本発明は、少なくとも一部は、単独またはIL−12 p70と複合体化した抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体J695の抗原結合断片(Fab)を含むポリペプチドのx線結晶研究に基づいている。この研究の結果得られた原子座標は、p40含有サイトカイン(例えば、IL−12およびIL−23)に結合する改善された抗体および他の抗体様結合分子(例えば、抗体断片、ドメイン抗体、アドネクチン(adnectin)、ナノボディ(nanobody)、ユニボディ(unibody)、アプタマーまたはアフィボディ(affibody))を同定および設計する際に使用される。上記のように、IL−23は、ジスルフィド結合したp40(IL−12で見出されるものと同じp40)およびp19サブユニットから構成されるヘテロダイマーサイトカインである。
本明細書中で提供される改善された抗体は、p40含有サイトカインの生物学的活性によって調節されるまたはp40含有サイトカインの生物学的活性に依存する状態(例えば、免疫系の不適切または望ましくない刺激に依存する状態(多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、クローン病、エリテマトーデス、慢性炎症性疾患および移植手術後の移植片拒絶)または癌が含まれる。)を有する患者を治療する方法において使用される。
本発明をより容易に理解できるように、特定の用語を最初に定義する。
I.定義
以下の略称および頭字語を、本特許出願において使用する。「Ab」は抗体をいう。「mAb」はモノクローナル抗体をいい、「Ig」は免疫グロブリンをいう。「Fab」は、抗体の抗原結合断片をいう。「野生型」は、変更されていないタンパク質の天然のアミノ酸配列をいう。
用語「インターロイキン12」または「ヒトインターロイキン12」(本明細書中でIL−12またはhIL−12と略称する。)には、本明細書中で使用する場合、マクロファージおよび樹状細胞によって主に分泌されるヒトサイトカインが含まれる。この用語には、35kDのサブユニット(p35)および40kDのサブユニット(p40)を含むヘテロダイマータンパク質が含まれ、これらのサブユニットは共に、ジスルフィド架橋によって一緒に連結されている。このヘテロダイマータンパク質は、「p70サブユニット」と呼ばれる。ヒトIL−12の構造は、例えば、Kobayashiら(1989)J.Exp Med.170:827−845頁;Sederら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:10188−10192頁;Lingら(1995)J.Exp Med.154:116−127頁;Podlaskiら(1992)Arch.Biochem.Biophys.294:230−237頁中にさらに記載されている。用語ヒトIL−12は、標準的な組換え発現方法によって調製され得る組換えヒトIL−12(rhIL−12)を含む意図である。
インターロイキン−12(IL−12)は、細胞内病原体に対する細胞媒介性免疫を刺激するAg提示細胞によって分泌される、初期の炎症促進性サイトカインである(Wolf,S.F.、P.A.Templeら(1991).「Cloning of cDNA for natural killer cell stimulatory factor,a heterodimeric cytokine with multiple biologic effects on T and natural killer cells.」J Immunol 146(9):3074−81頁;D’Andrea,A.、M.Rengarajuら(1992).「Production of natural killer cell stimulatory factor(interleukin 12)by peripheral blood mononuclear cells.」J.Exp.Med.176:1387−1398頁;Trinchieri,G.(1998).「Interleukin−12:a cytokine at the interface of inflammation and immunity.」Advanced Immunology 70:83−243頁)。種々の自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、クローン病および多発性硬化症)におけるサイトカインの関与は、充分に立証されている(Flavell,R.A.(2002).「The relationship of inflammation and initiation of autoimmune disease:role of TNF super family members.」Curr Top Microbiol Immunol 266:1−9頁;O’Shea,J.J.、A.Maら(2002).「Cytokines and autoimmunity.」Nat Rev Immunol 2(1):37−45頁)。特に、調節されないIL−12分泌は、不適切な自己免疫応答、例えばクローン病を生じる(Tsukada,Y.、T.Nakamuraら(2002).「Cytokine profile in colonic mucosa of ulcerative colitis correlates with disease activity and response granulocytapheresis.」The American Journal of Gastroenterology 97(11):2820−2828頁)。
用語「インターロイキン23」または「ヒトインターロイキン23」(本明細書中でIL−23またはhIL−23と略称する。)には、本明細書中で使用する場合、2つのサブユニットp19(IL−23αサブユニット)およびp40(IL−12のβサブユニット(即ち、IL−12B))からなる、ヒトヘテロダイマーサイトカインタンパク質が含まれる。IL−23は、マクロファージおよび樹状細胞を含む多数の異なる細胞によって分泌される。IL−23は、IL−12と同様に、自己免疫疾患の発症において重要であるようであり、例えば、IL−23は、多発性硬化症のマウスモデルにおいて重要な役割を果たす(Cua,D.J.、J.Sherlockら(2003).「Interleukin−23 rather than interleukin−12 is the critical cytokine for autoimmune inflammation of the brain.」Nature 421(6924):744−8頁)。IL23のレセプターは、IL12のβ1サブユニット(IL12RB1)およびIL23特異的サブユニットIL23Rによって形成される。IL23およびIL12は共に、転写アクチベーターSTAT4を活性化でき、インターフェロンγ(IFNG)の産生を刺激できる。ナイーブCD4(+)T細胞に対して主に作用するIL12とは対照的に、IL23は、メモリーCD4(+)T細胞に対して優先的に作用する。IL−23は、感染に対する炎症応答の重要な部分である。IL23は、マトリックスメタロプロテアーゼMMP9の上方制御を促進し、血管形成を増加させ、CD8+T細胞の浸潤を低下させる。最近、IL−23は、癌性腫瘍の発達に関係付けられた。IL−6およびTGF−β1と共に、IL−23は、ナイーブCD4+T細胞を刺激して、Th17細胞(これは、古典的なTh1細胞およびTh2細胞とは別である。)と呼ばれる細胞の新規サブセットへと分化させる。p40もしくはp19のいずれか、またはIL−23レセプターのいずれかのサブユニット(IL−23RおよびIL12R−β1)が欠損したノックアウトマウスは、多発性硬化症および炎症性腸疾患のあまり重篤でない症状を発症し、これは、炎症経路におけるIL−23の重要性を強調している。
「エピトープ」は、抗体とその抗原(複数可)との間の相互作用の部位(単数または複数)を示す、当技術分野の用語である。(Janeway,C.,Jr.、P.Traversら(2001).Immunobiology:the immune system in health and disease.Part II,Section 3−8.New York、Garland Publishing,Inc)に記載されているように、「抗体は、大きい分子(例えば、タンパク質)の表面上の小さい領域のみを一般に認識し…[特定のエピトープ]は、タンパク質フォールディングによって一緒にされた[抗原]ポリペプチド鎖の異なる部分由来のアミノ酸から構成される可能性が高い。この種の抗原決定基は、認識される構造が、抗原のアミノ酸配列中では不連続であるが3次元構造では一緒になっているタンパク質のセグメントから構成されるので、立体配座エピトープまたは不連続エピトープとして知られている。対照的に、ポリペプチド鎖の単一セグメントから構成されるエピトープは、連続エピトープまたは線状エピトープと称される。」(Janeway,C.,Jr.、P.Traversら(2001).Immunobiology:the immune system in health and disease.Part II、Section 3−8.New York、Garland Publishing,Inc)。
本明細書中で使用する場合、用語「立体配座エピトープ」または「非線状エピトープ」または「不連続エピトープ」は、相互交換可能に使用され、単一のタンパク質鎖中の連続アミノ酸ではない少なくとも2つのアミノ酸から構成されるエピトープをいう。例えば、立体配座エピトープは、介在するアミノ酸のストレッチによって分離されているが、本発明の抗体によって単一のエピトープとして認識されるのに充分に近接している、2つ以上のアミノ酸から構成され得る。さらなる例として、単一のタンパク質鎖上の介在するアミノ酸によって分離されたアミノ酸、または別々のタンパク質鎖上に存在するアミノ酸は、タンパク質構造または複合体の立体配座形状に起因して近位になって、本発明の抗体によって結合され得る立体配座エピトープになり得る。特定の不連続エピトープおよび立体配座エピトープは、本明細書中に記載される。
当業者によって理解されるように、一般に、本発明の抗体によって結合される線状エピトープは、抗原(例えば、IL−12またはIL−23)の二次構造、三次構造または四次構造に依存してもしなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、一群のアミノ酸が天然の3次元のタンパク質構造に折り畳まれているか否かに関わらず、それら一群のアミノ酸に結合し得る。他の実施形態において、本発明の抗体は、エピトープを構成する個々のアミノ酸残基を認識しなくてもよく、エピトープを認識しそれに結合するために特定の立体配座(ベンド、ツイスト、ターンまたはフォールド)を必要とし得る。
本明細書中で使用する場合、用語「ループ」は、タンパク質の二次構造中のターンをいうために使用され、ループでは、2つのCα原子が、互いに密接に近接しており(例えば、約7Å以内)、通常の二次構造要素(例えば、αヘリックスまたはβシート)に関与していない。ループは、充分に形成されたまたは固定された内部水素結合なしに、伸長および/または無秩序化することができる。ループには、2つのCα原子が2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の残基によって分離されたターンが含まれ得る。
用語「原子座標」(または「構造座標(structural coordinate)」もしくは「原子モデル」)は、結晶物質の原子(x線散乱中心)によるx線の回折で得られるパターンに関連する数学的方程式から誘導された物質中の原子の数学的3次元座標をいう、当技術分野の用語である。回折データは、結晶の単位格子の電子密度図を計算するために使用される。これらの電子密度図は、結晶の単位格子内の個々の原子の位置を確立するために使用される。原子座標は、当業者に公知のように、原子の相対的位置に影響を与えることなしに、異なる座標系に変形できる。かかる変形された原子座標は、元の座標と等価であるとみなすべきである。
特に示さない限り、用語「抗体」は、抗体全体および任意の抗原結合断片(即ち、「抗原結合部分」)またはその単一の鎖、および抗体バリアント(二重特異的形態、異種特異的形態およびヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)形態が含まれる。)を含む抗体をいうために、集合的に使用される。本発明の抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化またはヒトであり得る。免疫グロブリン分子の少なくとも一部分(例えば、重鎖もしくは軽鎖またはそのリガンド結合部分の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、重鎖もしくは軽鎖の可変領域、重鎖もしくは軽鎖の定常領域、フレームワーク領域、またはそれらの任意の一部分であるが、これらに限定されない。)を含む分子を含む任意のタンパク質またはペプチドもまた含まれる。用語「抗体」はまた、抗体様結合分子または「抗体模倣物」、例えば、抗体またはその断片もしくは一部分の構造および/または機能を模倣するが、ネイティブの抗体構造に限定されない分子をいうために、本明細書中で使用される。かかる抗体様分子には、例えば、ドメイン抗体、アドネクチン、ナノボディ、ヴァーサボディ(versabody)、ユニボディ、アフィボディ(affibody)、アビマー(avimer)、アンチカリン(anticalin)、DARPin、ペプチド性分子およびアプタマーが含まれる。
一実施形態において、「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質またはその抗原結合部分をいう。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中でVHと略称される。)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中でVLと略称される。)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域中に散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へとさらに下位分割できる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で整列した、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主の組織または因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の最初の成分(Clq)が含まれる。)への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
用語、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)は、本明細書中で使用する場合、抗原(例えば、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニット)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたは複数の断片をいう。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって遂行され得ることが示されている。用語、抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片);(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片);(iii)Fab’断片(これは、本質的に、ヒンジ領域の一部を伴うFabである。)(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul編、第3版、1993年)を参照のこと。);(iv)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(v)抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(vi)VHドメインからなるdAb断片(Wardら(1989)Nature341:544−546頁);(vii)単離された相補性決定領域(CDR);および(viii)ナノボディ(単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域)、が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、これらのドメインは、組換え法を使用して、VL領域およびVH領域が対になって一価の分子を形成している単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)としても知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426頁;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883頁を参照のこと。)としてこれらのドメインが生成されるのを可能にする合成リンカーによって、連結され得る。かかる単鎖抗体もまた、用語、抗体の「抗原結合部分」内に包含される意図である。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、断片は、インタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
本明細書中に記載または包含される抗体を構成するアミノ酸は、しばしば略称される。アミノ酸の指定は、その1文字コード、その3文字コード、または当技術分野で充分に理解されている名称によってアミノ酸を指定することによって示され得る(Alberts,B.、A.Johnsonら(2002).Molecular Biology of The Cell.New York、Garland Publishing,Inc.):
さらに、本明細書中に記載されるアミノ酸配列は、コード配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸を変更、付加または欠失する核酸の置換、欠失または付加を含む「保存的変異」を含み、このとき核酸の変更は、化学的に類似のアミノ酸の置換を生じる。保存的アミノ酸置換とは、第1のアミノ酸の特性と類似の化学的および/または物理的特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)を有する第2のアミノ酸による、第1のアミノ酸の置き換えをいう。保存的置換には、1つのアミノ酸の、以下の群内の別のアミノ酸による置き換えが含まれる:リジン(K)、アルギニン(R)およびヒスチジン(H);アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E);アスパラギン(N)およびグルタミン(Q);N、Q、セリン(S)、スレオニン(T)およびチロシン(Y);K、R、H、DおよびE;D、E、NおよびQ;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)およびグリシン(G);F、WおよびY;H、F、WおよびY;C、SおよびT;CおよびA;SおよびT;S、TおよびY;V、IおよびL;V、IおよびT。他の保存的アミノ酸置換も、問題のアミノ酸の状況に依存して、有効であるとみなされる。例えば、ある場合には、メチオニン(M)はリジン(K)を置換し得る。さらに、保存的バリエーションが異なる配列は、一般に相同である。
「単離された抗体」は、本明細書中で使用する場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいう意図である(例えば、IL−12/IL−23のp40サブユニットに特異的に結合する単離された抗体は、IL−12/23のp40サブユニット以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。さらに、単離された抗体は、他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含んでいなくてもよい。
用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書中で使用する場合、単一分子の組成の抗体分子調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
用語「ヒト抗体」は、本明細書中で使用する場合、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含む意図である。さらに、抗体が定常領域を含む場合、この定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、ランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によってインビトロで導入された変異または体細胞変異によってインビボで導入された変異)を含み得る。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書中で使用する場合、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含まない意図である。
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体をいう。一実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合した、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えばトランスジェニックマウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
用語「組換えヒト抗体」には、本明細書中で使用する場合、組換え手段によって調製、発現、創出または単離された全てのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックまたは染色体導入(transchromosomal)な動物(例えばマウス)またはそこから調製されたハイブリドーマ(以下にさらに記載する。)から単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞(例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma))から単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、創出または単離された抗体、が含まれる。かかる組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、特定の実施形態において、かかる組換えヒト抗体は、インビトロの変異誘発(または、ヒトIg配列に関してトランスジェニックな動物が使用される場合には、インビボの体細胞変異誘発)に供され得、したがって、この組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH配列およびVL配列に由来するおよびそれらに関連するものの、インビボでヒト抗体の生殖系列レパートリー内には天然には存在しないものであり得る配列である。
本明細書中で使用する場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書中で、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と相互交換可能に使用される。
用語「ヒト抗体誘導体」は、ヒト抗体の任意の改変形態(例えば、抗体および別の薬剤または抗体のコンジュゲート)をいう。
用語「ヒト化抗体」は、別の哺乳動物種(例えばマウス)の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体をいう意図である。さらなるフレームワーク領域の改変が、ヒトフレームワーク配列内になされ得る。配列が特定の種に「由来する」場合、前記配列がタンパク質配列であり得ること(例えば、可変領域アミノ酸がマウス抗体から取られた場合)、または前記配列がDNA配列であり得ること(例えば、可変領域をコードする核酸がマウスDNAから取られた場合)が、当業者に理解される。ヒト化抗体はまた、ヒト抗体および非ヒト(例えば、マウスまたはウサギ)抗体の既知の配列に基づいて設計され得る。ヒト残基および非ヒト残基の両方を組み込んでいる可能性のある設計された抗体は、化学的に合成できる。この配列はまた、DNAレベルで合成され得、インビトロまたはインビボで発現されてヒト化抗体を生成し得る。
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体(例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体)をいう意図である。
用語「抗体模倣物」または「抗体ミミック」は、抗体が抗原に結合する能力を模倣可能であるが、ネイティブの抗体構造に限定されない分子をいう意図である。かかる抗体模倣物の例には、ドメイン抗体、アドネクチン(即ち、フィブロネクチンベースの結合分子)、アフィボディ、DARPin、アンチカリン、アビマー、ナノボディ、ユニボディ、ヴァーサボディ、アプタマーおよびペプチド性分子が含まれるがこれらに限定されず、これらは全て、伝統的な抗体結合を模倣するものの、別個の機構を介して形成され機能する結合構造を採用している。本発明の実施形態は、抗体またはその抗原結合部分に関しているので、上記抗体模倣物にも適用される。
アミノ酸置換(「点」)変異は、野生型アミノ酸残基の型、残基番号および変異したアミノ酸残基の型によって示される。例えば、グリシン96のアスパラギンへの点変異は、アミノ酸についての標準的な3文字略称または1文字略称を使用して、「Gly−96−Asn」または「G96N」のいずれかとして示される。
用語「Kabat番号」、「Kabat定義」および「Kabat標識(labeling)」は、本明細書中で相互交換可能に使用される。これらの用語は当技術分野で認識されており、抗体またはその抗原結合部分の重鎖可変領域および軽鎖可変領域中の他のアミノ酸残基よりも可変性が高い(即ち、超可変性の)アミノ酸残基に番号付けするシステムをいう(Kabatら(1971)Ann.NY Acad,Sci.190:382−391頁およびKabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242)。例えば、本明細書中でいうヒト抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体J695について、超可変領域は以下のとおりである。重鎖可変領域について、超可変領域は、CDR1についてはアミノ酸位置27から35の範囲、CDR2についてはアミノ酸位置50から65の範囲、CDR3についてはアミノ酸位置95から102の範囲である。軽鎖可変領域について、超可変領域は、CDR1についてはアミノ酸位置24から34の範囲、CDR2についてはアミノ酸位置50から56の範囲、CDR3についてはアミノ酸位置89から97の範囲である(図1中に示したJ695についてのKabat番号を参照のこと。)。
用語「活性」には、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性(例えば、IL−12抗原に結合する抗hIL−12抗体)および/または抗体の中和能力(例えば、hIL−12に結合する抗hIL−12抗体は、hIL−12の生物学的活性を阻害する(例えば、PHA芽球増殖(blast proliferation)の阻害またはヒトIL−12レセプター結合アッセイにおけるレセプター結合の阻害))などの活性が含まれる。
用語「改変する」は、本明細書中で使用する場合、抗体またはその抗原結合部分中の1つまたは複数のアミノ酸を変化させることをいう意図である。この変化は、1つまたは複数の位置において、アミノ酸を付加、置換または欠失することによって生成され得る。この変化は、公知の技術(例えばPCR変異誘発)を使用して生成され得る。
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が特に指定しない限り下限の単位の10分の1までの各介在する値、およびその範囲内の任意の他の示された値もしくは介在する値が、本発明の範囲内に包含されることが理解される。より小さい範囲中に独立して含まれ得るこれらのより小さい範囲の上限および下限もまた、本発明の範囲内に包含され、示された範囲内の任意の具体的に除外された限界値の影響下にある。示された範囲がこれらの限界値の1つまたは両方を含む場合、その含まれた限界値の両方をいずれも除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
本発明の種々の態様が、以下のサブセクションにおいてより詳細に記載される。
II.J695 Fabの結晶構造
本明細書中の実施例は、ヒトmAb J695のFabを含むポリペプチドの調製および結晶化を記載している。J695は、治療上の有用性および診断上の有用性を有する、ヒトIL−12およびヒトIL−23のp40サブユニットに対する組換えヒトmAbである。J695は、IgG1の重鎖およびλ軽鎖定常領域アイソタイプを含む。J695は、ヒトIL−12に緊密に(Kd102±25pM)結合し、ヒトIL−12のIL−12レセプターとの相互作用を防止する(Salfeldら、1992 Science 255(5047):959−965頁)。同様に、J695は、hp40単独およびhIL−23の両方に緊密に結合する。完全J695 CDR配列は、Kabata番号システムを参照して以下である(図1および図2を参照のこと。):H1:27FTFSSYGMH35(配列番号1のaa27−35);H2:50FIRYDGSNKYYADSVKG65(配列番号1のaa50−66);H3:95HGSHDN102(配列番号1のaa99−104);L1:24SGSRSNIGSNTVK34(配列番号2のaa23−35);L2:50YNDQRPS56(配列番号2のaa51−57);L3:89QSYDRYTHPALL97(配列番号2のaa90−101)。
J695 Fab断片は、パパイン消化とその後の精製によって、CHO細胞が産生したJ695免疫グロブリンから調製した。J695について、Fabは、配列番号2の約残基1から約残基217までの軽鎖アミノ酸残基(配列番号2に示すとおり)を伴う、配列番号1の約残基1から約残基220までの重鎖アミノ酸残基(配列番号1に示すとおり)から構成される。Fabの重鎖および軽鎖は、ジスルフィド結合によって共有結合していることが多い。結合したIL−12 p70(p40鎖)と相互作用する特異的J695 Fabアミノ酸残基は、以下でより詳細に論じる。
J695 Fabを、種々の条件下で結晶化した。特に、Fabは、斜方晶空間群P212121、a=53.92Å、b=67.36Å、c=115.79Åで結晶化した。この結晶形は、本明細書中で「フォームI」という(図4を参照のこと。)。特に、J695 Fabは、単斜晶空間群P21、a=85.62Å、b=173.41Å、c=139.85Å、β=105.5°でも結晶化した。この結晶形は、本明細書中で「フォームII」という(図5を参照のこと。)。用語「空間群」は、結晶の単位格子の対称要素の集合をいう当技術分野の用語である。用語「単位格子」は、結晶の構成単位と同種の、基礎的な反復単位をいう当技術分野の用語である。これらの結晶形態のいずれも、以前には報告されていなかった。
7つのパラメータが、結晶の対称性および幾何学的特徴を一意的に記述する。これらのパラメータは、空間群(対称性)、3つの単位格子の軸長「a」、「b」および「c」、ならびに3つの単位格子の軸間角「α」、「β」および「γ」(幾何学)である。「単位格子の軸長」および「単位格子の軸間角」は、単位格子の3次元幾何学的特徴(本質においてその長さ、幅および高さ)をいい、構成単位が垂直であるか斜平行六面体であるかをいう、当技術分野の用語である。単位格子の軸長および軸間角は、その単位格子内の分子の配置を実質的に変更することなしに、±10%も変動し得る。したがって、結晶格子の軸長および軸間角のそれぞれが、「約」特定の値として本明細書中で言及される場合、これは、これらの単位格子の軸長および軸間角の任意の組み合わせが、示された値から±10%も変動し得ることを意味すると理解すべきである。同様に、特定の場合、結晶の空間群(およびしばしば単位格子パラメータと組み合わせて)は、当初は変更された対称性(および幾何学的)特徴を有する異なる結晶であるように見える結晶を提供するために変更され得る。しかし、実際には、この見かけ上新しい結晶は、実質的に同じ結晶形態を記述する別の方法に過ぎない。以下および実施例に詳細に記載するように、J695 Fabは、単斜晶空間群P21で結晶化した。実質的に同じ結晶を提供するまたは提供しないのいずれかである結晶パラメータ変動の上記の論述の全てに関して、本明細書中に示されるJ695 Fab結晶形態は、実質的に同じ結晶分子配置を記述するための代替的な同等に有効な方法に関わらず、独自である。
本明細書中で報告されるP212121の斜方晶単位格子は、結晶学的非対称単位中に1つのJ695 Fab分子を含む。用語「非対称単位」は、インタクトな単位格子を最初に生成し、次いで数学的並進対称操作の適用によって巨視的結晶全体を生成するために、特定の空間群に限られる当業者によく知られた数学的対称操作を使用して拡張され得る、結晶の分子内容の独自の部分をいう当技術分野の用語である。本明細書中で報告されるP21の単斜晶単位格子は、結晶学的非対称単位中に8つのJ695 Fab分子を含む。フォームII結晶中の8つの独自のFabは、非結晶学的擬似対称(pseudosymmetry)によって、互いに関連している。特に、<011>の結晶学的方向にほぼ沿った反平行様式で配置された2つのFabは、[100]に対して平行な擬似2回転(pseudo−two−fold rotation)軸(「ダイアド(dyad)」)で互いに関連している。第2のFab対は、同じダイアドの周りに整列されるが、約1/2aずれている。このテトラマーFabアセンブリは、並進ベクトル[約1/2a、約1/2b、約1/2c]で複製されて、結晶学的非対称単位中に他の4つのFabを与える。本明細書中で報告される新たなJ695 Fab結晶形は両方とも、この抗体の抗原結合部位の詳細な原子配置を提供する利点を有する。
結晶学的構造決定によって示されるように、空間群P212121のJ695 Fab結晶は、実際、結晶学的非対称単位中にJ695 Fab分子を1つ含むだけでなく、多くの秩序化された水分子もまた含む。結晶学的構造決定によって示されるように、空間群P21の新規J695 Fab結晶もまた、実際に、結晶学的非対称単位中にJ695 Fab分子を8つ含むだけでなく、多くの秩序化された水分子もまた含む。
さらに、当業者に明らかなように、上記2つの結晶形態と実質的に異ならないさらなる結晶形が、タンパク質の僅かな改変または結晶化条件(例えば、使用するタンパク質の正確な形態)によって得られ得る。異なる空間群で存在し得る、したがって、一見別個であると思われるこれらの他の結晶形は、本明細書中で報告される結晶形と等価であるとみなすべきである。
実施例に記載されるように、特定のこれらの結晶をx線結晶解析によって試験し、ポリペプチドの原子座標を得た。J695 Fabの結晶構造を、分子置換を使用して決定し、それぞれフォームIおよびフォームIIの結晶について、1.34Åおよび2.10Åの解像度で、19.7%および26.1%のフリーR因子(free R−factor)まで精緻化した。「フリーR因子」(または「Rfree」)は、結晶から実験的に決定されたx線回折データと実験データを説明するために構築された原子モデル(または原子座標)から計算した理論的回折データとの間の、不偏の程度の一致を示す、当技術分野の用語である。Rfree値は通常、0%(これは、完全一致を示す。)よりも大きく;10%−30%の範囲内の値は、原子モデルと実験データとの間のかなり正確な一致を示す。Rfree値は典型的に、実験的に決定されたx線回折データの解像度に依存する。より低い解像度のデータ(例えば、4Åから2Åまでの解像度)は一般に、より高いRfree値と関連し、より高い解像度のデータ(例えば、1Åから2Åまでの解像度)は一般に、より低いRfree値と関連する。
1.J695のCDR L3は、異常なcis−to−transペプチド結合異性化を示す。
J695結晶形Iにおいて、CDR L3(残基L89−L97)は、His−L95AL3とPro−L95BL3との間にcis−ペプチド結合を含む(図2)。かかるcis−プロリンは、CDR L3のカノニカルクラス1および2の保存された構造的特徴である。Chothia,C.およびA.M.Lesk(1987).「Canonical Structures for the Hypervariable Regions of Immunoglobulins.」J.Mol.Biol.196:901−917頁;Chothia,C.、A.M.Leskら(1989).「Conformations of immunoglobulin hypervariable regions.」Nature 342:877−883頁..Al−Lazikani,B.、A.M.Leskら(1997).「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins.」J.Mol.Biol.273:927−948頁;Barre,S.、A.S.Greenbergら(1994).「Structural conservation of hypervariable regions in immunoglobulins evolution.」Structural Biology 1(12):915−920頁を参照のこと。対照的に、CDR L3は、フォームIIの別個の立体配座をとり、この立体配座では、His−L95AL3−Pro−L95BL3ペプチド結合は、transの立体配置をとる。この立体配置切り替えによってもたらされるL3の再配置は、抗インフルエンザウイルスヘマグルチニンFab 17/9について最初に記載されたH3の誘導適合再配置(Rini,J.M.、U.Schulze−Gahmenら(1992).「Structural evidence for induced fit as a mechanism for antibody−antigen recognition.」Science 255(5047):959−65頁)および自己抗体BV04−01(Herron,J.N.、X.M.Heら(1991).「An autoantibody to single−stranded DNA:comparison of the three−dimensional structures of the unliganded Fab and a deoxynucleotide−Fab complex.」Proteins 11(3):159−75頁)と類似している。この切り替えに起因して、2つの結晶形のL3 CDRは、重なり合いに乏しく、2.3Åのr.m.s.偏差を有するが、他の5つのCDRはよく重なり合い、0.2−0.4Åのr.m.s.偏差を有する。
Protein Data Bank(2003年3月28日の時点で453のAb構造エントリが入手可能)(Berman,H.M.、T.Battistuzら(2002).「The Protein Data Bank.」Acta Cryst.D58:899−907頁)の体系的なアルゴリズム検索を実施して、両方とも全体としての抗体においてであるが、特にCDR内で、cis−to−transペプチド結合異性化の例を同定した。多数の擬似cis/trans対の排除を可能にする本明細書中で使用されるアルゴリズムは、J695で観察されたこの現象の以前の例(即ち、抗一本鎖DNAmAb DNA−1)を1つだけ同定した(Tanner,J.J.、A.A.Komissarovら(2001).「Crystal Structure of an Antigen−binding Fragment Bound to Single−stranded DNA.」J.Mol.Biol.314:807−822頁)。したがって、J695だけが、cisおよびtransの両方の立体配置をとる任意のCDR中のペプチド結合を明白に示す第2のAbであり、CDR L3中のcis−to−trans異性化を示す最初のAbであると考えられている。
2.CDR L3は、2つの新規な伸長ヘアピン立体配座をとる。
両方の結晶形において、J695のCDR L3は、以前には観察されなかった別個の伸長ヘアピン立体配座をとる(図3)。L3は、12残基の異常な長さであり、最も長いものは、構造的に特徴付けられたAbでなおも見られる。L3の異常な長さが、L3がその異常な立体配座をとることを可能にしている可能性が高い。
CDR L3は、カノニカルクラス1および2において以前に記載された位置98Bにおける保存されたcis−プロリンの存在にもかかわらず、3残基の伸長および保存された残基Gln−L90の欠如に起因して、結晶形Iの独自の立体配座をとる(ChothiaおよびLesk 1987 Nature 342:877−883頁;ChothiaおよびLesk 1989 Nature 342:877−883頁;BarreおよびGreenberg 1994 Structural Biology 1(12):915−920頁;Al−LasikaniおよびLesk 1997 J.Mol.Biol.273:927−948頁)。L3立体配座はまた、MartinおよびThorton(MartinおよびThornton 1996 J.Mol.Biol.263:800−815頁)によって記載されたより新しいカノニカルクラスターのいずれにも対応せず、彼らが報告した新規非クラスターループ構造のいずれとも似ていない。過剰な残基は、L3がフレームワークから伸長し、Pro−L95BL3の周囲にバルジを形成することを可能にし、それにより、抗原結合部位の1端の境界を定める。この立体配座において、cis−プロリンは、カノニカルクラス1において観察される立体配座に対して反転しており、その結果、Cβ原子は、抗原結合部位から離れるのではなく、抗原結合部位に向いている(図4)。
3つの密に結合した水分子は、伸長したL3立体配座を安定化する。通常保存されたGln−L90の構造的役割と類似した構造的役割を果たす、L3ヘアピンの中心の1つの水分子は、Thr−L95L3の側鎖(3.0Å)、Asp−L92L3(3.1Å)およびAla−L95CL3(2.7Å)の主鎖カルボニル酸素原子、ならびにAsp−L92L3のアミド窒素(2.9Å)に対する水素結合を形成する(図3)。ヘアピンの先端に位置する第2の水は、Arg−L93L3のカルボニル酸素(3.1Å)およびHis−L95AL3のアミド窒素(2.7Å)に対する水素結合を形成し、第3の水は、Tyr−L94L3のカルボニル酸素に対する水素結合(2.8Å)を形成する。cisペプチド結合もまた、この新規構造を形成する助けになる。結合したリン酸(または硫酸)が、Lys−L34L1のNζ原子、Pro−L95BL3のカルボニル酸素、Tyr−L91L3Oη、His−H35H1Nε1およびHis−H95H3Nδ1との水媒介性の直接的相互作用を介して、L1、L3、H2およびH3 CDR(図3)を連結している。
CDR L3は、trans立体配置へのHis−L95AL3−Pro−L95BL3ペプチド結合の異性化に部分的に起因して、結晶形IIの、別個の非カノニカルでもある立体配座をとる。L3立体配座は、いくつかの密に結合した水分子との水素結合相互作用によって、フォームIと類似の様式で固定されるが、Thr−L95L3の側鎖に対する水素結合は欠如している。フォームIで見られるものとは異なる水媒介性の相互作用には、Gln−L31L1の側鎖ならびにThr−L95L3およびHis−L95AL3のいくつかの主鎖原子に対する架橋水素結合が含まれる。
3.第2のFabの結合部位中へのCDR L3の挿入は、抗原結合を模倣する。
結晶格子中の1分子から、第2の分子の抗原結合部位中へのL3の挿入は、結晶形IIのL3立体配座を強化する。フォームIでは見出されないこの分子間接触は、結晶学的対称関連のFab由来のL3’とH3’との間にL3を押し込む。この相互L3交換は、結晶形I中で観察される結合したリン酸アニオンを置き換え、生じた空隙は、CDRの通常の内向きの「締め付け(tightening)」、2つの充分秩序化された水分子およびTyr−L’94L3の側鎖によって満たされる。
cis−trans異性化および広範な結晶充填接触の引き続く形成によって引き起こされる、フォームIIのCDR L3の先端の再編成は、抗原結合間隙中への、Arg−L93L3からHis−L95AL3への153°の残基の回転として記載され得る。Arg−L93L3CαおよびPro−L95BL3のピロリジン環によっておおよそ規定される軸の周りでのこの回転は、Thr−L95L3を抗原結合部位に向けて9Åを超えてシフトさせる。Tyr−L94L3のCα原子は7.4Å移動し、その側鎖は、結合部位(Oηは15Å移動する。)中に回転して、対称関連Tyr−L’91L3のOηに対する水素結合を形成する。His−L95AL3は、2つの結晶形間でその配向を反転させる。いくつかのさらなる接触が、フォームIIにおいてL3と対称関連H2 CDRおよびH3 CDRとの間で観察される。対照的に、結晶形IのCDR L3は、単一の分子間接触のみを形成する。
