JP2015052102A - 成形材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリプロピレンをマトリックスとする、力学特性に優れた成形品を製造できる成形材料を提供すること。【解決手段】少なくとも下記成分(A)〜(C)を合計100質量部含む成形材料。(A)炭素繊維 1〜40質量部(B)ポリプロピレン 50〜98.9質量部(C)酸価が30〜150mgKOH/gであり、230℃における溶融粘度が100〜1000Pa・sである酸変性ポリプロピレン 0.1〜10質量部【選択図】なし
Description
本発明は、成形材料に関するものであり、特に力学特性に優れた成形材料に関する。
強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形材料は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途などに広く用いられている。これらの成形材料に使用される強化繊維は、その用途によって様々な形態で成形品を強化している。これらの強化繊維には、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維などの有機繊維、およびシリコンカーバイド繊維などの無機繊維や炭素繊維などが使用されているが、比強度、比剛性および軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好適であり、その中でもポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が好適に用いられる。
熱可塑性樹脂としては、軽量性・経済性が求められるようになり、軽量なオレフィン樹脂、とりわけポリプロピレンが使用されるようになってきた。しかしながら、ポリプロピレンは強化繊維との界面接着性に乏しく、力学特性に優れた成形品を得ることが困難であった。中でも、炭素繊維のような表面の反応性が乏しい繊維では、力学特性に優れた成形品を得ることが特に困難であった。
これまでに、ポリオレフィン系炭素繊維強化樹脂組成物の強度を向上させる手段として、例えば、炭素繊維、ポリオレフィン系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、炭素繊維が有する反応性官能基及び酸変性ポリオレフィンが有する反応性官能基のそれぞれと反応しうる官能基を2個以上有する多官能性化合物を含む繊維強化樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、得られる力学特性が十分ではなかった。
また、強化繊維とプロピレン系樹脂の界面接着性に優れ、力学特性に優れた成形品を得られる成形材料として、多官能化合物によりサイジング処理された強化繊維とテルペン系樹脂、プロピレン系樹脂を有してなる成形材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、近年求められる高い力学特性に対してはまだなお不十分である課題があった。
本発明は、従来技術の背景に鑑み、ポリプロピレンをマトリックスとする、力学特性に優れた成形品を製造できる成形材料を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、上記課題を達成することができる、次の成形材料を見出した。
少なくとも下記成分(A)〜(C)を合計100質量部含む成形材料。
(A)炭素繊維 1〜40質量部
(B)ポリプロピレン 50〜98.9質量部
(C)酸価が30〜150mgKOH/gであり、230℃における溶融粘度が100〜1000Pa・sである酸変性ポリプロピレン 0.1〜10質量部
少なくとも下記成分(A)〜(C)を合計100質量部含む成形材料。
(A)炭素繊維 1〜40質量部
(B)ポリプロピレン 50〜98.9質量部
(C)酸価が30〜150mgKOH/gであり、230℃における溶融粘度が100〜1000Pa・sである酸変性ポリプロピレン 0.1〜10質量部
本発明の成形材料によれば、曲げ特性や衝撃特性などの力学特性に優れた成形品が製造できる。本発明の成形材料および成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、または自動車の部品、内部部材および筐体などの各種部品・部材に極めて有用である。
本発明は、少なくとも(A)炭素繊維、(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンを含む成形材料である。まず、これらの構成要素について説明する。
本発明に用いられる(A)炭素繊維としては、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられる。高強度、高弾性率を有する炭素繊維を用いることで、得られる成形品の強度および弾性率を向上させることができる。得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維を用いることもできる。
さらに、X線光電子分光法により測定される炭素繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましい。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、前記(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンを含むマトリックス樹脂とより強固な接着を得ることができる。0.08以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが例示できる。0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、炭素繊維表面にサイジング剤などが付着している場合には溶剤でこれを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法を挙げることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
また、炭素繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観をより向上させる観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
炭素繊維束とした場合の単糸数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。炭素繊維の生産性の観点からは、単糸数が多いものが好ましく、20,000〜100,000本の範囲内で使用することが好ましい。
