JP2015063427A - ガラスフィルムの表面処理方法、ガラスフィルム積層体、およびガラスフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラスフィルム1の一面に第1の無機薄膜11を形成する成膜工程と、第1の無機薄膜11が形成されたガラスフィルム1の一面を、ガラスフィルム1よりも厚い支持ガラス2の表面にオプティカルコンタクトにより密着させて、ガラスフィルム1と支持ガラス2とを積層する積層工程と、支持ガラス2に積層されたガラスフィルム1の他面に、第2の無機薄膜12を形成する表面処理を施す表面処理工程とを備える、ガラスフィルム1の表面処理方法。
【選択図】図5
Description
従って、従来、フィルムガラスに表面処理を行う際には、剛性を有した保持部材等によりフィルムガラスを保持して取り扱い性を向上させたうえで処理が行われていた。
可撓性を有するガラスフィルムの一方の表面に無機膜を形成した場合、前記無機膜の膜応力によりガラスフィルムには反りが生じるが、特許文献1に開示される光学フィルムの製造方法では、一方の表面に無機膜が形成されたガラスフィルムを第1の保持部材と第2の保持部材とで平面状に保持することにより、他方の表面への無機膜の形成を可能としている。
また、特許文献2には、フィルムガラスよりも厚く形成され剛性を有した支持ガラスの表面に、成膜後の表面粗さRaが2.0nm以下となる無機薄膜を形成し、前記無機薄膜の表面に表面粗さが2.0nm以下のガラスフィルムの一面を密着させるようにして、フィルムガラスを支持基板に積層して、ガラスフィルムの他面への反射防止膜などの成膜処理を行うことも開示されている。
また、ガラスフィルムを第2の保持部材で第1の保持部材側に押圧して保持するため、ガラスフィルムの一部(第1の保持部材および第2の保持部材にて保持している部分)に成膜等の処理を行えないおそれもある。
つまり、特許文献2においては、一面および他面の何れにも成膜がなされていないガラスフィルムを支持ガラス表面の無機薄膜上に積層して、ガラスフィルムの無機薄膜上に密着されていない側の表面に成膜処理を行うことが記載されているのみであり、ガラスフィルムの両面に成膜処理を行うものではない。
即ち、請求項1記載の如く、ガラスフィルムの表面処理方法は、ガラスフィルムの一面に第1の無機薄膜を形成する成膜工程と、前記第1の無機薄膜が形成された前記ガラスフィルムの一面を、前記ガラスフィルムよりも厚い支持ガラスの表面にオプティカルコンタクトにより密着させて、前記ガラスフィルムと支持ガラスとを積層する積層工程と、前記支持ガラスに積層された前記ガラスフィルムの他面に、表面処理を施す表面処理工程とを備える。
本実施形態における表面処理方法では、ガラスフィルム1の一面(図1における下面)に対する表面処理として第1の無機薄膜11を形成する処理が、他面(図1における上面)に対する表面処理として第2の無機薄膜12を形成する処理が行われ、これにより、図1に示すような両面処理済ガラスフィルム10が構成される。
また、本実施形態では、ガラスフィルム1の一面に第1の無機薄膜11を形成し、他面に第2の無機薄膜12を形成しているが、ガラスフィルム1の一面および他面に対する表面処理としては、アンチグレア処理(具体的にはエッチング加工やサンドブラスト加工やスプレー法)などの、他の表面処理を施すことも可能である。従って、例えば、一面に第1の無機薄膜11が形成され、他面にアンチグレア処理等の表面処理が施されたガラスフィルム1を構成することもできる。
このように、ガラスフィルム1を300μm以下の厚さに形成することで、容易に屈曲可能とすることができ、ガラスフィルム1を曲面を有するデバイスに用いることが可能となる。一方、ガラスフィルム1の厚みが5μm未満になると、ガラスフィルム1の強度が不足がちになり、第1の無機薄膜11および第2の無機薄膜12が形成されたガラスフィルム1(両面処理済ガラスフィルム10)を電子デバイスへ組み込む際などに破損を招きやすくなるため好ましくない。
