(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態にかかり特にモータ制御回路の概念図を示す。モータ制御回路100は、FLL回路150、駆動波形生成回路160、進角制御回路170、ドライバ180a、モータ182、FG出力回路188を備える。なおモータ182はブラシレスDCモータであり、図示しない可動子(回転子)および駆動巻線を有する。
FLL(Frequency Locked Loop)回路150は、一般的によく知られた周波数同期回路と称されるもので、モータ182側からフィードバックされたモータ回転数を周波数に変換した信号と目標周波数とを比較し、その周波数差に基づきモータの回転数を制御する。FLL回路150には、第1信号入力端子152、第2信号入力端子154が設けられていて、第1信号入力端子152にはモータ182の回転数を制御するにあたり目標周波数を有するデジタル信号が入力される。デジタル信号はたとえば電圧制御型発振器で生成される。電圧制御型発振器としては、たとえば水晶発振子、セラミック共振子、可変容量キャパシタを用いたものを採用することができる。第2信号入力端子154にはモータ182の回転速度に応じた電圧がFG出力回路188で所定の周波数に変換されたFG信号(デジタル信号)が入力される。本発明では、FG出力回路188で生成されるデジタル信号の周波数および位相をそれぞれフィードバック周波数およびフィードバック位相と称する。FG出力回路188は当業者にはよく知られた、たとえばホール素子、エンコーダ、リゾルバなどを用いて構成することができる。FLL回路150は、第1入力端子152、第2入力端子154の他に周波数比較回路156、ループフィルタ158を有する。ループフィルタ158は低域の周波数を通過させ高域の周波数を阻止するローパスフィルタで構成される。ループフィルタ158はモータの回転速度が急激に変化した場合や、モータ182で駆動される負荷の大きさが急激に変化した場合に対する応答性を決定する。
駆動波形生成回路160には、FLL回路150のループフィルタ158から出力された積分信号が入力される。駆動波形生成回路160は、後段のドライバ180aにドライブ信号を供給する。ドライブ信号はたとえば、PWM(Pulse Width Modulation)方式を採用した場合には、パルスの幅が時間の経過とともに変化する信号である。駆動波形生成回路160はたとえば、PWM信号を生成するために、三角波生成回路162、正弦波生成回路164、およびコンパレータ166を有する。三角波信号はたとえば、抵抗とキャパシタを用いてミラー積分回路を構成して生成するか、またはキャパシタを定電流で充放電して生成することができる。正弦波信号はホールコンパレータ186の切り替わりのエッジを検出して、所定のビット数の離散的なパルス信号を生成し、その離散的なパルス信号を元に擬似的な正弦波信号を生成する。三角波生成回路162で生成される三角波信号Vtriはコンパレータ166のたとえば、反転端子(−)に、正弦波生成回路164で生成される正弦波信号Vsineはその非反転端子(+)にそれぞれ入力される。このとき、両者の振幅同士がコンパレータ166で比較され、両者の振幅の差に応じてPWM信号Vpmwがコンパレータ166の出力から取り出される。ループフィルタ158から取り出された積分信号(直流電圧)は、正弦波生成回路164で生成される正弦波信号Vsineの振幅を調整する。正弦波信号はホールコンパレータ186の切り替わりのエッジを検出して、所定のビット数の離散的なパルス信号を生成し、その離散的なパルス信号を元に擬似的な正弦波信号を生成する。また、正弦波信号の振幅値を調整するにはV−I変換回路を設け、V−I変換回路で一端、電流に変換し変換した電流を抵抗値が異なる複数の抵抗で電圧に変換するとよい。正弦波信号Vsineは、三角波信号Vtriの振幅とはコンパレータ166で比較され、その比較結果によってデューティ比が調整されたPWM信号Vpmwとして出力される。PWM信号Vpmwのデューティ比が調整されると、モータ182を駆動する駆動電流が制御され進角制御が行われる。なお、PWM信号Vpmwが進角制御回路170によって進角の制御を受けると、進角量0度のときはPWM信号Vpmw0、進角量30度のときはPWM信号Vpmw30で示すように両者の位相は変わってくる。駆動波形生成回路160のおもな働きはドライバ180aを駆動することであるが、後述の進角制御回路170と同様に進角制御の機能も有している。
コンパレータ166から出力されるたとえばPWM信号Vpmwはドライバ180aに供給される。ドライバ180aはたとえば、三相ドライバからなり、モータ182を駆動する。ドライバ180aの詳細については後述する。
モータ182の回転数、回転速度はFG(Frequency Generator)出力回路188で所定の周波数を有するデジタル信号(FG信号)に変換され、FLL回路150の第2信号入力端子154を介して周波数比較回路156にフィードバックされる。
なお、図1にはFLL回路150を示し、周波数比較回路156で第1信号入力端子152に入力される目標周波数と第2信号入力端子に入力されるフィードバック周波数とを比較するようにした。しかし、FLL回路150に替えてPLL回路を採用するか、またはFLL回路150とPLL回路190(図2,3参照)を直列または並列に結合してモータ制御回路100を構成することもできる。FLL回路150に替えてPLL回路190を採用した場合には、第1信号入力端子152と第2信号入力端子154は、それぞれ目標位相とフィードバック位相を比較するデジタル信号を受け入れる端子となる。
進角制御回路170にはFLL回路150のループフィルタ158から出力された積分信号すなわち直流電圧が印加されている。進角制御回路170は、駆動波形生成回路160とは別の進角制御の働きを有する。進角制御回路170は、ドライバ180aに供給するPWM信号Vpmwの位相を進めたり遅らせたりするために用意される。すなわち、本発明の進角制御回路170は正弦波生成回路164で生成された正弦波信号Vsineの信号の位相を制御する役目を担っている。正弦波信号Vsineの位相を制御するにはたとえば、ホールコンパレータ186から出力したデジタル信号の位相を調整する。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態にかかり、特に図1に示した本発明にかかるモータ制御回路の具体例を示す。
モータ制御回路100Aは、MPU110、入力端子112、シュミットインバータ114、平滑回路120、基準クロック生成回路130、ソフトスタート回路140、PLL(Phase Locked Loop)回路190、FLL回路(Frequency Locked Loop)150、積分アンプ159、駆動波形生成回路160、進角制御回路170、ドライバ180a、プリドライバ180b、モータ182.ホール素子184、ホールコンパレータ186.FG(Frequency Generator)出力回路188を具備している。図1と同じ箇所には同じ符号を用いている。
