<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
この実施形態は、本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。この椅子1は、図1〜図3に示すように、脚体2と、この脚体2に支持機構3を介して支持された座4と、この座4に支持された背凭れ5とを具備してなる。
脚体2は、図1〜図3に示すように、先端にキャスタ23を取り付けた脚羽根21と、この脚羽根21から立設された脚支柱22とを備えたものである。支持機構3は、この脚支柱22の上に設けられた支持基部31と、この支持基部31の左右両端から上方に起立させたアーム32とを具備してなる。左右のアーム32の上端には、左右の支軸321が相互に軸心を一致させて設けられており、これらの支軸321に前記座4を天秤動作可能に軸支させている。ここで、「天秤動作」とは、支軸321を中心として、着座者の荷重が後方にかかったときに座4が後傾して後端側が下がるとともに前端側が上がる動作、及び、着座者の荷重が前方にかかったときに座4が初期状態に戻って前端側が下がるとともに後端側が上がる動作をいう。前記軸心は、椅子1の左右方向を向いている。
座4は、図1〜図3に示すように、左右対をなす座フレーム41と、これら座フレーム41間に張設されたメッシュ状の張地42とを具備してなるもので、前記座フレーム41は、左右方向に延びる単一の前記軸心まわりにそれぞれ天秤動作し得るように前記アーム32に枢支されたものであり、左右の座フレーム41はそれぞれ硬質の合成樹脂により一体に成形されている。すなわち、この座フレーム41は、硬質部11を主体に構成されており、荷重を受けて弾性変形する構造材たる座フレーム41の弾性変形する部位に、先端113a側が開放された対をなす対向面113を一体に設け、前記座フレーム41が弾性変形した際に前記対向面113の先端113a側が近接して当該座フレーム41の弾性変形特性が変化するように構成されている。ここで「対向面113の先端113a」とは、構造材が弾性変形した際に変位しにくい対向面113の基端に比べてより大きく変位する側の対向面113の端を意味しており、「対向面113の先端113a側」とは、その対向面113のうち基端よりも先端113aに近い部位全体を意味している。すなわち、座フレーム41は、荷重が加わったときに弾性変形する前記硬質部11を具備してなり、この硬質部11の弾性変形により圧縮応力を受ける側の面、すなわち下向き面411に凹陥部分112を設け、この凹陥部分112の内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面113を形成し、前記硬質部11が一定以上弾性変形した際に前記対向面113同士が直接当接して、前記硬質部11の前記弾性変形限度を越えた変形を抑止するようにしたものである。すなわち、座フレーム41は、荷重が加わったときに曲げ方向に弾性変形する硬質部11を備えたものであり、この硬質部11の曲げ方向から見て内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面113を形成したものである。この曲げ方向から見て内側とは、荷重が加わって曲げ変形が進行するのに伴って圧縮方向の内部応力が増大する側であり、曲率半径が大きくなる方向に曲げ変形される場合の曲率中心と逆の側を指す。この座フレーム41は、片持ち梁的な構造材であり、着座時に荷重のかかる側とは反対側が弾性変形の内側となる。この実施形態においては、座フレーム41の後半部分412の下向き面411に凹陥部分112を形成し、この凹陥部分112にエラストマー12が部分的に配されたものである。換言すれば、座フレーム41は、前記対向面113を形成する凹陥部分112を備えたものであり、その凹陥部分112の一部にエラストマー12を配したものである。凹陥部分112は、前記硬質部11の前記下向き面411と、その下向き面411に連続する両側面117に開口したものであり、その凹陥部分112の対向する内側の一部を前記対向面113としている。すなわち、凹陥部分112は、開口端側の開口幅115に比べて奥側の開口幅116を大きく設定したものであり、前記開口端114側の内側を前記対向面113としている。換言すれば、前記硬質部11は、薄肉部分91と、この薄肉部分91の両側に設けられ前記薄肉部分91よりも厚み寸法の大きな厚肉部分92とを備えたものであり、前記両厚肉部分92間に前記凹陥部分112が形成されており、この凹陥部分112の内側に前記対向面113が形成されている。そして、この座フレーム41の後端に、背凭れ5の背フレーム51を一体に連続させて設けている。
