JP2014136851A - 竹繊維シート - Google Patents

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Abstract

【課題】竹繊維シートに関し、竹繊維の叩解度の大小に関わらず強度及び剛性を向上させる。
【解決手段】竹を解繊した竹繊維のうち0.3[mm]を超える繊維太さを持ち、外皮側の維管束を含むストランド状竹繊維7と、竹繊維のうち0.3[mm]以下の繊維太さを持ち、内皮側の維管束を含むパルプ状竹繊維8とを備え、ストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とを一体に混抄する。
【選択図】図2

Description

本発明は、竹の繊維を原材料として抄造される竹繊維シートに関する。
従来、木材に代わる植物繊維材料の一つとして、竹繊維が知られている。竹繊維は非木材の植物繊維の中でも比強度が高く、優れた材料特性を持つ。また、竹は木材よりも成長速度が速いため、生産性の面でも有利である。そこで、自動車用内装材や建築材料,音響材料等といったさまざまな製品に対して竹繊維を適用する技術が開発されている。
特許文献1には、熱可塑性樹脂からなる熱溶着性複合繊維と竹繊維とを含有する不織布が記載されている。この技術では、竹繊維と熱溶着性複合繊維とを積層したのちに熱処理を施すことによって、竹繊維シートが製造される。熱溶着性複合繊維は、熱処理を受けて軟化,溶融し、竹繊維を固定するバインダーとして機能する。
また、ガラス繊維補強プラスチック(GFRP)の改良技術として、ガラス繊維に代えて竹繊維を適用することも提案されている。例えば、特許文献2に記載された成形体は、爆砕処理で解繊された爆砕竹繊維をプラスチック(ポリプロピレン)に埋設したものである。この技術では、爆砕時に竹繊維の表面に形成された微小な凹凸のアンカー効果により、優れた引張り強度を実現できるとされている。
しかし、これらの従来技術は、竹繊維を複合材料の一つとして採用したものであることから、素材としての再利用が技術的に困難な場合が多い。また、仮に竹繊維の分離が可能であっても、コスト的に採算が合わず、リサイクル性が低いという課題がある。
このような課題に対し、竹繊維を複合材料の一つとしてではなく、単体で使用する技術も開発されている。例えば特許文献3には、竹繊維を主成分とした抄紙工法で製造されるスピーカ用振動板が記載されている。また、特許文献4には、竹繊維の抄紙振動板の製造方法に関し、叩解度の異なる二種類の竹繊維を用いる手法が開示されている。この技術では、フィブリル化度を増長させた竹繊維を通常の竹繊維に絡ませることにより、高剛性のスピーカ用振動板を得ることができるとされている。
特開2009-197362号公報 特開2003-253011号公報 特許第4752752号公報 特許第4743108号公報
しかしながら、上記のような叩解処理を含む竹繊維の抄造手法では、叩解が進行するに連れてその竹繊維で抄造された竹繊維シートの破断強度が低下するとともに、繊維長さが短小化することになる。つまり、叩解による竹繊維の特性変化を抑制することができず、抄造された製品の強度,剛性を確保できない。
また、抄造工程の前に叩解工程を含む従来手法では、叩解処理に係る時間分のロスだけでなく、濾水度の低下に伴って脱水時間が長くなるため、トータルの抄造時間が延長される。したがって、竹繊維シートの抄造に係る作業性を向上させることが難しい。
一方、叩解処理を施すことなく、叩解度が均一な竹繊維のみを用いて竹繊維シートを抄造することも考えられる。しかしこの場合、ガラス繊維や樹脂繊維を併用した場合と比較して十分な強度,剛性を確保することが難しいという課題がある。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、竹繊維シートに関し、竹繊維の叩解度の大小に関わらず強度及び剛性を向上させることである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示する竹繊維シートは、竹を解繊した竹繊維のうち0.3[mm]を超える繊維太さを持ち、外皮側の維管束を含むストランド状竹繊維と、前記竹繊維のうち0.3[mm]以下の繊維太さを持ち、内皮側の維管束を含むパルプ状竹繊維とを備える。また、前記ストランド状竹繊維と前記パルプ状竹繊維とが一体に混抄されてなる。
なお、前記ストランド状竹繊維の繊維太さは、0.3[mm]〜1.0[mm]の範囲内とすることが好ましい。
上記の竹繊維シートでは、前記ストランド状竹繊維と前記パルプ状竹繊維とのそれぞれの機能が分化される。前記ストランド状竹繊維は、前記竹繊維シートの骨格構造を形成するように機能する。一方、前記パルプ状竹繊維は、前記竹繊維シートの骨格構造を互いに結合するように機能する。このように機能を分化することで、前記竹繊維シートの剛性,強度が確保される。
(2)また、少なくとも前記ストランド状竹繊維が、解繊前と同等の量のリグニンを細胞壁間に含有することが好ましい。
つまり、リグニンが分解又は除去された竹繊維ではなく、解繊前と同等のリグニンが残存した竹繊維が、ストランド状竹繊維として使用される。なお、前記ストランド状竹繊維だけでなく、前記パルプ状竹繊維についても、解繊前と同等の量のリグニンを細胞壁間に含有することが好ましい。
(3)また、少なくとも前記ストランド状竹繊維が、機械的手段により常温で解繊された竹繊維であることが好ましい。
つまり、少なくとも前記ストランド状竹繊維は、爆砕処理や積極的な脱リグニン処理(アルカリ処理など)が施された竹繊維ではなく、常温で物理的,機械的な処理が施されて解繊された竹繊維であることが好ましい。例えば、竹の繊維方向に沿って柔細胞を削り取ったり、柔細胞を引き裂いたりすることで維管束を取り出す手法を用いて、解繊された竹繊維であることが好ましい。具体的には、筒面上に多数の刃物や爪部材が設けられた解繊ドラムや解繊装置を用いて解繊された竹繊維とすることが考えられる。(例えば、後述の実施形態に記載の「解繊方法」による。)なお、前記ストランド状竹繊維だけでなく、前記パルプ状竹繊維についても、機械的手段により常温で解繊された竹繊維であることが好ましい。
機械的手段により常温で解繊した竹繊維の繊維細胞には、多くのリグニンが失われることなく残存する。リグニンは、高温で変質,分解し、繊維細胞の補強効果を失うとともに、アルデヒド系の化合物(例えばホルムアルデヒド)や有機酸(例えば蟻酸)を生成する。一方、機械的手段により常温で解繊した場合にはリグニンが残存し、繊維細胞の補強効果が維持されるとともに、アルデヒド系の化合物や有機酸の発生が防止される。
(4)また、前記ストランド状竹繊維の重量比が、前記パルプ状竹繊維の重量比以上であることが好ましい。ここでいう重量比とは、竹繊維シートの全成分に対する重量の比率であり、例えば抄造時における混合比を前記重量比としてもよいし、抄造後に竹繊維シートを再び分解して計測したときの質量比を前記重量比としてもよい。
(5)また、前記ストランド状竹繊維の重量比が、50[%]以上かつ80[%]以下の範囲内であり、前記パルプ状竹繊維の重量比が、20[%]以上かつ50[%]以下の範囲内であることが好ましい。
(6)また、前記ストランド状竹繊維が、10[mm]以上の繊維長を有することが好ましい。なお、前記ストランド状竹繊維の繊維長は、10[mm]〜30[mm]の範囲内とすることが好ましい。
(7)また、前記パルプ状竹繊維が、10[mm]以下の繊維長を有することが好ましい。
(8)また、前記ストランド状竹繊維及び前記パルプ状竹繊維に対する連結材となる結合繊維を備えることが好ましい。前記結合繊維とは、ストランド状竹繊維とパルプ状竹繊維とを連結する連結材として機能する繊維を意味し、化学繊維や合成繊維のほか、天然繊維,天然繊維を含有する化学繊維,天然繊維のみを用いて化学的製法で製造された化学繊維(広義の化学繊維)等を含む。
