以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着剤〕
通常の粘着剤は、伸長させることにより、粘着剤中のポリマーが次第に配向するために、次第に応力が上昇し、破断時に最大応力に達する。しかし、本実施形態に係る粘着剤は、伸長させたときに、最大応力が、破断時(4000%伸長までに破断した場合)または4000%伸長時(4000%伸長までに破断しなかった場合)の応力よりも大きいものである。すなわち、応力−ひずみ曲線を描いたときに、破断時よりも前に最大応力点があるという、従来の粘着剤が有し得なかった性質を有するものである。これは、当該粘着剤において、伸長と同時にその応力の緩和が生じていることに起因するものと推定される。このように優れた応力緩和性を有する粘着剤を使用することで、偏光板等の光学部材に適用したときに、耐光漏れ性と耐久性の両方に優れた粘着シートが得られる。
具体的には、本実施形態に係る粘着剤は、積層等により幅10mm、長さ20mm、および厚さ500μmとした粘着剤片を、引張試験により200mm/分の速度で4000%伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きいものである。なお、この引張試験は、基材等を伴わない単独の粘着剤層として行う。
また、本実施形態に係る粘着剤は、最大応力が10N以下であることが好ましく、特に5N以下であることが好ましい。最大応力が大きすぎると、耐光漏れ性が悪化する場合がある。なお、当該最大応力の下限値は、耐久性の観点から、0.1N以上であることが好ましく、特に0.5N以上であることが好ましい。
さらに、本実施形態に係る粘着剤は、最大応力が破断時または4000%伸長時の応力よりも5%以上大きいことが好ましく、特に10%以上大きいことが好ましい。当該値が大きいほど、応力緩和の速度が速いものと推察されるからである。なお、上限は特に制限されないが、通常200%大きい程度である。
また、本実施形態に係る粘着剤は、上記の条件で伸長したときに、破断するまでに、2000%以上伸長できることが好ましく、特に4000%以上伸長できることが好ましい。なお、上限は特に制限されないが、通常40000%程度である。
上記の特性を有する粘着剤は、好ましくは、重量平均分子量(Mw)が50万〜300万の(メタ)アクリル酸エステル重合体を50質量%以上含有し、ゲル分率が30〜90%である粘着剤、特に好ましくは、重量平均分子量が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)を架橋してなる成分とを含有し、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合が5〜50質量部である粘着剤によって得ることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
上記の粘着剤は、好ましくは、重量平均分子量が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着性組成物、特に好ましくは、さらにシランカップリング剤(D)を含有する粘着性組成物を架橋することによって得ることができる。かかる粘着剤においては、従来は可塑剤的に使用していた低分子量の重合体で化学的な架橋による三次元網目構造を形成し、その三次元網目構造に、複数の高分子量の重合体を挿入させることで、高分子量の重合体同士を拘束し、高分子量の重合体間に擬似的な架橋構造を形成するものと推定される。これにより、得られる粘着剤は、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きいものとなる。その結果、当該粘着剤は、適切な凝集力と優れた応力緩和性を発揮する。以下、上記粘着性組成物について説明する。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、
(1)架橋剤(C)と反応する官能基(b1)を有するモノマーを構成成分とし、当該重合体(B)が含有する、架橋剤(C)と反応する官能基は、実質的に官能基(b1)のみであるか、
(2)架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす官能基(b1)を有するモノマーと、架橋剤(C)との反応性が下記式(I)を満たす官能基(b2)を有するモノマーとを構成成分とすることが好ましい。
架橋剤(C)との反応性:官能基(b2)<官能基(b1)・・・(I)
すなわち、(2)の重合体(B)において、官能基(b1)の架橋剤(C)との反応性は、官能基(b2)の架橋剤(C)との反応性よりも高いことが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)又は(B)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体が好ましい。なお、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、上記反応性官能基含有モノマーを構成単位として含有しないものも好ましい。
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、上記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に使用される反応性官能基(a1)含有モノマーならびに第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に使用される反応性官能基(b1)含有モノマーおよび反応性官能基(b2)含有モノマーの選択は、使用する架橋剤(C)との反応性の関係で決定される。詳細は後述する。
ここで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、上記反応性官能基(b1)含有モノマーを、1質量%を超えて含有し、その上限は50質量%未満であることが好ましい。好ましくは、上記反応性官能基(b1)含有モノマーを5〜30質量%含有し、特に好ましくは10〜20質量%含有し、さらに好ましくは12〜18質量%含有する。反応性官能基(b1)含有モノマーを上記範囲で含有することで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋の程度が好ましくなり、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との組み合わせにおいて、得られる粘着剤の応力緩和性が優れたものとなる。また、反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量が1質量%以下では、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋が十分でなく、それにより耐久性が低下するおそれがある。一方、反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量が50質量%以上であると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋が過度になり、それにより被着体への貼合適性が低下するおそれがある。なお、反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量の上限を30質量%とすることで、得られる粘着シートの耐光漏れ性がより優れたものとなる。
