JP2014179202A - 電気化学セル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極30と、負極40と、支持塩及び非水溶媒を含む電解液と、セパレータ30とを備えてなり、負極40に用いる負極活物質が、少なくともSi元素を含むとともに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンを可逆的に挿入、脱離可能な物質からなり、さらに、第一の添加元素M{BまたはPの少なくとも何れかの元素}、または、第二の添加元素R{In、Sn、Ti、Al、Ge、C、Zrの群から選ばれる少なくとも1以上の元素}のうちの一方あるいは両方が、負極活物質中に含まれるSi元素の全量に対して、それぞれ、質量比で1ppm以上、20%以下で添加されてなる微粒子である。
【選択図】図1
Description
また、負極活物質に対して、Al、Ti、Fe、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、In、Snの何れからなる金属材料粒子を、溶融状態でメッキすることで、電子伝導性を付与することも提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
(1)第一の添加元素M : BまたはPの少なくとも何れかの元素。
(2)第二の添加元素R : In、Sn、Ti、Al、Ge、C、Zrの群から選ばれる少なくとも1以上の元素。
また、第二の添加元素Rを含むことにより、負極活物質がアモルファスな状態で安定的に存在するので、電気化学セルの充放電によってリチウム等のアルカリ金属イオンの挿入と脱離を繰り返す際、負極活物質内の電子伝導性が高められ、負極活物質内の電荷の均質性を高めることが可能となる。これにより、アルカリ金属イオンの挿入時の偏りを防止し、体積膨張と収縮の局在化を防ぐことで、亀裂が発生するのを抑制できる。
これにより、充放電時の体積膨張・縮小によって負極に亀裂が発生するのを抑制でき、内部抵抗の上昇や容量劣化を抑制することが可能となる。
従って、信頼性が高く、高容量で、且つ、サイクル寿命特性に優れた電気化学セルを提供することが可能となる。
図1(a)〜(c)に示す本実施形態の非水電解質二次電池1は、いわゆるラミネート型のものである。図1(a)は、外装体2の内部に電極体10が収容された状態を示す分解斜視図、(b)は、非水電解質二次電池1の断面図、(c)は、電極体10のラミネート構造を示す斜視図である。なお、図1(a)の分解斜視図は、説明の都合上、一体形成された外装体2を、第1容器部21と第2容器部とに分解して示したものである。
この非水電解質二次電池1は、ラミネートフィルムからなる外装体2の内面に凹状に設けられた収容部21a、22aに電極体10が収容されてなる、略扁平形のものである。また、電極体10が収容される外装体2の収容部21a、22a内には、図示略の電解液が充填されている。
(1)第一の添加元素M : BまたはPの少なくとも何れかの元素。
(2)第二の添加元素R : In、Sn、Ti、Al、Ge、C、Zrの群から選ばれる少なくとも1以上の元素。
上述したように、本実施形態の電極体10は、図1(a)〜(c)に示すように、それぞれフィルム状とされた正極体3、負極体4及びセパレータ5が順次積層された積層体が、所定回数で捲回されてなる構造を有している。電極体10の積層回数、即ち、ラミネート構造の捲回数は、電池特性等を考慮しながら、適宜設定することができる。
正極30としては、従来公知の正極活物質、導電助剤、バインダ等を用いることができる。
まず、正極活物質としては、例えば、モリブデン酸化物、マンガン酸リチウム化合物、リン酸鉄リチウム化合物、コバルト酸リチウム化合物、ニッケル酸リチウム化合物、Co−Ni−Mnで構成される層状化合物等が挙げられ、マンガン酸リチウム化合物、リン酸鉄リチウム化合物、が好ましい。正極30が、上記例示の正極活物質を含有することで、非水電解質二次電池1の耐熱性が高まり、例えば、リフロー処理、又は、非水電解質二次電池1の使用中の加熱による放電容量の低下が抑制される。
リン酸鉄リチウム化合物としては、LiFe1−pM4 pPO4(0≦p≦1、M4はMn、Ni、Co、Ti、Al、Cr、V、Nbのうちの少なくとも1種類)、Li3Fe2―qM5 q(PO4)3(0≦q≦1、M5はM4と同じである)等が挙げられ、中でも、LiFePO4が好ましい。
