JP2014013063A - シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット - Google Patents

Abstract

【課題】シールリングによるシール性能を向上させて転動体を設置した内部空間への異物侵入防止効果を良好して、優れた耐久性を有し、且つ、回転抵抗の増大を抑えたシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの組立性を良好にする。
【解決手段】外輪２の外端面と外端部内周面との連続部に面取り部２２を形成する。又、芯金１７ｂの円輪部２０ｂと嵌合筒部１９ａとの連続部の円周方向複数箇所に通孔３５を形成する。シール材１８ｂを射出成形する際に、このシール材１８ｂを構成する弾性材の一部を前記各通孔３５を通じて、前記円輪部２０ｂと前記嵌合筒部１９ａとの連続部の外周面に送り込む事で突条３４を形成する。そして、この突条３４と前記面取り部２２とを、全周に亙り隙間無く当接させる。
【選択図】図１

Description

この発明は、自動車の車輪を懸架装置に支持する為のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの改良に関する。

自動車の車輪は、例えば図６に示す様な、シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット１により、懸架装置に対し回転自在に支持する。このシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット１は、外輪２の内径側にハブ３を、複数個の転動体４、４を介して回転自在に支持して成る。このうちの外輪２は、外周面に懸架装置に支持固定する為の静止側フランジ５を、内周面に複列の外輪軌道６、６を、それぞれ設けている。又、前記ハブ３は、ハブ本体７と内輪８とをナット９により組み合わせ固定したもので、外周面に複列の内輪軌道１０、１０を有する。又、前記各転動体４、４は、これら両内輪軌道１０、１０と前記両外輪軌道６、６との間に、各列毎に複数個ずつ、それぞれ保持器１１、１１により保持された状態で転動自在に設けられている。

又、前記ハブ本体７の外端寄り部分で、前記外輪２の外端開口部から突出した部分には、特許請求の範囲に記載したフランジに相当する、回転側フランジ１２を設けている。この回転側フランジ１２には複数本のスタッド１３の基端部を支持固定しており、これら各スタッド１３によりこの回転側フランジ１２に、車輪を構成するホイールを支持固定できる様にしている。

又、前記外輪２の外端部内周面と前記ハブ３の中間部外周面との間にシールリング１４を装着して、これら外輪２の内周面とハブ３の外周面との間に存在し、前記各転動体４、４を設けた内部空間１５の外端開口部を塞いでいる。又、前記外輪２の内端開口部をカバー１６で塞ぐ事により、この内端開口部から前記内部空間１５内への塵芥や雨水等の異物の侵入防止、及び、この内部空間１５内に充填したグリースの外部への漏洩防止を図っている。尚、軸方向に関して内とは、車両への組み付け状態で幅方向中央側を言い、同じく外とは、幅方向外側を言う。

尚、図示の例では、前記各転動体４、４として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車に組み込む、シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、各転動体として円すいころを使用する場合もある。又、ハブ本体と内輪とを結合固定する為に、図示の様にハブ本体７の内端部にナット９を螺合固定する構造に代えて、ハブ本体の内端部を径方向外方に塑性変形させて形成したかしめ部により、このハブ本体に外嵌した内輪の内端面を抑え付ける事もできる。更に、図示の例は、従動輪（ＦＲ車、ＲＲ車、ＭＲ車の前輪、ＦＦ車の後輪）用のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットである為、ハブ本体７が充実体であるが、駆動輪（ＦＲ車、ＲＲ車、ＭＲ車の後輪、ＦＦ車の前輪、４ＷＤ車の全輪）用のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、ハブ本体の中心部にスプライン孔を、このハブ本体を軸方向に貫通する状態で設ける。

何れの構造の場合も、各転動体を設置した内部空間の外端開口部のシールに関しては、外輪の外端部内周面とハブ本体の中間部外周面との間に設けたシールリング１４により図る。これに対して、前記内部空間の内端開口部のシールに関しては、従動輪用の場合には、図示の様なカバー１６、或いは、外輪の内端部内周面と内輪の内端部外周面との間に設置した組み合わせシールリングにより、駆動輪用の場合には、組み合わせシールリングにより、それぞれ図る。

前記内部空間１５内への異物侵入防止と、この内部空間１５内に充填したグリースの漏洩防止とを十分に図る為には、この内部空間１５の両端開口部を十分にシールする必要がある。特に、この内部空間１５の外端開口部をシールする為のシールリングに就いては、回転側フランジ１２の内側面に沿って径方向内方に導かれた異物が前記内部空間１５内に入り込むのを防止する為に、優れたシール性能を要求される。しかも、この内部空間１５の外端開口部に関しては、図６に示す様な、カバー１６によるシールは行えない。

