JP2013182841A - 有機el素子製造用ドナーフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】 異物が存在するフィルムを用いた場合であっても、レーザー誘起サーマルイメージング(LITI)に好適に使用することのできる優れた特性を有する有機EL素子製造用ドナーフィルムを提供する。
【解決手段】 全ての層に同じ粒径の粒子を含む、少なくとも1層からなる、ヘーズ20%以上のポリエステルフィルムに、光熱変換層、剥離層、有機層、第1電極を順次積層してなることを特徴とする有機EL素子製造用ドナーフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】 全ての層に同じ粒径の粒子を含む、少なくとも1層からなる、ヘーズ20%以上のポリエステルフィルムに、光熱変換層、剥離層、有機層、第1電極を順次積層してなることを特徴とする有機EL素子製造用ドナーフィルム。
【選択図】 なし
Description
本発明は、レーザー誘起サーマルイメージング(LITI)に好適に使用することのできるドナーフィルムに関するものである。
近年、フルカラー有機EL表示パネルのための有機層のパターン化技術が活発に研究開発されている。例えば、大型基板を用いることができると共に作製時間を大幅に短縮することができるパターン化方法として、転写法が提案されている。また、開口率を向上させる目的で、TFT基板と逆方向から光を取り出す構造も提案されている。
しかし、上記転写法を用いて、TFT基板と逆方向から光を取り出す構造の有機EL素子を製造する場合、基板側に予め空気中で安定性に乏しい材料を用いて陰極を成膜する必要がある。このような陰極のついた基板は容易に陰極が酸化しやすいため、取り扱いが非常に難しく、酸化すると有機EL素子の発光特性が低下するという問題がある。この問題を解決するため、陰極を有機層と一緒に転写することも考えられるが、陰極と有機層を一緒に転写することは難しく、転写したとしても転写部分のエッジがきれいに揃わず(つまり、ぎざぎざになる)という問題もある。
このような事情を考慮して、基板上の陰極の酸化を防止することにより有機EL素子の発光特性の低下を防止できる有機EL素子製造用ドナーフィルムが提案されている(特許文献1)。
しかし、上記転写法を用いて、TFT基板と逆方向から光を取り出す構造の有機EL素子を製造する場合、基板側に予め空気中で安定性に乏しい材料を用いて陰極を成膜する必要がある。このような陰極のついた基板は容易に陰極が酸化しやすいため、取り扱いが非常に難しく、酸化すると有機EL素子の発光特性が低下するという問題がある。この問題を解決するため、陰極を有機層と一緒に転写することも考えられるが、陰極と有機層を一緒に転写することは難しく、転写したとしても転写部分のエッジがきれいに揃わず(つまり、ぎざぎざになる)という問題もある。
このような事情を考慮して、基板上の陰極の酸化を防止することにより有機EL素子の発光特性の低下を防止できる有機EL素子製造用ドナーフィルムが提案されている(特許文献1)。
ドナーフィルムの基材としてポリエステルフィルムが使用されている。明るく鮮明な画像を得るために、光学用フィルムとして用いられるベースフィルムはその使用形態から透明性が良好で、かつ画像に影響を与える異物やキズ等の欠陥がないことが必要となる。近年では、その耐熱性と光透過性から、OLEDのEL層パターニングに用いられる、ドナーフィルムの基材の候補として注目されている。
ドナーフィルムの要求特性として、レーザーパターニング時にレーザー光を阻害しないことが求められる。そのため、レジン重合時に添加された触媒金属や、押出機で発生する樹脂の劣化物などの内部異物を皆無とする必要がある。
押出機に用いるフィルターの径を小さくし、内部異物の原因物質をある程度、取り除くことは可能であるが、フィルター圧が高くなりやすいため、押出せなくなる可能性があり、生産性を考慮すると、内部異物の皆無なフィルムを製膜することは、事実上不可能である。
また、一般的に無機粒子は、レーザー光を散乱するため、ドナーフィルムとしては、無粒子のフィルムが好まれるが、無粒子のフィルムでも内部異物を皆無にすることはできていない。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、異物が存在するフィルムを用いた場合であっても、レーザー誘起サーマルイメージング(LITI)に好適に使用することのできる優れた特性を有する有機EL素子製造用ドナーフィルムを提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を採用することにより、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、全ての層に同じ粒径の粒子を含む、少なくとも1層からなる、ヘーズ20%以上のポリエステルフィルムに、光熱変換層、剥離層、有機層、第1電極を順次積層してなることを特徴とする有機EL素子製造用ドナーフィルムに存する。
本発明によれば、異物が存在するフィルムを用いた場合であっても、レーザー誘起サーマルイメージング(LITI)に好適に使用することのできる優れた特性を有する有機EL素子製造用ドナーフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用してよいが、好ましくはアンチモン化合物の量を零またはアンチモンとして100ppm以下にすることによりフィルムのくすみを低減したものが好ましい。
なおポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい。
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、透明性に劣るようになってしまうことがある。
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、フィルムを構成する全ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
