JP2013231244A - 炭素繊維の製造装置 - Google Patents

炭素繊維の製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2013231244A
JP2013231244A JP2012103363A JP2012103363A JP2013231244A JP 2013231244 A JP2013231244 A JP 2013231244A JP 2012103363 A JP2012103363 A JP 2012103363A JP 2012103363 A JP2012103363 A JP 2012103363A JP 2013231244 A JP2013231244 A JP 2013231244A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon fiber
microwave
absorption
transmission member
absorbing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012103363A
Other languages
English (en)
Inventor
Keiji Horioka
啓治 堀岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Applied Materials Inc
Original Assignee
Applied Materials Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Applied Materials Inc filed Critical Applied Materials Inc
Priority to JP2012103363A priority Critical patent/JP2013231244A/ja
Publication of JP2013231244A publication Critical patent/JP2013231244A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】マイクロ波を用いて高エネルギー効率で炭素繊維の前駆体を均一に加熱処理することが可能であると共に、アーク放電による前駆体の切断を防止することが可能な炭素繊維の製造装置を提供する。
【解決手段】炭素繊維の前駆体を加熱処理する炭素繊維の製造装置は、筒状の外壁部と、外壁部に設けられ、外壁部内部にマイクロ波を照射するマイクロ波源と、外壁部の内部に設けられ、マイクロ波源から照射されたマイクロ波の少なくとも一部を吸収して発熱すると共に、マグネトロンから照射されたマイクロ波の少なくとも一部を内部に透過させる筒状の吸収・透過部材と、吸収・透過部材の内部で炭素繊維の前駆体を吸収・透過部の一方の端部から他方の端部に走行させる走行機構を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は炭素繊維の製造装置に係り、特に、マイクロ波を用いて炭素繊維の前駆体(プリカーサ)を加熱処理する炭素繊維の製造装置に関する。
従来より、炭素繊維の製造には、ポリアクリロニトリル(PAN)糸又はピッチ(PITCH)糸を加熱する工程が含まれる。例えば、PAN糸を用いた炭素繊維の製造方法には、PAN糸を酸化性雰囲気中で200〜300℃で熱処理を行う不燃化工程によって安定化PAN糸を形成する工程と、不燃化工程を経た安定化PAN糸を不活性ガス中で1000℃以上で熱処理を行う炭化工程が含まれる。炭化工程では、一定の張力が加えられた安定化PAN糸が一定温度で加熱され、黒鉛構造とアモルファス構造が適度に混在する微細構造が形成されることにより、高強度、高弾性の炭素繊維が製造される。
この炭化工程を行うためには、炉壁に設けられた抵抗性ヒータにより加熱された加熱炉内で安定化PAN糸を走行させて加熱する装置が用いられている。しかしながら、加熱炉内における安定化PAN糸の走行速度は一定以下に制限せざるを得ないため、加熱炉の内部容積が大きなものとなり、エネルギー効率が低下すると共に、温度制御が困難になる。また、炉壁は安定化PAN糸の温度よりも高温になるので耐熱性が要求される。さらに、不燃化工程では酸化ガスとして空気を使うことが一般的であるが、フッ素ガス(F2)や塩素ガス(Cl2)等のハロゲンガスを使用あるいは添加することで炭素繊維の製造歩留まりが向上することが知られている。しかし、従来の外部加熱方式の炉でハロゲンが残留した安定化PAN糸を処理すると、高温の炉壁がハロゲンによって腐食されるおそれがあるという問題があった。
