JP2015068802A - 薄膜型水素ガスセンサ - Google Patents

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【課題】簡単な構造で水素濃度を検知できる薄膜型水素ガスセンサを提供する。【解決手段】絶縁体基板の上面に形成した白金薄膜で構成した感応部を有する薄膜型水素ガスセンサにおいて、白金薄膜の膜厚は40nm以下とし、白金薄膜の下層に金属薄膜を設けるとともに、この金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成する。特に、金属薄膜の下層には、表面に10nm以上の起伏を形成した絶縁膜を設け、この絶縁膜の上面に金属薄膜を形成することで、金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成する。さらに、感応部の白金薄膜と、この感応部の白金薄膜の抵抗値に近い抵抗値を有する3つの抵抗体とでブリッジ回路を形成し、このブリッジ回路を交流電圧で駆動させるとともに、ブリッジ回路から出力される交流出力信号と同じ周波数かつ同じ位相の参照信号を用い、交流出力信号と参照信号との差動を取る。【選択図】図1

Description

本発明は、水素濃度を検知する薄膜型水素ガスセンサに関する。
水素ガスセンサには触媒金属の仕事関数変化や、金属酸化物半導体での電気伝導度変化、触媒反応熱による温度変化の応答原理を用いたものなど多くのセンサ原理と構造が報告されている。
例えば半導体特性をもつ金属酸化体(SnO2)は、水素ガスに触れると金属酸化体の酸素が還元されるため、抵抗値が変化する。この抵抗値変化により水素濃度を検出する半導体式の水素ガスセンサがある。また、同様の原理を用いたもので、ヒーターの役割をしている白金線に金属酸化物半導体を焼結して、ブリッジ回路で素子の抵抗値変化をとらえる熱線型半導体式の水素ガスセンサもある。
量産性が良く室温近くでの動作するものとして、電界効果型トランジスタを使った水素ガスセンサが知られている。電界効果型トランジスタの絶縁膜の上にゲート金属として触媒金属のPd(パラジウム)を用いたものや、本発明者等が報告した白金を用いたものが報告されている(非特許文献1)。これは、抵抗変化や起電力変化を測定するものでなく、測定対象ガスが触媒金属によって解離吸着、脱着反応を起こし、その結果として触媒金属の仕事関数が変化する反応を、電界効果型トランジスタによって計測するものである。
電界効果型トランジスタはゲートの入力インピーダンスが非常に高く、出力であるドレイン・ソース間での出力インピーダンスが低い、つまりインピーダンス変換素子である。この機能により、ガス濃度によって変化した触媒金属の微弱な電位変化を計測することができる。さらに自己診断機能が可能な水素ガスセンサとして水素に感応するPt-FETと水素に感応しないTi-FETの2つのFETの差動を取る水素ガスセンサを報告した(特許文献1)。
水素に対する触媒金属の発熱反応による温度変化を検出するものとして、熱電対上に白金を形成したものが報告されている(非特許文献2)。また発熱による抵抗変化をブリッジ回路で検出する方法が報告されている(特許文献2)。
発熱による抵抗変化ではなく、金属格子中に水素が安定化される金属水素化物の形成による抵抗変化をみるものとして、水素を非常に良く吸蔵することができるパラジウムを使ったものもある(非特許文献3)。この水素化物の形成により抵抗は水素濃度とともに高くなる特性がある。
ところが、触媒作用がもっとも高い白金では安定性が高いため、このような構造変化による抵抗変化の現象がおこらなかった。しかし、発明者らは数10nm程度の非常に薄い白金薄膜では、水素による抵抗変化があることを報告した。しかも抵抗としては構造変化による抵抗が高くなる特性ではなく、水素の解離反応によるキャリアの増加による抵抗が減少する特性であることを報告した(非特許文献4)。
この抵抗変化をブリッジ回路により電圧出力させる方法を発表した(非特許文献5)。ここで、白金薄膜はガラスやSi基板などの材料との接着性が悪いため、白金の下地としてTiの接着層を用いることも報告した。この白金薄膜の接着性が悪いことは良く知られており、接着層としてTiやCr、Ni等が使われている。
