JP2014224546A

JP2014224546A - 組み合わせシールリング付転がり軸受ユニット

Info

Publication number: JP2014224546A
Application number: JP2013102670A
Authority: JP
Inventors: 塩野　泰宏; Yasuhiro Shiono; 泰宏塩野; 達男若林; Tatsuo Wakabayashi
Original assignee: NSK Ltd
Current assignee: NSK Ltd
Priority date: 2013-05-15
Filing date: 2013-05-15
Publication date: 2014-12-04
Also published as: EP2998599A1; EP2998599A4; CN105358851A; WO2014185458A1; US20160091023A1

Abstract

【課題】組み合わせシールリングを構成するスリンガとシールリングとの間のシール内部空間内への異物の侵入を抑えて、このシールリングに設けたシールリップの動きを確保できる構造を実現する。
【解決手段】スリンガ１６を構成する回転側円輪部１９の外周縁と、シールリング１７ａを構成する芯金２０ａの静止側円筒部２３の内周面との間に、ラビリンスシール２７ａを設ける。又、シールリング１７ａを構成する弾性材２１ａの一部で、ラビリンスシール２７ａと、サイドリップであるシールリップ２２ａとの間部分に、このシールリップ２２ａよりも剛性の低い補助シールリップ３２を設ける。この補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長を厚さ寸法の５．５〜７．５倍とし、締め代の割合を自由状態での軸方向の全長の０〜２０％の範囲とする。
【選択図】図１

Description

本発明は、例えば自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為の転がり軸受ユニットのうち、回転側軌道輪と静止側軌道輪との互いに対向する周面同士の間に存在して複数個の転動体を設置した軸受内部空間の端部開口を、スリンガとシールリングとから成る組み合わせシールリングにより塞いで成る、組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットの改良に関する。

［従来技術の説明］
自動車の車輪等を懸架装置に対して回転自在に支持する為の転がり軸受ユニットとして、例えば特許文献１には、図７に示す様な車輪支持用転がり軸受ユニットの構造が記載されている。この図７に示した転がり軸受ユニット１は、静止側軌道輪である外輪２と回転側軌道輪であるハブ３とを互いに同心に配置している。そして、この外輪２の内周面に設けた、それぞれが静止側軌道である複列の外輪軌道４、４と、前記ハブ３の外周面に設けた、それぞれが回転側軌道である複列の内輪軌道５、５との間に、それぞれが転動体である玉６、６を、両列毎に複数個ずつ配置している。これら各玉６、６は、それぞれ保持器７、７により、転動自在に保持している。この様な構成により、前記外輪２の内径側に前記ハブ３を、回転自在に支持している。懸架装置に対し車輪等を回転自在に支持するには、前記外輪２の外周面に設けた静止側フランジ８を前記懸架装置に対しねじ止め固定すると共に、前記ハブ３の軸方向外端部（軸方向に関して外とは、車両への組み付け状態でこの車両の幅方向外側となる、各図の左側を言う。これに対して、この車両の幅方向内側となる、各図の右側を、軸方向に関して内と言う。）外周面に形成した回転側フランジ９に、前記車輪及びディスクロータ等の制動用回転体をねじ止め固定する。

前記外輪２の内周面と前記ハブ３の外周面との間で、前記各玉６、６を設置した軸受内部空間１０の両端開口は、それぞれシールリング１１と組み合わせシールリング１２とにより、全周に亙り塞いでいる。このうち、前記軸受内部空間１０の軸方向外端側開口を塞ぐシールリング１１は、金属板製の芯金１３により、ゴムの如きエラストマー製の弾性材１４を補強して、全体を円環状に構成して成る。又、この弾性材１４は、複数本（図示の例では３本）のシールリップ１５ａ、１５ｂ、１５ｃを有する。そして、このうちの芯金１３を、前記外輪２の内周面の軸方向外端部に締り嵌めで内嵌した状態で、前記各シールリップ１５ａ、１５ｂ、１５ｃの先端縁を、前記回転側フランジ９の軸方向内側面又は前記ハブ３の中間部外周面に、それぞれ全周に亙り摺接させている。

一方、前記組み合わせシールリング１２は、スリンガ１６とシールリング１７とを組み合わせて成る。このうちのスリンガ１６は、金属板を曲げ成形する事により断面Ｌ字形で全体を円環状に構成したもので、回転側円筒部１８と、この回転側円筒部１８の軸方向内端縁から径方向外方に折れ曲がった回転側円輪部１９とから成る。この様なスリンガ１６は、前記回転側円筒部１８を前記ハブ３（ハブ本体と共にこのハブ３を構成する内輪）の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌する事により、このハブ３に対し固定している。又、前記シールリング１７は、金属板製の芯金２０と弾性材２１とを備える。この弾性材２１は、複数本（図示の例では３本）のシールリップ２２ａ、２２ｂ、２２ｃを備える。又、前記芯金２０は、金属板を曲げ成形する事により断面Ｌ字形で全体を円環状に構成したもので、静止側円筒部２３と、この静止側円筒部２３の軸方向外端縁から径方向内方に折れ曲がった静止側円輪部２４とから成る。この様な芯金２０を備えた前記シールリング１７は、前記静止側円筒部２３を前記外輪２の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌する事により、この外輪２に固定している。又、この状態で、前記シールリップ２２ａの先端縁を前記回転側円輪部１９の軸方向外側面に、前記各シールリップ２２ｂ、２２ｃの先端縁を前記回転側円筒部１８の外周面に、それぞれ全周に亙り摺接させている。