一方、マイクロ波又はマイクロ波よって誘起されるプラズマを用いて安定化PAN糸を加熱処理する装置も提案されている。
特表2009−533562 特開2011−162898 米国特許第7824495号
しかしながら、安定化PAN糸の電気抵抗は、安定化PAN糸の加熱炭化処理の進行に従って低下する。従って、マイクロ波により安定化PAN糸を炭化する場合、炭化の進行により安定化PAN糸のマイクロ波の吸収率及びマイクロ波による加熱効率が変化し、加熱条件の制御が困難になる。特に処理の最初期においては安定化PAN糸前駆体はほぼ絶縁物でありマイクロ波をほとんど吸収しない。このため直接の加熱はほぼ不可能である。また、特に一定の処理が進行して安定化PAN糸前駆体が炭素繊維に変化して電気抵抗値が低下すると、反応容器のマッチング特性を変化に伴って反射率が変動し、マイクロ波の実質供給電力が不安定に変化する問題があった。さらに、炭素繊維の電気抵抗が非常に低くなり、局所的な異常加熱やアーク放電が発生し、安定化PAN糸が切断されるおそれがある。加熱装置内で安定化PAN糸が切断されると、製造工程を停止せざるを得ず、また、加熱炉内の洗浄を行う必要が生じ、生産性を低下させる。
また、マイクロ波を利用してプラズマを発生させ、発生したプラズマを炭化工程に用いる従来技術も存在する。しかし、プラズマを安定的に発生させることが容易ではなく、処理基体の温度制御が非常に困難である。さらに、真空又は1〜10Torr程度の減圧条件が要求されるため、装置の構造が複雑となりコスト高となる。結果として、そのような従来技術は実用上、必ずしも炭化工程には利用できないという問題点があった。
本発明は上述した問題点を解決しようとしてなされたものであり、マイクロ波を用いて高エネルギー効率で炭素繊維の前駆体を均一に加熱処理することが可能であると共に、アーク放電による前駆体の切断を防止することが可能な炭素繊維の製造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の炭素繊維の前駆体を加熱処理する炭素繊維の製造装置は、筒状の外壁部と、外壁部に設けられ、外壁部内部にマイクロ波を照射するマイクロ波源と、外壁部の内部に設けられ、マイクロ波源から照射されたマイクロ波の少なくとも一部を吸収して発熱すると共に、マイクロ波原から照射されたマイクロ波の少なくとも一部を内部に透過させる筒状の吸収・透過部材と、吸収・透過部材の内部で炭素繊維の前駆体を吸収・透過部材の一方の端部から他方の端部に走行させる走行機構を備える。
本発明に係る製造装置によれば、マイクロ波により加熱装置の内部に設けられた吸収・透過部材及び炭素繊維の前駆体自体の加熱が行われるため、抵抗性加熱ヒータを用いて加熱炉内全体を加熱する従来の装置に比べ、加熱のためのエネルギー効率が向上し、吸収・透過部材内部の温度制御を行うことが容易になる。
また、マイクロ波源は外壁部に設けれられているが、前駆体の加熱は外壁部内部に設けられた吸収・透過部材内部で行われるため、前駆体に不燃化工程で用いられたハロゲンガスが残留していたとしても、外壁部を腐食するおそれがない。
さらに、本発明の製造装置では、前駆体の周りにマイクロ波を吸収する吸収・透過部材が設けられており、過剰なマイクロ波は吸収・透過部材に吸収されるので、アーク放電の発生を防止することができる。
本発明に係る炭素繊維の製造装置の概略を示す断面図である。 本発明に係る炭素繊維の製造装置の概略を示す斜視図である。 本発明に係る炭素繊維の製造装置で用いられるマグネトロンの一例を示す断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、不燃化工程を経た安定化PAN糸を前駆体として炭化処理する装置を例として説明する。
