JP2015058908A - 頸部保護用エアバッグ - Google Patents

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Abstract

【課題】乗員に極めて近い位置から膨出しても乗員を加害することがなく、かつ、頸部を確実に保護することが可能で、さらに、乗員がシートの中央に座っていない場合でも確実に乗員の頸部を確保できる、頸部保護用に優れたエアバッグを提供する。【解決手段】車両シートバック又はヘッドレストに装備され、衝撃に応答して膨出するエアバッグであって、1箇所又は複数のテアシームを有し、膨出開始当初はテアシームの拘束によって横方向に展開し、次いで、テアシームが破断することで乗員の頸部4,4’を取り巻くように展開することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は頸部保護用エアバッグに関し、詳細には車両シートバック上部の内部又はヘッドレスト内部の下部に装備され、車両が強い衝撃を受けた時に瞬時に膨出して乗員の頸部を包囲する、頸部保護機能に優れたエアバッグに関する。
車両への衝撃に応答して膨出するエアバッグとして、様々なものが提案されている。頭部や頸部の保護を目的として考案されたものには、例えば特許文献1(特開平7−137592号)がある。この文献は、ヘッドレストに内蔵され、衝撃に応答して前方に膨張展開する、頭部ないし頸部の保護を図るための頭部エアバッグを開示している。
特許文献2(特開平10−6907号)には、ヘッドレストに内蔵されるエアバッグであって、縫合部を有するストラップが巻かれており、展開初期にはストラップによる拘束のためにエアバッグが主に下方に膨張展開してヘッドレストを押し上げ、次いで縫合部が破断して前方にも膨張することで、乗員の頭部及び頸部を保護するエアバッグが開示されている。
特許文献3(特開2002−37011号)には、シートバックに内蔵されるエアバッグであって、膨張時にはシートから座面の方向に、背もたれの長手方向に対してある角度に傾斜して突出することによって、乗員の頭部を胸部の方向に屈曲させて保護する構造のエアバッグが開示されている。
特許文献1〜3に示されたエアバッグはおおむね円形や方形であって、頸部まで確実にフィットする形状は検討されていなかった。つまり、頸部とエアバッグの間に隙間が生じる可能性があり、頸部に対する保護性は必ずしも十分検討されていなかった。また、乗員がシートの片側に偏って座っている等、通常の着座位置と異なる位置にいる場合(アウトオブポジション)には、展開したエアバッグと乗員の頭部の位置が合わず、十分な保護が得られない可能性もあった。
一方、とくに頸部を保護する形態のエアバッグとしては、特許文献4(特表2008−515706号)がある。この文献は、自動車のヘッドレストに取り付け可能なエアバッグモジュールであって、首を取り巻く翼部と後頭部から背部にわたる背面部とを含むエアバッグが膨張展開するものを開示している。
また特許文献5(特開2000−95000号)には、シートバックに内蔵された左右一対の肩部保護袋体(肩部エアバッグ)が開示されている。この肩部保護袋体は、シートバックから前方に膨出して、乗員の左右それぞれの肩を上方から覆う構造である。左右の肩を上方から覆うことで、衝撃による上体の浮き上がりを抑えるとともに頸部を左右から支持することが可能で、乗員の上下移動や左右ずれも抑止できることが記載されている。
特開平7−137592号公報 特開平10−6907号公報 特開2002−37011号公報 特表2008−515706号公報 特開2000−95000号公報
車両運転時の交通事故において、身体への損傷部位の中で頸部損傷は依然として高い水準で発生しているにも関わらず、ヘッドレストやシートバックに内蔵される頭部・頸部用エアバッグは未だ実用化されていない。実用化に至らない要因の一つは、ヘッドレストやシートバックに内蔵されるエアバッグが乗員に近接した位置から膨出するため、乗員が至近距離でエアバッグ膨張時の衝撃を受けることに関連すると考えられる。しかしながら、頭部・頸部用エアバッグにおいて、エアバッグ膨張時における乗員への衝撃を低減することに関しては、検討されていなかった。
そこで本発明は、乗員の至近距離から膨出しても乗員を加害することがなく、頸部を確実に保護することが可能で、さらに、乗員がシートの中央に座っていない場合でも乗員の頸部を確保できる、頸部保護用に優れたエアバッグを提供することを課題とする。
本発明者は上記課題について検討を重ねた結果、エアバッグを首回りに沿う形状とすることに加えて、膨出の最初の段階では主に横方向に展開し、次いでテアシームの破断によって首回りを取り巻くように展開するように構成することで、膨出開始時には乗員に衝撃を与えず、展開時には乗員の頸部を保護することが可能であり、また、最初に横方向に展開することで、乗員がシートの左右に偏って着座している場合(アウトオブポジション)であっても確実に乗員の頸部を捉え、次いで首回りを包囲できることを見出し、本発明を完成させた。
なお、本明細書において、テアシームとは、縫製糸により縫合(縫製)され、エアバッグの内圧上昇に伴いその縫合が切れる部分のことを示す。
