≪第1の実施の形態≫
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。図1は、本発明の第1の実施の形態による包装材料の積層方向に沿った断面であって、包装材料の層構成を説明するための図である。図2は、図1の包装材料を用いて作製された包装容器の一例を示す図である。
図1に示す包装材料10は、例えば、図2に示すレトルトパウチ形式の包装容器1に用いられる。レトルトパウチ形式の包装容器1では、包装材料10同士を重ね合わせて対向する辺部をヒートシールすることで、当該辺部が貼り合わせられる。このため、包装材料10は、容器内方側となる部分にシール性を有するシーラント層50が設けられている。また、ここで説明する包装容器1は、食品を内容物として内包することに適した容器である。包装容器1を構成する包装材料10は、水蒸気の透過を防止する蒸気バリア性及び酸素ガス等のガスの透過を防止するガスバリア性を確保すべく、バリア層40を備えている。また、本実施の形態では、遮光性及び隠蔽性を確保すべく、基材層20に遮光層30が積層されている。このような層構成を持つ包装材料10は、図示する例では、製袋して包装容器1とするときの容器外方となる側から容器内方となる側に向けて基材層20と遮光層30とバリア層40とシーラント層50とをこの順で含んでいる。以下、各層について詳述していく。
(基材層)
基材層20は、図1に示すように、基材22と、基材22の容器内方側となる面に積層された、絵柄を含む絵柄層21と、を含んでいる。本実施の形態では、基材22は、包装材料10のうち、製袋して包装容器1とするときの最も容器外方となる層としても機能する。
このような基材22としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(Ny)などの熱可塑性樹脂フィルムの一軸ないし二軸延伸フィルムを好適に用いることができる。
更に、基材22は、ガスバリア性を有していてもよい。この場合、包装材料10全体としてのガスバリア性が改善され、この包装材料10から作成された包装容器1において、例えば外部からの酸素の透過を抑えて内容物の酸化による劣化を抑制することができる。一例として、ガスバリア性を有する基材22として、それ自体がガスバリア性の高いフィルム、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)などを用いてもよい。
前述したように、基材22の容器内方側となる面に、絵柄を含む絵柄層21が積層されている。ここで、絵柄とは、基材層20に記録または印刷され得る種々の態様の記録対象のことであり、特に限定されることなく、図、文字、模様、パターン、記号、柄、マーク等を広く含む。とりわけ、レトルトパウチ形式の包装容器1に用いられる包装材料10では、絵柄として、内容物の図や、内容物の商品名、賞味期限、製造日、製造番号等の情報を示す文字が用いられる。もっとも、絵柄層21は、商品の仕様に応じて基材22に積層されるものであり、基材層20に絵柄層21が設けられなくてもよい。
本実施の形態では、絵柄層21は、容器外方側となる基材22の外面ではなく、基材22の内面に施される。この場合、絵柄層21は、耐摩耗性に優れることから擦れ等による消失を効果的に防止することができ、且つ、絵柄の改ざんも効果的に防止することができる。また、製袋して包装容器1としたときに、基材22の内面に積層された絵柄層21を基材22を介して視認し得るよう、基材22は透明性を有していることが好ましい。
(遮光層)
遮光層30は、製袋された包装容器1に内包される内容物に光が到達することを遮ることによって当該内容物の品質が低下することを抑制するための機能、すなわち遮光性を有している。遮光層30によって遮光すべき光は、主として、通常の使用条件下において包装材料10に入射する、例えば300〜800nmの波長域の外光からなる、可視光及び紫外線である。また、可能な限り遮光層30によって、例えば波長800nmを越える、赤外光も遮光されることが好ましい。更に、遮光層30は、消費者の購買意欲を高めるために、製袋された包装容器1の内容物が見えないように隠蔽性を十分に高めるためにも設けられている。
遮光層30は、上記の機能を満たす層であれば特に限定されない。一例として、遮光層30は、インキを印刷してなる遮光印刷層や、白色等に着色された樹脂層や、紫外線吸収剤を添加された樹脂層であってもよい。このうち、インキを印刷してなる遮光印刷層31は、基材層20の基材22にインキを印刷することによって形成することができ、これにより、遮光印刷層31を安価に効率よく製造することができる。
加えて、遮光印刷層31は、白インキ層と黒インキ層と無彩色層と有彩色層とからなる群のうちの一以上を適切に積層させることによって形成される。これらの層を適切に組合わせることにより、遮光印刷層31は、優れた遮光性及び遮蔽性を発揮することができる。ここで、白及び黒は、無彩色と呼ばれ、有彩色と区別される。なお、無彩色及び有彩色とは、JIS−Z8102:2001における定義に準じる。
遮光印刷層31は、白インキ層と黒インキ層と無彩色層と有彩色層とからなる群のうちの一以上を基材22に印刷することによって形成される。これらのインキを基材22に印刷する方式は、ベタ印刷でも網点印刷でもどちらでもよい。このうち、ベタ印刷では、インキを隙間なく塗布することができるため、ベタ印刷してなる遮光印刷層31は、光を透過させ難く、更に内容物を浸透させ難い。
具体的には、黒インキ層は、黒色系顔料を含んでなる黒インキを基材層20の基材22に印刷して形成される。とりわけ、黒色顔料は、遮光層30の遮光性及び隠蔽性を向上させることに大きく寄与する。白インキ層は、白色系顔料を含んでなる白インキを基材層20の基材22に印刷して形成される。白インキ層は、需要者に清潔感を感じさせることに大きく寄与する。また、包装材料10の遮光性及び隠蔽性も向上させることができるが、黒インキに比べると寄与は小さい。
無彩色層は、白色系顔料を含む白インキ及び黒色系顔料を含む黒インキを混合してなる無彩色インキを基材層20の基材22に印刷して形成される。この無彩色インキは、白インキ及び黒インキを適切な配合比率で混合することで、JIS−Z8102:2001に準じる所定の明度に調整される。この無彩色インキに含まれる黒インキの配合比率を高くするにつれて、すなわち、無彩色インキの明度を低くするにつれて、遮光層30の遮光性及び隠蔽性を高くすることができる。また、無彩色インキからなる無彩色層32の厚みを厚くするにつれて、遮光層30の遮光性及び隠蔽性を高くすることができる。
有彩色層は、赤色系顔料、青色系顔料及び黄色系顔料の一以上を混合してなる有彩色インキを基材層20の基材22に印刷して形成される。また、遮光層30の遮光性及び隠蔽性を高めるために、この有彩色インキに黒色顔料を含ませてもよい。有彩色インキは、これらの顔料を適切な配合比率で混合することで、JIS−Z8102:2001に準じる所定の明度及び彩度に調整される。とりわけ、有彩色層が容器内方となる側から視認することができる場合、有彩色層の有彩色インキは、容器に内包される内容物の色彩と同系色に調色されることが好ましい。これにより、容器内方となる側から有彩色層を観察した際に、内容物の色彩と包装容器1の内面の色彩とが調和して、消費者に清潔感を感じさせることができる。
