4のセンサ部」を使用して「電流センサ」を構成することもできる(図示せず)。
この電流センサ1Aの製造に際しては、まず、可撓性を有する長尺の芯材(図示せず)を同じ長さに切り揃えて巻芯4aを製作する。次いで、図6に示すように、巻芯4aの一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に導線21を右巻きで巻回して空芯コイル5を形成する。この際には、一例として、後述するように、完成した電流センサ1Aを環状に変形させたときに、その内周側の部位において、隣り合う導線21同士が接することのない程度の小さな隙間が生じるような巻回ピッチで巻芯4aの周囲に導線21を巻回する。続いて、巻芯4aの他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aおよび空芯コイル5の周囲に導線31を左巻きで巻回して空芯コイル5aを形成する。この際には、一例として、後述するように、完成した電流センサ1Aを環状に変形させたときに、その内周側の部位において、隣り合う導線31同士が接することのない程度の小さな隙間が生じるような巻回ピッチで巻芯4aの周囲に導線31を巻回する。次いで、導線31(空芯コイル5a)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングすることで絶縁被覆32を形成する。これにより、センサ部2aが完成する。
なお、上記の製作方法に代えて、上記の芯材の周囲に導線21を右巻きで巻回して空芯コイル5を形成すると共に、空芯コイル5の周囲に導線31を左巻きで巻回して空芯コイル5aを形成した後に、導線31(空芯コイル5a)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングして絶縁被覆32を形成したケーブル(図示せず)を任意の同じ長さに切り揃えることによってセンサ部2aを製作することもできる。
続いて、4本のセンサ部2aを用意し、それぞれの一端部P1および他端部P2を揃えるようにして並設した状態で各センサ部2aを縒り合わせて一体化する。次いで、各センサ部2aの他端部P2側において導線21と導線31とを相互に接続する。続いて、各センサ部2aの一端部P1側において導線21を他のセンサ部2aの導線31にそれぞれ接続する。具体的には、図6に示すように、各センサ部2aのうちの1本の導線21を他の1本のセンサ部2aにおける導線31に接続し、かつそのセンサ部2aの導線21をさらに他の1本のセンサ部2aにおける導線31に接続すると共に、そのセンサ部2aの導線21をさらに他の1本のセンサ部2aにおける導線31に接続する。
これにより、同図に示すように、1本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−2と1本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−2とが他端部P2において相互に接続され、1本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−1と2本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−1とが一端部P1において相互に接続され、2本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−2と2本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−2とが他端部P2において相互に接続され、2本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−1と3本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−1とが一端部P1において相互に接続され、3本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−2と3本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−2とが他端部P2において相互に接続され、3本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−1と4本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−1とが一端部P1において相互に接続され、かつ4本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−2と4本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−2とが他端部P2において相互に接続され、各センサ部2aの導線21(空芯コイル5)が導線31(空芯コイル5a)を介して直列接続された状態となる。
次いで、各センサ部2aの一端部P1側において、1本目のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−1、および4本目のセンサ部2aにおける導線31の端部P31−1にケーブル3を接続する。この後、縒り合わされた状態の各センサ部2aにおける一端部P1(ケーブル3を接続した部位)および他端部P2に樹脂製のキャップを装着することにより、図1に示すように、電流センサ1Aが完成する。
この電流センサ1Aを用いて測定対象Xを流れる電流を検出する際には、測定対象Xの周囲に電流センサ1Aをセットすると共に、ケーブル3を図示しない測定装置(電流検出装置)に接続する。この際に、この電流センサ1Aでは、前述したように、各センサ部2aの他端部P2側において導線21の端部P21−2が導線31の端部P31−2に接続されると共に、各センサ部2aの一端部P1側において導線31の端部P31−1と他のセンサ部2aにおける導線21の端部P21−1とが相互に接続されている。したがって、この電流センサ1Aでは、前述した電流センサ1と同様にして、各導線21および各導線31を除き、各センサ部2aの一端部P1から他端部P2に跨がる(他端部P2から一端部P1に跨がる)ように配設された配線が存在しないため、電流センサ1A(各センサ部2a)の一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることが可能となっている。
また、この電流センサ1Aでは、N=4本のセンサ部2aが縒り合わされて製造されて、4本の空芯コイル5、および4本の空芯コイル5aが一体化された状態となっているため、図2(a)に示すように、一端部P1および他端部P2を当接させて電流センサ1Aを環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に8周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することができる。また、必要に応じて、同図(b)に示すように、電流センサ1Aを2重環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に16周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することもできる。
この場合、N=4本のセンサ部2aが縒り合わされて一体化されている本例の電流センサ1Aでは、前述した電流センサ1と同様にして、測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを1周させた状態において測定対象Xが環状の空芯コイル5,5aの中心から位置ずれした際に、4本のセンサ部2aのうちのいずれかにおける粗部の近傍に測定対象Xが位置したとしても、そのセンサ部2aの粗部の近傍に他の3本のセンサ部2aにおける粗部が位置することがなく、また、4本のセンサ部2aのうちのいずれかにおける密部の近傍に測定対象Xが位置したとしても、そのセンサ部2aの密部の近傍に他の3本のセンサ部2aにおける密部が位置することがないため、環状の電流センサ1Aに対する測定対象Xの位置による検出電圧の変化量が十分に小さくなる。これにより、本例の電流センサ1Aでは、測定対象Xを流れる電流の電流値を正確に測定することが可能となっている。
また、本例の電流センサ1Aでは、前述した電流センサ1と同様にして、N=4本のセンサ部2aを並設して直列接続したことにより、「空芯コイル」を構成する「巻線(導線21,31)」の巻き密度を高くしたり、「巻線(導線21,31)」の巻径を大きくしたりすることなく、測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを1周させるだけで十分なレベルの検出電圧を得ることができる。このため、本例の電流センサ1Aでは、その可撓性を十分に高めて容易に環状に変形させることができるだけでなく、各センサ部2aを十分に小径にすることができるため、環状に変形させた際の内周部や外周部における巻芯4aの変形量を十分に小さくすることができる結果、導線21,31の移動量を十分に小さくすることができ、これにより、環状に変形させる以前の状態から電気的特性が大きく変化するのを回避することができる。したがって、測定対象Xを流れる電流を正確に検出し得る状態を長期間に亘って好適に維持することができる。
