JP2013194589A - エンジンの始動制御装置 - Google Patents

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【課題】エンジンを自動始動させる際に、燃焼室の壁面温度を迅速に上昇させる。
【解決手段】本発明のエンジンの始動制御装置は、燃焼室14の壁面温度またはこれに関連する所定の温度を検出する検出手段と、エンジンの吸気弁19の閉時期、および排気弁20の開時期の少なくとも一方を可変的に制御可能なバルブ制御手段とを備える。バルブ制御手段は、上記検出手段により検出された温度が所定値よりも低い低温状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなるように上記吸排気弁を制御する。
【選択図】図7

Description

本発明は、燃焼室内で混合気が燃焼して生じる燃焼ガスのエネルギーをピストンの往復運動として取り出すレシプロ式のエンジンに設けられ、所定の自動停止条件が成立したときに上記エンジンを自動停止させるとともに、その後所定の再始動条件が成立したときに上記エンジンを自動始動させるエンジンの始動制御装置に関する。
近年、自動車等の車両に搭載される車載用エンジンの燃費性能をより高めることが求められており、そのための対策として、所定の条件下でエンジンを自動的に停止または始動させる、いわゆるアイドルストップ機能を付加したエンジンが増えつつある。このようなアイドルストップ機能付きのエンジンにおいて、一旦停止したエンジンを再始動させる自動始動の際には、迅速かつ確実にエンジンを始動させることが求められる。
例えば、下記特許文献1には、エンジンの自動停止動作中の吸気流量を調節することによって筒内の空気量の適正化を図り、自動始動を開始したときの混合気の着火性を高めることが行われている。
特開2004−124753号公報
上記特許文献1のように、空気量の適正化によって自動始動時の着火性を高めるようにした場合には、自動始動の迅速性、確実性を高めることができる。しかしながら、エンジンの自動始動の際に、好条件下での燃焼ばかりを行うと、エンジン回転速度が必要以上に上昇する吹き上がり現象が起きるおそれがあり、車両の運転者がアクセルペダルを踏み込むタイミングによっては、車両が唐突に飛び出すような挙動を示し、乗員が違和感を覚えるおそれがある。
上記のような事態を防止するには、エンジンを自動始動させる途中で条件の悪い燃焼を行えばよいが、このとき、燃焼室の壁面温度が低いと、燃料が気化し難いために、燃焼が不安定化(場合によっては失火)してしまうおそれがある。もちろん、燃焼室の壁面温度が高いときだけエンジンを自動停止させる(低温時には自動停止を許可しない)ようにしておけば、上記のような燃焼の不安定化を招くおそれはなくなるが、それでは、アイドルストップの機会が減り、充分な燃費向上効果が得られなくなる。
このような問題に対し、仮にエンジンの自動始動時に壁面温度を迅速に上昇させることができれば、たとえ燃焼室の壁面温度が低い状態から自動始動を開始したとしても、燃焼を不安定化させることなく必要に応じて条件の悪い燃焼を行わせることができ、エンジンの吹き上がりを抑制することができる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、自動停止したエンジンを再始動させる際に、燃焼室の壁面温度を迅速に上昇させることが可能なエンジンの始動制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、燃焼室内で混合気が燃焼して生じる燃焼ガスのエネルギーをピストンの往復運動として取り出すレシプロ式の車載用エンジンに設けられ、所定の自動停止条件が成立したときに上記エンジンを自動停止させるとともに、その後所定の再始動条件が成立したときに上記エンジンを自動始動させるエンジンの始動制御装置であって、上記エンジンの燃焼室の壁面温度またはこれに関連する所定の温度を検出する検出手段と、上記エンジンの吸気弁の閉時期、および排気弁の開時期の少なくとも一方を可変的に制御可能なバルブ制御手段とを備え、上記バルブ制御手段は、上記検出手段により検出された温度が所定値よりも低い低温状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなるように上記吸排気弁を制御することを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、低温状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなるようにバルブタイミングが制御されるので、燃焼室で生成された燃焼ガスのエネルギーのうちピストンを押し下げる仕事に変換される割合が減り(言い換えると冷却損失が増大し)、膨張行程中の燃焼ガスの温度を比較的高い値に維持することができる。これにより、燃焼室の壁面温度を迅速に上昇させることができ、例えばエンジン完爆後に、吹き上がりを抑制するために条件の悪い燃焼を行ったとしても、燃焼が極端に不安定になることがなく、失火等を確実に防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記バルブ制御手段は、上記低温状態でのエンジン自動始動時に、上記排気弁の開時期を下死点に対し早めることにより、エンジンの有効膨張比を有効圧縮比よりも低くする(請求項2)。
この構成によれば、排気弁の開時期を早めて有効膨張比を低下させることにより、有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなる状態を適正につくり出すことができる。
