JP2014101234A - 表面処理カーボンナノチューブ - Google Patents

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Teruaki Sakuma
照章 佐久間
Aya Takagiwa
綾 高際
Kazuya Noda
和弥 野田
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Abstract

【課題】樹脂と混合した際に、高温時において優れた強度、靭性を付与できる、表面処理カーボンナノチューブを提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が500〜60万であるポリアクリル酸を用いて表面され、かつ、X線光電子分光法(XPS)で測定した表面酸素濃度が、3.0〜30atm%である、表面処理カーボンナノチューブ。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面処理カーボンナノチューブに関する。
カーボンナノチューブは、電気的特性等に優れるという観点から、種々の分野における応用が期待されている。例えば、カーボンナノチューブを樹脂に混合した複合材料は優れた特性を発揮する材料として期待されているが、十分な効果が得られてないのが現状である。例えば、表面処理を施していないカーボンナノチューブを樹脂に混合しても、カーボンナノチューブは物理的に樹脂に密着するだけで、カーボンナノチューブの添加効果が十分に得られない。そのため、何らかの表面処理をカーボンナノチューブに施すことで、官能基をカーボンナノチューブに導入すること等が検討されている。例えば、硫酸と硝酸との混酸を用いて表面処理を施したカーボンナノチューブが挙げられる。その他にも、硫酸と過酸化水素水との混酸を用いて表面処理を施したカーボンナノチューブが挙げられる(特許文献1)。
特開2006−213569号公報
しかし、従来の表面処理されたカーボンナノチューブでは未だ十分な効果が得られていない。例えば、官能基をカーボンナノチューブに導入するため、硫酸と硝酸の混酸によって表面処理したカーボンナノチューブでは、カーボンナノチューブの表面が破壊されてしまうという問題がある。このような表面破壊は、樹脂と混合して複合材料とした際の物性改善の妨げになる。
特許文献1のように、硫酸と過酸化水素水を併用することで酸性度を抑えた混酸によって表面処理したカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブの表面の破壊をある程度防ぐことができたとしても、樹脂と混合した際に樹脂の分子量が大幅に低下してしまうという問題がある。本発明者らが上記問題について鋭意研究した結果、カーボンナノチューブに残存する硫黄化合物が樹脂の分子鎖を切断することが主な原因であることをつきとめた。
また、多少なりとも硫酸や硝酸等の強酸を用いてカーボンナノチューブを表面処理した場合、洗浄しても微量の強酸がカーボンナノチューブの表面に残存してしまい、樹脂の分子鎖を切断して樹脂の分子量の低下を引き起こすため、樹脂と混練した際に強度や靱性が悪くなるといった問題が起こることもつきとめた。
一方で、上記した複合材料には、常温だけでなく、高温であっても優れた強度や靱性を有することが望まれている。例えば、自動車のエンジン周辺やダッシューボード周辺等に用いられる自動車用部材では、高温であっても優れた強度や靱性を有することが求められる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、樹脂と混合した際に、高温時において優れた強度、靱性を付与できる、表面処理されたカーボンナノチューブを提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意研究した結果、意外にも、特定のポリアクリル酸を用いて表面処理され、かつ、表面酸素濃度が特定の範囲にある、表面処理カーボンナノチューブが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
重量平均分子量が500〜60万であるポリアクリル酸を用いて表面処理され、かつ、
X線光電子分光分析法(XPS)で測定した表面酸素濃度が、3.0〜30atm%である、表面処理カーボンナノチューブ。
〔2〕
前記ポリアクリル酸の重量平均分子量が500〜10万である、〔1〕に記載の表面処理カーボンナノチューブ。
〔3〕
前記ポリアクリル酸の重量平均分子量が500〜5万である、〔1〕又は〔2〕に記載の表面処理カーボンナノチューブ。
〔4〕
ラマン散乱スペクトルの1565〜1600cm−1の間のバンドのピーク面積(Ig)に対する1335〜1365cm−1の間のバンドのピーク面積(Id)の比(Id/Ig)が、0.1〜0.9である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の表面処理カーボンナノチューブ。
本発明によれば、樹脂と混合した際に、高温時において優れた強度、靱性を付与できる、表面処理されたカーボンナノチューブを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の表面処理されたカーボンナノチューブ(以下、単に「表面処理カーボンナノチューブ」という場合がある。)は、重量平均分子量が500〜60万であるポリアクリル酸を用いて表面処理され、かつ、X線光電子分光分析法(XPS)で測定した表面酸素濃度が、3.0〜30atm%である、表面処理カーボンナノチューブである。
本実施形態の表面処理されたカーボンナノチューブは、重量平均分子量が500〜60万であるポリアクリル酸を用いて表面処理されることで、樹脂との反応性が向上し、密着性が向上する。なお、表面処理カーボンナノチューブの表面において、ポリアクリル酸が化学的に結合されていることが好ましい。表面処理カーボンナノチューブと化学的に結合しているものは、カーボンナノチューブに官能基化された「結合物」といえる。なお、官能基化された結合物であるかどうかを確認する方法としては、カーボンナノチューブを表面処理した後、付着物や残留する表面処理剤等を洗浄し、乾燥させたものについて、熱分解ガスクロマトグラフ−質量分析(Py−GC/MS)を行うことで確認できる。
(カーボンナノチューブ原料)
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブの原料となるカーボンナノチューブは、単層、2層以上の多層のカーボンナノチューブのいずれであってもよい。カーボンナノチューブの層構造は、それぞれ目的に応じて選択することができる。製造コストや樹脂に対する分散性の観点から、2層以上の多層のカーボンナノチューブであることが好ましい。2層以上の多層のカーボンナノチューブは、樹脂に対する分散性が良好であるため、強度等を一層向上させることができる。
カーボンナノチューブの製造方法は、特に限定されず、例えば、触媒を用いる気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法及びHiPco法(High−pressure carbon monoxide process)等、従来公知の製造方法を用いることができる。
気相成長法で多層カーボンナノチューブを製造する方法の一例を以下に示す。具体的には、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物を金属系触媒として、炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して、繊維構造体(以下、「未黒鉛化カーボンナノチューブ」という。)を得る方法、浮遊状態でカーボンナノチューブを生成させる方法、カーボンナノチューブを反応炉壁において成長させる方法等を用いることができる。また、予めアルミナ、炭素等の耐火性支持体に担持された金属含有粒子を、炭化水素等の有機化合物と高温で接触させて、カーボンナノチューブを得ることもできる。