図2において、MPU110は本発明にかかるモータ制御回路100Aを駆動するための基準となる入力信号を出力する。入力信号は、たとえばパルスの振幅値を調整するパルス振幅変調(PAM:Pulse Amplitude Modulation)方式、パルスの幅を調整するパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)またはこれらを組み合わせた方式で生成することができる。PAM方式では入力信号の振幅値を調整してモータ182の回転数を設定する。また、PWM方式では、入力信号のデユーティ比を調整してモータ182を所定の回転数で運転することができる。また、両者を組み合わせるならばモータ182の回転速度に応じて使い分けることができる。たとえば、比較的低速度の場合にはPAM方式を、比較的高速度の場合にはPWM方式をそれぞれ採用することができる。いずれにしてもMPU110は、モータ182の回転数を制御する入力信号を生成するために用意されている。なお、本書においてMPU110はマイコンと称し、MPU(マイクロプロセッサユニット)の他にDSP、CPUはもちろんのこと、マイコンの中にはモータの回転速度が設定できる信号発生器も含まれる。
入力端子112は、MPU110より供給されるたとえばPWM入力信号を受け入れるために用意されている。入力端子112は、モータ制御回路100Aが、たとえばMPU110、ホール素子184、モータ182、ホールコンパレータ186、FG出力回路188を除いた回路素子が半導体集積回路装置に内蔵されるときに、その半導体集積回路装置に設けた外部端子の1つである。
シュミットインバータ114は、入力端子112に入力されるたとえばPWM入力信号の状態が不安定になるという、いわゆるチャタリング(Chattering)を抑止するために用いる。チャタリングとは、PWM入力信号が本来のレベルから逸脱し、オン・オフが細かく繰り返される事象を指す。こうした不具合状態を排除するために、ヒステリシス特性をもったシュミットインバータ114を採用し、後段の回路部が誤動作しないようにしている。なお、シュミットインバータ114には電源電圧VREGが印加されるが、電源電圧VREGは、たとえば電圧が5Vに制御された電源電圧であり、後述のプリドライバ、ドライバを除いては電源電圧5Vが供給されている。
平滑回路120は、シュミットインバータ114から出力されたたとえばPWM信号を平滑し、ほぼレベルが一定な直流電圧に変換するために用意されている。平滑回路120を構成するには、たとえば抵抗R10とキャパシタC10を1段または数段直列に接続すればよい。平滑回路120は、単に抵抗R10、キャパシタC10で構成せずにオペアンプを用いて構成してもよい。また、平滑する前のPWM信号を増幅した後に平滑回路120で直流電圧に変換してもよいし、入力端子112に印加されたPWM信号をたとえば図示しないオペアンプで増幅し、増幅した後に平滑回路120で直流電圧に変換するようにしてもよい。
基準クロック生成回路130は本発明のモータ制御回路100Aにおいて、目標周波数や目標位相を設定するための基準クロック信号を生成するために用意され、平滑回路120で生成される直流電圧に応動して設定される。すなわち、MPU110で指定された入力信号に応動する。基準クロック生成回路130は、いわば印加される直流電圧によって、その発振周波数が制御される電圧制御型発振器(VCO)で構成されている。VCOとしては、たとえば、水晶振動子やセラミック発振子を用いたものや、可変容量ダイオードなどを用いたものを採用することができ、その周波数器はたとえば200Hz〜1KHzに選ばれる。
ソフトスタート回路140は、基準クロック生成回路130の動作スタート点を制御するために用意されている。すなわち、ソフトスタート回路140は、モータ制御回路100Aを緩やかに作動させるために用意されている。たとえば車載モータの回転を急に上昇させると、モータ制御回路100Aにラッシュ電流が流れノイズが発生する。また、モータ182を急加速、急ブレーキすると異常音を発生したりする。こうした不具合を防止するために、ソフトスタート回路140によってスタート基準クロック生成回路130を緩やかに作動させるようにしている。
PLL回路190は、位相比較回路192、ループフィルタ194、VCO196(電圧制御発振回路)及び分周器198で構成される。PLL回路190は本発明では必ずしも必須の構成要件ではない。FLL回路150を単独で構成してもかまわない。PLL回路190はFLL回路150の代わりに用いることができる。この場合にはPLL回路190が単独でモータ制御回路100Aを構成する。図2にはPLL回路190の後段にFLL回路150を結合したものを示した。こうしたPLLとFLLの組み合わせは、構成はやや複雑なりコスト高につながるが、それぞれを単独で構成する場合に比べてモータの制御精度を高めることにつながる。図2には、PLL回路190の後段にFLL回路150を結合したが、これらの順序は逆でもよく、FLL回路150の後段にPLL回路190を結合してもよい。また、FLL回路150とPLL回路190を直列ではなく並列に結合してモータ制御回路100Aを構成することもできる。この場合には、FLL回路150から出力される周波数差に応じた出力信号とPLL回路190から出力される位相差に応じた出力信号とを加算した合成信号に基づき進角制御を行う。
PLL回路190の一部を構成する位相比較回路192は、分周器198から入力される分周信号の位相と基準クロック生成回路130で生成された基準クロック信号の位相とを比較する。両者の位相差に応じた誤差信号がループフィルタ194で平滑され、平滑された直流電圧はVCO196に入力され、VCO196の発振周波数を制御する。VCO196は電圧制御型発振器であり、たとえば水晶発振子を用いて構成される。
ループフィルタ194は、ローパスフィルタ(低域通過フィルタ)である。ループフィルタ194は、たとえば2次特性を有するようにたとえば抵抗、キャパシタの時定数が設定される。
分周器198は、VCO196で発振された発振信号を所定の分周比Nで分周し、分周された分周信号は基準クロック生成回路130で生成された基準クロック信号と位相比較回路192で比較され、VCO196で発振された発振信号は基準クロック信号の位相に同期される。なお、PLL190を採用することで回路構成が少し複雑になり、コスト高になることは免れない。しかし、VCO196は後段のFLL回路150の目標周波数を定める入力信号を出力し、VCO196に水晶発振子を用いた場合にはFLL回路150を周波数の変動差が極めて小さな発振信号で制御することができる。
FLL回路150は、第1信号入力端子152、第2信号入力端子154を備える。第1信号入力端子152、第2信号入力端子154は、図1にも示している。第1信号入力端子152にはVCO196で生成された発振信号が入力される。第2信号入力端子154にはFG出力回路188から取り出されたFG信号が入力される。FG信号はモータ182の極数、回転数、回転速度に対応したデジタル信号で所定の周波数に設定される。