このように、この電流センサ1Aでは、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、右巻き)、および空芯コイル5aを構成する導線31の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、左巻き)が同じN=4本のセンサ部2aが並設されると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において各センサ部2aがそれぞれ一体化され、かつ、各センサ部2aにおける各空芯コイル5の各導線21が「戻し線」としての導線31を介して直列接続されている。また、この電流センサ1Aの製造方法では、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向、および空芯コイル5aを構成する導線31の巻芯4aに対する巻回方向が同じN=4本のセンサ部2aを並設すると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において各センサ部2aをそれぞれ一体化し、かつ、各センサ部2aにおける各空芯コイル5の各導線21を「戻し線」としての導線31を介して直列接続して電流センサ1Aを製造する。
したがって、この電流センサ1A、および電流センサ1Aの製造方法によれば、前述した電流センサ1およびその製造方法と同様にして、各空芯コイル5を、導線31を介して直列接続したことで電流センサ1Aの一端部P1と他端部P2とを物理的に離間し得る構造を採用することができるため、測定対象Xを流れる電流の検出に際して測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを配設するときに、測定対象Xを切断することなく、電流センサ1Aの一端部P1および他端部P2を離間させ、測定対象Xの周囲に必要回数巻き回した後に、一端部P1および他端部P2を近接させる作業を実施するだけで測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを配置することができる。また、測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを1回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5a)を2N=8重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができ、測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを2回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5a)を4N=16重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができるため、測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを幾重にも巻き回す作業や、測定対象Xの周囲に幾重にも巻き回された電流センサ1Aを取り外す作業の必要性を十分に低減することができる。これにより、迅速かつ容易に着脱可能な電流センサ1Aを提供することができる。
また、この電流センサ1Aでは、各巻芯4aの一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2aが一体化され、この電流センサ1Aの製造方法では、各巻芯4aの端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2aを一体化して電流センサ1Aを製造する。したがって、この電流センサ1A、および電流センサ1Aの製造方法によれば、例えば、電流センサ1Aを環状にした状態で環状の各空芯コイル5,5a内に測定対象Xを挿通させるようにして測定対象Xの周囲に電流センサ1Aを配置するときに、環状の各空芯コイル5,5aのうちのいずれかに測定対象Xが挿通していない状態が生じるのを好適に回避することができるため、測定対象Xを流れる電流を正確に検出することができる。
さらに、この電流センサ1Aでは、各巻芯4aの一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2aが縒り合わされて一体化され、この電流センサ1Aの製造方法では、各巻芯4aの端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2aを縒り合わせて一体化して電流センサ1Aを製造する。したがって、この電流センサ1A、および電流センサ1Aの製造方法によれば、並設された各センサ部2aを比較的容易に一体化することができるため、電流センサ1Aの製造コストを十分に低減することができ、また、一体化した状態の各センサ部2aが分離する事態を好適に回避することができる。
この場合、この電流センサ1Aでは、巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第1の導線」としての導線21が右巻きされて「第1の空芯コイル」としての空芯コイル5が構成されると共に巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aおよび空芯コイル5の周囲に「戻し線」および「第2の導線」としての導線31が左巻きされて「第2の空芯コイル」としての空芯コイル5aが構成された「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aと、「巻芯」における一端部から他端部に向かって「巻芯」の周囲に「第3の導線」が左巻きされて「第3の空芯コイル」が構成されると共に「巻芯」における他端部から一端部に向かって「巻芯」および「第3の空芯コイル」の周囲に「戻し線」としての「第4の導線」が右巻きされて「第4の空芯コイル」が構成された「第4のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」としてN本(本例では、「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aをN=4本)備えている。
また、この電流センサ1Aの製造方法では、巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第1の導線」としての導線21を右巻きして「第1の空芯コイル」としての空芯コイル5aを構成すると共に巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aおよび空芯コイル5の周囲に「戻し線」および「第2の導線」としての導線31を左巻きして「第2の空芯コイル」としての空芯コイル5aを構成した「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aと、「巻芯」における一端部から他端部に向かって「巻芯」の周囲に「第3の導線」を左巻きして「第3の空芯コイル」を構成すると共に「巻芯」における他端部から一端部に向かって「巻芯」および「第3の空芯コイル」の周囲に「戻し線」としての「第4の導線」を右巻きして「第4の空芯コイル」を構成した「第4のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」として4本(本例では、「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aをN=4本)縒り合わせて電流センサ1Aを製造する。
したがって、この電流センサ1A、および電流センサ1Aの製造方法によれば、構成や製造方法が同じN本(本例では、4本)のセンサ部2aを製作することで電流センサ1Aを製造することができるため、電流センサ1Aの製造コストを十分に低減することができる。また、各センサ部2a毎に、空芯コイル5,5aの2つの「空芯コイル」が巻芯4aの一端部P1と他端部P2との間に存在するため、測定対象Xを流れる電流を一層好適に検出することができる。
次に、「電流センサ」のさらに他の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、上記の電流センサ1,1Aと同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1,7,8に示す電流センサ1Bは、「電流センサの製造方法」に従って製造した「電流センサ」のさらに他の一例であって、2本(「N=2」の例)のセンサ部2b、およびケーブル3を備えて測定対象Xを流れる電流を検出することができるように構成されている。
