JP2014005743A - 気筒間空燃比ばらつき異常検出装置 - Google Patents

気筒間空燃比ばらつき異常検出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】空燃比センサの取付角度を考慮した適切な気筒間空燃比ばらつき異常検出を実行する。
【課題手段】空燃比センサの出力変動度合いに相関するパラメータを所定の判定値と比較してばらつき異常を検出する。異常検出前に(a),(b)を実行して判定値を設定する。(a)特定気筒を順次変化させつつ特定気筒の空燃比を強制的に変位させて気筒毎のパラメータを算出する。(b)気筒毎のパラメータ算出値に基づき予め設定された基準判定値を補正して判定値を設定する。基準判定値が、予め設定された気筒毎のパラメータ基準値に基づき設定される。気筒毎のパラメータ基準値が、空燃比センサを第1の取付角度で設置したときの気筒毎のパラメータと、空燃比センサを180°異なる第2の取付角度で設置したときの気筒毎のパラメータとの平均値として設定される。
【選択図】図10

Description

本発明は、気筒間空燃比のばらつき異常を検出するための装置に係り、特に、多気筒内燃機関において気筒間の空燃比が比較的大きくばらついていることを検出する装置に関する。
一般に、触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、排気中有害成分の触媒による浄化を高効率で行うため、内燃機関で燃焼される混合気の空気と燃料との混合割合、すなわち空燃比のコントロールが欠かせない。こうした空燃比の制御を行うため、内燃機関の排気通路に空燃比センサを設け、これによって検出された空燃比を所定の目標空燃比に一致させるようフィードバック制御を実施している。
一方、多気筒内燃機関においては、通常全気筒に対し同一の制御量を用いて空燃比制御を行うため、空燃比制御を実行したとしても実際の空燃比が気筒間でばらつくことがある。このときばらつきの程度が小さければ、空燃比フィードバック制御で吸収可能であり、また触媒でも排気中有害成分を浄化処理可能なので、排気エミッションに影響を与えず、特に問題とならない。
しかし、例えば一部の気筒の燃料噴射系が故障するなどして、気筒間の空燃比が大きくばらつくと、排気エミッションを悪化させてしまい、問題となる。このような排気エミッションを悪化させる程の大きな空燃比ばらつきは異常として検出するのが望ましい。特に自動車用内燃機関の場合、排気エミッションが悪化した車両の走行を未然に防止するため、気筒間空燃比ばらつき異常を車載状態(オンボード)で検出することが要請されている。
特表2004−521261号公報
ところで、気筒間空燃比ばらつき異常を検出する場合、空燃比センサの出力変動度合いに相関するパラメータを算出し、この算出されたパラメータを所定の判定値と比較してばらつき異常を検出することが考えられる。
しかし、本発明者の研究結果によれば、ばらつき異常検出時に実際に算出されるパラメータの値が空燃比センサの取付角度あるいは設置向きに応じて異なることが判明した。従ってこのような空燃比センサの取付角度を考慮しないと検出精度が低下する虞がある。
そこで本発明は、上記事情に鑑みて創案され、その目的は、空燃比センサの取付角度を考慮した適切なばらつき異常検出を実行し、検出精度を向上し得る気筒間空燃比ばらつき異常検出装置を提供することにある。
本発明の一の態様によれば、
複数の気筒に共通の排気通路に設置された空燃比センサの出力変動度合いに相関するパラメータを算出し、この算出されたパラメータを所定の判定値と比較して気筒間空燃比ばらつき異常を検出する気筒間空燃比ばらつき異常検出装置であって、
気筒間空燃比ばらつき異常の検出前に、下記のステップ(a),(b)を実行することにより前記判定値を設定し:
(a)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
(b)気筒毎のパラメータ算出値に基づき、予め設定された基準判定値を補正し、前記判定値を設定するステップ、
前記基準判定値が、予め設定された気筒毎のパラメータ基準値に基づき設定され、
前記気筒毎のパラメータ基準値が、下記のステップ(c)〜(g)により設定される:
(c)前記空燃比センサを前記排気通路に第1の取付角度で設置するステップ;
(d)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;
(e)前記空燃比センサを前記排気通路に、前記第1の取付角度とは180°異なる第2の取付角度で設置するステップ;
(f)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
(g)前記第1の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値と、前記第2の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値との平均値を、前記気筒毎のパラメータ基準値として設定するステップ、
ことを特徴とする気筒間空燃比ばらつき異常検出装置が提供される。
好ましくは、前記気筒間空燃比ばらつき異常検出装置は、前記ステップ(a)と前記ステップ(b)の間で下記のステップ(h)を実行し:
(h)前記ステップ(a)で算出された気筒毎のパラメータの値が、前記ステップ(g)で設定された気筒毎のパラメータ基準値に対しどの程度変位しているかを表す気筒毎の変位量を、各気筒について算出するステップ、
全気筒における気筒毎の変位量が所定の許容範囲内に入っている場合に、前記ステップ(b)を実行する。
好ましくは、前記気筒間空燃比ばらつき異常検出装置は、いずれかの気筒における気筒毎の変位量が前記許容範囲内に入っていない場合に、前記ステップ(b)を実行せず、代わりに前記基準判定値を前記判定値として設定する。
好ましくは、前記許容範囲が、前記気筒毎のパラメータ基準値にその所定割合を加算して得られる上限値と、前記パラメータ基準値にその所定割合を減算して得られる下限値との間の範囲として、気筒毎に設定される。
好ましくは、前記所定割合が20%である。
好ましくは、前記気筒毎の変位量が、前記気筒毎のパラメータ算出値と前記気筒毎のパラメータ基準値との比または差からなる。
好ましくは、前記ステップ(b)において、前記基準判定値が気筒毎に予め設定されており、前記気筒毎のパラメータ算出値に基づき気筒毎の基準判定値が補正され、前記判定値が気筒毎に設定される。
本発明の他の態様によれば、
複数の気筒に共通の排気通路に設置された空燃比センサの出力変動度合いに相関するパラメータを算出し、この算出されたパラメータを所定の判定値と比較して気筒間空燃比ばらつき異常を検出する気筒間空燃比ばらつき異常検出装置であって、
気筒間空燃比ばらつき異常の検出前に、下記のステップ(a),(b)を実行することにより補正値を決定し、気筒間空燃比ばらつき異常の検出時に、前記補正値に基づいて、算出されたパラメータを補正し:
(a)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
(b)気筒毎のパラメータ算出値と、予め設定された気筒毎のパラメータ基準値とに基づき、前記補正値を決定するステップ、
前記気筒毎のパラメータ基準値が、下記のステップ(c)〜(g)により設定される:
(c)前記空燃比センサを前記排気通路に第1の取付角度で設置するステップ;
(d)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;
(e)前記空燃比センサを前記排気通路に、前記第1の取付角度とは180°異なる第2の取付角度で設置するステップ;
(f)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
(g)前記第1の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値と、前記第2の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値との平均値を、前記気筒毎のパラメータ基準値として設定するステップ、
ことを特徴とする気筒間空燃比ばらつき異常検出装置が提供される。
本発明によれば、空燃比センサの取付角度を考慮した適切なばらつき異常検出を実行し、検出精度を向上することができるという、優れた効果が発揮される。
