従来、酸化膜の低温成膜には有機系原料が使用されてきたが、発明者等は、無機系原料を用い低温で酸化膜を形成する方法について鋭意研究を行った。その結果、基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、基板上に原料の吸着層または所定元素の層(以下、所定元素含有層)を形成する工程と、処理容器内の圧力を大気圧よりも低い圧力に設定した状態で処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給することで、基板上に形成された所定元素含有層を酸化層に改質する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回以上行うことで、基板上に所定膜厚の酸化膜を形成することが可能であるとの知見を得た。ここで、原料の吸着層とは、原料分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。所定元素の層とは、所定元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む。なお、所定元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。
基板上に所定元素含有層(原料の吸着層または所定元素の層)を形成する工程は、ALD(Atomic Layer Deposition)反応またはCVD(Chemical Vapor Deposition)反応が生じる条件下で行い、このとき基板上に1原子層未満から数原子層程度の所定元素含有層を形成する。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。ALD反応が生じる条件下では基板上に原料の吸着層が形成され、CVD反応が生じる条件下では基板上に所定元素の層が形成される。
また、所定元素含有層を酸化層に改質する工程では、大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種により所定元素含有層を酸化して酸化層に改質する。この酸化処理によれば、酸素含有ガスを単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下において酸素含有ガスに水素含有ガスを添加することで酸素含有ガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。所定元素含有層を酸化層に改質する工程はノンプラズマの減圧雰囲気下で行われる。
そして、この手法により酸化膜を形成すれば、成膜レート、基板面内における膜厚均一性は、有機系原料を用いたCVD法による成膜の場合よりも良好なものとなることが判明した。また、この手法により形成した酸化膜の膜中の不純物濃度は、有機系原料を用いたCVD法による成膜の場合よりも極めて低くなることが判明した。また、この手法によれば、有機系原料を用いた場合であっても、成膜レート、基板面内における膜厚均一性、膜中の不純物濃度が良好なものとなることが判明した。
本発明は、発明者等が得たかかる知見に基づいてなされたものである。以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示している。また、図2は、図1に示す処理炉のA−A’断面図である。なお、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ203が配設されている。プロセスチューブ203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
プロセスチューブ203の下方には、プロセスチューブ203と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、プロセスチューブ203に係合しており、プロセスチューブ203を支持するように設けられている。なお、マニホールド209とプロセスチューブ203との間にはシール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ203とマニホールド209とにより反応容器(処理容器)が形成される。
マニホールド209には、第1ガス導入部としての第1ノズル233aと、第2ガス導入部としての第2ノズル233bと、第3ガス導入部としての第3ノズル233cとが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、第1ノズル233a、第2ノズル233b、第3ノズル233cには、それぞれ第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232cが接続されている。このように、処理室201内へは複数種類、ここでは3種類の処理ガスを供給するガス供給路として、3本のガス供給管が設けられている。
第1ガス供給管232aには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給管234aが接続されている。この第1不活性ガス供給管234aには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル233aが接続されている。第1ノズル233aは、処理室201を構成しているプロセスチューブ203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル233aの側面にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248aが設けられている。このガス供給孔248aは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル233aにより第1ガス供給系が構成され、主に、第1不活性ガス供給管234a、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより、第1不活性ガス供給系が構成される。
第2ガス供給管232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給管234bが接続されている。この第2不活性ガス供給管234bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル233bが接続されている。第2ノズル233bは、処理室201を構成しているプロセスチューブ203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル233bの側面にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248bが設けられている。このガス供給孔248bは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル233bにより第2ガス供給系が構成され、主に、第2不活性ガス供給管234b、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより第2不活性ガス供給系が構成される。
第3ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243eよりも下流側には、不活性ガスを供給する第3不活性ガス供給管234cが接続されている。この第3不活性ガス供給管234cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部には、上述の第3ノズル233cが接続されている。第3ノズル233cは、処理室201を構成しているプロセスチューブ203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第3ノズル233cの側面にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248cが設けられている。このガス供給孔248cは、下部から上部にわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241e、バルブ243e、第3ノズル233cにより第3ガス供給系が構成され、主に、第3不活性ガス供給管234c、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第3不活性ガス供給系が構成される。
第1ガス供給管232aからは、酸素を含むガス(酸素含有ガス)として、例えば酸素(O2)ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル233aを介して処理室201内に供給される。すなわち、第1ガス供給系は酸素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第1不活性ガス供給管234aから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243cを介して第1ガス供給管232a内に供給されるようにしてもよい。
また、第2ガス供給管232bからは、水素を含むガス(水素含有ガス)として、例えば水素(H2)ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル233bを介して処理室201内に供給される。すなわち、第2ガス供給系は水素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第2不活性ガス供給管234bから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243dを介して第2ガス供給管232b内に供給されるようにしてもよい。
