JP2013119566A - ガスバリア性組成物 - Google Patents

ガスバリア性組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2013119566A
JP2013119566A JP2011267050A JP2011267050A JP2013119566A JP 2013119566 A JP2013119566 A JP 2013119566A JP 2011267050 A JP2011267050 A JP 2011267050A JP 2011267050 A JP2011267050 A JP 2011267050A JP 2013119566 A JP2013119566 A JP 2013119566A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alkyl
mol
composition
coating agent
coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2011267050A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinsuke Arai
真輔 新居
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2011267050A priority Critical patent/JP2013119566A/ja
Publication of JP2013119566A publication Critical patent/JP2013119566A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

【課題】 本発明の目的は、透明性が高く、かつ高湿度下においても優れたガスバリア性を有する塗膜を形成することが可能な組成物、その組成物を含有するコーティング剤、そのコーティング剤を塗工してなる塗工物、上記塗工物からなる包装材及び上記塗工物の製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、アルキル変性ビニルアルコール系重合体及び無機層状化合物を含む組成物であって、上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が、下記式(I)で表される単量体単位(a)を含有し、粘度平均重合度が200以上4,000以下、けん化度が90モル%以上99.99モル%以下、上記単量体単位(a)の含有率が0.05モル%以上5モル%以下である組成物である。
Figure 2013119566

【選択図】なし

Description

本発明は、高湿度下においても優れたガスバリア性を有し、かつ透明な塗膜の形成に好適な組成物、その組成物を含有するコーティング剤、そのコーティング剤を用いてなる塗工物、包装材及び塗工物の製造方法に関する。
酸素ガスバリア性フィルム及びそれを用いた包装材としては、各種のものが知られている。
例えばアルミニウム箔は、優れた酸素ガスバリア性を有しているが、単独で用いるとピンホールが生じやすいため、主に積層フィルムの中間層として使用されている。しかし、上記アルミニウム箔を積層したフィルムは、不透明なため内容物が見えにくいこと、焼却後に残渣が残ること、金属類の混入が金属探知機により検知できないこと等の不都合がある。
また、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム及びPVDCをコーティングしたフィルムは、吸湿性がほとんどなく高湿下でも良好なガスバリア性を有するため、広く用いられている。しかし、PVDCフィルム及びPVDCがコーティングされたフィルムは、一般廃棄物として焼却される時に有害な塩化水素ガスを生じるという不都合がある。
一方、完全けん化のポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)フィルムは、低湿度下においては優れたガスバリア性を有するが、吸湿性が激しく相対湿度が70%程度以上になるとガスバリア性が急激に低下することが知られている。これは、吸湿によりPVA中の非晶部分の運動が活発化し、その部分を気体が透過し易くなるためと考えられている(非特許文献1参照)。
そこで、PVA中に存在する非晶部分の運動を抑制することを目的として、PVAを架橋させる試みが盛んに行われており、例えば、特許文献1及び2には、PVAとポリアクリル酸とを混合し架橋させたものは高湿度下においてもガスバリア性を発現することが記載されている。しかし、PVAとポリアクリル酸との架橋反応には200℃近い高温熱処理が必要であり、これによりPVAの着色が起こるため、透明性が要求される用途には用いることができない。また、そのガスバリア性も十分満足できるレベルではない。さらに、PVAに無機層状化合物等の無機化合物を添加した塗工液を塗工したフィルムが開発されているが(特許文献3参照)、高湿度下でのガスバリア性は未だ十分とはいえない。
特開平7−266441号公報 特開2001−164174号公報 特開平09−207256号公報
「ポバール」 1970年 高分子刊行会出版
本発明の目的は、透明性が高く、かつ高湿度下においても優れたガスバリア性を有する塗膜形成に好適な組成物、その組成物を含有するコーティング剤、そのコーティング剤を塗工してなる塗工物、上記塗工物からなる包装材及び上記塗工物の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するためになされた発明は、アルキル変性PVA及び無機層状化合物を含む組成物であって、上記アルキル変性PVAが、下記式(I)で表される単量体単位(a)を含有し、粘度平均重合度が200以上4,000以下、けん化度が90モル%以上99.99モル%以下、上記単量体単位(a)の含有率が0.05モル%以上5モル%以下である組成物である。
Figure 2013119566
式(I)中、Rは、炭素数8〜29の直鎖状又は分岐状アルキル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。