この結合繊維の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維,ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維,ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維,ポリビニルアルコール(PVA)繊維,セルロース系繊維,ポリブチレンサクシネート(PBS)繊維,ポリ乳酸(PLA)繊維,ポリエチレン繊維,脂肪族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
(9)また、前記結合繊維の原料の一部ないし全部が植物由来原料で製造されたものであることが好ましい。原料の一部ないし全部が植物由来原料で製造された結合繊維としては、例えばセルロース系繊維,ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維,ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維,ポリブチレンサクシネート(PBS)繊維,ポリ乳酸(PLA)繊維,ポリエチレン繊維等が挙げられる。
(10)また、前記結合繊維が、生分解性を有することが好ましい。生分解性を有する前記結合繊維の具体例としては、例えばセルロース系繊維,ポリビニルアルコール(PVA)繊維,ポリブチレンサクシネート(PBS)繊維,ポリ乳酸(PLA)繊維,脂肪族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
なお、上記の竹繊維シートは、生年数が三年以上(より好ましくは三年〜五年)の成竹の竹繊維で製造されたものであることが好ましい。すなわち、生年数が三年以上(より好ましくは三年〜五年)の成竹の外皮側の維管束(繊維太さが0.3[mm]を超えるもの)を前記ストランド状竹繊維とすることが好ましい。同様に、生年数が三年以上(より好ましくは三年〜五年)の成竹の内皮側の維管束(繊維太さが0.3[mm]を以下のもの)を前記パルプ状竹繊維とすることが好ましい。
一般に、竹の外皮側の維管束は小さく木化しており、他の維管束よりも太く剛直である。したがって、外皮側の維管束は、上記のストランド状竹繊維として用いて好適である。一方、内皮側の維管束は柔組織(柔細胞)との境界がやや曖昧であって比較的細いため、繊維単体では十分な強度を得ることが難しいものの、外皮側の維管束と組み合わせることによって優れた結合性を発揮する。したがって、内皮側の維管束は、上記のパルプ状竹繊維として用いて好適である。
開示の竹繊維シートによれば、竹の部位毎に異なる維管束の特性に鑑みて、繊維太さの異なる竹繊維をストランド状竹繊維とパルプ状竹繊維とのそれぞれとして採用することで、ストランド状竹繊維で堅固な骨格構造を形成しつつ、パルプ状竹繊維で繊維同士の結合性を高めることができる。つまり、繊維太さで分類される二種類の竹繊維に機能を分担させることによって、竹繊維シートの剛性,強度を向上させることができる。
また、一本の竹から解繊される竹繊維を無駄なく使用して竹繊維シートを作成することができ、環境負荷を削減することができる。特に、通常の竹繊維の解繊時に廃棄対象となる微細なパルプ状竹繊維(0.3[mm]以下の繊維太さを持つ竹繊維)を用いて竹繊維シートを製造できるため、産業廃棄物量を削減することができ、環境負荷を軽減することができる。
実施形態に係る竹繊維シートの竹繊維を説明するための模式図であり、(a)は竹の切断斜視図、(b)はA部の拡大断面図である。 (a)〜(d)は、本竹繊維シートの試作品表面の顕微鏡写真である。 本竹繊維シートが適用された車両の内装用基材の構成を説明するための断面図である。 本竹繊維シートの特性を説明するためのグラフであり、(a)は破断強度に関するもの、(b)は曲げ剛性に関するものである。 本竹繊維シートの製造装置の構造を説明するための模式図であり、(a)は丸網抄紙装置、(b)は平網抄紙装置、(c)は丸網及び平網を併用した抄紙装置を例示するものである。 本竹繊維シートの適用対象となる内装用基材の外観を例示する図であり、(a)は縦寸法と横寸法とが概ね等しく、縦横比が比較的小さい(1に近い)形状のもの、(b)は縦横比が比較的大きい形状のものである。 本竹繊維シートの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図面を参照して竹繊維シート,竹繊維シートの製造方法及び竹繊維シートが適用された車両の内装用基材について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.竹繊維]
本実施形態の竹繊維シート10は、竹1の繊維(竹繊維)を原材料として製造される。竹繊維の主成分は、おもに竹1の維管束2である。この維管束2は、導管や師管を保護するために発達した円柱状又は多角柱状の組織であり、竹1の延在方向に沿って形成されている。なお、導管は根から吸収した水分を運搬するための管状組織であり、師管は養分を運搬するための管状組織である。
図1(a)に示すように、竹1の地上茎は中空円筒状に形成される。この竹1の断面におけるA部の維管束2の分布状態を図1(b)に示す。維管束2は、竹1の柔組織3の内部に散在する。維管束2の密度は、外皮側ほど密であり、内皮側ほど疎である。また、柔組織3を構成する細胞の密度も、外皮側ほど密であり、内皮側ほど疎である。したがって、外皮側に位置する維管束2ほど組織が高密度である。本実施形態の竹繊維シート10に適した竹繊維が得られる竹1の生年数は、好ましくは三年以上であり、より好ましくは三年〜五年である。
ここで、竹1の組織をその半径方向に三層に分類し、外側から順に外皮側部4,中央部5,内皮側部6と呼ぶ。外皮側部4の維管束2は、導管と師管とがその痕跡を僅かに留める程度に密集して木化している。したがって、外皮側部4から解繊される竹繊維は、その竹1から取り出される竹繊維のうち最も太く剛直なものとなる。
また、中央部5の維管束2は、外皮側部4の維管束2と比較してやや密度が低く、内部の各組織が最もはっきりと分離している。そのため、中央部5から解繊される竹繊維は、導管や師管毎に分離しやすく、外皮側部4から解繊される竹繊維よりもやや細い竹繊維となる。
一方、内皮側部6の維管束2は、中央部5の維管束2と比較して密度が低く、柔組織3との境界がやや曖昧である。そのため、内皮側部6から解繊される竹繊維は、中央部5から解繊される竹繊維よりも細分化された微細な竹繊維となる。
一般に、内皮側部6から解繊される竹繊維は外皮側部4から解繊される竹繊維と比較して極めて細く、繊維材料としての剛性,強度が低いことから、通常は不要な部分として廃棄される。一方、本実施形態では内皮側部6から解繊された竹繊維を廃棄することなく、これを積極的に利用する。以下、繊維太さが0.3[mm]を超える竹繊維のことを「ストランド状竹繊維7」と呼び、繊維太さが0.3[mm]以下の竹繊維のことを「パルプ状竹繊維8」と呼ぶ。
外皮側部4や中央部5から解繊された竹繊維は、おもにストランド状竹繊維7となる。また、内皮側部6から解繊された竹繊維や、ストランド状竹繊維7が過剰に解繊された状態のものは、パルプ状竹繊維8となる。パルプ状竹繊維8の繊維長に下限値はない。例えば、竹繊維の解繊過程で必然的に生じる繊維断片は、このパルプ状竹繊維8に含まれる。
[2.解繊手法]
本実施形態では、少なくとも上記のストランド状竹繊維7を、物理的,機械的手段により常温で解繊された竹繊維とする。つまり、ストランド状竹繊維7は、積極的な脱リグニン処理(アルカリ処理など)が施された竹繊維ではなく、解繊前と同等の量のリグニンを有するものとすることが望ましい。
ここでいう物理的,機械的手段とは、例えば竹の繊維方向に沿って柔組織3を削り取ったり、柔組織3を引き裂いたりすることで維管束2を取り出す手段である。具体的には、筒面上に多数の刃物や爪部材が設けられた解繊ドラムや解繊装置を用いて解繊された竹繊維が、上記のストランド状竹繊維7として用いられる。なお、好ましくは、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の両方を、機械的手段により常温で解繊された竹繊維とする。