この様な事情に鑑みて従来から、前記内部空間１５の外端開口部をシールする為のシールリングとして、各種構造のものが考えられている。図７は、特許文献１に記載されたシールリング１４ａを示している。このシールリング１４ａは、それぞれが円輪状に形成された芯金１７とシール材１８とから構成している。このうちの芯金１７は、嵌合筒部１９を、外輪２の外端部内周面に内嵌固定すると共に、この嵌合筒部１９の外端縁から径方向外方に折れ曲がった円輪部２０の内側面を、前記外輪２の外端面に突き当てる事で、この外輪２の外端部に組み付けている。この様な従来構造の場合、前記嵌合筒部１９の圧入方向に関する先端部２１の形状を断面円弧形とし、前記芯金１７の圧入時に引っ掛かり等が生じるのを防止している。又、前記外輪２の外端面と外端部内周面との連続部に面取り部２２を形成しており、その面取り寸法を、前記円輪部２０と前記嵌合筒部１９との折れ曲がり部（略Ｌ字形状部）の隅Ｒ部の半径よりも大きくしている。この為、前記円輪部２０の内側面と前記外輪２の外端面とを適正に（対向する面全体を均一に）突き当てる事ができて、各部材の相対的な位置精度も確保できる。又、前記外輪２の面取り部２２と前記芯金１７（円輪部２０と嵌合筒部１９との折れ曲がり部）との間に形成される隙間２３に、Ｏリング２４等を介装させる事もできる。この様な構成を採用した場合には、水等の異物が内部空間１５に浸入する事をより効果的に防止できる。

又、前記シールリング１４ａを構成するシール材１８は、３本の接触式のシールリップ２５ａ、２５ｂ、２５ｃと、非接触式のラビリンスシールを構成する、庇状のラビリンスリップ２６とを備える。このうちのラビリンスリップ２６の先端部を、回転側フランジ１２の内側面のうちで基端寄り部分（根元部分）に設けられた厚肉部２７と、同じく先端寄り部分に設けられ、この厚肉部２７よりも肉厚の小さい薄肉部２８とを連続する、段部２９との関係で規制している。即ち、前記ラビリンスリップ２６（の先端部乃至基端部）を、前記段部２９よりも径方向外方に位置させると共に、これらラビリンスリップ２６の先半部と段部２９とを径方向に重畳させている。これにより、前記ラビリンスリップ２６の先端縁と前記回転側フランジ１２の内側面との間に、径方向のラビリンスシール３０ａを形成すると共に、この径方向のラビリンスシール３０ａに連続する状態で、前記ラビリンスリップ２６の先端部内周面と前記段部２９の外周面との間に、軸方向のラビリンスシール３０ｂを形成している。この為、ラビリンスシールの全長を十分に長くできて、前記ラビリンスリップ２６によるラビリンス効果を良好にできる。尚、前記図７、並びに、後述する図９、及び、図１〜５には、各シールリップ２５ａ〜２５ｃの自由状態での形状を示している。

この様なラビリンスリップ２６の円周方向複数箇所には、図８に示す様にそれぞれがこのラビリンスリップ２６の先端縁に迄達する切れ目３１、３１を形成している。従って、前記従来構造の場合には、前記ラビリンスリップ２６の先端縁と前記回転側フランジ１２の内側面とが万が一接触した場合にも、ハブ３（図６参照）の回転抵抗の増大を抑える事ができる。尚、前記ラビリンスリップ２６の先半部のうちで、シールリング付転がり軸受ユニット１（図６参照）を車両に組み付けた状態で、この車両の下方に位置する部分に、円周方向に隣り合う切れ目３１、３１同士の間部分を除去する事により形成した、矩形（或いは半楕円形）の開口を有する水抜き孔を設ける事もできる。

又、前記ラビリンスリップ２６の外周面は円筒面状としており、その外径寸法を、前記外輪２の外端部外周面の外径寸法よりも大きくしている。更に、前記従来構造の場合、前記円輪部２０の外径寸法を前記外輪２の外端面の外径寸法よりも大きくしている。そして、この円輪部２０のうち、この外輪２の外端面外周縁よりも径方向外方に突出した部分を覆う状態で、前記シール材１８により、堰部３２を設けている。この為、前記外輪２の外周面に付着した水分がこの外輪２の外周面を伝って、前記ラビリンスリップ２６の外周面に達する事を、前記堰部３２により有効に阻止できる。この様な堰部３２の外径寸法は、前記外輪２の外端部外周面の外径寸法よりも大きく、前記ラビリンスリップ２６の外径寸法と同じで、前記シールリング１４ａの外周面は単一円筒面状である。

