JP2014141434A - 抗robo4抗体 - Google Patents

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Toshiyuki Sato
俊之 佐藤
Atsushi Hasegawa
淳 長谷川
Tatsuya Inoue
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Abstract

【課題】血管新生抑制活性を有する抗体、より具体的には、ROBO4に対する抗体、該抗体を含有する医薬組成物を提供する。
【解決手段】ROBO4の下流シグナルを活性化し、ROBO4発現血管内皮細胞においてVEGFやbFGFで誘導される細胞遊走に対して抑制活性を有し、in vivoモデルにおいて血管新生抑制作用を示す新規の抗ROBO4モノクローナル抗体、又はその機能断片。
【選択図】なし

Description

本発明は、血管新生抑制活性を有する抗体、より具体的には、ROBO4に対する抗体、該抗体を含有する医薬組成物に関する。
Roundabout homolog 4(ROBO4)は、分子量110kDaの1回膜貫通構造を有する蛋白質であり(非特許文献1)、血管新生抑制因子として知られているSlit homolog 2(Slit2)と結合することで、血管新生を抑制することが知られている(特許文献1、非特許文献2)。Slit2は、VEGFで促進されるHUVECの遊走を抑制することが報告されているとともに、ROBO4遺伝子を導入した血管内皮細胞(vascular endothelial cell:以下「EC」と称することもある)では、空ベクターを導入したECと比較して、Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)やbFGFで促進される細胞遊走が抑制されることが報告されている(特許文献1、非特許文献2〜4)。
また、ROBO4遺伝子ノックアウトマウス由来のECやsiRNAを導入することでROBO4遺伝子をノックダウンしたECでは、野生型マウス由来のECやコントロールsiRNAを導入したECで認められるVEGFによる細胞遊走促進、管腔形成促進や透過性亢進に対するSlit2の抑制効果が認められないことが報告されている(特許文献2、非特許文献4〜6)。さらに、滲出型加齢黄斑変性や糖尿病網膜症の動物病態モデルである、マウスのレーザー誘導脈絡膜血管新生モデルや酸素誘導網膜症モデルにおいて、Slit2はROBO4を介してこれらの病態モデルでの血管新生や血管透過性亢進を抑制することが報告されている(特許文献2、非特許文献4)。
上記のような知見がある一方、ROBO4とSlit2は結合しないことを示している報告もある(非特許文献9、特許文献5)。機能面でも、ROBO4遺伝子をノックダウンしたECでは、その遊走や管腔形成が阻害されることから、ROBO4は血管新生抑制ではなく、血管新生促進に関与するという報告もある (非特許文献10、11)。
臨床においては、ROBO4は大腸癌肝転移、神経節膠腫、膀胱癌、乳癌、転移性メラノーマ、腎癌、肺癌、肝癌や大腸癌の腫瘍内血管で高発現していることが報告されている(特許文献3、非特許文献1、3、7)。また、増殖性糖尿病網膜症患者の線維血管増殖膜内にある血管にもROBO4が発現していることが報告されている(非特許文献8)。このように、ROBO4は血管内皮細胞、特に病的な状態で新生した血管の内皮細胞に発現している。これは、ROBO4が高発現したために病的な血管新生が生じたとも考えられる一方で、病的な血管新生を抑制するためにROBO4が代償性に発現しているものとも考えられる。
以上の通り、ROBO4は血管新生抑制作用に関与することから、ROBO4に対する抗体及びその機能断片は、血管新生が関与する疾患の治療に有用であると考えられるが、ROBO4に対するアゴニスト抗体あるいはアンタゴニスト抗体のいずれが、血管新生を抑制するのか、促進するのかは明らかではない。
ROBO4に対する抗体(以下、「抗ROBO4抗体」という)として欧州特許第1,565,491号(特許文献4)及びWO2008/100805(特許文献5)に記載の抗体が知られているが、いずれもin vivoにおける血管新生抑制又は阻害作用は示されていない。
WO2004/003163 WO2008/073441 WO2002/036771 欧州特許第1,565,491号 WO2008/100805
Genomics、2002年、第79巻、p.547−552 Developmental Biology、2003年、第261巻、p.251−267 Biochemical and Biophysical Research Communications、2005年、第332巻、p.533−541 Nature Medicine、2008年、第14号、p.448−453 Science Translational Medicine、2010年、第2巻、p.23ra19 Proceedings of the National Academy of Sciences、2010年、第107巻、p.10520−10525 Oncology Reports、2006年、第15巻、p.1437−1443 Molecular Vision、2009年、第15巻、p.1057−1069 FASEB Journal、2005年、第19巻、p.121−123 BMC Cell Biology、2008年、第9巻、p.61−72 The FASEB Journal、2009年、第23巻、p.513−522
本発明の一つの課題は、ROBO4に対する抗体を提供することである。
本発明の他の一つの課題は血管新生抑制効果を有する抗ROBO4抗体を含有する医薬組成物等を提供することである。
本発明の他の一つの課題は、該抗体の製造方法を提供することである。
本発明の他の一つの課題は、該抗体を用いた血管新生の抑制方法等を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意、検討を行ったところ、ROBO4の下流シグナルの活性化を検出するスクリーニング系の構築に成功した。また、そのスクリーニング系を利用することで、ROBO4の下流シグナルを活性化し、ROBO4発現ECにおいてVEGFやbFGFで誘導される細胞遊走に対して抑制活性を有し、in vivoモデルにおいても血管新生抑制作用を示す新規の抗ROBO4モノクローナル抗体を取得することに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)下記(I)乃至(III)記載の性質を有する抗体又はその機能断片:
(I)ROBO4蛋白質に結合する、
(II)イン・ビトロにおいて、クロスリンク抗体非存在下で血管内皮細胞遊走を抑制又は阻害する、及び
(III)イン・ビボにおいて、血管新生を抑制又は阻害する、
(2)ROBO4蛋白質が、ヒトROBO4蛋白質である、請求項1に記載の抗体又はその機能断片、
(3)ROBO4蛋白質が、配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至1007のアミノ酸配列からなる蛋白質である、請求項1に記載の抗体又はその機能断片、
(4)ROBO4蛋白質が、配列表の配列番号2のアミノ酸番号46乃至1007のアミノ酸配列からなる蛋白質である、請求項1に記載の抗体又はその機能断片、
(5)配列表の配列番号2のアミノ酸番号132乃至209のアミノ酸配列からなる部位に結合する、請求項3又は4に記載の抗体又はその機能断片、
(6)モノクローナル抗体又はその機能断片である、上記(1)に記載の抗体又はその機能断片、
(7)配列表の配列番号44(図25)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列表の配列番号46(図26)に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列表の配列番号48(図27)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含むことからなる重鎖、並びに、配列表の配列番号50(図28)に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1乃至3個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1、配列表の配列番号52(図29)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列表の配列番号54(図30)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含むことからなる軽鎖からなる、上記(1)乃至(6)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(8)配列表の配列番号44(図25)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列表の配列番号46(図26)に示されるアミノ酸配列又は配列表の配列番号68(図44)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列表の配列番号48(図27)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含むことからなる重鎖、並びに、配列表の配列番号50(図28)に示されるアミノ酸配列又は配列表の配列番号70(図46)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列表の配列番号52(図29)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列表の配列番号54(図30)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含むことからなる軽鎖からなる、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(9)配列表の配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなる、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(10)下記a)乃至d)より選択されるいずれか一つの重鎖可変領域、及びe)又はf)から選択される軽鎖可変領域を含むことからなる、上記(1)乃至(8)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片:
a)配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
b)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
c)配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、又は
d)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
及び
e)配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は
f)配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(11)下記1)乃至6)に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せのいずれか一つを含むことからなる、上記(1)乃至(8)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片:
1)配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
2)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
3)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
4)配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
5)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は
6)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(12)キメラ抗体又はその機能断片である、上記(1)乃至(11)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(13)ヒト化抗体又はその機能断片である、上記(1)乃至(11)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(14)ヒトIgG1又はヒトIgG2の重鎖定常領域を含むことからなる、上記(1)乃至(13)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(15)上記(7)乃至(14)に記載の抗体が認識する抗原上の部位に結合する、上記(1)乃至(6)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(16) ROBO4蛋白質への結合に対して、上記(7)乃至(14)に記載のいずれか1つの抗体と競合する、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片、
(17)下記1)乃至6)に記載の重鎖及び軽鎖の組合せのいずれか一つを含むことからなる、上記(1)乃至(8)のいずれか一つに記載の抗体:
1)配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
2)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
3)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
4)配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
5)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
6)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
(18)上記(17)に記載のいずれか一つの抗体において、カルボキシル末端側の1乃至数個のアミノ酸が欠失した重鎖を含む抗体、
(19)上記(10)乃至(14)、及び(17)に記載のいずれか一つの抗体において、アミノ酸配列が95%以上同一の請求項1乃至6のいずれか一つに記載の抗体、
(20)ヒト抗体又はその機能断片である、請求項15に記載の抗体又はその機能断片、
(21)下記(I)乃至(III)のいずれか一つに記載のヌクレオチド:
(I)上記(1)乃至(20)のいずれか一つに記載の抗体の重鎖または軽鎖の一部または全部のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなるヌクレオチド、
(II)上記(1)乃至(20)のいずれか一つに記載の抗体の重鎖または軽鎖の一部または全部のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む塩基配列からなるヌクレオチド、又は
(III)上記(1)乃至(20)のいずれか一つに記載の抗体の重鎖または軽鎖の一部または全部のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチド、
(22)上記(21)記載のヌクレオチドが挿入された組換えベクター。
(23)上記(21)記載のヌクレオチド又は上記(23)記載の組換えベクターが導入された組換え細胞、
(24)上記(1)乃至(20)のいずれか一つに記載の抗体を産生する細胞、
(25)下記の工程(I)及び(II)を含むことからなる、上記(1)乃至(20)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片の製造方法:
(I)上記(23)又は(24)記載の細胞を培養する工程;及び
(II)前記工程(I)で得られた培養物から上記(1)乃至(20)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片を回収する工程、
(26)上記(25)に記載の製造方法により製造された抗体又はその機能断片、
(27)上記(1)乃至(20)及び(26)のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片の修飾体、
(28)上記(1)乃至(20)及び(26)のいずれか一つに記載の抗体もしくはその機能断片、または上記(27)記載の修飾体を有効成分として含んでなる医薬組成物、
(29)血管新生性疾患の治療薬または予防薬である、上記(28)に記載の医薬組成物、
(30)血管新生性疾患が滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織及び他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、及び、肥満症である、上記(28)記載の医薬組成物、
(31)血管新生性疾患が滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、水晶体後部線維増殖症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、及び移植角膜組織の免疫拒絶である、上記(28)記載の医薬組成物、
(32)上記(1)乃至(20)及び(26)のいずれか一つに記載の抗体もしくはその機能断片、または請求項27記載の修飾体を有効成分として含んでなる血管新生阻害剤、
に関する。
本発明によれば、ROBO4に結合し、血管新生抑制作用を有する抗体を含有する血管新生疾患の治療剤等を得ることができる。
ヒトROBO4のHEK293細胞への一過性発現で、NF−κB、GAS、ISRE、IL−8プロモーター、TCFを応答エレメントとしたレポーター活性の変動の有無を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=3)を示す。 ヒトROBO4の全長あるいは細胞内領域欠損体のHEK293細胞への一過性発現で、IL−8プロモーター活性の変動の有無を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=5あるいは10)を示す。 抗ROBO4抗体、MAb1によるヒトROBO4導入HEK293細胞でのIL−8プロモーター活性の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=3)を示す。 抗ROBO4抗体、MAb2、MAb3あるいはMAb4によるヒトROBO4導入HEK293細胞でのIL−8プロモーター活性の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=3)を示す。 抗ROBO4抗体、MAb1によるVEGFあるいはbFGF存在下でのHUVECの遊走能の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=3あるいは4)を示す。 抗ROBO4抗体、MAb2、MAb3、MAb4によるbFGF存在下でのHUVECの遊走能の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=4)を示す。 抗ROBO4抗体、MAb1のヒトROBO4、マウスROBO4、ラットROBO4あるいはカニクイザルROBO4に対する結合活性の有無を示す図。 抗ROBO4抗体、MAb1のヒトROBO1、ヒトROBO2あるいはヒトROBO3に対する結合活性の有無を示す図。上段はMAb1での結果を示し、下段はこれらの蛋白質が細胞表面上に発現しているかを確認するポジティブコントロール抗体での結果を示す。 抗ROBO4抗体、MAb1のヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体に対する結合活性の有無を示す図。上段はMAb1での結果を示し、下段はこれらの蛋白質が細胞表面上に発現しているかを確認する抗FLAG抗体での結果を示す。 抗ROBO4抗体、MAb1のレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルにおける血管新生の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=4眼)を示し、■あるいは□は各眼の結果を示す。 抗ROBO4キメラ抗体、cMAb1−1、cMAb1−2によるヒトROBO4導入HEK293細胞でのIL−8プロモーター活性の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=3)を示す。 抗ROBO4キメラ抗体、cMAb1−1、cMAb1−2によるbFGF存在下でのHUVECの遊走能の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=4)を示す。 ヒトROBO4全長 cDNA(配列番号1) ヒトROBO4の全長アミノ酸配列(配列番号2) MAb1重鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号30) MAb1重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号31) MAb1軽鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号32) MAb1軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号33) cMAb1軽鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号37) cMAb1軽鎖のアミノ酸配列(配列番号38) cMAb1−1重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号39) cMAb1−1重鎖のアミノ酸配列(配列番号40) cMAb1−2重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号41) cMAb1−2重鎖のアミノ酸配列(配列番号42) MAb1重鎖CDRH1のアミノ酸配列(配列番号44) MAb1重鎖CDRH2のアミノ酸配列(配列番号46) MAb1重鎖CDRH3のアミノ酸配列(配列番号48) MAb1軽鎖CDRL1のアミノ酸配列(配列番号50) MAb1軽鎖CDRL2のアミノ酸配列(配列番号52) MAb1軽鎖CDRL3のアミノ酸配列(配列番号54) hMAb1−H1タイプ重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号55) hMAb1−H1タイプ重鎖のアミノ酸配列(配列番号56)。 hMAb1−H2タイプ重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号57) hMAb1−H2タイプ重鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号58) hMAb1−H3タイプ重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号59) hMAb1−H3タイプ重鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号60) hMAb1−H4タイプ重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号61) hMAb1−H4タイプ重鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号62) hMAb1−L1タイプ軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号63) hMAb1−L1タイプ軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号64) hMAb1−L2タイプ軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号65) hMAb1−L2タイプ軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号66) hMAb1−H2又はH4タイプ重鎖のCDRH1のアミノ酸配列(配列番号67) hMAb1−H2又はH4タイプ重鎖のCDRH2のアミノ酸配列(配列番号68) hMAb1−H2又はH4タイプ重鎖のCDRH3のアミノ酸配列(配列番号69) hMAb1−L2タイプ軽鎖のCDRL1のアミノ酸配列(配列番号70) hMAb1−L2タイプ軽鎖のCDRL2のアミノ酸配列(配列番号71) hMAb1−L2タイプ軽鎖のCDRL3のアミノ酸配列(配列番号72) H−1040、H−1143、H−1140、H−2040、H−2143、H−2140によるヒトROBO4導入HEK293細胞でのIL−8プロモーター活性の変動を示す図。 H−1143、H−2140、H−2143によるbFGF存在下でのHUVECの遊走能の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=4)を示す。 H−1143の種交差性を示す図。 H−2140の種交差性を示す図。 H−2143の種交差性を示す図。 H−1143、H−2140、H−2143の結合特異性を示す図。 H−2143のレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルにおける血管新生の変動を示す図。図中のエラーバーは標準誤差(n=3−4眼)を示す。
1.定義
本発明において、「遺伝子」とは、蛋白質のアミノ酸をコードする塩基配列が含まれるヌクレオチドまたはその相補鎖を意味し、例えば、蛋白質のアミノ酸をコードする塩基配列が含まれるヌクレオチドまたはその相補鎖であるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、mRNA、cDNA、cRNA等は「遺伝子」の意味に含まれる。かかる遺伝子は一本鎖、二本鎖又は三本鎖以上のヌクレオチドであり、DNA鎖とRNA鎖の会合体、一本のヌクレオチド鎖上にリボヌクレオチド(RNA)とデオキシリボヌクレオチド(DNA)が混在するもの及びそのようなヌクレオチド鎖を含む二本鎖又は三本鎖以上のヌクレオチドも「遺伝子」の意味に含まれる。本発明の「ROBO4遺伝子」としては、例えば、ROBO4蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が含まれるDNA、mRNA、cDNA、cRNA等をあげることができる。
本発明において、「ヌクレオチド」と「核酸」は同義であり、例えば、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プライマー等も「ヌクレオチド」の意味に含まれる。かかるヌクレオチドは一本鎖、二本鎖又は三本以上の鎖からなるヌクレオチドであり、DNA鎖とRNA鎖の会合体、一本のヌクレオチド鎖上にリボヌクレオチド(RNA)とデオキシリボヌクレオチド(DNA)が混在するもの及びそのようなヌクレオチド鎖を含む二本鎖又は三本以上の鎖の会合体も「ヌクレオチド」の意味に含まれる。
本発明において、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「蛋白質」は同義である。
本発明において、「抗原」を「免疫原」の意味に用いることがある。
本発明において、「細胞」には、動物個体に由来する各種細胞、継代培養細胞、初代培養細胞、細胞株、組換え細胞等も含む。
本発明においては、ROBO4蛋白質を認識する抗体を「抗ROBO4抗体」と表記することがある。「抗ROBO4抗体」には、抗ROBO4キメラ抗体、抗ROBO4ヒト化抗体、抗ROBO4ヒト抗体等が含まれる。
本発明における「抗体の機能断片」とは、元の抗体が奏する機能の少なくとも一部を奏する抗体断片を意味する。「抗体の機能断片」としては、例えば、Fab、F(ab’)2、scFv、Fab’、一本鎖免疫グロブリン等をあげることができるが、それらに限定されるものではない。かかる抗体の機能断片は、抗体蛋白質の全長分子をパパイン、ペプシン等の酵素で処理することによって得られたものに加え、組換え遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生された組換え蛋白質であってもよい。
本発明において、抗体が結合する「部位」、すなわち抗体が認識する「部位」とは、抗体が結合又は認識する抗原上の部分ペプチド又は部分高次構造を意味する。本発明においては、かかる部位のことをエピトープ、抗体の結合部位とも呼ぶ。本発明の抗ROBO4抗体が結合又は認識するROBO4蛋白質上の部位としては、ROBO4蛋白質上の部分ペプチド又は部分高次構造等を例示することができる。
抗体分子の重鎖及び軽鎖にはそれぞれ3箇所の相補性決定領域(CDR:Complemetarity determining region)があることが知られている。相補性決定領域は、超可変領域(hypervariable domain)とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、通常、それぞれ3ヶ所に分離している。本発明においては、抗体の相補性決定領域について、重鎖の相補性決定領域を重鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖の相補性決定領域を軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