具体的な解繊手法としては、例えば、特開2008-307832号公報に記載されたような解繊装置,解繊方法を用いることが考えられる。この解繊手法では、所定の幅に割られた竹を解繊ドラムで解繊する前工程で、所定の圧力下で特定周波数の振動が加えられる。これにより、竹繊維と肉質との結合が弱められ、竹の柔細胞組織が破壊されて、損傷の少ない維管束が取り出される。
物理的,機械的手段により常温で解繊した竹繊維の維管束2(例えば細胞壁間)には、多くのリグニンが失われることなく残存する。リグニンは、高温で変質,分解して維管束2の補強効果を失うとともに、アルデヒド系の化合物(例えばホルムアルデヒド)や有機酸(例えば蟻酸)を生成する。一方、物理的,機械的手段により常温で解繊した場合にはリグニンが残存するため、維管束2の補強効果が維持されるとともに、アルデヒド系の化合物や有機酸の発生が防止される。
なお、ストランド状竹繊維7を取り出す際には、爆砕処理や薬品処理を施さないことが好ましい。爆砕処理とは、例えば高温高圧の水蒸気中に竹1を所定時間静置し、その後、短時間の間に圧力を解放することによって柔組織3を破壊し、維管束2を抽出する手法である。この手法ではリグニンが加水分解するため、抽出される維管束2の剛性,強度が低下する。また、薬品処理とは、例えば水酸化ナトリウム水溶液や硝酸水溶液に竹1を浸漬し、維管束2を抽出する手法である。この手法でもリグニンが除去されるため、維管束2の剛性,強度が低下する。
ただし、柔化や親水化を目的とした抄紙前処理の一つである柔化・親水化処理については、必要に応じてストランド状竹繊維7からリグニンが失われない程度に実施してもよい。柔化・親水化処理とは、例えば竹1を弱アルカリ液で蒸煮する処理である。柔化・親水化処理が施された竹繊維のうち、維管束2の表層部分については脱リグニン化される場合があるものの、中心部分についてはほとんど元来のリグニンを有したままであると考えられる。また、維管束2の径が大きいほど、元来のリグニンを含有する部分が増加する。少なくとも繊維太さが0.3[mm]を超えるストランド状竹繊維7は、解繊前と同等の量のリグニンを含有する。
[3.竹繊維シート]
本実施形態の竹繊維シート10は、上記のストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とが一体に混抄されてなる。ストランド状竹繊維7は、図2(a)に示すように、個々の繊維の向きに偏りがないほぼ無配向の状態でランダムに分散して配置され、網目状の骨格構造をなす。また、パルプ状竹繊維8は、図2(b)〜(d)に示すように、ストランド状竹繊維7の間を結合するように分散して配置され、ストランド状竹繊維7の網目よりもさらに細かい網目状の補強構造をなす。つまり、ストランド状竹繊維7による大きな網目がパルプ状竹繊維8による小さな網目によって補強され、竹繊維シート10の骨格構造がより堅固なものとされる。このように、本実施形態の竹繊維シート10では、ストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とのそれぞれに機能が分化され、それらが絡み合って竹繊維シート10全体としての剛性,強度が確保される。
ストランド状竹繊維7の繊維長は、10[mm]以上とする。これにより、ストランド状竹繊維7同士が互いに交差,接触しやすくなり、網目を構成する繊維同士の接触面積が増加することになり、骨格構造がより強化される。一方、繊維長が長すぎると施工性が低下する場合があるため、好ましくは10[mm]〜30[mm]の範囲内とする。また、パルプ状竹繊維8の繊維長は、10[mm]以下とする。これにより、パルプ状竹繊維8の分散性が向上し、パルプ状竹繊維8がストランド状竹繊維7の隙間に偏りなく分布して、繊維同士を結合する。
ストランド状竹繊維7の全体に対する重量比は50[%]以上とし、パルプ状竹繊維8の重量比は50[%]以下とする。すなわち、ストランド状竹繊維7の重量比は、パルプ状竹繊維8の重量比以上とする。好ましくは、ストランド状竹繊維7の重量比を50[%]以上かつ80[%]以下の範囲内で設定する。また、パルプ状竹繊維8の重量比は、20[%]以上かつ50[%]以下の範囲内で設定する。なお、ここでいう重量比は、抄造時における重量比(竹繊維の重量混合比)のこととしてもよいし、抄造後(完成時)の重量比のこととしてもよいし、あるいは抄造後に竹繊維シート10を再び分解して計測したときの重量比のこととしてもよい。
[4.車両の内装用基材]
上記の竹繊維シート10が用いられた車両の内装用基材11の断面構造を図3に例示する。図3では、内装用基材11の構造を明示すべく、各層の厚みや幅をデフォルメして示している。この内装用基材11は、車両の内装部材の骨格構造をなすコア材12の表裏両面に、補強材としての竹繊維シート10を貼着されて構成される。コア材12は、例えば目付が200[g/m2]程度の発泡ウレタンフォームであり、表裏の竹繊維シート10を一定の間隔で保持するように機能する。また、コア材12の厚みや密度は、例えば内装用基材11に要求される吸音性能や断熱性能に応じて設定される。
竹繊維シート10は、例えば50〜150[g/m2]程度の低目付とされ、ウレタン系樹脂〔ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)+硬化促進剤〕を含む接着剤層13を介してコア材12の両面に貼着される。接着剤層13に含まれる接着剤の一部は、竹繊維シート10の内部に浸透し、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8をより強固に固定するバインダー(繊維結合剤)として機能する。
ストランド状竹繊維7は、竹繊維シート10自体の骨格構造を形成するとともに、竹繊維シート10によって挟持されるコア材12の形状を保持,固定するように機能する。一方、パルプ状竹繊維8は、竹繊維シート10の全体にむらなく分散して竹繊維同士を互いに結合するように機能する。
また、この内装用基材11が車両に取り付けられたときに車室内側となる面には、例えばポリエステル製の不織布からなる表皮材14が貼り付けられる。表皮材14は、見栄えを良くするとともに、コア材12の吸音性能を補助するように機能する。一方、車両に取り付けられたときに車体側となる裏面には、例えばポリエステル製の防水層やガスバリア性を備えた裏面カバー材15が貼り付けられる。裏面カバー材15は、製品の取り扱い作業性を向上させるべく、竹繊維シート10の露出を防止するものである。また、裏面カバー材15の防水層は、ボディーの裏面で結露した水滴の浸入や通気汚れを防止するように機能する。
[4−1.内装用基材の軽量化]
上記の通り、竹繊維シート10にはストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とが含まれているため、従前の補強材と比較して、重量あたりの強度,剛性が高い。したがって、内装用基材11に要求される強度,剛性が一定であるとすると、竹繊維シート10を使用することで全体の重量が軽減されることになる。例えば、コア材12の両面にガラス繊維シート(チョップドストランドガラスマット)を貼着したものを比較例として、同一の破断強度が得られる目付で内装用基材11を製造したときの重量を、以下の表1に示す。なお、ここではコア材12,表皮材14及び裏面カバー材15は同一仕様とした。
上記の表1によれば、補強材の目付が100[g/m2]から70[g/m2]になっており、30[%]の軽量化が図られていることがわかる。また、製品全体の重量も、比較例の約4[%]分が軽量化されている。
竹繊維シート10の比重は、ガラス繊維シートの約三分の一であり、繊維単体の強度も約三分の一である。したがって、繊維単体の強度のみに着目すれば、同一の質量で同等の強度が発揮されることになる。しかし、ガラス繊維シートと同じ質量の竹繊維シート10を同じ目付で製造すると、後者の繊維数は前者の繊維数の約三倍となるため、繊維同士の交点がほぼ三倍に増加する。一方、一般的なチョップドストランドマットの強度は、網目構造の細かさがマットの強度,剛性に大きく寄与する。したがって、シート全体の構造的な強さは、ガラス繊維シートよりも竹繊維シート10の方が大きくなる。