当該組成物は、上記アルキル変性PVA及び無機層状化合物を含むことで、コーティング剤として用いた場合に、得られる塗膜のガスバリア性を向上させることができると共に、その透明性にも優れる。当該組成物がこのような性質を有する理由は定かではないが、例えば、上記アルキル変性PVAが含有する単量体単位(a)中のアルキル基R同士が会合し、PVAの非晶部分の運動が抑制できることや、上記無機層状化合物が、上記塗膜を垂直に通過しようとする酸素の動きを阻害し、酸素が塗膜を通過するのにかかる距離及び時間を延長できることが考えられる。
上記式(I)におけるRが、炭素数15〜25の直鎖状又は分岐状アルキル基であるとよい。このように上記Rが長鎖のアルキル基であることで当該組成物は、得られる塗膜の高湿度下でのガスバリア性をより高めることができる。
上記アルキル変性PVAは、下記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られたものであるとよい。
Figure 2013119566
式(II)中、R及びRの定義は上記式(I)と同様である。
上記アルキル変性PVAが上記特定構造の不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られたものであることにより、上記アルキル変性PVAは水溶性により優れるため、当該組成物からのコーティング剤調製がより容易となる。
上記無機層状化合物は、雲母類、タルク、モンモリロナイト、カオリナイト及びバーミキュライトからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。当該組成物は、上記特定の無機層状化合物を含むことで、得られる塗膜のガスバリア性をより一層向上させることができると共に、透明性にも優れる。
本発明は、当該組成物を含有するコーティング剤も含む。当該コーティング剤は、当該組成物を含有するため、これを塗工して得られる塗膜は、高湿度下においても高いガスバリア性を有し、かつ透明性にも優れる。
本発明は、当該コーティング剤を基材表面に塗工してなる塗工物も含む。当該塗工物は当該コーティング剤を基材表面に塗工したものであるため、高湿度下においても優れたガスバリア性を有すると共に透明性にも優れる。
本発明は、当該塗工物からなる包装材も含む。当該包装材は、当該塗工物からなるため、高湿度下においても高いガスバリア性を有すると共に透明性も十分満足する。
本発明の塗工物の製造方法は、当該コーティング剤を用い、基材表面に塗膜を形成する工程を有する。当該製造方法によると、高湿度下においても高いガスバリア性を有し、透明性にも優れる塗工物を得ることができる。
本発明の組成物は、上記特定のアルキル変性PVA及び無機層状化合物を含むことにより、特別な架橋剤を用いなくとも、これから得られる塗膜の高湿度下におけるガスバリア性を向上させることができると共に、透明性も十分満足することができる。従って、本発明の組成物はガスバリア性を必要とする基材表面へのコーティング剤として好適に用いられる。また、このコーティング剤を塗工した塗工物は、透明性、高湿度下におけるガスバリア性を要求される食品等の包装材として特に有用である。
以下、本発明の組成物、コーティング剤、塗工物、包装材及び塗工物の製造方法の実施の形態について詳説する。
<組成物>
本発明の組成物は、後述する特定のアルキル変性PVA及び無機層状化合物を含有する。また、当該組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
(アルキル変性PVA)
上記アルキル変性PVAは、上記式(I)で表される単量体単位(a)を含有する。すなわち、上記アルキル変性PVAは、上記単量体単位(a)と、ビニルアルコール単量体単位(−CH−CHOH−)との共重合体であり、さらに他の単量体単位を含有していてもよい。
上記式(I)中、Rは、炭素数8〜29の直鎖状又は分岐状アルキル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。
上記Rで表される炭素数8〜29の直鎖状又は分岐状アルキル基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基等が挙げられる。上記Rで表される上記アルキル基の炭素数が8未満の場合、上記アルキル変性PVAにおけるアルキル基同士の相互作用が発現し難いため、ガスバリア性が十分に発揮されない。逆に、この炭素数が29を超える場合、上記アルキル変性PVAの水溶性が低下するため、透明性が不十分となる。これらのうち、炭素数15〜25のアルキル基が好ましく、炭素数17〜24のアルキル基がより好ましい。
上記Rで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等が挙げられる。これらのうち、合成の容易性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましい。
なお、上記R及びRは、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよいが、これらの置換基を有していないことが好ましい。
上記アルキル変性PVAにおける上記単量体単位(a)の含有率は、0.05モル%以上5モル%以下である。さらに、この含有率は、0.1モル%以上2モル%以下が好ましく、0.2モル%以上1モル%以下がより好ましい。なお、この単量体単位(a)の含有率とは、アルキル変性PVAを構成する全構造単位のモル数に占める上記式(I)で表される単量体単位(a)のモル数の割合(モル%)である。また、上記アルキル変性PVAが、上記式(I)で表される単量体単位(a)以外に他のアルキル変性単量体単位を含まない場合、この単量体単位(a)の含有率が、いわゆるアルキル変性率となる。
上記単量体単位(a)の含有率が5モル%を超えると、上記アルキル変性PVA一分子あたりに含まれる疎水基の割合が高くなり、このアルキル変性PVAの水溶性が低下するため、当該組成物は、透明性に優れる塗膜を形成することができない。一方、この単量体単位(a)の含有率が0.05モル%未満の場合、アルキル変性PVAの水溶性は優れているものの、このアルキル変性PVA中に含まれるアルキル単位の数が少ないため、得られる塗膜のガスバリア性が不十分となるおそれがある。
