JP2014224002A - ガラス板の製造方法、熔解槽の設計方法及び熔解槽 - Google Patents

ガラス板の製造方法、熔解槽の設計方法及び熔解槽 Download PDF

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仁志 月向
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Abstract

【課題】熔解槽において1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上となる熔融ガラスをつくるとき、熔解槽の敷き部の熱ごもりを抑え、熔損を生じさせない方法を提供する。
【解決手段】熔解槽において、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを通電加熱によりつくるとき、熔解槽の敷き部124を含む底部の温度が、前記底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、前記熔解槽には前記底部の保温抑制構造が設けられている。
【選択図】図5

Description

本発明は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法、この製造方法に用いる熔解槽、及びこの熔解槽の設計方法に関する。
近年、ディスプレイパネルの分野では、画質の向上のために画素の高精細化が進んでいる。この高精細化の進展に伴って、ディスプレイパネルに用いるガラス基板にも高品質であることが望まれている。例えば、パネルの製造工程中に、高温に熱処理されたガラス基板において寸法変化が生じ難いように、熱収縮の小さいガラス基板が求められている。
一般に、ガラス板の熱収縮は、ガラスの歪点が高いほど、また、ガラス板の製造工程中の徐冷速度を小さくするほど、小さくなることが知られている。そのため、同じガラス組成であっても、徐冷速度を十分に小さくすることによって、熱収縮を求められるレベルまで低減することは可能である。特に、熔融ガラスからフロート法でガラス板を製造する場合、徐冷炉を長くして徐冷速度を小さくすることは比較的容易にできるが、ダウンドロー法を用いてガラス板を製造する場合、徐冷炉を長くすることは設備上あるいは操業操作上の点から難しい。このため、ダウンドロー法で熱収縮に対する要求に答えるガラス板を製造するには、従来のガラス組成に比べて歪点の高いガラス組成のガラスを利用する、言い換えれば、高温粘性の高いガラス組成のガラスを利用しなければならない。このようなガラス組成を持つガラスは、一般的に、熔融ガラス時の電気抵抗率も大きくなる傾向にある。
ここで、ガラス原料から熔融ガラスをつくる場合、熔解槽内の気相空間では、バーナー加熱によって気相空間の温度を高温化して熔解槽の壁の温度を高くし、この壁からの輻射熱により投入したガラス原料を熔解させるとともに、熔解してできる熔融ガラスを、上記輻射熱により加熱する。さらに、熔解槽の液槽に設けられた電極対を介して通電加熱を行うことにより、熔融ガラスを所望の粘度にする(特許文献1の段落0015)。
特開2012−517398号公報
このような熔融ガラスの通電加熱を行う熔解工程において、熔融ガラスの電気抵抗率が低い場合、加熱するための電流を多量に流さなければならないが、一方において、溶融ガラスの電気抵抗率が高い場合、加熱するための電流は、熔融ガラスのみならず熔解槽を構成する耐火レンガにも流れる場合がある。熔融ガラスの電気抵抗率が高くなればなるほど、耐火レンガに流れる電流は増える。このような耐火レンガとして、熔融ガラスの侵食性に優れ、電気抵抗率の高いジルコニア(ZrO2)系電鋳耐火物レンガやAl23、ZrO2及びSiO2を含むAZS電鋳耐火レンガを用いたとしても、ガラス板の熱収縮を小さくするために、高温粘性の高い、さらには電気抵抗率の高いガラス組成を用いた場合、耐火レンガに電流が流れ、耐火レンガは通電加熱され易い。例えば、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスの場合、熔解槽の耐火レンガは通電加熱され、その熱が熔解槽の底部を構成する敷き部の耐火レンガに蓄積されて温度がその周囲に比べて部分的に高くなる熱ごもりが無視できなくなる。1550℃における電気抵抗率が190Ω・cm以上である熔融ガラスの場合、熱ごもりは顕著になる。この熱ごもりにより、耐火レンガの強度は低下して変形し易くなり、場合によっては、耐火レンガが熔損する虞がある。耐火レンガが熔損すると、熔融ガラス、ひいてはガラス板の生産が継続できないだけでなく、場合によっては重大な設備破損につながる。
このように、熱収縮の小さいガラス基板の要請に応じて熔融ガラスを高粘性化させてガラス板を改良するとき、従来の熔解槽では破損する虞がある。この点で、熔解槽の設計は重要である。
また、高粘性化した熔融ガラスは、難熔性であるので、後工程へ導く流出口側の壁面近傍の熔融ガラスの液面には、異質素地(難熔性成分であるSiO2の濃度が他の場所よりも高くなった素地)が溜まっている場合が多い。この異質素地が熔解槽の底壁側に沈み込んで、後工程に流出すると、ガラス板は脈理と呼ばれる光学的に異質な筋状の欠点を形成する。このため、熔解槽における流出口側の壁面近傍の熔融ガラスの温度は、中央部付近の熔融ガラスの温度に比べて下がりすぎないようにすることも必要である。
