以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るプリンタPは、図1に示すように、給紙部1と、給紙部1から供給された用紙Sの表面に対して熱転写プリント処理を施す印刷部2と、排出口31を有する排出部3と、用紙Sを給紙部1と排出部3との間に形成される用紙搬送路L(搬送パス)に沿って搬送する用紙搬送機構4と、用紙搬送路L上において印刷部2よりも排出口31側に配置され且つ用紙Sを用紙幅方向Wに切断可能な横切断部5とを備えたものである。なお、このプリンタPは、少なくとも給紙部1、印刷部2、用紙搬送機構4及び横切断部5を共通の筐体内に設け、排出部3を構成する排出口31や排出トレイ32を筐体外へ露出可能に構成している。
また、本実施形態では、プリンタPとして、熱転写性のインクをリボン(ベースフィルム)に貼付(積層)したインクリボンRを、用紙Sに重ねた状態で、相互に圧接可能な状態に対向配置したサーマルヘッド21とプラテン22との間を通過させることによって、インクリボンRのインクを用紙Sに熱転写して、所望の画像などをプリントすることが可能なサーマルプリンタを適用している。
本実施形態で適用するインクリボンRは、長尺なベースフィルムに例えばイエロー・マゼンタ・シアンの各色のインクを塗布したものであり、各色のインクは、熱によって昇華する染料を用いて形成されたものである。
給紙部1は、熱転写される面(プリント面)を内側に向けてロール状に巻回した用紙Sを収容し得るものである。
このような給紙部1と排出部3との間で用紙Sを搬送する用紙搬送機構4は、図1に示すように、例えば給紙部1側から排出部3側に向かって順に配置された給紙側送りローラ41と第1ピンチローラ42との組、フィードローラ43と第2ピンチローラ44との組、排出側送りローラ45を用いて構成したものである。なお、ローラ自体の数、或いはローラとピンチローラとの組数や配置箇所は仕様等に応じて適宜設定することができる。
印刷部2は、図1及び図2に示すように、サーマルヘッド21と、このサーマルヘッド21と対向する位置に配置され且つサーマルヘッド21との間で用紙Sを挟み用紙搬送機構4の機能の一部を担うプラテン22と、インクリボンRをサーマルヘッド21とプラテン22との間に搬送するインクリボン搬送機構23と、サーマルヘッド21とプラテン22との間を通過して相互に密着した状態にある用紙SとインクリボンRとを剥離する剥離部24とを備えたものである。
サーマルヘッド21は、プラテン22に直接圧接し得る部分に発熱体を備えたものであり、制御部によって、プラテン22に圧接し得るヘッドダウン位置と、プラテン22から離間して発熱体がインクリボンRに接触し得ないヘッドアップ位置との間で移動可能に制御されている。ヘッドダウン位置に位置付けたサーマルヘッド21の発熱体がプラテン22に接触する位置が、インクリボンRを用紙Sに熱転写する熱転写位置になる。また、本実施形態では、プラテン22として、フィードローラ43の回転動作に同期して正逆方向に回転可能なプラテンローラを適用している。
また、インクリボン搬送機構23は、インクリボンRをロール状に巻回した状態で保持可能な供給側リボンコア231と、供給側リボンコア231に巻回しているインクリボンRを用紙搬送路L(搬送パス)に向かって繰り出す繰出用ガイドローラ232と、熱転写処理時の用紙Sの搬送方向A(以下、「熱転写処理時搬送方向A」と称する)において上述の熱転写位置(サーマルヘッド21とプラテンローラ22との圧接位置)よりも下流側に配置され、熱転写処理に供されたインクリボンRを巻回した状態で保持可能な巻取側リボンコア233と、インクリボンRを巻取側リボンコア233に向かって搬送する巻取用ガイドローラ234とを備えたものである。
このようなインクリボン搬送機構23により、熱転写プリント処理時において、インクリボンRは、供給側リボンコア231から巻き出されて繰出用ガイドローラ232によって用紙搬送路Lに向かって案内され、用紙Sに密着した状態で熱転写位置を通過した後に剥離部24を通過することによって用紙Sから剥離され、そのまま巻取用ガイドローラ234によって巻取側リボンコア233に向かって搬送され、巻取側リボンコア233に巻き取られる。なお、本実施形態では、熱転写処理時搬送方向Aを、給紙部1から排出部3に向かう搬送方向B(この搬送方向を「排出搬送方向B」と称す)とは逆の方向に設定しているが、熱転写処理時搬送方向を排出搬送方向Bと同じ方向に設定したプリンタPであってもよい。