原料であるカーボンナノチューブとしては、未黒鉛化カーボンナノチューブ、黒鉛化カーボンナノチューブ、その中間のカーボンナノチューブを目的に応じて選択することができる。
カーボンナノチューブ自体の強度を向上させる場合には、黒鉛化カーボンナノチューブを使用することが好ましい。黒鉛化カーボンナノチューブは、未黒鉛化カーボンナノチューブをアニール処理することにより作製することができる。アニール温度は、好ましくは1000〜3000℃であり、より好ましくは2500〜3000℃である。
黒鉛化カーボンナノチューブは、黒鉛化度が高い多層カーボンナノチューブが好ましい。黒鉛化度は、アニール温度を高くする程、高くなる傾向にある。さらに、アニール温度を高くすると、カーボンナノチューブの表面に沈積したアモルファス状の堆積物や、残留している触媒金属等の不純物が除去されるので好ましい。カーボンナノチューブのアニール温度が2500℃以上であると、カーボンナノチューブの骨格がより黒鉛化(結晶化)し、カーボンナノチューブの欠陥がより減少するので好ましい。
有機化合物からカーボンナノチューブを製造する方法の一例について説明する。カーボンナノチューブの製造において原料となる有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素、一酸化炭素、エタノール等のアルコール類といった炭素化合物が挙げられる。これらの中でも、炭素源として分解温度の異なる2種以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、ここでいう2種以上の炭素化合物とは、必ずしも当初の原料として2種以上の有機化合物を使用する場合だけではなく、原料として有機化合物1種のみを使用する場合であっても、カーボンナノチューブの合成過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化等のような反応が起こり、その後の熱分解反応によって分解温度の異なる2種以上の炭素化合物等の有機化合物が生じる場合等も含む。熱分解を行う雰囲気ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができ、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデン等の遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩等の遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄等の硫黄化合物の混合物を使用することができる。
カーボンナノチューブの製造において、通常行われている炭化水素等の化学蒸着法(CVD法)を用い、原料となる炭化水素及び触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、400〜1300℃の温度で熱分解することで、グラフェンが成長過程にある中間体が生成する。このような熱分解を経て、外径10〜500nm程度の繊維同士が、触媒粒子を核として成長した粒状体を中心に、絡まった、疎なカーボンナノチューブが形成される。そして、このカーボンナノチューブ構造体が複数集まって、数センチ〜数十センチの大きさのカーボンナノチューブの集合体を形成することができる。なお、ここでいう中間体は、通常、グラフェンが完全に成長しきっていない状態であり、この中間体をアニール処理すること等によって黒鉛化度を調整することもできる。
カーボンナノチューブの表面の反応性を向上させる場合には、未黒鉛化カーボンナノチューブを使用することが好ましい。特に、未黒鉛化カーボンナノチューブは、アニール温度を低く(例えば、900〜1500℃程度)することで得られやすい。
また、表面に凹凸や括れがあるような荒い表面形状である場合、不純物や金属の付着が多い形状である場合、結晶性が低い場合、繊維方向が一方向でない表面形状である場合には、カーボンナノチューブの反応性が良好となる傾向にある。これらの表面形状の性質は、製造方法によっても違いが生じる。特に、カーボンナノチューブの表面のアニール温度を低くした場合(例えば、900〜1500℃程度)、欠陥構造が多いため、未黒鉛化カーボンナノチューブが得られやすい。このようなカーボンナノチューブは、グラフェンの発達が乱れている傾向にあるため、その表面に凹凸が多く、表面が高活性となり得るため、後述する表面処理によって、カーボンナノチューブ表面の官能基化を効率よく行うことができる。本実施形態において、このような欠陥構造は、後述するカーボンナノチューブのラマン散乱スペクトルによって評価することができる。本実施形態では、これらの知見を踏まえ、表面処理カーボンナノチューブに所望する物性やその用途等を考慮して、適宜好適な条件を選択することができる。
カーボンナノチューブ表面の反応性と強度をより高いレベルで両立させる際には、黒鉛化と未黒鉛化の中間のカーボンナノチューブを使用することが好ましい。一般に、未黒鉛化カーボンナノチューブのアニール温度を調整することにより、上記した中間のカーボンナノチューブを得ることができる。具体的には、アニール温度を1500〜2500℃程度に調整することが好ましい。
カーボンナノチューブは、本実施形態の効果の範囲内で、強固な凝集体(繊維同士の絡み合いが密である凝集体)を形成しない程度に分岐したカーボンナノチューブであってもよい。分岐度は、少ない方が好ましく、具体的には1本の繊維から分岐する繊維の数が5本以下であることがより好ましく、3本以下であることが更に好ましい。
表面処理前のカーボンナノチューブの繊維外径は、特に限定されないが、好ましくは10〜500nmであり、より好ましくは10〜300nmであり、更に好ましくは10〜200nmである。繊維外径が10nm以上であると、繊維同士の凝集力を適度に抑制できるため、樹脂と混合した際の分散性を一層向上させることができ、カーボンナノチューブ同士が絡み合い易くなる。一方、繊維外径が500nm以下であると、カーボンナノチューブ同士がほぐれ易くなるため、樹脂と混練した際の分散性を一層向上させることができる。なお、繊維外径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定することができる。
表面処理前のカーボンナノチューブの長さをL、直径をDとした場合、直径に対する長さの比(L/D比;アスペクト比)は、特に限定されないが、好ましくは20〜1000であり、より好ましくは20〜800であり、更に好ましくは20〜500である。L/D比が20以上であると、繊維長が適度に長くなり、カーボンナノチューブ繊維同士の絡み合いが進み、樹脂と混合した際の高温時における引張強度が一層向上させることができる。一方、L/D比が1000以下であると、カーボンナノチューブ繊維同士が凝集し過ぎることなく、樹脂と混練した際の分散性を一層向上させることができる。なお、L/D比は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定することができる。
表面処理前のカーボンナノチューブのラマン散乱スペクトルの1565〜1600cm−1の間のバンドのピーク面積(Ig)に対する1335〜1365cm−1の間のバンドのピーク面積(Id)の比(Id/Ig)は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜2.8であり、より好ましくは0.1〜2.0であり、更に好ましくは0.1〜0.9である。表面処理前のカーボンナノチューブの上記比(Id/Ig)が上記範囲であることにより、カーボンナノチューブの反応活性点が多くなり、後述する表面処理によって、より多くの官能基を導入することができる。
