図1は、液体収容体としてのカートリッジが装着されるインクジェット式の印刷装置の概略構成を示す図である。図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。図1のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応している。これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。本実施形態において、印刷装置10の使用姿勢では、Z軸が鉛直方向(重力方向)であり、Y軸は、カートリッジホルダー60に対するカートリッジ40の着脱方向、X軸は、複数のカートリッジ40が並ぶ方向である。より具体的には、+Z軸方向が鉛直上向き方向、−Z軸方向が鉛直下向き方向、+Y軸方向がカートリッジ40の引き抜き方向、−Y軸方句がカートリッジ40の挿入方向、+X軸方向がカートリッジ40に所定のラベルLB(図4参照)が貼り付けられる面側の方向、−X軸方向がその裏面の方向である。以下では、+Z軸方向を上、−Z軸方向を下、+Y軸方向を前、−Y軸方向を後、という場合もある。なお、Z軸方向は、図6に示されているインク導入針730と端子712とが並ぶ方向でもある。+Z軸方向は、インク導入針730から端子712に向かう方向であり、−Z軸方向はその反対方向である。また、+Y軸方向は、後述するカートリッジ40の製造方法において、インクパック43がケース部材41に挿入される方向でもある(図15参照)。Y軸方向は本願の「第1の方向」に相当し、Z軸方向は、本願の「第2の方向」に相当する。
液体消費装置としての印刷装置10は、略箱形の外観形状である。印刷装置10の前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その+X軸方向側には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷用紙が排出される排紙口12が現れる。また、印刷装置10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられている。給紙トレイに印刷用紙をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから印刷用紙が給紙され、内部で表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙が排出される。
印刷装置10の上面側には上面カバー14が設けられている。上面カバー14は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー14を開くと、印刷装置10の内部の状態を確認したり、あるいは印刷装置10の修理などを行ったりすることができる。
印刷装置10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙上にインクドットを形成する噴射ヘッド20や、噴射ヘッド20を往復動させる駆動機構30が搭載されている。噴射ヘッド20の底面側(印刷用紙に向いた側)には、複数の噴射ノズルが設けられており、噴射ノズルから印刷用紙に向かってインクが噴射される。
噴射ノズルから噴射されるインクは、カートリッジ40に収容されている。カートリッジ40は、噴射ヘッド20とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー60に装填される。カートリッジ40内のインクは、インクチューブ24を介して噴射ヘッド20に供給される。本実施形態の印刷装置10では、前面カバー11の右隣に、下端側で軸支されたカートリッジ交換用カバー13が設けられている。このカートリッジ交換用カバー13の上端側を手前に倒すことによって、カートリッジ40をカートリッジホルダー60に着脱することができる。
印刷装置10は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することができる。噴射ヘッド20には、インクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。それぞれの噴射ノズルには、対応するカートリッジ40内のインクが、インクの種類毎に設けられたインクチューブ24を介して供給される。なお、本実施形態では、印刷装置10は4種類のインクを用いて印刷を行うが、5種類以上あるいは3種類以下の種類のインクを用いて印刷を行うこととしてもよい。
噴射ヘッド20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などを備える。タイミングベルト32の一部は噴射ヘッド20に固定されている。タイミングベルト32が駆動されると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドされながら、噴射ヘッド20が主走査方向に往復動される。