コバルト酸リチウム化合物としては、LiCo1−rM6 rO2(0≦r<1、M6はMn、Ti、Fe、Cr、Al、Mo、V、Cu、Nb、Zn、Ca、Mgのうちの少なくとも1種類)等が挙げられ、中でも、LiCoO2が好ましい。
ニッケル酸リチウム化合物としては、LiNi1−sM7 sO2(0≦s<1、M7はMn、Co、Ti、Fe、Cr、Al、Mo、V、Cu、Nb、Zn、Ca、Mgのうちの少なくとも1種類)等が挙げられ、中でも、LiNiO2が好ましい。
また、正極活物質は、例えば、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、リチウムマンガン酸化物の場合には、0.1〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
また、リチウム鉄リン酸化合物の場合には、0.001〜1μmが好ましく、0.01〜0.1μmがより好ましい。
正極活物質の粒子径(D50)が、上記好ましい範囲の下限値未満であると、リフロー処理の際に反応性が高まるため扱いにくくなり、上限値を超えると、放電レートが低下するおそれがある。
なお、本発明における「正極活物質の粒子径(D50)」とは、レーザー回折法を用いて測定される粒子径であってメジアン径を意味する。
正極導電助剤としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、グラファイト等の炭素質材料が挙げられる。
正極導電助剤は、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、正極30中の正極導電助剤の含有量は、4〜40質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な導電性が得られやすい。加えて、電極をペレット状に成型する場合に成型しやすくなる。一方、正極30中の正極導電助剤の含有量が、上記好ましい範囲の上限値以下であれば、正極30に充分な放電容量が得られやすい。
正極バインダとしては、従来公知の物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、中でも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やその化合物(共重合体)(PVDF−HFP)がより好ましい。特に、乳化重合によって合成されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)や化合物(PVDF−HFP)は、バインダの溶媒として、NMPを用いることなく水を用いることが出来るので、環境負荷の低減やランニングコスト低減の観点から、より好ましい。
また、正極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極30中の正極バインダの含有量は、例えば、1〜20質量%とすることができる。
また、正極30の厚さについても、上記同様、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定され、非水電解質二次電池1が小型電子機器用のラミネート型のものであれば、例えば、10〜500μm程度のフィルム状、コイン型のものであれば、例えば、300〜1000μm程度とされる。
例えば、正極30の製造方法としては、正極活物質と、必要に応じて正極導電助剤、及び/又は、正極バインダとを混合して正極合剤とし、この正極合剤を、フィルム状等の任意の形状に成形する方法が挙げられる。例えば、任意の溶媒と正極合剤とを混合してスラリーを作製し、正極集電体31に塗布して乾燥した後、圧縮成形することにより形成できる。
さらに、アルミ箔は比表面積を上げる処理を施していることが望ましく、サンドブラスト等に例示される機械的な加工を施すことや、酸やアルカリなどの薬品を用いた化学的な手法を用いた処理を予め行うことが望ましい。
負極40としては、本発明の負極活物質に加えて、従来公知の導電助剤、バインダ等を用いることができる。
まず、本発明の負極活物質は、少なくともSi元素を含むとともに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンを可逆的に挿入、脱離可能な物質からなり、さらに、以下に示す第一の添加元素M、または、第二の添加元素Rのうちの一方あるいは両方が、負極活物質中に含まれるSi元素の全量に対して、それぞれ、質量比で1ppm以上、20%以下で添加されてなる微粒子である。第一の添加元素Mは、BまたはPの少なくとも何れかの元素からなる。また、第二の添加元素Rは、In、Sn、Ti、Al、Ge、C、Zrの群から選ばれる少なくとも1以上の元素からなる。