したがって、J695のCDR L3は、抗原に対する2つのかなり異なる抗原結合部位をAbが提示するのを可能にする立体配置異性化を示す。結晶形IIで観察される分子間Ab/Ab相互作用は、Ab/Ag相互作用を模倣し得る。
4.J695は、抗原結合の特徴である可変ドメイン界面にて、構造的変更を示す。
2つの結晶形中の可変ドメイン間の界面はかなり異なっており、フォームIはリガンド結合していないAbと類似しており、フォームIIはリガンド結合したAbと類似している。第1に、非常に短い(6残基)CDR H3は、フォームIIのみで秩序化され、「バルジドトルソ(bulged torso)」立体配座をとる(Moreaら、1998 J.Mol.Biol 275:269−294頁)。上で論じたように、4つのH3残基H96−H101の秩序化は、IL−12との相互作用を置換し得る結晶接触の形成と関連している。抗原結合の際のH3の秩序化および立体配座変化が、一般に観察されている(StanfieldおよびWilson 1994 Trends Biotechnol 2(7):275−9頁)。
第2に、VL−VH界面において埋め込まれた溶媒露出表面積は、フォームIからフォームIIで、38%増加する(1,114Å2対1,540±28Å2)。かかる増加はまた、非結合状態から抗原結合状態への変形の特徴である(Stanfieldら、1993 Structure 15:83−93頁)。この増加の約3分の2は、H3の秩序化に起因する。表面積の差異と一致して、フォームI中のVL−VH界面は、水素結合相互作用(Gln−L38の側鎖とGln−H39の側鎖との間の共通の埋め込まれた相互交換)を1つだけ含むが、フォームII中の界面は8つ有する。VL−VH界面におけるこれらの変化は、CL−CH1界面の定常性と対照をなす:CLとCH1との間の埋め込まれた表面積は、2つの結晶形において類似である(フォームI:1,702Å2;フォームII:1,757+159Å2、範囲1,512−2,003Å2)。可変ドメインが示す定常性(1.8%)と比較した、フォームIIのCL−CH1界面における比較的大きい可変性(9%)は、フォームIIの定常ドメインのいくつかにおけるより高い程度の無秩序(より高い温度要因によって反映される。)に起因している可能性が高い。
第3に、結晶形IIのFabは、フォームIと比較して、VLをVHに関連付ける擬似2回転軸における変化を示す。フォームIIの8つのVLドメインをフォームIのVL上に整列させる場合、さらなる回転をフォームIIのVHドメインに適用して、フォームIのVHと整列させる必要がある。これらの回転は、平均2.1±0.9°(0.8−4.0°の範囲)である。かかるVL−VH回転の整列ミスは、リガンド結合したFabとリガンド結合していないFabとの間の差異の特徴である(Stanfieldら、1993 Structure 15:83−93頁)。これらの回転の差異は、8つのフォームII Fabのうち6つが、フォームIと同一のエルボー角(elbow angle)を有する(136±5°対135°)ので、エルボー角の変化と関連付けられない。
5.J695の抗原結合部位は、負に荷電したペプチドに結合する準備がされた、顕著な正に荷電した間隙を有する。
両方の結晶形において、J695のCDRは、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に深い間隙を形成する、これは、小分子ハプテンに対する抗体の、より典型的な結合部位である(図5)。対照的に、タンパク質に対する抗体の殆どは、比較的平坦な表面を有する抗原結合部位を含む(MacCallum,R.M.、A.C.Martinら(1996).「Antibody−antigen interactions:contact analysis and binding site topography.」J.Mol.Biol.262(5):732−745頁)。この間隙は、結晶形Iでは両端で開放されているが、フォームIIでは両端で閉鎖されている。フォームIIにおけるCDR L3の再編成は、間隙の一方の端を閉鎖し、H3の秩序化は、間隙の床部(floor)を完成させ、もう一方の端を閉鎖する。閉鎖された間隙は約9Åの幅(VHからVLまで)、約11Åの深さ(床部からCDR先端まで)および約13Åの長さ(H3からL3まで)である。間隙の床部は、高度に電気的陽性である。したがって、J695は、IL−12の表面から伸びる負に荷電したペプチドループに結合するために必要な、幾何学的特徴および荷電特徴を有する。
J695抗原結合部位の正の荷電を減少させ、それによって負に荷電したIL−12(図6)に対するその相補性に干渉する変異は、結合能力の喪失を引き起こす(PCT公開WO0056772 A1を参照のこと。)。正に荷電した間隙に寄与する残基には、以下が含まれる:Asn−L31L1(配列番号2のaa32);Lys−L34L1(配列番号2のaa35);Gln−L89L3(配列番号2のaa90);His−H35H1(配列番号1のaa35);Lys−H93(配列番号1のaa97);His−H95H3(配列番号1のaa99);His−H98H3(配列番号1のaa102);Asn−H102H3(配列番号1のaa104);およびTrp−H103(配列番号1のaa105)。
J695前駆体Joe 9のCDR H3は、これらの残基のうち3つを欠いている。His−H95H3およびHis−H98H3単独の導入は、mAb 70−1において、約5倍の結合の改善をもたらした(図2)。110−11を提供するための、78−34における再配置されたL3アルギニン残基との組み合わせは、50倍よりも大きい改善を導いた。103−14における通常と異なる配置(Morea,V.、A.Tramontanoら(1998).「Conformations of the third hypervariable region of the VH domain of immunoglobulins.」J.Mol.Biol.275:269−294頁)のフレームワーク残基Lys−H93の付加は、Joe 9と比較して、有効性における1,000倍の増加を提供した。高度に最適化されたY61においてさえも、これらの正に荷電した残基の変異は、IL−12結合に対して測定可能な影響を有した。例えば、負に荷電したグルタミン酸へのY61 His−H95H3の変異は、koff速度定数における8倍の増加を引き起こし(および推論の結果、親和性における減少も同様)、アスパラギン酸へのAsn−L31L1の変異は、2.5倍の増加を導いた。したがって、親和性成熟データ、荷電相補性および単純な幾何学的考慮事項は全て、J695が、IL−12上の突出した負に荷電したループに結合することを示している。
III.IL−12 p70(p40/p35)に結合したJ695 Fabの結晶構造
ヒトmAb J695のFabを含むポリペプチドとヒトIL−12 p70を含むポリペプチドとの間での複合体を調製した。上に示したように、ヒトIL−12 p70は、2つのサブユニット、p40ポリペプチド鎖およびp35ポリペプチド鎖から構成される。前駆体(またはプロペプチド)p40鎖のアミノ酸残基は、配列番号5として示す。前駆体(またはプロペプチド)p35鎖のアミノ酸残基は、配列番号6として示す。成熟p40鎖のアミノ酸残基、即ち、配列番号5の約残基23から約残基328までは、成熟p35鎖のアミノ酸残基、即ち、配列番号6の約残基23から約残基213までと会合して、IL−12 p70ヘテロダイマーサイトカインを形成する。p40鎖およびp35鎖は、ジスルフィド結合によって共有結合される。これ以降、本特許出願において、IL−12 p40ポリペプチドおよびIL−12 p35ポリペプチドの成熟番号を使用する。J695 Fabと相互作用する特定のIL−12 p40のアミノ酸残基は、以下でより詳細に論じる。
ネイティブヒトIL−12 p40のアミノ酸配列(配列番号5)は、SWISS−PROT(http://www.expasy.ch;Entry Name:IL12B_HUMAN;Primary Accession Number:P29460)において規定されたように取得する。このSWISS−PROTエントリにおけるアミノ酸残基23−328は、配列番号3に示されるような成熟IL−12 p40ポリペプチド(本明細書中で残基1−306と呼ぶ。)に対応する。ネイティブヒトIL−12 p35のアミノ酸配列(配列番号6)は、SWISS−PROT(http://www.expasy.ch;Entry Name:IL12A_HUMAN;Primary Accession Number:P29459)において規定されたように取得する。このSWISS−PROTエントリにおけるアミノ酸残基23−219は、配列番号4に示されるような成熟IL−12p35ポリペプチド(本明細書中で残基1−197と呼ぶ。)に対応する。
実施例に記載したように、この複合体を、多様な条件下で結晶化した。特に、J695 Fab/IL−12 p70 複合体は、斜方晶空間群C2221、a=136.3151Å、b=209.5560Å、c=217.1127Åで結晶化した。この結晶形態は、以前には報告されていない。
以下および実施例においてより詳細に記載するように、本明細書中で報告されるC2221の斜方晶単位格子は、結晶学的非対称単位中に2分子のJ695 Fabおよび2分子のIL−12 p70を含む。結晶学的構造決定によって示されるように、空間群C2221の新たなJ695 Fab/IL−12 p70複合体結晶は、実際に、結晶学的非対称単位中に2分子のJ695 Fabおよび2分子のIL−12 p70を含むだけでなく、多くの秩序化された水分子もまた含む。
さらに、当業者に明らかなように、上記斜方晶形態と実質的に異ならないさらなる結晶形が、タンパク質の僅かな改変または結晶化条件(例えば、使用したタンパク質の正確な形態)によって得られ得る。異なる空間群で存在し得る、したがって、一見別個であると思われるこれらの他の結晶形は、本明細書中で報告される結晶形と等価であるとみなすべきである。
実施例に記載するように、特定のこれらの結晶をx線結晶解析によって試験し、ポリペプチドの原子座標を得た。特に、x線結晶解析によって試験した本明細書中で報告されるC2221結晶形は、J695とIL−12 p70との間の正確な分子相互作用(その結合部位における両分子の3次元立体配座が含まれる。)、ならびにどのIL−12アミノ酸残基が結合部位またはエピトープを構成するかを明らかにするという利点を有する。J695 FabとIL−12 p70との間の1対1の複合体の結晶構造を決定し、3.25Åの解像度で28.7%のフリーR因子まで精緻化した。
IV.IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体
本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニット、好ましくは本明細書中に記載されるp40サブユニットの特定のドメインまたは一部分または立体配座エピトープ、例えば、成熟ヒトp40タンパク質(配列番号3)のアミノ酸配列の残基1−197から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む一部分および/または立体配座エピトープに、特異的に結合する。好ましい実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分の、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに対する結合は、IL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性ならびに/またはp40含有サイトカインの活性を、調節する(例えば、阻害するまたは低下させる。)。例えば、この抗体またはその抗原結合部分は、p40含有サイトカイン(例えば、IL−12またはIL−23)の、そのレセプター(例えば、それぞれIL−12レセプターまたはIL−23レセプター)への結合を遮断し得る。
本発明の抗体は、p40サブユニットの特定のドメインまたは一部分、例えば、成熟ヒトp40タンパク質(配列番号3)のアミノ酸配列の残基1−197から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含む一部分に結合するように、選択または設計される。一実施形態において、本発明の抗体は、成熟ヒトp40タンパク質(配列番号3)のアミノ酸配列の残基1−197から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合するように、選択または設計される。他の実施形態において、本発明の抗体は、p40サブユニットのループ1−7の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合するように、選択または設計され、例えばこのとき、少なくとも1つのアミノ酸残基は、成熟ヒトp40タンパク質(配列番号3)のアミノ酸配列の残基14−23、58−60、84−107、124−129、157−164および194−197から選択される。他の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットのドメインに対する相同性を共有するタンパク質に結合するように、選択または設計される。例えば、抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットのドメインに対して少なくとも50%同一、少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一または少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%同一のドメインに結合するように、選択または設計され得る。かかる抗体またはその抗原結合部分は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットのドメインと機能的に類似するタンパク質ドメインに結合できる。
一実施形態において、抗体またはその抗原結合部分は、アミノ酸の連続ストリングを提示するタンパク質モチーフに結合する。他の実施形態において、この抗体またはその抗原結合部分は、タンパク質中の3次元構造を提示するタンパク質モチーフまたはコンセンサス配列に結合する。かかるモチーフまたはコンセンサス配列は、アミノ酸の連続ストリングを提示しないが、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの3次元フォールディングから生じる非連続アミノ酸の配置(即ち、「構造モチーフ」または「非線状エピトープ」)を提示する。かかるモチーフの例は、セクションIV(C)の表4に記載されるエピトープ1(例えば、ヒトp40のTyr16、Asp87およびAsp93を含む。)である。一実施形態において、本発明の抗体は、例えば、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットのループ1−7由来の1つまたは複数のアミノ酸残基を含む非線状エピトープに結合する。本発明の抗体は、以下のサブセクションにさらに詳細に記載される。
A.J695 Fab/IL−12 p70複合体の結晶構造に基づく抗体
1.IL−12 p40に対する接触
J695 Fab/IL−12 p70複合体の結晶構造は、J695がp40サブユニットを介してIL−12に結合することを示す。J695とp35サブユニットとの間には接触はない(図7)。IL−12 p40サブユニットのアミノ酸残基に対する言及は全て、配列番号3に示される成熟p40ポリペプチドを参照してなされる。
J695 Fabとp40との間の相互作用の大部分は、p40のN末端ドメインD1、成熟p40ポリペプチド(未成熟配列の約残基23−130;配列番号3に示される成熟p40ポリペプチド配列を参照のこと。)の約アミノ酸残基1−197、より好ましくはアミノ酸1−107中に存在する(図8)。したがって、例示的実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基1−197から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基1−107から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
いくつかの相互作用は、IL−12 p40の他のドメインに対しても起こる。特に、J695は、IL−12 p40に結合し、以下のIL−12 p40アミノ酸残基と接触する:Asp14、Trp15、Tyr16、Pro17、Asp18、Ala19、Pro20、Gly21、Glu22、Met23、Lys58、Glu59、Phe60、Lys84、Lys85、Glu86、Asp87、Gly88、Ile89、Trp90、Ser91、Thr92、Asp93、Ile94、Leu95、Lys96、Asp97、Gln98、Lys99、Glu100、Pro101、Lys102、Asn103、Lys104、Thr105、Phe106、Leu107、Thr124、Thr125、Ile126、Ser127、Thr128、Asp129、Arg157、Val158、Arg159、Gly160、Asp161、Asn162、Lys163、Glu164、His194、Lys195、Leu196およびLys197(図8)。これらの残基は、p40サブユニットのループ1−7の少なくとも1つのループ中に、それぞれ位置付けられる。したがって、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体もまた本明細書に包含され、この抗体は、ループ1−7の少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。例示的実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、ループ1−7の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内(例えば、このアミノ酸残基の0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10Å以内)を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
特に、J695は、IL−12 p40に結合し、IL−12 p40ループ1を構成する以下のIL−12 p40アミノ酸残基、即ち、残基:Asp14、Trp15、Tyr16、Pro17、Asp18、Ala19、Pro20、Gly21、Glu22およびMet23と接触する(図8)。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基14−23からなる群から選択されるループ1の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。さらなる実施形態において、この抗体は、14−18からなる群から選択されるループ1の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。好ましい実施形態において、この抗体は、14−17からなる群から選択されるループ1の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。別の好ましい実施形態において、この抗体は、15−17からなる群から選択されるループ1の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
結晶構造分析は、J695がIL−12 p40に結合し、IL−12 p40ループ2を構成する以下のIL−12 p40アミノ酸残基、即ち、残基:Lys58、Glu59およびPhe60と接触することもまた示している。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基58−60からなる群から選択されるループ2の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
さらに、結晶構造分析は、J695がIL−12 p40に結合し、IL−12 p40ループ3を構成する以下のIL−12 p40アミノ酸残基、即ち、残基:Lys84、Lys85、Glu86、Asp87、Gly88、Ile89、Trp90、Ser91、Thr92、Asp93およびIle94と接触することを示している(図8)。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基84−94からなる群から選択されるループ3の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。別の実施形態において、この抗体は、85−93からなる群から選択されるループ3の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。さらなる実施形態において、この抗体は、86−89および93からなる群から選択されるループ3の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。好ましい実施形態において、この抗体は、86、87、89および93からなる群から選択されるループ3の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
IL−12 p40のアミノ酸残基Asp87は、J695への結合において特に突出している。その側鎖カルボン酸は、J695 FabのフォームI結晶構造で観察された結合したリン酸イオンと同じ位置で、結合部位中に深く結合する(図9)。したがって、さらなる好ましい実施形態において、この抗体は、ループ3のアミノ酸残基87またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
さらに、結晶構造分析は、J695がIL−12 p40に結合し、IL−12 p40ループ4を構成する以下のIL−12 p40アミノ酸残基、即ち、残基:Leu95、Lys96、Asp97、Gln98、Lys99、Glu100、Pro101、Lys102、Asn103、Lys104、Thr105、Phe106およびLeu107と接触することを示している(図8)。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基95−107からなる群から選択されるループ4の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。別の実施形態において、この抗体は、残基102−104からなる群から選択されるループ4の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。好ましい実施形態において、この抗体は、103および104からなる群から選択されるループ4の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。別の好ましい実施形態において、この抗体は、ループ4のアミノ酸残基104、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。なお別の好ましい実施形態において、この抗体は、ループ4のアミノ酸残基103、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
結晶構造分析は、J695がIL−12 p40に結合し、IL−12 p40ループ5を構成する以下のIL−12 p40アミノ酸残基、即ち、残基:Thr124、Thr125、Ile126、Ser127、Thr128およびAsp129と接触することもまた示している(図8)。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23(例えば、ヒトIL−12および/またはヒトIL−23)のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基124−129からなる群から選択されるループ5の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
結晶構造分析は、J695がIL−12 p40に結合し、IL−12 p40ループ6を構成する以下のIL−12 p40アミノ酸残基、即ち、残基:Arg157、Val158,Arg159、Gly160、Asp161、Asn162、Lys163およびGlu164と接触することもまた示している。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23(例えば、ヒトIL−12および/またはヒトIL−23)のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基157−164からなる群から選択されるループ6の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
結晶構造分析は、J695がIL−12 p40に結合し、IL−12 p40ループ7を構成する以下のIL−12 p40アミノ酸残基、即ち、残基:His194、Lys195,Leu196およびLys197と接触することもまた示している。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23(例えば、ヒトIL−12および/またはヒトIL−23)のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基194−197からなる群から選択されるループ7の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
結晶構造分析はさらに、J695とIL−12との間の特異的相互作用の大部分が、以下のIL−12 p40ループ:ループ1、ループ3およびループ4との相互作用であることを示している。例えば、J695とエピトープ中のIL−12 p70残基との間の特異的接触の殆どは、一次配列において連続していない(いわゆる「立体配座」エピトープ)4つのIL−12 p40表面ループ(残基14−23、58−60、84−94および95−107;それぞれ上記を参照してループ1、2、3および4)から主に構成される(Janeway,C.,Jr.、P.Traversら(2001).Immunobiology:the immune system in health and disease.New York、Garland Publishing,Inc)。このように、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基14−23、58−60、84−94および95−107からなる群から選択されるループ1−4の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。さらなる実施形態において、本発明は、残基14−18、85−93および102−104からなる群から選択されるループ1−4の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する抗体を包含する。さらなる実施形態において、本発明は、残基14−17、86−89、93および103−104からなる群から選択されるループ1−4の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する抗体を包含する。別の実施形態において、本発明は、残基15−17、86−87、89、93および104からなる群から選択されるループ1−4の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する抗体を包含する。
なおさらなる実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基14−23および58−60からなる群から選択されるループ1−2の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。別の実施形態において、本発明は、残基15、17−21、23および58−60からなる群から選択されるループ1−2の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する抗体を包含する。
なおさらなる実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基14−23からなる群から選択されるループ1の少なくとも1つのアミノ酸残基および残基58−60からなる群から選択されるループ2の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。別の実施形態において、この抗体は、残基14−23および84−94からなる群から選択されるループ1および3の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。さらなる実施形態において、この抗体は、残基14−23からなる群から選択されるループ1の少なくとも1つのアミノ酸残基および残基84−94からなる群から選択されるループ3の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
さらなる実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23、例えばヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基14−23および95−107からなる群から選択されるループ1および4の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。さらなる実施形態において、この抗体は、残基14−23からなる群から選択されるループ1の少なくとも1つのアミノ酸残基および残基95−107からなる群から選択されるループ4の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
さらなる実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23(例えば、ヒトIL−12および/またはヒトIL−23)のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、残基84−94および95−107からなる群から選択されるループ3および4の少なくとも1つのアミノ酸残基またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。さらなる実施形態において、この抗体は、残基84−94からなる群から選択されるループ3の少なくとも1つのアミノ酸残基および残基95−107からなる群から選択されるループ4の少なくとも1つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの一部分および/または立体配座エピトープに結合する。
J695とIL−12 p70との間の実験的に決定された結合部位は、どのp40残基がJ695の結合、特にJ695と種々の供給源由来のIL−12 p40またはIL−12 p70(例えば、ヒト、アカゲザル、イヌ、ラットまたはマウスのIL−12)(図11)との間の既知の交差反応またはその欠如を調節するかに関する、既知のデータと一致している。例えば、結合部位における2つの重要なアミノ酸残基、即ち、IL−12 p40のアミノ酸残基Tyr16(ループ1)およびAsp87(ループ3)は、ヒトIL−12とラットIL−12またはマウスIL−12との間で保存されていない。これら2つの残基の変更、即ち、Tyr16Arg(ラット)またはTyr16Thr(マウス)およびAsp87Asn(ラットまたはマウス)は、ラットもしくはマウスIL−12、またはヒト/ラットキメラタンパク質(以下を参照)で見出されるように、J695への結合を本質的に無効にする。
さらに、IL−12 p40のアミノ酸残基Gln98、Lys99およびGlu100の欠失は、ラットまたはマウスのIL−12 p40で見出されるように、ループ3およびループ4の形状を変更し、したがって、上記した重要な残基が、J695に対し適切に提示される。観察された結合部位は、IL−12 p70、IL−12 p40またはIL−23 p40/p19ヘテロダイマーのいずれかに対するJ695の既知の結合とも一致し、全て本質的に等しい親和性である(図7)。最後に、観察された結晶学的結合部位は、J695の親和性成熟からの既知の変異誘発データと一致する。即ち、J695前駆体抗体に対してなされたこの変異は、IL−12の結合有効性に影響を与えた(PCT公開WO0056772 A1(その全内容は、本明細書中で参照により本明細書に組み込む。)に記載されている。)。
本発明の一実施形態において、IL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体またはその抗原結合部分は、非連続エピトープまたは立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、ループ1−7のアミノ酸残基(即ち、配列番号3のアミノ酸配列のアミノ酸残基14−23、58−60、84−107、124−129、157−164および194−197)から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基、またはこのアミノ酸残基の1−10Å以内を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ1のアミノ酸残基、即ち、アミノ酸残基14−23から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ2のアミノ酸残基、即ち、アミノ酸残基58−60から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ3のアミノ酸残基、即ち、アミノ酸残基84−94から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ4のアミノ酸残基、アミノ酸残基95−107から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ5のアミノ酸残基、即ち、アミノ酸残基124−129から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ6のアミノ酸残基、即ち、アミノ酸残基157−164から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ7のアミノ酸残基、即ち、アミノ酸残基194−197から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。
別の実施形態において、この抗体は、ループ1−7のアミノ酸残基から選択される2つ以上のアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合し、この2つ以上のアミノ酸残基のうち少なくとも2つは、異なるループ中に存在する。異なるループ中に存在する少なくとも2つのアミノ酸残基は、ループの任意の組み合わせ(例えば、ループ1および2、ループ1および3、ループ1および4、ループ1および5、ループ1および6、ループ1および7、ループ2および3、ループ2および4、ループ2および5、ループ2および6、ループ2および7、ループ3および4、ループ3および5、ループ3および6、ループ3および7、ループ4および5、ループ4および6、ループ4および7、ループ5および6、ループ5および7またはループ6および7)からの残基であり得ることを理解すべきである。
例えば、一実施形態において、この抗体は、ループ1のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基およびループ2のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ1のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基およびループ3のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ1のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基およびループ4のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ2のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基およびループ3のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ2のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基およびループ4のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この抗体は、ループ3のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基およびループ4のアミノ酸残基から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むp40サブユニットの立体配座エピトープに結合する。p40サブユニットの立体配座エピトープは、異なるループ中に存在する少なくとも2つのアミノ酸残基を含み得、この異なるループは、ループ1、2、3、4、5、6および7の任意の組み合わせであり得ることを理解すべきである。
2.J695に対する接触
J695の全ての相補性決定領域(CDR)がIL−12 40と接触する。特に、IL−12の結合は、J695結合部位全体の6つの領域を介して主に生じ、これらの領域は、以下に記載するように、および図8中において、「部位」と特定される。
部位1は、3つの芳香族残基(Phe、Tyr、TrpまたはHis)を含み、このうち2つはCDR H1中に位置し(Phe−H27およびTyr−H32)、このうち1つはCDR H3中に位置し(His−H98)、その結果、これら3つの残基のCβ原子は、約8Å(2つのH1残基の間)、11Åおよび11Å(各H1残基とH3残基との間)の寸法の三角形を形成する。部位1のアミノ酸残基は、IL−12 p40の残基Tyr16およびPro17が挿入されるポケットを形成し、ここで、これらの残基は、J695との多数のファンデルワールス相互作用を生じる。本明細書中で決定されたJ695/IL−12 p70の結晶構造から、1つまたは複数の芳香族残基が、Phe−H27、Tyr−H32またはHis−H98(例えば、それぞれ配列番号1のアミノ酸残基27、32および102に対応する。)を置換でき、J695の結合特性が保持またはさらには増強されることが明らかである。
部位2は、Lys、Arg、Tyr、AsnおよびGlnから構成される群から引き出される3つの残基を含み、各1残基は、CDRL1(Lys−L34)、L3(Tyr−L91)およびH3(H3を開始する3つのフレームワーク残基を含む;Lys−H93)中に存在し、その結果、これら3つの残基のCβ原子は、約10Å(L1残基とL3残基との間)、12Å(L1残基とH3残基との間)および15Å(L3残基とH3残基との間)の寸法の三角形を形成する。J695の部位2のアミノ酸残基は、IL−12 p40の残基Asp87が挿入されるポケットを形成し、3つのJ695アミノ酸は、特異的な相補的電荷およびAsp87側鎖カルボン酸との水素結合相互作用を形成する(図9)。本明細書中で決定されたJ695/IL−12 p70の結晶構造から、Lys、Arg、Tyr、AsnおよびGlnから構成される群から引き出される1つまたは複数の残基が、Lys−L34(例えば、配列番号2のアミノ酸残基35に対応する。)、Tyr−L91(例えば、配列番号2のアミノ酸残基92に対応する。)またはLys−H93(例えば、配列番号1のアミノ酸残基97に対応する。)を置換でき、J695の結合特性が、保持またはさらには増強されることが明らかである。
部位3は、2つの芳香族残基(Phe、Tyr、TrpまたはHis)を含み、これらの残基は共にCDR L3中に位置し(Tyr−L91およびHis−L95A)、その結果、これら2つの残基のCβ原子は、約5Å離れている。部位3のアミノ酸残基は、IL−12 p40の残基Ile89が挿入されるポケットを形成し、ここで、この残基は、J695との多数のファンデルワールス相互作用を生じる。本明細書中で決定されたJ695/IL−12 p70の結晶構造から、1つまたは複数の芳香族残基が、Tyr−L91またはHis−L95A(例えば、それぞれ配列番号2のアミノ酸残基92および97に対応する。)を置換でき、J695の結合特性が、保持またはさらには増強されることが明らかである。
部位4は、Tyr、Ser、Thr、AsnおよびGlnから構成される群から引き出される2つの残基を含み、各1残基は、CDR L2(Tyr−L50)およびH3(Ser−H97)中に存在し、その結果、これら2つの残基のCβ原子は、約7Å離れている。J695の部位4のアミノ酸残基は、IL−12 p40の残基Asp14が挿入されるポケットを形成し、2つのJ695アミノ酸は、特異的な相補的電荷およびAsp14側鎖カルボン酸との水素結合相互作用を形成する。本明細書中で決定されたJ695/IL−12 p70の結晶構造から、Tyr、Ser、Thr、AsnおよびGlnから構成される群から引き出される1つまたは複数の残基が、Tyr−L50(例えば、配列番号2のアミノ酸残基51に対応する。)またはSer−H97(例えば、配列番号1のアミノ酸残基101に対応する。)を置換でき、J695の結合特性が、保持またはさらには増強されることが明らかである。
部位5は、J695のCDR L3全体(配列番号2のアミノ酸残基90−101に対応する。)を含み、これは以下の特徴を有する:(i)CDR L3の長さは、12アミノ酸残基以上である(CDR L3の長さは、J695では12アミノ酸残基の長さである。);(ii)CDR L3の位置90におけるアミノ酸残基は、Glnではない(この残基は、J695ではSerである。);(iii)CDR L3の位置94におけるアミノ酸残基は、芳香族である(この残基は、J695ではTyrである。);(iv)CDR L3の位置95Aにおけるアミノ酸残基は、Phe、Tyr、Trp、His、Asp、Glu、AsnおよびGlnから構成される群から引き出される(この残基は、J695ではHisである。);CDR L3の位置95Bにおけるアミノ酸残基はProである。
部位5のアミノ酸残基は、IL−12 p40の残基Lys102、Asn103およびLys104に接触する、J695結合部位の中心から伸びるβ−ヘアピンループを形成する。上記特徴のそれぞれが、再現性のあるCDR L3の結合立体配座またはIL−12との結合特異的相互作用のいずれかに寄与する。本明細書中で決定されたJ695/IL−12 p70の結晶構造から、CDR L3バリアント(ここで、以下の変化、即ち、(i)CDR L3の長さは、12アミノ酸残基より長い、(ii)異なる芳香族残基によるTyr−L94の置換、または(iii)Phe、Tyr、Trp、His、Asp、Glu、AsnおよびGlnから構成される群から引き出される残基によるHis−L95Aの置換、のうち1つまたは複数)が形成され得、J695の結合特性が、保持またはさらには増強されることが明らかである。
部位6は、Tyr、Ser、Thr、Asn、Gln、LysおよびArgから構成される群から引き出される2つの残基を含み、両方の残基がCDR H2中に存在し(Arg−H52およびTyr−H52A)、その結果、これら2つの残基のCβ原子は、約6Å離れている。J695の部位6のアミノ酸残基は、IL−12 p40残基のAsp93がそれに対して配置される壁を形成し、2つのJ695アミノ酸は、特異的な相補的電荷およびAsp93側鎖カルボン酸との水素結合相互作用を形成する。本明細書中で決定されたJ695/IL−12 p70の結晶構造から、Tyr、Ser、Thr、Asn、Gln、LysおよびArgから構成される群から引き出される1つまたは複数の残基が、Arg−H52またはTyr−H52A(例えば、それぞれ配列番号1のアミノ酸残基52または53に対応する。)を置換でき、J695の結合特性が、保持またはさらには増強されることが明らかである。