噴射ヘッド20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられている。ホームポジションにはメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、噴射ヘッド20の底面側で噴射ノズルが形成されている面(ノズル面)に押し付けられて、噴射ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ80や、噴射ヘッド20のノズル面に押し付けるためにキャップ80を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ80が噴射ヘッド20のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などを備える。
印刷装置10の内部には、印刷用紙を紙送りするための図示しない紙送り機構や、印刷装置10の全体の動作を制御する制御部16が搭載されている。制御部16は、CPUとROMとRAMとを備えている。噴射ヘッド20を往復動させる動作や、印刷用紙を紙送りする動作、噴射ノズルからインクを噴射する動作、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、全て制御部16によって制御される。
図2は、カートリッジホルダー60の詳細な外観斜視図である。カートリッジホルダー60には、+Y軸方向から−Y軸方向に向けてカートリッジ40が挿入されるスロット61が設けられている。スロット61には、+Z軸方向側の面(上面)および−Z軸方向側の面(底面)に、Y軸方向に沿って、ガイド溝62がカートリッジ40毎に設けられている。各ガイド溝62には、カートリッジ40の装着時に、カートリッジ40の+Z軸方向側の面(上面)および−Z軸方向側の面(底面)にそれぞれ設けられたレール部413,414(図3)が嵌って摺動する。
スロット61の入口の上部には、カートリッジ40を固定するための固定レバー63がカートリッジ40毎に設けられている。この固定レバー63は、−Z軸方向にスライドされると、カートリッジ40の取っ手415(図3)に嵌り、カートリッジ40の+Y軸方向への移動を規制する。
カートリッジホルダー60の−Y軸方向端部には、カートリッジ40からインクを吸引するためのポンプユニット7がカートリッジ40毎に設けられている。各ポンプユニット7には、ポンプユニット7を駆動するためのポンプ駆動モーター8が接続される。ポンプユニット7によって吸引されたインクは、インクチューブ24を通じて噴射ヘッド20に供給される。
図3は、カートリッジ40の外観斜視図である。また、図4は、カートリッジ40の分解斜視図である。カートリッジ40は、ケース部材41と、蓋部材42と、可撓性のインクパック43と、液体流路部材44と、を備えている。インクパック43は、本願の「液体収容袋」に相当する。インクパック43は、いわゆるピロータイプの袋であり、−Y軸方向の開口に液体流路部材44が固定される。インクパック43の上端部431(+Z軸方向の端部)と、下端部432(−Z軸方向の端部)と、+Y軸方向の端部と、は平坦状に形成されている。
ケース部材41は、右ケース411と左ケース412とを備える。ケース部材41の+Y軸方向の端部には、取っ手415が備えられている。右ケース411の+X軸方向側の面には、ラベルLBが貼り付けられる。ケース部材41には、+Z軸方向の面および−Z軸方向の面に、Y軸方向に沿ってレール部413,414が形成されている。これらのレール部413,414は、カートリッジ40を、カートリッジホルダー60内に装着する際に、図2に示したカートリッジホルダー60のガイド溝62に嵌まる。
液体流路部材44は、インクパック43内に充填されたインクを印刷装置10に供給するための部材である。液体流路部材44は、インクパック43の−Y軸方向の開口部に溶着(固定)される。液体流路部材44は、蓋部材42がケース部材41の−Y軸方向の端部の開口部に取り付けられた際に、蓋部材42の内部に収容される。インクパック43は、ケース部材41を構成する右ケース411と左ケース412との間に収容される。
液体流路部材44の−Y軸方向側の面(インクパック43と逆側の面)には、インク充填口441と、インク供給管443と、インク検出室442と、が、+Z軸方向の端部から−Z軸方向に向けてこの順に配列されている。インク充填口441は、インクパック43の内部に連通しており、インクパック43内にインクを充填するために設けられている。インク充填口441を通じてインクパック43内にインクが充填された後には、このインク充填口441は封止される。