すなわち本発明は、車両シートバック又はヘッドレストに装備され、衝撃に応答して膨出するエアバッグであって、1箇所又は複数のテアシームを有し、膨出開始当初はテアシームの拘束によって横方向に展開し、次いでテアシームが破断することで乗員の頸部を取り巻くように展開することを特徴とする、エアバッグに関する。
本発明のエアバッグは、膨出開始当初には横方向に展開するので、シートバック又はヘッドレストから膨出しても乗員の後頸部や後頭部を急激な膨張によって打撃することがなく、乗員に対する加害性が抑えられる。また、最初に横方向に展開することで、乗員がシート中央に位置せずに左右に偏って座っている場合(アウトオブポジション)であっても、乗員の位置まで達して乗員を確保できる。そして、テアシームが破断して乗員の頸部を取り巻くように展開することで、前後方向及び左右方向の衝撃や揺動から乗員(特に乗員の頸部)を保護することができる。
本発明のエアバッグのテアシームは、エアバッグを完全に区画しないことが好ましい。
テアシームでエアバッグを完全に区画しないことによって、テアシームが破断する前にも、エアバッグを先端まで伸展させることができる。このため横方向の展開幅が広くなり、乗員の頸部をより確実に確保することが可能となる。
また本発明のエアバッグは、テアシームがエアバッグに1箇所以上設けられており、当該テアシームの破断強度は、エアバッグ取り付け部から先端に向かう順に、より低くなるように設定されていることが好ましい。
テアシームを1箇所以上設け、各テアシームの破断強度を、エアバッグ取り付け部から先端に向かう順に、より低くなるように設定することで、膨出開始当初の横方向への展開を確実にするとともに、テアシームの破断にともなう乗員の首回りでの展開では、乗員への衝撃を低減しつつ、確実に乗員の頸部を確保しながら展開することができる。テアシーム破断時のエアバッグ内圧は、エアバッグのサイズとインフレータの種類によって決まるもので任意である。
さらに、エアバッグが完全に展開した状態では、頸部を取り巻く弧状に湾曲した形状であることが好ましく、特に、エアバッグが完全に展開した状態は、乗員の頸部前部まで拘束可能であることが好ましい。
エアバッグをこのような形状とすることで、前後・左右方向の衝撃や揺動から乗員の頸部を保護するとともに、急激に頭部が前後に振られることによる頸部への衝撃を緩和し、また、他のエアバッグとの干渉が回避される。
本発明は、乗員の至近距離から膨出しても乗員を加害することがなく、かつ、乗員頸部を確実に保護することが可能で、さらに、乗員がシートの中央に座っていない場合でも確実に乗員の頸部を確保できる、頸部保護に優れたエアバッグを提供することができる。本発明のエアバッグは、従来のバッグ挙動とは異なり、乗員の頸部を包みこむように展開することができるため、車両運転時の事故において高い水準で発生している頸部損傷の発生数の低減に繋がる。
本発明のエアバッグにおける膨出開始当初の形態の一例を示した概略平面図である。 図1のエアバッグのテアシーム近傍を拡大して示した概略平面図である。 本発明のエアバッグにおいてテアシームを6箇所に設けた場合の膨出開始当初の形態を示した概略平面図である。 本発明のエアバッグにおいてテアシームの破断後、完全に展開したときの一例である。(a)は上部からの概略平面図、(b)は横からの概略平面図である。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。なお本明細書において、「横方向」とはシートの幅方向を表し、「左右」とはシートの中央に着座した状態を基準とした左右を表し、「前後」とはシートの向きを基準とした前及び後ろの方向を表す。
図1は本発明のエアバッグの膨出開始当初の形態の一例を表す。図1はエアバッグと乗員の頸部の位置関係を上方から見て表す概要図である。
頸部保護用エアバッグ(1)は、通常時には、インフレータ等の他の部品とともにエアバッグモジュールとして車両のシートバックやヘッドレスト(不図示)に内蔵されており、センサーが衝撃を感知するとインフレータからガスが放出され、エアバッグにガスが流入してエアバッグの膨出が開始する。インフレータやセンサーとしては公知の構成を用いてよく、特に制限されない。
エアバッグ(1)は取り付け部(2)を介して他の部品(不図示)と組み合わされている。取り付け部(2)はエアバッグ(1)の中央部後方に位置しており、取り付け部近傍の左右に各1箇所ずつ、破断可能に縫合されているテアシーム近傍(3)を有している。図1の例ではテアシーム近傍(3)は、取り付け部(2)中央から約15cmの箇所に設けられている。テアシーム近傍(3)を左右に各1箇所設ける場合、テアシームの位置はエアバッグの取り付け部(2)中央から15〜30cmの位置とすることが好ましい。このようにテアシームを形成すると、図1に示されるように、テアシームが破断する前には、テアシームの拘束によってエアバッグがほぼ横方向ないし斜め前方に膨出する。すなわちエアバッグ(1)が乗員の頸部(4)の後方の左右に展開するため、乗員の頸部を打撃することがない。また、乗員が左右に偏って着座していて、頸部が中央からずれた位置にある時(4’)でも、エアバッグが乗員の頸部まで達して乗員を確保することが可能である。