本発明において、好ましくは、上記バルブ制御手段は、上記低温状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの全気筒で少なくとも1回ずつ燃焼が済んだエンジン完爆の時点まで有効膨張比を有効圧縮比よりも低くし、エンジンが完爆に至った後は、有効膨張比を有効圧縮比よりも高くする(請求項3)。
この構成によれば、エンジンが完爆に至るまでの過程において、有効膨張比の低下によってエンジンの暖機進行を図りながら、エンジンが完爆に至った後は、有効膨張比を元に戻して熱効率の高い燃焼を行わせることができる。
上記エンジンは、燃焼室内の混合気に点火する点火プラグを備えた火花点火式エンジンとすることができる。このような火花点火式エンジンにおいて、より好ましくは、上記自動始動の開始後にエンジンが完爆に至った後、車両の発進要求がなかった場合には、上記点火プラグの点火タイミングが、エンジンの強制始動時に設定される点火タイミングよりも遅く設定される(請求項4)。
この構成によれば、エンジンの完爆後に回転速度が過度に上昇すること(エンジンの吹き上がり)が点火タイミングのリタードによって抑制されるので、例えばエンジンの完爆後、わずかな時間をおいてから車両の発進要求があったような場合でも、車両が唐突に飛び出すようなことがなく、車両の安全性や乗り心地を向上させることができる。
なお、本発明のエンジンにおいても、その強制始動時には、有効膨張比が有効圧縮比よりも常に高くなるように吸排気弁を制御することができる(請求項5)。
エンジンの強制始動時には、エンジンが吹き上がりを起こしても何ら問題がなく、常に条件のよい燃焼を行えるので、燃焼室の壁面温度を迅速に上昇させなくても燃焼が極端に不安定化することがない。このような事情から、エンジンの強制始動のときには、自動始動のときと異なり、有効膨張比を常に有効圧縮比よりも高く設定することができる。
以上説明したように、本発明のエンジンの始動制御装置によれば、自動停止したエンジンを再始動させる際に、燃焼室の壁面温度を迅速に上昇させることができ、燃焼の安定性を高めることができる。
本発明の一実施形態にかかる始動制御装置が適用されたエンジンの全体構成を示す図である。 上記エンジンの平面図である。 上記エンジンを自動的に停止させる自動停止制御の具体的手順を示すフローチャートである。 上記自動停止制御が終了した時点における各気筒の状態を例示する図である。 上記エンジンを自動的に始動させる自動始動制御の具体的手順を示すフローチャートである。 通常時の有効膨張比と有効圧縮比との関係を示す説明図である。 低温状態でのエンジン自動始動時に設定される有効膨張比と有効圧縮比との関係を示す説明図である。 有効膨張比を低下させることが筒内温度の上昇につながることを示すための説明図である。
(1)エンジンの全体構成
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る始動制御装置が適用されたエンジンの全体構成を示す図である。本図に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載されるレシプロ式の4サイクルガソリンエンジンである。このエンジンのエンジン本体1は、いわゆる直列4気筒型のものであり、列状に並ぶ4つの気筒12A〜12Dを有するシリンダヘッド11と、シリンダブロック11の上面に設けられたシリンダヘッド10と、各気筒12A〜12Dにそれぞれ往復摺動可能に挿入されたピストン13とを有している。
上記ピストン13は図略のコネクティングロッドを介してクランク軸3と連結されており、上記ピストン13の往復運動(上下運動)に応じて上記クランク軸3が中心軸回りに回転するようになっている。
上記ピストン13の上方には燃焼室14が形成されており、この燃焼室14には、ガソリンを主成分とする燃料が、後述するインジェクタ16からの噴射によって供給される。そして、噴射された燃料と空気との混合気が燃焼室14で燃焼することにより、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン13が上下方向に往復運動するようになっている。
上記シリンダヘッド10には、点火プラグ15およびインジェクタ16が、各気筒につき1組ずつ設けられている。
上記インジェクタ16は、燃焼室14を吸気側の側方から臨むように設けられており、図外の燃料供給管から供給される燃料(ガソリンを主成分とする燃料)を先端部から噴射する。具体的に、インジェクタ16は、ニードル弁およびソレノイド(いずれも図示省略)を内蔵しており、ソレノイドへの通電に伴いニードル弁が開方向に駆動されることで、その開弁時間に応じた量の燃料がインジェクタ16の先端部から点火プラグ15の電極付近に向けて噴射されるようになっている。
上記点火プラグ15は、燃焼室14を上方から臨むように設けられており、図外の点火回路からの給電に応じて先端の電極から火花を放電する。ここで、当実施形態のような4サイクル4気筒エンジンでは、各気筒12A〜12Dに設けられたピストン13が、クランク角で180°(180°CA)の位相差をもって上下運動する。このため、各気筒12A〜12Dの点火プラグ15による点火のタイミングは、180°CAずつ位相をずらしたタイミングに設定される。具体的には、気筒12A,12B,12C,12Dの気筒番号をそれぞれ1番、2番、3番、4番とすると、1番気筒12A→3番気筒12C→4番気筒12D→2番気筒12Bの順に、180°CAずつずれたタイミングで点火が行われて、この順に燃焼が行われる。このため、例えば1番気筒12Aが膨張行程であれば、3番気筒12C、4番気筒12D、2番気筒12Bは、それぞれ、圧縮行程、吸気行程、排気行程となる。
上記シリンダヘッド10には、各気筒12A〜12Dの燃焼室14に開口する吸気ポート17および排気ポート18と、各ポート17,18を開閉する吸気弁19および排気弁20とが設けられている。なお、吸気弁19および排気弁20は、シリンダヘッド10に配設された一対のカムシャフト等を含む動弁機構30,31により、クランク軸3の回転に連動して開閉駆動される。