この場合、両センサ部2bは、「第5のセンサ部」の一例であって、図7に示すように、ケーブル6a,6bの2本を備えて構成されている。ケーブル6aは、可撓性を有する巻芯4a(「第1の巻芯」の一例)における一端部P1から他端部P2(図8参照)に向かって巻芯4aの周囲に「第5の導線」の一例である導線21が右巻きされて「第5の空芯コイル」の一例である空芯コイル5が構成されると共に、空芯コイル5を覆うようにして絶縁被覆22が設けられている。また、ケーブル6bは、上記のケーブル6aにおける巻芯4aと同じ構成の他の巻芯4a(「第2の巻芯」の一例)における他端部P2(「第2の巻芯において第1の巻芯における他端部に隣接する端部」の一例)から一端部P1(「第2の巻芯において第1の巻芯における一端部に隣接する端部」の一例)に向かって巻芯4aの周囲に「戻し線」としての「第6の導線」の一例である導線41が左巻きされて「第6の空芯コイル」の一例である空芯コイル5bが構成されると共に、空芯コイル5bを覆うようにして絶縁被覆22が設けられている。
なお、同図では、センサ部2bの断面構造についての理解を容易とするために、導線21を右下がりの斜め線で塗り潰して図示すると共に、導線41を左下がりの斜め線で塗り潰して図示している。また、本例の電流センサ1Bでは、上記の導線41として、導体の表面が絶縁コーティングされた線材(絶縁被覆線)が使用されているが、この絶縁コーティングの図示を省略する。
この場合、本例の電流センサ1Bでは、前述した電流センサ1,1Aと同様にして、両センサ部2bにおける空芯コイル5の電気的特性が互いに等しくなっている。また、本例の電流センサ1Bでは、両センサ部2b(ケーブル6b)において、巻芯4aに対する導線41の巻回方向(本例では、左巻き)が同じだけでなく、両センサ部2bにおいて同じ太さで同じ材質の導線41が使用されると共に、両センサ部2bにおける導線41の巻回ピッチや巻径についても同じピッチで同じ巻径となるように空芯コイル5bが構成されている。したがって、本例の電流センサ1Bでは、両センサ部2bにおける空芯コイル5bの電気的特性も互いに等しくなっている。
また、両センサ部2bは、図8に示すように、ケーブル6a,6bにおける両巻芯4aの他端部P2においてケーブル6bの導線41がケーブル6aの導線21に「戻し線」として接続されている。なお、同図では、電流センサ1Bの構成に関する理解を容易とするために、巻芯4aに対する導線21,41の巻きピッチを実際のピッチよりも大きく図示すると共に、センサ部2bの長さを実際の長さよりも短く図示している。さらに、この電流センサ1Bでは、N=2本のセンサ部2bにおける各一端部P1および各他端部P2をそれぞれ揃えて並設した状態において両センサ部2bが縒り合わされて各一端部P1から各他端部P2までの全体に亘って一体化されている。
また、この電流センサ1Bでは、両センサ部2bの各導線21が「戻し線」としての導線41を介して直列接続されている。なお、各導線21をそれぞれ右巻きして「第5の空芯コイル」としての空芯コイル5を構成すると共に、各導線41をそれぞれ左巻きして「第6の空芯コイル」としての空芯コイル5bを構成したセンサ部2b(「巻芯に対する巻回方向が同じ」との構成の一例)を備えた構成した電流センサ1Bを例に挙げて説明するが、このような構成に代えて、「第3の巻芯」としての巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第7の導線」を左巻きして「第7の空芯コイル」を構成すると共に、「第4の巻芯」としての巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aの周囲に「戻し線」としての「第8の導線」を右巻きして「第8の空芯コイル」を構成した「第6のセンサ部」を使用して「電流センサ」を構成することもできる(図示せず)。
この電流センサ1Bの製造に際しては、図8に示すように、巻芯4aの一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に導線21を右巻きで巻回して空芯コイル5を形成する。この際には、一例として、後述するように、完成した電流センサ1Bを環状に変形させたときに、その内周側の部位において、隣り合う導線21同士が接することのない程度の小さな隙間が生じるような巻回ピッチで巻芯4aの周囲に導線21を巻回する。次いで、導線21(空芯コイル5)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングして絶縁被覆22を形成することでケーブル6aを製作する。また、他の巻芯4aの他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aの周囲に導線41を左巻きで巻回して空芯コイル5bを形成する。この際には、一例として、後述するように、完成した電流センサ1Bを環状に変形させたときに、その内周側の部位において、隣り合う導線41同士が接することのない程度の小さな隙間が生じるような巻回ピッチで巻芯4aの周囲に導線41を巻回する。次いで、導線41(空芯コイル5b)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングして絶縁被覆22を形成することでケーブル6bを製作する。
なお、上記の製作方法に代えて、上記の芯材の周囲に導線21を右巻きで巻回して空芯コイル5を形成すると共に、導線21(空芯コイル5)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングしたケーブル(図示せず)を任意の同じ長さに切り揃えてケーブル6aを製作したり、上記の芯材の周囲に導線41を左巻きで巻回して空芯コイル5bを形成すると共に、導線41(空芯コイル5b)を覆うようにして絶縁性樹脂材料をコーティングしたケーブル(図示せず)を任意の同じ長さに切り揃えてケーブル6bを製作したりすることもできる。
次いで、図8に示すように、一対のケーブル6a,6bにおける両巻芯4aの他端部P2側において、導線21の端部P21−2と導線41の端部P41−2とを相互に接続する。これにより、ケーブル6a,6bからなるセンサ部2bが完成する。続いて、2本のセンサ部2b(2本のケーブル6a、および2本のケーブル6b)を用意し、それぞれの一端部P1および他端部P2を揃えるようにして並設した状態で両センサ部2bを縒り合わせて一体化する。次いで、両センサ部2bの一端部P1側において一方のセンサ部2bの導線21を他方のセンサ部2bの導線41に接続する。
これにより、同図に示すように、1本目のセンサ部2bのケーブル6aにおける導線21の端部P21−2と1本目のセンサ部2bのケーブル6bにおける導線41の端部P41−2とが他端部P2において相互に接続され、1本目のセンサ部2bのケーブル6bにおける導線41の端部P41−1と2本目のセンサ部2bのケーブル6aにおける導線21の端部P21−1とが一端部P1において相互に接続され、かつ2本目のセンサ部2bのケーブル6aにおける導線21の端部P21−2と2本目のセンサ部2bのケーブル6bにおける導線41の端部P41−2とが他端部P2において相互に接続され、両センサ部2bの2本の導線21(空芯コイル5)が1本目のセンサ部2bにおける導線41(空芯コイル5b)を介して直列接続された状態となる。
次いで、両センサ部2bの一端部P1側において、1本目のセンサ部2bのケーブル6aにおける導線21の端部P21−1、および2本目のセンサ部2bのケーブル6bにおける導線41の端部P41−1にケーブル3を接続する。この後、縒り合わされた状態の両センサ部2bにおける一端部P1(ケーブル3を接続した部位)および他端部P2に樹脂製のキャップを装着することにより、図1に示すように、電流センサ1Bが完成する。
この電流センサ1Bを用いて測定対象Xを流れる電流を検出する際には、測定対象Xの周囲に電流センサ1Bをセットすると共に、ケーブル3を図示しない測定装置(電流検出装置)に接続する。この際に、この電流センサ1Bでは、前述したように、両センサ部2bの他端部P2側において導線21の端部P21−2が導線41の端部P41−2に接続されると共に、両センサ部2bの一端部P1側において導線21の端部P21−1と他のセンサ部2bにおける導線41の端部P41−1とが相互に接続されている。したがって、この電流センサ1Bでは、前述した電流センサ1,1Aと同様にして、各導線21および各導線41を除き、両センサ部2bの一端部P1から他端部P2に跨がる(他端部P2から一端部P1に跨がる)ように配設された配線が存在しないため、電流センサ1B(両センサ部2b)の一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることが可能となっている。