尚、上述の様な組み合わせシールリング１２を構成するスリンガ１６の回転側円輪部１９の軸方向両側面のうち、前記回転側円筒部１８の折れ曲がり方向と逆側の面（軸方向内側面）に、図８の（Ａ）に示す様に、円輪状のエンコーダ２５を、全周に亙り添着固定する場合もある。このエンコーダ２５は、ゴム、合成樹脂等の高分子材料中に磁性粉を分散させて全体を円輪状とした、ゴム磁石、プラスチック磁石等の永久磁石製で、軸方向に着磁している。着磁方向は、円周方向に関して、交互に、且つ、等間隔で変化させている。従って、被検出面である、前記エンコーダ２５の軸方向内側面には、Ｓ極とＮ極とが、円周方向に関して、交互に、且つ、等間隔で配置されている。この様なエンコーダ２５の被検出面には、図示しない回転検出センサの検出部を対向させて、前記ハブ３と共に回転する車輪の回転速度を測定可能とする。そして、測定した車輪の回転速度を表す信号を、アンチロックブレーキシステム（ＡＢＳ）やトラクションコントロールシステム（ＴＣＳ）等、車両の走行安定化装置の制御に利用する。この様な回転速度検出装置の構造及び作用に就いては、従来から周知であるし、本発明の要旨とも関係しない為、図示並びに詳しい説明は省略する。

これに対して、車輪の回転速度を検出する必要がない場合、或いは、別部分でこの回転速度を検出できる場合には、図８の（Ｂ）に示す様に、前記スリンガ１６にエンコーダを設ける事はない。
何れにしても、前記軸受内部空間１０の軸方向両端開口を前記シールリング１１と前記組み合わせシールリング１２とにより、それぞれ全周に亙り塞ぐ事で、前記軸受内部空間１０内に存在するグリースの漏洩防止と、外部空間に存在する水分や塵芥等の異物がこの軸受内部空間１０内に侵入する事の防止とを図っている。

前記車輪支持用の転がり転がり軸受ユニット１の耐久性を確保する為には、前記シールリング１１及び前記組み合わせシールリング１２のシール性を確保する事が重要である。一方、これらシールリング１１及び組み合わせシールリング１２は、使用時に泥水等がかかる、厳しい条件で使用される。特に、このうちの組み合わせシールリング１２の場合には、前記スリンガ１６と前記シールリング１７とに囲まれたシール内部空間２６内に入り込んだ泥水の水分が蒸発し、固形分（泥）だけがこのシール内部空間２６内に溜まる可能性がある。図７、８に示した従来構造の場合、このシール内部空間２６のうち、最も外径側に存在するシールリップ２２ａよりも更に径方向外寄り部分に存在する、ラビリンスシール２７を介して外部空間と連通した外部寄り空間２８の容積が大きい為、この外部寄り空間２８内に溜まる固形分の量が多くなり易い。そして、この外部寄り空間２８内に溜まった固形分は、前記シールリップ２２ａにも付着し、このシールリップ２２ａの動きを阻害する可能性がある。この結果、このシールリップ２２ａの先端縁の一部が、前記スリンガ１６の回転側円輪部１９の軸方向外側面から浮き上がり、当該部分を通じて前記泥水等の異物が、前記シール内部空間２６の更に奥にまで入り込む可能性がある。この様な現象は、水分の蒸発により凝縮し易い粘土質の土を含む泥水に於いて特に著しくなる。

前記ラビリンスシール２７の隙間寸法（径方向に関する幅寸法）を小さくすれば、前記外部寄り空間２８内に入り込む泥水等の異物を少なくできるが、この隙間寸法を小さくする事には限度がある。即ち、前記ラビリンスシール２７の隙間寸法を極端に小さくすると、車両の旋回走行時に加わるモーメント荷重等により、前記外輪２と前記ハブ３とが相対的に傾いてラビリンスシール２７の距離が縮まり、前記回転側円輪部１９の端縁と前記静止側円筒部２３の内周面とが激しく（強く）接触する可能性がある。この為、前記図７、８に示した従来構造では、前記ラビリンスシール２７の隙間寸法を極端に小さくする事は困難である。

組み合わせシールリングのシール性を向上させる為の構造として、例えば特許文献２には、外輪に外嵌した第二のシールリングを構成する第二のシールリップの先端縁を、スリンガの回転側円輪部のうちで、シールリングと反対側の側面に、全周に亙り摺接させた構造が記載されている。この様な構造によれば、シール内部空間内への異物の侵入防止を十分に図れるが、部品点数が増えてコストが嵩む。又、前記第二のシールリングを設ける部分の設置スペースが嵩み、組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットに隣接して設ける、他の物品との干渉防止の為、設計の自由度が限られる可能性がある。更に、前記第二のシールリップとして、組み合わせシールリング側に元々設けられているシールリップと同等の剛性を有するものを、この元々設けられているシールリップに足す状態で設ける為、摺接部が増えて回転抵抗（動トルク）が増大すると言った不利益もある。

［未公知の先発明の説明］
この様な事情に鑑みて、本発明に先立って考えた、特願２０１２−２５７０６４号に係る先発明の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットの構造の１例に就いて、本発明の実施の形態を示す、図１〜２を参照しつつ説明する。

先発明の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットの軸方向外端開口は、図１〜２に示した組み合わせシールリング１２ａにより塞いでいる。この組み合わせシールリング１２ａは、スリンガ１６を構成する回転側円輪部１９の外周縁と、シールリング１７ａの芯金２０ａを構成する静止側円筒部２３の内周面を覆った弾性材２１ａの一部内周面との間に、ラビリンスシール２７ａを設けている。又、この弾性材２１ａの一部で、前記静止側円筒部２３の内周面と、この静止側円筒部２３と共に前記芯金２０ａを構成する静止側円輪部２４の軸方向内側面の外径側半部とにより、径方向外側と軸方向外側とを仕切られた部分に、径方向及び軸方向の厚さ寸法が他の部分の厚さ寸法よりも大きくなった厚肉部２９を設けている。前記弾性材２１ａのうちで、この厚肉部２９の軸方向内端面である円輪状の段差面３０と、前記静止側円筒部２３の内周面の先端寄り部分（軸方向内半部）を覆う部分とを、断面形状が四分の一円弧状である外径側曲面３１（隅Ｒ）により、滑らかに連続させている。この外径側曲面３１の断面形状の曲率半径Ｒ_１は、前記ラビリンスシール２７ａの径方向に関する幅寸法Ｗ以上（Ｒ_１≧Ｗ）としている。これにより、前記ラビリンスシール２７ａを通じて、次述する補助シールリップ３２の外径側に存在する空間部分に入り込んだ異物を、前記ラビリンスシール２７ａの側に還流させ易くしている。