本発明において、「抗体変異体」とは、元の抗体が有するアミノ酸配列においてアミノ酸が置換、欠失、付加及び/又は挿入(以下、「変異」と総称する)してなるアミノ酸配列を有し、且つ本発明のROBO4蛋白質に結合するポリペプチドを意味する。かかる抗体変異体における変異アミノ酸の数は、1乃至2個、1乃至3個、1乃至4個、1乃至5個、1乃至6個、1乃至7個、1乃至8個、1乃至9個、1乃至10個、1乃至12個、1乃至15個、1乃至20個、1乃至25個、1乃至30個、1乃至40個又は1乃至50個である。かかる抗体変異体も本発明の「抗体」に包含される。
本発明において、「1乃至数個」における「数個」とは、3乃至10個を指す。
本発明の抗体が奏する活性・性質としては、例えば、生物的活性、理化学的性質等を挙げることができ、具体的には、各種生物活性、抗原やエピトープに対する結合活性、製造や保存時における安定性、熱安定性等をあげることができる。
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、5×SSCを含む溶液中で65℃にてハイブリダイゼーションを行い、ついで2×SSC−0.1%SDSを含む水溶液中で65℃にて20分間、0.5×SSC−0.1%SDSを含む水溶液中で65℃にて20分間、ならびに、0.2×SSC−0.1%SDSを含む水溶液中で65℃にて20分間、それぞれ洗浄する条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることを意味する。SSCとは150mMNaCl−15mMクエン酸ナトリウムの水溶液であり、n×SSCはn倍濃度のSSCを意味する。
2.ROBO4蛋白質
本明細書において、「ROBO4」と「ROBO4蛋白質」は同義で用いている。
(2−1)特性
本発明のROBO4蛋白質は以下の性質を有する。
(i)ROBO4は分子量約110kDaの1回膜貫通構造を有し、且つ、血管新生に関与するSlit2蛋白質の受容体蛋白質である。本発明のROBO4蛋白質は、いずれも細胞膜等の膜から遊離した形状で存在し得るが、細胞膜等の膜に結合した形状であってもよい。ここでいう分子量とは、SDS−PAGEにおける非還元状態下での見かけ上の分子量を意味する。ROBO4のN末端側の細胞外領域には、2カ所の免疫グロブリン様ドメイン(以下、「Ig様ドメイン」という)と2カ所のフィブロネクチンタイプIIIドメインが存在し、C末端側の細胞内領域にはプロリンリッチ領域が存在している。本明細書において、2カ所の免疫グロブリン様ドメインをそれぞれアミノ末端側からIg様ドメイン1、Ig様ドメイン2という。ヒトROBO4蛋白質は配列表の配列番号2のアミノ酸番号28乃至1007のアミノ酸配列からなる。配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至27は分泌シグナル、28乃至467は細胞外領域であり、46乃至131はIg様ドメイン1、137乃至224はIg様ドメイン2、252乃至340はフィブロネクチンタイプIIIドメイン1、347乃至438はフィブロネクチンタイプIIIドメイン2であり、468乃至490は細胞膜内領域、491乃至1007は細胞内領域である。
(ii)血管新生抑制作用を有する。本発明において「血管新生抑制」とは、単独で、他の因子と共同して、または、他の因子との会合体として、直接に又は間接的に、血管新生を抑制及び/又は阻害することを意味する。血管新生抑制作用は、たとえばVEGFによる血管透過性亢進、細胞遊走促進活性、又は管腔形成活性に対する抑制作用を指標として評価することができる。
(iii)次の(a)乃至(e)のいずれか一つに記載のアミノ酸配列(以下、「ROBO4アミノ酸配列」という)を含んでなるか、ROBO4アミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるか、またはROBO4アミノ酸配列からなる。
(a)配列表の配列番号2(図14)で示されるアミノ酸配列;
(b)配列表の配列番号2(図14)で示されるアミノ酸配列と80%以上、82%以上、84%以上、86%以上、88%以上、90%以上、92%以上、94%以上、96%以上、98%以上又は99%以上の配列同一性を示し且つ血管新生抑制作用を示すポリペプチドのアミノ酸配列;
(c)配列表の配列番号2(図14)で示されるアミノ酸配列において1乃至50個、1乃至45個、1乃至40個、1乃至35個、1乃至30個、1乃至25個、1乃至20個、1乃至15個、1乃至10個、1乃至8個、1乃至6個、1乃至5個、1乃至4個、1乃至3個、1若しくは2個、または1個のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入してなり、且つ、血管新生を抑制するポリペプチドのアミノ酸配列;
(d)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至45又は1乃至131が欠失してなり、且つ、血管新生を抑制するポリペプチドのアミノ酸配列;及び、
(e)配列表の配列番号2(図14)で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列と相補的な塩基配列を有するヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチドの有する塩基配列によりコードされ、且つ、血管新生を抑制するポリペプチドのアミノ酸配列。
また、ROBO4蛋白質は2つ以上のサブユニットから構成されるホモ又はヘテロのオリゴ会合体の全部又は一部としても存在し得る。
個体、組織、体液、細胞、ROBO4蛋白質を含有する画分、精製又は部分精製ROBO4蛋白質標品等において、又は、複数の個体、組織、細胞、ROBO4蛋白質含有画分又はROBO4蛋白質標品の間で、ROBO4蛋白質の有するアミノ酸配列及び/又はその他の性質は同一でなくてもよく、均一でなくてもよい。一つの個体、組織、体液、細胞、ROBO4蛋白質を含有する画分、精製又は部分精製ROBO4蛋白質標品等には、複数種の異なるアミノ酸配列及び/又は異なる性質を有するROBO4蛋白質が含まれていてもよい。また、複数の個体、組織、細胞、ROBO4蛋白質含有画分又はROBO4蛋白質標品の間で、ROBO4蛋白質のアミノ酸配列及び/又はその他の性質が異なっていてもよい。かかるアミノ酸配列及び/又は性質が互いに異なる蛋白質であっても、上記(i)乃至(iii)記載の性質を具備していれば、いずれも本発明の「ROBO4蛋白質」に包含される。
(iv)本発明のROBO4蛋白質は、脊椎動物、好適には哺乳動物、より好適にはマウス、ラット等のげっ歯類及びヒト、より一層好適にはヒト又はマウスの組織、かかる組織由来の細胞、かかる細胞の培養物等より得ることができる。かかる組織及び細胞としては、ROBO4蛋白質が存在すれば特に限定されるものではないが、例えば、関節組織、血液、リンパ液、胸腺、脾臓、それらのいずれかに由来する細胞等をあげることができる。好適な組織及び細胞は、血管新生が生じている動物又は患者に由来する組織及び細胞である。ただし、本発明のROBO4蛋白質の由来は、前記のものに限定されず、他の動物種、他の組織、他の細胞等に由来するものであっても、上記(i)乃至(iii)記載の性質を具備していれば本発明のROBO4蛋白質の意味に含まれる。
本発明のROBO4蛋白質は天然型及び組換え型のいずれであってもよい。また、担体やタグなど他のペプチドや蛋白質との融合物もROBO4蛋白質の意味に含まれる。さらに、PEG等のポリマー付加を含む化学修飾、及び/又は、糖鎖修飾を含む生物学的修飾がなされたものもROBO4蛋白質の意味に含まれる。また、ROBO4蛋白質断片も本発明のROBO4蛋白質の意味に含まれる。ROBO4蛋白質断片のうち上記(ii)記載の性質を具備したものをROBO4蛋白質機能断片と呼ぶ。
(2−2)ROBO4遺伝子
本発明のROBO4遺伝子は、次の(a)乃至(c)のいずれか一つに記載の塩基配列(以下、「ROBO4遺伝子配列」という)を含んでなるか、ROBO4遺伝子配列を含む塩基配列からなるか、またはROBO4遺伝子配列からなる:
(a)配列表の配列番号1(図13)で示される塩基配列;
(b)配列表の配列番号1(図13)で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし且つ血管新生を抑制するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列;及び
(c)配列表の配列番号1(図13)で示される塩基配列において1乃至150個、1乃至140個、1乃至130個、1乃至120個、1乃至110個、1乃至100個、1乃至90個、1乃至80個、1乃至70個、1乃至60個、1乃至50個、1乃至45個、1乃至40個、1乃至30個、1乃至25個、1乃至20個、1乃至15個、1乃至10個、1乃至8個、1乃至6個、1乃至5個、1乃至4個、1乃至3個、1若しくは2個、または1個の塩基が置換、欠失、付加または挿入してなり且つ血管新生を抑制するポリペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列。
ROBO4遺伝子の発現は、血管新生が生じる疾患、例えば、増殖性糖尿病網膜症患者の線維血管増殖膜内にある血管あるいは腫瘍内血管において亢進している。その他、滲出型加齢黄斑変性、黄斑浮腫、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織および他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、及び肥満等など、血管新生が関与する考えられる疾患に罹患した患者または当該疾患モデル動物に由来する組織又は血液画分において、ROBO4遺伝子の発現が亢進していると考えられる。
ROBO4遺伝子の発現及び発現量の測定は、ROBO4遺伝子の転写産物及びROBO4蛋白質のいずれを指標としてもよく、前者はRT−PCR法、ノーザンブロット・ハイブリダーゼーション法等により、後者はEnzyme−linked immuno−sorbent assay:以下、「ELISA」という)等の免疫アッセイ法等により、それぞれ測定することができる。
(2−3)蛋白質の調製
本発明のROBO4蛋白質は、動物組織(体液を含む)、該組織由来の細胞もしくは該細胞培養物からの精製及び単離、遺伝子組換え、イン・ビトロ翻訳、化学合成等により調製することができる。
(2−3−1)天然型ROBO4の精製、単離
天然型ROBO4蛋白質は、例えば滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織および他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、肥満等の血管新生性疾患に罹患した患者又は非ヒト動物に由来する組織(体液、細胞等を含む)、かかる組織に由来する細胞、かかる細胞の培養物等より精製、単離することができる。かかる非ヒト動物には該疾患モデル動物も含まれる。モデルの作製に供する動物としては、脊椎動物であればとくに限定されないが、好適には哺乳動物であり、より好適にはマウス、ラット等のげっ歯類であり、より一層好適にはマウスまたはラットである。そのような患者又はモデル動物の組織及び細胞としては、ROBO4蛋白質が存在すれば特に限定されるものではないが、例えば、関節組織、血液、リンパ液、胸腺、脾臓、それらのいずれかに由来する細胞等をあげることができる。好適な組織及び細胞は、血管新生を発症しているか類似の症状を呈している患者又はモデル動物に由来するものである。ただし、本発明のROBO4蛋白質の由来は、前記のものに限定されず、他の動物種、他の組織、他の細胞等に由来するものであってもよい。
かかる組織、細胞、細胞培養物等からの精製・単離は当業者に周知の分画、クロマトグラフィー等の手法を組み合わせることにより行うことができる。かかる手法には、塩析、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、順相又は逆相クロマトグラフィー等が含まれるが、それらに限定されるものではない。アフィニティークロマトグラフィー用のカラムは、抗ROBO4モノクローナル抗体を架橋したアフィニティーゲルを作製して充填することにより作製することができる。かかるカラムにROBO4蛋白質を含有する粗画分又は部分精製画分を添加し、次いで滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で非特異的吸着物を除去した後、溶出用緩衝液を添加することによりROBO4蛋白質を選択的に回収することができる。ROBO4蛋白質含有溶液は、ゲルろ過やCentriprep等の濃縮装置でバッファー交換及び/又は濃縮することができる。
(2−3−2)組換型ROBO4蛋白質の調製
本発明のROBO4蛋白質は、組換型としても調製することができる。すなわち、ROBO4蛋白質又はROBO4蛋白質断片のアミノ酸配列をコードする遺伝子を宿主細胞に導入し、かかる細胞の培養物からROBO4蛋白質を回収することができる。例えば、ROBO4遺伝子又はその断片を発現ベクターに挿入し、次いで、原核又は真核の宿主細胞に該組換えベクターを導入して得られる組換え細胞を保温すれば、該細胞にROBO4蛋白質を発現させることができる。発現形態としては、分泌発現、細胞内可溶発現、インクルージョンボディー法など公知の形態を用いることができる。また、アミノ末端(N末)及び/又はカルボキシ末端(C末)が天然型と同一の分子のみならず、分泌シグナル、細胞内局在化シグナル、アフィニティー精製用タグ、パートナーペプチドとの融合蛋白質として発現させることもできる。かかる組換え細胞培養物からのROBO4蛋白質の精製、単離は、(2−3−1)記載の天然型ROBO4蛋白質の精製、単離に記載の分画、クロマトグラフィー等の操作を適宜組み合わせることにより行うことができる。
ROBO4遺伝子又はその断片は、当業者に周知の方法により調製することができる。
例えば、ROBO4を発現しているcDNAライブラリーを鋳型とし、当該配列を特異的に増幅し得る一組のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」という:Saiki,R.K.,et al.,Science(1988)239,p.487−489)、ROBO4を発現しているmRNA画分を鋳型とし、当該配列を逆転写し得るプライマー及び当該配列を特異的に増幅し得る一組のプライマーを用いた逆転写PCR(以下、「RT−PCR」という)、免疫アッセイを利用した発現クローニング、精製ROBO4蛋白質の部分アミノ酸配列を利用したcDNAクローニング等をあげることができる。
(2−3−3)イン・ビトロ翻訳
本発明のROBO4蛋白質はイン・ビトロ翻訳によっても調製することができる。かかる翻訳法としては、転写及び翻訳に必要な酵素、基質並びにエネルギー物質を含む無細胞翻訳系を利用した方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のラピッドトランスレーションシステム(RTS)を利用する方法をあげることができる。
(2−3−4)化学合成
本発明のROBO4蛋白質は化学合成によっても調製することができる。化学合成法としては、例えば、Fmoc合成法、Boc合成法などのペプチド固相合成法をあげることができる。
3.抗ROBO4抗体
(3−1)抗ROBO4抗体の種類
本発明の抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のいずれであってもよい。本発明のモノクローナル抗体としては、非ヒト動物由来の抗体(非ヒト動物抗体)、ヒト由来の抗体(ヒト抗体)、キメラ抗体、ヒト化抗体等をあげることができる。
非ヒト動物抗体としては、哺乳類、鳥類等の脊椎動物に由来する抗体等をあげることができる。哺乳類由来の抗体としては、マウス抗体、ラット抗体等げっ歯類由来の抗体等をあげることができる。鳥類由来の抗体としては、ニワトリ抗体等をあげることができる。
キメラ抗体としては、非ヒト動物抗体由来の可変領域とヒト抗体(ヒト免疫グロブリン)定常領域とを結合してなる抗体等をあげることができるが、それに限定されるものではない。非ヒト動物抗体由来の可変領域としては、後述のMAb1由来の重鎖及び軽鎖可変領域を例示することができる。
ヒト化抗体としては、非ヒト動物抗体の可変領域中のCDRをヒト抗体(ヒト免疫グロブリンの可変領域)に移植したもの、CDRに加え非ヒト動物抗体のフレームワーク領域の配列も一部ヒト抗体に移植したもの、それらのいずれかの非ヒト動物抗体由来の1つ又は2つ以上のアミノ酸をヒト型のアミノ酸で置換したもの等をあげることができるが、それらに限定されるものではない。非ヒト動物抗体の可変領域中のCDRとしては、後述のMAb1由来の重鎖可変領域中のCDRH1乃至3および軽鎖可変領域中のCDRL1乃至3を例示することができる。
ヒト抗体としては、本発明の抗原を認識する抗体であれば特に限定されるものではないが、本発明の抗体のCDRを有する抗体と同一の部位に結合するヒト抗体や前述のMAb1とROBO4上で同一の部位に結合するヒト抗体等を例示することができる。
本発明における抗体は、複数の異なる抗体に由来する部分から構成される抗体であってもよく、例えば、複数の異なる抗体間で重鎖及び/又は軽鎖を交換したもの、重鎖及び/又は軽鎖の全長を交換したもの、可変領域のみ又は定常領域のみを交換したもの、CDRの全部又は一部のみを交換したもの等をあげることができる。キメラ抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、異なる本発明の抗体に由来してもよい。ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域中のCDRH1乃至3並びにCDRL1乃至3は、2種又はそれ以上の本発明の抗体に由来してもよい。ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域中のCDRH1乃至3並びにCDRL1乃至3は、2種又はそれ以上の本発明の抗体が有するCDRの組合せであってもよい。
本発明のモノクローナル抗体のアイソタイプは特に限定されるものではないが、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等のIgG、IgM、IgA1、IgA2等のIgA、IgD、IgE等をあげることができ、好適にはIgGおよびIgM、さらに好適にはIgG2を挙げることができる。モノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスは、例えば、オクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、Radio immunoassay(以下、「RIA」という)法等で決定することができる、市販の同定用のキット(マウスタイパーキット:バイオラッド社製、RAT MONOCLONAL ANTIBODY ISOTYPING TEST KIT:serotec社製等)も利用することができる。
(3−2)抗ROBO4抗体の結合特異性
本発明の抗体はROBO4蛋白質を認識する。言い換えれば、本発明の抗体はROBO4蛋白質に結合する。かかる抗体は「抗ROBO4抗体」と表記される。また、本発明の好適な抗体はROBO4蛋白質を特異的に認識する。言い換えれば、本発明の好適な抗体はROBO4蛋白質に特異的に結合する。さらに、本発明のより好適な抗体はROBO4蛋白質の有するIg様ドメインに特異的に結合する。かかるIg様ドメインとしては、Ig様ドメイン1、Ig様ドメイン2を例示することができ、本発明のより好適な抗体は、配列表の配列番号2のアミノ酸番号132乃至209のアミノ酸配列からなる領域を認識する。本発明の抗体は、ヒトROBO4蛋白質、サル、好ましくはカニクイザルROBO4蛋白質、及びウサギROBO4蛋白質に結合するが、マウス及びラットROBO4蛋白質には結合しない。
本発明において「特異的な認識」、すなわち「特異的な結合」とは、非特異的な吸着ではない結合を意味する。結合が特異的であるか否かの判定基準としては、例えば、解離定数(Dissociation Consitant:以下、「KDという」)をあげることができる。本発明の好適な抗体のROBO4蛋白質に対するKD値は1×10−5以下、5×10−6以下、2×10−6以下または1×10−6以下、より好適には5×10−7以下、2×10−7以下または1×10−7以下、より一層好適には5×10−8以下、2×10−8以下または1×10−8以下、さらにより一層好適には5×10−9以下、2×10−9以下または1×10−9以下、最適には5×10−10以下、2×10−10以下または1×10−10以下である。
本発明における抗原と抗体の結合は、ELISA法、RIA法、Surface Plasmon Resonance(以下、「SPR」という)解析法等により測定または判定することができる。SPR解析に用いる機器としては、BIAcoreTM(GEヘルスケア社製)、ProteOnTM(BioRad社製)、SPR−NaviTM(BioNavis社製)、SpreetaTM(Texas Instruments社製)、SPRi−PlexIITM(ホリバ社製)、Autolab SPRTM(Metrohm社製)等を例示することができる。細胞表面上の発現している抗原と抗体との結合は、フローサイトメトリー法等により測定することができる。
(3−3)抗ROBO4抗体のイン・ビトロ血管新生抑制活性
本発明の抗体は、イン・ビトロにおいて、クロスリンク抗体非存在下で血管新生抑制活性を有する。イン・ビトロにおいて、クロスリンク抗体非存在下で薬理活性を示さず、イン・ビボにおいて、薬理活性を示す抗体が知られている(Cancer Cell(2011),19,p.101−113)。これは、イン・ビボにおいては、クロスリンク抗体と同様の機能を有するFcγ receptorを発現する白血球が存在するため(Nature(2008),8,p.34−47)、クロスリンク抗体がなくても、白血球存在下でクロスリンクが架かり、薬理活性を示すと考えられる。しかし、実際の生体においては、病変部における白血球数は個体により異なるため(Cancer Res(2011),71,5670−5677)、白血球によるクロスリンクに依存し、薬理活性を示す抗体は、個体によって抗体の効果に違いがでてくることが予想される。本発明の抗体は、イン・ビトロにおいてクロスリンク抗体非存在下でも優れた血管新生抑制活性を示すことから、イン・ビボにおいても白血球数に依存しない血管新生抑制作用を有すると考えられ、医薬として好適である。
血管新生抑制活性とは、血管内皮細胞の増殖、遊走、管腔形成等を抑制する活性を意味する。血管新生抑制活性は、イン・ビトロにおいては、血管透過性試験、血管内皮細胞遊走試験、管腔形成試験によって評価できる。
たとえば、血管透過性試験は、1μmのポアサイズのBoyden Chamber上層に正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を播種して単層を形成させた後、FITC標識デキストラン等の透過量を測定することで評価できる。透過量は、例えば、In Vitro Vascular Permeability Assay(Cat. ECM640、ミリポア社製)等を用いて測定され得る。抗体として、10μg/mL以下の添加でFITC標識デキストランの透過量を抑制する作用を示す場合は、血管透過性抑制作用を有し、血管新生抑制活性を有すると評価できる。本発明の抗体は、上記の測定条件において、好ましくは10μg/mL以下、さらに好ましくは1μg/mL以下、特に好ましくは0.5μg/mL以下で、血管透過性抑制活性を示す。
細胞遊走試験は、3−8μmのポアサイズのBoyden Chamber上層にHUVECを播種し、下層にVEGFなどの内皮細胞遊走促進因子を含む培地を添加し、下層に遊走する細胞数を測定することで評価できる。HUVECの遊走細胞数を減少させる作用を示す場合は、血管内皮細胞遊走抑制作用を有し、血管新生抑制活性を有すると評価できる。例えば、血管内皮細胞遊走アッセイシステム(Cat.354143、 BD Biosciences社製)等を用いて測定され得る。本発明の抗体は、上記の測定条件において、好ましくは10μg/mL以下、さらに好ましくは1μg/mL以下、特に好ましくは0.5μg/mL以下で、細胞遊走抑制活性を示す。
管腔形成試験は、マトリゲルでコートした細胞培養容器にHUVECを播種し、HUVECがマトリゲル上で形成する管腔構造の分岐点数や管腔長などを測定することで評価できる。管腔構造の分岐点数や管腔長が減少する作用を示す場合は、管腔形成抑制作用を有し、血管新生抑制活性を有すると評価できる。例えば、血管内皮細胞チューブ形成アッセイシステム(Cat.354149、BD Biosciences社製)等を用いて測定され得る。本発明の抗体は、上記の測定条件において、好ましくは10μg/mL以下、さらに好ましくは1μg/mL以下、特に好ましくは0.5μg/mL以下で、管腔形成抑制活性を示す。
ただし、ROBO4蛋白質により誘発される血管新生およびその抑制を測定できる系であれば、上述の試験に限定されるものではない。
クロスリンク抗体とは、本発明の抗体のFc領域に結合し、2分子以上の本発明の抗体を架橋する作用を持つ抗体を意味する。例えば、本発明の抗体のFc領域がマウス由来である場合、マウスFc領域に結合する抗体であって、クロスリンク抗体の2箇所の結合部位に、本発明の抗体をそれぞれ1分子ずつ結合することにより2分子以上の本発明の抗体を会合させる抗体をクロスリンク抗体をいう。
「クロスリンク抗体非存在下で血管新生抑制活性を有する」とは、血管新生抑制に関する評価系、例えば、上述の評価系においてクロスリンク抗体を共存させなくても、血管新生抑制作用を示すことを意味する。
「クロスリンク抗体存在下で血管新生抑制活性を有する」とは、血管新生に関する評価系、例えば、上述の血管新生抑制活性に関する評価系において、クロスリンク抗体非存在下では血管新生抑制活性を示さず、本発明の抗体1分子に対し、クロスリンク抗体を1分子以上、好適には2分子以上の割合で共存させた場合において、血管新生抑制活性を示すことを意味する。
(3−4)抗ROBO4抗体のイン・ビボ血管新生抑制又は阻害活性
本発明の抗体はイン・ビボ(in vivo)で、血管新生を抑制又は阻害する。イン・ビボにおける血管新生抑制又は阻害活性は、定法に従って病態モデル動物により評価することができる。例えば、後述の実施例4)−6に記載のレーザー誘発脈絡膜血管新生モデルは血管新生病態モデルとして広く使用されており、新生血管量をスコアとして評価することができる。患者の場合も、例えば、本発明の抗体の投与前後で、腫瘍患者からバイオプシーで腫瘍検体を採取し、腫瘍内血管の血管密度を免疫組織化学解析(IHC)にて測定し、新生血管量をスコア化することが可能である。
(3−5)抗ROBO4抗体による下流シグナル活性化
本発明の抗ROBO4抗体は、ROBO4蛋白質により何らかの応答が誘発される細胞株あるいは初代培養細胞を用いた評価系に供されてもよい。そのような細胞株としてはマウス血管内皮細胞株(ATCC NO. CRL−2779)等、初代培養細胞としてはマウス血管内皮細胞やヒト血管内皮細胞等をそれぞれ例示することができる。
本発明の抗体は、ROBO4に対するアゴニスト抗体である。すなわち、本発明の抗体は、ROBO4に結合し、ROBO4の下流シグナルを活性化する。したがって、本発明の抗体の血管新生抑制作用は、ROBO4の下流シグナルの活性化を指標としても評価することが可能である。ROBO4の下流シグナルとして、IL−8プロモーターの活性を例示できる。IL−8のプロモーター活性は、ヒトROBO4非発現細胞と比較して、全長ヒトROBO4発現細胞で大幅に上昇し、細胞内ドメインを欠損させたヒトROBO4発現細胞ではほとんど認められないことから、IL−8プロモーター活性の上昇は、ROBO4シグナルの活性化を検出していることが示された(実施例3)。IL−8のプロモーター活性は、例えば、IL−8プロモーター配列を挿入したレポーターベクターとヒトROBO4発現プラスミドを導入した細胞に抗ROBO4抗体を添加、あるいは抗ROBO4抗体とクロスリンク抗体を共添加したあと、レポーター活性を測定することで評価できる。
(3−6)抗ROBO4マウスモノクローナル抗体及び該キメラ抗体
MAb1は実施例2に記載の方法により得られた抗ROBO4マウスモノクローナル抗体である。
MAb1の重鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列は配列表の配列番号30(図15)に、アミノ酸配列は配列番号31(図16)に記載されている。CDRH1のアミノ酸配列は配列番号44(図25)に、CDRH2のアミノ酸配列は配列番号46(図26)に、CDRH3のアミノ酸配列は配列番号48(図27)に記載されている。MAb1の軽鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列は配列表の配列番号32(図17)に、アミノ酸配列は配列番号33(図18)に記載されている。CDRL1のアミノ酸配列は配列番号50(図28)に、CDRL2のアミノ酸配列は配列番号52(図29)に、CDRL3のアミノ酸配列は配列番号54(図30)に記載されている。
本発明の抗体変異体には、好適には、蛋白質の分解もしくは酸化に対する感受性の低下、生物活性の改善、抗原結合能の改善、又は理化学的性質もしくは機能的性質の付与等がなされている。そのような抗体変異体の例として、抗体の有するアミノ酸配列において保存的アミノ酸置換されてなるアミノ酸配列を有する抗体をあげることができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸側鎖に関連のあるアミノ酸グループ内で生じる置換である。
好適なアミノ酸グループは、以下のとおりである:酸性グループ=アスパギン酸、グルタミン酸;塩基性グループ=リジン、アルギニン、ヒスチジン;非極性グループ=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および非帯電極性ファミリー=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。他の好適なアミノ酸グループは次のとおりである:脂肪族ヒドロキシグループ=セリン及びスレオニン;アミド含有グループ=アスパラギン及びグルタミン;脂肪族グループ=アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;並びに芳香族グループ=フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン。かかる抗体変異体におけるアミノ酸置換は、元の抗体が有する抗原結合活性を低下させない範囲で行うのが好ましい。