本発明のフィルムは、共押出法を用いて積層構造とすることができるが、その際最外層厚みは、片側のみの厚みで通常2μm以上かつ総厚みの1/4以下であることが好ましい。かかる厚みが2μm未満では、加工中の熱履歴等により、内層に含有されているオリゴマー(環状三量体)がフィルム表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルム表面の異物量の増加が見られる可能性があり、一方総厚みの1/4の厚さより厚いと最外層に配合する粒子量が増えて透明性を損なう恐れがある。
一方、本発明を単層で実施する際には、フィルムには可能な限り粒子を含有させないようにし、表裏の塗布層に粒子を含有させることも好ましい。
また前記紫外線吸収剤、染料等の添加剤を添加する場合には積層フィルムの中間層に配合することが好ましい。
以下、ポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
まず、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜5倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜5倍延伸を行い、200〜240℃で10〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に5〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
本発明においては、前記のとおりポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。例えばA原料として特定の粒子を用いてA層の表面形状を設計し、B原料としては粒子を含有しない原料を用い、A/BまたはA/B/A構成のフィルムとすることができる。この場合B層の原料を自由に選択できることからコスト的な利点などが大きい。また当該フィルムの再生原料をB層に配合しても表層であるA層により表面粗度の設計ができるので、さらにコスト的な利点が大きくなる。
特に本発明のフィルムは、光学用途に用いるため、ハードコート層、反射防止層、防眩層等を設けたり、蒸着層等が設けられたりするため、それらの層を形成する際の塗布性や接着性を向上すること、あるいは表面を清浄な状態に保つため帯電を防止することを目的として、下引き層としての塗布層を設けることができる。かかる塗布層の形成に当たっては、フィルムを製造する工程内、特に縦方向に延伸した後、横方向の延伸の前に行う方法が、極めて薄い塗布層を形成できる点、塗布液の乾燥や硬化反応を製膜工程内で実施できることなどの点で好ましい。かかる塗布層としては、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなるものが好ましく、バインダー樹脂としては接着性の観点から、通常ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびポリウレタンの中から選ばれたポリマーを採用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。ここでいう誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。
なお必要に応じてフィルムの製造後にオフラインコートでコートしてもよい。また片面、両面を問わない。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶剤系いずれでもよいが、インラインコーティングの場合は、水系または水分散系が好ましい。
また本発明のフィルムは、光学用に用いるので、接着性の改良以外にも外光の映り込みや静電気によるゴミ付着防止、さらには電磁波シールドを目的とした機能性多層薄膜を形成させることも好ましい。
本発明で塗布剤として用いる、上記のポリエステル、アクリル系ポリマー、ポリウレタンの中で特に好ましいポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものであり、ポリウレタンの中でもポリエステルポリウレタンであり、カルボン酸残基を持ち、その少なくとも一部はアミンまたはアンモニアを用いて水性化されているポリマーである。
架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点で、メラミン系樹脂が特に好ましい。 メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる傾向がある。
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。一方有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.01〜0.5μm、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする傾向がある。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
このような塗布フィルムを光学用途に適用する場合には、塗布層表面の塗布ヌケが、この塗布層のさらに上に反射防止層等を設ける時等に問題となっている。塗布ヌケが生じる理由は明確ではないが、フィルム中にある異物がフィルム表面に粗大突起を作りそれが核となって塗布剤がはじき、それが延伸されて塗布ヌケが発生したり、フィルムの表面に付着したオリゴマーやゴミが核となりそこを核として塗布剤がはじきヌケとなったりする場合等が考えられる。したがって、かかる核となり得るゴミや異物をできる限り除去した条件で製膜することが必要である。かかる異物にはフィルム上に付着または析出したオリゴマーも含まれるため、フィルムが含有するオリゴマー量を低減することも塗布のヌケを減少させる効果を有する。