特開2010-66234号公報 特開2007-64865号公報
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安定な構造を持ち触媒作用の強い白金での膜厚を薄くすることにより抵抗変化が得られることが分かった。しかし、パラジウムなどの金属水素化物生成により抵抗が高くなる時の抵抗変化率に比べ、薄膜白金での水素によりキャリアが増え抵抗が小さくなる抵抗変化率は小さいという問題があった。このため、抵抗変化率を大きくする必要があった。
そこで、本発明は、この課題を解決し、簡単な構造で信頼性の高い水素ガスセンサを提供することを目的とする。
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、絶縁体基板の上面に形成した白金薄膜で構成した感応部を有する薄膜型水素ガスセンサにおいて、白金薄膜の膜厚は40nm以下とし、白金薄膜の下層に金属薄膜を設けるとともに、この金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成することとした。
さらに、本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)金属薄膜の下層には、表面に10nm以上の起伏を形成した絶縁膜を設け、この絶縁膜の上面に金属薄膜を形成することで、金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成していること。
(2)感応部の白金薄膜と、この感応部の白金薄膜の抵抗値に近い抵抗値を有する3つの抵抗体とでブリッジ回路を形成し、このブリッジ回路を交流電圧で駆動させるとともに、ブリッジ回路から出力される交流出力信号と同じ周波数かつ同じ位相の参照信号を用い、交流出力信号と参照信号との差動を取ること。
(3)ブリッジ回路を構成する3つの抵抗体は、感応部の白金薄膜と同一形状に白金薄膜で形成するとともに、絶縁皮膜で被覆していること
(4)感応部の白金薄膜に、電圧パルスまたは電流パルスを与える初期化手段を備えること。
(5)初期化手段は、前記感応部の白金薄膜のみに前記電圧パルスまたは前記電流パルスを与える切替スイッチを有していること。
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは抵抗変化率が小さい薄膜白金での抵抗変化率を大きくすることができ、十分な実用性を有するとともに信頼性の高い薄膜型水素ガスセンサを提供できる。
本発明の一実施形態である薄膜水素ガスセンサの基本構造を示す概略断面図である。 水素に対する抵抗変化率の白金薄膜の膜厚依存性のグラフである。 (a)本実施形態のガラス基板の表面状態、(b)本実施形態のガラス基板上に形成した多孔質シリカ膜の表面状態である。 多孔質シリカ膜の有無によるTi/Pt薄膜の水素に対する抵抗変化率の比較のグラフである。 パルス電流の通電による効果の説明図である。 (a)本実施形態の薄膜型水素ガスセンサのセンサチップ構成図、(b)本実施形態の薄膜型水素ガスセンサの回路と計測回路の関係図である。 交流電源駆動時のブリッジ回路構成の薄膜型水素ガスセンサの水素応答であって(a)参照信号なしの時の出力波形、(b)参照信号との差動時の出力波形のグラフである。 切替スイッチを設けたブリッジ回路構成の薄膜型水素ガスセンサの構成図である。
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、絶縁体基板の上面に形成した白金薄膜で構成した感応部を有する薄膜型水素ガスセンサにおいて、白金薄膜の膜厚は40nm以下とし、白金薄膜の下層に金属薄膜を設けるとともに、この金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成している。
このように白金薄膜の膜厚を40nm以下としたことにより大きい抵抗変化率が得られるようになる。また、ここで白金と絶縁体基板の間に金属薄膜を接着層として入れることにより、本来白金薄膜の接着力が弱いのを高めることができるので剥離しにくい信頼性の高いセンサが得られる。