また、第3ガス供給管232cからは、原料ガス、すなわち、所定元素としてのシリコンを含むガス(シリコン含有ガス)として、例えばヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称HCD)ガスが、マスフローコントローラ241e、バルブ243e、第3ノズル233cを介して処理室201内に供給される。すなわち、第3ガス供給系は原料ガス供給系(シリコン含有ガス供給系)として構成される。このとき同時に、第3不活性ガス供給管234cから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241f、バルブ243fを介して第3ガス供給管232c内に供給されるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、O2ガス、H2ガス、HCDガスを、それぞれ別々のノズルから処理室201内に供給するようにしているが、例えば、H2ガスとHCDガスとを同じノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。また、O2ガスとH2ガスとを同じノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。このように、複数種類のガスでノズルを共用とすれば、ノズルの本数を減らすことができ、装置コストを低減することができ、またメンテナンスも容易となる等のメリットがある。なお、後述する成膜温度帯では、HCDガスとH2ガスとは反応しないが、HCDガスとO2ガスとは反応することが考えられるので、HCDガスとO2ガスとは別々のノズルから処理室201内に供給した方がよい。
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気するガス排気管231が設けられている。ガス排気管231には、圧力検出器としての圧力センサ245及び圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ242は、弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能なように構成されている開閉弁である。真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力に基づいてAPCバルブ242の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。主に、ガス排気管231、圧力センサ245、APCバルブ242、真空ポンプ246により排気系が構成される。
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述する基板保持具としてのボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内に対して搬入・搬出することが可能なように構成されている。
基板保持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるように構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することにより、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、第1ノズル233a、第2ノズル233b及び第3ノズル233cと同様に、プロセスチューブ203の内壁に沿って設けられている。
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241f、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、圧力センサ245、APCバルブ242、ヒータ207、温度センサ263、真空ポンプ246、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。コントローラ280により、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241fによるガス流量調整、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243fの開閉動作、APCバルブ242の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整、真空ポンプ246の起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等の制御が行われる。
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜としての酸化膜を成膜する方法の例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
図3に、本実施形態における成膜フロー図を、図4に本実施形態の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミング図を示す。本実施形態の成膜シーケンスでは、基板を収容した処理容器内に所定元素としてのシリコンを含む原料ガスを供給することで、基板上に原料の吸着層またはシリコン層(以下、シリコン含有層)を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定した処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給することで、基板上に形成されたシリコン含有層を酸化層に改質する工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを少なくとも1回以上行うことで、基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する。ここで、原料の吸着層とは、原料分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。シリコン層とは、シリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるシリコン薄膜をも含む。なお、シリコンにより構成される連続的な層をシリコン薄膜という場合もある。
基板上にシリコン含有層(原料の吸着層またはシリコン層)を形成する工程は、ALD反応またはCVD反応が生じる条件下で行い、このとき基板上に1原子層未満から数原子層程度のシリコン含有層を形成する。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。ALD反応が生じる条件下では基板上に原料の吸着層が形成され、CVD反応が生じる条件下では基板上にシリコン層が形成される。
また、シリコン含有層を酸化層に改質する工程では、大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種によりシリコン含有層を酸化してシリコン酸化層に改質する。この酸化処理によれば、酸素含有ガスを単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下において酸素含有ガスに水素含有ガスを添加することで、酸素含有ガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。シリコン含有層を酸化層に改質する工程はノンプラズマの減圧雰囲気下で行われる。なお、水素含有ガスは、図4(a)に示すように間欠的に、すなわち、シリコン含有層を酸化層に改質する工程においてのみ供給してもよいし、図4(b)に示すように連続的に、すなわち、基板上にシリコン含有層を形成する工程とシリコン含有層を酸化層に改質する工程とを繰り返す間中、常時供給するようにしてもよい。
以下、これを具体的に説明する。なお、本実施形態では、原料ガスとしてシリコンを含む原料ガスであるHCDガスを、酸素を含むガスとしてO2ガスを、水素を含むガスとしてH2ガスを用い、図4(a)のシーケンスにより、基板上に絶縁膜としてシリコン酸化膜(SiO2膜)を形成する例について説明する。
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を保持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ242がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構267によりボート217が回転されることでウエハ200が回転される。その後、後述する4つのステップを順次実行する。
[ステップ1]
第3ガス供給管232cのバルブ243e、第3不活性ガス供給管234cのバルブ243fを開き、第3ガス供給管232cにHCDガス、第3不活性ガス供給管234cに不活性ガス(例えばN2ガス)を流す。不活性ガスは、第3不活性ガス供給管234cから流れ、マスフローコントローラ241fにより流量調整される。HCDガスは、第3ガス供給管232cから流れ、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。流量調整されたHCDガスは、流量調整された不活性ガスと第3ガス供給管232c内で混合されて、第3ノズル233cのガス供給孔248cから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される(HCDガス供給)。
