JP2014101288A - ストレス性腸障害の抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】ストレス性腸障害の予防及び治療剤を提供する。
【解決手段】ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体の腸管での水分過剰分泌の抑制剤、この抑制剤を含む、食品添加剤、動物添加剤、動物飼料及び医薬組成物。
【選択図】図5

Description

本発明は、ある種のラクトバチルス・ガセリ株の殺菌体又はその処理物を有効成分として含む、被験体の腸管での水分過剰分泌の抑制剤、或いはストレス性腸障害の抑制剤、に関する。
本発明はまた、上記抑制剤を含有する、食品添加剤若しくは動物飼料添加剤、或いは、食品又は医薬組成物に関する。
ラクトバチルス(Lactobacillus)属の乳酸菌にストレス抑制作用や胃腸疾患に有効である可能性を示す先行技術文献が、以下に例示するようにいくつか散見される。
例えば、特開2009-102292号公報(特許文献1)には、ラクトバチルス・パラカゼイ・サブスピシズ・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)である乳酸菌FERM P-19169を有効成分とし、サイトカイン産生調節作用、感染防御作用、肥育作用又は下痢抑制作用に基づくストレス抑制剤が記載されている。この文献では、ストレス抑制とは、ストレスを引き起こす外部刺激であるストレッサーにより生じた生体の非特異的反応を抑制することによって、食欲減退、消化不良、不眠、体調不良、感染症などの症状を緩和することができると記載されている。
特開2009-100692号公報(特許文献2)及び特開2008-212140号公報(特許文献3)には、ストレス軽減作用を有するラクトバチルス属微生物を含有することを特徴とする哺乳動物用乳酸菌製剤が記載されており、特定の乳酸菌を、哺乳動物に投与することにより、優れたストレス軽減効果を発揮し、ストレスに起因する下痢症などの消化器疾患を予防及び治療し得ると記載されている。
日本特許第4350170号公報(特許文献4)には、ヒト及び動物における胃腸障害の予防及び/又は処置に必要な薬学的調製物であって、寄託番号NCIMB 40564を有するラクトバチルス・カゼイ・ラムノーサス(Lactobacillus caseisubsp. rhamnosus)LB21の生存可能な微生物株を、微生物がその生存性を維持している少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリア媒体に含むことを特徴とする、薬学的調製物が記載されている。
特開2011-200211号公報(特許文献5)には、ラクトバチルス・ガセリMCC1183株を含有する抗潰瘍剤が記載されており、この薬剤は、ヘリコバクター・ピロリに起因する胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の予防又は治療に用いられると記載されている。
特表2009-511471号公報(特許文献6)には、自己免疫疾患の治療及び/又は予防のための薬学的組成物の製造のための、乳酸菌から選択された少なくとも1種のプロバイオティクス細菌 (Probiotic bacteria) 株の使用が記載されており、該自己免疫が、多発性硬化症(MS)、アレルギー、乾癬、関節リウマチ(rhematoid arthritis)、クローン病(Crohn’s disease)、潰瘍性大腸炎、I型糖尿病、炎症性腸疾患、及び全身性エリテマトーデスなどの臓器特異的自己免疫(organ specific autoimmunity)からなる群から選ばれる、また、乳酸菌株が、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からなる群より選ばれると記載されている。
日本特許4853986号公報(特許文献7)には、ラクトバチルス・ガセリSBT2055(LG2055という)(FERM P-15535)の菌体又はその発酵産物を有効成分とする炎症性腸疾患及び/又は過敏性腸症候群の予防及び治療剤が記載されており、また、一般に過敏性腸症候群の治療について、心理的ストレスのコントロールを行うとともに、整腸薬、緩下薬から抗精神病薬まで、症状に応じた段階的な薬物治療が施されていると記載されている。
澤田大輔ら、第13回腸内細菌学会(平成21年)、東京、日本(非特許文献1)には、ラクトバチルス・ガセリCP2305株の生菌体によるストレス緩和作用、例えばストレス性腹痛を改善することが記載されている。
Daisuke Sawada et al., The 10th Symposium on Lactic acid bacteria (2011年)、オランダ国、Federation of European Microbiological Societies (FEMS)と Netherlands Society for Microbiology (NVvM)(非特許文献2)には、過敏性腸症候群(IBS)患者にCP2305株生菌体を投与したことが記載されているが下痢症状緩和に関する記載はない。
特開2003-95963号公報(特許文献8)には、ラクトバチルス・ガセリの菌体又はその発酵産物による炎症性腸疾患又は過敏性腸症候群の予防及び治療剤が記載されている。