(表面処理)
本実施形態では、ポリアクリル酸を用いてカーボンナノチューブの表面処理を行う。これにより、カーボンナノチューブの表面に官能基を導入することができる。表面処理として行われるカーボンナノチューブの表面に官能基を導入する反応としては、例えば、ラジカル反応、ペリ環状反応が挙げられる。ラジカル反応とは、双方の化学種から1電子ずつ電子が供与されて新しい結合性軌道が生成する化学反応である。ペリ環状反応とは、化学種のπ軌道からσ軌道へ、環状の遷移状態を経て転化することで2ヶ所以上に新たな結合が生成する化学反応である。特にポリアクリル酸を用いたカーボンナノチューブの表面に官能基を導入する反応としては、ラジカル反応が好ましい(但し、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
ポリアクリル酸の重量平均分子量は、500〜60万であり、好ましくは500〜10万であり、より好ましくは500〜5万である。ポリアクリル酸の重量平均分子量が上記範囲であることにより、樹脂と混合して樹脂組成物とした際の強度と成形性のバランスに優れる。
ポリアクリル酸を用いた表面処理の条件は、利用する反応の種類や組成比によって異なるが、ラジカル反応を行う場合、その反応温度は、好ましくは80〜190℃であり、より好ましくは100〜180℃であり、更に好ましくは120〜180℃である。
ポリアクリル酸を用いた表面処理の反応圧力は、減圧下、大気圧下、加圧下のいずれの条件でもよい。通常、ポリアクリル酸の沸点以下の温度で、表面処理を行う場合には大気圧下で行い、沸点以上の温度で反応させる場合には加圧下で行うことが好ましい。
ポリアクリル酸を用いた表面処理の反応時間は、反応条件等によって異なるが、好ましくは0.5〜36時間であり、より好ましくは2〜24時間であり、更に好ましくは3〜24時間である。
大気圧下で表面処理を行う場合、時間が長ければ長い程、反応温度が高ければ高い程、カーボンナノチューブの表面に結合するポリアクリル酸の量が増加する傾向にあり、結合物の量が増加する傾向にある。表面処理カーボンナノチューブにおいて、結合物の量が増加すると、樹脂等に添加した際に、高温における強度や靱性が一層向上する傾向にある。
本実施形態で使用する反応器としては、公知の反応器を用いることができる。例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等、従来公知の反応器を適宜組み合わせてもよい。反応器の材質としては、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製反応器、ステンレス製反応器、炭素鋼製反応器、ハステロイ製反応器、グラスライニングを施した反応器、フッ素樹脂コーティングを施した反応器等も使用できる。工程や条件によっては、酸による腐食が顕著となる場合もあるので、そのような場合には、ガラス製反応器、ハステロイ製反応器、グラスライニングを施した反応器、フッ素樹脂コーティングを施した反応器等を適宜選択してよい。
本実施形態では、ポリアクリル酸だけでなく、他の表面処理剤を併用してもよい。このような表面処理剤としては、(a)無機酸、(b)有機酸、及び(c)ポリアクリル酸以外の有機酸を重合単位として有する重合体(以下、単に、「重合体」と略する場合がある。)からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。具体的には、ポリアクリル酸と、上記した他の表面処理剤との混合物を、カーボンナノチューブに直接添加し、攪拌することでカーボンナノチューブの表面処理反応を行うことができる。また、原料であるカーボンナノチューブを溶媒中に溶解させ、溶液とした上で、上記した混合物を添加して、カーボンナノチューブの表面処理反応を行ってもよい。反応後は、必要に応じて、ろ過や乾燥等の後処理を行ってもよい。
表面処理に用いる(a)無機酸とは、塩素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子等の炭素原子以外の非金属原子を含む酸をいう。無機酸としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ素酸、過酸化水素水、過リン酸等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド等の樹脂との相互作用が良好である観点から、リン酸、過酸化水素水、及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、過酸化水素水がより好ましい。
表面処理に用いる(b)有機酸としては、特に限定されず、例えば、クエン酸、シュウ酸、アクリル酸、ジアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ジメチルフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水酢酸等が挙げられる。
表面処理に用いる(c)重合体としては、特に限定されず、例えば、ポリ(アクリル酸−co−マレイン酸)、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記した(a)無機酸、(b)有機酸、及び(c)重合体の中でも、表面処理カーボンナノチューブと混合する樹脂との反応性の観点から、過酸化水素水が好ましい。これらの効果は、後述する、液相かつ無溶媒条件下で表面処理することで一層顕著になる。
表面処理反応において、原料であるカーボンナノチューブを溶解させるために溶媒を用いることができる。溶媒を用いる場合、その種類は特に限定されず、水系溶媒でもよいし、非水系溶媒でもよい。水系溶媒としては、純水、蒸留水等の水が挙げられる。非水系溶媒としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、ピリジン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒;メチレンクロリド、クロロホルム等の塩素系溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のエーテル系溶媒;2−エトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等のアセトン系溶媒、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、フェノール等のアルコール系溶媒;酢酸、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、N、N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これらの中でも、水、トルエン、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アセトン系溶媒、及び無溶媒からなる群より選ばれる1種が好ましい。より好ましくは、N−メチルピロリドンである。
カーボンナノチューブを溶解させるために溶媒を用いてもよく、その場合には、特に、ポリアクリル酸を溶媒中で反応させることが好ましい。溶媒に溶解させることにより、カーボンナノチューブに対するポリアクリル酸や他の表面処理剤等の反応性が向上し、一層効率よくカーボンナノチューブが官能基化されるため好ましい。