又、前記ラビリンスリップ２６の先半部内周面は、先端縁に向かう程内径寸法が大きくなる方向に傾斜した円すい凹面状としている。これにより、前記ラビリンスリップ２６の内径側に侵入した泥水等の異物の排出を容易に行える様にすると共に、圧入治具を案内する為の案内面としている。又、前記ラビリンスリップ２６の基端部の内径寸法ｄ_２６を、前記外輪２の外端面の外径寸法Ｄ_２よりも大きくしている（ｄ_２６＞Ｄ_２）。又、前記各シールリップ２５ａ〜２５ｃのうちで、最も径方向外側に設けられたシールリップ２５ａの自由状態での外径寸法Ｄ_２５ａを、前記外輪２の外端面の内径寸法ｄ_２よりも小さくしている（Ｄ_２５ａ＜ｄ_２）。これにより、前記ラビリンスリップ２６と前記シールリップ２５ａとの間部分に形成される、圧入治具の挿入空間を確保している。これと共に、前記シールリング１４ａの外側面のうちで、前記芯金１７を構成する円輪部２０の外側面を覆う状態で設けられ、このシールリング１４ａを前記外輪２に組み付ける際に、前記圧入治具により押圧される円輪状の押圧面３３の径方向幅寸法（Ｗ_３３）を確保している。具体的には、この押圧面３３の径方向幅寸法（Ｗ_３３）を、前記外輪２の外端面の径方向幅寸法（Ｗ_２）よりも大きくしている（Ｗ_３３＞Ｗ_２）。

上述の様な従来構造の場合、前記押圧面３３の径方向幅寸法を確保できる為、前記シールリング１４ａの取付作業時に、このシールリング１４ａと圧入治具と前記外輪２とのそれぞれの中心を厳密に一致させる必要がない。この為、このシールリング１４ａの取付性（取付作業性）を良好にできる。
又、前記シールリング１４ａの外周面を単一円筒面状としている為、所謂棒巻き包装時に、軸方向に積み重ねられた複数のシールリング１４ａが偏心し難くなる。この為、棒巻き包装を行い易くできて、このシールリング１４ａの輸送性（輸送作業性）を良好にできる。又、棒巻き包装されたシールリングを定配装置にセットした場合、軸方向に重ね合わされたシールリングが偏心を起こし難くなる為、この面からもシールリングの取付性を良好にできる。

又、前記従来構造の場合には、前記ラビリンスリップ２６の先半部に、複数の切れ目３１、３１を形成している為、前記外輪２と前記ハブ３とが相対変位する事で、前記ラビリンスリップ２６の先端部と前記回転側フランジ１２の内側面とが摺接（接触）した場合にも、このラビリンスリップ２６に大きな円周方向応力が作用する事を防止できる。この為、このラビリンスリップ２６と前記ハブ３とが摺接した場合にも、シールトルクの増大を抑える事ができると共に、摺接部での発熱を抑える事もできる。従って、前記フランジ１２の内側面と前記ラビリンスリップ２６の先端部とを近接させる事ができる。この結果、十分なシール性能を確保しつつ、シールトルクの増大を抑える事ができる。

上述の様な従来構造の場合、次の様な問題を生じる可能性がある。即ち、前記シールリング１４ａは、前記芯金１７の嵌合筒部１９の外周面を前記外輪２の外端部内周面に内嵌固定する事で、この外輪２の外端部に組み付ける。この為、前記シールリング１４ａを組み付ける以前の状態で、前記嵌合筒部１９の外径寸法は、前記外輪２の外端部の内径寸法よりも僅かに大きい。又、同じく前記シール材１８の堰部３２の内径寸法は、この堰部３２の内周面と前記外輪２の外端部外周面とを隙間無く当接させる為、この外輪２の外端部外周面の外径寸法よりも僅かに小さい。従って、前記シールリング１４ａを前記外輪２の外端部に組み付ける際には、前記嵌合筒部１９を径方向内方に、前記堰部３２を径方向外方に、それぞれ弾性変形させつつ、前記シールリング１４ａを圧入（軸方向内方に向け押圧）する必要がある。この為、このシールリング１４ａを組み付ける作業が面倒で、製造コストが増大する可能性がある。