図2はテアシームを拡大して示した概略平面図であり、図1の裏側(下方)から見た状態である。図2に示されるように、テアシーム近傍(3)は、エアバッグの一部を三角形に折り込み、テアシーム(5)はエアバッグの辺縁に沿って縫合されている。図2の例ではテアシーム(5)の長さは15cmとしているが、所望の破断強度やエアバッグの形態(大きさ、容量)に応じて例えば5〜25cmとすることもでき、特に制限されない。縫合部は、図2のようにエアバッグの辺縁に沿うようにするだけでなく、辺縁に対して斜めや垂直とすることもでき、特に制限されない。いずれの場合も、テアシームの破断前にもエアバッグの先端までガスが流入できるように、テアシームによってエアバッグを完全に区画しないことが好ましい。
図3はテアシームの別の形態を示している。図3の例ではテアシーム近傍(3a、3b、3c)はエアバッグの左右側にそれぞれ3箇所ずつ、合計6箇所設けられている。膨出開始当初、テアシームの破断前にはエアバッグがほぼ横方向に膨出するので、乗員の頸部(4)を打撃することがなく安全性に優れるとともに、乗員が左右に偏って着座している場合(4’)でも、乗員の頸部を確保することが可能である。テアシームの数は図示する例以外にも、例えば4箇所又は8箇所としてもよく、合計1箇所〜10箇所の任意の数とできる。またテアシームの配置は、左右対称であってもよく、非対称であってもよい。
エアバッグの左右側それぞれに複数のテアシームを設ける場合、テアシームの破断強度は全て同じでもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、エアバッグ先端から取り付け部の順に破断強度が高くなるようにしてもよいし、逆に、バッグ取り付け部からエアバッグ先端部の順に破断強度が高くなるようにしてもよい。テアシームの破断強度は公知の方法で設定することができ、例えば、縫製糸、糸張力、運針数の選択によって所望の破断強度のテアシームを形成する。例えば、バッグ内圧が15kPa以上となったとき前記テアシームが破断するように設定し、ガスの流入によってエアバッグが膨張するとともに内圧が上がり、テアシームが破断すると、破断による反動とバッグ形状によりバッグの両端が乗員の頸部を包みこむように展開し、乗員の頸部保護を確実に行う。
図4(a)はテアシームが破断してエアバッグが拡張し、完全に展開した状態を示している。展開後のエアバッグ(1)は、乗員の頸部4の前部まで包囲して拘束可能であるように、弧状に形成されている。エアバッグの幅(w)は任意であるが、例えば15〜45cmとすることができ、取り付け部から先端に至るまで一定の幅でもよいし、取り付け部から先端部にかけて幅細となる形状でもよい。図4(b)は横から見た概略図であり、シートバック6からエアバッグ(1)が膨出している。エアバッグ(1)の厚み(t)は任意であるが、エアバッグの幅(w)より小さくすることが好ましい。例えば7cmとすることで全体を一定の厚みとしてもよいし、いずれかの部分を他の部分よりも厚く(又は薄く)なるように設計してもよい。
また本発明には、図4に示した形状以外にも様々な形状のものが含まれる。例えば、完全に展開した状態がコの字形状となるようにエアバッグを形成することもできる。また、エアバッグの左右を別体として作製し、左右が連動して、或いは独立に展開するように構成することもできる。
本発明のエアバッグの基布は、公知の繊維布帛で構成することができる。繊維布帛を構成する繊維は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、とくに限定するものではない。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル系繊維、超高分子量ポリオレフィン系繊維、ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。とくには、物理特性、耐久性、耐熱性などの点からナイロン66繊維が好ましい。また、リサイクルの観点からは、ポリエステル系繊維、ナイロン6繊維も好ましい。
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用されている各種の添加剤、たとえば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、脆化(劣化)防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を使用してもよい。また、カラミ織を製織する上で望ましい場合には、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
たとえば、前記繊維布帛が織物の場合は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。必要に応じて、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としてもよく、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、たとえば、シャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
