JP2013199603A - インクジェット捺染用インク組成物 - Google Patents

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徹 齋藤
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誠 古江
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Abstract

【課題】長期安定性、並びに印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性のいずれにも優れたインクジェット捺染用インク組成物を提供する。
【解決手段】乳酸エステル化合物、ウレタン樹脂、顔料、及び水を含むインクジェット捺染用インク組成物であって、前記乳酸エステル化合物の含有量は、該インク組成物の総質量に対して0.5〜5質量%であり、前記ウレタン樹脂の含有量は、該インク組成物の総質量に対して3.5〜15質量%であるインクジェット捺染用インク組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット捺染用インク組成物に関する。
従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されている。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
近年、インクジェット方式の記録方法を利用して、被記録媒体上にインクを吐出することにより、光沢度が高くて耐水性及び耐擦性に優れた画像を、被記録媒体の被記録面に形成するための試みがなされている。
例えば、特許文献1は、26.3重量部のスーパーフレックス460(ポリカーボネート型の水系ウレタン樹脂、固形分38重量%、第一工業製薬社製商品名)と、40重量部の酸化チタンの分散体と、1重量部のサーフィノール465(界面活性剤、エアプロダクツ社製商品名)と、10重量部のエチレングリコールと、10重量部のグリセリンと、12.7重量部のイオン交換水と、からなる捺染インクジェット用インクを開示している(特許文献1の実施例1等)。
例えば、特許文献2は、4重量%のカーボンブラックと、固形分換算で2重量%のスチレン−アクリル共重合体と、3.5重量%の乳酸ブチルと、1.5重量%のサーフィノール465(界面活性剤、エアプロダクツ社製商品名)と、3重量%の1,2−ヘキサンジオールと、7重量%のN−メチル−2−ピロリドンと、79.0重量%の純水と、からなるインク組成物を開示している(特許文献2の実施例1)。
特開2009−30014号公報 特開2007−262272号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2が開示する各インクを、インクジェット方式を利用して被記録媒体の一種である布帛上に印刷することにより得られる印捺物は、インクの長期安定性、並びに印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性の少なくともいずれかにおいて劣るという問題が生じる。
そこで、本発明は、長期安定性、並びに印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性のいずれにも優れたインクジェット捺染用インク組成物を提供する。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、所定量の乳酸エステル化合物、所定量のウレタン樹脂、顔料、及び水を含むインクジェット捺染用インク組成物により、上記課題が全て解決可能となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
乳酸エステル化合物、ウレタン樹脂、顔料、及び水を含むインクジェット捺染用インク組成物であって、前記乳酸エステル化合物の含有量は、該インク組成物の総質量に対して0.5〜5質量%であり、前記ウレタン樹脂の含有量は、該インク組成物の総質量に対して3.5〜14質量%である、インクジェット捺染用インク組成物。
[2]
前記ウレタン樹脂の含有量が、該インク組成物の総質量に対して7〜14質量%である、[1]に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
[3]
前記顔料が白色顔料である、[1]又は[2]に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
[4]
前記乳酸エステル化合物は、乳酸エチル及び乳酸プロピルのうち少なくともいずれかである、[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット捺染用インク組成物。
[5]
該インク組成物の総質量に対して0.5〜5質量%の環状アミド化合物をさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット捺染用インク組成物。
[6]
前記環状アミド化合物が2−ピロリドンである、[5]に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において、「インクジェット捺染」とは、インクジェット方式を利用して被記録媒体の一種である布帛上にインクを記録(印刷)することをいい、インクジェット記録の一種である。「記録物」とは、被記録媒体上にインクが記録されて画像が形成されたものをいう。「印捺物」とは、上記の記録物に含まれるものであり、被記録媒体の一種である布帛上にインクが記録されて画像が形成されたものをいう。「非白色」とは白色以外の有色を意味する。
本明細書において、「長期安定性」とは、インクの粘度が低く、かつ、インクの保存安定性に優れることを意味する。当該保存安定性は、インクを60℃で7日間保存したときに、保存前後における粘度が変化しにくい性質をいう。「耐擦性」とは、画像を擦ったときに、当該画像が布帛から剥がれにくかったり傷がつきにくかったりする性質をいう。「洗濯堅牢性」とは、洗濯による印捺物の変退色の程度が小さい性質をいう。「発色性」とは、布帛上に印刷されたインクの発色効率が高く、インクが十分に呈色する性質をいう。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルのうち少なくともいずれかを意味する。
[インクジェット捺染用インク組成物]
本発明の一実施形態は、インクジェット捺染用インク組成物(以下、単に「インク組成物」又は「インク」ともいう。)に係る。インクジェット捺染用インク組成物は、含有量が0.5〜5質量%の乳酸エステル化合物と、含有量が3.5〜14質量%のウレタン樹脂と、顔料と、水と、を含むものである。
以下、上記インク組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)について詳細に説明する。
〔顔料〕
本実施形態のインク組成物は、顔料を含む。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用可能である。
顔料の中でも、白色インク組成物の場合は、ウレタン樹脂(特にウレタン樹脂エマルジョン)の添加量を多くする必要があるためウレタン樹脂に由来する保存安定性の劣化という問題が生じやすい。そのため、白色インク組成物を構成する白色顔料の場合、特に当該問題を解決する必要性が大きい。
白色インク組成物に含まれる白色顔料としては、以下に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等の白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