FLL回路150は、さらに周波数比較回路156、ループフィルタ158を備える。周波数比較回路156はVCO196から第1信号入力端子152に印加される目標周波数と、FG出力回路188から第2信号入力端子154に印加されるフィードバック周波数とを比較する。なお、PLL回路190を設けずにFLL回路150のみでモータ制御回路100Aを構成する場合には、第1信号入力端子152には基準クロック生成回路130から制御の基準となる目標周波数が印加されることになる。
ループフィルタ158は、周波数比較回路156から出力された周波数差を平滑する。ループフィルタ158の時定数はPLL回路190に用いたループフィルタ194のそれとは異なるが、ローパスフィルタである点では共通している。
積分アンプ159は、ループフィルタ158から取り出された電圧成分をさらに平滑し、所定のレベルまで増幅する。増幅された直流電圧には、FG出力回路188からフィードバックされたFG信号の信号成分が含まれる。積分アンプ159から出力されるフィードバック信号Vfbは駆動波形生成回路160および進角制御回路170を制御するために利用するのが本発明の特徴の1つである。
駆動波形生成回路160は図1に示したものと同じであるので、詳細な説明は省略する。
進角制御回路170は、V−I変換回路172、ADC174を備える。V−I変換回路172には端子176,178が用意されている。端子178はADC174の入力側すなわちアナログ信号の入力端子の役割を兼ね備えている。端子176には抵抗R20の一端が、端子178には抵抗R30の一端がそれぞれ接続されている。抵抗R20,R30の他端はともに接地電位GNDに接続されている。
V−I変換回路172は、積分アンプ159に出力されるフィードバック信号Vfbを変換電流Isに変換するために用意されている。変換電流Isは、端子176に出力されるフィードバック変換電圧V176の大きさと抵抗R20の大きさによって定められている。ここで、フィードバック変換電圧V176は、フィードバック信号Vfbに比例した電圧であり、フィードバック変換電圧V176はフィードバック信号Vfbに係数kを乗じた大きさで表すことができる。すなわち、V176=k・Vfbである。係数kが1に設定されると、フィードバック変換電圧V176とフィードバック信号Vfbは同じ大きさとなる。いずれにしても係数kは設計事項の1つであり、フィードバック信号Vfbの大きさ、抵抗R20の大きさ、V−I変換回路172のダイナミックレンジ、ADC174のダイナミックレンジを元にして決定すればよい。端子176に電圧V176が発生すると、その電圧に応じたアナログ電流は抵抗R20の大きさに反比例した変換電流Isに変換され端子178を介して抵抗R30に流れる。端子178に発生したアナログ電圧信号(進角信号)は電圧V178に変換されADC174に入力される。電圧V178はADC174でアナログ/デジタル変換され、デジタル信号Vsを出力する。抵抗R20と抵抗R30との抵抗比に基づきフィードバック信号Vfbと電圧V178の関係比が決定されている。
プリドライバ180bは駆動波形生成回路160からPWM信号を受け、後段のドライバ180aを駆動するために用意される。
ドライバ180aは、プリドライバ180bからのPWM駆動信号を受け、モータ182を駆動する。ドライバ180aは、三相ドライバ、三相インバータなどとも称される。ドライバ180aは、ハイサイドトランジスタQUH,QVH,QWH、およびローサイドトランジスタQUL,QVL,QWLを備える。なお、ドライバ180aには参考のために相抵抗R40を示した。相抵抗R40は駆動巻線に流れる相電流を電圧し変換し、変換された電圧に基づき進角制御を行うことが知られている。本発明の一実施形態では相抵抗R40は備えていないし、また、進角制御にも利用していない。相抵抗R40を採用しないことによって、スイッチングノイズの影響を抑止することができる。なお、ドライバ180aには電源電圧VCCが供給されている。電源電圧VCCは、車載用モータ制御回路の場合には12Vまたは24Vが一般的に使用される。
モータ182には本発明の一実施形態ではブラシレスDCモータを採用している。
ホール素子184は、モータ182がブラシレスDCモータである場合に可動子の位置を検出するために用意される。
ホールコンパレータ186は、ホール素子184に発生した電気角120度ずつずれたたとえば3つのデジタル信号を比較するために用意される。
FG出力回路188は、ホールコンパレータ186から出力される信号に基づき所定の周波数を有するデジタル信号をFLL回路150の第2信号入力端子154に入力する。FG出力回路188から出力されるFG信号の周波数はモータ182の回転数や、モータ182の極数によって異なる。多極数になるほどまた、回転数に比例してその周波数は大きくなるが概ねその周波数は1KHz以下である。
図2に示すモータ制御回路100Aに用いる電源電圧VREGは電源電圧VCCを元にして生成される定電圧源であり、電源電圧VCCの電源変動や温度の変化に影響を受けずにたとえば5Vに固定されている。このため、本発明の第2の実施形態では、電源電圧VREGを元に、シュミットインバータ114、基準クロック生成回路130、ソフトスタート回路140、FLL回路150、PLL回路190、積分アンプ159、駆動波形生成回路160、進角制御回路170などが作動されるので、電源電圧変動やモータの負荷変動の影響を受けずにモータの進角制御を行うことができる。
(第3の実施形態)
図3は、本発明にかかる第3の実施形態を示す。図3に示すモータ制御回路100Bは、図2に示したモータ制御回路100Aの一部を変更したものである。図2との違いは、進角制御回路170にDAC179を設け、DAC179を介してFG出力回路188からのFG信号をV−I変換回路172に印加するようにしたことである。DAC179は、FG出力回路188から出力されるデジタル信号(FG信号)をアナログ信号に変換してV−I変換回路172に入力するために用意されている。図3に示す第3の実施形態は、積分アンプ159からの出力を進角制御に利用する方式ではない。しかし、積分アンプ159の出力は進角制御の機能も併せ有する駆動波形生成回路160を制御している。このため、周波数比較回路156または位相比較回路192から取り出される目標周波数とフィードバック周波数との周波数差、または目標位相とフィードバック位相との位相差に基づき進角制御を行うことになり、図3に示したモータ制御回路100Bは本発明の技術的範囲に属すると解するのが妥当である。
図4は本発明にかかる進角制御を説明するために、インバータ180aに供給する電源電圧VCCが変化したとき、およびモータ182で駆動される負荷(不図示)の大きさが変化したときのモータ182の駆動巻線に流れる駆動電流と進角すべき進角量を模式的に示したものである。