背凭れ5は、図1〜図3に示すように、左右対をなす背フレーム51と、これら背フレーム51間に張設されたメッシュ状の張地52とを具備してなるものであり、左右の背フレーム51はそれぞれ硬質の合成樹脂により一体に成形されている。すなわち、この背フレーム51は、硬質部13を主体に構成されており、荷重を受けて弾性変形する構造材たる背フレーム51の弾性変形する部位に、先端133a側が開放された対をなす対向面133を一体に設け、前記背フレーム51が弾性変形した際に前記対向面133の先端133a側が近接して当該背フレーム51の弾性変形特性が変化するように構成されている。ここで「対向面133の先端133a」とは、構造材が弾性変形した際に変位しにくい対向面133の基端に比べてより大きく変位する側の対向面133の端を意味しており、「対向面133の先端133a側」とは、その対向面133のうち基端よりも先端133aに近い部位全体を意味している。すなわち、背フレーム51は、荷重が加わったときに弾性変形する前記硬質部13を具備してなり、この硬質部13の弾性変形により圧縮応力を受ける側の面、すなわち背面511に凹陥部分132を設け、この凹陥部分132の内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面133を形成し、前記硬質部13が一定以上弾性変形した際に前記対向面133同士が直接当接して、前記硬質部13の前記弾性変形限度を越えた変形を抑止するようにしたものである。すなわち、背フレーム51は、荷重が加わったときに曲げ方向に弾性変形する硬質部13を備えたものであり、この硬質部13の曲げ方向から見て内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面133を形成したものである。この曲げ方向から見て内側とは、荷重が加わって曲げ変形が進行するのに伴って圧縮方向の内部応力が増大する側であり、曲率半径が小さくなる方向に曲げ変形される場合の曲率中心側を指す。この背フレーム51は、片持ち梁的な構造材であり、着座時に荷重のかかる側とは反対側が弾性変形の内側となる。この実施形態においては、背フレーム51の背面511に凹陥部分132を形成し、この凹陥部分132にエラストマー14が部分的に配されたものである。換言すれば、背フレーム51は、前記対向面133を形成する凹陥部分132を備えたものであり、その凹陥部分132の一部にエラストマー14を配したものである。凹陥部分132は、前記硬質部13における前記背面511と、その背面511に連続する両側面137に開口したものであり、その凹陥部分132の対向する内側の一部を前記対向面133としている。すなわち、凹陥部分132は、開口端側の開口幅135に比べて奥側の開口幅136を大きく設定したものであり、前記開口端134側の内側を前記対向面133としている。換言すれば、前記硬質部13は、薄肉部分93と、この薄肉部分93の両側に設けられ前記薄肉部分93よりも厚み寸法の大きな厚肉部分94とを備えたものであり、前記両厚肉部分94間に前記凹陥部分132が形成されている。なお、図4及び図5では、弾性変形前と弾性変形後の背フレーム51の硬質部13及びエラストマー14を拡大して示しており、座フレーム41の硬質部11及びエラストマー12もこれに準じた変形がなされる。
以上のように、この椅子1は、荷重を受けて弾性変形する構造材たる座フレーム41及び背フレーム51を備え、これらの座フレーム41及び背フレーム51の弾性変形する部位に、先端113a、133a側が開放された対をなす対向面113、133を複数組設け、前記座フレーム41及び背フレーム51が弾性変形した際に前記各組の対向面113、133同士が近接して座フレーム41及び背フレーム51が所望の形状に近づくように構成している。すなわち、この座フレーム41及び背フレーム51は、荷重が加わったときに弾性変形する硬質部11、13を備え、この硬質部11、13の弾性変形により圧縮応力を受ける側、すなわち曲げ方向から見て内側の面に複数の凹陥部分112、132を設け、これらの凹陥部分112、132の内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面113、133をそれぞれ設けてなるものであり、各対向面113、133同士がそれぞれ当接した状態で、前記座フレーム41及び背フレーム51に過大な力が作用しない限り、図3に示すような前記座フレーム41及び背フレーム51が予め設定した変形形状に保たれるようにしている。
また、この椅子1は、前記左右の座フレーム41の天秤動作を一定の範囲内に規制する回動規制機構6を備えている。回動規制機構6は、図1〜図3に示すように、前記支持基部31のアーム32に設けられた突起61と、前記座フレーム41の下向き面411に取り付けられ前記突起61に当接する当接子62とを具備してなるもので、この当接子62は、エラストマーにより作られている。