特開2009-102292号公報 特開2009-100692号公報 特開2008-212140号公報 日本特許第4350170号公報 特開2011-200211号公報 特表2009-511471号公報 日本特許4853986号公報 特開2003-95963号公報
澤田大輔ら、第13回腸内細菌学会(平成21年)、東京、日本 Daisuke Sawada et al., The 10th Symposium on Lactic acid bacteria (2011年)、オランダ国、Federation of European Microbiological Societies (FEMS)と Netherlands Society for Microbiology (NVvM)
乳酸菌の一種であるラクトバチルス・ガセリの生菌体が、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群(IBS)などの胃腸障害の予防又は治療に有効であるという記載はある。また、そのような胃腸障害には、ストレスとの関係を推定する記載もある。しかし、従来、ラクトバチルス・ガセリの殺菌体(死菌体ともいう)について、その生菌体と同様に、胃腸障害、特に、水分過剰分泌抑制作用、特に、ストレス性下痢に対して予防又は治療効果があるということは明確に記載されていない。
そして、従来、ラクトバチルス・ガセリ株が、脳内ストレスホルモンが分泌されるようなストレスに曝露された状況下で、過剰な腸運動を正常に保持しながら、ストレス性下痢症状を有意に改善することについての記載がない。特に、IBS患者と区別される健常人に対するストレス負荷によるストレス性下痢の抑制(軽減もしくは緩和)に関する記載はない。
本発明の目的は、ラクトバチルス・ガセリの殺菌体又はその菌体処理物を、水分過剰分泌、或いは、水分過剰分泌が関係するストレス性腸障害、例えばストレス性下痢又はストレス性腹痛、の予防及び治療のために使用することである。
本発明は、以下の特徴を包含する。
(1) ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体の腸管での水分過剰分泌の抑制剤。
(2)ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体のストレス性腸障害の抑制剤。
(3) 前記菌体処理物が、乾燥菌体、破壊菌体、破砕菌体又は殺菌発酵乳である、上記(1)又は(2)に記載の抑制剤。
(4)ストレス誘発性骨盤(副交感)神経活動の抑制を阻害する作用を有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抑制剤。
(5)大腸クロライドチャネルを抑制する作用を有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の抑制剤。
(6) ストレス性下痢を抑制する作用を有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の抑制剤。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抑制剤を動物飼料成分と配合して、ストレス性腸障害軽減効果を有する動物飼料を製造することを含む、動物飼料の製造方法。
(8) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抑制剤を含む動物飼料。
(9) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抑制剤を含有する食品添加剤又は動物飼料添加剤。
(10) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抑制剤を食品用の担体、賦形剤又は希釈剤と混合し、場合により食品添加物をさらに混合して、ストレス性腸障害軽減効果を有する機能性飲食品を製造することを含む、機能性飲食品の製造方法。
(11) ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体のストレス性腸障害を予防、軽減又は治療するための医薬組成物。
(12) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の抑制剤と、薬学的に許容されうる担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、被験体のストレス性腸障害を予防、軽減又は治療するための医薬組成物。
(13) ストレス性腸障害の症状を抑制する、上記(11)又は(12)に記載の医薬組成物。
本発明のラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、又はその混合物は、ストレス誘発性骨盤(副交感)神経活動の抑制を阻害して腸運動を正常に保持すること、並びに、被験体の腸管での水分過剰分泌を顕著に抑制するため、ストレス性腸障害、とりわけ該腸障害の下痢症状を抑制することができるという格別の作用効果を付与する。