インク検出室442は、インクパック43の内部と連通しており、インクパック43内のインクの残存状態を検出するために用いられる。インク検出室442の−Y軸方向側の面には可撓性のフィルム部材491が設けられる。フィルム部材491とインク検出室442の底面(+Y軸方向側の内面)との間には、受圧部材494を介してバネ493が配置されている。インク検出室442には、逆止弁492を通じてインクパック43内からインクが流れ込む。フィルム部材491の−Y軸方向側には、板状のセンサーレバー495が配置される。センサーレバー495は、−Z軸方向の端部が液体流路部材44に回転自在に固定される。センサーレバー495の+Z軸方向の端部の−Y軸方向側の表面には、接点部496が設けられている。この接点部496には、印刷装置10側に設けられた棒部材720(図6)の+Y軸方向の端部が、蓋部材42に設けられたセンサー用孔423を通って当接する。例えば、インクがインクパック43に所定量以上存在する場合には、インク検出室442内のインクの圧力(インクパック内の圧力)とバネ493の力との合計が、棒部材720の+Y軸方向への押し付け力を越える。そのため、フィルム部材491、センサーレバー495および棒部材720は、−Y軸方向に変位する。一方、インクが所定量未満の場合(インクエンドの場合)には、インク検出室442内のインクの圧力(インクパック内の圧力)とバネ493の力との合計が、棒部材720の+Y軸方向への押し付け力を下回る。そのため、フィルム部材491、センサーレバー495および棒部材720は、+Y軸方向に変位する。
インク供給管443は、印刷装置10にインクを供給するために用いられる。インク供給管443は、液体流路部材44の内部に形成された流路によってインク検出室442に連通している。そのため、インク供給管443には、インク検出室442を通じて、インクパック43内からインクが流入する。なお、本実施形態では、カートリッジ40は、インク検出室442を備えているが、インク検出室442を備えていない構成としてもよい。この場合、インク供給管443は、直接的にインクパック43内に連通する。
蓋部材42には、印刷装置10側と当接する−Y軸方向側の当接面425に、基板50と、供給管用孔421と、センサー用孔423と、が、+Z軸方向の端部から−Z軸方向に向けてこの順に配列されている。
基板50は、蓋部材42の+Z軸方向の端部に設けられた凹部424に、斜め上方を向けて取り付けられている。基板50の裏面(+Y軸方向側の面)には、図示していない記憶装置が実装されている。また、基板50の表面(−Y軸方向側の面)には、記憶装置に電気的に接続された複数の端子51(図3)が設けられている。カートリッジ40がカートリッジホルダー60に装着されると、カートリッジホルダー60に設けられた印刷装置10側の端子712(図6)が、基板50の表面の端子51に接触する。そうすると、印刷装置10の制御部16は、カートリッジ40に備えられた記憶装置にアクセスすることが可能になる。
供給管用孔421内には、液体流路部材44に設けられたインク供給管443が露出する。供給管用孔421は、+Y軸方向に向けて窪んでおり、所定の奥行きを有している。供給管用孔421の下方(−Z軸方向)の内壁は、−Y軸方向から+Y軸方向に行くほど+Z軸方向に上るように傾斜している。換言すれば、供給管用孔421の下方(−Z軸方向)の内壁は、+Y軸方向から−Y軸方向に行くほど−Z軸方向に下るように傾斜している。供給管用孔421は、前述したセンサーレバー495の接点部496よりも鉛直上方に位置している。
センサー用孔423には、印刷装置10に設けられた棒部材720(図6)が挿入される。前述したように、棒部材720の+Y軸方向の端部は、カートリッジ40がカートリッジホルダー60に装着された際に、センサー用孔423を通って液体流路部材44に設けられたセンサーレバー495の接点部496に当接する。
図5は、カートリッジホルダー60の内部構造を示す斜視図である。この図5には、図2に示した斜視図から、カートリッジホルダー60の上蓋64や側板65,66を取り外した様子を示している。図5に示されているように、カートリッジホルダー60の内部には、底板67上に設けられたガイド溝62の−Y軸方向の端部に隣接して、インク導入機構70がカートリッジ40毎に立設されている。各インク導入機構70にはポンプユニット7が接続されている。インク導入機構70の下部には、インク吸収材69が配置されている。
図6は、インク導入機構70の詳細を示す斜視図である。インク導入機構70は、基板接触部710と、棒部材720と、インク導入針730と、インク受け部材740と、を備えている。