上記(1)の重合体(B)における「実質的に官能基(b1)のみ」とは、架橋剤(C)と反応する他の官能基を、官能基(b1)と架橋剤(C)との反応性を妨げない程度に含むことを許容するものである(この場合、(1)の重合体(B)と(2)の重合体(B)とは重複したものとなる)。すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、上記官能基(b1)よりも架橋剤(C)との反応性が低い官能基(b2)を有するモノマー(反応性官能基(b2)含有モノマー)を、構成成分として含有しないことが特に好ましいが、反応性官能基(b2)含有モノマーを構成成分として含有する場合には、質量比として反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量の1/5以下の量、特に1/10以下の量で含有することが好ましい。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が、反応性官能基(b2)含有モノマーを、質量比として反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量の1/5を超える量で含有すると、得られる粘着剤層の耐久性が低下するおそれがある。第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)中の反応性官能基(b2)が多過ぎると、これにより形成される三次元網目構造体内にも反応性官能基(b2)が多く残存することとなり、当該三次元網目構造体と第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性に変化を生じさせることが推定される。その結果、ヘイズ値が上昇する場合がある。また、反応性官能基(b2)が多く残存する三次元網目構造体は、当該三次元網目構造体に挿入されている第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の可動性を過度に制限することも推定される。このため、得られる粘着剤は、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きくならない場合がある。その結果、耐久性が悪化する場合がある。
さらに、本実施形態に係る粘着性組成物がシランカップリング剤(D)を含有する場合、シランカップリング剤(D)は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の反応性官能基(a1)(特にカルボキシル基)と反応し、高分子量の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と結合した方が、得られる粘着剤において被着体であるガラス基板等との密着性に優れたものとなると推定されるが、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が反応性官能基(b2)含有モノマーを過剰に含有すると、シランカップリング剤(D)のアルコキシシリル基等は、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b2)(特にカルボキシル基)とも反応して、低分子量の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と結合すると推定される。その結果、得られる粘着剤が被着体であるガラス基板等との密着性に劣ることとなり、それにより、粘着剤層の耐久性が低下するおそれがある。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーとを重合して得られる第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
本実施形態において、上記の第2の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量は8000〜30万であり、好ましくは1万〜20万であり、特に好ましくは2万〜15万である。すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、低分子量ポリマー成分となっている。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が上記範囲内にあることで、本実施形態に係る粘着性組成物に特有の三次元網目構造が形成され、伸長させた時に、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きい粘着剤を得ることに寄与することとなる。すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が8000未満では、良好な三次元網目構造が得られないことがある。一方、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が30万を超えると、相溶性が低下し、重合体(B)により形成される三次元網目構造体中への重合体(A)の挿入が不十分となり、上記の特性の粘着剤を得られない場合がある。その結果、耐久性およびリワーク性に劣るものとなる。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、好ましくは、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーを構成成分として含有しないか、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の上記官能基(b1)よりも架橋剤(C)との反応性が低い官能基(a1)を有するモノマーを構成成分として含有し、そして特に好ましくは、上記官能基(b1)よりも架橋剤(C)との反応性が高い官能基を有するモノマーを構成成分として含有しない。