剥離部24は、熱転写処理時搬送方向Aにおいてサーマルヘッド21より下流側に設けられ、サーマルヘッド21とプラテンローラ22との間を通過したインクリボンRを用紙Sから剥離する剥離開始位置を規定するものである。本実施形態では、相互に重なった用紙S及びインクリボンRを熱転写処理時搬送方向Aにおいて熱転写位置よりも下流側の位置でインクリボン側からプラテンローラ22に向かって押し付ける剥離用ローラを用いて剥離部24を構成している。ここで、剥離部24は、印刷部2の一部を構成するものであるが、インクリボンRの搬送経路を規定する機能に着目すれば、インクリボン搬送機構23の一部を構成しているものと捉えることもできる。
排出部3は、図1に示すように、排出口31と、排出口31から排出された用紙Sを受け取って収納する排出トレイ32とを備え、印刷部2により所望のプリント処理が施された用紙Sを所定サイズに切断したカット紙(用紙片)として排出口31から筐体外に排出し、排出トレイ32上に積み重ねた状態で載置し得るものである。
横切断部5は、図1に示すように、用紙Sの背面(非プリント面)側に配置した固定刃51と、用紙Sのプリント面側に配置され且つ固定刃51との間で用紙Sを厚み方向に挟みながら用紙幅方向Wに移動可能な可動刃52とを備え、制御部の制御に従って可動刃52を固定刃51に摺動させて用紙Sの幅方向Wに走査させることで、用紙Sを用紙幅方向Wに切断するものである。
固定刃51は、用紙幅方向Wと一致する長手方向のサイズを用紙幅よりも大きく設定したものである。本実施形態では、図2乃至図4(図2は後述する横切断部ユニット5Uの平面図であり、図3は図2の矢印D1方向矢視図であり、図4は図3のa−a線断面模式図である)に示すように、長尺板状をなし、上端部にのみ刃を形成した固定刃51を適用している。この固定刃51はビス等の固定手段によってフレーム体53に固定されている。また、印刷部2から横切断部5に向かって搬送される用紙Sを固定刃51にガイドする下側ガイド片54を、固定刃51を固定するビスを利用してフレーム体53に固定している(図2及び図4参照)。フレーム体53には、下側ガイド片54が挿通可能な開口窓53aを形成し、この開口窓53aには、下側ガイド片54に高さ方向に対向する位置に設けた上側ガイド片55も挿通している(図4参照)。これら下側ガイド片54及び上側ガイド片55は、用紙Sを横切断処理可能な位置にガイドする機能を発揮する。
可動刃52は、図2乃至図4に示すように、外周縁部に刃を形成した円盤状の回転刃であり、ホルダ56に回転可能に保持されている。本実施形態では、このホルダ56をスライダ57に取り付け、スライダ57を固定刃51の長手方向にスライド移動させることによって、可動刃52を用紙Sの幅方向Wに走査可能に構成している。また、スライダ57には、後述する初期位置検出部8によって検出可能な初期位置検出対象部571を取り付けている。この初期位置検出対象部571は、上側ガイド片55よりも上方に位置付けられ、下側ガイド片54及び上側ガイド片55と同様にフレーム体53の開口窓53aを通じて、フレーム体53の外部(印刷部2側)に露出している。
本実施形態のプリンタPは、図2乃至図5(図5は図2の矢印D2方向矢視図である)に示すように、フレーム体53の所定箇所に取り付けた複数のタイミングプーリ58を介して所定の経路で周回するタイミングベルト59を備えている。図2及び図3において2点鎖線で示すタイミングベルト59の周回経路のうち、固定刃51の長手方向に平行な直線部分に沿って可動刃52が用紙幅方向Wに移動するように構成している。具体的には、図4に示すように、スライダ57と初期位置検出対象部571との間にタイミングベルト59を挟み込んだ状態で固定し、タイミングベルト59の周回動作に伴ってスライダ57が固定刃51の長手方向にスライド移動すると、このスライダ57にホルダ56を介して取り付けている可動刃52が用紙幅方向Wに移動するように構成している。
このように、本実施形態に係るプリンタPは、固定刃51及び可動刃52を共通のフレーム体53に付帯させることによって、横切断部ユニット5Uを構成し、この横切断部ユニット5UをプリンタP内の所定位置に組み付けることで、横切断部5を実装することができる。