この単量体単位(a)の含有率は、上記アルキル変性PVAから求めてもよく、その前駆体であるアルキル変性ビニルエステル系重合体から求めてもよく、いずれもプロトンNMRから求めることができる。例えば、アルキル変性ビニルエステル系重合体から求める場合、具体的には、n−ヘキサン/アセトンでアルキル変性ビニルエステル系重合体の再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のサンプルを作製する。このサンプルをCDClに溶解させ、プロトンNMRを用いて室温で測定する。
この際、例えば、この単量体単位(a)以外のアルキル変性単量体単位を含まず、Rが直鎖状であり、さらにRが水素原子である場合、以下の方法にて算出できる。すなわち、アルキル変性ビニルエステル系重合体の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とアルキル基Rの末端メチル基に由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)とから、下記式を用いて、単量体単位(a)の含有率Sを算出する。
S(モル%)
={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
上記アルキル変性PVAの粘度平均重合度は200以上4,000以下であり、300以上3,500以下であることが好ましく、400以上3,800以下であることがより好ましく、500以上3,000以下であることがさらに好ましい。なお、粘度平均重合度を単に重合度と呼ぶことがある。この重合度が4,000を超えると、このアルキル変性PVAの生産性が低下するため実用的でない。逆に、この重合度が200未満の場合、当該組成物から得られる塗膜のガスバリア性が低下する。
この粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、アルキル変性PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
上記アルキル変性PVAのけん化度は、90モル%以上99.99モル%以下であり、95モル%以上99.9モル%以下が好ましく、98モル%以上99.9モル%以下がより好ましい。このけん化度が90モル%未満の場合には、上記アルキル変性PVAの疎水基相互作用により発現する会合性能(架橋的性能)が低下し、得られる塗膜のガスバリア性が低下する。逆に、このけん化度が99.99モル%を超えると、アルキル変性PVAの生産が困難になるので実用的でない。なお、上記アルキル変性PVAのけん化度は、JIS−K6726に準じて測定し得られる値である。
(アルキル変性PVAの製造方法)
上記アルキル変性PVAを製造する方法は特に制限されないが、上記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行い、得られたアルキル変性ビニルエステル系重合体をけん化する方法が好ましい。ここで、上記の共重合はアルコール系溶媒中又は無溶媒で行うことが好適である。
上記式(II)中、R及びRの定義は上記式(I)と同様である。
上記式(II)で表される不飽和単量体としては、例えば、N−オクチルアクリルアミド、N−デシルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ヘキサコシルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、N−ヘキサコシルメタクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、N−オクタデシルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、N−デシルメタクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド、N−オクタデシルメタクリルアミド、及びN−ヘキサコシルメタクリルアミドが好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド、N−ドデシルメタクリルアミド及びN−オクタデシルメタクリルアミドがより好ましく、N−オクタデシルアクリルアミド及びN−オクタデシルメタクリルアミドがさらに好ましい。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これら中でも酢酸ビニルが好ましい。
上記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合してもよい。使用し得る単量体としては、例えば、
エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;
塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;
酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物類;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物類;
酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
また、上記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られる共重合体の重合度を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で共重合を行ってもよい。この連鎖移動剤としては、例えば、
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;
トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;
ホスフィン酸ナトリウム一水和物等のホスフィン酸塩類等が挙げられる。これらの中でも、アルデヒド類及びケトン類が好ましい。