この図は、CRF誘発下痢モデルに対するラクトバチルス・ガセリCP2305株の生菌体、殺菌体及び派生株殺菌体の影響を示す。プラセボは、CP2305株非含有の陰性対照である。また、*は、危険率pが0.05未満であることを示す。 この図は、CRF誘発下痢モデルに対する各種乳酸菌投与の影響を示す。乳酸菌は、ラクトバチルス・ガセリCP2305株の生菌体、公知寄託菌株A(L. gasseri)および市販生菌製剤B(L. acidophilus 含む)である。プラセボは、CP2305株非含有の陰性対照である。また、*は、危険率pが0.05未満であることを示す。 この図は、CRF誘発後の結腸クロライド・チャネル関連遺伝子発現変動を示す。プラセボ群でCRF投与後に増加するクロライド・チャネル関連遺伝子を、CP2305株投与群では抑制することを示している。図中、Agtはangiotensinogen (serpin peptidase inhibitor, clade A, member 8)、Adcy5はadenylate cyclase 5、Adora1はAdenosine receptor A1、Ngfはnerve growth factor (beta polypeptide)、Igf2はinsulin-like growth factor 2、Igf1はinsulin-like growth factor 1 を表す。 この図は、各種乳酸菌の殺菌発酵乳の投与が大腸の神経刺激誘発のイオン輸送に及ぼす影響を示す。縦軸は、イオン分泌のパーセンテージを、プラセボ(陰性対照)のイオン分泌を100%とした時の値を示す。図中、A:公知寄託菌株A(L. gasseri)、B:L. acidophilus、C:B. pseudocatenulatum、D:L. delbrueckii、E:S. thermophilus、F:L. kefirgranumを示す。#は、危険率pが0.05未満であることを示す。 この図は、CP2305株、公知寄託菌株A(L. gasseri)及びL. acidophilusの各殺菌体の投与がラット大腸(遠位結腸)の神経刺激誘発のイオン輸送に及ぼす影響を示す。縦軸は、イオン分泌のパーセンテージを、プラセボ(陰性対照)のイオン分泌を100%とした時の値を示す。*は、危険率pが0.05未満であることを示す。 この図は、ラット大腸(遠位結腸)のイオン輸送に対するCP2305株の生菌体と殺菌体、CP2305株の生菌発酵乳と殺菌発酵乳の投与の影響を示す。縦軸は、イオン分泌のパーセンテージを、プラセボ(陰性対照)のイオン分泌を100%とした時の値を示す。#は、危険率pが0.05未満であることを示す。 この図は、骨盤(副交感)神経に対するCP2305株投与の影響を示す。 この図は、本発明に関する実験における下痢スコアを算出するための、糞便スコア基準を示したものである。糞便の「水分状況」・「形状」によって糞便スコアを1〜4の4段階で評価を行った(表中の糞便の色は糞便スコア基準の対象としないが、本発明の効果を示すための参考情報として付する。)。
本発明をさらに具体的に説明する。
<腸管での水分過剰分泌の抑制剤>
本発明は、第1の態様により、ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)(以下、単に「CP2305株」とも称する。)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体の腸管での水分過剰分泌の抑制剤を提供する。
本明細書中の「被験体」は、哺乳類及び鳥類に属する動物、好ましくはヒトなどの霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウなどの家畜動物、ウマなどの競技用動物、イヌ、ネコなどの愛玩動物などである。
ラクトバチルス・ガセリCP2305株は、本出願人により、ブダペスト条約の規定に基づく国際寄託機関である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、2007年9月11日付でFERM BP-11331として国際寄託されている。
CP2305株の派生株もまた、親株と同等の、腸管での水分過剰分泌の抑制効果を有する(図1参照)。派生株は、親株に紫外線を照射すること、変異原性物質の存在下で親株を培養すること、至適温度以外の温度で培養すること、有機溶剤存在下で培養することなどの、親株にとって非一般的な条件下に親株を置くことによって作製可能である。
関連する公知ラクトバチルス・ガセリ株に関して、炎症性腸疾患又は過敏性腸症候群の予防・治療効果があるラクトバチルス・ガセリSBT 2055株(FERM P-15535)が知られている(特開2003-95963号公報)。この菌は、日本人の腸から分離・培養された乳酸菌であり、DDS誘発潰瘍性大腸炎モデルを使用した生菌での試験では、対照群に比べて血便や下血が抑制されたと報告されている。また、腸内菌叢を改善して下痢の発症を低減するラクトバチルス・ガセリOLL2716株(FERM BP-6999)が知られている(特開2004-305128号公報)。その実施例では、仔牛の飼育の間に下痢の発生率(試験牧場に導入後2週間以内に下痢を発生した率)が低下したと記載されている。しかし、これらの公知ラクトバチルス・ガセリ株は、生菌体でのみ、その効果が実証されているが、殺菌体での効果が示されていないうえに、以下に記載するように、本発明のCP2305株と明らかに異なる株である。