また、上記したカーボンナノチューブの表面に官能基を導入する反応として、ラジカル反応を行う場合については、例えば、カーボンナノチューブの主鎖に対して上記官能基をグラフト化させる反応等が挙げられる。このようなラジカル反応において使用できるラジカル開始剤は、特に限定されないが、ラジカル反応を促進する観点から、穏和な反応条件でラジカルを発生させることができる開始剤が好ましい。好適例としては、有機過酸化物、アゾ系開始剤、パーオキサイド系開始剤、テトラメチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド化合物等が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、特に限定されず、例えば、ジイソブチルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,3,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジスクシン酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1,−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等が挙げられる。
アゾ系開始剤の具体例としては、特に限定されず、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−2’−アゾビスイソブチロニトリル、2−2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1−1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2−2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}、2−2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2−2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2−2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2−2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2−2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2−2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2−2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2−2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2−2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2−2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2−2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2−2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2−2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4−4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2−2’−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
パーオキサイド系開始剤の具体例としては、特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、カーボンナノチューブ等を溶媒中により均一に分散させるために、超音波分散法又はボールミリング法を使用することもできる。カーボンナノチューブの容量及び溶媒の量に応じて、振動数20〜50kHz及びパワー50〜3000Wのソニケーターを30分〜60時間適用し、溶媒へのカーボンナノチューブの均一な分散が行われるようにすることが好ましい。
本実施形態において、原料であるカーボンナノチューブを表面処理する反応は、液相で行うことが好ましい。ここでいう、液相で表面処理するとは、液体状態で表面処理を行うことをいい、例えば、気相で行う酸化反応(気相酸化)等による表面処理はこれに含まれない。特に、ポリアクリル酸は、溶媒に容易に溶解させることができるため簡便である。
液相で表面処理されたカーボンナノチューブでは、その表面破壊が一層低減される。そのため、樹脂と混合して複合材料とした際の添加効果を一層向上させることができる。さらには、成形時の押出性も一層向上させることができる。また、液相で反応を行うことで、通常、温和な反応条件で行うことができ、大がかりな装置も必要としないため、プロセス上の利点も有する。
そして、液相で表面処理を行う方法としては、例えば、常温常圧下で液体状態の表面処理剤を用いる方法、加温することで表面処理剤を液体状態とした上で用いる方法、溶媒を用いて表面処理剤を溶解させて溶液とした上で用いる方法等を採用することができる。よって、例えば、常温常圧下で固体状態の表面処理剤であっても、溶媒を用いて溶液とした上で用いることもできるし、加温することで液体状態とした上で用いることもできる。
なお、常温常圧下で液体状態の表面処理剤を用いる場合、及び液状加温して溶液とした場合は、液相かつ無溶媒で表面処理を行うことになる。液相かつ無溶媒で表面処理を行うことで、ポリアクリル酸や必要に応じて併用するその他の表面処理剤にて官能基化された表面処理カーボンナノチューブを効率よく得ることができる。
液相で表面処理を行う方法の具体例としては、ポリアクリル酸を溶媒に溶かした溶液を用いて表面処理する方法が挙げられる。特に、ポリアクリル酸を溶媒に溶かした溶液とすると、反応性が向上し、一層効率よくカーボンナノチューブが官能基化されるため好ましい。
表面処理後の後処理について説明する。表面処理後には、必要に応じて、反応物をろ過、洗浄、乾燥することができる。例えば、反応物の洗浄方法は、特に限定されることはなく、表面処理後の反応物をろ過したろ物を、溶媒で洗浄する方法や、反応処理後の反応物を吸引ろ過しつつ溶媒で洗浄する方法等を採用できる。洗浄回数は特に限定されず、得られた表面処理カーボンナノチューブの容量、収量等に応じて、洗浄回数を調節することができる。通常は、1〜20回程度洗浄する。洗浄後、洗浄物を乾燥させることで、表面処理カーボンナノチューブを得ることができる。
洗浄溶媒は、水系洗浄溶媒でもよいし、非水系洗浄溶媒でもよい。水系洗浄溶媒としては、純水、蒸留水等の水が挙げられる。非水系洗浄溶媒としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、ピリジン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒;メチレンクロリド、クロロホルム等の塩素系溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のエーテル系溶媒;2−エトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等のアセトン系溶媒;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、フェノール等のアルコール系溶媒;酢酸、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、N、N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これらの中でも、洗浄溶媒としては、水、トルエン、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及びアセトン系溶媒からなる群より選ばれる1種が好ましい。