上記連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数及び目的とするアルキル変性ビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定することができるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
上記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行う際に採用される温度としては0〜200℃が好ましく、30〜140℃がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られにくい。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、本発明で規定する単量体単位(a)の含有率を満足するアルキル変性PVAを得られにくい。共重合を行う際に採用される温度を0〜200℃に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで重合により生成する発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等が挙げられるが、安全性の面からは後者の方法が好ましい。
上記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行うのに採用される重合方式としては、例えば、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合等が挙げられる。重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法を採用することができる。これらの中でも、無溶媒又はアルコール系溶媒中で重合を行う塊状重合法、溶液重合法が好適に採用され、高重合度の共重合体の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は2種類以上を混合して用いることができる。
上記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて、例えば、従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等を用いることができる。
上記アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
上記過酸化物系開始剤としては、例えば、
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;
t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネート等のパーエステル化合物;
アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤とすることもできる。
上記レドックス系開始剤としては、例えば、上記の過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたもの等が挙げられる。
なお、上記式(II)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVAの着色等が見られることがある。この場合には、着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤をビニルエステル系単量体に対して1ppm〜100ppm程度添加してもよい。
上記共重合により得られたアルキル変性ビニルエステル系重合体のけん化反応には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒又はp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた公知の加アルコール分解反応又は加水分解反応を適用することができる。
この反応に使用しうる溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール等のアルコール類;
酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記けん化反応としては、メタノール又はメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒として用いて行う方法が簡便であり好ましい。
(無機層状化合物)
当該組成物は、無機層状化合物を含有することで、得られる塗膜の高湿度下でのガスバリア性を向上させることができる。そのような効果を奏する理由としては、当該組成物において、無機層状化合物が、上記塗膜を垂直に通過しようとする酸素の動きを阻害し、酸素が塗膜を通過するのにかかる距離及び時間を延長できること等が考えられる。
無機層状化合物とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列したシートが、ファンデルワールス力、静電気力等の弱い力によってほぼ平行に積み重なった構造を持つ無機化合物である。かかる無機層状化合物としては、例えば、雲母類、タルク、モンモリロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、スメクタイト、ヘクトライト、テニオライト、酸性白土等が挙げられ、これら無機層状化合物には天然に産出される化合物及び合成される化合物の両方が含まれる。これらのうち、雲母類、タルク、モンモリロナイト、カオリナイト及びバーミキュライトが好ましい。
無機層状化合物の平均粒子径(長径)は、電子顕微鏡観察で500個以上の粒子の長径を平均して求めることができる。本発明における無機層状化合物としては、本発明の塗工物の断面を電子顕微鏡で観察して、平均粒子径(長径)10nm〜100μm、長径が短径の1.1〜200倍であるものを用いることができる。