そして、本実施形態のプリンタPは、図2、図3及び図5に示すように、可動刃52を駆動させる可動刃駆動モータ6と、可動刃駆動モータ6の回転数または回転角を検出可能なモータ回転検出部7とを備え、モータ回転検出部7で検出した可動刃駆動モータ6の回転に基づいて制御部が、可動刃52の用紙幅方向Wの移動距離を制御するように構成している。
可動刃駆動モータ6は、図6(同図は図5の一部を省略して示す図である)に示すように、横切断部ユニット5Uのフレーム体53に、モータ用ブラケット6bを介して取り付けている。本実施形態では、可動刃駆動モータ6の回転軸61(出力軸)に一体回転可能に設けた出力ギア62が、所定位置に設けたタイミングプーリ58と一体可能可能なプーリ側ギア581と噛み合うように構成し、可動刃駆動モータ6の回転駆動力が出力ギア62及びプーリ側ギア581を経由してタイミングプーリ58に伝達し、可動刃駆動モータ6の正方向の回転角や逆方向の回転角や回転数に応じてタイミングベルト59の周回方向や周回経路上での移動距離を調整可能に構成している。
モータ回転検出部(エンコーダ)7は、図6及び図7(図7は図6の矢印D3方向矢視図である)に示すように、可動刃駆動モータ6に同期して回転可能な回転体71と、回転体71の周方向に等ピッチで形成した検出基準部711を検出可能なセンサ本体72とを備えたものを適用している。
回転体71は、円盤状をなし、検出基準部711である孔71aを周方向に等ピッチで複数形成した回転体本体71bと、この回転体本体71bの中心に一端部を固定した回転体軸71cとを備えたものである。本実施形態では、回転体本体71bの径方向に延びる矩形状の長孔71aを周方向に20度ずつのピッチで計18箇所に形成している。本実施形態のプリンタPは、このような回転体本体71bに一端部を固定した回転体軸71cの他端部を、可動刃駆動モータ6の回転軸61(出力軸)に直接固定することによって、回転体71が可動刃駆動モータ6と一体に回転するように構成している。
センサ本体72は、例えば光センサを用いて構成したものである。本実施形態では、LED72aとフォトダイオード72bとを対向配置して、LED72aとフォトダイオード72bとの間を通過する回転体71の検出基準部711(孔71a)の存在を検出可能なフォトインタラプタを用いてセンサ本体72を構成している。なお、図2、図3、図5乃至図7では、センサ本体72(LED72a、フォトダイオード72b)を1点鎖線で模式的に示している。
このような回転体71及びセンサ本体72を用いてモータ回転検出部7を構成した本実施形態であれば、センサ本体72によって、検出基準部711の存在を何回検出したかという情報(カウント数)に基づいて可動刃駆動モータ6の回転角をセンシング可能なエンコーダを簡単な構造で実現できる。なお、図3では、モータ回転検出部7のうち、回転体71の外縁形状のみを模式的に示すとともに、センサ本体72は省略している。
そして、本実施形態のプリンタPは、モータ回転検出部7で検出した可動刃駆動モータ6の回転角(具体的には検出基準部711のカウント数)に基づいて、可動刃52の用紙幅方向Wの移動距離を制御部で制御することにより、横切断部5による用紙幅方向Wへの切断距離を任意の値に調整できるように構成している。
また、本実施形態のプリンタPは、図2に示すように、初期位置(ホームポジション)に位置付けた可動刃52を検出可能な初期位置検出部8を備えている。初期位置検出部8は、モータ回転検出部7のセンサ本体72と同種のセンサで実現することができる。なお、図2では、初期位置検出部8のうち、センサ本体を取り付けためのブラケットのみを示している。本実施形態では、用紙Sの側縁部(サイド縁部)よりもさらに外側に寄った位置、すなわち用紙搬送路Lを搬送中の用紙Sに可動刃52が干渉し得ない位置を可動刃52の初期位置に設定しており、この初期位置に位置付けた可動刃52(具体的には上述の初期位置検出対象部571)を検出可能な位置に初期位置検出部8を配置している。この初期位置検出部8を、用紙Sの両側縁部の外側方に配置することもできるが、本実施形態のプリンタPは、用紙Sの何れか一方の側縁部Saの外側方にのみ配置している。このような初期位置検出部8の配置構成は、プリンタP内の部品点数及びコスト面で有利である。本実施形態のプリンタPは、初期位置検出部8を横切断部ユニット5Uのフレーム体53に取り付けている。つまり、本実施形態では、縦切断部5を含む横切断部ユニット5U、可動刃駆動モータ6、モータ回転検出部7及び初期位置検出部8をユニット化している。