本発明のドナーフィルムを構成する光熱変換層光熱変換層は、光を吸収して効率良く熱を発生する機能を有する膜である。そのような膜としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、その酸化物/硫化物からなる金属膜、カーボンブラック、黒鉛、赤外線染料などを高分子材料に分散した膜などを用いることができる。
剥離層は光熱変換層が発生する熱を受けて、転写層を剥離させるための層であり、その材料としては特に限定されないが、例えば、ポリαメチルスチレンなどを用いることができる。
なお、剥離層は、その上にガス発生層を必要に応じて備えていてもよい。ガス発生層は、光または熱を吸収して、分解反応によりガス(例えば、窒素ガスなどを生成する)を放出することにより転写を効率良く行うための層で、その材料としては、例えば、四硝酸ペンタエリトリトール、トリニトロトルエンなどを挙げることができるが、この発明は特にこれらに限定されるものではない。
本発明では、ポリエステルフィルム上に光熱変換層や剥離層が形成されたものをベースフィルムと呼ぶ。
転写層転写層としては、ベースフィルム上の有機層と第1電極とから転写層が構成されてもよいし、ベースフィルム上の対向電極、有機層および第1電極とから転写層が構成されてもよい。
有機層有機層としては、単層構造でも多層構造でも良く、その構成は特に限定されないが、例えば、下記の構成を挙げることができる。
(1)有機発光層(2)電子輸送層(3)正孔輸送層/有機発光層(4)有機発光層/電子輸送層(5)正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層(7)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/ブロッキング層/電子輸送層
(1)有機発光層(2)電子輸送層(3)正孔輸送層/有機発光層(4)有機発光層/電子輸送層(5)正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層(7)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/ブロッキング層/電子輸送層
有機発光層有機発光層は、1層であってもよいし、多層構造であってもよい。またここで、有機発光層は従来の方法で成膜することが可能であり、例えば、有機発光材料を直接、真空蒸着法、EB法、MBE法、スパッタリング法等のドライブロセスで成膜することが可能であるが、この発明は特にそれらに限定されるものではない。
例えば、有機発光層形成用塗液を用いて、スピンコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法等のウェットプロセスで成膜することも可能であるが、この発明は特にそれらに限定されるものではない。
ここで、有機発光層形成用塗液は、少なくとも発光材料を含有した溶液であり、1種類もしくは多種類の発光材料を含有していても良いし、さらには結着用の樹脂を含有していてもよい。また、その他に、レベリング剤、発光アシスト剤、電荷輸送材料、添加剤(ドナー、アクセプター等)、または、発光性のドーバント等を含有していてもよく、この発明は特にこれらに限定されるものではない。
ここで、発光材料としては、特に限定されないが、公知の有機EL素子用の発光材料を使用することができ、低分子発光材料としては、例えば、4,4'−ジフェニルビニル)−ビフェニル(DPVBi)などの芳香族ジメチリデェン化合物、5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾールなどのオキサジアゾール化合物、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)などのトリアゾール誘導体、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼンなどのスチリルベンゼン化合物、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体などの蛍光性有機材料、アゾメチン亜鉛錯体、(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム錯体(Alq3)などの蛍光性有機金属化合物などを挙げることができる。
一方、高分子発光材料としては、例えば、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)DO−PPP、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジプロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルへキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(へキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、(ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン))(PDAF)などを挙げることができ、高分子発光材料の前駆体としては、例えば、PPV前駆体、PNV前駆体、PPP前駆体などを挙げることができる。
ここで、結着用樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエステルなどを挙げることができる。ここで、溶剤としては、上記発光材料を溶解、または、分散できる溶剤であればよく、特に限定されないが、例えば、純水、メタノール、エタノール、THF、クロロホルム、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどを挙げることができる。