本発明のMAb1が有するアミノ酸配列において保存的アミノ酸置換がなされたアミノ酸配列を有する抗体変異体、ならびに、MAb1由来のCDRH1乃至3及びCDRL1乃至3のいずれかのアミノ酸配列において保存的アミノ酸変異がなされたアミノ酸配列を有する該CDRを含むマウス抗体、ラット抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等も本発明に包含される。
本発明の抗体の定常領域としては、とくに限定されるものではないが、ヒトの疾患を治療または予防するための本発明の抗体としては、好適にはヒト抗体のものが使用される。ヒト抗体の重鎖定常領域としては、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cμ、Cδ、Cα1、Cα2、Cε等をあげることができる。ヒト抗体の軽鎖定常領域としては、例えば、Cκ、Cλ等をあげることができる。
本発明のマウス−ヒトIgG1タイプキメラ抗体として例示されるcMAb1−1の分泌シグナルを含む軽鎖ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列ならびに重鎖ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、配列表の配列番号37、38、39及び40(図19、20、21及び22)にそれぞれ示される。同じく、マウス−ヒトIgG2タイプキメラ抗体として例示されるcMAb1−2の分泌シグナルを含む軽鎖ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列ならびに重鎖ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、配列表の配列番号37、38、41及び42(図19、20、23及び24)にそれぞれ示される。
(3−7)抗ROBO4抗体の機能断片
本発明は一つの態様として、本発明の抗ROBO4抗体の機能断片を提供する。抗体の機能断片とは、該抗体の有する機能の少なくとも一部を保持する断片又はその修飾物を意味する。かかる抗体の機能としては、一般的には、抗原結合活性、抗原の活性を調節する活性、抗体依存性細胞障害活性及び補体依存性細胞傷害活性等を挙げることができる。本発明の抗ROBO4抗体の機能としては、例えば、ROBO4蛋白質結合活性、血管新生抑制活性、ROBO4下流シグナル活性化作用等をあげることができる。より具体的には、本発明のROBO4に対する抗体が示す上記(3−3)乃至(3−5)記載の活性の全部又は一部を有する限り、本発明の抗体の機能断片に含まれる。
抗体の機能断片としては、該抗体の有する活性の少なくとも一部を保持している該抗体の断片またはその修飾体であれば特に限定されないが、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、重鎖及び軽鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)、diabody(diabodies)、線状抗体、及び抗体断片より形成された多特異性抗体、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’等をあげることができるが、それらに限定されるものではない。リンカー部分を保有するscFvのように、本発明の抗体の断片以外の部分を含む分子も、本発明の抗体の機能断片の意味に包含される。
抗体蛋白質のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端のアミノ酸が1乃至数個又はそれ以上を欠失してなり、且つ該抗体の有する機能の少なくとも一部を保持している分子も、抗体の機能断片の意味に包含される。
本発明の抗体又はその機能断片は、少なくとも2種類の異なる抗原に対して特異性を有する多特異性抗体であってもよい。多特異性抗体は、2種類の異なる抗原に結合する二重特異性抗体(bispecific antibody)に限定されず、3種以上の異なる抗原に対して特異性を有する抗体も本発明の「多特異性抗体」の意味に包含される。
本発明の多特異性抗体は、全長抗体又はその機能断片であってもよい(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)。二重特異性抗体は2種類の抗体の重鎖と軽鎖(HL対)を結合させて作製することもできる。また、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを2種類以上融合させて、二重特異性抗体産生融合細胞を作製することによっても、得ることができる(Millstein et al.,Nature(1983)305,p.537−539)。多特異的抗体も同様の方法により調製することができる。
本発明の抗体の一つの態様は、一本鎖抗体(以下、「scFv」という)である。scFvは、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とをポリペプチドのリンカーで連結することにより得られる(Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,113,Rosenburg及びMoore編,Springer Verlag,New York,p.269−315(1994)、Nature Biotechnology(2005),23,p.1126−1136)。また、2つのscFvをポリペプチドリンカーで結合させて作製されるBiscFvを二重特異性抗体として使用することができる。さらに3つ以上のscFvよりMultiscFvも多特異性抗体として使用することができる。
本発明には、抗体の重鎖及び軽鎖の全長配列を適切なリンカーを用いて連結した一本鎖イムノグロブリン(single chain immunoglobulin)が含まれる(Lee,H−S,et.al.,Molecular Immunology(1999)36,p.61−71;Shirrmann,T.et.al.,mAbs(2010),2,(1)p.1−4)。このような一本鎖イムノグロブリンは二量体化することによって、本来は四量体である抗体と類似した構造と活性を保持することが可能である。また、本発明の抗体は、単一の重鎖可変領域を有し、軽鎖配列を有さない抗体であってもよい。このような抗体は、単一ドメイン抗体(single domain antibody:sdAb)又はナノボディ(nanobody)と呼ばれており、抗原結合能が保持されていることが報告されている(Muyldemans S.et.al.,Protein Eng.(1994)7(9),1129−35,Hamers−Casterman C.et.al.,Nature(1993)363(6428)446−8)。これらの抗体も、本発明における抗体の機能断片の意味に包含される。
(3−8)抗ROBO4ヒト化抗体
本発明はその一つの態様において、ヒト化抗体又はその機能断片を提供する。本発明のヒト化抗体としては、Mab1の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986)321,p.522−525参照)、CDR移植法によって、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開パンフレットWO90/07861)を挙げることができる。また、さらに各CDR中の1乃至3個のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換したヒト化抗体変異体も、上記(3−3)乃至(3−5)記載の活性の全部又は一部を有する限り、本発明の抗体に含まれる。
本発明の抗ROBO4ヒト化抗体又はその機能断片としては、例えば、配列表の配列番号44(図25)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列表の配列番号46(図26)に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列表の配列番号48(図27)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む可変領域を有する重鎖、並びに、配列表の配列番号50(図28)に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の1乃至3個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1、配列表の配列番号52(図29)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列表の配列番号54(図30)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む可変領域を有する軽鎖からなり、本発明のROBO4蛋白質を認識する抗体又は該抗体のROBO4蛋白質結合活性を保持している該抗体の断片等をあげることができる。
CDRH2におけるアミノ酸の置換例として、配列表の配列番号46のアミノ酸番号4番のアミノ酸を置換したCDRH2を例示できる。置換するアミノ酸は、本発明のROBO4に対する抗体が示す(3−3)乃至(3−5)記載の活性の全部又は一部を有する限り、限定されない。
CDRL1におけるアミノ酸置換例として、配列表の配列番号50のアミノ酸番号9番、11番及び13番のいずれか1乃至3個のアミノ酸、好適には3個のアミノ酸を置換したCDRL1を例示できる。置換するアミノ酸は、本発明のROBO4に対する抗体が示す(3−3)乃至(3−5)記載の活性の全部又は一部を有する限り、限定されない。
上記CDRHを有するヒト化抗体の重鎖可変領域として、配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列、配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列、配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列、及び配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列を例示でき、上記CDRLを有するヒト化抗体の軽鎖可変領域として配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列、及び配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列を例示できる。
上記、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むヒト化抗体として、配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体を好適に例示できる。
上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むことからなるヒト化抗体の全長配列として、配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H−1040)、配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H−1140)、配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H−1143)、配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H−2040)、配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H−2140)、又は、配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H−2143)を例示できる。
上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むことからなる抗体、又は、上記重鎖及び軽鎖の組合せを含むことからなる抗体のアミノ酸配列との同一性が95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である抗体も上記(3−3)乃至(3−5)記載の活性の全部又は一部を有する限り、本発明の抗体に含まれる。また、上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むことからなる抗体、又は、上記重鎖及び軽鎖の組合せを含むことからなる抗体のCDRと同一のアミノ酸配列からなるCDRを有し、かつ該抗体のCDRのアミノ酸配列をのぞいたアミノ酸配列の同一性が95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である抗体も、上記(3−3)乃至(3−5)記載の活性の全部又は一部を有する限り、本発明の抗体に含まれる。
本発明の抗ROBO4ヒト化抗体又はその機能断片は、血管新生抑制活性を有し、好適にはイン・ビボ(in vivo)で血管新生抑制活性を有する。また、かかるヒト化抗体又はその機能断片は、好適にはROBO4蛋白質に特異的に結合する。また、かかるヒト化抗体又はその機能断片は、ROBO4のアゴニスト抗体であり、下流シグナルを活性化する。さらに、イン・ビトロにおいて、クロスリンク抗体非存在下で、血管内皮細胞遊走を抑制又は阻害する。
(3−9)同一の部位に結合する抗体
本発明の提供する抗体と「同一の部位に結合する抗体」も本発明の抗体に含まれる。ある抗体と「同一の部位に結合する抗体」とは、該抗体が認識する抗原分子上の部位に結合する他の抗体を意味する。第一抗体が結合する抗原分子上の部分ペプチド又は部分立体構造に第二抗体が結合すれば、第一抗体と第二抗体は同一の部位に結合すると判定することができる。また、第一抗体の抗原に対する結合に対して第二抗体が競合する、すなわち、第二抗体が第一抗体と抗原の結合を妨げることを確認することによって、具体的な結合部位のペプチド配列又は立体構造が決定されていなくても、第一抗体と第二抗体が同一の部位に結合すると判定することができる。さらに、第一抗体と第二抗体が同一の部位に結合し、且つ第一抗体が血管新生抑制活性など本発明の抗体の一つの態様に特徴的な効果を有する場合、第二抗体も同様の活性を有する蓋然性は極めて高い。従って、第一の抗ROBO4抗体の結合する部位に第二の抗ROBO4抗体が結合すれば、第一抗体と第二抗体がROBO4蛋白質上の同一の部位に結合すると判定することができる。また、第一の抗ROBO4抗体のROBO4蛋白質への結合に対して第二の抗ROBO4抗体が競合することを確認できれば、第一抗体と第二抗体がROBO4蛋白質上の同一の部位に結合する抗体と判定することができる。
本発明のMAb1が認識するROBO4蛋白質上の部位に結合する抗体も本発明に含まれる。
抗体の結合部位は、免疫アッセイ法など当業者に周知の方法により決定することができる。例えば、抗原のアミノ酸配列をC末またはN末から適宜削ってなる一連のペプチドを作製し、それらに対する抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定した後に、さらに短いペプチドを合成してそれらのペプチドへの抗体の反応性を検討することにより、結合部位を決定することができる。抗原断片ペプチドは、遺伝子組換、ペプチド合成等の技術を用いて調製することができる。
抗体が抗原の部分高次構造に結合又は認識している場合、かかる抗体の結合部位は、X線構造解析を用いて、当該抗体に隣接する抗原上のアミノ酸残基を特定することにより決定することができる。
(3−10)抗ROBO4抗体又はその機能断片の修飾体
本発明は、抗体又はその機能断片の修飾体を提供する。本発明の抗体又はその機能断片の修飾体とは、本発明の抗体又はその機能断片に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N−結合またはO−結合炭水化物鎖の化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N−結合またはO−結合への糖鎖付加、N末またはC末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによりN末にメチオニン残基が付加したもの等が含まれる。また、本発明の抗体または抗原の検出または単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティー標識体もかかる修飾物の意味に含まれる。このような本発明の抗体又はその機能断片の修飾物は、元の本発明の抗体又はその機能断片の安定性および血中滞留性の改善、抗原性の低減、かかる抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
化学的修飾体に含まれる化学部分としては、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを例示することができる。
生物学的な修飾物としては、酵素処理や細胞処理等により修飾が施されたもの、遺伝子組換えによりタグ等他のペプチドが付加された融合体、ならびに内因性又は外来性の糖鎖修飾酵素を発現する細胞を宿主として調製されたもの等をあげることができる。
かかる修飾は、抗体またはその機能断片における任意の位置に、または所望の位置において施されてもよく、1つ又は2つ以上の位置に同一又は2種以上の異なる修飾がなされてもよい。
本発明において「抗体断片の修飾体」は「抗体の修飾体の断片」をもその意味に含むものである。
たとえば、哺乳類培養細胞で生産される抗体は、重鎖のカルボキシル末端のリジン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A,705:129−134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リジンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry,360:75−83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用など)には影響を及ぼさない。従って、本発明には当該修飾を受けた抗体及び当該抗体の機能断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等を挙げることができる。但し、抗原結合能及び(3−3)乃至(3−5)記載の活性の全部又は一部が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であっても良いし、いずれか二種を組み合わせたものであっても良い。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件等の影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては、例えば、2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる:それらも全て本発明の抗体変異体、抗体の機能断片またはそれらの修飾体の意味に包含される。
4.抗体の製造方法
(4−1)ハイブリドーマを用いる方法
本発明の抗ROBO4抗体は、コーラーとミルスタインの方法(Kohler and Milstein,Nature (1975)256,p.495−497、Kennet,R.ed.,Monoclonal Antibody,p.365−367,Prenum Press,N.Y.(1980))に従って、ROBO4蛋白質で免疫した動物の脾臓より抗ROBO4抗体の産生細胞を単離し、該細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、かかるハイブリドーマの培養物からモノクローナル抗体を取得することができる。
(4−1−1)抗原の調製
抗ROBO4抗体を作製するための抗原は、本発明の他の部分に記載された天然型または組換え型のROBO4蛋白質の調製法等に従って、取得することができる。そのようにして調製し得る抗原としては、ROBO4蛋白質若しくはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列を含むことからなるROBO4蛋白質断片、またはそれらに任意のアミノ酸配列や担体が付加された誘導体等(以下、まとめて「ROBO4抗原」とよぶ)を挙げることができる。
組換え型ROBO4抗原は、ROBO4抗原の有するアミノ酸配列をコードする塩基配列が含まれる遺伝子を宿主細胞に導入し、該細胞の培養物から該抗原を回収することにより、調製することができる。天然型ROBO4抗原は、例えば、ヒト若しくはげっ歯類の血管新生組織もしくは該組織由来の細胞、または該細胞の培養物から精製、単離することができる。また、ROBO4抗原のアミノ酸配列をコードする塩基配列が含まれる遺伝子をイン・ビトロ(in virto)翻訳系により無細胞系において得られるROBO4抗原も本発明の「ROBO4抗原」に含まれる。
(4−1−2)抗ROBO4モノクローナル抗体の製造
モノクローナル抗体の製造は、通常、下記のような工程を経る。
(a)抗原を調製する工程、
(b)抗体産生細胞を調製する工程、
(c)骨髄腫細胞(以下、「ミエローマ」という)を調製する工程、
(d)抗体産生細胞とミエローマとを融合させる工程、
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群を選別する工程、及び
(f)単一細胞クローンを得る工程(クローニング)。
必要に応じてさらに、(g)ハイブリドーマの培養工程、ハイブリドーマを移植した動物の飼育工程等、(h)モノクローナル抗体の生物活性の測定工程・判定工程等が加わる。
以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾臓細胞以外の抗体産生細胞及びミエローマを使用することもできる。
(a)抗原を調製する工程
前記(2−3)記載のROBO4蛋白質の調製法に準ずる。
(b)抗体産生細胞を調製する工程
工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全又は不完全アジュバント、又はカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。実験動物は公知のハイブリドーマ作製法に用いられる動物を支障なく使用することができる。具体的には、たとえばマウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ等を使用することができる。ただし、摘出した抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞の入手容易性等の観点から、マウス又はラットを被免疫動物とするのが好ましい。
また、実際に使用するマウス及びラットの系統は特に制限はなく、マウスの場合には、例えば、A、AKR、BALB/c、BALB/cAnNCrj、BDP、BA、CE、C3H、57BL、C57BL、C57L、DBA、FL、HTH、HT1、LP、NZB、NZW、RF、R III、SJL、SWR、WB、129等が、ラットの場合には、例えば、Wistar、Low、Lewis、Sprague‐Dawley、ACI、BN、Fischer等を用いることができる。
これらのマウス及びラットは例えば日本クレア、日本チャ−ルスリバー、等実験動物飼育販売業者より入手することができる。
このうち、後述のミエローマ細胞との融合適合性を勘案すれば、マウスではBALB/c系統が、ラットではWistar及びLow系統が被免疫動物として特に好ましい。
また、抗原のヒトとマウスでの相同性を考慮し、自己抗体を除去する生体機構を低下させたマウス、すなわち自己免疫疾患マウスを用いることも好ましい。
なお、これらマウス又はラットの免疫時の週齢は、好ましくは5乃至12週齢、さらに好ましくは6乃至8週齢である。
ROBO4蛋白質で動物を免疫するには、例えば、Weir, D.M.,Handbook of Experimental Immunology Vol.I.II.III.,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1987)、Kabat,E.A.and Mayer,M.M.,Experimental Immunochemistry,Charles C Thomas Publisher Spigfield,Illinois(1964) 等の法を用いることができる。
抗体価の測定法としては、例えば、RIA法、ELISA法等の免疫アッセイを挙げることができるが、それらの方法に限定されるものではない。
免疫された動物から分離された脾臓細胞又はリンパ球に由来する抗体産生細胞は、例えば、Kohler et al.,Nature(1975)256,p.495,;Kohler et al.,Eur.J.Immnol.(1977)6,p.511,;Milstein et al.,Nature(1977),266,p.550,;Walsh,Nature,(1977)266,p.495,)等の公知の方法に従って調製することができる。
脾臓細胞の場合には、脾臓を細切して細胞をステンレスメッシュで濾過した後、イーグル最小必須培地(MEM)等に浮遊させて抗体産生細胞を分離する一般的方法を採用することができる。
(c)ミエローマを調製する工程
細胞融合に用いるミエローマ細胞には特段の限定はなく、公知の細胞株から適宜選択して用いることができるが、融合細胞からハイブリドーマを選択する際の利便性を考慮して、その選択手続が確立しているHGPRT(Hypoxanthine−guanine phosphoribosyl transferase)欠損株、すなわちマウス由来のX63−Ag8(X63)、NS1−ANS/1(NS1)、P3X63−Ag8.Ul(P3Ul)、X63−Ag8.653(X63.653)、SP2/0−Ag14(SP2/0)、MPC11−45.6TG1.7(45.6TG)、FO、S149/5XXO、BU.1等、ラット由来の210.RSY3.Ag.1.2.3(Y3)等、ヒト由来のU266AR(SKO−007)、GM1500・GTG−A12(GM1500)、UC729−6、LICR−LOW−HMy2(HMy2)、8226AR/NIP4−1(NP41)等を用いるのが好ましい。これらのHGPRT欠損株は例えば、American Type Culture Collection (ATCC)等から入手することができる。
これらの細胞株は、適当な培地、例えば8−アザグアニン培地[RPMI−1640培地にグルタミン、2−メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、及びウシ胎児血清(以下「FCS」という)を加えた培地に8−アザグアニンを加えた培地]、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium;以下「IMDM」という)、又はダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養するが、細胞融合の3乃至4日前に正常培地[例えば、10% FCSを含むASF104培地(味の素(株)社製)]で継代培養し、融合当日に2×10以上の細胞数を確保しておく。
(d)抗体産生細胞とミエローマ細胞を融合させる工程
抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法(Weir,D.M.,Handbookof Experimental Immunology Vol.I.II.III.,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1987)、Kabat,E.A.and Mayer,M.M.,Experimental Immunochemistry,Charles C Thomas Publisher Spigfield,Illinois(1964)等)に従い、細胞の生存率を極度に低下させない程度の条件下で実施することができる。例えば、ポリエチレングリコール等の高濃度ポリマー溶液中で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを混合する化学的方法、電気的刺激を利用する物理的方法等を用いることができる。
(e)目的とする抗体を産生するハイブロドーマ群を選別する工程
細胞融合により得られるハイブリドーマの選択方法は特に制限はないが、通常HAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)選択法(Kohler et al., Nature(1975)256,p.495;Milstein et al.,Nature(1977)266,p.550)が用いられる。この方法は、アミノプテリンで生存し得ないHGPRT欠損株のミエローマ細胞を用いてハイブリドーマを得る場合に有効である。すなわち、未融合細胞及びハイブリドーマをHAT培地で培養することにより、アミノプテリンに対する耐性を持ち合わせたハイブリドーマのみを選択的に残存させ、かつ増殖させることができる。
(f)単一細胞クローンを得る工程(クローニング)
ハイブリドーマのクローニング法としては、例えば、メチルセルロース法、軟アガロース法、限界希釈法等の公知の方法を用いることができるが(例えば、Barbara, B.M. and Stanley, M.S.:Selected Methods in Cellular Immunology,W.H. Freeman and Company,San Francisco(1980)参照)、好適には限界希釈法である。
(g)ハイブリドーマの培養工程、ハイブリドーマを移植した動物の飼育工程
選択されたハイブリドーマを培養することにより、モノクローナル抗体を産生することができるが、好適には所望のハイブリドーマをクローニングしてから抗体の産生に供する。
かかるハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体は、該ハイブリドーマの培養物から回収することができる。また、該モノクローナル抗体遺伝子が導入された細胞の培養物から組換え抗体として回収することもできる。さらに、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/cAnNCrj)、あるいはNu/Nuマウスの腹腔内にハイブリドーマを注射し、該ハイブリド−マを増殖させることにより、その腹水から回収することもできる。
(h)モノクローナル抗体の生物活性の測定工程・判定工程
各種生物試験を目的に応じて選択し、適用することができる。
(4−2)細胞免疫法
天然型のROBO4蛋白質を発現する細胞、組換え型ROBO4蛋白質またはその断片を発現する細胞等を免疫原として使用することにより、前記のハイブリドーマ法により抗ROBO4抗体を調製することができる。
天然型のROBO4蛋白質を発現する細胞としては、増殖性糖尿病網膜症や腫瘍等の血管新生性疾患に罹患した患者由来の細胞または該患者の組織由来の細胞等をあげることができる。かかる細胞は、好適には血管内皮細胞であるが、それに限定されるものではない。それらのROBO4蛋白質発現細胞は、1×10乃至1×10個、好適には1×10乃至1×10個、より好適には0.5乃至2×10個、より一層好適には1×10個を1回の免疫に用いるが、ROBO4蛋白質の発現量に応じて免疫に供する細胞数を変えることができる。かかる免疫源は、一般的には腹腔内に投与するが、皮内等に投与することもできる。ハイブリドーマの作製手法としては(4−1−2)記載の方法を適用することができる。
(4−3)遺伝子組換え
本発明の抗体は、その重鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド(重鎖ヌクレオチド)及びその軽鎖アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド(軽鎖ヌクレオチド)、又は、かかる重鎖ヌクレオチドが挿入されたベクター及び軽鎖ヌクレオチドが挿入されたベクターを宿主細胞に導入し、該細胞を培養した後その培養物からかかる抗体を回収することにより調製することができる。一つのベクターに重鎖ヌクレオチド及び軽鎖ヌクレオチドが挿入されていてもよい。
宿主細胞としては、原核細胞又は真核細胞を用いることができる。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることができる。
動物細胞としては、例えば、哺乳類由来の細胞、すなわち、サル由来のCOS細胞(Gluzman, Y. Cell(1981)23,p.175−182、ATCC CRL−1650)、マウス繊維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL−1658)、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL−61)、そのジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(CHOdhfr−:Urlaub,G.and Chasin,L.A. Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1980)77,p.4126−4220)、ニワトリ等鳥類由来の細胞、昆虫由来の細胞等を挙げることができる。
また、糖鎖構造の改変により、抗体の生物活性を高められるよう改変された細胞も宿主として用いることができる。例えば、抗体のFc領域に結合するN−グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上になるよう改変されたCHO細胞を用いることにより、ADCC活性やCDC活性が高められた抗体を調製することが可能である(WO02/31140号)。
真核微生物としては、例えば、酵母等をあげることができる。原核細胞としては、例えば、大腸菌、枯草菌等をあげることができる。
本発明の抗体(各種動物由来のモノクローナル抗体、ラット抗体、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等)を分泌させるためのシグナルペプチドとしては、当該抗体と同種、同タイプ及び同サブタイプの抗体の分泌シグナル、ならびに、当該抗体自体の分泌シグナルに限定されるものではなく、他のタイプもしくはサブタイプの抗体の分泌シグナル、または、他の真核生物種もしくは原核生物由来の蛋白質の分泌シグナルであれば、任意のものを選択して利用することができる。
(4−4)ヒト化抗体のデザイン法および調製法
ヒト化抗体としては、非ヒト動物抗体のCDRのみがヒト由来の抗体に組込まれた抗体(Nature(1986)321,p.522−525参照)、CDR移植法によりCDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(WO90/07861号、US6972323号公報参照)、それらのいずれかにおける非ヒト動物抗体の1つまたは2つ以上のアミノ酸がヒト型のアミノ酸で置換されてなる抗体等を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
(4−5)ヒト抗体の調製法
本発明の抗体としては、さらに、ヒト抗体を挙げることができる。抗ROBO4ヒト抗体とは、ヒト由来の抗体のアミノ酸配列からなる抗ROBO4抗体を意味する。抗ROBO4ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒトゲノムDNA断片を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka,K.et al.,Nature Genetics(1997)16,p.133−143,; Kuroiwa,Y.et.al.,Nuc.Acids Res.(1998)26,p.3447−3448;Yoshida, H.et.al.,Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10,p.69−73(Kitagawa, Y.,Matuda,T.and Iijima,S.eds.),Kluwer Academic Publishers,1999.;Tomizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97,p.722−727等を参照。)によって取得することができる。
このようなヒト抗体産生動物は、具体的には、非ヒト哺乳動物の内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子座を破壊し、代わりに酵母人工染色体(Yeast artificial chromosome,YAC)ベクターなどを介してヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子座が導入することによって作製することができる。また、遺伝子組換え技術により、そのようなヒト抗体の重鎖及び軽鎖の各々をコードするcDNA、好ましくは該cDNAを含むベクターにより真核細胞を形質転換し、遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体を産生する形質転換細胞を培養することにより、この抗体を培養上清中から得ることもできる。
ここで、宿主としては例えば真核細胞、好ましくはCHO細胞、リンパ球やミエローマ等の哺乳動物細胞を用いることができる。
また、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得する方法(Wormstone,I.M.et.al,Investigative Ophthalmology & Visual Science.(2002)43(7),p.2301−2308;Carmen,S.et.al.,Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002),1(2),p.189−203;Siriwardena,D.et.al.,Opthalmology(2002)109(3),p.427−431等参照。)も知られている。
例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させて、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Biotechnology(2005),23,(9),p.1105−1116)を用いることができる。
抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。
抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクターを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによりヒト抗体を取得することができる(WO92/01047,WO92/20791,WO93/06213,WO93/11236,WO93/19172,WO95/01438,WO95/15388、Annu.Rev.Immunol(1994)12,p.433−455、Nature Biotechnology(2005)23(9),p.1105−1116)。
(4−6)抗体の機能断片の調製法
一本鎖抗体を作成する方法は当技術分野において周知である(例えば、米国特許第4,946,778号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号等を参照)。このscFvにおいて、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、コンジュゲートを作らないようなリンカー、好ましくはポリペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988),85,p.5879−5883)。scFvにおける重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、同一の抗体に由来してもよく、別々の抗体に由来してもよい。
可変領域を連結するポリペプチドリンカーとしては、例えば12乃至19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体の重鎖又は重鎖可変領域をコードするDNA、及び軽鎖又は軽鎖可変領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにポリペプチドリンカー部分をコードするDNA、及びその両端が各々重鎖、軽鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合わせて増幅することにより得られる。
scFvをコードするDNAを用いて、該DNAを含有する発現ベクター、及び該発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を常法に従って調製することができ、また、その宿主細胞を培養することにより、常法に従ってかかる培養物から該scFvを回収することができる。
その他の抗体の機能断片も、前記の方法に準じて該機能断片をコードする遺伝子を取得して細胞に導入し、該細胞の培養物から該機能断片を回収することにより、得ることができる。
本発明の抗体は、多量化して抗原に対する親和性を高めたものであってもよい。多量化する抗体としては、1種類の抗体であっても、同一の抗原の複数のエピトープを認識する複数の抗体であってもよい。抗体を多量化する方法としては、IgG CH3ドメインと2つのscFvとの結合、ストレプトアビジンとの結合、へリックス−ターン−へリックスモチーフの導入等を挙げることができる。
本発明の抗体は、アミノ酸配列が異なる複数種類の抗ROBO4抗体の混合物、すなわちポリクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体としては、例えば、CDRセットの一部又は全部が異なる複数種類の抗体の混合物を挙げることができる。そのようなポリクローナル抗体は、異なる抗体の産生細胞を混合培養し、該培養物から回収することができる(WO2004/061104号)。また、別個に調製した抗体を混合することも可能である。さらに、ポリクローナル抗体の一つの態様である抗血清は、動物を所望の抗原で免疫し、定法に従って、該動物から血清を回収することにより調製することができる。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。
本発明の抗体は、更にこれらの抗体と他の薬剤がコンジュゲートを形成しているもの(Immunoconjugate)でもよい。このような抗体の例としては、該抗体が放射性物質や薬理作用を有する化合物と結合している物を挙げることができる(Nature Biotechnology(2005)23,p.1137−1146)。
(4−7)抗体の精製
得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。
例えばクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Charcterization:A Laboratoy Course Manual,Daniel R.Marshak et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996);Antibodies:A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(1988))が、これらに限定されるものではない。
クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる。
これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラム、抗原カラム等をあげることができる。
プロテインAカラムとしては、例えば、Hyper D(ポール社製)、POROS(アプライドシステムズ社製)、Sepharose F.F.(GEヘルスケア社製)等が挙げられる。
また抗原を固定化した担体を用いて、抗原への結合性を利用して抗体を精製することも可能である。
本発明は、本発明の抗体もしくはその機能断片またはその修飾物をコードする遺伝子、該遺伝子が挿入された組換えベクター、該遺伝子又はベクターが導入された細胞、その他本発明の抗体を産生する細胞をも提供する。
5.医薬組成物
本発明は抗ROBO4抗体もしくはその機能断片またはその修飾体を含む医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物は、発症、進展および/又は増悪化の過程において、病理的所見の一つとして血管新生が見られ、且つ、かかる血管新生・血管透過性を抑制することにより病態の改善がもたらされ得る可能性のある疾患(以下、便宜上「血管新生性疾患」という)の治療または予防に有用である。血管新生性疾患としては、例えば、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織および他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、及び肥満等をあげることができる。
本発明において、疾患の治療及び/又は予防には、かかる疾患、好適にはROBO4蛋白質を発現している個体におけるかかる疾患の発症の予防、増悪化又は進行の抑制又は阻害、かかる疾患に罹患した個体が呈する一つ又は二つ以上の症状の軽減、増悪化若しくは進行の抑制または寛解、二次性疾患の治療又は予防等が含まれるが、それらに限定されるものではない。
本発明の医薬組成物には、治療または予防に有効な量の抗ROBO4抗体又は該抗体の機能断片と薬学上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤及び/又は補助剤を含有せしめることができる。
「治療または予防に有効な量」とは、特定の疾患、投与形態および投与径路につき治療又は予防効果を奏する量を意味する。
本発明の医薬組成物には、pH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、無菌性、該組成物又はそれに含まれる抗体の安定性、溶解性、徐放性、吸収性、浸透性、剤型、強度、性状、形状等を変化させたり、維持したり、保持したりするための物質(以下、「製剤用の物質」という)を含有せしめることができる。製剤用の物質としては、薬理学的に許容される物質であれば特に限定されるものではない。例えば、非毒性又は低毒性であることは、製剤用の物質が好適に具備する性質である。
製剤用の物質として、例えば、以下のものをあげることができるが、これらに限定されるものではない;グリシン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸類、抗菌剤、アスコルビン酸、硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、リン酸、クエン酸、ホウ酸バッファー、炭酸水素ナトリウム、トリス−塩酸(Tris−Hcl)溶液等の緩衝剤、マンニトールやグリシン等の充填剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、カフェイン、ポリビニルピロリジン、β−シクロデキストリンやヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等の錯化剤、グルコース、マンノース又はデキストリン等の増量剤、単糖類、二糖類やグルコース、マンノースやデキストリン等の他の炭水化物、着色剤、香味剤、希釈剤、乳化剤やポリビニルピロリジン等の親水ポリマー、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン、塩化ベンズアルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素等の防腐剤、グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等の溶媒、マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール、懸濁剤、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルビテート20やポリソルビテート80等ポリソルビテート、トリトン(triton)、トロメタミン(tromethamine)、レシチン又はコレステロール等の界面活性剤、スクロースやソルビトール等の安定化増強剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールやソルビトール等の弾性増強剤、輸送剤、希釈剤、賦形剤、及び/又は薬学上の補助剤。
これらの製剤用の物質の添加量は、抗ROBO4抗体もしくはその機能断片またはその修飾体の重量に対して0.001乃至1000倍、好適には0.01乃至100倍、より好適には0.1乃至10倍である。
抗ROBO4抗体もしくはその機能断片またはその修飾体をリポソーム中に含有せしめたイムノリポソーム、抗体とリポソームとが結合してなる抗体修飾体(米国特許第6214388号等)を含有する医薬組成物も、本発明の医薬組成物に含まれる。
賦形剤や担体は、通常液体又は固体であり、注射用の水、生理食塩水、人工脳脊髄液、その他の、経口投与又は非経口投与用の製剤に用いられる物質であれば特に限定されない。生理食塩水としては、中性のもの、血清アルブミンを含むもの等をあげることができる。
緩衝剤としては、医薬組成物の最終pHが7.0乃至8.5になるように調製されたTrisバッファー、同じく4.0乃至5.5になるように調製された酢酸バッファー、同じく5.0乃至8.0になるように調製されたクエン酸バッファー、同じく5.0乃至8.0になるように調製されたヒスチジンバッファー等を例示することができる。
本発明の医薬組成物は、固体、液体、懸濁液等である。凍結乾燥製剤をあげることができる。凍結乾燥製剤を成型するには、スクロース等の賦形剤を用いることができる。
本発明の医薬組成物の投与径路としては、経腸投与、局所投与及び非経口投与のいずれでもよく、対象となる疾患によって、好適な投与経路を選択すればよい。具体的には、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、経皮投与、骨内投与、関節内投与等をあげることができる。また、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、水晶体後部線維増殖症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織の免疫拒絶等の眼科系の血管新生性疾患に対しては、眼球内への投与も好適に使用できる。
かかる医薬組成物の組成は、投与方法、抗体のROBO4蛋白質結合親和性等に応じて決定することができる。本発明の抗ROBO4抗体もしくはその機能断片またはその修飾体のROBO4蛋白質に対する親和性が高いほど(KD値が低いほど)、少ない投与量でその薬効を発揮し得る。
本発明の抗ROBO4抗体の投与量は、個体の種、疾患の種類、症状、性別、年齢、持病、該抗体のROBO4蛋白質結合親和性又はその生物活性、その他の要素に応じて適宜決定することができるが、通常、0.01乃至1000mg/kg、好適には0.1乃至100mg/kgを、1乃至180日間に1回、又は1日2回若しくは3回以上投与することができる。
医薬組成物の形態としては、注射剤(凍結乾燥製剤、点滴剤を含む)、坐剤、経鼻型吸収製剤、経皮型吸収製剤、舌下剤、カプセル、錠剤、軟膏剤、顆粒剤、エアーゾル剤、丸剤、散剤、懸濁剤、乳剤、点眼剤、生体埋め込み型製剤等を例示することができる。
本発明の抗ROBO4抗体もしくはその機能断片またはその修飾体を有効成分として含む医薬組成物は、血管新生抑制薬、抗炎症薬及び/又は抗がん薬と併用することが可能である。例えば、血管新生抑制薬、抗炎症薬及び/又は抗がん薬を投与した後に抗ROBO4抗体又は該抗体の機能断片を有効成分として含む医薬組成物を投与するか、当該医薬組成物を投与した後に、血管新生抑制薬、抗炎症薬及び/又は抗がん薬を投与するか、または、当該医薬組成物と血管新生抑制薬、抗炎症薬及び/又は抗がん薬を同時に投与してもよい。血管新生抑制薬としてはラニビズマブ等をあげることができる。
本発明は、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織および他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、及び肥満等血管新生性疾患の治療方法または予防方法、該血管新生性疾患の治療用または予防用医薬組成物を調製するための本発明の抗体の使用、該血管新生性疾患の治療または予防のための本発明の抗体の使用、をも提供する。本発明の抗体を含む治療用または予防用キットも本発明に含まれる。
6.診断用組成物
本発明の抗ROBO4抗体もしくはその機能断片またはその修飾体を含む検査用または診断用組成物(以下、まとめて「診断用組成物」という)を提供する。
本発明の診断用組成物は、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織および他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、及び肥満等の血管新生性疾患の検査または診断に有用である。従来の診断基準を満たさない早期の血管新生または前血管新生症状、血管新生へと進展する診断未確定症状等の検査または診断にも有用である。本発明において検査または診断には、例えば、罹患リスクの判定又は測定、罹患の有無の判定、進行や増悪化の程度の測定、抗ROBO4抗体等の医薬組成物による薬物治療の効果の測定又は判定、薬物治療以外の治療の効果の測定又は判定、再発リスクの測定、再発の有無の判定等が含まれるが、検査または診断であればそれらに限定されるものではない。
健常人サンプルと比較して被験者サンプルにおいて2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20倍またはそれ以上、好適には10倍またはそれ以上のROBO4蛋白質量が検出された場合、該被験者を血管新生性疾患に罹患しているか又は罹患するリスクが高いと診断することができる。また、ROBO4蛋白質の血中濃度が特定の基準値を超えた場合には、当該被験者は血管新生性疾患に罹患していると診断するか、あるいは当該被験者は血管新生性疾患に罹患するリスクが高いと診断することができる。かかる基準値は、通常0.01乃至10ng/ml、好適には0.1乃至1ng/ml、より好適には0.1乃至0.3ng/mlである。
かかる診断用組成物には、pH緩衝剤、浸透圧調節剤、塩類、安定化剤、防腐剤、顕色剤、増感剤、凝集防止剤等を含有せしめることができる。
本発明は滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織および他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、及び肥満等の血管新生性疾患検査方法または診断方法、該血管新生性疾患の診断用組成物を調製するための本発明の抗体の使用、該血管新生性疾患の検査または診断のための本発明の抗体の使用、をも提供する。本発明の抗体を含む検査または診断用キットも本発明に含まれる。
本発明の抗体を含む検査または診断の方法としてはサンドウィッチELISAが望ましいが、通常のELISA法やRIA法、ELISPOT(Enzyme−Linked ImmunoSpot)法、ドットブロット法、オクタロニー法、CIE(Counterimmunoelectrophoresis)法などの抗体を利用した検出方法が利用可能である。サンドウィッチELISA測定系に供する抗体としてはROBO4を認識する抗体のうち、競合しない2種類の抗体の組み合わせであれば、いかなる抗体を用いても実施可能である。抗体の標識法としてはビオチンのほか、HRP、アルカリフォスファターゼ、FITCなど生化学的解析に実施可能な標識法が利用できる。酵素標識を利用した検出にはTMB(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)、BCIP(5−bromo−4−chloro−3−indolyl phosphate)、ρ−NPP(ρ−nitrophenyl phosphate)、OPD(o−Phenylenediamine)、ABTS(3−Ethylbenzothiazoline−6−sulfonic acid)、SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)などの発色基質やQuantaBluTM Fluorogenic Peroxidase Substrate(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)蛍光基質のほか、化学発光基質を用いることができる。本測定には、ヒト又は非ヒト動物由来の試料に加え、組換え蛋白質等の人工的な処理を加えた試料をも供することができる。生物個体由来の被検試料としては、例えば、血液、関節液、腹水、リンパ液、脳脊髄液、組織ホモジネート上清等をあげることができるが、それらに限定されるものではない。
本発明の抗体を含む検査または診断用のサンドウィッチELISAキットには、ROBO4蛋白質標準液、発色試薬、希釈用緩衝液、固相用抗体、検出用抗体、ならびに洗浄液等が含まれてよい。抗原に結合した抗体量を測定する方法としては、吸光法、蛍光法、発光法、RI(Radioisotope)法等が好適に適用され、測定には、吸光プレートリーダー、蛍光プレートリーダー、発光プレートリーダー、RI液体シンチレーションカウンター等が好適に使用される。
以下、実施例において本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、下記実施例において遺伝子操作に関する各操作は特に明示がない限り、「モレキュラークローニング(Molecular Cloning)」(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.およびManiatis,T.著,Cold SpringHarbor Laboratory Pressより1989年発刊)に記載の方法及びその他の当業者が使用する実験書に記載の方法により行うか、または、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って行った。
(実施例1) 発現ベクター作製
1)−1 ヒトROBO4発現ベクターの作製
1)−1−1 全長ヒトROBO4発現ベクターの作製
ヒトROBO4 cDNA(アクセッションNo.BC039602)を含むプラスミド(Open Biosystems社製)からEcoR V及びNot IでヒトROBO4 cDNAを切り出し、これをpCIベクター(Promega社製)のEcoR V/Not I間に組込むことで、全長ヒトROBO4発現ベクター(以下、「pCI−hROBO4」と記す) を作製した。また本ベクターにクローニングされたヒトROBO4遺伝子の配列は配列表の配列番号1に示されている。また、ヒトROBO4のアミノ酸配列は配列表の配列番号2に示されている。
1)−1−2 ヒトROBO4細胞外領域発現ベクターの作製
ヒトROBO4細胞外領域ポリペプチド(配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至461に示されるアミノ酸配列からなる。以下「ヒトROBO4−ECD」と略す)をコードするcDNAをプライマーセット:
プライマー1F:5’−aaaggtaccaccatgggctctggaggagacagcctcctg−3’及び、
プライマー1R:5’−aaagatatcctgctccagggtccagggaccatgctcact−3’
を用いてPCR反応で増幅した。得られたPCR産物をpEF6/V5−His−TOPOベクター(Life Technologies社製)にクローニングした(以下「pEF6−ROBO4−ECD」と略す。また、以下で「pEF6−ROBO4−ECD」によって発現する組換え蛋白質を「rROBO4−ECD」と記す)。