このとき、APCバルブ242を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241eで制御するHCDガスの供給流量は、例えば10〜1000sccmの範囲内の流量とする。HCDガスにウエハ200を晒す時間は、例えば1〜180秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、処理室201内でALD反応またはCVD反応が生じるような温度となるように設定する。すなわちウエハ200の温度が、例えば300〜700℃、好ましくは350〜650℃の範囲内の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、ウエハ200の温度が300℃未満となるとウエハ200上にHCDが吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が650℃、特に700℃を超えるとCVD反応が強くなり、均一性が悪化しやすくなる。よって、ウエハ200の温度は300〜700℃とするのが好ましい。
上述の条件にてHCDガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200(表面の下地膜)上に1原子層未満から数原子層のHCDの吸着層またはシリコン層(以下、シリコン含有層)が形成される。なお、ALD反応が生じる条件下ではウエハ200上にHCDが表面吸着してHCDの吸着層が形成される。CVD反応が生じる条件下ではHCDが自己分解することでウエハ200上にシリコン分子が堆積してシリコン層が形成される。ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3での酸化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl4)、DCS(ジクロロシラン、SiH2Cl2)、SiH4(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si(N(CH3)2))4)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si(N(CH3)2))3H)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si(N(C2H5)2)2H2)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH2(NH(C4H9))2)などの有機原料を用いてもよい。
不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。なお、不活性ガスとして窒素(N)を含まないガスであるArやHe等の希ガスを使用することで、形成されるシリコン酸化膜の膜中N不純物濃度を低減できる。よって、不活性ガスとしては、Ar、He等の希ガスを用いるのが好ましい。後述するステップ2、3、4においても同様なことが言える。
[ステップ2]
ウエハ200上にシリコン含有層が形成された後、第3ガス供給管232cのバルブ243eを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ242は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したHCDガスを処理室201内から排除する。このとき、不活性ガスを処理室201内へ供給すると、残留したHCDガスを排除する効果が更に高まる(残留ガス除去)。このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がHCDガスの供給時と同じく300〜700℃、好ましくは350〜650℃の範囲内の温度となるように設定する。
[ステップ3]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第1ガス供給管232aのバルブ243a、第1不活性ガス供給管234aのバルブ243cを開き、第1ガス供給管232aにO2ガス、第1不活性ガス供給管234aに不活性ガスを流す。不活性ガスは、第1不活性ガス供給管234aから流れ、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。O2ガスは第1ガス供給管232aから流れ、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたO2ガスは、流量調整された不活性ガスと第1ガス供給管232a内で混合されて、第1ノズル233aのガス供給孔248aから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき同時に、第2ガス供給管232bのバルブ243b、第2不活性ガス供給管234bのバルブ243dを開き、第2ガス供給管232bにH2ガス、第2不活性ガス供給管234bに不活性ガスを流す。不活性ガスは、第2不活性ガス供給管234bから流れ、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。H2ガスは第2ガス供給管232bから流れ、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたH2ガスは、流量調整された不活性ガスと第2ガス供給管232b内で混合されて、第2ノズル233bのガス供給孔248bから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される(O2ガス及びH2ガス供給)。なお、O2ガス及びH2ガスはプラズマによって活性化することなく処理室201内に供給する。
このとき、APCバルブ242を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241aで制御するO2ガスの供給流量は、例えば1sccm〜20slmの範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241bで制御するH2ガスの供給流量は、例えば1sccm〜20slmの範囲内の流量とする。なお、O2ガス及びH2ガスにウエハ200を晒す時間は、例えば1〜180秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば350〜1000℃の範囲内の温度となるように設定する。なお、この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのO2ガスへのH2ガス添加による酸化力向上の効果が得られることを確認した。また、ウエハ200の温度が低すぎると酸化力向上の効果が得られないことも確認した。ただしスループットを考慮すると、ウエハ200の温度が、酸化力向上の効果が得られる温度であってステップ1のHCDガスの供給時と同一の温度となるように、すなわちステップ1とステップ3とで処理室201内の温度を同一の温度に保持するようにヒータ207の温度を設定するのが好ましい。この場合、ステップ1とステップ3とでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が350〜700℃、好ましくは350〜650℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。さらには、ステップ1〜ステップ4(後述)にかけて処理室201内の温度を同一の温度に保持するようにヒータ207の温度を設定するのがより好ましい。この場合、ステップ1〜ステップ4(後述)にかけて処理室201内の温度が350〜700℃、好ましくは350〜650℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、減圧雰囲気下でのO2ガスへのH2ガス添加による酸化力向上の効果を得るには、処理室201内の温度を350℃以上とする必要があるが、処理室201内の温度は400℃以上とするのが好ましく、さらには450℃以上とするのが好ましい。処理室201内の温度を400℃以上とすれば、400℃以上の温度で行うO3酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができ、処理室201内の温度を450℃以上とすれば、450℃以上の温度で行うO2プラズマ酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができる。
上述の条件にてO2ガス及びH2ガスを処理室201内に供給することで、O2ガス及びH2ガスは加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで活性化されて反応し、それにより原子状酸素等のOを含む酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、ステップ1でウエハ200上に形成されたシリコン含有層に対して酸化処理が行われる。そして、この酸化処理により、シリコン含有層はシリコン酸化層(SiO2層、以下、単にSiO層ともいう。)へと改質される。