具体的な遮光印刷層31の層構成の一例として、白インキ層と黒インキ層とからなる組合せ、白インキ層と黒インキ層と白インキ層とからなる組合せ、白インキ層と有彩色層とからなる組合せ、及び、白インキ層と無彩色層とからなる組合せを挙げることができる。このうち、白インキ層と無彩色層とからなる組合せは、遮光性及び隠蔽性に優れ、比較的に安価で効率よく製造され得る。以下、遮光印刷層31として、白インキ層と無彩色層とからなる組合せを採用した例について説明する。
図1に示すように、本実施の形態の遮光印刷層31は、少なくとも、白をベタ印刷してなる白ベタ層33と、白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層32とからなる。図示する例では、白ベタ層33及び無彩色層32は、互いに隣接して積層されている。白ベタ層33及び無彩色層32は、基材層20の容器内方側となる面に順にベタ印刷されて形成されている。
具体的には、白ベタ層33は、白色系顔料を含んでなる白インキを基材層20にベタ印刷して形成される。この白ベタ層33の厚みを厚くするにつれて、容器外方側から包装材料10を視たとき、絵柄層21の背景として観察される遮光層30の白ベタ層33の白味が増し、絵柄層21の背景に明るさが醸し出されると共に需要者に清潔感を感じさせることができる。このような白ベタ層33の厚みは、例えば、1μm〜10μm程度に形成される。
一方、無彩色層32は、白色系顔料を含む白インキ及び黒色系顔料を含む黒インキを混合してなる無彩色インキを基材層20の基材22にベタ印刷して形成される。このような無彩色層32の厚みは、例えば、1μm〜10μm程度に形成される。
ここで、白ベタ層33と無彩色層32との関係について更に詳述する。先ず、白ベタ層33の厚みと無彩色層32の厚みとを加算した総厚みは、30μm以下であることが好ましい。前記総厚みが30μmを越える場合、後述する製造方法において、基材22に印刷された白ベタ層33及び無彩色層32を乾燥させる際に、白ベタ層33及び無彩色層32に熱を十分に伝えることができず、白ベタ層33及び無彩色層32が十分に乾燥されない状態で包装材料10が製造されてしまうおそれがある。この場合、十分に乾燥されなかった白ベタ層33及び無彩色層32に含まれる顔料やバインダーから異臭が生じてしまい、商品性を著しく低下させる要因となる。
また、白ベタ層33の厚み、無彩色層32の厚み及び無彩色層32を構成する無彩色インキにおける白インキと黒インキとの配合比率は、容器外方側から包装材料10を視た場合の外観、容器内方側から包装材料10を視た場合の内観及び包装材料10に求められる遮光性及び隠蔽性の程度に基づいて決定される。
一例として、白ベタ層33の厚み、無彩色層32の厚み、及び、無彩色インキにおける配合比率は、以下のようにして決定される。前述したように、図2に示す例では、包装材料10の容器外方側から絵柄層21及び遮光層30を視たとき、絵柄層21の背景として遮光層30の白ベタ層33側が観察される。一方、包装材料10の容器内方側から遮光層30を視たとき、遮光層30の無彩色層32側が観察される。先ず、容器内方側から包装材料10を視た場合の内観を調整すべく、上述した無彩色層32をなす無彩色インキの明度が、包装容器1に内包される内容物に調和するような明度に決定される。次に、この決定された明度に基づいて無彩色インキにおける白インキと黒インキとの配合比率が決定され、包装材料10に求められる遮光性及び隠蔽性に応じて、この無彩色インキからなる無彩色層32の厚みが決定される。そして、容器内方側から包装材料10を視た場合の外観を調整すべく、白ベタ層33の厚みが決定される。
また、包装材料10の光透過性を評価する指標として、全光線透過率を用いることができる。ここで、全光線透過率とは、試料となる遮光層30に入射する光の全入射光量に対する遮光層30を通過した全透過光量の割合をいう。ほとんどの試料は光拡散性を有するため、全光線透過率は、平行光線透過率と拡散透過率の和となり、JISで規定される積分球を使用する光学的特性試験方法JIS−K7361−1に準拠して計測される。
一例として、遮光層30の全光線透過率は、0.1%以上20%以下であることが好ましい。全光線透過率が20%以下である場合、通常の使用条件下において包装材料10に入射する300〜800nmの波長域の外光からなる可視光と紫外線とを効果的に遮断することができ、包装容器1に内包される内容物の劣化を効果的に抑制することができる。一方、遮光層30の全光線透過率が0.1%未満となると、遮光印刷層31の厚み、つまり白ベタ層33の厚み及び無彩色層32の厚みが大きく増大してフィルムとしてのコストが上昇するだけでなく、上述した白ベタ層33の厚みと無彩色層32の厚みとを加算した総厚みが、30μmを越えてしまう可能性がある。この場合、上述したように、十分に乾燥されない白ベタ層33及び無彩色層32に含まれる顔料やバインダーから異臭が生じてしまい、商品性を著しく低下させる。なお、遮光層30の全光線透過率を低下させるために大きく寄与するのは、無彩色層32に含まれる黒インキの配合比率であるが、更に白ベタ層33をも組み合せて使用することによって、遮光性を更に高めることができる。
(バリア層)
次に、遮光層30とシーラント層50との間に積層されたバリア層40について説明する。前述したように、包装容器1には、内容物の酸化等の変質を防止しながら内容物を保存することができるように、水蒸気の透過を防止する蒸気バリア性及び酸素ガス等のガスの透過を防止するガスバリア性が求められる。加えて、包装容器1は、落下した際の衝撃や屈曲に対する耐性も必要とされる。本実施の形態では、バリア層40は、少なくとも第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41と、多層延伸フィルム41に積層されたバリアコート層42と、を含んでおり、これらの各層の組合せによって優れたバリア性を包装材料10に付与している。
多層延伸フィルム41に含まれるポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂は、延伸処理によって分子が延伸方向に並び、優れた寸法安定性を発揮する。多層延伸フィルム41が優れた寸法安定性を発揮することにより、吸湿による多層延伸フィルム41の寸法変化が生じ難く、バリアコート層42にクラック(ヒビ割れ)が発生することを効果的に抑制することができる。
また、多層延伸フィルム41はポリアミド系樹脂を含むため、耐衝撃性を発揮する。多層延伸フィルム41が耐衝撃性を発揮することにより、包装容器1が落下した際の衝撃を多層延伸フィルム41によって吸収することができ、これにより、衝撃に起因した包装容器1へのピンホールの発生を効果的に防止することができる。
