JP2013103948A - 重金属の不溶化剤及び重金属の不溶化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種と、硫酸カルシウムと、水溶性カルシウムを不溶化する薬剤とを含有する重金属の不溶化剤。固体廃棄物に対し、上記の不溶化剤を添加する重金属の不溶化方法。
【選択図】なし
Description
この不溶化方法として、廃棄灰に対してリン酸やリン酸塩を添加することが広く行われている。例えば、特許文献1には、都市廃棄物の焼却により生じるフライアッシュやフライアッシュとボトムアッシュとの混合物に対して、リン酸やリン酸塩を添加することが記載されている。この方法は、廃棄灰のアルカリ度が低い場合には、長期的に重金属を不溶化させることができ、非常に有効である。しかしながら、廃棄灰のアルカリ度が高いと、水に溶解したときのpHが高くなり、鉛などの両性金属が溶出してしまう。そのため、アルカリを中和するpH調整剤を添加してpHを6以上11未満にする必要が生じ、コスト高であるという問題がある。
ごみ焼却灰、ボイラ灰等の焼却残渣は、通常はアルカリ性である。また、焼却設備の排ガス処理に使用するアルカリ粉末が集塵灰に混入すると、更にアルカリ度が増す。高炉から発生するダストも石灰が多量に含まれるためアルカリ度が高く、pHを6以上11未満にするには多量のpH調整剤が必要である。
例えば、特許文献2には、焼却灰に対して、リン酸やリン酸塩と、セメントとを添加し、リン酸やリン酸塩による化学的不溶化とセメントによる物理的封じ込めを併用する方法が記載されている。
特許文献3には、廃棄灰に対して、リン酸やリン酸塩と、硫酸とを併用する方法が記載されている。この硫酸が、廃棄灰に含まれる水溶性カルシウムを硫酸カルシウムとして不溶化することにより、リン酸が水溶性カルシウムと反応して消費されることが抑制され、重金属がリン酸によって効率よく不溶化されるとされている。
特許文献4には、重金属含有物質に対して、不溶性重金属化合物を生成する第1成分と、重金属成分を吸着・捕捉して安定化させる第2成分とを添加する方法が記載されている。
特許文献3の不溶化剤は、リン酸やリン酸塩の他に硫酸を含有しているが、この硫酸は廃棄灰中に存在するカルシウム化合物と反応して当該カルシウム化合物を不溶化させるためのものであり、重金属の不溶化はリン酸やリン酸塩で行っている(段落0006)。また、特許文献3の実施例1では、両性金属である鉛に関してpH12の高アルカリ環境において若干の溶出量低減効果があることが示されているが、昭和48年2月17日総理府令第5号に準ずる方法で行った試験において、鉛の溶出基準値0.3mg/Lを超過している。よって、特許文献3の方法でも、pHが11以上となるような高アルカリ環境での重金属の不溶化効果は不十分なものとなる。
特許文献4の不溶化剤は、第1成分の緩衝作用によってpHを10程度に調整することを前提にしている(段落0028〜段落0031)。また、特許文献4の不溶化剤は、第1成分(リン酸やリン酸塩)の他に前記の第2成分を含有しているが、第2成分は重金属成分を吸着・捕捉して安定化させるためのものであり、重金属の化学的な不溶化は第1成分(リン酸やリン酸塩)で行っている(段落0013)。よって、特許文献4の方法でも、pHが11以上となるような高アルカリ環境での重金属の評価は不十分なものとなる。
なお、特許文献4の請求項7には、第2成分としてケイ酸塩等の多くの成分と共に石膏が挙げられている。しかしながら、特許文献4には石膏を用いた実施例の記載はなく、また、石膏が他の第2成分と比べて重金属の不溶化効果に優れる旨の記載もない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、アルカリ度の高い廃棄灰等の固体廃棄物であっても、多量のpH調整剤を用いることなく安定して固体廃棄物中の重金属を不溶化することが可能な重金属の不溶化剤及び重金属の不溶化方法を提供することを目的とする。
[1]リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種と、硫酸カルシウムと、水溶性カルシウムを不溶化する薬剤とを含有する重金属の不溶化剤。