このような椅子1であれば、座フレーム41の沈み込み動作と背フレーム51の後傾動作と座フレーム41及び背フレーム51の弾性変形とが相俟って、多様な着座感が得られる。すなわち、執務姿勢(S)で座4に着座した場合には、図1及び図2に示すように、着座者の体重に起因した荷重は、座4の前部領域Fに作用するため、座フレーム41は傾動せず、座4は安定した状態で支持されることになる。また、着座者が背凭れ5に凭れかかり、座4の後部領域Rに荷重が移行した場合には、座フレーム41が天秤動作し、座4の後部領域Rが沈み込むことになる。
そして、着座者がさらに背凭れ5に深く凭れかかると、図3に示すように、前記座フレーム41及び背フレーム51の硬質部11、13が弾性変形し、着座者をやわらかく受け止めることになる。この弾性変形は、凹陥部分112、132の対向面113、133同士が当接するまでの間は、主に薄肉部分91、93の弾性特性に支配されて反発力を蓄勢するが、対向面113、133が当接した後は、薄肉部分91、93の変形が禁止され、厚肉部分92、94の弾性特性に支配されることになる。すなわち、対向面113、133同士が当接する前後で、硬質部11、13の弾性変形特性が急変することになり、対向面113、133が当接した後は、背凭れ5がそれ以上大きく後傾することが抑止される。なお、このように硬質部11、13が弾性変形限度に達して対向面113、133同士が当接した後も、背凭れ5に過大な後傾方向の力を加えれば、前記座フレーム41及び背フレーム51の硬質部11、13の厚肉部分92、94の弾性特性に支配されつつ若干の変形を行うことになる。すなわち、前記座フレーム41及び背フレーム51における硬質部11、13が前記弾性変形限度に達した場合には、各凹陥部分112、132に配されたエラストマー12、14が圧縮され、前記対向面113、133が直接当接することになる。そのため、座フレーム41及び背フレーム51のそれ以上の弾性変形が抑止されることになる。
しかも、この実施形態においては、座フレーム41及び背フレーム51に複数の凹陥部分112、132を設けており、前記硬質部11、13が所定の弾性変形限度まで変形した際に前記各凹陥部分112、132の対向面113、133同士が直接当接して、前記硬質部11、13の前記弾性変形限度を越えた変形を抑止するようにしているので、各対向面113、133同士がそれぞれ当接した状態で、過大な力が作用しない限り前記座フレーム41及び背フレーム51が予め設定した変形形状に保たれる。
以上に述べたように、本実施形態にかかる椅子1は、荷重を受けて弾性変形する座フレーム41及び背フレーム51を備え、この座フレーム41及び背フレーム51の弾性変形する部位に先端113a、133a側が開放された対をなす対向面113、133を複数組設け、前記座フレーム41及び背フレーム51が弾性変形した際に前記各組の対向面113、133同士が近接して座フレーム41及び背フレーム51が所望の形状に近づくようにしている。すなわち、着座者からの荷重がかかった際に複数箇所にわたって設けられた凹陥部分112、132が弾性変形するため、座フレーム41及び背フレーム51を適度に弾性変形させて、座り心地の良いものとすることができる。特に、このようなものであれば、従来のような受け面を配する必要がないため、椅子1全体の形状や構造に関する設計の自由度を高めることができる。さらに、従来のような受け面を配さなくとも、座フレーム41及び背フレーム51の弾性変形限度を超えた変形を抑止するようにしているので、対向面113、131同士が当接することで、ストッパとしての役割も果たすことになる。そのため、無制限に後方に倒れることが規制され、着座者が安心してリクライニング姿勢をとることができる。
また、座フレーム41及び背フレーム51の最終的な変形形状は、凹陥部分112、132の配置間隔や形状、大きさ等を適宜選定することにより自由に設計することができるので、従来のような座フレーム41や背フレーム51の断面形状等を各部で変えて変形させる場合よりも簡単な構造で変形形状を設定できる。
前記座フレーム41及び背フレーム51が、荷重が加わったときに曲げ方向に弾性変形する硬質部11を備えたものであり、この硬質部11の曲げ方向から見て内側に複数の凹陥部分112、132を形成し、これら各凹陥部分112、132内に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面113、133をそれぞれ形成しているので、前記対向面113、133間に着座者の衣服等を挟み込んでしまうおそれもない。
また、本実施形態においては、前記構造材が、座4を構成する座フレーム41であり、前記各凹陥部分112が、前記座フレーム41の下向き面411側に開口させて設けられたものであるので、着座者の荷重が座4の後部領域Rに移動した際には、着座荷重により圧縮応力を受ける下向き面411側に設けられた凹陥部分112の対向面113が接近し、座フレーム41全体が下方へ柔らかく弾性変形する。特に、本実施形態では、比較的弾性変形させたい座フレーム41の後半部分412、すなわち着座者の臀部に相当する部分に凹陥部分112を設けるとともに、比較的剛性を持たせたい座フレーム41の中間部分、すなわち支持機構3のアーム32との接続部分近傍や、座フレーム41の前半部分、すなわち着座者の大腿部に相当する部分に凹陥部分112を設けていない。