酸素含有ガスとしては、酸素(O2)ガスの他、オゾン(O3)ガス等を用いてもよい。なお、上述の温度帯において、一酸化窒素(NO)ガスや亜酸化窒素(N2O)ガスへの水素含有ガス添加効果を試してみたところ、NOガス単独供給やN2Oガス単独供給に比べて酸化力向上の効果が得られないことを確認した。すなわち、酸素含有ガスとしては窒素非含有の酸素含有ガス(窒素を含まず酸素を含むガス)を用いるのが好ましい。水素含有ガスとしては、水素(H2)ガスの他、重水素(D2)ガス等を用いてもよい。なお、アンモニア(NH3)ガスやメタン(CH4)ガス等を用いると、窒素(N)不純物や炭素(C)不純物の膜中への混入が考えられる。すなわち、水素含有ガスとしては、他元素非含有の水素含有ガス(他元素を含まず水素または重水素を含むガス)を用いるのが好ましい。すなわち、酸素含有ガスとしては、O2ガスおよびO3ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、H2ガスおよびD2ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
[ステップ4]
シリコン含有層をシリコン酸化層へと改質した後、第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、O2ガスの供給を停止する。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、H2ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ242は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したO2ガスやH2ガスを処理室201内から排除する。このとき、不活性ガスを処理室201内へ供給すると、残留したO2ガスやH2ガスを排除する効果が更に高まる(残留ガス除去)。このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がO2ガス及びH2ガスの供給時と同じく350〜700℃、好ましくは350〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
上述したステップ1〜4を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することが出来る。
所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜すると、不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態でマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
上述のステップ3では、加熱された減圧雰囲気下においてO2ガスとH2ガスとを反応させて原子状酸素等のOを含む酸化種を生成し、この酸化種を用いて、シリコン含有層をシリコン酸化層へ改質する改質工程を行うことにより、酸化種の持つエネルギーがシリコン含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合を切り離す。Si−O結合を形成するためのエネルギーは、Si−N、Si−Cl、Si−H、Si−Cの結合エネルギーよりも高いため、Si−O結合形成・BR>ノ必要なエネルギーを酸化処理対象のシリコン含有層に与えることで、シリコン含有層中のSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Cl、Cは膜中から除去され、N2、H2、Cl2、HCl、CO2等として排出される。また、N、H、Cl、Cとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつきSiO2層へと改質される。本実施形態の成膜シーケンスにより形成したSiO2膜の膜中窒素、水素、塩素、炭素濃度は極めて低く、Si/O比率は化学量論組成である0.5に極めて近い、良質な膜となることを確認した。
なお、このステップ3の酸化処理と、O2プラズマ酸化処理と、O3酸化処理とを比較したところ、450℃以上700℃以下における低温雰囲気下においては、このステップ3の酸化処理の酸化力が最も強力であることを確認した。正確には、400℃以上700℃以下では、ステップ3の酸化処理による酸化力は、O3酸化処理による酸化力を上回り、450℃以上700℃以下では、ステップ3の酸化処理による酸化力は、O3酸化処理およびO2プラズマ酸化処理による酸化力を上回ることを確認した。これにより、このステップ3の酸化処理は、このような低温雰囲気下では非常に有効であることが判明した。なお、O2プラズマ酸化処理の場合、プラズマ発生器が必要となり、O3酸化処理の場合、オゾナイザが必要となるが、このステップ3の酸化処理によれば、これらが不要となり、装置コストを低減することができる等のメリットがある。ただし、本実施形態においては、酸素含有ガスとしてO3やO2プラズマを用いるという選択肢もあり、これらのガスの使用を否定するものではない。O3やO2プラズマに水素含有ガスを添加することで、よりエネルギーの高い酸化種を生成することができ、この酸化種により酸化処理を行うことで、デバイス特性が向上する等の効果も考えられる。
また、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン酸化膜を形成すれば、成膜レート、ウエハ面内における膜厚均一性は、一般的なCVD法によりシリコン酸化膜を形成する場合よりも良好なものとなることを確認した。なお、一般的なCVD法とは、無機原料であるDCSとN2Oとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)を形成する方法のことを指している。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の窒素、塩素等の不純物の濃度は、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の不純物濃度は、有機系シリコン原料を用いてCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、有機系シリコン原料を用いた場合であっても、成膜レート、ウエハ面内における膜厚均一性、膜中の不純物濃度が良好なものとなることを確認した。
上記実施形態では、水素含有ガスとしてのH2ガスは、図4(a)に示すように間欠的に、すなわち、ステップ3においてのみ供給する例について説明したが、図4(b)に示すように連続的に、すなわち、ステップ1〜4を繰り返す間中、常に供給し続けるようにしてもよい。また、H2ガスを間欠的に供給する場合でも、ステップ1および3においてのみ供給するようにしてもよいし、ステップ1〜3にかけて供給するようにしてもよい。また、ステップ2〜3にかけて供給するようにしてもよいし、ステップ3〜4にかけて供給するようにしてもよい。
ステップ1において、すなわちHCDガス供給時にH2ガスを供給することで、HCDガス中のClを引き抜くことが考えられ、成膜レートの向上、膜中Cl不純物の低減効果が考えられる。また、ステップ2において、すなわちHCDガスの供給を停止した後にO2ガスよりも先行してH2ガスの供給を開始することで、膜厚均一性制御に有効となることが考えられる。また、ステップ2において、すなわちO2ガスよりも先行してH2ガスの供給を開始することで、例えば金属とシリコンが露出した部分に対しては、選択的にシリコンに酸化膜を形成できるようになることが考えられる。また、ステップ4において、すなわちO2ガスの供給を停止した後、HCDガスの供給を開始する前に、H2ガスを供給することで、ステップ3で形成されたSiO層の表面を水素終端させて改質させ、次のステップ1において供給するHCDガスがSiO層の表面に吸着しやすくなるようにできることが考えられる。
(第1実施例)
次に第1実施例について説明する。
本実施形態のシーケンスおよび従来技術のシーケンスによりシリコン酸化膜を形成し、成膜速度および膜厚分布均一性を測定した。なお、従来技術のシーケンスとは、本実施形態のシーケンスのステップ3において、O2ガスとH2ガスとを用いる代わりにO2ガスをプラズマ励起して得られた酸素活性種(O*)を含むガスを用いるシーケンスである。また、本実施形態のシーケンスにおける成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。従来技術のシーケンスにおける成膜条件(各ステップでの処理条件)は、ステップ1、2、4での処理条件は本実施形態のシーケンスと同様とし、ステップ3での処理条件は、処理室内の圧力:10〜100Paの範囲内の圧力、O2ガスの供給流量:100〜10000sccmの範囲内の流量、O2ガス供給時間:1〜180秒間の範囲内の時間、ウエハ温度:350〜650℃の範囲内の温度、高周波電力:50〜400Wの範囲内の電力とした。
その結果を図5、図6に示す。図5は、従来技術のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜の成膜速度を1とした場合の、本実施形態のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜の成膜速度比率を表している。図6は、従来技術のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内における膜厚分布均一性を1とした場合の、本実施形態のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内における膜厚分布均一性比率を表している。なお、膜厚分布均一性は、ウエハ面内における膜厚分布のばらつきの度合を示しており、その値が小さいほどウエハ面内における膜厚分布均一性が良好なことを示している。