本発明は、熔解槽において1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上となる熔融ガラスをつくる場合、熔解槽の敷き部の熱ごもりを抑え、熔損を生じさせないガラス板の製造方法、熔解槽の設計方法及び熔解槽を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、熔解槽において、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを通電加熱によりつくる工程を含むガラス板の製造方法である。このとき、前記熔解槽の敷き部を含む底部の温度が、前記底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、前記熔解槽には前記底部の保温抑制構造が設定される。
なお、基準とする熔解槽モデルを用いて熔融ガラスをつくるシミュレーション計算を行って前記底部の温度分布を予測計算し、前記温度分布の最高温度が前記荷重軟化点温度未満になるように、前記底部の保温抑制構造が設定される、ことが好ましい。
また、前記敷き部は、複数の耐火レンガの積層構造であり、前記保温抑制構造の設定は、前記耐火レンガの少なくとも一層において、前記敷き部の耐火レンガの熱伝導率を部分的に周囲に対して異ならせることを含む、ことが好ましい。
また、前記敷き部は、複数の耐火レンガの積層構造であり、前記保温抑制構造の設定は、前記耐火レンガの少なくとも一層において、前記敷き部の底面に延びる孔を前記敷き部の耐火レンガに設けることを含む、ことが好ましい。
あるいは、前記保温抑制構造の設定は、前記熔解槽の底部に設けられるドレン口、温度センサの設置用開口、および泡形成用気体導入口のうち、いずれか1つの開口の位置を設定することを含む、ことも好ましい。
前記熔融ガラスは、酸化錫を含有し、102.5ポアズであるときの温度が1580℃以上であってもよい。
本発明の他の一態様は、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを通電加熱によりつくる熔解槽の設計方法である。当該方法は、
基準とする熔解槽モデルを用いて熔解槽と熔融ガラスの熱伝導のシミュレーション計算を行って前記熔解槽の敷き部を含む底部の温度分布を求め、前記温度分布の最高温度が前記荷重軟化点温度未満になるように、前記熔解槽モデルの底部を修正することにより熔解槽の底部の保温抑制構造を設定する。
本発明のさらに他の一態様は、熔融ガラスをつくる熔解槽である。当該熔解槽は、
1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを貯留する熔解槽本体と、
前記熔融ガラスを通電加熱する電極対と、
前記熔解槽の敷き部を含む底部の温度を、前記底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満にする前記底部の保温抑制構造と、を含む。
上記形態のガラス板の製造方法、熔解槽の設計方法及び熔解槽によれば、熔解槽において、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上となる熔融ガラスをつくる場合、熔解槽の敷き部の熱ごもりを抑えることができ、熔解槽の熔損を生じさせない。
本実施形態のガラス板の製造方法の工程の一例を示す図である。 本実施形態における熔解工程〜切断工程を行うガラス板製造装置の一例を模式的に示す図である。 本実施形態の熔解槽の熔解槽本体とその周辺の構造の概略を説明する斜視図である。 本実施形態の熔解槽の断面を説明する図である。 本実施形態の熔解槽本体の長手方向に沿った断面図である。 (a)は、基準とする熔解槽モデルの断面構造の一例を示した図であり、(b)は、図6(a)に示す構成を有する熔解槽と熔融ガラスの熱伝導のシミュレーション計算の結果の一例を示す図である。 (a)は、熔解槽モデルの断面構造の一例を示した図であり、(b)は、図7(a)に示す構成を有する熔解槽と熔融ガラスの熱伝導のシミュレーション計算の結果の一例を示す図である。 (a)は、熔解槽モデルの断面構造の他の一例を示した図であり、(b)は、図8(a)に示す構成を有する熔解槽と熔融ガラスの熱伝導のシミュレーション計算の結果の一例を示す図である。 熔解槽内の熔融ガラスの対流の例を説明する図である。 本実施形態における熔解槽内の熔融ガラスの対流の例を説明する図である。
以下、本実施形態のガラス板の製造方法について説明する。
本実施形態は、熔解槽の上述した熱ごもりを抑制するために、熔解槽の敷き部を含む底部の温度が、熔解槽の底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、熔解槽の底部に保温抑制構造を設ける。
例えば、熔解槽において溶融ガラスをつくる前に、基準とする熔解槽モデルを用いて熔融ガラスをつくるシミュレーション計算を行って熔解槽の底部の温度分布を予測計算し、予測計算で得られた温度分布の温度が底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、熔解槽の底部の保温抑制構造を設定する。
なお、敷き部は、複数の耐火レンガの積層構造であるとき、敷き部の耐火レンガの少なくとも一層において、敷き部の耐火レンガの熱伝導率を部分的に周囲に対して異ならせることにより、敷き部の保温抑制構造を設定する。
あるいは、敷き部は、複数の耐火レンガの積層構造であるとき、この敷き部の耐火レンガの少なくとも一層において、敷き部の底面に延びる孔を敷き部の耐火レンガに設けることにより、保温抑制構造を設定する。
あるいは、熔解槽の底部に設けられるドレン口、温度センサの設置用開口、および泡形成用気体導入口のうち、いずれか1つの開口の位置を設定し、熔解槽の敷き部を含む底部の温度が、底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるようにする。
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法の工程の一例を示す図である。
(ガラス板の製造方法の全体概要)
ガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
熔解工程(ST1)は熔解槽で行われる。熔解槽では、ガラス原料を、熔解槽に蓄えられた熔融ガラスの液面に投入し、加熱することにより1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを作る。さらに、熔解槽の内側側壁の1つの底部に設けられた流出口から下流工程に向けて熔融ガラスを流す。
熔解槽の熔融ガラスの加熱は、熔融ガラス自身に電気が流れて自ら発熱し加熱するとともに、バーナーによる火焔を補助的に与えてガラス原料を熔解する。具体的には、投入されたガラス原料は、熔解槽101の気相空間の壁面あるいはバーナーの火炎からの熱輻射伝熱で加熱され、熱分解して熔解される。こうしてできた熔融ガラスは、より高温に通電加熱される。なお、ガラス原料には清澄剤が添加される。清澄剤として、SnO2,As23,Sb23等が知られているが、特に制限されない。しかし、環境負荷低減の点から、清澄剤としてSnO2(酸化錫)を用いることができる。熔解槽では、ガラス板に脈理が生じないようにガラス原料が完全に熔解されるとともに、後工程が適切に行われるように所定の粘度の熔融ガラスが通電加熱によりつくられる。
清澄工程(ST2)は、少なくとも清澄槽において行われる。清澄工程では、清澄槽内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれるO2、CO2あるいはSO2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じたO2を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に泡は浮上して放出される。さらに、清澄工程では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中のO2等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。なお、清澄工程では、酸化錫を清澄剤として用いた清澄方法を用いることができる。
均質化工程(ST3)では、清澄槽から延びる配管を通って供給された攪拌槽内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。
供給工程(ST4)では、攪拌槽から延びる配管を通して熔融ガラスが成形装置に供給される。
成形装置では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形は、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置において、成形装置から供給されたシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板が作られる。この後、ガラス板の端面の研削、研磨が行われ、ガラス板の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行うガラス板製造装置の一例を模式的に示す図である。当該装置は、図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解槽101と、清澄槽102と、攪拌槽103と、ガラス供給管104,105,106と、を有する。
図2に示す熔解装置101では、ガラス原料の投入がバケット101dを用いて行われ、このガラス原料の熔解により得られる熔融ガラスMGが所定の粘度になるように熔融ガラスMGは加熱される。清澄槽102では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスMGの清澄が行われる。さらに、攪拌槽103では、スターラ103aによって熔融ガラスMGが攪拌されて均質化される。成形装置200では、成形体210を用いたオーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスMGからシートガラスSGが成形される。本実施形態は、バケット101dをガラス原料の投入手段として用いるが、これに制限されない。例えば、スクリューフィーダを用いることもできる。バケット101dを用いたガラス原料の投入方式は、熔融ガラスMGの液面のうちバケット101dの原料投入口側の液面に投入する(前方投入する)方式と、液面全面に投入する(全面投入する)方式を含む。本実施形態では、図2に示すように、前方投入によりガラス原料が投入される。
このようなガラス板の製造方法及びガラス板製造装置において、熱収縮の小さいガラス板をつくるために、高温粘性の高いガラス組成のガラスを利用する場合、熔解槽101では、高温粘性の高くないガラスに比べて多量の電流を流して通電加熱をしなければならない。しかし、高温粘性の高いガラスでは、熔融状態の電気抵抗率は大きくなる傾向にあり、熔融ガラスの電気抵抗率は、熔解槽101の側壁及び底壁に用いる耐火レンガの電気抵抗率と同等になる。このため、熔解槽101の側壁に設けられた電極対に電流を流して熔融ガラスに電流を流そうとすると、本来熔融ガラスに流れるべき電流の一部は、熔解槽101の側壁及び底壁に流れ、側壁および底壁が加熱される。特に、熔解槽101の底壁の下方に、複数層の断熱特性に優れた耐火レンガを敷き詰めた層構成の敷き部には、断熱特性によって熱が逃げず、部分的に熱が蓄積されて高温になる熱ごもりが発生する。このような熱ごもりは、底壁や敷き部の耐火レンガの機械的強度を低下させ、熱クリープが生じる他、耐火レンガの一部が熔損して貯留すべき熔融ガラスが外部に流出する虞もある。