上記排気弁20用の動弁機構31には、VVT32が組み込まれている。VVT32は、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)と呼ばれるものであり、排気弁20の動作タイミングを可変的に設定するための可変機構である。なお、当実施形態において採用されるVVT32は、カムシャフトの回転位相を変更可能な電動アクチュエータを備えた電磁式VVTであり、上記アクチュエータの駆動に応じて排気弁20の開時期(開弁開始時期)と閉時期とを同時に変更することができ、しかも、そのような変更動作をエンジンが停止した状態でも行うことができる。
上記シリンダブロック11やシリンダヘッド10の内部には、冷却水が流通する図外のウォータジャケットが設けられており、このウォータジャケット内の冷却水の温度を検出するための水温センサSW1(本発明にかかる検出手段に相当)が、上記シリンダブロック11に設けられている。
また、上記シリンダブロック11には、クランク軸3の回転角度および回転速度を検出するためのクランク角センサSW2が設けられている。このクランク角センサSW2は、クランク軸3と一体に回転するクランクプレート34の回転に応じてパルス信号を出力するものであり、このパルス信号に基づいて、クランク軸3の回転角度(クランク角)および回転速度(エンジン回転速度)が検出されるようになっている。
一方、上記シリンダヘッド10には、気筒判別情報を出力するためのカム角センサSW3が設けられている。すなわち、カム角センサSW3は、カムシャフトと一体に回転するシグナルプレートの歯の通過に応じてパルス信号を出力するものであり、この信号と、クランク角センサSW2からのパルス信号とに基づいて、どの気筒が何行程にあるのかが判別されるようになっている。
上記各気筒12A〜12Dの吸気ポート17および排気ポート18には、吸気通路21および排気通路22がそれぞれ接続されている。すなわち、外部からの吸入空気(新気)が上記吸気通路21を通じて各気筒12A〜12Dの燃焼室14に導入されるとともに、燃焼室14で生成された排気ガス(燃焼ガス)が上記排気通路29を通じて外部に排出されるようになっている。
上記吸気通路21のうち、エンジン本体1から所定距離上流側までの範囲は、気筒12A〜12Dごとに分岐した分岐通路部21aとされており、各分岐通路部21aの上流端がそれぞれサージタンク21bに接続されている。このサージタンク21bよりも上流側には、単一の通路からなる共通通路部21cが設けられている。
上記共通通路部21cには、開閉可能なスロットル弁24が設けられており、このスロットル弁24の開度に応じて、各気筒12A〜12Dに流入する空気量(吸気流量)が調節されるようになっている。なお、当実施形態において採用されるスロットル弁24は、電動アクチュエータによって駆動される電気式のものである。このような電気式のスロットル弁24は、基本的に、後述するアクセルペダル40の開度に連動して開閉駆動されるが、場合によっては、アクセルペダル40とは非連動で開閉駆動されることもある。
上記スロットル弁24よりも上流側の共通通路部21cには、吸気流量を検出するためのエアフローセンサSW4が設けられている。
上記クランク軸3には、ベルト等を介してオルタネータ28が連結されている。このオルタネータ28は、図外のフィールドコイルの電流を制御して発電量を調節するレギュレータ回路を内蔵しており、車両の電気負荷やバッテリの残容量等から定められる発電量の目標値(目標発電電流)に基づき、クランク軸3から駆動力を得て発電を行うように構成されている。
上記シリンダブロック11には、エンジンを始動するためのスタータモータ36が設けられている。このスタータモータ36は、モータ本体36aと、モータ本体36aにより回転駆動されるピニオンギア36bとを有している。上記ピニオンギア36bは、クランク軸3の一端部に連結されたリングギア35と離接可能に噛合している。そして、上記スタータモータ36を用いてエンジンを始動する際には、ピニオンギア36bが所定の噛合位置に移動して上記リングギア35と噛合し、ピニオンギア36bの回転力がリングギア35に伝達されることにより、クランク軸3が回転駆動されるようになっている。
(2)制御系
以上のように構成されたエンジンは、その各部が図1に示されるECU(エンジン制御ユニット)50により統括的に制御される。ECU50は、周知のとおり、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース、並びにこれらを互いに接続するバス等を有するマイクロプロセッサからなる。このようなECU50は、例えばエンジンの通常運転時に、インジェクタ16の燃料噴射動作、点火プラグ15の点火動作、およびスロットル弁24の開閉動作等を、エンジンの負荷(後述するアクセルペダル40の開度に基づく要求トルク)や回転速度等の各種条件に応じて制御するといった基本的な機能を有する他、いわゆるアイドルストップ機能として、予め定められた所定の条件下でエンジンを自動的に停止させ、または始動させる機能をも有している。つまり、当実施形態のエンジンは、アイドルストップ機能付きのエンジンである。
上記ECU50には、各種センサから種々の情報が入力される。すなわち、ECU50は、エンジンの各部に設けられた上記水温センサSW1、クランク角センサSW2、カム角センサSW3、およびエアフローセンサSW4と電気的に接続されており、これら各センサSW1〜SW4からの入力信号に基づいて、エンジンの冷却水温、クランク角、回転速度、気筒判別情報、吸気流量等の種々の情報を取得する。
