JP2014005913A - 転がり軸受 - Google Patents

Abstract

【課題】 簡便な構造により小型軽量化を容易に実現し得る転がり軸受を提供する。
【解決手段】 互いに相対回転する内輪１２および外輪１４と、内輪１２と外輪１４との間に介在する複数の転動体１５と、内輪１２と外輪１４との間に配され、転動体１５を円周方向等間隔に保持する合成樹脂製の保持器１６とを備えた転がり軸受であって、保持器１６の軸方向端部の内径側および外径側に、径方向に延びる金属製の鍔部２０，２１を設けると共に、内輪１２および外輪１４の鍔部２０，２１と対応する部位に、鍔部２０，２１とでラビリンス２２，２３が形成される凹溝２４，２５を設ける。
【選択図】 図１

Description

本発明は、転動体を転動自在に保持する合成樹脂製の保持器を内輪と外輪との間に組み込んだ転がり軸受に関する。

例えば、発動機を有する車両のトランスミッションのギヤ支持軸には、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受などの各種の転がり軸受が広く使用されている。

この種の転がり軸受は、外径面に内側転走面が形成された内輪と、その内輪の外側に配置され、内径面に外側転走面が形成された外輪と、内輪の内側転走面と外輪の外側転走面との間に転動自在に介在された複数の転動体と、内輪と外輪との間に配され、各転動体を円周方向等間隔に保持する保持器とで主要部が構成されている。この内輪あるいは外輪のいずれか一方がハウジングなどの固定部分に装着され、他方が回転軸などの回転部分に装着される。

この転がり軸受を油浴潤滑下で使用すると、回転する保持器がポンプの圧縮機のように作用し、内外輪と保持器との間を通って軸受内部に潤滑油が過剰に引き込まれる。このようにして引き込まれた潤滑油は、軸受内部で転動体と保持器によって攪拌されるため、その攪拌抵抗により軸受のトルク（発熱）が大きくなる。特に、電動車両やハイブリッド車両においては、高速のモータ回転が入力されるため、回転軸などの回転部分は高速回転となる傾向にある。このような高温環境下で高速回転した場合、前述した攪拌抵抗の影響は無視できないものとなっている。

本出願人は、高温環境下で高速回転に対応できるようにした合成樹脂製の保持器を具備した転がり軸受を先に提案している（例えば、特許文献１参照）。

この転がり軸受は、図５に示すように、内輪１１２と外輪１１４との間に配され、その内輪１１２の内側転走面１１１と外輪１１４の外側転走面１１３との間に転動自在に介在された複数の転動体１１５を円周方向等間隔に保持する保持器１１６を具備する。この種の保持器１１６は、高速回転下において遠心力による変形を抑制することを目的として軽量の合成樹脂製のものが採用されている。保持器１１６は、軸方向に向き合う二枚の環状体１１７の対向面１１８に転動体１１５を収容する半球状のポケット１１９を周方向の複数箇所に形成し、環状体１１７のそれぞれの対向面１１８を衝合させて二枚の環状体１１７を結合させた構造を有する。

前述したように油浴潤滑下での使用では、内外輪１１２，１１４と保持器１１６との間を通って軸受内部に潤滑剤が過剰に引き込まれることから、この転がり軸受は、軸受内部への潤滑剤の流入を制限する手段として以下の構造を具備する。環状体１１７の軸方向端部の内径側および外径側に、径方向に延びる鍔部１２０，１２１を一体的に設けると共に、内輪１１２および外輪１１４の鍔部１２０，１２１と対応する部位に、鍔部１２０，１２１とでラビリンス１２２，１２３が形成される凹溝１２４，１２５を形成している。このように、保持器１１６の鍔部１２０，１２１と内外輪１１２，１１４の凹溝１２４，１２５とで構成されたラビリンス１２２，１２３により、潤滑油が軸受内部に過剰に流入することを確実に抑制できるようにしている。

特開２０１２−６７８２６号公報

ところで、特許文献１に開示された転がり軸受では、全体が合成樹脂製の保持器１１６を採用していることから、高速回転下において遠心力が負荷された際の保持器１１６の変形を抑制するため、図６に示すように、ポケット１１９の底部の肉厚ｔ（軸方向寸法）を厚肉にすることにより保持器１１６の剛性を確保するようにしている。また、保持器１１６の鍔部１２０，１２１が軸受端面から軸方向外側へ突出することを防止するため、内輪１１２および外輪１１４の軸方向寸法を、保持器１１６の軸方向寸法、保持器１１６のポケット軸方向すきまおよび軸受の軸方向ガタの和よりも大きく設定しなければならない（図５参照）。