また、この電流センサ1Bでは、N=2本のセンサ部2bが縒り合わされて製造されて、2本の空芯コイル5、および2本の空芯コイル5bが一体化された状態となっているため、図2(a)に示すように、一端部P1および他端部P2を当接させて電流センサ1Bを環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に4周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することができる。また、必要に応じて、図2(b)に示すように、電流センサ1Bを2重環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に8周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することもできる。
この場合、N=2本のセンサ部2bが縒り合わされて一体化されている本例の電流センサ1Bでは、前述した電流センサ1,1Aと同様にして、測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを1周させた状態において測定対象Xが環状の空芯コイル5,5bの中心から位置ずれした際に、2本のセンサ部2bのうちのいずれかにおける粗部の近傍に測定対象Xが位置したとしても、そのセンサ部2bの粗部の近傍に他のセンサ部2bにおける粗部が位置することがなく、また、2本のセンサ部2bのうちのいずれかにおける密部の近傍に測定対象Xが位置したとしても、そのセンサ部2bの密部の近傍に他のセンサ部2bにおける密部が位置することがないため、環状の電流センサ1Bに対する測定対象Xの位置による検出電圧の変化量が十分に小さくなる。これにより、本例の電流センサ1Bでは、測定対象Xを流れる電流の電流値を正確に測定することが可能となっている。
また、本例の電流センサ1Bでは、前述した電流センサ1,1Aと同様にして、N=2本のセンサ部2bを並設して直列接続したことにより、「空芯コイル」を構成する「巻線(導線21,41)」の巻き密度を高くしたり、「巻線(導線21,41)」の巻径を大きくしたりすることなく、測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを1周させるだけで十分なレベルの検出電圧を得ることができる。このため、本例の電流センサ1Bでは、その可撓性を十分に高めて容易に環状に変形させることができるだけでなく、各センサ部2bのケーブル6a,6bを十分に小径にすることができるため、環状に変形させた際の内周部や外周部における巻芯4aの変形量を十分に小さくすることができる結果、導線21,41の移動量を十分に小さくすることができ、これにより、環状に変形させる以前の状態から電気的特性が大きく変化するのを回避することができる。したがって、測定対象Xを流れる電流を正確に検出し得る状態を長期間に亘って好適に維持することができる。
このように、この電流センサ1Bでは、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、右巻き)、および空芯コイル5bを構成する導線41の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、左巻き)が同じN=2本のセンサ部2bが並設されると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において両センサ部2bがそれぞれ一体化され、かつ、両センサ部2bにおける各空芯コイル5の各導線21が「戻し線」としての導線41を介して直列接続されている。また、この電流センサ1Bの製造方法では、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向、および空芯コイル5bを構成する導線41の巻芯4aに対する巻回方向が同じN=2本のセンサ部2bを並設すると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において両センサ部2bをそれぞれ一体化し、かつ、両センサ部2bにおける各空芯コイル5の各導線21を「戻し線」としての導線41を介して直列接続して電流センサ1Bを製造する。
したがって、この電流センサ1B、および電流センサ1Bの製造方法によれば、前述した電流センサ1,1Aおよびその製造方法と同様にして、各空芯コイル5を、導線41を介して直列接続したことで電流センサ1Bの一端部P1と他端部P2とを物理的に離間し得る構造を採用することができるため、測定対象Xを流れる電流の検出に際して測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを配設するときに、測定対象Xを切断することなく、電流センサ1Bの一端部P1および他端部P2を離間させ、測定対象Xの周囲に必要回数巻き回した後に、一端部P1および他端部P2を近接させる作業を実施するだけで測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを配置することができる。また、測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを1回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5b)を2N=4重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができ、測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを2回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5b)を4N=8重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができるため、測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを幾重にも巻き回す作業や、測定対象Xの周囲に幾重にも巻き回された電流センサ1Bを取り外す作業の必要性を十分に低減することができる。これにより、迅速かつ容易に着脱可能な電流センサ1Bを提供することができる。
また、この電流センサ1Bでは、各巻芯4aの一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2bが一体化され、この電流センサ1Bの製造方法では、各巻芯4aの端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2bを一体化して電流センサ1Bを製造する。したがって、この電流センサ1B、および電流センサ1Bの製造方法によれば、例えば、電流センサ1Bを環状にした状態で環状の各空芯コイル5,5b内に測定対象Xを挿通させるようにして測定対象Xの周囲に電流センサ1Bを配置するときに、環状の各空芯コイル5,5bのうちのいずれかに測定対象Xが挿通していない状態が生じるのを好適に回避することができるため、測定対象Xを流れる電流を正確に検出することができる。
さらに、この電流センサ1Bでは、各巻芯4aの一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2bが縒り合わされて一体化され、この電流センサ1Bの製造方法では、各巻芯4aの端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2bを縒り合わせて一体化して電流センサ1Bを製造する。したがって、この電流センサ1B、および電流センサ1Bの製造方法によれば、並設された各センサ部2bを比較的容易に一体化することができるため、電流センサ1Bの製造コストを十分に低減することができ、また、一体化した状態の各センサ部2bが分離する事態を好適に回避することができる。
この場合、この電流センサ1Bでは、「第1の巻芯」としての巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第5の導線」としての導線21が右巻きされて「第5の空芯コイル」としての空芯コイル5が構成されると共に「第1の巻芯」としての巻芯4aに並設された「第2の巻芯」としての巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aの周囲に「第6の導線」としての導線41が左巻きされて「第6の空芯コイル」としてのセンサ部2bが構成された「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bと、「第3の巻芯」における一端部から他端部に向かって「第3の巻芯」の周囲に「第7の導線」が左巻きされて「第7の空芯コイル」が構成されると共に「第3の巻芯」に並設された「第4の巻芯」における他端部から一端部に向かって「第4の巻芯」の周囲に「戻し線」としての「第8の導線」が右巻きされて「第8の空芯コイル」が構成された「第6のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」としてN本(本例では、「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bをN=2本)備えている。