また、ECU50には、車両に設けられた各種センサ(SW5〜SW9)からの情報も入力される。すなわち、車両には、運転者により踏み込み操作されるアクセルペダル40の開度を検出するためのアクセル開度センサSW5と、ブレーキペダル41のON/OFF(ブレーキの有無)を検出するためのブレーキセンサSW6と、車両の走行速度(車速)を検出するための車速センサSW7と、バッテリ(図示省略)の残容量を検出するためのバッテリセンサSW8と、車室内の温度を検出するための室温センサSW9とが設けられている。ECU50は、これら各センサSW5〜SW9からの入力信号に基づいて、アクセル開度、ブレーキの有無、車速、バッテリの残容量、車室内温度といった情報を取得する。
上記ECU50が有するより具体的な機能について説明する。ECU50は、運転状態判定部51、燃焼制御部52、スタータ制御部53、およびバルブ制御部54を機能的に有している。
上記運転状態判定部51は、上記各センサSW1〜SW9を含む入力要素からの信号に基づいて、エンジンおよび車両の状態を逐次判定するものである。特に、当実施形態において、運転状態判定部51は、エンジンを自動的に停止させる条件である自動停止条件が成立しているか否かを判定する機能、および、自動停止したエンジンを再始動させる条件である再始動条件が成立しているか否かを判定する機能を有している。
上記燃焼制御部52は、インジェクタ16、点火プラグ15、およびスロットル弁24を駆動することにより、燃料の噴射量、噴射タイミング、点火タイミング、およびスロットル開度を適宜調節しつつ、エンジンの各気筒12A〜12Dで行われる混合気の燃焼を制御するものである。
上記スタータ制御部53は、エンジンの始動時に、スタータモータ36を駆動してエンジンを一時的に強制回転させる制御を実行するものである。なお、当実施形態のようなアイドルストップ機能付きのエンジンでは、乗員が所定の操作(例えばキー操作やボタン操作)を行うことで開始されるエンジン始動(以下、このようなエンジン始動のことを「強制始動」という)と、エンジンの自動停止後に再始動条件が成立することで開始されるエンジン始動(以下、このようなエンジン始動のことを「自動始動」という)との2種類の始動パターンがある。上記スタータ制御部53は、これら強制始動、自動始動のいずれの場合でも、スタータモータ36を駆動してエンジンに回転力を付与する。
上記バルブ制御部54は、VVT32を駆動することにより、排気弁20の動作タイミングを可変的に制御するものである。当実施形態では、このバルブ制御部54およびVVT32により、本発明にかかるバルブ制御手段が構成されている。
(3)自動停止制御
次に、上記ECU50により実行されるエンジンの自動停止制御の内容を、図3のフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートに示す処理がスタートすると、ECU50は、各種センサ値を読み込む制御を実行する(ステップS1)。具体的には、水温センサSW1、クランク角センサSW2、カム角センサSW3、エアフローセンサSW4、アクセル開度センサSW5、ブレーキセンサSW6、車速センサSW7、バッテリセンサSW8、および室温センサSW9からそれぞれの検出信号を読み込み、これらの信号に基づいて、エンジンの冷却水温、クランク角、回転速度、気筒判別情報、吸気流量、アクセル開度、ブレーキの有無、車速、バッテリの残容量、車室内温度等の各種情報を取得する。
次いで、ECU50は、上記ステップS1で取得された情報に基づいて、エンジンの自動停止条件が成立しているか否かを判定する(ステップS2)。例えば、車両が停止状態にあること、アクセルペダル40の開度がゼロであること(アクセルOFF)、ブレーキペダル41が所定の踏力以上で踏み込まれていること(ブレーキON)、エンジンの冷却水温が所定値以上であること(つまり暖機がある程度進んでいること)、バッテリの残容量が所定値以上であること、エアコンの負荷(車室内温度とエアコンの設定温度との差)が比較的少ないこと、等の複数の要件が全て揃ったときに、自動停止条件が成立したと判定する。なお、車両が停止状態にあるという要件については、必ずしも完全停止(車速=0km/h)を必須とする必要はなく、所定の低車速以下(例えば3km/以下)になったときに車両が停止状態にあると判定してもよい。
上記ステップS2でYESと判定されて自動停止条件が成立したことが確認された場合、ECU50は、スロットル弁24の開度を、アイドル運転時に設定される開度(数%)から、予め定められた所定の開度(例えば20〜30%)まで増大させる制御を実行する(ステップS3)。なお、ここでスロットル弁24を開くのは、エンジンの自動停止中に各気筒12A〜12Dに導入される空気量を増やし、残留ガスの掃気を促進するためである。
次いで、ECU50は、インジェクタ16からの燃料の供給を停止する燃料カットを実行する(ステップS4)。すなわち、スロットル弁24の開操作が終了した時点で、各気筒12A〜12Dのインジェクタ16から噴射すべき燃料の量である目標噴射量をゼロに設定し、全てのインジェクタ16からの燃料噴射を停止することにより、燃料カットを実行する。
上記燃料カットによってエンジンの供給を停止しても、エンジンは一時的に惰性で回転する。ECU50は、その惰性回転の途中で、エンジン回転速度が予め定められた基準速度N1以下になったか否かを判定する(ステップS5)。そして、ここでYESと判定されてエンジンが間もなく完全停止することが確認された場合、ECU50は、スロットル弁24を閉方向に駆動し、その開度を全閉(0%)もしくはこれに近い低開度に設定する制御を実行する(ステップS6)。なお、ここでスロットル弁24を閉じるのは、エンジンが完全停止するのに伴って発生する振動等を抑制するためである。
