JP2013160252A - 無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】重力の影響による潤滑性能の低下を抑えること。
【解決手段】軸心油路61を備えた回転不能なシャフト60と、第1及び第2の回転部材10,20並びにサンローラ30と、複数の遊星ボール40と、中心軸を第1回転中心軸R1に一致させ、シャフト60に固定されたキャリア50と、各遊星ボール40を傾転させることで入出力間の変速比を変えるアイリスプレート80と、を備え、シャフト60は、軸心油路61から車両下方に向けて潤滑油を供給する第1径方向油路62と、第1径方向油路62よりも潤滑油の流動面積が大きく、軸心油路61から車両上方に向けて潤滑油を供給する第2径方向油路63と、を有し、キャリア50は、第1径方向油路62の潤滑油が供給され、潤滑油を車両の下方又は斜め下方に排出するガイド油路56と、第2径方向油路63の潤滑油が供給され、潤滑油を車両の上方又は斜め上方に排出するガイド油路56と、を有すること。
【選択図】図1

Description

本発明は、変速機軸と同心の共通の回転中心軸を有する複数の回転要素と、その回転中心軸に対して放射状に複数配置した転動部材と、変速機軸に固定された固定要素と、を備え、各回転要素の内の2つに挟持された各転動部材を傾転させることによって入出力間の変速比を無段階に変化させるトラクションドライブ型の無段変速機に関する。
従来、この種の無段変速機としては、回転中心となる変速機軸と、この変速機軸の中心軸を回転中心軸とする相対回転可能な3つの回転要素(動力伝達要素)と、その回転中心軸に対して放射状に複数配置され、その3つの回転要素に挟み込まれた転動部材と、を備えたボールプラネタリ式のものが知られている。このボールプラネタリ式の無段変速機においては、対向させて配置した第1回転要素と第2回転要素とで各転動部材が挟持されると共に、各転動部材が第3回転要素の外周面上に配置されている。下記の特許文献1及び2には、ボールプラネタリ式の無段変速機が開示されている。
特許文献1の無段変速機においては、上記の各種構成要素に加えて、3つの回転要素の回転中心軸と同軸上に配置され、各転動部材を傾転自在に保持する固定要素と、転動部材を自転させると共に当該転動部材を固定要素で傾転自在に保持させる支持軸と、を備える。この特許文献1の無段変速機においては、変速機軸の内部に軸線方向の油路と径方向の油路とを有しており、軸線方向の油路に送られてきた潤滑油が径方向の油路を介してサンローラ(第3回転要素)の軸受等に供給される。また、特許文献2の無段変速機においては、転動部材の支持軸の突出部分を支持し、且つ、サンローラの軸線方向の移動に応じて転動部材を傾転させる脚部が設けられている。この特許文献2の無段変速機においては、その脚部内に潤滑油の油路が形成されている。
尚、下記の特許文献3には、遊星歯車装置において、軸心油路と、ピニオンの公転軌道(公転時におけるピニオンの中心の軌跡)に対して内周側に位置する径方向油路と、その公転軌道に対して外周側に位置する径方向油路と、を有するピニオンシャフトが記載されている。この遊星歯車装置においては、その内周側の径方向油路の油穴を外周側の径方向油路の油穴よりも大きくすることで、その内周側と外周側とでの遠心力による潤滑油の供給量の偏りを緩和させている。また、下記の特許文献4には、遊星歯車装置において、軸心油路と複数本の径方向油路とを有するピニオンシャフトが記載されている。この遊星歯車装置においては、各径方向油路の内、軸心油路の給油口から遠くに配置されたものの吐出口の径を大きくすることで、各径方向油路からの潤滑油の供給量のばらつきを抑えている。
米国特許出願公開第2010/0093480号明細書 特開2010−144932号公報 特開2006−292053号公報 特開2009−197821号公報
ところで、従来のボールプラネタリ式の無段変速機においては、変速機軸の軸心油路から排出された潤滑油が導入され、その潤滑油を車載時の上方又は斜め上方に向けて排出させる油路と、その軸心油路の潤滑油が導入され、その潤滑油を車載時の下方又は斜め下方に向けて排出させる油路と、が固定要素に形成された場合、重力の影響によって、上方等に排出させる油路と下方等に排出させる油路との間で排出油量に偏りが生じる可能性がある。その際には、上方等への排出油量が下方等への排出油量よりも少なくなる。そして、この無段変速機では、その様な排出油量の偏りによって、車両上方側の潤滑性能の低下を招く虞がある。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、重力の影響による潤滑性能の低下を抑えることが可能な無段変速機を提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、本発明は、潤滑油が導入される軸心油路を内部に備えた回転不能な変速機軸と、前記変速機軸と同心の第1回転中心軸を有する相互間で相対回転可能な複数の動力伝達要素と、前記第1回転中心軸を中心にして放射状で且つ前記各動力伝達要素の内の1つの外周面上に複数配置すると共に、対向させて配置した残りの前記動力伝達要素の内の2つに挟持させた転動部材と、中心軸を前記第1回転中心軸に一致させ、前記変速機軸に固定された固定要素と、前記各転動部材を傾転させることで入出力間の変速比を変える変速装置と、を備え、前記変速機軸は、前記軸心油路から車両下方に向けて潤滑油を供給する少なくとも1本の第1径方向油路と、該第1径方向油路よりも潤滑油の流動面積が大きく、前記軸心油路から車両上方に向けて潤滑油を供給する少なくとも1本の第2径方向油路と、を有し、前記固定要素は、前記第1径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の下方又は斜め下方に排出する第1潤滑油供給経路と、前記第2径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の上方又は斜め上方に排出する第2潤滑油供給経路と、を有することを特徴としている。