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーを含有しなくてもよい。しかし、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b1)よりも反応性の低い反応性官能基(a1)を有するモノマー(反応性官能基(a1)含有モノマー)を含有すると、さらに好ましい場合がある。上記重合体(A)中に反応性官能基(a1)を含有すると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と架橋剤(C)との反応を促進したり、あるいは、シランカップリング剤(D)を使用する場合に、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の反応性官能基(a1)が当該シランカップリング剤(D)と反応し、得られる粘着剤の液晶セル等のガラス面への接着耐久性をさらに向上させることができ、好ましい場合がある。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が上記反応性官能基(a1)含有モノマーを含有する場合、その含有量は、通常20質量%以下であり、15質量%以下であることが好ましく、特に10質量%以下であることが好ましい。反応性官能基(a1)含有モノマーの含有量が20質量%を超えると、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎて、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きい粘着剤を得られないおそれがある。その結果、得られる粘着剤にて所望の応力緩和性が得られないことがある。なお、粘着剤にリワーク性を付与する観点からは、反応性官能基(a1)含有モノマーの含有量は15質量%以下とすることが好ましい。
また、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が含有する反応性官能基(b1)含有モノマーとの比較においては、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が含有する反応性官能基(a1)含有モノマーの当該第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における割合は、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が含有する反応性官能基(b1)含有モノマーの当該第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)中における割合よりも小さいことが好ましい。これにより、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が含有する反応性官能基(a1)と架橋剤(C)との反応を抑制し、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が含有する反応性官能基(b1)と架橋剤(C)とを確実に反応させることができる。これにより、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きい粘着剤を好適に得ることができる。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、架橋剤(C)との反応性が第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b1)と同等以上の官能基を分子内に有するモノマーを含有しないのが好ましいが、仮に含有する場合には、当該官能基を分子内に有するモノマーの含有量は、重合体(A)中にて1質量%以下であることが好ましく、特に0.5質量%以下であることが好ましい。当該モノマーの含有量が1質量%を超えると、優先的に反応すべき第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と架橋剤(C)との反応を阻害するおそれがある。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性官能基含有モノマーとを重合して得られる第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
本実施形態において、上記の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は50万〜300万であり、好ましくは70万〜250万であり、特に好ましくは100万〜200万である。すなわち、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、高分子量ポリマー成分となっている。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記範囲内にあることで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が形成する三次元網目構造に当該第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が良好に挿入され、当該重合体(A)2分子以上が擬似的な架橋構造を介することにより、重合体(A)は、ある程度の自由度を有する状態で拘束されるものと推定される。また、重合体(A)は、上記のように比較的大きな分子量を有することで、重合体(B)により形成された三次元網目構造体を介して擬似的な架橋状態を維持しながら、分子鎖として高い自由度も有することとなる。これにより、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きい粘着剤を好適に得ることができる。その結果、形成される粘着剤は、適切な凝集力と優れた応力緩和性とを併せ持つものとなり、そのため、当該粘着剤は、耐光漏れ性に優れ、また、高温条件下での接着耐久性が十分となり、浮きや剥がれなどを防止することができる。
ここで、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が50万未満であると、得られる粘着剤の凝集力が低下し、耐久性およびリワーク性に劣るものとなるおそれがある。また、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が300万を超えると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)等との相溶性が悪化し、ヘイズ値が上昇したり、所望の応力緩和性が得られないおそれがある。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5〜50質量部であり、好ましくは5〜40質量部であり、特に好ましくは10〜30質量部である。