図4(a1),(a2)は、電源電圧VCCが変化したときを、図4(b1),(b2)は負荷が変化したときをそれぞれ示す。
図4(a1)の横軸には電源電圧VCCが標準時、減電圧時、過電圧時の3点を示し、その縦軸には駆動巻線に流れる駆動電流の大きさを示す。図4(a1)に示すようにモータ182の回転数は電源電圧VCCの変化に関係なく一定になるように制御されている条件下では、電源電圧VCCが標準時よりも低くなったとき、すなわち減電圧時では駆動電流は増加し、反対に高くなったときには、駆動電流は減少する。
図4(a2)の横軸には図4(a1)と同じように電源電圧VCCが標準時、減電圧時、過電圧時の3点を示している。その縦軸には進角量および進角制御すべき方向を示している。モータ182の回転数は電源電圧VCCの変化に関係なく一定になるように制御されている条件下では、電源電圧VCCが標準時よりも低くなったときには、駆動電流は増加するので進角量は進角方向Y1で示すように標準時よりは進角量を増加させなければならない。もし、進角制御が電源電圧VCCの変化に対してなんら施されない場合には進角方向Y0で示すように進角制御量は常に0であるので、モータ182の出力トルクの効率は低下したままとなる。電源電圧VCCが標準時よりも高くなったときには減電圧時とは逆のことを施すことになる。すなわち、駆動電流は減少するので、進角量は減電圧時とは反対に減少するように進角方向Y2で示すように標準時よりは進角量を減少させなければならない。もし、進角制御を過電圧時になんら施されない場合には進角方向Y0で示すように進角制御量は常に0であるので、モータ182の出力トルクの効率は低下したままとなる。
図4(b1)の横軸にはモータ182の負荷が標準時、軽負荷時、過負荷時の3点を示し、その縦軸には駆動巻線に流れる駆動電流の大きさを示す。図4(b1)に示すようにモータ182の回転数は電源電圧VCCの変化に関係なく一定になるように制御されている条件下では、負荷が標準時よりも軽くなったとき、すなわち軽負荷時では駆動電流は減少し、反対に過負荷時には駆動電流は増加する。
図4(b2)の横軸には図4(b1)と同じように標準時、軽負荷時、過負荷時の3点を示している。その縦軸には進角量および進角制御すべき方向を示している。モータ182の回転数が負荷の軽重に関係なく一定になるように制御されている条件下では、負荷が標準時よりも軽くなったときには、駆動電流は減少するので進角量は進角方向Y3で示すように減少させなければならない。もし進角制御の対策がなんら施されていない場合には進角方向Y0で示すように進角制御量は常に0であるので、モータ182の出力トルクの効率は低下したままとなる。負荷が標準時よりも重くなったときには軽負荷とは逆のことを施すことになる。すなわち、駆動電流は増加するので、進角量は進角方向Y4で示すように標準時よりは進角量を減少させなければならない。もし、進角制御を過電圧時になんら施されない場合には進角方向Y0で示すように進角制御量は常に0であるので、モータ182の出力トルクの効率は低下したままとなる。
図5は本発明にかかる進角制御フローの一例を示し説明の便宜上、図4に示した減電圧時および過負荷時における進角制御の手順を示す。減電圧時、過負荷時は図4から明らかであるように、駆動電流はいずれも増加する状態であるので、進角制御を施すときには進角制御量は標準時より増加させる方向で両者は共通している。
ステップ501は、標準時よりもドライバ180aに供給される電源電圧VCCが減少した状態であることを示す。ステップ502はモータ182で駆動される負荷(不図示)が標準時よりも過負荷状態であることを示す。ステップ503は、ステップ501およびステップ502で示す状態ではモータ182の回転数は標準時よりも減少することを示す。ステップ504は、ステップ503でモータ182の回転数が減少することによって速度フィードバック信号Vfbが増加することを示す。ここで、速度フィードバック信号Vfbは積分アンプ159から出力される積分電圧(直流電圧)を指す。ステップ505は速度フィードバック信号Vfbが増加すると出力デューティ比が増加することを示す。ここで、出力デューティ比は、駆動波形生成回路160から出力され、プリドライバ180bを駆動するPWM信号のハイレベルとローレベルの比を示している。ステップ506は、PWM信号の出力デューティ比が増加すると、モータ182の駆動巻線U相,V相,W相(後述の図6参照)に流れる駆動電流が増加することを示す。ステップ507は、ステップ506で駆動電流が増加すると、モータ182の駆動巻線に誘起される誘起電圧と、駆動巻線に流れる駆動電流との位相ずれ量を補正するように進角量が増加することを示す。
進角制御は、図4に示すように減電圧時には進角方向Y1であり、過負荷時には進角方向Y4であり、いずれも標準時に比べて進角量は増加する方向となる。
図5には一例として減電圧時および過負荷時のときの進角制御のフローを示した。説明の便宜上過電圧時および軽負荷時での進角制御のフローについては図示しなかったが、端的にいえば図5のものとはすべての状態が逆となる。すなわち、過電圧時および軽負荷時は、ステップ503は「回転数増加」、ステップ504は「速度フィードバック信号Vfb減少」、ステップ505は「出力デューティ比減少」、ステップ506は「駆動電流減少」、ステップ507は「位相ずれ量補正(進角量減少)」となる。
図6は、ブラシレスDCモータの120度通電に用いられるインバータ(ドライバ180a)のスイッチング状態を示す。なお、図6はインバータにおいて従前よく知られたものであるが本発明において後述の180度通電と違いを説明するためにあえて説明に供する。
図6は図2に示したドライバ180aとそれによって駆動されるモータ182の三相巻線(U相,V相,W相)を示す。図6はいわゆる三相ブリッジ(U,V,W)と称される3つのブリッジ回路を備える。それぞれのブリッジ回路は電源端子側に結合されるハイサイドトランジスタと接地電位側に結合されるローサイドトランジスタが対を成し1つのブリッジ回路を構成している。
図6には、モータ182の1回転を360度とし、モータ182の可動子がある位置にあるときを0度とし、その可動子が60度ごとに同一方向に360度すなわち1回転するときの状態を6段階で示している、図6(1)〜(6)の共通事項であるが、ハイサイドトランジスタQUHとローサイドトランジスタQULの共通接続点aは駆動巻線Uの一端に接続されている。ハイサイドトランジスタQUHは駆動巻線Uに駆動電流を供給するときのスイッチとして、ローサイドトランジスタQULは駆動巻線Uに流れ込んだ駆動電流を引き込むときのスイッチとして作用する。すなわち、共通接続点aから駆動巻線U側に向かって駆動電流を供給するときスイッチとしてハイサイドトランジスタQUHをオンさせ、駆動巻線U側から共通接続点aに向かって駆動電流を引き込むときはローサイドトランジスタQULをオンさせる。