さらに、本明細書中で決定されたJ695/IL−12 p70の結晶構造から、IL−12 p40または他のp40含有サイトカインに結合するために上記6つの部位の全てが必要なわけではないことが明らかである。特に、上記部位1、部位2、部位3、部位4、部位5および部位6から構成される群から引き出される少なくとも1つの結合部位を有する抗体(部位のバリエーションは上記の通り許容される。)は、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得る。同様に、上記部位1−6の群から引き出される2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合部位を有する抗体(部位のバリエーションは上記の通り許容される。)は、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得る。
したがって、一態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸残基27、32、52、53、97、101および102ならびに配列番号2のアミノ酸残基35、51および90−101以外の可変領域残基のいずれか1つは、異なるアミノ酸で独立して置換されている。
別の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号1の可変領域アミノ酸残基27、32、52、53、97、101および102ならびに配列番号2の35、51および90−101のうち1つまたは複数は、異なるアミノ酸残基で独立して置換されている。この態様の一実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基27、32および102のうち1つまたは複数は、芳香族残基で独立して置換されている。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基97ならびに配列番号2の35および92のうち1つまたは複数は、Lys、Arg、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で独立して置換されている。さらなる実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基92および97のうち1つまたは複数は、芳香族アミノ酸残基で独立して置換されている。なお別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基101および配列番号2の51のうち1つまたは複数は、Tyr、Ser、Thr、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で独立して置換されている。さらなる実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基91は、Gln以外の任意のアミノ酸残基で独立して置換されている。別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基95は、異なる芳香族アミノ酸残基で独立して置換されている。なお別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基97は、Phe、Tyr、Trp、His、Asp、Glu、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。なお別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基90−101のうち1つまたは複数は、少なくとも1つまたは複数の異なるアミノ酸で独立して置換されており、抗体のCDRL3の長さは、12アミノ酸残基以上である。
さらなる実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、この抗体は、以下の置換のうち1つまたは複数を有する:(a)配列番号2の可変領域アミノ酸残基90−101のうち1つまたは複数は、少なくとも1つまたは複数の異なるアミノ酸で独立して置換されており、抗体のCDRL3の長さは、12アミノ酸残基以上である;(b)配列番号2の可変領域アミノ酸残基91は、Gln以外の任意のアミノ酸残基で置換されている;(c)配列番号2の可変領域アミノ酸残基95は、異なる芳香族アミノ酸残基で置換されている;または(d)配列番号2の可変領域アミノ酸残基97は、Phe、Tyr、Trp、His、Asp、Glu、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基52および53のうち1つまたは複数は、Tyr、Ser、Thr、Asn、Gln、LysおよびArgからなる群から選択されるアミノ酸残基で独立して置換されている。
関連の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体の活性を変更する方法を提供し、この抗体は、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。本発明のこの態様の一実施形態において、この方法は、配列番号1の可変領域アミノ酸残基27、32、52、53、97、101および102ならびに配列番号2のアミノ酸残基35、51および90−101のうち1つまたは複数を異なるアミノ酸残基で置換することを含み、それにより、IL−12および/またはIL−2のp40サブユニットに結合する抗体の活性を変更する。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基27、32および102のうち1つまたは複数は、芳香族残基で独立して置換される。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基97ならびに配列番号2の35および92のうち1つまたは複数は、Lys、Arg、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で独立して置換される。なお別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基92および97のうち1つまたは複数は、芳香族アミノ酸残基で独立して置換される。なお別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基101および配列番号2の51のうち1つまたは複数は、Tyr、Ser、Thr、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で独立して置換される。別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基91は、Gln以外の任意のアミノ酸残基で置換される。さらなる実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基95は、異なる芳香族アミノ酸残基で置換される。別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基97は、Phe、Tyr、Trp、His、Asp、Glu、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換される。別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基90−101のうち1つまたは複数は、少なくとも1つまたは複数の異なるアミノ酸で独立して置換され、抗体のCDRL3の長さは、12アミノ酸残基以上である。
別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体の活性を変更する方法を提供し、この抗体は、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、この抗体は、以下の置換のうち1つまたは複数を有する:(a)配列番号2の可変領域アミノ酸残基90−101のうち1つまたは複数は、少なくとも1つまたは複数の異なるアミノ酸で独立して置換されており、抗体のCDRL3の長さは、12アミノ酸残基以上である;(b)配列番号2の可変領域アミノ酸残基91は、Gln以外の任意のアミノ酸残基で置換されている;(c)配列番号2の可変領域アミノ酸残基95は、異なる芳香族アミノ酸残基で置換されている;または(d)配列番号2の可変領域アミノ酸残基97は、Phe、Tyr、Trp、His、Asp、Glu、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基52および53のうち1つまたは複数は、Tyr、Ser、Thr、Asn、Gln、LysおよびArgからなる群から選択されるアミノ酸残基で独立して置換されている。
B.J695 Fab/IL−12 p70複合体構造に基づく、J695に対するさらなる有用な変更
上に詳細に記載したように、J695は、IL−12との多数の特異的相互作用を生成するが、J695結合部位に対するさらなる変化が、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得るバリアント抗体を提供する。特に、大きいギャップが、結合部位においてJ695とIL−12 p40との間に存在する。p40の結合は、結合部位の深い間隙を部分的に満たすにとどまり、特にJ695 CDR H2およびL3とp40ループ3および4との間に、満たされていないギャップ(図9、矢印)を残す。したがって、このギャップまたは他の欠損に対処するバリアントが、有益である。これらの抗体バリアントは、以下の4つの機構によって改善された特徴を示すと予測される:(i)IL−12 p40とのさらなる特異的相互作用を生成する;(ii)J695とIL−12 p40との間に存在するギャップを満たす;(iii)バリアント抗体の結合部位に一旦結合したIL−12 p40の動きを制限する;または(iv)再現性のある結合立体配座へとバリアント抗体を事前編成する。これら4つの機構のある種の組み合わせはまた、治療上より有効な抗体を導き得る。特に、J695のアミノ酸配列に対するバリエーションの5つの群が、単独または組み合わせて、以下に記載するように実施され得る。
第1に、上記部位1、部位2、部位3、部位4、部位5および部位6からなる群から選択される結合部位のうち少なくとも2つを有し、さらにCDR H1の位置33(例えば、配列番号1のアミノ酸残基33に対応する。)に、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Val、Leu、Ile、Pro、Ala、Ser、Thr、Asn、Gln、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基を有する抗体は、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得る。特に、この位置における変異Gly−H33−Lysは、J695とIL−12 p40のアミノ酸残基Glu88との間のギャップを満たすと予測され、LysH33およびGlu88は、さらなる塩橋相互作用を生成すると予測される。
第2に、上記部位1、部位2、部位3、部位4、部位5および部位6からなる群から選択される結合部位のうち少なくとも2つを有し、さらにCDR H2の位置50(例えば、配列番号1のアミノ酸残基50に対応する。)に、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Gln、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基を有する抗体は、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得る。特に、この位置における変異Phe−H50−TyrおよびPhe−H50−Trpは、J695とIL−12 p40のアミノ酸残基Thr92およびLys104との間のギャップを満たすと予測される。
第3に、上記部位1、部位2、部位3、部位4、部位5および部位6からなる群から選択される結合部位のうち少なくとも2つを有し、さらにCDR H2の位置56(例えば、配列番号1のアミノ酸残基57に対応する。)に、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Val、Leu、Ile、Pro、Ala、Ser、Thr、Asp、Glu、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基を有する抗体は、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得る。特に、この位置における変異Asn−H56−IleおよびAsn−H56−Trpは、J695とIL−12 p40のアミノ酸残基Asp97およびLys104との間のギャップを満たし、この抗体に一旦結合したIL−12 p40の動きを制限すると予測される。さらに、この位置における変異Asn−H56−SerおよびAsn−H56−Thrは、Ser Oγ(Thr中のOγ1)とArgNεとの間の水素結合の形成によって、再現性のある結合立体配座へとArgH52を事前編成するとさらに予測される。
第4に、上記部位1、部位2、部位3、部位4、部位5および部位6からなる群から選択される結合部位のうち少なくとも2つを有し、さらにCDR H3の位置95(例えば、配列番号1のアミノ酸残基99に対応する。)に、Phe、Tyr、Trp、His、Met、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基を有する抗体は、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得る。特に、この位置における変異His−H95−TyrおよびHis−H95−Trpは、J695とIL−12 p40のアミノ酸残基Glu86との間のギャップを満たし、この抗体に一旦結合したIL−12 p40の動きを制限すると予測される。さらに、この位置における変異His−H95−Tyrは、Tyr OηとGlu86のカルボニル酸素原子との間の水素結合をさらに形成すると予測される。
第5に、上記部位1、部位2、部位3、部位4、部位5および部位6からなる群から選択される結合部位のうち少なくとも2つを有し、さらにCDR L1の位置32(例えば、配列番号2のアミノ酸残基33に対応する。)に、Phe、Tyr、Trp、His、GlnおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基を有する抗体は、J695と比較して、保持されたまたはさらには増強された結合特性を示し得る。特に、この位置における変異Thr−L32−TyrおよびThr−L32−Trpは、J695とIL−12 p40のアミノ酸残基Gly88との間のギャップを満たすと予測される。
したがって、本発明はまた、一態様において、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、配列番号1の可変領域アミノ酸残基33、50、57および99ならびに配列番号2の33のうち1つまたは複数は、異なるアミノ酸残基で独立して置換されている。一実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基33は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Val、Leu、Ile、Pro、Ala、Ser、Thr、Asn、Gln、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基33は、Lysで置換されている。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基50は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Gln、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。なお別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基50は、TyrまたはTrpで置換されている。
別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基57は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Val、Leu、Ile、Pro、Ala、Ser、Thr、Asp、Glu、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基57は、IleまたはTrpで置換されている。なお別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基57は、SerまたはThrで置換されている。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基99は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基99は、TyrまたはTrpで置換されている。さらなる実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基33は、Phe、Tyr、Trp、His、GlnおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている。さらなる実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基33は、TyrまたはTrpで置換されている。
別の態様において、本発明は、競合的結合を受ける、即ち、本明細書中に記載される任意の抗体を競合的に阻害することが可能な抗体を提供する。したがって、別の実施形態において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの結合について、本明細書中に記載される抗体種のいずれかと競合する抗体を含む。
別の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体の活性を変更する方法を提供し、この抗体は、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、この方法は、配列番号1の可変領域アミノ酸残基33、50、57および99ならびに配列番号2の33のうち1つまたは複数を、異なるアミノ酸残基で置換することを含み、それにより、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体の活性を変更する。この方法の一実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基33は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Val、Leu、Ile、Pro、Ala、Ser、Thr、Asn、Gln、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換される。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基33は、Lysで置換される。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基50は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Gln、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換される。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基50は、TyrまたはTrpで置換される。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基57は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、Val、Leu、Ile、Pro、Ala、Ser、Thr、Asp、Glu、AsnおよびGlnからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換される。さらなる実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基57は、IleまたはTrpで置換される。なお別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基57は、SerまたはThrで置換される。なお別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基99は、Phe、Tyr、Trp、His、Met、ArgおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換される。別の実施形態において、配列番号1の可変領域アミノ酸残基99は、TyrまたはTrpで置換される。さらなる実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基33は、Phe、Tyr、Trp、His、GlnおよびLysからなる群から選択されるアミノ酸残基で置換される。なお別の実施形態において、配列番号2の可変領域アミノ酸残基33は、TyrまたはTrpで置換される。
さらなる態様において、本発明は、本明細書中に記載される方法のいずれかに従って生成された抗体を含む、本明細書中に記載される抗体を提供し包含する。例えば、本明細書中に記載される任意の抗体実施形態において、この抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに、1×10−3M−1以下のKoffまたは1×10−10M以下のKdで結合する。さらに、本発明が包含する任意の抗体実施形態において、この抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの生物学的活性を中和する。本発明が包含する抗体の機能的特徴は、以下のセクションV(C)においてさらに論じる。
なおさらなる態様において、本発明の抗体は、当技術分野で既存の、本明細書中で同定されたエピトープに対し生得的に結合する抗体のうちの1つではない。例えば、一実施形態において、本発明の抗体は、米国特許第6,914,128号に記載された抗体ではない、例えば、抗体Y61でも抗体J695でもない(米国特許第6,914,129号(その全内容は、本明細書中で本明細書に組み込む。)に記載される。)。
C.他の抗IL−12抗体のエピトープの決定に基づく抗体
他の抗IL−12抗体のエピトープを、ラット/ヒトIL−12 p40キメラタンパク質(または「キメラ」)アプローチを使用して決定した。特定の位置において組み込まれた特定のラットIL−12 p40アミノ酸残基(複数可)を有する主にヒトのIL−12 p40分子を、発現させ精製した。これらのキメラならびにIL−12対照タンパク質(例えば、ヒトおよびラットのIL−12 p40および/またはp70)の、抗体パネル(例えば、以下にさらに記載される、J695、C8.6.2またはC11.5.14)への結合を、表面プラズモン共鳴結合分析を使用して決定した。さらに、特定の位置において組み込まれた特定のヒトIL−12 p40アミノ酸残基(複数可)を有する主にラットのIL−12 p40キメラを、同様に発現させ、精製し、分析した。
1.ヒト/ラットおよびラット/ヒトIL−12 p40キメラの調製
IL−12 p40キメラ中の変異した特定のアミノ酸残基は、IL−12 p40内に位置するいくつかの異なる部位に見出される。試験したヒト/ラットIL−12 p40キメラを表1に列挙し、ラット/ヒトIL−12 p40キメラを表2に列挙する。
キメラを調製するための発現プラスミドのクローニングおよび構築を、以下のように実施した。ヒトIL−12p40サブユニットをコードするcDNA(InvivoGen、CAから購入、カタログ番号porf−hil12)を、プライマー5’−CAC CAT GGG TCA CCA GCA GTT GGT C−3’(配列番号7)および5’−ACC CTG GAA GTA CAG GTT TTC ACT GCA GGG CAC AGA TGC CCA TTC GC−3’(配列番号8)を使用して、Expand Polymerase Kit(Roche)によってPCR増幅した。得られた1009bpの産物を、Gateway BP反応(Invitrogen)を使用してpENTR/D−TOPO中にクローニングした。部位特異的変異誘発を、テンプレートとしてプラスミドpENTR/D−hIL−12p40を使用し、表2.1に列挙したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、製造業者の指示に従ってQuick−Change XL Site−Directed Mutagenesis Kitを使用して実施した。所望の変異の存在を、DNA配列決定によって確認した。変異誘発後、野生型hIL−12p40および変異体を、Gateway LR反応を使用して哺乳動物発現ベクターpcDNA DEST40中にサブクローニングして、pcDNA DEST40−hIL−12p40およびそのバリアントを作製した。
IL−12p40キメラタンパク質を、HEK293.F細胞における一過性トランスフェクションによって発現させた。HEK293.F細胞を、8%CO2および37℃で、250mLのエルレンマイヤーフラスコ(Corning、NY)中でFreestyle 293発現培地(Invitrogen)中で培養した。各構築物について、30×106細胞を、30mLスケールで100mLのエルレンマイヤーフラスコ中で、293fectinを使用してプラスミドDNA30μgでトランスフェクトした。細胞を、撹拌しながら、加湿8%CO2雰囲気中37℃でインキュベートした。72時間後、細胞を回収し、分泌されたIL−12p40についてウエスタンブロットによって上清を分析した。hIL−12p40含有上清を、以下に記載する引き続く結合アッセイにおいて直接使用した。
2.ヒト/ラットおよびラット/ヒトキメラは、IL−12 p40上の7つのさらなる部位を規定する。
Il−12 p40キメラによって規定され描写された7つのさらなる「部位」を、いくつかのIL−12 p40アミノ酸配列のアラインメントと関連付けて図11中に示し、図6、12および13中に、IL−12 p70(および結合したJ695)の3次元構造と関連させて示す。これらの部位は、以下でより詳細に記載し、以下の表3中にまとめる。
部位7は、ヒトIL−12 p40のアミノ酸残基Tyr16、Asp87およびAsp93を含む。これらの残基は、IL−12 p40のドメイン1上の2つの異なる表面ループ上に位置する(Yoon,C.、S.C.Johnstonら(2000).「Charged residues dominate a unique interlocking topography in the heterodimeric cytokine interleukin−12.」The EMBO Journal 19(14):3530−3521頁)。単独では、J695/IL−12 p70複合体の結晶構造から明らかなように、部位7の残基は、不連続(または立体配座)エピトープを規定する。部位7は、3つの下位部位(sub−Site)(即ち、下位部位7a(Tyr16)、下位部位7b(Asp87)および下位部位7c(Asp93))からなっているとみなすことができる。
部位8は、ヒトIL−12 p40のアミノ酸残基Leu40、Asp41、Gln42、Ser43、Ser44、Glu45、Val46およびLeu47を含む。これらの残基は、IL−12 p40のドメイン1上に表面ループを形成する(Yoon,C.、S.C.Johnstonら(2000).「Charged residues dominate a unique interlocking topography in the heterodimeric cytokine interleukin−12.」The EMBO Journal 19(14):3530−3521頁)。単独では、部位8の残基は、連続(または線状)エピトープを規定する。
部位9は、ヒトIL−12 p40のアミノ酸残基Gly35を含む。この残基は、部位8ループの一方の側に位置する(部位10の反対側、以下を参照のこと。)、IL−12 p40のドメイン1の表面ループ上に位置する(Yoon,C.、S.C.Johnstonら(2000).「Charged residues dominate a unique interlocking topography in the heterodimeric cytokine interleukin−12.」The EMBO Journal 19(14):3530−3521頁)。単独では、部位9の残基は、連続(または線状)エピトープを規定する。
部位10は、ヒトIL−12 p40のアミノ酸残基Gly61を含む。この残基は、部位8ループの一方の側に位置する(部位9の反対側、上を参照のこと。)、IL−12 p40のドメイン1上の表面ループ上に位置する(Yoon,C.、S.C.Johnstonら(2000).「Charged residues dominate a unique interlocking topography in the heterodimeric cytokine interleukin−12.」The EMBO Journal 19(14):3530−3521頁)。単独では、部位10の残基は、連続(または線状)エピトープを規定する。
部位11は、ヒトIL−12 p40のアミノ酸残基Asp97、Gln98、Lys99、Glu100およびPro101を含む。これらの残基は、IL−12 p40のドメイン1上に表面ループを形成する(Yoon,C.、S.C.Johnstonら(2000).「Charged residues dominate a unique interlocking topography in the heterodimeric cytokine interleukin−12.」The EMBO Journal 19(14):3530−3521頁)。単独では、部位11の残基は、連続(または線状)エピトープを規定する。
部位12は、ヒトIL−12 p40のアミノ酸残基Arg157、Val158、Arg159、Gly160、Asp161、Asn162、Lys163およびGlu164を含む。これらの残基は、IL−12 p40のドメイン2上に(無秩序な)表面ループを形成する(Yoon,C.、S.C.Johnstonら(2000).「Charged residues dominate a unique interlocking topography in the heterodimeric cytokine interleukin−12.」The EMBO Journal 19(14):3530−3521頁);このループは、本明細書中に記載されるJ695 Fab/IL−12 p70複合体構造中では秩序化されている。単独では、部位12の残基は、連続(または線状)エピトープを規定する。
種々の抗体によるラット/ヒトIL−12 p40キメラの結合を、表面プラズモン共鳴によって分析した。具体的には、マトリックス上のカルボキシル基を100mM N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および400mM N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)で最初に活性化することによって、遊離のアミノ基を介して抗体をBiacoreチップデキストランマトリックスに共有結合させた。これを、4つの異なるフローセルにわたって完了した。酢酸ナトリウム(pH4.5)中に希釈した各抗体(25μg/mL)約50マイクロリットルを、活性化したバイオセンサにわたって注入し、タンパク質上の遊離アミンを、活性化したカルボキシル基に直接結合させた。典型的には、5000レゾナンスユニットを固定した。未反応のマトリックスEDCエステルを、1Mエタノールアミンの注入によって非活性化した。
IL−12p40上清試料に対するいくつかの異なるモノクローナル抗体のエピトープパターンを確認するために、直接的結合アッセイを実施した。組換えヒトIL−12p40のアリコート(100nM)を、25mL/分の流速で、Biacoreデキストランチップバイオセンサ表面上の共有結合により固定化した抗体にわたって注入した。抗原の注射前および直後に、HBS−EP緩衝液単独を、各フローセルを通じて流した。ベースラインとリガンド注入の完了後約30秒に対応する時点との間のシグナルにおける正味の差異を取得し、最終結合値を示した(約500−2500RU)。応答はレゾナンスユニット(RU)で測定した。標的分子に対する第1のプローブの結合が迅速で強力である場合にのみ、陽性のペアワイズ結合センサグラムと断じた。共有結合により固定化された抗体がカップリングした表面を、10mM HCl(5分の接触時間)を使用して完全に再生させたところ、20サイクルにわたりその完全結合能力を保持した。
ヒト/ラットおよびラット/ヒトIL−12 p40キメラについて表面プラズモン共鳴によって得られた結合データの概要を、以下の表3.1にまとめる。
3.ヒト/ラットIL−12 p40キメラの結合分析によって決定した、7つのさらなるIL−12 p40エピトープの描写および規定
結晶学的に決定されたJ695エピトープ(例えば、セクションII−Vで上記したもの)に加えて、上記キメラおよび表面プラズモン共鳴法を使用して、IL−12 p40の7つのさらなるエピトープを描写し、規定した。キメラおよび表面プラズモン共鳴法を使用して同定したエピトープ1は、結晶学的に決定されたJ695エピトープ内に入るアミノ酸残基を含み、それにより、結晶学的に決定されたJ695エピトープが確認される。抗体/キメラ結合データは、上記表3.1にまとめる。これらのエピトープは、IL−12 p40の表面上の、上記1つまたは複数の抗原性「部位」を含む。これらの部位は、いくつかのIL−12 p40のアミノ酸配列のアラインメントと関連付けて図11中に示され、IL−12 p70(および結合したJ695)の3次元構造と関連付けて図6、12および13中に示される。さらなる6つのエピトープ、即ち、エピトープ2、3.1または3.2、4a、4b、4cおよび5は、図14中に模式的に示される。全部で8つのエピトープ、即ち、エピトープ1−5(即ち、エピトープ1、2、3.1または3.2、4a、4b、4cおよび5)は、表4にまとめ、以下で詳細に記載される。
エピトープ1.エピトープ1においてIL−12 p40に結合する抗体には、J695(PCT公開WO0056772 A1に記載されている。)が含まれる。部位7a(Tyr16)および部位7b(Asp87)における変異は、結合を除去する;部位7c(Asp93)における変異は、軽微な影響を有する。この生化学的に規定されたエピトープは、結晶学的に観察されたエピトープと一致している。
エピトープ2.エピトープ2においてIL−12 p40に結合する抗体には、ヒト化モノクローナル抗体8E1.1が含まれる。抗体8E11.1の説明は、少なくとも米国特許第7,700,739号において見出すことができ、この文献の全内容、特に抗体8E11.1の説明を本明細書に組み込む。部位7a(Tyr16)、7b(Asp87)および11(Asp97、Gln98、Lys99、Glu100およびPro101)における変異は、結合に対して強い影響を有し、部位7c(Asp93)における変異は、軽微な影響を有する。エピトープ2は、エピトープ1と明らかに関連しているが、部位11における変異の、J695の結合ではなく8E1.1の結合に対する強い影響が、これら2つのエピトープを識別している。
エピトープ3.エピトープ3においてIL−12 p40に結合する抗体には、ヒト化モノクローナル抗体1A6.1が含まれる。抗体1A6.1の説明は、少なくとも米国特許第7,700,739号において見出すことができ、この文献の全内容、特に抗体1A6.1の説明を本明細書に組み込む。部位9(Gly35)および部位10(Gly61)における変異は一緒になって、結合に対して強い影響を有した。これら2つの残基は、一緒にしか変異させていない。単独では、エピトープ3が1つのグリシンによって規定されるか、もう一方のグリシンによって規定されるか、両方のグリシンによって規定されるかを決定することは不可能である。しかし、部位8(Leu40、Asp41、Gln42、Ser43、Ser44、Glu45、Val46およびLeu47)における変異の影響の完全な欠如を、IL−12 p40の3次元構造の知識と合わせると、エピトープ3が、最小サイズの抗体結合部位を考慮して部位9(Davies,D.R.、E.A.Padlanら、1990「Antibody−antigen complexes.」Annu Rev Biochem 59:439−73頁;Davies,D.R.およびG.H.Cohen 1996「Interactions of protein antigens with antibodies.」Proc Natl Acad Sci USA 93(1):7−12頁)、部位8に対して遠位の、部位9(Gly35)を囲む他の残基(即ち、エピトープ3.1)への結合、または部位10(Gly61)および部位8に対して遠位の、部位10を囲む他の残基(即ち、エピトープ3.2)への結合のいずれかによって規定されることが示されるが、両方ではない。真のエピトープ3は、3.1および3.2の一方またはもう一方であるが、両方ではない。
エピトープ4.エピトープ4においてIL−12 p40に結合する抗体には、参照マウス抗体C8.6.2(D’Andrea,A.、M.Rengarajuら(1992).「Production of natural killer cell stimulatory factor(interleukin 12)by peripheral blood mononuclear cells.」J.Exp.Med.176:1387−1398頁)および3つのヒト化モノクローナル抗体、即ち、3G7.2、1D4.1および1D4.7が含まれる。抗体3G7.2、1D4.1および1D4.7の説明は、少なくとも米国特許第7,700,739号において見出すことができ、この文献の全内容、特に抗体3G7.2、1D4.1および1D4.7の説明を本明細書に組み込む。部位8(Leu40、Asp41、Gln42、Ser43、Ser44、Glu45、Val46およびLeu47)における変異は、結合に強く影響を与え、部位9(Gly35)または部位10(Gly61)のいずれかにおける変異は、弱いまたは強い影響を有した。先と同様にIL−12 p40の3次元構造の知識を利用すると、部位8は部位9および部位10と隣接しているので、任意のこれらの抗体の結合は、部位8および9、部位8および10、または部位8、9および10に対するものであり得る。したがって、エピトープ4は実際に、関連する部分的に重複するエピトープのファミリー、即ち、エピトープ4a(部位8および9);エピトープ4b(部位8および10);およびエピトープ4c(部位8、9および10)を規定している。抗体C8.6.2、3G7.2、1D4.1および1D4.7は、エピトープ4a、4bおよび4cのリストから取った任意のエピトープにそれぞれ結合し得る;これらの抗体は、同じエピトープへの結合に拘束されない。
エピトープ5.エピトープ5においてIL−12 p40に結合する抗体には、参照マウス抗体C11.5.14(D’Andrea,A.、M.Rengarajuら(1992).「Production of natural killer cell stimulatory factor(interleukin 12)by peripheral blood mononuclear cells.」J.Exp.Med.176:1387−1398頁)が含まれる。部位12(Arg157、Val158、Arg159、Gly160、Asp161、Asn162、Lys163およびGlu164)における変異は、C11.5.14の結合を除去し、部位11における変異は弱い影響を有した(Asp97、Gln98、Lys99、Glu100およびPro101)。エピトープ5を規定するこれらのキメラ由来の結合結果は、チオレドキシン/フラジェリン融合タンパク質上での「FLITRX」ペプチドディスプレイによって決定された、以前に決定されたC11.5.14エピトープと一致している(Lu,Z.、K.S.Murrayら(1995).「Expression of thioredoxin random peptide libraries on the Escherichia coli cell surface as functional fusions to flagellin:a system designed for exploring protein−protein interactions.」Biotechnology(NY)13(4):366−72頁)。
したがって、さらなる態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は立体配座エピトープに結合する。一実施形態において、この立体配座エピトープは、配列番号3のアミノ酸配列のアミノ酸残基16、87および93からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む(例えば、部位7a−cを含むエピトープ1)。別の実施形態において、この抗体は、アミノ酸残基16(即ち、部位7a)に結合する。特定の実施形態において、エピトープ(例えば、立体配座エピトープ)を結合する本発明の抗体について言及する場合、本発明は、抗体について、エピトープを構成する特定の残基だけに結合し、抗原(例えば、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニット)の線状アミノ酸配列中の他の残基には結合しないことを理解すべきである。
別の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸配列のアミノ酸残基16、87および93からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位7a−cを含むエピトープ1)およびUS2009/0202549(その全内容は、本明細書中で参照により本明細書に組み込む。)に記載される任意のエピトープに結合する。
さらなる態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基97、98、99、100および101からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位7a、7bおよび11を含むエピトープ2)に結合する。別の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基16、87、93、97、98、99、100および101からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位7a、7bおよび11および7cを含むエピトープ2)に結合する。
さらなる態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基35および36からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位9または10を含むエピトープ3)に結合する。一実施形態において、この抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基35またはアミノ酸残基36を含む立体配座エピトープ(例えば、部位9または10を含むエピトープ3)に結合する。関連の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基93を含み、配列番号3のアミノ酸残基35またはアミノ酸残基36をさらに含む立体配座エピトープ(例えば、部位9または10、および7cを含むエピトープ3)に結合する。
さらなる態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基40−47および35からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位8および9を含むエピトープ4a)に結合する。関連の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基40−47および61からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位8および10を含むエピトープ4b)に結合する。さらなる関連の態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基40−47、35および62からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位8、9および10を含むエピトープ4c)に結合する。
さらなる態様において、本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体を提供し、この抗体は、配列番号3のアミノ酸残基157−164からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位12を含むエピトープ5)に結合する。