また、この電流センサ1Bの製造方法では、「第1の巻芯」としての巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第5の導線」としての導線21を右巻きして「第5の空芯コイル」としての空芯コイル5を構成すると共に「第1の巻芯」としての巻芯4aに並設した「第2の巻芯」としての巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aの周囲に「第6の導線」としての導線41を左巻きして「第6の空芯コイル」としての空芯コイル5bを構成した「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bと、「第3の巻芯」における一端部から他端部に向かって「第3の巻芯」の周囲に「第7の導線」を左巻きして「第7の空芯コイル」を構成すると共に「第3の巻芯」に並設した「第4の巻芯」における他端部から一端部に向かって「第4の巻芯」の周囲に「第8の導線」を右巻きして「第8の空芯コイル」を構成した「第6のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」としてN本(本例では、「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bをN=2本)縒り合わせて電流センサ1Bを製造する。
したがって、この電流センサ1B、および電流センサ1Bの製造方法によれば、構成や製造方法が同じN本(本例では、2本)のセンサ部2bを製作することで電流センサ1Bを製造することができるため、電流センサ1Bの製造コストを十分に低減することができる。
次に、「電流センサ」のさらに他の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、前述した電流センサ1と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図9,10,4に示す電流センサ51は、「電流センサの製造方法」に従って製造した「電流センサ」のさらに他の一例であって、4本(「N=4」の例)のセンサ部2、およびケーブル3を備えて測定対象Xを流れる電流を検出することができるように構成されている。この場合、前述した電流センサ1では、N=4本のセンサ部2が縒り合わされて一体化されているのに対し、この電流センサ51では、一例として、N=4本のセンサ部2が樹脂成形(モールド)によって一体化されて平ケーブル状に形成されている。具体的には、この電流センサ51では、N=4本のセンサ部2における各絶縁被覆22が一体的に形成されることで各センサ部2における一端部P1から他端部P2までの全体が一体化されている。
より具体的には、この電流センサ51では、ケーブル4の周囲に導線21が巻き回されて空芯コイル5が形成された状態のセンサ部2(絶縁被覆22が形成されていない状態のセンサ部2:以下、この状態のセンサ部2を「センサ部2x」ともいう)をN=4本並設し、その状態で、各センサ部2xの周囲に絶縁被覆22を一体的に形成することで、絶縁被覆22によって各センサ部2xの一端部P1から端他端部P2までの全体が一体化されている。なお、この電流センサ51の製造方法は、絶縁被覆22が形成された状態のN=4本のセンサ部2を縒り合わせて一体化する処理に代えて、上記の樹脂成形(モールド)によって各センサ部2を一体化する処理を実施する点を除き、前述した電流センサ1の製造方法と同様のため、詳細な説明を省略する。
この電流センサ51を用いて測定対象Xを流れる電流を検出する際には、測定対象Xの周囲に電流センサ51をセットすると共に、ケーブル3を図示しない測定装置(電流検出装置)に接続する。この際に、この電流センサ51では、前述した電流センサ1と同様にして、電流センサ51(各センサ部2)の一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることができるため、測定対象Xを切断することなく、その周囲に電流センサ51を配置することが可能となっている。
また、この電流センサ51では、前述した電流センサ1と同様にして、N=4本のセンサ部2が並設された状態で一体化されているため、図2(a)に示すように、一端部P1および他端部P2を当接させて電流センサ51を環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に4周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することができる。また、必要に応じて、図2(b)に示すように、電流センサ51を2重環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に8周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することもできる。さらに、この電流センサ51では、前述した電流センサ1と同様にして、環状の電流センサ51に対する測定対象Xの位置による検出電圧の変化量が十分に小さくなっており、測定対象Xを流れる電流の電流値を正確に測定することが可能となっている。
また、本例の電流センサ51では、前述した電流センサ1等と同様にして、N=4本のセンサ部2を並設して直列接続したことにより、「空芯コイル」を構成する「巻線(導線21)」の巻き密度を高くしたり、「巻線(導線21)」の巻径を大きくしたりすることなく、測定対象Xの周囲に電流センサ51を1周させるだけで十分なレベルの検出電圧を得ることができる。このため、本例の電流センサ51では、その可撓性を十分に高めて容易に環状に変形させることができるだけでなく、各センサ部2を十分に小径にすることができるため、環状に変形させた際の内周部や外周部におけるケーブル4の変形量を十分に小さくすることができる結果、導線21の移動量を十分に小さくすることができ、これにより、環状に変形させる以前の状態から電気的特性が大きく変化するのを回避することができる。したがって、測定対象Xを流れる電流を正確に検出し得る状態を長期間に亘って好適に維持することができる。
このように、この電流センサ51では、空芯コイル5を構成する導線21のケーブル4に対する巻回方向(この例では、右巻き)が同じN=4本のセンサ部2が並設されると共に、少なくとも各ケーブル4の一端部P1側の部位および各ケーブル4の他端部P2側の部位において各センサ部2がそれぞれ一体化され、かつ、各センサ部2における各空芯コイル5の各導線21が「戻し線」としての芯線11を介して直列接続されている。また、この電流センサ51の製造方法では、空芯コイル5を構成する導線21のケーブル4に対する巻回方向が同じN=4本のセンサ部2を並設すると共に、少なくとも各ケーブル4の一端部P1側の部位および各ケーブル4の他端部P2側の部位において各センサ部2をそれぞれ一体化し、かつ各センサ部2における各空芯コイル5の各導線21を「戻し線」としての芯線11を介して直列接続して電流センサ51を製造する。
したがって、この電流センサ51、および電流センサ51の製造方法によれば、各空芯コイル5を、芯線11を介して直列接続したことで電流センサ51の一端部P1と他端部P2とを物理的に離間し得る構造を採用することができるため、測定対象Xを流れる電流の検出に際して測定対象Xの周囲に電流センサ51を配設するときに、測定対象Xを切断することなく、電流センサ51の一端部P1および他端部P2を離間させ、測定対象Xの周囲に必要回数巻き回した後に、一端部P1および他端部P2を近接させる作業を実施するだけで測定対象Xの周囲に電流センサ51を配置することができる。また、測定対象Xの周囲に電流センサ51を1回巻き回すことで1本の空芯コイル5をN=4重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができ、測定対象Xの周囲に電流センサ51を2回巻き回すことで1本の空芯コイル5を2N=8重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができるため、測定対象Xの周囲に電流センサ51を幾重にも巻き回す作業や、測定対象Xの周囲に幾重にも巻き回された電流センサ51を取り外す作業の必要性を十分に低減することができる。これにより、迅速かつ容易に着脱可能な電流センサ51を提供することができる。