図6(1)〜(6)の共通事項であるが、ハイサイドトランジスタQVHとローサイドトランジスタQVLの共通接続点bは駆動巻線Vの一端に接続されている。ハイサイドトランジスタQVHは駆動巻線Vに駆動電流を供給するときのスイッチとして、ローサイドトランジスタQVLは駆動巻線Vに流れ込んだ駆動電流を引き込むときのスイッチとして作用する。すなわち、共通接続点bから駆動巻線V側に向かって駆動電流を供給するときスイッチとしてハイサイドトランジスタQVHをオンさせ、駆動巻線V側から共通接続点bに向かって駆動電流を引き込むときはローサイドトランジスタQVLをオンさせる。
図6(1)〜(6)の共通事項であるが、ハイサイドトランジスタQWHとローサイドトランジスタQWLの共通接続点cは駆動巻線Wの一端に接続されている。ハイサイドトランジスタQWHは駆動巻線Wに駆動電流を供給するときのスイッチとして、ローサイドトランジスタQWLは駆動巻線Wに流れ込んだ駆動電流を引き込むときのスイッチとして作用する。すなわち、共通接続点cから駆動巻線W側に向かって駆動電流を供給するときスイッチとしてハイサイドトランジスタQWHをオンさせ、駆動巻線W側から共通接続点cに向かって駆動電流を引き込むときはローサイドトランジスタQWLをオンさせる。
図6(1)は、モータ182の可動子が所定の位置に存在したときを0度とし、可動子を0度から60度まで回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQVLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点aから駆動巻線U,Vを介してローサイドトランジスタQVLに流れる。このとき、駆動巻線W相に流れる駆動電流を制御するハイサイドトランジスタQWHおよびローサイドトランジスタQWLから構成された回路ブリッジには駆動電流は流れていない。
図6(2)は、モータ182の可動子が図6(1)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から60度〜120度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQWLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点aから駆動巻線U,Wを介してローサイドトランジスタQWLに流れる。このとき、駆動巻線V相に流れる駆動電流を制御するハイサイドトランジスタQVHおよびローサイドトランジスタQVLから構成された回路ブリッジには駆動電流は流れない。図6(2)が図6(1)と共通することは、ともにハイサイドトランジスタQUHがオン状態に置かれていることである。
図6(3)は、モータ182の可動子が図6(2)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から120度〜180度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQVHおよびローサイドトランジスタQWLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点bから駆動巻線V,Wを介してローサイドトランジスタQWLに流れる。このとき、駆動巻線U相に流れる駆動電流を制御するハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQULから構成された回路ブリッジには駆動電流は流れない。図6(3)が図6(2)と共通することは、ともにローサイドトランジスタQWLがオン状態に置かれていることである。
図6(4)は、モータ182の可動子が図6(3)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から180度〜240度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQVHおよびローサイドトランジスタQULをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点bから駆動巻線V,Uを介してローサイドトランジスタQULに流れる。このとき、駆動巻線W相に流れる駆動電流を制御するハイサイドトランジスタQWHおよびローサイドトランジスタQWLから構成された回路ブリッジには駆動電流は流れない。図6(4)が図6(3)と共通することは、ともにハイサイドトランジスタQVHがオン状態に置かれていることである。
図6(5)は、モータ182の可動子が図6(4)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から240度〜300度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQWHおよびローサイドトランジスタQULをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点cから駆動巻線W,Uを介してローサイドトランジスタQULに流れる。このとき、駆動巻線V相に流れる駆動電流を制御するハイサイドトランジスタQVHおよびローサイドトランジスタQVLから構成された回路ブリッジには駆動電流は流れない。図6(5)が図6(4)と共通することは、ともにローサイドトランジスタQULがオン状態に置かれていることである。
図6(6)は、モータ182の可動子が図6(5)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から300度〜360度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQWHおよびローサイドトランジスタQVLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点cから駆動巻線W,Vを介してローサイドトランジスタQVLに流れる。このとき、駆動巻線U相に流れる駆動電流を制御するハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQULから構成された回路ブリッジには駆動電流は流れない。図6(6)が図6(5)と共通することは、ともにハイサイドトランジスタQWHがオン状態に置かれていることである。
図6に120度通電時の1回転(360度)時の各ハイサイドトランジスタおよび各ローサイドトランジスタのオン、オフ状態を示したように、ハイサイドトランジスタQUHとローサイドトランジスタQULで構成されたブリッジ回路は、(3)120度〜180度の間および(6)300度〜360度の間、完全にオフ状態に置かれる。同様に、ハイサイドトランジスタQVHとローサイドトランジスタQVLで構成されたブリッジ回路は、(2)60度〜120度の間および(5)240度〜300度の間、完全にオフ状態に置かれる。さらに、ハイサイドトランジスタQWHとローサイドトランジスタQWLで構成されたブリッジ回路は、(1)0度〜60度の間および(4)180度〜240度の間、全にオフ状態に置かれる。