そして、本実施形態のプリンタPは、モータ回転検出部7で検出した可動刃駆動モータ6の回転角と、その回転角における可動刃52の位置と初期位置との距離を関連付けた情報(移動距離情報)を所定の記憶領域(記憶部)に記憶させておき、制御部が移動距離情報に基づいて可動刃52の移動距離を制御するように構成している。なお、本実施形態に係るプリンタPでは、給紙部1、印刷部2、排出部3及び用紙搬送機構4の作動も制御部によって制御している。
次に、本実施形態に係るサーマルプリンタPの動作及び作用について図1等を参照しながら説明する。本実施形態では、用紙Sとして、図8に示すように、用紙幅方向Wの中途位置(例えば用紙幅方向中央)に用紙搬送方向Tに延伸する縦切断ガイド部Sgを形成したものを適用している。縦切断ガイド部Sgとしては、点線状の孔(ミシン目)や他の部分よりも厚みを薄く設定した薄肉部を挙げることができる。
本実施形態に係るプリンタPは、まず、ユーザの操作などによって入力されたプリントパターンデータに基づいて、制御部によって用紙Sのプリント面におけるプリントサイズを特定し、この特定したプリントサイズに応じて、給紙部1でロール状に巻回されている用紙Sを給紙側送りローラ41と第1ピンチローラ42との間、フィードローラ43と第2ピンチローラ44との間を順次通過させて印刷部2まで搬送する。本実施形態では、上述したように熱転写処理時の用紙Sの搬送方向(熱転写処理時搬送方向A)が、給紙部1から排出部3に向かう排出搬送方向Bとは逆方向であるため、熱転写プリント処理を行う前の時点で、特定したプリントサイズに応じて用紙Sを熱転写位置よりも排出部3側に搬送しておく必要がある。なお、この搬送処理はサーマルヘッド21をヘッドアップ位置に位置付けた状態で行う。また、図8で示す用紙搬送方向Tは本実施形態における排出搬送方向Bと同一方向である。
次いで、本実施形態のプリンタPは、サーマルヘッド21をヘッドアップ位置からヘッドダウン位置に移動させて、サーマルヘッド21とプラテンローラ22との間に、用紙S及びインクリボンRを厚み方向に挟み込む。この状態で、用紙搬送機構4によって用紙S及びインクリボンRを熱転写処理時搬送方向Aに搬送することにより、本実施形態のプリンタPは、サーマルヘッド21とプラテンローラ22との圧接位置である熱転写位置において、発熱体からの熱でイエロー・マゼンタ・シアンの各色インクを昇華させることで用紙Sのプリント面にカラー画像を印刷する(形成する)ことができる。この際、サーマルヘッド21の発熱体の温度を調整することにより印刷濃度のレベルを変化させた階調印刷を行うことができ、用紙Sのプリント面に高品質なカラー画像を印刷することが可能である。発熱体の温度調節や作動は制御部によって制御される。
そして、本実施形態のサーマルプリンタPは、熱転写プリント処理後において熱転写位置を通過したインクリボンR及び用紙Sを厚み方向に積層した状態で熱転写処理時搬送方向Aに沿って剥離部24まで搬送し、剥離部24に到達したインクリボンRを剥離部24の押圧作用によって用紙Sから剥離する処理を行う。
本実施形態のプリンタP1は、剥離部24を通過して用紙Sから剥離したインクリボンRをインクリボン搬送機構23の巻取用ガイドローラ234で巻取側リボンコア233に向かって搬送して、巻取側リボンコア233に巻き取る一方で、剥離部24を通過した用紙Sを排出部3側へ搬送して、横切断部5によって横切断処理を行う。ここで、本実施形態のプリンタPでは、制御部により、横切断処理を開始する前の時点で可動刃52を初期位置または初期位置近傍に位置付けておくことによって、可動刃52が用紙Sのスムーズな搬送処理を阻害しないように構成している。そして、本実施形態のプリンタPは、用紙Sを排出搬送方向Bに搬送しながら下側ガイド片54と上側ガイド片55との間を通過させ、固定刃51が臨む空間にまで到達させる。なお、図4に示すように、本実施形態のプリンタPは、下側ガイド片54の上向き面を固定刃51の上縁よりも僅かに上方に設定するとともに、固定刃51の上方を通過した用紙Sを上方へ持ち上げ得るように排出口31側へ傾斜させた形状の用紙リフト片50を、固定刃51よりも排出口31側に寄った位置に設けている。
そして、本実施形態のプリンタPは、プリントパターンデータに含まれているプリントサイズに応じた横切断ラインCLが固定刃51の上方に達した時点で用紙搬送機構4による用紙搬送処理を一時的に停止し、横切断部5による横切断処理を開始する。