さらに、本発明に用いられる炭素繊維には、界面接着性、取扱性を向上させる観点から、サイジング処理がされていてもよい。サイジング剤としては、特に限定されないが、界面接着性を向上させる観点から、エポキシ基、ウレタン基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を1分子中に2個以上有する化合物などが挙げられる。これらを1種または2種以上併用してもよい。炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性をより向上させるため、官能基の数は2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。前記官能基を1分子中に2個以上有する化合物としては、例えば、多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。
多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、マトリックス樹脂との接着性をより発揮しやすい脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。通常、エポキシ樹脂はエポキシ基を多数有すると、架橋反応後の架橋密度が高くなるために、靭性の低い構造になりやすい傾向にあるが、脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。このため、脂肪族エポキシ樹脂を炭素繊維とポリプロピレン間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、成形品の強度をより向上しやすく好ましい。
脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物の具体例としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂の中でも、好ましくは、反応性の高いグリシジル基を多数有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物である。この中でも、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類、ポリグリセロールポリグジリシジルエーテル類がより好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、マトリックス樹脂との相溶性のバランスがよく、効果的に接着性を向上させることから好ましい。
これらの官能基を1分子中に2個以上有する化合物をサイジング剤として炭素繊維に付与することで、炭素繊維の含有量が少量であっても効果的に炭素繊維表面の官能基等の表面特性に適合させて成形品の強度をより向上させることができる。また、集束性、耐屈曲性や耐擦過性を改良し、高次加工工程において、毛羽、糸切れの発生を抑制でき、いわゆる糊剤、集束剤として高次加工性を向上させることもできる。
サイジング剤付着量は、サイジング剤と炭素繊維の合計100質量%中、0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。サイジング剤付着量が0.01質量%以上であれば、接着性向上効果がより効果的に奏される。0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。一方、サイジング剤付着量が10質量%以下であれば、マトリックス樹脂の物性を維持しながら、接着性をより向上させることができる。
また、サイジング剤には、乳化剤あるいは界面活性剤など他の成分を粘度調整、耐擦過性向上、耐毛羽性向上、集束性向上、高次加工性向上等の目的で加えてもよい。
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えば、サイジング剤を溶媒(分散させる場合の分散媒を含む)中に溶解(分散も含む)したサイジング処理液を調製し、該処理液を炭素繊維に付与した後に、溶媒を乾燥・気化させ、除去することにより、サイジング剤を炭素繊維に付与する方法が一般的に用いられる。サイジング処理液を炭素繊維に付与する方法としては、例えば、ローラを介して炭素繊維をサイジング処理液に浸漬する方法、サイジング処理液の付着したローラに炭素繊維を接する方法、サイジング処理液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、炭素繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング処理液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に炭素繊維を超音波で加振させることはより好ましい。
乾燥温度と乾燥時間はサイジング剤の付着量によって調整すべきであるが、サイジング剤の付与に用いる溶媒の完全な除去、乾燥に要する時間を短くし、一方、サイジング剤の熱劣化を防止し、サイジング処理された炭素繊維で形成された炭素繊維束が固くなって束の拡がり性が悪化するのを防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましい。
サイジング処理液に使用する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン等が挙げられるが、取扱いが容易であることおよび防災の観点から、水が好ましい。従って、水に不溶、若しくは難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤、界面活性剤を添加し、水分散して用いることが好ましい。具体的には、乳化剤、界面活性剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができるが、相互作用の小さいノニオン系乳化剤が、サイジング剤に含まれる官能基の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
(A)炭素繊維の含有量は、前記成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して、1〜40質量部である。1質量部未満では、十分な力学特性を得ることができず、成形品の曲げ強度および衝撃強度が低下する。4質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましい。一方、(A)炭素繊維の含有量が40質量部を超えると成形時の繊維分散性が低下し、成形品を得ることが困難となることがある。35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
本発明における(B)ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体および/またはプロピレンと少なくとも1種のその他の単量体との共重合体であり、後述する酸変性したポリプロピレンは含まない。その他の単量体としては、α−オレフィン、共役ジエン、非共役ジエンなどが挙げられる。ポリプロピレンは、熱可塑性樹脂の中でも比重が軽いことから、高強度、高弾性率の炭素繊維と組み合わせることで、軽量かつ高強度、高弾性率の成形品を得ることができる。
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等のプロピレンを除く炭素数2〜12のα−オレフィンが挙げられる。共役ジエン、非共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。これらその他の単量体は、1種類または2種類以上を選択することができる。