前記繊維布帛が編物の場合は、シングルトリコット編、シングルコード編、シングルアトラス編などのたて編や、平編、ゴム編、パール編などのよこ編、などの編組織を単独またはそれらを組み合わせた二重組織などからなるものがあげられる。また、前記繊維布帛が不織布の場合は、ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンド、スパンボンド、メルトブロー、湿式などにより製造されるものがあげられる。
前記基布を構成する糸の単糸太さは、同じでも異なってもいずれでもよく、たとえば、0.5〜8dtexの範囲であることが好ましい。また、単糸の強度も、5.4cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/dtex以上であることがより好ましい。また、これら繊維の単糸の断面形状も、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型など、布帛の製造、得られた布帛の物性に支障のない範囲で適宜選定すればよい。また、太さや断面形状などが異なる複数の糸を、合糸、撚り合わせなどにより一体化したものを用いてもよい。
前記繊維の総繊度は、150〜1000dtexであることが好ましく、235〜700dtexであることがより好ましい。150dtex未満ではエアバッグに求められる強度が得られにくい傾向にあり、1000dtexより大きくなると、重量が大きくなりすぎると同時に、基布の厚みが増大しバッグの収納性が悪くなるおそれがある。
前記基布は、目付けが190g/m以下、引張強力が600N/cm以上であることが好ましい。目付けと引張強力がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、ここでいう目付けは、後述する不通気処理剤を塗布する前の未加工の状態の基布重量をいう。
前記基布が織物である場合のカバーファクターは、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500より小さいと、織物の開口部が大きくなるためバッグの気密性を得ることが困難となり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD(dtex)、タテ糸密度をN(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2(dtex)、ヨコ糸密度をN(本/2.54cm)とすると(D×0.9)1/2×N+(D×0.9)1/2×Nで表される。
また、前記基布は精練および熱処理を施されたものであってもよい。
前記したように、基布は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、樹脂層を有していてもよい。また、その目的から、前記樹脂層は、少なくとも基布の片面全面に付着しているが、基布表面、基布を構成する糸束の間隙部、または、繊維単糸の間隙部など、いずれに介在していてもよい。耐熱性、および、基布に外力が加わっても被膜の損傷が抑えられるという理由により、樹脂層を有する面同士を接合して、被覆面が内側になるようにエアバッグを作製することが好ましい。
前記樹脂としては、たとえば、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、可撓性、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
被覆方法としては、1)コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ、スロットダイおよびリップなど)、2)浸漬法、3)印捺法(スクリーン、ロール、ロータリーおよびグラビアなど)、4)転写法(トランスファー)、5)ラミネート法、および6)スプレーなどにて噴霧する方法などがあげられる。なかでも、設定できる付与量の幅が大きい点で、コーティング法が好ましい。
また、塗布量としては、5〜60g/mが好ましい。塗布量が5g/mより少ないと、基布の通気性が高くなるため、バッグの気密性に問題が発生するおそれがあり、また塗布量が60g/mより多いと、基布の厚みが厚くなってバッグの収納性に問題が発生するおそれがある。
また、各乗員側布とインフレータ側布との結合、あるいは補強布の結合は、縫製、接着、溶着、製織、製編あるいはこれらの併用など、いずれの方法によってもよく、エアバッグとしての堅牢性、展開時の耐衝撃性、乗員の耐衝撃性能などを満足するものであればよい。
縫製に使用される縫い糸の太さは、235dtex〜2800dtex、運針数は2〜10針/cmとすればよい。テアシームの縫合部に用いる縫い糸もこの範囲から選択することができるが、縫製糸よりも破断強度の弱い縫い糸とする。テアシームの縫合部では、例えば235〜830dtexの糸で、運針数は2〜10針/cmとするのがよい。