さらに、接着層の金属薄膜の膜厚を白金薄膜の膜厚よりも薄くすることにより、接着層を設けたことにより起こる抵抗変化率の減少を1/2以下に抑えることもできる。
また、10nm以上の起伏を形成した金属薄膜の上面に白金薄膜を積層することで、白金薄膜の水素との反応する有効面積を大きくすることができるため、抵抗変化率を大きくすることができる。
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、金属薄膜による接着層の下層に、表面に10nm以上の起伏を形成した絶縁膜を設け、この絶縁膜の上面に金属薄膜による接着層を形成することで、金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成している。
このように、絶縁膜を設けることで10nm以上の起伏を形成しやすくすることができ、接着層となる金属薄膜の表面に容易に10nm以上の起伏を形成することができる。なお、金属薄膜の表面に形成する起伏は、大きければ大きいほどよく、後述するように多孔質シリカ膜を用いて絶縁膜を形成することで、40nm以上の起伏とすることもできる。
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、感応部の白金薄膜と、この感応部の白金薄膜の抵抗値に近い抵抗値を有する3つの抵抗体とでブリッジ回路を形成し、このブリッジ回路を交流電圧で駆動させるとともに、ブリッジ回路から出力される交流出力信号と同じ周波数かつ同じ位相の参照信号を用い、交流出力信号と参照信号との差動を取ることで水素に対する抵抗変化率を検出している。
このように、ブリッジ回路を用いることで、温度変化によって生じる抵抗変化を保証することができるので温度に対して影響が少ない電圧出力が得られる。
さらに、ブリッジ回路の駆動電源として交流電圧を用いることにより、直流計測した場合の外部電磁雑音あるいは接地電位のふらつきによる直流電圧出力の変動の影響を受けるおそれがなく、正確な交流電圧出力が得られる。
しかも、一般にブリッジ回路において各要素の抵抗体の抵抗値と水素ガスセンサの感応部の抵抗値を完全に一致させることは困難であり、水素に応答していない時でもブリッジ回路から、ある電圧が出力されていることとなり、水素に応答しているのかを正確に判断することができない。
そこで、交流出力信号と同じ周波数かつ同じ位相の参照信号との差動をとることにより、例えば水素が無い時にはゼロ出力され、水素を感知した時だけ交流出力電圧を得られるようにすることができる。
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、ブリッジ回路を構成する3つの抵抗体は、感応部の白金薄膜と同一形状に白金薄膜で形成するとともに、絶縁皮膜で被覆している。
これにより、これにより薄膜水素ガスセンサの製造プロセスを簡単にすることができるとともに、ブリッジ回路を構成する3つの抵抗体と、感応部の白金薄膜の抵抗値を極めて近い値とすることでき、薄膜型水素ガスセンサの精度を高めることもできる。
本発明の薄膜型水素ガスセンサでは、感応部の白金薄膜に、電圧パルスまたは電流パルスを与える初期化手段を備えている。
このように初期化手段を設けることで、水素に応答した後の回復時間を大幅に早くすることができ、履歴現象が発生することを防ぐことができる。
特に、初期化手段は、感応部の白金薄膜のみに電圧パルスまたは電流パルスを与える切替スイッチを有していることで、電力消費量を低く抑えながら水素応答の回復時間を大幅に早くすることができ、履歴現象が発生することを防ぐことができる。
以下、本発明の実施形態を、添付する図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である白金薄膜を用いた水素ガスセンサの基本構造を示す概略断面図である。絶縁体基板としてガラス基板1を用い、そのガラス基板1の表面に絶縁膜として多孔質シリカ膜2を形成した。なお、多孔質シリカ膜2を絶縁膜として用いることに限定するものではなく、その他の絶縁性の膜を形成してもよい。