また、上記目的を達成する為、本発明は、潤滑油が導入される軸心油路を内部に備えた回転不能な変速機軸と、前記変速機軸と同心の第1回転中心軸を有する相互間で相対回転可能な複数の動力伝達要素と、前記第1回転中心軸を中心にして放射状で且つ前記各動力伝達要素の内の1つの外周面上に複数配置すると共に、対向させて配置した残りの前記動力伝達要素の内の2つに挟持させた転動部材と、中心軸を前記第1回転中心軸に一致させ、前記変速機軸に固定された固定要素と、前記各転動部材を傾転させることで入出力間の変速比を変える変速装置と、を備え、前記変速機軸は、前記軸心油路から重力と同方向に向けて潤滑油を供給する少なくとも1本の第1径方向油路と、該第1径方向油路よりも潤滑油の流動面積が大きく、前記軸心油路から重力に逆らって潤滑油を供給する少なくとも1本の第2径方向油路と、を有し、前記固定要素は、前記第1径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の下方又は斜め下方に排出する第1潤滑油供給経路と、前記第2径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の上方又は斜め上方に排出する第2潤滑油供給経路と、を有することを特徴としている。
ここで、前記転動部材を自転させると共に当該転動部材を前記固定要素で傾転自在に保持させる支持軸を備え、且つ、該支持軸における前記転動部材からの突出部分を傾転時に径方向へと案内するガイド部を前記固定要素が有する場合、前記第1潤滑油供給経路は、前記第1径方向油路と前記第1回転中心軸よりも車両下方の前記ガイド部とを連通させるよう形成し、且つ、前記第2潤滑油供給経路は、前記第2径方向油路と前記第1回転中心軸よりも車両上方の前記ガイド部とを連通させるよう形成することが望ましい。
また、前記変速機軸に前記第2径方向油路が複数本形成され、該第2径方向油路毎に少なくとも1本の前記第2潤滑油供給経路を連通させた場合、該各第2径方向油路は、車載時における排出口の位置の高い前記第2潤滑油供給経路が連通されたものほど潤滑油の流動面積を大きくすることが望ましい。
本発明に係る無段変速機は、重力の影響により排出油量が減る車両上方の第2径方向油路からの排出油量を確保し、車両下方の第1径方向油路と車両上方の第2径方向油路との間の潤滑油の排出油量の偏りを抑えることができる。つまり、この無段変速機に依れば、重力の影響による潤滑性能の低下を抑えることができる。
図1は、本発明に係るボールプラネタリ式の無段変速機構を備えた無段変速機の実施例の構成を示す断面図である。 図2は、キャリアにおける支持軸のガイド部とガイド油路について説明する図である。 図3は、アイリスプレートについて説明する図である。 図4は、シャフトの第1及び第2の径方向油路並びにキャリアのガイド油路について説明する図である。 図5は、ガイド油路の直径又は流動面積に対する第1及び第2の径方向油路の直径比又は流動面積比を表した図である。 図6は、変形例におけるシャフトの第2径方向油路並びにキャリアのガイド油路について説明する図である。 図7は、変形例におけるシャフトの第2径方向油路並びに相対的に排出口が低いキャリアのガイド油路について説明する図である。 図8は、変形例におけるシャフトの第2径方向油路並びに相対的に排出口が高いキャリアのガイド油路について説明する図である。
以下に、本発明に係る無段変速機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
[実施例]
本発明に係る無段変速機の実施例を図1から図8に基づいて説明する。
最初に、本実施例のトラクションドライブ型の無段変速機の一例について図1を用いて説明する。本実施例においては、トラクション遊星ギヤ機構に相当するボールプラネタリ式の無段変速機構を備えた無段変速機を例に挙げて説明する。図1の符号1は、本実施例におけるボールプラネタリ式の無段変速機を示す。尚、その図1の断面は、図2のX−X線で切ったものに相当する。但し、後の説明の便宜上、その断面では観られない第1径方向油路62と第2径方向油路63についても図示している。
この無段変速機1の主要部を成すボールプラネタリ式の無段変速機構は、共通の第1回転中心軸R1を有する相互間で相対回転可能な回転要素としての第1から第3の動力伝達要素(動力を伝達させる為の構成要素)10,20,30と、第1回転中心軸R1を中心にして放射状で且つ第3動力伝達要素30の外周面上に複数配置すると共に、対向させて配置した第1及び第2の動力伝達要素10,20に挟持させた転動部材40と、中心軸を第1回転中心軸R1に一致させて配置し、各転動部材40を傾転自在に保持する回転不能な固定要素50と、中心軸を第1回転中心軸R1に一致させ、第1から第3の動力伝達要素10,20,30及び固定要素50の中心に配置した変速機軸としてのシャフト60と、を備える。以下においては、特に言及しない限り、その第1回転中心軸R1に沿う方向を軸線方向と云い、その第1回転中心軸R1周りの方向を周方向と云う。また、その第1回転中心軸R1に直交する方向を径方向と云い、その中でも、内方に向けた側を径方向内側と、外方に向けた側を径方向外側と云う。
この無段変速機1においては、第1から第3の動力伝達要素10,20,30が第1回転中心軸R1を中心とする相互間で且つシャフト60に対する相対回転を行う一方、固定要素50がシャフト60に対して固定される。そのシャフト60は、図示しない筐体や車体等における無段変速機1の固定部に固定したものであり、その固定部に対して相対回転させぬよう構成した円柱状の固定軸とする。
また、この無段変速機1は、第1及び第2の動力伝達要素10,20の内の少なくとも一方を転動部材40に押し付けることによって、第1から第3の動力伝達要素10,20,30と転動部材40との間に適切な接線力(トラクション力)を発生させる。
この無段変速機1では、第1から第3の動力伝達要素10,20,30の間で各転動部材40を介したトルクの伝達を行う。従って、第1から第3の動力伝達要素10,20,30は、その内の何れか1つがトルク(動力)の入力部となり、これとは別の1つがトルクの出力部となる。これが為、この無段変速機1においては、入力部となる何れかの動力伝達要素と出力部となる何れかの動力伝達要素との間の回転速度(回転数)の比が変速比γとなる。例えば、この無段変速機1は、車両の動力伝達経路上に配設される。その際には、その入力部がエンジンやモータ等の動力源側に連結され、その出力部が駆動輪側に連結される。この無段変速機1においては、入力部としての動力伝達要素にトルクが入力された場合の各動力伝達要素の回転動作を正駆動と云い、出力部としての動力伝達要素に正駆動時とは逆方向のトルクが入力された場合の各動力伝達要素の回転動作を逆駆動と云う。例えば、この無段変速機1は、先の車両の例示に従えば、加速等の様に動力源側からトルクが入力部たる動力伝達要素に入力されて当該動力伝達要素を回転させているときが正駆動となり、減速等の様に駆動輪側から出力部たる回転中の動力伝達要素に正駆動時とは逆方向のトルクが入力されているときが逆駆動となる。