ポリエステル系樹脂層43、45は、水蒸気の透過を防止する蒸気バリア性にある程度優れている。一方、ポリアミド系樹脂層44は、吸湿し易くこれによりカールする場合がある。そこで、本実施の形態の多層延伸フィルム41は、第2ポリエステル系樹脂層45を更に含み、ポリアミド系樹脂層44を、第1ポリエステル系樹脂層43と第2ポリエステル系樹脂層45との間に配置している。このような形態によれば、第1ポリエステル系樹脂層43と第2ポリエステル系樹脂層45との間に、ポリアミド系樹脂層44を配置することにより、ポリアミド系樹脂層44に蒸気が到達することを妨げることができる。加えて、多層延伸フィルム41がポリアミド系樹脂層44を基準にして概ね対称となる。そして、ポリアミド系樹脂層44が第1ポリエステル系樹脂層43と第2ポリエステル系樹脂層45との間でバランスよく保持されることにより、ポリアミド系樹脂層44のカールを更に効果的に抑制することができる。結果として、多層延伸フィルム41が平滑な面として形成され、当該多層延伸フィルム41に均一なバリアコート層42を形成することができる。
また、上記ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂は、水蒸気の透過を防止する蒸気バリア性をある程度発揮し、酸素ガス等のガスの透過を防止するガスバリア性も幾らか発揮する。しかしながら、昨今の包装材料10に対して求められている高いレベルの蒸気バリア性及びガスバリア性を十分に満たすことはできない。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、基材に無機材料を蒸着させた高価な蒸着フィルムに代わって包装材料10に優れた蒸気バリア性及びガスバリア性を付与する手段として、多層延伸フィルム41にバリアコート層42をコーティングする手段に辿り着いた。コーティング処理を採用することによって、製造に長い期間を必要とせずに比較的に安価で効率よく高い蒸気バリア性及び高いガスバリア性を包装材料10に付与することができる。
バリアコート層42は、食品を内包するための包装容器1をなす包装材料10にバリア性を付与するために用いられるバリアコート剤を用いて形成される。バリアコート剤は、蒸気バリア性を発揮もするが、ガスバリア性に特に優れている。つまり、バリアコート層42は、酸素ガス等のガスの透過を防止するガスバリア性を包装材料10に付与することに大きく付与する。
つまり、ある程度の蒸気バリア性を発揮する多層延伸フィルム41にバリアコート層42を積層することによって、優れたガスバリア性及び優れた蒸気バリア性の両方を包装材料10に付与することができる。
以下、多層延伸フィルム41の各層の構成及びバリアコート層42の構成について詳述する。なお、以下の説明では、第1ポリエステル系樹脂層43及び第2ポリエステル系樹脂層45を単にポリエステル系樹脂層43、45と略記することがある。
(1)ポリエステル系樹脂層
ポリエステル系樹脂層43、45は、多層延伸フィルム41に寸法安定性、耐熱性等の機能を付与するものである。特に寸法安定性が付与されることで、湿潤時のガスバリア性の低下を抑制することができる。また、本実施の形態では、ポリエステル系樹脂層43、45を2層以上設け、第1ポリエステル系樹脂層43、ポリアミド系樹脂層44、第2ポリエステル系樹脂層45の順に形成する。
ポリエステル系樹脂層43、45は、いずれも結晶性ポリエステルを主成分として含有するのが好ましい。結晶性ポリエステルは、多層延伸フィルム41に寸法安定性、耐熱性等の機能を付与することに大きく寄与する。結晶性ポリエステルとして、例えば、ジカルボン酸とジオールとを重縮合させることにより得られる樹脂等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステルや、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、3−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸ジアルキル、2−スルホイソフタル酸ジアルキル、4−スルホイソフタル酸ジアルキル、3−スルホイソフタル酸ジアルキル及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のスルホン基含有ジカルボン酸等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン等のアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類、1,3−ジヒドロキシブタンスルホン酸、1,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸等のスルホン基含有ジオール等が挙げられる。
この中でも特に、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレート(PET);ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(99〜80モル%)及びイソフタル酸(1〜20モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート;ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分が1,4−ブタンジオールであるポリブチレンテレフタレート(PBT);ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(99.5〜90モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(0.5〜10モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート等が寸法安定性、耐熱性等の点から好適であり、より好ましくはテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(PET)である。
このような結晶性ポリエステルは商業的に入手可能であり、例えば、ベルペット−EFG6C、ベルペットPIFG5(いずれも(株)ベルポリエステルプロダクツ製)等をポリエステル系樹脂層43、45を構成する結晶性ポリエステルとして用いることができる。
なお、ポリエステル系樹脂層43、45に用いられる結晶性ポリエステルは1種のみでも良いし、必要に応じ2種以上をブレンドして用いてもよい。