基板接触部710は、インク導入機構70の+Z軸方向の端部に設けられている。基板接触部710は、カートリッジ40がカートリッジホルダー60に装着された際に、カートリッジ40に設けられた基板50上の端子51に電気的に接触する端子712を有する。この端子712の裏面側にはコネクタ714が設けられている。コネクタ714は、所定のケーブルを通じて制御部16に接続される。
棒部材720は、インク導入機構70のZ軸方向の略中央部に設けられている。棒部材720の+Y軸方向の端部は、カートリッジ40がカートリッジホルダー60に装着された際に、センサー用孔423に挿入され、インク供給部材480に設けられたセンサーレバー495の接点部496に接触する。棒部材720の−Y軸方向側の端部は、インク導入機構70内に位置しており、インク導入機構70内に設けられたフォトセンサーによって、その位置が検出される。制御部16は、フォトセンサーによって検出された棒部材720の−Y軸方向の端部の位置の変化に応じて、カートリッジ40内のインクの残存状態を検出する。
インク導入針730は、Z軸方向において、基板接触部710と棒部材720との間に設けられている。インク導入針730は、カートリッジ40がカートリッジホルダー60に装着された際に、カートリッジ40に備えられたインク供給管443に挿入(接続)される。インク導入針730の先端(+Y軸方向の端部)の下部には、インク導入口が設けられている。カートリッジ40内のインクは、インク導入口を通じて印刷装置10内に導入される。
インク受け部材740は、カートリッジ40の取り外し時にインク導入針730のインク導入口から垂れるインクを捕らえるための部材である。インク受け部材740は、バネ750を挟んで、インク導入機構70に取り付けられている。インク受け部材740は、カートリッジ40がカートリッジホルダー60に取り付けられていない状態では、バネ750によって、+Y軸方向に付勢される。インク受け部材740は、略円状の当接部741と、受け皿742と、樋部材743とが一体的に形成されることで構成されている。当接部741には、当接部741の中心から−Z軸方向に向けて受け皿742の基端(−Y軸方向の端部)の位置に亘る開口744が設けられている。開口744からは、インク導入針730が突出する。当接部741の+Y軸方向側の面の開口744の下部には、受け皿742が設けられている。また、当接部741の下部には、当接部741から下方に延びる樋部材743が設けられている。樋部材743は、インク導入針730の下方に位置する棒部材720を避けるため、−X軸方向側に屈曲している。受け皿742によって、インク導入針730のインク導入口から垂れたインクが捕らえられると、そのインクは、樋部材743を伝い、カートリッジホルダー60の底板67に設けられたインク吸収材69に吸収される。
以上、印刷装置10およびカートリッジ40の構成について説明した。以下では、カートリッジ40の製造方法を、ケース部材41の詳細な構成と共に説明する。
図7は、カートリッジ40の製造方法のフローチャートである。本実施形態における製造方法では、まず、ケース部材41およびインクパック43を準備する(ステップS10)。具体的には、右ケース411と左ケース412とが組み合わされたケース部材41と、液体流路部材44が取り付けられインクが充填されていないインクパック43とを準備する。
図8は、上記ステップS10で準備されるケース部材41の斜視図である。ケース部材41の−Y軸方向の端面には、中央部に、Z軸方向に延びる開口416が設けられている。開口416の上端(+Z軸方向の端部)は、+X軸方向に向けて延びており、下端は(−Z軸方向の端部)は、−X軸方向に向けて延びている。
図9は、ケース部材41の図8におけるA−A断面を示す図である。つまり、図9は、右ケース411(図4)を−X軸方向側から見た図である。この図9および図8に示されているように、右ケース411の開口416の上端には、+Y軸方向に向かうに連れ、+Z軸方向側に傾斜する上側傾斜壁417が設けられている。
図10は、ケース部材41の図8におけるB−B断面を示す図である。つまり、図10は、左ケース412(図4)を+X軸方向側から見た図である。この図10および図8に示されているように、左ケース412の開口416の下端には、+Y軸方向に向かうに連れ、−Z軸方向側に傾斜する下側傾斜壁418が設けられている。
図11は、図8のC−C線におけるケース部材41の断面構造を示す図である。ケース部材41の内部空間は、インクパック43の主要部が収容される主要部収容部470と、インクパック43の平坦状の上端部431が収容される上側端部収容部471と、インクパック43の平坦状の下端部432が収容される下側端部収容部472とに区画されている。インクパック43の主要部とは、インクが充填される部分であり、平坦状の端部を除いた部分である。