このため、本実施形態では、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを通電加熱によりつくる前に、熔解槽101の敷き部を含む底部の温度が、底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、底部の保温抑制構造が設定される。なお、耐火レンガの荷重軟化点温度は、JIS R2209:2007により規定されている。本実施形態における耐火レンガの荷重軟化点温度は、上記JIS規定のT2(2%収縮)である。なお、このT2の値から許容範囲内の値(例えば10℃〜20℃)を差し引いた値を耐火レンガの荷重軟化点温度として用いてもよい。以下、熔解槽の構成をより詳細に説明する。
(熔解槽)
図3は、熔解槽101の熔解槽本体とその周辺の構造の概略を説明する斜視図であり、図4は、熔解槽101の断面を簡略化して説明する図である。原料投入口から熔融ガラスの後工程へ流す流出口へ向かう方向を熔解槽101の長手方向というとき、図4に示す断面は、図3に示す電極114が設けられた長手方向の位置における断面である。図5は、熔解槽本体の長手方向に沿った断面図である。
本実施形態において、熔解槽101は、熔解槽本体110と、バーナー112と、電極対114と、迫部118と、を主に有する。
熔解槽本体110は、上部に気相空間を有し、下部において熔融ガラスを貯留する部分であり、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを貯留する。
バーナー112は、熔解槽本体110の気相空間を囲う気相空間仕切り壁116上の長手方向の異なる位置に、互いに対向する両方の壁それぞれに3つ設けられている。このときバーナー112は、互いに対向する位置には設けられず、互い違いに設けられている。なお、バーナー112は、互いに対向する両壁の双方に設けられず、片方の壁に3つ設けてもよい。図3では、熔解槽本体110の奥側の壁に設けられるバーナー112のみが示されている。バーナー112は、燃料と酸素等を混合した燃焼ガスが燃焼して火炎を発する。図4では、2つのバーナー112が対向する壁の対向する位置に設けられるように示されるが、図4に示す2つバーナー112は、図4の紙面に対して垂直方向の異なる位置に設けられている。
電極対114は、熔融ガラスを通電加熱するために熔解槽本体110の側壁部の、長手方向の3つの異なる位置に、熔融ガラスを挟んで互いに対向するように3対設けられている。図3では、熔解槽本体110の手前側の側壁部に設けられる電極のみが示されている。電極対114は、例えば、酸化錫あるいはモリブデン等の耐熱性を有する導電性材料が用いられる。電極対114は、制御ユニット120に接続され、制御ユニット120から制御された電流の供給を受ける。制御ユニット120は、コンピュータ122と接続されており、コンピュータ122の制御信号により、電極対114に流れる電流が制御されている。コンピュータ122は、熔解槽101の底部の温度が底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、予め定められた電流を電極対114に流すように制御信号を生成する。
気相空間仕切り壁116は、熔解槽本体110の一部であり、溶融ガラスの貯留部分の上部に設けられた壁である。この壁にバーナー112が設けられている。また、気相空間仕切り壁116には、開閉自在な原料投入口101fが設けられ、この原料投入口101fを通してガラス原料を積んだバケット101d(図2参照)が出入りする。バケット101dにより、ガラス原料は熔解槽本体110に貯留する熔融ガラスの液面に投入される。熔解槽本体110の原料投入口101fと対向する側壁の底部近傍には、流出口104aが設けられている。熔解槽101は、流出口104aから後工程に向けて熔融ガラスを流す。
迫部118は、熔解槽101の気相空間を閉じる天井壁である。図4には、迫部118が詳しく示されている。迫部118の頂部には、温度センサ118aが設けられている。
熔解槽本体110、気相空間仕切り壁116及び迫部118は、いずれも熔融ガラスの温度に対して耐熱性を有するものが用いられ、例えば電気抵抗,耐食性が高いジルコニア系電鋳耐火物レンガが用いられる。また、仕切り壁、迫部118には、AZS(Al23−ZrO2−SiO2)を使用してもよい。
熔解槽本体110の下部には、耐火レンガによって構成された積層構造の敷き部124が設けられている。敷き部124は、4層構造の断熱層を有する。熔解槽101の底壁110aには、敷き部124に用いる耐火レンガに比べて荷重軟化点温度の高い耐火レンガが用いられる。荷重軟化点温度の高い耐火レンガは、気孔率の低い緻密な耐火レンガであるため、熱伝導率は比較的高い。このため、敷き部124において、底壁110aに用いる耐火レンガに比べて熱伝導率の低い断熱性の高い耐火レンガが用いられる。熱伝導率の低い耐火レンガは、気孔率の高い耐火レンガであるため、荷重軟化点温度は低くなる。このような層構造が熔解槽110に一般的に用いられる。本実施形態では、熔解槽本体110の底壁110aと敷き部124とを含む部分を熔解槽110の底部126と言う。
熔解槽本体部110の底壁には、温度センサ設置用開口126aとドレン口126bと孔126cが設けられる。本実施形態では、温度センサ設置用開口126aとドレン口126bと孔126cが設けられるが、温度センサ設置用開口126aとドレン口126bと孔126cのいずれか1つあるいは2つが設けられてもよい。また、温度センサ設置用開口126aと孔126cのそれぞれの設置数は1つに限定されず、複数であってもよい。
温度センサ設置用開口126aは、熔融ガラスMGの底壁部分における温度を計測する温度センサ、例えば熱電対を設置するために熔解槽本体110の底壁に設けられた開口である。この開口は、底壁110a及び敷き部124の耐火レンガにあけられた孔と接続されている。したがって、上記開口と接続された孔は、熔融ガラスMGの粘度を高くして熔融ガラスMGが孔から漏出しないように、孔及び孔の周辺の保温は抑えられている。