これに対し、シール材に堰部を設けず、芯金の円輪部の内側面と外輪の外端面とを隙間無く当接させる事で、この外輪の外周面に付着した水分がこの外輪の外周面を伝って、ラビリンスリップの外周面迄達するのを防止する事が考えられる。しかし、前記芯金と前記外輪とは共に金属により造られている。この為、長期間の使用により、この芯金の円輪部の内側面とこの外輪の外端面との間部分から、毛細管現象により浸入した水等の異物が各転動体を設置した内部空間に侵入する可能性がある。一方、前記外輪の外端面及び外端部内周面の連続部に形成した面取り部と、前記円輪部及び嵌合筒部の連続部との間の隙間に、Ｏリング等を介装する事も考えられる。しかし、シールリングと別体のＯリングを設ける事は、部品管理が面倒であり、取付作業性も悪い。

そこで、図９に示す様に、シールリング１４ｂを構成する芯金１７ａの円輪部２０ａの内側面と外輪２の外端面との間部分に、シール材１８ａを構成する弾性材の一部を介在させる事が考えられる。この様な構造を有するシールリング１４ｂの場合、前記円輪部２０ａの内側面と外輪２の外端面との間に前記シール材１８ａを構成する弾性材を介在させる事で、これら両面同士の間部分から水等の異物が浸入するのを、長期間に亙って防止できる。しかし、前記図９に示す構造の場合、前記シールリング１４ｂの取付作業時に押圧される押圧面３３ａの圧入方向前方に位置する円輪部２０ａの内側面を、前記シール材１８ａを構成する弾性材により覆っている。この為、前記取付作業時に前記円輪部２０ａが、図９に鎖線で示す様に、径方向に対し傾斜して、ラビリンスリップ２６の先端部が回転側フランジ１２の内側面に接触する可能性がある。

特開２０１０−２１００８５号公報

本発明は、上述の様な事情に鑑み、シールリングによるシール性能を向上させ転動体設置空間への異物侵入防止効果を良好にして、優れた耐久性を有し、且つ、回転抵抗の増大を抑えたシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、前記シールリングの取付性を良好にできる構造を実現すべく発明したものである。

本発明のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットは、例えば前述の図６に示した従来構造のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットと同様に、外輪と、ハブと、複数個の転動体と、フランジと、シールリングとを備える。
このうちの外輪は、内周面に外輪軌道を有し、懸架装置に支持された状態で回転しない。
又、前記ハブは、外周面のうちで前記外輪軌道と対向する部分に内輪軌道を有し、前記外輪と同心に配置されている。
又、前記各転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられている。
又、前記フランジは、前記ハブの外周面のうちで前記外輪の外端開口部よりも外方に突出した部分に設けられたもので、前記ハブに対し車輪を支持固定する為のものである。
又、前記シールリングは、前記外輪の内周面と前記ハブの外周面との間に存在する内部空間の外端開口部を塞ぐ。
更に、前記フランジは、基端寄り部分に設けられた厚肉部と先端寄り部分に設けられた薄肉部とを、内側面に形成した段部により連続して成るものである。
又、前記シールリングは、前記外輪の外端部に固定される芯金と、この芯金により補強された弾性材製のシール材とから構成される。そして、この芯金は、前記外輪の外端部内周面に内嵌固定される嵌合筒部と、この嵌合筒部の軸方向外端縁から径方向外方に直角に折れ曲がった状態で設けられて、その内側面を前記外輪の外端面に突き当てられ、この外輪の外端面の外径寸法よりも大きな外径寸法を有する円輪部とを備える。又、前記シール材は、前記フランジの内側面若しくは前記ハブの外周面に全周に亙り摺接する、少なくとも１本のシールリップと、これら各シールリップのうちで最も径方向外側に設けられたシールリップよりも径方向外方に設けられ、その先端部を前記段部よりも径方向外方に位置させると共に、これら先端部と段部とを径方向に重畳させ、この先端部の外端面を前記フランジの内側面に、同じく内周面を前記段部に、それぞれ近接対向させて、これら先端部とフランジの内側面との間に非接触式のラビリンスシールを形成する、庇状のラビリンスリップとを備える。
特に、本発明のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、前記シール材に、前記嵌合筒部の外周面乃至前記円輪部の内側面の一部から突出し、前記外輪の外端面乃至外端部内周面の一部に全周に亙って当接する突条を、前記シールリングと一体に設けている。

上述の様な本発明のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットを実施する場合、例えば請求項２に記載した発明の様に、前記外輪の外端面と外端部内周面との連続部に面取り部を形成する。又、前記突条を、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記嵌合筒部と前記円輪部との連続部の円周方向複数箇所に設けた通孔を通じて、これら嵌合筒部と円輪部との連続部の外周面に送り込む事で形成したものとする。そして、前記突条を前記面取り部に、全周に亙り隙間無く当接させる。