ここで、図9を参照しながら、横切断処理について詳述する。横切断処理を行う場合、本実施形態のプリンタPは、先ず、可動刃駆動モータ6がOFF状態であるか否かを適宜の手段により自動で確認する(可動刃駆動モータOFF状態確認ステップSt1)。可動刃駆動モータ6がON状態である場合(St1,No)、例えば図示しないディスプレイにエラー表示させたり、エラー音を発する(警告ステップSt2)ことで、ユーザに可動刃駆動モータ6がON状態であることを知らせるとともに、ユーザに可動刃駆動モータ6をOFF状態にすることを促す。
本実施形態のプリンタPは、可動刃駆動モータOFF状態確認ステップSt1で可動刃駆動モータ6がOFF状態であることを確認すると(St1,Yes)、次に、可動刃52が初期位置(ホームポジション)にあることを初期位置検出部8による検出情報に基づいて確認する(可動刃初期位置確認ステップSt3)。そして、本実施形態のプリンタPでは、可動刃52が初期位置にない場合(St3,No)、可動刃52を初期位置に移動させ(可動刃初期位置移動ステップSt4)、可動刃52が初期位置にある場合(St3,Yes)、可動刃52の初期位置にあることを決定する(可動刃初期位置決定ステップSt5)。可動刃52を初期位置に移動させる処理(可動刃初期位置移動ステップSt4)は、可動刃駆動モータ6をOFF状態からON状態に切り替えて所定方向の回転駆動力を出力することによって行う。可動刃駆動モータ6の回転駆動力によって可動刃52が移動するメカニズムの詳細は後述する。
引き続いて、本実施形態のプリンタPは、所定の記憶領域(記憶部)に記憶させている上述した移動距離情報に基づき、プリントパターンデータに含まれている用紙幅方向Wのプリントサイズに応じた可動刃52の移動距離を制御部によって算出し(可動刃移動距離算出ステップSt6)、算出した移動距離分だけ可動刃52を用紙幅方向W(走査方向)に移動させて用紙Sを幅方向Wに切断し(用紙幅方向切断ステップSt7)、算出した移動距離分だけ可動刃52を用紙幅方向Wに移動させた時点(位置)で可動刃52を停止する(可動刃停止ステップSt8)。これら可動刃移動距離算出ステップSt6、用紙幅方向切断ステップSt7及び可動刃停止ステップSt8の流れを以下に詳述する。
本実施形態では、用紙幅方向切断ステップSt7を開始する前に、可動刃移動距離算出ステップS5で算出した移動距離だけ可動刃52を移動させるために必要な可動刃駆動モータ6の回転角を、モータ回転検出部7のセンサ本体72によって検出基準部711の存在を検出すべき数(以下、「目標検出数」と称する)に関連付けて特定している。なお、横切断処理時における可動刃52の移動距離の始点は可動刃52の初期位置である。したがって、本実施形態の横切断処理時における可動刃52の移動距離を算出する処理は、可動刃52の初期位置からの移動距離を算出する処理と同じであり、所定の記憶領域(メモリ等の記憶部)には、可動刃52の初期位置からの移動距離分に応じた可動刃駆動モータ6の回転角と、その回転角ごとの目標検出数とが相互に関連付けて(例えばテーブル化されて)記憶されている。
そして、本実施形態のプリンタPは、可動刃移動距離算出ステップS5で可動刃52の移動距離を算出した後に、可動刃駆動モータ6をOFF状態からON状態に切り替えて正転させることによって用紙幅方向切断ステップSt7を開始する。この際、10ミリ秒間待機する。これは、モータ回転検出部7による検出開始時にチャタリングが生じるに起因する誤作動を防ぐためである。
用紙幅方向切断ステップSt7では、可動刃駆動モータ6をOFF状態からON状態に切り替えて正転させることによって、可動刃駆動モータ6の回転軸61(出力軸)に一体回転可能に設けた出力ギア62が、所定のタイミングプーリ58と一体回転可能なプーリ側ギア581に噛み合った状態で正転し、可動刃駆動モータ6の回転駆動力がプーリ側ギア581を介して所定のタイミングプーリ58に伝達され、このタイミングプーリ58が回転することによって、タイミングベルト59が周回経路上で正方向に周回しながら移動する。すると、このタイミングベルト59を初期位置検出対象部571との間で相対移動不能に挟持しているスライダ57がタイミングベルト59の移動距離分だけ移動する。その結果、このスライダ57にホルダ56を介して取り付けている可動刃52が、回転しながら用紙Sの幅方向Wであって且つ初期位置から離間する方向に移動する。そして、可動刃52の一部が用紙S(具体的には用紙Sの一方の側縁部Sa)に接触した時点から可動刃停止ステップSt8が実行されるまでの間、固定刃51と可動刃52とによって用紙Sを幅方向Wに切断することができる。