又、前記段差面３０の径方向内端部から前記回転側円輪部１９に向け、特許請求の範囲に記載した外部空間寄りシールリップであるシールリップ２２ａに異物が付着するのを抑える役目を有する、補助シールリップ３２を延出（各シールリップ２２ａ〜２２ｃと共に弾性材２１ａに一体に形成）している。又、前記補助シールリップ３２は、前記段差面３０を基端として軸方向内方に向かう程直径が大きくなる方向に、末広がりに傾斜して延びる部分円すい筒状である。この様な補助シールリップ３２の基端部外周面と前記段差面３０とに関しても、断面形状が四分の一円弧状の内径側曲面３３により、滑らかに連続させている。この内径側曲面３３の断面形状の曲率半径Ｒ_２は、前記補助シールリップ３２の基端部に加わる応力を抑えつつ、この補助シールリップ３２を適度に撓み易くする面から、更には、前記ラビリンスシール２７ａを通じて前記補助シールリップ３２の外径側に存在する空間部分に入り込んだ異物をこのラビリンスシール２７ａの側に還流させ易くする面から、適切に規制している。この為に、前記内径側曲面３３の断面形状の曲率半径Ｒ_２を、前記補助シールリップ３２の基端部の厚さＴと同じか、この厚さＴよりも少しだけ大きく（Ｒ_２≧Ｔ）している。

又、先発明の場合、前記補助シールリップ３２の断面形状を、先端縁に向かう程厚さ寸法が小さくなる、くさび状としている。又、前記補助シールリップ３２の厚さ寸法を、前記シールリップ２２ａの厚さ寸法よりも小さくしている。具体的には、前記補助シールリップ３２のうちで最も厚い部分である基端部の厚さ寸法を、前記シールリップ２２ａのうちで最も薄い部分である基端部の厚さ寸法の１／２以下、より好ましくは１／３以下、但し、成形性を考慮して１／５以上としている。更に、前記補助シールリップ３２の締め代を、前記シールリップ２２ａの締め代よりも小さくしている。具体的には、図１に示した自由状態で、前記補助シールリップ３２の軸方向高さ（前記回転側円輪部１９に向けての軸方向突出量）を、前記シールリップ２２ａの軸方向高さよりも十分に小さくしている。この様な構成により、前記補助シールリップ３２を設けた事に基づく摩擦抵抗の増大を抑えている。

そして、上述の様な構成を有する前記補助シールリップ３２により、前記シールリップ２２ａよりも更に径方向外寄り部分に存在し、ラビリンスシール２７ａを介して外部空間と連通した外部寄り空間２８ａを、径方向に関して２分割している。そして、前記シールリップ２２ａと前記ラビリンスシール２７ａとの間に、前記補助シールリップ３２が存在する状態としている。言い換えれば、前記外部寄り空間２８ａの径方向外端部で前記ラビリンスシール２７ａと連通する部分に、前記段差面３０と前記補助シールリップ３２とにより軸方向外端部と内径側とを仕切られた開口寄り小空間３４を設けている。この開口寄り小空間３４の軸方向外端部の内面を構成する、前記段差面３０の内外両周縁部は、それぞれ前記内径側、外径側両曲面３３、３１により、前記開口寄り小空間３４の内外両周面と滑らかに連続させている。更に、このうちの内径側曲面３３から連続する、前記補助シールリップ３２の外周面は、先端に向かう程前記ラビリンスシール２７ａに向かう方向に傾斜している。この様な構成により、このラビリンスシール２７ａから前記開口寄り小空間３４内に、勢い良く吹き込まれた異物の流れを変換し、このラビリンスシール２７ａに向けて還流する様にしている。

上述の様に構成する組み合わせシールリング１２ａを組み込んだ、先発明の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットによれば、前記スリンガ１６と前記シールリング１７ａとの間に存在するシール内部空間２６ａへの、泥水等の異物の侵入を効果的に防止できる。特に、前記各シールリップ２２ａ〜２２ｃのうちで、最も前記ラビリンスシール２７ａに近い部分に存在するシールリップ２２ａの外周面に異物が付着し、このシールリップ２２ａの挙動が損なわれ、このシールリップ２２ａのシール性能が低下するのを防止できる。

即ち、前記ラビリンスシール２７ａと、前記開口寄り小空間３４の軸方向外端面及び内周面を仕切る、前記段差面３０及び前記補助シールリップ３２により、前記外部寄り空間２８ａのうちで、この補助シールリップ３２よりも内径側に存在する反開口寄り小空間３５内にまで異物が入り込む事を抑えられる。前記ラビリンスシール２７ａを泥水等の異物が、軸方向に勢い良く通過して、前記開口寄り小空間３４内に入り込んだ場合であっても、前記異物の勢いはこの開口寄り小空間３４内で弱められて、前記補助シールリップ３２の外周面を直撃する事はない。前記ラビリンスシール２７ａから前記開口寄り小空間３４内に勢い良く入り込んだ異物は、前記外径側曲面３１と前記段差面３０と前記内径側曲面３３とに沿って流れ、その勢いを弱められてから、前記補助シールリップ３２の外周面に達する。この為、この補助シールリップ３２が、前記ラビリンスシール２７ａから前記開口寄り小空間３４内に勢い良く入り込んだ異物によって変形する事を抑えられる。

しかも、使用状態で、前記シールリップ２２ａの先端部を前記補助シールリップ３２の内周面に近接対向させているので、前記補助シールリップ３２の外周面に多少の圧力が加わった場合でも、この補助シールリップ３２が内径側に反転する（めくれる）様に変形する事はない。即ち、前記ラビリンスシール２７ａを通過して侵入した泥水等によって、前記開口寄り小空間３４内の圧力が上昇した場合、前記補助シールリップ３２が内径側に変形しようとするが、前記シールリップ２２ａの先端部が補助シールリップ３２の内周面に接触する事によりこの補助シールリップ３２を支承して、この補助シールリップ３２の変形を防止する。これにより、この補助シールリップ３２のシール性能を安定した状態に維持できる。