上記割合で第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤においては、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)(低分子量ポリマー)が架橋剤(C)を介して三次元網目構造を形成し、その三次元網目構造に、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)(高分子量ポリマー)2分子以上が挿入された構造により、重合体(A)同士がある程度の自由度を有する状態で拘束された擬似的な架橋構造を形成しているものと推定される。これにより、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きい粘着剤を好適に得ることができる。その結果、得られる粘着剤は、適切な凝集力を有しながら、優れた応力緩和性が発揮される。そのため、得られる粘着剤は耐久性および耐光漏れ性に優れたものとなる。
架橋剤(C)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが好ましく挙げられる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどが挙げられる。
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテートなどが挙げられる。
架橋剤(C)の含有量は、当該架橋剤(C)の架橋性基(例えば、イソシアネート基)が第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b1)(例えば、水酸基)の量に対して、通常0.05〜5当量となる量であり、好ましくは0.1〜3.5当量となる量であり、特に好ましくは0.3〜1.0当量となる量である。上記架橋性基の量が0.05当量未満の場合、得られる粘着剤のゲル分率が30%未満となり、十分な凝集力を発揮することができないおそれがある。また、上記架橋性基の量が0.1当量以上、特に0.3当量以上であれば、得られる粘着剤を耐久性のさらに優れたものにすることができる。一方、上記架橋性基の量が3.5当量以下であれば、得られる粘着剤をリワーク性の優れたものにすることができる。さらに、上記架橋性基の量が1.0当量以下であれば、架橋剤(C)を重合体(B)の三次元網目構造の形成にのみ寄与させ、重合体(A)の架橋を有効に防止することができるものと推定される。その結果、得られる粘着剤は応力緩和性に優れたものとなる。
また、本実施形態においては、架橋剤(C)として、反応性官能基(b1)及び反応性官能基(a1)の両方との反応性の関係が一致する種類の架橋剤であれば複数種類のものを併用してもよい。第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)により形成される三次元網目構造の制御を容易にする観点からは、例えばイソシアネート系架橋剤のみを用いるといったように、1種類の架橋剤のみを使用することが好ましく、さらには、1つの架橋剤のみを使用することが特に好ましい。
ここで、架橋剤(C)と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)及び(B)それぞれの反応性官能基含有モノマーとの組み合わせとしては、架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤の場合、重合体(A)の反応性官能基(a1)含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b1)含有モノマーとしては水酸基含有モノマーまたはアミノ基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b2)含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマーが好ましく選択される。
一方、架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤または金属キレート系架橋剤の場合は、重合体(A)の反応性官能基(a1)含有モノマーとしては水酸基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b1)含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b2)含有モノマーとしては水酸基含有モノマーが好ましく選択される。
架橋剤(C)と重合体(B)との間で形成される結合の柔軟性、および架橋反応の穏やかさ、さらに、重合体(A)の反応性基がシランカップリング剤(D)と適切に反応し、得られる粘着剤の耐久性向上に寄与することから、架橋剤(C)をイソシアネート系架橋剤、重合体(A)の反応性官能基(a1)含有モノマーをカルボキシル基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b1)含有モノマーを水酸基含有モノマーとし、反応性官能基(b2)含有モノマーを使用しないことが特に好ましい。
本実施形態に係る粘着性組成物は、好ましくは、さらにシランカップリング剤(D)を含有する。このシランカップリング剤(D)を含有すると、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がカルボキシル基を有する場合に、シランカップリング剤(D)の有機反応性基等と第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のカルボキシル基とが反応し、他方においてシランカップリング剤(D)のアルコキシシリル基等がガラス基板等の被着体面に作用する。このため、例えば偏光板を液晶ガラスセルなどに貼合する場合に、粘着剤と液晶ガラスセルとの間の密着性がより良好となる。
このシランカップリング剤(D)としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。このようなシランカップリング剤(D)の添加量は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して0.01〜0.5質量部であることが好ましく、特に0.05〜0.3質量部であることが好ましい。