用紙幅方向切断ステップSt7の開始後、本実施形態のプリンタPは、モータ回転検出部7のセンサ本体72により検出基準部711の存在を検出する度にカウント数を1つずつ増やし、そのカウント数(以下、「実検出数」と称する)が、上述の目標検出数と一致するか否かを比較する。そして、実検出数が目標検出数と一致するまで可動刃駆動モータ6を正転させて、実検出数が目標検出数に一致した時点で可動刃駆動モータ6の正転動作を停止する。その結果、可動刃52が停止する(可動刃停止ステップSt8)。この可動刃52の停止位置は、実検出数が目標検出数に一致するまで正転させた可動刃駆動モータ6の回転角に応じた可動刃52の移動距離の終点であり、プリントパターンデータに含まれているプリントサイズのうち用紙幅の終端に一致する。なお、プリントパターンデータに含まれているプリントサイズのうち用紙幅の始点は、用紙Sの一方の側縁部Saに一致する。つまり、切断すべき横切断ラインCLの始点CL1は、用紙Sの一方の側縁部Saに一致する。
本実施形態では、用紙Sとして、図8に示すように、用紙幅方向Wの中途位置に用紙搬送方向Tに沿って縦切断ガイド部Sgを形成したものを適用しているため、ユーザが選択可能な用紙幅方向Wのプリントサイズは、用紙Sの何れか一方の側縁部Sa,Sbから縦切断ガイド部Sgまでの距離に相当する幅寸法(縦切断ガイド部Sgを用紙幅方向中央に形成している本実施形態における用紙Sであれば用紙幅方向W全域の半分に相当する寸法)のみである。一方で、用紙搬送方向Tのプリントサイズを複数パターンからユーザが適宜に選択可能であれば、図10に示すように、縦切断ガイド部Sgを挟んで用紙幅方向Wに隣り合うプリント画面のうち一方のプリント画面の用紙搬送方向T上流側の縁部のみを縦切断ガイド部Sgまで横切断する処理(用紙幅中途横切断処理)が要求される場合と、図12に示すように、縦切断ガイド部Sgを挟んで用紙幅方向Wに隣り合うプリント画面の用紙搬送方向T上流側の縁部を揃えて横切断する処理(用紙幅全域横切断処理)が要求される場合がある。図10及び図12では、横切断するラインCL(以下「横切断ラインCL」と称する)を点線で示すとともに、各横切断ラインCLの始点CL1,終点CL2をそれぞれ塗りつぶした円で誇張して示している。
そして、本実施形態のプリンタPは、制御部によって可動刃52の停止位置が横切断ラインCLの終点CL2と一致するように可動刃52の移動距離を制御しているため、図10に示すように、用紙幅中途位置横切断処理が要求された場合には、横切断ラインCLの終点CL2は、図10及び図11(図11は、用紙幅中途位置横切断処理が要求された場合における可動刃停止ステップSt8実行時点の用紙Sを模式的に示す図である)に示すように、用紙Sの幅方向中央であり、縦切断ガイド部Sgに一致し、可動刃停止ステップSt8実行時点における可動刃52の位置は、横切断ラインCLの終点CL2に一致する。また、用紙幅全域横切断処理が要求された場合には、横切断ラインCLの終点CL2は、図12及び図13(図13は、用紙幅全域横切断処理が要求された場合における可動刃停止ステップSt8実行時点の用紙Sを模式的に示す図である)に示すように、切断開始点となる用紙Sの一方の側縁部Saとは反対側の側縁部(他方の側縁部Sb)と一致し、可動刃停止ステップSt8時点における可動刃52の位置は、横切断ラインCLの終点CL2に一致する。すなわち、用紙幅全域横切断処理を行う場合、可動刃52は横切断ラインCLに沿って用紙幅方向Wに移動し、途中で縦切断ガイド部Sgに一致する点CL3を通過して用紙Sの他方の側縁部Sbにまで到達する。なお、用紙幅全域横切断処理が要求された場合の可動刃停止ステップSt8時点における可動刃52の位置が、用紙Sの他方の側縁部Sbよりもさらに外側方に寄った位置(用紙Sから外れた位置)になるように、可動刃52の移動距離を設定しておくことも可能である。図10以降の各図では横切断ラインCLのうち切断していない箇所を破線で示し、切断した箇所を実線で示している。