また、ポリエステル系樹脂層43、45は、必要に応じ結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂を含有していても良いが、ポリエステル系樹脂層43、45を構成する成分の総重量に対する結晶性ポリエステルの含有量は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂としては非晶性ポリエステル等が例示できる。非晶性ポリエステルとはJIS−K7121に基づく示差走査熱量測定において融解熱量が観察されないポリエステルである。このような特性を有するポリエステルであれば特に限定されないが、具体例として、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコール(20〜80モル%)及びシクロヘキサンジメタノール(80〜20モル%)であるポリエステル;ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(20〜80モル%)及びイソフタル酸(80〜20モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステルが好適である。このような非晶性ポリエステルは商業的に入手可能であり、例えば、Eastar Copolyester 6763(イーストマンケミカル製)等を非晶性ポリエステルとして用いることができる。
また、バリア層40の効果を損なわない範囲で必要に応じて、ポリエステル系樹脂層43、45に公知の無機又は有機添加剤等を適宜配合することができる。無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、染料等を適宜配合することができる。
(2)ポリアミド系樹脂層
ポリアミド系樹脂層44は、多層延伸フィルム41に耐屈曲性、耐衝撃性等の機能を付与するものである。特に耐屈曲性が付与されることで、屈曲後のガスバリア性の低下を抑制することができる。
ポリアミド系樹脂層44は、脂肪族ポリアミドを70〜99重量%、芳香族ポリアミドを1〜30重量%含有する。
(2−1)脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。具体的には、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等を例示でき、これらのうち、2種以上の脂肪族ポリアミドを混合しても良い。
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン-6,6、ナイロン−6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6との共重合体)が挙げられ、より好ましくはナイロン−6、ナイロン−6/6,6であり、更に好ましくはナイロン−6である。2種以上の脂肪族ポリアミドとしてはナイロン−6とナイロン−6/6,6の組み合わせ(重量比で50:50〜95:5程度)が好ましい。
(2−2)芳香族ポリアミド
芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD−ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S−6007、S−6011(いずれも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
或いは、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。好ましくはヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体等である。具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル(株)製)等が例示される。
ポリアミド系樹脂層44として、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの好ましい組み合わせは、ナイロン−6とMXD−ナイロンの組み合わせ、ナイロン−6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)の組み合わせが挙げられる。
(2−3)含有量
多層延伸フィルム41におけるポリアミド系樹脂層44では、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドの含有量は、脂肪族ポリアミドが70〜99重量%、好ましくは85〜97重量%、芳香族ポリアミドが1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%の割合で含有されるように調整する。脂肪族ポリアミドが99重量%より多い場合、芳香族ポリアミドが1重量%より少ない場合には、二軸延伸性が低下し、フィルムの成形が困難となる。一方、脂肪族ポリアミドが70重量%より少ない場合、芳香族ポリアミドが30重量%より多い場合には、耐屈曲性が低下する。
ポリアミド系樹脂層44は、上記ポリアミド系樹脂からなるものであってもよいが、バリア層40の効果を損なわない範囲で必要に応じて、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を配合することができる。耐屈曲性改良剤としては、ポリオレフィン類、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられ、0.5〜10重量%程度の範囲で適宜配合することができる。無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。例えば、アンチブロッキング剤であれば、シリカ、タルク、カオリン等を100〜5000ppm程度の範囲で適宜配合することができる。なお、第2ポリエステル系樹脂層45を1層のみではなく、2層以上設けることも可能である。
(3)接着層
上記のポリエステル系樹脂層43、45とポリアミド系樹脂層44との層間強度を向上させる目的で、接着層が形成されていてもよい。接着層を介在させることにより、両者の接着後の層間強度を飛躍的に向上させることができる。接着層としては特に限定されず、例えば不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂を用いることができる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン、変性スチレン系エラストマー等が挙げられる。
変性ポリオレフィンは、公知の製法で得られ、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとをラジカル発生剤の存在下で加熱混合して得られる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。
ポリオレフィンとしては、オレフィン類の単独重合体、相互共重合体、他の共重合可能なモノマー(例えば、他のビニル系モノマー)との共重合体を例示できる。具体的には、例えば、ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン)等)、ポリプロピレン、ポリブテン、これらの相互共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を例示できる。