[2]前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤が、炭酸イオン、硫酸イオン及びケイ酸イオンの少なくとも1種を供給できる薬剤である[1]に記載の重金属の不溶化剤。
[3]前記硫酸カルシウムが、煤煙脱硫処理によって得られた硫酸カルシウムである[1]又は[2]に記載の重金属の不溶化剤。
[4]前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤が高炉スラグである[1]〜[3]のいずれかに記載の重金属の不溶化剤。
[5]前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤がケイ酸カルシウムを主成分としており、前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤中のカルシウムのCaO換算の含有量が60質量%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の重金属の不溶化剤。
[6]前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤が、硫酸及びその塩並びに炭酸及びその塩の少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の重金属の不溶化剤。
[7]水溶性カルシウム及び重金属を含有しており、環境庁告示13号に準拠して調製したpH6.3の溶媒を用いて、環境庁告示13号に準拠して調製された試料液イのpHが11以上である固体廃棄物中に含まれる重金属の不溶化用である[1]〜[6]のいずれかに記載の重金属の不溶化剤。
[8]固体廃棄物に対し、[1]〜[7]のいずれかに記載の不溶化剤を添加する重金属の不溶化方法。
[9]前記固体廃棄物は、水溶性カルシウム及び重金属を含有しており、環境庁告示13号に準拠して調製したpH6.3の溶媒を用いて、環境庁告示13号に準拠して調製された試料液イのpHが11以上となるものである[8]に記載の重金属の不溶化方法。
[10]前記固体廃棄物に対し、前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤を添加すると同時に又は添加した後に、前記硫酸カルシウムと、リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種とを添加する[8]又は[9]に記載の重金属の不溶化方法。
[11]前記固体廃棄物が燃焼プロセス又は鉄鋼プロセスで生じた灰である[8]〜[10]のいずれかに記載の重金属の不溶化方法。
[12]前記重金属が鉛を含む[8]〜[11]のいずれかに記載の重金属の不溶化方法。
本発明に係る重金属の不溶化剤は、リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種(以下、「リン酸等」と称することがある)と、硫酸カルシウムと、水溶性カルシウムを不溶化する薬剤(以下、「水溶性カルシウム不溶化薬剤」と称することがある)とを含有するものである。この不溶化剤を固体廃棄物に添加することにより、アルカリ度の高い固体廃棄物であっても、多量のpH調整剤を用いることなく安定して固体廃棄物中の重金属を不溶化することができる。
これに対して特許文献1のように、リン酸又はリン酸塩は含有するが硫酸カルシウムは含有しない不溶化剤を固体廃棄物に添加した場合、高アルカリ条件下では本発明の不溶化剤のように重金属を良好に不溶化することができない。例えば、鉛を含有する固体廃棄物中に特許文献1の不溶化剤を添加すると、リン酸鉛が生成して鉛が不溶化されると想定されるが、pH11以上特にpH12以上の高アルカリ性域におけるリン酸鉛の溶解度平衡から鑑みて、鉛の溶出基準値(昭和48年2月17日総理府令第5号に規定された鉛の溶出基準値:0.3mg/L)を満足することは困難である。
なお、特許文献1のような硫酸カルシウムを含有しない不溶化剤を用いた場合にあっても、不溶化剤中のリン酸又はリン酸塩が固体廃棄物中に含まれている水溶性カルシウムと反応し、リン酸カルシウムを生成してヒドロキシアパタイト結晶構造を形成することにより、重金属不溶化効果が得られることが期待される。しかしながら、この場合のヒドロキシアパタイト結晶構造の生成速度は遅いため、重金属の固定効果が低いという問題がある。なお、長期間をかければ結晶成長により重金属の固定化率が向上する可能性があるが、それでは実用性がない。