次いで、ECU50は、エンジンの回転速度に基づいて、エンジンが完全停止したか(つまり回転速度が0rpmになったか)否かを判定する(ステップS7)。そして、ここでYESと判定されてエンジンが完全停止していることが確認された時点で、自動停止制御を終了する。
以上のような自動停止制御が終了した後のエンジンの各気筒12A〜12Dの状態を、図4に例示する。本図の例では、1番気筒12Aが膨張行程で停止し、2番気筒12Bが排気行程で停止し、3番気筒12Cが圧縮行程で停止し、4番気筒12Dが吸気行程で停止している。なお、以下では、自動停止制御によって○○行程で停止した気筒のことを、「停止時○○行程気筒」ということがある。例えば、膨張行程で停止した気筒12Aのことを「停止時膨張行程気筒12A」といい、排気行程で停止した気筒12Bのことを「停止時排気行程気筒12B」といい、圧縮行程で停止した気筒12Cのことを「停止時圧縮行程気筒12C」といい、吸気行程で停止した停止した気筒12Dのことを「停止時吸気行程気筒12D」という。
(4)自動始動制御
次に、上記ECU50により実行されるエンジンの自動始動制御の具体的内容について、図5のフローチャートを用いて説明する。この図5のフローチャートに示す処理がスタートすると、ECU50は、各種センサ値を読み込み(ステップS11)、その値に基づいて、エンジンの再始動条件が成立しているか否かを判定する(ステップS12)。例えば、ブレーキペダル41がリリースされたこと、アクセルペダル40が踏み込まれたこと、エンジンの冷却水温が所定値未満になったこと、バッテリの残容量の低下量が許容値を超えたこと、エンジンの停止時間(自動停止後の経過時間)が上限時間を越えたこと、エアコン作動の必要性が生じたこと(つまり車室内温度とエアコンの設定温度との差が許容値を超えたこと)等の要件の少なくとも1つが成立したときに、再始動条件が成立したと判定する。
次いで、ECU50は、上記水温センサSW1により検出されたエンジンの冷却水温が、予め定められた所定値Txよりも低いか否かを判定する(ステップS13)。
上記ステップS13でYESと判定されてエンジンの冷却水温が所定値Txより低いことが確認された場合、ECU50は、吸排気弁19,20の少なくとも一方の動作タイミングであるバルブタイミングを、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなるようなタイミングに設定する制御を実行する(ステップS14)。具体的に、当実施形態では、排気弁20用の動弁機構31に設けられたVVT32を駆動して、排気弁20が開弁し始める時期である排気弁20の開時期を早めることにより、エンジンの有効膨張比を低下させて、その値を有効圧縮比よりも低い値に設定する。ここで、「有効圧縮比」とは、上死点に位置するピストン13によって区画される燃焼室14の容積と、吸気弁19が閉弁した時点(つまり実質的な圧縮開始時点)でのピストン13によって区画される燃焼室14の容積との比をいう。また、「有効膨張比」とは、上死点に位置するピストン13によって区画される燃焼室14の容積と、排気弁20が開弁した時点(つまり実質的な排気開始時点)でのピストン13によって区画される燃焼室14の容積との比をいう。
図6および図7は、上記ステップS14の(排気弁20の開時期を早める制御)の前と後で、エンジンの有効圧縮比と有効膨張比との関係がどのように変化するのかを示す図である。なお、図中のTDCは上死点、IVCは吸気弁19の閉時期、EVOは排気弁20の開時期、BDCは下死点のことをそれぞれ表している。
まず、上記ステップS14の制御が行われない通常時は、図6に示すように、吸気弁19の閉時期(IVC)が排気弁20の開時期(EVO)よりも上死点(TDC)に近い側に設定されている。これにより、TDCでの燃焼室容積V0とIVCでの燃焼室容積V1との比(V1/V0)である有効圧縮比よりも、TDCでの燃焼室容積V0とEVOでの燃焼室容積V2との比(V2/V0)である有効膨張比の方が高く設定されている。これは、異常燃焼を回避したい等の理由から有効圧縮比をあまり高くできない一方で、有効膨張比については、それができるだけ高い方が、燃焼ガスの膨張エネルギーがピストン13を押し下げる期間が長くなり、熱効率が高まるからである。
これに対し、上記ステップS14の制御が行われて排気弁20の開時期(EVO)が早められると、図7に示すように、排気弁20の開時期(EVO)が、吸気弁19の閉時期(IVC)よりも上死点(TDC)に近い側へと移動し、これにより、有効膨張比(=V2’/V0)が有効圧縮比(=V1/V0)よりも低くなる。これは、後で詳しく説明するように、燃焼室14の壁面温度を迅速に上昇させるための措置である。
上記のようにして有効圧縮比>有効膨張比となるようにバルブタイミングを変更した後、ECU50は、スタータモータ36を駆動する制御を実行する(ステップS15)。これにより、エンジンのクランク軸3に回転力が付与され、エンジンが回転し始める。
次いで、ECU50は、インジェクタ16から噴射した燃料を点火プラグ15の点火によって燃焼させる制御を、各気筒12A〜12Dに対し順次実行する(ステップS16)。
具体的に、上記ステップS16の制御では、まず、図4に示した停止時膨張行程気筒12Aの燃焼室14にインジェクタ16から燃料が噴射され、かつ点火プラグ15による点火が行われることにより、上記停止時膨張行程気筒12Aに噴射された燃料と空気との混合気が着火して燃焼する。また、これに引き続いて、停止時圧縮行程気筒12Cにインジェクタ16から燃料が噴射されるとともに、当該気筒12Cのピストン13が上死点(圧縮上死点)付近に至るのを待ってから、点火プラグ15による点火が行われることにより、その点火以降の膨張行程中に、上記停止時圧縮行程気筒12Cに噴射された燃料と空気との混合気が燃焼する。さらにその後は、停止時吸気行程気筒12D、停止時排気行程気筒12Bの順に、燃料噴射および点火が行われて、燃焼が継続される。なお、このときのスロットル弁24の開度は、全閉(0%)よりも高い所定開度に設定される。