(B)ポリプロピレンの骨格構造としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと前記その他の単量体のうちの1種類または2種類以上のランダムあるいはブロック共重合体、または他の熱可塑性単量体との共重合体等を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが好適なものとして挙げられる。中でも、プロピレンの単独重合体が、力学特性により優れることから好ましい。
また、(B)ポリプロピレンは、230℃におけるメルトフローレートが5〜60g/10分であることが、成形性と力学特性をより向上させる観点から、好ましい。230℃におけるメルトフローレートが5g/10分以上であれば、成形性が向上する。6g/10分以上がより好ましく、8g/10分以上がさらに好ましい。一方、メルトフローレートが60g/10分以下であれば、力学特性をより向上させることができる。55g/10分以下がより好ましく、50g/10分以下がさらに好ましい。
なお、ポリプロピレンは通常、180〜300℃の範囲にて成形されるが、炭素繊維と組み合わせた場合には、せん断発熱するため、成形時の温度が上がりやすく、成形時の特性として、比較的高温の溶融粘度が重要と考えられる。一方で、250℃を超えると分解を伴いやすいことに鑑みて、本発明においては、ポリプロピレンの成形時の特性の指標として、230℃の溶融粘度に着目した。
また、本発明における(B)ポリプロピレンの230℃における荷重2.16kgのメルトフローレートの測定方法とは、JIS K7210(1999)に従い測定される値を言う。
また、メルトフローレートが上記範囲内のポリプロピレンは市販の製品から選択し、使用することができる。なお、(B)ポリプロピレンを2種類以上組み合わせて用いる場合には、(B)ポリプロピレン全体としてのメルトフローレートが上記範囲にあることが好ましい。
(B)ポリプロピレンの含有量は、前記成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して、50〜98.9質量部である。50質量部未満では、成形時に流動性を確保できず、成形できないことがある。60質量部以上が好ましく、65質量部以上がより好ましい。また98.9質量部を超えると、成形品の曲げ強度および衝撃強度が不足することがある。90質量部以下が好ましく、85質量部以下がさらに好ましい。
本発明における(C)酸変性ポリプロピレンは、重合体鎖に結合したカルボン酸基を有するポリプロピレンである。酸変性ポリプロピレンは、種々の方法で得ることができ、例えば、前述の(B)ポリプロピレンに、カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体をグラフト重合することにより得ることができる。(C)酸変性ポリプロピレンを(A)炭素繊維と組み合わせて用いることで、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面接着性に優れ、炭素繊維の強度を成形品に効率良く反映させることができる。
ここで、カルボン酸基を有する単量体またはカルボン酸エステル基を有する単量体としては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、そのエステル、カルボン酸基および/またはカルボン酸エステル基とオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物などが挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが例示される。その無水物としては、例えば、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが例示できる。
カルボン酸基および/またはカルボン酸エステル基とオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
これらの単量体は単独で用いることもできるし、また2種類以上のものを用いることもできる。また、これらの中でも、エチレン系不飽和カルボン酸の酸無水物類が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
(C)酸変性ポリプロピレンを製造する方法としては、特に限定されないが、前記(B)ポリプロピレンと前記カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体とをトルエンやキシレンなどの溶媒に溶解した混合溶液に、有機過酸化物を添加してグラフト重合する方法などが挙げられる。
有機過酸化物の例としては、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
本発明においては、(C)酸変性ポリプロピレンの酸価が30〜150mgKOH/gであることが重要である。(C)酸変性ポリプロピレンの酸価が30mgKOH/g未満では、炭素繊維との界面接着性に劣り、得られる成形品の曲げ強度、曲げ弾性率が低下する。50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。一方、(C)酸変性ポリプロピレンの酸価が150mgKOH/gを超えると架橋反応などの副反応が生じやすく、成形時の安定性が劣ることがある。120mgKOH/g以下が好ましく、110mgKOH/g以下がより好ましい。
ここで、本発明における(C)酸変性ポリプロピレンの酸価とは、JIS K0070(1992)の方法により測定される値を言う。具体的には、キシレンなどの溶媒中で酸変性ポリプロピレンを加熱して溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、水酸化カリウム溶液にて滴定することで、酸価が求められる。
酸価が上記範囲内にある(C)酸変性ポリプロピレンを得る方法としては、特に限定されず、反応条件等によって適宜調整することができる。例えば、前記カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体をグラフト重合する場合、反応後に未反応で残存しやすいカルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体を、目的とする酸価に必要な理論量よりも過剰に配合することで、目的の酸価の(C)酸変性ポリプロピレンを得ることができる。また、酸価の異なる市販の各種酸変性ポリプロピレンの中から、目的の酸価を有するものを選択して使用することもできる。
なお、(C)酸変性ポリプロピレンを2種類以上組み合わせて用いる場合には、(C)酸変性ポリプロピレン全体としての酸価が上記範囲にあることが好ましい。
また、本発明においては、(C)酸変性ポリプロピレンの230℃における溶融粘度が100〜1000Pa・sであることが重要である。100Pa・s未満では、酸変性ポリプロピレンの分子量が低く、(B)ポリプロピレンと混合した際の樹脂物性が劣るため、成形品の曲げ強度および衝撃強度が低下する。125Pa・s以上が好ましく、150Pa・s以上がより好ましい。一方、1000Pa・sを超えると、(B)ポリプロピレンと混合した際の溶融粘度が高く、成形する際の流動性が劣るため、成形できないか表面外観が劣ることがある。800Pa・s以下がより好ましい。