シランカップリング剤(D)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記粘着性組成物には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
上記粘着性組成物は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)とを混合するとともに、任意の段階で架橋剤(C)及び所望によりシランカップリング剤(D)を添加することで製造することができる。
好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)及び(B)を、それぞれ別個に通常のラジカル重合法により調製する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)及び(B)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
次に、得られた重合体(A)及び(B)の溶液を混合し、希釈溶媒を加える。その後、架橋剤(C)及び所望によりシランカップリング剤(D)を添加し、十分に混合することにより、溶媒で希釈された粘着性組成物(塗布溶液)を得る。
粘着性組成物を希釈して塗布溶液とするための希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物の濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物がそのまま塗布溶液となる。
前述した粘着剤は、上記粘着性組成物を架橋してなるものである。上記粘着性組成物の架橋は、加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物の希釈溶媒等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜3分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(C)によって第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が架橋して、密な三次元網目構造を形成するものと推定される。そして、その三次元網目構造中に2分子以上の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が直接の化学結合を伴わずに、又は極めて少ない化学結合を伴って挿入されることにより、当該重合体(A)は拘束され、擬似的な架橋構造を形成するものと推定される。これにより、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きい粘着剤を好適に得ることができる。また、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がカルボキシル基を有する場合には、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)はシランカップリング剤(D)と反応して、得られる粘着剤の液晶セル等のガラス基板への接着耐久性を向上させることができる。
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、30〜90%であることが好ましく、特に40〜80%であることが好ましく、さらには45〜75%であることが好ましい。ゲル分率、すなわち架橋の程度がこの範囲にあることで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋による三次元網目構造が良好に形成され、伸長させたときに、最大応力が、破断時または4000%伸長時の応力よりも大きい粘着剤となり易くなる。そのため、当該粘着剤は、耐光漏れ性および耐久性の両方に優れたものになり易くなる。なお、粘着剤のゲル分率は、貼付時(エージング期間経過後)での値である。具体的には、粘着性組成物を剥離シートに塗布し、加熱処理した後、23℃、50%RHの環境下にて7日間保管した後のゲル分率をいう。粘着剤のゲル分率は、エージング期間経過前は、その値が変動するからである。このような観点から、エージング期間が経過しているかどうか不明の場合、改めて、23℃、50%RHの環境下にて7日間保管した後、ゲル分率が上記範囲内となっていればよい。
以上説明した粘着剤は、光学部材用として好ましく用いることができ、例えば、偏光板と位相差板との接着、あるいは偏光板(偏光フィルム)や位相差板(位相差フィルム)とガラス基板との接着に好適である。上記粘着剤によって形成される粘着剤層は、応力緩和性に非常に優れるため、被着体の寸法変化が大きい場合であっても、その寸法変化によって生じ得る応力を粘着剤層で吸収・緩和することができ、したがって長期にわたって被着体から剥がれ難いものとなるとともに、上記のような光学部材に使用したときに光漏れを効果的に防止することができる。すなわち、本実施形態に係る粘着剤は、光学部材に使用したときに、耐光漏れ性と耐久性との両立を達成するものである。
〔粘着シート〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した粘着性組成物を架橋してなる粘着剤からなる。
粘着剤層11の厚さは、粘着シート1A,1Bの使用目的に応じて適宜決定されるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲であり、例えば、光学部材、特に偏光板用の粘着剤層として使用する場合には、10〜50μm、特に10〜30μmであることが好ましい。
基材13としては、特に制限は無く、通常の粘着シートの基材シートとして用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、レーヨン、アクリル、ポリエステル等の繊維を用いた織布または不織布;上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等の紙類;アルミ、銅等の金属箔;ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の発泡体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。中でも偏光板(偏光フィルム)は、収縮し易く、寸法変化が大きいため、耐光漏れ性の観点から、本実施形態の粘着剤(上記粘着剤層11)を形成する対象として好適である。
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10μm〜500μmであり、好ましくは50μm〜300μmである。