主要部収容部470は、ケース部材41の内部中央に位置している。上側端部収容部471は、主要部収容部470の+Z軸方向側に隣接している。下側端部収容部472は、主要部収容部470の−Z軸方向に隣接している。主要部収容部470と上側端部収容部471とは、XY平面に沿った上側区画壁473によって区画されている。主要部収容部470と下側端部収容部472とは、XY平面に沿った下側区画壁474によって区画されている。上側区画壁473と下側区画壁474とには、それぞれ、中央部に、Y軸方向に沿ったスリット475,476が設けられている。上側端部収容部471は上側区画壁473に沿った板状の空間になっている。また、下側端部収容部472は下側区画壁474に沿った板状の空間になっている。上側端部収容部471および下側端部収容部472のZ軸方向における厚みと、スリット475,476のX軸方向における幅とは、インクパック43の平坦状の上端部431あるいは下端部432の厚みよりも大きい。
図12(A)は、スリット475の周辺の拡大断面を示す図である。上側区画壁473に形成されたスリット475には、面取り加工が施されている。具体的には、スリット475を挟む2つの上側区画壁473の部分のうちの−X軸方向側の部分とスリット475との境界は、下側(−Z軸方向側)の角部が傾斜するように上側区画壁473にY軸方向に沿って面取りが施されている。また、スリット475を挟む2つの上側区画壁473の部分のうちの+X軸方向側の部分とスリット475との境界は、上側(+Z軸方向側)の角部が傾斜するようにY軸方向に沿って上側区画壁473に面取りが施されている。つまり、スリット475によって分断される上側区画壁473の対向面は、それぞれが平行になるように同じ方向に傾斜している。このようなスリット475が上側区画壁473に形成されていれば、後述する製造工程においてインクパック43の上端部431がスリット475に挿入された場合に、インクパック43の上端部431は、上側傾斜壁417が形成されている+X軸方向側に折れ曲がりやすくなる。なお、本実施形態では、スリット475によって分断される上側区画壁473の対向面がいずれも面取りされることとしたが、いずれか一方のみが面取りされることとしてもよい。
図12(B)は、スリット476の周辺の拡大断面を示す図である。下側区画壁474に形成されたスリット476についても、上側区画壁473に形成されたスリット475と同じように面取りが施されている。このようなスリット476が下側区画壁474に形成されていれば、後述する製造工程においてインクパック43の下端部432がスリット476に挿入された場合に、インクパック43の下端部432は、下側傾斜壁418が形成されている−X軸方向側に折れ曲がりやすくなる。なお、本実施形態では、スリット476によって分断される下側区画壁474の対向面がいずれも面取りされることとしたが、いずれか一方のみが面取りされることとしてもよい。
図11に示す主要部収容部470は、ケース部材41の−Y軸方向端面の開口416に連通している。本実施形態では、主要部収容部470のXZ断面の内周は、略六角形状を成している。本実施形態では、主要部収容部470のXZ断面における内周の長さよりも、インクパック43のXZ断面における外周の長さが、平坦状の上端部431および下端部432が形成されている分だけ長い。また、主要部収容部470のXZ断面における内周の長さと、インクパック43のXZ断面における内周の長さとは略等しい。なお、本実施形態では、主要部収容部470のXZ断面の内周は、略六角形状としたが、略四角形状でもよいし、他の多角形の形状としてもよい。また、例えば、角部が曲線によって構成されていてもよい。
上側端部収容部471を形成する上側区画壁473は、スリット475を挟む2つの部分のうち、上側傾斜壁417が形成された側(+X軸方向側)の上面が、上側傾斜壁417の上面に繋がっている(図8,9参照)。また、下側端部収容部472を形成する下側区画壁474は、スリット476を挟む2つの部分のうち、下側傾斜壁418が形成された側(−X軸方向側)の下面が、下側傾斜壁418の下面に繋がっている(図8,10参照)。
図13は、ステップS10で準備されるインクパック43の側面図である。インクパック43は、いわゆるピロータイプの袋である。本実施形態では、インクパック43は、2枚の可撓性のフィルム部材を、上端部431と、下端部432と、+Y軸方向の端部とで、貼り合わせることで形成されている。図中のハッチング部分は、2枚のフィルム部材が溶着されて平坦になっている箇所を示している。インクパック43の−Y軸方向の端部には、図4に示すように、液体流路部材44が固定(溶着)される。