しかしながら、本発明の不溶化剤は、更に水溶性カルシウム不溶化剤を含んでいる。この水溶性カルシウム不溶化薬剤が、固体廃棄物中の水溶性カルシウムと反応して当該水溶性カルシウムを難溶化することにより、水溶性カルシウムと上記リン酸等との反応が抑制される。これにより、リン酸等が良好に硫酸カルシウムと反応してヒドロキシアパタイト結晶構造の形成に寄与することになり、重金属の不溶化効果が一層向上するものと考えられる。
本発明に係る重金属の不溶化剤は、リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種を含有する。前述のとおり、不溶化剤中のリン酸等と硫酸カルシウムとの反応によって生じるヒドロキシアパタイトの結晶構造中に重金属が取り込まれることにより、重金属が良好に不溶化すると考えられる。
本発明に係る重金属の不溶化剤は、硫酸カルシウムを含有する。前述のとおり、不溶化剤中のリン酸等と硫酸カルシウムとの反応によって生じるヒドロキシアパタイトの結晶構造中に重金属が取り込まれることにより、重金属が良好に不溶化すると考えられる。
ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)を構成するカルシウムとリンとのモル比は、5:3である。よって、ヒドロキシアパタイト結晶構造を良好に生成する観点からは、不溶化剤中における硫酸カルシウムとリン酸等との含有割合は、カルシウムとリンとが当該モル比に近くなる割合であることが好ましい。この観点から、リン酸等のリン酸換算含有量100質量部に対する硫酸カルシウムの無水硫酸カルシウム換算含有量は、好ましくは50〜500質量部であり、より好ましくは100〜350質量部であり、更に好ましくは200〜250質量部である。
本発明に係る重金属の不溶化剤は、水溶性カルシウム不溶化薬剤を含有する。前述のとおり、この水溶性カルシウム不溶化薬剤が固体廃棄物中に含まれる水溶性カルシウムを難溶化することにより、不溶化剤中のリン酸等と硫酸カルシウムとが良好に反応してヒドロキシアパタイトを形成し、その結晶構造中に重金属が効率よく取り込まれ、重金属が良好に不溶化すると考えられる。
この炭酸イオンは、カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成することにより水溶性カルシウムを難溶化する。また、硫酸イオンは、水溶性カルシウムと反応して硫酸カルシウムを生成し、同時に固体廃棄物からのアルミニウムの溶出が伴う場合は、エトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・30〜32H2O)やモノサルフェート(3CaO・Al2O3・CaSO4・12H2O)等の鉱物を生成することにより、水溶性カルシウムを難溶化する。ケイ酸イオンは、水溶性カルシウムと反応してトベルモライト(3CaO・2SiO2・3H2O)等の鉱物を生成することにより、水溶性カルシウムを難溶化する。
具体的には、この水溶性カルシウム不溶化薬剤としては、炭酸イオンを供給できる炭酸、炭酸塩、及び重炭酸塩;硫酸を供給できる硫酸及び硫酸塩;ケイ酸塩を供給できるケイ酸カルシウム等が挙げられる。
本発明に係る重金属の不溶化剤は、上記の成分の総てを同一の容器内に混合した剤型であってもよく、上記の各成分の一部又は総てを別個の容器に収容してなるキットであってもよい。
上記の成分の総てを同一の容器内に混合した剤型の場合、取扱い性に優れる。なお、このような混合剤型であっても、保管中に各成分が反応することは防止又は抑制される。すなわち、リン酸等と硫酸カルシウムとを共存させても、フッ素等の不純物がない条件ではpH5.5以下では反応してヒドロキシアパタイトを生成することがない。そのため、フッ素等の不純物のない条件ではpH5.5以下、不純物の影響を考慮した場合においてはpH4.5以下の条件にしておけば、不溶化剤中のリン酸等及び硫酸カルシウムは反応することがなく、安定して保管することができる。更に、各成分が総て固体状の場合は、複数の成分を乾燥状態で接触させても反応することはないから、pHに関係なく任意の比率で混合保存することができる。