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シートの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、上記粘着性組成物を含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層する。その後、養生期間を設けることが好ましい。
なお、加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物を含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。
上記塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
ここで、例えば、液晶セルと偏光板とから構成される液晶表示装置を製造するには、粘着シート1Aの基材13として偏光板を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合すればよい。
また、例えば、液晶セルと偏光板との間に位相差板が配置される液晶表示装置を製造するには、一例として、まず、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、粘着シート1Bの露出した粘着剤層11と位相差板とを貼合する。次いで、基材13として偏光板を使用した粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、粘着シート1Aの露出した粘着剤層11と上記位相差板とを貼合する。さらに、上記粘着シートBの粘着剤層11から他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、粘着シートBの露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合する。
以上の粘着シート1A,1Bによれば、粘着剤層11が応力緩和性に非常に優れるため、例えば偏光板の接着に適用した場合でも、偏光板の変形によって生じ得る応力を粘着剤層11で吸収・緩和することができ、それにより、優れた耐光漏れ性および高い耐久性が発揮されているものと推定される。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.重合体(A)の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル97.0質量部、アクリル酸3.0質量部、酢酸エチル200質量部、および2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、16時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法でGPC測定し、重量平均分子量150万の重合体(A)の生成を確認した。
2.重合体(B)の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル85.0質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル15.0質量部、酢酸エチル200質量部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.16質量部、および2−メルカプトエタノール0.3質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を70℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法でGPC測定し、重量平均分子量6万の重合体(B)の生成を確認した。
3.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた重合体(A)100質量部(固形分換算値)と、上記工程(2)で得られた重合体(B)15質量部(固形分換算値)とを混合した後、架橋剤(C)として、重合体(B)の水酸基0.6当量に相当する量のトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート(TDI系)付加物(日本ポリウレタン社製,商品名「コロネートL」)2.21質量部を添加した。最後に、シランカップリング剤(D)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製,商品名「KBM403」)0.2質量部を添加し、十分に撹拌することにより、粘着性組成物の希釈溶液を得た。
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[重合体(A)及び(B)]
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
4HBA:アクリル酸4−ヒドロキシブチル
[可塑剤]
・アデカサイザーC−8:トリメリット酸エステル系可塑剤(トリス(2エチルヘキシル)トリメリテート)(旭電化工業社製,商品名「アデカサイザーC−8」)
[架橋剤(C)]
・イソシアネート系架橋剤
コロネートL:トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン社製,商品名「コロネートL」)
タケネートD−110N:トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物(三井化学ポリウレタン社製,商品名「タケネートD−110N」)
・エポキシ系架橋剤
TETRAD−X:N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(三菱瓦斯化学社製,商品名「TETRAD−X」)
[シランカップリング剤(D)]
KBM403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製,商品名「KBM403」)
KBE9007:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製,商品名「KBE9007」)
得られた粘着性組成物の希釈溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して粘着剤層を形成した。
次いで、ディスコティック液晶層付偏光フィルムからなる、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化した偏光板を、粘着剤層とディスコティック液晶層とが接するように貼合し、23℃、50%RHで7日間養生することにより、粘着剤層付き偏光板を得た。