一実施形態において、この抗体は、以下のうち1つまたは複数には結合しない:(a)配列番号3のアミノ酸配列の残基16、87および97−101からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位7a、7bおよび11を含むエピトープ2);(b)配列番号3のアミノ酸配列の残基35および61からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位9または10を含むエピトープ3);(c)配列番号3のアミノ酸配列の残基40−47、35および61からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む立体配座エピトープ(例えば、部位8、9および/または10を含むエピトープ4a−c);および(c)配列番号3のアミノ酸配列の残基157−164からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む連続エピトープ(例えば、部位12を含むエピトープ5)。
4.J695 Fab/IL−12 p70結晶構造の知識と組み合わせた、ヒト/ラットIL−12 p40キメラの結合分析によって決定したさらなるIL−12 p40結合部位の説明。
さらなる結合部位は、J695 Fab/IL−12 p70結晶構造によって提供される、これらの部位の3次元配置の知識と組み合わせて、上記のようにヒト/ラットIL−12 p40キメラを用いて得られた表面プラズモン共鳴結合データから決定できる。これらのさらなる抗体結合部位を図15中に示す。
例えば、エピトープ3.1および3.2を参照して上で論じたように、ヒト化モノクローナル抗体1A6.1は、部位9(Gly35)または部位10(Gly61)のいずれかに結合するが、両方に同時には結合しない。これは、同時結合は、抗体結合部位の公知のサイズおよび形状を考慮すると、部位8(Leu40、Asp41、Gln42、Ser43、Ser44、Glu45、Val46およびLeu47)における変異の、結合に対する影響の完全な欠如と一致しないからである(Davies,D.R.、E.A.Padlanら(1990).「Antibody−antigen complexes.」Annu Rev Biochem 59:439−73頁;Davies,D.R.およびG.H.Cohen(1996).「Interactions of protein antigens with antibodies.」Proc Natl Acad Sci USA 93(1):7−12頁)。
したがって、抗体1A6.1は、部位8に対して遠位の、部位9(Gly35)を囲む他の残基(即ち、エピトープ3.1)に加えて、部位9に結合する;または抗体1A6.1は、部位8に対して遠位の、部位10(Gly61)を囲む他の残基(即ち、エピトープ3.2)に加えて、部位10に結合する。IL−12 p40の表面露出したループ上に殆どが位置するこれらの「他の残基」は、以下に規定される:
部位13(部位9の近傍に位置するが部位8に対して遠位である。)は、IL−12 p40のアミノ酸残基Pro31、Glu32、Glu33、Asp34、Ile36、Thr37、Trp38およびThr39を含む。
部位14(部位9の近傍に位置するが部位8に対して遠位である。)は、IL−12 p40のアミノ酸残基Gly48、Ser49、Gly50、Lys51、Thr52、Leu53およびThr54を含む。
部位15(部位9の近傍に位置するが部位8に対して遠位である。)は、IL−12 p40のアミノ酸残基Gly64、Gln65、Thr67、Lys68、His69、Lys70、Gly71、Gly72、Glu73、Val74、Leu75、Ser76およびHis77を含む。
部位16(部位10の近傍に位置するが部位8に対して遠位である。)は、IL−12 p40のアミノ酸残基Ile55、Gln56、Val57、Ly58、Glu59、Phe60、Asp62、Ala63およびTyr66を含む。
部位17(部位10の近傍に位置するが部位8に対して遠位である。)は、IL−12 p40のアミノ酸残基Thr124、Thr125、Ile126、Ser127、Thr128、Asp129、Leu130およびThr131を含む。
部位18(部位10の近傍に位置するが部位8に対して遠位である。)は、IL−12 p40のアミノ酸残基His194、Lys195、Leu196およびLys197を含む。
したがって、本発明は、部位9に結合するが部位8には結合せず、部位13、部位14および部位15からなる群から選択される1つまたは複数の部位にさらに結合する抗体のクラスもまた提供する。さらに、本発明は、部位10に結合するが部位8には結合せず、部位16、部位17および部位18からなる群から選択される1つまたは複数の部位にさらに結合する抗体のクラスを提供する。さらに、これらの部位9、10および13−17の3次元配置に起因して、本発明は、部位9に結合するが部位8には結合せず、部位13、部位14、部位15、部位16、部位17および部位18からなる群から選択される1つまたは複数の部位にさらに結合する抗体もまた提供する。本発明はさらに、部位10に結合するが部位8には結合せず、部位13、部位14、部位15、部位16、部位17および部位18からなる群から選択される1つまたは複数の部位にさらに結合する抗体を提供する。
D.操作および改変された抗体
本発明の方法に従って調製される抗体のVH配列および/またはVL配列は、改変された抗体を操作するための出発物質として使用され得、この改変された抗体は、出発抗体から変更された特性を有し得る。抗体は、元の可変領域(即ち、VHおよび/またはVL)の一方または両方の内部、例えば、1つまたは複数のCDR領域内および/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を改変することによって、操作され得る。それに加えてまたはその代わりに、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能(複数可)を変更するために、定常領域(複数可)内の残基を改変することによって操作され得る。
実施され得る可変領域操作の1つの型は、CDR移植である。抗体は、6つの重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を主に介して、標的抗原と相互作用する。この理由のために、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも、個々の抗体間でより多様である。CDR配列は、殆どの抗体−抗原相互作用を担っているので、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植された特定の天然に存在する抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann,L.ら(1998)Nature 332:323−327頁;Jones,P.ら(1986)Nature 321:522−525頁;Queen,C.ら(1989)Proc.Natl.Acad.See.U.S.A.86:10029−10033頁;Winterに対する米国特許第5,225,539号、およびQueenらに対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照のこと。)。
抗体のフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公的なDNAデータベースまたは公開された参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(mrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseにおいてインターネット上で利用可能)ならびにKabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242;Tomlinson,I.M.ら(1992)「The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops」J.Mol.Biol.227:776−798頁;およびCox,J.P.L.ら(1994)「A Directory of Human Germ−line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage」Eur.J.Immunol.24:827−836頁(各文献の内容は、本明細書中で参照により本明細書に明示的に組み込む。)中に見出すことができる。別の例として、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、Genbankデータベース中に見出すことができる。
一実施形態において、IL−12/IL−23のp40サブユニットに結合する本発明の抗体は、VH3ファミリーの生殖系列配列のメンバー由来の重鎖可変領域およびVλ1ファミリーの生殖系列配列のメンバー由来の軽鎖可変領域を含む。さらに、VH3ファミリーの重鎖配列の任意のメンバーは、Vλ1ファミリーの軽鎖配列の任意のメンバーと組み合わされ得ることが、当業者に明らかである。
抗体のタンパク質配列は、当業者に周知であるGapped BLAST(Altschulら(1997)Nucleic Acids Research 25:3389−3402頁)と呼ばれる配列類似性検索方法の1つを使用して、蓄積されたタンパク質配列データベースに対して比較される。BLASTは、抗体配列とデータベース配列との間の統計的に有意なアラインメントが、アラインされたワードの高スコアセグメント対(high−scoring segment pairs(HSP))を含む可能性が高いという点で、ヒューリスティックなアルゴリズムである。そのスコアが伸長でもトリミングでも改善できないセグメント対を、ヒットと呼ぶ。簡潔に述べると、VBASE起源(vbase.mrccpe.cam.ac.uk/vbase1/list2.php)のヌクレオチド配列が翻訳され、FR1フレームワーク領域からFR3フレームワーク領域までの間でありそれらのフレームワーク領域を含む領域が保持される。データベース配列は、98残基の平均長さを有する。タンパク質の全長にわたって正確に一致する重複配列が除去される。デフォルトの標準的なパラメータを用いてプログラムblastpを使用する、タンパク質に関するBLAST検索は、低い複雑性のフィルター(これはオフにされる。)を除外し、BLOSUM62の置換マトリックス、上位5つのヒットについてのフィルターが、配列一致を生じる。ヌクレオチド配列は、6つ全てのフレームで翻訳され、データベース配列の一致するセグメント中に終止コドンを有さないフレームが、潜在的なヒットとみなされる。これは次に、6つ全てのフレームで抗体配列を翻訳し、それらの翻訳物を、6つ全てのフレームで動的に翻訳されたVBASEヌクレオチド配列と比較するBLASTプログラムtblastxを使用して確認される。他のヒト生殖系列配列データベース、例えば、IMGT(http://imgt.cines.fr)から利用可能なデータベースが、上記のようなVBASEと同様に検索できる。
同一性は、配列の全長にわたる、抗体配列とタンパク質データベースとの間の正確なアミノ酸一致である。ポジティブ(同一性+置換一致)は同一ではないが、BLOSUM62置換マトリックスによって導かれるアミノ酸置換である。抗体配列が、同じ同一性で2つのデータベース配列を一致させる場合、最もポジティブなヒットは、一致する配列ヒットで決定される。
同定されたVHのCDR1、CDR2およびCDR3の配列、ならびにVLのCDR1、CDR2およびCDR3の配列が、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子中に見出される配列と同一の配列を有するフレームワーク領域に移植され得る、またはCDR配列が、生殖系列配列と比較して1つまたは複数の変異を含むフレームワーク領域に移植され得る。例えば、ある場合には、抗体の抗原結合能を保持または増強するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出されている(例えば、Queenらに対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照のこと。)。
別の型の可変領域改変は、VHならびに/またはVLのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それにより、目的の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善することである。部位特異的変異誘発またはPCR媒介変異誘発が、変異(複数可)を導入するために実施され得、抗体の結合または目的の他の機能的特性に対する影響が、当技術分野で公知のインビトロまたはインビボのアッセイで評価できる。例えば、本発明の抗体は、ライブラリーを創出するために変異され得、このライブラリーは次に、IL−12/IL−23のp40サブユニットへの結合についてスクリーニングされ得る。好ましくは、保存的改変(上で論じた。)が導入される。変異は、アミノ酸の置換、付加または欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の、1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下または5つ以下の残基が変更される。
別の型のフレームワーク改変は、フレームワーク領域内、またはさらには1つまたは複数のCDR領域内の、1つまたは複数の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去し、それにより、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。このアプローチは、「脱免疫化(deimmunization)」とも呼ばれ、Carrらによる米国特許出願公開第第20030153043号中にさらに詳細に記載されている。
フレームワーク領域内またはCDR領域内に形成された改変に加えてまたは代替的に、本発明の抗体は、典型的には抗体の1つまたは複数の機能的特性(例えば、血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合および/または抗原依存的細胞傷害)を変更するために、Fc領域内に改変を含むように操作され得る。さらに、本発明の抗体は、抗体の1つまたは複数の機能的特性をやはり変更するために、化学的に改変され得る(例えば、1つまたは複数の化学部分が、抗体に結合され得る。)またはそのグリコシル化を変更するために改変され得る。これらの実施形態のそれぞれは、以下にさらに詳細に記載される。Fc領域中の残基の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。
一実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更されるように、例えば増加または減少するように、改変される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号中にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリを促進するため、または抗体の安定性を増加もしくは減少させるために、変更される。
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるために変異される。より具体的には、1つまたは複数のアミノ酸変異が、Fcヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン界面領域中に導入され、その結果、この抗体は、ネイティブのFcヒンジドメインのブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合と比較して損なわれたSpA結合を有する。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
別の実施形態において、この抗体は、その生物学的半減期を増加させるために改変される。種々のアプローチが可能である。例えば、以下の変異のうち1つまたは複数が、Wardに対する米国特許第6,277,375号に記載されるように導入され得る:T252L、T254S、T256F。その代わりに、生物学的半減期を増加させるために、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号に記載されるように、抗体は、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取られたサルベージ(salvage)レセプター結合エピトープを含むように、CH1領域またはCL領域内で変更され得る。これらの戦略は、IL−12/IL−23のp40サブユニットに対する抗体の結合が損なわれない限り、有効である。
なお他の実施形態において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能(複数可)を変更するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによって変更される。例えば、抗体が、エフェクターリガンドに対する変更された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能を保持するように、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基で置き換えられ得る。親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fcレセプターまたは補体のC1成分であり得る。このアプローチは、共にWinterらによる米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号中にさらに詳細に記載されている。
別の例において、抗体が、変更されたC1q結合および/または低下もしくは破壊された補体依存性細胞傷害(CDC)を有するように、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基で置き換えられ得る。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号中にさらに詳細に記載されている。
別の例において、アミノ酸位置231および239内の1つまたは複数のアミノ酸残基が変更され、それにより、抗体が補体を結合する能力を変更する。このアプローチは、BodmerらによるPCT公開WO 94/29351中にさらに記載されている。
なお別の例において、Fc領域は、以下の位置における1つまたは複数のアミノ酸を改変することによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増加させるためおよび/またはFcγレセプターに対する抗体の親和性を増加させるために、改変される:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439。このアプローチは、PrestaによるPCT公開WO 00/42072中にさらに記載されている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、改善された結合を有するバリアントが記載されている(Shields,R.L.ら(2001)J.Biol.Chem.276:6591−6604頁を参照のこと。)。位置256、290、298、333、334および339における特定の変異が、FcγRIIIに対する結合を改善することが示された。さらに、以下の組み合わせ変異体が、FcγRIII結合を改善することが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334A。
なお別の実施形態において、本発明の抗体のC末端は、PCT国際出願PCT/US08/73569(PCT公開第WO 2009/026274号)(これは、その全体を本明細書に参照により組み込む。)に記載されるように、システイン残基の導入によって改変される。かかる改変には、全長重鎖配列のC末端またはその近傍にある既存のアミノ酸残基の置き換え、ならびに全長重鎖配列のC末端への、システイン含有伸長の導入が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、システイン含有伸長は、配列アラニン−アラニン−システイン(N末端からC末端へ)を含む。
好ましい実施形態において、かかるC末端システイン改変の存在は、パートナー分子(例えば、治療剤またはマーカー分子)のコンジュゲート化のための位置を提供する。特に、C末端システイン改変に起因する反応性チオール基の存在は、以下に詳細に記載されるジスルフィドリンカーを使用して、パートナー分子をコンジュゲート化するために使用され得る。この様式におけるパートナー分子への抗体のコンジュゲート化は、特定の結合の部位に対する制御の増加を可能にする。さらに、C末端またはその近傍において結合の部位を導入することによって、コンジュゲート化が、抗体の機能的特性の妨害を低下または排除し、コンジュゲート調製物の単純化された分析および品質制御を可能にするように、コンジュゲート化が最適化され得る。
なお別の実施形態において、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、非グリコシル化(aglycoslated)抗体が作製され得る(即ち、抗体はグリコシル化を欠く。)。グリコシル化は、例えば抗原に対する抗体の親和性を増加させるために、変更され得る。かかる炭水化物改変は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位を変更することによって、達成され得る。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除を生じる1つまたは複数のアミノ酸置換がなされ、それにより、その部位でのグリコシル化を排除できる。かかるグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。かかるアプローチは、Coらに対する米国特許第5,714,350号および同第6,350,861号においてさらに詳細に記載されている。グリコシル化を変更するためのさらなるアプローチは、Hanaiらに対する米国特許第7,214,775号、Prestaに対する米国特許第6,737,056号、Prestaに対する米国出願公開第20070020260号、Dickeyらに対するPCT公開第WO/2007/084926号、Zhuらに対するPCT公開第WO/2006/089294号およびRavetchらに対するPCT公開第WO/2007/055916号(これらはそれぞれ、その全体を参照により本明細書に明確に組み込む。)中にさらに詳細に記載されている。
それに加えてまたはその代わりに、変更された型のグリコシル化を有する抗体、例えば、低下した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または分岐GlcNac構造が増加した抗体が作製され得る。かかる変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能を増加させることが実証されている。かかる炭水化物改変は、例えば、変更されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現させることによって、達成され得る。変更されたグリコシル化機構を有する細胞は、当技術分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現させて、それにより変更されたグリコシル化を有する抗体を産生するための宿主細胞として使用され得る。例えば、細胞株Ms704、Ms705およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠き、その結果、Ms704、Ms705およびMs709細胞株において発現された抗体は、それらの炭水化物上のフコースを欠いている。Ms704、Ms705およびMs709のFUT8−/−細胞株は、2つの置換ベクターを使用した、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的化された破壊によって作製されたものである(Yamaneらによる米国特許公開第20040110704号およびYamane−Ohnukiら(2004)Biotechnol Bioeng 87:614−22頁を参照のこと。)。別の例として、HanaiらによるEP 1,176,195は、機能的に破壊されたFUT8遺伝子(これはフコシルトランスフェラーゼをコードする。)を有しており、その結果、かかる細胞株において発現された抗体が、α1,6結合関連の酵素を低下または排除することによって低フコシル化を示す、細胞株を記載している。Hanaiらはまた、抗体のFc領域に結合するN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素活性が低い、または酵素活性を有さない細胞株(例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662))もまた記載している。PrestaによるPCT公開第WO 03/035835号は、Asn(297)連結した炭水化物にフコースを結合させる能力が低下しており、その宿主細胞において発現された抗体の低フコシル化もまた生じる、バリアントCHO細胞株Lec13細胞を記載している(Shields,R.L.ら(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740頁もまた参照のこと。)。UmanaらによるPCT公開第WO 99/54342号は、糖タンパク質改変グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作され、その結果、操作された細胞株において発現された抗体が、抗体のADCC活性の増加を生じる分岐GlcNac構造の増加を示す、細胞株を記載している(Umanaら(1999)Nat.Biotech.17:176−180頁もまた参照のこと。)。その代わりに、抗体のフコース残基は、フコシダーゼ酵素を使用して切断され得る。例えば、フコシダーゼα−Lフコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino,A.L.ら(1975)Biochem.14:5516−23頁)。
それに加えてまたはその代わりに、変更された型のグリコシル化を有する抗体が作製され得、このときの変更は、抗体のシアリル化(sialyation)のレベルに関連する。かかる変更は、Dickeyらに対するPCT公開第WO/2007/084926号およびRavetchらに対するPCT公開第WO/2007/055916号(これらは共に、その全体を参照により本明細書に明確に組み込む。)中に記載されている。例えば、シアリダーゼ(例えば、アルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafacens)のシアリダーゼ)を用いた酵素反応を使用できる。かかる反応の条件は、米国特許第5,831,077号(これは、その全体を参照により本明細書に組み込む。)中に一般に記載されている。適切な酵素の他の非限定的な例は、それぞれSchloemerら、J.Virology、15(4)、882−893頁(1975)およびLeibigerら、Biochem J.、338、529−538頁(1999)に記載されている、ノイラミニダーゼおよびN−グリコシダーゼFである。脱シアル化抗体は、親和性クロマトグラフィーを使用することによってさらに精製され得る。その代わりに、例えば、シアリルトランスフェラーゼ酵素を使用することによって、シアリル化(sialyation)レベルを増加させる方法を使用できる。かかる反応の条件は、Bassetら、Scandinavian Journal of Immunology、51(3)、307−311頁(2000)中に一般に記載されている。
本明細書において、本発明が企図する抗体の別の改変は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるために、ペグ化され得る。抗体をペグ化するために、抗体またはその断片は典型的に、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に結合する条件下で、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)と反応させられる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施される。本明細書中で使用する場合、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態のPEG(例えば、モノ(C1−C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミド)を包含する意図である。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は、非グリコシル抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は、当技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用可能である。例えば、NishimuraらによるEP 0 154 316およびIshikawaらによるEP 0 401 384を参照のこと。このように、本明細書中に記載されるペグ化方法は、以下に記載される本発明のペプチド性分子にも適用される。
E.抗体断片および抗体模倣物
本発明は、伝統的な抗体に限定されず、抗体断片および抗体模倣物の使用を介して実施され得る。以下に詳述するように、広範な種々の抗体断片および抗体模倣物技術が現在開発されており、当技術分野で広く知られている。多数のこれらの技術(例えば、ドメイン抗体、ナノボディおよびユニボディ)は、伝統的な抗体構造の断片または伝統的な抗体構造に対する他の改変を使用しているが、伝統的な抗体の結合を模倣しつつ、別の機構から生成されるおよび別の機構を介して機能する結合構造を使用する代替的技術(例えば、アドネクチン、アフィボディ、DARPin、アンチカリン、アビマー、ヴァーサボディ、アプタマーおよびSMIPS)もまた存在する。これらの代替的構造のいくつかは、GillおよびDamle(2006)17:653−658頁中で概説されている。
ドメイン抗体(dAb)は、ヒト抗体の重鎖(VH)または軽鎖(VL)のいずれかの可変領域に対応する、抗体の最小の機能的結合単位である。ドメイン抗体は、約13kDaの分子量を有している。Domantisは、完全ヒトVHおよびVL dAbの、一連の大きく高度に機能的なライブラリー(各ライブラリー中に100億より多い異なる配列)を開発し、治療標的に対し特異的なdAbを選択するためにこれらのライブラリーを使用している。多くの従来の抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母および哺乳動物細胞の系において良好に発現される。ドメイン抗体およびその製造方法のさらなる詳細は、米国特許第6,291,158号;同第6,582,915号;同第6,593,081号;同第6,172,197号;同第6,696,245号;米国公開第2004/0110941号;欧州特許出願1433846号ならびに欧州特許第0368684号および同第0616640号;WO05/035572、WO04/101790、WO04/081026、WO04/058821、WO04/003019およびWO03/002609(これらはそれぞれ、その全体を明細書中で参照により本明細書に組み込む。)を参照して得ることができる。
ナノボディは、独自の構造および天然に存在する重鎖抗体の機能的特性を含む、抗体由来の治療タンパク質である。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。重要なことには、クローニングおよび単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能を保有する、完全に安定なポリペプチドである。ナノボディは、ヒト抗体のVHドメインとの高い相同性を有し、活性の喪失なしにさらにヒト化され得る。重要なことには、ナノボディは、低い免疫原性能を有しており、これは、ナノボディリード化合物を用いた霊長類研究において確認されている。
ナノボディは、従来の抗体の利点を、小分子薬物の重要な特徴と組み合わせている。従来の抗体と同様に、ナノボディは、高い標的特異性、その標的に対する高い親和性および低い固有の毒性を示す。しかし、小分子薬物同様、ナノボディは酵素を阻害でき、レセプター間隙に容易に接近できる。さらに、ナノボディは、非常に安定であり、注射以外の手段によって投与でき(例えば、WO 04/041867(その全体を明細書中で参照により本明細書に組み込む。)を参照のこと。)、製造が容易である。ナノボディの他の利点には、サイズが小さいことの結果として珍しいまたは隠れたエピトープを認識すること、それらの独自の3次元的な薬物形式の柔軟性に起因する高い親和性および選択性で、タンパク質標的の空洞または活性部位に結合すること、半減期ならびに薬物発見の容易さおよび速度を調整することが含まれる。
ナノボディは、単一の遺伝子によってコードされ、ほぼ全ての原核生物宿主および真核生物宿主、例えば、E.コリ(E.coli)(例えば、米国特許第6,765,087号(その全体を明細書中で参照により本明細書に組み込む。)を参照のこと。)、カビ(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)またはトリコデルマ(Trichoderma))および酵母(例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)またはピキア(Pichia))(例えば、米国特許第6,838,254号(その全体を本参照により本明細書に組み込む。)を参照のこと。)中で効率的に産生される。産生プロセスは拡大縮小が可能であり、複数キログラムの量のナノボディが産生されている。ナノボディは、従来の抗体と比較して優れた安定性を示すので、長い保存可能期間の、直ぐに使用できる溶液として製剤化され得る。
Nanoclone法(例えば、WO 06/079372(その全体を参照により本明細書に組み込む。)を参照のこと。)は、B細胞の自動化ハイスループット(high−throughout)選択に基づいて、所望の標的に対するナノボディを生成するための独占的な方法であり、本発明に関して使用され得る。
ユニボディは、別の抗体断片技術であるが、この技術は、IgG4抗体のヒンジ領域の除去に基づいている。ヒンジ領域の欠失は、伝統的なIgG4抗体の本質的に半分のサイズであり、IgG4抗体の二価結合領域ではなく一価結合領域を有する分子を生じる。IgG4抗体は不活性であり、したがって、免疫系と相互作用しないことも充分に知られており、このことは、免疫応答が望まれない疾患の治療に有利であり得、この利点はユニボディに引き継がれている。例えば、ユニボディは、それらが結合した細胞を阻害または沈黙させるように機能し得るが、殺すことはない。さらに、癌細胞に結合するユニボディは、癌細胞を刺激して増殖させることはない。さらに、ユニボディは伝統的なIgG4抗体のサイズの約半分なので、潜在的に有利な有効性で、より大きい固形腫瘍に対するより良好な分布を示し得る。ユニボディは、IgG4抗体全体と同様の速度で身体から除去され、それらの抗原に対して、抗体全体と類似の親和性で結合可能である。ユニボディのさらなる詳細は、特許出願WO2007/059782(その全体を参照により本明細書に組み込む。)を参照して得ることができる。
アドネクチン分子は、フィブロネクチンタンパク質の1つまたは複数のドメインに由来する操作された結合タンパク質である。フィブロネクチンは、ヒト身体中に天然に存在している。フィブロネクチンは細胞外マトリックス中に、不溶性糖タンパク質ダイマーとして存在しており、リンカータンパク質としても機能する。フィブロネクチンはまた、ジスルフィド結合したダイマーとして、血漿中で可溶性形態で存在する。フィブロネクチンの血漿形態は、肝臓細胞(肝細胞)によって合成され、ECM形態は、軟骨細胞、マクロファージ、内皮細胞、線維芽細胞および上皮のいくつかの細胞(Ward M.およびMarcey,D.、callutheran.edu/Academic_Programs/Departments/BioDev/omm/fibro/fibro.htmを参照のこと。)によって生成される。以前に言及されたように、フィブロネクチンは、細胞接着分子として天然に機能し得、または細胞外マトリックス中で接触することによって細胞の相互作用を媒介し得る。典型的には、フィブロネクチンは、3つの異なるタンパク質モジュール(I型、II型およびIII型のモジュール)から形成されている。フィブロネクチンの機能の構造の概説については、PankovおよびYamada(2002)J Cell Sci.;115(Pt20):3861−3頁、HohenesterおよびEngel(2002)21:115−128頁、ならびにLucenaら(2007)Invest Clin.48:249−262頁を参照のこと。
好ましい実施形態において、アドネクチン分子は、2つのβシート間に分布した複数のβストランドから構成されるネイティブタンパク質を変更することによって、フィブロネクチンのIII型ドメインから誘導される。由来する組織に依存して、フィブロネクチン(fibronecting)は、例えば1Fn3、2Fn3、3Fn3などと称され得る複数のIII型ドメインを含み得る。10Fn3ドメインは、インテグリン結合モチーフを含み、βストランドを接続する3つのループをさらに含む。これらのループは、IgG重鎖の抗原結合ループに対応すると考えられ得、目的の標的(例えば、IL−12/IL−23のp40サブユニット)に特異的に結合するように、以下に論じる方法によって変更され得る。好ましくは、本発明の目的のために有用なフィブロネクチンのIII型ドメインは、アクセッションコード:1ttgを有するProtein Data Bank(PDB、rcsb.org/pdb/home/home.do)からアクセスできるフィブロネクチンのIII型分子の構造をコードする配列に対し、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を示す配列である。アドネクチン分子はまた、単純なモノマー10Fn3構造ではなく、10Fn3関連分子のポリマーに由来し得る。
ネイティブの10Fn3ドメインは典型的にインテグリンに結合するが、アドネクチン分子になるように適合された10Fn3タンパク質は、目的の抗原、例えば、IL−12/IL−23のp40サブユニットに結合するように変更されている。一実施形態において、10Fn3分子に対する変更は、βストランドに対する少なくとも1つの変異を含んでいる。好ましい実施形態において、10Fn3分子のβストランドを接続するループ領域は、IL−12/IL−23のp40サブユニットに結合するように変更されている。
10Fn3における変更は、当技術分野で公知の任意の方法によってなされ得、この方法には、エラープローンPCR、部位特異的変異誘発、DNAシャッフリングまたは本明細書中で言及している他の型の組換え変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。1つの例において、10Fn3配列をコードするDNAのバリアントは、インビトロで直接的に合成され得、後にインビトロまたはインビボで転写および翻訳され得る。その代わりに、天然の10Fn3配列は、標準的な方法を使用してゲノムから単離またはクローニングされ得(例えば、米国特許出願第20070082365号のように実施される。)、次いで、当技術分野で公知の変異誘発法を使用して変異され得る。
一実施形態において、標的タンパク質(例えば、IL−12/IL−23のp40サブユニット)は、固体支持体(例えば、カラム樹脂またはマイクロタイタープレート中のウェル)上に固定化され得る。標的は次いで、潜在的な結合タンパク質のライブラリーと接触される。このライブラリーは、10Fn3クローン、または10Fn3配列の変異誘発/ランダム化もしくは10Fn3ループ領域(βストランドではない。)の変異誘発/ランダム化によって野生型10Fn3から誘導されたアドネクチン分子を含み得る。好ましい実施形態において、ライブラリーは、Szostakら、米国特許出願第09/007,005号および同第09/247,190号;Szostakら、WO989/31700;ならびにRobertsおよびSzostak(1997)94:12297−12302頁に記載された技術によって生成されたRNA−タンパク質融合ライブラリーであり得る。ライブラリーは、DNA−タンパク質ライブラリー(例えば、Lohse、米国特許出願第60/110,549号、米国特許出願第09/459,190号およびWO 00/32823に記載されている。)であってもよい。融合ライブラリーは次いで、固定化した標的(例えば、IL−12/IL−23のp40サブユニット)と共にインキュベートされ、固体支持体が洗浄されて、非特異的結合部分が除去される。次いで、密な結合物がストリンジェントな条件下で溶出され、遺伝子情報を増幅するために、またはこのプロセス(さらなる変異誘発ありまたはなし)を反復するために結合分子の新たなライブラリーを創出するために、PCRが使用される。選択/変異誘発プロセスは、標的に対する充分な親和性を有する結合物が得られるまで、反復され得る。本発明で使用するためのアドネクチン分子は、Adnexus、Briston−Myers Squibb社によって使用されているPROfusion(商標)技術を使用して操作され得る。PROfusion技術は、上で参照した技術に基づいて創出されたものである(例えば、RobertsおよびSzostak(1997)94:12297−12302頁)。変更された10Fn3ドメインのライブラリーを生成する方法および本発明で使用され得る適切な結合物を選択する方法は、以下の米国特許および特許出願書類(これらは、参照により本明細書中に組み込む。)中に完全に記載されている:米国特許第7,115,396号;同第6,818,418号;同第6,537,749号;同第6,660,473号;同第7,195,880号;同第6,416,950号;同第6,214,553号;同第6623926号;同第6,312,927号;同第6,602,685号;同第6,518,018号;同第6,207,446号;同第6,258,558号;同第6,436,665号;同第6,281,344号;同第7,270,950号;同第6,951,725号;同第6,846,655号;同第7,078,197号;同第6,429,300号;同第7,125,669号;同第6,537,749号;同第6,660,473号;および米国特許出願第20070082365号;同第20050255548号;同第20050038229号;同第20030143616号;同第20020182597号;同第20020177158号;同第20040086980号;同第20040253612号;同第20030022236号;同第20030013160号;同第20030027194号;同第20030013110号;同第20040259155号;同第20020182687号;同第20060270604号;同第20060246059号;同第20030100004号;同第20030143616号および同第20020182597号。選択工程に先立つ、フィブロネクチンのIII型ドメイン(例えば、10Fn3)における多様性の生成は、当技術分野で公知の他の方法、例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイまたは酵母表面ディスプレイ、例えば、Lipovsekら(2007)Journal of Molecular Biology 368:1024−1041頁;Sergeevaら(2006)Adv Drug Deliv Rev.58:1622−1654頁;Pettyら(2007)Trends Biotechnol.25:7−15頁;Rotheら(2006)Expert Opin Biol Ther.6:177−187頁;およびHoogenboom(2005)Nat Biotechnol.23:1105−1116頁を使用して達成され得る。