なお、表1の実施例では、比較例よりも接着剤の量が増加している。これは、比較例と同じ質量の竹繊維シート10をコア材12に貼着するのに要する接着材料が増加したことを意味する。竹繊維シート10の目付が70[g/m2]であることから、この竹繊維シート10に含まれる繊維数はガラス繊維シートのおよそ210[g/m2]分の繊維数とほぼ同数となる。つまり、ガラス繊維シートを使用した場合と比較して、約二倍の繊維数が竹繊維シート10に含まれていることになる。したがって、これらの繊維をコア材12に対して接着するのに要する接着剤の量もほぼ二倍になったものと考えられる。
[4−2.環境負荷の低減]
上記の表1に記載された比較例としてのガラス繊維シートには、ガラス繊維自体を集束するための接着剤と、その形状をシート状に形成する際にガラス繊維の束同士を接着するための接着剤とが使用されている。これらの接着剤は、焼却したときに僅かな残渣を生成して消滅する。一方、ガラス繊維自体はほとんど焼却されず、残渣として残存する。このため、ガラス繊維シート全体では、焼却処理を施したとしても約89[%]程度の重量分の物質が燃え残ることになる。
一方、竹は天然繊維の中では比較的、焼却残渣が多い方ではあるが、その量は重量比でおよそ5〜6[%]程度に過ぎない。また、湿式抄紙法で抄造された竹繊維シート10の場合には、基本的には竹繊維同士の接着に接着剤を必要としないため、これ以上の残渣が生じることはない。
前述の表1の最下段に、それぞれの製品を焼却した時に発生する残渣(焼却灰)の量を、元の重量で除した値を掲げてある。多くの場合、焼却灰は埋め立てによって処分されるが、ガラス繊維シートを竹繊維シート10へと切り替えることで、焼却灰の量が10分の1に軽減できるため、環境負荷の少ない製品となったといえる。
また、自動車内装部品の軽量化を進めていくにつれて、単一材料で造られていた部品の機能を材料毎に細分化して軽量化を図るという手法が多く行われるようになった。こうして造られた複合素材の多くは、素材としての再利用が技術的に困難であったり、素材に戻すために多くのエネルギーが必要となったり、コストがかさみ採算が取れないなどの理由でリサイクル対象として敬遠されている。
これに対し、本実施形態の内装用基材11では、コア材12,竹繊維シート10,表皮材14,裏面カバー材15といったそれぞれの層が燃料としても活用できる素材であり、これらを組み合わせることで、その製品が本来の役目を終えたときに、燃料として利用することが可能である。したがって、資源のリサイクル性が高まり、環境負荷の軽減になる。
[5.強度,剛性]
図4(a),(b)は、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の混抄率(重量比)を変化させたときの竹繊維シート10のシート破断強度と、上記の内装用基材11の曲げ剛性の変化を示すグラフである。図4(a)は、引張り試験機を用いて150[mm]幅の竹繊維シート10が破断したときの引張り応力を示すものである。また、図4(b)は、曲げ試験機を用いて50[mm]幅の内装用基材11の曲げ剛性を測定したものである。
シート破断強度は、図4(a)に示すように、パルプ状竹繊維8の混抄率を増加させるに連れて、MD方向(抄造時における機械方向,繊維の配向方向に同じ)及びCD方向(抄造時における機械方向に直交する方向,繊維の配向方向の直交方向と同じ)の何れにおいても上昇する。これは、パルプ状竹繊維8が互いに絡み合う部分が増加することによるものと考えられる。すなわち、パルプ状竹繊維8の絡み合いによって、繊維間で伝達される物理的な力が増加するとともに、繊維に含まれるセルロース同士の水素結合部位が増加し、シート破断強度が高められる。したがって、シート破断強度の観点からは、パルプ状竹繊維8の重量比が大きいほど好ましいと考えられる。
一方、曲げ剛性は、図4(b)に示すように、パルプ状竹繊維8の混抄率が40〜50[%]のあたりで最も大きくなり、50[%]を超えたあたりからはパルプ状竹繊維8の混抄率が増加するほど低下する。これは、パルプ状竹繊維8の混抄率の増加に伴い、相対的にストランド状竹繊維7の割合が減少することから、ストランド状竹繊維7同士の重合部分が減少し、網目状の骨格構造が減少することによるものと考えられる。したがって、竹繊維シート10の総合的な強度,曲げ剛性を考慮すれば、パルプ状竹繊維8の重量比は最大で50[%]程度とすることが好ましい。
また、パルプ状竹繊維8の混抄率が20[%]を下回ると、パルプ状竹繊維8の不足によりストランド状竹繊維7を繋ぎ止めることが困難となり、シートの厚みや目付によっては形態を維持できなくなる。このことから、適正なパルプ状竹繊維8の混抄率は20〜50[%]とする。
[6.抄造手法]
上記の竹繊維シート10は、湿式抄紙法を用いて抄造される。ここでいう湿式抄紙法とは、竹繊維を水中に分散させて抄き網で抄き取ったのち、必要に応じて乾燥,加温,加圧してシート状の竹繊維集合体を形成する手法である。湿式抄紙法では、繊維同士の接着に接着剤を必要としない。本実施形態の竹繊維シート10の製造方法においても、竹繊維同士を接着するための繊維接着剤は必須ではない。
図5(a)〜(c)は、上記の竹繊維シート10を抄造するための装置構成を例示するものである。図5(a)は丸網抄紙装置を利用したもの、図5(b)は平網抄紙装置を利用したもの、図5(c)は丸網抄紙装置と平網抄紙装置とを併用したものである。
[6−1.丸網抄紙装置]
図5(a)に示す丸網抄紙装置20aには、抄槽21,丸網22a(抄き網),ウェットフェルト23及び水流発生機24が設けられる。抄槽21は、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の混合竹繊維25が分散している水の貯留槽である。ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の重量比は、50〜80[%]:50〜20[%]に設定される。丸網22aは、抄槽21に対して回動自在に設けられたドラム状の抄き網である。丸網22aの筒面の一部は、水面よりも上方に位置するように設けられる。丸網22aは、抄槽21内の水中に分散する混合竹繊維25をその筒面に抄き取るように作用する。
混合竹繊維25は、回転する丸網22aの筒面に引っ掛かった状態ですくい取られるため、繊維の向きが丸網22aの回転方向に沿って揃いやすい。このような傾向は、丸網22aの回転速度が速いほど顕著となる。したがって、配向性を弱めたい(すなわち、特定の方向に偏ることなく全方向に対して均等に配向させたい)場合には、丸網22aの回転速度を低下させてゆっくりと混合竹繊維25を抄き上げることが好ましい。反対に、配向性を強めたい(すなわち、繊維の配向を丸網22aの回転方向に揃えたい)場合には、丸網22aの回転速度を上昇させればよい。
ただし、回転速度を変化させると、抄き上げられる竹繊維の量(目付)も変化する。回転速度を落とした場合には目付は増加し、回転速度を上げた場合には目付は減少する。これを回避し一定の目付で配向性を調整する手段として、抄槽21に供給する竹繊維を分散させた水中の竹繊維濃度を調整することが考えられる。前者の場合、すなわち回転速度を落とす場合には竹繊維濃度を下げ、後者の場合、すなわち回転速度を上げる場合には竹繊維濃度を上げるとよい。
ウェットフェルト23は、丸網22aの筒面に抄き取られた混合竹繊維25を受け取り、これを図示しない乾燥装置へと移送する搬送装置である。ウェットフェルト23と丸網22aとの間の寸法は、図示しない調整手段により任意に調整可能である。丸網22aの表面からウェットフェルト23への混合竹繊維25の移送量は、例えばウェットフェルト23と丸網22aとの間の寸法や圧力等に応じて変動する。
水流発生機24は、図5(a)中に白抜き矢印で示すように、水中の混合竹繊維25を丸網22aに押し付ける方向に流れる水流を発生させる装置である。この水流発生機24は、丸網22aの位置を基準とした抄槽21の上流側と下流側とを接続する循環通路24aと、循環通路24a上に介装された電動ポンプ24bとを備える。電動ポンプ24bは、循環通路24a内の水を混合竹繊維25とともに抄槽21の下流側から吸い込み、上流側へと圧送する。これにより、抄槽21の内部では、上流側から下流側への水流が発生し、水中の混合竹繊維25が丸網22aに対して効率的に押し付けられる。