なお、ポリプロピレンは通常、180〜300℃の範囲にて成形されるが、炭素繊維と組み合わせた場合には、せん断発熱するため、成形時の温度が上がりやすく、成形時の特性として、比較的高温の溶融粘度が重要と考えられる。一方で、250℃を超えると分解を伴いやすいことに鑑みて、本発明においては、酸変性ポリプロピレンの成形時の特性の指標として、230℃の溶融粘度に着目した。
ここで、本発明における(C)酸変性ポリプロピレンの230℃における溶融粘度は、粘弾性測定器を用いて測定することできる。本発明においては、40mmのパラレルプレートを用い、1Hzにて、230℃における溶融粘度を測定する。
溶融粘度が上記範囲内にある(C)酸変性ポリプロピレンを得る方法としては、特に限定されず、反応条件等によって適宜調整することができる。例えば、前記カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体をグラフト重合する場合、原料に用いたポリプロピレンよりも、得られる酸変性ポリプロピレンのほうが溶融粘度が低下する傾向にあるため、目的の溶融粘度よりも高い溶融粘度を有するポリプロピレンを用いて前記カルボン酸基を有する単量体および/またはカルボン酸エステルを有する単量体をグラフト重合することで、目的の溶融粘度の(C)酸変性ポリプロピレンを得ることができる。また、溶融粘度の異なる市販の各種酸変性ポリプロピレンの中から、目的の溶融粘度を有するものを選択して使用することもできる。
なお、(C)酸変性ポリプロピレンを2種類以上組み合わせて用いる場合には、(C)酸変性ポリプロピレン全体としての溶融粘度が上記範囲にあることが好ましい。
また、(C)酸変性ポリプロピレンの200℃加熱下における質量減少率は、成形時の分解ガスを抑制する観点から、少ない方が好ましく、0.2質量%未満であることが好ましい。より好ましくは0.1質量%未満である。
ここで、本発明における(C)酸変性プロピレンの200℃加熱下における質量減少率は、熱質量測定(TGA)にて測定することができる。本発明では、40℃/分の昇温速度条件で30℃から200℃まで昇温し、200℃にて10分間等温で保持しながら質量を測定し、200℃到達時点から10分間加熱後の質量減少量を求める。質量減少率(%)は、{(200℃到達時点の質量−200℃到達時点から10分間加熱後の質量)/200℃到達時点の質量}×100により求められる。
また、上記範囲の質量減少率を有する(C)酸変性ポリプロピレンを得る方法としては、特に限定されないが、例えば、酸変性ポリプロピレンをトルエンやキシレンなどの溶媒により洗浄し、未反応の化合物や残存する有機過酸化物、および溶融するオリゴマーを取り除く方法などが挙げられる。上記成分を取り除くことで、(C)酸変性ポリプロピレンは高温でも安定性に優れ、質量減少率を低減することができる。
また、(C)酸変性ポリプロピレンは、40℃/分の昇温速度条件で30℃から200℃まで昇温した後、40℃/分の降温速度条件で30℃まで冷却してから、10℃/分の昇温速度条件で再度200℃まで昇温したときの示差走査熱量測定における吸熱ピークを複数有することが好ましく、好ましくは3つ以上である。詳細は不明であるが、複数の吸熱ピークを有するということは、酸変性ポリプロピレンとして、特性の異なるセグメント、例えば、柔軟なセグメントと剛直なセグメントを有していることを意味すると考えられる。つまり、炭素繊維表面に接着する際に、柔軟なセグメントにより効率良くマトリックス樹脂へ応力伝達できるため、成形品の曲げ強度と衝撃強度をより向上させることができると考えられる。
(C)酸変性ポリプロピレンは、生産の工程上、(B)ポリプロピレンにグラフト重合することで得られているため、製造コストがかかり、また、(B)ポリプロピレンに比べて安定性に劣りやすい。そのため、本発明の成形材料においては、力学特性とのバランスを考慮しながら、(C)酸変性ポリプロピレンを少量含有することが好ましい。すなわち、(C)酸変性ポリプロピレンの含有量は、前記成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である。0.1質量部未満では、十分な力学特性を得ることができず、成形品の曲げ強度および衝撃強度が低下する。0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。一方、10質量部を超えると成形時の安定性が劣るため、成形材料とした際の揮発成分が多くなることがあり、好ましくない。5質量部以下が好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
また、(C)酸変性ポリプロピレンの含有量に対する(B)ポリプロピレンの含有量の質量比((B)/(C))は、95/5〜99.5/0.5であることが、力学特性と成形材料における(C)酸変性ポリプロピレンの質量減少のバランスがより優れるため好ましい。より好ましくは、97/3〜99/1である。(B)ポリプロピレンと(C)酸変性ポリプロピレンの含有量をかかる範囲内とすることで、効率良く力学特性の向上ができ、成形材料における(C)酸変性ポリプロピレンの質量減少を少なくすることができる。(C)酸変性ポリプロピレンの配合量が少ない範囲でも、力学特性を効率良く向上することができる。
本発明の成形材料は、さらに(D)テルペン系樹脂を含有してもよく、成形時の流動性を向上させることができる。(D)テルペン系樹脂は、ポリプロピレンよりも溶融粘度が低いため、成形材料の粘度を下げ、成形性を向上することが可能である。この際、(D)テルペン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が良いことから、効果的に成形性を向上することができる。
(D)テルペン系樹脂は、例えば、有機溶媒中でフリーデルクラフツ型触媒存在下、テルペン単量体を重合または芳香族単量体等と共重合することにより得ることができる。
テルペン単量体としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノーレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、サビネン、パラメンタジエン類、カレン類等の単環式モノテルペンが挙げられる。また、芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
前記テルペン単量体の中でも、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、d−リモネンがポリプロピレンとの相溶性がよく好ましい。(D)テルペン系樹脂としては、これらのテルペン単量体の単独重合体が好ましい。さらに、該テルペン系樹脂を水素添加処理して得られた水素化テルペン系樹脂が、よりポリプロピレンとの相溶性がよくなるため好ましい。