上述の様に、前記開口寄り小空間３４内に入り込んだ異物に拘らず、前記補助シールリップ３２が径方向内方に大きく変形する事はないので、この異物が、この補助シールリップ３２を通過して、前記反開口寄り小空間３５内にまで入り込む事はない。言い換えれば、前記開口寄り小空間３４内に入り込んだ異物は、この開口寄り小空間３４内に止まる。更に、前記外径側曲面３１と前記段差面３０と前記内径側曲面３３とに案内されて前記補助シールリップ３２の外周面に達した異物は、この補助シールリップ３２の外周面を前記ラビリンスシール２７ａに向けて径方向外方に流れ、このラビリンスシール２７ａを通じて外部空間に排出される。この間、前記異物（水分を多く含む泥水）が前記開口寄り小空間３４内を洗浄するので、この開口寄り小空間３４内に固形物が堆積される事が防止される。この為、前記シールリップ２２ａに多量の固形分が付着して、このシールリップ２２ａの動きが損なわれる事を防止できる。この結果、前記補助シールリップ３２による、前記反開口寄り小空間３５側への異物侵入防止効果、延いては、前記シールリップ２２ａへの異物付着防止効果を、長期間に亙り良好に維持できて、前記組み合わせシールリング１２ａを組み込んだ転がり軸受ユニットの耐久性を確保できる。

又、車輪を支持する組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットに於いて、車両の悪路走行時或いは旋回走行時には、前記シールリング１７ａを内嵌固定した外輪と前記スリンガ１６を外嵌固定したハブとの相対変位に基づき、これらシールリング１７ａとスリンガ１６とが相対的に変位し、前記開口寄り小空間３４の容積が増減する。先発明の場合、この開口寄り小空間３４の容積が、前記反開口寄り小空間３５の容積よりも小さく、しかも揺動中心となる外輪とハブとの相対変位の中心Ｏ（図７参照）からの距離も長いので、前記相対変位に伴う、この開口寄り小空間３４の体積変化率が大きい。この為、この体積変化によるポンピング作用を大きくできて、この開口寄り小空間３４内に堆積した異物を外部空間に、効果的に排出できる。この様なポンピング作用の際、前記補助シールリップ３２が接触式シールリップの場合は、前記反開口寄り小空間３５内に密封された空気がこの補助シールリップ３２を支承するので、前記開口寄り小空間３４内に堆積した異物が、前記反開口寄り小空間３５内に侵入する事はない。又、前記補助シールリップ３２が微小隙間を持つ非接触式シールリップの場合にも、前記反開口寄り小空間３５内に存在する空気が、前記補助シールリップ３２の先端部から径方向外方に流出する為、前記開口寄り小空間３４に堆積した異物が、前記反開口寄り小空間３５内部に侵入する事はない。

又、前記弾性材２１ａの厚肉部２９の内周面のうちで、前記反開口寄り小空間３５の外径側を仕切る部分は、前記補助シールリップ３２に向け、軸方向内方に向かうに従い大径となる、部分円すい状の凹面としている。この為、仮に泥水等の異物が、前記補助シールリップ３２の先端縁と前記スリンガ１６の軸方向内側面との間を通過して、前記反開口寄り小空間３５内に侵入した場合、この異物は、前記厚肉部２９の内周面に沿って、前記補助シールリップ３２と前記スリンガ１６との摺接部或いは近接対向部に導かれる。そして、この補助シールリップ３２は、締め代が小さく薄肉であると共に、先端縁に向かう程径方向外方に向かう方向に傾斜しているので、前記反開口寄り小空間３５から前記開口寄り小空間３４へ向かう流体等を堰き止めるシール効果は弱い。この為、前記厚肉部２９の内周面に沿って前記補助シールリップ３２の内周面にまで導かれた異物は、この補助シールリップ３２と前記スリンガ１６との摺接部或いは近接対向部を、径方向内方から径方向外方に通過して、前記開口寄り小空間３４に送り出され、更に前記ラビリンスシール２７ａを通過して、前記外部空間に排出される。

以上に述べた通り先発明の構造は、前記補助シールリップ３２を設ける事により、前記シールリップ２２ａの外周面にまで達して、このシールリップ２２ａの外周面に付着したままとなる異物を、極く僅少に抑えられる。この様な作用・効果を得る為に設けた前記補助シールリップ３２は、前記シールリップ２２ａに比べて、厚さが小さく、締め代も小さい。この為、この補助シールリップ３２の追加に伴う、組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットの回転トルクの増加を小さく抑えられる。

尚、前記回転側円輪部１９の外周縁と前記静止側円筒部２３の内周面との間に設けた、前記ラビリンスシール２７ａの径方向に関する幅寸法Ｗは、設計上想定される前記外輪とハブとの相対傾きの最大値に於いて、僅かに接触する様に設定する。前記静止側円筒部２３の内周面は前記弾性材２１ａにより被覆しているので、この様な設定を行っても、前記組み合わせシールリング１２ａに重大な損傷が発生する事はない。そして、前記幅寸法Ｗを最小限に設定する事により、前記ラビリンスシール２７ａのシール性能を良好にし、前記開口寄り小空間３４への異物侵入を最小限に抑制できる。

但し、上述した様な先発明に係る構造の場合にも、外部空間寄りシールリップ（シールリップ２２ａ）への異物の付着をより有効に防止して、組み合わせシールリングの寿命延長を図る面からは、未だ改良の余地がある。即ち、先発明に係る構造の場合にも、補助シールリップの各部の寸法を特には規制しておらず、締め代の大きさに就いても、外部空間寄りシールリップに関する締め代よりも小さくする以上の事は、特段規制していない。この為、補助シールリップの剛性の大きさを、前述した様な補助シールリップとしての特有の機能を効果的に発揮する上で最適な大きさに設定する事が難しくなる。又、剛性の大きさに応じて最適な締め代の大きさも変化する為、締め代を設定する事も難しくなる。