図1及び図2は本発明に係る、炭化工程に用いられうる、炭素繊維の製造装置10を示す。この製造装置10は、金属製の中空円筒状の外壁部20と、外壁部20の内部に設けられた中空円筒状の断熱部材30と、断熱部材30の内部に設けられた中空円筒状の吸収・透過部材40を備えている。この製造装置10は、長手方向(中心線方向)が水平となるように配置され、例えば、300本から400本の、所定数本の安定化PAN糸(前駆体)がこの中空円筒状の吸収・透過部材40の中空内を走行する。
外壁部20は、厚さ1−3cm程度のステンレス等の材質で形成されており、外径は60〜120cm程度、長さは5〜20m程度である。外壁部20の外周面には、外壁部20内部にマイクロ波を導入するための複数のマグネトロン22が設けられている。外壁部20の外周面は端面からの距離により複数の円筒状のゾーン20aに区分されており、マグネトロン22は各々のゾーン20aにおいて等間隔で複数個(本実施形態では、40°間隔で9個)設けられている。また、一のゾーン20aのマグネトロン22は、隣接する他のゾーン20aのマグネトロン22と千鳥状に配置されている。このマグネトロン22としては、例えば、ISMバンド内の2.45GHzの物体加熱用のマイクロ波を照射可能なものが用いられる。マグネトロン22のオンオフ状態やその出力等は個々のマグネトロン毎にマグネトロン制御部70により個別独立に制御可能とすることができる。典型的なマグネトロンの出力は0.7〜1.5kW程度である。各マグネトロンにはカソード加熱用の直流電流と発振用の高圧電圧が印加される。通常、直流電流は常に一定とし、高圧電源をパルス印加することによってマイクロ波の平均出力を制御する。
図3は外壁部20に設けられたマグネトロン22の一例を示す。図3において、マグネトロン22は外壁部20に形成された孔部の周辺から外側に突出する筒状部24aに形成されたフランジ部24bに取り付けられている。マグネトロン22はケーシング22aと、ケーシング22a内部から筒状部24a内に突出しており、外壁部20内にマイクロ波を照射するためのアンテナ部22cを備えている。ケーシング22aには空冷フィン22bが設けられ、外壁部20とフランジ部24bの間には水冷パイプ24cが設けられており、マグネトロン22及びその周辺部を冷却することができる。また、筒状部24aには、手動により、または、モータなどの駆動機構により自動的に開閉する開閉式の金属製シャッター26が設けられており、マグネトロンを使用しない時やマグネトロン交換時等には、マグネトロン22と外壁部20内を遮断することができる。図1の実施形態の場合、(9XN)個のマグトロンが使用されており、本装置10の稼働中に、いくつかマグネトロンが故障することも考えられる。このような場合、故障したマグネトロンの位置にあるシャッター26を閉めることにより、マイクロ波の漏れを防ぐことができるので、本装置10の稼働状態を継続したまま、故障したマグネトロンを交換することができる。
また、外壁部20の内面であってマグネトロン22の間の位置には、マグネトロン22から導入されたマイクロ波を外壁部20の中心方向に指向させるための金属製のリフレクタ26が設けられている。このリフレクタ26は、マグネトロン22から導入されたマイクロ波を調節できるよう、外壁部20の内側面から外壁部20の中心方向に向かって移動可能に構成されている。リフレクタ26の位置調整は、リフレクタ制御部80がモータなどの駆動機構を制御することにより行われる。リフレクタの調整の目的は、マグネトロンからのマイクロ波が効率よく外壁部20内に導入されること、及び、外壁部20内でマイクロ波の分布がほぼ一定になることである。そのためには、反応容器内でマイクロ波の実効的な強度分布や温度分布を測定する必要がある。その測定には後述する温度プローブ、マイクロ波プローブが適している。
外壁部20の内部には、内壁部から所定間隔を配して、中空円筒状の断熱部材30が設けられている。この断熱部材30はマグネトロン22から導入されたマイクロ波を透過させると共に、断熱部材30の内部と外部の温度差を保持することが可能なセラミック、アルミナ、石英ウール等で形成され、厚さ3〜 15cm程度、外径は58〜118cm程度である。