本発明の実施形態に係る内燃機関の概略図である。 触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。 気筒間空燃比ばらつき度合いに応じた排気空燃比の変動を示すグラフである。 図3のU部に相当する拡大図である。 インバランス割合と出力変動パラメータの関係を示すグラフである。 触媒前センサの要部拡大斜視図である。 検出素子の断面図である。 センサ取付角度と出力変動パラメータの関係を示すグラフである。 センサ取付角度と出力変動パラメータの関係を示すグラフである。 センサ取付角度とパラメータ比との関係を示すグラフである。 出力変動パラメータに関する4方向平均値と2方向平均値との関係を示すグラフである。 4方向平均値と出力変動パラメータとの関係を示すグラフである。 ばらつき異常検出ルーチンのフローチャートである。 基準判定値の設定方法を説明するためのフローチャートである。 基準判定値および判定値の設定例を示すグラフである。 判定値設定ルーチンのフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る基準判定値および判定値の設定例を示すグラフである。 第2実施形態に係るばらつき異常検出ルーチンのフローチャートである。 第3実施形態の第1実施例を示すグラフである。 第3実施形態の第2実施例を示すグラフである。 センサ品質検査方法の手順を示すフローチャートである。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の概略図である。図示されるように、内燃機関(エンジン)1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストンを往復移動させることにより動力を発生する。本実施形態の内燃機関1は自動車に搭載された多気筒内燃機関であり、より具体的には直列4気筒火花点火式内燃機関である。内燃機関1は#1〜#4気筒を備える。但し気筒数、形式等は特に限定されない。
図示しないが、内燃機関1のシリンダヘッドには吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが気筒毎に配設されており、各吸気弁および各排気弁はカムシャフトによって開閉させられる。シリンダヘッドの頂部には、燃焼室3内の混合気に点火するための点火プラグ7が気筒毎に取り付けられている。
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管4を介して吸気集合室であるサージタンク8に接続されている。サージタンク8の上流側には吸気管13が接続されており、吸気管13の上流端にはエアクリーナ9が設けられている。そして吸気管13には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ5(吸入空気量検出装置)と、電子制御式のスロットルバルブ10とが組み込まれている。吸気ポート、枝管4、サージタンク8及び吸気管13により吸気通路が形成される。
吸気通路、特に吸気ポート内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)12が気筒毎に配設されている。インジェクタ12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁の開弁時に燃焼室3に吸入され、ピストンで圧縮され、点火プラグ7で点火燃焼させられる。なおインジェクタは燃焼室3内に燃料を直接噴射するものであってもよい。
一方、各気筒の排気ポートは排気マニフォールド14に接続される。排気マニフォールド14は、その上流部をなす気筒毎の枝管14aと、その下流部をなす排気集合部14bとからなる。排気集合部14bの下流側には排気管6が接続されている。排気ポート、排気マニフォールド14及び排気管6により排気通路が形成される。
また、排気マニフォールド14の排気集合部14bから下流側の排気通路は、複数の気筒である#1〜#4気筒に共通の排気通路を形成する。
排気管6の上流側と下流側にはそれぞれ三元触媒からなる触媒、すなわち上流触媒11と下流触媒19が直列に取り付けられている。これら触媒11,19は酸素吸蔵能(O2ストレージ能)を有する。すなわち、触媒11,19は、排気ガスの空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.6)より大きい(リーンな)ときに排気ガス中の過剰酸素を吸蔵し、NOxを還元する。また触媒11,19は、排気ガスの空燃比がストイキより小さい(リッチな)ときに吸蔵酸素を放出し、排気ガス中のHC,COを酸化する。
上流触媒11の上流側及び下流側にそれぞれ排気ガスの空燃比を検出するための第1及び第2の空燃比センサ、即ち触媒前センサ17及び触媒後センサ18が設置されている。これら触媒前センサ17及び触媒後センサ18は、上流触媒11の直前及び直後の位置に設置され、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する。このように上流触媒11の上流側の排気合流部に単一の触媒前センサ17が設置されている。本実施形態の場合、触媒前センサ17が本発明にいう「空燃比センサ」に該当する。
上述の点火プラグ7、スロットルバルブ10及びインジェクタ12等は、制御装置としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。またECU20には、図示されるように、前述のエアフローメータ5、触媒前センサ17、触媒後センサ18のほか、内燃機関1のクランク角を検出するクランク角センサ16、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ15、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU20は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12等を制御し、点火時期、燃料噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を制御する。
スロットルバルブ10にはスロットル開度センサ(図示せず)が設けられ、スロットル開度センサからの信号がECU20に送られる。ECU20は、通常、アクセル開度に応じて定まる目標スロットル開度に、スロットルバルブ10の開度(スロットル開度)をフィードバック制御する。
ECU20は、エアフローメータ5からの信号に基づき、単位時間当たりの吸入空気の量である吸入空気量すなわち吸気流量を検出する。そしてECU20は、検出したアクセル開度、スロットル開度および吸入空気量の少なくとも一つに基づき、エンジン1の負荷を検出する。
ECU20は、クランク角センサ16からのクランクパルス信号に基づき、クランク角自体を検出すると共にエンジン1の回転数を検出する。ここで「回転数」とは単位時間当たりの回転数のことをいい、回転速度と同義である。本実施形態では1分間当たりの回転数rpmのことをいう。
触媒前センサ17は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図2に触媒前センサ17の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ17は、排気空燃比に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキであるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
他方、触媒後センサ18は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。図2に触媒後センサ18の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ18の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧はストイキ相当値Vrefrより高くなる。
上流触媒11及び下流触媒19は、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに排気中の有害成分であるNOx,HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
そこで通常運転時、上流触媒11に流入する排気ガスの空燃比がストイキ近傍に制御されるように、空燃比フィードバック制御がECU20により実行される。この空燃比フィードバック制御は、触媒前センサ17によって検出された排気空燃比を所定の目標空燃比であるストイキに一致させるような主空燃比制御(主空燃比フィードバック制御)と、触媒後センサ18によって検出された排気空燃比をストイキに一致させるような補助空燃比制御(補助空燃比フィードバック制御)とからなる。
なお、このように目標空燃比をストイキとする空燃比フィードバック制御をストイキ制御という。ストイキは基準空燃比をなす。