尚、シールリップによるシール性能を十分に発揮させる為に、締め代を最適な大きさに設定する事を記載した先行技術文献として特許文献３がある。この特許文献３には、補助シールリップを備えない組み合わせシールリングに関して、サイドリップの自由状態での軸方向の全長に対する締め代の割合を２０％（好ましくは２５％）以上とする事が記載されている。但し、特許文献３に記載された技術は、軸受内部空間への異物の侵入を防止する機能を果たす、サイドリップを対象としたものであり、この様なサイドリップに関して適正とされる締め代の値を、サイドリップに比べて、全長が短く、厚さ寸法の小さい（剛性の低い）、補助シールリップにそのまま適用する事はできない。又、締め代の値を大きく設定した場合に、この補助シールリップの先端縁とスリンガを構成する回転側円輪部の軸方向外側面との摺接部で生じる摩擦抵抗により、先端部が基端部に対して円周方向に関する位相がずれる（遅れる）様な変形が生じる可能性がある。そして、この様な変形が生じた場合には、前記補助シールリップの軸方向の全長が、自由状態での軸方向の全長をＬ₂とした場合に、Ｌ₂からＬ₂cos α（α：先端部と基端部との円周方向に関するずれ角）へと減少する為、実質的に締め代の値が低下してしまい、摺動トルク（シールトルク）ばかりが大きくなるといった問題を生じる。

特開２００７−８５４７８号公報特開２００８−１５１３１１号公報特開２００６−３４９００９号公報

本発明は、上述の様な事情に鑑み、外部空間寄りシールリップへの異物の付着を有効に防止できて、組み合わせシールリングの寿命延長を図れると共に、補助シールリップによる摺動トルクを低く抑えられる構造を実現すべく発明したものである。

本発明の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットは、回転側軌道輪及び静止側軌道輪と、複数個の転動体と、組み合わせシールリングとを備える。
このうちの前記回転側軌道輪及び静止側軌道輪は、互いに同心に配置された状態で相対回転する。
又、前記各転動体は、これら回転側軌道輪及び静止側軌道輪の互いに対向する周面にそれぞれ設けられた、回転側軌道と静止側軌道との間に、転動自在に設けられている。
又、前記組み合わせシールリングは、前記回転側軌道輪と前記静止側軌道輪との互いに対向する周面同士の間に存在する軸受内部空間の端部開口を塞ぐもので、スリンガ及びシールリングから成る。
このうちのスリンガは、前記回転側軌道輪の周面の一部で前記静止側軌道輪の周面に対向する部分に嵌合固定されたもので、金属板を曲げ成形する事により断面Ｌ字形で全体を円環状に構成しており、回転側円筒部と、この回転側円筒部の軸方向端縁から前記静止側軌道輪に向けて径方向に折れ曲がった回転側円輪部とから成る。そして、前記回転側円筒部を前記回転側軌道輪の周面に嵌合する事で、この回転側軌道輪に固定している。
又、前記シールリングは、前記静止側軌道輪の一部で前記スリンガに対向する部分に嵌合固定されたもので、この静止側軌道輪に嵌合固定される芯金と、この芯金に基端部を支持された、複数本のシールリップを有する弾性材とを備える。このうちの芯金は、金属板を曲げ成形する事により断面Ｌ字形で全体を円環状に構成しており、静止側円筒部と、この静止側円筒部の軸方向端縁から前記回転側軌道輪に向けて径方向に折れ曲がった静止側円輪部とから成る。そして、前記静止側円筒部を前記静止側軌道輪の周面に嵌合する事でこの静止側軌道輪に固定しており、前記各シールリップの先端部を、前記スリンガの表面に全周に亙り摺接させている。
更に、前記回転側円輪部の先端側周縁（径方向に関して前記回転側円筒部と反対側の周縁）と前記静止側円筒部の周面との間にラビリンスシールを設けている。

特に、本発明の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットに於いては、前記弾性材の基部で前記各シールリップよりも前記静止側円筒部に寄った部分に、これら各シールリップのうちで、少なくとも前記ラビリンスシールに最も近いシールリップである外部空間寄りシールリップよりも剛性が低い補助シールリップを、前記弾性材と一体に設けている。そして、この補助シールリップの先端縁を前記回転側円輪部の軸方向側面に、全周に亙って摺接若しくは近接対向させている。又、前記補助シールリップの自由状態での軸方向の全長を、この補助シールリップの厚さ寸法（最も厚さ寸法が大きくなる基端部の厚さ寸法）の５．５〜７．５倍の範囲に規制している。

上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項２に記載した発明の様に、前記補助シールリップの自由状態での軸方向の全長に対する、この補助シールリップの軸方向に関する締め代の割合を、０〜２０％の範囲に規制する。
より好ましくは、請求項３に記載した発明の様に、前記締め代の割合を、１０〜２０％の範囲に規制する。

上述の様に構成する本発明の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットは、補助シールリップの自由状態での軸方向の全長を厚さ寸法の５．５〜７．５倍に規制している為、剛性の大きさを、補助シールリップとしての機能を効果的に発揮する上で最適な大きさに設定できる。この為、外部空間寄りシールリップにまで達する泥水等の異物の量を僅少にし、この外部空間寄りシールリップに多量の固形分が付着して、この外部空間寄りシールリップの動きが損なわれる事を防止できる。これにより、外部空間寄りシールリップに長期間に亙り良好なシール性能を発揮させる事が可能になり、組み合わせシールリングの寿命延長を図れる。又、前記補助シールリップの先端縁がスリンガの回転側円輪部と擦れ合っても、擦れ合い部に作用する摩擦力を低く抑えられる。従って、補助シールリップによる摺動トルクを低く抑えられる。

又、請求項２、３に記載した発明によれば、締め代が大きくなり過ぎる事を防止できて、補助シールリップの先端部が基端部に対して円周方向に変形するのを有効に防止できる。この為、補助シールリップの締め代が実質的に減少する事を防止できる。従って、組み合わせシールリングの寿命低下を防止できると共に、摺動トルクの増大を有効に抑えられる。