本実施形態においては、前記構造材が、背凭れ5を構成する背フレーム51であり、前記各凹陥部分132が、前記背フレーム51の背面511側に開口させて設けられたものであるので、着座者が後方に凭れかかった際には、着座荷重により圧縮応力を受ける背面511側に設けられた凹陥部分132の対向面133が接近し、背フレーム51全体が後方へ柔らかく弾性変形する。特に、本実施形態では、比較的弾性変形させたい背フレーム51の下部領域、すなわち着座者の腰部に相当する部分に凹陥部分132を設けるとともに、比較的剛性を持たせたい背フレーム51の上部領域、すなわち着座者の頭部に相当する部分に凹陥部分132を設けていない。
前記座フレーム41及び背フレーム51が、前記対向面113、133を形成する凹陥部分112、132を備えたものであり、その凹陥部分112、132の一部にエラストマーを配したものであるので、対向面113、133同士が近接する動きを柔らかくすることができる。したがって、座フレーム41や背フレーム51の弾性変形を柔らかくして座り心地を良くすることができる。また、このエラストマー12、14が圧縮されることで、座フレーム41及び背フレーム51を弾性変形前の形状に復帰させるための反力に寄与する。換言すれば、このエラストマー12、14は、座フレーム41及び背フレーム51を弾性変形前の形状に復帰させるための復帰機構の一部であると言える。一方、回動規制機構6の当接子62にもエラストマーを用いてるが、この当接子62は、エラストマーが圧縮されることで、座フレーム41及び背フレーム51を傾動前の執務姿勢(S)に復帰させるための反力に寄与する。すなわち、この当接子62は、左右の座フレーム41及び背フレーム51がそれぞれ独立して回転動作を行うことができるようにしており、座4の沈み込み動作を行った場合に反発力を蓄積しつつ変形するようになっている。
前記硬質部11、13は、前記圧縮応力を受ける側の面、すなわち座フレーム41の下向き面411と背フレーム51の背面511及びそれらの各面に連続する両側面117、137に開口した凹陥部分112、132を備えたものであり、その凹陥部分112、132の対向する内側の一部を前記対向面113、133としているので、硬質部11、13が弾性変形しやすいものとなっている。詳述すれば、前記凹陥部分112、132は、三方向に開口しているので、対をなす対向面113、133同士が、開口端114、134付近のみならず対向面113、133の側端付近においても離間しており、硬質部11、13の弾性変形に伴って対向面113、133同士が近接しやすい構造となっている。さらに、凹陥部分112、132が前述した三方向に開口した形状であるので、凹陥部分112、132の開口端側の開口幅115、135よりも奥側の開口幅116、136が大きく設定されているにもかかわらず、座フレーム41及び背フレーム51を合成樹脂によって一体成形することができる。また、座フレーム41及び背フレーム51の横幅寸法及び厚み寸法をほぼ同一にしているため、座フレーム41及び背フレーム51を一体成形により簡単に作ることができ、また、椅子1の組み立ても容易に行うことができる。
また、このような椅子1であれば、左右の座フレーム41及び背フレーム51がそれぞれ独立して後傾可能であるので、着座者の後方へのひねり動作にも対応することができる。すなわち、座フレーム41及び背フレーム51が、左右別々に天秤動作を行うことができるとともに、左右別々に座フレーム41及び背フレーム51の弾性変形を行うことができる。天秤動作について詳述すれば、本実施形態の椅子1は、脚体2と、この脚体2に支持された座4とを具備してなるものであって、前記座4の座フレーム41が、左右方向に延びる単一の軸心まわりにそれぞれ天秤動作し得るように脚体2に枢支されたものである。そして、前記座4は、左右の座フレーム41の相互に異なった天秤動作を許容し得るように構成されたものであり、前記左右の座フレーム41の天秤動作を一定の範囲内に規制する回動規制機構6を備えているので、複雑なロッキング機構を用いる必要がなく、簡単な構造で、好適なリクライニング感を得ることができる。しかも、天秤動作の回転支持部が座4の前後方向中央部分にあり、作業姿勢時には着座者による荷重の重心が前部領域Fに集中することによって、安定して作業姿勢が維持できるとともに、休息姿勢時には着座者による荷重の重心が後部領域Rに集中することによって座4の後部領域Rが下方に落ち込むため、好適なリクライニング姿勢をとることができる。すなわち、この椅子1は、座4の後側が下がると前側が上がり、逆に座4の前側が下がって元の位置に戻ると後側が上がって元の位置に戻るというシーソーのような構造を備えているといえる。しかしながら、本実施形態の椅子1は、回動規制機構6を備えているので、座4が単一の軸心まわりに回動するように支持されたものであっても、無制限に後方に倒れることが規制され、着座者が安心してリクライニング姿勢をとることができる。