本発明のCP2305株は、殺菌体において、生菌体や生菌発酵乳と比べて、意外にも格別に、腸管からの水分過剰分泌を抑制する作用を有している(図5及び図6参照)。この作用は、本発明のラクトバチルス・ガセリCP2305株の殺菌発酵乳を、公知の寄託ラクトバチルス・ガセリ株、L. acidophilus、B. pseudocatenulatum、L. delbrueckii、S. thermophilus及びL. kefirgranumの殺菌発酵乳と比較した場合であっても、格別有意である(図4参照)。腸管からの水分過剰分泌の抑制は、CRF投与ラットの結腸組織での遺伝子発現の網羅的解析により、CP2305株が、大腸クロライドチャネルを抑制し、水分の移動を制御していることによることが立証された(図3参照)。このCP2305株はまた、今回、ストレス誘発性骨盤(副交感)神経活動の抑制を阻害する作用を有することが、下部大腸を神経支配する骨盤(副交換)神経の電気活動を測定することによって証明された。CP2305株の投与によって、被験体のストレス時の腸管機能が正常に回復し維持される。このため、CP2305株は、下痢型ストレス性腸障害の下痢症状を有意に軽減するという格別の効果を有する。
本発明のラクトバチルス・ガセリCP2305株は、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を使用して、適当な条件下で培養することにより調製することができる。培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、乳酸菌の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよく、当業者であれば使用する菌株に適切な公知の培地を適宜選ぶことができる。炭素源としてはラクトース、グルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、廃糖蜜などを使用することができる。また、窒素源としてはカゼインの加水分解物、乳漿タンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物等の有機窒素含有物を使用することができる。無機塩類としては、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばMRS液体培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Broth、獣乳、脱脂乳、乳性ホエーなどが挙げられる。好ましくは、滅菌されたMRS培地を使用することができる。
また、本発明のCP2305株の培養は、20℃〜50℃、好ましくは25℃〜42℃、より好ましくは約37℃において、嫌気的培養条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。ここで、嫌気条件下とは、菌が増殖可能な程度の低酸素環境下のことであり、例えば嫌気チャンバー、嫌気ボックス又は脱酸素剤を入れた密閉容器若しくは袋などを使用することにより、あるいは単に培養容器を密閉することにより、嫌気条件とすることができる。培養は、静置培養、振とう培養、タンク培養などのいずれの培養様式でもよい。また、培養時間は3時間〜100時間又はそれ以上、好ましくは約10 時間〜50時間とすることができる。培養開始時の培地のpHは3.5〜8.0に維持することが好ましい。
培養後、培養液から濾過、遠心分離等の分離技術により分離した生菌体、或いは生菌体含有培養液を、オートクレーブ等による公知の殺菌処理にかけることによって、殺菌体を得ることができる。また、生菌体又は生菌体培養液から菌体処理物を作製し、必要に応じて殺菌処理にかけることができる。
菌体処理物は、菌体を、乾燥処理、破壊又は破砕処理、発酵処理などの物理的、化学的、生物学的処理等にかけることによって得られるものである。したがって、本発明で使用する菌体処理物の例は、乾燥菌体、破壊菌体、破砕菌体、発酵処理物(例えば、発酵乳)などである。
乾燥菌体は、上記培養液から分離した菌体を殺菌処理にかけたのち、乾燥処理にかけることによって得ることができる。乾燥処理としては、例えばドラム乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などを挙げることができる。
破壊菌体又は破砕菌体は、菌体を、破砕、磨砕、酵素処理、薬品処理、溶解などによって処理することによって得ることができる。破壊菌体又は破砕菌体は、破壊又は破砕された菌体の固体成分及び可溶性成分のすべてから本質的になり、例えば破壊物又は破砕物をそのまま凍結乾燥にかけることによって得ることができる。破壊又は破砕は、公知の手法、例えば物理的破砕、酵素溶解処理、薬品処理、等によって行うことができる。物理的破砕は、湿式又は乾式のいずれで行ってもよく、ホモゲナイザー、ボールミル、ビーズミル、ダイノミル、遊星ミル等を使用した撹拌により、ジェットミル、フレンチプレス、細胞破砕機、等を使用して行うことができる。酵素溶解処理は、例えばリゾチームなどの酵素を用いて、菌の細胞構造を破壊することによって行うことができる。薬品処理は、グリセリン脂肪酸エステル、ダイズリン脂質などの界面活性剤を使用して、菌の細胞構造を破壊することによって行うことができる。好ましくは、物理的破砕である。