電荷輸送層は、1層であってもよいし、多層構造であってもよい。またここで、電荷輸送層は従来の方法で成膜することが可能であり、例えば、電荷輸送材料を直接、真空蒸着法、EB法、MBE法、スパッタリング法等のドライプロセスで成膜することが可能であるが、この発明は特にそれらに限定されるものではない。
また、例えば、電荷輸送層形成用塗液を用いて、スピンコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法等のウェットプロセスで成膜することも可能であるが、この発明は特にそれらに限定されるものではない。
また、電荷輸送層形成用塗液は、少なくとも電荷輸送材料を含有した溶液であり、1種類もしくは多種類の電荷輸送材料を含有していてもよいし、さらには結着用の樹脂を含有していてもよい。また、その他に、レベリング剤、添加剤(ドナー、アクセプター等)等を含有していてもよく、この発明は特にこれらに限定されるものではない。
ここで電荷輸送材料としては、特に限定されないが、有機EL素子用、有機光導電体用の公知の電荷輸送材料が使用可能である。例えば、正孔輸送材料としては、無機p型半導体材料、ポルフィリン化合物、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)一N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPD)などの芳香族第三級アミン化合物、ヒドラゾン化合物、キナクリドン化合物、スチリルアミン化合物等の低分子材料、ポリアニリン(PANI)、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネイト(PEDT/PSS)、ポリ[トリフェニルアミン誘導体](Poly−TPD)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)などの高分子材料、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Pre−PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)前駆体(Pre−PNV)などの高分子材料前駆体などを挙げることができる。
一方、電子輸送材料としては、例えば、無機n型半導体材料、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体などの低分子材料、ポリ[オキサジアゾール[(Poly−OXZ)などの高分子材料などを挙げることができる。
ここで、結着用樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエステルなどを挙げることができる。ここで、溶剤としては、上記電荷輸送材料を溶解、または、分散できる溶剤であればよく、特に限定されないが、例えば、純水、メタノール、エタノール、THF、クロロホルム、キシレン、トリメチルベンゼンなどを挙げることができる。
ブロッキング層は、1層であってもよいし、多層構造であってもよい。また、ブロッキング層形成用塗液は、少なくとも電荷ブロッキング材料を含有した溶液であり、1種類もしくは多種類の電荷ブロッキング材料を含有していてもよいし、さらには結着用の樹脂を含有していてもよい。また、その他に、レベリング剤などを含有していてもよく、この発明は特にこれらに限定される物ではない。
ここで電荷ブロッキング材料としては、公知の有機EL素子用の電荷ブロッキング材料が使用可能であり、特に限定されないが、例えば、4,7−ジフェニルー1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリンなどを挙げることができる。
ここで、結着用樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエステルなどを挙げることができる。ここで、溶剤としては、上記電荷ブロッキング材料を溶解、または、分散できる溶剤であればよく、特に限定されないが、例えば、純水、メタノール、エタノール、THF、クロロホルム、キシレン、トリメチルベンゼンなどを挙げることができる。
第1電極としては、陰極として従来用いられてきた材料を用いることが可能である。また、第1電極の厚みは約50nm以下とすることができる。これは、有機EL素子用基板の第2電極上に第1電極を転写法できれいに転写するうえで好ましい条件である。具体的には、第1電極は膜厚が約0.1〜50nmであることが好ましく、更に好ましくは、約0.1〜10nmであることが好ましい。
また、第1電極は複数の層から構成することができる。また、第1電極を構成する少なくとも1つの層は絶縁物からなっていてもよい。また、上記絶縁物はアルカリ金属又はアルカリ土類金属からなっていてもよい。また、第1電極を構成する少なくとも1つの層は、仕事関数が1eV〜4eVの金属層からなっていてもよい。また、上記金属層はリチウム又はバリウムからなっていてもよい。
ここで、具体的には、第1電極は1層でもよいが、より安定な金属を用いて多層構成にすることが好ましい。例えば、仕事関数の低い金属(Ca、Ce、Cs、Rb、Li、Baなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属)からなる単層膜、または絶縁物(LiF、Li2O、BaF2などのアルカリ金属、アルカリ土類金属)からなる単層膜を用いてもよいし、また、前記仕事関数の低い金属と安定金属(Al、Agなど)との積層膜、または前記絶縁物と安定金属(Al、Agなど)との積層膜を用いてもよい。また、これらの材料は、EB、スパッタ、抵抗加熱蒸着法などで形成できるが、この発明はこれらに限定されるものではない。
また、第1電極はパターン化されていてもよい。具体的には、特に、基板としてTFTが形成された基板を用いる場合、画素間で第1電極による短絡を防止するため、あらかじめ第1電極をストライプ状にパターン化して、ストライプ状にパターン化した第1電極と垂直方向にレーザーを照射、もしくは、熱を放射し転写することにより第1電極を四角状に転写してもよいし、または、最初から四角状にパターン化した第1電極を用いレーザーを照射、もしくは、熱を放射して転写してもよい。