さらに、本実施形態の椅子1は、左右の座フレーム41における凹陥部分112を設ける箇所を左右で同じ前後位置に設定するとともに、左右の背フレーム51における凹陥部分132を設ける箇所を左右で同じ高さ位置に設定しているので、左右でバランスのとれた椅子1とすることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について図6及び図7を参照して説明する。
この実施形態は、本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。この椅子1は、図6及び図7に示すように、脚体2と、この脚体2に支持機構3を介して支持された座4と、この座4に支持された背凭れ5とを具備してなる。
脚体2は、図6及び図7に示すように、先端にキャスタ23を取り付けた脚羽根21と、この脚羽根21から立設された脚支柱22とを備えたものである。支持機構3は、この脚支柱22の上に設けられた支持基部31と、この支持基部31の前端部に前水平軸33を介して基端を枢着した左右対をなす前リンク要素34と、前記支持基部31の後端部に後水平軸35を介して基端を枢着した左右対をなす後リンク要素36と、この後リンク要素36と一体的に回動し得るように前記基端を後リンク要素36に固着し先端側を背凭れ5の背面511側に延出させた背フレーム支持部材37とを具備してなる。前記前リンク要素34の上端38及び後リンク要素36の上端39は、それぞれ座4の座フレーム41に枢着されており、前記支持基部31と前記前リンク要素34と前記座フレーム41と前記後リンク要素36とによって、四節リンク機構が構成されている。
座4は、図6及び図7に示すように、左右対をなす座フレーム41と、これら座フレーム41間に張設されたメッシュ状の張地42とを具備してなるもので、前記座フレーム41は、第1実施形態に準じて、硬質部11と、この硬質部11に設けられた凹陥部分112とを備え、この凹陥部分112の内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面113を形成し、前記硬質部11が一定以上弾性変形した際に前記対向面113同士が直接当接して、前記硬質部11の前記弾性変形限度を越えた変形を抑止するようにしたものであり、第1実施形態と同一または対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。なお、第1実施形態と異なる点について説明すれば、座フレーム41の下向き面411に、前軸受け413と、後軸受け414とを前後方向に間隔をあけて設けておき、前記前軸受け413に前記前リンク要素34の上端38を枢着するとともに、前記後軸受け414に前記後リンク要素36の上端39を枢着している。
背凭れ5は、図6及び図7に示すように、左右対をなす背フレーム51と、これら背フレーム51間に張設されたメッシュ状の張地52とを具備してなるもので、前記背フレーム51は、第1実施形態に準じて、硬質部13と、この硬質部13に設けられた凹陥部分132とを備え、この凹陥部分132の内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面133を形成し、前記硬質部13が一定以上弾性変形した際に前記対向面133同士が直接当接して、前記硬質部13の前記弾性変形限度を越えた変形を抑止するようにしたものであり、第1実施形態と同一または対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。なお、第1実施形態と異なる点について説明すれば、背フレーム51の背面511側に、下方に開口したハウジング512を設け、このハウジング512内に前記背フレーム支持部材37の上端部30を挿入している。背フレーム支持部材37の上端部30には、上下方向に伸びる長孔301が設けられており、この長孔301に前記ハウジング512に固設した水平軸513を貫通させてある。これにより、この背フレーム支持部材37の上端部30を一定寸法だけ上下方向に遊動可能な状態で、前記背フレーム51に接続している。