(D)テルペン系樹脂の含有量は、前記(A)〜(C)の合計100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましい。(D)テルペン系樹脂を0.5質量部以上含有することにより、成形材料の流動性をより向上させることができる。一方、20質量部以下含有することにより、成形品の力学特性をより高いレベルで維持することができる。
また、本発明の成形材料は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の充填材や添加剤を含有してもよい。これらの例としては、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
本発明の成形材料の形態については特に限定されないが、具体例として、短繊維ペレット、長繊維ペレットなどが挙げられる。中でも、長繊維ペレットであると、より効率的に炭素繊維の強度を成形品に反映できるため、好ましい。特に、長繊維ペレットは、(C)酸変性ポリプロピレンの含有量に対する(B)ポリプロピレンの含有量の質量比((B)/(C))が前述の好ましい範囲にあると、力学特性の向上効果を維持しながら、(C)酸変性ポリプロピレンの質量減少をより低減することができるため好ましい。
本発明の成形材料の製造方法は、特に限定されないが、単繊維ペレットの場合、例えば、成分(A)〜(C)および必要によりその他成分を、押出機などを用いて溶融混錬し、ペレタイザーなどでペレット状にカットする方法が例示できる。また、長繊維ペレットの場合、例えば、押出機などを用いて溶融された成分(B)および成分(C)を炭素繊維に含浸させて引抜き、ペレタイザーなどでペレット状にカットする方法が挙げられる。
また、長繊維ペレットにおいて、上記成分(D)を用いる場合には、例えば、図1に示すように、(A)炭素繊維の単繊維1と(D)テルペン系樹脂2からなる複合体を作製した後、押出機などを用いて溶融された成分(B)および成分(C)を複合体に接するように形成し、ペレタイザーなどでペレット状にカットしてもよい。より具体的には、押出機と電線被覆法用のコーティングダイを用いて、連続的に複合体の周囲に成分(B)および成分(C)を被覆するように配置していく方法や、ロール等で扁平化した複合体の片面あるいは両面から押出機とTダイを用いて溶融したフィルム状の成分(B)および成分(C)を配置し、ロール等で一体化させ、ペレタイザーやストランドカッターなどの装置で一定長に切断して製造することができる。
図1に、本発明の成形材料に好ましく用いられる炭素繊維束の横断面形態の一例の概略図を示す。(A)炭素繊維の単繊維1が(D)テルペン系樹脂2を塗布、含浸せしめた複合体3として形成されている。成分(A)の単繊維1の間に成分(D)が満たされ、成分(D)の海に、成分(A)の単繊維1が島のように分散して複合体3を形成する。
図2〜6に、本発明の成形材料の好ましい縦断面形態の一例の概略図を示す。(A)炭素繊維の単繊維1と(D)テルペン系樹脂2からなる複合体3と、(B)ポリプロピレンおよい/または(C)酸変性ポリプロピレン4とを積層した構成を有する。なお、縦断面とは、軸心方向を含む面での断面を意味する。
好ましい態様としては、図2に示すように、(A)炭素繊維1が成形材料の軸心方向にほぼ平行に配列され、かつその長さがペレットの長さと実質的に同じ長さである態様(長繊維ペレット)が挙げられる。
ここで言う、「ほぼ平行に配列されて」いるとは、炭素繊維の長軸の軸線と、成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を示し、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。また、「実質的に同じ長さ」とは、例えばペレット状の成形材料において、ペレット内部で炭素繊維が切断されていたり、ペレット全長よりも有意に短い炭素繊維が実質的に含まれたりしないことである。特に、そのペレット全長よりも短い炭素繊維の量について規定されているわけではないが、ペレット全長の50%以下の長さの炭素繊維の含有量が30質量%以下である場合には、ペレット全長よりも有意に短い炭素繊維が実質的に含まれていないと評価する。なお、ペレット全長とは炭素繊維配向方向の長さである。炭素繊維が成形材料と実質的に同じ長さであることにより、成形品中の強化繊維長を長くすることができるため、力学特性をより向上させることができる。
図3〜6はそれぞれ、本発明の成形材料の縦(軸心方向)断面形態の一例を模式的に表したものであり、図7〜10はそれぞれ、図3〜6に示される本発明の成形材料の横(直交方向)断面形態の一例を模式的に表したものであり、図11は、本発明の成形材料の横(直交方向)断面形態の一例を模式的に表したものである。
成形材料の断面形態は、(A)炭素繊維と必要により(D)テルペン系樹脂からなる複合体に、(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンが接着するように配置されていれば図に示されたものに限定されないが、図3〜5に示されるように、複合体が芯材となり(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンで層状に挟まれて配置されている構成が好ましい。
また、図7〜9に示されるように、複合体を芯に対して、(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンが周囲を被覆するような芯鞘構造に配置されている構成が好ましい。また、図11に示されるような複数の複合体を(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンが被覆するように配置する場合、複合体の数は2〜6程度が望ましい。
複合体と(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンの境界は接着され、境界付近で部分的に(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンが該複合体の一部に入り込み、複合体中の(D)テルペン系樹脂と相溶しているような状態、あるいは炭素繊維に含浸しているような状態になっていてもよい。
本発明の成形材料は、例えば、射出成形やプレス成形などの手法により混練されて成形品となる。成形材料の取扱性の点から、前記炭素繊維または複合体と(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンは、成形が行われるまでは分離せず、前述したような形状を保っていることが好ましい。炭素繊維または複合体と(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンでは、形状(サイズ、アスペクト比)、比重、質量が全く異なるため、成形までの材料の運搬、取り扱い時、成形工程での材料移送時に分級し、成形品の力学特性にバラツキを生じたり、流動性が低下して金型詰まりを起こしたり、成形工程でブロッキングする場合があるが、図7〜9に例示されるような芯鞘構造の配置であれば、(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンが(A)炭素繊維または複合体を拘束し、より強固な複合化ができる。また、図7〜9に例示されるような芯鞘構造にするか、図10に例示されるような層構造とするか、いずれが有利であるかについては、製造の容易さと、材料の取り扱いの容易さから、芯鞘構造とすることがより好ましい。