さて、例えば全気筒のうちの一部の気筒(特に1気筒)のインジェクタ12が故障し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生する場合がある。例えば#1気筒のインジェクタ12が故障し、#1気筒が他の#2、#3及び#4気筒よりも燃料噴射量が多くなり、その空燃比が大きくリッチ側にずれる場合等である。このときでも前述のストイキ制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ17に供給されるトータルガスの空燃比をストイキに制御できる場合がある。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#2、#3及び#4気筒がストイキより若干リーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつき異常を検出する装置が装備されている。
以下、本実施形態におけるばらつき異常検出の態様を説明する。
図3に示すように、気筒間空燃比ばらつきが発生すると、1エンジンサイクル(=720°CA)内での排気空燃比の変動が大きくなる。(B)の空燃比線図a,b,cはそれぞればらつき無し、1気筒のみ20%のインバランス割合でリッチずれ、及び1気筒のみ50%のインバランス割合でリッチずれの場合の、触媒前センサ17による検出空燃比A/Fを示す。見られるように、ばらつき度合いが大きくなるほど空燃比変動の振幅が大きくなる。
ここでインバランス割合(%)とは、気筒間空燃比のばらつき度合いに相関する一つのパラメータである。即ち、インバランス割合とは、全気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ズレを起こしている場合に、その燃料噴射量ズレを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ズレを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量即ち基準噴射量からズレているかを示す値である。インバランス割合をIB、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量即ち基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qsで表される。インバランス割合IBが大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ズレが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
図3から理解されるように、インバランス割合が大きいほど、すなわち気筒間空燃比のばらつき度合いが大きいほど、触媒前センサ17の出力変動が大きくなる。
よってこの特性を利用し、本実施形態では、触媒前センサ17の出力変動度合いに相関する出力変動パラメータXを、気筒間空燃比ばらつき度合いに相関するパラメータとして用い、且つ出力変動パラメータXを算出(あるいは検出)する。そしてこの算出された出力変動パラメータXに基づき、ばらつき異常を検出する。なお、前述のインバランス割合は単に説明目的のためだけに用いる。
以下に出力変動パラメータXの算出方法を説明する。図4は図3のU部に相当する拡大図であり、特に1エンジンサイクル内の触媒前センサ出力の変動を簡略的に示す。触媒前センサ出力としては、触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比A/Fに換算した値を用いる。但し触媒前センサ17の出力電圧Vfを直接用いることも可能である。
図4(B)に示すように、ECU20は、1エンジンサイクル内において、所定のサンプル周期τ毎に、触媒前センサ出力A/Fの値を取得する。そして今回(n)のタイミングで取得した値A/Fnと、前回(n−1)のタイミングで取得した値A/Fn-1との差の絶対値(出力差という)ΔA/Fnを次式(1)により求める。この出力差ΔA/Fnは今回のタイミングにおける微分値あるいは傾きと言い換えることができる。
Figure 2014005743
最も単純には、この出力差ΔA/Fnが触媒前センサ出力の変動を表す。変動度合いが大きくなるほど空燃比線図の傾きが大きくなり、出力差ΔA/Fnが大きくなるからである。そこで所定の1タイミングにおける出力差ΔA/Fnの値を出力変動パラメータとすることができる。
但し、本実施形態では精度向上のため、複数の出力差ΔA/Fnの平均値を出力変動パラメータとする。本実施形態では、1エンジンサイクルの間、各タイミング毎に出力差ΔA/Fnを積算し、最終積算値をサンプル数Nで除し、1エンジンサイクル内の差ΔA/Fnの平均値を求める。そしてさらに、Mエンジンサイクル分(例えばM=100)だけ出力差ΔA/Fnの平均値を積算し、最終積算値をサイクル数Mで除し、Mエンジンサイクル内の出力差ΔA/Fnの平均値を求める。こうして求められた最終的な平均値を出力変動パラメータXとする。触媒前センサ出力の変動度合いが大きくなるほど出力変動パラメータXは大きくなる。
触媒前センサ出力A/Fは増加する場合と減少する場合とがあるので、これら各場合の一方についてだけ上記出力差ΔA/Fnあるいはその平均値を求め、これを出力変動パラメータとしても良い。特に1気筒のみリッチずれの場合、当該1気筒に対応した排気ガスを触媒前センサが受けた時にその出力が急速に減少(リッチ側に変化)する傾向があるので、減少側のみの値をリッチずれ異常検出のために用いることも可能である。もっとも、これに限定されず、増加側の値のみを用いることも可能である。
また、触媒前センサ出力の変動度合いに相関する如何なる値をも出力変動パラメータとすることができる。例えば、1エンジンサイクル内における触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差(所謂ピークトゥピーク; peak to peak)、または2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値に基づいて、出力変動パラメータを算出することもできる。触媒前センサ出力の変動度合いが大きいほど、触媒前センサ出力の最大ピークと最小ピークの差は大きくなり、また2階微分値の最大ピークまたは最小ピークの絶対値も大きくなるからである。
図5には、インバランス割合IB(%)と出力変動パラメータXの関係を示す。図示されるように、インバランス割合IBと出力変動パラメータXの間には強い相関関係があり、インバランス割合IBの絶対値が増加するほど出力変動パラメータXも増加する。
算出された出力変動パラメータXを、所定の判定値と比較して、ばらつき異常の有無が判定される。例えば、算出された出力変動パラメータXが判定値以上であればばらつき異常あり(異常)、算出された出力変動パラメータXが判定値より小さければばらつき異常なし(正常)と判定される。
ところで、本発明者の研究結果によれば、ばらつき異常検出時に実際に算出される出力変動パラメータXの値が、触媒前センサ17の取付角度ないし設置向きに応じて異なることが判明した。従ってこのような取付角度を考慮しないと検出精度が低下する虞がある。
図6は、排気管6内に位置された触媒前センサ17の部分を示す。触媒前センサ17は、排気ガスに曝される検出素子31を有し、この検出素子31が孔付カバー32(便宜上透明として描く)で覆われる構造となっている。なお孔付カバー32は一つとされているが、二重に設けられてもよい。触媒前センサ17は、所謂積層型の空燃比センサであり、検出素子31においては、センサ軸C(図7参照)に対し非対称な所定位置でのみ排気ガスを感知するようになっている。具体的には、検出素子31の断面が概ね長方形であり、その一側面の両側のコーナー部のみに排気導入口31Aが形成されている。カバー32外の排気ガスはカバー32の孔33を通じてカバー32内に入り、排気導入口31Aから検出素子31内部に導入される。また触媒前センサ17は、排気管6のネジ穴に螺合して取り付けられる。
図7に検出素子31の断面を示す。検出素子31は、絶縁層61と、絶縁層61に固着された板状の固体電解質62と、この固体電解質62の表裏面に互いに対向するよう設置された一対の電極63,64とを備える。例えば、絶縁層61はアルミナ等の高熱伝導性セラミックスからなり、固体電解質62は部分安定化ジルコニア製のシートからなる。電極63,64は白金からなる。絶縁層61のうち、内側の電極64に対面する部位には大気室65が形成されており、電極64が大気に晒されるようになっている。絶縁層61にはヒータ66が埋設されている。排気側電極63及び固体電解質62の上に、例えば多孔質セラミックからなる拡散抵抗層68が積層され、拡散抵抗層68の上に遮蔽層69が積層されている。素子雰囲気の排気ガスは、前記排気導入口31Aを形成する拡散抵抗層68の入口面68aから拡散抵抗層68の内部に浸入し、拡散抵抗層68の内部を拡散しながら排気側電極63に至る。このとき排気側電極63に到達したガスの酸素濃度に応じた限界電流が電極63,64間に流れ、この限界電流に基づきセンサ出力が構築される。