このような椅子1であれば、座フレーム41の沈み込み動作と背フレーム51の後傾動作と座フレーム41及び背フレーム51の弾性変形とが相俟って、多様な着座感が得られる。すなわち、執務姿勢(S)で座4に着座した場合には、図6及び図7に実線で示すように、着座者の体重に起因した荷重は、座4を押し下げる方向に作用するため、座フレーム41及び背フレーム51は傾動せず、座4は安定した状態で支持されることになる。また、着座者が背凭れ5に凭れかかり、背凭れ5が後方に付勢された場合には、この背凭れ5が背フレーム支持部材37を後方に回動させつつ後傾することになる。その結果、後リンク要素36が後方に回動して座4を後上方に引き上げるとともに、この座4の移動に伴って前リンク要素34も後方に回動する。前リンク要素34及び後リンク要素36は前記執務姿勢(S)においては若干前傾しているため、後方に回動するに伴って座4が上方に持ち上げられ、着座者の重心を上方に移動させることになる。すなわち、この椅子1は、体重感知式のリンク機構を備えたものであり、着座者の体重を利用して執務姿勢(S)に復帰することができるようになっている。
なお、以上の後傾姿勢から着座者がさらに背凭れ5に深く凭れかかると、図7に二点鎖線で示すように、前記座フレーム41及び背フレーム51の硬質部11、13が弾性変形し、着座者をやわらかく受け止めることになる。この弾性変形は、第1実施形態と同様なものであり、対向面113、133同士が当接する前後で、硬質部11、13の弾性変形特性が急変することになり、対向面113、133が当接した後は、背凭れ5がそれ以上大きく後傾することが抑止される。すなわち、前記座フレーム41及び背フレーム51における硬質部11、13が一定以上弾性変形した際に、各凹陥部分112、132に配されたエラストマー12、14が圧縮され、前記対向面113、133が直接当接することになる。そのため、座フレーム41及び背フレーム51のそれ以上の弾性変形が抑止されることになる。しかも、この実施形態においては、座フレーム41及び背フレーム51に複数の凹陥部分112、132を設けており、前記硬質部11、13が所定の弾性変形限度まで変形した際に前記各凹陥部分112、132の対向面113、133同士が直接当接して、前記硬質部11、13の前記弾性変形限度を越えた変形を抑止するようにしているので、各対向面113、133同士がそれぞれ当接した状態で、過大が力が作用しない限り前記座フレーム41及び背フレーム51が予め設定した変形形状に保たれる。
本実施形態にかかる椅子によれば、上述した第1実施形態の椅子と同一またはこれに準じた効果が得られる。
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
座フレーム及び背フレームの最終的な変形形状は、対向面の配置間隔や形状、大きさ等を適宜選定することにより自由に設計することができる。
例えば、各組の対をなす対向面間の距離が、互いに異なっているものが考えられる。すなわち、対面する対向面間の距離が小さく設定されている場合は小さな弾性変形によっても対向面同士が近接し、弾性変形特性を変えることができる一方、対面する対向面間の距離が小さく設定されている場合は大きな弾性変形によらなければ対向面同士が近接しない。したがって、比較的堅く弾性変形させたい箇所の対向面間の距離は小さく設定するとともに、比較的柔らかく弾性変形させたい箇所の対向面間の距離は大きく設定すればよい。
また、各組の対をなす対向面の形成箇所の離間距離が、互いに異なっているものであってもよい。この場合には、比較的固く弾性変形させたい箇所は対向面を形成しないか、少なめに形成するとともに、比較的柔らかく弾性変形させたい箇所は対向面を密集させて形成すればよい。
さらに、他の例としては、各組の対をなす対向面の大きさが、互いに異なっているものが考えられる。ここで、「対向面の大きさ」とは、対向面の高さ(深さ)寸法、幅寸法または対向面の面形状の違いによる面積を意味する。
なお、以上説明した対向面間の距離、対向面の形成箇所の離間距離及び対向面の大きさは、種々組み合わせて用いてもよいのはもちろんである。さらに、複数の対向面が一定方向に並んでおり、隣接する対向面間の距離、対向面の形成箇所の離間距離及び対向面の大きさの少なくとも1つが、順次異なるように設定されているものであってもよい。
また、座フレーム及び背フレームの最終的な変形形状は、対向面間に配置されるエラストマーの有無やエラストマーを配する位置、エラストマーの大きさや形状、エラストマーの弾性特性等を適宜選定することにより自由に設計することができる。
例えば、各組の対をなす対向面間に配されるエラストマーの厚み寸法が、互いに異なっているものが考えられる。ここで、「厚み寸法」とは、エラストマーの高さ寸法、幅寸法を意味し、異形状のものであってもよい。具体的には、比較的堅く弾性変形させたい箇所の対向面間には、厚み寸法の大きいエラストマーを配するとともに、比較的柔らかく弾性変形させたい箇所の対向面には、厚み寸法の小さいエラストマーを配すればよい。
また、各組の対をなす対向面間に配されるエラストマーの弾性特性が、互いに異なっているものであってもよい。
なお、以上説明したエラストマーの有無、エラストマーの厚み寸法や弾性特性は、種々組み合わせて用いてもよいのはもちろんである。さらに、複数の対向面が一定方向に並んでおり、隣接する対向面間に配されるエラストマーの有無、エラストマーの厚み寸法及び弾性特性の少なくとも1つが、順次異なるように設定されているものであってもよい。