上記無機層状化合物としては、水又はアルコールに浸漬することで膨潤又は劈開する性質を有する化合物(以下、「膨潤性無機層状化合物」ともいう)であることが好ましい。このような膨潤性無機層状化合物は、得られる塗膜のガスバリア性をより向上させることができる。ここで、膨潤とは、無機層状化合物を大過剰の水又はアルコールに浸漬した際、X線回折法で見た層相互の間隔が広がることをいい、劈開とは同様の操作を加えた場合に、層相互の間隔を示すピークが、小さくなるか又は消滅するような挙動を示すことをいう。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級脂肪族アルコール等が挙げられる。
上記膨潤性無機層状化合物としては、例えば、バーミキュライト、モンモリロナイト、層間にリチウム、ナトリウム等がインターカレートされた膨潤性合成フッ素雲母系鉱物等が挙げられる。
これらの中でも、水溶媒で劈開性を有するモンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母が好ましく、劈開性により一層優れ、かつ合成物であることに由来する品質の均一性、高純度などの特性を有することから層間にリチウム、ナトリウムなどがインターカレートされた膨潤性フッ素雲母がより好ましい。これらの膨潤性無機層状化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
当該組成物における上記アルキル変性PVAと上記無機層状化合物との質量比(アルキル変性PVAの質量)/(無機層状化合物の質量)は特に限定されないが、本発明の効果をより一層向上させる観点から、70/30以上100/1以下を満たすことが好ましく、80/20以上100/2以下を満たすことがより好ましい。アルキル変性PVAと無機層状化合物との質量比を上記特定範囲とすることで、当該組成物は、高湿度下でのガスバリア性をより一層向上させることができる。上記質量比が70/30未満の場合や、100/1を超える場合は、高湿度下でのガスバリア性が低下するおそれがある。
(他の成分)
当該組成物は、水、有機溶媒等の溶媒を含んでいてもよい。これらの溶媒の中でも、水が好ましい。また、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含んでいてもよい。
<組成物の調製方法>
当該組成物は、例えば、アルキル変性PVAの水溶液と、無機層状化合物が水に分散した分散液とを混合すること等により調製することができる。
<コーティング剤>
当該コーティング剤は、各種基材表面等に塗工して用いることができる。上記基材表面に塗工された当該コーティング剤は、必要に応じて施される加熱等の工程を経て塗膜となり、高湿度下においても優れたガスバリア性を有する塗工物を形成することができる。
本発明のコーティング剤は、当該組成物を含有するものであれば特に限定されない。当該コーティング剤は、通常当該組成物及び溶媒を含有しているが、溶液の状態であってもよいし、分散液の状態であってもよい。上記溶媒としては水が好ましく用いられるが、水と各種アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等とを併用してもよい。当該コーティング剤においては、全固形分中の無機層状化合物の比率が1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。このときの当該コーティング剤の状態としては、当該組成物を含有する水溶液であることが好ましい。
当該コーティング剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、上記アルキル変性PVA以外の水溶性樹脂又は水分散性樹脂(以下、「その他の樹脂」ともいう)を含有していてもよい。また、上記コーティング剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、通常の各種添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、充填剤、各種高分子、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
当該コーティング剤の調製方法としては、当該組成物、必要に応じて加えられるその他の樹脂及び各種添加剤等を、所定の割合で、水等の溶媒中で混合することにより調製することができる。
<塗工物及びその製造方法>
本発明の塗工物は、当該コーティング剤を基材表面に塗工してなる塗工物である。当該塗工物は、当該コーティング剤を塗工することで、高湿度下においても優れたガスバリア性を示す塗膜を有する。また、当該塗工物の製造方法は、当該コーティング剤を用い、基材表面に塗膜を形成する工程を有する。当該製造方法によると、高湿度下においても優れたガスバリア性を有し、かつ透明性を十分満足する塗工物を容易に得ることができる。なお、コーティング剤を基材に塗工した後には、通常、加熱等による乾燥が施される。
上記基材としては、例えば、紙(合成紙を含む)、布、木板、金属板、フィルム等が挙げられる。これらの中でも、フィルムを用いることが好ましい。
上記フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステルフィルム;
ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン、MXDナイロン等のポリアミドフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム;
エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム;
ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミドフィルム;
セルロース、酢酸セルロース等のセルロースフィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明性、ガスバリア性等に優れるという観点から、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムが好ましい。
上記ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等の基材は、さらにケイ素化合物を含有していることが好ましい。ケイ素化合物を含有することで、このような基材と本発明の組成物から形成される塗膜との接着性がより一層向上する。上記基材におけるケイ素化合物の含有率としては2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。また、上記ケイ素化合物としては、例えば、二酸化ケイ素、アルキルシリケート等の公知のシリカが用いられる。これらの中でも、コロイダルシリカが好ましい。