ただし、多孔質シリカ膜2は、その表面に10nm以上の起伏を形成できる利点を有しており、絶縁膜として多孔質シリカ膜2以外にも絶縁性の膜を用いる場合でも、その表面に10nm以上の起伏が形成される膜でることが望ましく、この起伏は大きいほどよい。また、必要に応じて、絶縁膜の表面に高低差が10nm以上となる起伏を形成するブラストあるいはエッチング等の適宜の処理を施してもよい。
多孔質シリカ膜2の上面には、接着層としての金属薄膜としてチタン(Ti)薄膜3を積層し、さらにこのTi膜3の上面に水素に対して触媒作用のある白金(Pt)薄膜4を積層している。Ti薄膜3及びPt薄膜4は、スパッタリングによって連続的に成膜した。
ここで基礎的な評価としてPt薄膜の水素に対する抵抗変化率を調べるために、Ti薄膜を形成しないで、また表面に起伏がない平坦なガラス基板上にPt薄膜のみ形成したセンサを作成し、抵抗変化率を計測した。抵抗変化率は空気雰囲気での水素0%の時の抵抗値に対する1%の時の抵抗変化率ΔR/Rを調べた。
なお、Pt薄膜は、長さ10mm、幅3mmで厚さ0.5mmとしたガラス基板上に白金をスパッタリングで形成し、特に、その膜厚を5nm、10nm、20nm、40nmとした抵抗体をそれぞれ作成した。
図2に、各抵抗体での抵抗変化率の計測結果を示すように、膜厚に対する抵抗変化率は、薄くなるほど絶対値として大きくなっていることが分かる。抵抗変化率は全て負であり、水素によって抵抗が減少していることを表している。抵抗が減少するのは、薄膜表面で水素が解離してキャリアが増えたことによる。さらに膜厚が薄くなるにつれ抵抗変化率が大きくなるのは、解離現象が主に表面で起こっているため、薄膜内部での抵抗変化はあまりないため、薄いほど表面効果が大きく表れてくる。この結果から、Pt薄膜の膜厚は40nm以下とすることが望ましい。
本実施形態では接着層としてTi薄膜を用いた。接着層としてTiの他、Cr、Ni等の金属薄膜を用いることもできる。当然Ptの他に導電性の金属膜を設けると、抵抗変化率は小さくなる。このため、Ti薄膜の膜厚はPt薄膜の膜厚より薄い3nmとして、Ti薄膜の導電性の影響を生じにくくした。
具体的には、ガラス基板の上面にPt薄膜を膜厚5nmとして形成した場合の抵抗変化率は4.4%であったものが、ガラス基板の上面に3nmのTi薄膜を形成してPt薄膜を膜厚5nmで形成した場合の抵抗変化率は1.8%と減少した。これは水素に対して抵抗値が変化しないTiが並列抵抗として入ったためである。
このように、Pt薄膜の接着性の悪さを改善するために、Pt薄膜の下層に導電性の金属薄膜を形成した場合には、どうしても抵抗変化率が小さくなってしまうが、センサとして使う場合には抵抗変化率が大きい方が望ましい。
このため、Pt薄膜の下地にナノサイズの起伏を設けておくことにより、この下地の上面に形成したPt薄膜の表面効果を大きくすることで、抵抗変化率の低下を抑制している。
この下地にナノサイズの起伏を設ける方法として、本実施形態では、ガラス基板1の表面に、ゾル・ゲル法により多孔質シリカ膜2を形成した。具体的には、図3(a)に示すように、ガラス基板1の表面での起伏は0.08nmと非常に平坦であったものが、図3(b)に示すように、ガラス基板1の表面に多孔質シリカ膜2を形成することにより42.3nmと起伏を大きくすることができた。10nm以上の起伏を作成する方法としては、本方法に限らずナノプリント法なども各種あり、特に製造法には関係なく起伏を作ることにより、抵抗率を大きくする効果を得ることができる。
比較のため、平坦なガラス基板1の上面に多孔質シリカ膜2の多孔質ガラスを設けた場合と、多孔質シリカ膜2の多孔質ガラスを設けない場合とで、さらに3nmのTi薄膜と、5nmのPtのPt薄膜を積層した2種類の抵抗体で抵抗変化率を比較した。比較結果を図4に示す。図4に示すように、多孔質シリカ膜2を設けることで、2倍近い抵抗変化率が得られ、Ti薄膜がない場合の抵抗変化率に近い値を得ることができた。