この様な構成を有する無段変速機1においては、各転動部材40の第2回転中心軸R2を第1回転中心軸R1に対して傾倒させ、この転動部材40を傾転させることによって、その入出力間の変速比γを変える。具体的には、夫々の転動部材40を自身の第2回転中心軸R2と第1回転中心軸R1とを含む傾転平面上で傾転させることによって、入出力間の回転速度(回転数)の比を変える。尚、この例示の第2回転中心軸R2は、後述する様に、第1回転中心軸R1に対して平行になっている状態を基準位置としている。
ここで、この無段変速機1においては、第1及び第2の動力伝達要素10,20がトラクション遊星ギヤ機構で云うところのリングギヤの機能を為すものとなる。また、第3動力伝達要素30と固定要素50は、各々トラクション遊星ギヤ機構におけるサンローラとキャリアとして機能する。また、転動部材40は、トラクション遊星ギヤ機構におけるボール型ピニオンとして機能する。以下、第1及び第2の動力伝達要素10,20については、各々「第1及び第2の回転部材10,20」と云う。また、第3動力伝達要素30については「サンローラ30」と云い、固定要素50については「キャリア50」と云う。転動部材40については、「遊星ボール40」と云う。
第1及び第2の回転部材10,20は、中心軸を第1回転中心軸R1に一致させた円盤部材(ディスク)や円環部材(リング)であり、軸線方向で対向させて各遊星ボール40を挟み込むように配設する。この例示においては、双方とも円環部材とする。
この第1及び第2の回転部材10,20は、後で詳述する各遊星ボール40の径方向外側の外周曲面と接触する接触面を有している。その夫々の接触面は、例えば、遊星ボール40の外周曲面の曲率と同等の曲率の凹円弧面、その外周曲面の曲率とは異なる曲率の凹円弧面、凸円弧面又は平面等の形状を成している。ここでは、後述する基準位置の状態で第1回転中心軸R1から各遊星ボール40との接触点までの距離が同じ長さになるように夫々の接触面を形成して、第1及び第2の回転部材10,20の各遊星ボール40に対する夫々の接触角θが同じ角度になるようにしている。その接触角θとは、基準から各遊星ボール40との接触点までの角度のことである。ここでは、径方向を基準にしている。その夫々の接触面は、遊星ボール40の外周曲面に対して点接触又は面接触している。また、夫々の接触面は、第1及び第2の回転部材10,20から遊星ボール40に向けて軸線方向の力(押圧力)が加わった際に、その遊星ボール40に対して径方向内側で且つ斜め方向の力(法線力)が加わるように形成されている。
この例示においては、第1回転部材10を無段変速機1の正駆動時におけるトルク入力部として作用させ、第2回転部材20を無段変速機1の正駆動時におけるトルク出力部として作用させる。従って、その第1回転部材10には入力軸(第1回転軸)11が連結され、第2回転部材20には出力軸(第2回転軸)21が連結される。その入力軸11と出力軸21は、シャフト60に対する周方向の相対回転を行うことができる。また、この入力軸11と出力軸21は、その相互間においても軸受B1やスラスト軸受TBを介して周方向の相対回転を行うことができる。
その入力軸11と第1回転部材10との間には、軸力を発生させる軸力発生部71が設けられている。その軸力とは、第1回転部材10を各遊星ボール40に押し付ける為の押圧力である。ここでは、その軸力発生部71としてトルクカムを利用する。従って、この軸力発生部71は、入力軸11側の係合部又は係合部材と第1回転部材10側の係合部又は係合部材とが係合することで、入力軸11と第1回転部材10との間で軸力を発生させると共に回転トルクを伝達させ、これらを一体になって回転させる。一方、出力軸21と第2回転部材20との間には、第2回転部材20を各遊星ボール40に押し付ける為の押圧力(軸力)を発生させる軸力発生部72が配設されている。その軸力発生部72には、軸力発生部71と同様のトルクカムを用いる。この軸力発生部72は、環状部材22を介して出力軸21に接続されている。
尚、この無段変速機1においては、第1回転部材10をトルク出力部とし、且つ、第2回転部材20をトルク入力部とすることも可能であり、その場合、入力軸11として設けているものを出力軸として利用し、出力軸21として設けているものを入力軸として利用する。また、サンローラ30をトルク入力部やトルク出力部として用いる場合には、そのサンローラ30に対して別途構成した入力軸や出力軸を連結する。
サンローラ30は、シャフト60と同心上に配置される。そして、このサンローラ30は、ラジアル軸受RB1,RB2を介してシャフト60に取り付けられ、そのシャフト60に対する周方向の相対回転を行うことができる。このサンローラ30の外周面には、複数個の遊星ボール40が放射状に略等間隔で配置される。従って、このサンローラ30においては、その外周面が遊星ボール40の自転の際の転動面となる。このサンローラ30は、自らの回転動作によって夫々の遊星ボール40を転動(自転)させることもできれば、夫々の遊星ボール40の転動動作(自転動作)に伴って回転することもできる。
遊星ボール40は、サンローラ30の外周面上を転がる転動部材である。この遊星ボール40は、完全な球状体であることが好ましいが、少なくとも転動方向にて球形を成すもの、例えばラグビーボールの様な断面が楕円形状のものであってもよい。この遊星ボール40は、その中心を通って貫通させた支持軸41によって回転自在に支持する。例えば、遊星ボール40は、支持軸41の外周面との間に配設したニードル軸受NB1,NB2によって、第2回転中心軸R2を回転軸とした支持軸41に対する相対回転(つまり自転)ができるようにしている。この遊星ボール40は、支持軸41を中心にしてサンローラ30の外周面上を転動することができる。その支持軸41の両端は、遊星ボール40から突出させておく。
その支持軸41の基準となる位置は、図1に示すように、第2回転中心軸R2が第1回転中心軸R1と平行になる位置である。この支持軸41は、その基準位置で形成される自身の中心軸(第2回転中心軸R2)と第1回転中心軸R1とを含む傾転平面内において、基準位置とそこから傾斜させた位置との間を遊星ボール40と共に揺動(傾転)することができる。その傾転は、その傾転平面内で遊星ボール40の中心を支点にして行われる。
キャリア50は、夫々の遊星ボール40の傾転動作を妨げないように支持軸41の夫々の突出部を保持する。このキャリア50は、例えば、中心軸を第1回転中心軸R1に一致させた第1及び第2の円盤部51,52を有するものである。その第1及び第2の円盤部51,52は、互いに対向させ、その間にサンローラ30や遊星ボール40が配置できるよう間隔を空けて配置する。このキャリア50は、第1及び第2の円盤部51,52の内の少なくとも一方の内径側をシャフト60の外径側に固定し、そのシャフト60に対する周方向への相対回転や軸線方向への相対移動が行えないようにしている。ここでは、第1円盤部51をシャフト60に固定すると共に、この第1円盤部51と第2円盤部52とを図示しない複数本の支持軸で繋ぎ、キャリア50を籠状に形成している。