図7は、ブラシレスDCモータの180度通電に用いられるインバータ(ドライバ180a)のスイッチング状態を示す。なお、図7はインバータにおいて従前よく知られたものであるが本発明において前述の120度通電と違いを説明するためにあえて説明に供する。
図7は図2に示したドライバ180aとそれによって駆動されるモータ182の三相巻線(U相,V相,W相)を示す。図7はいわゆる三相ブリッジ(U,V,W)と称される3つのブリッジ回路を備える。それぞれのブリッジ回路は電源端子側に結合されるハイサイドトランジスタと接地電位側に結合されるローサイドトランジスタが対を成し1つのブリッジ回路を構成する。
図7には、モータ182の1回転を360度とし、モータ182の可動子がある位置にあるときを0度とし、その可動子が60度ごとに同一方向に360度すなわち1回転するときの状態を6段階で示している、図7(1)〜(6)の共通事項であるが、ハイサイドトランジスタQUHとローサイドトランジスタQULの共通接続点aは駆動巻線Uの一端に接続されている。ハイサイドトランジスタQUHは駆動巻線Uに駆動電流を供給するときのスイッチとして、ローサイドトランジスタQULは駆動巻線Uに流れ込んだ駆動電流を引き込むときのスイッチとして作用する。すなわち、共通接続点aから駆動巻線U側に向かって駆動電流を供給するときスイッチとしてハイサイドトランジスタQUHをオンさせ、駆動巻線U側から共通接続点aに向かって駆動電流を引き込むときはローサイドトランジスタQULをオンさせる。
図7(1)〜(6)の共通事項であるが、ハイサイドトランジスタQVHとローサイドトランジスタQVLの共通接続点bは駆動巻線Vの一端に接続されている。ハイサイドトランジスタQVHは駆動巻線Vに駆動電流を供給するときのスイッチとして、ローサイドトランジスタQVLは駆動巻線Vに流れ込んだ駆動電流を引き込むときのスイッチとして作用する。すなわち、共通接続点bから駆動巻線V側に向かって駆動電流を供給するときスイッチとしてハイサイドトランジスタQVHをオンさせ、駆動巻線V側から共通接続点bに向かって駆動電流を引き込むときはローサイドトランジスタQVLをオンさせる。
図7(1)〜(6)の共通事項であるが、ハイサイドトランジスタQWHとローサイドトランジスタQWLの共通接続点cは駆動巻線Wの一端に接続されている。ハイサイドトランジスタQWHは駆動巻線Vに駆動電流を供給するときのスイッチとして、ローサイドトランジスタQWLは駆動巻線Wに流れ込んだ駆動電流を引き込むときのスイッチとして作用する。すなわち、共通接続点cから駆動巻線W側に向かって駆動電流を供給するときスイッチとしてハイサイドトランジスタQWHをオンさせ、駆動巻線W側から共通接続点cに向かって駆動電流を引き込むときはローサイドトランジスタQWLをオンさせる。
図7(1)は、モータ182の可動子が所定の位置に存在したときを0度とし、可動子を0度から60度まで回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQUH,QWHおよびローサイドトランジスタQVLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点aから駆動巻線U,Vを介して共通接続点bすなわちローサイドトランジスタQVLに流れる。また、共通接続点cから駆動巻線W,V相を介して共通接続点bに流れ最終的にはローサイドトランジスタQVLに流れる。このときには、ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタの違いはあるものの回路ブリッジU,V,Wのすべてに電流が流れていることである。この点は先に説明した120度通電とは異なる。
図7(2)は、モータ182の可動子が図7(1)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から60度〜120度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQVL,QWLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点aから駆動巻線U,Vを介して共通接続点bすなわちローサイドトランジスタQVLに流れる。また、共通接続点aから駆動巻線U,W相を介して共通接続点cに流れ最終的にはローサイドトランジスタQWLに流れる。このときにも、図7(1)と同様にハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタの違いはあるものの回路ブリッジU,V,Wのすべてに電流が流れている。図7(2)が図7(1)と共通することは、ハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQVLがともにオン状態に置かれていることである。
図7(3)は、モータ182の可動子が図7(2)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から120度〜180度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQUH,QVHおよびローサイドトランジスタQWLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点aから駆動巻線U,Wを介してローサイドトランジスタQWLに流れる。また、共通接続点bから駆動巻線V,W相を介して共通接続点cに流れ最終的にはローサイドトランジスタQWLに流れる。このときにも、図7(1),(2)と同様にハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタの違いはあるものの回路ブリッジU,V,Wのすべてに電流が流れている。図7(3)が図7(2)と共通することは、ハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQWLがともにオン状態に置かれていることである。
図7(4)は、モータ182の可動子が図7(3)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から180度〜240度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQVHおよびローサイドトランジスタQUL,QWLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点bから駆動巻線V,Uを介して共通接続点aすなわちローサイドトランジスタQULに流れる。また、共通接続点bから駆動巻線V,W相を介して共通接続点cに流れ最終的にはローサイドトランジスタQWLに流れる。このときにも、図7(1),(2),(3)と同様にハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタの違いはあるものの回路ブリッジU,V,Wのすべてに電流が流れている。図7(4)が図7(3)と共通することは、ハイサイドトランジスタQVHおよびローサイドトランジスタQWLがともにオン状態に置かれていることである。