この不溶化剤を固体廃棄物に添加・混合、加湿して、pH5.5を超える環境にしたときに、これらリン酸等と硫酸カルシウムとが反応してヒドロキシアパタイトを生成する。なお、前述のとおり硫酸カルシウムが高アルカリ性域で不安定化することから、pH11以上の環境で反応性が高くなり、pH12以上の環境で反応性が顕著に高くなる。
また、上記のキットの場合、後述するとおり、各成分を異なるタイミングで固体廃棄物中に添加してもよい。この場合、重金属の不溶化効果をより向上させることができる。
上記不溶化剤は、鉛、カドミウム、銅、亜鉛、セレン、ニッケル、ウラン等の重金属の他、フッ素も不溶化することも可能である。
本発明の不溶化剤は、固体廃棄物中に含まれる重金属の不溶化用として好適である。なお、この固体廃棄物の詳細については後述する。
本発明に係る重金属の不溶化方法は、固体廃棄物に対し、前記の不溶化剤を添加するものである。
本発明に係る不溶化方法が適用される固体廃棄物には特に制限はないが、環境庁告示13号に準拠して調製したpH6.3の溶媒を用いて、環境庁告示13号に準拠して調製された試料液イのpHが11以上である固体廃棄物や、水溶性カルシウム及び重金属を含有している固体廃棄物が好適であり、当該試料液イのpHが12以上でありかつ水溶性カルシウム及び重金属を含有している固体廃棄物がより好適である。
このように、本発明の不溶化方法は、従来の不溶化方法では不溶化困難であったアルカリ度の高い固体廃棄物に適用することができるという優れた特徴を有する。その理由は、前述のとおり、不溶化剤中のリン酸等と硫酸カルシウムとの反応によって生じるヒドロキシアパタイト構造が、高アルカリ環境においても良好に重金属を不溶化することによるものと考えられる。
この固体廃棄物としては、ごみ焼却炉、石炭ボイラ、バイオマスボイラ等の燃焼プロセスから排出される焼却灰、焼却や溶融プロセスから排出される煤塵のほか、高炉、転炉、電気炉等の鉄鋼プロセスから排出される煤塵、鉄鋼スラグ、製紙工場から排出されるペーパースラッジ焼却灰等が挙げられる。
すなわち、昭和48年2月17日環境庁告示13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」に準拠し、純水に水酸化ナトリウム又は塩酸を加え、pHが6.3となる溶媒を調製する。次いで、同様に環境庁告示13号に準拠し、固体廃棄物(単位:g)と当該溶媒(単位:ml)とを、重量体積比10%の割合で混合して混合液とし、かつその混合液が500ml以上となるように調製することにより、試料イを得る。
このように調製された試料イのpHが11以上となる固体廃棄物が、「環境庁告示13号に準拠して調製したpH6.3の溶媒を用いて、環境庁告示13号に準拠して調製された試料液イのpHが11以上である固体廃棄物」である。
≪リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種(リン酸等)≫
固体廃棄物に対するリン酸及びリン酸塩の少なくとも1種(リン酸等)の合計添加量は、一般的に多いほど反応効率が向上し重金属不溶化効果が向上して好ましいが、コストを考慮すると、固体廃棄物100質量部に対するリン酸等の合計添加量は、正リン酸換算で好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部であり、更に好ましくは1〜5質量部である。
固体廃棄物に対する硫酸カルシウムの添加量も、一般的に多いほど反応効率が向上するため重金属不溶化効果が向上して好ましいが、コストを考慮する必要もある。
前述のとおり、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)を構成するカルシウムとリンとのモル比は、5:3である。よって、ヒドロキシアパタイト結晶構造を良好に生成する観点から、不溶化剤中における硫酸カルシウムとリン酸等との含有割合は、カルシウムとリンとが当該モル比に近くなる割合であることが好ましい。この観点から、硫酸カルシウムの添加量は、上記の添加されるリン酸等のリン酸換算添加量100質量部に対する硫酸カルシウムの無水硫酸カルシウム換算添加量として、50〜500質量部であることが好ましく、100〜350質量部であることがより好ましく、200〜250質量部であることが更に好ましい。