上で引用した方法の参考文献が、好ましい10Fn3ドメイン以外のタンパク質から抗体模倣物を誘導するために使用され得ることが、当業者に理解されるべきである。上記言及された方法を介して抗体模倣物を生成するために使用され得るさらなる分子には、ヒトフィブロネクチンモジュール1Fn3−9Fn3および11Fn3−17Fn3、ならびに非ヒト動物および原核生物由来の関連のFn3モジュールが含まれるが、これらに限定されない。さらに、10Fn3に対する配列相同性を有する他のタンパク質(例えば、テネイシンおよびアンジュリン(undulin))由来のFn3モジュールもまた、使用され得る。免疫グロブリン様フォールドを有する(が、VHドメインと無関係の配列を有する。)他の例示的タンパク質には、N−カドヘリン、ICAM−2、タイチン、GCSFレセプター、サイトカインレセプター、グリコシダーゼインヒビター、E−カドヘリンおよび抗生物質色素タンパク質が含まれる。関連の構造を有するさらなるドメインは、ミエリン膜接着分子P0、CD8、CD4、CD2、クラスI MHC、T細胞抗原レセプター、CD1、VCAM−1のC2およびI−setドメイン、ミオシン結合タンパク質CのI−set免疫グロブリンフォールド、ミオシン結合タンパク質HのI−set免疫グロブリンフォールド、テロキンのI−set免疫グロブリンフォールド、テリキン(telikin)、NCAM、トゥイッチン(twitchin)、ニューログリアン(neuroglian)、成長ホルモンレセプター、エリスロポエチンレセプター、プロラクチンレセプター、GC−SFレセプター、インターフェロンγレセプター、β−ガラクトシダーゼ/グルクロニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、ならびにトランスグルタミナーゼから誘導され得る。その代わりに、1つまたは複数の免疫グロブリン様フォールドを含む任意の他のタンパク質が、アドネクチン(adnecting)様結合部分を創出するために利用され得る。かかるタンパク質は、例えば、プログラムSCOP(Murzinら、J.Mol.Biol.247:536頁(1995);Lo Conteら、Nucleic Acids Res.25:257頁(2000))を使用して、同定され得る。
アプタマーは、本発明が包含する別の型の抗体模倣物である。アプタマーは典型的に、特定の分子標的に結合する小さいヌクレオチドポリマーである。アプタマーは、一本鎖または二本鎖の核酸分子(DNAまたはRNA)であり得るが、DNAベースのアプタマーは、最も一般には二本鎖である。アプタマー核酸について規定された長さは存在しないが、アプタマー分子は、最も一般には15ヌクレオチド長と40ヌクレオチド長との間である。
アプタマーは、標的分子に対するそれらの親和性を決定する複雑な3次元構造を形成していることが多い。アプタマーは、ほぼ完全にインビトロで操作および増幅できるので、単純な抗体を上回る多くの利点を提供できる。さらに、アプタマーは、免疫応答を殆どまたは全く誘導しないことが多い。
アプタマーは、種々の技術を使用して生成され得るが、元々は、インビトロ選択(EllingtonおよびSzostak.(1990)Nature.346(6287):818−22頁)およびSELEX法(指数関数的増幅によるリガンドの体系的進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment))(Schneiderら、1992.J Mol Biol.228(3):862−9頁)を使用して開発されたものであり、これらの文献の内容は、参照により本明細書中に組み込む。Klussmann.The Aptamer Handbook:Functional Oligonucleotides and Their Applications.ISBN:978−3−527−31059−3;Ulrichら、2006.Comb Chem High Throughput Screen 9(8):619−32頁;Cerchiaおよびde Franciscis.2007.Methods Mol Biol.361:187−200頁;IresonおよびKelland.2006.Mol Cancer Ther.2006 5(12):2957−62頁;米国特許第5582981号;同第5840867号;同第5756291号;同第6261783号;同第6458559号;同第5792613号;同第6111095号;ならびに米国特許出願第11/482,671号;同第11/102,428号;同第11/291,610号;および同第10/627,543号(これらは全て、参照により本明細書中に組み込む。)を含む、アプタマーを生成および使用するための他の方法が公開されている。
SELEX法は、明らかに最も一般的であり、3つの基本的工程で実施される。第1に、候補核酸分子のライブラリーを、特定の分子標的への結合について選択する。第2に、標的に対する充分な親和性を有する核酸を、非結合物から分離する。第3に、結合した核酸を増幅し、第2のライブラリーを形成し、このプロセスを反復する。各反復において、標的分子に対するさらに高い親和性を有するアプタマーが選択される。SELEX法は、以下の刊行物(これらは参照により本明細書中に組み込む。)中でより完全に記載されている:Bugautら、2006.4(22):4082−8頁;Stoltenburgら、2007 Biomol Eng.2007 24(4):381−403頁;およびGopinath.2007.Anal Bioanal Chem.2007.387(1):171−82頁。
本発明の「アプタマー」は、ヌクレオチドの代わりにペプチドから生成されたアプタマー分子も含んでいる。ペプチドアプタマーは、ヌクレオチドアプタマーと多くの特性(例えば、小さいサイズおよび高い親和性で標的分子に結合する能力)を共有しており、ヌクレオチドアプタマーを生成するために使用される原理と類似の原理を有する選択方法によって生成され得る(例えば、BainesおよびColas.2006.Drug Discov Today.11(7−8):334−41頁;およびBickleら、2006.Nat Protoc.1(3):1066−91頁(これらは参照により本明細書中に組み込む。))。
アフィボディ分子は、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインの1つに由来する58アミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく、新しいクラスの親和性タンパク質を示している。この3ヘリックスバンドルのドメインは、コンビナトリアルファージミドライブラリーの構築のための足場として使用されており、ここから、所望の分子を標的化するアフィボディバリアントが、ファージディスプレイ技術を使用して選択され得る(Nord K、Gunneriusson E、Ringdahl J、Stahl S、Uhlen M、Nygren PA、Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α−helical bacterial receptor domain、Nat Biotechnol 1997;15:772−7頁.Ronmark J、Gronlund H、Uhlen M、Nygren PA、Human immunoglobulin A(IgA)−specific ligands from combinatorial engineering of protein A、Eur J Biochem 2002;269:2647−55頁)。その低い分子量(6kDa)と組み合わせたアフィボディ分子の単純で強固な構造は、アフィボディ分子を、例えば、検出試薬としての(Ronmark J、Hansson M、Nguyen Tら、Construction and characterization of affibody−Fc chimeras produced in Escherichia coli、J Immunol Methods 2002;261:199−211頁)、およびレセプター相互作用を阻害するための(Sandstorm K、Xu Z、Forsberg G、Nygren PA、Inhibition of the CD28−CD80 costimulation signal by a CD28−binding Affibody ligand developed by combinatorial protein engineering、Protein Eng 2003;16:691−7頁)広範な種々の適用に適したものにしている。アフィボディおよびその製造方法のさらなる詳細は、その全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第5,831,012号を参照して得ることができる。
DARPin(設計アンキリン反復タンパク質(Designed Ankyrin Repeat Protein))は、非抗体ポリペプチドの結合能を利用するために開発された抗体模倣物DRP(設計反復タンパク質(Designed Repeat Protein))技術の一例である。アンキリンまたはロイシンリッチ反復タンパク質などの反復タンパク質は、普遍的な結合分子であり、抗体と違って、細胞内および細胞外に存在する。それらの独自のモジュール式構造は、反復する構造的単位(反復)を特徴とし、これらの単位が一緒に積み重なって、変化するモジュール式の標的結合表面を示す、伸長した反復ドメインを形成する。このモジュール性に基づいて、高度に多様な結合特異性を有するポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーが生成され得る。この戦略は、変化する表面残基を示す自己適合性反復のコンセンサス設計および反復ドメインへのそれらのランダムなアセンブリを含む。
DARPinは、非常に高い収率で細菌発現系において産生でき、知られているうちで最も安定なタンパク質に属する。広範囲の標的タンパク質(ヒトレセプター、サイトカイン、キナーゼ、ヒトプロテアーゼ、ウイルスおよび膜タンパク質が含まれる。)に対する、高度に特異的な高親和性のDARPinが選択されている。1桁のナノモル濃度からピコモル濃度の範囲内の親和性を有するDARPinを得ることができる。
DARPinは、ELISA、サンドウィッチELISA、フローサイトメトリー分析(FACS)、免疫組織化学(IHC)、チップ適用、親和性精製またはウエスタンブロッティングを含む広範な適用において使用されてきた。DARPinはまた、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)に融合した細胞内マーカータンパク質として、細胞内区画中で高度に活性であることが証明されている。DARPinは、さらに、pMの範囲のIC50でウイルスの侵入を阻害するために使用された。DARPinは、タンパク質−タンパク質相互作用を遮断するのに理想的なだけではなく、酵素を阻害するのにも理想的である。プロテアーゼ、キナーゼおよびトランスポーターが首尾よく阻害されており、最も頻繁にはアロステリック阻害様式である。腫瘍上での非常に速く特異的な富化および非常に好ましい腫瘍対血液比は、DARPinを、インビボの診断アプローチまたは治療アプローチに非常に適したものにしている。
DARPinおよび他のDRP技術に関するさらなる情報は、米国特許出願公開2004/0132028号および国際特許出願公開第WO 02/20565号(これらは共に、その全体を参照により本明細書中に組み込む。)中に見出すことができる。
アンチカリンは、さらなる抗体模倣物技術であるが、この場合、結合特異性は、ヒトの組織および体液中で天然に豊富に発現される低分子量タンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、化学的に敏感なまたは不溶性の化合物の生理学的輸送および貯蔵とインビボで関連する様々な機能を実行するように進化したものである。リポカリンは、タンパク質の1つの末端において4つのループを支持する高度に保存されたβバレルを含む強固な固有の構造を有している。これらのループは、結合ポケットへの入り口を形成し、分子のこの部分における立体配座上の差異は、個々のリポカリン間の結合特異性におけるバリエーションを説明する。
保存されたβシートのフレームワークによって支持される超可変ループの全体的構造は、免疫グロブリンを彷彿とさせるが、リポカリンは、サイズに関して抗体とはかなり異なっており、単一の免疫グロブリンドメインよりも僅かに大きい160−180アミノ酸の単一ポリペプチド鎖から構成されている。
リポカリンはクローニングされ、それらのループは、アンチカリンを創出するための操作に供される。構造的に多様なアンチカリンのライブラリーが生成されており、アンチカリンディスプレイにより、結合機能の選択およびスクリーニングと、その後の原核生物系または真核生物系におけるさらなる分析のための可溶性タンパク質の発現および産生とが可能になる。研究により、事実上任意のヒト標的タンパク質に特異的なアンチカリンが開発でき、単離でき、ナノモル濃度以上の範囲の結合親和性を得ることができることが、首尾よく実証されている。
アンチカリンは、二重標的化タンパク質、いわゆるデュオカリン(Duocalin)としても形式付けされ得る。デュオカリンは、その2つの結合ドメインの構造的配向に関わらず標的特異性および親和性を保持しながら、標準的な製造プロセスを使用して容易に生成される1つのモノマータンパク質中の2つの別個の治療標的に結合する。
単一分子を介した複数標的の調節は、単一よりも多くの原因因子が関与することが公知の疾患において特に有利である。さらに、デュオカリンなどの二価または多価の結合形式は、疾患において細胞表面分子を標的化し、シグナル伝達経路に対するアゴニスト効果を媒介し、または細胞表面レセプターの結合およびクラスター化を介して増強された中和効果を誘導することにおいて、顕著な可能性を有する。さらに、デュオカリンの高い固有の安定性は、モノマー性アンチカリンに匹敵し、デュオカリンの柔軟な製剤化および送達の潜在力を提供する。
アンチカリンに関するさらなる情報は、米国特許第7,250,297号および国際特許出願公開第WO 99/16873号(これらは共に、その全体を参照により本明細書中に組み込む。)中に見出すことができる。
本発明に関して有用な別の抗体模倣物技術は、アビマーである。アビマーは、結合および阻害特性を有する多ドメインのタンパク質を生成するインビトロエキソンシャッフリングおよびファージディスプレイによって、ヒト細胞外レセプタードメインの大きいファミリーから進化したものである。複数の独立した結合ドメインを連結することで、アビディティーが生み出され、従来の単一エピトープ結合タンパク質と比較して改善された親和性および特異性を生じることが示されている。他の潜在的な利点には、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)における複数標的特異的分子の単純で効率的な産生、改善された熱安定性、およびプロテアーゼに対する抵抗性が含まれる。ナノモル濃度を下回る親和性を有するアビマーが、種々の標的に対して得られている。
アビマーに関するさらなる情報は、米国特許出願公開第2006/0286603号、同第2006/0234299号、同第2006/0223114号、同第2006/0177831号、同第2006/0008844号、同第2005/0221384、同第2005/0164301号、同第2005/0089932号、同第2005/0053973号、同第2005/0048512号、同第2004/0175756号(これらは全て、その全体を参照により本明細書中に組み込む。)中に見出すことができる。
ヴァーサボディは、本発明に関して使用され得る別の抗体模倣物技術である。ヴァーサボディは、>15%がシステインの3−5kDaの小さいタンパク質であり、高いジスルフィド密度の骨格を形成して、典型的なタンパク質が有している疎水性コアを置き換えている。疎水性コアを構成する多数の疎水性アミノ酸の、少数のジスルフィドによる置き換えは、より小さく、より親水性が高く(凝集および非特異的結合が少ない。)、プロテアーゼおよび熱に対する抵抗性がより高く、MHC提示に最も寄与する残基が疎水性であるためにT細胞エピトープ密度がより低い、タンパク質を生じる。これらの特性の4つ全てが、免疫原性に影響を与えることが周知であり、これらの特性が一緒になって、免疫原性の大きな減少を引き起こすと予測されている。
ヴァーサボディに関する着想は、ヒル、ヘビ、クモ、サソリ、カタツムリおよびアネモネによって産生される、予想外に低い免疫原性を示すことが公知の、天然の注射可能な生物医薬から来ている。設計により、およびサイズ、疎水性、タンパク質分解性の抗原プロセシングをスクリーニングすることにより、選択された天然タンパク質ファミリーから出発することで、エピトープ密度は、天然の注射可能タンパク質の平均を大きく下回るレベルまで最小化される。
ヴァーサボディの構造を考慮すると、これらの抗体模倣物は、多価、多重特異性、半減期機構の多様性、組織標的化モジュール、および抗体Fc領域の非存在を含む、多用途の形式を提供する。さらに、ヴァーサボディは、E.コリ(E.coli)において高収率で製造され、その親水性および小さいサイズに起因して、ヴァーサボディは高度に可溶性であり、高い濃度で製剤化することができる。ヴァーサボディは、並外れて熱安定性であり(ヴァーサボディは茹でることができる。)、延長された保存可能期間を提供する。
ヴァーサボディに関するさらなる情報は、米国特許出願公開第2007/0191272号(これは、その全体を参照により本明細書中に組み込む。)中に見出すことができる。
SMIP(商標)(小モジュール式免疫医薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)−Trubion Pharmaceuticals)は、標的結合、エフェクター機能、インビボ半減期および発現レベルを維持および最適化するよう操作されたものである。SMIPSは、3つの別個のモジュール状ドメインからなる。まず、SMIPSは、特異性を付与する任意のタンパク質(例えば、細胞表面レセプター、単鎖抗体、可溶性タンパク質など)からなり得る結合ドメインを含む。第2に、SMIPSは、結合ドメインとエフェクタードメインとの間の可撓性リンカーとして機能し、SMIP薬物のマルチマー化の制御の助けともなる、ヒンジドメインを含む。最後に、SMIPSは、Fcドメインまたは他の特別に設計されたタンパク質を含む多様な分子から誘導され得るエフェクタードメインを含む。多様な異なる結合、ヒンジおよびエフェクタードメインを有するSMIPの単純な構築を可能にする設計のモジュラー性は、迅速でカスタマイズ可能な薬物設計を提供する。
SMIPの設計方法の例を含むSMIPに関するさらなる情報は、Zhaoら(2007)Blood 110:2569−77頁ならびに以下の米国特許出願第20050238646号;同第20050202534号;同第20050202028号;同第20050202023号;同第20050202012号;同第20050186216号;同第20050180970号および同第20050175614号中に見出すことができる。
上で提供した抗体断片および抗体模倣物技術の詳細な説明は、本明細書に関して使用され得る全ての技術の包括的なリストであることは意図していない。例えば、また限定ではないが、代替的なポリペプチドベースの技術、例えば、Quiら、Nature Biotechnology、25(8)921−929頁(2007)(これは、その全体を参照により本明細書中に組み込む。)中に概要が述べられた相補性決定領域の融合、ならびに核酸ベースの技術、例えば、米国特許第5,789,157号、同第5,864,026号、同第5,712,375号、同第5,763,566号、同第6,013,443号、同第6,376,474号、同第6,613,526号、同第6,114,120号、同第6,261,774号および同第6,387,620号(これらは全て、参照により本明細書中に組み込む。)に記載されたRNAアプタマー技術を含む、多様なさらなる技術が、本発明に関して使用され得る。
F.抗体の物理的特性
IL−12/IL−23のp40サブユニットに結合する本発明の抗体は、種々の物理的特性によってさらに特徴付けることができる。種々のアッセイが、これらの物理的特性に基づいて異なるクラスの抗体を検出および/または識別するために使用され得る。
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、軽鎖または重鎖のいずれかの可変領域中に、1つまたは複数のグリコシル化部位を含み得る。可変領域における1つまたは複数のグリコシル化部位の存在は、抗体の免疫原性の増加または変更された抗原結合に起因する抗体のpKの変更を生じ得る(Marshallら(1972)Annu Rev Biochem 41:673−702頁;Gala FAおよびMorrison SL(2004)J Immunol 172:5489−94頁;Wallickら(1988)J Exp Med 168:1099−109頁;Spiro RG(2002)Glycobiology 12:43R−56R頁;Parekhら(1985)Nature 316:452−7頁;Mimuraら(2000)Mol Immunol 37:697−706頁)。グリコシル化は、N−X−S/T配列を含むモチーフにおいて生じることが知られている。可変領域のグリコシル化は、抗体を切断してFabを生成し、次いでグリコシル化について試験するGlycoblotアッセイを使用し、過ヨウ素酸酸化およびSchiff塩基形成を測定するアッセイを使用して、試験され得る。その代わりに、可変領域のグリコシル化は、Fabから糖を切断して単糖にし、個々の糖含量を分析するDionexライトクロマトグラフィー(Dionex−LC)を使用して試験され得る。ある場合には、可変領域のグリコシル化を含まない抗体を有することが好ましい場合がある。これは、当技術分野で周知の標準的な技術を使用して、可変領域中にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択することにより、またはグリコシル化モチーフ内の残基を変異させることにより、達成され得る。
各抗体は、独自の等電点(pI)を有するが、一般には、抗体は、6と9.5との間のpH範囲内に入る。IgG1抗体に関するpIは、典型的には7−9.5のpH範囲内に入り、IgG4抗体に関するpIは、典型的には6−8のpH範囲内に入る。抗体は、この範囲の外側のpIを有していてもよい。効果は一般には知られていないが、通常範囲の外側のpIを有する抗体が、インビボ条件下である種のアンフォールドおよび不安定性を有し得ることが推測される。等電点は、pH勾配を創出し、正確さを増加させるためのレーザーフォーカシングを利用し得る、キャピラリー等電点電気泳動アッセイを使用して試験され得る(Janiniら(2002)Electrophoresis 23:1605−11頁;Maら(2001)Chromatographia 53:S75−89頁;Huntら(1998)J Chromatogr A 800:355−67頁)。ある場合には、通常範囲内に入るpI値を含む抗体を有することが好ましい。これは、当技術分野で周知の標準的な技術を使用して、正常範囲内のpIを有する抗体を選択することにより、または荷電した表面残基を変異させることにより、達成され得る。
各抗体は、熱安定性を示す融解温度を有する(Krishnamurthy RおよびManning MC(2002)Curr Pharm Biotechnol 3:361−71頁)。より高い熱安定性は、インビボにおける全体的な抗体安定性がより高いことを示す。抗体の融点は、示差走査熱量測定(Chenら(2003)Pharm Res 20:1952−60頁;Ghirlandoら(1999)Immunol Lett 68:47−52頁)などの技術を使用して測定され得る。TM1は、抗体の最初のアンフォールディングの温度を示す。TM2は、抗体の完全なアンフォールディングの温度を示す。一般に、本発明の抗体のTM1は、60℃よりも高いことが好ましく、好ましくは65℃より高い温度、なおより好ましくは70℃よりも高い温度である。その代わりに、抗体の熱安定性は、円二色性を使用して測定され得る(Murrayら(2002)J.Chromatogr Sci 40:343−9頁)。
好ましい実施形態において、迅速に分解しない抗体が望まれ得る。抗体の断片化は、キャピラリー電気泳動(CE)およびMALDI−MSを使用して測定され得、これもまた当技術分野で充分理解される(Alexander AJおよびHughes DE(1995)Anal Chem 67:3626−32頁)。
別の好ましい実施形態において、最小の凝集効果を有する抗体が選択される。凝集は、望ましくない免疫応答および/または変更されたもしくは好ましくない薬物動態学的特性の誘発を導き得る。一般に、25%以下、好ましくは20%以下、なおより好ましくは15%以下、なおより好ましくは10%以下、なおより好ましくは5%以下の凝集を有する抗体が許容可能である。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびモノマー、ダイマー、トリマーまたはマルチマーを同定するための光散乱を含む、当技術分野で周知のいくつかの技術によって測定され得る。
V.本発明の抗体の生成
A.本発明のポリクローナル抗体の生成
本発明のポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の種々の技術によって生成され得る。ポリクローナル抗体は、異なるB細胞株から誘導され、したがって、同じ抗原上の複数のエピトープを認識し得る。ポリクローナル抗体は、典型的に、目的の抗原(例えば、IL−12/IL−23のp40サブユニット)を用いた適切な哺乳動物の免疫によって生成される。ポリクローナル抗体の生成にしばしば使用される動物は、ニワトリ、ヤギ、モルモット、ハムスター、ウマ、マウス、ラット、ヒツジ、および最も一般的にはウサギである。ポリクローナル抗体を生成するための標準的な方法は、当技術分野で広く知られており、本発明の方法と組み合わされ得る(例えば、research.cm.utexas.edu/bkitto/Kittolabpage/Protocols/Immunology/PAb.html;米国特許第4,719,290号、同第6,335,163号、同第5,789,208号、同第2,520,076号、同第2,543,215号および同第3,597,409号(これらの全内容は、参照により本明細書中に組み込む。)。
B.本発明のモノクローナル抗体の生成
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495頁の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、種々の技術によって生成され得る。体細胞ハイブリダイゼーション手順が好ましいが、原理上、モノクローナル抗体を生成するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルス性転化または癌化が使用され得る。抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)またはその抗原結合部分は、IL−12/IL−23のp40サブユニット上の任意のエピトープ(本明細書中に記載される任意の立体配座エピトープ、不連続エピトープまたは線状エピトープが含まれる。)に対して惹起され得ることに留意すべきである。
当技術分野で公知のいくつかの方法が、目的の不連続エピトープに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を特異的に選択するために有用である。例えば、米国特許公開第2005/0169925号(その全内容は、参照により本明細書中に組み込む。)に開示される技術は、タンパク質配列内の2つの異なるペプチドに結合する抗体の選択を可能にする。かかる方法は、本明細書中に開示される立体配座エピトープおよび不連続エピトープを特異的に標的化するために、本発明に従って使用され得る。立体配座エピトープがタンパク質二次構造である場合、かかる構造は、より小さいペプチド(例えば、<50アミノ酸)において容易に形成される場合が多い。したがって、より小さいペプチドで動物を免疫することで、いくつかの立体配座エピトープを捕捉することができる。その代わりに、立体配座エピトープを構成する2つの小さいペプチド(例えば、表5中で特定したペプチド)は、可撓性リンカー(例えば、ポリグリコール、または極性の非荷電アミノ酸のストレッチ)を介して接続され得る。リンカーは、ペプチドに種々の相互作用配向を探索させる。この構築物で免疫し、その後適切なスクリーニングを行うことで、立体配座エピトープに対する抗体の同定が可能になり得る。好ましい実施形態において、特定の立体配座エピトープまたは線状エピトープに対するペプチドは、IL−12/IL−23のp40サブユニットの特定のドメイン(例えば、上記表3中に記載された部位および表4中に記載されたエピトープを含む、セクションII(A)およびII(C)中に記載されたエピトープ)で動物を免疫し、目的のエピトープに結合する抗体について引き続きスクリーニングすることによって生成され得る。一実施形態において、低温電子顕微鏡(Jiangら(2008)Nature 451、1130−1134頁;Joachim(2006)Oxford University Press_ISBN:0195182189)は、本発明の抗体または抗原結合断片が結合するエピトープを同定するために使用され得る。別の実施形態において、IL−12/IL−23のp40サブユニットまたはそのドメインは、結合した抗体またはその抗原結合断片と共に結晶化され得、結合した正確なエピトープを決定するためにx線結晶解析によって分析され得る。さらに、エピトープは、IL−12/IL−23のp40サブユニット配列の一部分を、マウスまたは別の種由来の対応する配列で置き換えることによって、マッピングされ得る。目的のエピトープに対する抗体は、ヒト配列領域に選択的に結合し、したがって、標的エピトープを連続してマッピングすることが可能である。キメラベースのエピトープマッピングのこの技術は、種々の設定においてエピトープを同定するために首尾よく使用されてきた(HenrikssonおよびPettersson(1997)Journal of Autoimmunity.10(6):559−568頁;Netzerら(1999)J Biol Chem.1999年4月16日;274(16):11267−74頁;Hsiaら(1996)Mol.Microbiol.19、53−63頁(その全内容は、参照により本明細書中に組み込む。)を参照のこと。)。
目的のIL−12/IL−23のp40サブユニットのドメインがグリコシル化されている場合、抗体またはその抗原結合部分(および本発明の他の抗体模倣物)は、関連するアミノ酸および/または糖残基に結合するように、惹起され得る。ヒトIL−12/23のp40サブユニットは、10個のシステイン残基および4つの潜在的なN−結合型グリコシル化部位を含んでいる。IL−12/23のp40サブユニットのグリコシル化パターンは、少なくともYoonら、2000 EMBO 19(14):3530−3541頁;Gublerら、1991 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4143−4147頁;およびBrundaら、1994 J.Leukocyte Biol.55:280−288頁(これらそれぞれの全内容は、参照により本明細書中に組み込む。)中にさらに記載されている。したがって、抗体またはその抗原結合部分(および本発明の他の部分)は、本明細書中で同定された任意のエピトープに結合し得る糖残基にも結合するように、惹起されることが企図される。この目的のために、目的の抗原性ペプチドは、この抗原性ペプチドが適切にグリコシル化され、グリコシル化された抗原性ペプチドが動物を免疫するために次に使用され得るように、動物細胞中で生成され得る。グリコシル化ペプチドを生成するために適切な細胞および技術は、当技術分野で公知であり、以下にさらに記載される(例えば、GlycoFi,Inc.、Lebanon、NHおよびBioWa;Princeton、NJから入手可能な技術を参照のこと。)。ペプチドの適切なグリコシル化は、グリカンを同定するために、等電点電気泳動(IEF)、酸加水分解(単糖の組成を決定するため)、化学的または酵素的切断、および質量分析(MS)などの任意の標準的な方法を使用して試験され得る。グリカン分析をスピードアップするためにレクチンベースのアレイを使用する、Procognia(procognia.com)が提供する技術もまた使用され得る。O−グリコシル化は、特に、還元的アルカリ切断または「β脱離(beta elimination)」、ペプチドマッピング、液体クロマトグラフィーおよび質量分析、またはこれらの技術の任意の組み合わせなどの技術を使用して、検出され得る。
ハイブリドーマを調製するために好ましい動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ生成は、非常によく確立された手順である。免疫プロトコルおよび融合のために免疫した脾細胞の単離のための技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた公知である。
本発明のキメラ抗体またはヒト化抗体は、上記のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製され得る。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、標準的な分子生物学的技術を使用して、目的のマウスハイブリドーマから得ることができ、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作できる。例えば、キメラ抗体を創出するために、マウス可変領域は、当技術分野で公知の方法を使用して、ヒト定常領域に連結され得る(例えば、Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号を参照のこと。)。ヒト化抗体を創出するために、マウスCDR領域が、当技術分野で公知の方法を使用して、ヒトフレームワーク中に挿入され得る(例えば、Winterに対する米国特許第5,225,539号ならびにQueenらに対する米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号および同第6,180,370号を参照のこと。)。その代わりに、ヒト化抗体は、ヒト配列および非ヒト配列の知識を考慮して、DNAレベルまたはタンパク質レベルで設計され得る。かかる抗体は、化学的に直接合成され得る、またはDNAは、ヒト化抗体を生成するためにインビトロまたはインビボで合成および発現され得る。
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。本明細書中に記載されるIL−12/IL−23のp40サブユニットのドメインまたはエピトープに対するかかるヒトモノクローナル抗体は、マウス系以外のヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニックマウスまたは染色体導入(transchromosomic)マウスを使用して生成され得る。これらのトランスジェニックマウスおよび染色体導入マウスには、それぞれ本明細書中でHuMAbマウスおよびKMマウス(商標)と称されるマウスが含まれ、本明細書中で集合的に「ヒトIgマウス」と称される。
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、内在性のμ鎖およびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的化された変異と共に、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖の免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座(minilocus)を含む(例えば、Lonbergら(1994)Nature 368(6474):856−859頁を参照のこと。)。したがって、このマウスは、マウスIgMまたはκの発現低下を示し、免疫に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子が、高親和性のヒトIgGκモノクローナルを生成するために、クラススイッチおよび体細胞変異を受ける(Lonberg,N.ら(1994)、上記;Lonberg,N.(1994)Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101頁中で概説される;Lonberg,N.およびHuszar,D.(1995)Intern.Rev.Immunol.13:65−93頁ならびにHarding,F.およびLonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546頁)。HuMabマウスの調製および使用、ならびにかかるマウスが保有するゲノム改変は、Taylor,L.ら(1992)Nucleic Acids Research 20:6287−6295頁;Chen,J.ら(1993)International Immunology 5:647−656頁;Tuaillonら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3720−3724頁;Choiら(1993)Nature Genetics 4:117−123頁;Chen,J.ら(1993)EMBO J.12:821−830頁;Tuaillonら(1994)J.Immunol.152:2912−2920頁;Taylor,L.ら(1994)International Immunology 6:579−591頁;およびFishwild,D.ら(1996)Nature Biotechnology 14:845−851頁(これら全ての内容は、その全体を参照により本明細書中に具体的に組み込む。)中にさらに記載されている。さらに、全てLonbergおよびKayに対する米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,877,397号;同第5,661,016号;同第5,814,318号;同第5,874,299号および同第5,770,429号;Suraniらに対する米国特許第5,545,807号;全てLonbergおよびKayに対するPCT公開WO 92/03918、WO 93/12227、WO 94/25585、WO 97/13852、WO 98/24884およびWO 99/45962;ならびにKormanらに対するPCT公開WO 01/14424を参照のこと。
別の実施形態において、本発明のヒト抗体は、導入遺伝子および導入染色体(transchomosome)上にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を保有するマウスを使用して、惹起され得る。本明細書中で「KMマウス(商標)」と称するかかるマウスは、Ishidaらに対するPCT公開第WO 02/43478号中に詳細に記載されている。
なおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替的トランスジェニック動物系が当技術分野で入手可能であり、本発明の抗体を惹起するために使用され得る。例えば、Xenomouse(Abgenix,Inc.)と称される代替的トランスジェニック系が使用され得;かかるマウスは、例えば、Kucherlapatiらに対する米国特許第5,939,598号;同第6,075,181号;同第6,114,598号;同第6,150,584号および同第6,162,963号中に記載されている。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替的染色体導入動物系が当技術分野で入手可能であり、本発明の抗体を惹起するために使用され得る。例えば、「TCマウス」と称される、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を保有するマウスが使用され得、かかるマウスは、Tomizukaら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727頁中に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖の導入染色体を保有するウシが、当技術分野で記載されており(Kuroiwaら(2002)Nature Biotechnology 20:889−894頁)、本発明の抗体を惹起するために使用され得る。
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用して調製され得る。ヒト抗体を単離するためのかかるファージディスプレイ法は、当技術分野で確立されている。例えば、Ladnerらに対する米国特許第5,223,409号;同第5,403,484号および同第5,571,698号;Dowerらに対する米国特許第5,427,908号および同第5,580,717号;McCaffertyらに対する米国特許第5,969,108号および同第6,172,197号;ならびにGriffithsらに対する米国特許第5,885,793号;同第6,521,404号;同第6,544,731号;同第6,555,313号;同第6,582,915号および同第6,593,081号を参照のこと。一実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、その全内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,914,128号中に記載されるファージディスプレイ技術を使用して調製され得る。別の実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、その全内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第6,914,128号中に記載されるようなヒト抗体ライブラリーから調製され得る。
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体応答が免疫の際に生成され得るように、ヒト免疫細胞が再構築されたSCIDマウスを使用しても調製され得る。かかるマウスは、例えば、Wilsonらに対する米国特許第5,476,996号および同第5,698,767号中に記載されている。
別の実施形態において、本発明の抗体は、Marks,J.D.ら((1991).J.Mol.Biol.222、581頁)、Nissim,A.ら((1994).EMBO J.13、692頁)ならびに米国特許第6,794,132号;同第6562341号;同第6057098号;同第5821047号および同第6512097号中に記載されるように、周知のファージディスプレイ技術を使用して構築され得る。
さらなる実施形態において、本発明の抗体は、例えば、米国特許第6,423,538号;同第6,300,065号;同第6,696,251号;同第6,699,658号中に記載されるように、酵母細胞表面ディスプレイ技術を使用して見出すことができる。
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫したマウス由来の脾細胞および/またはリンパ節細胞が単離され、適切な不死化細胞株(例えば、マウス骨髄腫細胞株)に融合され得る。得られたハイブリドーマは、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングされ得る。例えば、免疫したマウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁物は、P3X63−Ag8.653非分泌性マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)の数の6分の1に、50%PEGを用いて融合され得る。その代わりに、免疫したマウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁物は、CytoPulseラージチャンバ細胞融合エレクトロポレーター(CytoPulse Sciences,Inc.、Glen Burnie Maryland)を使用して、電場ベースの電気融合法を使用して融合され得る。細胞は、約2×105で平底マイクロタイタープレート中にプレートされ、その後選択培地(20%胎仔クローン血清(Clone Serum)、18%「653」馴化培地、5%オリゲン(origen)(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50単位/ml ペニシリン、50mg/ml ストレプトマイシン、50mg/ml ゲンタマイシンおよび1×HAT(Sigma;HATは、融合の24時間後に添加する。)を含む。)中で2週間インキュベートされる。約2週間後、細胞は、HATをHTで置き換えた培地中で培養され得る。次いで、個々のウェルは、ヒトモノクローナルIgM抗体およびIgG抗体について、ELISAによってスクリーニングされ得る。広範なハイブリドーマ増殖が起きると、培地は、通常10−14日後に観察され得る。抗体分泌ハイブリドーマが再プレートされ、再度スクリーニングされ得、ヒトIgGについてなお陽性の場合、モノクローナル抗体は、限界希釈によって少なくとも2回サブクローニングされ得る。次いで、特徴付けのために組織培養培地中に少量の抗体を生成するために、安定なサブクローンがインビトロで培養され得る。