図7(5)は、モータ182の可動子が図7(4)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から240度〜300度回転させる場合を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQVH,QWHおよびローサイドトランジスタQULをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点bから駆動巻線V,Uを介して共通接続点aすなわちローサイドトランジスタQULに流れる。また、共通接続点cから駆動巻線W,U相を介して共通接続点aに流れ最終的にはローサイドトランジスタQULに流れる。このときにも、図7(1),(2),(3),(4)と同様にハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタの違いはあるものの回路ブリッジU,V,Wのすべてに電流が流れている。図7(5)が図7(4)と共通することは、ハイサイドトランジスタQVHおよびローサイドトランジスタQULがともにオン状態に置かれていることである。
図7(6)は、モータ182の可動子が図7(5)の位置から同じ方向に60度回転した状態すなわち、最初の停止状態から300度〜360度回転させる場合を示す。 図7(6)はモータ182が1回転すなわち360度回転した状態を示す。この場合にはハイサイドトランジスタQWHおよびローサイドトランジスタQUL,QVLをオンさせ、その他のハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタはオフとする。これによって、駆動電流は共通接続点cから駆動巻線W,Uを介して共通接続点aすなわちローサイドトランジスタQULに流れる。また、共通接続点cから駆動巻線W,V相を介して共通接続点bに流れ最終的にはローサイドトランジスタQVLに流れる。このときにも、図7(1),(2),(3),(4),(5)と同様にハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタの違いはあるものの回路ブリッジU,V,Wのすべてに電流が流れている。図7(6)が図7(5)と共通することは、ハイサイドトランジスタQWHおよびローサイドトランジスタQULがともにオン状態に置かれていることである。
図7に180度通電時の1回転(360度)時の各ハイサイドトランジスタおよび各ローサイドトランジスタのオン、オフ状態を示したように、ハイサイドトランジスタQUHとローサイドトランジスタQULで構成されたブリッジ回路は、(1)0度〜60度、(2)60度〜120度、(3)120度〜180度の間、ハイサイドトランジスタQUHがオン状態であり、(4)180度〜240度、(5)240度〜300度、(6)300度〜3600度の間はローサイドトランジスタQULがオン状態であり、ブリッジ回路を構成するどちらかのトランジスタがオン状態に置かれる。このことは他の回路ブリッジでも同じである。たとえば、ハイサイドトランジスタQWHとローサイドトランジスタQWLで構成されたブリッジ回路では、(5)240度〜300度、(6)300度〜360度、(1)0度〜60度の期間ではハイサイドトランジスタQWHがオン状態であり、(2)60度〜120度、(3)120度〜180度、(4)180度〜240度の間はローサイドトランジスタQWLがオン状態であり、ブリッジ回路を構成するどちらかのトランジスタがオン状態に置かれていることが分かる。
上述のとおり180度通電による制御は各相がオフ時間なしで作動している。このため180度通電ではしばしば、同じ相のハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが同時にオンしてしまうという不具合が生じうる。たとえば、ハイサイドトランジスタQUHとローサイドトランジスタQULが同時にオンする場合である。こうした不具合が仮に生じると、電源と接地電位とがハイサイドトランジスタQUHおよびローサイドトランジスタQULを介して短絡してしまい、電源の破損およびトランジスタの劣化、破損につながる恐れがある。こうした不具合を解消するために、ハイサイドトランジスタQUHとローサイドトランジスタQULが同時にオフするデッドタイムを設けることが一般的である。
図8は、図6に示した120度通電時での電源電圧VCCと電流波形を示す。図8(a)は駆動巻線U相に印加されるU相電圧を、図8(b)は駆動巻線U相に流れるU相駆動電流をそれぞれ示す。図8(a)に示すU相電圧は図6(1)〜(6)から明らかになる。可動子が0度から120度の間は電源電圧VCCがハイサイドトランジスタQUHを介してU相駆動巻線に供給されるがその電源電圧VCCは他の駆動巻線との直列回路に印加されるので、U相にはその1/2が生じるのでその大きさはVCC/2となる。可動子が(3)120度〜180度および(6)300度〜360度の位置にあるときはU相駆動巻線には電源電圧VCCはまったく印加されないので、0となる。可動子の位置が(4)180度〜240度および(5)240度〜300度の間にあるときにはU相駆動巻線には負の電圧が生じる。
図8(b)は、図8(a)に示したU相電圧がU相駆動巻線に印加されるときのU相駆動電流を示す。U相駆動電流はU相電圧とほぼ同じ波形を示す。図8(b)、符号Xで示すようにU相駆動電流の立ち上がり時または立下り時は極めて急峻であるため、ノイズ発生源となることが多い。このことは比較的静かな車の中で顕著に感じる。しかし、120度通電方式は、図8(a)に示すようにU相電圧は可動子の回転位置が(2)60度〜120度の間、(5)240度〜360度の間に無通電期間が存在し、これがメリットとなることも知られている。すなわち、無通電期間が存在することにより、駆動巻線の位置のばらつきや着磁のばらつきが180度通電に比べて優れ、また制御が簡易であるため一般的によく採用されている。
図9は、図7に示した180度通電時での電圧と電流波形を示す。図9(a)は駆動巻線U相に印加されるU相電圧であり、図9(b)は駆動巻線U相に流れるU相駆動電流を示す。図9(a)に示すU相電圧は図7(1)〜(6)から明らかになる。可動子が(1)0度〜60度に位置するときは、U相駆動巻線には電源電圧VCCの1/3の大きさが生じる。可動子が(2)60度〜120度に位置するときは、U相駆動巻線には電源電圧VCCの2/3の大きさが生じる。同様に(3)120度〜180度の間は、U相駆動巻線には電源電圧VCCの1/3の大きさが生じる。(4)180度〜240度、(5)240度〜300度、および(6)300度〜360度の間は図9に示すように負の電圧が生じる。いずれにしても、0度〜360度の間、すなわちモータの可動子の位置に関係なく常時、U相駆動巻線には正、負の電圧という違いはあるが、必ず電圧が生じていることになる。このことはU相駆動巻線に限らずV相およびW相の駆動巻線についても同じである。