図5に示すように、本実施形態のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜は、従来技術のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜に比べ、成膜速度が格段に高いことが分かる。本実施形態のシーケンスによれば、従来技術のシーケンスによる成膜速度の5倍もの成膜速度が得られることが分かる。なお、本実施形態のシーケンスによりシリコン酸化膜を形成する際の成膜速度は2Å/サイクル程度であった。
また、図6に示すように、本実施形態のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜は、従来技術のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜に比べ、膜厚分布均一性も大幅に改善されていることが分かる。本実施形態のシーケンスによれば、従来技術のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜の膜厚分布均一性の1/20程度の、非常に良好な膜厚分布均一性が得られることが分かる。なお、本実施形態のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜の膜厚分布均一性は1.5%程度だった。
ここで、本実施形態のシーケンスにおいて、基板上に形成したシリコン含有層(HCDの吸着層またはシリコン層)を、従来技術のシーケンスのようにO2ガスをプラズマ励起して得られたO*で酸化するのではなく、加熱された減圧雰囲気下においてO2ガスとH2ガスとを反応させて得られたOを含む酸化種で酸化するメリットについて説明する。
図7に従来技術のシーケンスにおけるSiO2堆積モデルを、図8に本実施形態のシーケンスにおけるSiO2堆積モデルを示す。なお、いずれのシーケンスも、ステップ1でシリコンウエハ表面に原料としてのHCDの吸着層が形成される場合を示している。
図7の従来技術のシーケンスの場合、まず原料ガスとしてのHCDガスを供給すると、図7(a)に示すように、シリコンウエハ表面にHCDが吸着し、シリコンウエハ上にHCDの吸着層が形成される。
この状態でO2ガスをプラズマ励起して得られた酸素活性種(O*)を含むガスを供給すると、図7(b)に示すように、ウエハ面内におけるO2ガス(O*)流の上流から下流に向かってシリコンウエハ表面に吸着したHCD分子の酸化が進んでいく。一方、ウエハ面内におけるO2ガス流の下流のHCD分子はシリコンウエハ表面から脱離を起こす。これは、O2ガスをプラズマ励起することで得られたO*にはHCD分子を酸化させるだけでなく、Si−O結合やSi−Si結合を切ってしまうだけのエネルギーがあるからと考えられる。すなわち、この場合、シリコンウエハ表面上へのSiの固定を十分に行うことができず、シリコンウエハ表面上にSiが固定されない領域が生じることとなる。さらに、図7(c)に示すように、O*は、形成したSiO2層の下地であるシリコンウエハの表面をも酸化してしまう。
このため、シリコンウエハを回転させつつ従来技術のシーケンスによりSiO2膜を形成すると、そのSiO2膜の外周部の膜厚が厚くなり、ウエハ面内における膜厚分布均一性が悪化してしまう(図6参照)。また、シリコンウエハ表面から脱離したHCD分子は処理室内の下流へと流れ、処理室内におけるO2ガス流の下流、すなわち、ウエハ配列領域下部のウエハに再吸着し、酸化するため、ウエハ間における膜厚分布均一性も悪化してしまうことが考えられる。
これに対し、図8の本実施形態のシーケンスの場合、まずHCDガスを供給すると、図8(a)に示すように、シリコンウエハ表面にHCDが吸着し、シリコンウエハ上にHCDの吸着層が形成される。
この状態で加熱された減圧雰囲気下においてO2ガスとH2ガスとを反応させて得られたOを含む酸化種を含むガスを供給すると、図8(b)に示すように、ウエハ面内におけるO2ガス及びH2ガス(酸化種)流の上流から下流に向かってシリコンウエハ表面に吸着したHCD分子の酸化が進んでいく。このときウエハ面内におけるO2ガス及びH2ガス流の下流のHCD分子はシリコンウエハ表面から脱離することはない。すなわち従来技術のシーケンスにおいて生じていたHCD分子のシリコンウエハ表面からの脱離は抑制される。これは、O2ガスをプラズマ励起して得られたO*やO3を用いる場合、シリコンウエハに加えられた余分なエネルギーがSi−O結合やSi−Si結合を切ってしまうのに対し、加熱された減圧雰囲気下においてO2ガスとH2ガスとを反応させて得られた酸化種を用いる場合、シリコンウエハに新たなエネルギーを加えるのではなく、シリコンウエハ近傍においてO2ガスとH2ガスとの反応により生成された酸化種によりHCD分子を酸化させていくためである。すなわち、本実施形態における酸化処理の場合、O2プラズマ酸化処理やO3酸化処理による酸化力を上回る酸化力にて酸化が行われるが、Si−O結合やSi−Si結合を切ってしまうような余分なエネルギーは生じないのである。この場合、シリコンウエハ表面上へのSiの固定を十分に行うことができ、シリコンウエハ表面上に均一にSiが固定されることとなる。このため、図8(c)に示すように、シリコンウエハ表面に吸着したHCD分子はウエハ面内にわたり均一に酸化されてSiO2層へ改質され、シリコンウエハ表面上にSiO2層がウエハ面内にわたり均一に形成される。そして、これらが繰り返されることで、ウエハ上に形成されるSiO2膜のウエハ面内における膜厚均一性は良好なものとなる(図6参照)。なお、O2プラズマにH2を添加した場合、O2とH2との反応により生成される酸化種による酸化が支配的となる。また、O3にH2を添加した場合、O3とH2との反応により生成される酸化種による酸化が支配的となる。すなわち、O2プラズマやO3を用いる場合でも、H2を添加することで、本実施形態における酸化処理と同様な効果が得られることとなる。
なお、図7の従来技術のシーケンスおよび図8の本実施形態のシーケンスでは、第1ステップでシリコンウエハ表面にHCDの吸着層が形成される場合について説明したが、第1ステップで供給したHCDガスが自己分解してシリコンウエハ表面にシリコン層が形成される場合についても同様なことが言える。その場合、図7、図8のHCD分子をSi分子に置き換えれば、同様に説明することができる。
(第2実施例)
次に第2実施例について説明する。
本実施形態のシーケンスおよび一般的なCVD法によりシリコン酸化膜を形成し、膜中不純物の濃度を測定した。なお、一般的なCVD法とは、DCSとN2Oとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO膜)を形成する方法であり、成膜温度は780℃とした。また、本実施形態のシーケンスの各ステップにおける成膜温度は600℃一定とし、それ以外の成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。また膜中不純物の測定はSIMSを用いて行った。
その結果を図9に示す。図9(a)は、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表している。図9(b)は、本実施形態のシーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表している。いずれの図も、横軸はSiO2膜表面からの深さ(nm)を示しており、縦軸は、H、C、N、Clの濃度(atoms/cm3)を示している。
図9(a)、図9(b)に示すように、本実施形態のシーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物のうちHの濃度については、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれるHの濃度と同等であることが分かる。しかしながら本実施形態のシーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物のうちClの濃度については、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれるClの濃度よりも3桁程度も低いことが分かる。また、本実施形態のシーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物のうちNの濃度については、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜の膜中に含まれるNの濃度よりも1桁程度も低いことが分かる。なお、膜中不純物のうちCの濃度については、本実施形態のシーケンスにより形成したシリコン酸化膜も、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜も、共に検出下限以下であった。すなわち、本実施形態のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜は、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜に比べ、不純物のうち特にCl、Nの濃度が低く、中でも特にClの濃度が極めて低いことが分かる。なお、第2実施例で用いた実験装置の制約上、本実施形態のシーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中には、ppmオーダーでのN不純物の混入が見られるが、パージガスをN2ガスからArガス等の希ガスに変更することで、N濃度がバックグラウンドレベル(未検出)となることを確認した。
(第3実施例)
次に第3実施例について説明する。