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブは、ポリアクリル酸を用いて表面処理を行うことで、表面破壊を抑えつつ官能基導入が可能であるので、配合する樹脂との密着性に優れる。そのため、表面処理カーボンナノチューブと樹脂とを含む複合材料としての各種物性が大幅に向上することも期待される。表面破壊を抑えることで、表面処理前のカーボンナノチューブの表面上の凹凸が削れることを抑制できるため、表面が高活性な状態を維持できる。この点でも複合材料としての各種物性が大幅に向上することが期待される。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブの、窒素雰囲気下、600℃における熱減少量は、特に限定されないが、好ましくは0.2〜40%であり、より好ましくは0.5〜40%であり、更に好ましくは0.8〜40%であり、より更に好ましくは3.0〜10%である。熱減少量が大きい程、カーボンナノチューブと結合又は付着している官能基が多い傾向にあり、十分に官能基が導入されている。そして、600℃付近で昇華されるものには、(i)カーボンナノチューブと表面処理剤とが反応して、官能基がカーボンナノチューブに結合したもの(結合物)、(ii)カーボンナノチューブと表面処理剤とが化学反応していないが、表面処理剤に由来する官能基が何らかの状態でカーボンナノチューブに付着しているもの(付着物)が該当する。本発明者らは、表面処理カーボンナノチューブにおいて、600℃の熱減少量が、結合物及び付着物の占める割合の指標となり得ることを見出し、熱減少量が上記範囲である表面処理カーボンナノチューブは、結合物及び付着物の含有割合が好適であり、その結果、樹脂と混合した際に、高温時において一層優れた強度、靱性を発揮できるという知見を得た。600℃における熱減少量が大きい程、結合物や付着物が多く存在しているものと推測される。600℃における熱減少量が大きい程、樹脂と結合可能な官能基が多く存在していることを示しており、樹脂に対する表面処理カーボンナノチューブの親和性が向上する傾向にある。具体的には、600℃における熱減少量が0.2%以上であることにより、上記した結合物及び付着物を適度に含有するため、樹脂との親和性がより向上する。600℃における熱減少量が40%以下であることにより、成形加工性がより向上する(但し、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブの、X線光電子分光分析法(XPS)で測定した表面酸素濃度は、3.0〜30atm%であり、好ましくは3.0〜15atm%であり、より好ましくは4.0〜10.0atm%であり、更に好ましくは5.0〜8.0atm%である。本発明者らは、表面処理カーボンナノチューブにおいて、表面酸素濃度が、カーボンナノチューブ表面に官能基がどの程度導入されているのかを表す指標となり得ることを見出した。表面酸素濃度が3.0atm%以上であれば、カーボンナノチューブの表面が十分に官能基化されており、その結果、樹脂と混合した際に十分な添加効果が得られ、高温時における、強度、靭性が優れたものとなる。表面酸素濃度が30atm%以下であれば、樹脂と混練した際に、脆くなってしまったり、ゲル化してしまったりすることを防止することができる。表面酸素濃度が上記範囲であれば、樹脂と混練した際に、脆くなってしまったり、ゲル化してしまったりすることを防止できる(但し、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。表面酸素濃度は、X線光電子分光分析法(XPS)によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により算出できる。
なお、表面酸素濃度は、表面処理の反応温度を高くすること、表面処理の反応時間を長くすること、又は、予め水酸基を有するカーボンナノチューブとした上でポリアクリル酸による表面処理をすること等により、その値をより高くすることができる。表面処理剤との反応温度は、好ましくは10〜200℃であり、より好ましくは20〜180℃である。表面処理剤との反応時間は、好ましくは0.5〜24時間であり、より好ましくは2〜15時間である。表面酸素濃度は、X線光電子分光分析法(XPS)によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により算出できる。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブの、表面硫黄濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1atm%未満であり、より好ましくは0atm%である。表面硫黄濃度が0.1atm%未満であれば、樹脂と混合した際に、カーボンナノチューブに残存する硫黄が樹脂の分子鎖を切断することを防止できるため、樹脂の分子量低下を抑制できる。さらに、表面硫黄濃度が0.1atm%未満であれば、樹脂との混練の際に、例えば、スクリュの摩耗や、金属部品の腐食を抑制できる。例えば、表面硫黄濃度を低減する観点から、過酸化水素に硫酸を併用して表面処理する際には、併用する硫酸の割合を少なくすることが好ましく、硫酸を用いないことがより好ましい。表面硫黄濃度は、X線光電子分光分析法(XPS)によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により算出できる。
本実施形態では、表面処理カーボンナノチューブの表面酸素濃度が上記範囲にあることで、樹脂に対する分散性が一層優れ、かつ、樹脂と混合した複合材料とした際に高温時において優れた強度、靱性を複合材料に付与することができる。さらに、表面処理カーボンナノチューブの表面酸素濃度だけでなく、熱減少量及び表面硫黄濃度も上記範囲にあることで、上記効果は一層優れたものとなるため、好ましい。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブのラマン散乱スペクトルの1565〜1600cm−1の間のバンドのピーク面積(Ig)に対する1335〜1365cm−1の間のバンドのピーク面積(Id)の比(Id/Ig)は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜0.9であり、より好ましくは0.1〜0.5であり、更に好ましくは0.1〜0.4である。上記比(Id/Ig)を0.9以下とすることにより、カーボンナノチューブ表面上でのポリアミド樹脂との反応を促進させることができるものと考えられる(但し、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブの繊維外径は、特に限定されないが、好ましくは10〜500nmであり、より好ましくは10〜300nmであり、更に好ましくは10〜200nmである。繊維外径が10nm以上であると、繊維同士の凝集力を適度に抑制することができるため、樹脂と混合した際の分散性を一層向上させることができ、カーボンナノチューブ同士が絡み合い易くなる。一方、繊維外径が500nm以下であると、カーボンナノチューブ同士がほぐれ易くなるため、樹脂と混練した際の分散性を一層向上させることができる。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブの長さをL、直径をDとした場合、直径に対する長さの比(L/D比;アスペクト比)は、特に限定されないが、好ましくは20〜1000であり、より好ましくは20〜800であり、更に好ましくは20〜500である。L/D比が20以上であると、繊維長が適度に長くなり、カーボンナノチューブ繊維同士の絡み合いが進み、上記した複合材料の高温時の引張強度が一層向上する。一方、L/D比が1000以下であると、カーボンナノチューブ繊維同士が凝集し過ぎることなく、樹脂と混練した際に分散性を向上させることができる。