また、基板としてTFT付きの基板を用いる場合には、画素間で第1電極による短絡を防止するため第1電極の膜厚を画素間で短絡が起きない程度に薄くしてもよい。
対向電極対向電極としては、従来の電極材料を用いることが可能であり、仕事関数が高い金属(Au、Pt、Niなど)、もしくは、透明電極(ITO、IDIXO(出光興産株式会社の登録商標、酸化インジウム(In2O3)に酸化亜鉛(ZnO)を約10重量%添加した電極材料)SnO2など)を用いることができる。また、これらの材料は、EB、スパッタ、抵抗加熱蒸着法などで形成することが可能であるが、この発明はこれらに限定される物ではない。また、フォトリソグラフィー法によりパターン化を行う事も可能である。
なお、ベースフィルムに転写層を成膜する方法としては、ベースフィルム上に有機層の構成材料および第1電極の構成材料を従来のドライブロセス、ウェットプロセスで成膜することにより転写層を成膜することが可能であるが、この発明は特にこれらに限定される物ではない。
例えば、有機層の構成材料および第1電極の構成材料を直接、蒸着法、MBE法、イオンビーム法、スパッタリング法等のドライブロセスで、または、有機層の構成材料および第1電極の構成材料をそれぞれ溶解もしくは分散した塗液をスピンコート法、ドクターブレード法、ディップコート法、マイクログラビアコ一夕ー、吐出コート法、スプレーコート法もしくはインクジェット法などのウェットプロセスによって成膜することにより転写層を成膜することが可能である。
また、転写層として、有機層を成膜する前にベースフィルム上に対向電極を成膜する事も可能である。しかし、この発明による転写層は、有機層を成膜した後に有機層上に第1電極を成膜する必要がある。ここで、有機層を成膜する際の環境は特に限定される物ではないが、膜の吸湿性、材料の変質を考えると窒素、アルゴン等の不活性ガス中で成膜を行うことが好ましい。
また、有機膜の成膜後に、残留溶媒を除去する目的で、加熱乾燥を行うことが好ましい。ここで、乾燥を行う環境は特に限定されるものではないが、用いた有機材料の変質を防止する観点から、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行うことが好ましい。更に好ましくは減圧下で行うことがより好ましいが、この発明は特にこれらに限定されるものではない。
有機EL素子用基板としては、あらかじめ表面に厚さ約100〜500nmの第2電極を有する基板を用いることができる。ここで、上記第2電極は導電性の材料からなっていればよい。しかし、本発明により第1電極を約50nm以下にした場合、第1電極だけで十分な導電性を付加することが、困難であるため第2電極で十分な導電性を持たせてやる必要があり、好ましくは膜厚を約100nm以上にする必要がある。というのは、電極として十分な導電性がないと、電極での電圧降下が起こり、消費電力の上昇につながるからである。なお、具体的には、上記第2電極はアルミニウムまたは銀を含む材料などの安定な金属から形成するとよい。また、有機EL素子用基板は薄膜トランジスタ(TFT)からなるスイッチング素子をさらに備えていてもよい。
以上、本発明の有機EL素子製造用ドナーフィルムを構成する各層および有機EL素子用基板の実施の形態について詳述したが、この発明において有機EL素子は表面に第2電極を有する有機EL素子用基板上に第1電極、有機層および対向電極が順に積層されて構成され、これら各層のうち、少なくとも第1電極と有機層がドナーフィルムの転写層から転写される。
したがって、他の層は従来の方法で成膜されていてもよく、スピンコーティング法、デイツビング法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法等の塗布法、インクジェット法、凸版印刷、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビア印刷法等の印刷法等のウェットプロセス、もしくは、真空蒸着法、EB法、MBE法、スパッタリング法等のドライプロセスで形成することができる。
上述の有機EL素子製造用ドナーフィルムと有機EL素子用基板とを用いた有機EL表示パネルの製造方法およびその製造方法で製造された有機EL表示パネルについてそれらの実施の形態を詳述する。
本発明のドナーフィルムを用いた有機EL表示パネルの製造方法は、上述の有機EL素子製造用ドナーフィルムを、表面に第2電極10を有する有機EL素子用基板上に貼り付け、その後、前記ドナーフィルムの裏面からレーザー光を照射(または熱源を放射)することにより前記ドナーフィルム中の転写層を前記基板上に転写し、さらにべースフィルムを取り除き、必要に応じて対向電極(図示せず)を形成することにより有機EL表示パネルを製造するものである。つまり、上記製造方法で製造された有機EL表示パネルの陰極は、有機EL素子用基板上の第2電極と、転写層から転写された第1電極とから構成されることになる。
ここで、転写の工程は、不活性ガス中、もしくは、真空中で行うことが望ましい。また、有機EL素子製造用ドナーフィルムを貼り付ける前に、第2電極上をクリーニングしておくことが好ましい。具体的には、例えば、第2電極上に付着したゴミ等号除去する目的でIPA洗浄、有機EL素子製造用ドナーフィルムとの密着性を向上させる目的でUVオゾン処理やプラズマ処理、第2電極表面に形成された絶縁層を除去する目的で逆スパッタなどのクリーニング処理をしておくことが好ましい。
ここで、異なる特性をもつ有機層をそれぞれ別のべ−スフィルム上に成膜したものを用いて転写の工程を繰り返すことにより有機EL素子用基板上に有機層からなる多層膜を積層させることができる。