以上のように、ポケット１１９の底部を厚肉にすることや、内輪１１２および外輪１１４の軸方向寸法を前述のように設定しなければならないことから、転がり軸受の軸方向寸法を小さくすることが困難であり、転がり軸受の小型軽量化が難しいというのが現状であった。

そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、簡便な構造により小型軽量化を容易に実現し得る転がり軸受を提供することにある。

前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、互いに相対回転する内輪および外輪と、内輪と外輪との間に介在する複数の転動体と、内輪と外輪との間に配され、転動体を円周方向等間隔に保持する合成樹脂製の保持器とを備えた転がり軸受であって、保持器の軸方向端部の内径側あるいは外径側の少なくとも一方に、径方向に延びる金属製の鍔部を設けると共に、内輪あるいは外輪の鍔部と対応する部位に、鍔部とでラビリンスが形成される凹溝を設けたことを特徴とする。なお、「内径側あるいは外径側の少なくとも一方」とは、鍔部を内径側のみに設ける場合、鍔部を外径側のみに設ける場合、鍔部を内径側および外径側の両方に設ける場合の全てを含むことを意味する。

本発明では、合成樹脂製の保持器の軸方向端部に金属製の鍔部を設けたことにより、その金属製の鍔部で保持器の剛性を確保することが容易となることから、保持器のポケット底部の肉厚（軸方向寸法）を、全体が合成樹脂製の保持器よりも薄肉にすることが容易となる。その結果、転がり軸受の軸方向寸法を小さくすることが容易となって転がり軸受の小型軽量化が図れる。

本発明における鍔部は、合成樹脂製の保持器のインサート成形により保持器の軸方向端部に環状金属板を接合一体化されていることが望ましい。このようにすれば、保持器の剛性を確保し得る鍔部付き保持器の製作が容易となる。
本発明において、保持器の軸方向端部の内径側に位置する鍔部の内側面を径方向内側へ向けて拡開するように傾斜させた構造が望ましい。このようにすれば、潤滑剤を径方向内側から軸受内部へスムーズに流入させることで、軸受内部へ適度な量の潤滑剤を供給することができる。

本発明において、保持器の軸方向端部の外径側に位置する鍔部の内側面を径方向外側へ向けて拡開するように傾斜させた構造が望ましい。このようにすれば、潤滑剤を軸受内部から径方向外側へスムーズに流出させることで、高速回転下での攪拌抵抗によるトルク（発熱）の増大を抑制できる。

本発明における保持器は、軸方向に向き合う二枚の環状体の対向面に転動体を収容する半球状のポケットを周方向の複数箇所に形成し、対向面を衝合させて二枚の環状体を結合させた構造が望ましい。このような構造を採用すれば、高速回転下において遠心力が負荷された際に、保持器を構成する二枚の環状体同士が互いにその変形を抑制して保持器全体の変形を抑制することができて転動体がポケットから脱落したり、内外輪などの他部品と干渉することを回避できる。

本発明における二枚の環状体は軸方向で対称な同一形状を有する構造が望ましい。このような構造にすれば、一つの金型で製作した一種の環状体を使用して一方の環状体と他方の環状体とすることができ、製品コストの低減が図れる。

本発明における保持器は、軽量化が図れる点で合成樹脂製であることが有効であり、コスト面や耐油性の点を考慮すれば、ＰＰＳ、ＰＡ６６あるいはＰＡ４６から選択されたいずれか一つの合成樹脂で成形されていることが望ましい。

本発明によれば、合成樹脂製の保持器の軸方向端部に金属製の鍔部を設けたことにより、その金属製の鍔部で保持器の剛性を確保することが容易となることから、保持器のポケット底部の肉厚（軸方向寸法）を、全体が合成樹脂製の保持器よりも薄肉にすることが容易となる。その結果、転がり軸受の軸方向寸法を小さくすることが容易となって転がり軸受の小型軽量化が図れる。電動車両やハイブリッド車両において使用される高速回転軸受に好適な自動車用途として、コンパクトな転がり軸受を提供できる。