白色顔料のカラーインデックス(C.I.)としては、以下に限定されないが、例えば、C.I.Pigment White 1(塩基性炭酸鉛),4(酸化亜鉛),5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物),6(酸化チタン),6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン),7(硫化亜鉛),18(炭酸カルシウム),19(クレー),20(雲母チタン),21(硫酸バリウム),22(天然硫酸バリウム),23(グロスホワイト),24(アルミナホワイト),25(石膏),26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素),27(シリカ),28(無水ケイ酸カルシウム)が挙げられる。
これらの中でも、発色性、隠蔽性、及び分散粒径に優れ、かつ、良好な視認性(明度)が得られるため、酸化チタンが好ましい。
上記酸化チタンの中でも、白色顔料として一般的なルチル型の酸化チタンが好ましい。このルチル型の酸化チタンは、自ら製造したものであってもよく、市販されているものであってもよい。ルチル型の酸化チタン(粉末状)を自ら製造する場合の工業的製造方法として、従来公知の硫酸法及び塩素法が挙げられる。
ルチル型の酸化チタンの市販品としては、例えば、Tipaque(登録商標) CR−60−2、CR−67、R−980、R−780、R−850、R−980、R−630、R−670、PF−736等のルチル型(以上、石原産業社(ISHIHARA SANGYO KAISHA, LTD.)製商品名)が挙げられる。
酸化チタンの50%平均粒子径(以下、「D50」ともいう。)は、50〜500nmが好ましく、150〜350nmがより好ましい。D50が上記の範囲内にあると、印捺物(における画像)の耐擦性及び画像の視認性が優れたものとなるため、高画質の画像を形成することができる。
ここで、本明細書における「酸化チタンの50%平均粒子径」は、インク組成物を調製する前における酸化チタンのD50でなく、インク組成物中に存在する酸化チタンのD50を意味する。また、本明細書における「50%平均粒子径」とは、動的光散乱法による球換算50%平均粒子径を意味し、以下のようにして得られる値である。
分散媒中の粒子に光を照射し、この分散媒の前方・側方・後方に配置された検出器によって、発生する回折散乱光を測定する。得られた測定値を利用して、本来は不定形である粒子を、球形であると仮定し、当該粒子の体積と等しい球に換算された粒子集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その際の累積値が50%となる点を、「動的光散乱法による球換算50%平均粒子径」とする。
白色顔料として酸化チタンを使用する場合は、光触媒作用を抑制するために、アルミナシリカで表面処理されたものが好ましい。その際の表面処理量(アルミナシリカの量)は、表面処理された白色顔料の総質量(100質量%)に対して、5〜20質量%程度であるとよい。
また、非白色インク組成物の種類としては、以下に限定されないが、例えば、カラーインク、ブラックインク、及び灰色インクが挙げられる。このうち、カラーインクとしては、以下に限定されないが、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、ライトイエローインク、レッドインク、グリーンインク、及びブルーインクが挙げられる。
上記の非白色インク組成物に含まれる非白色顔料、即ち白色顔料以外の顔料としては、以下に限定されないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、及びニトロソ系などの有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等)、コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、及びニッケル等の金属類、金属酸化物及び硫化物、並びにファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、さらには黄土、群青、及び紺青等の無機顔料を用いることができる。
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製商品名)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社(Cabot JAPAN K.K.)製商品名)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ(Degussa)社製商品名)が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメント ヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7、10、及びC.I.ピグメント ブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメント オレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
また、顔料の含有量は、使用する顔料種により異なるが、良好な発色性を確保することなどから、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜30質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。中でも、酸化チタンの含有量は、沈降し難いとともに、(特に黒地の布帛上での)隠蔽性及び色再現性に優れるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜20質量%が好ましく、5〜13質量%がより好ましい。
上記の白色顔料及び非白色顔料はそれぞれ、1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよく、また白色顔料及び非白色顔料を併用してもよい。
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、非白色インク組成物に白色顔料が含まれてもよく、白色インク組成物に非白色顔料が含まれてもよい。
〔顔料分散体〕
上記の顔料は、インク組成物中で分散された状態として、即ち顔料分散体として存在するとよい。ここで、本明細書における顔料分散体は、顔料分散液、及び顔料のスラリー(低粘度水性分散体)を包含する意味である。
顔料分散体のD50は、50nm以上1μm以下が好ましい。当該D50が50nm以上であると、印捺物の発色性が良好なものとなる。また、当該D50が1μm以下であると、インクの定着性が良好なものとなる。白色顔料の分散体のD50は、100〜600nmがより好ましく、200〜500nmがさらに好ましい。当該D50が100nm以上であると、隠蔽性及び発色性が共に良好なものとなる。当該D50が1μm以下であると、インクの定着性及び吐出安定性が共に良好となる。非白色顔料の分散体のD50は、70〜230nmがより好ましく、80〜130nmがさらに好ましい。
顔料分散体としては、以下に限定されないが、例えば、自己分散型顔料及びポリマー分散型顔料が挙げられる。
(1.自己分散型顔料)