可動刃停止ステップSt8に次いで、本実施形態のプリンタPは、可動刃駆動モータ6を逆方向に駆動(逆転)させて、可動刃52を初期位置まで移動させる(可動刃初期位置復帰ステップSt9)。可動刃52を初期位置まで移動させる処理(可動刃初期位置復帰ステップSt9)は、ON状態にある可動刃駆動モータ6を逆転させることによって、可動刃駆動モータ6の回転軸61(出力軸)に一体回転可能に設けた出力ギア62が、所定のタイミングプーリ58と一体回転可能なプーリ側ギア581に噛み合った状態で逆転し、可動刃駆動モータ6の回転駆動力がプーリ側ギア581を介して所定のタイミングプーリ58に伝達され、このタイミングプーリ58が用紙幅方向切断ステップSt7時とは逆方向に回転することによって、タイミングベルト59が周回経路上で逆方向に周回しながら移動する。すると、このタイミングベルト59を初期位置検出対象部571との間で相対移動不能に挟持しているスライダ57がタイミングベルト59の移動距離分だけ移動し、スライダ57にホルダ56を介して取り付けている可動刃52が、用紙Sの幅方向Wであって且つ初期位置に近付く方向に移動する。可動刃初期位置復帰ステップSt9において可動刃52を初期位置に向かって移動させる距離は、用紙幅方向切断ステップSt7において可動刃52を初期位置から離間する方向に移動させる距離と同じであればよく、可動刃初期位置復帰ステップSt9における可動刃駆動モータ6の逆方向への回転角または回転数を、用紙幅方向切断ステップSt7における可動刃駆動モータ6の正方向への回転角または回転数と一致させることで、可動刃52を初期位置に適切に復帰させることができる。
可動刃52が初期位置に復帰したか否かは初期位置検出部8の検出情報によって確認することができる。なお、用紙幅方向W全域横切断処理を行った場合の可動刃52の停止位置を用紙Sの他方の側縁部Sbよりもさらに外側方に寄った位置(用紙Sから外れた位置)に設定している場合には、可動刃初期位置復帰ステップSt9を省いて次の処理ステップに進んでもよい。これは、可動刃52が用紙Sから外れた位置にあれば、可動刃52が用紙搬送方向Tに搬送される用紙Sに干渉しないからである。
最後に、本実施形態のサーマルプリンタPは、横切断部5による横切断処理を終了すると、用紙搬送機構4による用紙搬送処理を再開し、横切断部5の横切断処理によって所定プリントサイズに切断した用紙片を排出口31から排出し、排出トレイ32上に収容する。そして、ユーザは排出された用紙片に形成されている縦切断ガイド部Sgに沿って用紙片を縦方向(用紙搬送方向)に手で切断することによって、所望のプリントサイズでプリント処理された用紙片を得ることができる。
このように、本実施形態に係るプリンタPは、横切断部5の動刃52を駆動させる可動刃駆動モータ6の回転数または回転角をモータ回転検出部7で検出し、その検出情報に基づいて可動刃52の用紙幅方向Wの移動距離を制御部で制御するように構成しているため、可動刃52の移動距離に応じて用紙幅方向Wの切断寸法を調節することが可能であり、用紙幅全域に亘って横切断したり、用紙幅方向Wの中途位置までを横切断することができ、例えばユーザ自身が鋏等の切断具で用紙Sを幅方向Wに切断する作業が不要であり、使い勝手に優れている。さらに、本実施形態のプリンタPでは、可動刃駆動モータ6の回転をモータ回転検出部7で検出することにより、可動刃52の用紙幅方向Wへの移動を高精度で制御することができ、所望の切断終了位置が用紙幅方向Wの中途位置であってもその切断終了位置で可動刃52を適切に停止させることが可能であり、用紙幅方向Wのサイズに関するユーザの多様なニーズにも好適に対応することができる。
また、本実施形態のプリンタPは、初期位置に位置付けた可動刃52を検出可能な初期位置検出部8を備えているため、横切断部5による横切断処理前において初期位置検出部8で可動刃52が初期位置にあることを検出することで、横切断処理時には、この初期位置を始点として制御部により可動刃52の用紙幅方向Wの移動距離を制御することができる。また、初期位置検出部8を設けることで可動刃駆動モータ6の意図しない暴走を防止することができる。