ここで、Si(珪素)を含む負極活物質の一般式は、組成式{AxSiOyMz}で表され、この式中、元素Aはカチオン種で、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン種であり、xは元素Aのイオン種の含有量xで、次式{0≦x≦4.4}の値をとり、酸素量yは次式{0≦y≦2}である。
また、上記式中の元素Mは、第一の添加元素Mとして、BまたはPの少なくとも何れかの元素であり、この第一の添加元素Mを含む場合には、負極活物質中に含まれるSi元素の全量に対して、質量比で1ppm以上、20%以下で含まれるものである。
また、負極活物質をなすSi元素、並びに、第二の添加元素RであるIn、Sn、Ti、Al、Ge、Cは、少なくともその表面の一部が炭化された状態の微粒子であっても良い。
また、負極活物質に第二の添加元素Rが添加されることにより、負極活物質がアモルファスな状態で安定的に存在するようになので、電気化学セルの充放電によってリチウム等のアルカリ金属イオンの挿入と脱離を繰り返す際、負極活物質内の電子伝導性が高められ、負極活物質内の電荷の均質性が向上する。これにより、アルカリ金属イオンの挿入時の偏りを防止し、体積膨張と収縮の局在化を防ぐことで、亀裂が発生するのを抑制できる。
さらに、負極活物質の形態としては、平均粒子径1nm以上2μm以下の一次粒子が集合してなる、平均粒子径0.5μm以上4μm以下の二次粒子からなることがより好ましい。
またさらに、上記の負極活物質の二次粒子において、全体積の85%以上が平均粒子径1nm以上8μm以下の一次粒子であることが好ましく、全体積の90%以上が平均粒子径1nm以上2μm以下の一次粒子であることがより好ましい。
負極40において、上記元素からなる負極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られやすく、また、上限値以下であれば、負極40を成形しやすいというメリットがある。
このように、負極活物質がSi元素を含む酸化物からなることで、負極活物質の合成時における元素の不均一性を低減できる。これにより、電気化学セルの充放電によってリチウム等のアルカリ金属イオンの挿入と脱離を繰り返す際、負極活物質内の電子伝導性が高められ、負極活物質内の電荷の均質性を向上させることができる。従って、アルカリ金属イオンの挿入時の偏りを防止し、体積膨張と収縮の局在化を防ぐことで、負極40に亀裂が発生するのを抑制できる。
第二の添加元素Rを上記配合比とすることにより、負極活物質がアモルファスな状態でさらに安定的に存在するようになる。これにより、電気化学セルの充放電によってリチウム等のアルカリ金属イオンの挿入と脱離を繰り返す際、負極活物質内の電子伝導性が高められ、負極活物質内の電荷の均質性が向上する。従って、アルカリ金属イオンの挿入時の偏りを防止し、体積膨張と収縮の局在化を防ぐことで、負極40に亀裂が発生するのを抑制できる。
このように、負極40が上記の炭素材料を含むことにより、電気化学セルの充放電によってリチウム等のアルカリ金属イオンの挿入と脱離を繰り返す際に、負極活物質粒子の周囲全面に電子伝導性を付与し、負極活物質粒子の電子伝導性が向上する。これにより、負極40の電極層内の厚み方向と水平方向におけるアルカリ金属イオンの挿入時の偏りを防止し、体積膨張と収縮の局在化を防ぐことで、負極40に亀裂が発生するのを抑制できる。
負極40は、バインダ(以下、負極40に用いられるバインダを「負極バインダ」ということがある)を含有してもよい。
負極バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリイミドアミド(PAI)等が挙げられ、中でも、ポリアクリル酸(PA)やポリイミド(PI)が好ましく、架橋型のポリアクリル酸がより好ましい。また、ポリアクリル酸を中和した材料が好ましい。
また、負極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、負極バインダにポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を、予め、pH3〜10に調整しておくことが好ましい。この場合のpHの調整には、例えば、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