上記の自己分散型顔料は、分散剤なしに水性媒体中に分散又は溶解することが可能な顔料である。ここで「分散剤なしに水性媒体中に分散又は溶解する」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態を言う。そのため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんど無く、吐出安定性に優れるインクが調製しやすい。また、分散剤に起因する大幅な粘度上昇が抑えられるため、顔料をより多く含有することが可能となり印字濃度を十分に高めることが可能になる等、取り扱いが容易である。
上記の親水基は、−OM、−COOM、−CO−、−SO3M、−SO2M、−SO2NH2、−RSO2M、−PO3HM、−PO32、−SO2NHCOR、−NH3、及び−NR3からなる群から選択される一以上の親水基であることが好ましい。
なお、これらの化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。また、上記のM及びRは、それぞれ互いに独立して選択される。
自己分散型顔料は、例えば、顔料に物理的処理または化学的処理を施すことで、前記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。当該物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また、当該化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
(2.ポリマー分散型顔料)
上記のポリマー分散型顔料は、ポリマー分散によって分散可能とした顔料である。ポリマー分散型顔料に用いられるポリマーとしては、以下に限定されないが、例えば、顔料の分散に用いられる分散ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、55℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。当該Tgが55℃以下であると、インクの定着性を良好なものとすることができる。なお、本明細書におけるTgは、JIS K 7121に基づき、DSC曲線等の熱分析手法により求めることができる。
また、上記ポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量は、10,000以上200,000以下であることが好ましい。これにより、インクの保存安定性が一層良好となる。
ここで、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、日立製作所社(Hitachi, Ltd.)製L7100システムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。
上記ポリマーとしては、インクの定着性及び光沢性に一層優れるため、その構成成分のうち70質量%以上が(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸の共重合によるポリマーが好ましい。炭素数1〜24のアルキル(メタ)アクリレート及び炭素数3〜24の環状アルキル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方が70質量%以上のモノマー成分から重合されたものであることが好ましい。当該モノマー成分の具体例としては、以下に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、その他の重合用モノマー成分として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、並びにエポキシ(メタ)アクリレートを用いることもできる。
(3.ポリマーに被覆された顔料)
また、インクの定着性、光沢性、及び色再現性に優れるため、上記ポリマー分散型顔料の中でもポリマーに被覆された顔料、即ちマイクロカプセル化顔料が好適に用いられる。
当該ポリマーに被覆された顔料は、転相乳化法により得られるものである。つまり、上記のポリマーをメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、及びジブチルエーテル等の有機溶媒に溶解させる。得られた溶液に顔料を添加し、次いで中和剤及び水を添加して混練・分散処理を行うことにより水中油滴型の分散体を調整する。そして、得られた分散体から有機溶媒を除去することによって、水分散体としてポリマーに被覆された顔料を得ることができる。混練・分散処理は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、及び高速攪拌型分散機などを用いることができる。
中和剤としては、エチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニア等が好ましい。得られる水分散体のpHは6〜10であることが好ましい。
顔料を被覆するポリマーとしては、GPCによる重量平均分子量が10,000〜150,000程度のものが、顔料を安定的に分散させる点で好ましい。
ポリマーに被覆された顔料の中でも、ポリマーに被覆されたカラー顔料が好ましい。このカラー顔料を用いることで、印捺物の発色性が優れたものとなる。
〔ウレタン樹脂〕
本実施形態のインク組成物は、ウレタン樹脂を含む。当該ウレタン樹脂は、エマルジョン形態のものに限られるものではない。だが、本実施形態のインク組成物はインクジェット捺染に用いられるインク組成物であり、インクジェット捺染により得られる印捺物の洗濯堅牢性が優れたものとなるため、エマルジョン形態のもの、即ちウレタン樹脂の樹脂エマルジョンが好ましい。そこで、以下、ウレタン樹脂などの樹脂エマルジョンについて詳細に説明する。
なお、ウレタン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ウレタン樹脂の含有量は、後述するウレタン樹脂エマルジョンの含有量(固形分換算)と同様、インク組成物の総質量(100質量%)に対して3.5〜14質量%の範囲である。さらに、ウレタン樹脂の含有量の好ましい範囲も上記ウレタン樹脂エマルジョンのものと同様であるため、ここでの説明を省略する。
〔樹脂エマルジョン〕
本実施形態のインク組成物は、樹脂エマルジョンを含むことが好ましい。当該樹脂エマルジョンは、インクの乾燥に伴い、樹脂同士と、樹脂及び顔料と、がそれぞれ互いに融着して顔料を被記録媒体に固着させるため、記録物の画像部分の耐擦性及び洗濯堅牢性を一層良好にすることができる。上記のとおり、樹脂エマルジョンは少なくともウレタン樹脂エマルジョンであることが好ましい。これにより、インクの定着性が優れたものとなるため、印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性が共に優れたものとなる。
樹脂エマルジョンがインク組成物に含まれる場合、当該樹脂エマルジョンは、布帛上に樹脂被膜を形成することで、インク組成物を布帛上に十分定着させて印捺物の耐擦性を優れたものとする。そのため、樹脂エマルジョンは熱可塑性樹脂であることが好ましい。特に、ウレタン樹脂エマルジョンは、設計の自由度が高いため、所望の被膜物性を得やすい。
上記のウレタン樹脂エマルジョンは、分子中にウレタン結合を有する樹脂エマルジョンである。さらに、ウレタン樹脂エマルジョンとしては、上記のウレタン結合に加えて、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、及び主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂なども使用可能である。
以下、樹脂エマルジョンの好ましい物性について説明する。まず、一般的にインクジェット記録が行われる温度範囲(15〜35℃)において、当該樹脂エマルジョンは造膜性を有することが好ましいため、そのTgは、−10℃以下であることが好ましく、−15℃以下であることがより好ましい。樹脂エマルジョンのTgが上記範囲内である場合、印捺物に付着したインクの定着性が一層優れたものとなる結果、印捺物の耐擦性が一層優れたものとなる。なお、Tgの下限は特に限定されないが、−50℃以上であるとよい。
また、樹脂エマルジョンの酸価は、10〜100mgKOH/gであることが好ましく、15〜50mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が100mgKOH/g以下であると、印捺物の洗濯堅牢性を良好に維持することができる。また、酸価が10mgKOH/g以上であると、インクの保存安定性、並びに布帛上でのインクの発色性及び定着性が優れたものとなる。
なお、本明細書における酸価は、京都電子工業社(Kyoto Electronics Manufacturing Co.,Ltd.)製のAT610を用いて測定を行い、以下の数式に数値をあてはめて算出した値を採用するものとする。
酸価(mg/g)=(EP1−BL1)×FA1×C1×K1/SIZE
上記の数式中、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(0.0mL)、FA1は滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL)(0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、K1は係数(1)、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。
また、樹脂エマルジョンは、被記録媒体の中でも伸縮しやすい布帛に対して、画像、即ちインク層の破断やひび割れを防ぎ、印捺物の洗濯堅牢性及び耐擦性が優れたものとなるため、破断点伸度が200〜500%、弾性率が20〜400MPaであることが好ましい。
ここで、本明細書における破断点伸度は、約60μmの厚さのフィルムを作成し、引張試験ゲージ長20mm及び引っ張り速度100mm/分の条件下で測定することができる。また、本明細書における弾性率は、約60μmの厚さのフィルムを作成し、平行部幅10mm及び長さ40mmの引張試験ダンベルに成形し、JIS K7161:1994に準拠して引張試験を行い、引っ張り弾性率を測定することができる。
なお、上記JIS K7161:1994について具体的に説明すると、対応国際規格がISO 527−1:1993であり、標題がプラスチック−引張特性の試験方法であり、かつ、規格の概要は、定められた条件下でのプラスチック及びプラスチック複合材の引張特性を測定するための一般原則について規定したものである。
樹脂エマルジョンのD50は、30〜300nmが好ましく、80〜300nmがより好ましい。D50が上記範囲内であると、インク組成物中で樹脂エマルジョン粒子を均一に分散させることができる。また、印捺物の耐擦性が一層優れたものとなるため、D50の下限値は100nmであるとさらに好ましい。
以上で説明した樹脂エマルジョンの物性の観点より、上記ウレタン樹脂エマルジョンの市販品として、以下に限定されないが、例えば、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社(The Lubrizol Corporation)製商品名)、パーマリンUA−150(三洋化成工業社(Sanyo Chemical Industries, Ltd.)製商品名)、スーパーフレックス 460,470,610,700(以上、第一工業製薬社(Dai-ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.)製商品名)、NeoRez R−9660,R−9637,R−940(以上、楠本化成社(Kusumoto Chemicals,Ltd.)製商品名)、アデカボンタイター HUX−380,290K(以上、アデカ(Adeka)社製商品名)、タケラック(登録商標) W−605,W−635,WS−6021(以上、三井化学社(Mitsui Chemicals, Inc.)商品名)、ポリエーテル(大成ファインケミカル社(TAISEI FINECHEMICAL CO,.LTD)商品名、Tg=20℃)が好ましく挙げられる。
ウレタン樹脂エマルジョンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態のインク組成物は、ウレタン樹脂エマルジョン以外の樹脂エマルジョンを含んでもよい。そのような樹脂エマルジョンの中でも、樹脂の凝集を効果的に防止できるため、アニオン性の樹脂エマルジョンが好ましい。当該アニオン性の樹脂エマルジョンとしては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、及び天然樹脂が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル系樹脂及びスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかがより好ましく、スチレン−アクリル酸共重合体系樹脂がさらに好ましい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。
ウレタン樹脂エマルジョン以外の樹脂エマルジョンとしては、公知の材料及び製造方法により得られるものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。当該市販品としては、以下に限定されないが、例えば、モビニール966A(日本合成化学社(Nippon Synthetic Chemical Industry Co., Ltd.)製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上商品名、日本ペイント社(Nippon Paint Co., Ltd)製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上商品名、DIC社製)、SAE1014(商品名、日本ゼオン社(Zeon Corporation)製)、サイビノールSK−200(商品名、サイデン化学社(SAIDEN CHEMICAL INDUSTRY CO.,LTD.)製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上商品名、BASF社製)、NKバインダー R−5HN(新中村化学社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン、固形分44%)が挙げられる。これらの中でも、上述した樹脂エマルジョンの好ましい物性を十分に満たすため、アクリル樹脂エマルジョンであるモビニール966Aが好ましい。
ウレタン樹脂エマルジョン以外の樹脂エマルジョンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、樹脂エマルジョンの含有量について説明する。まず、樹脂エマルジョンのうち、ウレタン樹脂エマルジョンの固形分換算での含有量は、上述したウレタン樹脂の含有量と同様、インク組成物の総質量(100質量%)に対して3.5〜14質量%の範囲である。ウレタン樹脂の含有量が当該範囲内であるということは、ウレタン樹脂がインク組成物に相当多く含まれていることになる。そのため、高温下におけるインクの保存安定性に劣り、ウレタン樹脂に由来する異物が発生しやすくなる。だが、ウレタン樹脂の含有量が当該範囲を下回ると、印捺物の洗濯堅牢性及び耐擦性が悪化する。そこで、本願発明者らは、含有量の多いウレタン樹脂と共に乳酸エステル化合物を含むインク組成物に想到したのである。当該インク組成物において、乳酸エステル化合物が高温下におけるインクの保存安定性を良好なものとするため、ウレタン樹脂の含有量が当該範囲であっても異物の発生を防止できる。これに加えて、当該インク組成物において、含有量の多いウレタン樹脂が印捺物の洗濯堅牢性及び耐擦性を優れたものとする。より具体的に言えば、当該含有量が3.5質量%以上であると、印捺物の洗濯堅牢性及び耐擦性が優れたものとなる。一方、当該含有量が14質量%以下であると、インク組成物の長期安定性に優れ、特にインク組成物を低粘度化することができる。