白金薄膜をセンサとして使用する場合、水素に対する感度だけでなく繰り返し応答特性の再現性が必要となる。図4に示すように、一旦水素(1%H2)にさらしてから0%H2とした空気にさらした場合に、0%の時の抵抗に戻る時間が遅いことが分かった。数時間後ではほぼもとの抵抗値に戻り、回復時間に問題があることが分かった。
この戻らない現象は、Pt薄膜の内部に拡散した水素がそのまま表面へすぐにもどらないために起こっていると考えられる。
そこで、図5に示すように、Pt薄膜で形成した抵抗体に対してパルス状の初期化電流を加えて、Pt薄膜を加熱することが効果的であることを知見した。すなわち、図5に示すように、水素(1%H2)にさらしてから0%H2とした空気にさらした際に、センサの抵抗値が水素(1%H2)にさらす前の抵抗値に戻らないが、たとえば100mA、3秒間のパルス電流を初期化電流としてセンサに通電することで、すばやくもとの抵抗値に戻っていることが分かる。パルス電流の代わりにパルス電圧を印加してもよい。
つまり、Pt薄膜を用いた薄膜型水素ガスセンサでは、水素に応答した後、あるいは間欠的にパルス状の電流を流す、またはパルス状の電圧を印加することにより応答特性が改善可能である。
本実施形態のPt薄膜を用いた薄膜型水素センサにおいて、抵抗変化をセンサ出力として電圧出力させる方法としては、ブリッジ回路により簡単な構成をとることができる。センサとして広く用いられるブリッジ回路は測定対象に対して抵抗変化を示す抵抗体と、変化しない抵抗体により構成するもので、環境温度変化に対する安定性やセンサ駆動および計測回路の簡単化できる特徴がある。
そして、本実施形態の薄膜型水素センサにおけるPt薄膜を、測定対象に対して抵抗変化を示す抵抗体として、ブリッジ回路を構成した。すなわち、本実施形態では、1cm角としたガラス基板1−2の上面に、図示しない多孔質シリカ膜とTi薄膜とを積層し、さらにTi薄膜の上面に5nmの膜厚のPt薄膜で、図6(a)に示すようにブリッジ回路を形成した。なお、Ti薄膜の膜厚は3nmとした。
特に、ブリッジ回路を構成する4つの抵抗体は、それぞれ蛇行状にパターンニングされた互いに同一形状とした4つのPt配線で構成し、4つの抵抗体のうちの3つの抵抗体6−1、6−2、6−3の上面をガラス皮膜からなる絶縁皮膜で被覆して密封し、水素センサの感応部となる抵抗体5は露出状態として、感応部となる抵抗体5のみが水素にさらされる状態とした。
なお、本実施形態の薄膜型水素センサにおける感応部ではない3つの抵抗体6−1、6−2、6−3は、Pt薄膜を積層せずにTi薄膜だけで水素感応部の抵抗値と同じになるように厚みを調整して製作することもできる。
このように形成したブリッジ回路に対して、図6(b)に示すように、交流電源7と出力電圧計8とを接続して、抵抗変化を検出可能としている。白金薄膜で構成した抵抗体でブリッジ回路を形成した場合、抵抗変化率は他のセンサ等と比較して非常に小さいため、センサ出力として微弱になる。このため、SNの高い計測方法が必要とされる。
特に、直流計測の場合には、信号ケーブルやグランドラインが揺らいだ場合において、信号電圧が変動しやすくなるので、本実施形態では、ブリッジ回路の駆動方法として交流電源7を用いて交流電圧で駆動させた。交流駆動することにより、センサ出力を交流信号とすることができる。
図7は、本実施形態の薄膜型水素ガスセンサに、0%H2とした空気をさらした状態から、水素(1%H2)にさらして、さらに0%H2とした空気にさらした場合のブリッジ回路の交流出力信号を示しており、センサ駆動として12Vの交流信号を入れ、センサ出力電圧としては10mV程度の交流出力信号が得られていることが分かる。特に、センサ出力としては小さいが、交流駆動によりグランドを中心にきれいな信号が得られていることが分かる。
しかし、図7(a)に示すように、応答の途中で信号は正と負に入れ替わり、つまり位相が180度反転していることが分かる。これはブリッジ回路における各抵抗の値が少しばらつき水素が無い時でも出力がゼロになっていないためである。
このため、位相が反転することを防ぎ、センサ出力がいつでも水素に対して同じ位相の出力がでて、水素が無い時は出力電圧が小さくなるように、センサ出力である交流出力信号と同じ周波数かつ同じ位相の参照信号を用いて、交流出力信号と参照信号との差動を取ることで、図7(b)に示すように、水素が無い時にはセンサ出力が小さく、水素濃度に応じて出力が大きくなりいつも同じ位相とすることができる。