次いで、ECU50は、エンジンが完爆したか否か、つまり、エンジンの気筒12A〜12Dの全てにおいて1回ずつ燃焼が行われた否かを判定する(ステップS17)。そして、ここでYESと判定されてエンジンの完爆が確認された場合に、VVT32を駆動することにより、排気弁20の開時期を、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも高くなるようなタイミングへと戻す制御を実行する(ステップS18)。すなわち、上記ステップS14の制御によって早められていた排気弁20の開時期(EVO)を、再び遅くして上死点(TDC)から遠ざけることにより、図6に示すように、排気弁20の開時期(EVO)を吸気弁19の閉時期(IVC)よりも下死点(BDC)側に寄せ、これによって有効膨張比(V2/V0)を有効圧縮比(V1/V0)よりも高く設定する。
次いで、ECU50は、アクセルペダル40が踏み込まれているか否か、つまり、車両を発進させる要求があるか否かを判定する(ステップS24)。ここで、上記ステップS12で成立した再始動条件が、アクセルペダル40が踏み込まれることによって成立したものである場合、あるいは、そうでなくてもエンジンが完爆に至る途中でアクセルペダル40が踏み込まれた場合には、当然、上記ステップ24での判定はYESとなる。すると、ECU50は、通常運転へと移行し、アクセルペダル40の開度(アクセル開度)に応じた量の燃料をインジェクタ16から噴射して混合気に点火する通常の燃焼制御を実行する(ステップS26)。
一方、上記ステップS24でNOと判定されてアクセルOFFであること(車両の発進要求がないこと)が確認された場合、ECU50は、通常よりも遅いタイミングの点火によって混合気を着火、燃焼させる吹き上がり抑制制御を実行する(ステップS25)。すなわち、点火プラグ15の点火タイミングは、通常、圧縮上死点に近く最もトルクが出るタイミングであるMBT、もしくはその近傍に設定されるが、上記ステップS25の吹き上がり抑制制御では、点火タイミングがMBTよりも大幅に遅く設定される。これは、エンジン回転速度が一時的に過上昇する吹き上がりを抑制するためである。例えば、エンジンが完爆に至った直後の点火タイミングをMTB付近に設定してしまうと、エンジン完爆時の回転の勢いが余って、回転速度が一時的に過上昇する吹き上がり現象を起こすことがあるが、上記ステップS25のように、エンジン完爆後の点火タイミングをリタードした場合には、エンジントルクが一時的に低下するので、エンジン完爆後の回転速度が安定し、エンジンの吹き上がりが抑制される。
なお、上記ステップS25での点火リタード(吹き上がり抑制制御)は、例えば数回分の燃焼を対象に実行され、その後は、通常運転(ステップS26)へと移行する。
次に、上記ステップS13でNOと判定された場合、つまり、エンジンの冷却水温が所定値Tx以上であった場合に行われる制御について説明する。この場合、ECU50は、排気弁20の開時期を通常通りのタイミング、つまり、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも高くなるようなタイミングに設定する(図6参照)。そして、スタータモータ36を駆動してエンジンを強制回転させつつ(ステップS21)、各気筒12A〜12Dに対し燃料噴射および点火を順次実行して混合気を燃焼させる(ステップS22)。
次いで、ECU50は、エンジンが完爆したこと(気筒12A〜12Dの全てで1回ずつ燃焼が行われこと)を確認した上で(ステップS23)、アクセルONか否かを判定し(ステップS24)、その結果次第で、点火タイミングを遅らせた吹き上がり抑制制御を実行してから通常運転に移行するか(ステップS25,S26)、または、直ちに通常運転に移行する(ステップS26)。
(5)エンジン強制始動時の制御
次に、エンジンを強制始動させるとき、つまり、車両に搭乗した乗員がエンジン始動のための所定の操作(キー操作やボタン操作)を行うことで開始されるエンジン始動について簡単に説明する。
エンジンの強制始動時には、一般に、スタータモータ36により1回転以上エンジンを強制的に回転させた後、各気筒12A〜12Dに対し順次燃料噴射と点火を実行することにより、エンジンを勢いよく始動させる。このように、最初の点火(燃焼)までに1回転以上の強制回転(スタータモータ36による回転)が必要なのは、エンジンの強制始動は、システムが一旦シャットダウンされて気筒判別情報が無効になった状態から行われるので、新たに気筒判別を行うために少なくとも1回転以上のエンジン回転が必要だからである。
上記のようなエンジンの強制始動において、排気弁20の開時期は、図6に示した通常時のタイミング、つまり、有効膨張比が有効圧縮比よりも高くなるようなタイミングに設定される。また、点火プラグ15の点火タイミングについても、自動始動のとき(図5のステップS25)のように故意に遅くされることはなく、MBTに比較的近いタイミングでの点火による燃焼が継続的に実行される。
(6)作用等
以上説明したように、当実施形態に示したエンジンは、所定の条件下で自動的にエンジンを停止させたり始動させたりする、いわゆるアイドルストップ機能を付加したレシプロ式のガソリンエンジン(火花点火式エンジン)である。そして、自動停止したエンジンを再始動させるエンジンの自動始動の際には、エンジンの冷却水温が所定値Txよりも低いか否かが調べられ(ステップS13)、低い場合には、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなるように、排気弁20の開時期(開弁開始時期)が下死点に対し早められる(ステップS14)。このような構成によれば、エンジンの冷却水温が低い低温状態でのエンジン自動始動であっても、燃焼室14の壁面温度を迅速に上昇させることができ、燃焼の安定性を高められるという利点がある。