この無段変速機1には、夫々の遊星ボール40の傾転時に支持軸41を傾転方向へと案内する為のガイド部53,54が設けられている。この例示では、そのガイド部53,54をキャリア50に設ける。ガイド部53,54は、遊星ボール40から突出させた支持軸41を傾転方向に向けて案内する径方向のガイド溝であり、第1及び第2の円盤部51,52の夫々の対向する部分に遊星ボール40毎に形成する。図2には、第2円盤部52のガイド部54を例に挙げている。つまり、全てのガイド部54は、遊星ボール40側から軸線方向に観ると夫々に放射状を成している。また、第1円盤部51のガイド部53についてもガイド部54と同じ様に形成されており、その全てのガイド部53は、遊星ボール40側から軸線方向に観ると夫々に放射状を成している。
この無段変速機1においては、夫々の遊星ボール40の傾転角が基準位置、即ち0度のときに、第1回転部材10と第2回転部材20とが同一回転速度(同一回転数)で回転する。つまり、このときには、第2回転部材20に対する第1回転部材10の回転比(回転速度又は回転数の比)が1となり、変速比γが1になっている。一方、夫々の遊星ボール40を基準位置から傾転させた際には、支持軸41の中心軸(第2回転中心軸R2)から第1回転部材10との接触点までの距離が変化すると共に、支持軸41の中心軸から第2回転部材20との接触点までの距離が変化する。これが為、第1回転部材10又は第2回転部材20の内の何れか一方が基準位置のときよりも高速で回転し、他方が低速で回転するようになる。例えば第2回転部材20は、遊星ボール40を一方へと傾転させたときに第1回転部材10よりも低回転になり(減速)、他方へと傾転させたときに第1回転部材10よりも高回転になる(増速)。従って、この無段変速機1においては、その傾転角を変えることによって、第2回転部材20に対する第1回転部材10の回転比(変速比γ)を無段階に変化させることができる。尚、ここでの増速時(γ<1)には、図1における上側の遊星ボール40を紙面反時計回り方向に傾転させ且つ下側の遊星ボール40を紙面時計回り方向に傾転させる。また、減速時(γ>1)には、図1における上側の遊星ボール40を紙面時計回り方向に傾転させ且つ下側の遊星ボール40を紙面反時計回り方向に傾転させる。
この無段変速機1には、その変速比γを変える変速装置が設けられている。変速比γは遊星ボール40の傾転角の変化に伴い変わるので、その変速装置としては、夫々の遊星ボール40を傾転させる傾転装置を用いる。ここでは、この変速装置が円盤状のアイリスプレート(傾転要素)80を備えている。
そのアイリスプレート80は、例えば径方向内側の軸受を介してシャフト60に取り付けられており、そのシャフト60に対して第1回転中心軸R1を中心とする相対回転を行える。その相対回転には、図示しないモータ等のアクチュエータ(駆動部)を用いる。この駆動部の駆動力は、図3に示すウォームギヤ81を介してアイリスプレート80の外周部分に伝えられる。
このアイリスプレート80は、夫々の遊星ボール40の入力側(第1回転部材10との接触部側)又は出力側(第2回転部材20との接触部側)で且つキャリア50の外側又は内側に配置する。この例示では、出力側で且つキャリア50の内側、つまりサンローラ30及び各遊星ボール40と第2円盤部52との間に配置している。このアイリスプレート80には、支持軸41の一方の突出部が挿入される絞り孔(アイリス孔)82を形成する。その絞り孔82は、径方向内側の端部が起点の径方向を基準線Lと仮定する場合、径方向内側から径方向外側に向かうにつれて基準線Lから周方向に離れていく弧状になっている(図3)。尚、その図3は、アイリスプレート80を遊星ボール40側から軸線方向に観た図である。
支持軸41の一方の突出部は、アイリスプレート80が図3の紙面時計回り方向に回転することで、絞り孔82に沿ってアイリスプレート80の中心側に移動する。その際、支持軸41の夫々の突出部がキャリア50のガイド部53,54に挿入されているので、絞り孔82に挿入されている一方の突出部は、径方向内側に移動する。また、その一方の突出部は、アイリスプレート80が図3の紙面反時計回り方向に回転することで、絞り孔82に沿ってアイリスプレート80の外周側に移動する。その際、この一方の突出部は、ガイド部53,54の作用によって径方向外側に移動する。このように、支持軸41は、ガイド部53,54と絞り孔82によって径方向に移動できる。従って、遊星ボール40は、上述した傾転動作が可能になる。
このように構成された無段変速機1は、第1及び第2の回転部材10,20並びにサンローラ30と各遊星ボール40との間において、潤滑油の油膜を介したトルクの伝達を行う。その潤滑油は、例えば第1及び第2の回転部材10,20の掻き上げにより供給される。また、この無段変速機1においては、シャフト60の内部に形成された油路を介しても供給される。
そのシャフト60には、軸線方向に形成された油路(ここでは軸心油路)61が形成されている。その軸心油路61には、オイルポンプ91から圧送されてきた潤滑油が供給される。この軸心油路61の潤滑油には、例えば、オイルポンプ91が停止していれば大気圧が作用し、オイルポンプ91が駆動していれば当該駆動に伴う供給油圧が作用する。また、シャフト60には、その軸心油路61の潤滑油を無段変速機1の各摺動部分に送る複数本の径方向油路が形成されている。径方向油路は、軸心油路61とシャフト60の外周面側とを連通させる径方向に形成された油路であり、その軸心油路61の潤滑油をシャフト60の外周面側の排出口から排出させるものである。この径方向油路においては、軸心油路61の油圧に応じた油圧が作用しており、その油圧が径方向油路からの潤滑油の排出油圧となる。
ここで、その径方向油路の1つとして、シャフト60には、キャリア50のガイド部53,54の内の少なくとも一方に潤滑油を供給する為の油路を設ける。ガイド部53に潤滑油を供給する場合、その径方向油路は、シャフト60において第1円盤部51の内周面が嵌合される外周面部分に排出口を有するものとする。そして、その第1円盤部51には、シャフト60の外周面に対して嵌合される内周面とガイド部53とを連通させ、径方向油路から排出された潤滑油をガイド部53に供給する潤滑油供給経路がガイド部53毎に形成されている。ここでは、その潤滑油供給経路として、ガイド部53の径方向内側部分から径方向内側に向けて形成され、このガイド部53とシャフト60の径方向油路とを連通させるガイド油路が形成される。従って、ガイド油路は、夫々のガイド部53に合わせて第1回転中心軸R1を中心とする放射状に複数本形成される。一方、ガイド部54に潤滑油を供給する場合も同様に、シャフト60には第2円盤部52側の径方向油路を形成し、第2円盤部52には各ガイド部54に合わせた放射状のガイド油路(潤滑油供給経路)を形成する。