或いは、請求項３に記載した発明の様に、前記円輪部の軸方向内側面に凹部を、全周に亙って設け、この凹部の底面の円周方向複数箇所に通孔を設ける。そして、前記突条を、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記各通孔を通じて前記凹部の底面に送り込む事で形成したものとする。更に、前記突条を前記外輪の外端面に、全周に亙り隙間無く当接させる。

或いは、請求項４に記載した発明の様に、前記嵌合筒部の先端部の円周方向複数箇所に通孔を設ける。そして、前記突条を、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記各通孔を通じて前記嵌合筒部の外周面に送り込む事で形成したリップ部とする。更に、このリップ部の先端部を前記外輪の外端部内周面に、全周に亙り隙間無く当接させる。

或いは、請求項５に記載した発明の様に、前記突条を、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記芯材の軸方向内側面に沿って前記嵌合筒部の外周面に送り込む事で形成したリップ部とする。そして、このリップ部の先端部を前記外輪の外端部内周面に、全周に亙り隙間無く当接させる。

上述の様な本発明を実施する場合、前述の図７〜８に示した従来構造と組み合わせて実施する事もできる。即ち、例えば前記ラビリンスリップの基端部内周面の内径寸法を、前記外輪の外端面の外径寸法よりも大きくすると共に、前記各シールリップのうちで最も径方向外側に設けられたシールリップの外径寸法を、前記外輪の外端面の内径寸法よりも小さくする。

又、例えば前記ラビリンスリップの少なくとも基半部の肉厚を、前記各シールリップのうちで、少なくとも前記フランジの内側面に全周に亙り摺接するシールリップ（所謂サイドリップ）の肉厚よりも大きくする。且つ、前記ラビリンスリップの先半部内周面を、先端縁に向かう程内径寸法が大きくなる方向に傾斜した円すい凹面状とすると共に、同じく基半部内周面を、円筒面状とする。
又、前記シールリングの外周面を単一円筒面状とする事もできる。
更に、前記ラビリンスリップの先半部の円周方向複数個所に、それぞれがこのラビリンスリップの先端縁に迄達する切れ目を形成する事もできる。

上述の様に構成する本発明のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットによれば、シールリングによるシール性能を向上させ、転動体設置空間への異物侵入防止効果を良好にして、優れた耐久性を有し、且つ、回転抵抗の増大を抑えた構造に於いて、前記シールリングの取付性を良好にできる。
即ち、本発明の場合、ラビリンスリップによるラビリンス効果の向上及び回転抵抗の増大の防止は、前述の図７〜８に示した従来構造と同様の理由により図る事ができる。

又、本発明の場合、外輪の外端面の外径寸法よりも大きな外径寸法を有する芯金の円輪部を、この外輪の外端部に突き当てている。この為、この外輪の外周面に付着した水分がこの外輪の外周面を伝って、前記ラビリンスリップの外周面に迄達する事を、前記円輪部のうちで前記外輪の外端面外周縁よりも径方向外方に突出した部分により阻止できる。従って、ラビリンスシール内に、前記外輪の外周面に付着した水分が侵入する事を有効に防止できる。又、前記嵌合筒部の外周面乃至前記円輪部の内側面の一部から突出する状態で設けた突条を、前記外輪の外端面乃至外端部内周面に全周に亙って当接している。この為、前記円輪部の内側面とこの外輪の外端面との間部分から、この外輪の外周面に付着した水分が転動体を設置した内部空間内に、毛細管現象により浸入する事を有効に防止できる。本発明の場合、この様に機能する突条を、前記シールリングと一体に設けている為、部品管理が容易である。

更に、本発明の場合、シールリングを前記外輪の外端部に組み付ける際に、前述した従来構造の様に、堰部を径方向外方に弾性変形させる必要がない｛前記嵌合筒部を径方向内方に弾性変形させつつ、前記シールリングを圧入（軸方向内方に向けて押圧）するだけで良い｝。
この結果、本発明の場合には、シールリングによるシール性能を向上させ、転動体設置空間への異物侵入防止効果を良好にして、優れた耐久性を有し、且つ、回転抵抗の増大を抑えたシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットで、前記シールリングの取付性を良好にできる。