断熱部材30の内部には、マグネトロン22から導入されたマイクロ波の少なくとも一部を吸収して発熱するとともに、マイクロ波の少なくとも一部を透過させる中空円筒状の吸収・透過部材40が設けられている。この吸収・透過部材40の一方の端部(導入口)の近傍には、処理される安定化PAN糸50を導出して、吸収・透過部材40内部に供給する安定化PAN糸導出装置52が設けられ、他方の端部(排出口)には吸収・透過部材を通過した安定化PAN糸を巻き取る巻取り装置54が、各々複数個設けられている。これによって、複数本(本実施形態では、300〜400本)の安定化PAN糸50が吸収・透過部材40内部を走行して処理される。吸収・透過部材40の内部は窒素(N)、アルゴン(Ar)等の不活性ガス雰囲気に保持されている。
この吸収・透過部材40は、マイクロ波を吸収して発熱する性質を有する炭化ケイ素(SiC)、ケイ素(Si)、炭素(C)、炭素繊維複合材料、珪素化モリブデン、珪素化タングステンなどの金属珪素化物等の発熱物質又はこれらの発熱物質の微粉末を含有するセラミック材料で形成される。吸収・透過部材40を形成するセラミック材料中の発熱物質の含有量は、安定化PAN糸50の進行方向に向かって、低下する部分を有するように形成されている。これによって、安定化PAN糸50の進行方向に向かって、吸収・透過部材40のマイクロ波の吸収率、即ち、マイクロ波による吸収・透過部材40の加熱効率を低下させると共に、マイクロ波の吸収・透過部材40の透過率を上昇させることができる。例えば、吸収・透過部材40の導入口近傍では炭化ケイ素の含有量は100%とし、吸収・透過部材40の中央部分では炭化ケイ素の含有量は50%とし、吸収・透過部材40の排出口近傍では炭化ケイ素の含有量は10%とすることができる。このような吸収・透過部材40は、発熱物質の含有量の異なるセラミックの円筒部材を複数個準備し、この円筒部材を順次、結合することにより形成することができる。これらの各位置における円筒部材の混合比や厚みは、前駆体から炭素繊維に変化する被処理体の電気抵抗及びマイクロ波吸収率の変化に対応する。被処理体の吸収率が極めて小さい、導入口付近では、炭化ケイ素の混合比を高くするか、厚みを大きくすることでマイクロ波のほとんどが透過・吸収体を加熱するために消費される。被処理体である安定化PAN糸は、透過・吸収体からの輻射、対流を通じて加熱される。一方、抵抗値が中程度の反応炉の中央部では、透過・吸収体のマイクロ波吸収率を下げて、80〜90%のマイクロ波を被処理体に照射することで、直接、効率よく加熱を行う。さらに抵抗値の低下する反応炉の出口付近では、炭素繊維によるマイクロ波吸収が局所的に不均一となりアーク放電のリスクが増大するので、透過・吸収体によるマイクロ波吸収率を中程度(30〜60%)に調整することで安定化と加熱効率を両立させる。
また、個々の円筒部材は、必ずしも結合されている必要はなく、所定の間隙による離間をもって配置されてもよい。吸収・透過部材40の厚さは1−5cm程度であるが、PAN糸の進行方向に向かって変化させることも可能である。
断熱部材30と吸収・透過部材40の間には、アルミナ粉や石英ウール等のマイクロ波を透過させる断熱材を充填することができる。また、断熱部材30の内周面に吸収・透過部材40を直接形成することも可能である。
本発明に係る製造装置10においては、吸収・透過部材40の内部で放射温度計を備えた石英ファイバを走行させる機構を設けることができ、これによって、吸収・透過部材40内部の温度を測定することができる。また、吸収・透過部材40内部で石英ファイバの先端にマイクロ波を吸収しないアルミナやアモルファス系の炭素とマイクロ波を効率よく吸収する黒鉛系の炭素をプローブとして設置し、これらのプローブの温度を石英ファイバ介して放射温度計で測定する機構を設けることもできる。これによって、マイクロ波を吸収しないプローブの温度から吸収・透過部材40内部の温度を検知し、マイクロ波を吸収しない炭素繊維とマイクロ波を吸収する炭素繊維の温度差からマイクロ波の強度を検知することが可能になる。これらのプローブから得られる測定値は、各マグネトロンの出力やリフレクタ―の調整の目的に使用される。
マグネトロン制御部70、リフレクタ制御部80、シャッター26の開閉制御部90、安定化PAN糸導出装置52、巻取り装置54の制御は、CPUからなる中央制御装置100により統括制御される。中央制御装置100は、オペレータが操作パネル110から入力する操作コマンドに基づき、各部、各装置を制御する。