1)−1−3 N末端FLAG−tag付加型全長ヒトROBO4及びヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体発現ベクターの作製
ヒトROBO4の配列表の配列番号2のアミノ酸番号28乃至1007に示されるアミノ酸配列からなる領域(図中で、「hROBO4−28」と記す。)、アミノ酸番号46乃至1007に示されるアミノ酸配列からなる領域(図中で、「hROBO4−46」と記す。)、アミノ酸番号132乃至1007に示されるアミノ酸配列からなる領域(図中で、「hROBO4−132」と記す。)、アミノ酸番号210乃至1007に示されるアミノ酸配列からなる領域(図中で、「hROBO4−210」と記す。)、アミノ酸番号225乃至1007に示されるアミノ酸配列からなる領域(図中で、「hROBO4−225」と記す。)、アミノ酸番号341乃至1007に示されるアミノ酸配列からなる領域(図中で、「hROBO4−341」と記す。)のN末端にFLAG−tagが付加される蛋白質が発現するベクターを構築するため、
hROBO4−28増幅用プライマーセット:
プライマー2F:5’−ggtaccgccatgggctctggaggagacagcctcctcggcggcagaggttccctgcctctgctgctcctgctcatcatgggaggcatggctgattacaaggatgacgacgataagcaggactccccgccccagatcctagtccac−3’及び、
プライマー2R:5’−gctagcggagtaatctacaggagaagcaccagccttg−3’、
hROBO4−46増幅用プライマーセット:
プライマー3F:5’−ggtaccgccatgggctctggaggagacagcctcctcggcggcagaggttccctgcctctgctgctcctgctcatcatgggaggcatggctgattacaaggatgacgacgataagcctggccctgccaggatgagctgccaag−3’及び、プライマー2R、
hROBO4−132増幅用プライマーセット:
プライマー4F:5’−ggtaccgccatgggctctggaggagacagcctcctcggcggcagaggttccctgcctctgctgctcctgctcatcatgggaggcatggctgattacaaggatgacgacgataaggtggctgtcctccgggaggatttccagatc−3’及び、プライマー2R、
hROBO4−210増幅用プライマーセット:
プライマー5F:5’−ggtaccgccatgggctctggaggagacagcctcctcggcggcagaggttccctgcctctgctgctcctgctcatcatgggaggcatggctgattacaaggatgacgacgataagaccaacagcgcaggacatagggagagcc−3’及び、プライマー2R、
hROBO4−225増幅用プライマーセット:
プライマー6F:5’− ggtaccgccatgggctctggaggagacagcctcctcggcggcagaggttccctgcctctgctgctcctgctcatcatgggaggcatggctgattacaaggatgacgacgataagatccaggagccccaggactacacggagcc−3’及び、プライマー2R、
hROBO4−341増幅用プライマーセット:
プライマー7F:5’−ggtaccgccatgggctctggaggagacagcctcctcggcggcagaggttccctgcctctgctgctcctgctcatcatgggaggcatggctgattacaaggatgacgacgataagaggctgccggaaaaagtgcccagtgcccca−3’及び、プライマー2R、
のそれぞれのプライマーセットを用いてpCI−hROBO4を鋳型にしてPCR反応を行った。得られたPCR産物をpCR4Blunt−TOPOベクター(Life Technologies社製)に組込み、クローニングベクターを作製した。各クローニングベクターからKpn I及び、Nhe Iで各cDNAを切り出し、これをpCIベクターの Kpn I/Nhe I間に組込むことで、N末端FLAG−tag付加型全長ヒトROBO4及び4つのヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体発現ベクターを作製した。N末端FLAG−tag付加型全長ヒトROBO4ベクターは、N末端側からROBO4のシグナル配列(配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至27のアミノ酸)+FLAG配列(DYKDDDDK)+ROBO4(配列表の配列番号2のアミノ酸番号28乃至1007のアミノ酸)をコードするヌクレオチドからなる。以下、N末端FLAG−tag付加型全長ヒトROBO4を発現するベクターを「pCI−FLAG−hROBO4−28」という。また、ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体発現ベクター、例えば配列表の配列番号2のアミノ酸番号46乃至1007からなるROBO4を発現するベクターは、ROBO4のシグナル配列(配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至27のアミノ酸)+FLAG配列(DYKDDDDK)+細胞外領域欠損ROBO4(配列表の配列番号2のアミノ酸番号46乃至1007のアミノ酸)をコードするヌクレオチドからなる。該ベクターを「pCI−hROBO4−46」という。同様に、ROBO4の細胞外領域が一部欠損したROBO4をコードするベクターをそれぞれ、「pCI−hROBO4−132」、「pCI−hROBO4−210」、「pCI−hROBO4−225」、「pCI−hROBO4−341」という。
各ベクターにクローニングされたFLAG−tag付加型全長ヒトROBO4及びヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は配列表の配列番号3、5、7、9、11、13に示されている。また、対応するFLAG−tag付加型全長ヒトROBO4及びヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列は、それぞれ配列表の配列番号4、6、8、10、12、14に示されている。
1)−1−4 ヒトROBO4細胞内領域欠損体発現ベクターの作製
ヒトROBO4の配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至511に示されるアミノ酸配列からなる領域(以下、「hROBO4−ΔC」と記す。)の蛋白質が発現するベクターを構築するため、
hROBO4−ΔC用プライマーセット:
プライマー8F:5’−cagatataccagtgaggatgcctgaatcctaaaacacaggatggatc−3’及び、
プライマー8R:5’−gatccatcctgtgttttaggattcaggcatcctcactggtatatctg−3’、
を用いてpCI−hROBO4を鋳型にしてQuikChange XL Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies社製)でヒトROBO4の511番目のアミノ酸をコードするコドンの後ろにストップコドンを挿入することで、hROBO4−ΔC発現ベクターを作製した(以下、「pCI−hROBO4−ΔC」と記す。)。
1)−2 マウスROBO4発現ベクターの作製
Mouse Heart QUICK−Clone cDNA(タカラバイオ社製)を鋳型にプライマーセット:
プライマー9F:5’−ggtaccgccatgggacaaggagaggagccgagagcagccatg−3’及び、
プライマー9R:5’−gcggccgcggaggaatcaccagccttgggcacagcaccag−3’
を用いてPCR反応を行い、得られたPCR産物をpCR−BluntII−TOPOベクター(Life Technologies社製)に組込むことで、マウスROBO4 cDNAを含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターから Kpn I及び Not I でマウスROBO4 cDNA を切り出し、これをpCI ベクターの Kpn I/Not I間に組込むことで、マウスROBO4発現ベクターを作製した(以下、「pCI−mROBO4」と記す)。また本ベクターにクローニングされたマウスROBO4遺伝子のORF部分の配列は配列表の配列番号15のヌクレオチド番号7乃至3051に示されている。また、マウスROBO4のアミノ酸配列は配列表の配列番号16に示されている。
1)−3 ラットROBO4発現ベクターの作製
Rat Spleen QUICK−Clone cDNA (タカラバイオ社製)を鋳型に、プライマーセット:
プライマー10F:5’−ggtaccgccatgggacaaggagaggagctgagagcagcc−3’及び、
プライマー10R:5’−gcggccgcggaggaatcaccagccttgggcacaacacc−3’
を用いPCR反応を行い、得られたPCR産物をpCR4Blunt−TOPOベクターに組込むことで、ラットROBO4 cDNAを含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターからKpn I及びNot IでラットROBO4 cDNAを切り出し、これをpCIベクターのKpn I/Not I間に組込むことで、ラットROBO4発現ベクターを作製した(以下、「pCI−raROBO4」と記す)。ラットROBO4のcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号17に、アミノ酸配列を配列表の配列番号18に示した。
1)−4 N末端FLAG−tag付加型カニクイザルROBO4発現ベクターの作製
カニクイザル腎total RNAより合成したcDNAを鋳型にプライマーセット:
プライマー11F:5’−ggtaccgccatgggctctggaggagaaagcctccggg−3’及び、
プライマー11R:5’−ggagtaatctacaggagaagcaccagccttg−3’
を用いPCR反応を行った。得られたPCR産物をpCR4Blunt―TOPOベクターに組込むことで、2種類のカニクイザルROBO4 cDNA(以下、cynoROBO4−1、cynoROBO4−2と記す)を含むクローニングベクターを作製した(以下、pCR−cynoROBO4−1、pCR−cynoROBO4−2と記す)。
次に、pCR−cynoROBO4−1、pCR−cynoROBO4−2を鋳型にプライマーセット:
プライマー12F:5’−ggatccgccatgggctctggaggagaaagcctccg−3’及び、
プライマー12R:5’−gcggccgctcaggagtaatctacaggagaagcaccagccttg−3’
を用いてPCR反応を行った。得られたPCR産物をpCR4Blunt―TOPOベクターに組込むことで、それぞれのカニクイザルROBO4 cDNAを含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターからBamH I及びNot IでカニクイザルROBO4 cDNAを切り出し、これをpCIベクターのBamH I/Not I間に組込むことで、2種類のカニクイザルROBO4発現ベクターを作製した(以下、pCI−cynoROBO4−1、pCI−cynoROBO4−2と記す)。
次に、pCI−cynoROBO4−1、pCI−cynoROBO4−2を鋳型にしてプライマーセット:
プライマー13F:5’−ggtaccgccatgggctctggaggagaaagcctccgaggctcccgggcttcccggcctctgctgctcctgctcatcatgggaggcatggctgattacaaggatgacgacgataagcaggactccccgccccagatcctagtccac−3’及び、
プライマー12R
を用いてPCR反応を行った。得られたPCR産物をpCR−TOPOベクター(Life Technologies社製)に組込むことで、N末端FLAG−tag付加型カニクイザルROBO4 cDNAを含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターからKpn I及びNot IでカニクイザルROBO4 cDNAを切り出し、これをpCIベクターのKpn I/Not I間に組込むことで、N末端FLAG−tag付加型カニクイザルROBO4発現ベクターを作製した(以下、「pCI−FLAG−cynoROBO4−1」、「pCI−FLAG−cynoROBO4−2」と記す)。また、pCI−FLAG−cynoROBO4−1とpCI−FLAG−cynoROBO4−2にクローニングされたカニクイザルROBO4のcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号19と21に、各ヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列表の配列番号20と22に示した。
1)−5 N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO1発現ベクターの作製
Human Heart QUICK−Clone cDNA(タカラバイオ社製)を鋳型に、プライマーセット:
プライマー13F:5’−ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcaccatgattgcggagcccgctcacttttacctg−3’及び、
プライマー13R:5’−ggggaccactttgtacaagaaagctgggtcgctttcagtttcctctaattcttc−3’
を用いPCR反応を行い、得られたPCR産物とpDONR221ベクター(Life Technologies社製)とでBP反応を行うことで、ヒトROBO1 cDNAを含むドナーベクターを作製した。
次に、ドナーベクターを鋳型に、プライマーセット:
プライマー14F:5’−gcggccgcatgattgcggagcccgctcacttttacctgtttggattaatatgtctctgttcaggctcccgtcttgattacaaggatgacgacgataagcgtcaggaagattttccacctcgcattgttg−3’及び、
プライマー14R:5’−gctagctcagctttcagtttcctctaattcttc−3’
を用いPCR反応を行い、得られたPCR産物をpCR4Blunt−TOPOベクターに組込むことで、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO1 cDNAを含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターからNhe I及びNot IでN末端FLAG−tag付加型ヒトROBO1 cDNAを切り出し、これをpCIベクターのNhe I/Not I間に組込むことで、発現ベクターを作製した(以下、「pCI−FLAG−hROBO1」と記す)。N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO1のcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号23に、アミノ酸配列を配列表の配列番号24に示した。
1)−6 ヒトROBO2発現ベクターの作製
Human Lung QUICK−Clone cDNA(タカラバイオ社製)を鋳型に、プライマーセット:
プライマー15F:5’−gcggccgcatgagtctgctgatgtttacacaactactg−3’及び、
プライマー15R:5’−gctagcctataattcacctgtaaactgtccttgactgttg−3’
を用いPCR反応を行い、得られたPCR産物をpCR4Blunt―TOPOベクターに組込むことで、ヒトROBO2 cDNAを含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターからNot I及びNhe IでヒトROBO2 cDNAを切り出し、これをpCIベクターのNot I/Nhe I間に組込むことで、発現ベクターを作製した(以下、「pCI−hROBO2」と記す)。ヒトROBO2のcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号25に、アミノ酸配列を配列表の配列番号26に示した。
1)−7 ヒトROBO3発現ベクターの作製
ヒトROBO3/pENTR223.1(Open Biosystems社製)を鋳型に、プライマーセット:
プライマー16F:5’−gcggccgcatgctgcgctacctgctgaaaacgctgctg−3’及び、
プライマー16R:5’−gctagctcatcttggttcctctcggcgtttctgtcc−3’
を用いPCR反応を行い、得られたPCR産物をpCR4Blunt―TOPOベクターに組込むことで、ヒトROBO3 cDNA を含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターからNot I及びNhe IでヒトROBO3 cDNAを切り出し、これをpCIベクターのNot I/Nhe I間に組込むことで、発現ベクターを作製した(以下、「pCI−hROBO3」と記す)。また本ベクターにクローニングされたヒトROBO3遺伝子のORF部分の配列は配列表の配列番号27のヌクレオチド番号35乃至4192に示されている。また、ヒトROBO3のアミノ酸配列は配列表の配列番号28に示されている。
(実施例2) モノクローナル抗体作製
2)−1 抗原蛋白質の調製
rROBO4−ECDを発現させるため、FreeStyle 293−F細胞(Life Technologies社製)にpEF6−ROBO4−ECDを293fectin(Life Technologies社製)を用いてトランスフェクションし、37℃、8% COで6日間培養した。培養後、遠心分離により培養液を回収し、rROBO4−ECDの精製原料とした。得られた培養上清を分子量分画15000の透析チューブを用いて20mM Tris−HCl pH7.5に対して透析し、フィルター濾過(0.45μm)した後、20mM Tris−HCl pH7.5で平衡化されたHiTrap 16/10 Q XL(GE Healthcare Bio−Sciences社製)に添加した。溶出はNaClの段階的溶出(20mM Tris−HCl pH7.5/0.2M NaCl、20mM Tris−HCl pH7.5/1M NaCl)で行った。溶出画分の一部をSDS―ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下「SDS−PAGE」と略す。)で分離後、ゲルをクマシーブリリアントブルー染色(以下「CBB染色」と略す)及び、ウェスタンブロット法で検出し、rROBO4−ECDの含まれる画分を確認した。次にrROBO4−ECDを含む画分を集め、PBSで平衡化されたHiLoad 16/60 Superdex 75pg(GE Healthcare Bio−Sciences社製)に添加した。PBSで溶出し、溶出分画の一部をSDS−PAGEにより分離後、ゲルをCBB染色及び、ウェスタンブロット法で検出し、rROBO4−ECDの含まれる画分を確認した。rROBO4−ECDを含む画分を集め、免疫用抗原、結合親和性測定時の抗原として使用した。蛋白質濃度はBCA Protein Assay Reagent(PIERCE社製)を用いて測定した。
2)−2 免疫
6週齢のBALB/cマウスの雌を使用した。0日目に50μgのrROBO4−ECDとFreund‘s Complete Adjuvantを混合したものをマウスの皮下あるいは皮内に投与した。7日目、14日目と21日目に50μgのrROBO4−ECDとFreund‘s Incomplete Adjuvantを混合したものをマウスの皮下あるいは皮内に投与した。38日目に50μgのrROBO4−ECDをマウスの腹腔内に投与し、42日目にマウスのリンパ節あるいは脾臓を採取しハイブリドーマ作製に用いた。
2)−3 ハイブリドーマ作製
リンパ節細胞あるいは脾臓細胞とマウスミエローマSP2/0−ag14細胞とをHybrimune Hybridoma Production System(Cyto Pulse Sciences社製)を用いて電気細胞融合し、ClonaCell−HY Selection Medium D(StemCell Technologies社製)に希釈して培養した。出現したハイブリドーマコロニーを回収することでモノクローンハイブリドーマを作製した。回収された各ハイブリドーマコロニーを培養し、得られたハイブリドーマ培養上清用いて抗ROBO4抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングを行った。
2)−4 抗体スクリーニング
2)−4−1 Cell−ELISA用抗原遺伝子発現細胞の調製
HEK293細胞を10%FBS含有DMEM培地中7.5×10細胞/mLになるよう調製した。それに対し、Lipofectamine 2000(Life Technologies社製)を用いて、pCI−hROBO4もしくはネガティブコントロールとしてpCI−mockを導入し、96−wellハーフエリアplate(Corning社製)に50μLずつ分注し、10%FBS含有DMEM培地中で37℃、5%COの条件下で一晩培養した。得られた導入細胞を接着状態のまま、Cell−ELISAに使用した。
2)−4−2 フローサイトメトリー解析用抗原遺伝子発現細胞の調製
HEK293T細胞を1.125×10細胞/フラスコになるよう225cmフラスコ(住友ベークライト社製)に播種し、10%FBS含有DMEM培地中で37℃、5%COの条件下で一晩培養した。翌日、pCI−ROBO4もしくはネガティブコントロールとしてpCI−mockをそれぞれHEK293T細胞にLipofectamine 2000を用いて導入し、37℃、5%COの条件下でさらに一晩培養した。翌日、発現ベクター導入HEK293T細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、10%FBS含有DMEMで細胞を洗浄した後、5%FBS含有PBSに懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
2)−5 Cell−ELISA
2)−4−1で調製した発現ベクター導入HEK293細胞の上清を除去後、pCI−hROBO4とpCI−mock導入HEK293細胞のそれぞれに対しハイブリドーマ培養上清を添加し、4℃で1時間静置した。ウェル中の細胞を5% FBS含有PBSで1回洗浄後、5% FBS含有PBSで500倍に希釈したAnti−Mouse IgG−Peroxidase antibody produced in goat(SIGMA−ARDRICH社製)を加えて、4℃で1時間静置した。ウェル中の細胞を5% FBS含有PBSで5回洗浄した後、OPD発色液(OPD溶解液(0.05 M クエン酸3ナトリウム、0.1M リン酸水素2ナトリウム・12水 pH4.5)にo−フェニレンジアミン二塩酸塩(和光純薬社製)、Hをそれぞれ0.4mg/mL、0.6%(v/v)になるように溶解)を25μL/ウェルで添加した。時々攪拌しながら発色反応を行い、1M HClを25μL/ウェルを添加して発色反応を停止させた後、プレートリーダー(ENVISION:PerkinElmer社製)で490nmの吸光度を測定した。細胞膜表面上に発現するROBO4に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択するため、ネガティブコントロールのpCI−mock導入HEK293細胞と比較し、pCI−hROBO4導入HEK293細胞の方でより高い吸光度を示す培養上清を産生するハイブリドーマを抗ROBO4抗体産生陽性として選択した。
2)−6 フローサイトメトリー解析
2)−5 Cell−ELISAで陽性と判定されたハイブリドーマが産生する抗体のROBO4に対する結合をフローサイトメトリー法によりさらに確認した。2)−4−2で調製したHEK293T細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、pCI−hROBO4導入細胞とpCI−mock導入細胞のそれぞれに対しハイブリドーマ培養上清を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで2回洗浄した後、5% FBS含有PBSで1000倍に希釈したAnti−Mouse IgG FITC conjugate(SIGMA−ARDRICH社製)あるいは5% FBS含有PBSで320倍に希釈したAnti−Rat IgG FITC conjugate(SIGMA−ARDRICH社製)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5% FBS含有PBSで3回洗浄した後、2μg/mL 7−aminoactinomycin D(Molecular Probes社製)を含む5% FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(FC500:BeckmanCoulter社製)で検出を行った。データ解析はFlowjo(TreeStar社製)で行った。7−aminoactinomycin D陽性の死細胞をゲートで除外した後、生細胞のFITC蛍光強度のヒストグラムを作成した。ネガティブコントロールであるpCI−mock導入293T細胞の蛍光強度ヒストグラムに対しpCI−ROBO4導入HEK293T細胞のヒストグラムが強蛍光強度側にシフトしているサンプルを産生するハイブリドーマを抗ROBO4抗体産生ハイブリドーマとして取得した。取得したハイブリドーマの産生する抗ROBO4抗体を各々MAb1、MAb2、MAb3、MAb4とした。
2)−7 モノクローナル抗体のアイソタイプ決定
モノクローナル抗体のアイソタイプは、Mouse monoclonal isotyping kitあるいはRat monoclonal isotyping kit(Serotec社製)により決定された。その結果、IgG1(MAb1、MAb2)、IgG2b(MAb3、MAb4)であった。
2)−8 モノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養上清(以下「抗体精製原料」という)から精製した。
抗体精製原料は以下のように調製した。8〜9×10個のハイブリドーマを1272cmフラスコ(Corning社製)に播種し、20% ウルトラ−LoW IgG ウシ胎児血清含有ハイブリドーマSFM培地(Life Technologies社製)中で37℃、5%COの条件下で4日間培養の後、上清を回収した。
抗体はHitrap Protein G HP、あるいはHitrap MabSelect SuRe(GE Healthcare Bio−Sciences社製)で精製された。Hitrap Protein G HPでは、抗体精製原料をカラムに添加し、結合バッファー(0.02M リン酸ナトリウム pH7.0)で洗浄後、0.1Mグリシン pH2.7で溶出した。一方、Hitrap MabSelect SuReでは、抗体精製原料をカラムに添加しPBSで洗浄後、2M Arginine−HCl pH4.0で溶出した。溶出された抗体溶液は中和後、PBSにバッファー置換された。Hitrap Protein G HPで精製した抗体の濃度は、BCA Protein Assay Reagentを用いて濃度を測定した。なお、検量線用の標準物質は、Mouse IgG2A(R&D systems社製)を用いた。また、Hitrap MabSelect SuReで精製した抗体の濃度は、POROS G 20μm Column PEEK,4.6mm×50mm,0.83mL(Applied Biosystems社製)に結合させた抗体を溶出し、溶出液の吸光度(O.D.280nm)を測定することにより求めた。具体的には、平衡化バッファー(30.6mM リン酸2水素ナトリウム・12水、19.5mM リン酸1カリウム、0.15M NaCl、pH7.0)で平衡化したPOROS G 20μmにPBSで希釈した抗体サンプルを添加し、平衡化バッファーでカラムを洗浄後、カラムに結合した抗体を溶離液(0.1%(v/v) HCl、0.15M NaCl)で溶出した。溶出液の吸光度(O.D.280nm)のピーク面積を測定し、次式で濃度を算出した。抗体サンプル濃度(mg/mL)=(抗体サンプルのピーク面積)/(標準品(ヒトIgG1)のピーク面積)×標準品の濃度(mg/mL)×サンプルの希釈倍率。
(実施例3) ROBO4の下流シグナル活性化の検出
3)−1 Interleukin−8(IL−8)のプロモーター領域を応答エレメントとしたレポーターベクターの作製
IL−8 プロモーター領域のDNAを鋳型に、プライマーセット:
プライマー17F:5’−ggtaccgataaggaacaaataggaag−3’及び、
プライマー17R:5’−gagctcagcttgtgtgctctgctgtc−3’
を用いPCR反応を行い、得られたPCR産物をpCR4Blunt―TOPOベクターに組込むことで、IL−8プロモーター領域(−253〜―59)のDNAを含むクローニングベクターを作製した。クローニングベクターからKpn I及びSac IでIL−8プロモーター領域(−253〜―59)のDNAを切り出し、これをpGL4.15ベクター(Promega社製)のKpn I/Sac I間に組込むことで、IL−8プロモーター領域を応答エレメントとしたレポーターベクターを作製した。IL−8プロモーター領域(−253〜−59)のDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号29に示した。