本実施形態のシーケンスにより、表面にシリコン原子を含む膜と金属原子を含む膜が露出しているウエハに対し、シリコン酸化膜を形成し、その断面構造のSEM観察を行った。ウエハ(Si sub)としては、表面にゲート酸化膜(Gate Ox)としてのシリコン酸化膜が形成され、その上にゲート電極としてのポリシリコン膜(Poly−Si)およびタングステン膜(W)が形成され、その上にシリコン窒化膜(SiN)が形成されているウエハを用いた。なお、シリコン原子を含む膜とはシリコン酸化膜やポリシリコン膜やシリコン窒化膜のことであり、金属原子を含む膜とはタングステン膜のことである。このウエハに対し、すなわち、シリコン酸化膜、ポリシリコン膜、タングステン膜およびシリコン窒化膜上に本実施形態のシーケンスにより、サイドウォールスペーサとしてのシリコン酸化膜を形成した。本実施形態のシーケンスにおける成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。なお、O2ガスとH2ガスは、水素リッチな条件、すなわち、O2ガスの供給流量よりもH2ガスの供給流量の方が大きくなるようにして処理室内に供給した。
そのSEM画像を図10に示す。図10(a)は、本実施形態のシーケンスによりシリコン酸化膜を形成する前のウエハの状態を示しており、図10(b)は、本実施形態のシーケンスによりシリコン酸化膜を形成した後のウエハの状態を示している。図10によれば、本実施形態のシーケンスにより、上述の処理条件で、シリコン酸化膜を形成することにより、タングステン膜の側壁を酸化させることなく、シリコン酸化膜、ポリシリコン膜、タングステン膜およびシリコン窒化膜上に、一様にシリコン酸化膜を堆積させることができることが分かる。
(第4実施例)
次に第4実施例について説明する。
本実施形態のシーケンスおよび一般的なCVD法によりシリコン酸化膜をそれぞれ形成し、ウエハ面内膜厚均一性(WIW Unif)を測定した。なお、一般的なCVD法とは、DCSとN2Oとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO膜)を形成する方法であり、成膜温度は800℃とした。また、本実施形態のシーケンスにおける成膜温度は450〜800℃の間で変化させた。それ以外の成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。
その結果を図11に示す。図11は、ウエハ面内膜厚均一性と成膜温度(ウエハの温度)との関係を表すグラフ図である。図11の横軸は成膜温度(℃)を示しており、縦軸はウエハ面内膜厚均一性(任意単位)を示している。図11の黒丸(●)は、本実施形態のシーケンスにより成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性を表している。また、白丸(〇)は、一般的なCVD法により成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性を表している。なお、ウエハ面内膜厚均一性は、ウエハ面内における膜厚分布のばらつきの度合を示しており、その値が小さいほどウエハ面内における膜厚均一性が良好なことを示している。
図11より、本実施形態のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性は、成膜温度が700℃を超えると、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性よりも悪化し、700℃以下であれば、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性よりも良好となることが分かる。また、本実施形態のシーケンスにより形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性は、成膜温度が650℃以下であれば、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性の1/2程度となり、成膜温度が630℃以下であれば、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性の1/3程度となり、極めて良好となることが分かる。特に、成膜温度が650℃以下、特に630℃以下となると、急激にウエハ面内膜厚均一性が良好なものとなり、しかも安定化することが読み取れる。
これらのことから、本実施形態のシーケンスにおける成膜温度(ウエハ温度)は、形成されるシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性の観点からいうと、700℃以下が好ましく、さらなる均一性確保のためには650℃以下、さらには630℃以下がより好ましい。
(第5実施例)
次に第5実施例について説明する。
本実施形態のシーケンスにおけるステップ3の酸化処理(以下、O2+H2添加酸化処理)と、本実施形態のシーケンスにおけるステップ3の酸化処理をプラズマを併用して行った場合(以下、O2+H2添加プラズマ酸化処理)と、O2プラズマ酸化処理と、O3酸化処理と、O2酸化処理との酸化力を比較した。なお、O2+H2添加プラズマ酸化処理とは、O2にH2を添加したものをプラズマで活性化して酸化処理するケースを指す。酸化力は、シリコンに対する酸化量、すなわち、シリコンに対する酸化処理により形成されるシリコン酸化膜の膜厚で判定した。酸化処理温度(ウエハの温度)は30〜600℃の間で変化させた。それ以外の酸化処理条件は、上述の実施形態に記載のステップ3の酸化処理条件範囲内の条件とした。
その結果を図12に示す。図12は、シリコン酸化膜の膜厚と酸化処理温度(ウエハの温度)との関係を表すグラフ図である。図12の横軸は酸化処理温度(℃)を示しており、縦軸はシリコン酸化膜の膜厚(Å)を示している。図12の黒丸(●)は、O2+H2添加酸化処理による酸化量を示しており、黒三角(▲)は、O2+H2添加プラズマ酸化処理による酸化量を示している。また、黒菱形(◆)、黒四角(■)、白丸(〇)は、それぞれO2プラズマ酸化処理、O3酸化処理、O2酸化処理による酸化量を示している。
図12より、300℃以下の温度では、O2+H2添加酸化処理による酸化量は、O2プラズマ酸化処理やO3酸化処理による酸化量よりも小さく、O2単独で行うO2酸化処理による酸化量と同等であることが分かる。しかしながら、300℃を超える温度、特に350℃以上の温度では、O2+H2添加酸化処理による酸化量は、O2単独で行うO2酸化処理による酸化量を上回る。また、400℃以上の温度では、O2+H2添加酸化処理による酸化量は、O3酸化処理による酸化量を上回る。さらに、450℃以上の温度では、O2+H2添加酸化処理による酸化量は、O3酸化処理による酸化量およびO2プラズマ酸化処理による酸化量を上回ることが分かる。
これらのことから、本実施形態のシーケンスにおける成膜温度(ウエハ温度)は、O2+H2添加酸化処理における酸化力の観点からいうと、300℃以上、特に350℃以上が好ましく、さらなる酸化力向上のためには400℃以上、さらには450℃以上がより好ましい。なお、この酸化処理によれば、450℃以上であれば、O3酸化処理による酸化力およびO2プラズマ酸化処理による酸化力を上回る酸化力を得ることができる。また、この酸化処理によれば、650℃、700℃においても、O3酸化処理による酸化力およびO2プラズマ酸化処理による酸化力を上回る酸化力を得ることができることを確認した。
300℃を超える温度では、O2とH2とが反応することによって形成される水分(H2O)や、その時に生成される高エネルギーを有する酸素、およびシリコン酸化膜中において拡散速度の速い水素イオン(H+)のシリコン酸化膜中における拡散による酸素イオン(O2−)の拡散促進により、強い酸化力を有するものと考えられる。なお、酸素分子(O−O)の結合エネルギーや水素分子(H−H)の結合エネルギーよりも、水(H−O−H)の結合エネルギーの方が大きい。このことは、酸素原子同士が結合して酸素分子となった状態よりも、酸素原子と水素原子とが結合して水となった状態の方が安定状態にあるといえる。また、炉内圧力特性によれば、O2とH2とが反応して水が生じていることは明白である。これらのことから、O2へのH2の添加により酸化力が向上するものと考えられる。
なお、300℃以上の温度では、O2+H2添加プラズマ酸化処理による酸化量は、O2+H2添加酸化処理による酸化量、O3酸化処理による酸化量、およびO2プラズマ酸化処理による酸化量を上回り、これらの中で最も大きい。よって、本実施形態のシーケンスにおけるステップ3の酸化処理は、プラズマを併用して行う場合でも有効と言える。また、650℃、700℃においても、O2+H2添加プラズマ酸化処理による酸化力は、O2+H2添加酸化処理による酸化力、O3酸化処理による酸化力、およびO2プラズマ酸化処理による酸化力を上回ることを確認した。なお、O2にH2を添加したものをプラズマで活性化して酸化処理する場合だけでなく、O2プラズマにH2を添加して酸化処理するようにしてもよく、O2にH2プラズマを添加して酸化処理するようにしてもよい。すなわち、O2およびH2のうち、何れかまたは両方をプラズマで活性化して酸化処理するようにしてもよい。これらの場合でも、O2+H2添加プラズマ酸化処理と同様な効果が得られる。
(第6実施例)
次に第6実施例について説明する。
本実施形態のシーケンスにおけるステップ3の酸化処理をN2Oで行った場合(以下、N2O酸化処理)、N2OにH2を添加して行った場合(以下、N2O+H2酸化処理)、NOにH2を添加して行った場合(以下、NO+H2酸化処理)の酸化力を比較した。酸化力の比較は第5実施例と同様な方法で行った。酸化処理温度は600℃とし、それ以外の酸化処理条件は、上述の実施形態に記載のステップ3の酸化処理条件範囲内の条件とした。