図1を参照しながら、本装置10の作り方について説明する。図1の場合、本装置10の長手方向の全長は5〜20メートルであるが、仮に16メートルとすると、まず、1個の円筒状のゾーン20aに対応する、1メートル幅の円筒形筐体を16個用意する。各々の円筒形筐体にマグネトロン22取付用の穴およびリフレクタ26取付用の穴を円周上、等間隔に9個穿孔し、各々の円筒形筐体に、9個のマグネトロン22およびリフレクタ26を取り付ける。さらに、1メートル幅の、円環状の断熱部材30により、囲繞された吸収・透過部材40を16個、用意し、支持部材を用いて、一個の円筒形筐体内部に対し、一個の断熱部材30および吸収・透過部材40取り付ける。この時、円筒形筐体の中心と、円環状の断熱部材30および吸収・透過部材40の中心とが、ほぼ一致するように取付が行われる。このようにしてできた、16個の円筒形筐体を、その円周上にとりつけられたマグネトロン22が千鳥状に配置されるように、順次、溶接等で切れ目なく結合する。その結果、全長16メートルの、外壁20を有する円筒形本体が形成される。上記実施形態においては、円筒形筐体の中に入れる、円環状の断熱部材30および吸収・透過部材40の幅を1メートルとしたので、円筒形本体の内部では、断熱部材30および吸収・透過部材40が、全長16メートルにわたり、切れ目なく構成されることとなる。他の実施形態として、断熱部材30および吸収・透過部材40の両者、あるいは、一方の幅を1メートル以下、例えば、80センチメートルとすれば、円筒形本体の内部では、断熱部材30あるいは吸収・透過部材40が、所定長の切れ目、例えば、20センチメートルの切れ間を有して構成されることとなる。この切れ目の長さを調整することにより、吸収・透過部材40の内部を通過する安定化PAN糸の温度プロファイルを調整することもできる。16個の円筒形筐体に取り付けられる、16個の吸収・透過部材40は、前述のように、その材質が少しづつ変化する、16個の吸収・透過部材40を選択すればよい。なお、このとき、吸収・透過部材40の一個一個の材質は、均質なものでよい。このような本装置10の作り方によると、円筒形本体を構成するための、長手方向に長大な円筒形部材を必要とせず、製造が容易となる。さらに、中に入れられる吸収・透過部材40については、安定化PAN糸進行方向に沿い、材質が変化するような、1個の長大な円筒形の吸収・透過部材を必要とするわけではないので、製造が容易となる。
以下、上記の製造装置の作用について説明する。
不燃化工程を経た安定化PAN糸50は安定化PAN糸導出装置52から巻取り装置54に巻き取られることにより、吸収・透過部材40内部を走行する。導入側とに対して取り出し側のプーリの回転速度を調整して走行中の被処理体には常に、張力がかかるように設定されている。
マグネトロン22からマイクロ波が外壁部20内部に照射されると、このマイクロ波は断熱部材30を透過して、吸収・透過部材40に到達する。吸収・透過部材40に到達したマイクロ波の少なくとも一部は吸収・透過部材40に吸収され、吸収・透過部材40を介してその内部空間を加熱する。一方、吸収・透過部材40に到達したマイクロ波の一部は吸収・透過部材40を透過して、吸収・透過部材40の内部空間に到達する。これによって、吸収・透過部材40内部を走行するPAN糸は加熱された吸収・透過部材40から輻射熱により加熱されると共に、吸収・透過部材40を透過したマイクロ波により加熱される。このとき、本発明に係る製造装置10によれば、マイクロ波により加熱装置10の内部に設けられた吸収・透過部材40及びPAN糸50自体の加熱が行われるため、抵抗性加熱ヒータを用いて加熱炉内全体を加熱する従来の装置に比べ、加熱のためのエネルギー効率が向上し、吸収・透過部材内部に温度勾配を形成する等の温度制御を行うことが容易になる。また、加熱源であるマグネトロン22は外壁部20に設けれられているが、PAN糸50の加熱は外壁部20内部に設けられた吸収・透過部材40内部で行われるため、PAN糸50に不燃化工程で用いられたハロゲンガスが残留していたとしても、外壁部20を腐食するおそれがない。