3)−2 Nuclear Factor―κB(NF−κB)、Interferon gamma activation sequence(GAS)、Interferon stimulated response element(ISRE)、Transfection grade T cell factor(TCF)を応答エレメントとしたレポーターベクター
NF−κB、GAS、ISRE、TCFを応答エレメントとしたレポーターベクターは、それぞれpGL4.32[luc2P/NF−κB−RE/Hygro] Vector(Promega社製)、pGAS−TA−Luc Vector(タカラバイオ社製)、pISRE−TA−Luc Vector(タカラバイオ社製)とTOPflash(Millipore社製)を用いた。また、ネガティブコントロールとして、応答配列を含まないpTA−Luc Vector(タカラバイオ社製)を用い、インターナルコントロールとして、pRL−TK Vector(タカラバイオ社製)を用いた。
3)−3 ヒトROBO4の一過性発現細胞で変動するシグナル解析
HEK293細胞を2×10細胞/ウェルになるよう96ウェルプレート(コラーゲンIコート、旭硝子社製)に播種し、10%FBS含有DMEM培地中で37℃、5%COの条件下で一晩培養した。翌日、pCI−ROBO4、pCI−ROBO4−ΔCもしくはネガティブコントロールのpCI−mockと3)−1や3)−2で示したレポーターベクターをそれぞれHEK293細胞にFuGene6 Transfection Reagentを用いて導入し、37℃、5%COの条件下でさらに一晩培養した。翌日、Dual―Glo Luciferase Assay System(プロメガ社製)を用いてプレートリーダー(Mithras:Berthold Technologies社製)で各ウェルのホタルルシフェラーゼ活性とウミシイタケルシフェラーゼ活性を発光強度として測定し、次式で各ウェルのレポーター活性を算出した。レポーター活性=ホタルルシフェラーゼ活性由来の発光強度/ウミシイタケルシフェラーゼ活性由来の発光強度。その結果、ネガティブコントロールのpCI−mock導入細胞と比較して、pCI−hROBO4導入細胞でIL−8プロモーター活性のみが上昇した(図1)。また、pCI−hROBO4導入細胞で検出されたIL−8プロモーター活性の上昇は、hROBO4の細胞内領域を欠損させた変異体を導入した細胞、pCI−hROBO4−ΔC導入細胞では大幅に減弱したことから、pCI−hROBO4導入細胞で検出されるIL−8プロモーター活性の上昇に、ROBO4の細胞内領域が必要なことが示された(図2)。よって、pCI−hROBO4導入細胞におけるIL−8のプロモーター活性の上昇は、ROBO4の下流シグナルの活性化を検出していることが示された。
(実施例4) MAb1の性質
4)−1 MAb1のROBO4の下流シグナル活性化
3)−3で調製したpCI−hROBO4導入細胞もしくはpCI−mock導入細胞を一晩培養し、翌日、抗ROBO4抗体(MAb1、MAb2、MAb3、MAb4)もしくはネガティブコントロールとしてMouse IgG1(R&D systems社製)を、0、0.3125、1.25、5、20μg/mLもしくは0、0.25、1、4、16μg/mLになるように添加し、37℃、5%COの条件下で5時間培養した。その後、Dual―Glo Luciferase Assay System(プロメガ社製)を用いてプレートリーダー(Mithras)で各ウェルのホタルルシフェラーゼ活性とウミシイタケルシフェラーゼ活性を発光強度として測定し、次式で各ウェルのレポーター活性を算出した。レポーター活性=ホタルルシフェラーゼ活性由来の発光強度/ウミシイタケルシフェラーゼ活性由来の発光強度。その結果、ネガティブコントロールのmouse IgGはヒトROBO4一過性発現細胞でのIL−8プロモーター活性に影響しなかったが、MAb1はIL−8プロモーター活性を上昇させた(図3)。また、MAb2もMAb1と同様、IL−8プロモーター活性を上昇させたが、MAb3やMAb4はIL−8プロモーター活性を上昇させなかった(図4)。なお、pCI−mock細胞において、MAb1やMAb2はIL−8プロモーター活性を上昇させなかった。これらの結果から、MAb1は、ROBO4の下流シグナルを活性化すること、さらに、全てのROBO4抗体がROBO4の下流シグナルを活性化することはないことが明らかとなった。
ROBO4下流シグナルの活性上昇が認められなかったMAb3及びMAb4について、クロスリンク抗体(AffiPure Goat Anti−Mouse IgG Fc Fragment Specific、Cat NO.115−005−071、Jackson ImmunoResearch)共存下(1分子のMAb3又はMAb4に対し、2分子のクロスリンク抗体を添加)で、プロモーター活性を評価したところ、いずれの抗体においてもプロモーター活性の上昇が認められた。
4)−2 HUVEC遊走試験
HUVEC(KURABO社製)を0.1%BSA含有HuMedia−EB2(KURABO社製)で一晩37℃、5%CO条件下で培養したあと、0.1%BSA含有HuMedia−EB2で4×10個/mLとなるよう調製した。メンブレンをゼラチンコートしたBD Falconフルオロブロック24マルチウェルインサートシステム(Pore size:8μm)のチャンバー上層に、4×10個/mLの細胞懸濁液を0.25mL添加したあと、チャンバー下層に10ng/mLのヒトVEGF165(PeproTech社製)あるいはヒトbFGF(BD Healthcare Biosciences社製)と2μg/mLのMouse IgG2Aあるいは抗ROBO4抗体(MAb1、MAb2、MAb3、MAb4)を含む0.1%BSA含有HuMedia−EB2を添加した。37℃、5%CO条件下、2〜3時間インキュベーションし、下層へ遊走したHUVECを4μg/mL Calcein−AM(Life Technologies社製)含有HuMedia−EB2で15分間染色した。その後、各ウェルの蛍光強度(励起波長/蛍光波長:485nm/538nm)をプレートリーダー(FlexStation:Molecular Devices)で測定し、次式で各ウェルの遊走細胞を算出した。遊走細胞=HUVEC添加ウェルの蛍光強度−HUVEC非添加ウェルの蛍光強度。その結果、MAb1はVEGFあるいはbFGFで誘導されるHUVECの遊走を抑制した(図5)。また、MAb2もMAb1と同様、bFGFで誘導されるHUVECの遊走を抑制したが、MAb3やMAb4は細胞遊走を抑制しなかった(図6)。これらの結果から、抗ROBO4抗体のIL−8プロモーター活性の上昇とHUVECの遊走抑制活性は相関することが示された。
4)−3 種交差性
4)−3−1 抗原遺伝子発現細胞の調製
HEK293細胞を1.5×10細胞/dishになるよう60mm dish(Corning社製)に播種し、10%FBS含有DMEM培地中で37℃、5%COの条件下で一晩培養した。翌日、pCI−hROBO4、pCI−mROBO4、pCI−raROBO4、pCI−FLAG−cynoROBO4−1、pCI−FLAG−cynoROBO4−2、pCI−hROBO1、pCI−hROBO2もしくはpCI−hROBO3をそれぞれHEK293細胞にFuGENE6 Transfection Reagentを用いて導入し、37℃、5%COの条件下でさらに一晩培養した。翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、5%FBS含有PBSで細胞を洗浄した後、5%FBS含有PBSに懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
4)−3−2 フローサイトメトリー解析
4)−3−1で調製した細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、2×10細胞の発現ベクター導入細胞に対し、MAb1、ネガティブコントロールとして、Mouse IgG2Aをそれぞれ10μg/mLになるように添加して懸濁し、4℃で1時間静置した。5%FBS含有PBSで1回洗浄した後、5% FBS含有PBSで1000倍に希釈したAnti−Mouse IgG FITC conjugateを加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5%FBS含有PBSで3回洗浄した後、5%FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACSCalibur)で検出を行った。データ解析はFlowjoで行った。FITC蛍光強度のヒストグラムを作成し、ネガティブコントロールであるMouse IgG2Aの蛍光強度ヒストグラムに対し、MAb1のヒストグラムが強蛍光強度側にシフトしている場合を、結合すると判断した。その結果、種交差性の検討では、MAb1は、マウスROBO4とラットROBO4に結合しなかったが、ヒトROBO4とカニクイザルROBO4に結合することが明らかとなった(図7)。
4)−4 結合特異性
4)−4−1 抗原遺伝子発現細胞の調製
HEK293細胞を1.2×10細胞/dishもしくは1.5×10細胞/dishになるよう60mm dish(Corning社製)に播種し、10%FBS含有DMEM培地中で37℃、5%COの条件下で一晩培養した。翌日、pCI−hROBO4、pCI−FLAG−hROBO1、pCI−hROBO2もしくはpCI−hROBO3をそれぞれHEK293細胞にFuGENE6 Transfection Reagentを用いて導入し、37℃、5%COの条件下でさらに一晩培養した。翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、5%FBS含有PBSで細胞を洗浄した後、5%FBS含有PBSに懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
4)−4−2 フローサイトメトリー解析
4)−4−1で調製した細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、2×10細胞の発現ベクター導入細胞に対し、MAb1、ポジティブコントロールとしてHuman ROBO4 Antibody(R&D systems社製)、Monoclonal ANTI−FLAG M2 antibody produced in mouse(SIGMA−ALDRICH社製)、Human ROBO2 Antibody(R&D systems社製)もしくはMonoclonal Anti−human ROBO3 Antibody(R&D systems社製)、ネガティブコントロールとして、Mouse IgG1もしくはMouse IgG2Aをそれぞれ10μg/mLになるように添加して懸濁し、4℃で1時間静置した。5%FBS含有PBSで1回洗浄した後、5% FBS含有PBSで1000倍に希釈したAnti−Mouse IgG FITC conjugateを加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5%FBS含有PBSで3回洗浄した後、5%FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACSCalibur)で検出を行った。データ解析はFlowjoで行った。FITC蛍光強度のヒストグラムを作成し、ネガティブコントロールであるMouse IgG1もしくはMouse IgG2Aの蛍光強度ヒストグラムに対し、MAb1のヒストグラムが強蛍光強度側にシフトしている場合を、結合すると判断した。その結果、MAb1は、hROBO1、hROBO2あるいはhROBO3には結合せず、hROBO4に特異的に結合することが明らかとなった(図8)。なお、hROBO4、hROBO1、hROBO2、hROBO3が細胞膜上に発現していることはポジティブコントロールの抗体を用いて確認された(図8)。
4)−5 エピトープ決定
4)−5−1 抗原遺伝子発現細胞の調製 HEK293細胞を1.5×10細胞/dishになるよう60mm dish(Corning社製)に播種し、10%FBS含有DMEM培地中で37℃、5%COの条件下で一晩培養した。翌日、pCI−FLAG−hROBO4−28、pCI−FLAG−hROBO4−46、pCI−FLAG−hROBO4−132、pCI−FLAG−hROBO4−210、pCI−FLAG−hROBO4−225、pCI−FLAG−hROBO4−341をそれぞれHEK293細胞にFuGENE6 Transfection Reagentを用いて導入し、37℃、5%COの条件下でさらに一晩培養した。翌日、発現ベクター導入細胞をTrypLE Express(Life Technologies社製)で処理し、5%FBS含有PBSで細胞を洗浄した後、5%FBS含有PBSに懸濁した。得られた細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析に使用した。
4)−5−2 フローサイトメトリー解析
4)−5−1で調製した細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、2×10細胞の発現ベクター導入細胞に対し、MAb1、ポジティブコントロールとしてMonoclonal ANTI−FLAG M2 antibody produced in mouse、ネガティブコントロールとして、Mouse IgG2Aをそれぞれ10μg/mLになるように添加して懸濁し、4℃で1時間静置した。5%FBS含有PBSで1回洗浄した後、5% FBS含有PBSで1000倍に希釈したAnti−Mouse IgG FITC conjugateを加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5%FBS含有PBSで3回洗浄した後、5%FBS含有PBSに再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACSCalibur:BD Biosciences社製)で検出を行った。データ解析はFlowjoで行った。FITC蛍光強度のヒストグラムを作成し、ネガティブコントロールであるMouse IgG2Aの蛍光強度ヒストグラムに対し、MAb1のヒストグラムが強蛍光強度側にシフトしている場合を、結合すると判断した。その結果、MAb1は、pCI−FLAG−hROBO4−28、pCI−FLAG−hROBO4−46もしくはpCI−FLAG−hROBO4−132導入細胞には結合し、pCI−FLAG−hROBO4−210、pCI−FLAG−hROBO4−225もしくはpCI−FLAG−hROBO4−341導入細胞には結合しなかった。したがって、MAb1は、配列表の配列番号2に示される、ヒトROBO4の132乃至209番目のアミノ酸配列を認識することが示された(図9)。なお、各細胞内領域ドメイン欠損体が細胞膜上に発現していることはポジティブコントロールの抗FLAG抗体を用いて確認された(図9)。
4)−6 サルレーザー誘導脈絡膜血管新生モデルでの薬効評価
4)−6−1 麻酔
カニクイザルに0.04mg/kgの投与量で塩酸メデトミジン(日本全薬工業社製)を筋注し、その15分後に15mg/kgの投与量で塩酸ケタミン(第一三共社製)を筋注した。
4)−6−2 モデル作製
4)−6−1で麻酔したカニクイザルをモンキーチェアーに保定した。両眼に4%キシロカイン点眼液(アストラゼネカ社製)を点眼し、眼表面を麻酔・鎮痛処置した。5mg/mL トロピカミド・5mg/mL フェニレフリン塩酸塩混合点眼液(参天製薬社製)を点眼し散瞳させ、グリーンレーザー光凝固装置 OcuLight GLx(イリデリック社製)を用いて網膜黄斑部にレーザー照射(照射熱量:350−500mW,照射時間:0.1秒,スポットサイズ:50μm,スポット数:6あるいは9スポット)して熱損傷を加えた。
4)−6−3 被験物質投与
モデル作製後7日目に Vehicleあるいは13.2mg/mL MAb1 50μLを、33Gナノパスニードルを結膜より硝子体内に刺入し、PE20ポリエチレンチューブを介して100μLハミルトンシリンジを用いて2分間かけて注入した。各群4眼で実施した。投与終了後、0.5%レボフロキサシン水和物点眼液(参天製薬社製)を点眼した。
4)−6−4 薬効評価
モデル作製後7日目、14日目、21日目に、麻酔下、ハイブリット眼底カメラCX−1(キャノン社製)により眼底通常撮影した。その後、10%フルオレセインを0.1mL/Kgの投与量で静注した。フルオレセイン静注後、1分毎に最大6分後まで蛍光血管造影撮影を行った。画像データを保存し、画像解析装置(WinRoof、三谷商事社製)にてフルオレセイン滞留部の面積を算出した。新生血管量は次式で算出した。新生血管量=モデル作製後21日目のフルオレセイン滞留部の面積−モデル作製後7日目のフルオレセイン滞留部の面積。その結果、Vehicle投与群とMAb1投与群の新生血管量を比較した結果、MAb1投与群の4眼中1眼ではVehicle群の新生血管量と差異は認められなかったものの、3眼では新生血管量の減少が認められた。すなわち、MAb1の投与によって、レーザー誘導脈絡膜血管新生が抑制された(図10)。
(実施例5)MAb1のcDNAのクローニングと配列の決定
5)−1 MAb1の重鎖および軽鎖のN末端アミノ酸配列の決定
MAb1の重鎖および軽鎖のN末端アミノ酸配列を決定するために、実施例2)−8で精製したMAb1をSDS−PAGEで分離した。分離後のゲルからSequi−Blot PVDF膜(BIO−RAD社製)にゲル中のタンパク質を転写し、洗浄バッファー(25mM NaCl、10mM ホウ酸ナトリウムバッファー pH8.0)で洗浄した後、染色液(50% メタノール、20% 酢酸、0.05% クマシーブリリアントブルー)に5分間浸して染色してから、90% メタノールで脱色した。PVDF膜上で可視化された重鎖(移動度が小さい方のバンド)および軽鎖(移動度が大きい方のバンド)に相当するバンド部分を切りとった。Procise cLC プロテインシーケンサー Model 492cLC (Applied Biosystems社製)を用いて、自動エドマン法(Edman et al. (1967) Eur. J. Biochem. 1, 80参照)によりそれぞれのN末端アミノ酸配列の同定を試みた。その結果、MAb1の重鎖に相当するバンドのN末端のアミノ酸配列は、
EVQLVESGGGLVKPGGSLKL
であり、軽鎖に相当するバンドのN末端アミノ酸配列は、
DAVMTQTPLSLPVSL
であった。
5)−2 MAb1産生ハイブリドーマからのmRNAの調製
MAb1の重鎖及び軽鎖をコードするcDNAをクローニングするため、MAb1産生ハイブリドーマよりmRNA Isolation kit(Roche applied science社製)を用いてmRNAを調製した。
5)−3 MAb1のcDNAのクローニングと配列の決定
MAb1の重鎖及び軽鎖のアイソタイプがγ1とκであること(実施例2)−7)、5−1)で決定した重鎖および軽鎖のN末端アミノ酸配列、及びカバトらにより作成された抗体のアミノ酸配列データベース(Strausberg,R.L., et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99. 16899−16903、及びKabat, E. A., et al.(1991) in Sequences of Proteins of Immunological Interest Vol. I及びII, U.S. Department of Health and Human Services参照)を参考にして、抗体遺伝子翻訳領域の5’末端側と終止コドンを含む3’末端部分にそれぞれハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーをいくつか合成し、5)−2で調製したmRNAとTaKaRa One Step RNA PCR Kit(AMV)(タカラバイオ社製)を用いて重鎖、及び軽鎖をコードするcDNAを増幅したところ、下記のプライマーセットで抗体の重鎖、及び軽鎖をコードするcDNAを増幅することができた。
重鎖用プライマーセット
LYHF6:5’−cctcaccatgaactttgg−3’
G1EVR1:5’−aagatatcttatttaccaggagagtgggagag−3’
軽鎖用プライマーセット
MK19EIF1:5’−aagaattcatgaagttgcctgttagg−3’
KEVR1:5’−aagatatcttaacactcattcctgttgaagct−3’
PCRで増幅された重鎖、及び軽鎖のcDNAをそれぞれpEF6/V5−His TOPO TA Expression Kit(Invitrogen社製)を用いてクローニングし、クローニングされた重鎖、軽鎖の各可変領域のヌクレオチド配列を遺伝子配列解析装置(「ABI PRISM 3700 DNA Analyzer;Applied Biosystems社製」あるいは「Applied Biosystems 3730xl Analyzer;Applied Biosystems社製」)を用いて決定した。シーケンスの反応は、GeneAmp 9700(Applied Biosystems社製)を用いた。
決定されたMAb1の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号30に示し、アミノ酸配列を配列番号31に示した。マウス抗体MAb1の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列表の配列番号32に示し、アミノ酸配列を配列表の配列番号33に示した。
(実施例6)キメラMAb1(cMAb1)の作製
6)−1 発現ベクターpCMA−LK、pCMA−G1、及びpCMA−G2の作製
6)−1−1 キメラ及びヒト化軽鎖発現ベクターpCMA−LKの構築
プラスミドpcDNA3.3−TOPO/LacZ(Invitrogen社製)を制限酵素XbaI及びPmeIで消化して得られる約5.4kbのフラグメントと、配列番号34に示すヒトκ鎖分泌シグナル及びヒトκ鎖定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片をIn−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社製)を用いて結合して、pcDNA3.3/LKを作製した。
pcDNA3.3/LKを鋳型として、下記プライマーセットでPCRを行い、得られた約3.8kbのフラグメントをリン酸化後セルフライゲーションすることによりpcDNA3.3/LKからCMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイト、及びヒトκ鎖定常領域を持つ、キメラ及びヒト化軽鎖発現ベクターpCMA−LKを構築した。
プライマーセット
3.3−F1:5’−tataccgtcgacctctagctagagcttggc−3’
3.3−R1:5’−gctatggcagggcctgccgccccgacgttg−3’
6)−1−2 キメラ及びヒト化IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G1の構築
pCMA−LKをXbaI及びPmeIで消化してκ鎖分泌シグナル及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1定常領域のアミノ酸をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号35)をIn−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社製)を用いて結合して、CMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイト、ヒトIgG1重鎖定常領域をもつキメラ及びヒト化IgG1タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G1を構築した。
6)−1−3 キメラ及びヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G2の構築
pCMA−LKをXbaI及びPmeIで消化してκ鎖分泌シグナル及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG2定常領域のアミノ酸をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号36)をIn−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社製)を用いて結合して、CMVプロモーターの下流にシグナル配列、クローニングサイト、ヒトIgG2重鎖定常領域をもつキメラ及びヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクターpCMA−G2を構築した。
6)−2 MAb1キメラタイプ軽鎖発現ベクターの構築
MAb1の軽鎖の可変領域をコードするcDNAをテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社製)と下記のプライマーセットで軽鎖の可変領域をコードするcDNAを含む部分を増幅し、キメラ及びヒト化抗体軽鎖発現汎用ベクター pCMA−LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社製)を用いて挿入することにより、MAb1キメラタイプ軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−LK/MAb1L」と命名した。MAb1キメラタイプ軽鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号37に示し、アミノ酸配列を配列番号38に示した。配列表の配列番号37のヌクレオチド番号1乃至60はシグナル配列、61乃至402は可変領域、403乃至717は定常領域をコードするヌクレオチド配列であり、配列番号38のアミノ酸番号1乃至20はシグナル配列、21乃至134は可変領域、135乃至239は定常領域のアミノ酸である。
軽鎖用プライマーセット
MAb1LF:5’−tctccggcgcgtacggcgatgctgtgatgacccaaactccactctcc−3’
MAb1LR:5’−ggagggggcggccacagcccgtttgatttccagcttggtgcctcc−3’
6)−3 MAb1キメラIgG1タイプ重鎖発現ベクターの構築
MAb1の重鎖の可変領域をコードするcDNAをテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社製)と下記のプライマーセットで重鎖の可変領域をコードするcDNAを含む部分を増幅し、キメラ及びヒト化IgG1タイプ重鎖発現ベクター pCMA−G1を制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社製)を用いて挿入することにより、MAb1キメラIgG1タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/MAb1H」と命名した。MAb1キメラIgG1タイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号39に示し、アミノ酸配列を配列番号40に示した。配列表の配列番号39のヌクレオチド番号1乃至57はシグナル配列、58乃至411は可変領域、412乃至1401は定常領域をコードするヌクレオチド配列であり、配列番号40のアミノ酸番号1乃至19はシグナル配列、20乃至137は可変領域、138乃至467は定常領域のアミノ酸配列である。
IgG1タイプ重鎖用プライマーセット
MAb1HF:5’−cagatgggtgctgagcgaagtgcagctggtggagtctgggggag−3’
MAb1H1R:5’−ttggtggaggctgagctgactgtgagagtggtgccgtggccccag−3’
6)−4 MAb1キメラIgG2タイプ重鎖発現ベクターの構築
MAb1の重鎖の可変領域をコードするcDNAをテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社製)と下記のプライマーセットで重鎖の可変領域をコードするcDNAを含む部分を増幅し、キメラ及びヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクター pCMA−G2を制限酵素BsiWIで切断した箇所にIn−Fusion Advantage PCRクローニングキット(Clontech社製)を用いて挿入することにより、MAb1キメラIgG2タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G2/MAb1」と命名した。MAb1キメラIgG2タイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号41に示し、アミノ酸配列を配列番号42に示した。
IgG2タイプ重鎖用プライマーセット
MAb1HF:5’−cagatgggtgctgagcgaagtgcagctggtggagtctgggggag−3’
MAb12R:5’−ttggtgctggctgagctgactgtgagagtggtgccgtggccccag−3’
(実施例7)IgG1タイプキメラMAb1抗体及びIgG2タイプキメラMAb1抗体の調製