なお、樹脂に対する分散性を向上させるために、表面処理カーボンナノチューブと樹脂との混練時に大きな剪断力を加えると、カーボンナノチューブの繊維が凝集した凝集物の構造が破壊されるので、樹脂中に分散拡散させることができるが、カーボンナノチューブのL/D比が低下する傾向にある。
本実施形態において、カーボンナノチューブの表面状態を評価する指標としては、例えば、カーボンナノチューブのラマン散乱スペクトルが挙げられる。具体的には、1565〜1600cm−1の間に少なくとも1つのピークトップを有するスペクトル(以下、「スペクトルA」という。)はグラファイトに共通して現れるスペクトルであり、1335〜1365cm−1の間に少なくとも1つのピークトップを有するスペクトル(以下、「スペクトルB」という。)はカーボンナノチューブの欠陥構造に起因するスペクトルである。カーボンナノチューブの点欠陥や、結晶の端等に欠陥がある場合には、スペクトルBの強度が強くなるので、スペクトルAとの相対強度が欠陥量の目安となる。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブでは、表面処理前のカーボンナノチューブのラマン散乱スペクトルの1565〜1600cm−1の間のバンドのピーク面積(Ig)に対する1335〜1365cm−1の間のバンドのピーク面積(Id)の比(Id/Ig)と、表面処理後のカーボンナノチューブのラマン散乱スペクトルの1565〜1600cm−1の間のバンドのピーク面積(Ig)に対する1335〜1365cm−1の間のバンドのピーク面積(Id)の比(Id/Ig)との差の絶対値(ΔId/Ig)は、好ましくは0〜2.0であり、より好ましくは0〜1.0であり、更に好ましくは0〜0.8である。上記比(Id/Ig)の差の絶対値(ΔId/Ig)を上記範囲とすることにより、反応工程によるカーボンナノチューブの表面破壊を抑制し、その結果、樹脂と混練した際に、高温時における強度及び靱性が一層顕著となる。
表面処理前後における上記比(Id/Ig)の差の絶対値(ΔId/Ig)が大きければ、それだけ表面処理による表面破壊が大きいといえる。また、表面処理の前後における上記比(Id/Ig)の差の絶対値(ΔId/Ig)が小さければ、それだけ表面破壊が少ないといえる。上記絶対値(ΔId/Ig)を小さくする方法としては、例えば、よりマイルドな表面処理剤を用いる方法が挙げられる。かかる観点からもポリアクリル酸を用いることがよい。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブを樹脂に混合すると、常温だけでなく、高温であっても優れた強度や靱性を付与することができる。混合する樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム成分の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂、ゴム成分が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アリルエステル樹脂等が挙げられる。
ゴム成分としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ、シリコン系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ナイロン系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、並びにそれらの共重合体及びエラストマーに反応部位(二重結合、無水カルボキシル基等)を導入した変性物等が挙げられる。
これらの中でも、表面処理カーボンナノチューブの添加効果に優れるという観点から、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ウレタンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、無水カルボキシ基を導入した変性物等が好ましく、ポリアミドがより好ましい。特に、表面処理カーボンナノチューブとポリアミドを混合することにより、常温だけでなく、高温であっても、優れた強度・靱性を付与することができる。なお、これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブと樹脂とを含む組成物における表面処理カーボンナノチューブの含有量は、特に限定されないが、好ましくは1.0〜30質量%であり、より好ましくは2.0〜20質量%であり、更に好ましくは5.0〜20質量%である。表面処理カーボンナノチューブの含有量を上記範囲とすることにより、常温及び高温における強度や靱性を一層向上させることができる。
本実施形態では、表面処理カーボンナノチューブとポリアミドとを含むポリアミド樹脂組成物とすることで、好適に用いることができる。このポリアミド樹脂組成物は、表面処理カーボンナノチューブとポリアミドと必要に応じて加える添加剤等を、適切にデザインされたスクリュを有する押出機を用いて、溶融混練することにより得ることができる。
ポリアミドとは、主鎖に−CO−NH−結合(アミド結合)を有する高分子化合物を意味する。ポリアミドとしては、特に限定されず、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸の縮合重合で得られるポリアミド、及びこれらのポリアミドを構成する2種類以上の単量体の共重合で得られる共重合物等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
以下、ポリアミドの原料について説明する。
まず、ラクタムの開環重合で得られるポリアミドについて説明する。ポリアミドの構成成分である単量体としてのラクタムは、特に限定されず、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム等が挙げられる。ラクタムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
次に、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミドについて説明する。原料であるω−アミノカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸等が挙げられる。ω−アミノカルボン酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
続いて、ジアミン及びジカルボン酸の縮合重合で得られるポリアミドについて説明する。ジアミン単量体としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミン、2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐状の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、シクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。ジカルボン酸単量体としては、特に限定されず、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。上記した単量体は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアミドの具体例としては、特に限定されず、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド)、ポリアミド2Me5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキシルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカンメチレンシクロヘキシルアミド)、ポリアミドPACM12(ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPACM12(ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド11T(H)(ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド)等のポリアミドが挙げられる。
