JP2013099279A - 樹脂製細胞培養容器とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶着用冶具40に周側壁10を取り付ける。周壁部10は上端面11に内嵌合用の段差部12を備える。段差部12に周縁部が乗るようにして機能性有機化合物層21を備えた機能性フィルム20を配置する。段差部12に挿入される膨出部32を持つ底板30を周側壁10の上に配置し、底板30の周縁部に超音波ホーン60を圧接し、周壁部10の内嵌合用の段差部12に底板30の膨出部32およびフランジ部を超音波溶着する。超音波振動により発生する樹脂粉塵は内嵌合部が堰となることで、機能性有機化合物層21の有効領域側に飛散することはない。
【選択図】図4
Description
[第1の発明の実施の形態]
発明を実施するに当たっては、図1の斜視図および図2の中央断面に示すように、製造しようとする樹脂製細胞培養容器Aの周囲の側壁を構成することとなる周側壁10と、機能性有機化合物層21を備えた機能性フィルム20と、製造しようとする樹脂製細胞培養容器Aの底面を構成することとなる底板30とを予め用意する。以下の説明では、製造しようとする樹脂製細胞培養容器Aは上面側を開放した平面視で矩形状の箱型容器である場合を例として説明するが、容器の形状は任意であり、円筒形の容器や、横幅が次第に狭くなる部分を有する箱型容器などであってもよい。
この例において、周側壁10は閉じた矩形状であり、限定されないが、周側壁の肉厚は1〜1.5mm程度、高さは20〜40mm程度である。周側壁10の一方の端面11は平坦面であり、該端面11には、内面側を切り欠いた内嵌合用の段差部12が全周にわたって形成されている。段差部12は垂直面13と水平面14とで形成され、限定されないが、この例において、垂直面13の高さは500μm〜1mm程度であり、水平面14の幅は400〜600μm程度である。周側壁10の他方の端面15は端面11と平行な平坦面である。周側壁10は、後に説明する底板30および天板50も含めて、細胞培養において一般的に用いられる材料を用いて作ることができる。例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料、表面親水化処理を施した上記の少なくとも1種を含む樹脂材料、およびガラスや石英等の無機材料であることができるが、好ましくは樹脂材料である。樹脂材料としては、ポリスチレン樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。また、透明な樹脂材料であることが好ましい。
機能性有機化合物層を備えた機能性フィルム20は、図2に断面を示すように、機能性有機化合物層21と、該機能性有機化合物層21を支持するためのフィルム基材層22とで構成されている。機能性有機化合物層21を備えた機能性フィルム20の平面視での形状は、前記した周側壁10の平面視形状と同じであり、大きさは、前記段差部12の水平面14を機能性フィルム20の周縁部が段差部12の垂直面13に沿って覆うことのできる大きさとされている。より好ましくは機能性フィルム20の大きさは、前記段差部12の水平面14の全面を覆うような大きさとするとよい。また、機能性有機化合物層21を備えた機能性フィルム20は全体がほぼ等しい厚みとされている。なお、本発明において機能性フィルム20は、表面に所望の機能が付与されたフィルムであれば特に限定されない。
本発明において前記フィルム基材層22は、一方の表面に上述の機能性化合物層21を形成することが可能な材料を含むものであればよく、材料の種類は特に限定されない。典型的には、フィルム基材層の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリル等が挙げられる。
機能性化合物層21を構成する機能性化合物としては、有機化合物または無機化合物が挙げられ、より好ましくは、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化することが可能な表面を有する刺激応答性ポリマーや、1つ以上のエチレングリコール単位(CH2−CH2−O)からなるエチレングリコール鎖等の親水性化合物が挙げられる。
機能性化合物層の膜厚は、例えば、0.5nm〜300nmの範囲内とするのがよく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