〔実施例2〜12,比較例1〜5〕
粘着性組成物を構成する各モノマーの種類および割合、可塑剤、架橋剤およびシランカップリング剤の種類および添加量、ならびに重合体(A)および重合体(B)の配合比を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を製造した。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例または比較例にて粘着剤層付き偏光板の作製に使用した偏光板に替えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801,厚さ:38μm)を使用し、粘着シートを作製した。具体的には、実施例または比較例の製造過程で得られた剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)からなる構成体の露出している粘着剤層上に、上記剥離シートを剥離処理面側が接するように積層した。これにより、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
得られた粘着シートを、23℃、50%RHの条件下で7日間養生した。その後、当該粘着シートを80mm×80mmのサイズにサンプリングして、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、粘着剤のみの質量を精密天秤にて秤量した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤のみの質量を、精密天秤にて秤量した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
〔試験例2〕(光学性能の測定)
測定サンプルとして、ゲル分率の測定に用いた粘着シートと同様の粘着シート(7日間養生済み)を用意した。当該粘着シートの粘着剤層について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7105に準じてヘイズ値(%)(Hz(%)と略する場合がある)を測定した。結果を表2に示す。なお、好ましいヘイズ値の範囲は、0〜5%である。
〔試験例3〕(耐久性評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて233mm×309mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。
その後、80℃dryの耐久条件の環境下に投入し、500時間後に10倍ルーペを用いて観察を行った。外観変化は以下を基準とした。結果を表2に示す。
◎:4辺において、欠点が無いもの
○:4辺において、外周端部から0.6mm以上の部位に欠点が無いもの
×:4辺の少なくとも1辺において、外周端部から0.6mm以上の部位に、浮き、剥がれ、発泡、スジなどの0.1mm以上の粘着剤の外観異常欠点があるもの
〔試験例4〕(光漏れ性試験)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて233mm×309mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。なお、上記貼合は、無アルカリガラスの表裏に、粘着剤層付き偏光板を偏光軸がクロスニコル状態(偏光軸:∠45°,∠135°)になるように行った。この状態で、80℃dry環境下にて250時間放置した後、23℃、50%RHの環境下で2時間放置し、これをサンプルとして、以下に示す方法で光漏れ性を評価した。結果を表2に示す。
<光漏れ性評価:ΔL*>
大塚電子社製のMCPD−2000を用い、上記サンプルにおける図3に示す各領域の明度L*を測定し、明度差ΔL*を、式
ΔL*=[(b+c+d+e)/4]−a
(ただし、a、b、c、d及びeは、それぞれA領域、B領域、C領域、D領域及びE領域のあらかじめ定められた測定点(各領域の中央部1箇所)における明度である。)で求め、光漏れ性とした。ΔL*の値が小さいほど光漏れが少ないことを示す。なお、L*maxは、上記全ての領域における最大の明度を示す。
<光漏れ性評価:目視>
上記サンプルをフラットイルミネーター(電通産業社製,HF−SL−A312LC,照度:26,000Lux,輝度:10,000cd)の上に設置し、二次元色彩輝度計(コニカミノルタ社製,CA−2000)にて撮影し、解析ソフトウェア(コニカミノルタ社製,CA−S20w)によって輝度分布画像に変換した。得られたサンプルの輝度分布画像を、図4に示す評価基準に基づいて評価した。
〔試験例5〕(引張試験)
実施例及び比較例で調製した粘着性組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面に乾燥後の塗布厚が25μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱し、粘着剤層を形成した。その粘着剤層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した別の剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801)の剥離処理面とを貼り合わせて、粘着シートを得た。
上記粘着シートにおける粘着剤層の合計厚さが500μmとなるように、かつ積層体の最表層の剥離シートのみが残るように上記粘着剤層を複数層積層し、23℃、湿度50%の雰囲気下で一晩放置した。その後、上記粘着剤層を複数層積層した粘着シートから10mm幅×75mm長のサンプルを切り出し、積層体の最表層に積層された剥離シートを剥し、サンプル測定範囲が10mm幅×20mm長になるようにサンプルをセットし、23℃、50%RHの環境下で引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて引張速度200mm/分で4000%伸長させ、応力(N)を測定した。4000%伸長時または破断時の応力、および最大応力を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例で得られた粘着剤層付き偏光板においては、最大応力が、4000%伸長時または破断時の応力よりも大きく、耐久性および耐光漏れ性のいずれも優れていた。一方、比較例で得られた粘着剤層付き偏光板においては、最大応力と、4000%伸長時または破断時の応力とが同じであり、耐久性および耐光漏れ性の両方またはいずれか一方が劣っていた。