ドレン口126bは、熔融ガラスMGを後工程に流すことなく、ガラス板製造装置の外部に流出する流出口104aである。熔解槽本体110に貯留する熔融ガラスMGは、熔解槽101あるいは熔解装置100の補修のために、熔解槽本体110から完全に抜き出す場合がある。なお、ドレン口126bは、流出口104aが設けられる側壁に設けることもできる。
また、熔解槽本体110には、熔融ガラスMG中の泡を成長させて後工程の清澄工程で清澄しやすくするために、熔融ガラスMGに泡を導入する場合がある。この場合、熔融ガラスMGに泡を導入するための泡形成用気体導入口が熔解槽本体110の底壁に設けられる。図3〜5に示す実施形態では、泡形成用気体導入口が設けられていない。この気体導入口も、底壁110a及び敷き部124の耐火レンガにあけられた孔と接続されている。したがって、上記泡形成用気体導入口と接続された孔も、熔融ガラスMGの粘度を高くして熔融ガラスMGが孔から漏出しないように、孔及び孔の周辺の保温は抑えられている。
孔126cは、耐火レンガの少なくとも一層において設けられ、耐火レンガから敷き部124の底面124aに延びる孔である。図5に示す例では、敷き部124の下から2つ目のレンガ層と底面124aとの間に孔126cが設けられている。孔126cは、耐火レンガの少なくとも一層から底面124aに延びる孔であればよく、孔126cの開始位置は熔解槽101の底壁の面を除き特に制限されない。孔126cを設けることで、孔126cを囲う耐火レンガは外気に触れる面積が広くなるため熱放射をし易い。このため、孔126cの周辺の耐火レンガの保温は抑えられている。
このように、温度センサ設置用開口126a、ドレン口126b、熔融ガラスMGに泡を導入するための泡形成用気体導入口、あるいは孔126cを設けることは、保温抑制構造を設けることにあたる。そして、温度センサ設置用開口126a、ドレン口126b、熔融ガラスMGに泡を導入するための泡形成用気体導入口、あるいは孔126cの位置を適切に設けることにより、底部126を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるようにすることができる。
このような熔解槽101では、熔融ガラスの粘度を所定の粘度にするために熔融ガラスに電流を流して通電加熱するので、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを用いる場合、上述したように、底部126の一部分において熱ごもりが発生し易い。このため、底部126には、底部126の温度を、底部126を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満にする底部126の保温抑制構造が設けられている。なお、熱ごもりの発生する部分は、電極対114の各位置に与える電流および熔解槽本体110の形状に応じて変化するが、熱ごもりの発生する部分は、概略、熔解槽本体110の長手方向の中心と、この中心から流出口104a側にずれた位置との間に位置することが多い。
保温抑制構造として、例えば、敷き部124の耐火レンガの少なくとも一層において、敷き部124の耐火レンガの熱伝導率を部分的に同じ層の周囲に対して異ならせた構造を用いることができる。より具体的には、敷き部124に保温抑制構造が設けられない場合、耐火レンガの温度が最も高くなる位置における温度であって、耐火レンガの荷重軟化点温度以上の温度となる部分を、熔解槽101の温度分布を計測することにより、あるいは、コンピュータを用いた熱シミュレーション計算により、見出す。この見出された部分は、長時間荷重軟化点温度以上の温度に曝されると、熔融ガラスMGの重さや熔解槽101の重さによって熱クリープを生じて変形し、さらには、耐火レンガが熔損して熔解槽101が損傷する虞がある。このため、上記熱ごもりを抑制するために、敷き部124の熱ごもりの発生する部分の耐火レンガを、保温抑制構造として、より熱伝導率の高い耐火レンガに変更する。したがって、この場合、保温抑制構造は、敷き部124の耐火レンガの少なくとも一層において、敷き部124の耐火レンガの熱伝導率を部分的に同じ層の周囲に対して異ならせた構造となる。例えば、熔解槽101の長手方向と直交する幅方向の中心線を挟んだ熔解槽101の底壁の幅の30.5%〜69.5%の中央部分において、この中央部分の両側に比べて熱伝導率の高い、すなわち放熱効果の高い耐火レンガを用いることが好ましい。なお、熱シミュレーション計算は、実際にガラス板を作製するための溶融ガラスをつくる前に行っても、ガラス板を作製するための溶融ガラスをつくる操業開始後に行ってもよい。
保温抑制構造として、上記熱ごもりが発生する部分に、熔解槽101の底部に設けられるドレン口126b、温度センサの設置用開口126a、および泡形成用気体導入口のうち、いずれか1つの開口の位置を設定した構造を用いることもできる。ドレン口126b、温度センサの設置用開口126a及び泡形成用気体導入口は、底壁110a及び敷き部124の耐火レンガにあけられた孔と接続されており、保温を抑制する構造となっているので、断熱性は低く放熱しやすい。このため、特定した熱ごもりの部分に、ドレン口126b、温度センサの設置用開口126a、および泡形成用気体導入口のうち、いずれか1つの開口の位置を設定することで、保温を抑制することができる。
また、保温抑制構造として、上記熱ごもりが発生する部分に、熔解槽101の底部に設けられる孔126cを設定した構造を用いることもできる。孔126cは、敷き部124の耐火レンガにあけられた孔であり、保温を抑制する構造となっているので、断熱性は低く放熱しやすい。このため、特定した熱ごもりの部分に、孔126cを設けることで、保温を抑制することができる。