これらの中でも、ポリアミドとしては、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド)、ポリアミド2Me5C(ポリ2−メチルペンタメチレンシクロヘキシルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカンメチレンシクロヘキシルアミド)が好ましい。
なお、ポリアミドとしては、上記したポリアミドを構成する単量体を2種以上共重合させて得られる、ポリアミド共重合体であってもよい。ポリアミド共重合体としては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンアジパミドとヘキサメチレンテレフタルアミドとの共重合体、ヘキサメチレンアジパミドとヘキサメチレンイソフタルアミドとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタルアミドと2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドとの共重合体等が挙げられる。
ポリアミド共重合体の原料として、分子量調節や耐熱水性向上のために、末端封止剤を更に添加することができる。例えば、ポリアミド共重合体を重合にて製造する際に、公知の末端封止剤を更に添加することができる。
末端封止剤としては、特に限定されず、例えば、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、及びモノアルコール等が挙げられる。これらの中でも、製造コストの観点から、モノカルボン酸、モノアミンが好ましい。これらの末端封止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の表面処理カーボンナノチューブと樹脂との混合におけるメカニズムは定かではないが、以下のように推測される。まず、本実施形態の表面処理カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブを構成する繊維同士で絡み合った状態を取り得る。その際、適度な空間を維持しつつ分散し、絡み合い構造を形成することができる。また、本実施形態の表面処理カーボンナノチューブでは、表面処理の前後においてカーボンナノチューブのグラフェン層が破壊されることなく保たれている。このような特有の構造を有する表面処理カーボンナノチューブと、樹脂とを混合すると、カーボンナノチューブの繊維と樹脂の分子鎖がうまく絡み合うだけでなく、表面処理によってカーボンナノチューブに導入された官能基が反応点となって、樹脂との界面を形成することができる。そして、カーボンナノチューブが表面破壊されることなく、分散性よく樹脂と混ざることができる。従来では、カーボンナノチューブにより多くの官能基を導入しようとして強い酸(例えば、硫酸や硝酸、これらの混酸等)を使用していたが、これらに由来する硫黄が残留するため樹脂の分子鎖を切断してしまうといった問題があった。このような観点から、表面処理カーボンナノチューブの表面硫黄濃度は0.1atm%未満であることが好ましい。これにより、樹脂の分子鎖の切断を効果的に抑制できるため、樹脂の分子量の低下を一層防止できる。
かかる観点から、本実施形態では、表面処理において強酸を用いないことが好ましい。なお、ここでいう強酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。また、従来の表面処理カーボンナノチューブにおいて、硫酸や硝酸等の強酸を用いてカーボンナノチューブを表面処理した場合、洗浄回数を増やして丁寧に洗浄しても、微量の強酸がカーボンナノチューブの表面に残存してしまう。そのため、樹脂の分子鎖が切断されて分子量が低下したり、押出機の金属部品(スクリュ等)等が腐食したり摩耗したりして押出性が悪くなってしまうという問題があるが、強酸を用いないことでこのような問題も抑制することができる。
また、本実施形態の表面処理カーボンナノチューブは、上記した方法等により製造することが可能であり、原料として使用するカーボンナノチューブも安価なものを用いることができるので量産可能であり、工業的な観点からも好ましい。
本実施形態の表面処理したカーボンナノチューブは官能基が導入されているため、樹脂、ゴム成分等に添加することで、複合材料として好適に使用することができる。このような複合材料は、表面破壊が少なく、かつ、樹脂と混合した際に樹脂の分子量の低下が少ないため、様々な用途に用いることができる。用途としては、特に限定されず、例えば、自動車部品、電気部品、電子部品、携帯機器部品、機械・工業部品、事務機器部品、航空・宇宙部品の材料として、好適に用いることができる。特に、自動車部品には好適である。
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(測定方法)
1.ラマン散乱分光法
顕微レーザーラマン分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、「Almega XR」)を用いた。まず、真空乾燥オーブンで80℃、12時間乾燥させて、測定試料とした。そして、ラマン散乱分光法によって、測定試料における1565〜1600cm−1の間にピークトップを有するスペクトルのピーク強度(Ig)に対する1335〜1365cm−1の間にピークトップを有するスペクトルのピーク強度(Id)の比(Id/Ig)を測定した。ピーク強度のカーブフィッティングを行い、面積を算出した。測定は計3回行い、3回の算術平均値を算出した。なお、上記比(Id/Ig)については、表面処理されていないカーボンナノチューブの比(Id/Ig)と、表面処理されたカーボンナノチューブの比(Id/Ig)と、をそれぞれ測定し、これらの差分の絶対値(ΔId/Ig)を算出した。
2.X線光電子分光分析法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)
X線光電子分光装置(X線光電子分光分析法、XPS;サーモフィッシャー社製、「ESCALAB250」)を用いて、カーボンナノチューブの表面酸素濃度を測定した。まず、カーボンナノチューブを2mmφ×深さ0.3mmの皿型試料台に載せて測定を行った。下記の測定条件に基づき、カーボンナノチューブの表面の酸素濃度を測定した。XPSによって検出したカーボンナノチューブの表面の元素種は、酸素、炭素、硫黄であった。なお、表面硫黄濃度は、このXPSによって算出した。なお、表中の「−」は検出限界以下であったため、検出できなかったことを示す。
<測定条件>
励起源:単色化 AlKα 15kV×10mA
分析サイズ:約1mm(形状は楕円)
光電子取出角:0°(試料面に対して垂直)
取込領域
・Survey scan:0〜1,100eV
・Narrow scan:C 1s、O 1s
・Pass Energy
Survey scan:100eV
Narrow scan:20eV
<Clsスペクトルのカーブフィット>