すなわち、上記実施形態では、低温状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなるようにバルブタイミングが制御されるので、燃焼室14で生成された燃焼ガスのエネルギーのうちピストン13を押し下げる仕事に変換される割合が減り(言い換えると冷却損失が増大し)、膨張行程中の燃焼ガスの温度を比較的高い値に維持することができる。これにより、燃焼室14の壁面温度を迅速に上昇させることができ、例えばエンジン完爆後に、吹き上がりを抑制するために点火タイミングを故意に遅らせた燃焼を行ったとしても、燃焼が極端に不安定になることがなく、失火等を確実に防止することができる。
図8は、有効膨張比の低下が燃焼室14の壁面温度上昇に有利であることを説明するための図である。この図8において、下段の波形IN、EX(またはEX’)は、それぞれ吸気弁19および排気弁20のリフトカーブを示しており、上段の波形Tc(またはTc’)は、燃焼室14内のガス温度である筒内温度の変化を示している。本図下段の波形EX’に示すように、有効膨張比が有効圧縮比よりも高い通常時、排気弁20の開時期は下死点(BDC)の近傍に設定されている(図8ではその時点をEVO1としている)。一方、筒内温度は、図8の上段に示すように、上死点(TDC)付近の燃焼によって大幅に上昇した後は、ピストン13の低下(燃焼室容積の拡大)とともに徐々に低下していくが、上記のように排気弁20の開時期が下死点(BDC)に近いEVO1に設定されている場合には、波形Tc’に示すように、ピストン13がこのEVO1に対応する位置に至るまで、筒内温度は継続的に低下していく。
これに対し、有効膨張比を低下させるために排気弁20の開時期を早めると、図8下段の波形EXに示すように、排気弁20は、ピストン13が下死点(BDC)に至るかなり前から開き始めるようになる(図8ではその時点をEVO2としている)。このEVO2の時点では、燃焼ガスの温度と圧力は充分に高いレベルに保たれているため、この状態で排気弁20が開かれると、燃焼室14内の燃焼ガスが排気ポート18へと流れ出し、燃焼室14の内部圧力が低下する。すると、ピストン13を挟んだ燃焼室14の内と外の圧力差が小さくなり、これ以降、燃焼ガスがピストン13を押し下げる仕事の量が減少する。つまり、燃焼ガスがもつエネルギーのうち、ピストン13を押し下げる仕事に回る分が少なくなるため、図8上段の波形Tcに示すように、排気弁20の開時期EVO2以降においても、燃焼ガスの温度は高いまま維持される。
以上のように、排気弁20の開時期が早められて有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなると、有効膨張比が有効圧縮比よりも高いときと比べて、排気弁20の開時期よりも後の燃焼ガスの温度が高くなるため、燃焼室14の壁面温度が上昇し易くなり、エンジンの暖機が促進されるということが理解できる。
また、上記実施形態では、エンジンの冷却水温が所定値Txよりも低い低温状態でのエンジン自動始動時に、上記のように一旦有効膨張比を有効圧縮比よりも低く設定した後、エンジンが完爆に至った後は、再び排気弁20の開時期を下死点(BDC)側に戻し、有効膨張比を有効圧縮比よりも高くするようにした(ステップS18)。このような構成によれば、エンジンが完爆に至るまでの過程において、有効膨張比の低下によってエンジンの暖機進行を図りながら、エンジンが完爆に至った後は、有効膨張比を元に戻して熱効率の高い燃焼を行わせることができる。
また、上記実施形態では、エンジンが完爆に至った後、車両の発進要求がなかった場合には、点火プラグ15の点火タイミングを遅く設定するようにした(ステップS25)。このような構成によれば、エンジンの完爆後に回転速度が過度に上昇すること(エンジンの吹き上がり)が抑制されるので、例えばエンジンの完爆後、わずかな時間をおいてから車両の発進要求(アクセルON)があったような場合でも、車両が唐突に飛び出すようなことがなく、車両の安全性や乗り心地を向上させることができる。
なお、以上のようなエンジン自動始動のときと異なり、乗員の操作によって開始されるエンジン始動(つまりエンジンの強制始動)のときは、常に有効膨張比が有効圧縮比よりも常に高くなるようにバルブタイミングが制御される。これは、エンジンの強制始動時においては、エンジンの吹き上がりを抑制する必要がなく(むしろある程度の吹き上がりを起こした方がエンジン始動の完了を乗員に確実に認識させることができる点で好ましいとされる)、点火タイミングを故意に遅らせるような制御をエンジン完爆後にあえて行う必要がないからである。すなわち、エンジンの強制始動においては、エンジンの吹き上がりを気にしなくてもよく、常に条件のよい燃焼を行えるので、燃焼室14の壁面温度を迅速に上昇させなくても燃焼が極端に不安定化することがない。このような事情から、エンジンの強制始動のときには、自動始動のときと異なり、エンジンの暖機を促進するために有効膨張比を有効圧縮比よりも低くするようなことはなされず、有効膨張比は常に有効圧縮比よりも高く設定される。
(7)変形例
上記実施形態では、水温センサSW1によってエンジンの冷却水温を検出し、この冷却水温が所定値Txよりも低い状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの有効膨張比を有効圧縮比よりも低く設定するようにしたが、このような有効膨張比の低下を行うか否かの判断基準となる温度は、燃焼室14の壁面温度に関連する温度(つまり壁面温度と比例して変化する温度)であればよく、上記エンジンの冷却水温に限られない。例えば、燃焼室14の壁面温度を直接検出してもよいし、燃焼室14内のガス温度を検出してもよい。