上記ケイ素化合物の基材への添加方法は特に限定されないが、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等のフィルムを用いる場合は、製膜前に予め樹脂中にケイ素化合物を混合させておく方法が好適に採用され得る。
上記基材の厚み(延伸する場合は最終的な基材の厚み)としては特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択されるが、フィルムの強度や取り扱い性等の観点から5〜100μmが好ましい。
当該コーティング剤を上記基材表面に塗工する際の塗工温度は特に限定されないが、20〜80℃が好ましい。また、当該コーティング剤の塗工方法としては、グラビアロールコーティング法、リバースグラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法が好適に採用される。
当該コーティング剤の塗工に際しては、基材を延伸する工程、熱処理を施す工程等を組み合わせてもよい。なお、作業性の観点から、基材を延伸する工程の後にコーティング剤を塗布し、その後さらに延伸工程を行い、後者の延伸工程中又は延伸工程後に熱処理を施す方法が好ましく採用される。
基材表面に塗工された当該組成物から形成される塗膜において架橋反応を進行させ、当該塗工物のガスバリア性をより一層高める観点から、さらに熱処理を施すことが好ましい。上記熱処理の温度としては90〜180℃が好ましく、100〜160℃がより好ましく、110〜150℃がさらに好ましい。熱処理の温度が90℃未満であると架橋反応が十分に進行しないおそれがあり、一方、熱処理の温度が180℃を超えると得られる塗工物が着色するおそれがある。
当該塗工物は、通常、基材と、この基材の少なくとも一方の表面に当該コーティング剤を塗工してなる塗工層(塗膜)を有するが、上記基材と上記塗工層との間や、上記塗工層の表面にさらに他の層が形成されていてもよい。
上記基材と上記塗工層との間に形成される他の層としては、例えば、接着剤層等が挙げられる。上記接着剤層を有することで、基材と塗工層との接着性がより一層向上するため好ましい。
上記塗工層の表面に形成される他の層としては、例えば、ヒートシール層等が挙げられる。上記ヒートシール層の形成に際しては、押出ラミネート法、ドライラミネート法が好ましく採用される。上記ヒートシール層に用いられる樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー等が挙げられる。
<包装材>
上述した当該塗工物は高湿度下においてもガスバリア性に優れるため、酸素の存在により劣化しやすい内容物、例えば、食品、医薬品等の包装材として好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準を意味する。
なお、得られたPVA(アルキル変性PVA及び無変性PVA)の評価は、以下の方法に従って行った。
(変性率)
PVAにおける式(I)で表される単量体単位(a)の含有率(以下、「アルキル変性率」ともいう)は、上述した、プロトンNMRを用いた方法に準じて求めた。なお、プロトンNMRは、500MHzのJEOL GX−500を用いた。
(重合度)
PVAの重合度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
(けん化度)
PVAのけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
<PVAの製造>
[製造例1](PVA1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g及びN−オクタデシルメタクリルアミド1.1gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてN−オクタデシルメタクリルアミドをメタノールに溶解して濃度5%としたコモノマー溶液を調製し、このコモノマー溶液を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。上記反応器に、上記ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマーの総量は4.8gであった。また重合停止時の固形分濃度は29.9%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性酢酸ビニル系重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液771.4g(溶液中のアルキル変性PVAcは200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液におけるアルキル変性PVAcの濃度は25%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03であった。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してアルキル変性PVA(PVA1)を得た。
[製造例2〜17](PVA2〜17の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するアルキル基を有する不飽和単量体の種類や添加量等の重合条件、けん化時におけるアルキル変性PVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様の方法により各種のアルキル変性PVA(PVA2〜17)を製造した。