以下「刺激応答性ポリマー層」および「親水性化合物層」の好適な実施形態について説明する。
機能性有機化合物層は、刺激応答性ポリマー層であることが特に好ましい。刺激応答性ポリマー層とは、所定の刺激によって表面の細胞の接着度合いが変化するポリマーを含む層である。刺激応答性ポリマーとしては、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、イオン応答性ポリマー、光応答性ポリマーなどを挙げることができる。なかでも温度応答性ポリマーが、刺激の付与が容易であることから好ましい。
刺激応答性ポリマー層は、重合して目的の刺激応答性ポリマーを形成するモノマーと、該モノマーを溶解しうる有機溶媒と含む塗布用組成物を調製し、これを慣用の塗布方法に従って、フィルム基材の表面に塗布して塗膜を形成し、次に、該塗膜に放射線照射等の適当な手段により塗膜中のモノマーを重合してポリマーを形成するとともに、フィルム基材の表面とポリマーとの間にグラフト化反応を生じさせることにより形成することができる。
機能性有機化合物層の他の実施形態として、1つ以上のエチレングリコール単位からなるエチレングリコール鎖(複数のエチレングリコール単位からなるエチレングリコール鎖は、「ポリエチレングリコール鎖」ということができる)等の親水性化合物の層が挙げられる。
末端が水酸基により封鎖されたエチレングリコール鎖を含む層はこのようにして形成される。
底板30は、周側壁10と同じ材料で作られており、厚みは0.5〜1.5mm程度である。底板30の平面視での外郭形状は、好ましくは前記周側壁10の平面視形状と同じとされ、大きさは、好ましくは周側壁10の外郭形状と同じとされる。図2に示すように底板30の一方の面31は好ましくは平坦面であり、他方の面には膨出部32が形成されている。該膨出部32の表面は平坦面である。膨出部32の外周面33は垂直面であり、外周面33がなす輪郭形状は、前記周側壁10における段差部12の垂直面13がなす輪郭形状と同じとされている。前記外周面33の上端から外側は水平面34とされており、該水平面34の領域はフランジ部として作用する。膨出部32の前記外周面33の高さは、前記周側壁10における段差部12の垂直面13の距離から前記機能性有機化合物層21を備えた機能性フィルム20の厚みを引いた値にほぼ等しくされており、したがって、底板30の膨出部32を周側壁10の前記段差部12に嵌入させた状態で、前記フランジ部の前記水平面34は、周側壁10の開放した端面11と面接触した状態となることができる。
次に、溶着手順を説明する。溶着に際しては、溶着用冶具40を用意する。溶着用冶具40は前記した周側壁10を安定的に支持するためのものであり、図1に示すように、周側壁10の受け入れ部分41と、該受け入れ部分41の下端部の支持段部42とを備える。受け入れ部分41の外郭形状は周側壁10の内周面の形状と一致しており、また、受け入れ部分41の上端面43の垂直断面での形状は、前記周側壁10の一方の端面11の側面視での形状と一致している。この例で、周側壁10の一方の端面11は水平な平坦面であり、したがって受け入れ部分41の上端面43も水平な平坦面である。支持段部42は、受け入れ部分41に周側壁10を差し込んだときに、周側壁10の前記段差部12の水平面14と前記受け入れ部分41の上端面43とが同一面となることのできる位置に形成されている。支持段部42は、前記周側壁10の他方の端面15の側面視と一致するようにされており、この例で、周側壁10の他方の端面15は平坦面であり、したがって支持段部42の形状も平坦面である。
第2の発明では、上記した機能性有機化合物層21を備えた機能性フィルム20を用いることなく、第1の発明と同じ技術課題を達成する。そのために、第2の発明では、図5に示すように、膨出部32の表面全面に機能性有機化合物層21を形成した底板30を用いる。その点を除き、周側壁10の形状および底板30の形状は、第1の発明の場合と同様である。ただし、底板30の膨出部32の表面全面には機能性有機化合物層21が形成されているので、膨出部32の表面にはエネルギーダイレクターとして機能する突起36は設けられない。なお、底板30に機能性有機化合物層21を形成するには、前記フィルム基材層22に機能性有機化合物層21を形成するのと同じ手法で行うことができ、また、底板30上に直接形成される機能性化合物層21の構造およびその具体例も、機能性フィルム20について説明した機能性化合物層21と同様であることができる。