破砕物を調製するための具体的な方法は、例えば、菌の懸濁液を、公知のダイノミル細胞破砕機(DYNO-MILL破砕装置など)において、ガラスビーズを使用して、周速10.0〜20.0m/s(例えば約14.0m/s)、処理流速0.1〜10L/10min(例えば約1L/10min)にて、破砕槽温度10〜30℃(例えば約15℃)で1〜7回(例えば3〜5回)処理することによって、菌体を破砕することを含む。また例えば、菌の懸濁液を、公知の湿式ジェットミル細胞破砕機(JN20 ナノジェットパルなど)において、吐出圧力50〜1000Mpa(例えば270MPa)、処理流速50〜1000(例えば300ml/min)にて、1〜30回(例えば10回)処理することによって、菌体を破砕することができる。また、公知の乾式遊星ミル細胞破砕機(GOT5 ギャラクシー5など)において、菌体粉末を各種ボール(例えばジルコニア製10mmボール、ジルコニア製5mmボール、アルミナ製1mmボール)共存下で、回転数50〜10,000rpm(例えば240rpm、190rpm)で30分〜20時間(例えば5時間)処理することによって、菌体を破砕することも可能である。菌体粉末を公知の乾式ジェットミル細胞破砕機(ジェットOマイザーなど)において、供給速度0.01〜10000g/min(例えば0.5g/min)、吐出圧力1〜1000kg/cm2(例えば6kg/cm2)の圧力にて、複数回処理することによって、菌体を破砕してもよい。
発酵乳は、生乳、脱脂粉乳又は豆乳などに菌株を接種し、乳酸菌発酵条件にて発酵を行うことによって得ることができる。得られる発酵産物は、必要に応じて、濾過、希釈、濃縮などの処理にかけてもよい。
上記の菌体及び菌体処理物は、殺菌処理にかけて殺菌体を得ることができる。殺菌処理は、例えば高エネルギー線照射による殺菌、加熱殺菌、加圧殺菌、オートクレーブ殺菌などの公知の処理を含む。好ましい殺菌法は、オートクレーブ殺菌である。この方法は、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)内で、生菌又は生菌含有培養液を、例えば約10分〜1時間にわたり、加圧水蒸気下で例えば110℃〜140℃の温度で殺菌することを含む。
上記の特性のために、本発明のCP2305株の殺菌体又はその菌体処理物は、下痢を伴う症状に有効である。
明細書中「ストレス性下痢」とは、脳内ストレスホルモンが分泌されるようなストレスに曝露された状況下、すなわちストレスに起因する腸管での水分過剰分泌を伴う症状である。
明細書中「ストレス性下痢」とは、脳内ストレスホルモンが分泌されるようなストレスに曝露された状況下、すなわちストレスに起因する腸管での水分過剰分泌を伴う症状であり、腹痛を伴う場合と伴わない場合がある。
明細書中「ストレス性腹痛」とは、脳内ストレスホルモンが分泌されるようなストレスに曝露された状況下、すなわちストレスに起因する腸管における腹痛を意味する。
したがって、特に、健常人に対するストレスに起因するストレス性の症状に有効である点において、明細書中「ストレス性下痢」「ストレス性腹痛」は、過敏性腸症候群(IBS)の患者と区別される。IBSの診断基準は、RomeIIIに規定されており、ストレス環境の有無に関係なくQOLの低い患者である。
明細書中、ストレス性下痢とストレス性腹痛をあわせて、「ストレス性腸障害」と呼ぶ。
したがって、明細書中、「ストレス性腸障害の下痢症状」とは、ストレス性下痢の症状を意味する。
明細書中、「水分過剰分泌の抑制剤」とは、ストレス起因か否か関係なく、腸管での水分過剰分泌を抑制できる剤を意味する。
すなわち、腸管での異常な水分分泌を伴う、腹痛を伴う若しくは腹痛を伴わない腸障害、さらに、ストレスに起因する異常な腸運動と腸障害、あるいは、下痢症状の悪化の予防又は治療に有効である。
本発明の抑制剤は、CP2305株の殺菌体、その菌体処理物、又はその混合物からなる有効成分を、以下のものに限定されないが、該抑制剤あたり、例えば約0.1重量%〜100重量%、好ましくは約10重量%〜約90重量%含有する。
上記抑制剤は、上記有効成分の他に、賦形剤、希釈剤又は担体、必要に応じてその他の添加物を含むことができる。その形態は、固体形態又は液体形態のいずれでもよい。固体形態は、例えば粉末、顆粒、タブレット、ペレットなどの任意の形状からなる。また、液体形態は、例えば懸濁液、乳濁液、発酵液(例えば発酵乳)などの形状である。
賦形剤、希釈剤又は担体は、以下に述べるような食品、動物飼料又は医薬品で通常使用されうる物質である。他の添加物は、必ずしも必要ないが、添加する場合、以下に記載されるような、例えば保存料、pH調整剤、乳化剤、酸化防止剤、着色料などを挙げることができる。
<食品又は動物飼料>
本発明は、第2の態様により、上記抑制剤を含有する食品添加剤又は動物飼料添加剤を提供する。
上記抑制剤が、有効成分の他に、賦形剤、希釈剤又は担体、及びその他の添加物を含む場合、食品添加剤又は動物飼料添加剤として使用することができる。これらの食品添加剤又は動物飼料添加剤は、固体形態又は液体形態のいずれでもよい。固体形態は、例えば粉末、顆粒、タブレット、ペレット、ゲル、カプセルなどの任意の形状からなる。また、液体形態は、例えば懸濁液、乳濁液、発酵液(例えば発酵乳)などの形状である。賦形剤、希釈剤又は担体は、食品又は動物飼料で通常使用されうる物質であり、また他の添加物は、例えば保存料、pH調整剤、乳化剤、着色料、栄養補助剤、(天然若しくは人工)甘味料、調味料、香料などを挙げることができる。
食品添加剤又は動物飼料添加剤は、上記抑制剤を、以下のものに限定されないが、添加剤あたり、例えば約1重量%〜約50重量%、好ましくは約5重量%〜約20重量%含有することができる。
食品添加剤又は動物飼料添加剤は、食品又は動物飼料に添加して、被験体の腸管での水分過剰分泌を抑制するために、或いはストレス性下痢を軽減するために、使用することができる。
本発明はさらに、上記の抑制剤を含む動物飼料、或いは、上記の抑制剤を動物飼料成分と配合して、被験体の腸管での水分過剰分泌を抑制しストレス性下痢の軽減効果を有する動物飼料を製造することを含む、動物飼料の製造方法を提供する。