負極バインダにポリイミド(PI)、ポリイミドアミド(PAI)を用いる場合には、原材料を予め60℃以上の温度で乾燥し、原材料を乾式で混合することが望ましい。
負極40中の負極バインダの含有量は、例えば1〜20質量%とされる。
例えば、負極40の製造方法としては、負極活物質と、必要に応じて負極導電助剤、及び/又は、負極バインダとを混合して負極合剤とし、この負極合剤を、フィルム状等の任意の形状に成形する方法が挙げられる。例えば、任意の溶媒と負極合剤とを混合してスラリーを作製し、負極集電体41に塗布して乾燥した後、圧縮成形することにより形成できる。但し、バインダにPIやPAIを用いる場合には、あらかじめ乾燥した原材料の混合工程において、湿度が5%RH以下、より好ましくは、湿度が1%RH以下に管理された乾燥室を用いることが望ましい。また、分散媒として、100ppm以下に脱水処理を施したNMPを用いることが良い。
また、コート厚み、長さや巾は、電気化学セルの大きさによって決定されるが、コート厚みは、乾燥後の圧縮された状態で1〜200μmであることが特に好ましい。
上述のような工程により、負極集電体41上に負極40を配置することができる。
また、この前処理は、化学的な手法を用いても機械的な手法を用いても構わない。化学的な手法を用いる場合、例えば、SUS箔の表面に化学エッチングを施すことにより、アンカー効果を発揮し、電極活物質をSUS箔の表面に強く固定させることができる。これにより、内部抵抗の上昇や容量劣化を抑制できるので、信頼性が高く、高容量で、且つ、サイクル寿命特性に優れた非水電解質二次電池1が実現できる。
電解液(図指略)は、支持塩を非水溶媒に溶解させたものである。
支持塩としては、非水電解質二次電池の電解液に支持塩として用いられる公知の物質を用いることができ、例えば、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO3)2、LiN(FSO2)2等の有機酸リチウム塩;LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr等の無機酸リチウム塩等のリチウム塩等が挙げられる。なかでも、リチウムイオン導電性を有する化合物であるリチウム塩が好ましく、LiPF6、LiN(CF3SO2)2、LiN(FSO2)2、LiBF4を単独、または混同状態で用いることがより好ましい。
支持塩は、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セパレータ5は、正極30と負極40との間に介在され、大きなイオン透過度を有し、かつ、機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。
セパレータ5としては、従来から非水電解質二次電池のセパレータに用いられるフィルム状のものを何ら制限無く適用でき、ラミネート型の電気化学セルとしては、電気化学セルの異常による加熱により空孔の閉塞によるシャットダウン機能をもったポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン、ポリアミド、あるいはポリエチレン/ポリプロピレン複合膜などが挙げられる。またボタン型においては、例えば、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド、ポリイミド(PI)等の樹脂からなる不織布等が挙げられる。さらに、PVdF−HFPのような擬似ポリマー、EO(エチレンオキサイド)、PO(ポリエチレンオキサイド)や、それらの共重合体、また、更に、ポリアクリロニトリル等のゲルを用いることが出来る。
セパレータ5の厚さは、正極30や負極40等と同様、非水電解質二次電池1の大きさや、セパレータ5の材質等を勘案して決定され、例えば5〜300μmとすることができる。
これにより、充放電時の体積膨張・縮小によって負極に亀裂が発生するのを抑制でき、内部抵抗の上昇や容量劣化を抑制することが可能となる。
従って、信頼性が高く、高容量で、且つ、サイクル寿命特性に優れた非水電解質二次電池1を提供することが可能となる。
次に、本発明の電気化学セルである非水電解質二次電池(電気二重層キャパシタ)の製造方法について、図1、2を適宜参照しながら説明する。
本実施形態の好ましい態様である非水電解質二次電池の製造方法は、図1(a)〜(c)に示すようなラミネート型の非水電解質二次電池1を製造する方法である。