上記した実施の形態では、底板30のフランジ部および膨出部32にエネルギーダイレクターとして機能する突起35、36を設けたもの、および前記フランジ部にのみ設けたものを説明したが、超音波ホーンの出力や使用する樹脂材料の種類などによって、面と面との超音波振動によって発生する摩擦熱によって所望する溶着がなされる場合には、このような突起35、36を設けるのを省略することかできる。
なお、容器底面に、機能性化合物層21を備えたフィルム基材層22または機能性有機化合物層21を備える樹脂製細胞培養容器Aは、前記したように任意の形状であってよい。図1〜図7に示したような、上方が開放した皿状または碗状の形状の容器であってもよく、図8に示すようなフラスコ型の容器A1も例としてあげることができる。
10…周側壁、
11…周側壁の一方の端面、
12…内嵌合用の段差部、
13…段差部の垂直面、
14…段差部の水平面、
20…機能性有機化合物層を備えた機能性フィルム、
21…機能性有機化合物層、
22…フィルム基材層、
30…底板、
32…底板の膨出部、
33…膨出部の外周面、
34…膨出部のフランジ部として作用する水平面、
35、36…エネルギーダイレクターとしての機能を果たす突起、
40…溶着用冶具、
41…周側壁の受け入れ部分、
42…支持段部、
43…受け入れ部分の上端面、
50…天板、
60…超音波ホーン。
Claims (6)
- 容器底面に機能性有機化合物層を備える樹脂製細胞培養容器の製造方法であって、
開放端面の全周に内嵌合用の段差部を有する周側壁と、前記内嵌合用の段差部に嵌合する膨出部とフランジ部を有する底板と、機能性有機化合物層を備えた機能性フィルムであって周縁部が前記周側壁に形成した段差部に乗ることのできる大きさと形状とされた機能性フィルムとを用意し、
前記機能性フィルムを機能性有機化合物層が内側となり周縁部が前記周側壁に形成した前記段差部に乗るようにして配置し、その上から前記底板をその膨出部が前記段差部に内嵌合するようにして前記周側壁の上に配置し、その状態で、前記底板のフランジ部に超音波振動を与えることで前記周側壁の開放端面に前記底板を前記機能性フィルムとともに溶融一体化することを特徴とする樹脂製細胞培養容器の製造方法。 - 容器底面に機能性有機化合物層を備える樹脂製細胞培養容器の製造方法であって、
開放端面の全周に内嵌合用の段差部を有する周側壁と、前記内嵌合用の段差部に嵌合する膨出部とフランジ部を備え前記膨出部の表面には機能性有機化合物層が形成されている底板とを用意し、
前記底板をその膨出部が前記段差部に内嵌合するようにして前記周側壁の上に配置し、その状態で、前記底板のフランジ部に超音波振動を与えることで前記周側壁の開放端面に前記底板を溶融一体化することを特徴とする樹脂製細胞培養容器の製造方法。 - 前記周側壁として、周側壁の開放端面と底板とが対向する部位にエネルギーダイレクターとして機能する突起を備えた周側壁を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製細胞培養容器の製造方法。
- 前記底板として、周側壁の開放端面と底板とが対向する部位にエネルギーダイレクターとして機能する突起を備えた底板を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製細胞培養容器の製造方法。
- 前記底板を溶着一体化した後に、前記周側壁の他方の開放端面を樹脂製天板で閉鎖する工程をさらに行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂製細胞培養容器の製造方法。
- 容器底面に機能性有機化合物層を備える樹脂製細胞培養容器であって、少なくとも一方の端面の全周に内嵌合用の段差部を有する周側壁と、前記内嵌合用の段差部に嵌合する膨出部とフランジ部とを有する底板とを備え、前記機能性有機化合物層はその周縁部が前記周側壁に形成した前記段差部に乗った姿勢で、前記周側壁の前記端面に前記底板が溶融一体化されていることを特徴とする樹脂製細胞培養容器。
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