本発明の実施の形態の第１例を示す、図６のＡ部に相当する拡大断面図。 同第２例を示す、図１と同様の図。 同第３例を示す、図１と同様の図。 同第４例を示す、図１と同様の図。 同第５例を示す、図１と同様の図。 本発明の対象となるシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの１例を示す断面図。 従来構造の１例を示す、図６のＡ部に相当する拡大断面図。 同じくラビリンスリップの一部先半部を径方向から見た状態で示す図。 先発明の構造を示す、図７と同様の図。

［実施の形態の第１例］
図１は、請求項１〜２に対応する、本発明の実施の形態の第１例を示している。尚、本例の特徴は、シールリング１４ｃの取付性を確保しつつ、外輪２の外周面に付着した水等の異物が、この外輪２の外端面と芯金１７ｂの円輪部２０ｂの内側面との間部分から、各転動体４を設置した内部空間１５内に、毛細管現象により浸入するのを防止する為の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述した従来構造の場合とほぼ同様であるから、重複する説明並びに図示は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分に就いて説明する。

本例の場合、前記従来構造の構造と同様に、前記外輪２の外端面と外端部内周面との連続部に面取り部２２を形成しており、その面取り寸法を、前記芯金１７ｂの円輪部２０ｂと嵌合筒部１９ａとの連続部（略Ｌ字形状部）の隅Ｒ部の、内径側（入隅側）の曲率半径よりも大きくしている。この為、前記円輪部２０ｂの内側面と前記外輪２の外端面とを適正に（対向する面全体を均一に）突き当てる事ができる。尚、前記円輪部２０ｂの内側面と前記外輪２の外端面との間の突き当て部、並びに、前記嵌合筒部１９ａの外周面と前記外輪２の外端部内周面との間の嵌合部の一部或いは全部に、ゴム、ガスケット（金属、非金属製のものを含む）、或いは接着剤を介在させる事もできる。この様な構造を採用すれば、前記芯金１７ｂと前記外輪２との金属同士の接触部分から、水等の異物が、毛細管現象により浸入する事を、効果的に防止できる。

本例の場合、前記円輪部２０ｂの外径寸法Ｄ_２０ｂを、前記外輪２の外端部外周面の外径寸法Ｄ_２よりも大きくしている（Ｄ_２０ｂ＞Ｄ_２）。そして、前記円輪部２０ｂのうち、前記外輪２の外端面外周縁より径方向外方に突出した部分により、この外輪２の外周面に付着した水分がこの外輪２の外周面を伝って、ラビリンスリップ２６の外周面に迄達するのを防止している。

更に、本例の場合、前記円輪部２０ｂと前記嵌合筒部１９ａとの連続部の外周面に、シール材１８ｂを構成する弾性材製の突条３４を、全周に亙って設けている。そして、この突条３４の先端縁を前記面取り部２２に、全周に亙り隙間無く当接する事で、前記内部空間１５に水等の異物が浸入したり、この内部空間１５に充填したグリースが外部に漏洩する事を、より確実に防止している。
上述の様な突条３４は、次の様にして設ける。即ち、前記芯金１７ｂを構成する円輪部２０ｂと嵌合筒部１９ａとの連続部の円周方向複数箇所に等間隔に通孔３５を設ける。この様な通孔３５は、前記芯金１７ｂを金属板に打ち抜き加工を施して造る際に、同時に形成する事ができる。そして、前記シール材１８ｂをゴムの如きエラストマー等の弾性材により、前記芯金１７ｂを金型のキャビティ内に設置した状態で射出成形する事により形成する。そして、この芯金１７ｂに前記シール材１８ｂを結合固定する際に、このシール材１８ｂを構成する弾性材の一部を前記各通孔３５を通じて、前記円輪部２０ｂと前記嵌合筒部１９ａとの連続部の外周面側に送り込む。これにより、この連続部の外周面に、全周に亙って前記突条３４を形成する。

上述の様な本例のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合、前記シールリング１４ｃによるシール性能を向上させて、前記各転動体４を設置した内部空間１５内への異物侵入防止効果を良好にする事により、優れた耐久性を有し、回転抵抗の増大を防止できる構造に於いて、前記シールリング１４ｃの前記外輪２の外端部への取付性を確保できる。
即ち、本例の場合、前記従来構造の様に、前記円輪部２０ｂのうち、前記外輪２の外端部外周縁よりも径方向外方に突出した部分に、この部分全体をシール材により覆った堰部を設けていない。この為、前記シールリング１４ｃを組み付ける際には、前記嵌合筒部１９ａを径方向内方に弾性変形させつつ、このシールリング１４ｃを圧入すれば良い（前記堰部を径方向外方に弾性変形させる必要がない）。従って、このシールリング１４ｃの取付性を良好にできる。