また、この電流センサ51では、各ケーブル4の一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2が一体化され、この電流センサ51の製造方法では、各ケーブル4の端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2を一体化して電流センサ51を製造する。したがって、この電流センサ51、および電流センサ51の製造方法によれば、例えば、電流センサ51を環状にした状態で環状の各空芯コイル5内に測定対象Xを挿通させるようにして測定対象Xの周囲に電流センサ51を配置するときに、環状の各空芯コイル5のうちのいずれかに測定対象Xが挿通していない状態が生じるのを好適に回避することができるため、測定対象Xを流れる電流を正確に検出することができる。
この場合、この電流センサ51では、芯線11が絶縁被覆12によって覆われたケーブル4で構成された「巻芯」の周囲に導線21が右巻きされて空芯コイル5が構成されると共にケーブル4の他端部P2において芯線11が「戻し線」として空芯コイル5の導線21に接続された「第1の電流センサ」としてのセンサ部2と、上記のケーブル4と同様のケーブルで構成された「巻芯」の周囲に「導線」が左巻きされて「空芯コイル」が構成されると共に「巻芯」の他端部において「ケーブルの芯線」が「戻し線」として「空芯コイル」の「導線」に接続された「第2のセンサ部」とのいずれかを「センサ部」としてN本(本例では、「第1のセンサ部」としてのセンサ部2をN=4本)備えている。
また、この電流センサ51の製造方法では、芯線11が絶縁被覆12によって覆われたケーブル4で構成された「巻芯」の周囲に導線21を右巻きして空芯コイル5を構成すると共にケーブル4の他端部P2において芯線11を「戻し線」として空芯コイル5の導線21に接続した「第1のセンサ部」としてのセンサ部2と、上記のケーブル4と同様のケーブルで構成された「巻芯」の周囲に「導線」を左巻きして「空芯コイル」を構成すると共に「巻芯」の他端部において「芯線」を「戻し線」として「空芯コイル」の「導線」に接続した「第2のセンサ部」2とのいずれかを「センサ部」としてN本(本例では、「第1のセンサ部」としてのセンサ部2をN=4本)並設して電流センサ51を製造する。
したがって、この電流センサ51、および電流センサ51の製造方法によれば、構成や製造方法が同じN本(本例では、4本)のセンサ部2を製作することで電流センサ51を製造することができるため、電流センサ51の製造コストを十分に低減することができる。
次に、「電流センサ」のさらに他の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、前述した電流センサ1A,51と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図9,11,6に示す電流センサ51Aは、「電流センサの製造方法」に従って製造した「電流センサ」のさらに他の一例であって、4本(「N=4」の例)のセンサ部2a、およびケーブル3を備えて測定対象Xを流れる電流を検出することができるように構成されている。この場合、前述した電流センサ1Aでは、N=4本のセンサ部2aが縒り合わされて一体化されているのに対し、この電流センサ51Aでは、一例として、前述した電流センサ51と同様にして、N=4本のセンサ部2aが樹脂成形(モールド)によって一体化されて平ケーブル状に形成されている。具体的には、この電流センサ51Aでは、N=4本のセンサ部2aにおける各絶縁被覆32が一体的に形成されることで各センサ部2aにおける一端部P1から他端部P2までの全体が一体化されている。
より具体的には、この電流センサ51では、巻芯4aの周囲に導線21が巻き回されて空芯コイル5が形成され、かつその周囲に導線31が巻き回されて空芯コイル5aが形成された状態のセンサ部2a(絶縁被覆32が形成されていない状態のセンサ部2a:以下、この状態のセンサ部2aを「センサ部2ax」ともいう)をN=4本並設し、その状態で、各センサ部2axの周囲に絶縁被覆32を一体的に形成することで、絶縁被覆32によって各センサ部2axの一端部P1から端他端部P2までの全体が一体化されている。なお、この電流センサ51Aの製造方法は、絶縁被覆32が形成された状態のN=4本のセンサ部2aを縒り合わせて一体化する処理に代えて、上記の樹脂成形(モールド)によって各センサ部2aを一体化する処理を実施する点を除き、前述した電流センサ1Aの製造方法と同様のため、詳細な説明を省略する。
この電流センサ51Aを用いて測定対象Xを流れる電流を検出する際には、測定対象Xの周囲に電流センサ51Aをセットすると共に、ケーブル3を図示しない測定装置(電流検出装置)に接続する。この際に、この電流センサ51Aでは、前述した電流センサ1Aと同様にして、電流センサ51A(各センサ部2a)の一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることができるため、測定対象Xを切断することなく、その周囲に電流センサ51Aを配置することが可能となっている。
また、この電流センサ51Aでは、前述した電流センサ1Aと同様にして、N=4本のセンサ部2aが並設された状態で一体化されているため、図2(a)に示すように、一端部P1および他端部P2を当接させて電流センサ51Aを環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に8周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することができる。また、必要に応じて、図2(b)に示すように、電流センサ51Aを2重環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に16周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することもできる。さらに、この電流センサ51Aでは、前述した電流センサ1Aと同様にして、環状の電流センサ51Aに対する測定対象Xの位置による検出電圧の変化量が十分に小さくなっており、測定対象Xを流れる電流の電流値を正確に測定することが可能となっている。
また、本例の電流センサ51Aでは、前述した電流センサ1A等と同様にして、N=4本のセンサ部2aを並設して直列接続したことにより、「空芯コイル」を構成する「巻線(導線21,31)」の巻き密度を高くしたり、「巻線(導線21,31)」の巻径を大きくしたりすることなく、測定対象Xの周囲に電流センサ51Aを1周させるだけで十分なレベルの検出電圧を得ることができる。このため、本例の電流センサ51Aでは、その可撓性を十分に高めて容易に環状に変形させることができるだけでなく、各センサ部2aを十分に小径にすることができるため、環状に変形させた際の内周部や外周部における巻芯4aの変形量を十分に小さくすることができる結果、導線21,31の移動量を十分に小さくすることができ、これにより、環状に変形させる以前の状態から電気的特性が大きく変化するのを回避することができる。したがって、測定対象Xを流れる電流を正確に検出し得る状態を長期間に亘って好適に維持することができる。
このように、この電流センサ51Aでは、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、右巻き)、および空芯コイル5aを構成する導線31の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、左巻き)が同じN=4本のセンサ部2aが並設されると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において各センサ部2aがそれぞれ一体化され、かつ、各センサ部2aにおける各空芯コイル5の各導線21が「戻し線」としての導線31を介して直列接続されている。また、この電流センサ51Aの製造方法では、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向、および空芯コイル5aを構成する導線31の巻芯4aに対する巻回方向が同じN=4本のセンサ部2aを並設すると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において各センサ部2aをそれぞれ一体化し、かつ、各センサ部2aにおける各空芯コイル5の各導線21を「戻し線」としての導線31を介して直列接続して電流センサ51Aを製造する。