前述したように、(A)炭素繊維は必要に応じて(D)テルペン系樹脂、および一部の(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンによって完全に含浸されていることが望ましいが、現実的にそれは困難であり、(A)炭素繊維と必要により(D)テルペン系樹脂、および一部の(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンからなる複合体にはある程度の空隙が存在する。特に(A)炭素繊維の含有率が大きい場合には空隙が多くなるが、ある程度の空隙が存在する場合でも本発明の含浸・繊維分散促進の効果は示される。ただし空隙率が20%を超えると顕著に含浸・繊維分散促進の効果が小さくなるので、空隙率は0〜20%の範囲が好ましい。より好ましい空隙率の範囲は15%以下である。空隙率は、複合体の部分をASTM D2734(1997)試験法により測定するか、または成形材料の断面において、(A)炭素繊維と(D)テルペン系樹脂および一部の(B)ポリプロピレンおよび(C)酸変性ポリプロピレンにより形成される複合体部分に存在する空隙を観察し、複合体部の全面積と空隙部の全面積とから次式を用いて算出することができる。
空隙率(%)=空隙部の全面積/(複合体部の全面積+空隙部の全面積)×100。
空隙率(%)=空隙部の全面積/(複合体部の全面積+空隙部の全面積)×100。
本発明の成形材料は、好ましくは1〜50mmの範囲の長さに切断して用いられる。前記の長さに調整することにより、成形時の流動性、取扱性を十分に高めることができる。
本発明の成形材料は、射出成形にて好適に成形品を得ることができる。成形品としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車部品に好適である。さらに家庭・事務電気製品部品も挙げられる。またパーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体や、電気・電子機器用部材なども挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではない。
各実施例および比較例の使用原料としては、下記のものを使用した。
(B)ポリプロピレン
(B−1)プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)J105G
(B−2)プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)E111G
(B−3)プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)J108M
(C’)酸変性ポリプロピレン
(C’−2)三洋化成(株)製ユーメックス(登録商標)1010P
(C’−3)三洋化成(株)製ユーメックス(登録商標)100TS
(C’−4)三菱化学(株)製モディック(登録商標)P534A
(D)テルペン系樹脂
(D−1)ヤスハラケミカル(株)製クリアロン(登録商標)P−150(テルペン系樹脂の水素化物:軟化点152±5℃)
(D−2)ヤスハラケミカル(株)製クリアロン(登録商標)P−105(テルペン系樹脂の水素化物:軟化点105±5℃)
(B)ポリプロピレン
(B−1)プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)J105G
(B−2)プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)E111G
(B−3)プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)J108M
(C’)酸変性ポリプロピレン
(C’−2)三洋化成(株)製ユーメックス(登録商標)1010P
(C’−3)三洋化成(株)製ユーメックス(登録商標)100TS
(C’−4)三菱化学(株)製モディック(登録商標)P534A
(D)テルペン系樹脂
(D−1)ヤスハラケミカル(株)製クリアロン(登録商標)P−150(テルペン系樹脂の水素化物:軟化点152±5℃)
(D−2)ヤスハラケミカル(株)製クリアロン(登録商標)P−105(テルペン系樹脂の水素化物:軟化点105±5℃)
各実施例および比較例における評価は下記方法により行った。
(1)酸変性ポリプロピレンの酸価測定
酸変性ポリプロピレン0.1gを50mlのキシレンに投入し、130℃に加熱することで溶解させた。さらにフェノールフタレイン1%エタノール溶液を1滴加え、撹拌しながら0.02mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液にて滴定した。なお、赤色に変化した点を読み取り、酸価を算出した。
酸変性ポリプロピレン0.1gを50mlのキシレンに投入し、130℃に加熱することで溶解させた。さらにフェノールフタレイン1%エタノール溶液を1滴加え、撹拌しながら0.02mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液にて滴定した。なお、赤色に変化した点を読み取り、酸価を算出した。
(2)酸変性ポリプロピレンの溶融粘度測定
酸変性ポリプロピレンの溶融粘度を粘弾性測定器にて測定した。40mmのパラレルプレートを用い、1Hzにて、230℃における溶融粘度を測定した。
酸変性ポリプロピレンの溶融粘度を粘弾性測定器にて測定した。40mmのパラレルプレートを用い、1Hzにて、230℃における溶融粘度を測定した。
(3)酸変性ポリプロピレンの吸熱ピーク(融点)数の測定
酸変性ポリプロピレンを示差走査熱量測定(DSC)にて測定した。アルミニウムサンプルパンを用いて、(C)酸変性ポリプロピレンを40℃/分の昇温速度条件で30℃から200℃まで昇温した後、40℃/分の降温速度条件で30℃まで冷却してから、10℃/分の昇温速度条件で再度200℃まで昇温したときの吸熱ピーク数を読み取った。
酸変性ポリプロピレンを示差走査熱量測定(DSC)にて測定した。アルミニウムサンプルパンを用いて、(C)酸変性ポリプロピレンを40℃/分の昇温速度条件で30℃から200℃まで昇温した後、40℃/分の降温速度条件で30℃まで冷却してから、10℃/分の昇温速度条件で再度200℃まで昇温したときの吸熱ピーク数を読み取った。
(4)酸変性ポリプロピレンの溶融安定性評価
酸変性ポリプロピレンの加熱時の質量減少を熱質量測定(TGA)にて測定した。アルミニウムサンプルパンを用いて、(C)酸変性ポリプロピレンを40℃/分の昇温速度条件で30℃から200℃まで昇温し、200℃にて10分間等温で保持しながら質量を測定した。質量減少率(%)を、{(200℃到達時点の質量−200℃到達時点から10分間加熱後の質量)/200℃到達時点の質量}×100により算出した。
酸変性ポリプロピレンの加熱時の質量減少を熱質量測定(TGA)にて測定した。アルミニウムサンプルパンを用いて、(C)酸変性ポリプロピレンを40℃/分の昇温速度条件で30℃から200℃まで昇温し、200℃にて10分間等温で保持しながら質量を測定した。質量減少率(%)を、{(200℃到達時点の質量−200℃到達時点から10分間加熱後の質量)/200℃到達時点の質量}×100により算出した。