拡散抵抗層68の入口面68aには触媒層70が設けられる。触媒層70は、活性点をなす貴金属(Pt等)を含み、排気中のNOx、HC、CO、H2を分解する機能を有する。素子雰囲気の排気ガスは、触媒層70を通過した後に拡散抵抗層68の内部に浸入する。
このように、触媒前センサ17が図6に矢印aで示す如くセンサ軸C回りに回転して螺合締結されるので、取付状態における検出素子31のセンサ軸C回りの向き、すなわち取付角度(センサ取付角度という)は、実機としての車両またはエンジン毎にばらばらである。また触媒前センサ17の排気導入口31Aが、センサ軸Cに対し非対称な位置にしかなく、検出素子31の一側面の両側のコーナー部にしかないので、触媒前センサ17には指向性がある。カバー孔33からカバー32内に入った排気ガスが排気導入口31Aに至るルートもセンサ取付角度によってまちまちである。従ってこれらの要因により、実際に算出される出力変動パラメータXの値が、触媒前センサ17の取付角度に応じて変化する。ばらつき異常検出に用いる触媒前センサ出力変動は比較的微細なものである。よって取付角度の影響を考慮しないと正確な異常検出を実行できなくなる虞がある。
なお、触媒前センサ17に対する各気筒からの排気ガスの当たり方および強度(これらを総称してガス当たりという)も気筒毎にばらばらである。例えば図6に示すように、#1気筒からの排気ガスは矢印bの方向から当たり、#3気筒からの排気ガスは矢印cの方向から当たる。よって実際に算出される出力変動パラメータXの値は、空燃比ずれを起こしているインバランス気筒がどの気筒かによっても変化する。例えばインバランス気筒が、触媒前センサ17に対しガス当たりの強い気筒だと出力変動パラメータXの値が大きくなり、インバランス気筒が、触媒前センサ17に対しガス当たりの弱い気筒だと出力変動パラメータXの値が小さくなる傾向にある。
図8には、センサ取付角度θ(°)と出力変動パラメータXとの関係を表す試験結果を示す。試験において、エンジンは一定の回転数および負荷で運転され、触媒前センサ17として後述する上限センサが用いられている。エンジンは便宜上、V型8気筒エンジンが用いられ、その片バンクに属する#2,#4,#6,#8気筒が試験対象とされている。V型8気筒エンジンではバンク毎に直列4気筒エンジンと同様の構成、制御等が適用されるので、図示のデータは本実施形態の直列4気筒エンジンにも当て嵌まる。
図中、「#2」は、#2気筒のみに対し強制的にまたはアクティブに+40%のインバランス割合相当の燃料噴射量増量を行い、残部の#4,#6,#8気筒については燃料噴射量増量を行わずストイキ相当量を噴射させた場合である。すなわち「#2」は、#2気筒のみの空燃比リッチずれ異常状態を模擬的に再現した場合である。他の「#4」、「#6」、「#8」についても同様である。これに対し「正常」は、いずれの気筒も燃料噴射量増量を行わずストイキ相当量を噴射させた正常な場合である。
センサ取付角度θは図7に示すように定義する。すなわち、両側部に排気導入口31Aがある導入側側面71とは反対側のヒータ側側面72が、排気通路の上流側に向くようなセンサ取付角度を0°とする。そしてこの取付角度を基準として、センサ軸Cを中心とした時計回り方向に取付角度が90°、180°、270°といったように増加する。導入側側面71が排気通路上流側に向くときのセンサ取付角度は180°である。
図8から理解されるように、任意の1気筒がリッチずれ異常状態となっているときの出力変動パラメータXの値は、センサ取付角度θに応じて変化し、またいずれの気筒がリッチずれ異常状態となっているかによっても変化する。なお、正常時は異常時よりも出力変動パラメータXの値が小さく、センサ取付角度θに応じたばらつきも実質的に存在しない。
ところで本発明者は、上記のセンサ取付角度の影響を排除するため、詳細な解析を実施し、その結果次のような新しい知見を得るに至った。
図9にはセンサ取付角度θと出力変動パラメータXとの関係を表す試験結果を示し、特に触媒前センサ17の品質の影響を調べた試験結果を示す。試験条件については前記同様、回転数および負荷が一定の下、所定の1気筒のみの燃料噴射量を強制的に+40%のインバランス割合相当で増量させている。
触媒前センサ17に所定空燃比の排気ガスを与えたときのセンサ出力は、センサ毎に公差内でばらつく。このとき、公差内の中央値を出力する触媒前センサ17が図中の「中央センサ」である。同様に、公差の上限値ないし上限許容値を出力する触媒前センサ17が図中の「上限センサ」、公差の下限値ないし下限許容値を出力する触媒前センサ17が図中の「下限センサ」である。このような中央、上限、下限といったセンサの出力特性をここでは品質という。
図9から理解されるように、出力変動パラメータXの値は、センサ取付角度θのみならず、センサの品質によっても変化する。その一方で、取付角度θの変化に対する出力変動パラメータXの変化の傾向は、センサの品質に拘わらず同じである。すなわち、中央、上限、下限の全てのセンサにおいて、取付角度θが0°のとき出力変動パラメータXの値は最大となり、取付角度θが0°から180°に変化するにつれ出力変動パラメータXの値は減少する。そして取付角度θが180°のとき出力変動パラメータXの値は最小となり、取付角度θが180°から360°(=0°)に変化するにつれ出力変動パラメータXの値は増加する。
例えば上限センサに着目すると、取付角度θの違いによる出力変動パラメータXの最大変化量(最大値と最小値の差)は0.35(=0.95−0.6)である。一方、取付角度θ=0°に着目すると、センサの品質違いによる出力変動パラメータXの最大変化量も0.35(=0.95−0.6)である。
よってセンサの品質も、センサ取付角度と同等の出力変動パラメータXへの影響があると言え、無視できない。本発明はこのセンサ品質の影響にも着目し、この影響も同時に排除することを目的とする。
図10には、センサ取付角度θとパラメータ比Xrとの関係を示す。パラメータ比Xrとは、ある取付角度θのときの出力変動パラメータの値Xθを、全ての取付角度θのときの出力変動パラメータXの平均値Xmで除して得られる値をいう(Xr=Xθ/Xm)。図10の結果は図9のデータを基に作製されている。
図10から理解されるように、パラメータ比Xrもセンサ取付角度θに応じて変化する。なおパラメータ比Xrはセンサ品質によっても変化するが、その変化量は微小に止まる。
一方、着目すべきは、互いに対称関係にある、すなわち180°異なる一対の取付角度θ1,θ2のパラメータ比Xr(θ1),Xr(θ2)の平均値は、任意の取付角度において実質的に等しいという事実である。ここでθ1を第1の取付角度、θ2を第2の取付角度、Xr(θ1)を第1のパラメータ比、Xr(θ2)を第2のパラメータ比という。第1の取付角度θ1と第2の取付角度θ2とは180°異なっている。
例えば、第1の取付角度θ1=0°のときの第1のパラメータ比Xr(θ1)は約1.25であり、第2の取付角度θ2=180°のときの第2のパラメータ比Xr(θ2)は約0.85である。よって両者の合計値は約2.10であり、両者の平均値は約1.05である。
これに対し、例えば第1の取付角度θ1=90°のときの第1のパラメータ比Xr(θ1)は約1.0であり、第2の取付角度θ2=270°のときの第2のパラメータ比Xr(θ2)は約1.0である。よって両者の合計値は約2.0であり、両者の平均値は約1.0である。
このように、互いに180°異なる第1および第2の取付角度のペアを選択したときに、両角度における第1および第2のパラメータ比の平均値は、ペアがどのような角度であろうとも実質的に等しい。よってこの特性を利用してセンサ取付角度による影響を排除することが可能である。
図11には、出力変動パラメータXに関する4方向平均値と2方向平均値との関係を示す。4方向平均値とは、0°、90°、180°、270°の各取付角度で得られた出力変動パラメータXの平均値をいう。4方向平均値は、実質的に、全周の全角度における出力変動パラメータXの平均値と考えて差し支えない。4方向平均値は、センサ取付角度の影響を排除した、センサ自体のあるいはセンサ本来の性能を表す値であると言える。
2方向平均値とは、互いに180°離れた各取付角度で得られた出力変動パラメータXの平均値をいう。図示例では、0°および180°の出力変動パラメータXの平均値と、90°および270°の出力変動パラメータXの平均値とを示す。
図11から理解されるように、4方向平均値と2方向平均値との間には強い相関関係があり、両者の値は実質的に等しい。言い換えれば2方向平均値は4方向平均値に対し比例係数1の比例関係にある。よって2方向平均値を得れば、センサ取付角度の影響を排除した、センサ自体の性能を表す値を得ることが可能である。
図12には、4方向平均値と出力変動パラメータXとの関係を示す。ここでは、新品センサを0°、90°、180°、270°の各取付角度で取り付け、各取付角度で得られた出力変動パラメータXの平均値を4方向平均値とする。そしてこの4方向平均値に対して、各取付角度で得られた各出力変動パラメータXの値を図中にプロットしている。