さらに、本実施形態のプリンタPは、モータ回転検出部7として、可動刃駆動モータ6に同期して回転可能な回転体71と、回転体71の周方向に等ピッチで形成した検出基準部711を検出可能なセンサ本体72とを備えたものを適用しているため、センサ本体72により検出基準部711の検出数によって可動刃駆動モータ6の回転角又は回転数を把握することができる。そして、本実施形態のプリンタPは、モータ回転検出部7の回転体71を可動刃駆動モータ6の回転軸61に直接取り付けているため、可動刃駆動モータ6の回転軸61と一体に回転する回転体71の回転をセンサ本体72によって検出することで可動刃駆動モータ6の回転角又は回転数をより一層高い精度で把握することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、用紙の両側縁部のうち一方の側縁部よりも外側方に寄った位置を可動刃の第1初期位置とし、他方の側縁部よりも外側方向に寄った位置を可動刃の第2初期位置とし、用紙の何れの側縁からも用紙幅方向中途位置まで用紙幅方向に切断できるように構成することも可能である。この場合、第1初期位置に位置付けた可動刃を検出可能な第1初期位置検出部と、第2初期位置に位置付けた可動刃を検出可能な第2初期位置検出部とを備えたプリンタとし、各初期位置を始点として横切断処理時の可動刃の移動距離を制御部によって制御可能に構成すればよい。
また、上述した実施形態では、用紙として、縦切断ガイド部を用紙幅方向中央に形成したものを例示したが、縦切断ガイド部を用紙幅方向中央以外の位置に形成した用紙であってもよい。この場合、縦切断ガイド部の形成位置をユーザによる入力操作やプリンタに設けた適宜の縦切断ガイド部形成位置自動検出部によって特定し、ユーザが選択したプリントサイズが用紙の一方の側縁部から縦切断ガイド部形成位置までの距離に相当する幅寸法である場合には、可動刃停止ステップSt8時点における可動刃の位置が、用紙の幅方向中途位置であって且つ縦切断ガイド部に一致する位置となるように制御部で可動刃の移動を制御可能に構成すればよい。
また、用紙の幅方向において相互に異なる複数箇所(例えば用紙を幅方向に3分割し得る位置)に用紙搬送方向に延びる縦切断ガイド部を形成した用紙に対しても、横切断部によって、用紙の両側縁部のうち可動刃の初期位置に近い方の側縁部から、この側縁部(初期位置寄り側縁部)に一番近い縦切断ガイド部までの領域を幅方向に切断したり、初期位置寄り側縁部にn番目(nは2以上の整数)に近い縦切断ガイド部までの領域を幅方向に切断するように、制御部で可動刃の移動距離を制御可能に構成することができる。
用紙を用紙搬送方向に切断して用紙幅方向に分割可能な縦切断部を備えたプリンタであっても構わない。この場合、縦切断部による切断位置は常に一定(固定)であってもよいし、適宜変更可能としてもよい。このようなプリンタであれば、縦切断ガイド部を形成していない用紙に対しても、縦切断部と横切断部とによってユーザのニーズに応じたプリントサイズに切断することができる。具体的には、横切断ラインの終点が、縦切断部によって切断される縦切断ラインに一致するように、横切断処理時における可動刃の移動距離を設定しておけばよい。
また、給紙部から供給される用紙として予め所定サイズに切断されたカット紙を適用することも可能である。この場合にも、可動部の移動距離を調節することによって所望の用紙幅寸法のプリントサイズに切断することができ、横切断処理が不要であれば可動部を用紙幅方向に移動させない(可動刃駆動モータをOFF状態のままにしておく)ようにすればよい。
また、モータ回転検出部や初期位置検出部を構成するセンサとして、ポジショニングセンサや磁気式近接センサなどを適用することができる。もちろん、センサの種類や仕様に応じて検出対象部(上述の実施形態における回転体や検出基準部、或いは初期位置検出対象部)も素材や形状を適宜変更することができる。
また、上述した実施形態では、横設切断部などのハードウェアを制御する制御部(コントローラ)を備えたプリンタを例示したが、プリンタの外部機器(プリンタに有線または無線で接続した演算機械など)が備えた制御部からの制御指令に基づいて横切断部などのハードウェアの作動を制御する態様であっても構わない。
また、本発明に係るプリンタは、インクを昇華させるタイプの熱転写型プリンタの他、インクを溶融させるタイプのサーマルプリンタや、或いはサーマルプリンタ以外の種々のプリンタ、例えばインクジェットプリンタやレーザプリンタ、或いは同じ印刷対象物に対して繰り返し書き換え可能なリライタブルプリンタ等であってもよい。また、両面印刷可能なプリンタに対しても本発明の技術的特徴である横切断部を適用することができる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。