(5)ポリプロピレンのメルトフローレート測定
ポリプロピレンの230℃におけるメルトフローレートをJIS K7210(1999)に従い測定した。荷重は2.16kgとした。また、キャピラリーダイは、内径が1.00mm、長さが10.00mmのものを用いた。
ポリプロピレンの230℃におけるメルトフローレートをJIS K7210(1999)に従い測定した。荷重は2.16kgとした。また、キャピラリーダイは、内径が1.00mm、長さが10.00mmのものを用いた。
(6)成形品の曲げ試験
各実施例および比較例で得られた評価用試験片について、ASTM D790(1997)に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5mm/分の試験条件にて曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。
各実施例および比較例で得られた評価用試験片について、ASTM D790(1997)に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5mm/分の試験条件にて曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。
(7)成形品のアイゾット衝撃試験
各実施例および比較例で得られた評価用試験片について、ASTM D256(1993)に準拠し、モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。用いた試験片の厚みは3.2mmとして、アイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。
各実施例および比較例で得られた評価用試験片について、ASTM D256(1993)に準拠し、モールドノッチ付きアイゾット衝撃試験を行った。用いた試験片の厚みは3.2mmとして、アイゾット衝撃強度(J/m)を測定した。
参考例1.炭素繊維
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:1.6g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.12
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa。
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:1.6g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.12
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa。
ここで表面酸素濃度比は、表面酸化処理を行ったあとの炭素繊維を用いて、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めた。まず、炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
参考例2.サイジング付与
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製デナコール(登録商標)EX−521)を2質量%になるように水に溶解、または分散させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維に付与し、230℃で乾燥を行った。付着量は1.0質量%であった。
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製デナコール(登録商標)EX−521)を2質量%になるように水に溶解、または分散させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により炭素繊維に付与し、230℃で乾燥を行った。付着量は1.0質量%であった。
参考例3.(C)酸変性ポリプロピレン(C−1)の合成
ポリプロピレン(プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)E−185G)100質量部、無水マレイン酸30質量部、および重合開始剤としてパーヘキシン(登録商標)25B(日本油脂(株)製)1.5質量部を、撹拌機つきのオートクレーブに投入し、150℃にて5時間加熱反応させた。反応後、大量のメチルエチルケトンを投入し、樹脂を析出させた。樹脂を取り出し、さらにメチルエチルケトンにて数回洗浄し、乾燥させ、(C−1)酸変性ポリプロピレンを得た。
ポリプロピレン(プライムポリマー(株)製プライムポリプロ(登録商標)E−185G)100質量部、無水マレイン酸30質量部、および重合開始剤としてパーヘキシン(登録商標)25B(日本油脂(株)製)1.5質量部を、撹拌機つきのオートクレーブに投入し、150℃にて5時間加熱反応させた。反応後、大量のメチルエチルケトンを投入し、樹脂を析出させた。樹脂を取り出し、さらにメチルエチルケトンにて数回洗浄し、乾燥させ、(C−1)酸変性ポリプロピレンを得た。
参考例4.(C)酸変性ポリプロピレン(C−2)の合成
無水マレイン酸添加量を20質量部に変更した以外は参考例3に従い、(C−2)酸変性ポリプロピレンを得た。
無水マレイン酸添加量を20質量部に変更した以外は参考例3に従い、(C−2)酸変性ポリプロピレンを得た。
参考例5.(C)酸変性ポリプロピレン(C−3)の合成
無水マレイン酸添加量を15質量部に変更した以外は参考例3に従い、(C−3)酸変性ポリプロピレンを得た。
無水マレイン酸添加量を15質量部に変更した以外は参考例3に従い、(C−3)酸変性ポリプロピレンを得た。
参考例6.(C)酸変性ポリプロピレン(C−4)の合成
無水マレイン酸添加量を40質量部に変更した以外は参考例3に従い、(C−4)酸変性ポリプロピレンを得た。
無水マレイン酸添加量を40質量部に変更した以外は参考例3に従い、(C−4)酸変性ポリプロピレンを得た。
実施例1〜4、比較例1〜9
JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度230℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、表1〜2に示す炭素繊維、ポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンを表1〜2に示す配合量でドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら溶融混練し、溶融樹脂をダイス口から吐出した。得られたストランドを冷却後、カッターで切断して、成形材料(短繊維ペレット)を得た。
JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度230℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、表1〜2に示す炭素繊維、ポリプロピレンおよび酸変性ポリプロピレンを表1〜2に示す配合量でドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら溶融混練し、溶融樹脂をダイス口から吐出した。得られたストランドを冷却後、カッターで切断して、成形材料(短繊維ペレット)を得た。
得られた単繊維ペレットを、住友重機械工業社製SE75DUZ−C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:230℃、金型温度:60℃の条件で射出成形することにより、成形品(評価用試験片)を成形した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた成形品を温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置した後、前述の評価に供した。評価結果をまとめて表1、表2に示した。
実施例5〜13
塗布温度として180℃に加熱されたロール上に、テルペン系樹脂(D−1)または(D−2)を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためリバースロールを用いた。このロール上に、参考例2により得られた炭素繊維−1を接触させながら通過させてテルペン系樹脂を付着させた。次に、200℃に加熱されたチャンバー内にて、炭素繊維−1に表1に示すテルペン系樹脂(D−1)または(D−2)を付着させた複合体を、5組の直径50mmのロールプレス間を通過させた。この操作により、テルペン系樹脂(D−1)または(D−2)を炭素繊維束の内部まで含浸させ、所定の配合量とした複合体を形成した。なお、炭素繊維の投入量とテルペン系樹脂(D−1)または(D−2)のロール上の厚みから、所望の配合量になるように調整した。
塗布温度として180℃に加熱されたロール上に、テルペン系樹脂(D−1)または(D−2)を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためリバースロールを用いた。このロール上に、参考例2により得られた炭素繊維−1を接触させながら通過させてテルペン系樹脂を付着させた。次に、200℃に加熱されたチャンバー内にて、炭素繊維−1に表1に示すテルペン系樹脂(D−1)または(D−2)を付着させた複合体を、5組の直径50mmのロールプレス間を通過させた。この操作により、テルペン系樹脂(D−1)または(D−2)を炭素繊維束の内部まで含浸させ、所定の配合量とした複合体を形成した。なお、炭素繊維の投入量とテルペン系樹脂(D−1)または(D−2)のロール上の厚みから、所望の配合量になるように調整した。
一方、JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度230℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、表3または表4に示す配合量により、ポリプロピレンと酸変性ポリプロピレンをドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら溶融混練し、溶融樹脂をダイス口から吐出した。得られたストランドを冷却後、カッターで切断し、60℃にて1晩真空乾燥して、ポリプロピレンの溶融混合ペレットを得た。
上記方法により得られた複合体を、日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機から上記方法により得られたポリプロピレンの溶融混練ペレットを溶融した状態でダイ内に吐出させ、複合体の周囲を被覆するように連続的に配置した。この際、各成分が表3または表4に示す配合量になるよう、複合体の量と、ポリプロピレンの溶融混練ペレットの吐出量を調整した。得られた連続状のガットを冷却後、カッターで切断して、7mmの長繊維ペレット(成形材料)を得た。
得られた長繊維ペレットを用いて、実施例1と同様に評価用試験片を作製し、評価した評価結果をまとめて表3、表4に示した。
実施例1,2と比較例1〜7の評価結果から、同じ量の炭素繊維を用いても、(C)酸価が30〜150mgKOH/gであり、230℃における溶融粘度が100〜1000Pa・sである酸変性ポリプロピレンを配合しない比較例では、成形できないか、成形できても、実施例に比べて力学特性に劣る成形品しか得られないことがわかった。
また、実施例3,4の評価結果から、炭素繊維配合量が1〜40質量部の範囲内で異なっても、同じく力学特性に優れる効果を奏することが明らかである。
さらに、実施例5〜13における長繊維ペレットの実施例の評価結果から、長繊維ペレットを用いて得られる成形品は短繊維ペレットを用いて得られる成形品に比べてより高い力学特性を有し、少量の(C)酸変性ポリプロピレンの配合でも、高い力学特性を維持することが分かる。
本発明の成形材料は、炭素繊維とポリプロピレンを有してなり、曲げ特性や耐衝撃特性に優れており、電気・電子機器、OA機器、家電機器または自動車の部品、内部部材および筐体などに好適に用いられる。
1 (A)炭素繊維の単繊維
2 (D)テルペン系樹脂
3 成分(A)と成分(D)からなる複合体
4 成分(B)および/または成分(C)
2 (D)テルペン系樹脂
3 成分(A)と成分(D)からなる複合体
4 成分(B)および/または成分(C)
Claims (7)
- 少なくとも下記成分(A)〜(C)を合計100質量部含む成形材料。
(A)炭素繊維 1〜40質量部
(B)ポリプロピレン 50〜98.9質量部
(C)酸価が30〜150mgKOH/gであり、230℃における溶融粘度が100〜1000Pa・sである酸変性ポリプロピレン 0.1〜10質量部 - 前記成分(C)の含有量に対する前記成分(B)の含有量の質量比((B)/(C))が95/5〜99.5/0.5の範囲にある請求項1に記載の成形材料。
- 前記成分(C)が、40℃/分の昇温速度条件で30℃から200℃まで昇温した後、40℃/分の降温速度条件で30℃まで冷却してから、10℃/分の昇温速度条件で再度200℃まで昇温したときの示差走査熱量測定における吸熱ピークを3つ以上有する請求項1または2に記載の成形材料。
- 前記成分(B)の230℃におけるMFRが5〜60g/10分である請求項1〜3のいずれかに記載の成形材料。
- 前記成分(C)を0.5〜3質量部含有し、成形材料の形態が長繊維ペレットである請求項1〜4のいずれかに記載の成形材料。
- 前記成分(A)〜(C)に加えて、さらに(D)テルペン系樹脂を成分(A)〜(C)の合計100質量部に対して0.5〜20質量部含む請求項5に記載の成形材料。
- 請求項1〜6いずれかの成形材料を成形して得られる成形品。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2016076411A1 (ja) * | 2014-11-13 | 2016-05-19 | 三井化学株式会社 | 炭素繊維強化樹脂組成物及びそれから得られる成形品 |
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2014
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