その結果を図13に示す。図13は、シリコン酸化膜の膜厚と酸化処理温度(ウエハの温度)との関係を表すグラフ図である。図13の横軸は酸化処理温度(℃)を示しており、縦軸はシリコン酸化膜の膜厚(Å)を示している。図13の白四角(□)は、N2O酸化処理による酸化量を示しており、白菱形(◇)は、N2O+H2酸化処理による酸化量を示しており、白三角(△)は、NO+H2酸化処理による酸化量を示している。また、図13には、比較のため、図12の実験結果も併記している。すなわち、黒丸(●)、黒三角(▲)、黒菱形(◆)、黒四角(■)、白丸(〇)は、それぞれ、O2+H2添加酸化処理、O2+H2添加プラズマ酸化処理、O2プラズマ酸化処理、O3酸化処理、O2酸化処理による酸化量を示している。
図13より、N2OやNOにH2を添加しても酸化力は向上せず、O2単独で行うO2酸化処理やN2O単独で行うN2O酸化処理による酸化力と同等であることが分かる。また、酸化処理温度が300℃、450℃、650℃、700℃においても、同様な傾向を示すことを確認している。
これらのことから、このような温度帯では、酸素含有ガスとして、N2OやNOを用いても酸化力向上の効果はなく、酸化力向上効果を得るためには、O2等の窒素非含有の酸素含有ガス(窒素を含まず酸素を含むガス)を用いる必要がある。窒素非含有の酸素含有ガスとしては、O2の他O3等の酸素原子単独で構成される物質が挙げられる。なお、第5実施例で説明したように、酸素含有ガスとしては、O2をプラズマで活性化したガスを用いてもよい。
(第7実施例)
次に第7実施例について説明する。
本実施形態のシーケンスによりシリコン酸化膜を形成し、膜中不純物の濃度を測定した。なお、パージガスとしてN2ガスを用いた場合と、Arガスを用いた場合の膜中不純物の濃度、特にN濃度を比較した。本実施形態のシーケンスの各ステップにおける成膜温度は600℃一定とし、それ以外の成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。また膜中不純物の測定はSIMSを用いて行った。
その結果を図14に示す。図14(a)は、パージガスとしてN2ガスを用いた場合のシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表している。図14(b)は、パージガスとしてArガスを用いた場合のシリコン酸化膜の膜中に含まれる不純物(H、C、N、Cl)の濃度を表している。いずれの図も、横軸はSiO2膜表面からの深さ(nm)を示しており、縦軸は、H、C、N、Clの濃度(atoms/cm3)を示している。
図14(a)、図14(b)に示すように、パージガスとしてArガスを使用することにより、パージガスとしてN2ガスを使用する場合よりも、シリコン酸化膜中のN濃度を低減できることが分かる。なお、処理条件によっては、N濃度がバックグラウンドレベル(未検出)となることも確認している。
本実施形態のシーケンスにより形成したシリコン酸化膜は、上述のように不純物が少なく、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜(HTO膜)等と比べても良質であり、それらの特性を活かし、半導体製造工程のIPDやSWSなどの工程へ適応できるものと考えられる。
また、一般的に3DMAS、BTBAS等のアミン系原料を用いてシリコン酸化膜を形成する場合、形成されたシリコン酸化膜にはCやNなどの膜中不純物が多くなる。この場合に、ウエハに対してアミン系原料ガスを供給することで、ウエハ上にSi含有層を形成し、このSi含有層に対して窒素含有ガスをプラズマや熱で活性化して供給することで、このSi含有層を窒化して一旦SiN層に改質し、このSiN層に対して酸素含有ガスをプラズマ等で活性化して供給することで、このSiN層をSiO層に改質し、これを繰り返すことでSiO膜を形成する方法もあるが、その場合にも、SiO膜中にはNなどの不純物が残りやすい。本実施形態のシーケンスによれば、アミン系原料を用いる場合でも、膜中不純物N、Cの少ないSiO膜を形成できる。また、上述のように、膜中不純物Clも一般的なCVD法により形成したSiO膜(HTO膜)よりも3桁程度も低いSiO膜を形成できる。また、ウエハに対して原料ガスを供給することで、ウエハ上にSi含有層を形成し、このSi含有層に対して窒素含有ガスをプラズマや熱で活性化して供給することで、このSi含有層を窒化して一旦SiN層に改質し、このSiN層に対して酸素含有ガスをプラズマ等で活性化して供給することで、このSiN層を酸化してSiO層に改質し、これを繰り返すことでSiO膜を形成する手法を用いる場合において、SiN層を酸化してSiO層に改質する際に、本実施形態のシーケンスのステップ3の酸化処理を行うようにしてもよい。このようにしても、膜中不純物N、Cの少ないSiO膜を形成できる。
また、ゲートの加工では、例えば、ゲートの側壁エッチング後に、プラズマ酸化や高温での減圧酸化により修復酸化・選択酸化を行い、その後に、サイドウォールスペーサとしてのSiO膜をALD法やCVD法等により堆積させることが行われるが、本実施形態のシーケンスを用い、ステップ3での酸化処理条件中の水素の供給量、時間を最適化することで、In−Situで連続的に修復酸化とサイドウォールスペーサとしてのSiO膜の堆積が可能であることを確認した。
また、バリア膜であるSiN膜を酸化させることなくSiO膜を堆積させることが求められるが、その場合には、本実施形態のシーケンスを用い、ステップ3での水素供給条件や酸化処理時間を最適化し、ステップ1で供給したSiソースのみを酸化するような条件としてSiO膜を堆積させればよい。また、この場合にレートが必要な場合は、下地SiN膜へ影響がでない程度のソフトな条件でSiO膜を堆積させてから、レートの速い条件、すなわち酸化力の強い条件でSiO膜を成膜するのもよい。すなわち、本実施形態のシーケンスを用い、レートの遅いソフトな条件で下地SiN膜上へ第1のSiO膜を形成する第1工程(初期成膜工程)と、レートの速い条件で第2のSiO膜を形成する第2工程(本成膜工程)と、の2段階でSiO膜を形成するようにしてもよい。
また、STIのライナーおよび埋め込みの形成でも、同様に拡散系の酸化とCVD系のSiO成膜が別々に行われているが、本実施形態のシーケンスを用い、各ステップでの成膜温度を含む条件をIn−Situで変更することで、これらを連続的に行うことも可能である。
また、本実施形態のシーケンスによりSiO膜を形成後に、このSiO膜に対してさら
に高温酸化、アニールを行い、SiO膜の膜質を改質する工程を設け、更に良質なSiO膜を形成するようにしてもよい。
また、本実施形態のシーケンスでは、ステップ1で、Si含有層を形成し、最終的にSiO膜を形成する例について説明したが、Si含有層(半導体元素を含む層)の代わりにTi、Al、Hf等の金属元素を含む層を形成し、最終的に金属酸化膜を形成するようにしてもよい。例えば、TiO膜を形成する場合には、ステップ1でウエハ上にTi含有層(Ti原料の吸着層またはTi層)を形成し、ステップ3でTi含有層をTiO層に改質することも考えられる。また例えば、AlO膜を形成する場合には、ステップ1でウエハ上にAl含有層(Al原料の吸着層またはAl層)を形成し、ステップ3でAl含有層をAlO層に改質することも考えられる。また例えば、HfO膜を形成する場合には、ステップ1でウエハ上にHf含有層(Hf原料の吸着層またはHf層)を形成し、ステップ3でHf含有層をHfO層に改質することも考えられる。このように、本実施形態のシーケンスは、メタル酸化物を形成する工程にも適用できる。すなわち、本実施形態のシーケンスは、所定元素が半導体元素である場合だけでなく金属元素である場合にも適用できる。ただし、ステップ3での酸化処理を行うには、すなわち、加熱された減圧雰囲気下において酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて原子状酸素等のOを含む酸化種を生成し、この酸化種を用いて、酸化処理を行うには、少なくとも処理室内の温度(ウエハの温度)を350℃以上の温度とする必要がある。350℃未満の温度では、十分な酸化処理を行うことができなくなる。
上記実施形態では、O2ガス、H2ガス、HCDガスを、それぞれ別々のノズルから処理室201内に供給する例について説明したが、図15に示すように、O2ガスとH2ガスとを同じノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。
図15(a)は、本発明の他の実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示している。また、図15(b)は、図15(a)に示す処理炉のA−A’断面図である。