また、上記実施形態では、自動停止したエンジンについて再始動条件が成立した後、エンジンの冷却水温を確認した上で、必要な場合(水温<Txの場合)にはVVT32を駆動して排気弁20の開時期を早めることにより、エンジンの有効膨張比を低下させるようにしたが、VVT32を駆動するタイミングがこれに限られない。例えば、燃焼室14の壁面温度に関連する温度が比較的低い状態で自動停止条件が成立した場合には、自動停止制御によってエンジンが完全停止する前に、VVT32を予め駆動して有効膨張比を低下させてもよい。このようにした場合、VVT32としては、必ずしも上記実施形態のような電磁式VVTを用いる必要はなく、エンジンによって駆動されるオイルポンプを油圧供給源とした油圧式VVTであってもよい。ただし、油圧式VVTであっても、電動モータによって駆動されるオイルポンプを油圧供給源としたVVTである場合には、エンジンが完全停止した後もVVTを駆動することができるので、上記実施形態と同様の制御(エンジンの自動停止後、再始動条件が成立してからVVTを駆動すること)が可能である。
また、上記実施形態では、排気弁20用のVVT32として、カムシャフトの回転位相を変更するタイプのVVTを採用し、VVT32の駆動に伴い排気弁20の開時期だけでなく閉時期も変更するようにしたが、VVT32は、少なくとも排気弁20の開時期を変更できるものであればよく、排気弁20の閉時期を固定したまま開時期のみを変更するものであってもよい。
また、上記実施形態では、エンジンの有効膨張比を有効圧縮比よりも低くするために、排気弁20の開時期を下死点に対し早める(下死点に対しより進角側に遠ざかったタイミングとする)ようにしたが、結果的に有効圧縮比>有効膨張比になればよく、そのための方法は、上記排気弁20の開時期の進角化に限られない。例えば、吸気弁19の閉時期を早めて(下死点に近づけて)、有効圧縮比を相対的に高めることによっても、有効圧縮比>有効膨張比を実現することができる。
また、上記実施形態では、火花点火式のガソリンエンジンを例に挙げて本発明の好ましい形態を説明したが、本発明の構成を適用可能なエンジンは、燃焼室内で生成された燃焼ガスのエネルギーをピストンの往復運動として取り出すレシプロ式のエンジンであれば、特にその種類を問わない。例えば、ディーゼルエンジン(軽油を自着火により燃焼させるエンジン)に代表される圧縮自己着火式のエンジンに対しても、本発明の構成を好適に適用することができる。ディーゼルエンジンの場合でも、エンジンの自動始動時に吹き上がりを抑制する必要があるという事情は同じであり、例えば、エンジンの完爆後、燃料の噴射量を急減させるか、あるいはその噴射時期を一時的に遅くする等により、エンジンの吹き上がりを抑制する措置が採られる。本発明の構成によれば、有効圧縮比>有効膨張比とすることで自動始動の開始時に暖機の促進が図られるため、上記のような吹き上がり抑制制御(噴射量の急減または噴射時期のリタード)を行ったときに燃焼が極端に不安定化することが防止される。
1 エンジン本体
12A〜12D
13 ピストン
14 燃焼室
15 点火プラグ
32 VVT(バルブ制御手段)
54 バルブ制御部(バルブ制御手段)
SW1 水温センサ(検出手段)
Tx (温度の)所定値

Claims (5)

  1. 燃焼室内で混合気が燃焼して生じる燃焼ガスのエネルギーをピストンの往復運動として取り出すレシプロ式の車載用エンジンに設けられ、所定の自動停止条件が成立したときに上記エンジンを自動停止させるとともに、その後所定の再始動条件が成立したときに上記エンジンを自動始動させるエンジンの始動制御装置であって、
    上記エンジンの燃焼室の壁面温度またはこれに関連する所定の温度を検出する検出手段と、
    上記エンジンの吸気弁の閉時期、および排気弁の開時期の少なくとも一方を可変的に制御可能なバルブ制御手段とを備え、
    上記バルブ制御手段は、上記検出手段により検出された温度が所定値よりも低い低温状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの有効膨張比が有効圧縮比よりも低くなるように上記吸排気弁を制御することを特徴とするエンジンの始動制御装置。
  2. 請求項1記載のエンジンの始動制御装置において、
    上記バルブ制御手段は、上記低温状態でのエンジン自動始動時に、上記排気弁の開時期を下死点に対し早めることにより、エンジンの有効膨張比を有効圧縮比よりも低くすることを特徴とするエンジンの始動制御装置。
  3. 請求項1または2記載のエンジンの始動制御装置において、
    上記バルブ制御手段は、上記低温状態でのエンジン自動始動時に、エンジンの全気筒で少なくとも1回ずつ燃焼が済んだエンジン完爆の時点まで有効膨張比を有効圧縮比よりも低くし、エンジンが完爆に至った後は、有効膨張比を有効圧縮比よりも高くすることを特徴とするエンジンの始動制御装置。
  4. 請求項3記載のエンジンの始動制御装置において、
    上記エンジンは、燃焼室内の混合気に点火する点火プラグを備えた火花点火式エンジンであり、
    上記自動始動の開始後にエンジンが完爆に至った後、車両の発進要求がなかった場合には、上記点火プラグの点火タイミングが、エンジンの強制始動時に設定される点火タイミングよりも遅く設定されることを特徴とするエンジンの始動制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの始動制御装置において、
    エンジンの強制始動時は、有効膨張比が有効圧縮比よりも常に高くなるように吸排気弁が制御されることを特徴とするエンジンの始動制御装置。
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