前駆体である不燃化処理を経た直後の安定化PAN糸は電気伝導度が低いためほとんどマイクロ波を吸収しない。PAN糸は炭化進むと電気抵抗値が減少し、マイクロ波を効率よく吸収し内部から発熱する。本発明に係る製造装置10では、吸収・透過部材40を形成するセラミック材料中の発熱物質の含有量はPAN糸50の進行方向に向かって低下している。すなわち、PAN糸50の進行方向に向かってマイクロ波による吸収・透過部材40の加熱効率は低下する一方、マイクロ波の吸収・透過部材の透過率は上昇する。従って、吸収・透過部材40の導入口側では、吸収・透過部材40がマイクロ波を吸収して発熱し、PAN糸50は吸収・透過部材40からの輻射熱により加熱される。一方、PAN糸50が吸収・透過部材40内部を進行し、PAN糸50の炭化が進行するとPAN糸50がマイクロ波を効率よく吸収し内部から発熱する。従って、本発明に係る製造装置10によれば、PAN糸が吸収・透過部材40内を走行している間、PAN糸50を均一に加熱することでき、高品質な炭素繊維を提供することが可能になる。本発明に係る製造装置10において、吸収・透過部材40の温度は、例えば、導入口近傍では1200℃とし、排出口近傍では300℃とすることができる。
また、PAN糸の炭素化が進んでPAN糸の電気抵抗が更に低下すると、従来のマイクロ波を用いた装置ではアーク放電が生じ、PAN糸が切断されるおそれがある。これに対し、本発明の製造装置10では、PAN糸50の周りにマイクロ波を吸収する吸収・透過部材40が設けられており、過剰なマイクロ波は吸収・透過部材40に吸収されるので、アーク放電の発生を防止することができる。
尚、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、適宜変更して実施することが可能である。例えば、外壁部20に設けられた複数個のマグネトロン22は全て同時に稼動させる必要はなく、ある時点では一部のマグネトロン22のみを稼動させ、他の時点では他のマグネトロン22のみを稼動させてもよい。また、マグネトロン制御部70が個々のマグネトロン22の出力を調節することにより、さらに、リフレクタ制御部80がリフレクタ26の位置を適宜、調整することにより、吸収・透過部材40内部で所望の温度プロファイルを形成してもよい。
また、上記実施形態では、本発明にかかる炭化工程に用いられる装置10の前に、安定化PAN糸導出装置52を設けるようにしたが、前工程である不燃化工程で処理された、複数本の前駆体をそのまま、本装置10に供給して、複数本の前駆体が吸収・透過部材40内を走行するようにしてもよい。さらに、本装置10の後段でも、巻取り装置54による巻取りを行うことなく、炭化された複数の安定化PAN糸をそのまま、後工程に供給するようにしてもよい。この場合は、巻取り装置はその後工程以後に設けられることとなる。
また、上記実施形態においては、装置10の外壁部20、断熱部材30、吸収・透過部材40の断面形状は、全て、円形であったが、装置10の外壁部20、断熱部材30、吸収・透過部材40のすべては、あるいは、それらのうちのいずれかの断面形状は、矩形(正方形、長方形)あるいは、5角形以上の多面体形状であってもよい。
石英ファイバを用いたモニターは本発明装置の調整、モニター、フィードバックに効果的に利用できる。ファイバから得られるプローブ発生する赤外線、可視光は放射温度計で計測され局所的な雰囲気温度やマイクロ波の強度を間接的にモニタ可能である。また、ファイバによって炉内空間の光の強度のちらつきをモニターすることにより、マイクロ波加熱にありがちなアーク放電を検知することもできる。アーク放電を検知した際には直ちに周辺のマイクロ波電源の出力を低下あるいは遮断することにより、被害が拡大して糸切れに至るリスクを抑制することができる。
上記の説明から明らかなように、本発明の炭素繊維の製造装置によれば、抵抗性加熱ヒータを用いて加熱炉内全体を加熱する従来の装置に比べ、加熱のためのエネルギー効率が向上し、吸収・透過部材内部の温度制御を行うことが容易になる。また、処理すべき前駆体に不燃化工程で用いられたハロゲンガスが残留していたとしても、外壁部を腐食するおそれがない。
さらに、本発明の製造装置では、過剰なマイクロ波は吸収・透過部材に吸収されるので、アーク放電及びこれに起因する炭素繊維前駆体の切断を防止することができる。
10 炭素繊維の製造装置
20 外壁部
22 マグネトロン
30 断熱部材
40 吸収・透過部材
50 PAN糸
52 安定化PAN糸導出装置
54 巻取り装置

Claims (5)

  1. 炭素繊維の前駆体を加熱処理する炭素繊維の製造装置であって、
    筒状の外壁部と、