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製のための2リットルスピナーフラスコ中で増殖され得る。上清が濾過および濃縮され、その後、プロテインA−セファロース(Pharmacia、Piscataway、N.J.)を用いた親和性クロマトグラフィーにかけられ得る。溶出したIgGは、純度を確認するために、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによってチェックされ得る。緩衝溶液がPBSに交換され得、濃度が、1.43吸光係数を使用してOD280によって決定され得る。モノクローナル抗体は、アリコート化され、−80℃で保存され得る。
本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成
本発明の抗体はまた、例えば、組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、当技術分野で周知のとおりに(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202頁)、宿主細胞トランスフェクトーマ(ハイブリドーマの1つの型)中で産生され得る。
例えば、抗体またはその抗体断片を発現させるために、単離された核酸分子、例えば、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAは、標準的な分子生物学技術(例えば、PCR増幅または目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用したcDNAクローニング)によって得ることができ、このDNAは、遺伝子が転写制御配列および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクター中に挿入され得る。
語句「核酸分子」には、DNA分子およびRNA分子が含まれる。核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
語句「単離された核酸分子」には、「単離された抗体」を含む、hIL−12に結合する抗体または抗体部分(例えば、VH、VL、CDR3)をコードする核酸に関して本明細書中で使用する場合、その抗体または抗体部分をコードするヌクレオチド配列が、hIL−12以外の抗原に結合する抗体または抗体部分をコードする他のヌクレオチド配列を含まない核酸分子が含まれ、この他の配列は、ヒトゲノムDNA中ではこの核酸に天然に隣接し得る。したがって、例えば、抗IL−12抗体のVH領域をコードする本発明の単離された核酸は、IL−12以外の抗原に結合する他のVH領域をコードする他の配列を含まない。語句「単離された核酸分子」は、二価の二重特異的抗体(例えば、VH領域およびVL領域が、ディアボディ(diabody)の配列以外の他の配列を含まないディアボディ)をコードする配列も含む意図である。
用語「ベクター」には、ベクターが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子が含まれる。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループをいう。別の型のベクターはウイルスベクターであり、ウイルスベクターでは、さらなるDNAセグメントが、ウイルスゲノム中にライゲートされ得る。特定のベクターは、導入される宿主細胞中で自律複製化能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)が、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示可能である。かかるベクターは、本明細書中で「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態である。本明細書において、プラスミドは、最も一般に使用される形態のベクターであるため、「プラスミド」および「ベクター」は相互交換可能に使用され得る。しかし、本発明は、等価な機能を果たすかかる他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含む意図である。
これに関して、用語「作動可能に連結された」は、ベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する意図した機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中にライゲートされていることを意味する意図である。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合性であるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクター中に挿入され得、またはより典型的には、両方の遺伝子が同じ発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)によって発現ベクター中に挿入される。記載された抗体の軽鎖および重鎖可変領域は、VHセグメントがベクター内のCHセグメント(複数可)に作動可能に連結され、VKセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、記載された抗体の軽鎖および重鎖可変領域を、所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター中に挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を創出するために使用され得る。それに加えてまたはその代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローニングされ得る。このシグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保有する。語句「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)には、組換え発現ベクターが導入された細胞が含まれる。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫をいう意図であることを理解すべきである。変異または環境の影響に起因して、特定の改変が後続の世代において生じ得るので、かかる子孫は、実際には、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書中で使用する場合、用語「宿主細胞」の範囲内になおも含まれる。特定の実施形態において、宿主細胞は、真核生物細胞または原核生物細胞であり得る。
用語「調節配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む意図である。かかる調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990))中に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞、所望のタンパク質の発現レベルなどの選択のような因子に依存し得ることが、当業者により理解される。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。その代わりに、非ウイルス性調節配列、例えば、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーターが、使用され得る。なおさらには、調節エレメントは、異なる供給源由来の配列、例えば、SV40初期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の末端反復配列由来の配列を含むSRαプロモーター系から構成される(Takebe,Y.ら(1988)Mol.Cell.Biol.8:466−472頁)。
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子などのさらなる配列を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、全てAxelらによる米国特許第4,399,216号,同第4,634,665号および同第5,179,017号を参照のこと。)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、薬物(例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート)に対する抵抗性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅と共にdhfr−宿主細胞において使用するため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター(複数可)が、標準的な技術によって宿主細胞中にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞中への外因性DNAの導入のために一般に使用される広範な種々の技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなど)を包含する意図である。原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞のいずれかにおいて本発明の抗体を発現させることは理論的には可能であるが、真核生物細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましいが、これは、かかる真核生物細胞、特に哺乳動物細胞が、適正に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体をアセンブルし分泌するためには、原核生物細胞よりもふさわしいからである。抗体遺伝子の原核生物発現は、高収率の活性抗体の産生には無力であることが報告されている(Boss,M.A.およびWood,C.R.(1985)Immunology Today 6:12−13頁)。
上記に関して、本発明の別の態様は、本発明の抗体および抗体部分の組換え発現のために使用され得る、核酸、ベクターおよび宿主細胞組成物に関する。一実施形態において、本発明は、J695のCDR、ならびに/またはJ695の全長重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする、単離された核酸を特徴とする。したがって、一実施形態において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列中に示されるJ695重鎖CDR3をコードする、抗体重鎖可変領域をコードする単離された核酸を提供する。一実施形態において、抗体重鎖可変領域をコードする核酸は、配列番号1のアミノ酸配列中に示されるJ695重鎖CDR2をさらにコードする。別の実施形態において、抗体重鎖可変領域をコードする核酸は、配列番号1のアミノ酸配列中に示されるJ695重鎖CDR1をさらにコードする。別の実施形態において、単離された核酸は、配列番号1のアミノ酸配列(J695の完全VH領域)を含む抗体重鎖可変領域をコードする。種々の実施形態において、この核酸は、本明細書中で記載される1つまたは複数の置換(例えば、上記セクションII(A)(2)およびII(B)に記載される。)をさらに含む抗体重鎖可変領域をコードする。
他の実施形態において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列中に示されるJ695軽鎖CDR3をコードする抗体軽鎖可変領域をコードする単離された核酸を提供する。一実施形態において、抗体軽鎖可変領域をコードする核酸は、配列番号2のアミノ酸配列中に示されるJ695軽鎖CDR2をさらにコードする。一実施形態において、抗体軽鎖可変領域をコードする核酸は、配列番号2のアミノ酸配列中に示されるJ695軽鎖CDR1をさらにコードする。別の実施形態において、単離された核酸は、配列番号2のアミノ酸配列(J695の完全VL領域)を含む抗体軽鎖可変領域をコードする。種々の実施形態において、この核酸は、本明細書中で記載される1つまたは複数の置換(例えば、上記セクションII(A)(2)およびII(B)に記載される。)をさらに含む抗体軽鎖可変領域をコードする。
本発明はまた、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを提供する。例えば、一実施形態において、本発明は、a)配列番号1のアミノ酸配列を含む可変領域を有する抗体重鎖;およびb)配列番号2のアミノ酸配列を含む可変領域を有する抗体軽鎖をコードし、本明細書中で記載される1つまたは複数の置換(例えば、上記セクションII(A)(2)およびII(B)に記載される。)をさらに含む、組換え発現ベクターを提供する。
本発明は、1つまたは複数の本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞もまた提供する。なおさらには、本発明は、本発明の組換えヒト抗体が合成されるまで適切な培地中で本発明の宿主細胞を培養することによって、本発明の組換えヒト抗体を合成する方法を提供する。この方法は、培養培地から組換えヒト抗体を単離することをさらに含み得る。
本発明の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621頁に記載されるようなDHFR選択マーカーと共に使用される、UrlaubおよびChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220頁に記載されたdhfr−CHO細胞が含まれる。)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。特に、NSO骨髄腫細胞で使用するための別の好ましい発現系は、WO 87/04462、WO 89/01036およびEP 338,841中に開示されたGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞中に導入される場合、この抗体は、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは宿主細胞が増殖した培養培地中への抗体の分泌を可能にするのに充分な期間にわたり、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して、培養培地から回収され得る。
C.IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体の特徴付け
本発明は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに特異的に結合する、抗IL−12および/または抗IL−23 p40サブユニット抗体(それぞれ、本明細書中で、IL−12p40抗体およびIL−23p40抗体ともいう。)を提供する。本明細書中で使用する場合、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに「特異的に結合する」抗体は、1×10−7M以下、より好ましくは5×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは5×10−9M以下、より好ましくは1x10−9M以下、より好ましくは5×10−10M以下、より好ましくは1×10−10M以下、より好ましくは1×10−11以下のKdでIL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する抗体をいう意図である。
用語、タンパク質または細胞に「実質的に結合しない」は、本明細書中で使用する場合、そのタンパク質または細胞に対して結合しないまたは高い親和性で結合しないこと、即ち、1×10−6M以上、より好ましくは1×10−5M以上、より好ましくは1×10−4M以上、より好ましくは1×10−3M以上、さらにより好ましくは1×10−2M以上のKdでタンパク質または細胞に結合することを意味する。
本発明が提供する抗IL−12および/または抗IL−23 p40サブユニット抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに対する高い親和性での結合により、場合によって特徴付けられ得る。抗原に対する抗体の親和性またはアビディティーは、任意の適切な方法を使用して実験的に決定され得る。(例えば、Berzofskyら、「Antibody−Antigen Interactions」、In Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press:New York、N.Y.(1984);Kuby、Janis Immunology、W.H.Freeman and Company:New York、N.Y.(1992);および本明細書中に記載される方法を参照のこと。)。特定の抗体−抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定された場合には変動し得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ(例えば、Ka)の測定は、抗体および抗原の標準化溶液、ならびに本明細書中に記載される緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行うことが好ましい。例えばELISA、ウエスタンブロットおよびRIAを含む、IL−12/IL−23のp40サブユニットに対する抗体の結合能を評価するための標準的なアッセイが、当技術分野で公知である。抗体の結合動態学(例えば、結合親和性)もまた、当技術分野で公知の標準的なアッセイ、例えば、ELISA、ScatchardおよびBiacore分析によって、評価され得る。
用語「Kd」は、本明細書中で使用する場合、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数をいう意図であり、モル濃度(M)で表現される。抗体のKd値は、当技術分野で充分確立された方法を試用して決定され得る。抗体のKdを決定するための好ましい方法は、Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを好ましくは使用して、表面プラズモン共鳴を使用することによる。
抗体の解離速度定数(koff)は、表面プラズモン共鳴によって決定され得る。一般に、表面プラズモン共鳴分析は、リガンド(例えば、バイオセンサマトリックス上に固定化された組換えヒトIL−12)と分析物(溶液中の抗体)との間のリアルタイムの結合相互作用を、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor、Piscataway、N.J.)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定する。表面プラズモン分析は、分析物(バイオセンサマトリックス上の抗体)を固定化し、リガンド(例えば、溶液中の組換えIL−12)を提示することによっても、実施され得る。
語句「表面プラズモン共鳴」には、例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)を使用した、バイオセンサマトリックス内のタンパク質濃度における変更の検出によって、リアルタイムの生体分子特異的な相互作用の分析を可能にする光学現象が含まれる。さらなる説明については、Jonsson,U.ら(1993)Ann.Biol.Clin.51:19−26頁;Jonsson,U.ら(1991)Biotechniques 11:620−627頁;Johnsson,B.ら(1995)J.Mol.Recognit.8:125−131頁;およびJohnnson,B.ら(1991)Anal.Biochem.198:268−277頁を参照のこと。
特定の実施形態において、本発明が提供する抗体は、広範な親和性(Kd)で、IL−12(例えば、ヒトIL−12)および/またはIL−23(例えば、ヒトIL−23)のp40サブユニットに結合し得る。一実施形態において、本発明の抗体は、高い親和性でヒトIL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。例えば、抗体は、約10−7M以下のKd、例えば、これらに限定されないが、0.1−9.9(またはその中の任意の範囲もしくは値)×10−7、10−8、10−9、10−10、10−11、10−12、10−13またはその中の任意の範囲もしくは値で、ヒトIL−12および/またはヒトIL−23のp40サブユニットに結合し得る。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−6M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−7M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−8M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−9M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−10M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−11M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−12M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。一実施形態において、本発明の抗体は、約1×10−13M以下のKdで、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合する。種々の実施形態において、本発明の抗体は、5×10−8M以下のKd、1×10−8M以下のKd、5×10−9M以下のKd、1×10−9M以下のKd、5×10−10M以下のKd、または1×10−10M以下のKdで、p40サブユニット含有サイトカイン、例えば、IL−12および/またはIL−23に結合する。
特定の他の実施形態において、本発明が提供する抗体は、表面プラズモン共鳴によって決定されるように、0.1s−1以下のkoff速度定数で、IL−12(例えば、ヒトIL−12)および/またはIL−23(例えば、ヒトIL−23)のp40サブユニットに結合し得る。一実施形態において、単離されたIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット抗体またはその抗原結合部分は、1×10−2s−1以下のkoff速度定数で、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットから解離する。より好ましい実施形態において、単離されたIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット抗体、またはその抗原結合部分は、1×10−3s−1以下のkoff速度定数で、IL−12および/もしくはヒトIL−23、ならびに/またはそれらのp40サブユニットから解離する。より好ましい実施形態において、単離されたIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット抗体またはその抗原結合部分は、1×10−4s−1以下のkoff速度定数で、IL−12および/もしくはIL−23、ならびに/またはそれらのp40サブユニットから解離する。より好ましい実施形態において、単離されたIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット抗体、またはその抗原結合部分は、1×10−5s−1以下のkoff速度定数で、IL−12および/もしくはIL−23、ならびに/またはそれらのp40サブユニットから解離する。
種々の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、中和する。本発明により提供される抗体またはその抗原結合部分の中和活性は、本明細書中に記載されるいくつかの適切なインビトロアッセイのうち1つまたは複数を使用して評価され得る。「中和抗体」(または「IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの活性を中和する抗体」もしくは「IL−12および/またはIL−23の活性を中和する抗体」)には、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに対するその結合が、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの生物学的活性、例えば、IL−12および/またはIL−23の生物学的活性の阻害を生じる、抗体が含まれる。この生物学的活性の阻害は、IL−12/23のp40サブユニットならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23の生物学的活性のうち1つまたは複数の指標(例えば、米国特許第6,914,128号(その全内容は、参照により本明細書中に組み込む。)に詳細に記載されるような、例えば、フィトヘマグルチニン芽球増殖アッセイ(PHAアッセイ)におけるヒトフィトヘマグルチニン芽球増殖の阻害、ヒト芽細胞によるIL−12誘導性のインターフェロンγ産生の阻害(IFNγアッセイ)、またはIL−12(またはIL−23)レセプター結合アッセイ(RBAアッセイ)におけるレセプター結合の阻害)を測定することによって評価され得る。IL−12/23のp40サブユニットならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23の生物学的活性のこれらの指標は、当技術分野で公知のいくつかの標準的なインビトロアッセイまたはインビボアッセイのうち1つまたは複数によって評価され得る。
抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体は、PHA芽球増殖(その増殖は、IL−12によって刺激される。)を阻害する能力について評価され得る。標準的なアッセイにおいて、抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体の段階希釈物が、マイクロタイタープレート(U底、96ウェル、Costar、Cambridge、MA)において、100mlのRPMI完全培地中230pg/mlのhIL−12と共に、37℃、5%CO2で1時間事前インキュベートされる。PHA芽細胞が単離され、1回洗浄され、RPMI完全培地中に3×105細胞/mlの細胞密度になるように再懸濁される。PHA芽球(100ml、3×104細胞)が抗体/hIL−12混合物中に添加され、37℃、5%CO2で3日間インキュベートされ、0.5mCi/ウェルの(3H)−チミジン(Amersham、Arlington Heights、IL)で4−6時間標識される。培養物内容は、細胞収集器(Tomtec、Orange、CT)によってグラスファイバーフィルター上で収集され、細胞DNAへの(3H)−チミジン取り込みが、液体シンチレーション計数によって測定される。
したがって、一実施形態において、本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、1×10−6M以下のIC50で、インビトロフィトヘマグルチニン芽球増殖アッセイ(PHAアッセイ)においてフィトヘマグルチニン芽球増殖を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、1×10−7M以下のIC50で、インビトロフィトヘマグルチニン芽球増殖アッセイ(PHAアッセイ)においてフィトヘマグルチニン芽球増殖を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、1×10−8M以下のIC50で、インビトロPHAアッセイにおいてフィトヘマグルチニン芽球増殖を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、1×10−9M以下のIC50で、インビトロPHAアッセイにおいてフィトヘマグルチニン芽球増殖を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、1×10−10M以下のIC50で、インビトロPHAアッセイにおいてフィトヘマグルチニン芽球増殖を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、1×10−11M以下のIC50で、インビトロPHAアッセイにおいてフィトヘマグルチニン芽球増殖を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、1×10−12M以下のIC50で、インビトロPHAアッセイにおいてフィトヘマグルチニン芽球増殖を阻害する。
PHA芽球によるIFNγ産生(この産生は、IL−12によって刺激される。)を阻害する抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体の能力は、以下のように分析され得る。種々の濃度の抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体が、マイクロタイタープレート(U底、96ウェル、Costar)において、100mlのRPMI完全培地中200−400pg/mlのhIL−12と共に、37℃、5%CO2で1時間事前インキュベートされる。PHA芽細胞が単離され、1回洗浄され、RPMI完全培地中に1×107細胞/mlの細胞密度になるように再懸濁される。PHA芽球(1×106細胞が100μl)が抗体/hIL−12混合物中に添加され、37℃および5%CO2で18時間インキュベートされる。インキュベーション後、150μlの無細胞上清が、各ウェルから取り出され、産生されたヒトIFNγのレベルが、ELISA(Endogen Interferon gamma ELISA、Endogen、Cambridge、MA)によって測定される。
したがって、他の実施形態において、本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、約1.0×10−8MのIC50値で、ヒト芽細胞によるIL−12誘導性のインターフェロンγ産生を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、約1.0×10−9MのIC50値で、ヒト芽細胞によるIL−12誘導性のインターフェロンγ産生を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、約1.0×10−10MのIC50値で、ヒト芽細胞によるIL−12誘導性のインターフェロンγ産生を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、約1.0×10−11MのIC50値で、ヒト芽細胞によるIL−12誘導性のインターフェロンγ産生を阻害する。一実施形態において、本発明の抗体は、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットに結合し、約1.0×10−12MのIC50値で、ヒト芽細胞によるIL−12誘導性のインターフェロンγ産生を阻害する。
抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体がIL−23の活性を阻害する能力は、公知の方法およびアッセイ、例えば、当技術分野で公知の(IL−23タンパク質、IL−23アッセイおよびIL−12アッセイについての記載および言及については、例えば、IL−23の下で、www.copewithcytokines.de(その内容は、参照により本明細書中に全体を組み込む。)を参照のこと。)および本明細書中に記載される方法およびアッセイを使用して、分析され得る。例えば、ヒトIL−23は、PHA芽球T細胞およびメモリーT細胞によるIFNγの産生を刺激することが示されており、また、両方の細胞型の増殖を誘導することも示されている。したがって、抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体がPHA芽球によるIFNγの産生(この産生は、IL−23によって刺激される。)を阻害する能力は、IL−12に関して上記したように分析され得る。さらに、抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体は、PHA芽球増殖(その増殖は、IL−23によって刺激される。)を阻害する能力について、IL−12に関して上記したように評価され得る。IL−23およびIL−12は共に、JAK2、TYK2ならびにSTAT1、STAT3、STAT4およびSTAT5を含む同じシグナル伝達分子を活性化する。IL−12と比較して、IL−23に応答したSTAT4活性化はかなり弱く、異なるDNA結合STAT複合体が形成する。IL−23は、IL−12レセプターのβ1サブユニットに結合するがβ2サブユニットには結合せず、STATタンパク質の1つSTAT4を、PHA芽球T細胞において活性化する。したがって、抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体がPHA芽球(blasy)T細胞におけるSTAT4の活性化を阻害する能力が、分析され得る(例えば、Parhamら、Journal of Immunology 168(11):5699−5708頁 2002(その全内容は、本明細書により参照により本明細書中に組み込む。)中に記載されるアッセイを参照のこと。)。Shimozatoら(Immunology 117(1):22−28頁(2006))は、IL−23機能、特に脾細胞におけるIL−23誘導性のサイトカイン(例えば、IFNγ)産生が、IL−12−p40のp40サブユニット(これは、IL−23レセプターとの結合について競合する。)によって阻害されることを報告している。したがって、抗IL−12/IL−23 p40サブユニット抗体が脾細胞におけるサイトカイン(例えば、IFNγ)の活性化を阻害する能力が、例えば、Shimozatoら(その全内容は、本明細書により参照により本明細書中に組み込む。)に記載されたように分析され得る。
別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、低い毒性を有する。特に、抗体またはその抗原結合部分(個々の成分、例えば可変領域、定常領域およびフレームワークが、個々におよび/または集合的に、低い免疫原性を有する。)が、本発明において有用である。本発明において使用され得る抗体は、場合によって、症状の測定可能な軽減ならびに低いおよび/または許容可能な毒性を伴い、長期にわたって患者を治療する能力を特徴とする。低いもしくは許容可能な免疫原性および/または高い親和性、ならびに他の適切な特性は、達成される治療結果に寄与し得る。「低い免疫原性」は、約75%未満、または好ましくは約50%未満の治療された患者において、顕著なHAHA、HACAまたはHAMA応答を生じさせる、および/または治療された患者において低い力価(二重抗原酵素イムノアッセイ(double antigen enzyme immunoassay)で測定して、約300未満、好ましくは約100未満)を生じさせるとして、本明細書中で規定される(Elliottら、Lancet 344:1125−1127頁(1994)(これは、参照によって本明細書中に全体を組み込む。))。「低い免疫原性」は、同じように治療した患者における本発明の抗IL−12抗体および/または抗IL−23抗体に対する抗体の力価決定可能なレベルの発生率としても規定され得、治療期間の間の推奨された治療過程にわたり推奨された用量で治療された患者の25%未満、好ましくは治療された患者の10%未満で生じると規定される。
本発明の抗体は、例えば標準的なELISAによって、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニット(例えば、本明細書中のセクションIV(A)、IV(C)ならびに/または表3および表4中に記載されるような、一部分、ドメイン、部位またはエピトープ)に対する結合について試験され得る。簡潔に述べると、マイクロタイタープレートが、PBS中0.25μg/mlで、精製されたp40サブユニット(または好ましいp40ドメイン)で被覆され、次いで、PBS中5%のウシ血清アルブミンでブロッキングされる。抗体の希釈物(例えば、免疫したマウス、例えば、p40サブユニットドメインで免疫したマウス由来の血漿の希釈物)が各ウェルに添加され、37℃で1−2時間インキュベートされる。プレートはPBS/Tweenで洗浄され、次いでアルカリホスファターゼにコンジュゲート化された二次試薬(例えば、ヒト抗体に対しては、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)と共に37℃で1時間インキュベートされる。洗浄後、プレートは、pNPP基質(1mg/ml)で発色させ、405−650のODで分析される。好ましくは、最も高い力価を生じるマウスが、融合のために使用される。
上記のELISAアッセイは、免疫原との陽性の反応性を示すハイブリドーマについてスクリーニングするためにも使用され得る。例えば、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニット(例えば、本明細書中のセクションIV(A)、IV(C)ならびに/または表3および表4中に記載されるような、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの一部分、ドメイン、部位またはエピトープ)に高いアビディティーで結合するハイブリドーマがサブクローニングされ、さらに特徴付けられる。親細胞の反応性を保持する(ELISAによる)各ハイブリドーマからの1つのクローンが、−140℃で保存される5−10バイアルの細胞バンクを作製するために、および抗体精製のために選択され得る。
抗IL−12および/またはIL−23 p40サブユニット抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマが、モノクローナル抗体精製のために2リットルのスピナーフラスコ中で増殖され得る。上清が濾過され、濃縮され、その後プロテインA−セファロース(Pharmacia、Piscataway、NJ)での親和性クロマトグラフィーにかけられ得る。溶出したIgGは、純度を確認するために、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによってチェックされ得る。緩衝溶液がPBSに交換され得、濃度が、1.43吸光係数を使用してOD280によって決定され得る。モノクローナル抗体は、アリコート化され、−80℃で保存され得る。
選択されたモノクローナル抗体が独自のエピトープに結合するか否かを決定するために、各抗体が、市販の試薬(Pierce、Rockford、IL)を使用して、ビオチン化され得る。未標識モノクローナル抗体およびビオチン化モノクローナル抗体を使用した競合研究が、上記のようにIL−12および/またはIL−23のp40サブユニット(例えば、本明細書中のセクションIV(A)、IV(C)ならびに/または表3および表4中に記載されるような、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの一部分、ドメイン、部位またはエピトープ)で被覆されたELISAプレートを使用して実施され得る。ビオチン化mAb結合は、ストレプ−アビジン(strep−avidin)−アルカリホスファターゼプローブを用いて検出され得る。
精製された抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプELISAが、特定のアイソタイプの抗体に特異的な試薬を使用して実施され得る。例えば、ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプを決定するために、マイクロタイタープレートのウェルが、1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンで4℃で一晩被覆され得る。1%BSAでブロッキングした後、プレートを、1または2時間にわたり周囲温度で1μg/ml以下の試験モノクローナル抗体または精製されたアイソタイプ対照と反応させる。次いで、ウェルを、ヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼコンジュゲート化プローブのいずれかと反応させ得る。プレートは、上記のように発色および分析される。
抗IL−12および/またはIL−23 p40サブユニットヒトIgGは、本明細書中に記載されるように、ウエスタンブロットによって、IL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットまたはそのドメインとの反応性についてさらに試験され得る。簡潔に述べると、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニット(例えば、本明細書中のセクションIV(A)、IV(C)ならびに/または表3および表4中に記載されるような、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットの一部分、ドメイン、部位またはエピトープ)が調製され得、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供され得る。電気泳動後、分離された抗原は、ニトロセルロースメンブレンに移され、10%胎仔ウシ血清でブロッキングされ、試験すべきモノクローナル抗体で探査される。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを使用して検出され得、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem.Co.、St.Louis、Mo.)を用いて発色され得る。
エピトープマッピングが、本発明の抗体またはその抗原結合断片の結合部位を決定するために使用され得る。立体配座エピトープのマッピングをさらに可能にするいくつかの方法が利用可能である。例えば、Timmermanら(Mol Divers.2004;8(2):61−77頁)に開示された方法が使用され得る。Timmermanらは、2つの新規技術、ドメインスキャン(Domain Scan)およびマトリックススキャン(Matrix Scan)を使用して、不連続/立体配座エピトープを首尾よくマッピングできた。Ansongら(J Thromb Haemost.2006.4(4):842−7頁)に開示された技術もまた使用され得る。Ansongらは、抗体R8B12によって認識される不連続エピトープをマッピングするために、親和性指向質量分析(affinity directed mass spectrometry)を使用した。さらに、タンパク質断層撮影(Protein Tomography)などの画像化技術が、標的RTKへの抗体またはペプチドの結合を可視化するために使用され得る。タンパク質断層撮影は、分子相互作用に関する洞察を得るために以前から使用されており、阻害抗体が、EGFRのドメインIIIに結合することによって作用し、それにより、EGFRを柔軟性のない不活性な立体配座に縛り付けることを示すために使用された(Lammertsら、Proc Natl Acad Sci USA.2008.105(16):6109−14頁)。部位特異的変異誘発などのより伝統的な方法もまた、不連続エピトープをマッピングするために適用され得る。不連続エピトープに関与すると考えられているアミノ酸領域が、選択的に変異され得、本発明の抗体またはその抗原結合断片への結合についてアッセイされ得る。いずれかの領域が変異したときに抗体が結合できないことは、結合が、両方のアミノ酸セグメントに依存していることを示し得る。上記のように、いくつかの線状エピトープは、本発明の部分に結合するために存在しなくてはならない特定の3次元構造を特徴とする。かかるエピトープは、IL−12および/またはIL−23のp40サブユニットがそのネイティブ状態または折り畳まれた状態にある場合、またIL−12および/またはIL−23のp40サブユニットが変性した場合に、抗体の結合をアッセイすることによって発見され得る。折り畳まれた状態でのみ結合が生じるという観察は、そのエピトープが、特定の折り畳まれた構造を特徴とする線状エピトープまたは折り畳まれたタンパク質中にのみ存在する不連続エピトープのいずれかであることを示す。