水中に分散した混合竹繊維25は、例えば通常の抄紙工程で丸網22aに抄き取られる紙材料よりも重量が大きく、丸網22aから滑落しやすい。一方、抄槽21の内部に水流を発生させることにより、丸網22aと混合竹繊維25との接触頻度が高められる。また、水流の向きが混合竹繊維25を丸網22aに押し付ける方向とされるため、混合竹繊維25が丸網22aに引っ掛かりやすくなる。これにより、混合竹繊維25が効率的に丸網22a上に抄き取られ、竹繊維シート10の抄造効率及び生産性が向上する。
[6−2.平網抄紙装置]
図5(b)に示す平網抄紙装置20bには、抄槽21,平網22b,ウェットフェルト23及び水流発生機24が設けられる。抄槽21,ウェットフェルト23及び水流発生機24は、丸網抄紙装置20aにおけるそれぞれの要素と同一である。
平網22bは、図5(b)に示すように、コンベア状に形成された抄き網であり、水中を移動する時間が比較的長くなるように、搬送面が水中で水平よりもやや傾斜するように配置される。平網22bの傾斜の向きは、搬送面の下流側が上流側よりも高くなるような向きとされる。これにより、平網22b上には、水中に分散した状態のままの混合竹繊維25がゆっくりと抄き取られることになり、平網22b上に抄き取られた混合竹繊維25の配向性が弱められる。また、平網22bの搬送速度は、水流発生機24で発生する水流の速度に応じた速度とされ、好ましくは平網22bの近傍を流れる水流と等方向で等速度に制御される。これにより、平網22bの上に抄き取られる混合竹繊維25の配向がほぼ無配向となる。
平網抄紙装置20bは、丸網抄紙装置20aと比較して、装置自体のサイズが大きく、また高速運転にやや不向きである。一方、竹繊維の繊維長が比較的長い場合であっても配向の偏りを抑制しやすく、汎用性の高い竹繊維シート10を製造可能であるというメリットがある。
[6−3.丸網及び平網の併用]
図5(c)は、上記の丸網22a及び平網22bを併用した場合の装置構成を例示するものである。この図5(c)では、水流発生機24の記載を省略している。この抄紙装置20cは、ウェットフェルト23の搬送方向に沿って上記の丸網抄紙装置20aや平網抄紙装置20bが連設されたものであり、ウェットフェルト23上に移送される混合竹繊維25がそれぞれの抄紙装置20a,20bで重ね合わされ、配向の度合いが異なる混合竹繊維25が多層化された竹繊維シート10が形成される。
したがって、ウェットフェルト23が丸網抄紙装置20aから受け取る混合竹繊維25の厚みをW1とおき、ウェットフェルト23が平網抄紙装置20bから受け取る混合竹繊維25の厚みをW2とおくと、竹繊維シート10に要求される配向の度合いに応じて、厚みW1,W2を調整することで、配向特性を自在に変更することができる。また、竹繊維シート10の表面側と裏面側とで異なる配向特性を与えることも可能である。さらに、丸網抄紙装置20aや平網抄紙装置20bの連設数を増加させれば、より柔軟に配向特性を制御可能である。
なお、抄き網からウェットフェルト23へ移送される混合竹繊維25の量は、抄き網の駆動速度や抄き網とウェットフェルト23との隙間寸法,圧力等を制御することで変更可能である。また、抄槽21内における混合竹繊維25の濃度を変更することで、抄き網上に抄き取られる混合竹繊維25の目付を変更するような構成としてもよい。
[7.繊維の配向特性]
竹繊維シート10の配向比について、上記の丸網抄紙装置20aで製造した場合と平網抄紙装置20bで製造した場合,これらを併用した場合のそれぞれの値を表2に示す。ここでは、竹繊維シート10のシート破断強度及び基材曲げ剛性に関して、CD方向の値に対するMD方向の値の比率を配向比とする。この配向比が1に近いほど、繊維の配向性が弱い(繊維の向きに偏りがない)ことを表す。なお、シート破断強度は竹繊維シート10単体の破断強度(150[mm]幅)であり、基材曲げ剛性はコア材12の両面に竹繊維シート10を貼り付けた内装用基材11の曲げ剛性(50[mm]幅)である。
表2に示すように、丸網抄紙装置20aを用いた場合には、破断強度,曲げ剛性の双方に関して配向比が大きく、すなわち丸網22aの回転方向に沿った竹繊維の配向が強く表れている。これに対し、平網抄紙装置20bを用いた場合には、破断強度,曲げ剛性の双方に関して配向比が小さく、配向性が弱められている。平網22bの搬送速度が遅いほど、あるいは平網22bの搬送速度と水流の速度との差が小さいほど配向比が1に近づき、配向性が低下する。
また、丸網22a及び平網22bを併用した場合には、丸網22aで抄き上げられた竹繊維と平網22bで抄き上げられた竹繊維とが重層化される。したがって、配向比は丸網抄紙装置20aを用いた場合と平網抄紙装置20bを用いた場合との中間の値となる。このように、丸網22aと平網22bとを併用することで、配向性を自在に制御することが可能となる。
竹繊維シート10の配向性は、竹繊維シート10が適用される内装用基材11の形状や特性に応じて設定することが考えられる。例えば、図6(a)に示すように、縦寸法と横寸法とがほぼ等しく、かつ、車両に対する固定箇所16が部材全体にほぼ均等に分散して設けられている内装用基材11aには、全ての方向に均等な強度を発現するような特性が要求される。このような内装用基材11aには、平網抄紙装置20bで抄造された配向性の弱い竹繊維シート10を用いることが好ましい。
また、縦寸法と横寸法とが大きく異なり、かつ、車両に対する固定位置に偏りがある部材には、必ずしも全方向に均等な強度が要求されない。例えば、図6(b)に示すように、固定箇所16が内装用基材11bの長手方向の両端部のみに設けられている場合には、短手方向よりも長手方向に強度を発現するような特性が要求される。このような内装用基材11bには、丸網抄紙装置20aで抄造された配向性の強い竹繊維シート10を用いて、丸網22aの回転方向と内装用基材11bの長手方向とを揃えればよい。あるいは、丸網22aのみで製造される竹繊維シート10の配向性が強すぎる場合には、丸網22aと平網22bとを併用して抄造された竹繊維シート10を用いればよい。
なお、上記の内装用基材11bに対して平網22bのみで抄造された竹繊維シート10を適用することも可能である。しかしこの場合、長手方向の強度が十分に確保される程度の厚み,目付となるように竹繊維シート10が製造されることになり、短手方向の強度が過剰となってしまう。一方、内装用基材11bに要求される強度,方向に合わせて丸網22a,平網22bを併用して竹繊維シート10を抄造することで、必要な方向に必要なだけ材料の性能を割り振ることが可能となる。したがって、竹繊維シート10の軽量化や省資源化といったニーズに対応しやすい材料となる。
[8.フローチャート]
図7は、上記の竹繊維シート10の製造手順を例示するフローチャートである。
ステップA10の準備工程では、竹繊維シート10の原材料となる二種類の竹繊維、すなわちストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とが用意される。
これらの竹繊維を竹1の解繊から行う場合には、常温で物理的手段(例えば解繊ドラム)が用いられて、竹1の維管束2と柔組織3とが解繊される(解繊工程)。また、解繊された竹繊維のうち、0.3[mm]を超える繊維太さを持つものは、ストランド状竹繊維7に分類される。一方、0.3[mm]以下の繊維太さを持つものは、廃棄されずにパルプ状竹繊維8に分類される(分別工程)。
ステップA20の混合工程では、前ステップで用意されたストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とが水中に分散させる作業が実施される。このステップでは、例えば図5(a)〜(c)に示すように、抄槽21内の水中に竹繊維が混合される。ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の重量混合比は、少なくとも前者が後者以上とされ、好ましくは前者が50[%]以上かつ80[%]以下の範囲内、後者が20[%]以上かつ50[%]以下の範囲内とされる。