さらに、必要に応じて、外周縫製部などの縫い目からのガス抜けを防ぐために、シール材、接着剤または粘着材などを、縫い目の上部および/または下部、縫い目の間、縫い代部などに塗布、散布または積層してもよい。
縫合に使用する縫い糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
また、前記の通り、使用するインフレータの特性に応じて、インフレータ取付部周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、たとえば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素系繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体と同じか本体用基布より太い糸を用いて別途作成した織物を用いてもよい。また、織物に耐熱性被覆材を施したものを用いてもよい。
以下、実施例等を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。
なお、実際の車に装着されるエアバッグは、火薬を使用するインフレータにて展開させるが、ここでの各実施例・比較例のバッグの展開は、インフレータの代わりに窒素ガスを充填した蓄圧シリンダを使用するエアバッグ模擬展開装置にて展開試験を実施した。
バッグが展開する挙動は高速度ビデオカメラを使用して観察した。
[実施例1]
図1に概略的に示される、テアシームを2箇所有するエアバッグを作製した。ナイロン66を使用し、糸密度をタテ・ヨコ共に51本/inch(2.54cm)とした基布を利用し、さらに基布にシリコーン系樹脂をコーティングにて25g/mを塗布したものをエアバッグ用基布とした。作製したエアバッグ用基布を弧状に湾曲した形状で裁断し、2重環縫いにて外周縫製を実施した。外周縫製実施後、外周縫製部分が頸部に接触し首への損傷を防ぐためにバッグ内部へくるように表返しを行った。テアシームの縫製はナイロン66の235dtexの縫製糸を用い、取り付け部から15cmの位置にテアシーム近傍を設けた。折り込み部の形状を三角形としバッグの同じ面同士が接するように織り込んだ。
作製したエアバッグの展開試験を実施し、結果を表1にまとめた。
[実施例2]
テアシームを6箇所設けること以外は実施例1と同様にエアバッグを作製した。その概略図を図3に示す。テアシーム近傍(3a)は取り付け部から7cmの位置に、残りのテアシーム近傍(3b、3c)は、3aからそれぞれ10cm、25cm間隔で設けた。
作製したエアバッグの展開試験を実施し、結果を表1にまとめた。
[実施例3]
実施例2のエアバッグにおいて、エアバッグ先端部から取り付け部の順にテアシームに使用する糸を300dtex、400dtex、500dtexとし、作製したエアバッグの展開試験を実施し、結果を表1にまとめた。
[比較例1]
実施例1〜3と同形状でテアシームを設けないエアバッグを作製し、展開試験を実施して、結果を表1にまとめた。
Figure 2015058908
表1に示されるとおり、実施例1、2のエアバッグはテアシーム破断前までは真横に膨張し、テアシーム破断後は首周りにそって展開し、良好な展開挙動を示した。また、実施例3のテアシームは細い糸から順に破断していき、バッグ端部から徐々に乗員の首に沿って頸部を包みこむように展開し、最もスムーズで良好な展開挙動であった。比較例1のエアバッグは真横に膨張することなく、弧状の形状を維持したままで、首に沿って展開せず後頸部や後頭部を打撃する展開挙動であった。
1 エアバッグ
2 取り付け部
3 テアシーム近傍
4、4’ 乗員の頸部
5 テアシーム
6 シートバック

Claims (5)

  1. 車両シートバック又はヘッドレストに装備され、衝撃に応答して膨出するエアバッグであって、1箇所又は複数のテアシームを有し、膨出開始当初はテアシームの拘束によって横方向に展開し、次いで、テアシームが破断することで乗員の頸部を取り巻くように展開することを特徴とする、エアバッグ。
  2. 前記テアシームは、エアバッグを完全に区画しないことを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ。
  3. 前記テアシームがエアバッグに2箇所以上設けられており、テアシームの破断強度は、エアバッグ取り付け部から先端に向かう順に、より低くなるように設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエアバッグ。
  4. 前記エアバッグが完全に展開した状態では、頸部を取り巻く弧状に湾曲した形状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ。
  5. 前記エアバッグが完全に展開した状態が、乗員の頸部前部まで拘束可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ。
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