したがって、この電流センサ51A、および電流センサ51Aの製造方法によれば、前述した電流センサ1A,51およびその製造方法と同様にして、各空芯コイル5を、導線31を介して直列接続したことで電流センサ51Aの一端部P1と他端部P2とを物理的に離間し得る構造を採用することができるため、測定対象Xを流れる電流の検出に際して測定対象Xの周囲に電流センサ51Aを配設するときに、測定対象Xを切断することなく、電流センサ51Aの一端部P1および他端部P2を離間させ、測定対象Xの周囲に必要回数巻き回した後に、一端部P1および他端部P2を近接させる作業を実施するだけで測定対象Xの周囲に電流センサ51Aを配置することができる。また、測定対象Xの周囲に電流センサ51Aを1回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5a)を2N=8重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができ、測定対象Xの周囲に電流センサ51Aを2回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5a)を4N=16重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができるため、測定対象Xの周囲に電流センサ51Aを幾重にも巻き回す作業や、測定対象Xの周囲に幾重にも巻き回された電流センサ51Aを取り外す作業の必要性を十分に低減することができる。これにより、迅速かつ容易に着脱可能な電流センサ51Aを提供することができる。
また、この電流センサ51Aでは、各巻芯4aの一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2aが一体化され、この電流センサ51Aの製造方法では、各巻芯4aの端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2aを一体化して電流センサ51Aを製造する。したがって、この電流センサ51A、および電流センサ51Aの製造方法によれば、例えば、電流センサ51Aを環状にした状態で環状の各空芯コイル5,5a内に測定対象Xを挿通させるようにして測定対象Xの周囲に電流センサ51Aを配置するときに、環状の各空芯コイル5,5aのうちのいずれかに測定対象Xが挿通していない状態が生じるのを好適に回避することができるため、測定対象Xを流れる電流を正確に検出することができる。
この場合、この電流センサ51Aでは、巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第1の導線」としての導線21が右巻きされて「第1の空芯コイル」としての空芯コイル5が構成されると共に巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aおよび空芯コイル5の周囲に「戻し線」および「第2の導線」としての導線31が左巻きされて「第2の空芯コイル」としての空芯コイル5aが構成された「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aと、「巻芯」における一端部から他端部に向かって「巻芯」の周囲に「第3の導線」が左巻きされて「第3の空芯コイル」が構成されると共に「巻芯」における他端部から一端部に向かって「巻芯」および「第3の空芯コイル」の周囲に「戻し線」としての「第4の導線」が右巻きされて「第4の空芯コイル」が構成された「第4のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」としてN本(本例では、「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aをN=4本)備えている。
また、この電流センサ51Aの製造方法では、巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第1の導線」としての導線21を右巻きして「第1の空芯コイル」としての空芯コイル5aを構成すると共に巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aおよび空芯コイル5の周囲に「戻し線」および「第2の導線」としての導線31を左巻きして「第2の空芯コイル」としての空芯コイル5aを構成した「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aと、「巻芯」における一端部から他端部に向かって「巻芯」の周囲に「第3の導線」を左巻きして「第3の空芯コイル」を構成すると共に「巻芯」における他端部から一端部に向かって「巻芯」および「第3の空芯コイル」の周囲に「戻し線」としての「第4の導線」を右巻きして「第4の空芯コイル」を構成した「第4のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」として4本(本例では、「第3のセンサ部」としてのセンサ部2aをN=4本)並設して電流センサ51Aを製造する。
したがって、この電流センサ51A、および電流センサ51Aの製造方法によれば、構成や製造方法が同じN本(本例では、4本)のセンサ部2aを製作することで電流センサ51Aを製造することができるため、電流センサ51Aの製造コストを十分に低減することができる。また、各センサ部2a毎に、空芯コイル5,5aの2つの「空芯コイル」が巻芯4aの一端部P1と他端部P2との間に存在するため、測定対象Xを流れる電流を一層好適に検出することができる。
次に、「電流センサ」のさらに他の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、上記の電流センサ1B,51,51Aと同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図9,12,8に示す電流センサ51Bは、「電流センサの製造方法」に従って製造した「電流センサ」のさらに他の一例であって、2本(「N=2」の例)のセンサ部2b、およびケーブル3を備えて測定対象Xを流れる電流を検出することができるように構成されている。この場合、前述した電流センサ1Bでは、N=2本のセンサ部2bが縒り合わされて一体化されているのに対し、この電流センサ51Bでは、一例として、N=2本のセンサ部2b(2本のケーブル6a、および2本のケーブル6b)が樹脂成形(モールド)によって一体化されて平ケーブル状に形成されている。具体的には、この電流センサ51Bでは、N=2本のセンサ部2b(ケーブル6a,6b)における各絶縁被覆22が一体的に形成されることで両センサ部2bにおける一端部P1から他端部P2までの全体が一体化されている。
より具体的には、この電流センサ51Bでは、巻芯4aの周囲に導線21が巻き回されて空芯コイル5が形成された状態のケーブル6a(絶縁被覆22が形成されていない状態のケーブル6a:以下、この状態のケーブル6aを「ケーブル6ax」ともいう)と、巻芯4aの周囲に導線41が巻き回されて空芯コイル5bが形成された状態のケーブル6b(絶縁被覆22が形成されていない状態のケーブル6b:以下、この状態のケーブル6bを「ケーブル6ax」ともいう)とをそれぞれ2本ずつ、計4本並設することにより、絶縁被覆22が形成されていない状態のセンサ部2b(以下、この状態のセンサ部2bを「センサ部2bx」ともいう)をN=2本並設し、その状態で、各センサ部2bx(ケーブル6ax,6bx)の周囲に絶縁被覆22を一体的に形成することで、絶縁被覆22によって両センサ部2bxの一端部P1から端他端部P2までの全体が一体化されている。なお、この電流センサ51Bの製造方法は、絶縁被覆22が形成された状態のN=2本のセンサ部2bを縒り合わせて一体化する処理に代えて、上記の樹脂成形(モールド)によって各センサ部2bを一体化する処理を実施する点を除き、前述した電流センサ1Bの製造方法と同様のため、詳細な説明を省略する。
この電流センサ51Bを用いて測定対象Xを流れる電流を検出する際には、測定対象Xの周囲に電流センサ51Bをセットすると共に、ケーブル3を図示しない測定装置(電流検出装置)に接続する。この際に、この電流センサ51Bでは、前述した電流センサ1Bと同様にして、電流センサ51B(両センサ部2b)の一端部P1および他端部P2を物理的に離間させることができるため、測定対象Xを切断することなく、その周囲に電流センサ51を配置することが可能となっている。
また、この電流センサ51Bでは、前述した電流センサ1Bと同様にして、N=2本のセンサ部2b(2本のケーブル6a、および2本のケーブル6b)が並設された状態で一体化されているため、図2(a)に示すように、一端部P1および他端部P2を当接させて電流センサ51Bを環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に4周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することができる。また、必要に応じて、図2(b)に示すように、電流センサ51Bを2重環状にすることで、従来のロゴスキーコイルと同様の構成の電流センサを測定対象Xの周囲に8周に亘って巻き回したのと同等の電流センサとして使用することもできる。さらに、この電流センサ51Bでは、前述した電流センサ1Bと同様にして、環状の電流センサ51Bに対する測定対象Xの位置による検出電圧の変化量が十分に小さくなっており、測定対象Xを流れる電流の電流値を正確に測定することが可能となっている。