また、上記の含有量は、印捺物の洗濯堅牢性及び耐擦性が一層優れたものとなるため、7〜14質量%であることが好ましく、8〜13質量%であることがより好ましい。さらに、ウレタン樹脂エマルジョンを含む樹脂エマルジョンの固形分換算での総含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、5〜15質量%であることが好ましい。当該総含有量が上記範囲内であると、インク組成物に占める樹脂(ポリマー)の固形分濃度を低くすることができるため、吐出安定性が一層良好なものとなる。
〔乳酸エステル化合物〕
本実施形態のインク組成物は、乳酸エステル化合物を含む。乳酸エステル化合物は、水に溶けにくいため、本実施形態のような水性のインク組成物に用いられることはない。一方、本実施形態のインク組成物は上述のように、印捺物の洗濯堅牢性及び耐擦性を優れたものとするため、ウレタン樹脂を含み、中でもウレタン樹脂エマルジョンを含むことが好ましい。しかし、本実施形態のインク組成物は、製品として流通される際、倉庫などの保管、及び輸送時のコンテナ内などにおいて高温状態(例えば40℃〜50℃程度)で保管される場合がある。この場合、ウレタン樹脂(好ましくはウレタン樹脂エマルジョン)が凝集し、結果的に異物として析出してしまうという問題が生じる。そこで、本願発明者らが検討を重ねた結果、本実施形態の水性のインク組成物が、ウレタン樹脂(好ましくはウレタン樹脂エマルジョン)と、少量である0.5〜5質量%の乳酸エステル化合物と、を共に含有することにより、乳酸エステル化合物の水難溶性及びウレタン樹脂(エマルジョン)に由来する異物の発生という2つの問題を同時に解決できることを見出したのである。より具体的に言えば、高温でインク組成物を保管することにより、ウレタン樹脂(エマルジョン)が凝集して異物として析出するのを、ウレタン樹脂(エマルジョン)に対して強い溶解力を有する乳酸エステル化合物が防止するのである。そして、上記の問題を解決可能な本実施形態のインク組成物は、保存安定性、特に高温下での保存安定性に優れたものとなる。
乳酸エステル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸アミル、及び乳酸ヘキシルが挙げられる。中でも、インクを効果的に低粘度化させることができるため、乳酸エチル、乳酸プロピル、及び乳酸ブチルからなる群より選択される一種以上が好ましい。また、乳酸エステル化合物の中でも水への溶解性が比較的良好であるため、乳酸エチル及び乳酸プロピルのうち少なくともいずれかがより好ましい。
乳酸エステル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳酸エステル化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5〜5質量%である。当該含有量が0.5質量%以上であると、インク組成物の長期安定性、特にインクの保存安定性が優れたものとなる。一方、当該含有量が5質量%以下であると、印捺物の洗濯堅牢性が優れたものとなり、さらには耐擦性も良好なものとなる。また、インク組成物の長期安定性、並びに印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性のいずれも一層優れたものとなるため、乳酸エステル化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5〜5質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。
〔環状アミド化合物〕
本実施形態のインク組成物は、環状アミド化合物をさらに含むことが好ましい。当該環状アミド化合物は、乳酸エステル化合物の水への溶解性を良好にする機能を有する。そこで、インク組成物が上記の乳酸エステル化合物と共に環状アミド化合物も含むことにより、ウレタン樹脂(エマルジョン)の溶解力が一層強くなり、上述のような異物の析出を一層効果的に防止できるため、保存安定性、特に高温下での保存安定性が一層優れたものとなる。
また、環状アミド化合物は、保湿性能も有するため、ウレタン樹脂(エマルジョン)その他の樹脂(ポリマー)及び顔料などの水分がインクの保管時に蒸発し得ることに起因して、凝集し固化するのを防止することができる。これにより、インクジェット捺染時にヘッドのノズル近傍における目詰まりを防止し、インク組成物の吐出安定性が良好なものとなる。
環状アミド化合物の具体例としては、以下に限定されないが、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及びN−エチル−2−ピロリドンが挙げられる。中でも、樹脂(ポリマー)に対する溶解力がさらに一層強くなり、保存安定性、特に高温下での保存安定性がさらに一層優れたものとなるため、2−ピロリドンが好ましい。
環状アミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
環状アミド化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5〜5質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。当該含有量が上記範囲内であると、インクの長期保存安定性及び吐出安定性、並びにインクの優れた定着性に起因する印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性が、いずれも一層優れたものとなる。
〔水〕
本実施形態のインク組成物は水性であり、水性溶媒として水を含む。当該水性溶媒としては、水及び水溶性有機溶剤が挙げられる。水としては、特に制限されることなく、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。水の含有量は、特に制限されることなく必要に応じて適宜決定すればよいが、インク組成物の粘度を好適な範囲に調整するため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して20〜80質量%含まれているとよい。
なお、以下で説明する各種の添加剤(成分)は、重複を避けるため、上述した環状アミド化合物を含まないものとする。
〔浸透剤〕
本実施形態のインク組成物は、その構成成分である水性溶媒が布帛に浸透することを一層促進するため、浸透剤をさらに含有するとよい。上記水性溶媒が布帛に素早く浸透することによって、画像の滲みが少ない印捺物を得ることができる。
このような浸透剤としては、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテル類)及び1、2−アルキルジオールが好ましく挙げられる。当該グリコールエーテル類としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。また、上記1、2−アルキルジオールとしては、以下に限定されないが、例えば、1、2−ペンタンジオール及び1、2−ヘキサンジオールが挙げられる。これらの他に、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、7−ヘプタンジオール、及び1、8−オクタンジオール等の直鎖炭化水素のジオール類も挙げることができる。