具体的には、例えば、ベースフィルム上に正孔注入材料を成膜した有機EL素子用ドナーフィルム、ベースフィルム上に正孔輸送材料を成膜した有機EL素子用ドナーフィルム、ベースフィルム上に発光材料を成膜した有機EL素子用ドナーフィルム、ベースフィルム上に電子輸送材料を成膜した有機EL素子製造用ドナーフィルムなどを用いることができる。
ただし、有機EL素子用基板の第2電極上に積層される層を転写するために用いる有機EL素子製造用ドナーフィルムには、第1電極が転写層の最上層となるように成膜する必要がある。例えば、第2電極上に電子輸送層を転写する場合には、ベースフィルム上に電子輸送材料からなる電子輸送層を成膜し、かつ、この電子輸送層上に第1電極を成膜した有機EL素子製造用ドナーフィルムを用いる必要がある。また、第2電極上に発光層を転写する場合には、ベースフィルム上に発光材料からなる発光層を成膜し、かつ、この発光層上に第1電極を成膜した有機EL素子製造用ドナーフィルムを用いる必要がある。
また、有機赤色発光多層膜(例えば、正孔輸送層/赤色発光層/第1電極からなる)、有機緑色発光多層膜(例えば、正孔輸送層/緑色発光層/第1電極からなる)、有機青色発光多層膜(例えば、正孔輸送層/青色発光層/第1電極からなる)をそれぞれベースフィルム上に成膜した有機EL素子製造用ドナーフィルムを用い、転写の工程を繰り返すことにより有機EL素子用基板上に赤色、緑色、青色発光多層膜からなる多色発光の有機EL素子を形成することもできるが、この発明は特にこれらに限定されるものではない。
また、上記製造方法で製造された有機EL表示パネルには、その光出射側に偏光板を設けることができる。この発明で用いることができる偏光板としては、従来の直線偏向板と1/4λ板を組み合わせたものであればよい。これにより、コントラストを向上させることが可能である。
また、上記製造方法で製造された有機EL表示パネルは、有機EL素子用基板と反対側を封止膜又は封止基板で封止することもできる。封止膜又は封止基板の材料としては、従来、封止膜または封止基板として用いられている材料を用いることができる。
例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスをガラス、金属等で封止してもよい。この場合、さらに、不活性ガス中に酸化バリウム等の吸湿剤等を混入することもできる。また、対向電極上に樹脂を直接スピンコートで塗布するか、もしくは、樹脂膜を貼り付けることにより封止膜としてもよいし、対向電極上に窒化シリコンなどをプラズマCVD法で成膜することにより封止膜としてもよいが、この発明はこれらに限定されるものではない。これにより、外部から酸素や水分が有機EL素子内に混入するのを防止することが可能となり、寿命の向上させる上で非常に望ましいものとなる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)フィルムヘーズ
JIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDHー300Aによりフィルムの濁度を測定した。
JIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDHー300Aによりフィルムの濁度を測定した。
(3)フィルム中の粒子の分散性
二軸延伸フィルム中に添加された粒子の分散状態を顕微鏡で観察することによ
り判定した。
二軸延伸フィルム中に添加された粒子の分散状態を顕微鏡で観察することによ
り判定した。
(4)YAGレーザー転写エネルギー測定
パワーメーター(GENTEC社製、TPM300)で測定した。
パワーメーター(GENTEC社製、TPM300)で測定した。
(5)加工適正
ドナーフィルムを剥がした基板を、光学顕微鏡を用いて、基板上に転写層が転写されているか否か(転写層の有無)を観測し、以下の指標で評価を行った。
◎:正常に転写(90%以上)
○:一部転写不良(60%以上90%未満)
△:転写不良(30%以上60%未満)
×:転写付加(30%未満)
ドナーフィルムを剥がした基板を、光学顕微鏡を用いて、基板上に転写層が転写されているか否か(転写層の有無)を観測し、以下の指標で評価を行った。
◎:正常に転写(90%以上)
○:一部転写不良(60%以上90%未満)
△:転写不良(30%以上60%未満)
×:転写付加(30%未満)
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.68に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の固有粘度は0.68であった。
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.03部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.68に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の固有粘度は0.68であった。
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.2μmのシリカ粒子を0.6部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.66に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、固有粘度0.66、であった。
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.2μmのシリカ粒子を0.6部、三酸化アンチモン0.03部を加えて、極限粘度0.66に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、固有粘度0.66、であった。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(B)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径3.2μmのシリカ粒子を1.0部とした以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(B)は、固有粘度0.65、であった。