7)−1 IgG1タイプキメラMAb1抗体及びIgG2タイプキメラMAb1抗体の生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社製)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。対数増殖期の1.2×10個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社製)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社製)に播種し、FreeStyle293 expression medium (Invitrogen社製)で希釈して1.0×10細胞/mLに調製したのちに、37℃、8%COインキュベーター内で90rpmで一時間振とう培養した。Polyethyleneimine(Polyscience社製 #24765)3.6mgをOpti−Pro SFM培地(Invitrogen社製)20mlに溶解し、次にPureLink HiPure Plasmidキット(Invitrogen社製)を用いて調製したH鎖発現ベクター(0.4mg)及びL鎖発現ベクター(0.8mg)を20mlのOpti−Pro SFM培地(Invitrogen社製)に懸濁した。Polyethyleneimine/Opti−Pro SFM混合液20mlに、発現ベクター/Opti−Pro SFM混合液20mlを加え穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%COインキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter (Advantec社製 #CCS−045−E1H)でろ過した。
pCMA−G1/MAb1HとpCMA−LK/MAb1L、及びpCMA−G2/MAb1HとpCMA−LK/MAb1Lとの組合せによって取得されたIgG1タイプ、及びIgG2タイプキメラMAb1抗体を各々「cMAb1−1」、及び「cMAb1−2」と略す。「cMAb1」は、IgG1タイプ及びIgG2タイプキメラMAb1抗体の両方を意味する。
7)−2 cMAb1−1、cMAb1−2の精製
上記7−1)で得られた培養上清を、rProteinAアフィニティークロマトグラフィー(4−6℃下)で精製した。rProteinAアフィニティークロマトグラフィー精製後のバッファー置換工程は室温下で実施した。最初に、培養上清1100−1200mlを、PBSで平衡化したMabSelectSuRe(GE Healthcare Bioscience社製、HiTrapカラム:容積1ml×2連結)にアプライした。培養液がカラムに全て入ったのち、PBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を脱塩カラム(GE Healthcare Bioscience社製、HiTrap Desaltingカラム:容積5ml×2連結)でPBSへ置換を行った。最後にCentrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量30K,Sartorius社製,4℃下)にて濃縮し、IgG濃度を20.0mg/ml以上に調製し精製サンプルとした。
7)−3 cMAb1−1、cMAb1−2の性質
7)−3−1 ROBO4の下流シグナル活性化
4)−1の方法に従って実施した。ただし、ネガティブコントロールとして、Human IgG(SIGMA−ARDRICH社製)を用いた。また、Human IgG、cMAb1−1、又はcMAb1−2は最終濃度が0.313μg/mLになるように培地に添加した。その結果、ネガティブコントロールのHuman IgGはヒトROBO4一過性発現細胞でのIL−8プロモーター活性に影響しなかったが、cMAb1−1及びcMAb1−2はIL−8プロモーター活性を上昇させた(図11)。これらの結果から、cMAb1−1あるいはcMAb1−2は、MAb1と同様に、ROBO4の下流シグナルを活性化することが明らかとなった。
7)−3−2 HUVEC遊走試験
4)−2の方法に従って実施した。ただし、ネガティブコントロールとして、Human IgGを用いた。また、Human IgG、cMAb1−1、又はcMAb1−2は最終濃度が0.5μg/mLになるように培地に添加した。その結果、cMAb1−1又はcMAb1−2はbFGFで誘導されるHUVECの遊走を抑制した(図12)。これらの結果から、cMAb1−1あるいはcMAb1−2は、MAb1と同様に、HUVECの遊走を抑制することが明らかとなった。
(実施例8)マウス抗ヒトROBO4モノクローナル抗体MAb1のヒト化抗体の設計
8)−1 MAb1のヒト化バージョンの設計
8)−1−1 MAb1の可変領域の分子モデリング
MAb1の可変領域の分子モデリングは、相同性モデリングとして一般的に公知の方法(Methods in Enzymology,203,121−153,(1991))によって実行された。Protein Data Bank(Nuc.Acid Res.35,D301−D303(2007))に登録されるヒト免疫グロブリンの可変領域の1次配列(X線結晶構造から誘導される三次元構造が入手可能である)を、上で決定されたMAb1の可変領域と比較した。結果として、3FFDが、MAb1の重鎖の可変領域に対して同様にフレームワーク中に欠損がある抗体の中で、最も高い配列相同性を有するとして選択された。また、1T66が、MAb1の軽鎖の可変領域に対して最も高い配列相同性を有するとして選択された。フレームワーク領域の三次元構造は、MAb1の重鎖及び軽鎖に対応する3FFD及びの1T66座標を組み合わせて、「フレームワークモデル」を得ることによって作製された。MAb1のCDRは、Thornton et al.(J.Mol.Biol.,263,800−815,(1996))の分類に従って、CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1及びCDRH2は、それぞれクラスター16A、7A、9A、10A、および10Bに割り当てられた。CDRH3は、H3ルール(FEBS letter 399,1−8(1996))を使用して、k(7)Bに分類された。次いで、それぞれのCDRについての代表的なコンホメーションがフレームワークモデルに組み込まれた。
最後に、エネルギーの点でMAb1の可変領域の可能性のある分子モデルを得るために、不利な原子間接触を除くためのエネルギー計算を行った。上記手順を、市販の蛋白質立体構造予測プログラムPrime及び配座探索プログラムMacroModel(Schrodinger, LLC)を用いて行った。
8)−1−2 ヒト化MAb1に対するアミノ酸配列の設計
ヒト化MAb1抗体(hMAb1)の構築を、CDRグラフティング(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))として一般的に公知の方法によって行った。アクセプター抗体は、フレームワーク領域内のアミノ酸相同性に基づいて2通り選択された。MAb1のフレームワーク領域の配列を、抗体のアミノ酸配列のKabatデータベース(Nuc.Acid Res.29,205−206(2001))の全てのヒトフレームワークと比較し、結果として、B3抗体がフレームワーク領域についての83%の配列相同性に起因して、アクセプターとして選択された。B3についてのフレームワーク領域のアミノ酸残基を、MAb1についてのアミノ酸残基と整列させ、異なるアミノ酸が使用される位置を同定した。これらの残基の位置は、上で構築されたMAb1の三次元モデルを使用して分析され、そしてアクセプター上にグラフティングされるべきドナー残基が、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029−10033(1989))によって与えられる基準によって選択された。選択されたいくつかのドナー残基をアクセプター抗体に移入することによって、ヒト化MAb1配列を以下の実施例に記載されるように構築した。また、hMAb1の各CDR中の1乃至3個のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換したhMAb1変異体についても以下の実施例に記載されるように構築した。
8)−2 cMAb1重鎖のヒト化
8)−2−1 hMAb1−H1タイプ重鎖:
配列表の配列番号42に示されるcMAb1−2重鎖のアミノ酸番号32(リジン)をグルタミンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号59(スレオニン)をアラニンに、アミノ酸番号61(グルタミン酸)をグリシンに、アミノ酸番号63(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号95(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号103(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(メチオニン)をバリンに、アミノ酸番号114(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号129(ヒスチジン)をグルタミンに、アミノ酸番号132(スレオニン)をロイシンに、アミノ酸番号133(ロイシン)をバリンに置き換えることを伴い設計されたヒト化MAb1重鎖を「hMAb1−H1タイプ重鎖」と命名した。
hMAb1−H1タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号56に記載されている。配列番号56のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至463番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号56のアミノ酸配列の50乃至54番目のアミノ残基からなる配列、69乃至85番目のアミノ酸残基からなる配列、118乃至126番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれCDRH1配列、CDRH2配列、CDRH3配列に相当する。配列番号56のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号55に記載されている。配列番号55のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1389番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号55のヌクレオチド配列及び配列番号56のアミノ酸配列は、それぞれ図31及び図32にも記載されている。
8)−2−2 hMAb1−H2タイプ重鎖:
配列表の配列番号42に示されるcMAb1−2重鎖のアミノ酸番号32(リジン)をグルタミンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号59(スレオニン)をアラニンに、アミノ酸番号61(グルタミン酸)をグリシンに、アミノ酸番号63(アルギニン)をグリシンに、アミノ酸番号72(アスパラギン)をグルタミンに、アミノ酸番号95(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号103(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(メチオニン)をバリンに、アミノ酸番号114(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号129(ヒスチジン)をグルタミンに、アミノ酸番号132(スレオニン)をロイシンに、アミノ酸番号133(ロイシン)をバリンに置き換えることを伴い設計されたヒト化MAb1重鎖を「hMAb1−H2タイプ重鎖」と命名した。
hMAb1−H2タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号58に記載されている。配列番号58のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至463番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号58のアミノ酸配列の50乃至54番目のアミノ残基からなる配列、69乃至85番目のアミノ酸残基からなる配列、118乃至126番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれCDRH1配列、CDRH2配列、CDRH3配列に相当する。配列番号58のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号57に記載されている。配列番号57のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1389番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号57のヌクレオチド配列及び配列番号58のアミノ酸配列は、それぞれ図33及び図34にも記載されている。
8)−2−3 hMAb1−H3タイプ重鎖:
配列表の配列番号42に示されるcMAb1−2重鎖のアミノ酸番号32(リジン)をグルタミンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号59(スレオニン)をアラニンに、アミノ酸番号61(グルタミン酸)をグリシンに、アミノ酸番号95(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号103(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(メチオニン)をバリンに、アミノ酸番号114(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号129(ヒスチジン)をグルタミンに、アミノ酸番号132(スレオニン)をロイシンに、アミノ酸番号133(ロイシン)をバリンに置き換えることを伴い設計されたヒト化MAb1重鎖を「hMAb1−H3タイプ重鎖」と命名した。
hMAb1−H3タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号60に記載されている。配列番号60のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至463番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号60のアミノ酸配列の50乃至54番目のアミノ残基からなる配列、69乃至85番目のアミノ酸残基からなる配列、118乃至126番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれCDRH1配列、CDRH2配列、CDRH3配列に相当する。配列番号60のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号59に記載されている。配列番号59のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1389番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号59のヌクレオチド配列及び配列番号60のアミノ酸配列は、図35及び図36にも記載されている。
8)−2−4 hMAb1−H4タイプ重鎖:
配列表の配列番号42に示されるcMAb1−2重鎖のアミノ酸番号32(リジン)をグルタミンに、アミノ酸番号38(リジン)をアルギニンに、アミノ酸番号59(スレオニン)をアラニンに、アミノ酸番号61(グルタミン酸)をグリシンに、アミノ酸番号72(アスパラギン)をグルタミンに、アミノ酸番号95(グルタミン酸)をリジンに、アミノ酸番号103(セリン)をアスパラギンに、アミノ酸番号107(セリン)をアラニンに、アミノ酸番号112(メチオニン)をバリンに、アミノ酸番号114(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号129(ヒスチジン)をグルタミンに、アミノ酸番号132(スレオニン)をロイシンに、アミノ酸番号133(ロイシン)をバリンに置き換えることを伴い設計されたヒト化MAb1重鎖を「hMAb1−H4タイプ重鎖」と命名した。
hMAb1−H4タイプ重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号62に記載されている。配列番号62のアミノ酸配列の1乃至19番目のアミノ残基からなる配列、20乃至137番目のアミノ酸残基からなる配列、138乃至463番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域、重鎖定常領域に相当する。配列番号62のアミノ酸配列の50乃至54番目のアミノ残基からなる配列、69乃至85番目のアミノ酸残基からなる配列、118乃至126番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれCDRH1配列、CDRH2配列、CDRH3配列に相当する。配列番号62のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号61に記載されている。配列番号61のヌクレオチド配列の1乃至57番目のヌクレオチドからなる配列、58乃至411番目のヌクレオチドからなる配列、412乃至1389番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、重鎖可変領域配列、重鎖定常領域配列をコードしている。配列番号61のヌクレオチド配列及び配列番号62のアミノ酸配列は、それぞれ図37及び図38にも記載されている。
8)−3 MAb1軽鎖のヒト化
8)−3−1 hMAb1−L1タイプ軽鎖:
配列表の配列番号38に示されるcMAb1軽鎖のアミノ酸番号22(アラニン)をイソロイシンに、アミノ酸番号27(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号34(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号37(アスパラギン酸)をグルタミン酸に、アミノ酸番号38(グルタミン)をプロリンに、アミノ酸番号62(フェニルアラニン)をロイシンに、アミノ酸番号84(ロイシン)をプロリンに、アミノ酸番号108(フェニルアラニン)をバリンに、アミノ酸番号112(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号125(グリシン)をプロリンに、アミノ酸番号129(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号130(グルタミン酸)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号134(アラニン)をスレオニンに置き換えることを伴い設計されたヒト化MAb1軽鎖を「hMAb1−L1タイプ軽鎖」と命名した。
hMAb1−L1タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号64に記載されている。配列番号64のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ残基からなる配列、21乃至134番目のアミノ酸残基からなる配列、135乃至239番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号64のアミノ酸配列の44乃至59番目のアミノ残基からなる配列、75乃至81番目のアミノ酸残基からなる配列、114乃至122番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれCDRL1配列、CDRL2配列、CDRL3配列に相当する。配列番号64のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号63に記載されている。配列番号63のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至402番目のヌクレオチドからなる配列、403乃至717番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号63のヌクレオチド配列及び配列番号64のアミノ酸配列は、それぞれ図39及び図40にも記載されている。
8)−3−2 hMAb1−L2タイプ軽鎖:
配列表の配列番号38に示されるcMAb1軽鎖のアミノ酸番号22(アラニン)をイソロイシンに、アミノ酸番号27(スレオニン)をセリンに、アミノ酸番号34(セリン)をスレオニンに、アミノ酸番号37(アスパラギン酸)をグルタミン酸に、アミノ酸番号38(グルタミン)をプロリンに、アミノ酸番号52(セリン)をグルタミン酸に、アミノ酸番号54(グリシン)をリジンに、アミノ酸番号56(スレオニン)をロイシンに、アミノ酸番号62(フェニルアラニン)をロイシンに、アミノ酸番号84(ロイシン)をプロリンに、アミノ酸番号108(フェニルアラニン)をバリンに、アミノ酸番号112(フェニルアラニン)をチロシンに、アミノ酸番号125(グリシン)をプロリンに、アミノ酸番号129(ロイシン)をバリンに、アミノ酸番号130(グルタミン酸)をアスパラギン酸に、アミノ酸番号134(アラニン)をスレオニンに置き換えることを伴い設計されたヒト化MAb1軽鎖を「hMAb1−L2タイプ軽鎖」と命名した。
hMAb1−L2タイプ軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号66に記載されている。配列番号66のアミノ酸配列の1乃至20番目のアミノ残基からなる配列、21乃至134番目のアミノ酸残基からなる配列、135乃至239番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域に相当する。配列番号66のアミノ酸配列の44乃至59番目のアミノ残基からなる配列、75乃至81番目のアミノ酸残基からなる配列、114乃至122番目のアミノ酸残基からなる配列が、それぞれCDRL1配列、CDRL2配列、CDRL3配列に相当する。配列番号66のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列表の配列番号65に記載されている。配列番号65のヌクレオチド配列の1乃至60番目のヌクレオチドからなる配列、61乃至402番目のヌクレオチドからなる配列、403乃至717番目のヌクレオチドからなる配列が、それぞれシグナル配列、軽鎖可変領域配列、軽鎖定常領域配列をコードしている。配列番号65のヌクレオチド配列及び配列番号66のアミノ酸配列は、それぞれ図41及び図42にも記載されている。
(実施例9) ヒト化MAb1の作製
9)−1 ヒト化MAb1の重鎖発現ベクターの構築
9)−1−1 hMAb1−H1タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列表の配列番号56のアミノ酸番号20乃至137に示される、hMAb1−H1タイプ重鎖可変領域をコードする遺伝子を含むDNAを合成し(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)、制限酵素BlpIで切り出されるDNA断片を、キメラ及びヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクター(pCMA−G2)を制限酵素BlpIで切断した箇所に挿入することにより、hMAb1−H1タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G2/hMAb1−H1」と命名した。hMAb1−H1タイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号55に示した。
9)−1−2 hMAb1−H2タイプ重鎖発現ベクターの構築
9)−1−1で構築したpCMA−G2/hMAb1−H1をテンプレートとして、下記に示す下記に示すプライマーセットとQuikChange XL Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies社製)を用いて、hMAb1−H2タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hMAb1−H2」と命名した。hMAb1−H2タイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号57に示し、アミノ酸配列を配列番号58に示した。
プライマーセット
H−N53Q−F:5’−gggtggcaaccatcagccaaggcggcacctacacctac−3’
H−N53Q−R:5’−gtaggtgtaggtgccgccttggctgatggttgccaccc−3’
9)−1−3 hMAb1−H3タイプ重鎖発現ベクターの構築
配列表の配列番号60のアミノ酸番号20乃至137に示される、hMAb1−H3タイプ重鎖可変領域をコードする遺伝子を含むDNAを合成し(GENEART社 人工遺伝子合成サービス)、制限酵素BlpIで切り出されるDNA断片を、キメラ及びヒト化IgG2タイプ重鎖発現ベクター(pCMA−G2)を制限酵素BlpIで切断した箇所に挿入することにより、hMAb1−H3タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G2/hMAb1−H3」と命名した。hMAb1−H3タイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号59に示した。
9)−1−4 hMAb1−H4タイプ重鎖発現ベクターの構築
9)−1−3で構築したpCMA−G2/hMAb1−H3をテンプレートとして、下記に示す下記に示すプライマーセットとQuikChange XL Site−Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies社製)を用いて、hMAb1−H4タイプ重鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−G1/hMAb1−H4」と命名した。hMAb1−H4タイプ重鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号61に示し、アミノ酸配列を配列番号62に示した。
プライマーセット
H−N53Q−F:5’−gggtggcaaccatcagccaaggcggcacctacacctac−3’
H−N53Q−R:5’−gtaggtgtaggtgccgccttggctgatggttgccaccc−3’
9)−2 ヒト化MAb1の軽鎖発現ベクターの構築
9)−2−1 hMAb1−L1タイプ軽鎖発現ベクターの構築
配列番号64のアミノ酸番号21乃至134に示されるhMAb1−L1タイプ軽鎖可変領域をコードする遺伝子を含むDNAを合成し(GENEART社、人工遺伝子合成サービス)、制限酵素BsiWIで切り出されるDNA断片を、キメラ及びヒト化抗体軽鎖発現汎用ベクター(pCMA−LK)を制限酵素BsiWIで切断した箇所に挿入することにより、hMAb1−L1タイプ軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−LK/hMAb1−L1」と命名した。hMAb1−L1タイプ軽鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号63に示した。
9)−2−2 hMAb1−L2タイプ軽鎖発現ベクターの構築
9)−2−1で構築したpCMA−LK/hMAb1−L1をテンプレートとして、KOD−Plus−(TOYOBO社製)とプライマーセットAを用いてPCRを行うことにより得られたDNA断片とプライマーセットBを用いてPCRを行うことにより得られたDNA断片をプライマーセットCを用いたOverlap Extension PCRにより結合することにより、hMAb1−L2タイプ軽鎖をコードする遺伝子を含むDNAを作製し、制限酵素XbaIと制限酵素PmeIで切り出されるDNA断片を、キメラ及びヒト化抗体軽鎖発現汎用ベクター(pCMA−LK)を制限酵素XbaIと制限酵素PmeIで切断した箇所に挿入することにより、hMAb1−L2タイプ軽鎖発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを「pCMA−LK/hMAb1−L2」と命名した。hMAb1−L2タイプ軽鎖のヌクレオチド配列を配列表の配列番号65に示し、アミノ酸配列を配列番号66に示した。
プライマーセットA
L inf−F:5’−gcctccggactctagagccaccatggtgctgcagacccaggtgttc−3’
L−EKL−R:5’−caggtacaggttcttgttctcgttttccaggctctggctgcttctgcagc−3’
プライマーセットB
L−EKL−F:5’−gaaaacgagaacaagaacctgtacctgaactggtatctgcagaagcccg−3’
L inf−R:5’−tagcctcccccgtttaaacgggcccctaacactcccccctg−3’
プライマーセットC
L inf−F:5’−gcctccggactctagagccaccatggtgctgcagacccaggtgttc−3’
L inf−R:5’−tagcctcccccgtttaaacgggcccctaacactcccccctg−3’
(実施例10) ヒト化MAb1の調製
10)−1 ヒト化MAb1の生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社製)はマニュアルに従い、継代、培養をおこなった。
対数増殖期の1.2×10個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社製)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社製)に播種し、FreeStyle293 expression medium (INVITROGEN社製)で希釈して1.0×10細胞/mLに調製したのちに、37℃、8%COインキュベーター内で90rpmで一時間振とう培養した。Polyethyleneimine(Polyscience #24765)3.6mgをOpti−Pro SFM培地(Invitrogen社製)20mlに溶解し、次にPureLink HiPure Plasmidキット(Invitrogen社製)を用いて調製したH鎖発現ベクター(0.4mg)及びL鎖発現ベクター(0.8mg)を20mlのOpti−Pro SFM培地(Invitrogen社製)に懸濁した。Polyethyleneimine/Opti−Pro SFM混合液20mlに、発現ベクター/Opti−Pro SFM混合液20mlを加え穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%COインキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter (ADVANTEC #CCS−045−E1H)でろ過し、7)−2と同様に精製した。