浸透剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
浸透剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%以上であると、インク組成物の布帛への浸透度を増大させることができる。一方、含有量が20質量%以下であると、画像に滲みが発生することを防止でき、またインク組成物の粘度が高くならないようにすることができる。
〔保湿剤〕
本実施形態のインク組成物は、保湿剤(湿潤剤)をさらに含んでもよい。保湿剤としては、一般にインクジェットインクに用いられるものであれば特に制限されることなく使用可能である。好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上の沸点を有する高沸点の保湿剤を用いるとよい。沸点が上記範囲内である場合、インク組成物に良好な保水性及び湿潤性を付与することができる。
高沸点の保湿剤の具体例として、以下に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1、4−ジオール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、数平均分子量2000以下のポリエチレングリコール、1、3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、及びペンタエリスリトールが挙げられる。
保湿剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。インク組成物が高沸点の保湿剤を含むことにより、開放状態、即ち、室温で顔料インクが空気に触れている状態で放置しても、流動性及び再分散性を長時間維持できるインク組成物を得ることができる。さらに、このようなインク組成物は、インクジェット捺染装置を用いた捺染の途中又は中断後の再起動時に、ノズルの目詰まりが生じにくくなるため、インク組成物の吐出安定性が優れたものとなる。上記保湿剤の含有量は特に限定されず、必要に応じて適宜決定すればよい。
なお、上述のとおり、インク組成物が環状アミド化合物を含む場合、環状アミド化合物は保湿性能を有するため、環状アミド化合物を保湿剤として用いればよい。
〔界面活性剤〕
本実施形態のインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。当該界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤のうち少なくともいずれかが好ましい。インク組成物がこれらの界面活性剤を含むことにより、布帛に付着したインク組成物の乾燥性が一層良好となり、かつ、高速印刷が可能となる。
これらの中でも、インクへの溶解度が大きくなり異物が一層発生し難くなるため、ポリシロキサン系界面活性剤がより好ましい。
上記のアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤としては、以下に限定されないが、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。これらは、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール465やサーフィノール61(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)等の市販品として入手可能である。
また、ポリシロキサン系界面活性剤としては、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製商品名)などが挙げられる。
上記の界面活性剤は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、0.1〜3質量%であることが好ましい。
〔その他の成分〕
本実施形態のインク組成物は、その保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
このように、本実施形態によれば、長期安定性、並びに印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性のいずれにも優れたインクジェット捺染用インク組成物を提供することができる。
[画像形成方法]
本発明の一実施形態は、画像形成方法に係る。当該画像形成方法は、上記実施形態のインクジェット捺染用インク組成物を用いたインクジェット捺染により、布帛上に画像を形成することを含むものである。
より具体的に言えば、上記の画像形成方法は、インク組成物を布帛に付着させる付着工程と、当該インク組成物が付着した布帛を加熱する加熱工程と、を含むことが好ましく、当該付着工程の前に前処理剤を布帛に付与する前処理工程をさらに含むことがより好ましい。
上記画像形成方法に用いられる布帛としては、以下に限定されないが、例えば、絹、綿、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の天然繊維又は合成繊維が挙げられる。これらのうち、高温下でのインク組成物の定着に耐えられるため、綿が好ましい。
上記のインクジェット捺染では、インク組成物を、インクジェット捺染装置に装填して使用する。当該インクジェット捺染装置としては、特に限定されないが、例えばドロップオンデマンド型のインクジェット捺染装置が挙げられる。このドロップオンデマンド型のインクジェット捺染装置には、ヘッドに配設された圧電素子を用いたインクジェット捺染方法を採用した装置、及びヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いたインクジェット捺染方法を採用した装置などがあり、いずれのインクジェット捺染方法を採用したものでもよい。
〔前処理工程〕
布帛上でインクが滲むのを防止するため、上記のインク組成物を布帛上に付着させて画像を形成する前に、前処理剤を用いて布帛を前処理しておくこと、即ち前処理工程を行うことが好ましい。当該前処理工程は、凝集剤を含む前処理剤を布帛に付与するというものであり、より具体的に言えば、布帛に前処理剤を付着させた後、布帛を乾燥するというものである。前処理の方法としては、以下に限定されないが、例えば、前処理剤中に布帛を浸積する手段、及び前処理剤を布帛に塗布又は噴霧する手段が挙げられる。
上記の凝集剤は、インク組成物中の顔料を凝集させるとともに、水分散性樹脂(樹脂エマルジョン)を析出させて、布帛上にインクの被膜を形成させることができる。凝集剤として、有機酸及び多価金属化合物から選択される一種以上が好ましく挙げられる。当該有機酸としては、以下に限定されないが、例えば、酢酸、プロピロン酸、及び乳酸が好ましく挙げられる。
また、上記の多価金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、及びマグネシウム化合物、並びにこれらの塩(多価金属塩)が挙げられる。これら多価金属化合物の中でも、顔料を効果的に凝集させることができるため、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、及びマグネシウム化合物からなる群より選択される一種以上が好ましく、カルシウム化合物及びマグネシウム化合物のうち少なくともいずれかがより好ましく、カルシウム化合物がさらに好ましい。上記の多価金属化合物の具体例としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、及びベントナイト等の無機顔料、並びにアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、及び尿素高分子物質などの有機顔料が挙げられる。