変性ポリオレフィンとして、好ましくは無水マレイン酸変性ポリオレフィンである。具体的には、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(例えば、三井化学(株)製のアドマーSF731、SE800等や、三菱化学(株)製のモディック等)が例示される。
変性スチレン系エラストマーは、公知の製法で得られ、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体とスチレン系エラストマーとをラジカル重合剤の存在下で加熱混合して得られる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物やスチレン−イソプレン共重合体の水素添加物等を例示できる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。
変性スチレン系エラストマーとして、好ましくは無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物である。具体的には、無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物(例えば、クレイトンポリマー製のクレイトンFG1901や旭化成ケミカルズ(株)製のタフテックM1913等)が例示できる。
(5)層構成
本実施の形態による多層延伸フィルム41は、第1ポリエステル系樹脂層43、ポリアミド系樹脂層44及び第2ポリエステル系樹脂層45の3層をこの順に有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムである。ここで、ポリエステル系樹脂層43、45は、2層のみではなく、3層以上設けることも可能である。また、ポリアミド系樹脂層44は、1層のみではなく、2層以上設けることも可能である。なお、複数あるポリエステル系樹脂層43、45は、使用する樹脂や厚みは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、ポリアミド系樹脂層44が複数ある場合も同様に、使用する樹脂や厚みは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、その他にも、接着層やガスバリア層、シール層等を必要に応じて設けることもできる。
ポリエステル系樹脂層43、45をA層、ポリアミド系樹脂層44をB層、接着層をD層、と表記すると、具体的な層構成として、(A)層/(B)層/(A)層、(A)層/(A)層/(B)層/(A)層、(A)層/(A)層/(B)層/(A)層/(A)層、(A)層/(B)層/(A)層/(A)層、(A)層/(A)層/(B)層/(B)層/(A)層/(A)層、(A)層/(D)層/(B)層/(D)層/(A)層、(A)層/(B)層/(B)層/(A)層、(A)層/(B)層/(A)層等が挙げられる。
以上のような層構成を有する多層延伸フィルム41の総膜厚は、用途にあわせて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常10〜50μm程度、好ましくは12〜25μm程度である。
また、各層の膜厚は、通常、ポリエステル系樹脂層43、45は1〜20μm程度、好ましくは1〜15μm程度である。ポリエステル系樹脂層43、45の厚みが1μm以上であることによって、寸法安定性、耐熱性等の優れた機能が多層延伸フィルム41に付与され得る。また、20μm以下であることにより、耐屈曲性の優れたフィルムを得ることができる。なお、ポリエステル系樹脂層43、45が複数の層からなる場合には、ポリエステル系樹脂層43、45の厚みは、複数のポリエステル系樹脂層43、45の総厚みである。
ポリアミド系樹脂層44の厚みは5〜49μm程度、好ましくは8〜23μm程度である。ポリアミド系樹脂層44の厚みが5μm以上であることによって、耐屈曲性、耐衝撃性等の優れた機能が付与され、49μm以下であれば充分な衝撃強度を付与しつつ、製品コストを抑えることができる。なお、ポリアミド系樹脂層44を複数形成する場合には、ポリアミド系樹脂層44の厚みは、複数のポリアミド系樹脂層44の総厚みである。
なお、接着層を設ける場合には、接着層の厚みは0.5〜5μm程度、好ましくは0.5〜2.5μm程度である。接着層の厚みが0.5μm以上であれば膜厚のコントロールがしやすく、5μm以下であれば充分な接着強度を付与しつつ、生産コストを抑えることができる。
(6)バリアコート層
次に、多層延伸フィルム41に積層されたバリアコート層42について説明する。前述したように、バリアコート層42は、食品を内包するための包装容器1をなす包装材料10にバリア性を付与するために用いられてきたバリアコート剤を用いて形成される。このバリアコート剤は、ガスバリア性及び蒸気バリア性をもつバリア成分と、バリア成分を分散させる溶媒と、を含んでいる。
バリアコート剤に含まれるバリア成分としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の有機物が挙げられる。このうち、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、ガスバリア性に極めて優れ、無機物からなる蒸着膜を形成した蒸着フィルムと比較してもガスバリア性が劣らない。
また、高温乃至高湿状態におけるバリア性を改善するために、層状乃至板状の微細な無機物もバリア成分として添加されている。つまり、本実施の形態のバリアコート剤は、有機物及び層状乃至板状の無機物を含むバリア成分と、バリア成分を分散させる溶媒と、を含んでいる。とりわけ、有機物からなるバリア成分として、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を採用した場合、常温常湿下におけるガスバリア性に極めて優れるが、高温乃至高湿状態におけるガスバリア性の低下が大きい。この点、層状乃至板状の微細な無機物をバリア成分として添加すると、高温乃至高湿状態におけるガスバリア性を改善することができる。
上記バリア成分を分散させる溶媒としては、水及び/または水溶性有機溶剤が用いられる。水溶性有機溶剤として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類及びエーテル類が挙げられる。溶媒は、バリア成分に応じて決定されるが、層状乃至板状の微細な無機物を安定して分散させる観点から、水と水溶性有機溶剤とを混合して用いることが好ましい。