上述したように、白金薄膜を利用した本実施形態の薄膜型水素ガスセンサでは、電圧パルスまたは電流パルスを与えて定期的に初期化することが望ましい。
そこで、本実施形態の薄膜型水素ガスセンサの別実施形態として、図8に示すように、感応部の抵抗体5−2の両端に切替スイッチ9−1、9−2を設け、さらに、水素ガスセンサ部5−2に所定の電圧パルスまたは電流パルスを供給する加熱用電源10を接続するように構成することもできる。この加熱用電源10が初期化手段となっているものである。
特に、切替スイッチ9−1、9−2によって、感応部の白金薄膜である水素ガスセンサ部5−2のみに加熱用電源10から供給された電圧パルスまたは電流パルスをかけることができるので、少ない電力消費で効率良く水素ガスセンサを加熱し、初期状態に戻すことが可能となる。図8中、6−4、6−5、6−6は、ブリッジ回路を構成する抵抗体であり、7−2は交流電源、8−2は出力電圧計である。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
本発明は、水素ガス濃度を測定する水素ガスセンサに関する。上記水素ガスセンサは特に構造が簡単であるにも関わらず信頼性が高いので広く使用することができる。例えば水素ガス生成プラントや、水素ガスステーション、水素自動車や家庭、ビルなどに設置された定置型の燃料電池システムからのガス漏れ検知装置として利用できる。
1 ガラス基板
1−2 ガラス基板
2 多孔質シリカ膜
3 チタン(Ti)薄膜
4 白金(Pt)薄膜
5 抵抗体(感応部)
5−2 抵抗体(感応部)
6−1 抵抗体
6−2 抵抗体
6−3 抵抗体
6−4 抵抗体
6−5 抵抗体
6−6 抵抗体
7 交流電源
7−2 交流電源
8 出力電圧計
8−2 出力電圧計
9−1 切替スイッチ
9−2 切替スイッチ
10 加熱用電源

Claims (6)

  1. 絶縁体基板の上面に形成した白金薄膜で構成した感応部を有する薄膜型水素ガスセンサにおいて、
    前記白金薄膜の膜厚は40nm以下とし、
    前記白金薄膜の下層に金属薄膜を設けるとともに、この金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成していることを特徴とする薄膜型水素ガスセンサ。
  2. 前記金属薄膜の下層には、表面に10nm以上の起伏を形成した絶縁膜を設け、この絶縁膜の上面に前記金属薄膜を形成することで、前記金属薄膜の表面に10nm以上の起伏を形成していることを特徴とする請求項1に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
  3. 前記感応部の白金薄膜と、この感応部の白金薄膜の抵抗値に近い抵抗値を有する3つの抵抗体とでブリッジ回路を形成し、このブリッジ回路を交流電圧で駆動させるとともに、
    前記ブリッジ回路から出力される交流出力信号と同じ周波数かつ同じ位相の参照信号を用い、前記交流出力信号と前記参照信号との差動を取ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
  4. 前記の3つの抵抗体は、前記感応部の白金薄膜と同一形状に白金薄膜で形成するとともに、絶縁皮膜で被覆していることを特徴とする請求項3に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
  5. 前記感応部の白金薄膜に、電圧パルスまたは電流パルスを与える初期化手段を備えることを特徴とする請求項1〜4に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
  6. 前記初期化手段は、前記感応部の白金薄膜のみに前記電圧パルスまたは前記電流パルスを与える切替スイッチを有していることを特徴とする請求項5に記載の薄膜型水素ガスセンサ。
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