この無段変速機1においては、オイルポンプ91の配置に近いガイド部54への潤滑油供給を行うものとして例示する。シャフト60には、図1及び図4に示す様に、ガイド部54に潤滑油を供給する為の径方向油路として、第1径方向油路(第1油路)62と第2径方向油路(第2油路)63とが形成されている。また、第2円盤部52には、ガイド油路56がガイド部54毎に形成されている。この例示では、ガイド部54毎に同一形状のガイド油路56が形成されている。また、そのガイド油路56は、経路全般に亘る潤滑油の流動面積が一定のものを形成している。その流動面積とは、潤滑油の流動方向に対して直交する油路内の面積のことを云い、油穴の大きさのことを指す。
シャフト60の第1径方向油路62は、車載時に下方に向けて(つまり重力と同方向に向けて)潤滑油を排出するものである。即ち、この第1径方向油路62は、車両下方に向けて形成された径方向油路であり、車載時の第1回転中心軸R1よりも車両下方に形成することで、軸心油路61から車両下方に向けて潤滑油を送る。以下においては、特に言及することなく「車両下方」と称する場合、車両搭載時の第1回転中心軸R1よりも車両下方のことを云う。また、特に言及することなく「車両上方」と称する場合には、車両搭載時の第1回転中心軸R1よりも車両上方のことを云う。この第1径方向油路62は、全てのガイド部54の中でも車両下方に配置されているガイド部54Aに潤滑油を供給する為の油路である。
この第1径方向油路62は、車両下方のガイド部54A毎に1本ずつ設けてもよく、全てのガイド部54Aの内の複数本毎に1本ずつ設けてもよく、全てのガイド部54Aに対して1本設けてもよい。本実施例では、全てのガイド部54Aに対応させる1本の第1径方向油路62がシャフト60に形成されている。これが為、シャフト60の外周面には、その第1径方向油路62の排出口62aと各ガイド部54Aの為の全てのガイド油路56の導入口56aとを連通させる為の溝(以下、「連通溝」と云う。)64を形成している。その連通溝64は、シャフト60の外周面において周方向に延設した溝であり、車両下方に配置されている各ガイド油路56の導入口56aの径方向内側部分にまで延設させる。この連通溝64は、嵌合された第2円盤部52の内周面との間で空間を形成する。第1径方向油路62から排出された潤滑油は、その空間を介して車両下方の各ガイド油路56の導入口56aに送られる。その車両下方の各ガイド油路56は、車載時に下方又は斜め下方に向けて潤滑油を排出するものである。
これに対して、第2径方向油路63は、車載時に上方に向けて(つまり重力と逆方向であり重力に逆らって)潤滑油を排出するものである。即ち、この第2径方向油路63は、車両上方に向けて形成された径方向油路であり、車両上方に形成することで、軸心油路61から車両上方に向けて潤滑油を送る。この第2径方向油路63は、全てのガイド部54の中でも車両上方に配置されているガイド部54Bに潤滑油を供給する為の油路である。
この第2径方向油路63は、車両上方のガイド部54B毎に1本ずつ設けてもよく、全てのガイド部54Bの内の複数本毎に1本ずつ設けてもよく、全てのガイド部54Bに対して1本設けてもよい。本実施例では、全てのガイド部54Bに対応させる1本の第2径方向油路63がシャフト60に形成されている。これが為、シャフト60の外周面には、その第2径方向油路63の排出口63aと各ガイド部54Bの為の全てのガイド油路56の導入口56aとを連通させる為の連通溝65を形成している。その連通溝65は、車両下方の連通溝64と同等のものであり、車両上方に配置されている各ガイド油路56の導入口56aの径方向内側部分にまで周方向に延設させ、嵌合された第2円盤部52の内周面との間で空間を形成する。第2径方向油路63から排出された潤滑油は、その空間を介して車両上方の各ガイド油路56の導入口56aに送られる。その車両上方の各ガイド油路56は、車載時に上方又は斜め上方に向けて潤滑油を排出するものである。
ところで、この無段変速機1のキャリア50は、シャフト60に固定されており、自転できない。これが為、車両上方のガイド油路56から排出される潤滑油は、重力の影響によって、車両下方のガイド油路56から排出される潤滑油よりも排出量が少なくなる虞がある。例えば、車両下方のガイド油路56においては、第1径方向油路62からの供給油圧Pinと共に重力によるアシスト力が油路内の潤滑油に作用する。更に、全てのガイド油路56の潤滑油には、ガイド部54A,54B側の排出口56bから大気圧Pambientも作用している。従って、車両下方のガイド油路56においては、その供給油圧Pinから重力のアシスト力に相当する油圧を加算し、更に大気圧Pambientを減算したものが排出口56bにおけるガイド部54Aへの排出油圧Poutとなる。これに対して、車両上方のガイド油路56においては、第2径方向油路63からの供給油圧Pinが作用している潤滑油に対して重力が抵抗として働くので、その供給油圧Pinから重力の抵抗に相当する油圧と大気圧Pambientとを減算したものが排出口56bにおけるガイド部54Bへの排出油圧Poutとなる。この様に、ガイド油路56からの排出油圧Poutが車両上方よりも車両下方で高くなるので、車両上方のガイド部54Bへの潤滑油供給量は、車両下方のガイド部54Aへの潤滑油供給量よりも減ってしまう。故に、車両上方のガイド部54Bにおいては、潤滑油不足を発生させてしまう虞がある。
そこで、この無段変速機1においては、車両上方の第2径方向油路63の流動面積を車両下方の第1径方向油路62の流動面積よりも大きくし、車両上方のガイド部54Bで潤滑油不足が生じないようにする。例えば、第1径方向油路62と第2径方向油路63とが円柱状の油路の場合には、第2径方向油路63の直径を第1径方向油路62の直径よりも大きく形成する。具体的には、次の様に第1径方向油路62と第2径方向油路63の流動面積を設定すればよい。
例えば、車両下方の第1径方向油路62が必要十分な潤滑油をガイド部54Aに供給できる流動面積を有する場合には、その第1径方向油路62をそのままの形状とし、この第1径方向油路62の流動面積に対して車両上方の第2径方向油路63の流動面積を大きく形成すればよい。尚、この場合の必要十分とは、潤滑油が供給不足にもならず供給過多にもならない状態のことを云う。