pCMA−G2/hMAb1−H1とpCMA−LK/hMAb1−L1との組合せによって取得されたヒト化MAb1抗体を「H−1040」、pCMA−G2/hMAb1−H2とpCMA−LK/hMAb1−L1との組合せによって取得されたヒト化MAb1抗体を「H−1140」、pCMA−G2/hMAb1−H2とpCMA−LK/hMAB1−L2との組合せによって取得されたヒト化MAb1抗体を「H−1143」、pCMA−G2/hMAb1−H3とpCMA−LK/hMAb1−L1との組合せによって取得されたヒト化MAb1抗体を「H−2040」、pCMA−G2/hMAb1−H4とpCMA−LK/hMAb1−L1との組合せによって取得されたヒト化MAb1抗体を「H−2140」、及びpCMA−G2/hMAb1−H4とpCMA−LK/hMAb1−L2との組合せによって取得されたヒト化MAb1抗体を「H−2143」と命名した。
(実施例11) ヒト化抗ROBO4抗体の性質
11)−1 結合親和性
抗体とrROBO4−ECDの解離定数測定は、Biacore 3000(GE Healthcare Bioscience社製)を使用し、抗体をリガンドとして固定化し、抗原をアナライトとして測定した。抗体は、アミンカップリング法にてセンサーチップCM5(GE Healthcare Bioscience社製)へ固定化した抗ヒトIgG抗体(GE Healthcare Bioscience社製)を介し、約80RUを結合させた。ランニングバッファーとして0.05%Surfactant P20含有PBSを用いた。抗体を結合したチップ上に、抗原の希釈系列溶液(0.1−200nM)を流速30μL/分で300秒間添加し、引き続き300秒間の解離相をモニターした。再生溶液として、3M MgClを流速10μL/分で30秒間添加した。データの解析には、分析ソフトウェア(BIAevaluation Software, version 4.1)の1:1結合モデルを用いて、結合速度定数kon、解離速度定数koff及び解離定数(K;K=koff/kon)を算出した。その結果、K値はH−1040が0.41nM、H−1143が3.5nM、H−1140が3.9nM、H−2040が0.40nM、H−2143が1.7nM、H−2140が1.8nMであった。
11)−2 ROBO4の下流シグナル活性化
4)−1の方法に従って実施した。ただし、ネガティブコントロールとして、Human IgGを用いた。また、Human IgG、H−1143、H−2140、H−2143又はcMAb1−2は最終濃度が0.63μg/mLになるように培地に添加した。その結果、ネガティブコントロールのHuman IgGはヒトROBO4一過性発現細胞でのIL−8プロモーター活性に影響しなかったが、いずれのヒト化抗ROBO4抗体もcMAb1−2と同等のIL−8プロモーター活性を上昇させた(図49)。これらの結果から、いずれのヒト化抗ROBO4抗体も、MAb1と同様に、ROBO4の下流シグナルを活性化することが明らかとなった。
11)−3 HUVEC遊走試験
4)−2の方法に従って実施した。ただし、ネガティブコントロールとして、human IgGを用いた。また、Human IgG、H−1143、H−2140又はH−2143は最終濃度が0.5μg/mLになるように培地に添加した。各ウェルの蛍光強度(励起波長/蛍光波長:485nm/538nm)はプレートリーダー(EnVision:PerkinElmer社製)で測定した。その結果、H−1143、H−2140又はH−2143はbFGFで誘導されるHUVECの遊走を抑制した(図50)。これらの結果から、H−1143、H−2140あるいはH−2143は、HUVECの遊走を抑制することが明らかとなった。
11)−4 種交差性
11)−4−1 抗原遺伝子発現細胞の調製
4)−3−1の方法に従って実施した。
11)−4−2 フローサイトメトリー解析
4)−3−2の方法に従って実施した。ただし、ネガティブコントロールとして、human IgGを用い、二次抗体は、FITC−AffiniPure Goat Anti−Human IgG,Fcγ Fragment Specific(Jackson ImmunoResearch社製)を用いた。また、検出機器は、フローサイトメーター(FC500:Beckman Coulter社製)を用いた。その結果、H−1143、H−2140又はH−2143は、親抗体の MAb1 と同様、マウスROBO4とラットROBO4に結合しなかったが、ヒトROBO4とカニクイザルROBO4に結合することが明らかとなった(図51、図52、図53)。
11)−5 H−1143,H−2140,H−2143の結合特異性
11)−5−1 抗原遺伝子発現細胞の調製
4)−4−1の方法に従って実施した。ただし、ヒトROBO4発現ベクターは、pCI−FLAG−hROBO4−28を用いた。
11)−5−2 フローサイトメトリー解析
4)−4−2の方法に従って実施した。ただし、ネガティブコントロールとして、human IgGあるいはMouse IgG2Aを用い、二次抗体は、Fluorescein−conjugated goat IgG fraction to mouse IgG(Cappel社製)もしくはFITC−AffiniPure Goat Anti−Human IgG,Fcγ Fragment Specificを用いた。また、検出機器は、フローサイトメーター(FC500)を用いた。その結果、H−1143,H−2140,H−2143は、親抗体の MAb1 と同様、hROBO1、hROBO2あるいはhROBO3には結合せず、hROBO4に特異的に結合することが明らかとなった(図54)。なお、hROBO4、hROBO1、hROBO2、hROBO3が細胞膜上に発現していることはポジティブコントロールの抗体を用いて確認された(図54)。
11)−6 サルレーザー誘導脈絡膜血管新生モデルでの薬効評価
11)−6−1 麻酔
カニクイザルに0.08mg/kgの投与量で塩酸メデトミジンを筋注し、その15分後に15mg/kgの投与量で塩酸ケタミンを筋注した。
11)−6−2 モデル作製
11)−6−1で麻酔したカニクイザルをステンレス手術台上に仰臥位に保定し、5mg/mL トロピカミド・5mg/mL フェニレフリン塩酸塩混合点眼液を点眼し散瞳させ、グリーンレーザー光凝固装置 OccuLight GLxを用いて網膜黄斑部にレーザー照射(照射熱量:500mW,照射時間:0.1秒,スポットサイズ:50μm,スポット数:9スポット)して熱損傷を加えた。術後はクラビット点眼液を術眼に滴下した。
11)−6−3 被験物質投与
モデル作製後7日目に麻酔後、ステンレス手術台上に仰臥位に保定した。その後、滅菌精製水で4倍希釈したPA・ヨード点眼液(日本点眼薬研究所社製)を点眼して外眼部を殺菌し、33G針を結膜より硝子体内に刺入、1mLシリンジにて生理食塩水(もしくは1.1mg/0.05mLに調製したH−2143を0.05mL 注入した。投与後は眼・耳科用リンデロンA軟膏を滅菌綿棒にて結膜に塗布し、瞼を開閉させて眼表面全体に行き渡らせた。
11)−6−4 薬効評価
モデル作製後7日目、14日目、21日目に、麻酔下、ハイブリット眼底カメラCX−1により眼底通常撮影した。その後、フルオレセインを0.05mL/kgの投与量で静注した。フルオレセイン静注後、1分毎に最大10分後まで蛍光血管造影撮影を行い、画像データとして保存した。画像データから、Zahn Gらの方法(Zahn G et.al Arch.Ophthalmol.2009 127:1329−1335)に従って、それぞれのレーザー照射部位のフルオレセイン滞留部の蛍光強度の強さで5段階(グレード1から5)の重症度分類を行った。その後、全レーザー照射部位における重症度分類の中でグレード4と5の重症度分類に相当する割合をパーセントで算出し、脈絡膜血管新生を評価した。Saline投与群とH−2143投与群の脈絡膜血管新生を比較した結果、Saline投与群では、モデル作製後の時間経過と共に、グレード4と5の割合が増加したのに対し、H−2143投与群ではその増加が認められなかった。すなわち、H−2143の投与によって、レーザー誘導脈絡膜血管新生が抑制された(図55)。
本発明の提供する抗体を用いることにより、滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織および他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、肥満等の血管新生性疾患の治療または予防、ならびに、該血管新生性疾患の検査または診断が可能となる。
配列番号1:ヒトROBO4全長cDNAのヌクレオチド配列(図13)
配列番号2;ヒトROBO4のアミノ酸配列(図14)
配列番号3:N末端FLAG−tag付加型全長ヒトROBO4のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号4:N末端FLAG−tag付加型全長ヒトROBO4のアミノ酸配列
配列番号5:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号46乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号6:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号46乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列
配列番号7:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号132乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号8:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号132番乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列
配列番号9:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号210乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号10:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号210乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列
配列番号11:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号225乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号12:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号225乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列
配列番号13:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号341乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号14:ヒトROBO4が配列番号2のアミノ酸番号341乃至1007のアミノ酸配列からなる細胞外領域ドメイン欠損体である、N末端FLAG−tag付加型ヒトROBO4細胞外領域ドメイン欠損体のアミノ酸配列
配列番号15:マウスROBO4cDNAのヌクレオチド配列
配列番号16:マウスROBO4アミノ酸配列
配列番号17:ラットROBO4cDNAのヌクレオチド配列
配列番号18:ラットROBO4アミノ酸配列
配列番号19:サルROBO4cDNA1のヌクレオチド配列
配列番号20:サルROBO4アミノ酸配列1
配列番号21:サルROBO4cDNA2のヌクレオチド配列
配列番号22:サルROBO4アミノ酸配列2
配列番号23:ヒトROBO1cDNAのヌクレオチド配列
配列番号24:ヒトROBO1アミノ酸配列
配列番号25:ヒトROBO2cDNAのヌクレオチド配列
配列番号26:ヒトROBO2アミノ酸配列
配列番号27:ヒトROBO3cDNAのヌクレオチド配列
配列番号28:ヒトROBO4アミノ酸配列
配列番号29:IL−8プロモーター領域のヌクレオチド配列
配列番号30:MAb1重鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図15)
配列番号31:MAb1重鎖可変領域のアミノ酸配列(図16)
配列番号32:MAb1軽鎖可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図17)
配列番号33:MAb1軽鎖可変領域のアミノ酸配列(図18)
配列番号34:ヒトκ鎖分泌シグナル及びヒトκ鎖定常領域のアミノ酸をコードするcDNAを含むヌクレオチド配列
配列番号35:ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1定常領域のアミノ酸をコードするcDNAを含むヌクレオチド配列
配列番号36:ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG2定常領域のアミノ酸をコードするcDNAを含むヌクレオチド配列
配列番号37:cMAb1軽鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図19)
配列番号38:cMAb1軽鎖のアミノ酸配列(図20)
配列番号39:cMAb1−1重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図21)
配列番号40:cMAb1−1重鎖のアミノ酸配列(図22)
配列番号41:cMAb1−2重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図23)
配列番号42:cMAb1−2重鎖のアミノ酸配列(図24)
配列番号43:MAb1重鎖CDRH1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号44:MAb1重鎖CDRH1のアミノ酸配列(図25)
配列番号45:MAb1重鎖CDRH2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号46:MAb1重鎖CDRH2のアミノ酸配列(図26)
配列番号47:MAb1重鎖CDRH3のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号48:MAb1重鎖CDRH3のアミノ酸配列(図27)
配列番号49:MAb1軽鎖CDRL1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号50:MAb1軽鎖CDRL1のアミノ酸配列(図28)
配列番号51:MAb1軽鎖CDRL2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号52:MAb1軽鎖CDRL2のアミノ酸配列(図29)
配列番号53:MAb1軽鎖CDRL3のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列
配列番号54:MAb1軽鎖CDRL3のアミノ酸配列(図30)
配列番号55:hMAb1−H1タイプ重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図31)
配列番号56:hMAb1−H1タイプ重鎖のアミノ酸配列(図32)
配列番号57:hMAb1−H2タイプ重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図33)
配列番号58:hMAb1−H2タイプ重鎖のアミノ酸配列(図34)
配列番号59:hMAb1−H3タイプ重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図35)
配列番号60:hMAb1−H3タイプ重鎖のアミノ酸配列(図36)
配列番号61:hMAb1−H4タイプ重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図37)
配列番号62:hMAb1−H4タイプ重鎖のアミノ酸配列(図38)
配列番号63:hMAb1−L1タイプ軽鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図39)
配列番号64:hMAb1−L1タイプ重鎖のアミノ酸配列(図40)
配列番号65:hMAb1−L2タイプ重鎖をコードするcDNAのヌクレオチド配列(図41)
配列番号66:hMAb1−L2タイプ重鎖のアミノ酸配列(図42)
配列番号67:hMAb1−H2及びH4タイプ重鎖のCDRH1(図43)
配列番号68:hMAb1−H2及びH4タイプ重鎖のCDRH2(図44)
配列番号69:hMAb1−H2及びH4タイプ重鎖のCDRH3(図45)
配列番号70:hMAb1−L2タイプ軽鎖のCDRL1(図46)
配列番号71:hMAb1−L2タイプ軽鎖のCDRL2(図47)
配列番号72:hMAb1−L2タイプ軽鎖のCDRL3(図48)

Claims (32)

  1. 下記(I)乃至(III)記載の性質を有する抗体又はその機能断片:
    (I)ROBO4蛋白質に結合する、
    (II)イン・ビトロにおいて、クロスリンク抗体非存在下で血管内皮細胞遊走を抑制又は阻害する、及び
    (III)イン・ビボにおいて、血管新生を抑制又は阻害する。
  2. ROBO4蛋白質が、ヒトROBO4蛋白質である、請求項1に記載の抗体又はその機能断片。
  3. ROBO4蛋白質が、配列表の配列番号2のアミノ酸番号1乃至1007のアミノ酸配列からなる蛋白質である、請求項1に記載の抗体又はその機能断片。
  4. ROBO4蛋白質が、配列表の配列番号2のアミノ酸番号46乃至1007のアミノ酸配列からなる蛋白質である、請求項1に記載の抗体又はその機能断片。
  5. 配列表の配列番号2のアミノ酸番号132乃至209のアミノ酸配列からなる部位に結合する、請求項3又は4に記載の抗体又はその機能断片。
  6. モノクローナル抗体又はその機能断片である、請求項1に記載の抗体又はその機能断片。
  7. 配列表の配列番号44(図25)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列表の配列番号46(図26)に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列表の配列番号48(図27)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含むことからなる重鎖、並びに、配列表の配列番号50(図28)に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1乃至3個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1、配列表の配列番号52(図29)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列表の配列番号54(図30)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含むことからなる軽鎖からなる、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  8. 配列表の配列番号44(図25)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列表の配列番号46(図26)に示されるアミノ酸配列又は配列表の配列番号68(図44)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH2、及び配列表の配列番号48(図27)に示されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含むことからなる重鎖、並びに、配列表の配列番号50(図28)に示されるアミノ酸配列又は配列表の配列番号70(図46)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列表の配列番号52(図29)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL2、及び配列表の配列番号54(図30)に示されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含むことからなる軽鎖からなる、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  9. 配列表の配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなる、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  10. 下記a)乃至d)より選択されるいずれか一つの重鎖可変領域、及びe)又はf)から選択される軽鎖可変領域を含むことからなる、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片:
    a)配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
    b)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
    c)配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、又は
    d)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、
    及び
    e)配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は
    f)配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
  11. 下記1)乃至6)に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せのいずれか一つを含むことからなる、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片:
    1)配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
    2)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
    3)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
    4)配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
    5)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は
    6)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至137に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至134に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
  12. キメラ抗体又はその機能断片である、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  13. ヒト化抗体又はその機能断片である、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  14. ヒトIgG1又はヒトIgG2の重鎖定常領域を含むことからなる、請求項1乃至13のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  15. 請求項7乃至14に記載の抗体が認識する抗原上の部位に結合する、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  16. ROBO4蛋白質への結合に対して、請求項7乃至14に記載のいずれか1つの抗体と競合する、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片。
  17. 下記1)乃至6)に記載の重鎖及び軽鎖の組合せのいずれか一つを含むことからなる、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の抗体:
    1)配列表の配列番号56(図32)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
    2)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
    3)配列表の配列番号58(図34)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
    4)配列表の配列番号60(図36)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、
    5)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号64(図40)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖、又は
    6)配列表の配列番号62(図38)のアミノ酸番号20乃至463に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号66(図42)のアミノ酸番号21乃至239に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖。
  18. 請求項17に記載のいずれか一つの抗体において、カルボキシル末端側の1乃至数個のアミノ酸が欠失した重鎖を含む抗体。
  19. 請求項10乃至14、及び17に記載のいずれか一つの抗体において、アミノ酸配列が95%以上同一の請求項1乃至6のいずれか一つに記載の抗体。
  20. ヒト抗体又はその機能断片である、請求項15に記載の抗体又はその機能断片。
  21. 下記(I)乃至(III)のいずれか一つに記載のヌクレオチド:
    (I)請求項1乃至20のいずれか一つに記載の抗体の重鎖または軽鎖の一部または全部のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなるヌクレオチド、
    (II)請求項1乃至20のいずれか一つに記載の抗体の重鎖または軽鎖の一部または全部のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む塩基配列からなるヌクレオチド、又は
    (III)請求項1乃至20のいずれか一つに記載の抗体の重鎖または軽鎖の一部または全部のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチド。
  22. 請求項21記載のヌクレオチドが挿入された組換えベクター。
  23. 請求項21記載のヌクレオチド又は請求項23記載の組換えベクターが導入された組換え細胞。
  24. 請求項1乃至20のいずれか一つに記載の抗体を産生する細胞。
  25. 下記の工程(I)及び(II)を含むことからなる、請求項1乃至20のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片の製造方法:
    (I)請求項23又は24記載の細胞を培養する工程;及び
    (II)前記工程(I)で得られた培養物から請求項1乃至20のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片を回収する工程。
  26. 請求項25に記載の製造方法により製造された抗体又はその機能断片。
  27. 請求項1乃至20及び26のいずれか一つに記載の抗体又はその機能断片の修飾体。
  28. 請求項1乃至20及び26のいずれか一つに記載の抗体もしくはその機能断片、または請求項27記載の修飾体を有効成分として含んでなる医薬組成物。
  29. 血管新生性疾患の治療薬または予防薬である、請求項28に記載の医薬組成物。
  30. 血管新生性疾患が滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、良性又は悪性の腫瘍、アテローム性動脈硬化症、水晶体後部線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、移植角膜組織及び他の組織の免疫拒絶、関節リウマチ、乾癬、急性炎症、敗血症、及び、肥満症である、請求項28記載の医薬組成物。
  31. 血管新生性疾患が滲出型加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、水晶体後部線維増殖症、眼内新生血管疾患、増殖性網膜症、血管新生緑内障、及び移植角膜組織の免疫拒絶である、請求項28記載の医薬組成物。
  32. 請求項1乃至20及び26のいずれか一つに記載の抗体もしくはその機能断片、または請求項27記載の修飾体を有効成分として含んでなる血管新生阻害剤。
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