本実施形態の基板処理装置が図1、2の基板処理装置と異なるのは、本実施形態では、図1、2の第1ノズル233aと第2ノズル233bとを共用のノズル233aとしており、第2ガス供給管232bを第1ガス供給管232aに接続している点である。その他の点は図1、2と同様である。なお、図15(a)、図15(b)において、図1、2で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、O2ガスとH2ガスとを、第1ガス供給管232aおよびノズル233a内で混合させてから処理室201内に供給することとなる。この場合、ノズル233a内は処理室201内と同様な温度に加熱されている。そのため、O2ガスとH2ガスとは、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にあるノズル233a内で反応し、このノズル233a内で酸素を含む酸化種が生成されることとなる。また、ノズル233a内は、処理室201内よりも圧力が高くなっている。そのため、ノズル233a内でのO2ガスとH2ガスとの反応は促進され、O2ガスとH2ガスとの反応により生じる酸化種をより多く生成することが可能となり、酸化力をより向上させることができることとなる。また、O2ガスとH2ガスとを処理室201内に供給する前にノズル233a内で均等に混合させることができることから、O2ガスとH2ガスとをノズル233a内で均等に反応させることができ、酸化種の濃度を均一化でき、ウエハ200間における酸化力の均一化を図ることも可能となる。
これらのことから、より高い酸化力向上効果および酸化力均一化効果を得るためには、O2ガスとH2ガスとを同じノズルから処理室201内に供給するのが好ましい。
以下、本発明の好ましい形態を付記する。
本発明の一態様によれば、基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定した前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給することで、前記所定元素含有層を酸化層に改質する工程と、を交互に繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、前記酸素含有ガスが酸素ガスまたはオゾンガスであり、前記水素含有ガスが水素ガスまたは重水素ガスであり、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を400℃以上700℃以下とする半導体装置の製造方法が提供される。
好ましくは、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を450℃以上700℃以下とする。
また好ましくは、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を450℃以上650℃以下とする。
また好ましくは、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を一定の温度に保持する。
また好ましくは、前記所定元素含有層を酸化層に改質する工程では、前記処理容器内に前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、同一ノズルを介して供給する。
また好ましくは、前記所定元素含有層を酸化層に改質する工程では、大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種により前記所定元素含有層を酸化して酸化層に改質する。
また好ましくは、前記所定元素が半導体元素または金属元素である。
また好ましくは、前記所定元素含有層を形成する工程と、前記所定元素含有層を酸化層に改質する工程と、を交互に繰り返す間に、前記処理容器内を窒素非含有の不活性ガスを用いてガスパージする工程を有する。
また好ましくは、前記窒素非含有の不活性ガスが希ガスである。
また好ましくは、前記所定元素含有層を形成する工程では、前記処理容器内に前記原料ガスと一緒に前記水素含有ガスを供給する。
また好ましくは、前記酸化膜を形成する工程では、前記処理容器内に前記水素含有ガスを常時供給する。
また好ましくは、前記酸素含有ガスが酸素ガスであり、前記水素含有ガスが水素ガスで
ある。
本発明の他の態様によれば、基板を収容した処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定した前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給することで、前記シリコン含有層をシリコン酸化層に改質する工程と、を交互に繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する工程を有し、前記酸素含有ガスが酸素ガスまたはオゾンガスであり、前記水素含有ガスが水素ガスまたは重水素ガスであり、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を400℃以上700℃以下とする半導体装置の製造方法が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、表面にシリコン原子を含む膜と金属原子を含む膜が露出している基板を収容した処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定した前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを、前記酸素含有ガスの供給流量よりも前記水素含有ガスの供給流量の方が大きくなるようにして供給することで、前記シリコン含有層をシリコン酸化層に改質する工程と、を交互に繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する工程を有し、前記酸素含有ガスが酸素ガスまたはオゾンガスであり、前記水素含有ガスが水素ガスまたは重水素ガスであり、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を400℃以上700℃以下とする半導体装置の製造方法が提供される。
好ましくは、前記金属原子を含む膜がタングステン膜である。
本発明の更に他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記処理容器内に酸素含有ガスとして酸素ガスまたはオゾンガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記処理容器内に水素含有ガスとして水素ガスまたは重水素ガスを供給する水素含有ガス供給系と、前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上に所定元素含有層を形成し、大気圧未満の圧力に設定した前記処理容器内に前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを供給することで、前記所定元素含有層を酸化層に改質し、これを交互に繰り返すことで、前
記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成すると共に、前記酸化膜を形成する際の前記基板の温度を400℃以上700℃以下とするように前記原料ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、前記圧力調整部、および、前記ヒータを制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記処理容器内に酸素含有ガスとして酸素ガスまたはオゾンガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記処理容器内に水素含有ガスとして水素ガスまたは重水素ガスを供給する水素含有ガス供給系と、前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成し、大気圧未満の圧力に設定した前記処理容器内に前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを供給することで、前記シリコン含有層をシリコン酸化層に改質し、これを交互に繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜を形成すると共に、前記シリコン酸化膜を形成する際の前記基板の温度を400℃以上700℃以下とするように前記原料ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、前記圧力調整部、および、前記ヒータを制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記処理容器内に酸素含有ガスとして酸素ガスまたはオゾンガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記処理容器内に水素含有ガスとして水素ガスまたは重水素ガスを供給する水素含有ガス供給系と、前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、表面にシリコン原子を含む膜と金属原子を含む膜が露出している基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給することで、前記基板上にシリコン含有層を形成し、大気圧未満の圧力に設定した前記処理容器内に前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、前記酸素含有ガスの供給流量よりも前記水素含有ガスの供給流量の方が大きくなるようにして供給することで、前記シリコン含有層をシリコン酸化層に改質し、これを交互に繰り返すことで、前記基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜を形成すると共に、前記シリコン酸化膜を形成する際の前記基板の温度を400℃以上700℃以下とするように前記原料ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、前記圧力調整部、および、前記ヒータを制御するコントローラと、を有する基板処理装置が提供される。