[製造例18](PVA18の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g及びオクタデシルビニルエーテル57.3gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0gを添加し重合を開始した。60℃で2時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は30.4%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、アルキル変性酢酸ビニル系共重合体(アルキル変性PVAc)のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したアルキル変性PVAcのメタノール溶液792.9g(溶液中のアルキル変性PVAcは200.0g)に、7.0gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液におけるアルキル変性PVAcの濃度は25%、アルキル変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比は0.0075であった。アルカリ溶液を添加後約12分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してアルキル変性PVA(PVA18)を得た。
[製造例19](PVA19の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル900g及びメタノール100gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は31.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液971.1g(溶液中のPVAcは200.0g)に、27.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。ここで、けん化溶液におけるPVAcの濃度は20%、PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比は0.03であった。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して無変性PVA(PVA19)を得た。
Figure 2013119566
[実施例1]
PVA1の濃度4%の水溶液を調製した。次に、膨潤性フッ素雲母(ソマシフ ME−100、コープケミカル社製)の濃度が6%となるよう水に分散し、家庭用ミキサーに15分かけ、分散液を調製した。PVA1の水溶液と膨潤性フッ素雲母の分散液とを、全固形分中の膨潤性フッ素雲母の比率が5%になるように混合して組成物を調製し、これをコーティング剤とした。得られたコーティング剤を、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面に、上記コーティング剤からなる塗膜の厚みが10μmとなるように50℃で流延し、続いて、120℃で10分間熱処理を施して塗工物を作製した。得られた塗工物のガスバリア性及び透明性について、以下の方法によりそれぞれ評価した。評価結果を表2に示す。
(ガスバリア性)
得られた上記塗工物を、温度20℃、相対湿度85%の状態で5日間調湿した後、上記塗工物の酸素透過量(OTR、cc/m・day・atm)を測定した。ここで、酸素透過量とは、上記コーティング剤からなる塗膜の厚みを2μmに換算した値であり、以下の基準にて判定した。なお、評価がA〜Dである場合は、ガスバリア性が良好であると判断できる。
A:0.01cc/m・day・atm以上1.0cc/m・day・atm未満
B:1.0cc/m・day・atm以上、10.0cc/m・day・atm未満
C:10.0cc/m・day・atm以上30.0cc/m・day・atm未満
D:30.0cc/m・day・atm以上50.0cc/m・day・atm未満
E:50.0cc/m・day・atm以上
(透明性)
得られた上記塗工物から、上記コーティング剤からなる塗膜を剥がし、2cm四方に切断した。得られた2cm四方の塗膜を10枚重ね、塗膜の透明性を目視により以下の基準にて判定した。なお、塗膜の透明性がA〜Cである場合は、実用的であると判断できる。
A:透明
B:若干白濁
C:白濁
D:かなり白濁
[実施例2〜12及び比較例1〜7]
PVA1に代えて、表2に記載の各PVAを用いたこと以外は実施例1と同様にして塗工物を作製した。得られた塗工物のガスバリア性及び塗膜の透明性について、実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、表2における評価「−」は、PVAの溶解性が低く、良好なコーティング剤を調製できなかったものについて、酸素透過量の測定を実施していないことを示す。
Figure 2013119566
表2に示されるように、本発明の組成物を用いた場合には、得られる塗工物のガスバリア性が高く、かつ透明な塗膜が得られることが分かる。一方、PVAの重合度が200未満の場合(比較例1)、PVAのけん化度が90モル%未満の場合(比較例2)、アルキル基が規定の範囲より短い場合(比較例4)、及び無変性のPVAを用いた場合(比較例7)は、得られる塗工物のガスバリア性が不十分である。また、PVAにおける式(I)で表される単量体単位(a)の含有率が5モル%を超える場合(比較例3)、アルキル基が規定の範囲より短い場合(比較例4)及びPVAが式(I)で表される単量体単位(a)を有さない場合(比較例6)は、得られる塗膜の透明性が不十分である。
本発明の組成物は、上記特定のアルキル変性PVA及び無機層状化合物を含むことにより、特別な架橋剤を用いなくとも、これから得られる塗膜の高湿度下におけるガスバリア性を向上させることができると共に、透明性も十分満足することができる。そのため、ガスバリア性を必要とする基材表面へのコーティング剤として好適に用いることができる。また、このコーティング剤を塗工した塗工物は、透明性、高湿度下におけるガスバリア性を要求される食品等の包装材として特に有用である。

Claims (8)

  1. アルキル変性ビニルアルコール系重合体及び無機層状化合物を含む組成物であって、
    上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が、下記式(I)で表される単量体単位(a)を含有し、粘度平均重合度が200以上4,000以下、けん化度が90モル%以上99.99モル%以下、上記単量体単位(a)の含有率が0.05モル%以上5モル%以下である組成物。