また、このステップでは、水中の混合竹繊維25を抄き網に押し付ける方向に流れる水流が生成される(水流工程)。この水流は、図5(a),(b)中に白抜き矢印で示すように、抄槽21及び循環通路24aを循環する流れである。したがって、混合竹繊維25が抄き網に引っ掛からなかったとしても、その混合竹繊維25が抄き網の上流側へと循環し、再び抄き網の近傍へと移送される。これにより、水中の混合竹繊維25が丸網22a,平網22bに対して効率的に押し付けられ、竹繊維シート10の抄造効率及び生産性が向上する。
また、抄槽21の内部に水流が形成されると、抄き網が駆動される(抄網工程)。図5(a)に示すように、丸網22aによる抄造の場合には、例えば丸網22a上に抄き上げたい混合竹繊維25の厚みや配向の度合いに応じて、丸網22aの回転速度が制御される。また、図5(b)に示すように、平網22bによる抄造の場合も同様であるが、好ましくは平網22bの近傍を流れる水流と等方向で等速度となるように、平網22bの駆動方向及び駆動速度が制御される。
抄き網を駆動することにより、ステップA30の抄造工程において、混合竹繊維25が水中から抄き取られ、ウェットフェルト23上に移送される。この混合竹繊維25は、ウェットフェルト23上で水分を除去されるとともに、続くステップA40以降の工程で脱水装置や乾燥装置,圧縮装置等に輸送され、脱水工程,乾燥工程,圧縮工程が実施された後に、最終的に竹繊維シート10が完成する。なお、ウェットフェルト23上に移送された混合竹繊維25の脱水工程や、ステップA40の乾燥工程,圧縮行程等に関しては、公知の抄造技術における同様の作業工程を転用可能である。
[9.効果]
[9−1.竹繊維シートに関するもの]
(1)本実施形態の竹繊維シート10では、竹1の部位毎に異なる維管束2の特性に鑑みて、繊維太さが0.3[mm]を超え繊維長が10[mm]以上の竹繊維がストランド状竹繊維7として採用されるとともに、繊維太さが0.3[mm]以下で繊維長が10[mm]以下の竹繊維がパルプ状竹繊維8として採用される。これにより、ストランド状竹繊維7による堅固な骨格構造を形成しつつ、パルプ状竹繊維8で繊維同士の結合性を高めることができる。したがって、竹繊維シート10の剛性,強度を向上させることができる。つまり、繊維太さで分類される二種類の竹繊維に機能を分担させることによって、竹繊維の叩解度の大小に関わらず、竹繊維シート10の剛性,強度を向上させることができる。
また、一本の竹1から解繊される竹繊維を無駄なく使用して竹繊維シート10を作成することができ、環境負荷を削減することができる。特に、通常の竹繊維の解繊時に廃棄対象となる微細なパルプ状竹繊維8(0.3[mm]以下の繊維太さを持つ竹繊維)を用いて竹繊維シート10を製造できるため、産業廃棄物量を削減することができ、環境負荷を軽減することができる。
なお、特許文献4(特許第4743108号公報)に記載されたような従来の技術と比較して、竹繊維に対する叩解処理が不要であり、抄造時間を短縮することができ、竹繊維シート10の抄造に係る作業性を向上させることができる。
(2)上記の竹繊維シート10に混抄されるストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8は、細胞壁間のリグニンが分解又は除去された竹繊維ではなく、解繊前と同等のリグニンが残存した竹繊維である。これにより、竹繊維本来の剛性,強度を活かした腰のある竹繊維シート10を得ることができ、すなわち竹繊維シート10の剛性,強度を向上させることができる。
(3)上記のストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8は、例えば解繊ドラムや解繊装置といった物理的,機械的手段により常温で解繊された竹繊維である。物理的,機械的手段により常温で解繊された竹繊維の繊維細胞には、多くのリグニンが失われることなく残存し、繊維細胞の補強効果が維持されるとともに、アルデヒド系の化合物(例えばホルムアルデヒド)や有機酸(例えば蟻酸)の発生が防止される。したがって、竹繊維本来の剛性,強度を損なうことなく活用することができ、竹繊維シート10の物理的特性を改善することができる。
(4)上記の竹繊維シート10では、ストランド状竹繊維7の重量比がパルプ状竹繊維8の重量比以上とされている。このような竹繊維の重量配分により、パルプ状竹繊維8に由来する物理的特性よりも、ストランド状竹繊維7に由来する物理的特性を優位にすることができる。つまり、ストランド状竹繊維7同士の重合箇所数や重合面積を確保することができ、網目状の骨格構造を形成しやすくすることができる。したがって、ストランド状竹繊維7で竹繊維シート10の骨格構造を確実に形成することができ、竹繊維シート10の剛性,強度を高めることができる。
(5)特に、上記の竹繊維シート10では、ストランド状竹繊維7の重量比が50[%]以上かつ80[%]以下の範囲内に設定され、パルプ状竹繊維8の重量比が20[%]以上かつ50[%]以下の範囲内で設定される。これにより、図4(a),(b)に示すように、シート破断強度と曲げ剛性との両方を向上させることができ、竹繊維シート10の総合的な強度を高めることができるとともに、剛性,強度のバランスを最適化することができる。
(6)また、上記の竹繊維シート10におけるストランド状竹繊維7の繊維長は10[mm]以上とされ、ストランド状竹繊維7同士が互いに交差しやすくなっている。したがって、網目状の骨格構造を形成しやすくすることができ、竹繊維シート10の剛性,強度をより向上させることができる。
(7)同様に、上記の竹繊維シート10におけるパルプ状竹繊維8の繊維長は10[mm]以下とされ、パルプ状竹繊維8が分散しやすくなっている。これにより、パルプ状竹繊維8をストランド状竹繊維7の隙間に偏りなく分布させることができ、網目状の骨格構造の間を均一に結合して補強することができる。したがって、竹繊維シート10の剛性,強度をより向上させることができる。
[9−2.製造方法に関するもの]
(1)本実施形態の竹繊維シート10の製造方法では、準備工程において繊維太さの異なるストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とが用意され、これらの混合竹繊維25から湿式抄紙法で竹繊維シート10が抄造される。ストランド状竹繊維7は比較的剛性が高く、竹繊維シート10の骨格構造を形成するのに適しているものの、抄槽21の内部で良好な分散性が得られない場合がある。一方、上記の製造方法では、繊維太さが0.3[mm]以下のパルプ状竹繊維8が抄槽21の内部で迅速に分散し、ストランド状竹繊維7の骨格構造の隙間を埋めるように均一に拡散する。したがって、剛性,強度の高い竹繊維シート10を製造することができる。
(2)上記の竹繊維シート10の製造方法では、図5(a),(b)に示すように、混合工程において、抄槽21中の混合竹繊維25を抄き網に押し付ける方向に流れる水流が生成される。これにより、抄き網への混合竹繊維25の定着性を高めることができ、適度な厚みの竹繊維シート10を製造することができる。また、抄き網に抄き取られる混合竹繊維25の量が増加することから、抄き網の駆動速度を速めることができ、竹繊維シート10の製造時間を短縮することができる。
(3)また、丸網抄紙装置20aを使用した場合には、丸網22aの回転方向に沿ってストランド状竹繊維7の並びを揃えることができ、竹繊維シート10の繊維配向性を強めることができる。したがって、丸網抄紙装置20aは、特定方向への強度が要求されるような竹繊維シート10を製造する場合に用いて好適である。
(4)一方、平網抄紙装置20bを使用した場合には、平網22bを用いることで、竹繊維シート10の繊維配向性を弱めることができる。したがって、平網抄紙装置20bは、全方向に均一な強度が要求されるような竹繊維シート10を製造する場合に用いて好適である。