まず、図1(c)に示すように、正極集電体31表面に正極30を形成した正極体3と、負極集電体41表面に負極40を形成した負極体4との間にセパレータ5を介して捲回し電極体10を作製する。そして、図1(a)に示すように、予め凹状の収容部21a及び22aが形成された外装体2に、電極体10を装填する。その後、電解液を注入し、内部の脱泡後に外装体2を封止する。
まず、負極40に用いる負極活物質AxSiOyMz+Rを製造する方法を簡単に説明する。また、使用する材料として、含Si化物、珪素酸化物(SiO)、第一の添加元素M、第二の添加元素R、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンの元素Aを用いるが、それぞれの詳細については後述する。
次に、第一の添加元素Mおよび高純度の酸化珪素を微細化した含Si化物に添加・混合し、SiOyMzを合成する(SiOyMz合成工程)。
次に、合成したSiOyMzに対し第二添加元素Mを用いて安定化工程を行う。なお、安定化工程については後程詳述するため、ここでは説明を省略する。この工程により、SiOyMz+Rの微粒子を精製する。
次に、Li、Na、Kなどのアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンの元素Aを用いて、SiOyMz+Rの微粒子にアルカリ金属イオンを挿入し、AxSiOyMz+Rを製造する(アルカリ金属イオン挿入工程)。
また、アルカリ金属イオンの挿入前に、SiOyMz+Rの微粒子を用いて任意の形状に負極40を形成しておくことが好ましい。
続いて、各工程について詳述する。
(K−2)流動床法、冶金法、亜鉛還元法、水ガラス化法、チューブ炉法、溶融析出法の何れかの方法で合成した純度が99.99%以上の金属珪素を用い、その金属珪素が柱状や塊状である場合には板状に加工した後、B(ホウ素)またはP(リン)をドーパントとして添加する。この際、金属珪素は、結晶シリコン(微結晶シリコン、多結晶シリコン)、または、アモルファスシリコン、または、両者の混合物である。
(K−3)カーボン電極を使用したアーク炉を用いて、二酸化珪素を還元して得た純度が96%以上の珪素で、不純物として、B(ホウ素)またはP(リン)の合計が1%以下である、結晶シリコン(微結晶シリコン、多結晶シリコン)または、アモルファスシリコン。
(K−4)光電池ウェハーまたは半導体製造工程で生じるインゴットやウェハー等の切削屑や切断残り、切屑や切削装置等より排出される排水からのスラッジ等を回収したシリコンの粉末。
(K−5)使用済みの太陽電池から反射防止フィルムを取り除き、表面電極や裏面電極を保持した光電池を1mm以下に粉砕し、金属成分を酸処理によって除去した粗粉状の混合物を、更に、微粉末化した状態のシリコンの粉末。
また、予め、プラズマ・アトマイズ法で作製したチタンの微粒子や銅の微粒子、または、金属のファイバー(直径がナノサイズのファイバーを含む)を核として、流動床法を用いて、金属微粉末や金属のファイバーの表面に珪素微粉末が被覆されてなる含Si化物を得ることも可能である。
(S−1)高純度の水ガラス(NaSiO3)に酸を加え、沈殿したゲルを分離、洗浄した後に焼成し、脱水後、粉砕することで得られる二酸化珪素(SiO2)。
(S−2)テトラアルコキシシランの加水分解によって得られたシリカゲル粉末を精製した後、焼成し、脱水後、粉砕することで得られる二酸化珪素。
(S−3)四塩化珪素(SiCl4)の気体から化学気相蒸着(CVD)した後、粉砕することで得られる二酸化珪素。
(方法−2)含Si化物と高純度の酸化珪素とを十分に混合し、混合原料粉末を不活性ガスもしくは減圧下で、400〜1600℃の温度範囲で加熱し、不定比の酸化珪素蒸気を生成させ、前駆体となる微粒子SiOyMzを析出・固化させることで合成することが出来る。
(方法−3)縦型の筒の下方から不活性ガスを流動させ、そのガス気流中に含Si化物と高純度の酸化珪素の蒸気をそれぞれ噴霧し、その流動した気流中で両者を接触反応させ、析出・固化させることで合成することが出来る。この場合には、得られた粉体が所望の粒径を有する微粒粉であれば、粉砕の工程を省くことができる点から好ましい。
具体的には、上記の(B−6)スタンプミル、(B−7)ボールミル、(B−8)ジェットミル、(B−10)ビーズミル等の手法を適宜組み合わせて調整することができる。