一例として、バリアコート層42は、バリアコート剤を0.1g/m2以上10g/m2以下の範囲で含んでいてもよい。バリアコート剤を0.1g/m2以上含むことによって、ガスバリア性及び蒸気バリア性を十分に得ることができる。一方、バリアコート剤を10g/m2を越えて含んでも、加えた量に見合うだけのガスバリア性及び蒸気バリア性を得られないだけでなく、バリアコート層42の厚みも相当に厚くなってしまって好ましくない。
なお、多層延伸フィルム41とバリアコート層42との密着性を向上させるべく、多層延伸フィルム41とバリアコート層42との間に隣接して、アンカー層(不図示)を介在させてもよい。このようなアンカー層として、ウレタン樹脂やポリエステル樹脂を溶媒に分散させたものを用いることができる。
また、本実施の形態による包装材料10でボイルやレトルト用の包装容器1を形成する場合には、殺菌等のために包装容器1を高温に加熱するため、包装容器1に耐熱性が要求される。この場合、包装容器1を容器外方となる側から加熱するため、包装容器1の容器外方となる側の方が容器内方となる側よりも熱負荷が大きくなる。この点、本実施の形態では、製袋して容器とするときの容器外方となる側から容器内方となる側に向けて、多層延伸フィルム41の第1ポリエステル系樹脂層43と、多層延伸フィルム41のポリアミド系樹脂層44と、バリアコート層42とが、この順で積層されている。この配列によれば、容器内方となる側から容器外方となる側に向けて、熱に対する耐性が順に強くなるように各層が並べられる。従って、包装容器1を容器外方となる側から加熱する際に、第1ポリエステル系樹脂層43よりも熱に対する耐性に劣るポリアミド系樹脂層44への熱負荷を、第1ポリエステル系樹脂層43よりも抑えることができ、ポリアミド系樹脂層44よりも熱に対する耐性に劣るバリアコート層42への熱負荷を、ポリアミド系樹脂層44よりも抑えることができる。このため、包装容器1をなす包装材料10に耐熱性が要求される場合であっても、包装容器1の耐熱性を十分に発揮することができる。
(シーラント層)
シーラント層50は、上述したように、2つの包装材料10同士を重ね合わせて対向する辺部をヒートシールすることで、当該辺部を貼り合わせて密封するために設けられている。また、本実施の形態では、シーラント層50は、包装材料10のうち、製袋して包装容器1とするときの最も容器内方となる側に配置される。
このようなシーラント層50としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂からなる耐熱性のあるフィルム及びイージーピールフィルムなどが採用できる。更に、これらの材料からなるフィルムによって単層としてシーラント層50が構成されてもよいし、あるいは、複数の前記材料からなるフィルムによって多層としてシーラント層50が構成されてもよい。
とりわけ、包装材料10をボイルやレトルト用の容器など、耐熱性が要求される包装容器1に形成する場合には、シーラント層50は、主として無延伸ポリプロピレン(CPP)を含む無延伸ポリプロピレン層(CPP層)、または、主として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)を有することが好ましい。シーラント層50が、無延伸ポリプロピレン層(CPP層)、または、直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)を含むことによって、包装材料10の蒸気バリア性を更に高めることもできる。
このような耐熱性が要求される包装容器1をなす包装材料10の一例として、シーラント層50は、直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)と、製袋して容器とするときに直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)よりも容器外方に位置する6/12ナイロン層と、を含み、包装材料10は、FDA規則21CFR177.1390(c)に準拠して作製されてもよい。このような形態によれば、121℃(250°F)以上の条件下において耐熱性が要求される、食品を内包するための包装容器1に好適に適用することができる。
あるいは、他の例として、シーラント層50は、直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)と、製袋して容器とするときに直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)よりも容器外方に位置する6/12ナイロン層と、を含み、包装材料10は、FDA規則21CFR177.1395(b)に準拠して作製されてもよい。このような形態によれば、48.9℃(120°F)〜121℃(250°F)の条件下において耐熱性が要求される、食品を内包するための包装容器1に好適に適用することができる。
あるいは、更に他の例として、シーラント層50は、シーラント層50は、直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)と、製袋して容器とするときに直鎖状低密度ポリエチレン層(LLDPE層)よりも容器外方に位置する6/69ナイロン層と、を含み、包装材料10は、FDA規則21CFR177.1395(b)に準拠して作製されてもよい。このような形態によれば、48.9℃(120°F)〜121℃(250°F)以上の条件下において耐熱性が要求される、食品を内包するための包装容器1に好適に適用することができる。
シーラント層50の厚みは、40μm以上200μm以下の範囲にあるのが好ましい。この場合、包装容器1の流通過程において生じ得る落下に対する耐衝撃強度に優れると共に、内容物の充填し易さ、内容物の詰替え易さといった取扱性にも優れる。
(接合層)
遮光層30とバリア層40との間、及び/または、バリア層40とシーラント層50との間に接合層60が介在されていてもよい。この接合層60としては、例えばそれ自体既知のラミネート法にて一般に用いられる接着剤を用いることができ、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤等を用いることができる。
(包装容器)
上述した包装材料10から得られる包装容器1の形態は、特に限定されず、スタンディングパウチの形態の包装容器、ガゼット包装形態による包装容器、ピロー包装形態による包装容器、三方パウチ包装形態による包装容器の形態、及びラミネートチューブの形態の包装容器が挙げられる。更に包装材料10を容器開口を覆う蓋材として採用することも可能である。
図2に示すように、本実施の形態の包装容器1では、包装材料10同士を重ね合わせて、上側の辺部に開口2を設け、他の対向する辺部をヒートシールすることで、当該辺部が貼り合わせられる。そして、上側に設けた開口2から内容物を充填した後、当該開口2が設けられた辺部をヒートシールすることにより密閉して、包装容器1が得られる。なお、辺部をヒートシールする方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の方法で行うことができる。