    Figure 2013119566
    (式(I)中、Rは、炭素数8〜29の直鎖状又は分岐状アルキル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基である。)
  2. 上記式(I)におけるRが、炭素数15〜25の直鎖状又は分岐状アルキル基である請求項1に記載の組成物。
  3. 上記アルキル変性ビニルアルコール系重合体が、下記式(II)で表される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をけん化することにより得られたものである請求項1又は請求項2に記載の組成物。
    Figure 2013119566
    (式(II)中、R及びRの定義は上記式(I)と同様である。)
  4. 上記無機層状化合物が、雲母類、タルク、モンモリロナイト、カオリナイト及びバーミキュライトからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の組成物。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物を含有するコーティング剤。
  6. 請求項5に記載のコーティング剤を基材表面に塗工してなる塗工物。
  7. 請求項6に記載の塗工物からなる包装材。
  8. 請求項5に記載のコーティング剤を用い基材表面に塗膜を形成する工程を有する塗工物の製造方法。
JP2011267050A 2011-12-06 2011-12-06 ガスバリア性組成物 Pending JP2013119566A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011267050A JP2013119566A (ja) 2011-12-06 2011-12-06 ガスバリア性組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011267050A JP2013119566A (ja) 2011-12-06 2011-12-06 ガスバリア性組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013119566A true JP2013119566A (ja) 2013-06-17

Family

ID=48772381

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011267050A Pending JP2013119566A (ja) 2011-12-06 2011-12-06 ガスバリア性組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013119566A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016159916A (ja) * 2015-02-27 2016-09-05 日本テトラパック株式会社 包装容器用シーリングテープ及び包装容器

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016159916A (ja) * 2015-02-27 2016-09-05 日本テトラパック株式会社 包装容器用シーリングテープ及び包装容器

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5191096B2 (ja) 樹脂組成物、それを用いた水性塗工液、及び多層構造体
JP6110678B2 (ja) ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体
JP6324322B2 (ja) フィルム
JP5219343B2 (ja) フィルムの製造方法
JP6403019B2 (ja) 変性ポリビニルアルコールを含む水性組成物及び変性ポリビニルアルコールの成形体
JP6704415B2 (ja) 樹脂組成物及び成形体
JP2012188661A (ja) 水性塗工液、これを用いた多層構造体およびその製造方法
JP6029143B2 (ja) 変性エチレン−ビニルアルコール共重合体及びその製造方法
JP6456132B2 (ja) 水溶性フィルム及び薬剤包装体
JP2008045078A (ja) ガラス用接着剤、およびそれを用いたガラス積層体
WO2019194318A1 (ja) ジオメンブレン並びにそれを用いたランドフィルシート及びラドンバリアフィルム
JPWO2019159757A1 (ja) 変性ビニルアルコール系重合体とその製造方法
JP4311806B2 (ja) ガスバリア性フィルムおよびその製造方法
JP2015038168A (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物
JP5525110B2 (ja) アルキル変性ビニルアルコール系重合体溶液
JP2013119566A (ja) ガスバリア性組成物
JP6073733B2 (ja) 水性エマルジョン型接着剤の製造方法
JP6418930B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物
TW202146480A (zh) 改質乙烯醇系聚合物
JP5132966B2 (ja) ガスバリアー性樹脂組成物からなるガスバリアー性フィルム
CN115867604A (zh) 树脂组合物、以及使用其的水性涂布液和多层结构体
JP6340287B2 (ja) ビニルアルコール系共重合体および成形物
JP6227376B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂膜の製法
WO2023058761A1 (ja) エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するペレット及びその製造方法
JP5501913B2 (ja) ブロック共重合体の製法