これは、ガラスフィルム1にアルカリ成分が含まれていると、経年により、その表面において陽イオンの脱落(所謂ソーダ吹きの現象)が発生して構造的に粗となり、ガラスフィルム1を湾曲させた際に前記粗となった部分から破損する可能性があるからである。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことである。具体的には、無アルカリガラスは、アルカリ成分が1000ppm以下のガラスであり、好ましくは500ppm以下のガラスであり、より好ましくは300ppm以下のガラスである。
このように、第1の無機薄膜11を反射防止膜にて構成し、第2の無機薄膜12をITO膜にて構成することで、両面処理済ガラスフィルム10を、例えばタッチパネル用のカバーガラスとして用いることが可能となる。
なお、第1の無機薄膜11および第2の無機薄膜12の成膜方法としては、スパッタリング法、蒸着法、CVD法ゾルゲル法等、公知の方法を用いることができる。
図2(a)に示すように、両面処理済ガラスフィルム10を製造する際には、まず、ガラスフィルム1を支持ガラス2の上に載置して、ガラスフィルム1と支持ガラス2とを積層し、ガラスフィルム1を支持ガラス2に対して固定する。支持ガラス2は、平滑な表面を有するガラス板である。
支持ガラス2は、ガラスフィルム1よりも厚く、ガラスフィルム1に対する表面処理を行う際の取り扱い性に問題が生じない程度の剛性を有する厚みに形成されている。具体的には、支持ガラス2の厚みは、400μm以上であることが好ましい。
このように、支持ガラス2の厚みを400μm以上とすることで、支持ガラス2に積層したガラスフィルム1の、第2の無機薄膜12の成膜工程に流す際の取り扱い性を良好として、成膜工程におけるガラスフィルム1の位置決め等を容易にすることが可能となる。
本実施形態においては、支持ガラス2におけるガラスフィルム1の載置面は、ガラス面となっている。
支持ガラス2におけるガラスフィルム1の載置面(ガラス面)は平滑に形成されており、その表面粗さRaが2.0nm以下となるように形成されている。支持ガラス2の表面粗さRaは、0.5nm以下であることが好ましく、0.2nm以下であることがより好ましい。
オプティカルコンタクトによる密着は、ガラスフィルム1および支持ガラス2の表面の平滑度合いが高い方が強くなる傾向にあり、ガラスフィルム1を支持ガラス2に対して強固に密着させるためには、両者の表面粗さRaが小さい方が有利である。
この場合、図6に示すように、ガラスフィルム1は、剛性を有した支持ガラス2の表面に固定されているため、ガラスフィルム1を反射防止膜の成膜工程に流す際の取り扱い性が良好となっており、成膜工程におけるガラスフィルム1の位置決め等を容易に行うことが可能となっている。
低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に複数層積層して形成される反射防止膜は、例えば図7に示すように、低屈折率膜としてのSiO2層(11a)を3層、および高屈折率膜としてのNb2O5層(11b)を2層備えており、SiO2層とNb2O5層とを交互に積層して構成されている。図7に示す反射防止膜においては、ガラスフィルム1の表面、および反射防止膜の最表層には、それぞれSiO2層11aが形成されている。
第1の無機薄膜11の表面(第1の無機薄膜11を図7に示す反射防止膜に構成した場合は、最表層のSiO2層11aの表面)は平滑に形成されている。
この場合、ガラスフィルム1と支持ガラス2とは、両者の表面分子が互いにファンデルワールス力により結合しているだけであるので、容易に剥離することができる。
また、支持ガラス2から剥離した後のガラスフィルム1の表面は、ガラスフィルム1を第1の保持部材と第2の保持部材との間で保持した場合のように、押圧痕が残ることもない。さらに、ガラスフィルム1と支持ガラス2とを粘着剤により接着した場合のように、ガラスフィルム1表面に粘着剤が残存することもなく清浄である。
さらに、図4(b)に示すように、支持ガラス2上に第1の無機薄膜11を当接させた状態で載置したガラスフィルム1の他面(図4(b)に示す上面)に第2の無機薄膜12となるITO膜を形成する。
このように、第1の無機薄膜11の表面をRa=0.5nm未満の非常に平滑な面に形成することで、第1の無機薄膜11の支持ガラス2に対するオプティカルコンタクトによる密着度合いを高めることができ、ガラスフィルム1を支持ガラス2に対して確実に固定することが可能となっている。