本発明の実施の形態の１例を、各シールリップを自由状態として示す、組み合わせシールリングの部分断面図。同じく、各シールリップをスリンガとの組み合わせに伴って弾性変形させた、使用状態を示す部分断面図。本発明の効果を確認する為に行った実験に使用した５つの試料の部分断面図であり、（Ｂ）、（Ｃ）が本発明の技術的範囲に属する実施例を示しており、（Ａ）、（Ｄ）、（Ｅ）が本発明の技術的範囲から外れる比較例を示している。耐久性試験装置の略断面図。トルク測定装置の略断面図。本発明の実験の結果を示すグラフ。従来から知られている組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットの１例を示す断面図。同じく組み合わせシールリングの２例を示す図７のＸ部拡大図。

［実施の形態の１例］
図１〜２は、本発明の実施の形態の１例を示している。本例の特徴は、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長と厚さ寸法との関係を適正に規制すると共に、これに応じて締め代の値を適正に規制した点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述した先発明構造の場合と同様であるから、重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。

本例の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットに組み込む、組み合わせシールリング１２ａは、スリンガ１６及びシールリング１７ａを組み合わせて成る。このうちのスリンガ１６は、金属板を曲げ成形する事により断面Ｌ字形で全体を円環状に構成したもので、回転側円筒部１８と、回転側円輪部１９とから成る。又、前記シールリング１７ａは、金属板製の芯金２０ａと、この芯金２０ａに全周に亙り添着支持された、ゴム等のエラストマー製の弾性材２１ａとを備える。この弾性材２１ａは、径方向内寄り部分に設けられた３本のシールリップ２２ａ、２２ｂ、２２ｃと、径方向外寄り部分に設けられた厚肉部２９と、この厚肉部２９の軸方向内端面（段差面３０）の径方向内端部から軸方向内方に向けて延出する状態で設けられた補助シールリップ３２とを備えている。

そして、前記スリンガ１６を、ハブ３（図７、８参照）の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌すると共に、前記シールリング１７ａを、外輪２（図７、８参照）の軸方向内端部に締り嵌めで内嵌した状態で、前記シールリップ２２ａの先端縁を前記回転側円輪部１９の軸方向外側面に、前記各シールリップ２２ｂ、２２ｃの先端縁を前記回転側円筒部１８の外周面に、それぞれ全周に亙り摺接させている。又、前記補助シールリップ３２の先端縁を、前記回転側円輪部１９の軸方向外側面に、締め代ｄを持たせて全周に亙り摺接させている。尚、締め代ｄは、自由状態での補助シールリップ３２の軸方向の全長（段差面３０から先端縁までの距離）をＬ₂（図１参照）とし、組み付け状態での補助シールリップ３２の軸方向の全長をＬ₃（図２参照）とした場合に、ｄ＝Ｌ₂−Ｌ₃で表される大きさである。

特に本例の場合には、前記補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長Ｌ₂を、この補助シールリップ３２のうちで最も厚さ寸法が大きくなった基端部の厚さ寸法Ｔの５．５〜７．５倍（好ましくは７．５倍）の長さに規制している。又、前記補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長Ｌ₂に対する、この補助シールリップ３２の軸方向の締め代ｄの割合を、０〜２０％（好ましくは１０〜２０％）の範囲に規制している。

以上の様な構成を有する本例の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットは、前記補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長Ｌ₂を基端部の厚さ寸法Ｔの５．５〜７．５倍に規制している為、剛性の大きさを、補助シールリップ３２としての機能を効果的に発揮する上で最適な大きさに設定できる。この為、サイドリップである前記シールリップ２２ａにまで達する泥水等の異物の量を僅少にし、このシールリップ２２ａに多量の固形分が付着して、このシールリップ２２ａの動きが損なわれる事を防止できる。これにより、このシールリップ２２ａに長期間に亙り良好なシール性能を発揮させる事が可能になり、前記組み合わせシールリング１２ａの寿命延長を図れる。又、前記補助シールリップ３２の先端縁が前記スリンガ１６の回転側円輪部１９と擦れ合っても、擦れ合い部に作用する摩擦力を低く抑えられる。従って、前記補助シールリップ３２による摺動トルクを低く抑えられる。

特に本例の場合には、前記締め代ｄの大きさを、前記補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長Ｌ₂の０〜２０％に規制している為、締め代が大きくなり過ぎる事を防止できて、前記補助シールリップ３２の先端部が基端部に対して円周方向に変形するのを有効に防止できる。この為、この補助シールリップ３２の締め代が実質的に減少する事を防止できる。従って、前記組み合わせシールリング１２ａの寿命低下を防止できると共に、摺動トルクの増大を有効に抑えられる。

次に、本発明の効果を確認する為に行った実験に就いて説明する。本実験は、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長と厚さ寸法との関係（Ｌ₂／Ｔ）と、この補助シールリップ３２の締め代の大きさが、組み合わせシールリングの寿命、並びに、トルクに与える影響を調べる為に行った。本実験を行うに際して、何れも外径が７５ｍｍ、内径が６１ｍｍ、組立幅が５ｍｍで、スリンガ１６の軸方向内側面にエンコーダ２５が添着支持された、図３に示した様な、５つの組み合わせシールリングの試料を用意した。同図中、（Ｂ）、（Ｃ）が、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長が厚さ寸法の５．５〜７．５倍の範囲に含まれる、実施例１、２を示している。このうちの実施例１の（Ｌ₂／Ｔ）の値は５．５倍であり、実施例２の（Ｌ₂／Ｔ）の値は７．５倍である。これに対し、（Ａ）、（Ｄ）は、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長が厚さ寸法の５．５〜７．５倍の範囲に含まれない、比較例１、２を示している。このうちの比較例１の（Ｌ₂／Ｔ）の値は４倍であり、比較例２の（Ｌ₂／Ｔ）の値は９倍である。又、（Ｅ）は、補助シールリップ３２を備えていない、比較例３を示している。実施例１、２及び比較例１、２に関しては、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長、及び、段差面３０（厚肉部２９の軸方向内端面）の軸方向位置のみが異なっており、補助シールリップ３２の基端部の厚さ寸法は同じである。又、補助シールリップ３２以外の、３本のシールリップ２２ａ、２２ｂ、２２ｃの寸法及び形状、並びに、芯金２０ａ及びスリンガ１６の寸法及び形状に就いては、実施例１、２及び比較例１〜３の総てで同じとしている。