また、第1径方向油路62が必要以上の潤滑油の供給が可能な流動面積を有する場合には、その第1径方向油路62の流動面積を必要十分な大きさにまで小さくし、この第1径方向油路62の流動面積に対して第2径方向油路63の流動面積を大きく形成すればよい。その際、第2径方向油路63は、例えば第1径方向油路62の変更前の流動面積と同じ大きさの流動面積を有しており、その流動面積で過不足無く潤滑油をガイド部54Bに供給できるのであれば、そのままの形状に形成すればよく、その流動面積で供給不足を引き起こすのであれば、この流動面積よりも大きく形成すればよい。
また、第1径方向油路62と第2径方向油路63の流動面積が双方とも供給不足を引き起こす大きさである場合、その夫々の流動面積を大きく形成しつつ、第2径方向油路63については、第1径方向油路62の流動面積よりも流動面積を大きく形成すればよい。
ここで、その第1径方向油路62と第2径方向油路63の夫々の流動面積は、下記の式1に基づいて設定すればよい。この関係式は、全てのガイド油路56{56(i)}の排出口56bから同等の排出油圧Pout(i)で潤滑油が排出される場合を示したものである(i=1,2,…,n)。その「n」は、第2円盤部52に形成されたガイド油路56の本数を表している。図4では、車両上方の紙面右側のガイド油路56を「i=1」、これを起点にして「i=2,3,…」と設定している。
Figure 2013160252
「Ashaft−low」は、車両下方の第1径方向油路62の流動面積を表し、「Ashaft−up」は、車両上方の第2径方向油路63の流動面積を表している。「ρ」は、潤滑油の油密度を表す。「g」は、重力加速度を表す。「D」は、図4に示す様に、第1回転中心軸R1からガイド油路56(i)の排出口56bまでの距離を表す。この距離Dは、この例示の全てのガイド油路56(i)において一定であるが、各ガイド油路56(i)で異なる場合もあり、この場合ガイド油路56(i)毎に定めればよい。「θ(i)」は、第1回転中心軸R1に直交する或る基準線Lbと第1回転中心軸R1及びガイド油路56(i)の排出口56bを繋ぐ線L(i)とが成す角度であり、そのガイド油路56(i)の位置を表す。「Acarrier」は、ガイド油路56(i)の流動面積を表す。尚、各ガイド油路56(i)で流動面積Acarrierが異なる場合、その流動面積Acarrierは、ガイド油路56(i)毎に定めればよい。
この式1は、次の様にして設定されたものである。
ガイド油路56(i)から排出される潤滑油の油量は、このガイド油路56(i)の潤滑油に作用する排出方向の力と相関関係にある。下記の式2,3は、ガイド油路56(i)の潤滑油に作用する力の関係式である。式2は、車両上方の全てのガイド油路56(i)の潤滑油に作用する力の総和を表した関係式であり、この車両上方の全てのガイド油路56(i)から或る一定時間の間に排出される潤滑油の排出量の総和の関係式に相当する。式3は、車両下方の全てのガイド油路56(i)の潤滑油に作用する力の総和を表した関係式であり、この車両下方の全てのガイド油路56(i)から或る一定時間の間に排出される潤滑油の排出量の総和の関係式に相当する。
Figure 2013160252
Figure 2013160252
ここで、式2の右辺の第1項は、車両上方の各ガイド油路56(i)の潤滑油に作用する供給油圧Pinによる力を表す。その「Nup」は、車両上方の各ガイド油路56(i)の本数を表す。また、式2の右辺の第2項は、車両上方の各ガイド油路56(i)の潤滑油に作用する重力加速度gに応じた力を表す。また、式2の右辺の第3項は、車両上方の各ガイド油路56(i)の潤滑油に作用する大気圧Pambientによる力を表す。この式2と同様に、式3の右辺の第1項は、車両下方の各ガイド油路56(i)の潤滑油に作用する供給油圧Pinによる力を表す。その「Nlow」は、車両下方の各ガイド油路56(i)の本数を表す。また、式3の右辺の第2項は、車両下方の各ガイド油路56(i)の潤滑油に作用する重力加速度gに応じた力を表す。また、式3の右辺の第3項は、車両下方の各ガイド油路56(i)の潤滑油に作用する大気圧Pambientによる力を表す。
この式2,3に基づいて下記の式4が得られる。この式4は、車両下方の第1径方向油路62の流動面積Ashaft−lowと車両上方の第2径方向油路63の流動面積Ashaft−upとの比を表したものである。夫々の流動面積Ashaft−low,Ashaft−upは、この式4の関係式を満たす様に設定すればよい。
Figure 2013160252
ここで、図4の第2円盤部52においては、各ガイド油路56(i)が車両上方と車両下方とで偶数本ずつ且つ車両上方と車両下方とで基準線Lbを中心にして上下対称に形成されている。この場合、各ガイド油路56(i)の重力加速度gの影響による力は、車両上方と車両下方とで下記の式5の関係式が成立する。また、ここでは、車両上方と車両下方とに拘わらず、全てのガイド油路56(i)の排出油圧Poutが均等になるように、夫々の流動面積Ashaft−low,Ashaft−upを設定する。これが為、この配置の各ガイド油路56(i)の場合、下記の式6の関係式が成立する。
Figure 2013160252
Figure 2013160252
下記の式7は、上記の式2,3,5,6に基づいて得られた車両下方の第1径方向油路62の流動面積Ashaft−lowと車両上方の第2径方向油路63の流動面積Ashaft−upとの関係式である。
Figure 2013160252
ここで、夫々の流動面積Ashaft−low,Ashaft−upの差が最大になる場合とは、供給油圧Pinが最小になる状態のときであり、この供給油圧Pinが大気圧Pambientになっている場合であると仮定できる。これが為、その式7の供給油圧Pinに大気圧Pambientを代入することで、上述した式1の関係式が得られる。そして、その式1の関係式を満たす様に夫々の流動面積Ashaft−low,Ashaft−upを設定することで、供給油圧Pinが大気圧Pambientまで低くなったとしても、車両上方の各ガイド油路56(i)からは、車両上方のガイド部54Bに対して十分な量の潤滑油を供給することができる。従って、この第2円盤部52においては、供給油圧Pinの高低に拘わらず、車両上方のガイド部54Bに対する潤滑油の供給不足を回避することができる。