固体廃棄物に対する水溶性カルシウム不溶化薬剤の添加量も、一般的に多いほど重金属不溶化効果が向上して好ましいが、コストを考慮すると、固体廃棄物100質量部に対する水溶性カルシウム不溶化剤の添加量は、好ましくは1〜100質量部であり、より好ましくは1〜60質量部であり、更に好ましくは1〜30質量部である。
上記の各成分と共に固体廃棄物中に添加する水の量は、均一な混練り撹拌処理ができる量となるように適宜試験して決定されるが、固体廃棄物100質量部に対する水の添加量は、好ましくは10〜100質量部であり、より好ましくは20〜70質量部であり、更に好ましくは30〜50質量部である。
なお、固体廃棄物中に上記の各成分を添加して混練りした処理物は、直ちに重金属不溶化効果が得られるが、一定期間(例えば、1〜72時間)養生することが好ましい。
なお、実施例及び比較例では、次の評価方法を実施した。
(1)鉛の含有量
昭和48年2月17日環境庁告示13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」の溶出試験に準拠して、試料液イ(溶媒のpH:6.3)を調製し、JIS K0102:1998におけるフレーム原子吸光法によって鉛の含有量を測定した。
(2)pH
昭和48年2月17日環境庁告示13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」の溶出試験に準拠して、試料液イ(溶媒のpH:6.3)を調製し、試料液のpHを測定した。
固体廃棄物としては、鉄鋼プロセスで生じた集塵灰を用いた。上記評価方法による鉛の含有量は1.00mg/Lであり、pHは12.6であった。
水溶性カルシウムとして、水酸化カルシウム10g/L飽和溶液を用意し、表1に示す水溶性カルシウム不溶化剤を表1に示す添加量にて添加し、6時間振とう後に0.45μmろ紙でろ過し、ろ液中のカルシウム濃度を測定した。その結果を表1に示す。
鉄鋼プロセスの集塵灰100質量部に対して、不溶化剤として、表2に示す薬剤を同表に示す量添加し、スパーテルを用いて5分間混練した。
得られた処理物に対して、上記評価方法に従って、鉛の含有量及びpHを測定した。その結果を表2に示す。
集塵灰に対して、表2に示す各薬剤を異なるタイミングで添加・混練したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、評価を行った。その結果を表2に示す。
すなわち、実施例3では、集塵灰100質量部に対して、表2に示す量の高炉スラグ及び水(ただし、水の総添加量の半分である15質量部)を添加し、スパーテルを用いて5分間混練した後に、表2に示す量の75%リン酸及び脱硫石膏及び水(ただし、水の総添加量の残りの半分である15質量部)を添加し、スパーテルを用いて5分間混練した。
実施例4では、集塵灰100質量部に対して、表2に示す量の98%硫酸及び水(ただし、水の総添加量の半分である15質量部)を添加し、スパーテルを用いて5分間混練した後に、表2に示す量の75%リン酸及び脱硫石膏及び水(ただし、水の総添加量の残りの半分である15質量部)を添加し、スパーテルを用いて5分間混練した。
不溶化剤として、表2に示す薬剤を同表に示す量添加したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、評価を行った。なお、表2に示す通り、比較例8ではカルシウム源として、硫酸カルシウムに代えて水酸化カルシウムを添加した。その結果を表2に示す。
リン酸等、硫酸カルシウム、及び水溶性カルシウム不溶化剤の3種類総てを含有する不溶化剤(実施例1〜7)は、1種類の成分しか含有しない不溶化剤(比較例1〜4)や2種類の成分しか含有しない不溶化剤(比較例5〜9)と比べて、鉛の不溶化効果に優れていた。
また、比較例4に示すとおり、不溶化剤として脱硫石膏のみを用いた場合、鉛の不溶化効果は無かった。
比較例5〜7の結果が示すとおり、不溶化剤として、リン酸及び高炉スラグ微粉末(比較例5)、リン酸及び硫酸(比較例6)、リン酸及び脱硫石膏(比較例7)、並びにリン酸及び普通ポルトランドセメント(比較例9)を用いた場合、比較例1〜4と比べて、鉛の溶出量は低下した。しかしながら、依然として鉛の溶出量は埋立処分(陸上及び水面埋立)に係る判定基準値(0.3mg/L)よりも高い値であった。このように、不溶化剤としてリン酸とポルトランドセメントを添加する方法や、リン酸と硫酸を添加する従来方法では、目標とする埋立基準値(0.3mg/L)の濃度以下に低減する効果が不十分であることが明らかとなった。