熔解槽101でつくる熔融ガラスMGは、酸化錫を含有し、102.5ポアズであるときの温度が1580℃以上であっても、熔解槽本体110及び底部126の熱クリープの発生を抑え、耐火レンガの熔損を抑えることができる。すなわち、酸化錫を含有し、102.5ポアズであるときの温度が1580℃以上の高温粘性の高い熔融ガラスを用いる場合、本発明の効果は大きくなる。
また、本実施形態では、1550℃における電気抵抗率が190Ω・cm以上である熔融ガラスについても適用できる。
このような熔解槽110、すなわち、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを通電加熱によりつくる熔解槽は、以下の設計方法によって設計することができる。
まず、基準とする図示されない熔解槽モデルを用いて熔解槽101を用いた熔融ガラスMGの熱伝導のシミュレーション計算を行って熔解槽101の敷き部124を含む底部126の温度分布を求める。求めた温度分布の最高温度が荷重軟化点温度以上の場合、荷重軟化点温度未満になるように、上述の熔解槽モデルの保温抑制構造を修正することにより熔解槽101の底部126の保温抑制構造を決定する。
このような設計方法は、演算処理ユニット及びメモリを有するコンピュータを用いてソフトウェアを実行することにより実現することができる。
このように、保温抑制構造を熔解槽101の底部126に設ける場合、熔融ガラスMGの流出口104aの設けられる下流側壁101bと接続される底部126の部分に、保温抑制構造を設けないことが好ましい。この部分に保温抑制構造を用いると、下流側壁101b近傍の熔融ガラスMGの温度は低下するので、下流側壁101b近傍の熔融ガラスMGの液面には異質素地(難熔性成分であるSiO2の濃度が他の場所よりも高くなった素地)が溜まり易い。この異質素地が熔融ガラスMGの下方に沈み込んで流出口104aから流出して後工程に流れ、脈理を形成する場合がある。このような異質素地の流出を抑制するために、下流側壁101b近傍の熔融ガラスMGの温度が下がりすぎないようにすることが必要である。この点から、熔解槽101の下流側壁101bと接続される底部126の部分に、上述した保温抑制構造を設けないことが好ましい。
次に、熔解槽101と熔融ガラスMGの熱伝導のシミュレーション計算を用いた熔解槽の温度分布を説明する。
図6(a)は、基準とする熔解槽モデルの断面構造の一例を示した図である。図6(a)は、熔解槽モデルを、長手方向と直交する幅方向の中心位置を通り、長手方向に沿った垂直平面で切断した図を示している。熔解槽モデル101Mは、熔解槽本体モデル110Mと敷き部モデル124Mを含む。敷き部モデル124Mは、4層のレンガ層モデルで構成されている。熔解槽本体モデル110Mと敷き部モデル124Mの熱伝導率は、基準とする実際の熔解槽101の熔解槽本体110と敷き部124の熱伝導率の値を用いた。熔解槽本体モデル110Mの壁に対応する部分の熱伝導率は(3.18799×10-124 − 1.8239798×10-83 + 4.0884149 × 10-52 −0.0384005T+13.677581)[W/(m・K)](T:温度[K])とし、4層の敷き部モデル124Mの熱伝導率は、上層から順番にそれぞれ、
・(3.18799×10-124 −1.8239798×10-83 + 4.0884149 × 10-52 −0.0384005T+13.677581)[W/(m・K)](T:温度[K])、
・3.605[W/(m・K)]、
・2.093[W/(m・K)]、
・(3.05869×10-4T−0.159519)[W/(m・K)](T:温度[K])、
とした。
図6(b)は、図6(a)に示す構成を有する熔解槽101と熔融ガラスMGの熱伝導のシミュレーション計算の結果の一例を示す図である。熱伝導のシミュレーション計算として、熔融ガラスMGを模擬する流体要素を熔解槽本体モデル110Mに満たして、流体要素の液面に放射熱伝達境界条件(放射率0.7、参照温度1580℃)の温度境界条件を与え、流体要素に(流量6トン/日、流入温度1500℃、3つの電極について、投入機側から順に114アンペア,125アンペア,138アンペア)の条件で加熱を与えて通電加熱をシミュレーションして熔融ガラスMG及び熔解槽101の熱伝導による温度分布のシミュレーション計算を行った。
図6(b)によれば、底部126に対応する底部モデル126Mの部分で、温度は最高温度となっている。この最高温度は1713℃であった。最高温度の長手方向の位置は、熔解槽モデル101Mの長手方向の中央部分から流出口104aを再現した部分の側に寄った位置である。
図7(a)は、図6(b)に示す最高温度1713℃となった位置にドレン口モデル126bMを設けた熔解槽モデル101Mの構成の一例を示す図である。この場合、ドレン口モデル126bMの近傍のレンガのモデルには、ドレン口モデル126bMによる放熱が極端に大きくならないように、ドレン口モデル126bMを取り巻くレンガのモデルは、このレンガのモデルを取り囲むレンガのモデルに比べて熱伝導率が低くなる(保温性の高くなる)ように熱伝導率が設定されている。図7(b)は、図7(a)に示す構成の熔解槽と熔融ガラスの熱伝導のシミュレーション計算の結果の一例を示す図である。熱伝導のシミュレーション計算では、ドレン口モデル126bMを取り巻くレンガのモデル以外は、図6(a)の場合と同様の熱伝導率の値を用いて、図6(a)の場合と同様のシミュレーション計算を行った。ドレン口モデル126bMを取り巻くレンガのモデルの熱伝導率は1.744[W/(m・K)]とした。図7(b)によれば、底部126を再現した、敷き部モデル124Mを含む底部モデル126Mの最高温度の位置は、長手方向のガラス原料供給側に移動し、最高温度は1696℃に低下した。