具体的には、実施例１、２及び比較例１、２の合計４つの試料を対象に、スリンガ１６の軸方向位置を調整する事で、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長に対するこの補助シールリップ３２の軸方向の締め代の割合を、０〜３０％まで５％ずつ変化させながら、後述する耐久性試験とトルク試験との２種類の試験を行った。但し、この様に、前記スリンガ１６の軸方向位置を調整した場合には、前記補助シールリップ３２の締め代だけでなく、前記シールリップ２２ａの締め代も変化する為、このシールリップ２２ａの締め代の変化の影響が試験結果に入り込む。この為、このシールリップ２２ａに起因する影響を取り除く為に、実施例１、２及び比較例１、２の各試料に関して、前記補助シールリップ３２の締め代を設定した際に前記シールリップ２２ａに付与される締め代と同等の締め代を、比較例３の試料に対して付与し、耐久性試験とトルク試験との２種類の試験を行った。そして、この比較例３の試験結果を基準として、実施例１、２及び比較例１、２に関する試験結果をその比として評価した。耐久性試験及びトルク試験の具体的な試験内容は次の通りである。

［耐久性試験］
耐久性試験は、図４に示した耐久性試験装置３６を用いて、泥塩水中に組み合わせシールリングが水没した状態を想定して実施した。この耐久性試験装置３６は、プーリ３７により回転駆動される回転軸３８と、この回転軸３８の回転運動を、自動調心玉軸受３９の揺動中心を中心としたみそすり運動に変換するみそすり治具４０と、このみそすり治具４０により駆動されるみそすり軸４１と、泥塩水を貯溜するタンク４２と、試料を保持する為のハウジング４３と、泥塩水を検知するセンサ４４とを備える。前記みそすり治具４０は、前記回転軸３８の先端部に固定されると共に、その先端面を前記自動調心玉軸受３９の揺動中心を中心とする凹曲面とした雌治具４５と、前記みそすり軸４１の基端部に固定されると共に、その基端面を前記自動調心玉軸受３９の揺動中心を中心とする凸曲面とした雄治具４６とから成り、これら凹曲面と凸曲面とを互いに当接させている。又、前記雌治具４５の外径側部分の円周方向複数個所には、直径方向に配置された押しボルト４７、４７が設けられている。これら各押しボルト４７、４７の先端部の径方向への突出量を調整する事で、前記雄治具４６を前記雌治具４５の凹曲面に沿って所定量だけ移動させる事ができ、みそすり偏心量を調整できる。そして、前記みそすり軸４１の先端部に摺動治具４８を介して外嵌した試料を泥塩水中に浸漬した状態で、このみそすり軸４１を、前記自動調心玉軸受３９の揺動中心を中心としてみそすり運動させて、前記センサ４４が前記試料から泥塩水が漏水した事を検知するまでの時間を測定した。

［試験条件］
回転速度：１０００ｍｉｎ^‐1
軸偏心：０．４ｍｍＴＩＲ
｛ＴＩＲ（トータルインジケータリーディング）とは、偏心量、傾斜度等を含んだ全振れ量を指す｝
泥塩水組成：水１リットルに対し、関東ローム粉を１２５ｇ、塩を５０ｇ含有
泥塩水水位：軸中心位置
サイクルパターン：（浸漬＋回転、２５分）→（浸漬＋停止、５分）→（乾燥＋停止、３０分）→（乾燥＋回転、６０分）のサイクルを、漏水が検知されるまで繰り返す。

図６に示した寿命比に関する試験結果から分かる様に、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長を厚さ寸法の５．５〜７．５倍の範囲に規制した場合に、この値から外れる比較例１、２に比べて、締め代の大きさに関係なく、組み合わせシールリングの寿命延長を図れる事が確認された。又、補助シールリップ３２の軸方向に関する締め代の割合を２０％よりも大きくした場合に、組み合わせシールリングの寿命が急激に悪化した事から、締め代の割合が２０％を越えたところで、補助シールリップ３２の先端部が基端部に対して円周方向に変形し、締め代が実質的に減少したと考えられる。

［トルク試験］
トルク試験は、図５に示したトルク測定装置４９を使用して行った。このトルク測定装置４９は、回転不能に回り止めされた略円筒状の中間ハウジング５０の内側に、１対の内サポート軸受５１、５１により回転自在に支持された回転軸５２と、この中間ハウジング５０の周囲に、１対の外サポート軸受５３、５３により回転可能に支持された略円筒状の外側ハウジング５４と、これら外側ハウジング５４と前記回転軸５２との間に試料である組み合わせシールリングを設置する為の取付治具５５と、この取付治具５５（環状内治具５７）に荷重を負荷すると共に、前記回転軸５２を回転駆動する為のキャップ部材５６とを備える。前記取付治具５５は、この回転軸５２に外嵌固定された内側環状治具５７と、前記外側ハウジング５４の端面に支持固定された外側環状治具５８とから構成されており、これら外側環状治具５８の内周面と内側環状治具５７の外周面との間の環状空間に試料を設置可能としている。又、この内側環状治具５７の軸方向側面と前記回転軸５２の段差面との間には、試料の締め代を調整する為の間座５９を設けている。又、前記内側環状治具５７を挟んでこの間座５９と反対側には、前記キャップ部材５６を、止めねじ６０により前記回転軸５２の端部に相対変位不能に固定している。そして、この様な構成を有するトルク測定装置４９の取付治具５５に、試料である組み合わせシールリングを取り付けた状態で、室温で空冷しながら前記回転軸５２を１０００ｍｉｎ^‐1で回転した際に前記外側ハウジング５４に加わる接線力（回転トルク）を、測定ロッド６１を介してロードセル６２により検出し、安定（飽和）した状態での値を測定値とした。