図12から理解されるように、各出力変動パラメータXの値は4方向平均値に対し概ね比例係数1の比例関係にある。そして一定の4方向平均値に対し、各取付角度の出力変動パラメータXの値はばらつくが、そのばらつき幅は一定の範囲内に収まる。具体的には、比例係数1の比例直線aに対し、各取付角度の出力変動パラメータXの値は±20%のばらつき幅に収まる。よってセンサ取付角度の影響は、比例直線a上の中央値に対し±20%以内であると言える。
なお、図12の結果を得るのに用いられたセンサは、様々な品質のセンサを含んでいる。つまりセンサ品質によらず(上限センサ、中央センサ、下限センサを問わず)、ばらつき幅は±20%以内である。よってセンサ品質の影響を考慮したとしてもその影響は±20%以内のばらつき幅であるということが言える。
以上の新たな知見に基づき、本実施形態では、下記の方法により、センサ取付角度およびセンサ品質の影響を排除したばらつき異常検出を実行する。
まず、前提として、車両出荷後にOBDとして定期的に実行されるばらつき異常検出のルーチンを図13を参照して説明する。このルーチンはECU20により所定のサンプル周期τ毎に繰り返し実行される。
ステップS101では、所定の前提条件が成立したか否かが判断される。この前提条件は、例えば次の各条件が成立したときに成立する。
(1)エンジンの暖機が終了している。ECU20は、図示しない水温センサで検出された水温が所定値(例えば75℃)以上であるとき暖機終了と判断する。
(2)触媒前センサ17および触媒後センサ18が活性化している。ECU20は、両センサのインピーダンスがそれぞれ所定の活性温度相当の値になっているとき、両センサが活性化していると判断する。
(3)上流触媒11および下流触媒19が活性化している。ECU20は、別途推定した上流触媒11および下流触媒19の温度がそれぞれ所定の活性温度相当の値になっているとき、両触媒が活性化していると判断する。
(4)エンジンが定常運転中である。ECU20は、例えば所定期間内の回転数および負荷の変動幅が所定値以内であるときエンジンが定常運転中であると判断する。
(5)ストイキ制御中である。
前提条件が成立していない場合にはルーチンが終了される。他方、前提条件が成立している場合にはステップS102に進んでばらつき異常検出が実質的に開始または実行される。
ステップS102では、今回のサンプル時期nないしタイミングにおける触媒前センサ出力A/Fnが取得される。なお触媒前センサ出力A/Fnは触媒前センサ17の出力電圧Vfを空燃比に換算した値である。
ステップS103において、今回のタイミングにおけるセンサ出力差ΔA/Fnが前式(1)より算出される。
ステップS104において、センサ出力差ΔA/Fnが積算され、今回のタイミングにおける積算センサ出力差ΣΔA/Fnが次式(2)より算出される。
Figure 2014005743
ステップS105において、今回の1エンジンサイクルが終了したか否かが判断される。終了してなければルーチンが終了され、終了した場合にはステップS106に進む。
ステップS106では、今回の1エンジンサイクル終了時点における最終的な積算センサ出力差ΣΔA/Fnがサンプル数Nで除されて平均化され、平均センサ出力差Rmが算出される。
そしてステップS107において、平均センサ出力差Rmが積算され、今回のエンジンサイクル終了時点における積算平均センサ出力差ΣRmが次式(3)より算出される。
Figure 2014005743
次に、ステップS108において、Mエンジンサイクル(Mは2以上の整数、例えば100)が終了したか否かが判断される。終了してなければルーチンが終了され、終了した場合にはステップS109に進む。
ステップS109では、Mエンジンサイクル終了時点における最終的な積算平均センサ出力差ΣRmがサイクル数Mで除されて平均化され、出力変動パラメータXが算出される。すなわち、複数(N×M個)のセンサ出力差ΔA/Fnの平均値が出力変動パラメータXとして算出される。
次いで、ステップS110において、算出された出力変動パラメータXが所定の判定値αと比較される。詳しくは後述するが、ここで用いられる判定値αは、センサ取付角度およびセンサ品質の影響を排除するよう最適に定められた判定値である。
出力変動パラメータXが判定値α以上である場合、ステップS111に進んでばらつき異常有り、すなわち異常と判定され、ルーチンが終了される。なお異常判定と同時に、異常の事実をユーザに知らせるべくチェックランプ等の警告装置を起動するのが好ましい。
他方、出力変動パラメータXが判定値α未満である場合、ステップS112に進んでばらつき異常無し、すなわち正常と判定され、ルーチンが終了される。
次に、判定値αの設定方法を説明する。この判定値αの設定は、車両(またはエンジン)の開発段階で最も初期の判定値である基準判定値を設定し、あるいは適合する第1段階と、車両(またはエンジン)の出荷時または出荷直後の実走時に実機の状態に合わせて基準判定値を適宜補正(あるいは変更)し、判定値αを設定する第2段階との2段階に大別される。
まず、第1段階としての基準判定値の設定について説明する。この設定は前述の中央センサを用いて、図14に示すような各ステップを経て行われる。なお図15にはこの設定に関連した各値の例を示す。適宜参照されたい。
図示するように、ステップS201において、触媒前センサ17を排気管6に第1の取付角度θ1で取り付け、あるいは設置する。第1の取付角度θ1をどのような角度にするかは任意である。従って触媒前センサ17を成り行きの向きで取り付けることができる。この取り付けは当然に車両およびエンジンの停止状態で行われる。
次いでステップS202において、所定のテストモードで車両およびエンジンを運転させる。このときの運転状態はばらつき異常検出時の前提条件(ステップS101)を満たすような運転状態である。そしてその最中に、特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的にまたはアクティブにずらし、または変位させて、出力変動パラメータXの値を算出すると共に、特定気筒を順次変化させて気筒毎の出力変動パラメータX1iの値を各気筒について算出する。端的に言えば、ばらつき異常状態を模擬的に再現してこのときの出力変動パラメータXの値を算出する。
具体的には、まず#1気筒のみの燃料噴射量をストイキ相当量から強制的にずらし、#1気筒の空燃比リッチずれ異常状態を模擬的に再現する。このときのずらし量または変位量は、異常として検出したい最小のインバランス割合相当とし、ここでは+40%のインバランス割合相当とする。このような1気筒のみの空燃比ずれ状態を「インバランス状態」という。残部の#2〜#4気筒の燃料噴射量はストイキ相当量であり、これらの気筒で空燃比ずれは起きていない。
この#1気筒のインバランス状態のときに算出された出力変動パラメータを#1インバランス時パラメータと称し、X11で表示する。これから分かるようにiは気筒番号である(i=1,2,3,4)。
#2〜#4気筒についても同様の手順により#2〜#4インバランス時パラメータX12〜X14が算出される。こうして第1の取付角度θ1のときの気筒毎の出力変動パラメータX1iの値が各気筒について算出される。なおパラメータ算出の気筒順序は任意である。
次いで、ステップS203において、触媒前センサ17を排気管6に第2の取付角度θ2で取り付け、あるいは設置する。第2の取付角度θ2は第1の取付角度θ1と180°異なる角度である。この取り付けも当然に車両およびエンジンの停止状態で行われる。
その後ステップS204において、ステップS202と同様、車両およびエンジンの運転中、特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的にずらして出力変動パラメータXの値を算出すると共に、特定気筒を順次変化させて気筒毎の出力変動パラメータX2iの値を各気筒について算出する。すなわち、#1〜#4インバランス時パラメータX21〜X24をそれぞれ算出する。
次いで、ステップS205において、第1の取付角度θ1のときに算出された気筒毎の出力変動パラメータX1iの値と、第2の取付角度θ2のときに算出された気筒毎の出力変動パラメータX2iの値との平均値Xmiを算出すると共に、この平均値Xmiを気筒毎のパラメータ基準値として設定する。この平均値Xmiは前述の2方向平均値に相当する。従ってパラメータ基準値は、センサ取付角度の影響を排除したセンサ自体の性能を表す値となる。
なお、具体例を挙げると、第1の取付角度θ1のときの#1インバランス時パラメータX11と、第2の取付角度θ2のときの#1インバランス時パラメータX21との平均値Xm1(=(X11+X21)/2)が、#1気筒のパラメータ基準値、すなわち#1パラメータ基準値である。他の#2〜#4気筒についても同様である。