図14は、インクパックの他の態様を示す図である。図13には、2枚の可撓性のフィルム部材を貼り合わせた例を示したが、図14には、Y軸方向に長い1枚のフィルム部材をその中央部で折り合わせてインクパック43bを形成した例を示している。本実施形態においては、図13あるいは図14のどちらに示したインクパックを準備することとしてもよい。
図7に示したステップS10において、上述したケース部材41およびインクパック43が準備されると、続いて、ケース部材41にインクパック43を挿入する(ステップS20)。
図15は、ケース部材41にインクパック43を挿入する様子を示す図である。図15には、液体流路部材44の図示を省略している。上記ステップS20では、インクパック43の+Y軸方向の端部を、カートリッジ40の−Y軸方向の端面に形成された開口416から挿入する。このとき、インクパック43の上端部431を+X軸方向に折り曲げ、インクパック43の下端部432を上端部431と反対方向、すなわち、−X軸方向に折り曲げる。そうすると、上端部431の折り曲げた部分が、カートリッジ40の開口416の上部に設けられた上側傾斜壁417に沿って挿入され、下端部432の折り曲げた部分が、カートリッジ40の開口416の下部に設けられた下側傾斜壁418に沿って挿入される。
図16は、インクパック43がケース部材41に挿入された状態のケース部材41の内部構造を示す図である。図16には、ケース部材41の図8におけるC−C断面が示されている。図16に示されているように、インクパック43がケース部材41に挿入されると、ケース部材41内では、インクパック43の上端部431がスリット475を通じて上側端部収容部471の+X軸方向側の空間に収容され、下端部432がスリット476を通じて下側端部収容部472の−X軸方向側の空間に収容される。インクパック43の主要部は、主要部収容部470に収容される。このように、ケース部材41内には、インクパック43がS字状に折り曲げられて収容される。
図7に示したステップS20において、ケース部材41にインクパック43が挿入されると、インク充填口441(図4)を通じて、インクパック43内にインクを充填する(ステップS30)。
図17および図18は、インクパック43内にインクが充填された様子を示す図である。図17には、ケース部材41の図8におけるC−C断面が示されている。図18には、ケース部材41から右ケース411を取り外した状態を示している。図17中、ハッチングが付されている部分が、インクが充填されている部分を示している。図17および図18に示されているように、インクパック43内にインクが充填されると、インクパック43が、ケース部材41の内壁に沿って膨らみ、主要部収容部470内のほぼ全ての空間にインクが行き渡る。本実施形態では、インクパック43内にインクが充填されても、インクパック43の上端部431はスリット475に差し込まれたままとなり、下端部432もスリット476に差し込まれたままとなる。このように、インクの充填後にも、インクパック43の上端部431および下端部432がスリット475,476に差し込まれたままであれば、印刷装置10によるインクの消費に伴って、インクパック43内のインクの残量が減少していった場合であっても、インクパック43は、再び、図16に示すように、その上端部431および下端部432が、上側端部収容部471および下側端部収容部472に収容されていくことになる。そのため、インクパック43が、主要部収容部470内で折れ曲がったり、皺が寄ったりすることが抑制される。この結果、折れ曲がった部分や皺の部分にインクが残留してしまうことが抑制されるので、インクを無駄なく消費することが可能になる。
ステップS30においてインクパック43内にインクを充填する際には、ケース部材41の+X軸方向側の面および−X軸方向側の面にそれぞれ、ケース部材41よりも剛性の高いサポート部材800を配置することが好ましい。サポート部材800を配置することにより、インクの充填作業に伴って、インクパック43が、最も膨らみやすいX軸方向に過度に膨らむことが抑制され、Z軸方向やY軸方向の隅々にまでインクを行き渡らせることができる。サポート部材800は、図17に示されているように、例えば、対向する2枚の金属板で構成され、その間にカートリッジ40を挟む構成とすることができる。また、サポート部材800を、1つの面あるいは対向する2つの面が開口された箱状の構成とし、その開口からカートリッジ40を嵌め込む構成とすることができる。
図7に示したステップS30において、インクパック43内にインクが充填されると、インク充填口441を封止する(ステップS40)。本実施形態の製造方法では、インク充填口441に熱カシメを施すことにより封止を行う。インク充填口441を封止すると、最後に、ケース部材41に、蓋部材42を取り付け、一連のカートリッジ40の製造工程は終了する。