図5は、ガイド油路56の直径又は流動面積に対する第1及び第2の径方向油路62,63の直径比又は流動面積比を表したものである。その直径比とは、車両下方の第1径方向油路62の直径dshaft−lowに対する車両上方の第2径方向油路63の直径dshaft−upの比である(dshaft−up/dshaft−low)。また、流動面積比とは、車両下方の第1径方向油路62の流動面積Ashaft−lowに対する車両上方の第2径方向油路63の流動面積Ashaft−upの比である(Ashaft−up/Ashaft−low)。本図からも判るように、第1及び第2の径方向油路62,63の直径比又は流動面積比は、ガイド油路56の直径又は流動面積が大きくなるほど二次関数の如くより大きくなっていく。つまり、車両上方の第2径方向油路63の油穴(直径dshaft−up、流動面積Ashaft−up)は、ガイド油路56の直径又は流動面積が大きくなるほど、車両下方の第1径方向油路62の油穴(直径dshaft−low、流動面積Ashaft−low)に対してより大きくしていく。これにより、第2円盤部52においては、ガイド油路56の油穴(直径又は流動面積)の大きさに拘わらず、車両上方のガイド部54Bに対する潤滑油の供給不足を回避することができる。
この無段変速機1においては、この様にして車両上方の第2径方向油路63の流動面積Ashaft−upを車両下方の第1径方向油路62の流動面積Ashaft−lowよりも大きく形成することで、車両上方のガイド部54Bにおける潤滑油不足を低減できる。従って、この無段変速機1においては、全てのガイド部54と当該ガイド部54を移動する支持軸41の突出部分とに不足無く潤滑油を供給できるので、そのガイド部54(つまり第2円盤部52)や支持軸41の耐久性を向上させることができる。
また、この無段変速機1においては、ガイド部53に対してもガイド部54と同様の第1及び第2の径方向油路62,63やガイド油路56を設けることで、全てのガイド部53と当該ガイド部53を移動する支持軸41の突出部分とに不足無く潤滑油を供給でき、そのガイド部53(つまり第1円盤部51)や支持軸41の耐久性の向上が可能になる。
ここで、この例示の無段変速機1においては、第1及び第2の径方向油路62,63等がガイド部54側にしか設けられていない。しかしながら、この無段変速機1においては、支持軸41におけるガイド部54側の突出部分がガイド部53側の突出部分よりも上方に位置する傾転角になっている場合、ガイド油路56からガイド部54に供給された潤滑油が支持軸41の外周面を伝わり、遊星ボール40と支持軸41との間を経てガイド部53側の支持軸41の突出部分に供給される。また、支持軸41の内部には、軸線方向の油路41aと、この油路41aの潤滑油をニードル軸受NB1,NB2の間の空間に排出する径方向の油路41bと、が形成されている。その油路41aは、支持軸41における何れか一方の端面に開口させたものである。この例示では、支持軸41における第2円盤部52側の端面に開口させている。これが為、ガイド油路56からガイド部54に供給された潤滑油が油路41aの開口に導入された際には、その潤滑油が径方向の油路41bを介して遊星ボール40と支持軸41との間で且つニードル軸受NB1,NB2の間の環状の空間に供給され、支持軸41の外周面を伝わってガイド部53側の支持軸41の突出部分に供給される。従って、この無段変速機1においては、全てのガイド部53と当該ガイド部53を移動する支持軸41の突出部分に対する潤滑油の供給も第1及び第2の径方向油路62,63等で担うことができるので、そのガイド部53(第1円盤部51)や支持軸41の耐久性の向上が可能になる。また、この無段変速機1においては、遊星ボール40やニードル軸受NB1,NB2の耐久性についても向上させることができる。
以上示した様に、この実施例の無段変速機1に依れば、キャリア50が固定要素として利用されていても、車両上方の各ガイド部53,54への潤滑油の供給量を確保することができるので、車両下方の各ガイド部53,54に対する潤滑油の供給量の偏りを抑えることができる。つまり、この無段変速機1は、重力の影響による潤滑性能の低下を抑えることができる。従って、この無段変速機1においては、キャリア50や各ガイド部53,54に案内される支持軸41の耐久性を向上させることができる。
[変形例]
上記の実施例の無段変速機1においては、シャフト60に設けた1本ずつの第2径方向油路63と連通溝65とで車両上方の各ガイド油路56に潤滑油を送っており、その連通溝65に連通するガイド油路56の本数が多いほど、各ガイド油路56に対する供給油圧Pinが低下してしまう虞がある。
そこで、本変形例は、実施例の無段変速機1において、図6−8に示す様に、車両上方の各ガイド油路56を複数に区分し、その区分毎に第2径方向油路と連通溝を設ける。1組の第2径方向油路と連通溝は、少なくとも1本の車両上方のガイド油路56に連通している。
車両上方の各ガイド油路56は、車載時における排出口56bの位置が高いものから順に区分する。この例示では、相対的な比較の下で排出口56bの位置が低いガイド油路56(1),56(4)と排出口56bの位置が高いガイド油路56(2),56(3)とで区分する。この様に車両上方の各ガイド油路56が2つに区分されているので、シャフト60には、2本の第2径方向油路63A,63Bと2本の連通溝65A,65Bを形成する。連通溝65Aは、相対的に排出口56bの低いガイド油路56(1),56(4)を第2径方向油路63Aに連通させる。一方、連通溝65Bは、相対的に排出口56bの高いガイド油路56(2),56(3)を第2径方向油路63Bに連通させる。
その第2径方向油路63A,63Bの夫々の流動面積は、実施例と同じ様に第1径方向油路62の流動面積よりも大きくする。その流動面積の設定の際には、上述した式1を用いることが好ましい。
更に、この変形例においては、相対的に排出口56bの低いガイド油路56(1),56(4)に連通する第2径方向油路63Aの流動面積と、相対的に排出口56bの高いガイド油路56(2),56(3)に連通する第2径方向油路63Bの流動面積と、を異なる大きさに設定する。何故ならば、相対的に排出口56bの高いガイド油路56(2),56(3)は、相対的に排出口56bの低いガイド油路56(1),56(4)に比べて、重力の影響を受けやすく、排出油圧Poutが低くなる可能性があるからである。これが為、この変形例においては、第2径方向油路63Bの流動面積を第2径方向油路63Aの流動面積よりも大きくする。つまり、この変形例の無段変速機1においては、複数本の第2径方向油路63が車両上方に設けられている場合、車載時における排出口56bの位置の高い車両上方のガイド油路56(第2潤滑油供給経路)が連通された第2径方向油路63ほど、潤滑油の流動面積を大きくする。これにより、この変形例の無段変速機1においては、車両上方の各ガイド油路56に対する供給油圧Pinの低下を抑えつつ、その各ガイド油路56からガイド部54Bに排出される潤滑油の油量の偏りも抑えることができる。従って、この変形例の無段変速機1においては、実施例と比べて、車両上方の各ガイド部54Bに対する潤滑油の供給不足を更に回避することができるので、その各ガイド部54Aと当該ガイド部54Aを移動する支持軸41の耐久性を更に向上させることができる。