    前記外壁部に設けられ、前記外壁部内部にマイクロ波を照射するマイクロ波源と、
    前記外壁部の内部に設けられ、前記マイクロ波源から照射されたマイクロ波の少なくとも一部を吸収して発熱すると共に、前記マイクロ波源から照射されたマイクロ波の少なくとも一部を内部に透過させる筒状の吸収・透過部材と、
    前記吸収・透過部材の内部で前記炭素繊維の前駆体を走行させる走行機構を備えた炭素繊維の製造装置。
  2. 前記吸収・透過部材は、炭化ケイ素、ケイ素、金属珪化物、炭素、炭素繊維複合材料からなる群から選択される物質を含有する材料で形成される請求項1記載の炭素繊維の製造装置。
  3. 前記吸収・透過部材は、炭化ケイ素、ケイ素、金属珪化物、炭素、炭素繊維複合材料からなる群から選択される物質の濃度が、前駆体の進行方向に向かって低下する部分を有する請求項2記載の炭素繊維の製造装置。
  4. 前記外壁部と前記吸収・透過部材との間に、マイクロ波源からのマイクロ波を透過させる断熱部材が設けられている請求項1〜3のいずれか1項記載の炭素繊維の製造装置。
  5. 前記吸収・透過部材は、組成の異なる複数個の筒状の均質な吸収・透過材を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の炭素繊維の製造装置。
JP2012103363A 2012-04-27 2012-04-27 炭素繊維の製造装置 Pending JP2013231244A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012103363A JP2013231244A (ja) 2012-04-27 2012-04-27 炭素繊維の製造装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012103363A JP2013231244A (ja) 2012-04-27 2012-04-27 炭素繊維の製造装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013231244A true JP2013231244A (ja) 2013-11-14

Family

ID=49677930

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012103363A Pending JP2013231244A (ja) 2012-04-27 2012-04-27 炭素繊維の製造装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013231244A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20160137526A (ko) 2014-03-31 2016-11-30 고쿠리츠다이가쿠호우진 도쿄다이가쿠 탄소 섬유 제조 장치 및 탄소 섬유 제조 방법
JP6151844B1 (ja) * 2016-12-26 2017-06-21 弘治 大石橋 マイクロ波加熱装置
JP2018115395A (ja) * 2017-01-16 2018-07-26 永虹先進材料股▲ふん▼有限公司 炭化繊維製造方法
WO2019142578A1 (ja) * 2018-01-18 2019-07-25 マイクロ波化学株式会社 マイクロ波処理装置、および炭素繊維の製造方法
CN110073041A (zh) * 2016-12-19 2019-07-30 株式会社Lg化学 利用微波制造碳纤维的装置
CN110878434A (zh) * 2018-09-06 2020-03-13 永虹先进材料股份有限公司 高温碳化炉
CN111869321A (zh) * 2018-01-18 2020-10-30 微波化学有限公司 微波处理装置以及碳纤维的制造方法

Cited By (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20160137526A (ko) 2014-03-31 2016-11-30 고쿠리츠다이가쿠호우진 도쿄다이가쿠 탄소 섬유 제조 장치 및 탄소 섬유 제조 방법