また、合成されたSiOyMzを微粒子化する方法として、上記の(B−6)スタンプミル、(B−7)ボールミル、(B−8)ジェットミル、(B−10)ビーズミル等の手法を適宜組み合わせて用いることができる。
また、第一の添加元素Mの添加量が、Si元素の全量に対して、質量比で1ppm以上、20%以下であった場合は、第二の添加元素Rを添加しなくてもよい。同様に、第二の添加元素Rの添加量が、Si元素の全量に対して、質量比で1ppm以上、20%以下であった場合は、第一の添加元素Rを添加しなくてもよい。
また、乾式めっき法や塗布法等を用いることができる。乾式のメッキ法としては、溶射法や、それ以外の抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー法、イオンめっき(ion plating:イオンプレーティング)、イオンビームデポジション、スパッタリング等のPVD法を用いることができる。
(D−2)金属チタンや銅の微粒子と、SiOyMzとを、混合と粉砕を繰返し、メカノケミカル的にマトリックスを得る方法。
(D−3)SiOyMzと、高結晶性のカーボン粉末を加熱によって炭化させた炭素の前駆体とを混合し、還元性雰囲気下で、SiOyMzの表面に炭素の前駆体を加熱分解によって被覆する方法。
具体的には、金属リチウムの微粒子や金属リチウム箔と、SiOyMz+Rとを物理的に接触させた状態を保つことで、SiOyMz+Rにイオン状態のリチウムを拡散させることが可能である。この際、局所電池と同様なメカニズムであっても良く、その場合、反応を促進するためにSiOyMz+Rと金属リチウムの間に電解質が存在することが望ましい。この場合、電解質の性状は液体であっても良いが、固体電解質やポリマー電解質であっても良い。SiOyMz+Rの電子伝導性が乏しい場合、電解質の一部が還元分解された分解生成物により、SiOyMz+Rの表面にリチウムイオンの拡散を阻害する被膜を形成することもあるため、SiOyMz+Rには、予め電子伝導性を付与しておくことが望ましい。このような電子伝導性を付与する方法の詳細については後述する。
また、本発明で説明する、接触反応によるアルカリ金属イオンの挿入は、後述する負極電極シートを形成した後に実施しても良い。また、このような接触反応によるアルカリ金属イオンの挿入方法は、電気化学セルを組み立てる前に実施するので、プレドープと呼ぶことができる。
このような電気化学的手法は、電気化学セル組立後に電気化学セル内で、又は、電気化学セル製造工程の途上において電気化学セル内もしくは電気化学セル外で行うことができ、以下に示す(1)〜(3)の方法を例示できる。
(2)SiOyMz+Rと導電剤及びバインダ等との混合合剤を所定形状に成形し、これにリチウムもしくはリチウムの合金等を圧着もしくは接触させて積層電極としたものを負極として、非水電解質二次電池に組み込む。そして、この積層電極が、電気化学セル内で電解質に触れることにより、一種の局部電池を形成し、自己放電することによって電気化学的にリチウムがSiOyMz+Rに吸蔵されることで負極活物質AxSiOyMz+Rを得る方法。
(3)SiOyMz+Rを負極活物質とし、リチウムを含有してリチウムイオンを吸蔵放出可能な物質を正極活物質として用いた非水電解質二次電池を構成する。そして、電気化学セルとして使用前に充電を行うことにより、正極から放出されたリチウムイオンが負極の前駆体となるSiOyMz+Rに吸蔵されることで負極活物質AxSiOyMz+Rを得る方法。
本実施形態の製造方法によれば、負極活物質に第一の添加元素Mを添加することで、負極活物質をアモルファスな状態で安定的に存在させることができるので、電気化学セルの充放電時に負極40に生じる体積膨張・収縮時によって亀裂が発生するのを抑制することが可能な非水電解質二次電池1を製造できる。
また、負極活物質に第二の添加元素Rを添加することで、負極活物質をアモルファスな状態で安定的に存在させることができるので、電気化学セルの充放電の際、負極活物質内の電子伝導性が高められ、負極活物質内の電荷の均質性を向上させることが可能となり、アルカリ金属イオンの挿入時の偏りによる負極40の体積膨張と収縮の局在化を防止でき、亀裂が発生するのを抑制することが可能な非水電解質二次電池1を製造できる。
また、負極活物質に第二の添加元素Rを添加することで、負極活物質をアモルファスな状態で安定的に存在させることができるので、電気化学セルの充放電の際、負極活物質内の電子伝導性が高められ、負極活物質内の電荷の均質性を向上させることが可能となり、アルカリ金属イオンの挿入時の偏りによる負極40の体積膨張と収縮の局在化を防止でき、亀裂が発生するのを抑制することが可能な非水電解質二次電池1を製造できる。