図8(a)は、図6(b)に示す最高温度1713℃となった部分にドレン口126bMを設けた熔解槽モデルの構成の他の一例を示す図である。この場合、図7(b)に示す最高温度を示す領域に、3つの孔モデル126cMを設けるとともに、ドレン口126bMに対して長手方向の流出口に対応する部分の側に1つの孔モデル126cMを設けた。さらに、敷き部124の4層のレンガ層に対応するレンガ層モデルのうち下から2番目のレンガ層モデルにおいて、熔解槽101の長手方向と直交する幅方向の中心線を挟んだ中央部分のレンガ層モデルの熱伝導率が、この中央部分を挟んだ幅方向外側のレンガ層モデルの熱伝導率に比べて高くなるようにし、この熱伝導率の高いレンガ層モデルを、熔解槽モデル101Mの長手方向に延在させるように構成した。この中央部分のレンガ層モデルの熱伝導率は2.093[W/(m・K)]とした。これ以外のレンガ層モデルの熱伝導率は、図7(a)に示す例と同様の熱伝導率を用いた。すなわち、耐火レンガ層の少なくとも一層において、敷き部124の耐火レンガの熱伝導率を部分的に周囲に対して異ならせることをモデルで再現した。これ以外の敷き部124のレンガ層モデルは、図7(a)に示す例と同様の熱伝導率の値を用いた。
図8(b)は、図8(a)に示す構成の熔解槽と熔融ガラスの熱伝導のシミュレーション計算の結果の一例を示す図である。熱伝導のシミュレーション計算では、図7(a)に示す例と同様のシミュレーション計算を行った。図8(b)によれば、底部モデル126Mの最高温度の位置は、長手方向の熔融ガラスの流出口104aの側に移動し、最高温度は1664℃に低下した。
このようなシミュレーション計算の結果より、敷き部124のレンガ層の構成を調整して、ドレン口126bの位置を調整し、また、孔126cの位置を設定して孔126cを設けることにより、熔解槽101の底部126の温度を低減することができる。底部126に用いる耐火レンガの荷重軟化点温度は、例えば1700℃前後であるので、上述したような保温を抑制する構造を採用することにより、底部126の耐火レンガの温度を荷重軟化点温度未満にすることが可能となる。
図6(b)に示すシミュレーション計算の結果の熔融ガラスの温度分布を参照すると、底部126の最高温度の位置は、熔解槽の幅方向中央部分の長手方向中央部分から流出口側に位置するので、熔解槽101の底壁においても、上記底部126の最高温度の長手方向の位置(位置A)において温度が最も高くなっている。このため、図9に示すように、熔解槽101において、位置Aから熔融ガラスMGが液面に向かって上昇するような対流が生じやすい。図9は、熔解槽101内の熔融ガラスMGの対流の例を説明する図である。このような熔融ガラスMGの対流が発生すると、ガラス原料101aのうち難熔性成分であるSiO2の濃度が他の場所よりも高くなった素地である異質素地101cが対流によって長手方向の流出口104aの側の液面に溜まっている場合が多い。この異質素地101cが対流Bの流れに乗って熔解槽101の底壁側で沈み込んで、後工程に流出し、ガラス板は脈理と呼ばれる光学的に異質な筋状の欠点を形成する虞がある。このため、図9に示すような対流を発生させないために、熔解槽101における流出口104aの側の壁面近傍の熔融ガラスの温度T3は、位置Aにおける熔融ガラスMGの温度T2に比べて小さいことは好ましくない。この点で、図6(b)に示すシミュレーション計算の結果は、製造されるガラス板において脈理と呼ばれる光学的に異質な筋状の欠点を形成するので好ましくない結果である。図7(b)に示すシミュレーション計算の結果は、図6(b)に示すシミュレーション演算結果に比べて、温度T3と温度T2の差は小さくなっている。
一方、図8(b)に示すシミュレーション演算結果では、熔解槽101の溝底近傍における熔融ガラスMGの温度は、流出口104aの側の側壁における温度T3に対して、長手方向中央部の温度T2は低い。さらに、この温度T2に対して、原料投入側の側壁における温度T1は低い。しかも、ガラス原料の投入位置における熔融ガラスMGの表層の温度T4は、温度T3に対して低い。このため、図10に示すように、熔解槽101では、反時計回りの対流が熔融ガラスMGに発生する。図10は、熔解槽101内の熔融ガラスMGの好ましい対流の例を説明する図である。流出口104aから流れなかった熔融ガラスMGの一部は熔解槽101の側壁に沿って液面に向かって上昇し、液面に上昇した熔融ガラスMGの一部が液面に沿って原料投入側の熔解槽101の側壁に向かって流れ、原料投入側の熔解槽101の側壁に沿って液面から下降し、さらに底壁に沿って原料投入側から排出口の側に向かって流れる。このため、異質素地101bが、流出口104aの側の側壁付近に漂って来ることはない。さらに、流出口104aの側の側壁では、熔融ガラスMGの流れが底壁から液面に向けて流れているので、異質素地101bが沈み込むことは無い。このため、製造されるガラス板において脈理と呼ばれる光学的に異質な筋状の欠点を形成しない。このように、上述した保温抑制構造を採用することは、熔解槽101における熔融ガラスMGの対流を改善し、ガラス板が脈理を発生しないようにすることができる。
以上、本実施形態では、熔解槽101の敷き部124を含む底部126の温度が、底部126を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、熔解槽101には底部126の保温抑制構造が設けられている。このため、底部126の熱ごもりを抑え、熔解槽の熔損を生じさせない。