また、実施例1と実施例3との比較及び実施例2と実施例4との比較から明らかな通り、高炉スラグ微粉末又は硫酸を添加した後に一定時間をおいてからリン酸及び脱硫石膏を添加することにより、鉛の溶出量を更に低減することができた。
実施例1,5及び6に示すとおり、高炉スラグ微粉末及び高炉セメントのいずれでも、鉛の溶出量低減効果が得られた。
すなわち、実施例1,7及び比較例8では、カルシウム源として、それぞれ、脱硫石膏、硫酸カルシウム二水和物及び水酸化カルシウムを用いている。これらを比較すると、脱硫石膏(実施例1)が最も鉛の溶出量低減効果に優れるが、硫酸カルシウム2水和物(実施例7)も鉛の溶出量低減効果に優れていた。一方、たとえカルシウム塩であっても水酸化カルシウム(比較例8)を用いた場合には、鉛の溶出量低減効果が不十分であった。
この結果は、本発明のカルシウム源である硫酸カルシウム結晶がリンと反応してヒドロキシアパタイトに変化する速度の方が、他のカルシウム源(水酸化カルシウム等)がリンと反応してヒドロキシアパタイトに変化する速度と比較して非常に速いためと考えられる。
Claims (12)
- リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種と、硫酸カルシウムと、水溶性カルシウムを不溶化する薬剤とを含有する重金属の不溶化剤。
- 前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤が、炭酸イオン、硫酸イオン及びケイ酸イオンの少なくとも1種を供給できる薬剤である請求項1に記載の重金属の不溶化剤。
- 前記硫酸カルシウムが、煤煙脱硫処理によって得られた硫酸カルシウムである請求項1又は2に記載の重金属の不溶化剤。
- 前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤が高炉スラグである請求項1〜3のいずれか1項に記載の重金属の不溶化剤。
- 前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤がケイ酸カルシウムを主成分としており、前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤中のカルシウムのCaO換算の含有量が60質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重金属の不溶化剤。
- 前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤が、硫酸及びその塩並びに炭酸及びその塩の少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の重金属の不溶化剤。
- 水溶性カルシウム及び重金属を含有しており、環境庁告示13号に準拠して調製したpH6.3の溶媒を用いて、環境庁告示13号に準拠して調製された試料液イのpHが11以上である固体廃棄物中に含まれる重金属の不溶化用である請求項1〜6のいずれか1項に記載の重金属の不溶化剤。
- 固体廃棄物に対し、請求項1〜7のいずれか1項に記載の不溶化剤を添加する重金属の不溶化方法。
- 前記固体廃棄物は、水溶性カルシウム及び重金属を含有しており、環境庁告示13号に準拠して調製したpH6.3の溶媒を用いて、環境庁告示13号に準拠して調製された試料液イのpHが11以上となるものである請求項8に記載の重金属の不溶化方法。
- 前記固体廃棄物に対し、前記水溶性カルシウムを不溶化する薬剤を添加すると同時に又は添加した後に、前記硫酸カルシウムと、リン酸及びリン酸塩の少なくとも1種とを添加する請求項8又は9に記載の重金属の不溶化方法。
- 前記固体廃棄物が燃焼プロセス又は鉄鋼プロセスで生じた灰である請求項8〜10のいずれか1項に記載の重金属の不溶化方法。
- 前記重金属が鉛を含む請求項8〜11のいずれか1項に記載の重金属の不溶化方法。
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