これにより、ガラスフィルム1における第1の無機薄膜11の形成面を支持ガラス2に密着させた状態で、ガラスフィルム1と支持ガラス2とが積層されているガラスフィルム積層体を構成することができ、後工程で、ガラスフィルム1における第1の無機薄膜11の形成面とは反対側の面に、第2の無機薄膜12を成膜する等の表面処理を行う際のハンドリング性を向上することができる。
これにより、ガラスフィルム1を第2の無機薄膜12の成膜工程などの表面処理工程に流す際の取り扱い性が良好となり、表面処理工程におけるガラスフィルム1の位置決め等を容易に行うことが可能となる。
このようなガラスフィルム積層体を、ガラスフィルム1の他面に第2の無機薄膜12を形成することにより得た後、図5(a)に示すように、ガラスフィルム1を支持ガラス2から剥離する。
また、支持ガラス2から剥離した後のガラスフィルム1における第1の無機薄膜11および第2の無機薄膜12の表面には、ガラスフィルム1を第1の保持部材と第2の保持部材との間で保持した場合のように、押圧痕が残ることもない。さらに、支持ガラス2から剥離した後のガラスフィルム1における第1の無機薄膜11の表面は、ガラスフィルム1と支持ガラス2とを粘着剤により接着した場合のように、ガラスフィルム1表面に粘着剤が残存することもなく清浄である。また、第1の無機薄膜11が剥離されることもない。
これにより、一面に第1の無機薄膜11が形成されているガラスフィルム1を支持ガラス2に固定して取り扱い性を向上させ、適正な位置決めをした状態でガラスフィルム1の他面に第2の無機薄膜12を形成することができ、ガラスフィルム1の表面に押圧痕や粘着剤を残すことなく、ガラスフィルム1の両面への表面処理を容易に行うことが可能となる。
つまり、反射防止膜は、成膜後に加熱された場合でも、その特性に殆ど変化が生じないのに対し、ITO膜は、成膜後に加熱されるとシート抵抗値などの特性が変化する。また、ガラスフィルム1に対してスパッタリング法により反射防止膜やITO膜を形成する際には、プロセスで発生する熱等により、ガラスフィルム1が加熱されることとなる。
一方、ガラスフィルム1に反射防止膜を成膜した後にITO膜を成膜した場合は、ITO膜の成膜時に反射防止膜の特性が殆ど変化することがないため、最終的に得られた両面処理済ガラスフィルム10の反射防止膜において、所望の特性を得ることが可能となる。
このように、反射防止膜を第1の無機薄膜11としてガラスフィルム1の一面に形成した後に、ガラスフィルム1の他面に第2の無機薄膜12としてのITO膜を形成する方が、先に形成された第1の無機薄膜11の特性を変化させることがないため、好ましい。
しかし、有機薄膜は、無機薄膜に比べて、その表面粗さRaを小さく形成することが困難であるため、ガラスフィルム1の有機薄膜形成面をオプティカルコンタクトにより確実に支持ガラス2に密着させることが困難である。また、有機薄膜は、無機薄膜に比べて膜強度が弱いため、支持ガラス2に有機薄膜形成面を密着させたガラスフィルム1を支持ガラス2から剥離する際に、有機薄膜がガラスフィルム1から剥離して支持ガラス2に残存するおそれがある。
従って、一面に膜付けされたガラスフィルム1の一面を、オプティカルコンタクトにより支持ガラス2に密着させて、ガラスフィルム1の他面に表面処理を施す場合は、ガラスフィルム1の一面には、無機薄膜を形成する必要がある。
確認試験を行った前記ガラスフィルム積層体のサンプルとしては、以下の実施例1〜2、および比較例1〜2のサンプルを用いた。
具体的には、図9に示すように、ガラスフィルム1の一面に形成された反射防止膜は、低屈折率膜としてのSiO2層を2層、および高屈折率膜としてのNb2O5層を2層備えており、SiO2層とNb2O5層とを交互に積層して構成されている。
ガラスフィルムの表面に積層される第1層はNb2O5層であり、その膜厚は13nmに形成される。第1層の上層である第2層はSiO2層であり、その膜厚は36nmに形成される。第2層の上層である第3層はNb2O5層であり、その膜厚は115nmに形成される。第3層の上層である第4層はSiO2層であり、その膜厚は88nmに形成される。第4層は最表層である。
なお、反射防止膜は、SiからなるターゲットおよびNbからなるターゲットを用いて、反応性スパッタリングにより成膜した。