また、本例の電流センサ51Bでは、前述した電流センサ1B等と同様にして、N=2本のセンサ部2bを並設して直列接続したことにより、「空芯コイル」を構成する「巻線(導線21,41)」の巻き密度を高くしたり、「巻線(導線21,41)」の巻径を大きくしたりすることなく、測定対象Xの周囲に電流センサ51Bを1周させるだけで十分なレベルの検出電圧を得ることができる。このため、本例の電流センサ51Bでは、その可撓性を十分に高めて容易に環状に変形させることができるだけでなく、各センサ部2bのケーブル6a,6bを十分に小径にすることができるため、環状に変形させた際の内周部や外周部における巻芯4aの変形量を十分に小さくすることができる結果、導線21,41の移動量を十分に小さくすることができ、これにより、環状に変形させる以前の状態から電気的特性が大きく変化するのを回避することができる。したがって、測定対象Xを流れる電流を正確に検出し得る状態を長期間に亘って好適に維持することができる。
このように、この電流センサ51Bでは、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、右巻き)、および空芯コイル5bを構成する導線41の巻芯4aに対する巻回方向(この例では、左巻き)が同じN=2本のセンサ部2bが並設されると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において両センサ部2bがそれぞれ一体化され、かつ、両センサ部2bにおける各空芯コイル5の各導線21が「戻し線」としての導線41を介して直列接続されている。また、この電流センサ51Bの製造方法では、空芯コイル5を構成する導線21の巻芯4aに対する巻回方向、および空芯コイル5bを構成する導線41の巻芯4aに対する巻回方向が同じN=2本のセンサ部2bを並設すると共に、少なくとも各巻芯4aの一端部P1側の部位および各巻芯4aの他端部P2側の部位において両センサ部2bをそれぞれ一体化し、かつ、両センサ部2bにおける各空芯コイル5の各導線21を「戻し線」としての導線41を介して直列接続して電流センサ51Bを製造する。
したがって、この電流センサ51B、および電流センサ51Bの製造方法によれば、前述した電流センサ51,1Aおよびその製造方法と同様にして、各空芯コイル5を、導線41を介して直列接続したことで電流センサ51Bの一端部P1と他端部P2とを物理的に離間し得る構造を採用することができるため、測定対象Xを流れる電流の検出に際して測定対象Xの周囲に電流センサ51Bを配設するときに、測定対象Xを切断することなく、電流センサ51Bの一端部P1および他端部P2を離間させ、測定対象Xの周囲に必要回数巻き回した後に、一端部P1および他端部P2を近接させる作業を実施するだけで測定対象Xの周囲に電流センサ51Bを配置することができる。また、測定対象Xの周囲に電流センサ51Bを1回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5b)を2N=4重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができ、測定対象Xの周囲に電流センサ51Bを2回巻き回すことで1本の空芯コイル5(または、空芯コイル5b)を4N=8重の環状としたのと同じ大きさの検出電圧を得ることができるため、測定対象Xの周囲に電流センサ51Bを幾重にも巻き回す作業や、測定対象Xの周囲に幾重にも巻き回された電流センサ51Bを取り外す作業の必要性を十分に低減することができる。これにより、迅速かつ容易に着脱可能な電流センサ51Bを提供することができる。
また、この電流センサ51Bでは、各巻芯4aの一端部P1側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2bが一体化され、この電流センサ51Bの製造方法では、各巻芯4aの端部側の部位から他端部P2側の部位までの全体に亘って各センサ部2bを一体化して電流センサ51Bを製造する。したがって、この電流センサ51B、および電流センサ51Bの製造方法によれば、例えば、電流センサ51Bを環状にした状態で環状の各空芯コイル5,5b内に測定対象Xを挿通させるようにして測定対象Xの周囲に電流センサ51Bを配置するときに、環状の各空芯コイル5,5bのうちのいずれかに測定対象Xが挿通していない状態が生じるのを好適に回避することができるため、測定対象Xを流れる電流を正確に検出することができる。
この場合、この電流センサ51Bでは、「第1の巻芯」としての巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第5の導線」としての導線21が右巻きされて「第5の空芯コイル」としての空芯コイル5が構成されると共に「第1の巻芯」としての巻芯4aに並設された「第2の巻芯」としての巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aの周囲に「第6の導線」としての導線41が左巻きされて「第6の空芯コイル」としてのセンサ部2bが構成された「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bと、「第3の巻芯」における一端部から他端部に向かって「第3の巻芯」の周囲に「第7の導線」が左巻きされて「第7の空芯コイル」が構成されると共に「第3の巻芯」に並設された「第4の巻芯」における他端部から一端部に向かって「第4の巻芯」の周囲に「戻し線」としての「第8の導線」が右巻きされて「第8の空芯コイル」が構成された「第6のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」としてN本(本例では、「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bをN=2本)備えている。
また、この電流センサ51Bの製造方法では、「第1の巻芯」としての巻芯4aにおける一端部P1から他端部P2に向かって巻芯4aの周囲に「第5の導線」としての導線21を右巻きして「第5の空芯コイル」としての空芯コイル5を構成すると共に「第1の巻芯」としての巻芯4aに並設した「第2の巻芯」としての巻芯4aにおける他端部P2から一端部P1に向かって巻芯4aの周囲に「第6の導線」としての導線41を左巻きして「第6の空芯コイル」としての空芯コイル5bを構成した「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bと、「第3の巻芯」における一端部から他端部に向かって「第3の巻芯」の周囲に「第7の導線」を左巻きして「第7の空芯コイル」を構成すると共に「第3の巻芯」に並設した「第4の巻芯」における他端部から一端部に向かって「第4の巻芯」の周囲に「第8の導線」を右巻きして「第8の空芯コイル」を構成した「第6のセンサ部」との少なくとも一方を「センサ部」としてN本(本例では、「第5のセンサ部」としてのセンサ部2bをN=2本)並設して電流センサ51Bを製造する。
したがって、この電流センサ51B、および電流センサ51Bの製造方法によれば、構成や製造方法が同じN本(本例では、2本)のセンサ部2bを製作することで電流センサ51Bを製造することができるため、電流センサ51Bの製造コストを十分に低減することができる。
なお、「電流センサ」の構成、および「電流センサの製造方法」の具体的な手順は、上記の電流センサ1,1A,1B,51,51A,51Bの構成、およびその製造方法の各手順の例に限定されない。例えば、樹脂成形によって各「センサ部」の「絶縁被覆」を一体成形することで各「センサ部」の一端部から他端部までの全体を一体化した電流センサ51,51A,51Bを例に挙げて説明したが、各「センサ部」を一体化する構成およびその手順は、「絶縁被覆」および「樹脂成形(モールド」に限定されない。具体的には、一例として、N本の「センサ部」を接着剤によって互いに接着して一体化したり、結束具(結束バンド、輪ゴムおよび針金等)によってN本の「センサ部」を括って(結束して)一体化したり、可撓性を有する管体内にN本の「センサ部」を挿通させて一体化したりすることができる(いずれも図示せず)。この場合、管体内にN本の「センサ部」を挿通させて一体化する際には、管体として、熱収縮チューブ等の縮径型チューブを利用することで、「電流センサ」全体としての太さを十分に細くすることができる。
また、各「巻芯(センサ部)」の一端部から他端部までの全体を一体化した例について説明したが、「電流センサ」の構成はこれに限定されず、並設したN本の「センサ部」における一端部および他端部がそれぞれ一体化されている限り、測定対象Xの周囲に容易に巻き回すことができるため、各「センサ部」における一端部および他端部の間の各部については、一体化しない構成を採用したり、所定長さ毎に一体化した部位と一体化しない部位とが点在する構成を採用したりすることもできる(いずれも図示せず)。