図15に、各気筒のパラメータ基準値を黒丸で示す。
次いで、ステップS206において、気筒毎のパラメータ基準値Xmiに基づき、気筒毎の上限値Xmaxiと下限値Xminiとを算出、設定する。
気筒毎の上限値Xmaxiは、気筒毎のパラメータ基準値Xmiにその所定割合σを加算して得られる。また気筒毎の下限値Xminiは、気筒毎のパラメータ基準値Xmiにその所定割合σを減算して得られる。所定割合σは、図12の結果に鑑み本実施形態では20%(または0.2)である。但しこの値は試験結果に応じて任意に定め得る。このようにして算出、設定された各気筒の上限値Xmaxiと下限値Xminiを図15に示す。
気筒毎の上限値Xmaxiと下限値Xminiの間の範囲は、センサ取付角度の影響による出力変動パラメータXのばらつき幅を表す。すなわち、センサ取付角度が変化しても、実際に算出される出力変動パラメータXは当該範囲内に収まる筈であり、またそうなるように上限値Xmaxiと下限値Xminiが設定されている。なお当該範囲は、センサ品質影響によるばらつき幅をも包含する。また当該範囲は、後述する気筒毎の許容範囲に等しい。
こうして気筒毎の上限値Xmaxiと下限値Xminiが算出されたら、次にステップS207において、基準判定値α0を設定する。この設定は、気筒毎の下限値Xminiのうち最小のものに基づいて行われる。
具体的には、図15に示すように、#4気筒の下限値Xmin4が最小の約0.05なので、これから所定の余裕代、本実施形態では0.01を減算して得られる約0.04を基準判定値α0として設定する。ここで出力変動パラメータXの値は大きいほど異常側、小さいほど正常側である。最小の下限値Xmin4よりやや正常側の値を単一の基準判定値α0として設定する。これにより、どの気筒に空燃比ずれ異常が生じても確実にその異常を検出することができる。こうして設定された基準判定値α0はECU20のメモリに記憶される。
この基準判定値の設定方法によれば、センサ取付角度の影響を排除したセンサ自体の性能を表す値、すなわちパラメータ基準値Xmiを得るのに、全周に亘る多数の取付角度(例えば0°、90°、180°、270°の4箇所)で出力変動パラメータXを算出する必要はなく、互いに180°異なる二つの取付角度で出力変動パラメータXを算出すればよい。従って、出力変動パラメータXの算出回数を減らし、簡便な方法でパラメータ基準値Xmiを得ることができる。
また、第1の取付角度θ1、ひいては第1の取付角度θ1と第2の取付角度θ2のペアを任意に定め得るので、このことによっても簡便な方法でパラメータ基準値Xmiを得ることができる。
なお、基準判定値α0は、最小の気筒毎下限値Xminiに基づいて設定されるが、この最小の気筒毎下限値Xminiが、最小の気筒毎パラメータ基準値Xmiに基づく値なので、結局、基準判定値α0は、気筒毎パラメータ基準値Xmiに基づいて設定されることとなる。
次に、第2段階としての判定値αの設定について説明する。この設定は、図16に示すような判定値設定ルーチンに従ってECU20により行われる。当該ルーチンは所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
ここでの前提として、触媒前センサ17の取付角度θは不明であり、触媒前センサ17の品質も不明である。こうした中で、それぞれの実機に応じた最適な判定値αを設定すべく、実機毎に当該ルーチンが実行される。これにより実機毎に最適な判定値αを自動的に設定することができる。この判定値αの設定は、当然に、実機出荷後に最初に行われるばらつき異常検出の前に行われる。判定値αが確定しないとばらつき異常検出を実行できないからである。なお、前記同様、図15にこの設定に関連した各値の例を示す。適宜参照されたい。
図16に示すように、ステップS301において、所定の前提条件が成立したか否かが判断される。この前提条件は好ましくはばらつき異常検出の前提条件(ステップS101)と同じである。
前提条件が成立していない場合にはルーチンが終了される。他方、前提条件が成立している場合にはステップS302に進む。
ステップS302においては、前記ステップS202,S204と同様、特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的にずらして出力変動パラメータXの値を算出(あるいは実測)すると共に、特定気筒を順次変化させて気筒毎の出力変動パラメータXziの値を各気筒について算出する。こうして算出された気筒毎の出力変動パラメータXziを「パラメータ実測値」という。このときのずらし量も、異常として検出したい最小のインバランス割合相当とし、ここでは+40%のインバランス割合相当とする。
図15に、各気筒のパラメータ実測値を白丸で示す。
次に、ステップS303で、気筒毎のパラメータ実測値Xziが気筒毎のパラメータ基準値Xmiに対しどの程度ずれているかまたは変位しているかを表す気筒毎のずれ量または変位量が、各気筒について算出される。ここでは気筒毎のずれ量が、気筒毎のパラメータ実測値Xziと気筒毎のパラメータ基準値Xmiとの比からなる。この比をずれ比率または変位比率と称し、Kiで表す。Ki=Xzi/Xmiである。こうしたずれまたは変位は、触媒前センサ17の主に取付角度、加えて品質の影響によるものである。
なお、気筒毎のずれ量を、気筒毎のパラメータ実測値Xziと気筒毎のパラメータ基準値Xmiとの差からなる値としてもよい。例えばずれ量を(Xzi−Xmi)で定義することができる。
図15の例の場合、気筒毎のずれ比率Kiは下記の如くである。
1=Xz1/Xm1=0.09/0.08=1.125
2=Xz2/Xm2=0.08/0.09=0.889
3=Xz3/Xm3=0.10/0.12=0.833
4=Xz4/Xm4=0.07/0.06=1.167
次に、ステップS304で、全ての気筒のずれ比率が許容範囲内、すなわち1−σと1+σの間の範囲内に入っているか否かが判断される。前述したようにσは所定割合であり、本実施形態の場合0.2である。
すなわち、任意の1気筒においてずれ比率Kiが1−σと1+σの間の範囲内に入っているということは、図15に示すように、パラメータ実測値Xziが、パラメータ基準値Xmiを中心とする上限値Xmaxiと下限値Xminiの間の範囲内、すなわち許容範囲内に入っていることと同義である。従って当該1気筒のインバランス状態で得られたパラメータ実測値Xziは、当初の予定通り、所定のばらつき範囲内に収まっており、問題ないと言える。
よってステップS304では、実機においても当初の予定通り、各気筒インバランス状態でのパラメータ実測値Xziが、所定のばらつき範囲内に収まっているかどうかを確認する作業ないし処理を行っている。図15の例の場合、K1〜K4が全て0.8と1.2の間の許容範囲内に入っている。よってこのような場合にはステップS305に進んで、基準判定値α0を補正し、実機に応じた最適な判定値αを設定する。
他方、いずれかの気筒のずれ比率Kiが許容範囲内に入っていない場合、何等かの原因で当該気筒のパラメータ実測値Xziが許容範囲を外れたことになる。よってこの場合には、安全のため、ステップS306に進んで、基準判定値α0をそのまま判定値αとして設定する。これによりばらつき異常検出の信頼性を確保することができる。
ステップS305では、気筒毎のパラメータ実測値Xziに基づいて基準判定値α0が補正され、判定値αが設定される。具体的には、図15に示すように、気筒毎のパラメータ実測値Xziのうち最小のもの、図示例では#4気筒のパラメータ実測値Xz4=0.07が選択される。そしてこれから所定の余裕代、本実施形態では0.01を減算して得られる0.06を判定値αとして設定する。最小のパラメータ実測値Xz4よりやや正常側の値を単一の判定値αとして設定する。基準判定値α0=約0.04は、より異常側の判定値α=0.06に補正されたことになる。
適合時すなわち第1段階では、出力変動パラメータXの全てのばらつき範囲を考慮して、最も小さい(正常側の)下限値Xmin4に基づき基準判定値α0=約0.04を設定した。しかしながら、図15に示すパラメータ実測値Xziの例では、基準判定値α0=約0.04のままでは判定値が小さすぎ、ばらつき異常が発生していないのにばらつき異常発生と誤検出する虞がある。ばらつき異常発生時に最小でも0.07の出力変動パラメータXしか得られないことが判明したからである。本実施形態では、実機における第2段階で得られた気筒毎のパラメータ実測値Xziに基づいて判定値αを決定するので、実機に応じた最適な判定値αを決定でき、誤検出も未然に防止できる。そして検出精度を向上することができる。
こうしてステップS305,S306で設定された判定値αは、ECU20のメモリに記憶あるいは学習され、後のばらつき異常検出に使用される。