本発明の実施形態で、転がり軸受を示す部分断面図である。 図１の保持器を示す部分拡大断面図である。 図１の保持器で、（Ａ）は結合前の二枚の環状体を示す断面図、（Ｂ）は結合後の二枚の環状体を示す断面図である。 本発明の保持器と従来の保持器を比較するもので、（Ａ）は本発明の保持器を示す部分拡大断面図、（Ｂ）は従来の保持器を示す部分拡大断面図である。 従来の転がり軸受を示す部分断面図である。 図５の保持器を示す部分拡大断面図である。

本発明に係る転がり軸受の実施形態を以下に詳述する。この実施形態の転がり軸受は、特に、電動車両やハイブリッド車両において油浴潤滑下で使用される自動車用途の高速回転軸受に好適である。

この実施形態の転がり軸受は、図１に示すように、外径面に内側転走面１１が形成された内輪１２と、その内輪１２の外側に配置され、内径面に外側転走面１３が形成された外輪１４と、内輪１２の内側転走面１１と外輪１３の外側転走面１４との間に転動自在に介在された複数の転動体１５と、内輪１２と外輪１３との間に配され、各転動体１５を円周方向等間隔に保持する保持器１６とで主要部が構成されている。この内輪１２あるいは外輪１３のいずれか一方がハウジングなどの固定部分に装着され、他方が回転軸などの回転部分に装着される。

この転がり軸受は、高速回転下において遠心力による保持器１６の変形を抑制することを目的として軽量な合成樹脂製の保持器１６を備えている。この保持器１６は、コスト面や耐油性の点を考慮すれば、ＰＰＳ（ポリフェニレンサルファイド）、ＰＡ６６（ポリアミド６６）あるいはＰＡ４６（ポリアミド４６）から選択されたいずれか一つの合成樹脂で成形することが有効である。なお、その他の樹脂材料としては、ＰＡ９Ｔ（ポリアミド９Ｔ）、ＰＥＥＫ（ポリエーテルエーテルケトン）やフェノール樹脂を使用することも可能である。

転がり軸受における保持器１６は、図３（Ａ）（Ｂ）に示すように、軸方向に向き合う二枚の環状体１７の対向面１８に転動体１５（図１参照）を収容する半球状のポケット１９を周方向の複数箇所に形成し、環状体１７のそれぞれの対向面１８を衝合させて二枚の環状体１７を結合部（図示せず）により結合させた構造を有する。二枚の環状体１７同士が互いにその変形を抑制して保持器１６全体の変形を抑制することができて転動体１５がポケット１９から脱落したり、内輪１２や外輪１３などの他部品と干渉することを回避できる。以上のように二枚の環状体１７は、軸方向で対称な同一形状を有する。このような構造とすることにより、一つの金型で製作した一種の環状体１７を使用して一方の環状体１７と他方の環状体１７とすることができ、製品コストの低減が図れる。

前述のように二枚の環状体１７からなる保持器１６は、図２に示すように、保持器１６の軸方向端部、つまり、それぞれの環状体１７の軸方向外側端部の内径側および外径側の両方に、径方向に延びる鍔部２０，２１を設けると共に、内輪１２および外輪１４の鍔部２０，２１と対応する部位に、鍔部２０，２１とでラビリンス２２，２３が形成される凹溝２４，２５を設けている（図１参照）。

前述の鍔部２０，２１は、合成樹脂製の保持器１６のインサート成形により、保持器１６の軸方向端部、つまり、それぞれの環状体１７の軸方向外側端部に薄い環状金属板２６を接合一体化した構造を具備する。この鍔部２０，２１を構成する金属板２６の素材としては、保持器１６を構成する合成樹脂よりも剛性の高いＳＰＣＣ鋼板が好適である。なお、保持器１６のインサート成形では、金属板２６の円周方向複数箇所に軸方向外側に向けて拡開するテーパ状の孔２７を形成することにより、その孔２７に合成樹脂が充填されることで合成樹脂に対する金属板２６の接合強度を向上させるようにしている。

一方、内輪側の凹溝２４は、内輪１２の外径軸方向端部を段差状に凹ますようにして形成され、外輪側の凹溝２５は、外輪１４の内径軸方向端部を段差状に凹ますようにして形成されている。なお、保持器１６の鍔部２０，２１と内外輪１２，１４の凹溝２４，２５の位置関係は、常に接触しない完全な非接触状態としている。