ポリエステル(B)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径3.2μmのシリカ粒子を1.0部とした以外は、ポリエステル(B)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(B)は、固有粘度0.65、であった。
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とジエチレングリコール2重量部とし、重合触媒として酸化ゲルマニウムを使用したこと以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(D)を得た。なお、酸化ゲルマニウムの添加方法は公知の方法を採用し、その添加量はゲルマニウムとして原料重量に対して100ppmとした。得られたポリエステル(D)の固有粘度は0.68であった。
ポリエステル(A)の製造方法において、出発原料をテレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とジエチレングリコール2重量部とし、重合触媒として酸化ゲルマニウムを使用したこと以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様な方法を用いてポリエステル(D)を得た。なお、酸化ゲルマニウムの添加方法は公知の方法を採用し、その添加量はゲルマニウムとして原料重量に対して100ppmとした。得られたポリエステル(D)の固有粘度は0.68であった。
<単層ポリエステルフィルム1の製造方法>
前述のポリエステル(A)、(B)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をベント式二軸押出機に供給し、285℃で溶融し、単層構成で押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度84℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、232℃で熱処理を行った後、横方向に2.3%弛緩し、厚さ100μmの単層ポリエステルフィルム1を得た。
前述のポリエステル(A)、(B)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をベント式二軸押出機に供給し、285℃で溶融し、単層構成で押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度84℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、232℃で熱処理を行った後、横方向に2.3%弛緩し、厚さ100μmの単層ポリエステルフィルム1を得た。
<積層ポリエステルフィルム1の製造方法>
前述のポリエステル(A)、(B)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(B)、(D)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をB層の原料として、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、A層を最外層(表層)、B層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成で共押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度84℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、232℃で熱処理を行った後、横方向に2.3%弛緩し、厚さ100μmの積層ポリエステルフィルム1を得た。
前述のポリエステル(A)、(B)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(B)、(D)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をB層の原料として、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、A層を最外層(表層)、B層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成で共押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度84℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、232℃で熱処理を行った後、横方向に2.3%弛緩し、厚さ100μmの積層ポリエステルフィルム1を得た。
<積層ポリエステルフィルム2の製造方法>
ポリエステル(D)をB層の原料とした以外は<積層ポリエステルフィルム1の製造方法>と同様の方法で、厚み100μmの積層ポリエステルフィルム2を得た。
ポリエステル(D)をB層の原料とした以外は<積層ポリエステルフィルム1の製造方法>と同様の方法で、厚み100μmの積層ポリエステルフィルム2を得た。
<積層ポリエステルフィルム3の製造方法>
ポリエステル(C)、(D)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をB層の原料とした以外は<積層ポリエステルフィルム1の製造方法>と同様の方法で、厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。