すなわち、動物飼料を製造するための飼料成分に、本発明の抑制剤を有効量配合し、必要であれば任意の剤型に製剤化することによって動物飼料を製造することができる。
本発明はさらに、上記の抑制剤を含む機能性食品、或いは、上記の抑制剤を食品用担体、賦形剤又は希釈剤と混合し、場合により食品添加物をさらに混合して、被験体の腸管での水分過剰分泌を抑制しストレス性下痢の軽減効果を有する機能性飲食品を製造することを含む、機能性飲食品の製造方法を提供する。
動物飼料又は機能性飲食品において、上記抑制剤の配合量は、飼料や飲食品の形態や求められる効果(すなわち、被験体の腸管での水分過剰分泌を抑制しストレス性腸障害の下痢症状の軽減効果)を考慮して、当業者が適宜定めることができる。動物飼料又は機能性飲食品中のCP2305株の殺菌体及び/又は菌体処理物の総量が、以下のものに限定されないが、該菌の生菌量として、105〜1012cfu/g、好ましくは106〜約1012cfu/g、より好ましくは107〜1012cfu/gに相当する量であるか、或いは、該菌の量として、例えば0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%となるような量である。その有効量は、添加量と下痢症状の軽減効果との関係に基づいて、当業者が適宜設定することが可能である。
動物飼料の剤型は、固体形態の場合、例えば粉末、顆粒、タブレット、ペレットなどの任意の形状からなり、また、液体形態の場合、例えば懸濁液、発酵乳などの形状である。
機能性食品の剤型は、固体形態の場合、例えば粉末、顆粒、タブレット、ペレット、ゲル、カプセルなどの任意の形状からなり、また、液体形態の場合、例えば懸濁液、乳濁液、発酵乳などの形状である。
上記の剤型中、タブレット、ペレット及びカプセルは、必要であれば、腸溶性となるように腸溶性物質で単層又は多層にコーティングすることができる。腸溶性物質は、胃液等の酸性域のpHで溶けず、中性域のpHで溶解するものであり、例えばヒプロメロースフタル酸エステル、セラック、ゼイン、ラクトフェリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどを挙げることができる。
賦形剤、希釈剤又は担体は、以下のものに限定されないが、水、乳発酵液、炭酸水、エタノール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、スターチ、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどを挙げることができる。
動物飼料又は機能性飲食品の製造においては、飼料又は飲食品に慣用的に使用されるような各種添加物を使用しうる。添加物としては、以下のものに限定するものではないが、着色料(植物色素、合成色素等)、香料(天然香料等)、甘味料(ステビア、アステルパーム等)、保存料(酢酸ナトリウム、ソルビン酸等)、乳化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)、酸化防止剤(EDTA二ナトリウム、ビタミンC等)、pH調整剤(クエン酸等)、化学調味料(イノシン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等)、増粘剤(キサンタンガム等)、膨張剤(炭酸カルシウム等)、消泡剤(リン酸カルシウム)、結着剤(ポリリン酸ナトリウム等)、栄養強化剤(カルシウム強化剤、ビタミンA等)、等が挙げられる。その他、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、酸味料、安定剤、フレーバー、天然物エキスなどを配合しうる。配合量は、添加物としての効果が発揮される量であり、適宜選択可能である。
<医薬組成物>
本発明はさらに、ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体のストレス性腸障害を予防、抑制(軽減)又は治療するための医薬組成物を提供する。
或いは、本発明は、上記の抑制剤と、薬学的に許容されうる担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、被験体のストレス性腸障害を予防、抑制(軽減)又は治療するための医薬組成物を提供する。
いずれの医薬組成物においても、本発明の有効成分は、ストレス性下痢を抑制する効果を有する。
CP2305株の殺菌体又はその菌体処理物は、上記のとおり、ストレス誘発性骨盤(副交感)神経抑制を阻害する作用、すなわち抗ストレスにより腸管運動を正常に維持する働きを有すること、及び、大腸クロライドチャネルを抑制し、それによって腸管での水分過剰分泌を抑制する作用を有する。ストレスは、ストレスに過敏な胃腸障害をもたらし、該障害の症状を悪化させる。本発明のCP2305株の殺菌体は、ストレス性腸障害の頻発の下痢症状を抑制するため、ストレス性腸障害の予防、抑制(軽減)又は治療のために有効である。この効果は、市販されるいずれのラクトバチルス・ガセリ株製剤と比較しても高いことが確認された。
医薬組成物は、上記効果を発揮するかぎりいずれの剤型に製剤化しうる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、乳濁剤、発酵乳剤などであり、経口製剤、坐剤など、特に経口製剤が好ましい。