以上のように、本実施の形態によれば、包装材料10は、少なくとも第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41と、多層延伸フィルム41に積層されたバリアコート層42と、を備えている。第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41は、耐衝撃性及び寸法安定性に優れ、バリアコート層42へのクラック(ヒビ割れ)の発生や衝撃に起因した包装容器1へのピンホールの発生を効果的に防止することができる。一方、バリアコート層42は、包装材料10の蒸気バリア性,ガスバリア性を大きく向上させることに寄与する。つまり、第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41と、バリアコート層42と、の組合せの結果、包装容器1に要求される蒸気バリア性及びガスバリア性の両方を充分に安定して発揮することができる。
また、このような形態によれば、後述するように、多層延伸フィルム41にバリアコート層42をコーティングすることによってバリア層40を形成することができるため、製造に長い期間を必要とせずに比較的に安価で効率よく包装材料10を製造することができる。
また、本実施の形態によれば、製袋して容器とするときの最も容器内方となる側にシーラント層50を更に備え、シーラント層50は、無延伸ポリプロピレン層または直鎖状低密度ポリエチレン層を含んでいる。このような形態によれば、2つの包装材料10同士を重ね合わせて対向する辺部をヒートシールすることが可能になると共に、包装材料10の蒸気バリア性を更に高めることができる。
また、本実施の形態によれば、遮光層30が、ベタ印刷してなる白ベタ層33と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層32とからなる。ベタ印刷では、インキを隙間なく塗布することができるため、ベタ印刷してなる白ベタ層33及びベタ印刷してなる無彩色層32は、光を透過させ難く、更に内容物を浸透させ難い。このため、ベタ印刷してなる白ベタ層33及びベタ印刷してなる無彩色層32は、遮光性及び隠蔽性に優れている。更に、無彩色層32が所定の配合比率で黒インキを含んでいるため、遮光層30の遮光性及び隠蔽性を更に大きく向上させることができる。すなわち、遮光層30が、ベタ印刷してなる白ベタ層33とベタ印刷してなる無彩色層32とからなり、無彩色層32が黒インキを含むという組合せの結果、遮光層30が包装容器1に要求される遮光性及び隠蔽性を充分に発揮することができる。
また、本実施の形態によれば、遮光層30が白ベタ層33と白及び黒を混合してなる無彩色層32とからなり、黒インキ層を含まない。このため、この包装材料10からなる包装容器1を内面側または外面側から観察しても、消費者に不快感を与えず消費者の購買意欲を低下させない。また、この包装材料10からなる包装容器1は、食品を内容物として収容する用途に対しても好適に使用され得る。
また、本実施の形態によれば、遮光層30が白ベタ層33と白及び黒を混合してなる無彩色層32とからなり、有彩色を含まない。この場合、調色作業による多大な手間がかからないため並びに多数種類のインキを使用する必要がないため、包装材料を比較的安価で効率よく製造することができる。
(製造方法)
次に、上述した包装材料10を製造する方法の一例について、図3を参照しながら説明する。図3は、ドライラミネート法を用いて、図1に示す包装材料10を製造する方法を示す概略図である。
先ず、基材層20の基材22をなすようになる基材シート(不図示)に、絵柄層21、白ベタ層33及び無彩色層32が印刷され、印刷された基材シートが熱風によって乾燥される。このようにして、基材層20及び遮光層30を含んでなる積層ウェブが得られる。得られた積層ウェブは、ロール状に巻取られてロール状の原反105(図3参照)をなすようになる。この印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷等を利用することができる。
次に、図3に示すように、ロール状の原反105から、絵柄層21を含む基材層20と、白ベタ層33及び無彩色層32を含む遮光層30と、を含む積層ウェブ101が繰り出されて、この積層ウェブ101に、例えばグラビアローラ106によってドライラミネート用の接着剤102が塗布される。その後、積層ウェブ101は乾燥炉103に搬送され、当該乾燥炉103にて接着剤102に含まれる溶媒が除去された後、ニップローラ107に案内される。
他方で、別個のロール状の原反109から、第1ポリエステル系樹脂層43とポリアミド系樹脂層44とを含む多層延伸フィルム41からなるバリアウェブ104が繰り出されて、このバリアウェブ104に、例えばグラビアローラ111によってコーティング用のコーティング剤112が塗布される。その後、バリアウェブ104は乾燥炉113に搬送され、当該乾燥炉113にてコーティング剤112に含まれる溶媒が除去された後、ニップローラ107に案内される。
ニップローラ107において、積層ウェブ101とバリアウェブ104とが重ね合わされて、当該重ね合わされた積層ウェブ101とバリアウェブ104とが加熱されながら圧着される。これにより、積層ウェブ101とバリアウェブ104からなる中間積層体108が作製され、この中間積層体108は、ロール状に巻取られる。
次に、同様なドライラミネート法を用いて、中間積層体108とシーラント層50からなるシーラントシートとが圧着される。これにより、包装材料10が製造される。
≪第2の実施の形態≫
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態による包装材料の積層方向に沿った断面であって、包装材料の層構成を説明するための図である。図4を参照して説明する第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対して基材層20及び遮光層30が設けられていない点で異なるが、その他の構成は、第1の実施形態と同様に構成することができる。第2の実施の形態に関する以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した第1の実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の第1の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図4に示す包装材料200は、蒸気バリア性及びガスバリア性を有するバリア層40と、バリア層40の容器内方側となる面に積層されたシーラント層50と、を備えている。このうち、バリア層40は、少なくとも第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41と、多層延伸フィルム41に積層されたバリアコート層42と、を含んでおり、これらの各層の組合せによって優れたバリア性を包装材料10に付与している。図示する例では、多層延伸フィルム41は、第2ポリエステル系樹脂層45を更に含み、ポリアミド系樹脂層44を、第1ポリエステル系樹脂層43と第2ポリエステル系樹脂層45との間に配置している。