VI.本発明の抗体を含む医薬組成物および医薬品投与
本発明の抗体および抗体部分は、対象への投与に適した医薬組成物中に取り込まれ得る。典型的には、医薬組成物は、本発明の抗体または抗体部分および薬学的に許容される担体を含む。本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性の任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される担体の例には、1つまたは複数の水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。薬学的に許容される担体は、抗体または抗体部分の保存可能期間または有効性を増強する、微量の補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝剤をさらに含み得る。
本発明の抗体および抗体部分は、非経口投与に適した医薬組成物中に取り込まれ得る。好ましくは、抗体または抗体部分は、0.1−250mg/mlの抗体を含む注射可能な溶液として調製される。注射可能な溶液は、フリントもしくはアンバーバイアル、アンプルまたは事前充填されたシリンジ中の、液体または凍結乾燥投薬形態のいずれかで構成され得る。緩衝液は、最適には5−10mMの、pH5.0−7.0(最適にはpH6.0)の、L−ヒスチジン(1−50mM)であり得る。他の適切な緩衝液には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。塩化ナトリウムは、0−300mM(最適には、液体投薬形態について150mM)の濃度で、溶液の毒性を改変するために使用され得る。抗凍結剤(主に0−10%のスクロース(最適には0.5−1.0%))が、凍結乾燥投薬形態に含まれ得る。他の適切な抗凍結剤には、トレハロースおよびラクトースが含まれる。充填剤(主に1−10%のマンニトール(最適には24%))が、凍結乾燥投薬形態に含まれ得る。安定剤(主に1−50mMのL−メチオニン(最適には5−10mM))が、液体および凍結乾燥投薬形態の両方において使用され得る。他の適切な充填剤には、グリシン、アルギニンが含まれ、0−0.05%のポリソルベート−80(最適には0.005−0.01%)として含まれ得る。さらなる界面活性剤には、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
好ましい実施形態において、医薬組成物は、約0.01mg/kg−10mg/kgの投薬量で抗体を含む。抗体のより好ましい投薬量には、1週間おきに投与される1mg/kgまたは毎週投与される0.3mg/kgが含まれる。
本発明の組成物は、種々の形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体および固体の投薬形態、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液および注入可能な溶液)、分散物または懸濁物、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤が含まれる。好ましい形態は、投与適用および治療適用の意図した様式に依存する。典型的な好ましい組成物は、注射可能な溶液または注入可能な溶液の形態、例えば、他の抗体によるヒトの受動免疫に使用される組成物と同様の組成物である。投与の好ましい様式は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋内)である。好ましい実施形態において、抗体は、静脈内注入または静脈内注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、抗体は、筋内注射または皮下注射によって投与される。
治療組成物は典型的に、製造および保存の条件下で無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散物、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序化された構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、上で列挙した成分のうち1つまたは成分の組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要な量で活性化合物(即ち、抗体または抗体部分)を取り込み、必要に応じてその後濾過滅菌することによって、調製され得る。一般に、分散物は、塩基性分散媒および上で列挙した必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の凍結乾燥散剤の場合、好ましい調製方法は、事前に無菌濾過したその溶液から、活性成分+任意のさらなる所望の成分の散剤を生じる、真空乾燥および噴霧乾燥である。溶液の適切な流動性が、例えば、レクチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによって、もたらされ得る。
本発明の抗体および抗体部分は、当技術分野で公知の種々の方法によって投与され得るが、多くの治療適用について、投与の好ましい経路/様式は、皮下注射、静脈内注射または注入である。当業者に理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変動する。特定の実施形態において、活性化合物は、化合物を迅速な放出から保護する担体を用いて調製され得る(例えば、徐放性製剤(移植物、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系が含まれる。))。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用され得る。かかる製剤の調製のための多数の方法が特許されており、または当業者に一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978を参照のこと。
特定の実施形態において、本発明の抗体または抗体部分は、例えば不活性希釈剤または同化可能な食用担体を用いて経口投与され得る。化合物(および望ましい場合には他の成分)はまた、硬殻ゼラチンカプセルもしくは軟殻ゼラチンカプセル中に封入され得、錠剤へと圧縮され得、または対象の食餌中に直接取り込まれ得る。経口治療投与のために、化合物は、賦形剤と共に取り込まれ得、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁物、シロップ、ウエハなどの形態で使用され得る。非経口投与以外で本発明の化合物を投与するために、その不活性化を防止する物質で化合物を被覆するまたはその不活性化を防止する物質と化合物を同時投与することが必要な場合がある。
補足的な活性化合物も、組成物中に取り込まれ得る。特定の実施形態において、本発明の抗体または抗体部分は、IL−12および/またはIL−23の活性が有害である障害を治療するために有用な1つまたは複数のさらなる治療剤と同時製剤化および/または同時投与される。例えば、本発明の抗IL−12抗体、抗IL−23抗体および/もしくは抗p40抗体または抗体部分は、他の標的に結合する1つまたは複数のさらなる抗体(例えば、他のサイトカインに結合する抗体または細胞表面分子に結合する抗体)と同時製剤化および/または同時投与され得る。さらに、1つまたは複数の本発明の抗体は、上記治療剤のうち2つ以上と併用して使用され得る。かかる併用療法は、より低い投薬量の投与される治療剤を有利に利用し得、したがって、種々の単独療法に伴って起こり得る毒性または合併症を回避し得る。本発明の抗体が併用療法の一部として使用される場合、抗体単独が対象に投与される場合よりも低い投薬量の抗体が望まれ得ることが、当業者に理解される(例えば、相乗的な治療効果は、併用療法の使用を介して達成され得、この併用療法は次に、所望の治療効果を達成するためにより低い用量の抗体を使用することを可能にする。)。
インターロイキン12および/または23は、免疫および炎症要素が関与する種々の疾患に伴う病理において重要な役割を果たす。これらの疾患には、以下が含まれるがこれらに限定されない:関節リウマチ、変形性関節症、若年性関節リウマチ、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎強皮症、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主病、臓器移植片拒絶、臓器移植に伴う急性または慢性の免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム動脈硬化症、播種性血管内凝固、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、腎臓の微視的血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染性疾患、寄生虫症、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、孤発性、多腺性機能不全I型および多腺性機能不全II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清反応陰性関節症、関節症、ライター症候群、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸炎性滑膜炎、クラミジア、エルシニアおよびサルモネラ関連関節症、脊椎関節症(spondyloarthopathy)、アテローム性疾患/動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱症、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、原因不明自己免疫性肝炎、後天性免疫不全病症候群、後天性免疫不全関連疾患、C型肝炎、分類不能型免疫不全(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣機能不全、早期卵巣機能不全、線維性肺疾患、原因不明の線維化性胞隔炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織病関連間質性肺疾患、全身性強皮症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性胆管炎性びまん性肺疾患、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的な自己免疫性またはルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫介在性低血糖、黒色表皮腫を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎疾患NOS、糸球体腎炎、腎臓の微視的血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、男性不妊症特発性またはNOS、***自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプ)、インスリン依存性糖尿病、交感性眼炎、結合組織病に二次的な肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スチル病、全身性強皮症、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫性昏睡、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎および白斑。本発明のヒト抗体および抗体部分は、自己免疫疾患、特に炎症を伴う自己免疫疾患(リウマチ性脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎が含まれる。)を治療するために使用され得る。
したがって、特定の態様において、本発明は、本明細書中に記載された任意の抗体またはそれらの併用の有効量を投与することを含む、疾患または障害を治療する方法を提供し、この抗体または抗体の併用は、疾患または障害を寛解するのに有効である。特定の実施形態において、本発明の抗体は、薬学的に許容される担体および/または賦形剤と共に投与される。
好ましくは、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、以下により詳細に記載されるように、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病および乾癬を治療するために使用される。
本発明のヒト抗体または抗体部分はまた、自己免疫疾患および炎症性疾患の治療において有用な1つまたは複数のさらなる治療剤と共に投与され得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、かかる疾患を治療するために、単独でまたは併用して使用され得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分が、単独でまたはさらなる薬剤(例えば治療剤)と併用して使用され得、前記さらなる薬剤が、その意図した目的のために当業者により選択されることを理解すべきである。例えば、さらなる薬剤は、本発明の抗体によって治療される疾患または状態を治療するために有用であると当技術分野で認識された治療剤であり得る。さらなる薬剤はまた、治療組成物に有益な特質を付与する薬剤、例えば、組成物の粘性をもたらす薬剤であり得る。
本発明の範囲内に含まれる併用は、その意図した目的に有用な併用であることを、さらに理解すべきである。以下に示す薬剤は例示目的であり、限定を意図しない。本発明の一部である併用は、本発明の抗体および以下のリストから選択される少なくとも1つのさらなる薬剤であり得る。その併用が、形成された組成物がその意図した機能を実行できるようなものである場合、この併用はまた、1つより多いさらなる薬剤、例えば、2つまたは3つのさらなる薬剤を含み得る。
したがって、さらなる実施形態において、本発明の抗体は、場合によって、抗感染薬物、心血管(CV)系薬物、中枢神経系(CNS)薬物、自律神経系(ANS)薬物、気道薬物、胃腸(G1)管薬物、ホルモン薬物、体液バランスまたは電解質バランスのための薬物、血液系薬物、抗悪性腫瘍薬、免疫調節薬物、眼、耳もしくは鼻の薬物、外用薬物、栄養薬物などのうち少なくとも1つから選択される少なくとも1つの化合物またはタンパク質の有効量をさらに含み得る。本明細書中に提示されるそれぞれについて、製剤、適応症、投薬および投与を含めて、かかる薬物は当技術分野で周知である(例えば、Nursing 2001 Handbook of Drugs、第21版、Springhouse Corp.、Springhouse、Pa.、2001;Health Professional’s Drug Guide 2001、編、Shannon、Wilson、Stang、Prentice−Hall,Inc、Upper Saddle River、N.J.;Pharmcotherapy Handbook、Wellsら編、Appleton&Lange、Stamford,Conn.を参照のこと。これらはそれぞれ、参照により本明細書中に全体を組み込む。)。
好ましい併用は、イブプロフェンなどの薬物を含む、NSAIDSとも呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬物(複数可)である。他の好ましい併用は、プレドニゾロンを含むコルチコステロイドであり、ステロイド使用の周知の副作用は、本発明の抗IL−12抗体と併用して患者を治療する場合には、要求されるステロイド用量を次第に少なくすることによって、低下またはさらには排除され得る。本発明の抗体または抗体部分が併用され得る関節リウマチのための治療剤の非限定的な例には以下が含まれる:サイトカイン抑制性抗炎症薬物(複数可)(CSAID);他のヒトサイトカインまたは成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGF)に対する抗体またはそれらのアンタゴニスト。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、細胞表面分子、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、またはCD154(gp39またはCD40L)を含む他のリガンドに対する抗体と併用され得る。
治療剤の好ましい併用は、自己免疫および引き続く炎症カスケード中の異なる地点において妨害し得、好ましい例には、TNFアンタゴニスト、例えばキメラ、ヒト化もしくはヒトTNF抗体、D2E7(米国特許出願第08/599,226号、1996年2月9日出願)、cA2(Remicade(商標))、CDP571、抗TNF抗体断片(例えば、CDP870)、および可溶性p55またはp75 TNFレセプター、その誘導体(p75TNFRIgG(Enbrel(商標))またはp55TNFR1gG(Lenercept)、可溶性IL−13レセプター(sIL−13)、およびまたTNFα変換酵素(TACE)インヒビター;同様にIL−1インヒビター(例えば、インターロイキン−1変換酵素インヒビター、例えば、Vx740またはIL−1RAなど)が含まれ、同じ理由で有効であり得る。他の好ましい併用は、インターロイキン11、抗P7sおよびp−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)を含む。なお別の好ましい併用は、IL−12機能と平行して、IL−12機能に依存して、またはIL−12機能に関連して作用し得る自己免疫応答の他の重要なプレーヤーであり、特に好ましいものは、IL−18抗体もしくは可溶性IL−18レセプター、またはIL−18結合タンパク質を含む、IL−18アンタゴニストである。IL−12およびIL−18は、重複するが別個の機能を有しており、両方に対するアンタゴニストの併用は、最も有効であり得ることが示されている。なお別の好ましい併用は、非枯渇性抗CD4インヒビターである。なお他の好ましい併用は、抗体、可溶性レセプターまたはアンタゴニストリガンドを含む、同時刺激経路CD80(B7.1)またはCD86(B7.2)のアンタゴニストを含む。
本発明の抗体またはその抗原結合部分は、メトトレキサート、6−MP、アザチオプリンスルファサラジン、メサラジン、オルサラジンクロロキニン(chloroquinine)/ヒドロキシクロロキン、ペンシラミン(pencillamine)、金チオリンゴ酸塩(筋内および経口)、アザチオプリン、コチシン(cochicine)、コルチコステロイド(経口、吸入および局所注射)、β−2アドレナリンレセプターアゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテラール(salmeteral))、キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン)、クロモグリケート、ネドクロミル、ケトチフェン、イプラトロピウムおよびオキシトロピウム、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えばイブプロフェン、コルチコステロイド、例えばプレドニゾロン、ホスホジエステラーゼインヒビター、アデンソシン(adensosine)アゴニスト、抗血栓剤、補体インヒビター、アドレナリン系薬剤、炎症促進性サイトカイン、例えば、TNFαまたはIL−1によるシグナル伝達を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼインヒビター)、IL−1β変換酵素インヒビター(例えば、Vx740)、抗P7s、p−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、TNFα変換酵素(TACE)インヒビター、T細胞シグナル伝達インヒビター、例えば、キナーゼインヒビター、メタロプロテイナーゼインヒビター、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素インヒビター、可溶性サイトカインレセプターおよびその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75 TNFレセプターおよび誘導体p75TNFRIgG(Enbrel(商標))およびp55TNFRIgG(Lenercept))、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R、可溶性IL−13レセプター(sIL−13))および抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13およびTGFβ)などの薬剤とも併用され得る。好ましい併用は、メトトレキサートまたはレフルノミドを含み、中程度または重篤な関節リウマチの場合、シクロスポリンを含む。
本発明の抗体または抗体部分が併用され得る炎症性腸疾患のための治療剤の非限定的な例には、以下が含まれる:ブデノシド(budenoside);上皮成長因子;コルチコステロイド;シクロスポリン、スルファサラジン;アミノサリチル酸塩;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼインヒビター;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサンインヒビター;IL−1レセプターアンタゴニスト;抗IL−1αモノクローナル抗体;抗IL−6モノクローナル抗体;成長因子;エラスターゼインヒビター;ピリジニル−イミダゾール化合物;他のヒトサイトカインまたは成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGF)に対する抗体またはそれらのアンタゴニスト。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、細胞表面分子、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD90またはそれらのリガンドに対する抗体と併用され得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、メトトレキサート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えばイブプロフェン、コルチコステロイド、例えばプレドニゾロン、ホスホジエステラーゼインヒビター、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体インヒビター、アドレナリン系薬剤、炎症促進性サイトカイン、例えばTNFαまたはIL−1によるシグナル伝達を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼインヒビター)、IL−1β変換酵素インヒビター(例えば、Vx740)、抗P7s、p−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、TNFα変換酵素インヒビター、T細胞シグナル伝達インヒビター、例えばキナーゼインヒビター、メタロプロテイナーゼインヒビター、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素インヒビター、可溶性サイトカインレセプターおよびその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75 TNFレセプター、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R、可溶性IL−13レセプター(sIL−13))および抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13およびTGFβ)などの薬剤とも併用され得る。
抗体または抗原結合部分が併用され得るクローン病のための治療剤の好ましい例には、以下が含まれる:TNFアンタゴニスト、例えば、抗TNF抗体、D2E7(米国特許出願第08/599,226号、1996年2月9日出願)、cA2(Remicade(商標))、CDP571、抗TNF抗体断片(例えば、CDP870)、TNFR−Ig構築物(p75TNFRIgG(Enbrel(商標))およびp55TNFRIgG(Lenercept))、抗P7s、p−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、可溶性IL−13レセプター(sIL−13)およびPDE4インヒビター。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、コルチコステロイド、例えば、ブデノシドおよびデキサメタゾンと併用され得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、スルファサラジン、5−アミノサリチル酸およびオルサラジンなどの薬剤、およびIL−1などの炎症促進性サイトカインの合成または作用を妨害する薬剤、例えば、IL−1変換酵素インヒビター(例えば、Vx740)およびIL−1raとも併用され得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、T細胞シグナル伝達インヒビター、例えば、チロシンキナーゼインヒビター6−メルカプトプリンと共に使用され得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、IL−11と併用され得る。
本発明の抗体または抗体部分が併用され得る多発性硬化症のための治療剤の非限定的な例には、以下が含まれる:コルチコステロイド;プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン;メトトレキサート;4−アミノピリジン;チザニジン;インターフェロン−β1a(Avonex;Biogen);インターフェロン−β1b(Betaseron;Chiron/Berlex);コポリマー1(Copolymer 1)(Cop−1;Copaxone;Teva Pharmaceutical Industries,Inc.);高圧酸素;静脈内免疫グロブリン;クラブリビン(clabribine);他のヒトサイトカインまたは成長因子(例えば、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGF)に対する抗体またはそのアンタゴニスト。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、細胞表面分子、例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90またはそれらのリガンドに対する抗体と併用され得る。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、メトトレキサート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えばイブプロフェン、コルチコステロイド、例えばプレドニゾロン、ホスホジエステラーゼインヒビター、アデンソシンアゴニスト、抗血栓剤、補体インヒビター、アドレナリン系薬剤、炎症促進性サイトカイン、例えばTNFαまたはIL−1などによるシグナル伝達を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼインヒビター)、IL−1β変換酵素インヒビター(例えば、Vx740)、抗P7s、p−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL)、TACEインヒビター、T細胞シグナル伝達インヒビター、例えばキナーゼインヒビター、メタロプロテイナーゼインヒビター、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素インヒビター、可溶性サイトカインレセプターおよびその誘導体(例えば、可溶性p55またはp75 TNFレセプター、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R、可溶性IL−13レセプター(sIL−13))および抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−13およびTGFβ)などの薬剤とも併用され得る。
抗体または抗原結合部分が併用され得る多発性硬化症のための治療剤の好ましい例には、以下が含まれる:インターフェロン−β、例えば、IFNβ1aおよびIFNβ1b;コパキソン(copaxone)、コルチコステロイド、IL−1インヒビター、TNFインヒビター、ならびにCD40リガンドおよびCD80に対する抗体。
本発明の医薬組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の本発明の抗体または抗体部分を含み得る。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量をいう。抗体または抗体部分の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに抗体または抗体部分が個体において所望の応答を惹起する能力などの因子に従って変動し得る。治療有効量はまた、抗体または抗体部分の任意の毒性効果または有害効果を、治療的に有益な効果が上回る量でもある。「予防有効量」は、所望の予防結果を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量をいう。典型的には、予防的用量は、疾患の初期段階の前または初期段階で対象において使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答または予防応答)を提供するために調整され得る。例えば、単一のボーラスが投与され得、いくつかの分割された用量が経時的に投与され得、または用量は、治療状況の緊急の要件によって示されるように、比例して低下または増加され得る。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書中で使用する場合、投薬単位形態は、治療される哺乳動物対象に対する単位の投薬量として適合された物理的に別個の単位をいい、各単位は、必要な医薬担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態のための仕様は、(a)活性化合物の独自の特徴、および達成すべき特定の治療効果または予防効果、および(b)個体における感受性の治療のためにかかる活性化合物を複合する際の当技術分野における固有の制限によって決定される、およびこれらに直接的に依存する。
本発明の抗体または抗体部分の治療有効量または予防有効量に関する例示的な非限定的な範囲は、0.01−20mg/kg、より好ましくは1−10mg/kg、なおより好ましくは0.3−1mg/kgである。投薬量の値は、軽減すべき状態の型および重篤度によって変動し得ることに留意すべきである。任意の特定の対象にとって、特定の投薬レジメンが、個体の要求、および組成物を投与するまたは組成物の投与を監督する人物の専門的な判断に従って経時的に調節すべきであること、本明細書中に示される投薬量範囲が例示に過ぎず、特許請求した組成物の範囲または実施を限定する意図ではないことを、さらに理解すべきである。
一実施形態において、本発明の抗体は、その全内容を参照により本明細書中に組み込む米国特許出願第12/625,057号(米国特許公開2010−0172862A2)に開示された医薬組成物中に含まれる。
VII.本発明の抗体の使用
IL−12、IL−23および/またはp40サブユニットに結合するその能力を考慮すると、本発明の抗体またはその部分(例えば、その断片の抗原結合部分)は、従来のイムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または組織免疫組織化学を使用して、IL−12、IL−23および/またはp40サブユニット(例えば、生物学的試料、例えば血清または血漿中の)を検出するために使用され得る。
したがって、別の態様において、本発明は、生物学的試料中のL−12、IL−23および/またはp40サブユニットを検出する方法を提供し、この方法は、生物学的試料を本発明の抗体または抗体部分と接触させること、およびL−12、IL−23および/もしくはp40サブユニットに結合した抗体(または抗体部分)または未結合の抗体(または抗体部分)のいずれかを検出することを含み、それにより、生物学的試料中のL−12、IL−23および/またはp40サブユニットを検出する。抗体は、結合した抗体または未結合の抗体の検出を容易にするために、検出可能な物質で直接的または間接的に標識される。適切な検出可能な物質には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ、適切な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン(dichlorotriazinylamine fluorescein)、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが含まれ、発光物質の例にはルミノールが含まれ、適切な放射性物質の例には、125I、131I、35Sまたは3Hが含まれる。
抗体を標識することの代替として、IL−12、IL−23および/またはp40サブユニットは、検出可能な物質で標識された組換え(「r」)IL−12および/またはrIL−23および/またはrp40標準、ならびに未標識の抗IL−12抗体および/または抗IL−23抗体および/または抗p40サブユニット抗体を利用する競合イムノアッセイによって、生物学的流体中でアッセイされ得る。このアッセイにおいて、生物学的試料、標識されたrIL−12および/またはrIL−23および/またはrp40標準、ならびに抗hIL−12抗体および/または抗IL−23抗体および/または抗p40サブユニット抗体が併用され、未標識の抗体に結合した、標識されたrIL−12および/またはrIL−23および/またはrp40標準の量が決定される。生物学的試料中のIL−12および/またはIL−23および/またはp40サブユニットの量は、それぞれ抗IL−12抗体および/または抗IL−23抗体および/または抗p40抗体に結合した、標識されたrIL−12および/またはrIL−23および/またはrp40サブユニット標準の量に反比例する。
本発明により包含される抗体(Y61およびJ695が含まれる。)は、ヒト以外の種由来のIL−12、特に、霊長類由来のIL−12および/またはIL−23および/またはp40を検出するためにも使用され得る。例えば、Y61は、カニクイザルおよびアカゲザルにおいてIL−12を検出するために使用され得る。J695は、カニクイザル、アカゲザルおよびヒヒにおいてIL−12を検出するために使用され得る。しかし、いずれの抗体も、マウスまたはラットのIL−12とは交差反応しない。
本発明の抗体および抗体部分は、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性を、インビトロおよびインビボで中和することが可能である。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、例えば、それらを含む細胞培養物において、ヒト対象において、または本発明の抗体が交差反応するIL−12および/もしくはIL−23および/もしくはp40を有する他の哺乳動物対象(例えば、ヒヒ、カニクイザルおよびアカゲザルなどの霊長類)において、IL−12および/またはIL−23および/またはp40の活性を阻害するために使用され得る。一実施形態において、本発明は、ヒトIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性、ならびにヒヒのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット、マーモセットのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット、チンパンジーのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット、カニクイザルのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット、ならびにアカゲザルのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットからなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる霊長類のIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性を中和するが、マウスのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性を中和しない、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分を提供する。好ましくは、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットは、ヒトのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットである。例えば、ヒトIL−12、IL−23ならびに/またはヒトIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットを含むまたは含むと疑われる細胞培養物において、培養物中のヒトIL−12、IL−23ならびに/またはヒトIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性を阻害するために、本発明の抗体または抗体部分が、培養培地に添加され得る。
別の実施形態において、本発明は、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性が有害である障害に罹患している対象において、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性を阻害する方法を提供する。IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットは、広範な種々の障害の病態生理に関与している(Windhagenら(1995)J.Exp.Med.182:1985−1996頁;Moritaら(1998)Arthritis and Rheumatism.41:306−314頁;Buchtら(1996)Clin.Exp.Immunol.103:347−367頁;Faisら(1994)J.Interferon Res.14:235−238頁;Pyrronchiら(1997)Am.J.Path.150:823−832頁;Monteleoneら(1997)Gastroenterology.112:1169−1178頁、およびBerrebiら(1998)Am.J.Path 152:667−672頁;Pyrronchiら(1997)Am.J.Path.150:823−832頁)。本発明は、かかる障害に罹患している対象においてIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性を阻害する方法を提供し、この方法は、対象におけるIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性が阻害されるように、本発明の抗体または抗体部分を対象に投与することを含む。好ましくは、IL−12、IL−23および/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットは、ヒトのIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットであり、対象はヒト対象である。その代わりに、対象は、本発明の抗体が交差反応するIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットを発現している哺乳動物であり得る。なおさらに、対象は、ヒトIL−12、ヒトIL−23ならびに/またはヒトIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットが(例えば、ヒトIL−12、ヒトIL−23ならびに/またはヒトIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの投与により、またはヒトIL−12、ヒトIL−23ならびに/またはヒトIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニット導入遺伝子の発現により)導入された哺乳動物であり得る。本発明の抗体は、治療目的(以下でさらに論じられる。)のためにヒト対象に投与され得る。さらに、本発明の抗体は、獣医学目的のためまたはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応するIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットを発現している非ヒト哺乳動物に投与され得る。後者に関して、かかる動物モデルは、本発明の抗体の治療有効性を評価(例えば、投薬量および投与の時間経過を試験)するために有用であり得る。
本明細書中で使用する場合、語句「IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性が有害である障害」は、その障害に罹患している対象におけるIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの存在が、障害の病態生理を担っていることが示された、もしくは障害の病態生理を担うと疑われる、または障害の悪化に寄与する因子であることが示された、もしくは障害の悪化に寄与する因子であると疑われる、疾患および他の障害を含む意図である。したがって、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性が有害である障害は、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性の阻害が、障害の症状および/または進行を軽減すると予測される障害である。かかる障害は、例えば、上記のように抗IL−12抗体、抗IL−23抗体ならびに/または抗IL−12および/もしくはIL−23 p40サブユニット抗体を使用して検出され得る、例えば、障害に罹患している対象の生物学的流体中のIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの濃度の増加(例えば、対象の血清、血漿、滑液など中のIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの濃度の増加)によって、証明され得る。IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの活性が有害である障害には多数の例が存在する。一実施形態において、抗体またはその抗原結合部分は、本明細書中に記載される疾患または障害を治療するための療法において使用され得る。別の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分は、本明細書中に記載される疾患または障害を治療するための医薬の製造に使用され得る。
さらなる態様において、本発明は、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性のうち少なくとも1つ、ならびに/または生物学的試料中のIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性のうち少なくとも1つを調節する薬剤のスクリーニングの方法を提供し、この方法は、試験される試料(例えば、研究する細胞、組織、器官、個体)を提供すること;本発明の抗体を提供すること(この抗体は、検出可能な標識を含む、または検出可能な標識を有する第2の分子によって検出可能である。);試験試料を試験薬剤(例えば、小分子化合物またはバイオポリマー)で処理すること;試験試料を抗体と接触させること;およびIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性、ならびに/または試料中のIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性を検出および/または測定することを含み、未処理の試料のものに対する、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性のうち少なくとも1つにおける増加または減少、ならびに/またはIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性のうち少なくとも1つにおける増加または減少は、IL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性のうち少なくとも1つ、ならびに/または試料中のIL−12、IL−23ならびに/またはIL−12および/もしくはIL−23のp40サブユニットの発現、量および/または活性のうち少なくとも1つを調節可能な薬剤を示す。