図６に示したトルク比に関する試験結果から分かる様に、補助シールリップ３２の自由状態での軸方向の全長を厚さ寸法の５．５〜７．５倍の範囲に規制した場合に、この値から小さい方に外れた比較例１に比べてトルクを低く抑えられ、大きい方に外れた比較例２に比べてトルクが僅かに大きくなる事が確認された。又、トルクの大きさは、締め代の割合が増加する程大きくなり、寿命が急激に悪化した値である２０％（特に２５％）を超えると、増加する割合が大きくなる事が確認された。

本発明の組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に対し支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットとして実施する事が、その作用・効果を十分に得る面からは最も好ましい。但し、異物の侵入防止を図る必要がある用途であれば、車輪支持用転がり軸受ユニットに限らずに実施できる。又、車輪支持用転がり軸受ユニットに適用する場合でも、例えば半浮動式懸架装置に組み込む車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、軸方向内側のシール手段だけでなく軸方向外側のシール手段も、組み合わせシールリングとする場合がある。この様な場合には、車輪支持用転がり軸受ユニットの軸方向外側にも、必要に応じて、本発明の特徴を備える組み合わせシールリングを組み込む。この場合には、当該組み合わせシールリングに関する軸方向の内外が、先の説明とは逆になる。更には、本発明を、外輪回転型のシールリング付転がり軸受ユニットに適用する事もできる。この場合には、使用時に回転する外径側軌道輪部材にスリンガを、使用時にも回転しない内径側軌道輪部材にシールリングを、それぞれ嵌合固定する。従って、径方向に関する内外が、図示の例とは逆になる。

１転がり軸受ユニット
２外輪
３ハブ
４外輪軌道
５内輪軌道
６玉
７保持器
８静止側フランジ
９回転側フランジ
１０軸受内部空間
１１シールリング
１２、１２ａ組み合わせシールリング
１３芯金
１４弾性材
１５ａ、１５ｂ、１５ｃシールリップ
１６、１６ａスリンガ
１７、１７ａシールリング
１８回転側円筒部
１９回転側円輪部
２０、２０ａ芯金
２１、２１ａ弾性材
２２ａ、２２ｂ、２２ｃシールリップ
２３静止側円筒部
２４静止側円輪部
２５エンコーダ
２６、２６ａシール内部空間
２７、２７ａラビリンスシール
２８、２８ａ外部寄り空間
２９厚肉部
３０段差面
３１外径側曲面
３２補助シールリップ
３３内径側曲面
３４開口寄り小空間
３５反開口寄り小空間
３６耐久性試験装置
３７プーリ
３８回転軸
３９自動調心玉軸受
４０みそすり治具
４１みそすり軸
４２タンク
４３ハウジング
４４センサ
４５雌治具
４６雄治具
４７押しボルト
４８摺動治具
４９トルク測定装置
５０中間ハウジング
５１内サポート軸受
５２回転軸
５３外サポート軸受
５４外側ハウジング
５５取付治具
５６キャップ部材
５７内側環状治具
５８外側環状治具
５９間座
６０止めねじ
６１測定ロッド
６２ロードセル

Claims

互いに同心に配置された状態で相対回転する回転側軌道輪及び静止側軌道輪と、
これら回転側軌道輪及び静止側軌道輪の互いに対向する周面にそれぞれ設けられた回転側軌道と静止側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、
前記回転側軌道輪と前記静止側軌道輪との互いに対向する周面同士の間に存在する軸受内部空間の端部開口を塞ぐ、スリンガ及びシールリングから成る組み合わせシールリングとを備え、
このうちのスリンガは、前記回転側軌道輪の周面の一部で前記静止側軌道輪の周面に対向する部分に嵌合固定されたもので、金属板を曲げ成形する事により断面Ｌ字形で全体を円環状に構成し、回転側円筒部と、この回転側円筒部の軸方向端縁から前記静止側軌道輪に向けて径方向に折れ曲がった回転側円輪部とから成り、前記回転側円筒部を前記回転側軌道輪の周面に嵌合する事でこの回転側軌道輪に固定しており、
前記シールリングは、前記静止側軌道輪の一部で前記スリンガに対向する部分に嵌合固定されたもので、この静止側軌道輪に嵌合固定される芯金と、この芯金に基端部を支持された、複数本のシールリップを有する弾性材とを備え、このうちの芯金は、金属板を曲げ成形する事により断面Ｌ字形で全体を円環状に構成し、静止側円筒部と、この静止側円筒部の軸方向端縁から前記回転側軌道輪に向けて径方向に折れ曲がった静止側円輪部とから成り、前記静止側円筒部を前記静止側軌道輪の周面に嵌合する事でこの静止側軌道輪に固定しており、前記各シールリップの先端部を、前記スリンガの表面に全周に亙り摺接させると共に、前記回転側円輪部の先端側周縁と前記静止側円筒部の周面との間にラビリンスシールを設けている組み合わせシールリング付転がり軸受ユニットに於いて、
前記弾性材の基部で前記各シールリップよりも前記静止側円筒部に寄った部分に、これら各シールリップのうちで、少なくとも前記ラビリンスシールに最も近いシールリップである外部空間寄りシールリップよりも剛性が低い補助シールリップを、前記弾性材と一体に設け、この補助シールリップの先端縁を前記回転側円輪部の軸方向側面に、全周に亙って摺接若しく近接対向させており、この補助シールリップの自由状態での軸方向の全長を、この補助シールリップの厚さ寸法の５．５〜７．５倍としている事を特徴とする組み合わせシールリング付転がり軸受ユニット。
前記補助シールリップの自由状態での軸方向の全長に対する、この補助シールリップの軸方向に関する締め代の割合が０〜２０％の範囲である、請求項１に記載した組み合わせシールリング付転がり軸受ユニット。
前記締め代の割合が１０〜２０％の範囲である、請求項２に記載した組み合わせシールリング付転がり軸受ユニット。