多層延伸フィルム41、バリアコート層42及びシーラント層50については、上述した第1の実施の形態と略同様に構成することができるため、これ以上詳細な説明をここでは省略する。
以上のように、本実施の形態によれば、包装材料200は、少なくとも第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41と、多層延伸フィルム41に積層されたバリアコート層42と、を備えている。第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41は、耐衝撃性及び寸法安定性に優れ、バリアコート層42へのクラック(ヒビ割れ)の発生や衝撃に起因した包装容器1へのピンホールの発生を効果的に防止することができる。一方、バリアコート層42は、包装材料200の蒸気バリア性,ガスバリア性を大きく向上させることに寄与する。つまり、第1ポリエステル系樹脂層43及びポリアミド系樹脂層44を含む多層延伸フィルム41と、バリアコート層42と、の組合せの結果、包装容器1に要求される蒸気バリア性及びガスバリア性の両方を充分に安定して発揮することができる。
また、このような形態によれば、後述するように、多層延伸フィルム41にバリアコート層42をコーティングすることによってバリア層40を形成することができるため、製造に長い期間を必要とせずに比較的に安価で効率よく包装材料200を製造することができる。
なお、上述した第2の実施の形態における包装材料は、遮光層30を更に備えてもよいし、絵柄層21を更に備えてもよい。図5に、図4に示す包装材料が遮光層30を更に備える例を示す。図5に示す包装材料300では、図4に示す多層延伸フィルム41とバリアコート層42との間に遮光層30が積層されている。つまり、多層延伸フィルム41の容器内方側となる面に遮光層30が印刷され、この遮光層30上にバリアコート層42が形成されている。図示する例では、遮光層30は、インキを印刷してなる遮光印刷層31として構成されている。遮光印刷層31が容器内方側となる多層延伸フィルム41の内面に印刷されることにより、遮光印刷層31の耐摩耗性が向上し、擦れ等による遮光印刷層31の消失を効果的に防止することができる。この遮光層30については、上述した第1の実施の形態と略同様に構成することができるため、これ以上詳細な説明をここでは省略する。
なお、遮光層30の配置例は、図5に示す例に限定されない。他の例として、多層延伸フィルム41の容器外方側となる面に遮光層30が積層されてもよい。あるいは、多層延伸フィルム41にバリアコート層42を形成し、このバリアコート層42上に遮光層30が形成されてもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。以下に説明するようにして、実施例及び比較例に係る包装材料を作製し、各包装材料についてガスバリア性と蒸気バリア性とを評価した。
実施例1及び実施例2は、図4に示す包装材料に対応しており、実施例3は、図5に示す包装材料に対応している。
第1ポリエステル系樹脂層としてポリエチレンテレフタレート層、ポリアミド系樹脂層としてナイロン層、第2ポリエステル系樹脂層としてポリエチレンテレフタレート層を採用した多層延伸フィルムに、バリアコート剤をコーティングしてバリアコート層を形成した。この多層延伸フィルムの厚みは15μmとした。また、バリアコート剤として、東京インキ(株)社製、製品名「LG−OXバリア剤E」を用い、バリアコート剤の量は、1.0g/m2となるようにコーティングした。更に、シーラント層を、図3に示すドライラミネート法を用いて、多層延伸フィルムに接合した。このシーラント層として、厚み30μmからなる無延伸ポリプロピレン(東レ(株)社製、製品名「トレファンZK99S」)を用いた。このため、多層延伸フィルムとシーラント層との間には、接合層として、2液硬化型接着剤(ロックペイント(株)社製、製品名「RU004」及び「H−1」)を使用した。
実施例2に係る包装材料は、実施例1に係る包装材料と異なるバリアコート剤を用い、その他の点では実施例1に係る包装材料と同一とした。実施例2に係る包装材料では、バリアコート剤として、ブレンズ(株)社製、製品名「ユニレックスBHC−70」を用い、バリアコート剤の量を2.5g/m2となるようにコーティングした。
実施例3に係る包装材料は、実施例1に係る包装材料に遮光印刷層を更に形成したものである。具体的には、上記多層延伸フィルムに、無彩色層及び白ベタ層をベタ印刷によって順に形成した。白ベタ層は、白インキ(東洋インキ社製、製品名「ファインスター681AT」)をベタ印刷することにより形成した。無彩色層は、白インキ(東洋インキ社製、製品名「R631AT」)と黒インキ(東洋インキ社製、製品名「N800LPGTスミ」)とを配合した無彩色インキを、白ベタ層上にベタ印刷することにより形成した。白ベタ層は、グラビア印刷にて多層延伸フィルムに白インキを2回ベタ印刷することによって形成した。白ベタ層の形成には、版深28μm、版胴の線数175である版胴を用いた。無彩色層は、グラビア印刷にて多層延伸フィルムに無彩色インキを1回ベタ印刷することによって形成した。無彩色層の形成には、版深22μm、版胴の線数175である版胴を用いた。
〔比較例1〕
比較例1に係る包装材料は、実施例1に係る包装材料に対して、バリアコート層を設けなかった形態に対応している。すなわち、比較例1に係る包装材料は、バリアコート層を形成していない多層延伸フィルムとシーラント層とを、図3に示すドライラミネート法を用いて接合したものである。比較例1に係る包装材料の多層延伸フィルム及びシーラント層は、材料及び形成方法等において、実施例1に係る包装材料の多層延伸フィルム及びシーラント層と同様にした。
(ガスバリア性及び蒸気バリア性の評価結果)
上記で得られた実施例1、2、3及び比較例1に係る包装材料のガスバリア性及び蒸気バリア性の評価結果を表1に示す。このうち、ガスバリア性は、温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の酸素透過度測定用の測定機〔機種名、オクストラン(OXTRAN)〕にて測定した。一方、蒸気バリア性については、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過度測定用の測定機(機種名、パ−マトラン(PERMATRAN))にて測定した。
表1から理解されるように、実施例1〜3に係る包装材料は、ガスバリア性及び蒸気バリア性を十分に得ることができた。一方、比較例1に係る包装材料は、ガスバリア性をほとんど得ることができなかったが、蒸気バリア性をある程度得ることができた。