いくつかの非限定的な特定の障害の治療における本発明の抗体および抗体部分の使用が、以下でさらに論じられる:
関節リウマチ
インターロイキン−12は、関節リウマチなどの炎症性疾患において役割を果たすことが示されている。誘導性のIL−12 p40メッセージは、関節リウマチ患者由来の滑膜中で検出されており、IL−12は、関節リウマチ患者由来の滑液中に存在することが示されている(例えば、Moritaら(1998)Arthritis and Rheumatism 41:306−314頁を参照のこと。)。IL−12陽性細胞は、関節リウマチ滑膜の下内層中に存在することが見出されている。本発明のヒト抗体および抗体部分は、例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、ライム関節炎、リウマチ性脊椎炎、変形性関節症および痛風性関節炎を治療するために使用され得る。典型的には、抗体または抗体部分は全身投与されるが、特定の障害については、抗体または抗体部分の局所投与が有益であり得る。本発明の抗体または抗体部分はまた、自己免疫疾患の治療において有用な1つまたは複数のさらなる治療剤と共に投与され得る。
関節リウマチのコラーゲン誘発関節炎(CIA)マウスモデルにおいて、関節炎前の抗IL−12 mAb(ラット抗マウスIL−12モノクローナル抗体、C17.15)によるマウスの治療は、発症を大きく抑制し、疾患の発生率および重篤度を低下させた。関節炎の発症後早期の抗IL−12 mAbによる治療は、重篤度を低下させたが、疾患の発症後の抗IL−12 mAbによるマウスの後期の治療は、疾患の重篤度に対して最小の影響を有した。
クローン病
インターロイキン−12は、炎症性腸疾患、クローン病においても役割を果たす。FN−γおよびIL−12の発現増加が、クローン病患者の腸管粘膜において生じる(例えば、Faisら(1994)J.Interferon Res.14:235−238頁;Pyrronchiら(1997)Amer.J.Pathol.150:823−832頁;Monteleoneら(1997)Gastroenterology 112:1169−1178頁;Berrebiら(1998)Amer.J.Pathol.152:667−672頁を参照のこと。)。抗IL−12抗体は、大腸炎のマウスモデル(例えば、TNBS誘導された大腸炎IL−2ノックアウトマウス、および最近ではIL−10ノックアウトマウス)において疾患を抑制することが示されている。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、炎症性腸疾患の治療において使用され得る。
多発性硬化症
インターロイキン−12は、多発性硬化症の重要なメディエーターとして示されている。誘導性IL−12 p40メッセージまたはIL−12自体の発現は、多発性硬化症患者の病変中で実証されている(Windhagenら(1995)J.Exp.Med 182:1985−1996頁、Drulovicら(1997)J.Neurol.Sci.147:145−150頁)。多発性硬化症を有する慢性進行性患者は、IL−12の循環レベルを上昇させた。多発性硬化症患者由来のT細胞および抗原提示細胞(APC)を用いた調査により、Th1型免疫応答を導く進行性多発性硬化症の基礎として、免疫相互作用の自己永続的な連続が明らかになった。T細胞からのIFNγ分泌の増加は、APCによるIL−12産生の増加を導き、これらがTh1型免疫活性化および疾患の慢性状態を導くサイクルを永続化した(Balashovら(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.94:599−603頁)。多発性硬化症におけるIL−12の役割は、マウスおよびラットの多発性硬化症の実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデルを使用して調査されている。マウスにおける多発性硬化症の再発寛解型EAEモデルにおいて、抗IL−12 mAbによる事前治療は、麻痺を遅延させ、臨床スコアを低下させた。麻痺のピーク時または引き続く寛解期間の間の抗IL−12 mAbによる治療は、臨床スコアを低下させた。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、ヒトにおいて多発性硬化症に伴う症状を軽減するように機能し得る。
インスリン依存性糖尿病
インターロイキン−12は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)の重要なメディエーターとして示されている。IDDMは、IL−12の投与によってNODマウスにおいて誘導され、抗IL−12抗体は、IDDMの養子移入モデルにおいて保護的であった。早期発症型IDDM患者は、いくつかの残留島細胞機能が維持される、いわゆる「ハネムーン期間」を経ることが多い。これらの残留島細胞は、インスリンを産生し、投与されたインスリンよりも血中グルコースレベルをより良く調節する。抗IL−12抗体を用いたこれら早期発症型患者の治療は、島細胞のさらなる破壊を予防し得、それにより、インスリンの内因性供給源を維持する。
乾癬
インターロイキン−12は、乾癬における重要なメディエーターとして示されている。乾癬は、TH1型サイトカイン発現プロフィールを伴う急性および慢性の皮膚病変を含む(Hamidら(1996)J.Allergy Clin.Immunol.1:225−231頁;Turkaら(1995)Mol.Med.1:690−699頁)。IL−12のp35およびp40のmRNAが、罹患したヒト皮膚試料中で検出された。したがって、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、乾癬などの慢性皮膚障害を軽減するよう機能し得る。抗体またはその抗原結合部分は、乾癬の種々の形態、例えば尋常性乾癬および慢性乾癬を治療するために使用され得る。抗体またはその抗原結合部分は、変動する重篤度の乾癬、例えば、中程度から重篤な乾癬を治療するためにも使用され得る。
本発明は、決して限定と解釈すべきでない以下の実施例によって、さらに説明される。本出願中で引用された、全ての引用した文献(参考文献、発行された特許および公開された特許出願を含む。)の内容は、参照により本明細書中に明示的に組み込む。全ての表の内容を参照により組み込むことを、さらに理解すべきである。
本発明は、さらなる限定と解釈すべきでない以下の実施例によって、さらに説明される。本出願中で引用された、全ての数字および全ての文献、特許および公開された特許出願、ならびに図面の内容は、その全体を本明細書中で参照により明示的に組み込む。
[実施例1] タンパク質の発現および精製
A.ヒトモノクローナル抗体J695の調製およびアッセイ
J695は、1,000リットルのバイオリアクタ中で培養した組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株ALP905(例えば、PCT公開WO0056772 A1を参照のこと。)から分泌された。濾過によるCHO細胞の除去後、mAbを、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して精製した。J695を、5mM L−ヒスチジン、5mM L−メチオニン、0.5%スクロース、2%D−マンニトール、0.005%ポリソルベート−80、pH6.0において71.8mg/mlに濃縮し、−80℃で凍結した。Biacoreアッセイ、PHA芽球アッセイおよびRBアッセイを、PCT公開WO0056772 A1(その全内容は、参照により本明細書中に組み込む。)に記載されたように実施した。
B.J695 Fab断片の調製
J695を、20mMリン酸塩、2.5mMシステイン・HCl、10mM EDTA、pH7.0で20mg/mlに希釈し、次いで、1%固定化パパイン(カタログ番号20341、Pierce Endogen、Rockford、IL)および2.5mMシステイン・HClを含む溶液中で37℃で一晩消化した。パパインを遠心分離(15分間、3200g)によって除去し、20mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7の一部で希釈した上清を、同じ緩衝液で平衡化したHi−trapプロテインAカラム(カタログ番号17−0402−03、Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)に4℃で通過させた。Fabを流動中で単離し、遠心分離(カタログ番号UFV4BGC25、Millipore Corporation、Bedford、MA)によって4mg/mlに濃縮し、20mM HEPES、150mM NaCl、0.1mM EDTA、pH7.0において透析した。Fabを、結晶化のために55mg/mlにさらに濃縮した。Fab濃度を、6M グアニジン・HCl、20mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH7.0(ε=0.67M−1cm−1)において280nmでUV吸光度によって決定した(Gill,S.C.およびP.H.von Hippel(1989).「Calculation of protein extinction coefficients from amino acid sequence data.」Anal.Biochem.182(2):319−326頁)。
C.J695 Fab/IL−12 p70複合体の調製
IL−12 p70を、安定なCHO細胞株から発現させた。細胞上清を、Q−Sepharose Fast Flow、CM−Sepharose Fast Flow、Phenyl Sepharose High Substitution Fast Flow、Spiral Cartridge ConcentratorおよびSephacryl S−200 High Resolutionから構成されるいくつかのカラムで精製した。最終カラム緩衝液はPBS(pH7.4)であり、これは最終的なIL−12 p70保存緩衝液であった。上記のように生成されたJ695 Fabとの複合体を、等モル量のFabおよびIL−12 p70を混合し、その後サイズ排除クロマトグラフィーによって複合体を単離することによって、形成した。
[実施例2] タンパク質結晶化
A.結晶形IのJ695 Fabの結晶化
J695 Fabを、ハンギングドロップ蒸気拡散(hanging−drop vapor diffusion)法を使用して結晶化した。J695 Fab(1μl)を、1μlのレザバ溶液(25% PEG 4000、0.1M クエン酸Na、pH5.6、0.2M (NH4)2SO4)と混合し、18℃で平衡化した。宝石様(jewel−like)の結晶が、7日間で0.125×0.125×0.05mmの寸法まで形成された。これらの結晶を本明細書中で「結晶形I」と称する。
B.結晶形IIのJ695 Fabの結晶化
J695 Fabを、ハンギングドロップ蒸気拡散法を使用して結晶化した。J695 Fab(1μl)を、1μlのレザバ溶液(12% PEG 4000、0.1M Tris、pH8.5)と混合し、4℃で平衡化した。錠剤様結晶が、7日間で0.25×0.05×0.025mmの寸法まで成長した。これらの結晶を本明細書中で「結晶形II」と称する。
C.J695 Fab/IL−12 p70複合体の結晶化
J695 Fab/IL−12 p70複合体を、ハンギングドロップ蒸気拡散法を使用して結晶化した。複合体(1μl)を、1μlのレザバ溶液(16% PEG 4K、10% 2−プロパノール、0.1M Na HEPES(pH7.5)、0.2M (NH4)2SO4)と混合し、18℃で平衡化した。レザバ中の添加剤(6%ジオキサンまたは4.3%キシリトール)が、回折を改善した。この結晶は、エッチングされた末端を有する、細長い矩形の錠剤であった。
[実施例3] 結晶形IのJ695 Fabの結晶構造の決定
A.J695 FabフォームI結晶の凍結保護および瞬間冷却
25% PEG 4000、0.1M クエン酸Na、pH5.6、0.2M (NH4)2SO4の存在下で上記のように成長したフォームI結晶を、漸増量のグリセロール(5−15%)を含む母液溶液中に回収し、次いで液体窒素中で瞬間凍結した。結晶を、x線回折データを収集するまで、液体窒素冷蔵庫中で保存した。
B.J695 FabフォームI結晶(結晶1)からのx線回折データ収集
J695 FabフォームI結晶(結晶1)からのX線回折データを、National Synchrotron Light Source(NSLS)、Brookhaven National Laboratory、Upton、NYにおいて、ADSC Quantum 210検出器を使用して、ビームラインX26C(λ=1.1Å)で1.34Åの解像度まで回転法によって収集した。Fab結晶を、データ収集の間、Oxford Cryosystems Cryostream冷却器で100Kの温度に維持した。データの各フレーム(合計240)について、結晶を0.5°回転させた。データを、HKL2000スイートのプログラムを用いて処理した(Otwinowski,Z.およびW.Minor(1997).Processing of X−ray Diffraction Data Collected in Oscillation Mode.New York、Academic Press)。結晶配向を決定した後、データを、DENZOで積分し(空間群P212121、a=53.92Å、b=67.36Å、c=115.79Å;単位格子情報は表5にまとめる。)、SCALEPACKでスケーリングおよび統合し、TRUNCATEを用いて絶対的スケールに対して配置し、構造因子振幅を得た。さらなるデータ操作を、CCP4 Program Suite(Collaborative Computational Project 4(1994)「The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography.」Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50:760−763頁)を用いて実施した。独自の反射の5%を、フリーR因子(Rfree)の計算のために、ランダムな様式で「フリー」セットに割り当てた(Brunger,A.T.(1992).「The free R value:a novel statistical quantity for assessing the accuracy of crystal structures.」Nature 355:472−474頁);残り95%の反射は、R因子(R)の計算のための「ワーキング」セットを構成した。x線回折データを表6にまとめる。
C.J695 FabフォームI結晶構造(結晶1)の分子置換解
結晶形IのJ695 Fabの構造を、CNXを使用して分子置換によって解明した(Brunger,A.T.、P.D.Adamsら(1998).「Crystallography&NMR system(CNS):A new software system for macromolecular structure determination.」Acta Crystallogr.D54:905−921頁)。単位格子の体積およびFabの分子量(46,608Da)に基づいて、フォームIは、非対称単位1つ当たり1つのFabを含むと予測された(45%溶媒、Vm=2.3Å3/Da)(Matthews,B.W.(1968).「Solvent content of protein crystals.」J Mol Biol 33:491−7頁)。ランダムに選択された反射の5%を、精密化の間中、交差検定のために使用した(Brunger,A.T.(1992).「The free R value:a novel statistical quantity for assessing the accuracy of crystal structures.」Nature 355:472−474頁)。成功したいくつかの相同なFab検索モデルのうち、J695と類似したエルボー角を有するのは1つだけであり(PDBエントリ8fab、(Strong,R.K.、R.Campbellら(1991).「Three−dimensional structure of murine anti−p−azophenylarsonate Fab 36−71.1.X−ray crystallography,site−directed mutagenesis,and modeling of the complex with hapten.」Biochemistry 30:3739−3748頁)、剛体(rigid body)精密化がエルボー角をさらに変更した。並進関数は、正確な空間群がP212121であることを示した。検索モデルとJ695との間で保存されていない残基は、アラニンに切り詰め、CDRを除去した。シミュレートされたアニーリング、Powell最小化およびグループ温度因子(group temperature factor)精密化を、CNXを使用して実施した(Brunger,A.T.、P.D.Adamsら(1998).「Crystallography&NMR system(CNS):A new software system for macromolecular structure determination.」Acta Crystallogr.D54:905−921頁)。精密化後、正確な側鎖原子およびCDR残基を、可視化プログラムO(Jones,T.A.、J.Y.Zouら(1991).「Improved methods for building protein models in electron density maps and the location of errors in these models.」Acta Crystallogr.A47:110−119頁)を使用して、ポジティブなSigmaA重み付けした(Read,R.J.(1986).「Improved Fourier coefficients for maps using phases from partial structures with errors.」Acta Crystallogr.A42:140−149頁)Fo−Fc電子密度(2σ)の領域へと構築した。CDR H3は無秩序化しているようであり、モデル化できなかった。代替的側鎖立体配座を追加し、異方性温度因子を使用して、モデルをREFMAC(Murshudov,G.N.、A.A.Vaginら(1997).「Refinement of macromolecular structures by the maximum−likelihood method.」Acta Crystallogr.D53:240−255頁)中でさらに精密化した。水原子を追加し、16.4/19.7%の最終Rcryst/Rfreeまでモデルを精密化した。モデルの質を、Procheck(Laskowski,R.A.、M.W.MacArthurら(1993).「PROCHECK:a program to check the stereochemical quality of protein structures.」J.Appl.Crystallogr.26:283−291頁)およびWhatcheck(Hooft,R.W.W.、G.Vriendら(1996).「Errors in protein structures.」Nature 381:272頁)を使用して評価した。精密化統計値を表7中に報告する。
[実施例4] 結晶形IIのJ695 Fabの結晶構造の決定
A.J695 FabフォームII結晶の凍結保護および瞬間冷却
12% PEG 4000、0.1M Tris、pH8.5の存在下で上記のように成長したフォームII結晶を、漸増量のグリセロール(5−15%)を含む母液溶液中に回収し、次いで液体窒素中で瞬間凍結した。結晶を、x線回折データを収集するまで、液体窒素冷蔵庫中で保存した。
B.695 FabフォームII結晶(結晶2)からのx線回折データ収集
J695 FabフォームII結晶(結晶2)からのX線回折データを、National Synchrotron Light Source(NSLS)、Brookhaven National Laboratory、Upton、NYにおいて、ADSC Quantum 210検出器を使用して、ビームラインX26C(λ=1.1Å)で2.1Åの解像度まで回転法によって収集した。Fab結晶を、データ収集の間、Oxford Cryosystems Cryostream冷却器で100Kの温度に維持した。データの各フレーム(合計360)について、結晶を0.5°回転させた。データを、HKL2000スイートのプログラムを用いて処理した(Otwinowski,Z.およびW.Minor 1997「Processing of X−ray Diffraction Data Collected in Oscillation Mode」New York、Academic Press)。結晶配向を決定した後、データを、DENZOで積分し(空間群P21、a=85.62Å、b=173.41Å、c=139.85Å、β=105.5°;単位格子情報は表5にまとめる。)、SCALEPACKでスケーリングおよび統合し、TRUNCATEを用いて絶対的スケールに対して配置し、構造因子振幅を得た。さらなるデータ操作を、CCP4 Program Suite(Collaborative Computational Project 4(1994)「The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography.」Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50:760−763頁)を用いて実施した。独自の反射の5%を、フリーR因子(Rfree)の計算のために、ランダムな様式で「フリー」セットに割り当てた(Brunger,A.T.(1992).「The free R value:a novel statistical quantity for assessing the accuracy of crystal structures.」Nature 355:472−474頁);残り95%の反射は、R因子(R)の計算のための「ワーキング」セットを構成した。x線回折データを表6にまとめる。
C.J695 FabフォームII結晶構造(結晶2)の分子置換解
結晶形IIのJ695 Fabの構造を、分子置換によって解明した。単位格子の体積およびFabの分子量(46,608Da)に基づいて、フォームIIは、非対称単位1つ当たり8つと6つとの間のFabを含むと予測された(50−63%溶媒、Vm=2.7−3.6Å3/Da)(Matthews,B.W.(1968).「Solvent content of protein crystals.」J Mol Biol 33:491−7頁)。ランダムに選択した反射の5%を、精密化の間中、交差検定のために使用した(Brunger,A.T.(1992).「The free R value:a novel statistical quantity for assessing the accuracy of crystal structures.」Nature 355:472−474頁)。大まかに精密化したフォームIの構造を検索モデルとして使用した、フォームIIの構造を解明するための最初の試みは成功しなかった。ネイティブPattersonマップ中のオフオリジン(off−origin)ピークと一致する偽並進対称が存在するようであり、可能性のある解の対を関連付けたが、CNX(Brunger,A.T.、P.D.Adamsら(1998).「Crystallography&NMR system(CNS):A new software system for macromolecular structure determination.」Acta Crystallogr.D54:905−921頁)、AMORE(Navaza,J.(1994).「AMoRe:an automated package for molecular replacement.」Acta Crystallog.A50:157−163頁)およびEPMR(Kissinger,C.R.、D.K.Gehlhaarら(2001).EPMR:A program for crystallographic molecular replacement by evolutionary search.La Jolla、CA、Agouron Pharmaceuticals,Inc)は、最終的な解を提供しなかった。MOLREP(Vagin,A.A.およびA.Teplyakov(1997).「MOLREP:an automated program for molecular replacement.」J. Appl.Crystallogr.30:1022−1025頁)は、8つのFabを位置付けることができた。それらの組み合わせは、空間群P21において4Åで32.3%の相関係数および55.4%のR因子を生じた。この解により、2つのFabが、<011>に大まかに沿った反平行様式で配置され、[100]に対して偽ダイアド(pseudo−dyad)平行で互いに関連していることが明らかになった。第2のFab対は、同じダイアドの周りに整列されているが、約1/2aずれている。このテトラマーFabアセンブリは、並進ベクトル[約1/2a、約1/2b、約1/2c]で複製されて、非対称単位中に他の4つのFabを与える。
剛体精密化後、SigmaA重み付けしたマップの試験(Read,R.J.(1986).「Improved Fourier coefficients for maps using phases from partial structures with errors.」Acta Crystallogr.A42:140−149頁)により、2つのFab中の無秩序な定常ドメインが明らかになった。これらのドメインを除去し、電子密度マップを、SOLVE(Terwilliger,T.C.およびJ.Berenedzen(1999).「Automated MAD and MIR structure solution.」Acta Cryst.D.55:849−861頁)を使用した溶媒平滑化(solvent flattening)に供した。等方性B因子を使用するREFMAC(Murshudov,G.N.、A.A.Vaginら(1997).「Refinement of macromolecular structures by the maximum−likelihood method.」Acta Crystallogr.D53:240−255頁)における精密化は、O(Jones,T.A.、J.Y.Zouら(1991).「Improved methods for building protein models in electron density maps and the location of errors in these models.」Acta Crystallogr.A47:110−119頁)における再構築と順に交代した。定常ドメインおよびCDRを、陽性の電子密度(2σ)に再構築した。2つの比較的無秩序な定常ドメインは、約75Å2および85Å2の平均B因子を有した。水原子を追加し、19.5/25.9%の最終Rcryst/Rfreeまでモデルを精密化した。モデルの質を、Procheck(Laskowski,R.A.、M.W.MacArthurら(1993).「PROCHECK:a program to check the stereochemical quality of protein structures.」J.Appl.Crystallogr.26:283−291頁)およびWhatcheck(Hooft,R.W.W.、G.Vriendら(1996).「Errors in protein structures.」Nature 381:272頁)使用して評価した。精密化統計値を表7中に報告する。
D.Protein Data Bank中の抗体構造におけるcis−transペプチド結合異性体の分析
Protein Data Bank中に存在するAb構造中のペプチド結合のcis−to−trans異性化の全ての存在を同定することを試みた。全ての利用可能なAb構造のリストを編集するために実施したProtein Data Bank(2003年3月28日のもの)の大規模な検索により、453のエントリが得られた。この検索は、Andrew C.R.Martin博士によって維持されている要約したリストによって補助された(http://www.bioinf.org.uk/abs/)。最初に、453のAb構造のこのセットのマニュアル検索を実施し、CISPEPフラッグの探索を実施した。このCISPEPフラッグは、cis−ペプチド結合を含む構造のPDBヘッダー中に見出される。cis−ペプチド結合を含む全てのAb構造を、関連の構造でグループ分けした。1つのグループは、関連の抗体(例えば、変異体)、異なるライゲーション状態または結晶形のAb、および単一の結晶形のAbの複数のコピーからなった。次いで、これらのグループを、cis−ペプチド結合がプロリン残基を含むか否か、1つのグループメンバー中に見出されたcis−プロリンが他のグループメンバー中で保存されているか否かを決定するために、マニュアルで分析した。この分析は不完全に思われたが、このとき、CISPEPフラッグによるPDBエントリのアノテーションは信頼性がないことに気がついた。
次いで、453のPDBエントリを、以下のコンピュータアルゴリズムを使用して再検索した:453全てのPDBエントリにおいて、全てのペプチド結合について測定、ペプチド結合ωねじれ角(torsion angle)の値。ペプチド結合は、ωが0±20°であった場合にはcisとみなし、それ以外はtransとみなした。このことのためにプログラムMOLEMAN2を使用した(Kleywegt,G.J.(1995).MOLEMAN2:manipulation and analysis of PDB files.Uppsala、Sweden、Dept.of Cell and Molecular Biology、Uppsala University、Biomedical Centre、Box 596、SE−751 24)。
(各PDBエントリ中の)各同定されたcisペプチド結合に隣接するアミノ酸配列を抽出した(合計8について±3残基、ペプチド結合を規定する2つの残基を含む。)。
各PDBエントリ中の各cisペプチド結合についてのこのクエリ配列を、453のエントリの集合全体中で見出された8残基の配列全てと比較した。適切な補正が、鎖の末端および中断に対処した。検索は、同じ結晶構造中の複数コピーのIgドメインの(一般的な)可能性をもたらすために、クエリ配列が引き出されるPDBエントリもまた含んだ。
残基の少なくとも6/8が同一であり、一致した配列中の中心的ペプチド結合がcisではなくtransである場合に、一致を有意であるとみなした。
この様式で決定された一致は、cisおよびtransの両方の中心的ペプチド結合を有する453のPDBエントリのセット中に提示される、高度に相同なまたは同一な8アミノ酸の配列を示している。予測されるように、いくつかの抗体は、定常ドメイン中にcis−to−transプロリン異性化を含むことが見出された(J695は、その定常ドメイン中に、立体配置異性を示さないいくつかのcis−プロリンを含む。)。この分析は、CDR内のcis−to−transプロリン異性化に焦点を当てた。
cis/trans対の視覚的試験により、J695に加え、1つだけが明白に正確であることが明らかになった。この以前の例は、非対称単位中に2つのFabを含む一本鎖DNA結合mAb DNA−1(PDBエントリ1i8m;2.1Åの解像度)である(Tanner,J.J.、A.A.Komissarovら(2001).「Crystal Structure of an Antigen−binding Fragment Bound to Single−stranded DNA.」J.Mol.Biol.314:807−822頁)。Fab1 CDR H3中のArgH98H3−ProH99H3ペプチド結合はtransであるが、Fab2中のArgH98H3−ProH99H3ペプチド結合はcisである。結晶中で、dT5オリゴデオキシヌクレオチドは、特にCDR H3により、2つのFab間で非対称に結合される。DNA−1 H3は、多数の立体配座によって示されるように、他のCDRよりも柔軟であるように思われ、単一の結晶形内または複数の結晶形間で採用し得る(Tanner,J.J.(2003).私信)。
CDR中、通常はCDR L3の位置95において、cis−to−transプロリン異性化を含むと報告されるいくつかの抗体が、この分析で見出された。しかし、全ての関連する構造の詳細な調査により、目的の領域における構造的エラーが相変わらず明らかになった。
[実施例5] J695 Fab/IL−12 p70複合体の結晶構造の決定
A.J695 Fab/IL−12 p70複合体結晶の凍結保護および瞬間冷却
16% PEG 4K、10% 2−プロパノール、0.1M Na HEPES(pH7.5)、0.2M (NH4)2SO4の存在下で上記のように成長したJ695 Fab/IL−12 p70複合体結晶を、漸増量のグルコース(5−15%)を含む母液溶液中に回収し、次いで液体窒素中で瞬間凍結した。結晶を、x線回折データを収集するまで、液体窒素冷蔵庫中で保存した。
B.J695 Fab/IL−12 p70複合体結晶(結晶3)からのX線回折データ収集
単一のJ695 Fab/IL−12 p70複合体結晶(結晶3)からのX線回折データを、MAR CCD検出器を使用して、Industrial Macromolecular Crystallography Association Collaborative Access Team(IMCA−CAT)ビームライン17−BMおよび17−ID(λ=1.0Å)、Advanced Photon Source(APS)、Argonne National Laboratory、Argonne、ILにおいて、3.25Åの解像度まで、回転法によって収集した。複合体結晶を、データ収集の間、Oxford Cryosystems Cryostream冷却器で100Kの温度に維持した。データの各フレーム(合計258)について、結晶を0.5°回転させた。結晶配向の決定後、データを、MOSFLM(Leslie,A.G.W.(1992).「Recent changes to the MOSFLM package for processing film and image plate data.」CCP4 and ESF−EACMB Newsletter on Protein Crystallography 26)を用いて積分し(空間群C2221、a=136.3151Å、b=209.5560Å、c=217.1127Å;単位格子情報は表5にまとめる。)、SCALA(Evans,P.R.(1997).「SCALA.」Joint CCP4 and ESF−EACBM Newsletter 33:22−24頁)でスケーリングおよび統合し、TRUNCATEを用いて絶対的スケールに対して配置し、構造因子振幅を得た。さらなるデータ操作を、CCP4 Program Suite(Collaborative Computational Project 4(1994)「The CCP4 Suite: Programs for Protein Crystallography.」Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50:760−763頁)で実施した。独自の反射の5%を、フリーR因子(Rfree)の計算のために、ランダムな様式で「フリー」セットに割り当て(Brunger,A.T.(1992).「The free R value:a novel statistical quantity for assessing the accuracy of crystal structures.」Nature 355:472−474頁);残り95%の反射は、R因子(R)の計算のための「ワーキング」セットを構成した。x線回折データを表6にまとめる。
C.J695 Fab/IL−12 p70複合体の結晶構造(結晶3)の分子置換解
J695 Fab/IL−12 p70複合体の構造を、分子置換によって解明した。単位格子の体積ならびにFabおよびIL−12 p70の分子量(46,608Daおよび約70,000Da)に基づいて、この結晶は、非対称単位1つ当たり2つのFab/p70複合体を含むと予測された(約61%溶媒、Vm約3.3Å3/Da)(Matthews,B.W.(1968).「Solvent content of protein crystals.」J Mol Biol 33:491−7頁)。自己回転関数により、2つの非結晶学的二回回転軸が示され、極回転角(polar rotation angle)[θ、φ、χ]は[9.77、90.00、180.00]および[80.23、90.00、180.00]に等しく、それぞれが結晶学的二回軸のほぼ3分の1の強度であり、結晶学的c軸からb軸に向かって相殺された二回軸約10°で配向した非結晶学的ダイマーと一致した。ネイティブPattersonマップ中のオフオリジンピークの欠如と一致する偽並進対称は存在しないようであった。CNX(Brunger,A.T.、P.D.Adamsら(1998).「Crystallography&NMR system(CNS):A new software system for macromolecular structure determination.」Acta Crystallogr.D54:905−921頁)、AMORE(Navaza,J.(1994).「AMoRe:an automated package for molecular replacement.」Acta Crystallog.A50:157−163頁)、EPMR(Kissinger,C.R.、D.K.Gehlhaarら(2001).EPMR:A program for crystallographic molecular replacement by evolutionary search.La Jolla、CA、Agouron Pharmaceuticals,Inc)およびMOLREP(Vagin,A.A.およびA.Teplyakov(1997).「MOLREP:an automated program for molecular replacement.」J.Appl.Crystallogr.30:1022−1025頁)を使用して構造を解明しようとする最初の試みは成功しなかった。J695 Fab/IL−12 p70複合体の構造は、(精密化した)J695 FabフォームIおよびIL−12 p70(PDBエントリ1f45;(Yoon,C.、S.C.Johnstonら(2000).「Charged residues dominate a unique interlocking topography in the heterodimeric cytokine interleukin−12.」The EMBO Journal 19(14):3530−3521頁)座標を検索モデルとして使用して、空間群C2221でPHASER(Storoni,L.C.、A.J.McCoyら(2004).「Likelihood−enhanced fast rotation functions.」 Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60(Pt3):432−8頁)によって最終的に解明された。最初に2コピーのFabを配置し、1250の明らかに正確な対数尤度ゲイン(loglikelihood gain(LLG))を提供した。IL−12 p70分子単独の配置は、より問題があり、曖昧な結果を提供した(LLG 130、1分子だけ;第2のp70分子は位置付けできなかった。)。上で決定したように配置された2つのFabでは、p70についての検索は、かなり改善したLLG(2150)をさらに提供し、これは正確な解と一致していた。p70の明白な配置は、p70を単独で使用した場合に上記で決定された明白な配置とも一致していた。
剛体精密化を、REFMAC(Murshudov,G.N.、A.A.Vaginら(1997).「Refinement of macromolecular structures by the maximum−likelihood method.」Acta Crystallogr.D53:240−255頁)を使用して実施した。ランダムに選択した反射の5%を、精密化の間中、交差検定のために使用した(Brunger,A.T.(1992).「The free R value:a novel statistical quantity for assessing the accuracy of crystal structures.」Nature 355:472−474頁)。20−4.0Åの解像度からのデータを使用して、10個のドメイン(それぞれ、Fab免疫グロブリン[Ig]ドメインならびにIL−12のp40およびp35)を、Rfree/R=0.401/0.413まで精密化した。SigmaA重み付けしたマップの試験(Read,R.J.(1986).「Improved Fourier coefficients for maps using phases from partial structures with errors.」Acta Crystallogr.A42:140−149頁)により、背中合わせに配置された2つのFab分子が明らかとなり、1つのFab結合部位は、IL−12 p40のドメイン1(N末端ドメイン)に大部分が結合していた。マップは、第2のIL−12分子についての密度も示した。
PHASERを再実行し、剛体精密化されたモデルを固定して維持し、第2のIL−12 p70について検索した。このプロセスは成功し、2926の改善されたLLGを提供した。PHASER内での精密化により、3562の最終LLGが得られた。剛体精密化を、今度は16のドメイン(8つのFab Igドメイン、6つのp40 Ig様ドメインおよび2つのp35ドメイン)によりREFMACで繰り返して、Rfree/R=0.400/0.409(20−3.5Å)を提供した。等方性B因子を使用する連続位置精密化(Continued positional refinement)(REFMAC)は、O(Jones,T.A.、J.Y.Zouら(1991).「Improved methods for building protein models in electron density maps and the location of errors in these models.」Acta Crystallogr.A47:110−119頁)における再構築と順に交代し、最終Rfree/R=0.287/0.216を提供した。モデルの質を、Procheck(Laskowski,R.A.、M.W.MacArthurら(1993).「PROCHECK:a program to check the stereochemical quality of protein structures.」J.Appl.Crystallogr.26:283−291頁)およびWhatcheck(Hooft,R.W.W.、G.Vriendら(1996).「Errors in protein structures.」Nature 381:272頁)を使用して評価した。精密化統計値を表7中に報告する。
参照による組み込み
本出願中で引用された、全ての引用した文献(参考文献、特許、特許出願およびウェブサイトを含む。)の内容、ならびに図面は、その全体を参照により本明細書中に明示的に組み込む。本発明の実施は、特に示さない限り、当技術分野で周知の従来の抗体産生技術を採用する。
均等物
本明細書中に記載された詳細な実施例および実施形態は、例示目的のためだけに例として与えられたものであり、本発明を限定するものと決して解釈すべきでないことが理解される。実施例および実施形態を考慮した種々の改変および変化が当業者に示唆され、それらは本出願の精神および範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲の範囲内であるとみなされる。例えば、成分の相対量は、所望の効果を最適化するために変動され得、さらなる成分が添加され得、および/または類似の成分が、記載された成分のうち1つまたは複数を置換し得る。本発明のシステム、方法およびプロセスに伴うさらなる有利な特徴および機能性は、添付の特許請求の範囲から明らかである。さらに、当業者は、慣用に過ぎない実験を使用して、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識する、または確定できる。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲に包含される意図である。