この無段変速機1においては、この様な各ガイド油路56の区分(排出口56bの高さ)に応じた複数本の第2径方向油路63及び連通溝65と同様のものを車両下方の第1径方向油路62と連通溝64に適用してもよい。また、この様な各ガイド油路56の区分(排出口56bの高さ)に応じたシャフト60における複数本の第2径方向油路63と連通溝65は、車両上方や車両下方のガイド部53側においても適用可能である。そして、これにより、この変形例の無段変速機1においては、そのガイド部53側においても潤滑油の供給不足の更なる回避が可能になり、そのガイド部53と支持軸41の更なる耐久性の向上を図ることができる。
ところで、以上示した実施例及び変形例の無段変速機1においては、第1潤滑油供給経路と第2潤滑油供給経路とが形成されている固定要素としてキャリア50を例示している。しかしながら、これらの無段変速機1においては、そのキャリア50以外にも固定要素が設けられている場合も考えられ、その固定要素に、車載時に下方又は斜め下方へと潤滑油を排出させる第1潤滑油供給経路と、車載時に上方又は斜め上方へと潤滑油を排出させる第2潤滑油供給経路と、が形成されていることもある。この場合には、そのキャリア50以外の固定要素の第1及び第2の潤滑油供給経路に潤滑油を送る実施例又は変形例と同様の第1及び第2の径方向油路をシャフト60に形成すればよい。
また、実施例及び変形例の無段変速機1ではキャリア50を固定要素として例示しているが、そのキャリア50は、シャフト60に対する相対回転が可能な動力伝達要素として設けてもよい。そして、この場合に第1及び第2の潤滑油供給経路を有する別の固定要素が存在しているのであれば、シャフト60には、その第1及び第2の潤滑油供給経路に潤滑油を送る実施例又は変形例と同様の第1及び第2の径方向油路を形成すればよい。
1 無段変速機
10 第1回転部材(第1動力伝達要素)
20 第2回転部材(第2動力伝達要素)
30 サンローラ(第3動力伝達要素)
40 遊星ボール(転動部材)
41 支持軸
50 キャリア(固定要素)
51 第1円盤部
52 第2円盤部
53,54,54A,54B ガイド部
56 ガイド油路
56a 導入口
56b 排出口
60 シャフト(変速機軸)
61 軸心油路
62 第1径方向油路
63,63A,63B 第2径方向油路
64、65,65A,65B 連通溝
80 アイリスプレート
91 オイルポンプ
R1 第1回転中心軸
R2 第2回転中心軸

Claims (4)

  1. 潤滑油が導入される軸心油路を内部に備えた回転不能な変速機軸と、
    前記変速機軸と同心の第1回転中心軸を有する相互間で相対回転可能な複数の動力伝達要素と、
    前記第1回転中心軸を中心にして放射状で且つ前記各動力伝達要素の内の1つの外周面上に複数配置すると共に、対向させて配置した残りの前記動力伝達要素の内の2つに挟持させた転動部材と、
    中心軸を前記第1回転中心軸に一致させ、前記変速機軸に固定された固定要素と、
    前記各転動部材を傾転させることで入出力間の変速比を変える変速装置と、
    を備え、
    前記変速機軸は、前記軸心油路から車両下方に向けて潤滑油を供給する少なくとも1本の第1径方向油路と、該第1径方向油路よりも潤滑油の流動面積が大きく、前記軸心油路から車両上方に向けて潤滑油を供給する少なくとも1本の第2径方向油路と、を有し、
    前記固定要素は、前記第1径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の下方又は斜め下方に排出する第1潤滑油供給経路と、前記第2径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の上方又は斜め上方に排出する第2潤滑油供給経路と、を有することを特徴とした無段変速機。
  2. 潤滑油が導入される軸心油路を内部に備えた回転不能な変速機軸と、
    前記変速機軸と同心の第1回転中心軸を有する相互間で相対回転可能な複数の動力伝達要素と、
    前記第1回転中心軸を中心にして放射状で且つ前記各動力伝達要素の内の1つの外周面上に複数配置すると共に、対向させて配置した残りの前記動力伝達要素の内の2つに挟持させた第2回転中心軸を有する転動部材と、
    中心軸を前記第1回転中心軸に一致させ、前記変速機軸に固定された固定要素と、
    前記各転動部材を傾転させることで入出力間の変速比を変える変速装置と、
    を備え、
    前記変速機軸は、前記軸心油路から重力と同方向に向けて潤滑油を供給する少なくとも1本の第1径方向油路と、該第1径方向油路よりも潤滑油の流動面積が大きく、前記軸心油路から重力に逆らって潤滑油を供給する少なくとも1本の第2径方向油路と、を有し、
    前記固定要素は、前記第1径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の下方又は斜め下方に排出する第1潤滑油供給経路と、前記第2径方向油路の潤滑油が供給され、該潤滑油を車両の上方又は斜め上方に排出する第2潤滑油供給経路と、を有することを特徴とした無段変速機。
  3. 前記転動部材を自転させると共に当該転動部材を前記固定要素で傾転自在に保持させる支持軸を備え、且つ、該支持軸における前記転動部材からの突出部分を傾転時に径方向へと案内するガイド部を前記固定要素が有する場合、前記第1潤滑油供給経路は、前記第1径方向油路と前記第1回転中心軸よりも車両下方の前記ガイド部とを連通させるよう形成し、且つ、前記第2潤滑油供給経路は、前記第2径方向油路と前記第1回転中心軸よりも車両上方の前記ガイド部とを連通させるよう形成することを特徴とした請求項1又は2に記載の無段変速機。
  4. 前記変速機軸に前記第2径方向油路が複数本形成され、該第2径方向油路毎に少なくとも1本の前記第2潤滑油供給経路を連通させた場合、該各第2径方向油路は、車載時における排出口の位置の高い前記第2潤滑油供給経路が連通されたものほど潤滑油の流動面積を大きくすることを特徴とした請求項1,2又は3に記載の無段変速機。
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