ポリエステル(C)、(D)をそれぞれ50%、50%の割合で混合した混合原料をB層の原料とした以外は<積層ポリエステルフィルム1の製造方法>と同様の方法で、厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。
<単層ポリエステルフィルム2の製造方法>
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ80%、20%の割合で混合した混合原料とした以外は<単層ポリエステルフィルム1の製造方法>と同様の方法で、厚み100μmの単層ポリエステルフィルム2を得た。
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ80%、20%の割合で混合した混合原料とした以外は<単層ポリエステルフィルム1の製造方法>と同様の方法で、厚み100μmの単層ポリエステルフィルム2を得た。
実施例1:
基材フィルムとして単層ポリエステルフィルム1を用い、このフィルムに熱変換層としてカーボン粒子を混合した熱硬化型エポキシ樹脂を5μmの膜厚コーティングして室温硬化する。次に熱伝播および剥離層として、ポリαメチルスチレン膜を1μmの膜厚にコーティングしてベースフィルムを形成する。
次に、このベースフィルム上に青色発光層形成用塗液を用いて、マイクログラビアコーターで80nmの発光層を形成した。ここで、青色発光層形成用塗液としては、PDAFをキシレンに固形分1wt%で溶かして用いた。尚、このときの塗液の粘度は2.8cpsであった。次に、このフィルムを90℃で1時間、高純度窒素雰囲気中で加熱し、発光層中の溶媒を除去した。次に、この発光層上に抵抗加熱蒸着装置を用いて、実施例1のフィルムに、40nm成膜し、ホール輸送層とした。これを、ドナーフィルムとした。次に、長さ20mmで100μm幅のITOが、200μmピッチで並んでいる、基板に、PEDOT/PSSからなるホール輸送層形成用塗液を用いてスピンコーターで20nmホール輸送層を形成し、200℃で、1分加熱乾燥を高純度窒素中で行った。次に、前記ドナーフィルムを前記基板上に2kg重の圧力でローラーを用いて一度密着させた後、YAGレーザーで、基板のITO上をスキャンし、発光層とホール輸送層からなる転写層を転写エネルギー0.6J/cm2として転写した後、ドナーフィルムを、前記基板から剥がした。
基材フィルムとして単層ポリエステルフィルム1を用い、このフィルムに熱変換層としてカーボン粒子を混合した熱硬化型エポキシ樹脂を5μmの膜厚コーティングして室温硬化する。次に熱伝播および剥離層として、ポリαメチルスチレン膜を1μmの膜厚にコーティングしてベースフィルムを形成する。
次に、このベースフィルム上に青色発光層形成用塗液を用いて、マイクログラビアコーターで80nmの発光層を形成した。ここで、青色発光層形成用塗液としては、PDAFをキシレンに固形分1wt%で溶かして用いた。尚、このときの塗液の粘度は2.8cpsであった。次に、このフィルムを90℃で1時間、高純度窒素雰囲気中で加熱し、発光層中の溶媒を除去した。次に、この発光層上に抵抗加熱蒸着装置を用いて、実施例1のフィルムに、40nm成膜し、ホール輸送層とした。これを、ドナーフィルムとした。次に、長さ20mmで100μm幅のITOが、200μmピッチで並んでいる、基板に、PEDOT/PSSからなるホール輸送層形成用塗液を用いてスピンコーターで20nmホール輸送層を形成し、200℃で、1分加熱乾燥を高純度窒素中で行った。次に、前記ドナーフィルムを前記基板上に2kg重の圧力でローラーを用いて一度密着させた後、YAGレーザーで、基板のITO上をスキャンし、発光層とホール輸送層からなる転写層を転写エネルギー0.6J/cm2として転写した後、ドナーフィルムを、前記基板から剥がした。
実施例2:
基材フィルムとして積層ポリエステルフィルム1を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
基材フィルムとして積層ポリエステルフィルム1を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
比較例1:
基材フィルムとして積層ポリエステルフィルム2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
基材フィルムとして積層ポリエステルフィルム2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
比較例2:
基材フィルムとして積層ポリエステルフィルム3を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
基材フィルムとして積層ポリエステルフィルム3を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
比較例3:
基材フィルムとして単層ポリエステルフィルム2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
基材フィルムとして単層ポリエステルフィルム2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、加工を行った。
得られたフィルムの層構成、ヘーズ、粒子の分散性、加工適正について下記表1に示す。本発明の要件を満たすフィルムは、加工適正が良好なことが分かる。
本発明のドナーフィルムは、有機EL製造用として好適に利用することができる。。
Claims (3)
- 全ての層に同じ粒径の粒子を含む、少なくとも1層からなる、ヘーズ20%以上のポリエステルフィルムに、光熱変換層、剥離層、有機層、第1電極を順次積層してなることを特徴とする有機EL素子製造用ドナーフィルム。
- 粒子が無機粒子である請求項1記載の有機EL素子製造用ドナーフィルム。
- 粒子がシリカ粒子である請求項1または2に記載の有機EL素子製造用ドナーフィルム。
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