本発明の有効成分に、薬学的に許容される通常用いられる賦形剤、担体、希釈剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、安定剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、芳香剤、酸味料、着色剤などの添加物を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。これらの物質の例は、上記の物質である。
医薬組成物中のCP2305株の殺菌体及び/又は菌体処理物の総量が、以下のものに限定されないが、該菌の生菌量として、105〜1012cfu/g、好ましくは106〜約1012cfu/g、より好ましくは107〜1012cfu/gに相当する量であるか、或いは、該菌の量として、例えば0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%となるような量である。その有効量は、添加量と下痢症状の軽減効果との関係に基づいて、当業者が適宜設定することが可能である。
好ましい投与法は、経口投与又は坐剤投与である。
本発明の医薬組成物は、ストレス性腸障害とりわけこれらの疾患における下痢症状やストレス時の下痢症状の悪化、の予防、抑制(軽減)又は治療に有効である。
以下に実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に制限されないものとする。
[実施例1]
SD雄ラット(4週齢、日本チャールス・リバー社製)を12時間毎の明暗周期下(8時より12時間点灯)で1週間飼育後、試験菌体配合餌を以下のように3週間自由摂取させた。
a)餌は、オリエンタル酵母株式会社のCRF-1粉末餌を使用した。
b)上記餌(CRF−1)25gに対し、菌数2.0×1010個が含まれる試験菌体の凍結乾燥粉末を配合(餌CRF-1:25gに対し、凍結乾燥粉末0.25g)し、試験菌体配合餌とした。
c)試験菌体配合餌を3週間自由摂取させた。
d)この試験による菌体摂食量はおおよそ2.0×1010個/日と推定された。
e)各群19匹に摂取させた。
3週間後、CRF(Corticotropin Releasing Factor、アナスペック社製、USA)溶液を125μg/kg腹腔内投与し、ストレス性下痢を誘発させ、CRF投与後の100分間の糞便状況を以下に記載する下痢スコアにて評価し、試験菌体のストレス性下痢抑制を評価した。
下痢スコアの定義は、以下のとおりである。
(a)CRF投与後の100分間の糞便を10分間隔で10回採取する。
(b)各回で採取した糞便の重量をg単位で測定する(各回の糞便重量(i値))。
例えば、ある回の糞便重量が0.4gであった場合は、i値=0.4とする。
(c)各回で採取した糞便について、糞便の水分状況及び形状から図8に示す糞便スコア基準により、各回の糞便スコアとして数値化する(各回の糞便スコア(ii値))
(d)各回の糞便重量(i値)×各回の糞便スコア(ii値)を求める。
(e)各回で求めた、糞便重量(i値)×糞便スコア(ii値)の10回分の総和を「下痢スコア」と定義する。
(f)これによって、CRF投与後100分間の糞便状況を評価した。
その結果、本発明のラクトバチルス・ガセリCP2305株の生菌体及び殺菌体は、プラセボ(CRF-1のみ)と比較して、有意にストレス性下痢を抑制した(図1)。
[実施例2]
比較対象とした寄託菌株A菌体の結果は、CP2305株と同菌数投与した結果である。また、市販生菌製剤Bの結果は、ヒト1日分の摂取用量の重量をラットの体重換算で、単位体重あたり同量となるよう投与した結果である(図2)。公知寄託菌株A(L. gasseri)及び市販生菌製剤B(L. acidophilus 含む)ではストレス性下痢が抑制されず、CP2305株(生菌体)のみ有意なストレス性下痢の抑制を確認した(図2)。したがって、CP2305株(殺菌体)においても、従来の乳酸菌よりも効果があることが示された。
[実施例3]
さらにまた、CRF投与4時間後に解剖を実施し、結腸組織をISOGEN(ニッポンジーン)およびRNeasy Mini Kit(Qiagen,USA)にて総RNAを抽出後、遺伝子発現をRat whole genome ver. 3 (G4847B,Agilent,USA) で網羅的に解析を行った。その結果、プラセボ群でCRF投与後に増加するクロライド・チャネル関連遺伝子を、CP2305株投与群では抑制することを確認した(図3)。従って、CP2305株はクロライドチャネルを抑制し、水分の移動を制御していると考えられる。
[実施例4]
SDラット(体重380〜400g、日本SLC社製)を麻酔後、断頭、放血屠殺し、解剖学的基準により遠位結腸(distal colon)摘出し、実態顕微鏡下で輪走筋および縦走筋層を剥離し、粘膜下神経叢を含む粘膜−粘膜下神経叢標本を作製した。標本を測定面積0.64cm2のUssing chamber(CHM2, WPI, FL, USA)に装着し、標本の粘膜側−漿膜側間に生じる電位差及び短絡電流short-circuit current(ISC)を測定した。1分間に3秒間10mVのコマンドパルスを組織に与え、短絡電流の変化量から膜コンダクタンス(Gt)を算出した。basel ISC およびGtが安定したところで粘膜下神経に電気刺激(25V, duration of 0.5ms, 5Hz, 120s)を行い組織の状態を確認した。その後、試験乳酸菌の菌体または発酵乳の希釈溶液(500μg/ml)を粘膜側に投与し、ISCおよびGtの変化を測定し、神経刺激誘発により発生するCl/HCO3 分泌に対する試験物質の影響を評価した。