このように本実施形態によれば、触媒前センサ17の取付角度を考慮した適切なばらつき異常検出を実行し、検出精度を向上することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお第1実施形態と同様の部分については説明を省略し、以下相違点を中心に述べる。
第1実施形態では、全気筒に共通の単一の基準判定値α0および判定値αが設定されていた。しかしながらこの第2実施形態では、図17に示すように、気筒毎に個別に基準判定値α0iおよび判定値αiが設定される。
気筒毎の基準判定値α0iは、気筒毎の下限値Xminiから所定の余裕代を減算して得られる値として設定される。この設定は、車両(またはエンジン)の開発段階における適合作業により行われる。
そして気筒毎の判定値αiは、次の手順により気筒毎の基準判定値α0iを補正して設定される。この設定は、車両(またはエンジン)の出荷時または出荷直後の実走時にECU20により自動的に行われる。
すなわち、気筒毎のパラメータ実測値Xziとパラメータ基準値Xmiとの差Di=Xzi−Xmiを、両者のずれ量を表す値として算出する。そしてこの差Diを、基準判定値α0iに加算して、基準判定値α0iを補正すると共に判定値αiを設定する。こうして設定された気筒毎の判定値αiはECU20に記憶され、後のばらつき異常検出に使用される。
ばらつき異常検出時には、空燃比ずれ異常が発生した可能性がある異常気筒が特定され、この異常気筒における判定値αiが、実際に算出された出力変動パラメータXと比較される。
図18に、本実施形態に係るばらつき異常検出のルーチンを示す。ステップS401〜S409は、図13に示したステップS101〜S109と同様である。
ステップS409で出力変動パラメータXの値が算出された後、ステップS410において、この出力変動パラメータXが、気筒毎の基準判定値α0iのうち最小のもの(最小基準判定値α0minという)と比較される。図17の例では、最小基準判定値α0minはα04である。ここでは予備的ないし暫定的に、ばらつき異常の有無を判断している。
出力変動パラメータXが最小基準判定値α0min以上である場合、いずれかの気筒で空燃比ずれ異常が発生した可能性がある。よってこの場合、ステップS411に進んで、異常気筒#jが特定される(但しjは1,2,3,4のいずれか)。もっともここでいう異常気筒とは、空燃比ずれ異常が発生した可能性がある気筒であり、当該気筒で空燃比ずれ異常が実際に発生したかどうかは現時点では不明である。この判断は、後のステップS412〜S414の最終判定を待つことになる。
ステップS411における異常気筒の特定方法は、公知の方法を含め、様々な方法を採用することができる。例えば、図3に示したようなエンジンサイクル毎の周期的なセンサ出力変動波形において、そのピーク値が現れるクランク角は、空燃比ずれが発生している気筒毎に異なる。よってこの特性を利用し、センサ出力変動波形のピーク値に対応したクランク角を検出することにより、異常気筒を特定することができる。代替的に、1気筒ずつ順番に燃料噴射量を強制変更し、変更後に所定時間ストイキ制御が行われた後の出力変動パラメータXと、変更前の出力変動パラメータXとを比較して、異常気筒を特定する方法もある。
こうして異常気筒#jが特定されたら、ステップS412に進み、ステップS409で算出された出力変動パラメータXが、異常気筒#jの判定値αjと比較される。これにより、異常気筒#jに対応した判定値αjに基づきばらつき異常検出を実行でき、正確な検出を実行することができる。
出力変動パラメータXが判定値αj以上である場合、ステップS413に進んで異常と最終判定される。この場合、ステップS411で特定された異常気筒#jが、実際に空燃比ずれ異常が発生した気筒であることが明らかになる。このため、ステップS413において、異常気筒#jが真の異常気筒であると特定される。
また出力変動パラメータXが判定値αj未満である場合、ステップS414に進んで正常と最終判定される。この場合、ステップS411で特定された異常気筒#jは、出力変動パラメータ増大の原因とはなっているものの空燃比ずれ異常の状態までには至っていないと考えられる。このため異常気筒#jは真の異常気筒とされない。
他方、ステップS410において、出力変動パラメータXが最小基準判定値α0min未満である場合にも、いずれの気筒にも空燃比ずれ異常は発生してないとみなせるので、ステップS414に進んで正常と最終判定される。
ところで本実施形態は次のような変形例も可能である。すなわち、気筒毎の判定値αiを設定する際、気筒毎の基準判定値α0iに気筒毎のずれ比率Kiを乗じて気筒毎の判定値αiを設定する方法である。
例えば、図17の#1気筒を例に挙げると、基準判定値α01=0.05、ずれ比率K1=1.125なので、判定値α1=α01×K1=0.05×1.125=0.056となる。他の気筒も同様にして判定値αiが定められる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。なお上述の実施形態と同様の部分については説明を省略し、以下相違点を中心に述べる。
この第3実施形態は、基準判定値α0を補正せず、その代わりにばらつき異常検出時に算出された出力変動パラメータの値を補正することを特徴とする。
以下に第2実施形態をベースとする第3実施形態の第1実施例を、図19を参照しつつ説明する。まず、気筒毎の基準判定値α0iはそのまま気筒毎の判定値αiとして設定される。
そしてばらつき異常検出時に、図18に示すステップS412において判定値αjとの比較を行う際、実際に算出された出力変動パラメータXを補正し、補正後の出力変動パラメータX’を判定値αjと比較する。
具体的には、実際に算出された出力変動パラメータXに、前述のずれ比率Kiの逆数を乗じ、これにより得られた値を補正後の出力変動パラメータX’とする。この場合、ずれ比率Kiの逆数が補正値をなし、この補正値に基づいて、実際に算出された出力変動パラメータXが補正される。
例えば、図19の#1気筒を例に挙げると、ばらつき異常検出時に、パラメータ実測値Xz1と同じ0.09という値の出力変動パラメータXが算出されたとする。この場合、補正後の出力変動パラメータX’は次式により求められる。補正後の出力変動パラメータX’を図中に破線円で示す。
Figure 2014005743
この例では、実際の出力変動パラメータXの値がパラメータ基準値Xm1=0.08に戻されている。#2〜#4気筒における同様の例も参考までに図19に示す。
このように出力変動パラメータXを補正しても、基準判定値α0を補正したときと同様、センサ取付角度および品質の影響を排除し、検出精度を向上することができる。
図20には、第3実施形態の第2実施例を示す。前記第1実施例では、気筒毎の下限値Xminiから所定の余裕代を減算して気筒毎の基準判定値α0i(すなわち判定値αi)を設定していた。これに対し、この第2実施例では、気筒毎のパラメータ基準値Xmiから所定の余裕代を減算して気筒毎の基準判定値α0iを設定する。その他は第1実施例と同様である。
第1実施例で述べたように、ばらつき異常検出時に実際に算出された出力変動パラメータXの値は、センサ取付角度および品質影響のないパラメータ基準値Xmi相当の値に補正される。このことに鑑みれば、下限値Xminiに基づいて基準判定値α0iを設定するよりも、むしろパラメータ基準値Xmiに基づいて基準判定値α0iを設定する方がより効果的であるとも考えられる。実際、図20に示すように、補正後の出力変動パラメータX’は、判定値αiにより接近しており、しかしながら依然として判定値αiより大きい。#3気筒を参照すると分かるように、補正前の出力変動パラメータXが判定値αiより小さい場合でも、補正後の出力変動パラメータX’を判定値αiより大きくすることができ、異常と判定できる。従ってこの第2実施例は好ましい代替例を提供するものである。
以上のような出力変動パラメータXを補正する方法は、第1実施形態のように、単一の基準判定値α0および判定値αを有する場合にも適用可能である。例えば、実際に算出された出力変動パラメータXに、所定気筒のずれ比率Kiの逆数を乗じて、補正後の出力変動パラメータX’を算出してもよい。所定気筒は、パラメータ基準値Xmiが最も小さい気筒、図15の例で言えば#4気筒とするのが好ましい。
以上が本発明の主な実施形態である。なお、適合時に所定の単一の取付角度で触媒前センサ17を取り付け、この取付角度を前提に判定値αを設定し、個々の実機に適合時と同じ取付角度で触媒前センサ17を取り付ける方法もあるが、これは現実的ではないし実用上困難である。本発明によれば、個々の実機にどのような取付角度で触媒前センサ17が取り付けられたとしても、その取付角度の影響を排除し、適切なばらつき異常検出を実行することができる。
ところで、上記の新たな知見を利用すると、次のような空燃比センサすなわち触媒前センサ17の品質検査に関する発明も把握可能である。ここでいう品質検査とは、製造された触媒前センサ17が公差品に該当するか否かを検査することをいう。