(5)なお、平網抄紙装置20bを使用した竹繊維シート10の製造方法において、抄槽21内の水流の方向,速度と平網22bの移動方向,速度とを対応させることで、混合竹繊維25の分散性を維持したまま抄き取りを行うことができる。これにより、竹繊維の配向の偏りを抑制することができ、全方向に対してほぼ均等な剛性,強度を発現する汎用性の高い竹繊維シート10を製造することができる。
(6)また、丸網22aと平網22bとを併用した場合には、抄き網上に抄き取られた混合竹繊維25の配向性を任意に制御することができる。例えば、丸網22aで抄き取られた混合竹繊維25からなる層と、平網22bで抄き取られた混合竹繊維25からなる層とを多層化して(重ね合わせて)一枚の竹繊維シート10を製造する場合、前者の厚み,目付を大きくすれば丸網22aの回転方向への配向性が強められ、後者の厚み,目付を大きくすればその配向性が弱められる。このように、竹繊維シート10に要求される配向の度合いに応じて丸網22a及び平網22bを使い分け、あるいはこれらの動作を制御することで、所望の配向特性を持った竹繊維シート10を製造することができる。
(7)上記の竹繊維シート10の製造方法では、準備工程において、例えば解繊ドラムや解繊装置といった物理的,機械的手段により竹1の維管束2と柔組織3とが常温で解繊されて、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8が生成される。常温で機械的手段を用いて解繊した竹繊維の繊維細胞には、解繊前のリグニンの多くが失われることなく残存する。このように、繊維細胞中にリグニンが残存する竹繊維を用いることで、竹繊維本来の剛性,強度を損なうことなく活用することができ、竹繊維シート10の剛性,強度を向上させることができる。また、竹1に熱処理が加えられないことから、アルデヒド系の化合物(例えばホルムアルデヒド)や有機酸(例えば蟻酸)が生じることもなく、環境負荷を軽減することができる。
(8)上記の竹繊維シート10の製造方法では、準備工程において、竹1の外皮側から解繊された竹繊維がストランド状竹繊維7とされ、竹1の内皮側から解繊された竹繊維がパルプ状竹繊維8とされる。これにより、一本の竹1から解繊される竹繊維を無駄なく使用して竹繊維シート10を作成することができ、環境負荷を削減することができる。また、通常の竹繊維の解繊時に廃棄対象となる微細なパルプ状竹繊維8が竹繊維シート10内に混入されるため、産業廃棄物量を削減することができる。
(9)上記の竹繊維シート10の製造方法では、混合工程において、ストランド状竹繊維7の混合比がパルプ状竹繊維8の混合比以上となるように混合される。このような混抄により、ストランド状竹繊維7同士の重合箇所数や重合面積を確保することができ、網目状の骨格構造を形成しやすくすることができる。したがって、ストランド状竹繊維7で竹繊維シート10の骨格構造を確実に形成することができ、竹繊維シート10の剛性,強度を高めることができる。
(10)特に、ストランド状竹繊維7の重量比を50〜80[%]の範囲内で設定するとともに、パルプ状竹繊維8の重量比を20〜50[%]の範囲内で設定した場合には、図4(a),(b)に示すように、シート破断強度と曲げ剛性との両方を向上させることができ、竹繊維シート10の総合的な強度を高めることができるとともに、剛性,強度のバランスを最適化することができる。
(11)また、上記の竹繊維シート10の製造方法では、ストランド状竹繊維7の繊維長が10[mm]以上とされ、ストランド状竹繊維7同士が互いに交差しやすくなっている。したがって、網目状の骨格構造を形成しやすくすることができ、竹繊維シート10の剛性,強度をより向上させることができる。
(12)同様に、上記の竹繊維シート10の製造方法では、パルプ状竹繊維8の繊維長が10[mm]以下とされ、パルプ状竹繊維8が分散しやすくなっている。これにより、パルプ状竹繊維8をストランド状竹繊維7の隙間に偏りなく分布させることができ、網目状の骨格構造の間を均一に結合して補強することができる。したがって、竹繊維シート10の剛性,強度をより向上させることができる。
[9−3.車両の内装用基材に関するもの]
(1)本実施形態の車両の内装用基材11では、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の二種類の竹繊維が混抄された竹繊維シート10がコア材12の補強材として使用される。この竹繊維シート10に含まれる竹繊維はその繊維長によって分類することができ、ストランド状竹繊維7は10[mm]以上であり、パルプ状竹繊維8は10[mm]以下である。このような繊維長での分類により、網目状の骨格構造をなすストランド状竹繊維7同士を互いに交差,接触しやすくすることができ、竹繊維シート10の骨格構造を堅固なものとすることができる。また、細かい網目状の補強構造をなすパルプ状竹繊維8をストランド状竹繊維7の隙間に偏りなく分布させることができ、繊維間の結合性を高めることができる。
また、竹繊維シート10をコア材12の補強材とすることで、十分な剛性,強度を満足しつつ、内装用基材11の軽量化を図ることができ、内装用基材11としての製品性を高めることができる。
また、表1に示すように、製品を焼却したときに発生する残渣(焼却灰)の量を減少させることができ、環境負荷を大幅に削減することができる。また、竹繊維シート10は、素材の再利用性が高く、再生効率を高めることができるほか、燃料として再利用することができる。このような点においても、環境負荷の軽減効果を高めることができる。
(2)上記の内装用基材11を構成する竹繊維シート10には、解繊前と同等の量のリグニンを含有する竹繊維が使用されているため、竹繊維本来の剛性,強度を活かした腰のある竹繊維シート10を得ることができ、コア材12を竹繊維シート10で十分に補強して、内装用基材11の剛性,強度の向上を図ることができる。
(3)上記の内装用基材11を構成する竹繊維シート10には、物理的,機械的手段により常温で解繊された竹繊維が使用される。これにより、竹繊維本来の剛性,強度を損なうことなく活用された竹繊維シート10でコア材12を補強することができ、竹繊維シート10の物理的特性を改善することができるとともに、内装用基材11の剛性,強度をさらに向上させることができる。
(4)図1に示すように、ストランド状竹繊維7には竹1の外皮側の維管束2が含まれ、パルプ状竹繊維8には内皮側の維管束2が含まれる。このように、竹1の部位と繊維太さとの関係を考慮して二種類の竹繊維を混抄したものをコア材12の補強材とすることで、ストランド状竹繊維7による骨格構造をより堅固なものにしつつ、パルプ状竹繊維8により繊維結合性を高めることができる。また、一本の竹1から解繊される竹繊維を無駄なく使用して形成された竹繊維シート10を利用して内装用基材11を製造することができ、環境負荷を削減することができる。
(5)上記の内装用基材11の竹繊維シート10では、ストランド状竹繊維7の重量比がパルプ状竹繊維8の重量比以上とされている。このような竹繊維の重量配分での混抄により、パルプ状竹繊維8に由来する物理的特性よりも、ストランド状竹繊維7に由来する物理的特性を優位にすることができる。これにより、剛性,強度の高い竹繊維シート10を形成することができ、コア材12の補強効果をさらに向上させることができる。したがって、内装用基材11の剛性,強度をさらに向上させることができる。
(6)特に、上記の竹繊維シート10では、ストランド状竹繊維7の重量比が50[%]以上かつ80[%]以下の範囲内に設定され、パルプ状竹繊維8の重量比が20[%]以上かつ50[%]以下の範囲内で設定される。これにより、図4(a),(b)に示すように、シート破断強度と曲げ剛性との両方を向上させることができ、竹繊維シート10の総合的な強度を高めることができるとともに、剛性,強度のバランスを最適化することができる。したがって、内装用基材11の剛性,強度を高めることができるとともに、剛性,強度のバランスを最適化することができる。
(7)上記の内装用基材11の竹繊維シート10によれば、0.3[mm]を超える繊維太さのストランド状竹繊維7を用いてコア材12の補強材を形成することで、補強材自体の骨格構造を支える機能を高めることができ、内装用基材11の剛性,強度をさらに向上させることができる。