図9(b)は、図8(a)に示したU相電圧がU相駆動巻線に印加されるときのU相駆動電流を示す。U相駆動電流の波形はほぼ正弦波に近似し、電流の変化は緩やかに上昇しまた下降していることが分かる。このことは図8(b)に示した120度通電時の電流波形とは異なることが分かる。こうした緩やかな電流波形はノイズ発生を抑止することにつながる。しかし180度通電方式は120度通電方式とは異なり、無通電期間が存在しないため、駆動巻線の位置のばらつきによって進角制御の精度が低下するおそれがあり、場合によっては制御不能に陥ることもありえる。また、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタとが同時にオンしない回路構成にしなければならず回路構成、回路制御が難しくなる。
図10は、本発明にかかる駆動波形生成回路160で生成される三角波信号と正弦波信号とによってPWM信号が生成される状態を進角0度と進角制御で30度進めた状態を模式的に示す。
図10(a)は、図1に示した駆動波形生成回路160で生成される三角波信号Vtriと正弦波信号Vsineを示し、正弦波信号Vsineは進角量0度(実線)と進角量を30度進めた場合(破線)を模式的に示す。三角波信号Vtriの位相および振幅は、本発明の一実施形態では固定するものとして示している。
図10(b)は、図10(a)に示す正弦波信号Vsineの進角量が0度のときに、駆動波形生成回路160から出力されるPWM信号Vpmwを示す。PWM信号Vpmwは、図10(a)に示した三角波信号と正弦波信号(実線)とが比較されて両者の振幅の大小に応じてパルス幅が変化した信号である。
図10(c)は、図10(a)に示す正弦波信号の進角量が30度のときに、駆動波形生成回路160から出力されるPWM信号Vpmwを示す。PWM信号Vpmwは、図10(a)に示した三角波信号と正弦波信号(破線)とが比較されて両者の振幅の大小に応じてパルス幅が変化した信号を示している。
図11は、本発明にかかる進角制御回路170の特性を示す。図11を説明する前に図2に戻り進角制御回路170の回路動作を説明する。図2において、積分アンプ159から出力されるフィードバック信号Vfbと端子電圧V176との間に係数kが存在するようにV−I変換回路172の回路構成が成されているとき、V176=k・Vfbで表すことができる。係数k=1のときV176=Vfbとなる。端子176に発生する電圧V176は抵抗R20の大きさと相俟って、V−I変換回路172の出力となる変換電流Isの大きさを決定する。変換電流Isは抵抗R20の抵抗値をr20とすると、Is=V176/r20となる。変換電流Isは抵抗R30と相俟って端子178に発生する電圧V178を決定する。端子178の電圧をV178、抵抗R30の抵抗値をr30とすると、V178=Is・r30となる。
ここで端子178に取り出されるアナログ進角制御電圧V178を上述に基づき整理すると、V178=(r30/r20)・k・Vfbとなることがわかる。すなわち、アナログ進角制御電圧V178の大きさには、フィードバック信号Vfbと抵抗R20と抵抗R30との抵抗比が関わっている。してみれば、抵抗R20と抵抗R20との抵抗比を決めることによって、フィードバック信号Vfbに対するアナログ進角制御電圧V178の変化する勾配を決めることができる。このことはフィードバック信号Vfbに対する進角量の変化量を制御することにほかならない。
上述に基づき再度図11に戻りその特性を説明する。図11(a)は、フィードバック信号VfbまたはV−I変換回路172に設けた端子176に取り出される進角制御電圧V176と進角量との関係を模式的に示している。図11(a)の横軸にはV−I変換回路172に入力されるフィードバック信号Vfb、または端子176のアナログ進角制御電圧V176を示し、その縦軸には進角量を示す。特性p1はフィードバック信号Vfbまたは進角制御電圧V176がたとえば1Vから進角制御が始まる状態を示し、特性p2は2Vから進角制御が始まる状態を示している。ここで、進角制御の開始点の電圧を決めるにあたっては、たとえば変換電流Isがフィードバック信号Vfb、または端子176のアナログ進角制御電圧V176がたとえば1Vに達したときに流れるようにV−I変換回路172の回路構成を決めてもよい。すなわち、変換電流Isが流れるための閾値電圧を設け、フィードバック信号Vfbまたは端子176のアナログ進角制御電圧V176がその閾値電圧を超えたときに変換電流Isが流れるようにして進角制御を開始することができる。また、V−I変換回路172側には閾値電圧を設けずに、端子178に発生する電圧が所定の大きさを超えたときにADC174を作動するようにしてもよい。
図11(b)には進角制御の傾きが調整される状態を示している。進角制御の傾き、すなわち、フィードバック信号Vfbに対する進角量の変化率は、前に述べたように抵抗R20と抵抗R30との抵抗比を選ぶことで所定の制御の傾きに設定することができる。特性p3は抵抗20の抵抗値r20に対して抵抗30の抵抗値r30が比較的小さいとき、すなわち、進角制御勾配α1(=r30/r20)が比較的小さく選ばれたときを示す。進角制御勾配α2(=r30/r20)は進角制御勾配α1に比べて大きく選ばれたときを模式的に示す。
図11に示すように本発明の進角制御回路170は、進角制御の開始点のフィードバック信号Vfbの大きさを設定できるとともに進角制御の勾配も設定できることが特徴の1つである。
端子178で生成される進角制御のアナログ電圧信号は、ADC174で所定のビット数のデジタル信号に変換され駆動波形生成回路160を制御するように働く。駆動波形生成回路160には前に述べたように正弦波生成回路164が内蔵されていて、ADC174から出力されるデジタル信号は正弦波信号の位相を制御するための離散的デジタル信号となる。
図12は、図1、図2においての主なノードの信号波形を示す。図12(a)は、三角波生成回路162で生成される三角波信号Vtriである。三角波信号Vtriは進角量0度、進角量30度に関係なく本発明の一実施形態では一定に設定されている。もちろん三角波信号Vtriの振幅値、位相を制御してPWM信号Vpmwのデューティ比を制御することもできる。その場合は正弦波信号Vsineの振幅値および位相は固定されることになる。
図12(b)は、正弦波生成回路164で生成される正弦波信号Vsineの進角量が0度と30度進めた場合を模式的に示している。なお、本発明の一実施形態では正弦波信号Vsineの振幅値も制御され図示したものよりも大きい振幅のものや小さい振幅のものが存在するが図面が煩雑になるので図示していない。
図12(c)は、積分アンプ159に出力されるフィードバック信号Vfbが進角量0度と進角量を30度進めた場合を模式的示している。フィードバック信号Vfbは進角量0度よりも進角量を30度進めたときには大きくなるように回路構成が成されている。なお、進角制御量とフィードバック信号Vfbとの関係は設計事項であり、フィードバック信号Vfbと進角量は互いに反比例になるようにしてもよい。