実施例1においては、まず、電気化学セルとして、図1(a)〜(c)に示すようなラミネート型の非水電解質二次電池を作製した。
本実施例において、図1(a)中に示すように、外装体2は、ナイロン層(25μm)、アルミニウム箔(40μm)、ポリプロピレン層(30μm)が順次積層されたアルミラミネートフィルムである。
また、負極体4は負極40と負極集電体41とを有する。負極40は、後述の本発明による負極活物質と、導電助剤とバインダを用いて構成され、純銅の箔からなる負極集電体41の両面に形成される。
また、正極体3は正極30と正極集電体31とを有する。正極30は、正極活物質と、導電助剤とバインダを用いて構成され、純アルミニウムの箔からなる正極集電体31の両面に形成される。
セパレータ4は、負極体4と正極体3との間に配される。
電極体10は、これらフィルム状の各層からなる積層体が、同方向に捲回される。
電解液を構成する非水電解質には、PC:EC:EMCを1:1:2の体積比で混合させた溶媒に、支持塩としてLiFP6を1M/L溶解した電解液を用いた。
作製した非水電解質二次電池の大きさは、幅21mm、長さ30mm、高さ3mmであった。
次いで、このSiOの薄板を、直接、メノウ製のボールミルのポットに入れ、さらに、エタノールとともにメノウ製のボールを投入することで粉砕を行った。この際、粉砕初期においては、直径8mmのボールを用いた72hrの稼動で粗粉砕を行い、分級した後、さらに、直径2mmのボールを用いた72hrの稼動で微粉砕を行った。
次いで、粉砕後のSiO粒子を十分に乾燥させた後、10μm以下に分級し、導電助剤として用いる膨張化黒鉛と混合した後、ボールミルを用いて、膨張化黒鉛の破砕と同時にSiOの表面へ固着させることで、被覆を行った。この際、膨張化黒鉛は、ボールミルによって、d002面に対して劈開(cleavage)し、カーボン製シート(グラフェン)を生じやすく、活性の高い状態でSiOと接触させ、強固な固着状態とすることで炭素コートを施した。
まず、バインダとして、カルボキシル基含量が50〜70%である架橋型のポリアクリル酸樹脂(和光純薬製ポリアクリル酸)の粉末を精製水に加えて溶解した水溶液に、水酸化リチウム(LiOH・(H2O)n)の水溶液を用いて、PHが概ね7になるように中和処理を施した。
次に、導電助剤を先のバインダに加え、分散させた。この際、導電助剤としては、黒鉛(日本黒鉛製薄片化黒鉛:CMX)を用い、さらに、上記方法で得られた炭素コートSiOを加え、分散させた。この黒鉛の粒子径は、概ね5μmであった。また、この際、SiOと黒鉛とカーボンファイバーの配合比は、下記表1中に示す活物質番号2−1とした。また、分散には、クラボウ製遊星式攪拌混合機(K102型)を用い、負極合剤スラリーを調整した。
次に、この負極合剤スラリーを、厚み20μmの銅箔の両面に均一に塗布して乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成形して負極電極シート(負極集電体上に負極が積層された負極体)を作製した。この負極電極シートの厚みは70μmであった。
まず、正極活物質としてリチウムマンガン複合酸化物、導電材として黒鉛、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを混合(質量比で85:5:10)し、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを、厚み20μmのアルミニウム箔に塗布して乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形して正極電極シート(正極集電体上に正極が積層された正極負極体)を作製した。
さらに、その後、アルミラミネートフィルムの一部を裁断し、SiOのリチウムドーピング時に発生したガスをアルミラミネートフィルム内から放出させ、再びアルミラミネートフィルムを熱融着することで封止を行った。
サイクル寿命特性試験は、常温下(24℃)において、充電終止電圧3.3Vまで100μA定電流で充電し、3.3Vに達した後、定電圧に96時間保持することで充電を行った。その後、放電終止電圧2.0Vまで15μA定電流放電を1サイクルとし、5サイクルまで行った。この際、容量維持率は、{(5サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100}とした。