(8)また、上記の内装用基材11の竹繊維シート10によれば、パルプ状竹繊維8の太さを0.3[mm]以下にすることで、ストランド状竹繊維7同士を結合する機能や分散性を高めることができ、竹繊維シート10の剛性,強度をさらに向上させることができる。したがって、内装用基材11の剛性,強度をさらに向上させることができる。
[10.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
車両の内装部品においては、最終的な製品の性能要求が同一であっても、素材,形状,成形手法等の相違により、成形時のストレスに対する耐性が要求される場合がある。一方、上記の内装用基材11に適用される竹繊維シート10の場合には、パルプ状竹繊維8の一部を結合繊維に置き換えることで、このようなニーズに応えることができる。ここでいう結合繊維とは、ストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とを連結する連結材として機能する繊維を意味し、化学繊維や合成繊維のほか、天然繊維,天然繊維を含有する化学繊維,天然繊維のみを用いて化学的製法で製造された化学繊維(広義の化学繊維)等を含む。
例えば、上述の実施形態では、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の重量比を50〜80[%]:50〜20[%]としたものを例示したが、パルプ状竹繊維8の重量割合を減少させて、その重量分の結合繊維を混抄することが考えられる。この場合、図7に示すフローチャート内の混合工程でストランド状竹繊維7とパルプ状竹繊維8とを水中に分散させる際に、結合繊維を所定の重量比で混入することが考えられる。
結合繊維の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維やポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維,ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維,ポリビニルアルコール(PVA)繊維,セルロース系繊維,ポリブチレンサクシネート(PBS)繊維,ポリ乳酸(PLA)繊維,ポリエチレン繊維,脂肪族ポリエステル樹脂等が挙げられる。一方、抄紙要件を満足し、かつリグニンの分解温度を抑制するために、結合繊維は例えば、比重は 0.8〜1.5,融点は150[℃]以下,繊維太さは10〜200×10-3[mm],繊維長は5〜15[mm]程度とすることが好ましい。
以下に示す表3は、ストランド状竹繊維7の重量比を70[%]で固定し、パルプ状竹繊維8の重量比を30[%]にしたものと、そのうちの10[%]を結合繊維に置換したものについての剛性,強度の測定結果である。
内装用基材11の曲げ剛性は、パルプ状竹繊維8の配合比率の大小に関わらずほぼ一定であり、すなわち、ストランド状竹繊維7の配合比率に支配されている。したがって、ストランド状竹繊維7の重量比が一定であれば、最終的な製品の剛性は変化しないものと考えられる。
一方、竹繊維シート10の破断強度は、図4(a)に示すように、パルプ状竹繊維8の配合比率が減少するほど低下する。しかし、パルプ状竹繊維8の代わりにバインダーとして機能する結合繊維を用いることで、または結合繊維が用いられない場合は市販のパルプを用いることで、表3に示すように、竹繊維シート10の破断強度が強化される。
このように、竹繊維シート10に結合繊維を含ませることで、繊維同士の結合力を強化することができ、竹繊維シート10の強度をさらに向上させることができる。また、このような竹繊維シート10を車両の内装用基材11とした場合には、内装用基材11の強度をさらに向上させることができる。
なお、竹繊維シート10の強度が内装用基材11の成形時にのみ要求される場合(最終的な製品の性能要求としての強度が、製造過程で要求される強度よりも低い場合)には、上記の結合繊維として原料の一部ないし全部が植物由来原料で製造されたもの、または生分解性を持ったものを使用してもよい。この場合、竹繊維シート10の強度を高めつつ、環境負荷を削減することができ、製品性,商品性を高めることができる。
原料の一部ないし全部が植物由来原料で製造された結合繊維の具体例としては、例えばセルロース系繊維,ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維,ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維,ポリブチレンサクシネート(PBS)繊維,ポリ乳酸(PLA)繊維,ポリエチレン繊維等を適用すればよい。また、生分解性を持った結合繊維の具体例としては、セルロース系繊維やポリビニルアルコール(PVA)繊維,ポリブチレンサクシネート(PBS)繊維,ポリ乳酸(PLA)繊維,脂肪族ポリエステル樹脂等を適用すればよい。
また、上述の実施形態では、ストランド状竹繊維7及びパルプ状竹繊維8の両方が機械的手段により常温で解繊された竹繊維である場合について詳述したが、少なくともストランド状竹繊維7が機械的手段により常温で解繊された竹繊維であればよい。すなわち、パルプ状竹繊維8で配合量が不足する場合、その不足分を市販のパルプで補ってもよい。少なくとも、ストランド状竹繊維7が解繊前と同等の量のリグニンを細胞壁間に含有するものであれば、竹繊維シート10の堅固な骨格構造を形成することができる。
7 ストランド状竹繊維
8 パルプ状竹繊維
10 竹繊維シート(補強材)
11 内装用基材
12 コア材
13 接着剤層
20a 丸網抄紙装置
20b 平網抄紙装置
22a 丸網
22b 平網

Claims (10)

  1. 竹を解繊した竹繊維のうち0.3[mm]を超える繊維太さを持ち、外皮側の維管束を含むストランド状竹繊維と、
    前記竹繊維のうち0.3[mm]以下の繊維太さを持ち、内皮側の維管束を含むパルプ状竹繊維とを備え、
    前記ストランド状竹繊維と前記パルプ状竹繊維とが一体に混抄されてなる
    ことを特徴とする、竹繊維シート。
  2. 少なくとも前記ストランド状竹繊維が、解繊前と同等の量のリグニンを細胞壁間に含有する
    ことを特徴とする、請求項1記載の竹繊維シート。
  3. 少なくとも前記ストランド状竹繊維が、機械的手段により常温で解繊された竹繊維である
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の竹繊維シート。
  4. 前記ストランド状竹繊維の重量比が、前記パルプ状竹繊維の重量比以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の竹繊維シート。
  5. 前記ストランド状竹繊維の重量比が、50[%]以上かつ80[%]以下の範囲内であり、
    前記パルプ状竹繊維の重量比が、20[%]以上かつ50[%]以下の範囲内である
    ことを特徴とする、請求項4記載の竹繊維シート。
  6. 前記ストランド状竹繊維が、10[mm]以上の繊維長を有する
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の竹繊維シート。
  7. 前記パルプ状竹繊維が、10[mm]以下の繊維長を有する
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の竹繊維シート。
  8. 前記ストランド状竹繊維及び前記パルプ状竹繊維に対する連結材となる結合繊維を備えた
    ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の竹繊維シート。
  9. 前記結合繊維の原料の一部ないし全部が植物由来原料で製造されたものである
    ことを特徴とする、請求項8記載の竹繊維シート。
  10. 前記結合繊維が、生分解性を有する
    ことを特徴とする、請求項8又は9記載の竹繊維シート。
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