本実施形態では、熔融ガラスをつくる前に、基準とする熔解槽モデルを用いて熔融ガラスをつくるシミュレーション計算を行って底部126の温度分布を予測計算し、温度分布の最高温度が荷重軟化点温度未満になるように、底部126の保温抑制構造を設定する。このため、熔解槽を用いた試行錯誤の実験に代わりに数値計算により底部126の耐火レンガの温度を予測できるので、底部126の熱ごもりを抑制し、熔解槽の熔損を生じさせない保温抑制構造を効率よく見出すことができる。
本実施形態では、底部126の保温抑制構造の設定は、底部126の耐火レンガの少なくとも一層において、敷き部124の耐火レンガの熱伝導率を部分的に周囲に対して異ならせることを含むので、耐火レンガの種類を変えるだけで熱の伝導を高め容易に熱ごもりを抑制することができる。
また、底部126の保温抑制構造の設定は、敷き部124の耐火レンガの少なくとも一層において、敷き部126の底面に延びる孔を敷き部124の耐火レンガに設けることを含むので、放熱を高め容易に熱ごもりを抑制することができる。
また、底部126の保温抑制構造の設定は、熔解槽101の底部に設けられるドレン口、温度センサの設置用開口、および泡形成用気体導入口のうち、いずれか1つの開口の位置を設定ことを含むので、放熱を高め、容易に熱ごもりを抑制することができる。
なお、熔融ガラスは、酸化錫を含有し、102.5ポアズであるときの温度が1580℃以上である場合においても、本実施形態の保温抑制構造を設定することにより、底部126の温度が、底部126を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるようにすることができるので、本実施形態の保温抑制構造を採用しない場合に比べて、熱ごもりの抑制及び熔解槽の熔損の抑制の効果は大きくなる。
以上、本発明のガラス板の製造方法、熔解槽の設計方法及び熔解槽について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
100 熔解装置
101 熔解槽
101a ガラス原料
101b 下流側壁
101c 異質素地
101d バケット
101f 原料投入口
102 清澄槽
103 攪拌槽
103a スターラ
104,105,106 ガラス供給管
104a 流出口
110 熔解槽本体
112 バーナー
114 電極対
116 気相空間仕切り壁
118 迫部
120 制御ユニット
122 コンピュータ
124 敷き部
126 底部
200 成形装置
210 成形体
300 切断装置
101M 熔解槽モデル
110M 熔解槽本体モデル
124M 敷き部モデル
126M 底部モデル
126bM ドレン口モデル
126cM 孔モデル

Claims (8)

  1. 熔解槽において、1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを通電加熱によりつくる工程を含むガラス板の製造方法であって、
    前記熔解槽の敷き部を含む底部の温度が、前記底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満になるように、前記熔解槽には前記底部の保温抑制構造が設定されることを特徴とするガラス板の製造方法。
  2. 基準とする熔解槽モデルを用いて熔融ガラスをつくるシミュレーション計算を行って前記底部の温度分布を予測計算し、前記温度分布の最高温度が前記荷重軟化点温度未満になるように、前記底部の保温抑制構造が設定される、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
  3. 前記敷き部は、複数の耐火レンガの積層構造であり、
    前記保温抑制構造の設定は、前記耐火レンガの少なくとも一層において、前記敷き部の耐火レンガの熱伝導率を部分的に周囲に対して異ならせることを含む、請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。
  4. 前記敷き部は、複数の耐火レンガの積層構造であり、
    前記保温抑制構造の設定は、前記耐火レンガの少なくとも一層において、前記敷き部の底面に延びる孔を前記敷き部の耐火レンガに設けることを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  5. 前記保温抑制構造の設定は、前記熔解槽の底部に設けられるドレン口、温度センサの設置用開口、および泡形成用気体導入口のうち、いずれか1つの開口の位置を設定することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  6. 前記熔融ガラスは、酸化錫を含有し、102.5ポアズであるときの温度が1580℃以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
  7. 1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを通電加熱によりつくる熔解槽の設計方法であって、
    基準とする熔解槽モデルを用いて熔解槽と熔融ガラスの熱伝導のシミュレーション計算を行って前記熔解槽の敷き部を含む底部の温度分布を求め、前記温度分布の最高温度が前記荷重軟化点温度未満になるように、前記熔解槽モデルの底部を修正することにより熔解槽の底部の保温抑制構造を設定する、ことを特徴とする熔解槽の設計方法。
  8. 熔融ガラスをつくる熔解槽であって、
    1550℃における電気抵抗率が160Ω・cm以上である熔融ガラスを貯留する熔解槽本体と、
    前記熔融ガラスを通電加熱する電極対と、
    前記熔解槽の敷き部を含む底部の温度を、前記底部を構成する耐火レンガの荷重軟化点温度未満にする前記底部の保温抑制構造と、を含むことを特徴とする熔解槽。
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