図21に品質検査方法を示す。この方法は、図14に示した基準判定値の設定方法と類似する。
まずステップS501において、前記ステップS201と同様、触媒前センサ17を排気管6に任意の第1の取付角度θ1で取り付ける。
次いでステップS502において、前記ステップS202と同様、所定のテストモードでの運転中に所定の1気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的にずらして出力変動パラメータX1の値を算出する。
次いで、ステップS503において、前記ステップS203と同様、触媒前センサ17を排気管6に、第1の取付角度θ1と180°異なる第2の取付角度θ2で取り付ける。
その後ステップS504において、前記ステップS204と同様、所定のテストモードでの運転中に同一の1気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的にずらして出力変動パラメータX2の値を算出する。
次いで、ステップS505において、前記ステップS205と同様、第1の取付角度θ1のときに算出された出力変動パラメータX1の値と、第2の取付角度θ2のときに算出された出力変動パラメータX2の値との平均値Xmを、パラメータ基準値として算出する。
次いで、ステップS506において、このパラメータ基準値Xmが、所定の下限値Sminと上限値Smaxとの間の範囲内に入っているか否かを判断する。これら下限値Sminおよび上限値Smaxは、中央センサのパラメータ基準値Xmにその所定割合σ(好ましくは20%)を加算および減算して得られる上限値Xmaxおよび下限値Xminと等しくするのが好ましい。
パラメータ基準値Xmが、下限値Sminと上限値Smaxとの間の範囲内に入っている場合、ステップS507において、検査に使用された触媒前センサ17を良品と判定する。
他方、パラメータ基準値Xmが、下限値Sminと上限値Smaxとの間の範囲内に入っていない場合、ステップS508において、検査に使用された触媒前センサ17を不良品と判定する。
この品質検査において良品と判定された触媒前センサ17を、適合に使用し、実機に搭載するのが当然に好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態を詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば上記の数値は例示であり、種々の変更が可能である。また上記の実施形態では、空燃比ずれとして主にリッチずれの場合を説明したが、リーンずれの場合にも本発明は適用可能である。
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
1 内燃機関(エンジン)
2 インジェクタ
6 排気管
11 上流触媒
14 排気マニフォールド
17 触媒前センサ
18 触媒後センサ
19 下流触媒
20 電子制御ユニット(ECU)

Claims (8)

  1. 複数の気筒に共通の排気通路に設置された空燃比センサの出力変動度合いに相関するパラメータを算出し、この算出されたパラメータを所定の判定値と比較して気筒間空燃比ばらつき異常を検出する気筒間空燃比ばらつき異常検出装置であって、
    気筒間空燃比ばらつき異常の検出前に、下記のステップ(a),(b)を実行することにより前記判定値を設定し:
    (a)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
    (b)気筒毎のパラメータ算出値に基づき、予め設定された基準判定値を補正し、前記判定値を設定するステップ、
    前記基準判定値が、予め設定された気筒毎のパラメータ基準値に基づき設定され、
    前記気筒毎のパラメータ基準値が、下記のステップ(c)〜(g)により設定される:
    (c)前記空燃比センサを前記排気通路に第1の取付角度で設置するステップ;
    (d)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;
    (e)前記空燃比センサを前記排気通路に、前記第1の取付角度とは180°異なる第2の取付角度で設置するステップ;
    (f)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
    (g)前記第1の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値と、前記第2の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値との平均値を、前記気筒毎のパラメータ基準値として設定するステップ、
    ことを特徴とする気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  2. 前記ステップ(a)と前記ステップ(b)の間で下記のステップ(h)を実行し:
    (h)前記ステップ(a)で算出された気筒毎のパラメータの値が、前記ステップ(g)で設定された気筒毎のパラメータ基準値に対しどの程度変位しているかを表す気筒毎の変位量を、各気筒について算出するステップ、
    全気筒における気筒毎の変位量が所定の許容範囲内に入っている場合に、前記ステップ(b)を実行する
    ことを特徴とする請求項1に記載の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  3. いずれかの気筒における気筒毎の変位量が前記許容範囲内に入っていない場合に、前記ステップ(b)を実行せず、代わりに前記基準判定値を前記判定値として設定する
    ことを特徴とする請求項2に記載の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  4. 前記許容範囲が、前記気筒毎のパラメータ基準値にその所定割合を加算して得られる上限値と、前記パラメータ基準値にその所定割合を減算して得られる下限値との間の範囲として、気筒毎に設定される
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  5. 前記所定割合が20%である
    ことを特徴とする請求項4に記載の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  6. 前記気筒毎の変位量が、前記気筒毎のパラメータ算出値と前記気筒毎のパラメータ基準値との比または差からなる
    ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  7. 前記ステップ(b)において、前記基準判定値が気筒毎に予め設定されており、前記気筒毎のパラメータ算出値に基づき気筒毎の基準判定値が補正され、前記判定値が気筒毎に設定される
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
  8. 複数の気筒に共通の排気通路に設置された空燃比センサの出力変動度合いに相関するパラメータを算出し、この算出されたパラメータを所定の判定値と比較して気筒間空燃比ばらつき異常を検出する気筒間空燃比ばらつき異常検出装置であって、
    気筒間空燃比ばらつき異常の検出前に、下記のステップ(a),(b)を実行することにより補正値を決定し、気筒間空燃比ばらつき異常の検出時に、前記補正値に基づいて、算出されたパラメータを補正し:
    (a)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
    (b)気筒毎のパラメータ算出値と、予め設定された気筒毎のパラメータ基準値とに基づき、前記補正値を決定するステップ、
    前記気筒毎のパラメータ基準値が、下記のステップ(c)〜(g)により設定される:
    (c)前記空燃比センサを前記排気通路に第1の取付角度で設置するステップ;
    (d)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;
    (e)前記空燃比センサを前記排気通路に、前記第1の取付角度とは180°異なる第2の取付角度で設置するステップ;
    (f)特定気筒の空燃比を残部気筒の空燃比に対し強制的に変位させて前記パラメータの値を算出すると共に、前記特定気筒を順次変化させて気筒毎のパラメータの値を各気筒について算出するステップ;および
    (g)前記第1の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値と、前記第2の取付角度のときに算出された気筒毎のパラメータの値との平均値を、前記気筒毎のパラメータ基準値として設定するステップ、
    ことを特徴とする気筒間空燃比ばらつき異常検出装置。
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