以上で説明した本実施形態のカートリッジ40によれば、カートリッジ40のケース部材41の内部が、主要部収容部470、上側端部収容部471、下側端部収容部472、の3つの部屋に区画され、これらの部屋を区画する上側区画壁473および下側区画壁474には、ケース部材41の内部にインクパック43が挿入される方向に沿って、スリット475,476が設けられている。そのため、カートリッジ40の製造時において、これらのスリット475,476にインクパック43の平坦な上端部431および下端部432を挿通させることで、インクパック43をケース部材41内に容易に収容することができる。また、本実施形態では、インクパック43の上端部431および下端部432がZ軸方向にスリット475,476を自由に挿通できる状態でインクの注入が行われるため、インクパック43に皺や折れを発生させることなく、隅々に亘って、インクを注入することができる。
また、本実施形態では、インクパック43が挿入されるケース部材41の開口416には、上側区画壁473に繋がる上側傾斜壁417と、下側区画壁474に繋がる下側傾斜壁418とが設けられている。そのため、上側端部収容部471および下側端部収容部472に繋がる間口が、開口416に向けて広がることになる。この結果、上側端部収容部471および下側端部収容部472内に、スムーズにインクパック43の上端部431および下端部432を挿入することができる。
更に、本実施形態では、スリット475,476に、インクパック43の上端部431および下端部432がそれぞれ折れ曲がる方向に沿った面取りが施されている。そのため、インクパック43が収縮したり膨張したりしたときに、インクパック43の上端部431および下端部432は、スリット475,476を容易に通ることができる。この結果、平坦状の上側端部収容部471や下側端部収容部472にインクパック43の上端部431および下端部432がスムーズに収納されることになる。また、本実施形態では、インクが消費されるに従って、インクパック43の上端部431および下端部432が、それぞれ、上側端部収容部471内および下側端部収容部472内に徐々に収容されていく。そのため、インクパック43が主要部収容部470内で折れ曲がったり、皺が寄ったりすることがない。そのため、インクを無駄なく消費することが可能になる。
また、本実施形態では、インクパック43のZ軸方向に沿った内周の長さは、主要部収容部470のZ軸方向に沿った内周の長さと略同じである。そのため、主要部収容部470内の隅々にまでインクパック43が膨張可能になるので、ケース部材41内の空間を最大限活用してインクを注入することができる。なお、両者の長さが同一ではなく、「略同じ」である理由は、インクパック43には厚みがあるためである。
更に、本実施形態では、インクパック43をケース部材41に挿入した後にインクをインクパック43に注入する。そのため、インクパック43にインクを注入してからケース部材41に挿入するよりも、格段に容易にカートリッジ40を形成することができる。また。本実施形態では、インクパック43の上端部431および下端部432が上側端部収容部471および下側端部収容部472に収容され、かつ、インクパック43の主要部が主要部収容部470に収容された状態で、インクをインクパック43に注入する。そのため、インクの注入に伴ってインクパック43が膨張する際に、インクパック43がケース部材41内で折れ曲がることや皺が寄ることを抑制することができる。この結果、インクの注入を容易に行うことが可能になる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
例えば、本発明は、印刷装置やそのカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置及びその液体収容容器にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置及びその液体収容容器に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレー等の画像表示装置用のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーや、面発光ディスプレー (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置
(6)潤滑油の噴射装置
(7)樹脂液の噴射装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。