なお、前処理剤がカルシウム化合物を含む場合、当該前処理剤中のカルシウムイオン濃度は、前処理剤の総質量(100質量%)に対して、1〜5質量%が好ましい。当該濃度が上記範囲内であると、印捺物の十分な白さが確保でき、かつ、前処理剤の跡残りも目立たなくなる。
上記の前処理剤は、上述の凝集剤以外に、例えば、上述の樹脂エマルジョン、保湿剤、浸透剤、及び水、並びに糊剤を含有してもよい。
これらのうち、上述した樹脂エマルジョンの固形分換算での含有量は、前処理剤の総質量(100質量%)に対して、1〜5質量%が好ましい。当該含有量が上記範囲内であると、印捺物のムラがなくなり、かつ、樹脂エマルジョンに由来する風合いの悪化も許容可能な程度に抑えることができる。
また、上記のうち、糊剤としては、以下に限定されないが、例えば、トウモロコシ及び小麦などのデンプン物質、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、及びタマリンド種子などの多糖類、ゼラチン及びカゼイン等のタンパク質、タンニン及びリグニン等の天然水溶性高分子、並びにポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系化合物、及び無水マレイン酸系化合物などの合成の水溶性高分子が挙げられる。糊剤の含有量は、前処理剤の総質量(100質量%)に対して、20質量%以下が好ましい。当該含有量が上記範囲内であると、前処理剤の低粘度化が可能になり、スプレーやローラー等による均一な塗布が可能になる。
なお、上記前処理剤には、必要に応じて、pH調整剤、還元防止剤、金属イオン封鎖剤、及び消泡剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
布帛に前処理剤を付着させた後の乾燥は、好ましくは110〜200℃、より好ましくは120〜180℃で、2分間以内の加熱処理を行うとよい。加熱温度が110℃以上であると、前処理剤の定着性が良好となる。また、加熱温度が200℃以下であると、布帛の劣化及びポリマー等の前処理剤成分の劣化を効果的に防止することができる。
〔付着工程〕
上記の付着工程では、まず、布帛(上記前処理がなされたものを含む。)の面に向けて、上記インク組成物を吐出し付着させて、画像を形成する。
なお、吐出条件は、吐出されるインク組成物の物性によって適宜決定すればよい。
〔加熱工程〕
上記の加熱工程では、インク組成物が付着した布帛を加熱処理する。当該加熱処理により、インク組成物に含まれるウレタン樹脂(エマルジョン)等の樹脂(ポリマー)を布帛の表面に融着させ、かつ、水分を蒸発させることができる。その結果、印捺物の耐擦性を一層優れたものとすることができる。
上記加熱処理としては、以下に限定されないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。また、加熱処理時の温度は、インク組成物に含まれるウレタン樹脂(エマルジョン)等の樹脂(ポリマー)を融着し、かつ、水分を蒸発させることができればよく、150〜200℃程度であるとよい。
上記加熱工程後は、印捺物を水洗し、乾燥してもよい。このとき、必要に応じてソーピング処理、即ち未固着の顔料を熱石鹸液などで洗い落とす処理を行ってもよい。
このようにして、布帛などの被記録媒体上に、上記実施形態のインク組成物に由来する画像が形成された、印捺物などの記録物を得ることができる。当該記録物は、ひび割れ、凹凸、及び汚れ等の発生を防ぐことができるため発色性に優れ、かつ、インク組成物の定着性(密着性)が良好なため、耐擦性にも優れる。
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[前処理剤の調製]
まず、画像形成の前に布帛を前処理するための前処理剤P1を、以下のようにして調製した。多価金属化合物としての、20質量%の硝酸カルシウム・四水和物(カルシウムイオン濃度17.0質量%)と、10質量%のアクリル樹脂エマルジョン(新中村化学社製のNKバインダー R−5HN、固形分44%)と、0.1質量%のBYK−348(ポリシロキサン系界面活性剤、BYK社製商品名、)と、イオン交換水(残部)とを、総質量が100質量%になるよう混合し、十分に撹拌して均一とすることで、前処理剤P1を調製した。得られた前処理剤P1において、カルシウムイオン濃度は3.4質量%であり、アニオン性樹脂の固形分濃度は4.4質量%であった。
[インク組成物の調製用の使用材料]
下記の実施例及び比較例において使用した材料は、以下の通りである。
〔1.顔料〕
(1−1.白色顔料)
酸化チタンスラリー(シーアイ化成社製のNanoTek(R)Slurry、酸化チタン固形分濃度15%、平均粒子径250nm)を用いた。
(1−2.シアン顔料)
シアン顔料分散液を次のようにして調製した。攪拌機、温度計、還流管、及び滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、シクロヘキシルアクリレート20質量部、2−エチルヘキシルアクリレート5質量部、ブチルアクリレート15質量部、ラウリルアクリレート10質量部、アクリル酸2質量部、t―ドデシルメルカプタン0.3質量部を混合した。この混合液を70℃で加熱し、別に用意したシクロヘキシルアクリレート150質量部、アクリル酸15質量部、ブチルアクリレート50質量部、t−ドデシルメルカプタン1質量部、メチルエチルケトン20質量部、及びアゾビスイソバレロニトリル1質量部を滴下ロートに入れて、4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させた。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40質量%濃度の分散ポリマー溶液を作製した。分子量の分散度(Mw/Mn)は3.1であった。
ここで、本明細書における重量平均分子量(Mw)の測定方法は上述のとおりである。また、本明細書における数平均分子量(Mn)は、重量平均分子量(Mw)と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の数平均分子量として測定された値で示される。
上記分散ポリマー溶液40質量部と、ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料、クラリアント社製)30質量部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100質量部、及びメチルエチルケトン30質量部と、を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌した。その後、イオン交換水を300質量部添加して、さらに1時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部とを留去し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターでろ過した。このようにして、固形分濃度(分散ポリマーとピグメントブルー15:3)が15%であるシアン顔料分散液を調製した。当該シアン顔料分散液に含まれる分散ポリマーの分子量の分散度(Mw/Mn)は3.0であった。
〔2.ウレタン樹脂エマルジョン〕
・サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製商品名、アニオン性、固形分40%、以下「ウレタン樹脂A」という。)
・パーマリンUA−150(三洋化成工業社製商品名、アニオン性、固形分30%、以下「ウレタン樹脂B」という。)
〔3.乳酸エステル〕
・乳酸エチル(関東化学社(KANTO CHEMICAL CO., INC)製)
・乳酸プロピル(関東化学社製)
・乳酸ブチル(関東化学社製)
〔4.環状アミド化合物〕
・2−ピロリドン(関東化学社製)
〔5.保湿剤〕
・グリセリン(阪本薬品工業社(Sakamoto Yakuhin Kogyo Co., Ltd.)製)
・トリエチレングリコール(以下「TEG」という。)(関東化学社製)
〔6.グリコールエーテル〕
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「TEGmBE」という。)(関東化学社製)
〔7.界面活性剤〕
・BYK−348(BYK社製商品名、既述)
[インク組成物の調製]
下記の表1〜表3に示す材料を各表に示す含有量(単位は質量%)で、それぞれ混合し、十分に撹拌した。この攪拌液を、孔径5μmの金属フィルターでろ過した後、真空ポンプを用いて脱気処理して、実施例及び比較例で用いる各インク組成物を得た。
なお、下記の表1〜表3中、「シアン顔料濃度」は「シアン顔料の固形分濃度(%)」を表し、「酸化チタン濃度」は「酸化チタンの固形分濃度(%)」を表し、「ウレタン樹脂濃度」は「ウレタン樹脂の固形分濃度(%)」を表す。
[印捺物の製造]
〔前処理工程〕
布帛として綿100%のTシャツ(HANES社製のヘビーウェイト、黒色生地)を用い、これに上記で調製した前処理剤P1を、A4サイズ当たり18〜20gになるようにローラーを用いて均一に塗布した。塗布後、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間加熱処理を行った。
〔付着工程〕
前処理工程を経た布帛に対して、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製のPX−G930)を用いて上記で調製した白色又はシアン色の各インクを布帛に付着させた。記録条件としては、記録解像度を1440dpi×1440dpiとし、ベタパターン画像を4層重ね塗りした。このようにしてインクジェット捺染を行った。
なお、本明細書における「ベタパターン画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像を意味する。
〔熱処理工程〕
各インクが付着した布帛を、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間加熱処理を行い、当該インクを布帛に定着させた。このようにして、布帛に画像が形成された(インクが印捺された)印捺物を製造した。
[インク及び印捺物の評価]
上記で調製した白色又はシアン色の各インクについて、粘度及び保存安定性の各評価を行った。また、上記で製造した各印捺物について、耐擦性及び洗濯堅牢性の各評価を行った。
〔1.インクの粘度〕
DVM−E型回転粘度計(東京計器社製)を用いて、上記で調製した各インクの、25℃での粘度を測定した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記の表4及び表5に示す。
○:5mPa・s未満
△:5mPa・s以上7Pa・s未満
×:7mPa・s以上
〔2.インクの保存安定性〕
上記で調製した各インクを50cc容のガラス瓶に入れ、密栓した後に、これらのガラス瓶を60℃の恒温槽内に投入し7日間放置した。7日後に取り出し、十分に室温に戻ってから、上記「1.インクの粘度」と同様にして粘度を測定した。そして、初期の粘度である上記「1.インクの粘度」で測定された粘度に対する、7日間放置後の粘度の増加率を計算した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記の表4及び表5に示す。
○:+5%未満
△:+5%以上15%未満
×:+15%以上
〔3.印捺物の耐擦性〕
JIS K5701(ISO 11628)(平版印刷に用いられるインク、展色試料、及び印刷物を試験する方法について規定。)に準じて、学振式摩擦堅牢度試験機(テスター産業社(TESTER SANGYO CO., LTD.)製)を用いて、上記で得られた各印捺物の耐擦性評価を行った。
評価方法は、画像面に金巾を乗せ、荷重500gをかけて擦り、擦った後の印捺物の画像面の剥離及び傷を目視で観察した。以下の通りに評価した。
評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記の表4及び表5に示す。
◎:金巾の汚れは無かった。画像面の剥離や傷も無かった。
○:金巾に少量の汚れが見られた。画像面の剥離や傷は無かった。
△:金巾に中程度の汚れが見られた。画像面の剥離や傷が線状に少し見られた。
×:金巾に多量の汚れが見られた。画像面の剥離や傷が画像面に面状に大きく見られた。
〔4.印捺物の洗濯堅牢性〕
全自動洗濯機(東芝社製のAW−424V6型)を用い、上記で得られた各印捺物を10回ずつ洗濯し、JIS L0804:2004(ISO 105−A02:1993)の変退色グレースケール(染色堅ろう度試験の結果、試験片に生じた変退色の程度を視感によって判定する場合、その基準として用いる変退色用グレースケールについて規定。)に従って、退色の程度を評価した。
評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記の表4及び表5に示す。
◎:4−5級(中間等級)〜5級
○:3−4級(中間等級)〜4級
△:2−3級(中間等級)〜3級
×:2級以下
以上の結果より、0.5〜5質量%の乳酸エステル化合物と、固形分換算で3.5〜14質量%のウレタン樹脂(エマルジョン)と、顔料と、水と、を含むインクジェット捺染用インク組成物(各実施例)は、そうでないインク組成物(各比較例)と比較して、粘度及び保存安定性からなる長期安定性、並びに印捺物の耐擦性及び洗濯堅牢性のいずれにも優れることが分かった。

Claims (6)

  1. 乳酸エステル化合物、ウレタン樹脂、顔料、及び水を含むインクジェット捺染用インク組成物であって、
    前記乳酸エステル化合物の含有量は、該インク組成物の総質量に対して0.5〜5質量%であり、前記ウレタン樹脂の含有量は、該インク組成物の総質量に対して3.5〜14質量%である、インクジェット捺染用インク組成物。
  2. 前記ウレタン樹脂の含有量が、該インク組成物の総質量に対して7〜14質量%である、請求項1に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
  3. 前記顔料が白色顔料である、請求項1又は2に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
  4. 前記乳酸エステル化合物は、乳酸エチル及び乳酸プロピルのうち少なくともいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
  5. 該インク組成物の総質量に対して0.5〜5質量%の環状アミド化合物をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
  6. 前記環状アミド化合物が2−ピロリドンである、請求項5に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
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