エラストマーを充填するか否かにかかわらず、凹陥部分の形状には種々のものが考えられる。前記実施形態においては、凹陥部分112、132の奥側を開口端114、134側に対して両側に拡開することにより開口端側の開口幅115、135に比べて奥側の開口幅116、136を大きく設定したもの、すなわち、側面視T字形をなすものについて説明したが、凹陥部分112の奥側を開口端114側に対して片側に屈曲することにより開口端側の開口幅115に比べて奥側の開口幅116を大きく設定したもの、すなわち、図8に示すような側面視L字形をなすものや、凹陥部分112の奥側を開口端114側に対して丸く膨出することにより開口端側の開口幅115に比べて奥側の開口幅116を大きく設定したもの、すなわち、図9に示すような側面視鍵穴形をなすもの等が考えられる。また、凹陥部分は、必ずしも開口端側の開口幅に比べて奥側の開口幅を大きく設定する必要はなく、例えば、図10、図11または図12に示すようなものであってもよい。各例について、対向面113、厚肉部分92及び薄肉部分91等の対応する部分には、上述した実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
また、以上説明した実施形態においては、凹陥部分にエラストマーを全く配さない場合と、凹陥部分の一部にエラストマーを充填した場合について説明したが、凹陥部分全体にエラストマーを配してもよいのはもちろんである。その一例として、図13に示すように、硬質部11の外面111とエラストマー12の外面121とを面一に構成しているものが挙げられるが、このようなものであれば、構造材に設けた凹陥部分112の形状と同一形状をなすエラストマー12を配しているので、構造材が硬質部11と軟質部であるエラストマー12とによって一体化されたような外観が得られる。そのため、家具としての外観を良好にすることができる。また、このような場合、硬質部11が所定の弾性変形限度まで変形した際に前記対向面113同士がエラストマー12を介して当接して、前記硬質部11の一定以上の弾性変形を抑止することになる。なお、凹陥部分の一部にエラストマーを配する場合であっても、実施形態で示したような凹陥部分の奥側にエラストマーを配置したものの他に、凹陥部分の開口端側のみにエラストマーを配置したもの等であってもよい。すなわち、凹陥部分の一部にエラストマーを配する場合、前記硬質部が所定の弾性変形限度まで変形した際に、前記対向面同士が直接当接する場合と、エラストマーを介して間接的に当接する場合がある。なお、対向面同士が直接当接する場合には、当接面近傍に補強材を取り付けてもよい。このような補強材を取り付ければ、何度も当接することによる硬質部のけずれを防止または抑制することができる。なお、凹陥部分にエラストマーを充填した場合には、エラストマーを充填しない場合に比べて、対向面同士が当接した際の衝撃を小さくすることができる。したがって、硬質部をじわりと弾性変形させることができる。
以上説明した実施形態においては、厚肉部分と薄肉部分の厚み寸法の比率については、必要な弾性変形特性に応じて適宜設定すればよい。
また、厚肉部分は、薄肉部分よりも厚み寸法が大きいものに限られず、薄肉部分と厚み寸法が同一または小さく設定されているものであってもよく、例えば、薄肉部分に弾性変形を抑制するためのリブを備えたものであってもよい。具体的な一例としては、図14及び図15に示すように、荷重を受けて弾性変形する板状の硬質部11を備え、この硬質部11の弾性変形する部位に先端113a側が開放された対をなす対向面113を備える対をなす対向壁113bを突出させて設けたものが挙げられる。この対向壁113bの前記対向面113を形成しない側の面は、前記硬質部11に一体に形成されたリブ118に接続されており、前記対向面113の先端113a側が近接する方向以外の変形を規制している。なお、これら対向面113を形成する対向壁113bの形状は、図16に示すようなものの他、どのようなものであってもよい。
また、凹陥部分内に配されるゴム弾性を有する樹脂であるエラストマーは、凹陥部分内で対向面間に初期状態では接触しないように隙間を有して配置したり、最初から両対向面に接触するように配置したり、凹陥部分内を埋めるように充填したりする等、種々の態様をとることができる。そして、凹陥部分内に配されるエラストマーの形状についても、どのようなものであってもよい。具体的な一例としては、図17に示すようにエラストマー12の形状が凹陥部分112の形状と略一致するもの、換言すれば、凹陥部分112全体にエラストマー12を配したものや、図18に示すように、凹陥部分112の開口端114側には開口幅の全域にわたってエラストマー12を配し、奥側には対向面113とエラストマー12との間に隙間を設けたものや、図19に示すように、凹陥部分112の深さ寸法全域にわたって対向面113とエラストマー12との間に隙間を設けたものであってもよい。