各種乳酸菌の殺菌発酵乳の影響を評価した結果、CP2305株の殺菌発酵乳は、公知寄託菌株A(L. gasseri)及び他の5菌株(B〜F)よりも強くイオン分泌を抑制し、水分分泌を制御し、下痢抑制に寄与していることが示唆された(図4)。
[実施例5]
さらに、ラット大腸(遠位結腸)の神経刺激誘発のイオン輸送に及ぼす菌体のみの影響を評価するために、各種乳酸菌の殺菌体を調製し、投与した結果、CP2305株殺菌体は、公知寄託菌株A(L. gasseri)殺菌体及びL. acidophilus殺菌体と比較し、有意にイオン分泌を顕著に抑制し、下痢抑制に強く寄与していることが示唆された(図5)。
さらにまた、ラット大腸(遠位結腸)の神経刺激誘発のイオン輸送に及ぼすCP2305株の生菌体、生菌発酵乳、殺菌体、殺菌発酵乳の投与による影響を調べた結果、そのすべての形態で、とりわけCP2305株殺菌体で、下痢抑制に強く寄与していることが示された(図6)。
[実施例6]
SD系雄ラット(4週齢、株式会社紀和動物製)を12時間毎の明暗周期下(8時より12時間点灯)で1週間飼育後、CP2305株配合餌もしくは未配合対照粉餌を3週間自由摂食させた。実験当日はラットを3時間絶食させた後、ウレタン麻酔し、頚静脈に静脈投与用のカニューレを挿入し、その後、下部大腸を神経支配する骨盤(副交感)神経を銀電極で吊上げ、その電気活動を測定した。測定値が安定した時期にCRF溶液(1μg/kg)を頚静脈投与し骨盤神経の電気活動(PNA)の変化を電気生理学的に測定した。データは5分間毎の5秒あたりの発火頻度の平均値にて解析し、頚静脈投与直前の値(0分値)を100%として百分率で示した。その結果、ストレスホルモン(CRF)投与することで、ラット大腸を神経支配する骨盤(副交感)神経活動が抑制されることを確認した。更にはCP2305株の投与がストレス誘発の骨盤(副交感)神経抑制を阻害することを確認した(図7)。従って、CP2305株の投与により、ストレス時の腸管機能が正常に保たれるものと考えられる。
本発明のラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物は、ストレス誘発性骨盤(副交感)神経活動の抑制を阻害して腸運動を正常に保持するとともに、被験体の腸管での水分過剰分泌の抑制に有効であるため、ストレス性腸障害の下痢症状、とりわけ、ストレス性下痢を抑制(軽減)することができる。

Claims (13)

  1. ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体の腸管での水分過剰分泌の抑制剤。
  2. ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体のストレス性腸障害の抑制剤。
  3. 前記菌体処理物が、乾燥菌体、破壊菌体若しくは破壊菌体、又は殺菌発酵乳である、請求項1又は2に記載の抑制剤。
  4. ストレス誘発性骨盤(副交感)神経活動の抑制を阻害する作用を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抑制剤。
  5. 大腸クロライドチャネルを抑制する作用を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抑制剤。
  6. ストレス性下痢を抑制する作用を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抑制剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の抑制剤を動物飼料成分と配合して、ストレス性腸障害軽減効果を有する動物飼料を製造することを含む、動物飼料の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の抑制剤を含む動物飼料。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の抑制剤を含有する食品添加剤又は動物飼料添加剤。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の抑制剤を食品用の担体、賦形剤又は希釈剤と混合し、場合により食品添加物をさらに混合して、ストレス性腸障害軽減効果を有する機能性飲食品を製造することを含む、機能性飲食品の製造方法。
  11. ラクトバチルス・ガセリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、或いはその混合物、を有効成分として含有することを特徴とする、被験体のストレス性腸障害を予防、軽減又は治療するための医薬組成物。
  12. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の抑制剤と、薬学的に許容されうる担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、被験体のストレス性腸障害を予防、軽減又は治療するための医薬組成物。
  13. ストレス性下痢を抑制する、請求項11又は12に記載の医薬組成物。
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