以上のように、合成樹脂製の保持器１６の軸方向端部に、環状の金属板２６からなる鍔部２０，２１を設けたことにより、その鍔部２０，２１を構成する金属板２６で合成樹脂製の保持器１６における剛性を確保することが容易となる。このことから、図４（Ａ）（Ｂ）に示すように、この実施形態における保持器１６のポケット１９の底部の肉厚Ｔ（軸方向寸法）を、従来における保持器（全体が合成樹脂製）のポケット１９の底部の肉厚ｔ（軸方向寸法）よりも小さくすることができる（Ｔ＜ｔ）。このように、保持器１６のポケット１９の底部の肉厚Ｔを薄肉とすることで、転がり軸受の軸方向寸法を小さくすることが容易となって転がり軸受の小型軽量化が図れる。

この転がり軸受は、油浴潤滑下での使用時、高速回転による遠心力でもって、適度な量の潤滑剤を軸受外部から軸受内部へ供給し易くすると共に、高温の潤滑剤を軸受内部から軸受外部へ排出し易くした以下の構造を具備する。図２に示すように、保持器１６の軸方向端部の内径側に位置する鍔部２０の内側面２８を径方向内側へ向けて傾斜角θで拡開するように傾斜させている。また、保持器１６の軸方向端部の外径側に位置する鍔部２１の内側面２９を径方向外側へ向けて傾斜角θで拡開するように傾斜させている。

このように、鍔部２０，２１の内側面２８，２９を傾斜させることにより、潤滑油の流れを意図的にスムーズに発生させることができる。つまり、保持器１６の軸方向端部の内径側に位置する鍔部２０の内側面２８を傾斜させることにより、潤滑剤を径方向内側から軸受内部へスムーズに流入させることで、軸受内部へ適度な量の潤滑剤を供給することができる。また、保持器１６の軸方向端部の外径側に位置する鍔部２１の内側面２９を傾斜させることにより、潤滑剤を軸受内部から径方向外側へスムーズに流出させることで、高速回転下での攪拌抵抗によるトルク（発熱）の増大を抑制することができる。

以上の実施形態では、保持器１６の軸方向端部の内径側および外径側の両方に鍔部２０，２１を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、図示しないが、保持器１６の軸方向端部の内径側あるいは外径側のいずれか一方のみに鍔部２０，２１を設けるようにしてもよい。

本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。

１２ 内輪
１４ 外輪
１５ 転動体
１６ 保持器
１７ 環状体
１８ 対向面
１９ ポケット
２０，２１ 鍔部
２２，２３ ラビリンス
２４，２５ 凹溝
２６ 環状金属板
２８，２９ 鍔部の内側面

Claims (7)

1. 互いに相対回転する内輪および外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在する複数の転動体と、前記内輪と前記外輪との間に配され、前記転動体を円周方向等間隔に保持する合成樹脂製の保持器とを備えた転がり軸受であって、
   前記保持器の軸方向端部の内径側あるいは外径側の少なくとも一方に、径方向に延びる金属製の鍔部を設けると共に、前記内輪あるいは外輪の前記鍔部と対応する部位に、前記鍔部とでラビリンスが形成される凹溝を設けたことを特徴とする転がり軸受。
2. 前記鍔部は、合成樹脂製の保持器のインサート成形により前記保持器の軸方向端部に環状金属板を接合一体化されている請求項１に記載の転がり軸受。
3. 前記保持器の軸方向端部の内径側に位置する鍔部の内側面を径方向内側へ向けて拡開するように傾斜させた請求項１又は２に記載の転がり軸受。
4. 前記保持器の軸方向端部の外径側に位置する鍔部の内側面を径方向外側へ向けて拡開するように傾斜させた請求項１又は２に記載の転がり軸受。
5. 前記保持器は、軸方向に向き合う二枚の環状体の対向面に転動体を収容する半球状のポケットを周方向の複数箇所に形成し、前記対向面を衝合させて二枚の環状体を結合させた請求項１〜４のいずれか一項に記載の転がり軸受。
6. 前記二枚の環状体は軸方向で対称な同一形状を有する請求項５に記載の転がり軸受。
7. 前記保持器はＰＰＳ、ＰＡ６６あるいはＰＡ４６から選択されたいずれか一つの合成樹脂で成形されている請求項１〜６のいずれか一項に記載の転がり軸受。

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