又、前記内部空間１５内に水等の異物が侵入するのを防止する為に、前記円輪部２０ｂと前記嵌合筒部１９ａとの連続部の外周面に前記外輪２の面取り部２２と隙間無く当接する突条３４を、前記シールリング１４ｃと一体に設けている。即ち、前記連続部の外周面にシールリングとは別体のＯリングを設けていない為、部品管理が容易になる。この面からも前記シールリング１４ｃの取付性を向上できる。

［実施の形態の第２例］
図２は、請求項１、３に対応する、本発明の実施の形態の第２例を示している。本例の場合、シール材１８ｃのうちで、芯金１７ｃの円輪部２０ｃの径方向中間部内側面から突出する状態で設けた突条３４ａを、外輪２の外端面に、全周に亙って隙間無く当接させている。本例の場合、前記円輪部２０ｃの内側面のうちの径方向中間部に凹部３６を、全周に亙って設け、この凹部３６の底面の円周方向複数箇所に等間隔に通孔３５ａを設けている。そして、前記シール材１８ｃを射出成形により形成する際に、このシール材１８ｃを構成する弾性材の一部を、前記各通孔３５ａを通じて前記凹部３６の底面に送り込む事により前記突条３４ａを形成する。本例の場合、この突条３４ａを、前記円輪部２０ｃの内側面のうちで、前記凹部３６の底面に設けている。そして、前記突条３４ａの先端部は、自由状態で、前記円輪部２０ｃの内側面よりも僅かに軸方向内方に突出した状態となる。この為、この円輪部２０ｃの内側面を外輪２の外端面に突き当てた場合でも、この円輪部２０ｃが径方向に対し傾斜する事を防止できる。
その他の部分の構造及び効果は、前述した実施の形態の第１例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。

［実施の形態の第３例］
図３も、請求項１、３に対応する、本発明の実施の形態の第３例を示している。本例の場合、円輪部２０ｄの径方向中間部のうちの径方向内方寄り部分に、突条３４ｂを設けている。
その他の部分の構造及び効果は、前述した実施の形態の第２例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。

［実施の形態の第４例］
図４は、請求項１、４に対応する、本発明の実施の形態の第４例を示している。本例の場合、シール材１８ｄの一部に、芯材１７ｄを構成する嵌合筒部１９ｂの先端部２１ａに基端部を連結した状態で、外輪２の内周面に先端部を当接するリップ部３７を、全周に亙り設けている。この様なリップ部３７は、前記シール材１８ｄを射出成形により形成する際に、このシール材１８ｄを構成する弾性材の一部を、前記嵌合筒部１９ｂの先端部２１ａの円周方向複数箇所に等間隔に設けた通孔３５ｂを通じて、この先端部の外周面側に送り込む事により形成する。尚、前記図４には、前記リップ部３７の自由状態での形状を示している。
その他の部分の構造及び効果は、前述した実施の形態の第１例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。尚、本例の構造は、前述した実施の形態の第１〜３例の構造と組み合わせて実施する事もできる。

［実施の形態の第５例］
図５は、請求項１、５に対応する、本発明の実施の形態の第５例を示している。本例の場合、シール材１８ｅに、嵌合筒部１９の先端部２１に基端部を連結した状態で、先端部を外輪２の外端部内周面に、全周に亙り当接させたリップ部３７ａを、前記シール材１８ｅと一体に設けている。尚、前記図５には、前記リップ部３７ａの自由状態での形状を示している。この様なリップ部３７ａは、次の様にして造る。即ち、芯金１７を、前記シール材１８ｅを構成する各シールリップ２５ａ〜２５ｃ、ラビリンスリップ２６、及び、前記リップ３７ａの外形に対応した内形を有する金型のキャビティ内の所定位置にセットする。この時、前記嵌合筒部１９の内端縁から軸方向外方及び径方向内方に向けてＵ字形に折り返された折り返し部３８の、更に径方向内方に折れ曲がった部分の軸方向内側面に、前記キャビティ内に突出したピンを突き当てて、このキャビティに対する前記芯金１７の位置決めを図る。この状態で、このキャビティ内に、弾性材を射出成形してシール材１８ｅを形成し、冷却・固化した後に前記金型を開いて、シールリング１４ｄを取り出す。
その他の部分の構造及び効果は、上述した実施の形態の第４例と同様であるから、同等部分に関する説明は省略する。尚、本例の構造は、前述した実施の形態の第１〜３例の構造と組み合わせて実施する事もできる。

１ シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット
２ 外輪
３ ハブ
４ 転動体
５ 静止側フランジ
６ 外輪軌道
７ ハブ本体
８ 内輪
９ ナット
１０ 内輪軌道
１１ 保持器
１２ 回転側フランジ
１３ スタッド
１４、１４ａ〜１４ｄ シールリング
１５ 内部空間
１６ カバー
１７、１７ａ〜１７ｄ 芯金
１８、１８ａ〜１８ｅ シール材
１９、１９ａ、１９ｂ 嵌合筒部
２０、２０ａ〜２０ｄ 円輪部
２１、２１ａ 先端部
２２ 面取り部
２３ 隙間
２４ Ｏリング
２５ａ〜２５ｃ シールリップ
２６ ラビリンスリップ
２７ 厚肉部
２８ 薄肉部
２９ 段部
３０ａ、３０ｂ ラビリンスシール
３１ 切れ目
３２ 堰部
３３、３３ａ 押圧面
３４、３４ａ 突条
３５、３５ａ、３５ｂ 通孔
３６ 凹部
３７、３７ａ リップ部
３８ 折り返し部

Claims (5)

1. 内周面に外輪軌道を有し、懸架装置に支持された状態で回転しない外輪と、
   外周面のうちでこの外輪軌道と対向する部分に内輪軌道を有し、この外輪と同心に配置されたハブと、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、
   このハブの外周面のうちで前記外輪の外端開口部よりも外方に突出した部分に設けられた、このハブに対し車輪を支持固定する為のフランジと、
   前記外輪の内周面とこのハブの外周面との間に存在する内部空間の外端開口部を塞ぐ為のシールリングとを備え、
   前記フランジは、基端寄り部分に設けられた厚肉部と先端寄り部分に設けられた薄肉部とを、内側面に形成した段部により連続して成るものであり、
   このうちのシールリングは、前記外輪の外端部内周面に内嵌固定される嵌合筒部、及び、この嵌合筒部の軸方向外端縁から径方向外方に直角に折れ曲がった状態で設けられて、その内側面を前記外輪の外端面に突き当てられ、この外輪の外端面の外径寸法よりも大き
   な外径寸法を有する円輪部から成る芯金と、この芯金により補強された弾性材製のシール材とから成り、このシール材は、前記フランジの内側面若しくは前記ハブの外周面に全周に亙り摺接する少なくとも１本のシールリップと、これら各シールリップのうち最も径方向外側に設けられたシールリップよりも径方向外方に設けられ、その先端部を前記段部よりも径方向外方に位置させると共に、これら先端部と段部とを径方向に重畳させ、この先端部の外端面を前記フランジの内側面に、同じく内周面を前記段部に、それぞれ近接対向させて、前記先端部と、このフランジの内側面及びこの段部との間にラビリンスシールを形成するラビリンスリップとを備えたものである、シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、
   前記シール材に、前記嵌合筒部の外周面乃至前記円輪部の内側面の一部から突出し、前記外輪の外端面乃至外端部内周面の一部に全周に亙って当接する突条を、前記シールリングと一体に設けている事を特徴とするシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット。
2. 前記外輪の外端面と外端部内周面との連続部に面取り部を形成しており、
   前記突条は、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記嵌合筒部と前記円輪部との連続部の円周方向複数箇所に設けた通孔を通じて、これら嵌合筒部と円輪部との連続部の外周面に送り込む事で形成したものであり、前記突条を前記面取り部に、全周に亙り隙間無く当接させている、請求項１に記載したシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット。
3. 前記円輪部の軸方向内側面に凹部を、全周に亙って設け、この凹部の底面の円周方向複数箇所に通孔を設けており、
   前記突条は、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記各通孔を通じて前記凹部の底面に送り込む事で形成したものであり、前記突条を前記外輪の外端面に、全周に亙り隙間無く当接させている、請求項１に記載したシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット。
4. 前記嵌合筒部の先端部の円周方向複数箇所に通孔を設けており、
   前記突条は、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記各通孔を通じて前記嵌合筒部の外周面に送り込む事で形成したリップ部であり、このリップ部の先端部を前記外輪の外端部内周面に、全周に亙り隙間無く当接させている、請求項１に記載したシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット。
5. 前記突条は、前記シール材を射出成形により形成する際に、このシール材を構成する弾性材の一部を、前記芯材の軸方向内側面に沿って前記嵌合筒部の外周面に送り込む事で形成したリップ部であり、このリップ部の先端部を前記外輪の外端部内周面に、全周に亙り隙間無く当接させている、請求項１に記載したシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット。

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