Clsスペクトルのカーブフィットを行った。ベースとなるカーボンナノチューブ成分については未処理のカーボンナノチューブのClsスペクトルに対してカーブフィットを行って形状パラメータを求めた。
3.重量減少量
セイコーインスツルメンツ社製、「TG/DTA220」を用いて測定した。窒素雰囲気下(流量250mL/分)で、昇温速度10℃/分で、30℃から600℃まで昇温させ、600℃における試料の重量減少量を測定した。
4.重量平均分子量
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いて測定した。
5.試験片の作製
混練機(DSM社製、「XPlore」(小型混練機と成形機を備える混練機))を使用して、ISO36 Type3(ダンベルの平衡部の長さ16mm×幅4mm×厚み2mm)のダンベル試験片を作製した。具体的には、ポリアミド樹脂とカーボンナノチューブを混練機に投入し、混練機のスクリュ回転数100rpm、混練温度300℃で2分間混練し、金型温度80℃、射出圧力11bar(30秒)で射出し、ダンベル試験片を得た。
6.引張試験
まず、ISO36 Type3(ダンベルの平衡部の長さ16mm×幅4mm×厚み2mm)のダンベル試験片を用意した。引張試験機(島津製作所社製、「オートグラフAG−5000D」)を用いて、120℃まで昇温した後、そこにダンベル試験片を投入し、30分間静置した。そして、チャック間25mm、引張速度50mm/分で、ダンベルの引張強度と引張伸度を測定した。
ポリアミドの密度を1.14g/cm、カーボンナノチューブの密度を2.00g/cmとし、ポリアミド樹脂組成物の密度を算出した。得られた引張強度をポリアミド樹脂組成物の密度で割り、比強度を算出した。
(原料)
1.カーボンナノチューブ(CNT)
カーボンナノチューブA:昭和電工社製、商品名「VGCF(気相法炭素繊維、黒鉛化処理品)」
2.ポリアミド
ポリアミド66:旭化成ケミカルズ社製、商品名「レオナ1300S」(融点:260℃)。
カーボンナノチューブAの物性を、表1に示す。
実施例1(ポリアクリル酸で表面処理したカーボンナノチューブB)
500mLの3つ口フラスコに、カーボンナノチューブA10g、溶媒として1−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン;和光純薬社製)200g、ポリアクリル酸(Aldrich社製、重量平均分子量1800)6gを投入した。超音波を10分間照射し、スターラーチップで攪拌しながらアルゴンバブリングを30分間行った。その後、180℃に加熱し6時間反応させた。反応後、室温に冷却し、反応液にアセトンを投入した後、吸引ろ過した。さらにアセトンを投入し、洗浄とろ過を計4回繰り返した。得られたろ物を80℃、12時間の条件で減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブBを得た。なお、カーボンナノチューブBは、液相でポリアクリル酸により表面処理されたカーボンナノチューブであった。
実施例2(ポリアクリル酸で表面処理したカーボンナノチューブC)
使用するポリアクリル酸をポリアクリル酸(和光純薬社製、重量平均分子量5000)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、カーボンナノチューブCを得た。カーボンナノチューブCは、液相でポリアクリル酸により表面処理されたカーボンナノチューブであった。
実施例3(ポリアクリル酸で表面処理したカーボンナノチューブD)
使用するポリアクリル酸をポリアクリル酸(和光純薬社製、重量平均分子量25000)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、カーボンナノチューブDを得た。カーボンナノチューブDは、液相でポリアクリル酸により表面処理されたカーボンナノチューブであった。
実施例4(ポリアクリル酸で表面処理したカーボンナノチューブE)
使用するポリアクリル酸をポリアクリル酸(Aldrich社製、重量平均分子量450000)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、カーボンナノチューブEを得た。カーボンナノチューブEは、液相でポリアクリル酸により表面処理されたカーボンナノチューブであった。
比較例1(カーボンナノチューブA)
カーボンナノチューブAをそのまま用いた。
比較例2(硫酸と硝酸の混酸で表面処理したカーボンナノチューブa)
1000mLのナスフラスコに、カーボンナノチューブA10g、硫酸(和光純薬社製、濃度96〜98%)と硝酸(和光純薬社製、濃度69〜70%)とを1:3(体積比)の割合で含有する混酸液250mLを投入した。スターラーチップで攪拌しながら、70℃に加熱し24時間反応させた。反応後、室温に冷却し、反応液にイオン交換水を投入し吸引ろ過した。さらにイオン交換水を投入し、ろ液が中和された後も、洗浄とろ過を繰り返し、計20回洗浄とろ過を繰り返した。得られたろ物を80℃、12時間の条件で減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブaを得た。
比較例3(硫酸で表面処理したカーボンナノチューブb)
500mLのナスフラスコにカーボンナノチューブA10g、硫酸(和光純薬社製、濃度96〜98%)500mLを投入した。攪拌翼で攪拌しながら、80℃に加熱し24時間反応させた。反応後、室温に冷却し、反応液にイオン交換水を投入し吸引ろ過した。さらにイオン交換水を投入し、ろ液が中和されるまで洗浄とろ過を繰り返した。得られたろ物を80℃、12時間の条件で減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブbを得た。
比較例4(硝酸で表面処理したカーボンナノチューブc)
500mLのナスフラスコにカーボンナノチューブA10g、硝酸(和光純薬社製、濃度69〜70%)250mLを投入した。攪拌翼で攪拌しながら、70℃に加熱し24時間反応させた。反応後、室温に冷却し、反応液にイオン交換水を投入し吸引ろ過した。さらにイオン交換水を投入し、ろ液が中和されるまで洗浄とろ過を繰り返した。得られたろ物を80℃、12時間の条件で減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブcを得た。
各実施例の評価結果を表2に、各比較例の評価結果を表3に示す。
*比較例1では、カーボンナノチューブの表面処理は行っていない。
表2及び表3から明らかなように、実施例1〜4の表面処理カーボンナノチューブは、樹脂組成物とした際の引張強度、比強度及び引張伸度が優れていることが確認された。
本発明に係る表面処理カーボンナノチューブは、自動車部品、電気部品、電子部品、携帯機器部品、機械・工業部品、事務機器部品、航空・宇宙部品等の材料として幅広く利用できる。

Claims (4)

  1. 重量平均分子量が500〜60万であるポリアクリル酸を用いて表面処理され、かつ、
    X線光電子分光分析法(XPS)で測定した表面酸素濃度が、3.0〜30atm%である、表面処理カーボンナノチューブ。
  2. 前記ポリアクリル酸の重量平均分子量が500〜10万である、請求項1に記載の表面処理カーボンナノチューブ。
  3. 前記ポリアクリル酸の重量平均分子量が500〜5万である、請求項1又は2に記載の表面処理カーボンナノチューブ。
  4. ラマン散乱スペクトルの1565〜1600cm−1の間のバンドのピーク面積(Ig)に対する1335〜1365cm−1の間のバンドのピーク面積(Id)の比(Id/Ig)が、0.1〜0.9である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理カーボンナノチューブ。
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