前記密着状態は、ガラスフィルム1が支持ガラス2に対して強固に密着しており、ガラスフィルム1の支持ガラス2に対する固定が、ガラスフィルム積層体を第2の無機薄膜12の成膜処理を行う工程に流したときに、ガラスフィルム1に位置ずれや剥離が生じない程度の力でなされていたものを「○」と判定した。また、ガラスフィルム1が支持ガラス2に対して充分に密着しておらず、ガラスフィルム積層体を第2の無機薄膜12の成膜処理を行う工程に流したときに、ガラスフィルム1に位置ずれや剥離が生じたものを「×」と判定した。
表1に示すように、反射防止膜の表面粗さRaが0.2nmである実施例1、および反射防止膜の表面粗さRaが0.4nmである実施例2については、密着状態が「○」と判定されており、ガラスフィルム1が支持ガラス2に対して強固に密着して固定されていることがわかる。
一方、反射防止膜の表面粗さRaが1.0nmである比較例1、および反射防止膜の表面粗さRaが1.2nmである比較例2については、密着状態が「×」と判定されており、ガラスフィルム1の支持ガラス2に対する密着が不十分であり、ガラスフィルム1を支持ガラス2に固定することができなかったことがわかる。
第2の無機薄膜12としてのITO膜は、成膜圧力を0.7Paとし、加熱温度を300℃とした条件の下でスパッタリング法により成膜した。これにより、50nmの膜厚、および25Ω/□のシート抵抗を有するITO膜を得た。
このように得られた両面処理済ガラスフィルム10は、例えば投影型静電容量タッチパネルのカバーガラスとして用いることができる。
2 支持ガラス
10 両面処理済ガラスフィルム
11 第1の無機薄膜
12 第2の無機薄膜
Claims (11)
- ガラスフィルムの一面に第1の無機薄膜を形成する成膜工程と、
前記第1の無機薄膜が形成された前記ガラスフィルムの一面を、前記ガラスフィルムよりも厚い支持ガラスの表面にオプティカルコンタクトにより密着させて、前記ガラスフィルムと支持ガラスとを積層する積層工程と、
前記支持ガラスに積層された前記ガラスフィルムの他面に、表面処理を施す表面処理工程とを備える、
ことを特徴とするガラスフィルムの表面処理方法。 - 前記表面処理工程において前記ガラスフィルムの他方の面に施す表面処理は、前記他方の面に第2の無機薄膜を形成する処理である、
ことを特徴とする請求項1に記載のガラスフィルムの表面処理方法。 - 前記第1の無機薄膜および第2の無機薄膜の何れか一方が反射防止膜であり、他方が透明導電膜である、
ことを特徴とする請求項2に記載のガラスフィルムの表面処理方法。 - 前記第1の無機薄膜が反射防止膜であり、前記第2の無機薄膜が透明導電膜である、
ことを特徴とする請求項3に記載のガラスフィルムの表面処理方法。 - 前記無機薄膜の表面粗さRaが、0.5nm未満であり、
前記支持ガラスにおける前記ガラスフィルムの一面が密着される面の表面粗さRaが、2.0nm以下である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のガラスフィルムの表面処理方法。 - 前記ガラスフィルムの厚みが300μm以下である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のガラスフィルムの表面処理方法。 - 前記支持ガラスの厚みが400μm以上である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のガラスフィルムの表面処理方法。 - 無機薄膜が形成されたガラスフィルムの前記無機薄膜が形成された面を、前記ガラスフィルムよりも厚い支持ガラスの表面にオプティカルコンタクトにより密着させて、前記ガラスフィルムと支持ガラスとが積層されている、
ことを特徴とするガラスフィルム積層体。 - 前記ガラスフィルムにおける、前記支持ガラスとの密着面とは反対側の面には、表面処理が施されている、
ことを特徴とする請求項8に記載のガラスフィルム積層体。 - 表面に無機薄膜が形成され、前記無機薄膜の形成面の表面粗さが0.5nm未満である、
ことを特徴とするガラスフィルム。 - 前記無機薄膜は、前記ガラスフィルムの一面に形成され、
前記ガラスフィルムの他面には、表面処理が施されている、
ことを特徴とする請求項10に記載のガラスフィルム。
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