US10260173B2 (en) 2014-03-31 2019-04-16 Teijin Limited Carbon fiber manufacturing device and carbon fiber manufacturing method
CN110073041A (zh) * 2016-12-19 2019-07-30 株式会社Lg化学 利用微波制造碳纤维的装置
JP2020513486A (ja) * 2016-12-19 2020-05-14 エルジー・ケム・リミテッド マイクロウェーブを用いた炭素繊維製造装置
JP6151844B1 (ja) * 2016-12-26 2017-06-21 弘治 大石橋 マイクロ波加熱装置
WO2018123117A1 (ja) * 2016-12-26 2018-07-05 弘治 大石橋 マイクロ波加熱装置
JP2018106893A (ja) * 2016-12-26 2018-07-05 弘治 大石橋 マイクロ波加熱装置
US10349471B2 (en) 2016-12-26 2019-07-09 Hiroji Oishibashi Microwave heating apparatus
JP2018115395A (ja) * 2017-01-16 2018-07-26 永虹先進材料股▲ふん▼有限公司 炭化繊維製造方法
WO2019142578A1 (ja) * 2018-01-18 2019-07-25 マイクロ波化学株式会社 マイクロ波処理装置、および炭素繊維の製造方法
TWI704261B (zh) * 2018-01-18 2020-09-11 日商微波化學有限公司 微波處理裝置以及碳纖維的製造方法
CN111869321A (zh) * 2018-01-18 2020-10-30 微波化学有限公司 微波处理装置以及碳纤维的制造方法
EP3745817A4 (en) * 2018-01-18 2021-12-15 Microwave Chemical Co., Ltd. MICROWAVE TREATMENT DEVICE AND CARBON FIBER PRODUCTION PROCESS
CN111869321B (zh) * 2018-01-18 2023-02-17 微波化学有限公司 微波处理装置以及碳纤维的制造方法
TWI830937B (zh) * 2018-01-18 2024-02-01 日商微波化學有限公司 微波處理裝置以及碳纖維的製造方法
CN110878434A (zh) * 2018-09-06 2020-03-13 永虹先进材料股份有限公司 高温碳化炉

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2013231244A (ja) 炭素繊維の製造装置
CN1302843C (zh) 等离子体辅助渗碳
US7638727B2 (en) Plasma-assisted heat treatment
TWI480443B (zh) 聚丙烯腈前驅物紗線之安定化
WO2015152019A1 (ja) 炭素繊維製造装置及び炭素繊維製造方法
EP3745817B1 (en) Microwave processing device and carbon fiber production method
JP2014067575A (ja) マイクロ波を応用した加熱装置
JP2013248597A (ja) 低酸素雰囲気装置
US7432470B2 (en) Surface cleaning and sterilization
US7560657B2 (en) Plasma-assisted processing in a manufacturing line
JP2024023984A (ja) マイクロ波処理装置、および炭素繊維の製造方法
TWI830937B (zh) 微波處理裝置以及碳纖維的製造方法
WO2018123249A1 (ja) マイクロ波加熱処理装置及び炭素繊維の製造装置と製造方法
JP2007303805A (ja) 平板表示素子製造用熱処理炉、これを含む平板表示素子製造装置、その製造方法、およびこれを利用した平板表示素子
JP6869052B2 (ja) マイクロ波加熱処理装置
RU2326512C2 (ru) Способ формирования плазмы (варианты)
TWI334319B (en) Plasma catalyst