[比較例1]
表4に示す実施例2〜5(実施例1も含む)においては、実施例1における電気化学セルの作製条件に対し、負極合剤の調整時に用いる導電助剤として、黒鉛(日本黒鉛製薄片化黒鉛、CMX)以外に、カーボンファイバー(昭和電工製気相成長炭素繊維:VGCF)を加えた。このカーボンファイバーの直径は、0.15μmで、長さは概ね10μmであった。さらに、SiOと、黒鉛と、カーボンファイバーとの配合比を表2中に示す比率で変化させた点を除き、上記実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製し、同様の方法でサイクル寿命特性を評価して、結果を表4に示した。
また、表6、7に示す実施例7〜21においては、負極活物質の作製条件を、表1に示す各活物質番号の条件で変化させ、さらに、前駆体であるSiOに、C、Tiを添加し、造粒・整粒を行う安定化工程による処理を施した点を除き、上記実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製し、同様の方法でサイクル寿命特性を評価した。
表1に示す活物質番号1−1〜5−5は、各実施例及び比較例における負極活物質の前駆体の製造条件であり、表2に示す配合比番号は、負極中の前駆体、黒鉛及びカーボンファイバーの配合条件である。また、表3〜7には、各実施例及び比較例における活物質番号及び配合比番号に加え、放電容量及びサイクル維持率(サイクル寿命特性)の一覧を示している。
2…外装体、
21…容器部、
21a…収容部、
22…蓋部、
22a…収容部、
10…電極体、
3…正極体、
30…正極、
31…正極集電体、
4…負極体、
40…負極、
41…負極集電体、
5…セパレータ、
Claims (7)
- 正極と、負極と、支持塩及び非水溶媒を含む電解液と、セパレータとを備えてなる電気化学セルであって、
前記負極に用いる負極活物質は、少なくともSi元素を含むとともに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンを可逆的に挿入、脱離可能な物質からなり、且つ、以下に示す第一の添加元素M、または、第二の添加元素Rのうちの一方あるいは両方が、負極活物質中に含まれるSi元素の全量に対して、それぞれ、質量比で1ppm以上、20%以下で添加されてなる微粒子であることを特徴とする電気化学セル。
(1)第一の添加元素M : BまたはPの少なくとも何れかの元素。
(2)第二の添加元素R : In、Sn、Ti、Al、Ge、C、Zrの群から選ばれる少なくとも1以上の元素。 - 前記負極活物質は、前記第一の添加元素M、または、前記第二の添加元素Rのうちの一方あるいは両方が、負極活物質中に含まれるSi元素の全量に対して、それぞれ、質量比で1ppm以上、1%以下で添加されてなる微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
- 前記負極活物質は、該負極活物質中に含まれるSi元素の全量に対して、前記第一の添加元素Mを10ppm以上1%以下、前記第二の添加元素Rを0.5%以上2%以下で、それぞれ添加されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
- 前記負極活物質が、Si元素の酸化物:SiOx(0<x<2)からなることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の電気化学セル。
- 前記第二の添加元素Rが、InとSnとの配合比が質量比で1:9とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の電気化学セル。
- 前記負極活物質の平均粒子径が1nm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の電気化学セル。
- 前記負極は、前記負極活物質に加え、さらに、電子導電性を付与するための炭素材料を含有し、且つ、該炭素材料が、カーボン製チューブ、または、カーボン製シートの少なくとも何れかを含むものであることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の電気化学セル。
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