さらに、前記実施形態においては、圧縮応力を受ける側の面に凹陥部分を設けるようにしていたが、硬質部の弾性変形により引張り応力を受ける側の面に凹陥部分を設けてもよい。より具体的には、前記実施形態においては、構造材が、荷重が加わったときに曲げ方向に弾性変形する硬質部を備えたものであり、この硬質部の曲げ方向から見て内側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面を形成したものであったが、構造材が、荷重が加わったときに曲げ方向に弾性変形する硬質部を備えたものであり、この硬質部の曲げ方向から見て外側に前記弾性変形に伴って接近する対をなす対向面を形成したものであってもよい。この曲げ方向から見て外側とは、荷重が加わって曲げ変形が進行するのに伴って引張り方向の内部応力が増大する側であり、曲率半径が小さくなる方向に曲げ変形される場合における曲率中心と逆の側を指す。具体的な一例としては、図20及び図21に示すように、引張り応力を受ける側の面、すなわち曲げ方向から見て外側に、側面視S字状等に入り組んだ凹陥部分112を形成し、硬質部11が所定の弾性変形限度まで変形した際に前記凹陥部分112内に形成された対をなす前記対向面113の先端側が近接して当該構造材の弾性変形特性が変化するようにしてもよい。この場合、前記凹陥部分の一部または全部にエラストマーを配してもよい。また、図20及び図21で示したものは、リブ118を備えているが、図22に示すようにリブを備えていないものであってもよい。
また、上述した実施形態では、対向面を着座者の荷重を受ける硬質部に一体に設けていたが、別体で設けてもよい。具体的な一例としては、荷重が加わったときに弾性変形する硬質部の弾性変形により圧縮応力を受ける側の面または引張り応力を受ける側の面に、対をなす対向面を形成する一または複数の取付部材をビス等の止着具を介して取り付けることによって、この取付部材の対向面間を凹陥部分とすればよい。このように、別体を取り付けて対向面を形成するようにすれば、特に、前述したような引張り応力を受ける側の面に、容易に凹陥部分を形成することができるため有効である。
なお、「構造材」とは、荷重を受けるものあればどのようなものであってもよく、この構造材が用いられる部位も座、背凭れ、または座と背凭れの境界部分のいずれであってもよい。すなわち、構造材は、前後方向や上下方向に延びる縦枠材の他に、左右方向に延びる横枠材であってもよい。横枠材の場合には、前記左右方向に複数の凹陥部分を設けるようにすればよい。このようなものであれば、横枠材がねじり方向に荷重を受けた際に前記弾性変形限度を迎えることとなる。
また、この構造材は、メッシュ状の張地が取り付けられるものの他にも、この構造材の上向き面または前向き面にシェル状の座本体または背本体が取り付けられるものであってもよい。すなわち、座フレームや背フレームに座本体取付部や背本体取付部を設けたり、張地を取り付けるための取付溝を設けてもよい。この取付溝は、例えば、座フレーム及び背フレームの側面に外方に開口させて設ければよい。このようなものであれば、取付溝についても座フレーム及び背フレームを成形する際に形成することができ、前記凹陥部分も含めて一体成形することができる。上述した実施形態では、背フレームと座フレームが一体化されたものについて説明したが、本発明を座フレームのみに適用したものや、背フレームのみに適用したものであってもよいのはもちろんである。
また、座フレーム及び背フレームの弾性変形するタイミングについても、上述したものに限られず種々変更可能である。例えば、着座者が後方に凭れかかった際に、まず座フレーム及び背フレームの弾性変形が生じ、この座フレーム及び背フレームが所定の弾性変形限度まで変形し、前記各対向面同士が直接または間接的に当接して、前記硬質部の前記弾性変形限度を越えた変形を抑止した後に、座フレーム及び背フレームが前記天秤動作するようにしてもよいし、座フレーム及び背フレームの弾性変形と同時期に座フレーム及び背フレームが天秤動作するようにしてもよい。
上述した実施形態では、座フレームの後半部分にのみ凹陥部分を設けるようにしていたが、座フレームの前半部分に凹陥部分を設けてもよい。
また、左右の座フレーム及び背フレームが独立して後傾動作するのを妨げないものであれば、左右の背フレーム間を接続する横枠等を設けてもよい。
さらに、第1実施形態で示した回動規制機構は、上述したものに限られず種々変更可能である。例えば当接子は、弾性変形するものであっても、弾性変形しないものであってもよく、その形状や材質は特に問わない。また、この当接子は、座フレームやエラストマーに一体に設けられていても、座フレームに取り付けられる別体で形成してもよい。
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。